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道北型集約放牧への移行マニュアル

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道北型集約放牧への移行マニュアル
道北型集約放牧への移行マニュアル
平成20年3月
(2008.3)
北海道立上川農業試験場天北支場(技術普及部 技術体系化チーム)
留萌支庁産業振興部(農務課、留萌農業改良普及センター北留萌支所)
-1-
目
Ⅰ.はじめに
次
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅱ.道北型集約放牧への移行マニュアル
・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.集約放牧への移行に必要な生産技術と初期投資
1)営農条件別の類型
1
2
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
2
2
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
2
3
3
3
2.タイプ別移行マニュアル
1)タイプⅠ(放牧拡充型)
2)タイプⅡ(放牧転換型)
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
5
5
6
3)タイプⅢ(新規参入型)
・・・・・・・・・・・・・・・
7
3.ちょっと便利な放牧技術
1)放牧地の草量を判断する
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
8
8
2)併給飼料の給与を判断する
3)徹底した繁殖管理をする
4)牛の出し入れを工夫する
5)放牧に適した育成牛を作る
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
8
8
8
8
6)乾乳牛を適正に管理する
・・・・・・・・・・・・・・・
9
2)移行に必要な主な生産技術
3)移行に必要な期間(年数)
4)移行に必要な初期投資
5)放牧地レイアウトの事例
Ⅲ.活用面と留意点
・・・・・・・・・・・・・・・・・
-2-
9
Ⅰ.はじめに
北海道の酪農情勢は、近年、飲用乳消費の継続的な減少と脱脂粉乳等の乳製品の過剰在庫、WTO
交渉で予想される関税削減などこれまでの増産型を見直す環境にあり、2006年において前年の生
乳廃棄に始まった次期生乳安定生産対策として13年ぶりの減産型計画生産が実施された。2007
年には乳製品の国際価格の高騰が国内の安定在庫を脅かした結果、一変して増産が奨励されるなど目
まぐるしく変化している。また、世界的な飼料穀物価格は、バイオエタノール原料としてのトウモロ
コシ需要の拡大、異常気象による減産や中国等の需要拡大により著しく高騰し、今後も構造的要因に
よる高値推移が予想され、酪農経営に深刻な影響を及ぼしている。
この様な情勢の中、道北地域においては専業的な家族経営を主体に中規模酪農が酪農生産の重要な
位置を占め、低コストな自給粗飼料を主体とする放牧経営が見直されつつある。
これまで上川農試天北支場では、多雪・長期積雪地帯で放牧利用に適するペレニアルライグラス新
品種の開発、本草種を用いた放牧利用技術や集約放牧体系とその経営成果について報告し、道北地域
における集約放牧経営の有効性を明らかにしてきた。しかしながら、集約放牧経営への移行過程にお
ける技術導入法や経営的なリスクについては、今まで明らかにされていなかった。
そこで、既存放牧経営から集約放牧の導入、舎飼い体系から集約放牧への転換および放牧経営を目
指した新規就農の3パターンについて集約放牧の導入・転換等の移行過程に生じる問題点及び改善点
を明らかにし、「道北型集約放牧への移行マニュアル」を作成しました。
これらのことから、本マニュアルは、放牧経営へのスムーズな移行を可能とし道産自給粗飼料の有
効活用を図り、生乳生産のコスト上昇を抑制する集約放牧の普及拡大を図るために提案します。
本成績は、地域総合課題「寒地中規模酪農における集約放牧技術の確立」の3.中規模酪農におけ
る集約放牧システムの確立、1)集約放牧システムの体系化と経営モデルの策定、(2)天北型集約放
牧システムの体系化と営農モデルの策定並びに2)集約放牧技術の経営評価と地域導入シミュレーシ
ョン、(2)天北型集約放牧技術の経営評価と地域への波及効果の解明の2課題の一環として、集約放
牧を導入したり放牧に転換した現地実証農家の事例及び道北地域の既存放牧農家の事例から集約放牧
への移行時を主体に取りまとめたものである。
現地実証試験等の実施に当たり多くのご協力を頂いた道北地域の酪農家、留萌農業改良普及センタ
ー北留萌支所、幌延町およびJA幌延町の皆様に感謝の意を表します。
-3-
Ⅱ.道北型集約放牧への移行マニュアル
1.集約放牧への移行に必要な生産技術と初期投資
1)営農条件別の類型
タイプⅠ:放牧拡充型
既存の放牧経営からより放牧を重視した集約放牧を導入するタイプ
タイプⅡ:放牧転換型
舎飼経営から集約放牧へ転換するタイプ
タイプⅢ:新規参入型
放牧経営を目指して新規就農と同時に集約放牧を導入するタイプ
2)移行に必要な主な生産技術
草地管理
(1)草地面積及び家畜頭数の確保
タイプⅠ・Ⅱ:飼養頭数 96 頭・・・経産牛 57 頭(搾乳牛 49 頭、乾乳牛8頭)
育成牛 39 頭(うち子牛 20 頭)
草地面積 65.7ha・・搾乳牛1頭当たり放牧地面積(昼夜放牧 0.5ha、日中放牧 0.33ha
搾乳牛用の放牧専用地と兼用地比率(55:45)
タイプⅢ
乾乳牛放牧地 1.0ha、子牛用 1.3ha、育成用 3.4ha(後追い放牧)
1日当たり必要面積・・昼夜放牧 3.0a ~ 5.0a、日中放牧 2.0a ~ 4.0a
:飼養頭数 40 頭・・・初任牛 40 頭で新規参入(リース事業)
草地面積 46.1ha・・設定条件は同上
放牧移行マニュアルで扱う中規模酪農経営の規模は、北海道酪農・畜産関係資料(2006 年度版)の全道
の経産牛飼養頭数、牧草作付け面積及び調査事例から設定した。
(2)植生改善
放牧地及び兼用地の植生改善は、作溝型播種機を用いた簡易更新で放牧を行いながら播種する。
改善効果は、2~3年目に現れる。
導入草種は、短草・多回利用に適したイネ科牧草のPR草種とマメ科草(中~小葉)とする。
(3)放牧地は2~3牧区単位で高張力電牧で囲う方式とし、専用地は2段張り、兼用地は1段張り
と簡略化した。水槽は2牧区に1基、牛道は幅5~7mにした。
家畜管理
(1)放牧期の飼料給与は、放牧草への依存割合が高まると濃厚飼料の蛋白質含量を低下させ、エネ
ルギーの高い飼料を給与する。飼料給与量は、濃厚飼料と粗飼料も漸次削減する。
(2)放牧牛の誘導は省力化を目指した牧区配置や木戸を設置する。放牧草採食量の向上には、植生
改善や水槽配置などの整備を行う。群分けは、搾乳牛、乾乳牛、育成牛、子牛の4群が良い。
(3)発情発見は、目視観察の他に繁殖管理板やチョーク等を利用する。乳中尿素窒素(MUN)濃度
の上昇にも注意する。
技術習得
(1)経営面では、投資額に対する収益性を確保するため営農計画に基づいた初期投資を検討する。
(2)放牧技術の体系化には、草地整備と家畜管理の両技術の習得が必要であり、先進地視察や研修
会に参加し意見交換の中から積極的に技術や考え方等を取り入れる。
-4-
3)移行に必要な期間(年数)
放牧技術を導入して経営が安定するまでに数年必要となる。この期間を移行期とし、生産技術面で
は初期投資の完了と技術の普遍化、経営面では農業所得率30%を目安に改善傾向が見られるまでの
期間とする。
タイプⅠ
タイプⅡ
移行期
2~3年
4~5年
安定期
4年目以降
6年目以降
タイプⅢ
4~5年
6年目以降
4)移行に必要な初期投資
(1)初期投資額についてタイプ別に試算値を表1に示した。
表1.初期投資額の目安(資材費のみ)
1年目
2年目
3年目
総計
タイプ 施設
金額
面積(ha) 基数
金額
面積(ha) 基数
金額 面積(ha) 基数
面積(ha) 基数
電牧 専用地(3.4ha):22.4万円/区、兼用地(7.1ha):28.6万円/区、電牧器セット9.2万円
16.2
(牧区単価) 乾乳牛(1.0ha):12.2万円/区、育成牛(3.4ha):22.4万円/区、子牛(1.3ha):13.6万円/区
(電牧器セット)
水槽 専用地(3.4ha):6.2万円/区、兼用地(7.1ha):9.8万円/区
16.2
6
(牧区単価) 乾乳牛(1.0ha):3.8万円/区、育成牛(3.4ha):6.2万円/区、子牛(1.3ha):5.0万円/区
Ⅰ
簡易更新 専用地(3.4ha):14.4万円/区、兼用地(7.1ha):30.0万円/区
16.2
(牧区単価) 乾乳牛(1.0ha):4.2万円/区、育成牛(3.4ha):14.4万円/区、子牛(1.3ha):5.5万円/区
牛道
10万円
(牧区計) 217万円(専、兼用各1牧区と乾乳牛・育成牛・子牛の3牧区の合計)
電牧
22.1
152万円
15.0
92万円
37.1
水槽
9
45万円
5
27万円
14
Ⅱ 簡易更新 22.1
93万円
15.0
63万円
37.1
牛道
10万円
5万円
(年計)
300万円
187万円
電牧
17.1
79万円
14.3
95万円
31.4
水槽
6
26万円
6
27万円
12
Ⅲ 簡易更新 12.4
52万円
10.9
46万円
8.1
34万円 31.4
牛道
10万円
5万円
(年計)
167万円
173万円
34万円
注1)金額はいずれも資材費のみで、設置費用、播種機リース料及び消費税を含まない。
注2)電牧は高張力型方式とし、1年目に電牧器(1セット)92,000円を購入する。
注3)簡易更新は、作溝型播種機を用いてPR25kg/haとWC3kg/haを播種し、リン酸25kg/haのみ追肥。
注4)牛道は岩盤等を投入して簡易に整地した程度。
注5)タイプⅠは、電牧器(1セット)92,000円と専用、兼用、乾乳、育成、子牛の各1牧区分の費用。
5)放牧地レイアウトの事例
牧区面積の設定方法:
(1)昼夜放牧1回に必要な面積(最小)
金額
99万円
9万円
31万円
68万円
10万円
217万円
244万円
72万円
156万円
15万円
487万円
174万円
53万円
132万円
15万円
374万円
3a/頭×49頭=1.5 ha
◎季節による搾乳牛頭数の変動や天候等による放牧草量の変動を加味して1.7 ha 程度。
◎奥行きの狭い牧区で水槽を共用し、仕切り柵の経費を節約するため2日間分を1つにする。
(2)日中放牧1回に必要な面積(最小) 2a/頭×49頭=1.0 ha
◎季節による搾乳牛頭数の変動や天候等による放牧草量の変動を加味して1.2 ha 程度。
◎奥行きがある長い牧区は水槽を2カ所、仕切り柵の経費を節約するため4日間分を1牧区と
し、昼夜放牧へ移行して面積が拡大する場合は3日間(1.6ha/日)として利用する。
200m
放牧専用
3.4ha
タイプⅠの場合:
(1)放牧専用地は2牧区分単位で設定(3.4ha 程度)。
(2)外柵を2段、内柵は簡易なポリワイヤー等で
区分。
(3)水槽は手前1カ所、木戸は牛舎側に設置。
170m
2段張
牛舎
水槽
牛道幅5~7m
牛道7m巾
バンジーゲート7m
-5-
200m
タイプⅡの場合:
(1)放牧転換による放牧馴致(日中放牧)を考慮し
て2~4牧区単位で大きく設定(4.8ha 程度)。
放牧専用
水槽
4.8ha
240m
(2)外柵を2段、内柵は1段張りとし、更に簡易
なポリワイヤー等で細区分。
(3)水槽は手前と奥の2カ所、木戸は牛舎側に
設置。
2段張
水槽
牛舎
牛道幅5~7m
牛道7m巾
バンジーゲート7m
300m
タイプⅢの場合:
(1)放牧専用地は放牧馴致(日中~昼夜放牧)や今
2段張り
放牧専用 4.7ha
後の規模拡大を考慮して比較的大きく牧区を
設定(4.7ha、4牧区分)。
(2)外柵は2段張りとし、内柵は簡易なポリワ
イヤー等で区分。
157m
放牧専用
放牧専用
(3)水槽は手前に2カ所(奥行き狭い)、木戸は
牛舎側に設置。
水槽
水槽
牛舎
牛道幅5~7m
牛道7m巾
バンジーゲート7m
共通1:兼用地の場合
(1)1牧区は兼用地面積に合わせて比較的大きめ
に区分(3.9 ~ 7.7ha)。
(2)外柵は1段張り、内柵は簡易なポリワイヤー
300m
兼用地 7.7ha
水槽
257m
放牧専用
等で頭数、滞牧日数等で区分。
(3)水槽は奥行きが 200 m以上では手前と奥の2
カ所に設置。
(4)木戸は牛舎側に設置することが基本で、牧
1段張
放牧専用
水槽
牛舎
牛道幅5~7m
牛道7m巾
草収穫・施肥作業に支障の無い位置に設置。
バンジーゲート7m
100m
共通2:子牛、乾乳用放牧地の場合
(1)子牛専用区は 1.3ha、乾乳用牧区は 1.0ha の各
1牧区を設置。
(2)外柵は2段張りとする。
(3)水槽と木戸は各1カ所設置。
100m
子牛用1.3ha
乾乳牛1.0ha
130m
100m
2段張
水槽
牛舎
水槽
牛道幅5~7m
牛道7m巾
バンジーゲート7m
-6-
2.タイプ別移行マニュアル
タイプⅠ:放牧拡充型
項目
作業
改善技術
目標
経営 経営展開 放牧経営
放牧重視
形態
放牧形態
集約放牧
草地確保 放牧専用(ha) 面積確保
導入前
経過年
1年目
一般放牧
日中~昼夜放牧
25.5
(搾乳牛+乾乳牛)
0
40.2
65.7
昼夜放牧
23.1
(搾+乾+子+育)
14.2
28.4
65.7
PR草種導入
15-20ha
高張力電牧 バラ線、電牧等 専2段、兼1段張り
1基/2牧区
新・増設
幅5m
5~7mに拡幅
CP含量低減 CP18%,6kg/日 CP16-14%,6kg/日
サイレージ・乾草6kg/日
削減開始
削減
省力化
牧区レイアウト
放牧育成 搾乳+乾乳牛放牧 子牛+育成放牧
目視観察
繁殖管理板・チョーク等
エネルギー補給 CP含量調節 エネルギー飼料増給
低コスト化
投資効果検討
体系化
先進地視察
移行マニュアル活用
省力化
研修会参加
適正化
土壌分析
適正管理技術習得
貯蔵量削減 生産計画作成
放牧型給与 先進事例研修 移行マニュアル活用
2年目
移行期
専・兼用
比率調節
3年目
兼用地(ha)
28.4
28.4
採草地(ha)
草地
合計(ha)
65.7
65.7
整備
植生改善 簡易更新
5-10ha
随時
放牧施設
牧柵
水槽
牛道等
随時補修
削減開始
飼養技術 濃厚飼料
粗飼料
家畜 牛群管理 放牧誘導
管理
群分け
(4群放牧)
繁殖管理 発情発見
MUN対策
経営管理 投資計画
放牧利用
(意見交換)
放牧レイアウト
技術
施肥管理
習得 放牧技術
粗飼料生産
給与法
(意見交換)
繁殖
注1)放牧専用地には、乾乳用1.0ha(導入前)、子牛用1.3ha(1年目)、育成用3.4ha(1年目)の面積を含んで算出。
注2)飼養技術の各給与量は、放牧期における乾物給与量。
注3)図中の矢印は、重点(太線)、継続(実線)、随時(点線)をそれぞれ示す。
-7-
4年目
安定期
5年目
導入効果
集約放牧
牧区再編
(中牧区)
採食性向上
省力化
3-5kg/日
2-4kg/日
牧区再編
放牧重視
繁殖良好
MUN低下
低コスト
情報交換・支援
低コスト・効率化
情報交換・支援
タイプⅡ:放牧転換型
経過年
2年目
3年目 4~5年目
経営 経営展開 放牧経営
放牧重視
移行期
形態
放牧形態
集約放牧
舎飼
日中放牧
日中~昼夜放牧 昼夜放牧
0
13.8
23.1
草地確保 放牧専用(ha) 面積確保
専・兼用
(搾乳+乾乳+子牛) (搾+乾+子+育成)
比率調節
兼用地(ha)
0
9.4
14.2
採草地
65.7
42.5
28.4
28.4
28.4
(ha)
草地
合計(ha)
65.7
65.7
65.7
65.7
65.7
整備
植生改善 簡易更新 PR草種導入
牧区検討
15-20ha
10-15ha
随時
放牧施設
牧柵
高張力電牧
専2段、兼1段張り
水槽
1基/2牧区
新設
牛道等
幅5~7m整備
随時補修
飼養技術 濃厚飼料 CP含量低減 CP18%,8-10kg/日 CP16-14%,6-8kg/日 CP14%,6kg/日 削減開始
粗飼料
削減
サイレージ・乾草飽食
飽食
削減開始
家畜 牛群管理 放牧誘導
省力化 放牧地レイアウト検討
放牧馴致
省力化
管理
群分け
放牧育成
子牛+乾乳放牧
育成放牧
(4群放牧)
繁殖管理 発情発見
目視観察
繁殖管理板・チョーク等
エネルギー飼料増給
MUN対策 エネルギー補給
CP含量調節
経営管理 投資計画 低コスト化
投資検討
初期(1-2年)投資実施
先進地視察
放牧利用
体系化
移行マニュアル利用
(意見交換)
研修会参加
放牧レイアウト
省力化
技術
適正化
土壌分析
適正管理技術習得
習得 放牧技術 施肥管理
粗飼料生産 貯蔵量削減 生産計画見直し
給与法
放牧型給与 先進事例研修 移行マニュアル利用
(意見交換)
繁殖
注1)放牧専用地には、乾乳用1.0ha(1年目)、子牛用1.3ha(1年目)、育成用3.4ha(2年目)の面積を含んで算出。
注2)飼養技術の各給与量は、放牧期における乾物給与量。
注3)図中の矢印は、重点(太線)、継続(実線)、随時(点線)をそれぞれ示す。
項目
作業
改善技術
目標
導入前
1年目
-8-
6年目
安定期
転換効果
集約放牧
牧区再編
(中牧区)
採食性向上
省力化
3-5kg/日
2-4kg/日
牧区再編
放牧重視
繁殖改善
MUN低下
低コスト
情報交換・支援
効率化
情報交換・支援
タイプⅢ:新規参入型
項目
作業
改善技術
目標
経営 経営展開 放牧経営
放牧重視
形態
放牧形態
集約放牧
草地確保 放牧専用(ha) 面積確保
導入前
経過年
1年目
入植期
舎飼
0
2年目
3年目 4~5年目
移行期
日中~昼夜放牧 昼夜放牧
19.8
専・兼用
(搾+乾+子+育)
比率調節
11.6
14.7
14.7
14.7
46.1
46.1
46.1
5-10ha
5-10ha
随時
6年目
安定期
導入効果
経営拡大
日中放牧
放牧重視
9.4
面積拡大
(搾乳牛)
兼用地(ha)
0
7.7
採草地
46.1
29.0
(ha)
草地
合計(ha)
46.1
46.1
整備
植生改善 簡易更新 PR草種導入
牧区検討
10ha
採食性向上
放牧施設
牧柵
高張力電牧
専2段、兼1段張り
省力化
水槽
1基/2牧区
新設
牛道等
幅5~7m整備
随時補修
飼養技術 濃厚飼料 放牧型給与
初任牛管理
CP18%,8kg/日 CP16-14%,6-8kg/日 削減開始
3-5kg/日
サイレージ・乾草飽食サイレージ・乾草6kg/日
削減開始
2-4kg/日
粗飼料
削減
家畜 牛群管理 放牧誘導
省力化 放牧地レイアウト検討
放牧馴致
省力化
放牧重視
管理
乾+子+育成放牧
(4群放牧)
群分け
放牧育成
繁殖管理 発情発見
目視観察
繁殖管理板・チョーク等
繁殖良好
MUN対策 エネルギー補給
CP含量調節 エネルギー飼料増給
MUN低下
経営管理 投資計画
低投入
営農計画作成 初期(1-2年)投資実施
経営拡大
低コスト
放牧利用
体系化 実習による技術習得 移行マニュアル利用
情報交換・支援
放牧レイアウト
省力化
先進地視察
(意見交換)
技術
適正化
土壌分析
適正管理技術習得
習得 放牧技術 施肥管理
効率化
粗飼料生産 貯蔵量削減
生産計画作成
給与法
放牧型給与 先進事例研修 移行マニュアル利用
情報交換・支援
繁殖
(意見交換)
注1)新規参入は、リース事業(5年間)の初任牛40頭導入をモデル。
注2)放牧専用地には、乾乳用1.0ha(2年目)、子牛用1.3ha(2年目)、育成用3.4ha(2年目)の面積を含んで算出。
注3)飼養技術の各給与量は、放牧期における乾物給与量。
注4)図中の矢印は、重点(太線)、継続(実線)、随時(点線)をそれぞれ示す。
-9-
3.ちょっと便利な放牧技術
放牧地の改良が進むに従い放牧草の採食量の増加や放牧草栄養価の向上など乳牛の飼養技術を変化
させる必要が出てきます。放牧時の乳牛管理のポイントを整理すると以下の通りです。
1)放牧地の草量を判断する
○十分な量がある:入牧時の乳牛の散らばり方で、全体に広がるか横一線に並んで採食する。
:個体乳量が増加する。
:けん部の張り・・・・繋留した時に牛の間隔が狭っくるしい状態。
★草量不足のとき:退牧時にゲート周辺に牛が集まっている・・・・食べたく無い場合も含む!
2)併給飼料の給与を判断する
○MUNの活用 :MUN(乳中尿素窒素)濃度は採食された蛋白質とエネルギーのバランス
を示し、蛋白質が過剰でエネルギーが不足すると高くなる。
:バルク乳のMUN濃度から全体的な飼料の栄養バランスの適否、個体乳
のMUN濃度から個体を観察する。
★草量不足のとき:畜舎内では、品質の良い粗飼料を給与して放牧草の採食量不足を補う!
・・・・ロール乾草等の不断給餌は放牧草の採食量を低下させるので要注意!
3)徹底した繁殖管理をする
○各種器具の活用:繁殖管理板を用いて繁殖情報を家族で共有化し、デジタル化で発情見逃
しを回避する。
:チョークやテールペイント等を用いて発情兆候の発見に努める。
○目視観察の強化:舎飼期に牛舎の端から分娩後日数順に乳牛を並べ替える。
4)牛の出し入れを工夫する
○繋留方式の場合:対頭式牛舎は自由席が良く、対尻式牛舎は指定席でも良い。
○初妊・初産牛
○放牧地の配置
:入口で5~6頭ずつ制限して入れる。
:尿溝を嫌がる牛には畜舎内を明るくしたり尿溝を牧草で埋め、通路には
粗砕石灰の散布等で滑り難くする。
:牛床を覚えていない牛は、モクシを付けて誘導(1カ月)し出来るだけス
トレスを回避させる。
:牛群の入り具合を見て徐々に放牧する頭数を増やす。
:牛道は常に畜舎に向かう方向に整備する。
:牧区の出入り口(木戸)は牧区の畜舎に近い場所に設置する。
:細長い牧区(200 ~ 300 m以上)では、奥にも水槽を設置すると良い。
○パドックの活用:牛舎入り口近くに乳牛の一時待機場的なパドックを設置する。
★呼びエサ
:給与すると入れやすいが、盗食や畜舎内の混乱を起こし易い!
:濃厚飼料の食べ歩きや意地の悪い牛は放牧しない事も大切!
5)放牧に適した育成牛を作る
○電牧等への馴致:舎飼時からパドックを設け電牧や連動スタンチョンに馴らす。
:脱柵防止は、高張力線2段張りや周辺ほ場に隣接しない内側の牧区を活
用。
○日常の放牧管理:授精対象牛群の放牧地には、連動スタンチョン付き飼槽を設置する。
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:分娩前1~2カ月から搾乳牛と同居させ繋ぎや畜舎環境に馴致させる。
6)乾乳牛を適正に管理する
○放牧地での管理:放牧地に余裕があれば乾乳前期群を後追い放牧させるが、草量不足に注
意する。
:乾乳後期(分娩前3週間~分娩)は、なめる程度の放牧としマメ科の少な
い1番草乾草やサイレージを給与する。
:分娩後は5日間程度舎飼いを行い、その後に放牧を始める。
「道北型集約放牧への移行マニュアル」は、放牧経営へのスムーズな移行の手助けとなり、低コス
トで高い飼料自給率の集約放牧経営の達成に活用できます。
Ⅲ.活用面と留意点
1.本マニュアルは、ペレニアルライグラス草種の栽培が可能な道北・道央・道南地域で活用でき
る。
2.集約放牧への移行期は、生産技術面で初期投資の完了と技術の普遍化、経営面は農業所得率3
0%を目安に改善傾向が見られるまでの期間とした。
3.本マニュアルは、中規模酪農経営を対象に放牧地を作溝型播種機で簡易更新し、放牧を継続し
ながら植生改善を目指す方式を基本とする。
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