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vol.6 - 通研電気工業株式会社
ISO 9001認証 ISO14001認証 J Q A - 2 8 6 4 JQA-EM0766 March 2004 Vol. 6 通研電気工業 (株)からの最新技術・研究情報 通研電気工業株式会社 Ts u k e n Te c h n i c a l I n f o r m a t i o n 【巻頭言】 通研技報第6号発行にあたり 取締役社長 平田 和也 巻 頭 言 平成15年6月、当社の第57回定時株主総会において取締役社長に就任致しました、平田和 也でございます。通研技報第6号の発刊にあたり、就任のご挨拶をさせて頂くとともに、通研 電気工業株式会社に対する皆さまの日頃のご指導とご支援に対しまして、あらためて感謝申し 上げます。 さて、電力各社においては、現在議論が行われている電気事業制度の見直しなど、自由化の 進展に伴い益々厳しくなる経営環境に対応する為、経営形態の変更や経営基盤・競争力の強化 が強く求められております。この為、ITなどの活用が一層重要になり、電力通信網においては、 質的・量的変化を遂げる必要が生じてきました。又、IPなどの標準・汎用技術の適用検討、ア プリケーション毎の専用網・個別交換網の可能な範囲での統合検討などが推進されております。 標準・汎用技術の適用検討は電力通信網のみならず、各方面に拡大しております。 当社としては上記のような動向を踏まえ、技術、品質、コスト面での優位性を一層高める必 要があり、技術開発を推進し経営基盤の強化を図ることが最も重要であります。 しかしながら、今の時代は、何事も非常に変化が早く、変化幅も大きな時代になり、先を見 通す事が非常に難しくなってまいりました。今後研究開発、技術開発を進める製品についても、 何が時代にマッチした製品であるか判断が難しく、また適確にマッチしても、その製品寿命は 短く、すぐに陳腐化する大変な時代になってまいりました。 当社は「エレクトロニクス技術をとおして、社会の発展に貢献し、豊かな未来を創造する」 を経営理念としておりますが、 「確実に変化する社会の常識」を適確に捉え, 製品開発を迅速に 行う事が肝要な時代になって来たと考えております。 当社の最新の技術情報を皆さまにお伝えし、企業活動の一端をご理解いただくために、平成 11年3月に通研技報創刊号を発行してから、号を重ね6号の発行となりました。 今号は、当社のソフトウェア技術の変遷、最近のトッピクス等を記載しております。多くの 方々に、ご一読をいただき、ご意見やご感想をたまわれば幸いであります。 1 ◆ 技術の歩み ◆ ソフトウェアの歴史と当社の変遷 システムソフト部 部長 今野 光一 Since microprocessors (MPUs) first appeared in the 1970s, they have developed at a remarkable pace, and now found in a huge range of devices that we use every day, such as cellphones. Also, the software products that support these products have also changed with the times. Tsuken Electric Ind. Co.,Ltd. first began developing software in the 1970s. It’s no exaggeration to say that nowadays that there are few products or systems that don’t incorporate software. In the next sections, we’ll introduce our history and the ways in which software has changed. グラミングは、ケーブルの配線やスイッチのON/OFFに 1.はじめに 技 術 の 歩 み 1970年代のマイクロプロセッサ (MPU) の登場以来、そ よるものであった。このため、プログラムの変更は膨大な の進展はめざましく、現在、我々の日常生活で使用されて 数の 「配線」 の変更を意味し、プログラムの再利用は不可能 いる家電製品や携帯電話など、あらゆるものにM P Uが適 であった。 用されている。そして、それらを支える 「ソフトウェア」 も 時代とともに変遷を遂げてきた。 当社におけるソフトウェア適用の歴史は1970年代に始 まり、今やソフトウェアが組み込まれていない製品・シス 1950年代に入り、記憶装置の登場によりプログラム内 蔵式のコンピュータが登場し、2進数の機械語を符号と対 応させた命令体系を用いて、コンピュータを動かす記号列 表記が生まれた。これが、アセンブリ言語の原型となった。 テムは、 「ない」 と言っても過言ではない。 ここでは、ソフトウェアの歴史とともに当社のソフトウ ェアの変遷について紹介する。 (2) 高級言語の誕生 (1950年代後半) トランジスタの発明により半導体時代が訪れると、コン ピュータは軍事・研究用から民生用の大規模計算機として 活躍を始めることとなった。 2.ソフトウェアの歴史 ソフトウェアを支えるプログラミングの歴史は、1946 年世界初の電子計算機E N I A C( E l e c t i c a l N u m e r i c a l Integrater And Calculator) における 「ケーブルの配線」 プログラムの需要が増え、一般の人々もコンピュータを 使い始め、それに従って、人間の理解できる形で機械にプ ログラムを与える手段としてFORTRANが生まれた。 この言語の登場により、人間の言語を機械語に変えるコ ンパイル作業が生まれた。 から始まる。 (3) FORTRANを超えて (1960年代初期) 1960年代に入ると、コンピュータの利用は一般事務分 野まで広がった。技術計算向けのFORTRANでは、事務計 算や人事管理の要求を満足するプログラムを書くことが難 しくなり、新しいプログラム言語が望まれてきた。この背 景から誕生した言語がCOBOLである。 C O B O Lは、“C O m m o n B u s i n e s s O r i e n t e d 図1 ENIAC Language” (一般事務用言語) の略であり、ハードウェア の専門の知識を持たなくても習得できる言語であった。 (1) プログラミング言語の誕生 (1950年代前半) 18,000本を超える真空管から構成されるENIACのプロ 2 COBOLの誕生により、ファイル概念・データベース概 念が生まれた。 Ts u k e n Te c h n i c a l I n f o r m a t i o n (4) 入門用言語の誕生 (1960年代中期) 真空管からトランジスタ、そして集積回路と電子回路が (8) ビジュアルプログラミングとインターネット (1990年代) 1990年代に入り、パソコンの普及とともに利用者が増 小型化されていくのに伴い、コンピュータは小型・低価格 え、それに伴いソフトウェアに対する需要は格段に増えた。 化を実現していった。 優秀なプログラマを養成する必要が以前にもまして強くな コンピュータのユーザー層はさらに広まり、もっと簡単 にコンピュータの能力を手軽に扱いたいと言う要求から、 BASIC言語が誕生した。 BASICは、 “Beginner's All purpose Symbolic Instruction Code” (初心者向け汎用抽象化命令符号) の った。しかし、プログラマを多数養成する時間がない。そ こで、簡便な開発環境が求められるようになった。 こうした背景から、本格的なプログラミング教育を受け ていないユーザーでも、アプリケーションを開発できる環境 が必要となった。そこで登場したのが、Visual Basicに 略称である。比較的自由な書式とインタープリタ方式 (プロ 代表されるRAD(Rapid Application Development) グラムを実行しながら機械語に変換) により、気軽に扱える ツールである。 ものとなった。 こ れ ら の ツ ー ル は 、 G U( I Graphycal User Interface) を利用してビジュアル・プログラミング環境を (5) 言語の新たな潮流 (1960年代後期) コンピュータは計算能力を高め記憶容量を増大するにつ れ、コンピュータの能力に期待することも変化してきた。 ソフトウェアもこれまでの計算処理から将来予測と自然 実現した。OSがハードウェアを覆い隠したようにRADで はユーザーインタフェースが言語構造を覆い隠した。 この年代のもう一つの波は、インターネットの爆発的な 普及である。情報閲覧のためのW W W( W o r l d W i d e 言語処理といったアルゴリズムを記号化したALGOLなど Web) が登場し、CGI(Common Gateway Interface) が登場し、オブジェクト指向言語の原型が出来上がった。 Java、ASPなどWebをこれまでのOSに代わる実行環境 技 術 の 歩 み として登場した。 (6) 変化するプログラミング手法 (1970年代) 1970年代に入ると集積技術はより進歩し、米インテル 社がマイクロプロセッサ (MPU) を開発し、コンピュータは 小型高性能化していった。そして、巨大な計算機から身近 な道具へと変化し始め、ミニコンピュータ用O S ・ U N I X の登場となる。 さらに、個人が気軽に使えるコンピュータとして、ワー クステーションへとつながっていく。 プログラミング手法も “構造化プログラミング” が提唱さ れ、C言語の登場となる。 図2 プログラミング言語体系(一部) (7) パソコンの時代 (1980年代) 1980年代、コンピュータメーカは相次いでパーソナル コンピュータを開発していった。 パーソナルコンピュータ用のOSとして、MS-DOSが登 場する。 3.当社におけるソフトウェア技術の変遷 当社におけるソフトウェアの歴史は、1970年代のMPU の登場に始まる。それは通研標準マイコンシステムの始ま 一方、日本独自にコンピュータシステムの標準化を目的 りであり、そこから派生する形でミニコン・ワークステーシ にTRON協議会が組織されたのもこのころである。TRON ョンやパソコン用ソフトウェアへと展開が拡大していった。 は “The Real-time Operating-system Nucleus” の 略称で、機械制御用のITRON(Industrial) 、OA・ワーク (1) 通研標準マイコンシステム ステーション用のB T R O N( B u s i n e s s ) 、通信制御用の 1971年、米インテル社によってi4004が発表された。 C T R O N( C o m m u n i c a t i o n )、統合用の分散OS・ 当社でもそれまでのディジタル回路をM P Uに置換する MTRON(Macro) に分類される。 プログラミング言語はオブジェクト指向の時代に入り、 C言語を母体にC++やObjective-Cが登場する。 ことを目的に開発を行い、1975年 「MICRO-T50」 が完成 した。OSは持たず、すべて各タスクプログラムを順番に実 行する方式であった。 3 ◆ 技術の歩み ◆ これが、通研標準マイコンシステムの幕開けとなった。 図3 MICRO-T50 ① 8ビットMPUの時代 1976年、当時開発されて間もない8ビットM P U ③ そして32ビットMPU 2003年、TCS-8およびTCS-16の後継システムとし (μPD8080) 搭載のPDA80システム (日本電気製) を使 て32ビットマイコンシステム (T C S - 3 2 R ) が完成した。 用した通信機器監視記録装置を開発した。この製品は、当 OSはTCS-16同様、ITRONを採用し開発言語もC言語 社初のMPU応用製品であり、これによってMPU分野進出 を用いている。 への最初の一歩を踏み出した。 タスクプログラムの実行制御には、当社独自の 「タスクス イッチ」 方式を採用。いわゆる、独自OSを採用したことに 技 術 の 歩 み 図5 16ビットマイクロコンピュータポート(TCS-16、CPUボード) なる。開発言語はアセンブラを用いた。 TCS-32Rでは、OS上に 「RTXモジュール」 と呼ばれる ミドルウェアを用意し、TCS-16の資産 (関数ライブラリ) 流用を可能にした。 TCS-32Rでは、TCS-16よりもさらなる構造化を進 1980年代に入り、当時次世代CPUとして注目されてい め、従来アプリケーション領域に存在していた関数ライブ たi 8 0 8 5 を採用したデータ処理装置を開発した。これに ラリに汎用性を持たせ、アプリケーション開発の効率化を よって8ビットマイコンシステム (TCS-8) がラインナップ はかった。 され、現在に至っている。 (2) ミニコン・ワークステーション 1980年代は、ミニコンピュータ用OSであるUNIXが登 場し、機器制御へのミニコンピュータ活用が花開いた時代 である。このころ、当社のミニコンピュータ用ソフトウェ アの幕開けを迎えた。 ① 制御用計算機ソフトウェアメンテナンス 1980年代、東北電力殿の 「制御用コンピュータのソフト ウェアメンテナンス業務」 から歴史はスタートする。 (通研 図4 8ビットマイクロコンピュータポート (TCS-8、CPUボード) □□□□ ② 16ビットMPUの時代 変遷」 参照) 1990年、東北電力殿向け総合通信網管理システム 東北電力殿へのシステム納入メーカ各社のご協力を得て (TOTEM2) の開発に併せて、日本電気殿の協力を得て16 メンテナンス業務を開始した。開発言語は、各社独自の言 ビットマイコンシステム (TCS-16) の開発に着手した。そ 語 (FORTRANベース) を用いた。OSも各社独自のOSであ の後、TCS-16はTCS-8とともに当社の製品群を支える ったが、言語がOSを覆い隠していた時代であった。 システムとなった。 OSには、IT R O N を採用しT C S - 8では実現できなかっ たHDLCなどの高速通信が可能となった。 開発言語もC言語が中心となり、プログラムそのものが 構造化された。このため、標準ライブラリの整備も進み、 ソフトウェアの標準化が促進された。 1990年代に入り、それまでのミニコンピュータがワー クステーションに代わりUNIX系OSをベースとして、C言 語による開発へと移行していった。 ② ネットワーク時代への突入 1990年代後半から当社の開発する監視制御システムの 形態も分散構成へと様変わりして行き、オープン分散型シ C言語は、 “関数の中から関数を呼び出す” 手続き型の言 ステムとしてL A N 構成が主流となった。L A N を支える 語であるため、この関数をライブラリ化することで、プロ TCP/IPネットワークの原点はUNIXにあるため、UNIX グラム資産の再利用が可能になった。 4 技報 第3号 「電算部門の歴史と電力系統監視制御システムの (SolarisやHP-UXなど) を主流としたシステムの開発が Ts u k e n Te c h n i c a l I n f o r m a t i o n 中心となった。 2000年代に入り、当社でも一般市場向けの監視制御シ 4.ソフトウェア技術の今後 ソフトウェアの歴史はENIACの登場から始まり、OS、 ステムやネットワークサーバーを構築する上で、パソコン Webの登場と続いた。OSの登場はハードウェアを覆い隠 の適用が始まり、UNIX系OSであるLINUXを採用した開 し、WebはOSを覆い隠した。 発を行った。当社が納入した自治体イントラネットにおけ るメールサーバーやダム監視制御システムなどがこれにあ たる。 さらにWebは、今後のプログラミングのあり方まで変え ようとしている。 ここ数年、Webアプリケーションの発達は著しく、CGI そして、当社のプログラミング言語は、C言語に加えて に始まり、Java、ASP、各種Webオーサリングツールな Webに対応したJavaを用い、さらにC++やJava2によ ど、WebをこれまでのOSに代わる実行環境として、さま る開発形態へと変化してきている。 ざまな開発ツールが登場してきている。 従来、OS の相違がアプリケーション互換の障壁となっ (3) パーソナルコンピュータ 当社におけるパーソナルコンピュータによる開発は、 ていたが、Webの登場によりその壁が取り払われた。 今後、プログラミング言語もその手法もOS の種類に依 1980年代TCS-8マイコンシステムによって構築する装置 存しないWebベースへとますます移行していくものと思わ を補完する目的で始まった。 「データ処理装置」 の処理結果を れる。 格納するためにパーソナルコンピュータを採用した例がある。 ① Windowsの登場まで 1980年代、世の中にパーソナルコンピュータ (PC) が登 場した。当時のP C に搭載されたO S は、各社独自の B A S I C に対応したものであった。当時使えた文字は数 字・アルファベット・記号・カナ文字のみで、これらを駆 使して作表画面などを構成していた。 当社のソフトウェアの歴史は、通研標準マイコンシステ ム、ワークステーション、パーソナルコンピュータなどプ 技 術 の 歩 み ラットホームが異なる分野で変遷を遂げてきた。 今や、Webの時代に入り、プログラミング言語もその手 法も統合される時代となりつつある。 当社も、これらの統合やWebベースのソフトウェア資産 共有化をはかり、製品開発を推進して行きたいと考えている。 この時代は、当社が納入する装置の 「保守用端末」 がほと んどであり、装置付随の端末という色が濃かった。 1980年代中期に入り、OSとしてDOSが登場し漢字の 使用が可能となった。しかし、開発言語は、P C メーカー 独自のBASICと言う状況に変化はなかった。 P C のメーカー変更は、プログラムの継承性を失うこと から、国内メーカー1社の時代がしばらく続いた。このた め、装置の 「添付品」 とはいえ、PCメーカーの機種変更に追 随するのに苦慮した時代であった。 1990年代にWindowsが登場、1995年Windows95 の登場により、GUIによるオブジェクティブな開発が可能 になった。言語もC言語が中心となり、PCメーカーを選ば ないソフトウェア開発が可能となった。 ② インターネット時代 Windows9xの登場により、インターネット時代が開花 した。P C の高性能化とあいまって、具現化用途も拡大し てきた。2000年代に入り、それまで注目を集めてきた Webアプリケーションを当社でも手がけるにあたり、言語 もVisual BASICやC++へと移行し、さらにVisual C の採用、Javaと続いてきた。 これらのソフトウェア技術を採用して、Webによるデー タ登録やスケジュール管理機能を搭載した 「通報連絡装置」 を納入した。 5 ◆ 研究開発 ◆ 小形・高性能・低消費電力マイコンシステム TCS-32Rの開発 TCS-32R マイコンシリーズの紹介 研究開発部 北村清貴/奈良洋一/吉田 寛/厨川純一 研 究 開 発 1.はじめに 3.TCS-32Rマイコンの構成 通研標準マイコンシステムは、1980年代に8ビ TCS-32Rでは周辺機器との拡張性・汎用性を考 ットマイコン (8085:I n t e l ) を用いたシリーズ 慮し、メインCPUの外部バスとして、低速のシリ (TCS-8) を開発し、1990年代に16ビットマイコ アルバスであるCANバスと、高速のパラレルバス ン (V50:NEC) を用いたシリーズ (TCS-16) を開 であるCompactPCIバスから構成される。 発して、現在の当社の製品群を支えている。 2003年、既存製品と代替可能な32ビットマイコ ンシリーズ (T C S - 3 2 R ) が完成し、新たなマイコ ンシリーズの時代に入った。さらに、高機能化をは かり、今後の当社の新規製品群に適用していく予定 である。 ここでは、新たに開発したT C S - 3 2 R マイコン シリーズについて紹介する。 図1 TCS-32R構成 2.開発コンセプト (1)マイコンシステムを担うバスシステム 開発にあたってのコンセプトを以下に定めた。 24 TCS-32Rマイコンシステムをになうバスシステ ① TCS-8およびTCS-16と置換可能 ムは2種類用意し、現在のマイコンシステムを低コ ② 低価格・省スペース・低消費電力 ストで代替するための「CANバスシステム」と高 ③ 市販ボードが適用できるシステム 速・高機能なシステムのための「CompactPCIバ ④ 通信インフラの高速化に対応可能なスペック スシステム」からなる。 Ts u k e n Te c h n i c a l I n f o r m a t i o n ① CANバスシステム CANとは、Controller Area Networkの略で、 像診断装置、コンピュータ・テレフォニー等の通信 機器に使用されはじめている。 1989年にRobert Bosch GmbH社により開発 C o m p a c t P C Iは、電気的特性として基本的に され、ISOで国際的に標準化 (ISO11898) された PCI規格の信号と同等なので、パソコン向けに大量 シリアル通信プロトコルである。 生産されているPCI部品を流用することができ、低 このプロトコルを用いたCANバスは、2線式のシ リアル通信により、ボード間のデータ授受を行うも コスト化を図ることが可能である。 その概要は、図3に示す通りである。 のである。このバスの特徴は、 「低コスト」 「耐ノイ ズ性」 「高速性」であり、元来自動車用のシステム バスとして開発されたものであるが、産業用として も広く普及し始めている。 当社では、メインCPUボード配下のサブボード (I/Oボードなど) をCANバスで接続して、装置を ・33MHzクロック、32bitのパラレルバス 構成するしくみとしている。 その概要は、図2の通りである 研 究 開 発 ・転送速度133Mbps …高速インフラ対応可能 ・最大接続数 ……………8 (CPUボード含む) ・豊富な市販ボード ……開発期間短縮、費用低減 図3 CompactPCIバス構成 (2)マイコンシステムを担うCPU T C S - 3 2 R は、そのコアとなる32ビット C P U ・2線式シリアル ‥‥‥省配線化、自由な接続が可能 ・差動電圧使用 ‥‥‥‥高耐ノイズ性 にSH7709(SH3 )を採用。高速処理に適した ・通信速度 ‥‥‥‥‥‥500kbps (接続30mMAX) RISCプロセッサを用いた。RISCは 「縮小命令セッ ・最大接続数16 ‥‥‥‥低価格システム構築可能 トCPU 」 と訳され、加算や分岐などの基本的な簡 図2 CANバス構成 易命令しか持たず、命令数を減らすことによって構 造を単純にし、高速化を行っている。 当社の従来からのマイコンシステムにおいて、 ② CompactPCIバスシステム (開発中) CompactPCIバスは、パソコン用のPCIバスを MIPS(1秒あたり何百万命令が処理できるか) で比 較すると、以下の通りとなる。 工業製品向けに使用することを目的に設立された米 国PICMG(PCI Industrial Computers M a n u f a c t u r e s G r o u p)が策定した産業用の PCI規格である。 ノイズに強く、高速データ転送に優れ、大容量化 にも対応している。このCompactPCIは、米国で MIPS比較 ★8085 動作周波数 ★8086(V50) 動作周波数 ★SH7709A 動作周波数 0.37MIPS 5 [MHz] 1.5MIPS 10 [MHz] 173MIPS 133 [MHz] はすでにテレコミュニケーション分野を中心に普及 しており、日本では半導体製造関連装置、医療用画 TCS-32R(SH7709) は、TCS-8(8085) の 25 ◆ 研究開発 ◆ 約400倍、TCS-16(V50) の約100倍の処理能力 があり高速データ処理を実現する。 (3)従来製品を担うマイコンシステム T C S - 3 2 R マイコンシステムは、当社の従来製 品にも適用していくこととしている。従来製品の基 本構成は、システムバスにC A N バスを適用し、 CANバス対応のメインCPUボード、入出力制御ボ 写真2 CDT情報伝送装置(試作品) ードから構成する。 (CANバスファミリ) CANバスファミリ開発に当たっては、当社製品 群のなかでもっとも基本的な装置である「サ イ ク リ ッ ク デ ィ ジ タ ル 情報伝送装置」をターゲット に実施した。 研 究 開 発 5.まとめ TCS-32Rマイコンシリーズは、CANバスファ ミリの開発を完了し、平成15年6月にサイクリック 4.CANバスファミリの概要 ディジタル情報伝送装置を東北電力殿に納入した。 さらに、順次代替開発を行い、平成18年度までに 開発が完了したCANバスファミリの概要を以下 に示す。 また、平成15年度実施しているC o m p a c t P C I ・CPU :SH7709A 133MHz動作 ・OS :リアルタイムOS μITRON ・バスシステム :CompactPCI、CAN ・ボード仕様 :CompactPCI規格、6U ・電源 :5V、24V ・サブボード :64DI(64点接点入力) 32DO(32点接点出力) 32AI(32CHアナログ入力) CDT(CDT回線制御) 他 写真1 CANメインボード 26 ほぼすべての製品に適用して行く予定である。 バスファミリにより、高機能な新規製品開発に取り 組む予定である。 Ts u k e n Te c h n i c a l I n f o r m a t i o n 小形・高性能・低消費電力マイコンシステム TCS-32Rの開発 TCS-32R FPGAの開発 研究開発部 菅原慶太/北村清貴/奈良洋一/吉田 寛/厨川純一 研 究 開 発 1.はじめに に向上し、従来のASIC(Gate Arrayなど) の置き 換えにとどまらず、100万ゲート級の高性能なシス 当社におけるマイコンシステムの回路構成は、 テムの実現までが可能となっている。 C P Uチップをはじめとする周辺部品のほか、カス タム L S Iやディスクリート部品により構成してき (2)FPGA適用のメリット た。開発ユーザーがプログラミング可能な F P G A FPGAの用途は、大規模LSIの量産化前の開発段 (Field Programable Gate Array)は、一部で使 階において、 「試作」の位置づけで適用が拡大して 用していたが、近年、F P G A の普及とともにその 部品単価も下降してきたことから、T C S - 3 2 R マ イコンシステム開発にあたっては、適用範囲を広げ て多く採用することとした。 ここでは、TCS-32RへのFPGA適用について紹 介する。 いった。 しかし、デバイスそのものが高価であったため、 これまでは「LSIの試作用」という色が濃かった。 近年、 「書き換え」のメリットを活かす形で、さ まざまな組込み機器への適用が増え、 「試作」では なく、本来の「ハードウェア部品」としての地位を 獲得してきている。 2.FPGAとは LSIは量産が開始されるとその単価は圧倒的に低 下する。しかし、変更が生じた場合の開発コストは、 (1)FPGAとは FPGA ( Field Programmable Gate Array) は、 数千万円にもおよぶこととなる。 多品種少量生産の当社にとって、カスタムLSIに 再構成可能なディジタルI C であり、論理ゲートの 代わるFPGAの適用は、以下のメリットがある。 構成情報や配線情報を与えることによって、ユーザ ① 当社独自の回路を集積できる (標準化) ーが任意の論理回路を実現することが可能である。 ② 標準化回路のバリエーション開発が容易 近年FPGAの性能 (集積度、動作スピード) は急速 ③ 1個からの生産が可能 27 ◆ 研究開発 ◆ 3.FPGA開発 F P G A 開発手法は、以下の2種類が主流となっ ている。 4.TCS-32RへのFPGA適用 TC S - 3 2 R マ イコンシステム開発において、以 下の目的でFPGAをマイコンボードに搭載した。 ・ ソフトウェア機能のハードウェア化 (1)回路図入力 回路図から構成情報や配線情報を生成する。 ・ 社外製LSIの内作化 ・ CPU周辺論理回路の集約化 (1)ソフトウェア機能のハードウェア化 従来 (TCS-16シリーズ) のサブボードに搭載され ているC P U・R O M・R A M をF P G A で置き換え、 ソフトウェアで実現していた機能をハードウェアで 実現する。 研 究 開 発 これにより、サブボードの部品点数の削減やソフ トウェア開発工数削減をはかるものとした。 図1 回路図設計の例(イメージ) (2)社外製LSIの内作化 T C S - 16シリーズでは、他装置との接点インタ (2)記述言語による HDL(Hardware Description Language) と呼ばれる記述言語を用いる方法で、現在主流とな っているのは、AHDL・VHDL・Verilog-HDLで フェースに用いるD I / D O ボードに入出力制御を つかさどる社外製LSIを搭載していた。 T CS-32R 開発にあわせて、同等機能をFPGA 化 (I/Oコントローラ) し社内制作を可能とした。 ある。 開発用途やシミュレーション方法で使い分けるこ ともあるが、当社ではVHDLを採用している。 (3)周辺論理回路の集約化 TCS-16で用いていた小規模FPGA(回路図設計 によるもの) や標準ロジックICを新規FPGAに取り 込み、部品点数削減をはかった。 5.FPGA適用例とその効果 今回の開発にあたり、F P G A を適用したサイク リックディジタル (C D T ) 通信制御ボードを実例に 紹介する。 図2 VHDLの記述例 (1)TCS-16ボード (SIO-TC) ・ メインC P U ボードとT C S -16バス (V M E バス、 I/O channel信号) にてSIO-TCを制御 28 Ts u k e n Te c h n i c a l I n f o r m a t i o n ・ SIO-TCにもCPUを搭載し、ソフトウェアにて CDT送受信をコントロール ・ 渋滞検出機能 ・ 回線状態監視、通知機能 ・ 受信ワード状変検出、通知機能 (2)TCS-32Rボード (CAN_CDT) ・ 情報更新不良検出機能 ・ メインCPUボードとCANバスで接続 ・ CAN_CDTにFPGAを搭載し、CDTコントロ ール機能を実装 ・ 一部周辺回路をFPGA に取り込み部品点数を削 減する (4)効 果 これまで、ソフトウェア処理により行ってきた CDT通信制御をFPGAのみで実現した。さらに部 品点数を従来ボードに対して50%まで低減した。 研 究 開 発 図3 SIO-TCの構成 写真1 実装比較(右がTCS-32R) 6.まとめ TCS-32Rの開発にあわせてFPGAによる「部 品化」を行うことで、当社独自の「カスタムL S I 」 を製作した形となった。 図4 CAN_CDTの構成 今後、当社が開発する装置に幅広く活用するこ とが可能であり、新たな装置開発においても「部 (3)CDT通信制御用FPGA搭載機能 ① 送信制御 品」として取り扱うことができるため、開発期間 の短縮をはかることができる。 ・ CDTフレーム生成 (トータルパリティ、反転連送 付加) ・ 連結ワード処理 ・ 優先伝送処理 ・ 伝送方式制御 (B方式、特C方式、D方式) ② 受信制御 ・ シリアル→パラレル変換 ・ 同期不良検定 ・ 受信ワード検定 (トータルパリティ、連送照合検定) 29 ◆ 研究開発 ◆ 小形・高性能・低消費電力マイコンシステム TCS-32Rの開発 TCS-32R 基本ソフトウェアの開発 研究開発部 阿部義明/大泉 仁/水野 茂 研 究 開 発 1.はじめに T C S - 3 2 R マイコンシリーズに搭載するソフト 3.基本ソフトライブラリモデル 基本ソフトライブラリモデルを図1に示す。 ウェアはOSのほか、ハードウェアを直接制御する 「ドライバ」やアプリケーションとドライバの仲立 ちをなす「サーバー」などがある。 これらは、アプリケーション開発を容易に行うこ とができるよう基本ソフトライブラリとして整備して おく必要がある。 ここでは、T C S - 3 2 R マイコンシステム開発に OS ともない、整備を行った基本ソフトライブラリにつ いて紹介する。 2.ライブラリ整備にあたってのコンセ :日立製のμITRONを使用 RTXモジュール :TCS-16マイコンのOSとの相違を吸収するた めのインタフェース ドライバ :ハードウェア制御のためのプログラム ミドルウェア :TCP/IP等標準プロトコルをサポート サーバー :ミドルウェアを使用するためのインタフェース アプリケーション:機種毎の個別プログラム 図1 基本ソフトライブラリモデル ライブラリ整備にあたっては、アプリケーション ソフトウェア開発工数低減と開発期間短縮を目的に 4.ライブラリ整備 以下のコンセプトを掲げた。 ① プログラミングの共通化ができること ② TCS-16のプログラミングスタイルが踏襲でき ること ③ 市販ミドルウェアが使用可能なこと 30 ライブラリ整備にあたっては、掲げたコンセプト に従い標準化を行った。 (1)プログラミングの共通化 TCS-16の資産継承を考慮に入れ、OS構築にお Ts u k e n Te c h n i c a l I n f o r m a t i o n いての「制限事項」としてルール化を行った。 5.ライブラリ構成 一例をあげれば、 ・ハンドラに関する制限 初期登録ハンドラは、1msタイマ割り込みハンド ラのみとし、その他のハンドラはサーバー、ドライ バから登録する。 基本ソフトライブラリとして整備したソフトウェ アは、以下の通りである。 基本ソフトライブラリ ドライバ バスドライバ ・タスクに関する制限 登録可能なタスク数=250 ボードドライバ ・イベントフラグに関する制限 など8項目の制限事項を設けた。このルール化によ サーバ ボードサーバー り、TCS-16からの資産継承のほか、新規開発プロ グラム間の互換性も維持できることとなる。 プロトコルサーバー その他 (2)TCS-16プログラミングスタイル TCS-16ではOSにμITRON(2.0準拠) を採用し ているが、そのプログラミングはOSそのものを意 ミドルウェア 識することなく、また、タスクの独立性を確保した OSなど (汎用性が高い) プログラミングが可能であった。 CANバスドライバ PCIバスドライバ NICドライバ LAPSドライバ FDCドライバ RAMディスクドライバ DIサーバー DOサーバー AIサーバー CDTサーバー TCP/IPサーバー LAPSサーバー 無手順サーバー タイマサーバー カレンダサーバー コンソールサーバー ファイルサーバー ファイルシステム TCP/IPプロトコル オペレーティングシステム RTXライブラリ 研 究 開 発 図2 基本ソフトライブラリ構成 T C S - 3 2 R においても、このような利点を生か し、TCS-16からの移行 (移植) も考慮して、TCS- 6.共通アプリケーションの開発 16 準拠のタスク間インタフェースを用意した。 (RTXモジュール) ただし、タスク間インタフェースが複雑になるこ とを避けるため、サポート機能、構成を簡略化した。 アプリケーションは、基本的には装置個々の開 発となるが、 「情報伝送装置」として共通に適用で きる機能が多々ある。 試作したサイクリックディジタル (C D T ) 情報伝 (3)市販ミドルウェアの適用 D O S ファイルシステムやT C P / I P プロトコル など、汎用性の高いミドルウェアは、自社開発する 送装置の開発を通じて、共通アプリケーションの整 備も行った。 図3に共通アプリケーションの概要を示す。 よりも市販のものを適用したほうが安価ですむ。 これら市販のミドルウェアを適用する上で、アプ リケーションとの親和性を高めるためのサーバー (TCP/IPサーバー、 ファイルサーバー) を用意した。 図3 アプリケーション構成 31 ◆ 研究開発 ◆ (4)各種伝送処理 (1)起動処理 電源投入後の起動時処理で、装置運用開始までの 各種伝送ボードとのインタフェース処理を行う。 動作をつかさどる。 ODTボード MAIN_CPUボード 初期情報受信 初期情報通知 (SV、計測情報等) 送信開始 状変通知 送信データ状変受信 (各ワード毎) 繰り返し 送信データ変更 図4 起動処理フロー 図6 CDT処理フロー (2)RAS処理 システム異常発生時のリカバリおよびイベント 研 究 開 発 7.まとめ 保管を行う 表1 RAS機能概要 項 目 T C S - 3 2 R マイコンシステムは、今後、当社の 異常要因 処理概要 システムダウン 例外(割り込み)発生 ①システムダウン発生ログ登録 ②ソフトウェア動作停止 OSエラー システムコールエラー検出 ①OSエラー発生ログ登録 ②ソフトウェア動作停止 イベントエラー 未定義イベント検出 ①イベントエラー発生ログ登録 ②ソフトウェア動作停止 コマンドエラー タスク間未定義 コード受信 ①コマンドエラー発生ログ登録 ②ソフトウェア動作停止 その他 ①サブ基板異常 ②サブ基板入力値異常 ③伝送受信異常 等 製品をになうシステムである。基本ソフトウェアラ イブラリの整備により、アプリケーション開発のた めの礎が完成したと言える。 既存製品の代替開発や新規製品開発を通して、さ らにライブラリを拡張して行くことで、標準化を進 めて行くものとする。 さらに、L I N U X などのU N I X 系 O S の搭載も検 ①各種エラー発生ログ登録 証し、当社組込み製品の範囲を拡大していく予定 である。 (3)各種I/O処理 各種入出力ボードとのインタフェース処理を行う。 AIボード MAIN_CPUボード 初期情報収集/通知 初期情報受信 (入力値、基準電圧値等) 基準電圧値監視 設定時間で繰り返し* 入力値収集 収集値通知(実装CH分) アナログ値受信 *:CDT装置では実装CH×30msで設定 図5 AI処理フロー 32 Ts u k e n Te c h n i c a l I n f o r m a t i o n 小形・高性能・低消費電力マイコンシステム TCS-32Rの開発 TCS-32Rシリーズを適用した新型サイクリックディジタル情報伝送装置の開発 技術部 伊賀山 武/小寺由美子/庄子正則/研究開発部 阿部義明 研 究 開 発 1.はじめに サイクリックディジタル情報伝送装置(以下、 CDT伝送装置) は、各電気所の表示情報・テレメー タ情報を伝送する装置である。 当社においても1978年にマイコン化を行った 3.開発内容 (1)現行モデルとの機能的な互換性保持 新型CDT伝送装置の製作仕様は次に示す規格に 準拠した。 ・CDT伝送装置 標準仕様書 (通仕267-2) CDT伝送装置を開発して以来、現在まで製作を行 ・電力用電子通信用品 共通仕様書 (共通仕) ってきたが、現行モデルの構成部品の入手難や個別 新型CDT伝送装置と現行モデルとの機能的な互 ニーズの多様化にともない、当社新型マイコンシス 換性を保持しながら、これらの規格との整合性をと テム (T C S - 3 2 R シリーズ) を適用して本装置のモ るため製作仕様作成では次の点に留意した。 デルチェンジを実施した。 ① 現行モデルの製作仕様を土台とする 外形寸法などの構造、電源や電気的な条件、伝送 2.開発コンセプト フォーマット形式など装置の基本となる仕様につい ては現行モデルの製作仕様を踏襲することにより互 新型CDT伝送装置の開発にあたっては次の内容 換性を保持した。 を基本コンセプトに定めた。 (1)現行モデルとの機能的な互換性を保持する (2)T C S - 3 2 R シリーズの適用による機能向上を 図る (3)製作仕様の標準化を図る ② 特殊機能の追加とEMC対策 現行モデルでは処理能力の限界から仕様範囲外と した特殊機能を 「 C D T 伝送装置 標準仕様書 (通仕 267-2) 」 より抽出し、新型 C D T 伝送装置では標 準機能とした。 また、EMC規格や耐震性については 「電力用電子 通信用品 共通仕様書 (共通仕) 」 に準拠した。 33 ◆ 研究開発 ◆ (2)TCS-32Rシリーズの適用による機能向上 4.開発の成果 新型CDT伝送装置では当社の新形マイコンシス テムであるTCS-32Rシリーズを適用した。 これにより、処理能力は現行モデルの約400倍に 向上し、これまで実現できなかった機能を標準的に 新型CDT伝送装置の開発により次の成果をあげ ることができた。 (1)実装容量の拡大 T C S - 3 2 R シリーズ適用による実装容量の拡大 搭載することが可能となった。 具体的な変更点、および追加機能を次に示す。 にともない、従来2架で構成した容量を1架で実現 することが可能になった。 ① ソフトウェアの標準化 現行モデルでは全装置標準のソフトウェアがな く、個別仕様に対して部分的な変更を施したROM (2)ソフトウェア設計費用の削減 ソフトウェアの標準化により、従来個別仕様毎に を作成して対応していた。 このため、同じ装置でありながら、個別仕様毎に 発生していたソフトウェア設計費用が不要になった。 ソフトウェア設計の費用、期間、および要員を必要 研 究 開 発 とし、工期短縮の妨げとなっていた。 (3)故障部位特定の迅速化 TCS-32Rシリーズの適用により、CDT伝送装 R A S 機能の標準化と専用の試験端末の導入によ 置が必要とするすべての機能を共通のソフトウェア り、故障部位の特定が迅速にできるようになった。 にあらかじめ盛り込み、専用の試験端末 (パソコン) から個別仕様に合わせた機能や容量をパラメータに て設定する方法が可能になった。 (図1) 5.装置諸元 (1)装置構成 試験用 端末 パラメータ設定後 インストール 現行モデルは処理部 (電子回路盤) を3ユニット必 CDT 伝送装置 要とする構成であったが、新型CDT伝送装置では 1ユニットで構成することが可能となった。また、 図1 機能・容量設定方法 ② RAS機能対応 現行モデルでは、使用するマイコンの処理速度や 個別入力部においては、表示・コード入力用に同じ 基板を使用することで、使用基板の共通化も合わせ て実現した。 メモリの性能限界のために、障害履歴を蓄積し故障 部位を特定する機能や、それらを確認する手段が整 備されていなかった。 TCS-32Rシリーズの適用により、あらかじめ 設定した複数の監視項目をメモリ内に蓄積し、専用 の試験端末から確認することが可能になった。 (3)製作仕様の標準化 製作仕様書、接続図、設定表など従来、個別仕様 毎に対応していた図面を共通化し、ハードウェア設 計費用の低減を図った。 図2 CDT送信装置構成 概略図 34 Ts u k e n Te c h n i c a l I n f o r m a t i o n (2)装置外観 (4)装置実装容量、送信以外の機能 次にCDT送信装置の実装・外観図と試験用端末 の表示画面 (起動時) を示す。 表2 装置実装容量 項目種別 インタフェース 最大容量 伝送回線I/F (CDT I /F) 周波数偏移 変調 1回線 (2ルート構成) 表示入力 フォトカプラ 20ワード コード入力 フォトカプラ 20ワード アナログ入力 電圧/電流 32ワード 表3 CDT送信以外の機能 項目種別 仕 優先伝送処理 様 標準 サブコミ処理 標準 連結ワード処理 オプション 6.おわりに 研 究 開 発 当社が製作する装置中でもっとも基本的な装置で あるC D T 伝送装置の設計完了により、後に続く T C S - 3 2 R シリーズ適用による既存装置のモデル チェンジ展開が可能となり、かつ新製品開発の下地 作りが完成した。 図3 CDT送信装置 実装・外観図 CDT 伝送装置としてはユニット間配線方法の見 直しや、アナログ入力用Uリンク部、アラーム出力 用リレー部のプリント基板化による更なる原価低減 を図る。また、製品群として通信用雑架取付形の小 容量タイプの開発をすすめている。 図4 試験用端末 (起動画面) (3)仕様諸元 表1 仕様諸元表 項 目 仕 様 外形寸法 幅520×高さ2300×奥行450mm 塗 装 色 マンセル 入力電源 AC200、100V/DC24、48、110V 環境条件 温度:0∼+40襄 湿度:40∼85%R.H 回線I/F 通信方式:電気学会仕様CDT方式 伝送速度:200、600、1200bps 5Y7/1 半ツヤ 35 ◆ 研究開発 ◆ Javaを適用したリアルタイム 監視制御アプリケーションの開発 システムソフト部 村山広明 研 究 開 発 Oracle(※2) とJavaを用いて作成した監視制御ア 1.はじめに プリケーションにより構成される。ソフトウェアの 昨今のコンピュータ技術の進歩はめざましく、汎 構成を、図1に示す。 用計算機の高性能・大容量化および低価格化が短い サイクルで進んでいる。これらのハードウェアとマ ルチプラットフォーム対応の言語であるJava (※1) (2)監視制御アプリケーション J a v a で作成した監視制御アプリケーションは、 を使用してリアルタイム監視制御アプリケーション 機能別に 「監視系」 「制御系」 「画面系」の3つに分割し、 の開発を行ったので、その概要を紹介する。 それぞれのJVM(※3) 上で動かすマルチVM方式 (※ 4) とし、これによりプログラムの独立性を高めた。 各JVM上のアプリケーションはRMI(※5) や共有メ 2.ソフトウェア モリを介して相互に連携して稼働する。監視制御 アプリケーション構成を図2に示す。 (1)ソフトウェア構成 リアルタイム監視制御のソフトウェアは、汎用 OSをベースに、汎用のデータベースソフトである 監視制御 アプリケーション 汎用 データベース (Oracle) コンピュータ言語 (Java) 図2 監視制御アプリケーション構成 OS (汎用系UNIX、Linux、 Windows など) 図1 リアルタイム監視制御ソフトウェア構成 36 Ts u k e n Te c h n i c a l I n f o r m a t i o n 3.特 徴 (1) マルチプラットフォーム性の実現 Javaの特性を活かし、特定OSに限定されないマ ルチプラットフォーム性を実現した。 (2)アプリケーション開発の効率化 アプリケーションを機能別に分割するマルチVM 方式とし、機能間のインタフェースを単純かつ明確 にすることで、プログラムの独立性が高まり、設 計・製造・検証などの開発効率が向上した。 <用語解説> ※1 Java Sun Microsystems社が開発したプログラミング言語。 Javaで開発したソフトウェアは特定のOSやマイクロプ ロセッサに依存することなく、基本的にはどのプラットフ ォームでも動作する。(JavaはSun Microsystems,Inc. の登録商標) ※2 Oracleは、Oracle Corporationの登録商標 ※3 JVM(Java Virtual Machine) Javaで書かれたプログラムを翻訳して実行するソフト ウェア ※4 マルチVM方式 複数のJavaアプリケーションを複数のJVM上で同時に 実行する方式 ※5 RMI(Remote Method Invocation) 異なるJVM間でメッセージ (データ) をやりとりできる 環境を実現するための手法 (3)汎用データベースの活用 研 究 開 発 汎用データベースソフトとしてOracleを採用し、 監視制御データの管理やネットワーク間のアクセス 管理等の処理をデータベースソフトに行わせること でソフトウェア開発工数の低減を図った。 4.おわりに Javaが持つマルチプラットフォーム性を利用す ることにより、市販のハードウェア・OSを使用し た監視制御システムの構築が可能となった。 汎用のハードウェアやソフトウェアは今後も進歩 し続けることが予想される。それらの最新技術に追 従させながら本ソフトウェアを幅広い分野に適用さ せていく。 37