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SNIA SSS性能試験仕様に基づく SSDパフォーマンスの把握

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SNIA SSS性能試験仕様に基づく SSDパフォーマンスの把握
SNIA SSS性能試験仕様に基づく
SSDパフォーマンスの把握
いかにしてPTSの結果を用いてSSDパフォーマンスの評価や比較を行うか
January 2012
SSSI Members and Authors:
Easen Ho, Calypso Systems, Inc.
Eden Kim, Calypso Systems, Inc.
Chuck Paridon, Hewlett Packard Corporation
Doug Rollins, Micron Technology
Tom West, hyperI/O LLC
目 次
1. はじめに
3
2. SSDのパフォーマンス状態遷移
4
3. 標準の作成−PTS仕様
4. 「人工的なデバイスレベルテスト」とは何か
7
5. ユーザワークロード特性について
9
6. PTSレポートの理解
9
7. PTSレポート
10
8. PTSレポートの概要ページとヘッダー
11
11
12
12
12
12
13
13
PTSレポート概要ページ
PTSレポートヘッダー
一般的な情報
テスト環境情報
DUT 準備情報
テストループパラメータ情報
定常状態情報
9. 定常状態収束
14
10. 定常状態測定ウィンドウ
15
11. 定常状態測定ウィンドウ計算
15
12. テストデータ結果のレポーティング−表、グラフ、図
16
16
17
18
19
PTS-E WSAT
PTS-C IOPS
PTS-EスループットとPTS-Cスループット
PTS-E遅延とPTS-C遅延
13. PTSに基づくSSDパフォーマンスの比較
定常状態収束 −単一ドライブの状態別 IOPS比
定常状態収束 −単一ドライブの状態別遅延比較
定常状態収束 −単一ドライブの PTS-E 128K TP W比較
定常状態測定ウィンドウによる-単一ドライブの IOPS比較
WSATによる − 単一SSD比較
WSAT による複数SSDの比較
IOPSによる複数SSDの比較
TP による複数SSDの比較
LAT AVEによる複数SSDの比較
LAT MAXによる複数SSDの比較
2
6
20
20
22
23
23
24
25
26
27
29
30
14. SSDテストのベストプラクティス
31
15. まとめ
33
著者について
34
ソリッドステートストレージ分科会
SNIAについて
ストレージネットワーキング・インダストリ・アソシエーション(SNIA)は、400を
超える法人会員とほぼストレージ業界全体に及ぶ7,000人の個人会員で構成される世界
的な非営利組織である。SNIAの使命は、企業の情報管理を促進する標準、技術、およ
び教育サービスの開発と普及においてストレージ業界を地球規模でリードすることで
ある。この目的を達成するために、SNIAでは、オープンストレージネットワーキング
ソリューション市場を拡大するための標準、教育、およびサービスの提供に全力で取
り組んでいる。その他の情報については、SNIAのWebサイト(http://www.snia.org)
を参照されたい。
SNIAソリッドステートストレージ性能試験仕様(PTS)について
本書は、SNIAソリッドステートストレージ性能試験仕様(Performance Test
Specifications; PTS)Rev 1.0のクライアントアプリケーション版(PTS-C)とエンター
プライズアプリケーション版(PTS-E)に従って実施された試験に基づく。すべての
試験は、Calypso Systems, Inc.の認定SSSI PTSテストラボでSNIA準拠のCalypsoリファ
レンステストプラットフォーム(RTP 2.0)とCTS 6.5テストソフトウェア(PTS-Eと
PTS-Cの試験プラットフォーム要件を参照)を使用して実施された。テスト結果と本
ホワイトペーパはSNIA SSSIのWebサイト(www.snia.org/forums/sssi/pts)からダウ
ンロードできる。
1. はじめに
NANDフラッシュベースのSSDに関してよくされる質問は「最も性能が高いSSDはどれか」
であるが、その答えは決まって「場合による」である。この答え方には、NANDベースの
SSDに固有のさまざまな要因が関係している。
デバイスレベルの要因
・テストはファイルシステムレベルとデバイスレベルのどちらで行われたか。
・テスト開始前のドライブの取り扱いはどうなっていたか。ドライブはプリコンディショ
ニングされていたか。その場合、どのように調整されたか。
・テスト手順で、ドライブが定常状態に到達した後に結果が収集されはじめることが保証
されていたか。
・テスト中にどこにどのくらいのデータが書き込まれたか。
・どのようなデータパターンがテストされたか。
システムレベルの要因
・どのようなテストプラットフォームがそのSSDのテストに使用されたか。
・どのようなハードウェアパッケージやソフトウェアパッケージが使用されたか。
・HBAの帯域幅は十分か。
アーキテクチャ上の要因
・NANDフラッシュのタイプは何か。
・ドライブの使用目的は高書き込みワークロードか、それとも高読み取りワークロードか。
・ドライブの実効性能は保証問題などのその他の基準を満たすように設計されているか。
本書では、SNIA PTS仕様およびSNIA標準レポーティングフォーマットテストレポートを使用した
SSDパフォーマンスの評価と比較を中心に説明する。
本書内の用語については、www.snia.org/forums/sssi/knowledge/education
(日本語訳 http://www.snia-j.org/tech/WH/SSSI/SSSI1.html)にあるSSS用語集を参照されたい。
3
2. SSDのパフォーマンス状態遷移
すべてのNANDベースのSSDは、3種類以上のパフォーマンス状態(開封後未使用(Flesh-Out-ofBox; FOB)状態、遷移状態、定常状態など)を示す。
開封後未使用(Flesh-Out-of-Box; FOB)状態
メーカーから届いたばかりの新しい/未使用のソリッドステートストレージデバイスの状態。通常、
デバイスがこの状態にあるときは、デバイス上のストレージセルにプログラム/消去(P/E)サイ
クルがほとんど適用されていない(例外は製造プロセスの一部として工場で実施されるP/Eサイク
リング)か、デバイスがATA Security EraseやSCSI Format Unitなどの標準的な方式またはその他の
独自の方式を使用してこの状態に戻されている。このデバイスはデータを保存する準備が整ってい
る(つまり、すべてのストレージ素子がerase済みである)。
遷移状態
これは、デバイスのパフォーマンスがある状態から別の状態に変化する途中のパフォーマンス状態
である。例えば、SSDの小さなサイズのブロック書き込みに対する標準的なパフォーマンスは、パ
フォーマンスが非常に高いFOB状態から始まる。その後、同じ負荷をある程度かけ続けると、SSD
はパフォーマンスが比較的時間不変になる状態に到達する。FOB状態とこの比較的時間不変状態の
間の期間を遷移状態(Transision State)と言う。
定常状態
非定常パフォーマンス挙動(遷移状態など)のほとんどが収束している状態を「定常状態」(Steady
State)と言う。定常状態パフォーマンスでは、比較的長い期間パフォーマンスがごくわずかにしか
変化しない。定常状態の定義の詳細はPTSで規定されている(以下「定常状態」とする)。
前述したように、ほとんどのSSDがこれらのパフォーマンス状態を順番に移動する(FOB状態→遷移
状態→定常状態)。定常状態(SS)は、特定のIO傾向下で長期間使用されたSSDのパフォーマンス
をほぼ正確に反映しているため、パフォーマンスの測定に最も適切な領域と言える。例えば、ほと
んどのSSDでは遷移状態は数時間であり、そのドライブの耐用年数に比べて非常に短い。
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SSOパフォーマンス状態 − 正規化されたIOPS
IOPSと正規化された容量の関係
正規化されたIOPS
遷移
定常状態
(望ましい試験範囲)
時間(分)
正規化された容量(Xユーザ容量)
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SSDパフォーマンスに影響を与える要素
SSDパフォーマンスは3つの主要な要素に大きく左右される。書き込み履歴(ホストアイドル
時間を含む)、測定対象ワークロード、およびハードウェア/ソフトウェア環境の3つである。
これらの要素次第で、全く同じSSDが全く異なるテスト結果を示す場合がある。
書き込み履歴とホストアイドル時間。
−書き込み履歴のない「開封後未使用」(Flesh-Out-of-Box;FOB)
状態のSSDは、最初は非常に高いピークパフォーマンスを示すが、そのパフォーマンスは書き
込まれるデータ量が増えるにつれて徐々に減少する。同様に、もしそのSSDが有効なバッファ
(DRAMバッファなど)を内蔵しており、かつある程度の時間アイドル状態であれば、その
SSDはDRAMバッファ内のデータをNANDに移動できる。ホストインタフェースのアイドル状
態がしばらく続けば、その後ホストが再び書き込みを開始したときに、この時間を利用して
空になったDRAMを、新たな受信データの保存に使用できる。そのため、一時的に非常に高い
パフォーマンスが見られるが、そのパフォーマンスはバッファがいっぱいになると減少する。
図1の「IOPS ‒ SSD capacity writes」(SSDの書き込み容量とIOPSの関係)では、いくつかの
SSDに対して書き込みが行われ(x軸はドライブがいっぱいになった回数)、そのときのパフ
ォーマンス(IOPS単位)がy軸上にプロットされている。個々に多少の違いはあるが、すべて
の曲線がほぼ同じ形状であり、すべてのドライブが同様のパフォーマンス低下を示している。
このパフォーマンスグラフの右端の領域が「定常状態(Steady State)」領域である。
測定対象ワークロード。−書き込まれたデータ量のほかに、データのタイプ(転送サイズや
ランダム度合など)もSSDのパフォーマンスに影響を与える可能性がある。
考えてみよう。あるドライブが大きなサイズのシーケンシャル転送によって定常状態にされる。
その後、負荷が小さなサイズのブロックランダム転送に変化し(この場合もドライブを定常状
態にするのに十分なデータが書き込まれる)、その後またアクセスが大きなサイズのブロック
シーケンシャル転送に戻ったとする。この最初と最後の2つのシーケンシャル転送領域は同じ
パフォーマンスを示すはずである。
多くのドライブにおいて、この現象(「Cross Stimulus Recovery(負荷横断後の回復)」とし
て知られる)は下図の例のようになる。これらのグラフでは、x軸が時間を、y軸がMB/s単位の
スループットを示す。
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負荷横断後の回復:SEQ 128KiB - RND 4KiB- SEQ 128KiB
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0/&%*%
MLCB - XSR:
(負荷横断後の回復)
スループット
(MB/s)
スループット
(MB/s)
MLCA:XSR(負荷横断後の回復)
時間(分)
0%6HF
時間(分)
ᐃᮇ㛫
㛤ጞ
51'.L%ᚋ
⤊஢
ᐃᮇ㛫
㛤ጞ
51'.L%ᚋ
6(4.L%:
6(4.L%:
⤊஢
5
図2. 負荷横断後の回復
SSD MLC-Aの場合は、予想通り、小さなサイズのランダム転送時(「RND 4KiB」というラベル
の付いた赤色の部分)に全体のスループットが低下している。大きなサイズのブロックシーケン
シャル転送の2つの領域(「SEQ 128KiB」というラベルの付いた左側の青色の部分と右側の緑色
の部分)はまた予想された通り、初期回復期間後に同じスループットを示している。
ただし、常にこうなるとは限らない。2つ目のSSD MLC-Bの例は同じように書き込んで測定した
ものである。MLC-Bは、このテスト中に初期のシーケンシャル転送で見られたパフォーマンス
レベルまで回復することはなかった。
ハードウェア/ソフトウェア環境。 −テストプラットフォーム自体もテスト結果に影響を与え
る可能性がある。オペレーティングシステム、ファイルシステム、ハードウェア、ドライバ、
ソフトウェアのすべてが「ストレージスタック」の重要な部分であり、それらの違いはSSDパ
フォーマンスに影響を与える可能性がある。これらの影響を最小化するために、テストプラッ
トフォームのホストはできるだけパフォーマンスに影響しないように設計する必要がある。例え
ば、必要なIO負荷が生成されるように、ホストに十分な帯域幅と十分な処理リソースを持たせる
ことは重要である。
3. 標準の作成 − PTS仕様
SNIAソリッドステートストレージ性能試験仕様 1.0(SSS PTSまたはPTS)は、エンタープライズ
ユースケースとクライアントユースケースの大きく異なる二つの要件を解決するために、2つの
バージョンが公開されている。テスト結果を簡単に比較できるようにするために、PTSにはSNIA
標準レポーティングフォーマットも付属している。このフォーマットを使用すれば、必要なレポ
ーティング情報を簡潔かつ容易に開示でき、読者はSSDパフォーマンステスト結果の簡単な比較
が可能になる。
376(
376(QWHUSULVHYHU
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図3. PTS仕様 PTS-CとPTS-E
6
376&OLHQWYHU
性能試験仕様(PTS)の特徴
・人工的なデバイスレベルのテストに基づく。
・標準的なプリコンディショニング方法を規定する(書き込み履歴の影響を正規化してSSD
を定常状態にするため)。
・テストワークロードを規定する(アクセスパターン、データパターン、アクセス範囲、
フットプリント制限を明示する)。
・テストプラットフォームに関する要件を列挙する(そのハードウェア/ソフトウェア環境
で実行すれば規定通りの十分なIOが生成されることを保証する)。
・標準化されたPTSレポートフォーマットを提供し、キーとなるテストセットアップ情報と
テスト結果を簡単に参照できるようにする。
このホワイトペーパーの目的は、このSNIA PTSレポートフォーマットの紹介、フォーマット中
の情報ヘッダーの構成の紹介、PTSエンタープライズ(PTS-E)テストとPTSクライアント(PTS-C)
テストの重要なデータ結果の提示および、PTSレポートに含まれるデータの評価と解説を提供
することである。
4. 「人工的なデバイスレベルテスト」とは何か
人工的なデバイスレベルテスト
PTSの文脈における人工的なデバイスレベルテストとは、(ファイルシステムレベルテストで
はなく)いくつかのパラメータセットによって完全に記述することができる既知で再現可能な、
ブロックIOデバイスを直接ターゲットとしたテスト負荷を使用することを意味する。負荷を記
述するパラメータには以下が含まれる。
・読み取り/書き込み比率(読み取りIOと書き込みIOの相対量)
・ブロックサイズ(各IOごとのデータ転送サイズ)
・データパターン(各IOのデータ内容に関係する)
その他のパラメータは、デバイス内でどの論理ブロックアドレス(LBA)へのアクセスが許可
されるかの制限に影響を与える。
・ActiveRange(アクセスするLBAの範囲)
・ActiveRange量(テスト中にアクセスされるLBAによって参照される容量の合計)
・ActiveRangeセグメンテーション(ActiveRange内の連続した同じサイズのLBA範囲
(またはセグメント)の分散とサイズ)
PTSは、これらのパラメータを使用してテストアプリケーションからテストターゲットデバイス
(Device Under Test; DUT)にIOを発行する方法を規定している。
注:「ActiveRange」と「ActiveRange量」はPTS内で定義された用語である。
テスト実行者は、ソフトウェアテストツールやテスト環境(テストハードウェアやオペレーテ
ィングシステムとその関連ドライバなど)が正確な測定値の収集を妨げる要因にならないよう
に注意する必要がある。
7
ファイルシステムレベルテスト
デバイスレベルテストとファイルシステムレベルでのテストは異なる。一般的に、ファイル
システムレベルテストでは、特定のファイルIO命令をそのファイルシステムを通して直接テ
スト対象デバイスに発行する必要がある。ファイルシステムレベルでのSSDパフォーマンス
テストでは、テストと対応するパフォーマンス測定値に影響を与える可能性のある追加の変
数が導入される。これらの変数と影響は、アプリケーション/テストソフトウェア自体、
さまざまなコンポーネント/ドライバとOSソフトウェアスタック内部でのそれらの相互作用、
各ファイルシステムの詳細、および基になるコンピュータハードウェアプラットフォームに
よって異なる。後述のハードウェア/ソフトウェアスタックの図を参照されたい。
ファイルシステムレベルのSSDパフォーマンステストだけでなく、アプリケーションIOパフ
ォーマンスにも影響を与える可能性のある変数の一部を以下に示す。
キャッシング。−OSまたはドライバレベル
で実装されたキャッシング戦略によっては、
アプリケーションから発行された単一のフ
ァイルIO命令で全く物理デバイスアクセス
が発生しない場合がある。
フラグメンテーション。−ファイルフラグ
メンテーションが原因で、アプリケーショ
ンから発行された単一のファイルIO命令に
よって、物理デバイスに対する複数のIO命
令が必要になる場合がある。また、ドライ
バでIOコマンドを分割または連結すること
もできる。この場合は、発行元のIO命令と
物理デバイスアクセス間の1対1の対応が失
われる。
タイミング。−さまざまなタイミングが、
IO命令がOSソフトウェアスタック内を通る
のに大きな影響を与えるのを考慮する必要
がある。例えば、複数のアプリケーション
図4. ハードウェア・ソフトウェアスタック
がそれぞれ個別にファイルに対するシーケ
ンシャルアクセスIO命令を実行したとして
も、このような同時IO命令が下位のディスクドライバやその他のコンポーネントではランダ
ムなアクセスパターンで到着する場合がある(システムタスクの切り替えやファイルシステ
ムメタデータIO命令の介在などが原因)。
ユーザワークロード −全てではないにしても、多くのエンドユーザがSSDパフォーマンスを
比較する主な目的は、特定のアプリケーションを使用した特定のコンピューティング環境内
での運用中に得られるパフォーマンスメリットを把握したり実証したりすることである。
しかし、使用可能なアプリケーションの範囲や多様性や、あるいはそれらの使用法の組み合
わせは、アプリケーションのIOパフォーマンスに影響を与えかねない一連の重要な要因がお
きる可能性がある。
まとめると、PTSを通して提供される「人工的なデバイスレベルテスト」は、さまざまなSSD
のネイティブなパフォーマンス能力を明らかにするための標準化された手順である。そして、
このような本質的なパフォーマンス能力を理解することは、アプリケーションのIOパフォー
マンスを処理または改善しようとする場合の重要かつ基本的な要素になり得る。
8
5. ユーザワークロード特性について
多くのエンドユーザに共通する目的と目標は、ある特定のアプリケーションのパフォーマンス
に対するニーズに適切かつ手堅く一致する、ある具体的なストレージ製品を、できるだけコス
トをかけずに見つけ出し購入することである。コストを追求した結果、多くのエンドユーザに
は,ストレージデバイスの宣伝/報告に用いられているパフォーマンス指標(IOPSやMB/sなど)
を直接利用して彼らのアプリケーションの推定ワークロード特性を説明しようとする傾向が見
られる。これでは、彼らのワークロード特性に関する前提条件が曖昧になる可能性がある。
前述のように、アプリケーションに起因するIOは、IO命令がOSソフトウェアスタックを通ると
きに、さまざまな変数や影響に晒される。これは、アプリケーションの視点からIO命令パフォ
ーマンス指標を収集することによって確認でき、またOSソフトウェアスタック内のさまざまな
箇所からも同様に確認できる。
このようなユーザワークロード特性とデバイスの「速度と供給」パフォーマンスの対応付けは、
これらの測定されたワークロード特性が日常業務における興味のあるアプリケーションの実際
のIOをどの程度正確に反映しているかに基づく。
さまざまな「経験則」からこの対応付けに関連した一般的な指針が得られる。しかし、よくある
「効果は異なることがある」、「場合による」などの但し書きは、そうした「経験則」に対する最
終的な忠告または警告であることが多い。
概して、PTSパフォーマンス測定値の収集に対して払われる細心の注意と同様に、適切なワー
クロード特性を特定して理解する場合も細心の注意を払うべきである。PTSパフォーマンス測
定値の価値は、実際のユーザワークロード特性をどれだけ反映するかによってさらに高まる。
6. PTSレポートの理解
典型的なユーザワークロードやターゲットワークロードを理解していれば読者/テスト実施企
業は今すぐにでも、さまざまなPTSテストレポートを分析して利用できる。各PTSテストでは、
テスト条件、IOパラメータ、アクセスパターン、および指標が各テストに関連付けられたそれ
ぞれのワークロードを実装するように設計されている。
エンタープライズワークロードとクライアントワークロードを区別するため、PTSはさまざま
なプリコンディショニングとテストの範囲を規定している。例えば、1日24時間、週7日の連続
使用を特徴とするエンタープライズワークロードは、デバイス容量(LBA)の100%利用を前提
条件として、テスト負荷をLBA範囲全体に適用する。一方、クライアントワークロードではプレ
コンディショニングは限られたLBA範囲(75%か100%)に限定し、ActiveRange量も制限され
た値(8 GiBまたは16 GiB)を用いる。これは、TRIMコマンドの影響や、実験的にクライアント
ワークロードで観察されたより小さなアクティブデータフットプリントを反映するためである。
9
最後に、テスト結果の評価では、テスト結果の収集に使用されたテストプラットフォーム
(ハードウェア、OS、およびテストソフトウェア)に注目することが重要である。PTSでは、
使用されたテストハードウェア(CPU、RAM)、デバイスバスインタフェース(SAS、SATA、
6Gb/s、3GB/s)、テストシステムメーカー(マザーボードとHBAカードのベンダーまたは
テストシステムハウスのベンダー)、OS、およびテストソフトウェアを開示する必要がある。
PTSには、ハードウェアとソフトウェアのツール要件だけでなく、PTSの策定と検証時の推奨
リファレンステストプラットフォーム(RTP)も記載されている。
これらのさまざまなデータ、テスト設定、および環境は、PTSのエンタープライズ仕様とクラ
イアント仕様で規定されているPTSテストフォーマットの書式で管理される。
7. PTSレポート
PTS 1.0のエンタープライズ仕様(PTS-E)とクライアント仕様(PTS-C)には、必須(required)
テストとオプション(optional)テストのテスト、テストセットアップ条件、およびテストパラ
メータが規定されている。テスト実施企業は、必須テストを実施すること必要であり、加えて
オプションテストを実施することもできる。
PTS-Eでは、書き込み飽和(WSAT)、IOPS、スループット(TP)、および遅延(LAT)の4つ
の必須テストが規定されている。PTS-Cの必須テストには、IOPS、TP、およびLATの3つがある。
テスト実施企業は、オプションテスト(PTS-C用のWSATなど)を追加的に実施するほか、PTS
で規定されている要件のほかに、オプションのテストセットアップ条件やパラメータを使用
することもできる。オプションテストまたはオプション設定はすべて、テスト結果と一緒に
報告すべきである。
一回のテスト実行ごとに1つずつのレポートが必要である。PTSレポートフォーマットを使用
することによって、必須のテスト設定、パラメータ開示、および指標のすべてが揃っている
ことが保証される。すべてのPTSレポートページに、レポートヘッダーを付ける必要があり、
このヘッダーには必須のレポーティング事項、SSDデータ、および管理データが含まれる。
SNIA標準PTSレポートフォーマットは、このように必須事項を漏らさず記載する目的で提供
されており、PTS-E仕様とPTS-C仕様の両方に付録(Annex) Aとして添付されている。
PTSレポートフォーマットは、1枚の概要ページ(Summary Page)とテスト実施ごとの詳細なレ
ポーティングページ(Reporting Page)で構成される。Summary Pageには、個別のReporting
Pageに記載されない、テストセットアップの要約、テストターゲットデバイス(Device Under
Test; DUT)情報、およびその他の必須情報とオプション情報が記載される。
各Reporting Pageには、個々のテスト結果に関係するテストセットアップや条件を含むレポー
トヘッダー(Report Header)を付ける必要がある。レポートSummary Pageと各Report Headerの
例を次節以降に示す。
注:PTS 1.0の修正箇所。本書内のテストとレポートは、PTS 1.0テストを基に、、次のPTS Rev. 1.1で適用
されるSNIA SSS TWG承認済みのいくつかの修正箇所を反映している。
このような修正箇所の例には
以下が含まれる。
・ PTS-E TPテストのブロックサイズは、5ブロックサイズから2つのブロックサイズ(128 KiB、1024 KiB)に削減され、
この2つのブロックサイズはそれぞれ別のテストレポートを伴う別の単独テストで実行する必要がある。
10
注:略語。PTSでは、報告の簡単化のために、ヘッダーとレポートに次のような略語と慣例表記
が使用されている。
・ランダムを意味するRNDが、シーケンシャルを意味するSEQが使用されている。
・読み取り、書き込み、および読み取り/書き込みはそれぞれ意味する、R、W、およびR/Wが
使用されている。
・スループットと遅延をそれぞれ意味するTPとLATが、平均、最大、および最小にはAVE、MAX、
およびMINが使用されている。
注:KiBとKBの違い。PTSで使用および報告されるブロックサイズは、KB(1キロバイトが1000バイ
トの「キロバイト」)ではなく、KiB(1キビバイトが1024バイトの「キビバイト」)単位である。
このKiBの使用は、一般に512バイト(0.5 KiB)と4096バイト(4 KiB)のどちらかである、デバイス
の論理ブロック/セクターサイズに従ったものである。ただし、メーカーが公表しているデバイス
のユーザストレージ容量の多くは、GiB(1ギビバイトが1 073 741 824バイトの「キビバイト」)で
はなく、GB(1ギガバイトが1 000 000 000バイトの「ギガバイト」)単位で報告されていることに
も注意すること。
8. PTSレポート―概要ページとレポートヘッダー
概要レポートページ
「Summary Report Page ‒ Individual Test」という参考例がPTSの付録Aに記載されている。
このSummary Pageは、個々のテスト実施に適用される重要なセットアップパラメータデー
タやテストパラメータデータについて、個々のReport Page Headerでは報告できないような
項目を列挙するのに便利である。
同じく参考用の「Summary Report Page - All Tests」を生成して、関連するPTSに基づいて 実施されたすべてのテストに関する重要なテストセットアップデータと条件をまとめること ができる。「Summary Report Page - All Tests」(MLC-AにおけるWSAT、IOPS、TP、LATテ
スト情報が含まれる)と「Summary Report Page . Individual Test」(この例ではMLC-Aの
IOPSが含まれる)の両方の例を以下に示す。
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:25./2$'
385*(IROORZHGE\61,$376SUHVFULEHG:,3&:'3&
Test Set Up
5281'6
,236/223
:25./2$'
7(67
,236 5(48,5('
5281'6
6(4 . L%
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3&$5
7(67$5
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6(*0(176
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5281'6
,236/223
Select Performance Data
67($'<67$7(
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3XUJH
5281'6
51'.
L% :
,7(0
6:5HY
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'HYLFH,QWHUIDFH
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L% :
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3&$5
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5(3257'$7(
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6(*0(176
* L%
:25./2$'
376 &
376 &
6<626
6:722/
Test Description
:'3&
3&$5
7(67 62)7:$5(
&DO\SVR573
,QWHO+&
: 5$0
3DJH RI
&DO\SVR
6\VWHPV,QF
7(67+$5':$5(3/$7)250
))))
Testing Summary: Tests Run
376 &
5HY 376
6 1,$ 6ROLG6WDWH6WRUDJH3HUIRUPDQFH7HVW6SHFLILFDWLRQ376
&DO\SVR
6\VWHPV,QF
7(67 +$5':$5(3/$7)250
))))
6(5,$/12
),50:$5(5(9
6XPPDU\5HSRUW3DJH,2367HVW
51'.
L% 5
51'.
L% :
51'.
L% 5
6SHFLDO1RWHV
7HVW6SRQVRU
&200(176
,7(0
127$7,21
図5. PTSレポート概要ページ
6SHFLDO1RWHV
&200(176
レポートページヘッダー
PTS Report Headerは、規格であり、PTSレポーティングには不可欠である。PTS Report Header
は、PTSレポートの各ページに掲載され、重要なレポーティング要件や情報データの概要が含ま
れる。ヘッダーには必要不可欠な情報が含まれており、経験豊富なPTSレポートの読者は、デー
タを確認したり、別のSSD PTSレポートと比較したりする場合に、リファレンスとして,あるい
は「チェックリスト」としてヘッダーを参照することになる。ヘッダーの下半分を占める色付き
のボックスに重要な情報が時間を基準として整理されている。
376&
61,$3765(3257+($'(5
0/&$*%
11/14/2011 12:39 AM
Test Run Date:
11/21/2011 04:12 PM
Report Run Date:
Client IOPS (REQUIRED) - Report Page
SNIA SSS TWG: Solid State Storage Performance Test Specification (PTS)
Device Under Test
(DUT)
Serial No.
!""""#""""#$$$$
Firmware Rev
%$"&
Capacity
256 GB
NAND Type
MLC
Device I/F
Test Platform
6 Gb/s SATA
VENDOR:
ABC CO.
SSD MODEL NO:
MLC-A 256 GB
DUT Preparation
Purge
Security Erase
Pre-Conditioning
Workload
Independent
RTP 2.0 CTS 6.5 Workload Dep.
Rev.
PTS-C 1.0
Page
1 of 6
TEST
SPONSOR
Test Loop Parameters
REQUIRED:
Data Pattern
Steady State
Convergence
RND
YES
Rounds
1-5
PC AR
100%
2X SEQ/128KiB
Tester's Choice:
OIO/Thread (QD)
8
AR AMOUNT
16 GiB
Full IOPS Loop
Thread Count (TC)
1
AR Segments
2048
図6. PTS Report Header
一般的な情報
テスト運営に関する一般的な情報(Test Run Date, Report Date, PTS Test Run, PTS revision number)
とSSDテストに関する一般的な情報(SSD Vendor, Test Reported, Test Sponsor)が、ヘッダー
ブロックの上半分にある色の付いていない領域に記載される。ここで読者は、対象SSDのベンダー
(SSD Vendor)、SSDの型番(SSD MODEL NO)、テスト実施企業(test sponsor)とテスト実施日(Test
Run Date)、およびPTSレポートの作成日(Report Date)を特定できる。
テスト環境情報
左端の淡紅色のボックスには、重要なテスト対象デバイス(Device Under Test; DUT)の情報
(Serial Number, Firmware Revision, Capacity(容量), NAND type, Device Interface , Test Platform)
が記載される。ここで読者は、SSDパフォーマンスを制限する可能性がある、DUTのインタフェー
ス帯域幅(この例では6 Gb/s SASまたは3 Gb/s SATA)とテストプラットフォームのハードウェア
とソフトウェアを確認できる。
DUT 準備情報
中央左の淡青色のボックスには、PTSテストのプリコンディショニング体制に関連したDUT
Preparation(DUT準備情報)が記載される。DUT準備では、各テストの開始時点で適用される
パージ(Purge)の種類(ATA用のSecurity Erase、 SCSI用のFormat Unit、またはPTS内で定義され
た要件を満たすその他の独自のパージコマンド)が記載される。パージは、仮想マッピングのた
めのルックアップ・テーブルをリセットし、すべてのNANDセルが「書き込みが発生しなかった
かのような」状態にプログラムされることを保証するために必要である。パージの目的は、次の
テストに備えて書き込み履歴の影響を「リセット」することである。
Preconditioningセクションでは、Workload Independent Preconditioning (WIPC) とWorkload
Dependent Preconditioning (WDPC)が記載される。WIPCはワークロードに依存しないプリコン
ディショニング方法で、この例(2X SEQ/128KiB)ではユーザ容量の2倍量のシーケンシャル
128KiB書き込みである。WDPCはワークロードに依存するプリコンディショニング方法で、この
例(Full IOPS Loop)ではR/W比7:1でブロックサイズの8倍からなるフルIOPSテストループを表して
いる。
注:WIPCは、SEQ 128KiBブロックでユーザ容量の倍の量を書き込むことによって、テストの
ActiveRange内のすべてのLBAを素早く定常状態に収束させる。 WDPCはWIPCの直後(間髪を
入れず)に「テストループデータ」を書き込むことによって、定常状態収束ラウンドを開始し
て、パフォーマンスに対する負荷横断後の回復の影響を回避する(この例ではデータ転送サイ
ズとランダム度合がテストループデータとは異なるプリコンディショニングデータの書き込み)。
テストループパラメータ情報
緑色のTest Loop Parametersボックスには、必要なパラメータ開示(この例ではIOPSテスト
に関する内容)が記載される。Data Pattern(データパターン)は、テストワークロードで用
いるデータ内容のランダムまたは非ランダムを意味する(「Access Pattern」のRandomラ
ンダムまたはシーケンシャルR/W比率、ブロックサイズと混同しないこと)。
注:データ内容パターンのランダムまたは非ランダムは、内容パターンが非ランダムであるデ
ータアクセスのパフォーマンスを最適化可能なSSDコントローラアーキテクチャの場合に重要
な項目である。
ユーザが選択したOIO設定も開示する必要がある。この例ではThread Count(スレッドカウ
ント)が1でOIO/Thread(キューの深さ)が8のため、OIOの合計が8になる。
注:一般的レベルでは、SSDの最大パフォーマンスを測定するために十分な負荷を生成する適切
なOIOカウントを保つ必要がある。例えば、OIOが1の場合(TC=1で QD=1)は、負荷が小さす
ぎてDUTリソースを飽和できず、人工的に低い最大IOPS結果が生成されることになる。一方で
一部のクライアントSSDのように、SSDが大量のスレッドを処理するように設計されていない場
合は、TCが一定の数を超えたときに最大IOPSの低下が見られる。他方で、マルチユーザ環境や
仮想マシン(VM)環境で普及しているエンタープライズドライブの多くは、より高いOIOとTC用
に設計されている。
定常状態情報
右端の淡紫色のSteady State(定常状態)ブロックは、定常状態に到達したかどうか(yes
/no)や測定されたラウンド数(Rounds)などの定常状態情報の概要を表す。ラウンド数は、
最低5ラウンド定常状態要件を満たすか、または全部で25ラウンドであることが規定されて
いる。
注:「ラウンド」とは、例えば、 R/W比率7:1で ブロックサイズの8倍でのIOPSループを1回通過
することを意味する。つまり、1回56分の「ラウンド」期間は1分テストの56回分に相当する。
必要に応じて、ActiveRangeを表すLBAの割合(PTS-Eの場合は100%)やPC AR(ActiveRange)
量(PTS-Cの場合は8 GiBか16 GiB)や,ARセグメント数(PTS-Cの場合は2048)などの追加の
プリコンディショニングパラメータが記載される。
注:PTS IOPS テストを実施するための最小テスト時間は、パージとWIPC(約1時間)と最低5回
の定常状態ラウンド(1ラウンド56分)に必要な時間であり、つまり、単一のIOPSテストの最小
時間は合計で約6時間になる。テストソフトウェアで定常状態がプログラム的に判定されない場
合は、5ラウンドの定常状態ウィンドウを確定するための後処理と手動検査を使用して、最大25
ラウンド(または25時間 + 約1時間のパージ/WIPC)かかる可能性がある。本稿11節の「定常
状態測定ウィンドウ計算」を参照されたい。
ActiveRangeは、テストのActiveRange、つまり、テストループ中に書き込まれるLBA数を示
す。PTSには必須のLBA範囲が規定されているため、テスト実施企業は開示が必要な(「オプ
ションの」設定ボックス内で)さまざまなActiveRange設定を使用して(必須の試験
ActiveRangeに加えて)オプションの追加試験を実施できる。
13
注:PTS-C IOPSでは4回のIOPS実行が必要である。2つのLBA Active Range(75%、100%)と2つの
テストAR量(8 GiB、16 GiB)で構成される2x2行列の各要素である。
9. 定常状態収束
各定常状態テスト(IOPS、TP、およびLAT)はSteady State Convergence(定常状態収束)グラフ
で始まる。PTS-C IOPSページ1に位置する、「Steady State Convergence Plot」(図7)は、測定
された全テストラウンドでのブロックサイズごとの特徴的なさまざまな値を記録したものである。
376&
67($'<67$7(&219(5*(1&(
0/&.*%
図7. 定常状態収束グラフ IOPS
10. 定常状態測定ウィンドウ
PTS定常状態テストレポート(IOPS、TP、およびLAT)には、定常状態である基準に準拠して
いることを示す2つのSteady State Measurement(定常状態測定)グラフが表示される。定常
状態に到達していた場合は、このグラフに、定常状態にあると判定された5ラウンドを含む、
すべてのラウンドに関する記録値(どの指標をプロットするかはPTS試験ごとに異なる可能性
がある)が表示される。
下のPTS-C IOPSの例(図8)では、RND 4KiB IOPSがラウンド14∼18でPTSの定常状態)基準を
満たしている。この情報は、グラフ(最後の5ラウンドで、さまざまな定常状態指標が記録値
と一緒にプロットされている)と「Steady State Convergence - Rounds」の下のヘッダー
(図7の淡紫色のボックス)の両方に反映される。
376&
67($'<67$7(0($685(0(17:,1'2:&$/&8/$7,216
6WHDG\6WDWH0HDVXUHPHQW:LQGRZ
6WHDG\6WDWH0HDVXUHPHQW:LQGRZ&DOFXODWLRQV
Client Steady State Measurement Window
14 1660.435376 1826.478914 1494.391838 1706.071556
(')*!
+,-./0-!
$$"12+,-./0-!
3"12+,-./0-!
18 1660.435376 1826.478914 1494.391838 1614.799196
*456-!
4,500
4,000
3,500
!"#$%
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
&'()*%
図8と図9. 定常状態ウィンドウと測定計算
11. 定常状態測定ウィンドウ計算
PTS定常状態テストレポートには、定常状態領域の詳細と、PTS定常状態基準を満たす5ラウン
ド分の記録値とラウンドの対応も表示される。
上の図9のIOPS定常状態グラフは、ラウンド14∼18にわたって、RND 4KiBの記録値(赤色
のデータマーカーと曲線近似線で示されている)、IOPSラウンド5回の平均(黒色の実線)、
最小二乗法による線形近似(長い黒色の破線)、および平均IOPSの110%と90%における
偏移線(短い黒色の破線)を示している。詳細な定常状態判定パラメータ(Steady State
determination)もこのページの下部に列挙されている。
TPとLATの関係グラフでは、定常状態測定ウィンドウ内の5ラウンド分の記録値(MB/s単位
のTPとmSec単位の遅延―ここで、「mSec」はミリ秒を表す)がプロットされる。
12. テストデータ結果のレポーティング―表、グラフ、図
IOPS、TP、およびLATに関する定常状態テストレポートでは、詳細なSteady State Convergence
(定常状態収束)およびMeasurement(測定)グラフの後ろに各テストごとのさまざまなデータ表、
グラフ、および図が続く。以降の各テストセクションごとに詳細な例を示す。これらの図は、
SNIA PTSレポートページから抜粋し、必要に応じて、ヘッダーを削除して見やすくしたもので
ある。
PTS-E WSAT
書き込み飽和(WSAT)テストの目的は、経過時間あるいは書き込まれたトータルGiB(Total
GiB Written; TGBW)に対する、連続したRND 4KiB 書き込みパフォーマンスの変移を示すこと
である。最初のWSATグラフはIOPS(y軸、線形均等目盛り)と時間(x軸、線形目盛り)の関
係を示しているのに対して、以降のグラフはIOPSとTGBW(x軸、線形目盛り)の関係を示し
ている。WSATではRND 4KiB書き込みは、開封後未使用(FOB)状態から24時間経過もしくは
ユーザ容量の4倍書き込みのどちらかが達成されてから実行するように規定されている。この
テストは、まずパージを行い、続いて連続RND 4KiB書き込みを行う。
注:テスト時間をより長くとることで、比較しやすくなったり、グラフが見やすくなったりする場合
がある。
376(
:6$73/276*%6/&
,236Y7,0(
51'.L%:
,236
3($.)2%51'.L%:
7LPHWR6WHDG\6WDWH
,236Y7*%:
0LQXWHV
67($'<67$7(51'.L%:
7*%:WR6WHDG\6WDWH
*%
図10. WSATグラフ(時間またはGByte換算のトータル書き込み量TGBWとの関係)
上の図10は、FOB状態を起点として、Time(経過時間, 左のパネル)とTGBW(右のパネル)に
対するIOPSの変移を示している。パージ直後のTime = 0またはTGBW = 0の付近で、RND 4KiB
パフォーマンスが一瞬だけ高いIOPS(56,000 IOPS程度)を示している。その後、パフォーマン
スは、遷移状態の領域を経て、IOPSが19,000近辺でほとんど時間不変になる定常状態に到達す
る。このドライブのIOPSはTGBWに関しては、約500 GBで定常状態に到達するが、200 GB未満
では高いパフォーマンス領域が続く。
これらのグラフを使用すれば、さまざまなベンダーが主張する「最大IOPS」の設定と持続時間
を確認できる。ユーザはまた、謳われている「最大IOPS」が定常状態パフォーマンスとどう対
応するか確認できる。
注:このWSATテストの場合、テスト手順の規定は、24時間連続で実行するか、ユーザ容量の4倍
に到達するまでかのどちらかである。このテストでは「定常状態」判定が行われない。定常状態
は、IOPSがほとんど時間不変になる場所を調査することによって判定される。
注:このドライブは1.9 TB分テストされている。これは、別の400GBの容量を持つSSDと比較する
ためで、400GBの4倍である1.6 TBを超えるサイズが選択された。
PTS-Eの IOPSとPTS-Cの IOPS
IOPSテストでは、R/W比率0/100∼100/0の範囲で、ブロックサイズ(BS) 0.5 KiB∼1024 KiBに
おけるさまざまなランダムパフォーマンスを測定する。図11はIOPSテストのページ4に記載
されるが、測定されたすべてのR/WとBSの組み合わせを表にしたものである。この表から、
読者は、興味のあるR/WとBSの組み合わせを簡単に選択して確認できる。
376&
,2367DEOH5:0L[[%6
0/&$*%
11/14/2011 12:39 AM
Test Run Date:
11/21/2011 04:12 PM
Report Run Date:
Client IOPS (REQUIRED) - Report Page
SNIA SSS TWG: Solid State Storage Performance Test Specification (PTS)
Device Under Test
(DUT)
Serial No.
!""""#""""#$$$$
Firmware Rev
%$"&
Capacity
256 GB
NAND Type
MLC
Security Erase
Pre-Conditioning
Workload
Independent
4 of 6
TEST
SPONSOR
Full IOPS Loop
Steady State
REQUIRED:
Convergence
RND
Data Pattern
2X SEQ/128KiB
RTP 2.0 CTS 6.5 Workload Dep.
PTS-C 1.0
Test Loop Parameters
DUT Preparation
Purge
6 Gb/s SATA
Device I/F
Test Platform
SSD MODEL NO:
MLC-A 256 GB
VENDOR:
ABC CO.
Rev.
Page
Tester's Choice:
YES
Rounds
1-5
PC AR
100%
OIO/Thread (QD)
8
AR AMOUNT
16 GiB
Thread Count (TC)
1
AR Segments
2048
Read / Write Mix %
Block Size
(KiB)
0/100
5/95
65/35
50/50
35/65
95/5
100/0
0.5
1,122.3
1,162.2
1,654.6
1,965.6
2,717.7
11,970.0
4
3,147.0
2,896.6
3,044.4
3,454.4
3,779.3
13,005.8
29,876.3
8
1,584.9
1,589.7
2,055.0
2,238.9
2,898.1
11,568.2
21,723.1
16
765.8
786.3
1,028.1
1,272.6
1,604.9
6,208.3
12,482.5
32
392.7
401.0
525.8
652.7
963.8
4,129.6
7,011.6
64
196.4
205.9
291.3
352.3
565.4
2,372.7
3,791.5
128
92.5
97.1
139.9
185.4
377.9
1,410.2
2,015.3
1024
16.4
16.5
23.3
27.3
90.8
191.4
266.7
29,860.1
図11. IOPS表
PTS-E IOPSとPTS-C IOPSでは設定が異なる。どのテスト設定が適用されたかを確認するために、
Report Headerを参照することが重要である。PTS-E IOPSテストでは、ユーザ容量の100%
(100% ActiveRange)を使用する必要がある。つまり、WIPCとWDPCの両方でドライブの使
用可能な全ユーザ容量が使用される。PTS-C IOPSテストでは、ActiveRange設定(100%または
75%)とActiveRange量(8 GiBまたは16 GiB)に関する追加情報と、使用されるセグメント数
(2048)が必要である。
17
376&
,2363ORWV*%0/&
',236%6[5:0,;
67($'<
67$7(,236
',236%$53/27%6[5:0,;
51'.L%5
51'.L%5:
51'.L%:
51'.L%5:
図12. IOPS 2Dグラフと3D棒グラフ
PTS-EのTPとPTS-Cの TP
スループット(TP)テストの目的は、定常状態での大きなサイズのブロックでのSEQ IOをMB/sで
測定し示すことである。PTS-E のTPテストでは2つのブロックサイズ(128 KiBと1024 KiB)が必要
なのに対して、PTS-CのTPテストで必要なのは1024 KiBだけである。PTS-E TPでは、2つのブロック
サイズに対する計2種類のTPレポートが生成される。下の図13はスループット表で、図14はスルー
プット2D棒グラフである。
376(
7+528*+3877DEOHV*%6/&
6(4.L%
12/03/2011 04:32 PM
Test Run Date:
6(4.L%
12/04/2011 10:04 AM
Report Run Date:
Enterprise Throughput Test (REQUIRED) - Report Page
SNIA SSS TWG: Solid State Storage Performance Test Specification (PTS)
Device Under Test
(DUT)
VENDOR:
ABC CO.
DUT Preparation
Serial No.
Firmware Rev
BFOA
Capacity
100 GB
NAND Type
SLC
Device I/F
6 Gb/s SATA
Test Platform
REQUIRED:
Workload
Independent
RTP 2.0 CTS 6.5 Workload Dep.
145 409
0/10 100/0
2X SEQ/128KiB
Block Size
(KiB)
SNIA SSS TWG: Solid State Storage Performance Test Specification (PTS)
Device Under Test
(DUT)
YES
Capacity
100 GB
100%
NAND Type
SLC
6 Gb/s SATA
AR AMOUNT
100%
Device I/F
Thread Count (TC)
2
AR Segments
N/A
Test Platform
Security Erase
Purge
Workload
Independent
RTP 2.0 CTS 6.5 Workload Dep.
2X SEQ/128KiB
SEQ 1024KiB
Block Size
(KiB)
100/0
409.3
1024
Rev.
PTS-E 1.0
Page
4 of 5
TEST
SPONSOR
Test Loop Parameters
Steady State
REQUIRED:
Pre-Conditioning
157 514
0/10 100/0
Read / Write Mix %
SSD MODEL NO:
SLC-A 100 GB
DUT Preparation
BFOA
4-8
PC AR
16
144.5
VENDOR:
ABC CO.
Serial No.
Firmware Rev
Rounds
OIO/Thread (QD)
0/100
128
7KURXJKSXW
0%6HF
RND
Tester's Choice:
SEQ 128KiB
4 of 5
Convergence
Data Pattern
Pre-Conditioning
PTS-E 1.0
Steady State
Test Loop Parameters
Security Erase
Purge
12/04/2011 10:03 AM
Report Run Date:
Enterprise Throughput Test (REQUIRED) - Report Page
Rev.
Page
TEST
SPONSOR
SSD MODEL NO:
SLC-A 100 GB
12/04/2011 08:21 AM
Test Run Date:
Convergence
Data Pattern
RND
Tester's Choice:
YES
Rounds
4-8
PC AR
100%
OIO/Thread (QD)
16
AR AMOUNT
100%
Thread Count (TC)
2
AR Segments
N/A
Read / Write Mix %
0/100
157.5
100/0
514.3
6(4.L%:
6(4.L%5
6(4.L%:
6(4.L%5
図13. PTS - E TP表
注:PTS-CのTPテストでは、1024 KiBの単一ブロックサイズで、ActiveRangeが75%と100%、それぞれの
ActiveRange量が8 GiBと16 GiBの全部で4回のテストを実施する必要がある。PTS-E TP試験では、128 KiB
と1024 KiBの2つのブロックサイズに対してActiveRangeが100%の計2回のテストを実施する必要がある。
18
376(
7+528*+3873ORWV*%6/&
6(4.L%
7KURXJKSXW
0%6HF
6(4.L%
6(4.L%:
6(4.L%5
6(4.L%:
6(4.L%5
図14. PTS-E TP 2Dグラフ
PTS-EのLATとPTS-Cの LAT
LATテストは、合計実行中IO(OIO)設定が1の場合のMAX応答時間とAVE応答時間を報告する。
定常状態での結果はmSec単位で測定される。図15のPTS-C Latencyでは、ラウンド4∼8のSS ウィンドウを含む8ラウンド後に定常状態に到達している
376&
/$7(1&<7DEOH5:0L[[%6
0/&$*%
図15. MLC-A LAT表
図16の3D棒グラフは、3種のブロックサイズと3種のR/W比率それぞれにおけるAVE LATと
MAX LATを示している。PTS-CのLATでは、8 GiBと16 GiBのActiveRange量を使用した、
それぞれ75%と100%のActiveRangeに関する別々のレポートが必要である。PTS-EのLATで
は100%のActiveRange量が使用される。下の図16には、0/100、65/35、および100/0の3種
のR/W比率を使用した時の3種のブロックサイズ0.5 KiB、4 KiB、および8 KiBそれぞれにおけ
るPTS-C MAX遅延とAVE遅延を示す。
376&
/$7(1&<3ORWV*%0/&
$9(/$7(1&<
5HVSRQVH7LPH
P6HF
0$;/$7(1&<
51'.L%
:
51'.L%
5:
51'.L%
5
51'.L%
:
51'.L%
5:
51'.L%
5
図16. MLC-A LAT(AVEとMAX)
13. PTSに基づくSSDパフォーマンスの比較
PTSレポートフォーマットを使用すれば、パフォーマンスの比較が簡単にできる。一度WSAT、
IOPS、TP、およびLATに関するPTSレポートが生成されれば、読者はSSDのパフォーマンス特性
を比較できる。同じSSDをさまざまな条件でテストして比較することも、複数のSSDを比較する
こともPTSテストレポートを評価することによって可能である。
この節では、読者またはテスト実施企業がPTSレポートフォーマットの特徴を利用して複数のド
ライブに対するテスト結果(複数のドライブで生成されたレポートを使用)または同じドライブ
に対するテスト結果(単一のドライブ上での複数のテスト条件を使用)を効果的に比較するいく
つかの例を紹介する。
定常状態収束 −単一ドライブの状態別 IOPS比較
IOPSレポート内のSteady State Convergence(定常状態収束)グラフは、数多くの重要なドライ
ブ特性が視覚化されるため、読者にとって有益である。
1. シーケンシャルにしか書き込まれていないドライブから、読者は、よりランダムなデータが書き込
まれた場合にドライブのIOPSがどのように変化するかを確認できる。
2. 測定に利用したブロックサイズ(RND 4KiBに関する測定を含む)がすべて表示されるため、読者は、
一見すれば、すべてのブロックサイズが「定常状態」に向かって変化しているかどうかを確認できる。
3. 測定値に焦点を当てることによって、読者は、測定値がラウンド間で変動しているかどうかや
記録値が緩やかな増加または減少傾向を示しているかどうかなどの、定常状態での結果の品質 を確認できる。
376&
67($'<67$7(&219(5*(1&(0/&,236
0/&$*%
0/&%*%
図17. 定常状態収束グラフ - MLC IOPS
一般的に、SLC SSDは、より速く、より安定したパフォーマンスを示す傾向があり、Steady
State Convergenceグラフの始まりと終わりでパフォーマンスの差がほとんどなく定常状態
に到達するまでのラウンド数が少ない。
上の図17は、2つのクライアントクラスMLCドライブに関するSteady State Convergenceグラ
フである。MLC-Aは、最大IOPSと定常状態IOPSの差がほとんどなく、ラウンド1からラウン
ド5の間で定常状態に到達している。MLC-Bは、小さなブロックサイズでの最大IOPSと定常
状態IOPSの差が比較的大きく、ラウンド9からラウンド13の間で定常状態に到達している。
対照的に、下図のエンタープライズクラスSLCドライブ(図18)は、最大IOPSと定常状態IOPS
の差が小さく、IOPSパフォーマンス全体が非常に高いことを示している。
376(
67($'<67$7(&219(5*(1&(6/&,236
6/&$*%
6/&%*%
図18. 定常状態収束グラフ - SLC IOPS
定常状態収束 − 単一ドライブの状態別AVE LAT W比較
Latency SS Convergence(定常状態収束での遅延の変移)グラフは、ラウンド別のAVE遅延と
MAX遅延の両方(mSec単位)を示す。AVE Latencyグラフは、すべてのブロックサイズの全般
的な遅延傾向を一目で確認できる点で、IOPS Steady State Convergenceグラフに似ている。
下の図19は、2つのクライアントクラスMLCドライブに関するそれぞれの(遅延)SS Convergence
グラフを示している。2つのドライブの挙動が大きく異なっていることに注目されたい。
376&
67($'<67$7(&219(5*(1&(/$7(1&<$9(:
0/&$*%
0/&%*%
図19. 定常状態収束グラフ ‒ MLCの AVE遅延
最大遅延において突発的なスパイクを引き起こす可能性があるSSD内のプロセスの存在を見つ
けるのにMAX Latencyグラフは便利である。これは、AVE遅延を調べるだけでは確認できない
ことがある。下の図20は、2つのクライアントクラスMLCドライブに関するこのような例を示
している。読者は、応答時間(y軸)が先ほどのAVE遅延に比べて長いことに注意すべきである。
376&
67($'<67$7(&219(5*(1&(/$7(1&<0$;:
0/&$*%
0/&%*%
図20. 定常状態収束グラフ - MLC MAX遅延
定常状態収束 - 単一ドライブのPTS-E 128K TP W比較
TPに対するSS Convergenceグラフは、すべてのラウンドのSEQ TPをMB/s単位で記録したもの
である。PTS-CとPTS-Eの両方に関するTPテストのそれぞれが、単一のブロックサイズを使用
して行われ、FOB状態から定常状態まで連続的にデバイスに適用される。
376(
67($'<67$7(&219(5*(1&(73.L%:
6/&$*%
6/&%*%
Enterprise 128KiB Throughput Test - SS Convergence - Write
Enterprise 128KiB Throughput Test - SS Convergence - Write
1
346.22
2
346.16
3
346.61
190.53
4
338.03
143.62
5
296.00
6
143.81
6
285.18
7
144.18
7
252.63
8
147.67
8
268.06
9
143.15
9
235.99
10
243.71
11
232.93
12
258.44
1
251.85
2
249.07
3
250.26
4
5
%()!*+,-.%,
300
200
350
300
!"#$%&"'%()*+,-./)
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250
150
100
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400
250
200
150
100
50
50
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
0
1
2
3
4
5
6
0$%12)
7
8
9
10
11
12
13
0$%12)
図21. 定常状態収束グラフ - SLC 128KiBスループット
PTS-Eでは、128 KiBと1024 KiBの両方を使用して、2つの独立したTPテストを実施する必要が
ある。PTS-Cテストでは、75%と100%のActiveRange設定のそれぞれにおいてActiveRange量
8 GiBと16 GiBのとなる2x2行列の要素を実行する必要がある。図21では、SLC-Aが、ラウンド
1∼3でピークTPを、ラウンド4∼8でSSへの遷移を示しているのに対して、SLC-Bは、ラウンド
1∼3で同様のピークTPを示しているが、SSへの遷移はより緩やかでラウンド8∼12でSSに遷移
している。
定常状態測定ウィンドウによる- IOPS比較
Steady State(SS) Measurement Windowは、IOPSと定常状態を判定するための情報の詳細を
図示したものである。読者は、PTS定常状態基準に従って定常状態に到達しているかどうか
を確認できる。また、線形近似された線によって、傾斜がIOPSの揺らぎによるものか、IOPS
の傾向によるものかを確認することもできる。
376&
67($'<67$7(:,1'2:,236
0/&$*%
0/&%*%
図22. 定常状態測定ウィンドウ - MLC IOPS
わかりやすくするために最大データ偏移線と最小データ偏移線を点線で示す。定常状態基準
ではデータ偏移がこの+/−10%の範囲に収まっていることが要求される。図22では、MLC-A
のラウンド4のデータ点が−10%の最小データ偏移線を下回っているが、測定値平均の+/−10
%で定義された範囲には収まっている。図23にSLCドライブがいかに性能的に安定しているか
示す。
376(
67($'<67$7(:,1'2:,236
6/&$*%
6/&%*%
図23. 定常状態測定ウィンドウ - SLC IOPS
WSAT による単一SSD比較
WSATレポートを使用すれば、SSD書き込みパフォーマンスを簡単に評価できる。WSATでは、
最初のFOB状態のピークパフォーマンスと、時間(Time)あるいは書き込まれたトータルGiB
(TGBW)に応じて変化するIOPS挙動が示される。読者は、FOB状態から定常状態IOPSへの遷移、
ピークFOB状態パフォーマンスの期間の長さと書き込まれたトータルGiBの関係、定常状態
IOPSにつながる遷移ゾーンの傾きと長さ、および連続する小さなブロックRND 4KiB書き込み に対する全体的な性能挙動応答を確認できる。WSATグラフはドライブ間や連続ドライブリリ
ース中によく見られるデバイス固有の特徴を示す。
376&
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,236Y7,0(
51'.L%:
,236
)2%,236
7LPHWR6WHDG\6WDWH
,236Y7*%:
6WHDG\6WDWH,236
0LQXWHV
7*%:WR6WHDG\6WDWH
*%
図24. MLC-Bに対するWSAT - 時間とTGBW
注:規定された24時間以内に、テストSSDがユーザ容量の4倍を書き込みきれない場合がある
(RND 4KiB W速度が遅いため)。一部のWSATテストは、さまざまなSSD WSAT特性の比較を
容易にするために、遷移状態のIO速度や期間に応じて、必須である24時間またはユーザ容量
の4倍よりも長く実施される。
376(
:6$73/276*%6/&
,236Y7,0(
51'.L%:
,236
,236Y7*%:
)2%,236
7LPHWR6WHDG\6WDWH
6WHDG\6WDWH,236
0LQXWHV
7*%:WR6WHDG\6WDWH
*%
図25. SLC-BにおけるWSAT - 時間とTGBW
WSAT による複数SSDの比較
WSATグラフを使用すれば、最大IOPS測定値とベンダーから得られた指標を比較して、最大
IOPSなどの持続可能時間、定常状態に到達する速度、および定常状態での実際のIOPSパフォ
ーマンスレベルを簡単に把握できる。
376&
:6$77*%:&203$5,6210/&
0/&$*%
)2%
51'.L%:
7,0(WR
6WHDG\6WDWH
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6WHDG\6WDWH
51'.L%:
0LQXWHV
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6WHDG\6WDWH
*%
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51'.L%:
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6WHDG\6WDWH
6WHDG\6WDWH
51'.L%:
0LQXWHV
7*%:WR
6WHDG\6WDWH
*%
図26. WSATのTGBWを利用したMLC比較
図26を見ると、SSD MLC-Aは200 GBを超える書き込み時においても最大パフォーマンスを維持
できるが、MLC-Bの最大パフォーマンスは数十GB書き込み時までしか維持されない。SS IOPS
(定常状態のIOPS)の違いも著しい。図27を見ると、SLCはいずれも定常状態において IOPSは
高く、FOB状態のIOPSからSS IOPSへの減少幅も小さい。また遷移状態が短い。
376(
:6$77*%:&203$5,6216/&
6/&$*%
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51'.L%:
7,0(WR
6WHDG\6WDWH
6/&%*%
6WHDG\6WDWH
51'.L%:
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7*%:WR
6WHDG\6WDWH
*%
7,0(WR
6WHDG\6WDWH
6WHDG\6WDWH
51'.L%:
0LQXWHV
7*%:WR
6WHDG\6WDWH
*%
図27. WSATのTGBWによるSLCの比較
注:テスト実施企業は、PTSグラフを作り直して、興味深いある特定の指標を反映したり、比較する
データを表示したり、グラフを見やすくしたりすることができる。例えば、正規化された容量に対する
WSAT TGBWを図示することができる。この場合は、x軸が正規化され、SSDのユーザ容量の倍数として
表現される。
IOPSによる複数 SSDの比較
SS IOPSレポートには、さまざまなブロックサイズ(BS)とR/W比率の組み合わせからからなる
56要素の行列が示され、各要素の値はRND IOの測定値である。PTS-C IOPS表を使用すれば、
読者は、興味のあるBS/R/W比率を簡単に選択したり、OIO設定、定常状態までのプリコンディ
ショニングラウンド、およびデータパターンを参照したりできる。
376&
,236&203$5,6210/&
0/&$*%
0/&%*%
図28. IOPS比較 - MLC
IOPSの 3D棒グラフは56要素のIOPS BS 対 R/W比率行列を3次元で表現したものであり、
読者は、大きなサイズのブロックRND IOPSと小さなサイズのブロックRND IOPSでの全体
的なSSD IOPSパフォーマンスを画面上で確認できる。IOPS 3D棒グラフでは、y軸がIOPS、
x軸がブロックサイズ、z軸がR/W比率である。
376(
,236&203$5,6216/&
6/&$*%
6/&%*%
図29. IOPS比較 - SLC
注:3D IOPSグラフのR/W比率軸は、R/Wの割合をカテゴリとして表している。R/W比率間の距離
は読み取り%と書き込み%の値に関係なく一定である。したがって、特定のデータ点間の結果を
視覚的に補間する場合は注意が必要である。
注目すべき領域は左手前の小さなサイズのブロックRND W IOPSである。ほとんどのSSDで、
この領域において主な違いが見られる。グラフを比較する場合は、IOPSスケールにも注目
する必要がある。一般的に、RとWのパフォーマンスがほとんど変わらないドライブの場合 は、「深さまたはz」方向に同程度の高さの棒が表示される。図29の3Dグラフを左から右に
眺めると、「滝」のような特徴が観察できる。
TP による複数 SSDの比較
TP-Cレポートには大きなサイズのブロックSEQスループットの比較が示されている。PTSの
TP表データは大きなサイズのブロックのRとWを比較したものである。同じテスト条件と
2種類のドライブからの結果を使用すれば、読者はドライブパフォーマンスを簡単に比較
できる。図30に、2つのクライアントクラスMLCドライブの1024 KiBブロックにおける
PTS-C TPを示す。
376&
7+528*+387&203$5,6216(4.L%
0/&$*%
0/&%*%
図30. スループット比較 - SEQ 1024 KiB MLC
PTS-C TPでは、100% Rと100% WのSEQ 1024KiBがMB/s単位で報告される。読者やテスト実施
企業は、PTSレポートヘッダーに記載されたシステムインタフェースとデバイスインタフェース
に注意して、結果がハードウェアまたはインタフェースの速度の影響を受けていないかどうか
を判断する必要がある。
376(
7+528*+387&203$5,6216(4.L%
6/&$*%
6/&%*%
図31. スループット比較 - SEQ 1024 KiB SLC
PTS-E TPでは、100% Rと100% Wそれぞれにおいて、SEQ 128KiBとSEQ 1024KiBの両方を使用
して2つの異なるTPを実行する必要がある。SEQ 1024KiB TPテストのみのPTS-E TP結果の例を
上の図31に示す。テスト実施企業は、必要に応じて、結果を1つの図で表現するためにグラフ
を合成することができる。
LAT AVEによる複数SSD比較
Latencyレポートには、3つの必須ブロックサイズに対するAVE遅延とMAX遅延の両方が示される。
読者は、遅延の表データと3Dグラフのどちらかを参照できる。ここでは、AVE遅延グラフを示す。
図で、データ系列のラベルは、本ホワイトペーパーのプレゼンテーション用として追加したもの
である。
376&
/$7(1&<&203$5,621$9(/DWHQF\
0/&$*%
0/&%*%
図32. 遅延比較 - MLC AVE LAT
Average Latency(平均遅延)は、トータルOIOが1のときに1分間の測定期間内に完了したすべて
のIOの平均応答時間を示している。これは、トータルOIO = 1の場合のIOPSの逆数になっている
ことに注意すること。
376(
/$7(1&<&203$5,621$9(/DWHQF\
6/&$*%
6/&%*%
図33. 遅延比較 - SLC AVE LAT
注:概して、SLCドライブで観察される単一OIO IOPSは高いため、それに応じて、SLC AVE遅延の
方がMLC AVE遅延より小さくなる。この場合も、読者は、グラフを比較するときに応答時間のy軸
スケールに注目する必要がある。
LAT MAXによる複数SSD比較
Maximum Latency(最大遅延)は、トータルOIOが1の時の1分間の測定期間におけるすべて
のIOの最大応答時間を示している。
376&
/$7(1&<&203$5,6210$;/DWHQF\
0/&$*%
0/&%*%
図34. 遅延比較 - MLC MAX LAT
MAX遅延応答時間が極端に長い場合は、ドライブファームウェアの、IOを連続して処理する
能力に問題があることを示している可能性がある。例えば、連続的な負荷がかかり続ける環境
下でコントローラがバックグラウンドタスクをスケジューリングするのが不得手である、など
が考えられる。
376(
/$7(1&<&203$5,621$9(/DWHQF\
6/&$*%
6/&%*%
図35. 遅延比較 - SLC MAX LAT
現行のPTS遅延テストで提供されるAVE Latency情報とMAX Latency情報は、観察期間における
AVEおよびMAX遅延のある単一の側面の値のみを示していることに注意すること。テスト実施
企業は、測定期間におけるそれぞれ個別のIO応答時間の頻度や分散を観察したいと思うことが
ある。例えば、ドライブのRND 4KiB W遅延が5 mSecのときに、トータルIOが5 mSec未満の割
合を知りたい場合である。
そういった頻度や分散のためのテストや、あるいはその他のテストも、SNIA SSS技術作業部会
(TWG)で検討中であり、今後のバージョンのPTS内でテストとして公表される可能性がある。
14. SSDテストのベストプラクティス
NANDフラッシュをベースとしたソリッドステートストレージパフォーマンスのテストと
測定は、テスト環境、テスト負荷、およびテスト方法に大きく左右される。関連性の高い、
正確で、信頼できる、再現可能なパフォーマンステスト結果を得るために、読者/テスト
実施企業は「適切なテスト手順」と「SSDテストのベストプラクティス」を取り入れるよ
うに心掛けるべきである。
それぞれのテストプラクティスの有効性はテスト計画の目標や目的によって異なるが、以
下のSSDテストベストプラクティスはSSD固有のテストだけでなく基本的なテスト手順にも
活用できる。
基本的なテスト手順
テストハードウェアとオペレーティングシステム(OS)。 テスト環境がSSDパフォーマンスの
ボトルネックになったり、テスト負荷や測定する応答動作を妨害したりしないようにする
ために、テストハードウェアとテストソフトウェアは慎重に選択する必要がある。
・ハードウェアボトルネックは、SSDデバイスインタフェース(SAS / SATA HBA接続など)から
マザーボードデータバスレーン、RAM、およびCPUまでのデータ/制御パスのどこかで発生す
る可能性がある。
・ソフトウェアの影響には、OS、ソフトウェアアプリケーション、API、およびデバイスドライ
バで発生するバックグラウンドプロセスが含まれる。できるだけ、OSバックグラウンドタスク
やアプリケーションソフトウェアを停止させ、一度に1つのSSDだけをテストする必要がある。
・テストソフトウェアツールもSSDパフォーマンス測定に欠かせないものである。テストツールのオーバーヘッ
ドと負荷ジェネレータの影響を慎重に把握する必要がある。
標準化されたテストプラットフォーム。 テストの実施と測定に対するハードウェア環境とソフ
トウェア環境の影響を評価および管理する場合、テスト実施企業は、同じテスト環境(ハ
ードウェア、OS、および試験ツール)を使用してテスト結果を収集および比較するように
心掛ける必要がある。同一または同等のテストプラットフォームを使用することによって、 テスト環境の影響を複数のテスト間全体で標準化できる。
キャリブレーション。テスト環境を選択したら、テスト測定の再現性と信頼性を保証するために、
既知のデバイス上で同じテスト負荷/ワークロードを走らせたり、「鉄板の」リファレンス
テストSSDとテスト手順を使用するなどの「キャリブレーション」行為をテスト手順に対し
て定期的に行うのがよい。
テストプラン。優れたテストプランには、テスト目標、テスト方法、および選りすぐりのテスト群
から構成される。テストプランには、テストの目標に対する妥当性の立証(後述する「テス
ト負荷ワークロード」を参照)、テストベースラインの定義、ならびに採用されたテスト手
順、テストサンプル数、テスト回数、および統計分析の指示が含まれる。
SSD固有のテスト
パージ。すべてのSSDテストはデバイスパージから始める必要がある。本書では、書き込み
履歴とワークロードがSSDパフォーマンスに大きく影響することを明らかにした。テスト実
施企業は、ドライブが確実に「一度も書き込みが行われていない」状態になるようにするた
めの適切なパージ(SATA用のSecurity Erase、SCSI用のFormat Unit、またはその他のドライ
ブコントローラベンダーが指定した独自のコマンド)の使用がテストプランで指示されるこ
とを保証すべきである。
プリコンディショニング。SSDパフォーマンスに対するプリコンディショニングの影響は、本書や
その他の資料で十分に立証されている。プリコンディショニング体制が明確に定義されてお
り、それぞれのSSDパフォーマンステストの目的(後述する「ブロックサイズシーケンス処理」
などを参照)に適っていることを保証すべきである。
定常状態。 ある同じSSDが書き込み履歴、ワークロード、および定常状態の定義に応じてさまざま
な「定常状態」を示すことがわかっている。また、SSDは、RND書き込み飽和やSEQ書き込み
飽和などの振る舞いにより,デバイスが比較的安定した「定常状態」に到達するまでパフォー
マンスが低下し続けることもわかっている。プリコンディショニングと定常状態の定義はとも
に、すべてのSSDパフォーマンス指標と測定における重要な決定要素である。
負荷発生力。 あるワークロード(RND 4KiB書き込みやその他の特定のブロックサイズと読み
取り/書き込みミックスのアクセスパターンなど)に基づくSSDパフォーマンスは、ホストテ
ストシステムの駆動力(OIOで測定される)に応じて変化する可能性がある。テスト実施企業
はそれぞれのテストワークロードアクセスパターンに最適なOIO設定が見つかるまで、時間を
かけて、テストプラットフォームとターゲットSSDを対応付けるべきである。
ブロックサイズシーケンス処理。負荷横断後の回復の分析(セクション2を参照)で、SSDパフ
ォーマンスに対するブロックサイズシーケンスの影響を示した。プリコンディショニングやワ
ークロード負荷が原因で、不要なまたは予想外のブロックサイズシーケンス負荷横断後の回復
の影響がSSDパフォーマンスに及ぶことがないようにすべきである。
テスト負荷ワークロード。 人工的なデバイスレベルテストを使用すれば、テスト実施企業は再現可能
で信頼できるテスト測定を実現できるが、所定のテスト負荷ワークロードとテスト実施企業が
ターゲットとするユーザのワークロード特性が矛盾しないことを保証すべきである。
SSDテストのベストプラクティス
標準化された方法。標準化されたテスト方法を採用することにより、テスト実施企業は、業界
のTGWやその他の学術団体が行ったSSDテストの調査や開発から恩恵を受けることができる。
リファレンステストプラットフォーム(RTP)。リファレンステストプラットフォーム(SNIA
SSS PTSで規定されている)を使用すれば、テスト環境の標準化が可能になるだけでなく、反復
可能/再現可能で比較が容易なSSDパフォーマンステスト結果が保証される。
標準化された試験。 標準化されたテスト(RTPとPTSの組み合わせ)を使用することにより、
SSDデバイス間のパフォーマンスの比較が容易になる。
標準化されたレポーティング。テスト環境、テスト設定、およびテスト測定結果を標準化され
たフォーマットで報告することが重要である。これにより、テストが定められた標準に準拠し
て実施されることが保証され、テストセットアップと、特定のテスト測定結果に関連付けられ
た個々のテストの開示が保証される。
SNIA SSS PTSの使用。 SNIA SSS PTSなどの業界標準のSSDパフォーマンステスト方法を使用す
ることにより、テスト実施企業や読者は、NANDフラッシュベースのSSDパフォーマンスを把握
および評価するために実施されたさまざまな業界団体の研究から恩恵を受けることができる。
テスト実施企業、エンドユーザ、およびSSDベンダーは、SSDデバイスパフォーマンスの比較や
把握が容易なSSDパフォーマンステストの統一された規定から恩恵を受けることができる。
15. まとめ
本書の主な目的は、読者によるSNIA SSS PTSとSNIA標準レポーティングフォーマットテスト
レポートを使用したSSDパフォーマンスの評価と比較を支援することである。
USBメモリや音楽プレーヤーなど日常生活にその活路を見出したNANDストレージは技術と
して成熟しはじめているが、現在は伝統的なストレージIOスタックに進出し、これまでに
ないストレージパフォーマンスを実現しつつある。
NANDベースのSSDは「当座の代用品」というイメージが強いが、そのパフォーマンス特性
は従来の回転ドライブと大きく異なる。したがって、正確で客観的なパフォーマンス比較の
ためには、新しいパフォーマンステストの慣行、方法論、指標、およびデータ統合とプレゼ
ンテーションのテクニックが必要である。
第1に、デバイスのパフォーマンスが従来のストレージよりも大幅に向上しているため、テ
スト環境自体がテスト結果に悪影響を及ぼす可能性がある。スループット(MB/s)、1秒あ
たりの入出力操作数(IOP)、遅延(mSec)のどれを測定しても、回転ドライブとの差が桁
違いになる可能性がある。そのため、テストプラットフォーム自体に新しいレベルのパフォ
ーマンスと堅牢さが必要になる。このため、システムのタイプ、HBA、オペレーティングシ
ステム、および刺激発生器や測定ツールに対する要件が増す。
第2に、NANDベースのSSDは「書き込み履歴」の影響を受けやすい。ドライブがそれ以前に
処理していた負荷は、テスト時のIO要求をはるかに上回るほどの大きな影響をそのパフォー
マンスに及ぼす可能性がある。この特性により、真の定常状態パフォーマンス測定を可能に
する極めて正確なプリコンディショニングが必要になる。それ以外にも、IOアライメント調
整ミスなどのや、負荷横断特性を評価する必要性など、間隔以外での安定を可能にしなけれ
ばならない発狂しそうな影響を生む可能性がある。
最後に、エンドユーザのワークロードは、SSDが設置された環境によって異なる。そのため、
PTSがあれば、さまざまなワークロードと負荷発生力に基づくSSDパフォーマンスの比較が
容易になる。IOプロファイルの属性を理解しているエンドユーザは、関連性の低いテスト
結果を無視し、自分の環境を最も良く表しているテスト結果を選択できる。
執筆者メモ
PTS文書はwww.snia.org/ptsからダウンロードできる。
読者は、SNIA TWGポータル(www.snia.org/publicreview)を訪問して一般レビュー用に
公開されているドラフトPTS仕様をダウンロードして、それに関するコメントを提出する
こともできる。
また、SNIA SSSIのWebサイト(www.snia.org/forums/sssi)を訪問して、本書をダウンロ
ードしたり、PTS結果の要約サンプルを参照したり、興味のあるその他のエリアにアクセ
スしたりすることができる。SSSIへの加入に関する詳細については、
www.snia.org/forums/sssi/about/joinを訪問されたい。
著者について
本書の著者は、SNIAソリッドステートストレージ性能試験仕様の策定と制作に密接に関わって
いる。この経験豊富な権威あるグループは、次のような主要な業界各社やSNIA技術部会のメン
バーと議長で構成されている。
・SNIAソリッドステートストレージ技術作業部会(SSS TWG)―議長と主要メンバー
・SNIA IOトレース、ツール、および分析技術作業部会(IOTTA)―共同議長
・SNIAソリッドステートストレージ分科会―理事会とメンバー
・SNIAストレージ管理分科会仕様(SMI-S)
・SNIAグリーンストレージTWG
・SNIAデータ保護および容量最適化TWG(DPCO)
・SNIAハンズオンラボとチュートリアル
・Storage Performance Council(SPC)
著者らは合計して100年を超えるコンピュータ大規模ストレージ技術の経験を持ち、広範囲に
及ぶ重要なソリッドステートストレージ技術と規律(NANDフラッシュ技術、エンタープライ
ズおよびクライアントSSDデバイスおよびシステムアーキテクチャ、IOトレース方法とソフト
ウェア収集および分析ツール、SSDテストおよび測定用の技術、ソフトウェア、およびテスト
プラットフォームなど)に権威ある技術的知見を与えている。このグループは、SNIA SSS PTS
仕様の主要な策定者の一部を代表している。
Eden Kim、Calypso Systems, Inc.(www.calypsotesters.com)CEO
SSS TWG議長、SNIA SSSI理事会
SNIAソリッドステートストレージ技術作業部会の議長であり、SNIAソリッドステートストレ
ージ分科会理事会のメンバーである。ソリッドステートストレージ分科会およびSSS技術作業
部会での彼の業績に対して2010年に、SNIA 貢献賞が贈られた。2009年からSSS TWGの議長を
務め、PTSを公開まで導いた。カリフォルニア大学で文学士号/法学士号を取得している。
ソリッドステートストレージテストと測定測定行う企業Calypso Systems, Inc.のCEOであり、
またCalypsoリファレンステストプラットフォームテスターとCTSテストソフトウェア(SSS
PTS仕様の策定と検証および本書内のデータの生成に使用された記録およびテストシステムの
リファレンステストプラットフォーム)の開発者でもある。
Tom West、hyperI/O LLC(www.hyperIO.com)社長
SNIA IOTTA TWG共同議長、SSS TWGメンバー
2005年からSNIA IOTTA TWGの共同議長を務め、SNIA IOTTAリポジトリの設立を指揮した。
SNIAストレージ管理分科会仕様(SMI-S)内のファイルシステムパフォーマンスプロファイル
の執筆者でもあり、SSS TWG、特に、PTSに関連したIOトレース分析に積極的に参加している。
2件の米国特許を取得している。彼のストレージバックグラウンドにはStorage Technology Corp.
での15年間が含まれる。そこでは、システムエンジニアリングの技術顧問を務め、IBM互換エンタ
ープライズ・メインフレーム・ディスクストレージサブシステムの設計と開発を指揮した。現在は、
SSDファームウェア開発に関するコンサルティングと、ディスクとファイルIO操作性能を測定およ
び監視するための革新的なソフトウェアツールの設計と開発に従事している。
Chuck Paridon、ストレージパフォーマンスアーキテクト
HPストレージデータセンター開発部
SNIAメンバー:SSS TWG、グリーンストレージTWG、SPC
コンピュータおよびストレージベンチマークの開発および性能分析暦24年のベテランで
ある。現在は、フィールドパフォーマンス問題解決トレーニング、効率的なストレージ
技術展開、およびプリセールス・コンサルティングなどのHewlett-Packardストレージ
性能担保業務の策定責任者である。SNIAソリッドステートストレージ技術作業部会、
SNIAグリーンストレージ技術作業部会、およびStorage Performance Councilのメンバー
である。
ストレージパフォーマンス測定、データ収集、およびデータ削減に関するテクニックだけ
でなく、SSDのエンタープライズアプリケーション/ユースケースやシステムレベル展開
に関する重要な見識をSSS TWGに与えている。オハイオ州のアクロン大学で機械工学の学
士号を、チコのカリフォルニア州立大学でコンピュータサイエンスの修士号を取得してい
る。
Doug Rollins、シニアアプリケーションエンジニア、
エンタープライズソリッドステートドライブ
SNIAメンバー:SSS TWG、IOTTA、TechDev、DPCO、HOL
2009年に、Micron TechnologyのエンタープライズSSD製品グループにアプリケーション
エンジニアとして入社。Micronに来る前は、13年間、サーバシステム、ネットワークア
プライアンス、およびストレージプラットフォーム/データ保護の設計と製造に携わった。
13件の米国特許を取得しており、SNIAとIntel Corporationの両方からその優れた技術成果
が認められている。ソリッドステートストレージ分科会とその技術作業部会、データ保護
および容量最適化、マーケティングおよび技術開発、総所有コスト、IOトレースツール分
析など、SNIA内部の複数の技術部会に属している活発なメンバーである。SNIAソリッドス
テートストレージ分科会の技術作業部会の共同議長として、SNIAソリッドステートストレ
ージ性能試験仕様の策定と検証に最初から携わっている。
Easen Ho博士、Calypso Systems, Inc(www.calypsotesters.com)CTO
SNIAメンバー:SSS TWG、SNIAチュートリアル
Calypso Systems, Inc.のCTOであり、最近リリースされたSNIAソリッドステートストレージ
性能試験仕様の立役者の1人である。NANDフラッシュベースのソリッドステートストレー
ジデバイス向けのパフォーマンスベンチマーキングの開発に深く関与している。NANDフラ
ッシュベースのデバイスの最先端のテストおよび測定方法や検査、SSD向けの新しい性能
テストの開発、およびSSS TWG仕様の検証に尽力している。
MITでレーザー物理学の博士号を、東京工業大学で電気工学の学士号を取得している。
以前は、レーザー光マスストレージ技術企業であるdigital papyrus, inc.の設立者、CEO、
およびCTOであった。
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