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防災と省エネから考える水のパッシブデザイン
エネルギーのつどい(市川) ワインと酒とエネルギーのつどい 2014 ~エネルギー自立のための省エネを考える~ 防災と省エネから考える水のパッシブデザイン 近畿大学工学部建築学科 准教授 市川尚紀 水災害 & 水不足 防災 省エネ エネルギー問題 1 エネルギーのつどい(市川) 都市型水害と雨水流出抑制 地球の水 淡水 2.481% 水蒸気 0.001% 生物 0.0001% 地下水 29% 川 0.004% 湖 0.04% 氷 71% 海水 97.507% 水の構成 日本の降水量 : 1人あたりの降水量 : 淡水の分布 世界平均の約2倍 世界平均の1/4 2 エネルギーのつどい(市川) 流域(雨水が流れ込む範囲)の都市化 都市型洪水と河川の直線化 妙正寺川の被災(中野区) 善福寺川の越水に伴う浸水(杉並区) 2005年9月4日夕方~5 日に上陸した台風14号。 局地的に100mm/hを超え る大雨。 被害は負傷者13名、住 家一部損壊3棟、床上浸 水3107棟、床下浸水 3284棟(消防庁調べ10 月6日現在) 30mm/h対応 30mm/h対応 白子川の河川改修(練馬区) 建設費640万円/m 川延長は約10kmなので 計640億円 手前50mm/h対応 75mm/h対応 3 エネルギーのつどい(市川) 河川改修では防げない内水氾濫 50mm/h規模の大雨 平常降雨 河川から溢水 →浸水被害 下水道から溢水 →浸水被害 河川付近の低地 ▽HWL ▽HWL 下水道へ 下水処理場へ 30mm/h対応の 白子川 30mm/h対応の 白子川 逆流 流式下水道 30mm/h対応の合 一定以上の雨が降ると 汚水混じりの雨水が白子川へ流れ込む 50mm/h規模の大雨 50mm/h規模の大雨 下水道から溢水 →浸水被害 河川付近の低地 下水道から溢水 →浸水被害 河川付近の低地 ▽HWL 下水道へ 比丘尼下流 調節地により 50mm/h対応に なった白子川 下水道へ 河川掘削 逆流 75mm/h対応の 白子川 流式下水道 30mm/h対応の合 逆流 下水道 m/h対応の合流式 大雨時は 30m 下水道へ排水できない 川だけで治水対策を行なうことは不可能 総合治水(1979年) 排水機場の整備 調節池・分水路等の設置 河 川 管きょの整備 下 水 道 河川や下水道によって 雨水を集水して 貯留するオフサイト貯留 治水施設 ポンプ場の整備 雨水調整池等の設置 大規模開発時のみ適用 調整池の設置 貯留 雨水貯留施設の設置 (各戸貯留・公園貯留等) 雨水流出抑制 浸透マス・浸透トレンチ等の設置 浸透 建 築 敷 地 雨水の移動を最小限に抑え、 雨が降ったその場で貯留する オンサイト貯留 浸透性舗装の整備 各戸浸透施設の助成 河川法適用外のため 治水効果は期待されてない 4 エネルギーのつどい(市川) 河川立体区域制度による地下調節池(1995年) 浸透マス 地下調節池(河川事業) 砕石幅(W)=0.6m 設計水頭(H)=1.0m 出典:白子川比丘尼橋下流地下調 節池パンフレット 単位設計浸透量 0.00018m3/秒 = (0.18リットル/秒) 排水能力 77m3/秒 建設費約230億円 浸透マス約43万基分の能力 約100億円(2.5万円/基) 調整域と涵養域の提案 5 エネルギーのつどい(市川) 雨水流出調整の提案 河川区域 河川区域 δ.公共集合住宅 α.学校 貯留広場 δ.公共集合住宅 α.学校 貯留広場 雨池 白 子 川 白 子 川 道路 β.公園 貯留広場 B . 管 理 用 η.生産緑地 通 路 ζ.住宅敷地 雨池 A.水路跡 ζ.住宅敷地 道路 橋 B . 管 理 用 通 路 B . 管 理 用 η.生産緑地 通 路 ζ.住宅敷地 せせらぎ水路 ζ.住宅敷地 B . 管 理 用 通 路 A . 水 路 跡 せせらぎ水路 A.水路跡 A . 水 路 跡 橋 雨池 β.公園 ζ.住宅敷地 貯留広場 大雨時は調整域の公的土地 の外部空間で雨水流出抑制 β.公園 β.公園 ζ.住宅敷地 雨池 雨上がり後、池に溜めた雨水を ゆっくりと流せば洪水は防げる しかし、合流式下水道区域では、雨水を河川ではなく下水道へ流さなければいけない 流域の健全な雨水循環 流域の健全な水循環系を取り戻すためには、流域全体で、雨水を受け止め、 川や大地や空にゆっくりとかえし、用水路や水田が担っていた多様な効果をねらうことが重要 6 エネルギーのつどい(市川) 建築と自然エネルギー 日本のCO2排出量は世界第5位 排出されるCO2の約1/3は建築関連 その約2/3が建物運用時の排出量 パッシブデザイン 建物自体によって、 その地域の気候特性を上手に制御し、 太陽光、季節風、地中熱といった 身近な自然エネルギーをコントロールして 環境負荷を低減するとともに、 快適な居住空間をつくること。 7 エネルギーのつどい(市川) エネルギー消費 1970年代 第一次エネルギー危機(オイルショック) アクティブソーラー 高度な技術を駆使して、 自然エネルギーを、 電気製品や冷暖房機器、 給湯器などの 熱源に交換すること 例:太陽光発電など エネルギー消費 パッシブソーラー ・太陽光を取り入れる。 ・日射を遮蔽する。 ・高気密・高断熱 による省エネルギー対策 ・・・パッシブの基本 冬の寒さを凌ぐことができる 高気密・高断熱建築が普及。 冷暖房負荷の軽減には 一定の効果が上がった。 京都議定書(1997) 基準年: 1990年 目標期間:2008~2012年 目標:-6% 民生部門 1990年度→2007年度で1.4倍 東広島市『東広島市地域新エネルギービジョン』(2010.2)より 8 エネルギーのつどい(市川) エネルギー消費 5,000 ・事業所ビル ・百貨店 ・各種商品小売業 ・卸・小売業 ・飲食店 ・ホテル・旅館 ・学校 ・病院・医療施設 など (1015J) 4,500 4,000 3,500 4,462 53% 3,000 2,500 業務部門 2,000 1,500 1,000 家庭部門 47% 500 0 65 70 75 80 85 90 95 00 03 出典:経済産業省 資源エネルギー庁 エネルギー白書2005 パッシブヒーティング パッシブヒーティング ダイレクトゲイン 集熱 蓄熱 9 エネルギーのつどい(市川) パッシブクーリング パッシブクーリング パッシブクーリングは難しい? 日射遮蔽 放射冷却 地中熱利用システム 蓄冷 放射 冷却 外気 ファン ロックベッド http://www.leoi.co.jp/contents/geopower.phpより 水のパシブデザイン 10 エネルギーのつどい(市川) 水のパッシブデザイン 雨水は水道水よりも冷たい(夏季) 出典:「自然エネルギー利用のためのパッシブ建築設計手法事典」(彰国社) 水のパッシブデザイン 熱容量:ある物体の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量 密度 比熱 Kg/m3 木 容積比熱 Kcal/kg・℃ Kcal/m3・℃ 548 0.32 コンクリート 2270 0.2 土 1890 5倍 1000 水 熱容量 0.21 近似 1 J/K 3倍 175 732 483 2200 397 2倍 1000 1660 4180 水の熱容量は、あらゆる物質の中で最大 雨水を蓄冷・蓄熱の媒体とし、 冬は太陽熱で雨水を温めて暖房 夏は地中熱で雨水を冷やして冷房 ができないか? 11 エネルギーのつどい(市川) 水のパッシブデザイン 太陽光発電パネル 屋根水流下 太陽熱温水器(⑥) 集熱部 1001×2001×60mm(2枚) 貯湯槽部 465×2008×505mm 有効採湯量 200リットル 雨水 補給水 冬期 タンク切替え 自動制御盤(⑤) 夏期 屋根面積 約60㎡ 庭散水 トイレ流し など 樋 吐水量26L/min 始動揚程18m 出力250W 雨水分流器(①) 200 初期降雨排水 400 ポンプ(③) GL 吐水量16L/min 始動揚程16m オーバーフロー 余水排水 出力150W 床冷暖房 ラジエータ ファンコイルユニット など オーバーフロー 3,870 熱交換装置(⑦) 雨水貯留槽(②) 鉄筋コンクリート製ピット 貯留量:1,670W×1,670D×1,450H≒4トン 600 ※浄化槽の再利用も可 雨水保温・保冷タンク(④) 既製ドラム缶(径600×高900)×5本 貯留量:300×300×3.14×3,870≒1トン/1本 水のパッシブデザイン 特徴① 雨水を冷暖房にも活用 ・一般的な木造住宅に汎用可能 ・既存の雨水利用システムと兼用可能 ・都市型洪水抑制、地下水涵養、微気候調節などの効果も 雨水分流器の構造 貯水槽 へ 初期降 雨 12 エネルギーのつどい(市川) 水のパッシブデザイン 特徴② 既製品のドラム缶を活用した雨水保温保冷タンク ・安価な施工コスト ・既存の一般住宅へ採用可能 ・汚染外気によるリスクなし 水のパッシブデザイン 水温制御&室温制御 水温 >25℃ 次のタンクへ切り替わる 室温 >28℃ ポンプ稼働 <24℃ ポンプ停止 雨水保温・保冷 タンク(④) タンク切り替え自動制御盤(⑤) 枡 910 データロガー ポンプ(③) 雨水分流器(①) ポーチ GL 排水 2730 FCU(⑦) -3m T型熱電対 ホール1 低温水式 床暖房パネル(⑦) 1365 -4m 雨水保温・保冷タンク(④) ダイニング キッチン リビング 2730 -2m 下部 ラジエータ(⑦) 雨水貯留槽(②) 玄関 5460 -1m N ぬれ縁 0AW 実験室 2730 雨水分流器(①) 3640 9100 2730 13 エネルギーのつどい(市川) 水のパッシブデザイン ℃ 25 タンク1 24 タンク2 タンク3 23 タンク4 水温 22 21 20 19 18 地中温度 17 16 14 9:00 13:00 17:00 21:00 1:00 5:00 9:00 13:00 17:00 21:00 1:00 5:00 9:00 13:00 17:00 21:00 1:00 5:00 9:00 13:00 17:00 21:00 1:00 5:00 9:00 15 水のパッシブデザイン a地点 ℃ 35 b地点 c地点 33 d地点 外気温 e地点 f地点 31 外気温 室温 29 27 25 23 7月20日 21 7月21日 7月22日 7月23日 7月25日 7月24日 15:00 9:00 3:00 21:00 15:00 9:00 3:00 21:00 15:00 9:00 3:00 21:00 15:00 9:00 3:00 21:00 15:00 9:00 3:00 21:00 15:00 9:00 14 エネルギーのつどい(市川) 雨水利用事例 埼玉県越谷市ホームページより 浄化槽を雨水貯留槽に転用 埼玉県越谷市 3万5千円/件 ・水中ポンプを含めた工事費 6万円~10万円の約半額 ・浄化槽の埋め戻し費用と同等 愛知県日進市 上限8万円/件 かつ経費の3分の2以内 福島県郡山市 上限20万円/件 かつ経費の3分の2以内 広島県東広島市 制度無し 雨水利用事例 ■地域のコミュニティの場 (ポケットパーク) ■災害時の避難路になる路地 (清掃器具・防災設備付き) ■設置は行政・維持管理は住民 身近な防災拠点「路地尊」(東京都墨田区) 15 エネルギーのつどい(市川) 雨水利用事例 太陽と雨の家(東京都国分寺市) 雨水利用事例 開発者:日建設計 断面140mm×120mm 水源:雨水 『日経アーキテクチャー2009.5.11』より 16