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SAPシステムの水平展開に関する所感

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SAPシステムの水平展開に関する所感
Hiro Business Solutions
HBS
http://www.hbs.gr.jp/
Hi ro Busin ess Solut ions
平成 14 年 9 月 26 日
S A P システムの活用事例「水平展開」セミナー開催にあたって
本日は、ご多忙の中、当セミナーにご参加賜り、本当にありがとうございました。
SAPシステムの活用は、グループ企業にまで展開した際に大きな導入効果が出ると言
われていて、既に、幾つかの企業グループがSAPシステムを用いて各子会社への水平展
開を実施し、成果を出しています。これからも多くの企業グループがSAPシステムの水
平展開を策定していくと予測するものです。しかしながら、各企業グループに同一の基幹
システムを水平展開していくことは、SAP システムに限らず容易なことではないであろう
と認識しています。
多様な意見を吸収して、歩み寄り、合意が得られるまで粘り強く協議する。21世紀を
迎えた私達の共通課題であると思うものです。昨今、グローバル管理やコーポレートガバ
ナンスが問われていますが、単に一元管理を目指しての「同一化」「画一化」だけでは共
感を得にくいものです。国、業種、商慣習等の多様性に対して、違いに対して、どのよう
に実現していくか。この課題に関する回答もまた多様なものであると思います。
当セミナーでは、限られた事例ではありますが、各社での導入事例や、コンサルティン
グ会社からのソリューションをご提供させていただきました。さらに、実務レベルの深い
話しの交流機会のために懇親会を設けましたので、率直な意見交換ができれば幸いです。
参加された皆様方のご発展、ご健勝を心よりお祈り申し上げます。
私自身としての当セミナーの所感をまとめました。ご参考になれば幸いです。
Hiro Business Solutions
代 表
広川 敬祐
公認会計士協会東京会常任幹事
本 書 の 内 容
ページ
Ⅰ.水平展開遂行にあたって
1.信頼あるコミュニケーション …………………
2.遂行上の課題………………………………………
・各グループ会社での新たな議論。
・新たな業務要件への対応。
・展開コストや人的リソース。
・国、業種、商慣習等の違いへの対応。
・コード体系
Ⅱ.システム構築アプローチ
1.情報システムの変遷………………………………
2.パッケージアプローチの特徴……………………
Ⅲ.IT技術発展と教育………………………………………
2
4
10
12
16
SAP,R/3はドイツSAP Aktiengesellschaft の登録商標です。
その他本編に記載の商品名お呼び社名は各社の商標または登録商標であり、特にその旨明記がなくても本編は十分にこれを尊重します。
〒144-0052 東京都大田区蒲田5-36-2 相互蒲田ビル10階 TEL 03-5744-5177 E-mail : [email protected]
SAPシステムの活用事例「水平展開」セミナー開催にあたって
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Ⅰ.水平展開遂行にあたって
基幹システムの水平展開にあたっては、まず、第一段階で親会社や主要子会社での導入
を実施し、その後、導入によって得られた成果物を展開していくというアプローチをとら
れることが一般的で、始めから一気に全グループ会社に対しての導入はないものです。
第一段階で実施したものをテンプレートとして展開していく訳ですから、本来、大きな
障害は、第一段階導入で解決されているはずですが、水平展開の遂行にあって、各企業グ
ループで次のような課題が尽きないものと認識しています。
(1)各グループ会社に既存システムが存在し、新たに議論が発生。
(2)水平展開遂行上、新たな業務要件の対応を迫られる懸念。
(3)水平展開には多くの人的リソースを要し、多大なコストがかかる懸念や
リソースを確保できない懸念。
(4)国、業種、商慣習等の違いによって各グループ会社には適合しないとの懸念。
(5)コード体系をどのようにしていくかとの議論の発生
水平展開とは若干性格を異にしますが、連結会計システム構築の際、次のようなエピソ
ードに遭遇したことがあります。その企業グループでの親会社の担当者は「連結決算は親
会社のニーズで行うもの。」との強い考え方を持っておられ、関係会社側に負担を強いる
であろう勘定科目体系の変換や追加作業に関わる負担分については、全て親会社で手当て
したいと言われていたことです。紳士的で余裕があると捉えてしまえば、それまでですが、
「子会社だから親会社の言うことを聞け!」とばかりに封建的に情報を求める企業文化の
元で苦労したことを思えば、どちらのスタンスが正論かはともかく、どちらの場合がうま
く物事がはかどるか、と顧みれば前者でありました。後者の場合には、「また、親会社が
うるさいことを言ってる。適当に報告しとけ!」のような状況に陥ってしまし、表面的な
コーポレートガバナンスになりかねないものと思うものであります。
親会社だから偉い、親会社だから上、なのではなく、親会社と子会社との関係は役割分
担のように考えるのが理想的ではないかと思います。言わば、医療の世界での医師と看護
婦のような関係に例えられるのではないかと思います。医師が全責任を背負っているとは
いえ、看護婦にしかできない役割があるものです。
水平展開を遂行する際に、何の議論もなく「親会社で決まった方針なので子会社は従い
なさい」との手法はトップダウンアプローチとはいえず、単なる封建主義といえるのでは
ないでしょうか。封建社会が歴史上存続していかないのは明らかなものです。本来のトッ
プダウンアプローチは、経営トップが現場の状況をよく認識した上での遂行であると思い
ます。また、「同じ基幹システムを利用すれば親会社への報告が容易になる」との効果を
掲げて水平展開を遂行していく事例にも遭遇しましたが、これもまた、子会社からの共感
は得にくいものでありました。子会社にしてみれば、親会社への報告以前の課題として、
自社システムがどうあるべきかが最重要課題と捉えるからであるからだと思います。
水平展開の遂行にあっては、各グループ会社でのシステムにあってどのようなメリット
があるのかをよく吟味して提案していくことが肝要であると痛感するものです。
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1.信頼あるコミュニケーション
水平展開遂行にあって、最も大切なことはお互いの担当者相互に信頼感を持ち、コミュ
ニケーションをよくしていくことだと思います。「メールを送ったのに返事も来ない」の
ような不満は、どちらかというと「こんな大事なことメールで済ますな!」との相手から
の無言の抵抗の表れであると受け止めた方が得策だと思います。良いコミュニケーション
を計ることが、水平展開遂行にあってまず求められるものと認識しています。
良いコミュニケーションのためには、どうすればいいのでしょうか。多くの人間学が存
在していることと思いますが、ここでは、1972年に地球の温暖化に関わるレポート、
「成長の限界」で有名になった、ローマクラブ(1968年に世界の科学者、経済学者な
どが集まって活動を開始した民間組織。環境、人口問題等の地球的規模の課題により想定
される人類の危機をいかに回避するかを探ることを活動目的としている。)が1990年
に発表した「第一次地球革命」の次の9ヶ条を参考としてご紹介させていただきます。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
地球的な視野で行動
変化への適応力、変革を起こす力
功利主義に負けない倫理観
話し合いの上で、決断し、実行
自ら学び、人にも学ぶ意欲を
必要に応じ、勇敢な決定変更も
方針を分かりやすく伝える
手段と目的をはっきり分ける
意見を聞く「対話の場」をつくる
当たり前というと当たり前のことでありますが、問題が発生したときほど忘れ去られて
しまうような内容ではないであると痛感するものです。「話し合いが重要なのに話し合い
の場を持つことすらできない」「リーダーは何もしない」「方針が分からない」「計画変
更を余儀なくされているのに誰も言い出せない」等のようなことであります。
特に、「手段と目的をはっきり分ける」では、基幹システムの導入に携わっているとこ
の誤謬による弊害に何回となく遭遇してきました。例えば、現行出力しているレポートが
あるとして、そのレポートと完全同一のレポートを出力することができない、追加開発の
策定を実施しているような状況がよくあります。よくよく話を聞いてみると、現行レポー
トの出力目的がどうもはっきりしない、「今まで出力していたから・・・」「紙で出力し
ないと何となく不安だから・・・」というような理由に止まるものもあり、本来、手段で
あるはずのレポートがいつのまにかレポートを出力することが目的と化しているようなこ
とであります。このような弊害を解消するためにも、まず、話をよく聞く、つまり、「意
見を聞く対話の場をつくる」「話し合いの上で、決断し、実行」というようなことが大切
になってくるものと思うものです。
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2.遂行上の課題
(1)各グループ会社での新たなシステム議論。
コンピュータに関わる活動の中で、私自身が、常々参考にさせていただいている文献が
あります。1970年前後に書かれたものですが、「コンピュータは、ある面では、生き
た人間の、いかなる頭脳も及ばない優秀さを持っていよう。しかし、それは、客観的に記
号化し、数量化できるものに関してであって、本来、数量化されない人間性を対象とする
ことには、大変な誤りが伴う危険がある。コンピュータは今のところ、人間の忠実な下僕
である。だが、たしかにある面では、人間より、幾千倍も優秀な頭脳であり、だが、その
一面の優秀さを過信すると、やがて、人間はコンピュータの奴隷になってしまうかもしれ
ない。問題は、コンピュータの賢明な使い方をしることである。ここで、賢明なとはほか
ならぬ、人間自身の賢明さである。」「私の提言」(サンケイ新聞社刊)というものです。
要は、コンピュータをどう賢く利用できるか、これに尽きると痛感するものです。
第一段階で実施したものを各グループ会社に展開しようと計画する際に、次のような議
論が発生するものです。
・ 親会社(=第一段階)とは規模が違うので、各グループ会社でも適合するのか。
・ 各グループ会社といえども、業種が違い、適合しないのではないか。
・ 日本と海外は違うのではないか。
・ コスト負担はどうするのか。
こういう局面で、まず大切だと思うことは、各グループ会社とよく協議するということ
です。親会社の方針だから、、、決まったことだから、、、との感じで、押し付け的に遂
行していったとしても、一時的にはよくても長続きしないものです。各グループ会社から
の要求が満たされるかどうかはともかく、親会社の方針、各グループ会社からの要望、共
感が得られるまで協議していく姿勢が大事なものです。
SAPシステムが提供する機能の性格を考えた際、言葉は悪いのですが、どちらかとい
うと管理系(=会計管理、販売管理、人事管理、、)のバックオフィス的な色彩が強いも
のと認識しています。いわゆる戦略に関わること、いわば、製品開発、顧客開拓、のよう
なものは、パッケージで提供される範疇のものではないかもしれませんが、SAPシステ
ムの場合は、どちらかというと、各社が共通して利用できる管理系の仕組みの方が多いも
のです。管理系の仕組みは、多様性があるといっても共通化しやすい、つまり、パッケー
ジ化しやすいものを提供しています。
各社ごとに違う、といっても客観的に見れば、それほど大きく変わらないということが
伺えるものです。その上で、第一段階で作り上げたものを各社がどのように活用するか、
どのようにコーポレートガバナンスを計っていくか、企業グループとしての資源をいかに
有効活用していくか、この観点に立って、お互いに相手の立場を尊重し、歩み寄り、協力
し合っていく、この辺りがポイントになってくるものと思われます。
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(2)新たな業務要件への対応。
パッケージを採用する場合の最大の関心事は、要件の適合性であると思われます。
業務要件がパッケージと合わない時、多くの方々が、業務をパッケージに合わせましょ
う。BPRをしていきましょう。トップダウンでプロジェクトを認知してもらいましょう。
というような会話をされるものですが、これまで吐き気がでるほど遭遇しました。
果たして、
・業務をERPに合わせることはできるのでしょうか?
・パッケージには我が社の固有処理を満たす機能はあるのでしょうか?
ユーザーの不安要因であり、最大の関心事であります。
例として、もしパッケージが保有する支払条件が月末締め/翌月払いだけだとすれば、
業務をパッケージに合わせることができるでありましょうか。決してそんなことはありま
せん。支払条件は取引先との交渉事でもあり、多様なのが当たり前なものです。
パッケージは、この多様性に対して、どのような答を持っているかが肝要であると思い
ます。その上で、多いに考え、多いに議論し、「我が社の処理がもしかして独自すぎるの
ではないか」「なぜ他社はこの機能で業務処理を実現できるのであろうか」「量的な影響
性はどれくらいなのであろうか」「ベンダーとして新機能を開発すべきではないか」と物
事を進めていくことが大切ではないかと思うものです。
パッケージアプローチを採用する場合においては、ソフトベンダーの対応能力の見極め
は大きな比重を占めるものです。また、必要な機能が具備されていない時の対応方法は、
プロジェクトの成功に大きく左右されるものです。
必要な機能がない時の対応は、以下の優先順位で対応することが賢明であると考えます。
業務とパッケージ
との相違点への対応
1.ソフトベンダーとの適宜なコミュニケーション
2.機能使用上の知恵/機能確認
3.開発要求
4.業務改善(BPR)
5.他ソフトとの連携・統合
6.追加開発(Add-on)
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1) ソフトベンダーとの適宜なコミュニケーション
必要機能がないと判断した時、ベンダーと適宜にコミュニケーションを図ることが大切
です。当たり前のような事でありますが、ベンダーとの交渉時にあっては、ベンダーサポ
ートの有償/無償の区別がつきにくい事、ユーザーが文書化の必要性を認識しないために
口頭での交渉が中心となり曖昧となってしまう事、欠如機能を判明するまでの苦労や存在
からユーザーがモチベーションを失ってしまう事、等の理由から適宜なコミュニケーショ
ンが図られない事があるものです。
2) 機能使用上の知恵/機能確認
ソフトウェアの使用法は多岐にわたるものです。表面上、機能が欠如していると判断し
たことがあったとしても、既存機能の枠組みで機能実現が可能な事もあります。ソフトウ
ェアで提供される業務処理の目的/手続方法を吟味することにより、欠如機能と判断され
たことが回避される事があります。さらに、ソフトウェアを使用する場合、ユーザーの思
い込みにより、使用機能を自ら制限することもあるものです。そのためにも、外部コンサ
ルタントを含めた第三者とコミュニケーションを図る中で検討を重ねることが有用です。
3) DR(Development Request)− 開発要求
1) 2) のプロセスを経たとしても機能欠如だと認識された場合、当該欠如機能をベンダー
が開発すれば問題は回避されます。しかし、ベンダーが開発を承諾することと実現までの
タイムラグを回避する必要があります。この二点が容認される状況であれば、最有効な方
法であるといえます。
4) BPR − 業務改善
欠如機能の存在が発覚した際、その機能が当社にとって必要な機能なのかを検討します。
大企業になればなるほど、伝統的な処理自体が標準であると思い込んでしまうケースもあ
り、他社が当該要件無しに満足して稼動しているのであれば、BPRの可能性が生じてく
るものです。
5) 他ソフトとの連携
一つのパッケージに全ての対応を求めなくとも、外部ソフトでのその対応がなされ、採
用パッケージとの統合が図れるのであれば対応法の一つであるといえます。
6) 追加開発(Add−on)
多くのプロジェクトでこのような判断することなしに、追加開発しか方策を見出さない
事例を見受けます。追加開発を否定するものではありませんが、次のような事項を考慮し
ておきたいものです。
<アドオンしても差し支えないもの、せざるを得ないもの> 善玉のアドオン
・既存処理と影響しないように、独立して処理を定義できるもの。
・マスタ登録やプロトタイプ時での大量データ作成。
・使用機能を限定しているため、他システムとのインターフェイス。
<アドオンすると悪くなるもの> 悪玉のアドオン
・ 既存処理と関連する処理
―>既存処理に変更を加えるため、バージョンアップ時に不具合発生。
・ 根幹処理部分の変更
−>パッケージ使用自体の否定といえ、パッケージ採用の意義がない。
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(3)展開コストや人的リソース。
水平展開に限らず、システム導入のコストは安いに越したことはありません。しかし、
安さを求めすぎると、品質の悪いものが出来上がったり、コンサルタントから、あそこは
ケチだからとモチベーションを失わせてしまったりと、特に、外部コンサルタントを採用
する際には、適正な価格で、お互いに納得のいく形態での折り合いをつけることが大切だ
と思います。水平展開の性格として、次のようなことが挙げられます。
− 既に実施した第一段階のものがあるので、専門性の高いコンサルは要しない。
− グループ各社との調整、利害関係者が増えてくることから、調整を多く要する。
− 少数精鋭というより、多くの人的リソースの投入が必要とされる。
グループ各社へ水平展開を実行する上で、人的リソースの投入を少なくしてのプロジェ
クト遂行は難しいものと思います。どうしても一定規模以上の投入は避けられず、その結
果として、場合によっては、第一段階の導入よりも高い金額になってしまうことにもなり
かねないものです。常識的に考えれば、苦労を重ねて、第一段階の導入が終了し、いざ、
これからが本当の本番だと水平展開の策定を行っている際に、桁数を疑うようなコンサル
タント費用に戸惑いを感じてしまうことがあるものです。つまり、次のような算式によっ
ての導入コストの策定がなされています。
導入コスト
コンサルタント数
=
=
コンサルタント数 x コンサルタント平均単価
A(会社数) x B(モジュール数)
コンサルタント数は、第一段階の時と比較して50%であっても、会社数によって
第一段階のものよりも投入量が多くなってしまう。
こうした結果から、第1段階の時よりも、金額が高い導入コストに直面して、社内外で
納得は得られない、そんな高いシステム投資をして、効果があるのかとのスパイラル議論
に陥ってしまうものです。一般的に、内部コスト(例:月50万)と、外部コスト(例:
月250万)には5倍程度の差があるものです。こうした状況に直面してしまうのは、
−
−
導入企業側に内部リソースが少なく、外部コンサルに委ねてしまう割合が高い。
外部コンサル側も、各社展開という性格上、一定規模以上のリソースを投入しない
と責任を果たせず人的リソースを余裕をもって見積もってしまう。
水平展開を遂行していくには、内部リソースを効果的に活用していくことが肝要だと思
います。多くの課題は、コミュニケーションや調整に起因することが多く、専門性のある
コンサルタントよりも、予め信頼ある人間関係が出来上がっている人達の方が適している
場合が多いものです。タスクの多くを外部コンサルタントに依存することなく、内外の役
割分担を明確にしながら、遂行していくことが求められると思います。
また、コミュニケーションやユーザー教育の効率化を図るために、イントラネットを構
築したり、社内ヘルプデスクの設置、等も役立つものです。
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(4)国、業種、商慣習等の違いへの対応。
ドイツが開発元であるSAPシステムは、決して画一的なものを提供していません。よ
く、アメリカや日本では、画一的(例:通貨や言語)なものがありますが、ヨーロッパで
生まれ育った開発者は、異なる言語、法律、通貨、商慣習、ということへの対応に幼少の
頃から慣れているものです。
SAPシステムにあって、一元管理(=共有)と多様性の尊重とは、データベース項目
としてのキー項目の依存(Dependency)性ということに象徴されるものです。
つまり、同一システムに別会社のデータが存在する場合において、「会社非依存」との
構造であれば、会社が異なっていたとしても同一のデータを参照することができ、逆に、
「会社依存」という構造であれば、同一システムに存在するデータであったとしても、会
社毎にシステム上の取扱いが異なってくるものです。
マスタやデータベースでの、「依存性」は、些細に見えることでありますが、このデザ
インをどうするのかということでほとんど全てが決定されるといっても過言ではありませ
ん。一般会計での勘定科目体系での依存性は、勘定コード依存のものと、会社コード依存
のものがあります。また、得意先/仕入先も、様々な依存性が考慮されています。共有化
するものと、違えるもの、この両者をよく使い分けることが肝要です。
この「依存性」の在り方は、SAPシステム構築にあっての開発側のノウハウの結晶で
あるといえるものです。そこには、業務要件を網羅し、様々な事例での経験を元にして始
めて良いデザインの仕組みが実現されるものです。
システム設定や運用では、多くのオプションが用意され、機能をよく理解していけば、
様々な要件にも対応できるものですが、時には、このことがカスタマイズ作業を複雑にし、
プロジェクトがうまくいかない要因にもなっていることがあるほどです。
各グループ会社へ展開していく際、第一段階と同様の要件を持つ場合にはさほど問題は
発生しないとしても、要件が異なる場合、第一段階でのシステム設定をそのまま利用する
ことができない場合があります。この場合、SAPシステムをよく理解していない場合に
は、各グループ会社での要件には対応していない、との錯覚に陥る場合があります。なぜ
なら、第一段階で設定されたものは、多くの取捨選択の結果であるからです。
つまり、SAPシステムは多くのプログラムが提供されていますが、カスタマイズ(シ
ステム設定)によって、一部のプログラムしか通過しない仕様を第一段階で組み立ててい
るものであり、要件が異なる場合に遭遇した場合には、まず、カスタマイズを変更するこ
とによって、使用していない標準プログラムを利用することが最大限の効果を引き出せる
ものです。この場合、カスタマイズを変更した場合、第一段階で組み立て上げたものに影
響が出ないかとの懸念が生じます。その懸念が現実のものになるか否かは、ひとえに、前
述した依存性ということに尽きるものです。
また、業種や商習慣の違いがプログラムで提供されていない場合もないわけではありま
せん。その事への対応として、SAPでは標準アプリケーションに加えて、業種別のソリ
ューションを提供していたり、各国毎に開発されている機能(特に人事管理等)がありま
すので、有効に活用することも得策だと思うものです。
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(5)コード体系
日本の航空会社−JAL(日本航空)、ANA(全日空)、JAS(日本エアシステム)は周知の
ことと思いますが、国際線となると国際規格によって航空会社を表すコードが2桁となり、
JL(日本航空)、NH(全日空)、JD(日本エアシステム)となるものです。特に、全日空の
NH は間違えやすいものです。優先順位だったのでありましょうか、AA はアメリカン航空、
AN はアンセット・オーストラリア航空が使用しています。
コンピュータ処理では、入力の利便性や処理速度向上等を図るために名称をコード化し
ているものですが、ともかくコードは身の回りに多いものです。個人情報であっても、国
会での議論にまでさえなる国民総背番号制、アメリカでは社会保険番号、クレジットカー
ドは4桁*4の16桁。特に会社組織となれば、会社毎での勘定コード、組織コード、得
意先/仕入先コード、、、統一した方が良いのか、統一できないものなのか、これに関わ
り会計システムの構築にあって、コード体系をどうするのかということは重要な位置付け
を占めるものです。
航空会社コードの日本の規格と国際規格との違いは一例です。国コード(日本は JP)や
通貨コード(円は JPY)のように、国際規格を利用できるものはよいのですが、コード体
系は、あまりにも多様性が存在しているものです。
多くのグローバル企業が、本社での経営管理を目的としたコード体系の在り方の課題に
直面しています。特に、一元管理をするために、親会社で策定したコード体系を各関係会
社に適用していただこうと試みるものですが、最終的に、業種が違う、国が違うことによ
り制度が違う、等の課題に直面して成果が得られないものです。
会計システムを例にとると、日本での勘定科目体系は、貸借対照表でいえば現金預金か
ら始まる流動性配列法でありますが、ドイツでの勘定科目体系は、固定資産から始まる固
定性配列法であります。さらに、業種による損益計算書上での科目は、不動産賃貸収入は、
不動産業を本業としているのであれば、売上高の一部を構成しますが、本業でない場合に
は、営業外収入の一部にしかすぎないものです。
このような状況下で、グローバル企業のコード体系の在り方の回答を求めていこうとす
れば、単体での各社固有のものと、グローバル管理で使用するものとのそれぞれのコード
体系を保有し、統合の過程にあっては、両者を関連付けるとの手法しかないのではとさえ
考えます。
そうでなければ、各国や業種毎に異なってのコード体系を維持し、かつ、グローバル管
理に資する経営管理を実現することができないからです。
コード体系をどうするのか、ということは大きな議論ではありますが、いたずらに、同
一のシステムを利用するから、一気にコード体系まで統一しよう、との試みは決して良い
効果をもたらしません。統一することが可能であるのであれば、それに越したことはない
と思いますが、統一に至るまでの過程をよく吟味し、統一することのメリット、デメリッ
ト、効果、影響、等をよく判断することが大切だと思うものです。
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Ⅱ.システム構築アプローチ
1.情報システムの変遷
システム構築アプローチの在り方を考察する際に、情報システムの変遷の経過を辿って
みることから、現状を分析し、将来の方向性を策定してみたいと思います。
情報システムの変遷
2000年代
ネットワーク・コンピューティング
クライアント/サーバー
ダウン・サイジング
1990年代
表計算/ワープロの発展
インターネット/
イントラネット
PCの普及
オンライン・システム
E
1980年代
R
P
1970年代
エンドユーザー・コンピューティング
大量データ処理
電算化の要請
1960年代
コンピュータは難しいもの
−1960年代
ユーザーが直接コンピュータに関わることは少なく、電算センターに処理を依頼して
答えを待つという時代であったといえよう。入出力の形態が人間の対話とは馴染みにく
いものが多く、プログラミング、カタカナや英語の氾濫、2進数による処理等、理科系
の技術者だけがコンピュータに関わる事ができるというような、コンピュータは「一部
の人だけの難しいもの」とのイメージがあった時代だといえるのではないでしょうか。
−1970年代
大量データの受け渡しのバッチ処理から、ネットワークを利用したオンラインシステ
ムが登場し始めた時代であったといえます。飛行機や鉄道の予約・発券システムや金融
機関でもCD(キャッシュ・ディスペンサー)が出現してきます。しかしながら、まだ
まだコンピュータの利用者は一部にすぎず、高価格、使用上の難易度、等から大衆化さ
れているとは言い難い時代であったように思われます。
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−1980年代
パソコンやワープロが登場し始めました。最初の頃は、稟議書や年賀状をワープロで
作成すれば、「心がこもっていない」等の批判が寄せられました。しかし、現代となっ
ては、手書きの稟議書は「下書き」との誤解さえ持たれる時代へと変遷してきています。
パソコンの普及は、情報システムの変遷に大きな影響を及ぼしました。
特に、業務においての表計算ソフトの利用が良い例として挙げられます。さらに、こ
れまで大型汎用機に頼ってきた業務処理が、パソコンで処理することが可能となってき
ました。一例として、EUC(エンド・ユーザー・コンピューティング)との手法が登
場し、報告資料の作成や簡単な加工は、情報システム部門に頼らなくとも、ユーザー業
務部門で遂行できるようになってきました。
パソコンの利用者が増えてくると、操作や周辺機器(プリンタ等)との接続の難かし
さを排除する技術進歩がなされてきます。普及させていくのに欠かせないからです。
操作としてのGUIが誕生し始めるのもこの頃であり、端末画面としても英文字だけ
の無味乾燥なものから、親しみやすさを追求し始めてきます。操作もキーボードだけで
なく、マウスの利用が登場し始め、ソフトウェアの開発においても、CASEツールと
呼ばれるようなプログラムを作成するプログラムが登場し、コンピュータが大衆化され
てくる幕開けであったといえ、いわゆる汎用的な会計ソフトが登場してくる時代であっ
たと分析しています。
−1990年代
パソコンが普及してくると、システム開発の重点が高度のコスト効率のよい計算機能
から利用時の快適性を優先する方向に向かい、かつ、ネットワークによりコンピュータ
システム同士が接続する事が可能になって、システムを二つ以上のコンポーネントに分
割するというクライアント/サーバーシステムが誕生する経緯となってくる。
ネットワークは、同一建物内だけのLAN(Local Area Network)に止まらず、この年
代の後半に加速度的に普及するインターネットの到来により、コンピュータ利用が大き
く変わり、マイクロソフト社の Windows95の発表は、社会に大きく影響を与え、イン
ターネットの普及と合わせて、パソコンの利用者は、広く一般家庭にまで及ぶこととな
りました。
こうして情報システムの変遷を考察していくと、パソコンの普及は大きな影響をもた
らしました。企業にあっても一人一台のインフラ整備がなされ、利用者が増えること自
体が、ソフトウェア市場のマーケットの拡大につながり、新しいソフトの台頭・開発が
著しくなってきました。言い換えれば、「ニーズに合ったソフトウェアを開発する」と
の考え方から、「パッケージソフトを購入して利用する」との方向性になってきたもの
と分析しています。さらに、コンピュータがユーザーにとって親しみやすくなったこと
から、コンピュータを専門とする会社や情報システム部門と、ユーザーとの垣根がなく
なってきているという側面も生じてきました。
このような背景を考慮した上で、パッケージを利用するシステム構築のアプローチは
どうあるべきかを考察していきたいと思います。
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2.パッケージアプローチの特徴
SAPシステムの開発者とユーザーとの議論の事例ですが、
・要件はある程度決まっている。
・しかし開発がなかなか進まない。
・本番稼動日から逆算した、テスト、検証のスケジュールが迫っている。
という状況の下、ユーザー側から「システム化は不要だから手作業でやる。手作業で実
施すると他の業務と関連してどのように処理すればいいか教えてほしい」との要望があり、
開発者からは次のような返答があったことがありました。
「手作業で行う手続きを明確化できればシステム化は簡単なんだ。」
どちらの言い分も正論であろうし、このやり取りから感じた事が二つありました。
・業務要件があいまいなままシステム化はできない。
・全ての業務要件を明確にしなくともプロジェクトの進行はできる。
一見、相反しているような両者です。ここで特筆したいことは、パッケージアプローチ
によって遭遇してきた事象であることです。多くのシステム構築プロジェクトでは、要件
定義 −> 基本設計 −> 詳細設計 −> 開発 とのプロセスを経ていきます。たしかに、
要件が定まらないとシステム化は不可能です。AI(人工知能)が発展していったとして
も、予め必要とされる判断事項をプログラム化しておく必要があることと思います。
しかしながら、パッケージアプローチを採用する場合、要件を全て明確にしないと次の
ステップに進めないかというと決してそういうことはないものです。なぜなら、既に開発
されたプログラムがあり、要件定義を終了させることなしに、ユーザーがソフトウェアを
使用することが可能となるからです。むしろ、ソフトウェアベンダーの想定する要件との
適合性が問題となるものです。
要件定義の終了にせよ、適合性分析の終了にせよ、いわゆる上流工程を終了しなければ
次のステップには行かないとの考え方は、パッケージアプローチの冥利を引き出せないも
のです。たとえ、現段階での要件定義を終了させたところで、後述する環境変化対応でも
述べますが、要件は変化していくものです。
むしろ、要件の全てを確定させないで、プロトタイプで具現していくとの手法を採る方
が効果的な側面があるものです。要件定義の段階では、入出力項目やプロセスを全て決定
せず、プロトタイプに必要な事項の収集検討に止めるのが利口であると思います。
なぜなら、入力、処理、出力、の全てを決定、記述する事自体に多大な労力を要し、S
APシステムが単にその業務要件を実現するツールに終わってしまい、ユーザーが想定し
ていない良い機能を利用できない可能性があること、机上での Fit/Gap からは要件適合性
の結論を見出しにくい等の理由があるからです。
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機能レベルの検討
機能レベル
追加
要件分析
③ ユーザーが予期しない
パッケージでの良い機能。
要件定義からは生じない。
プロトタイプによってのみ
検証されるものである。
② 新要件でもパッケージにない
現状
システム化要件
① 現状あってパッケージにない
パッケージ
このように、ユーザー要件の全てが網羅されているとは保証はありません。
②の部分はあきらめがついたとしても、①の部分が存在する場合には、パッケージへの品
質の信頼性が損なわれます。ここで、次のような議論ができるところに冥利があるもので
ありますし、パッケージを利用してのBPR(業務改革)ができるものです。
・なぜ機能欠如があるのに他社は稼動しているのであろう?
・コンサルタントが無いといっていることは本当なのであろうか?
・③のより良い機能を利用すれば、①②が消滅していくのではないか?
・何よりも、SAPシステムが提供する③の良い機能を利用しないのは損ではないか?
したがって、要件定義に必要以上の時間をかけすぎ、「やってみなければわからない」
ことに対して、机上での会議を中心とするよりも、予め開発されたプログラムの上で、ど
のように具現されるのか、どの要件が足りないのか、という事をソフトウェア上で検証し
ていくことが、結果としてもっとも早く効率的にシステムを構築できるものです。
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経験値として、システム構築に関わる投入量(コスト)、時間の経過は、次表のように
なっていくものです。
グラフでの縦軸を投入量、横軸に時間の経過をとると、作り込みのアプローチの場合に
は、要件定義 −> 基本設計 −> 詳細設計 −> 開発 と辿っていくことから、右上がり
の曲線を描くものでありますが、パッケージアプローチの場合には、最初から最後まで、
ほぼ同レベルの(場合によっては右下がり)線を描いていくものです。
投入量と時間経過
投入量
作りこみ
パッケージ
時間の経過
そして、色で示した部分の面積がコストと捉えることができるものです。そうして、右
上がりの作り込みでの総面積と、一定レベルのパッケージアプローチの総面積を比較する
ことでのコスト比較が可能となるものです。
ここで、注目したいことが、初期段階では、パッケージアプローチの方が負荷が大きい
ことです。これは、初期段階で要件分析、パッケージ評価、評価のためのパッケージ機能
の理解、要件との適合性、等が一時に求めらるもので、パッケージを基とした成長曲線が
追いついてこないことによるものです。
この段階を乗り越えることができないと、パッケージを利用する冥利がなくなってしま
い、一定時期(例えば、作り込みの線とパッケージの線とが交差する時期)になっても、
結局のところユーザー側での作り込みを余儀なくされ、一定時期までは負荷が高いパッケ
ージアプローチでの線を辿り、その後は、作り込みの路線と同じ経過を辿っていくことか
ら、システム構築上でのコストたる総面積は最大となってしまい、最悪の事態となってし
まうものです。
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パッケージを利用することによる成長曲線は、単純な右上がりなものではありません。
むしろ、2次曲線や4次曲線のようなものを描いていくものです。
パッケージでの成長曲線
成長度合い・
成果
1
投入
つまり、「1」に達するまでは、成果を見出しにくい。「0.1」の投入の結果が「0.01」
であり、四次曲線であればなおさらであります。「1」 に達するまでは、忍耐が必要であ
り、システムと触れ合うことが大切であり、事例を探求すること、仕組みを理解すること
が必要なものです。一旦、「1」を超えれば、「2」の投入で「4」になり、「3」の投
入で「9」になっていくものです。
第一段階での導入にあっては、ここでいう「1」に達しないレベルで試行錯誤し、無駄
とも思える時間を費やしてきたことも多いことと思いますが、一旦、一定レベルを超えて
くると次の展開では加速度的な進捗を可能にすることができるものです。
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Ⅲ.IT技術発展と教育
教育基本法の第1条には教育の目的が謳われ、「教育は、人格の完成をめざし、平和的
な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任
を重んじ自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならな
い。」とあります。IT技術の発展に伴って、教育の重要性が高まっていますが、再度、
ここでの「人格の完成」に注目したいものです。
社会人教育にあっては、成人を前提としているがゆえに、「技術や業務知識の取得」の
みに走りがちでありますが、営業支援、コンサルティング、業務支援、等々の局面を想定
する場合には、結局のところ、人間関係の問題に起因することが多く、人格を無視するこ
とはできないものと思います。事実、システム構築のプロジェクトの失敗例には、技術的
な側面よりも関係者間での調整が採られていないことが多いものです。
したがって、「なんのために技術を習得するのか」、「技術をどう生かすのか」との命
題抜きにして、教育の目的は達成されず、そうした意味で、単なる技術を習得するだけの
教育投資だけでは不十分だと思うものです。
コンピュータ教育の停滞の理由として、佐藤宗弥氏は「会計教育の再検討−情報処理技
術との関連において−」で、
(1) 教員の側の能力の不足
(2) 教育時間の不足
(3) 良いソフトウェアの不足
(4) 情報機器の投下資金の不足
(5) 実務教育に対する偏見
(6) カリキュラムの硬直性、
との6つを挙げられています。
バブル経済崩壊後、景気停滞やリストラが取り上げられている中で、コンピュータシス
テム構築に関わる業界での人不足は非常事態といってもよいぐらいの状況にあります。
「良い人がいない」「人が足りない」との状況から、教育への資源配分がなされないこ
とから悪循環に陥り、解決される方向には向かっていません。
良いシステムの構築との命題は、結局のところ、教育に行き着くところであり、社会全
体が教育のためにとの方向に向かないことには、解決の処方箋はないものとさえ言い切れ
るものであります。
様々な問題解決は、根本である教育に着目するしかないと感じ、教育の重要性は明らか
ではありますが、一朝一夕に実現できるものでもないものです。
少ない記述ではありますが、幾つかの提案を交えて感じていることを述べさせていただ
きます。
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1.教育は必須の活動であると認識する。
以前勤めていた会社では、シカゴ郊外に大規模な研修センターを保有し、世界中からの
スタッフが集合離散を繰り返すほどの教育投資を施していました。また、売上の10%は
教育に投資をしていると入社前から聞いていたものです。
教育は一朝一夕には果実が得られないとわかりつつも、ビジネス活動の局面では、日常
の多忙さや直接的な目的に追われ、ついつい教育への投資(コストと時間)がおろそかに
なってしまうものです。その結果として、目先の必要性から、短い時間で一揆に成果を得
ようと、結局消化不良に陥ってしまい、土台が確かでない状況から進捗していくため、さ
らに、悪循環になってしまうとの状況をよく見かけるものです。まして、顧客から有償で
コンサルタント収入を得る担当者が、仕事と並行してコンサルタント自身が該当分野の教
育を受けているのは論外と言うほかありません。
かといって根本的解決法はないのですが、年間の活動時間の内数%は教育に充てるとか、
売上の数%は教育に充てるとか、稼働率や利益に関わらず、教育への投資をしていく等の
全社的な方針の策定のようなものが必要ではないかと思うものです。
各人の主体性に委ねると言ってしまえばそれまでですが、全員が教育の大切さを認識し
ない限り、悪循環を断ち切ることはできないのではないかと思うものです。
2.交流を活発に実施すること
IT技術の進展に伴って技術革新は著しく、自社内の資源だけでは環境変化の波につい
ていけないものです。その点において、各方面との交流を実施することが肝要であると思
うものです。
日本の教育制度を顧みるとき、ひとたび大学を卒業すれば、学問とは縁のない毎日を社
会で過ごしてしまう事が多く、夜学や通信教育、社会人教育が全くないわけではないが、
学問は22歳までと決め付けられ、多くの研究者と費用を投じる大学との交流がないのは、
もったいない気がするものです。
社会と教育の融合−これから推進するべき課題ではないかと思うものです。経団連人材
育成委員長の浜田 広氏(リコー会長)は、日本経済新聞で「企業も教育改革に協力を」と
の論文を寄せられ(経済教室:2000 年 5 月 4 日付け)、(1) 教育の情報化 (2) コミュニケ
ーション能力の強化 (3) 創造性のかん養 (4) 産業技術を支える教育の強化 (5) 基礎学力の
維持・向上 との緊急に実行すべき課題に触れ、最後に、人材育成の根本的な問題として、
人間教育に着目され、10の具体的な提案を述べられています。
企業は大学との交流を図り、また、大学も実務社会での企業の考えを採り入れることが
お互いにとって効果的なものとなっていくものと思いますし、今回のセミナーで、青山学
院大学の先生方と共に実施することができたことにも意義を感じていいるものです。
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教育論で有名な「エミール」(ルソー著 今野雄一訳 岩波文庫)の序文では、「これを
出版したものかどうか、わたしは長いあいだ迷っていた。そして、この仕事をしながらも、
わたしは、ニ、三の小冊子を書いただけでは、一冊の書物といえるようなものをなかなか
書けるものではないことを、たびたび感じさせられた。もっとよいものにしようとむなし
い努力をしたすえに、わたしはいま、これをこのまま発表すべきと思っている。一般の関
心をこの方面にむけることが必要だと考えるからであり、かりにわたしの考えがまちがっ
ているとしても、ほかの人のよい考えを生む機縁となるなら、わたしはまったく時間をむ
だにしたことになるまい、と考えるからでもある。世間から遠く離れて暮らしていて、書
物を発表しても、誉めてくれる人もなく、弁護してくれる味方もなく、それについて人が
どう考え、なんというか、それさえ知らないでいる人間は、たとえまちがったとしても、
そのまちがいを人が検討もせずにうけいれはしまいか、と心配する必要はない。」と述べ
られています。
当セミナーでご紹介した事例が、全て貴社にあてはまるとは思いません。また、ご紹介
した事例がまちがっているとも思いません。ただ、大切だと思うことは、主体性を持って
事例を探求し、良いことは取り入れ、誤っていると判断されたことは反面として利用して
いけばよいと考えます。
本年 6 月に、経済産業研究所(内閣府−経済財政諮問会議)から、日本の優秀企業を分
析した「動け!日本の優秀企業研究」とのレポートが公表され、次の 6 か条のポイントの
優秀企業の特色をまとめられていました。
http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0621/0621item5.pdf
・取り組む事業の範囲ー分からないことは分けること。
・論理的(ロジカル)であること−常識や他企業の成功例を無批判に受け入れるの
でなく、自己についてきちんと考えて、考えて、考え抜くこと。
・自社を客観的に眺め、不合理な点を見つけられること。
・危機を企業のチャンスに転化すること。
・身の丈に合った成長を図り、事業リスクを直視する。
・経営者が持続性のある規律の文化を企業に埋め込んでいること。
結論としては、当初は米国型の指標、経営手法を採り入れた企業が多いのではないか、
と推定したが、これは良好な企業、良好でない企業ともに観察され、いわゆる米国型の導
入自体はあまり重要とは判断していない。結局最後にたどりついた優秀企業のイメージと
は、愚直に、まじめに、自分がわかる事業をやたら広げずに、きちんと考え抜いて、情熱
をもって、取り組んでいる企業!というまっとうなものであり、大変参考になる視点だと
思いましたので、最後にご紹介させていただきました。
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<HBS代表 広川 敬祐 のご紹介>
1983年
公認会計士第二次試験合格
1985年
創価大学経営学部卒業
1985年 − 1987年
プライスウォーターハウス 東京事務所勤務
1987年 − 1994年
アーサーアンダーセン 大阪事務所勤務
1994年 − 1998年
SAPジャパン株式会社 勤務
1999年
公認会計士協会東京会コンピュータ委員会委員長
(諮問事項:連結財務諸表とコンピュータシステムについて 等)
現在 公認会計士協会東京会常任幹事
<職務経験実績>
(会計監査)
・大手建設業、製造業、流通、サービス業、金融等 約50社の企業の監査
(システム構築コンサルティング)
・大手建設、ガス会社、家電メーカーの連結システム構築のコンサルテーション
・大手流通、家電メーカーの会計システム構築のコンサルテーション
・大手家電メーカーの製販統合システム構築のコンサルテーション
(SAP関連)
・大手商社の SAP R/3 導入(連結会計)に関するコンサルテーション及び開発サポート
・数十社にわたり、SAP R/3 導入にいたるまでのプリセールスサポート
・大手メーカー(その他製造)の SAP R/3(FI/CO)導入に関するコンサルティング
・連結会計導入実績11社
<その他>
・ニューヨーク州立大学バッファロー校に短期留学
・SAP KOREA で韓国の聴衆を対象に連結会計セミナーを実施
・論文「連結財務諸表とコンピュータシステムの係わり合い」
「会計ソフトと公認会計士業務の係わり合い」
(公認会計士協会東京会 業務資料集)
<お気軽にご連絡ください>
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TEL 03-5744-5177
FAX 03-5744-5179
E-mail [email protected]
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