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2015年12月1日発行(毎月1回1日発行)ISSN0009−3874 CODEN:CKNKAJ 畜産 の研 究 Sustainable Livestock Production and Human Welfare 2015 第69巻・第12 号 次号 70 巻 1号より 目 次 小特 集 産業 動物 株式会社 養賢堂 日本畜産環境学会第 14 回大会について 健全な環境を作り,人の健康を守る…………中井 裕 飼料を極め,環境を守る………………………古谷 修 「東アフリカと東南アジアにおける水の安全安心」 …………………………………………………板山朋聡 酪肉近と研究開発・技術普及 その 6 …………阿部 亮 変わりつつあるヨーロッパの鶏卵産業 ……………ハンス・ウイルヘルム・ヴィントホルスト著 杉山道雄・大島俊三・棚橋亜矢子・山内加代子共訳 反芻動物の生産に関する最近の研究動向(4) …芳賀 聡・鈴木 裕・加藤大地・加藤和雄・盧尚建 小型実験動物の飼育施設で発生する悪臭に関する考察 ……………………………………祐森誠司・池田周平 放牧酪農を軸に多彩な商品開発で販路を広げる …………………………………………………滝川康治 シカ肉の有効活用を目指して ………………………押田敏雄・青木和夫・坂田亮一 実践飼料学の失敗と成功(4)…………………本澤清治 飼料学(128)………………………岡野圭介・石橋 晃 子牛代用乳−WPC,SOWE, リジン , メチオニン− …………………………………………………大成 清 パラグアイにおける石こう(CaSO4・2H2O)による 赤色酸性土壌の改良事例……………………冨田健太郎 Dr.Ossy の畜産・知ったかぶり(54)…………押田敏雄 ミス・アメリカが農業・畜産を支える…(バイソン) 1010 1021 1029 995 999 1005 1034 1037 1043 1053 1059 1065 1073 1079 1080 畜産界ニュース………………………………………………1081 ∼1083 総目次…………………………………………………………1084 ∼1088 1000 畜産の研究 第69巻 第12号 (2015年) ●EU における鶏卵産業に対する新たな課題の短観 の提示 第 1 部:2000 年と 2013 年の間の世界の鶏卵 生産におけるヨーロッパと EU の役割の変化 表 1:世界の大陸別採卵鶏羽数の 2000 年から 2013 年 までの展開(単位:百万羽)(資料: FAO データベース) 大陸別 2000 アフリカ アジア 本報告の第 1 部では 2000 年と 2013 年の間におけ 2010 増加率 (%) 2013 378 505 515 36.2 3,091 4,146 4,494 45.4 ヨーロッパ 687 788 913 32.9 る世界の鶏卵生産の動きを扱う。1990 年と 2000 年 北米* 496 567 571 15.1 の期間は前報において詳しく述べたので(Windhorst 中南米 361 477 520 44.0 2012 and 2014) ,今回の分析は 2000 年から始める。 オセアニア 18 18 21 16.7 5 ,0 3 0 6 ,5 0 1 7 ,0 3 4 3 9 .8 アジアの台頭が起きる前の 1988 年までは世界の 鶏卵生産はヨーロッパが主導していた。旧ソ連邦と 東ヨーロッパにおける政治経済システムが崩壊し たので,1999 年代当初においてヨーロッパの生産量 世界計 * カナダ,USA 及びメキシコ 表 2:世界の大陸別採卵鶏羽数の割合の 2000 年から 2013 年までの変化(単位・%)(出典: 筆者の計算による) 大陸別 2000 2010 2013 アフリカ 7.5 7.8 7.3 -0.2 2000 年における総生産量はまだ 1980 年代の量と比 アジア 61.5 63.8 63.9 +2.4 べると依然として 100 万トンも少なかった。2000 ヨーロッパ 13.7 12.1 13.0 -0.7 年と 2013 年の間で世界の産卵鶏羽数は 50 億羽から 北米* 中南米 9.9 8.7 8.1 -1.8 7.2 7.3 7.4 +0.2 オセアニア 0.4 0.3 0.3 -0.1 1 0 0 .0 1 0 0 .0 1 0 0 .0 はかなり減少した。鶏卵生産が回復したとはいえ, 70 億羽へ,すなわち 39.8%増加した(表 1) 。相対 成長率ではアジアが最大で,北米が最低であった。 ヨーロッパにおいては, 産卵鶏群は 2 億 2,600 万羽, すなわち 32.9%増加した。その主な理由は東ヨー ** 世界計 変化 (%) - * カナダ,USA,及びメキシコ ** 少数処理のため合計値は一致しない 2010 2000 2013 ロッパの鶏卵産業の回復にあった。アジアと中南米 を除けば,他のすべての大陸は,これらの大陸が 2000 年に維持していた世界の産卵鶏数に占める割合 を維持できなかった(表 2,図 1) 。最も多くの産卵 鶏数を維持したヨーロッパの十大国は表 3 に示され ている。しかしながら,FAO が報告したロシア連邦 とウクライナの産卵鶏数は現実とは違っている注 1)。 このことは,脚注1に表記したデータに従えば,順 位が変わる。2013 年ではロシア連邦は 1 位であり, 計:50億羽 アフリカ 計:70億羽 計:65億羽 アジア 欧州 北米 中南米 オセアニア 図 1 世界の大陸別採卵鶏羽数の割合の 2000 年から 2013 年までの変化(単位・%)(資料: FAO データベース) ウクライナは 2 位である注 2)。 注 1)IEC の 2014 年の年次報告はロシアの産卵鶏数を 1 億 350 万羽としている。Nobert Mischke (IEC 報 告者)は筆者への個人的情報でウクライナの産卵 鶏数を 9,800 万羽であると知らせてきた。生産量 (表 8)と比較するとこの数値は現実的である。 FAO の報告数には,若雌雛とブロイラー生産用の 母鶏が含まれているのではないか。 注 2)脚注 1 のデータ問題にもかかわらず,表 1,2 および 3 のデータは変更していない。なぜなら,FAO のデータ を,ヨーロッパのみならず,全世界のものも再計算 せねばならなくなる。飼養方式を扱ったリスボン での Business Conference の特別報告でもロシア連邦 の産卵鶏の数では小さい数を使った。 世界の鶏卵生産は 2000 年の 5,120 万トンから 2013 年の 6,830 万トンへ,すなわち 33.3%増加し た。 アジアは 1,080 万トン増で最大の絶対増を示し, 中南米とアフリカが最大の相対成長率を示した。 ヨーロッパにおいては,2013 年の生産量は 2000 年 よりもおよそ 150 万トン増えた。 にもかかわらず,すべての大陸の中でヨーロッパ は最低の相対成長率であった(表 4)。この同じ期間 に世界の鶏卵生産に占める割合は 2.5%減少した結 果,2013 年では僅か 16.0%になった。北米諸国も 世界の鶏卵生産のシェアを維持できず,1.4%減ら した(図 2) 。 1005 反 芻 動 物 の 生 産 に 関 す る 最 近 の 研 究 動 向 (4) 芳 賀 第4章 聡 *,**・ 鈴 木 裕 *・ 加 藤 尚 建 加 藤 和 雄 *,***・ 盧 泌乳生理機能と乳量制御 1 . は じ め に 大 地 * ・ *,*** 一方,30 年前と現在でこれだけ泌乳能力が違うと いうことは,ウシの代謝機能システムもそれ相応に 変化していることが考えられる。本連載において キーワードにもなっているが,近年のオミクスに 家畜の生産能力は生理・飼養・育種・生殖・行 よる網羅的解析手法の発展と一般化が急速に進んで 動学など様々な研究分野の努力のアウトプットと いることを考慮すると,現在の「高泌乳」能力を して,確実に向上してきた。例えば,農林水産省 支える分子メカニズムおよび代謝ネットワークの 1,2) を参照し,日本国内の乳牛 解明も急速に進展していくにちがいないだろう。 の泌乳能力推移を確認してみよう(図 1)。1982 年 本章では,高泌乳能力を発揮する「ウシ乳腺」の の改良動向データ 1乳期の平均乳量は 5,200kg だったが,国内の乳 生理機能研究に関する,最近のトピックスを紹介し 牛の泌乳能力は上がり続け,2013 年には 8,198kg アップデートすることで,今後の酪農生産の向上に を記録している。これはつまり単純計算すると, 貢献できる泌乳生理研究の発展性について考えて 乳牛の泌乳量が 30 年間毎年約 100kg ずつ向上して みたい。 きたことを示している。乳量増加により酪農家の 経営は支えられてきたが,これには育種改良や飼 2 . 乳 腺 組 織 養学研究だけでなく,泌乳生理研究の発展による まず乳腺組織(Mammary gland tissue)の基本に 乳腺機能の基礎的解明も大きく貢献している。 触れておきたい。ヒトも反芻動物も Mammalia(哺 8500 乳類)に分類されるが,そもそもの語源はラテン 8000 語の「乳房の」に由来する 牛乳生産量(kg) 。長きに渡る進化の 過程で,現在の哺乳類の祖先は子宮や胎盤そして 7500 乳腺という特徴的な組織を獲得することで,妊娠- 7000 分娩-泌乳という生理機能を有し,仔を育てるという 6500 繁殖戦略を講じてきた。乳腺はもともと汗腺が変化 6000 した外胚葉に由来する外分泌腺であり(その進化 5500 の過程をカモノハシにみることができる 3)),泌乳 5000 (Lactation)とは仔のために,この乳腺組織において 4500 4000 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 図1 3) 母体の血液から栄養素を取り込んで,ミルクを合成 し分泌する一連の生理現象である。ところが,ホル 年推移 スタイン種を代表とする乳牛は,生産動物として 日本国内の乳牛(経産)1頭当たりの1乳期 平均牛乳生産量の推移 長年育種改良を加えられ,仔牛が必要とするより (グラフは引用 1,2 のデータを基に著者作成) もはるかに多い泌乳量を生産するようになった。 図 2 は,同一個体のホルスタイン乳牛において, * 東北大学 農学研究科 動物生理科学分野 (Yutaka Suzuki, Daichi Kato, Satoshi Haga,Kazuo Katoh, Sanggun Roh) ** まだ妊娠中の乾乳期と分娩後泌乳を開始した時の 乳房を比較した写真である。サイズの違いが一目 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草 瞭然である。泌乳期の乳腺組織は活発にミルク合成・ 地研究所 分泌を行い,またそれらを一時貯蔵するタンクに *** 那須研究拠点 東北大学大学院農学研究科 家畜生産機能開発学寄付講座 0369-5247/15/\500/1 論文/ JCOPY 1006 畜産の研究 第69巻 第12号 (2015年) される実質部位と,その周りに存在する支質部位 (結合組織や脂肪組織)により構成される。乳腺胞 を 構 成 し て い る の が 乳 腺 上 皮 細 胞 (Mammary epithelial cell: 図 3AB)であり,この細胞が乳成分 基質の取込み,乳成分の合成,分泌を主に担当し ている。乳腺上皮細胞の増殖,分化,乳管の発達, 実質/支質存在比は春季発動-妊娠-分娩-泌乳-乾 乳というステージの変化に伴ってダイナミックに 変化していくが,これらは内分泌支配,つまりプ ロラクチン,成長ホルモン,糖質コルチコイド, インスリン,エストロゲンおよびプロジェステロ ンなどのホルモンにより絶妙に制御されているこ 図 2 ホルスタイン種乳牛の乳房の比較(左右同一個体) 左)乾乳期間中(妊娠後期)の乳房,右)分娩後泌乳を開始し た乳房 (著者撮影:農研機構畜草研那須研究拠点) A とが分かっている。内分泌ホルモンによる乳腺機 能制御については古くから研究が進み,様々な知 見が得られてきたが,いまなお進展を続ける泌乳 生理学の最重点分野である。故に,これら内分泌 ホルモン一つ一つの基礎的な機能,役割について は数多くの素晴らしい論文や専門書等に詳しく解 説されており,そちらを読んで頂くことにして, 本章では,生産という観点から「乳量(Milk yield) 制御に関する泌乳生理機能」に焦点を当てる。 3 . 乳 腺 血 流 量 乳牛の泌乳能力が上がり続けていることを冒頭 で述べたが,乳量を決定する重要な要因として, まず「乳腺血流量(Mammary blood flow)」が挙 B げられる。ミルクは血液成分を原料として,乳腺 上皮細胞で合成されるため,供給源の血液が乳腺 に多く流れ込んでくる方がより原料を多く調達で きる,というのはイメージしやすいであろう。 Linzell(1974)はサーモダイリューション法を用 いて,乳量と血流量に密接な関係を見出した 5) 。 乳牛の場合,1kg 泌乳するためにおよそ 430L の 血流量が必要とされている 6) 。では,血流量増加 には何が必要か。それは血液を乳腺に届ける道, つまり血管を増やすことである。基礎となる血管 からどんどん枝分かれして,血管が網目のように 図 3 ウシの乳腺構造と乳腺上皮細胞 A)乳腺構造の模式図(転載:上家, 1983)および B)in vitro 培養条件下のウシ乳腺上皮細胞(著者撮影) 増えていくことを血管新生(Angiogenesis)という。 農研機構北海道農業研究センターの中島ら(2009)は乳 腺血流量を左右する血管新生メカニズムの一端を なっているため,ここまで大きくなるのである。 解明した 7)。ウシ乳腺上皮細胞“自ら”が,血管の では,ウシの乳房の中,つまり乳腺組織の構造を 新生や透過性を亢進する因子である血管内皮増殖 見てみよう(図 3A)。乳腺は乳腺胞と乳管から形成 因 子 (Vascular endothelial growth factor: VEGF) を 1021 飼料を極め,環境を守る ―飼料や栄養の基礎を理解して,豚からの窒素やリンの排せつ量を減らす― 古 谷 修 * わが国の畜産業にとって,ふん尿の処理,利用が パク質であるが,前二者は水素,炭素および酸素から 依然として重要な課題であることには変わりないが, なり,消化吸収されたものは体内で使われると水と 最近の 20 年間で,ふん尿の処理,利用といった従来 二酸化炭素になってきれいさっぱりと無くなって 型の技術だけではなく,飼料や栄養の面からふん尿 しまう。ところが,タンパク質にはそのほかに窒素と や窒素,リンの排せつ量そのものを減らすための技術 硫黄が含まれているためそういうわけにはいかず, 開発が著しく進展した。 体内で余った窒素は主に尿素として尿中に排せつ 筆者の手元に「家畜栄養学」 (森本宏著,養賢堂, され,環境負荷の原因になる。また,硫黄は硫化水素 1960)がある。学生時代の教科書として当時の最新 などの臭気のもとになる。三大栄養素に,無機物 の知識をこれで学んだが,その後 50 余年が経ち, (ミネラル)とビタミンが加わって五大栄養素という。 家畜栄養学は大きく変わった。エネルギーの評価単 養分は体内での役割によって分類したもので,エ 位では,かつての中心であった可消化養分総量 ネルギー,タンパク質(アミノ酸),無機物および (TDN)は今や風前の灯,米国の飼養標準に相当する ビタミンに分けられる。エネルギー源には主に炭水 NRC(豚,2012 年版)では正味エネルギー(NE)の時 化物と脂肪が当てられ,タンパク質は筋肉や血液な 代になった。また,タンパク質の評価単位であった どの源になるが,場合によってはエネルギー源とし 粗タンパク質(CP)や可消化粗タンパク質(DCP)も ても使われる。なお,飼料のエネルギー含量はボン 影が薄くなり,個々の必須アミノ酸レベル,しかも ブカロリーメータ(熱量計)という装置で自動的に 回腸消化率にもとづく有効アミノ酸で飼料配合設計 測れるようになっている。炭水化物,脂肪およびタ がされるようになっている。家畜の飼養標準と聞いて, ンパク質のエネルギー価〈燃焼価,燃焼したときに TDN は何%,CP(DCP)は何%などと「表から飼 生じる熱量〉は,それぞれ,4,9 および 5.6kcal/g 料中の各養分含量を読み取る」方式を思い浮かべる である。 としたら,残念ながら半世紀前の教科書からあまり 2)タンパク質からアミノ酸へ 進歩していないことになる。現行の飼養標準では, タンパク質はエネルギーとともに重要な養分で 個々の養豚経営における豚の能力,給与飼料の種類 あり,また,タンパク質飼料原料は一般に高価なこ の違いなどに応じて適切な「自前の」養分要求量が ともあって,これらを合理的に過不足なく給与する 把握できるようになっている。ふん尿や環境汚染物質 ことが豚の飼養上きわめて大切なこととされてき の栄養的制御による排せつ量低減についても十分 た。ところが,豚(ヒトや鶏でも)が要求するのは, な解説がなされている。 実際には,タンパク質そのものではなくそれを構成 ここでは,豚の生産性は維持しつつ,ふん尿による している 20 種ほどのアミノ酸である。このうち, 環境負荷を飼料給与面から減らす取り組みについて 豚の体内では合成されない,あるいは合成が十分で 紹介するが,これを理解するためには飼料や栄養の ないアミノ酸を必須アミノ酸(リジンなど約 10 種 基礎知識がどうしても必要である。 ある)と呼ぶが,飼料原料によって必須アミノ酸相互 1. 飼 料 ・ 栄 養 の 基 礎 知 識 1)栄養素,養分とは何か 三大栄養素といえば,炭水化物,脂肪およびタン * 農研機構フェロー,元畜産環境技術研究所 (Shu Furuya) の比率は著しく異なる。一般に養豚飼料ではリジン やトレオニンが不足するが,欠乏するアミノ酸がある と豚の発育や繁殖成績はそのレベルに低く合わされ てしまい,他のアミノ酸がいくら多くてもそれらは 0369-5247/15/¥500/1 論文/JCOPY 1022 畜産の研究 第69巻 第12号 (2015年) 無駄になり,結局は尿素として尿から失われてしまう。 て粗タンパク質として分析されてしまう。可溶無窒 これをアミノ酸の「桶の理論」という。木桶で一つ 素物と灰分は元来が雑多な物質の混合物であるの でも低い側板があると水が貯まる量はこれに合わ で,あえて「粗」は付けない。 されてしまうのと同じである。そこで,最近の飼料 飼料の TDN は,この 6 成分のうち灰分と水分を 配合設計では,粗タンパク質(CP)や可消化粗タン 除いた 4 成分の含量に各々の消化率を乗じたものの パク質(DCP)はほとんど問題にされず,もっとも 合計である。この場合,消化率は前述の消化率(%) 欠乏しやすいアミノ酸を高めていかに不足がない を 100 で除した値を使うことに注意する。例えば, ようにするかに重点が置かれている。 飼料中に粗タンパク質が 16%含まれていて,粗タン 3)消化・吸収-消化率の重要性 パク質の消化率が 80%だったとすれば,可消化粗タン 豚が飼料を摂取し,口腔,胃,小腸と内容物が送 られる過程で,主として消化酵素の作用で細かく分 解(消化)されて小腸から吸収される。その後,大 腸では主として繊維物質が腸内微生物の作用で分 解をうけ,低分子の揮発性脂肪酸や有機酸として吸 パク質(DCP)は 12.8(=16×80/100 )% になる。 可消化養分総量(TDN,%)=可消化粗タンパク質(%) +可消化可溶無窒素物(%)+可消化粗繊維(%) +可消化粗脂肪×2.25(%) 収,利用される。豚での胃および小腸における内容 この TDN の算出式で,粗脂肪だけに 2.25 を乗じ 物の通過(滞留)時間はいずれも 4 時間程度である ているのはなぜか。それは,既述のように炭水化物 が,大腸では 20~40 時間ときわめて長い時間をか と脂肪では,1g 当たりのエネルギー価が,それぞれ, けて通過する。 4 および 9kcal と異なり,脂肪の方が 2.25(=9/4) 摂取した栄養素あるいは養分の量からふんに排 倍多いことによる。それでは,タンパク質のエネル せつされた量を差し引き,これを摂取量で割り,そ ギー価は 5.6kcal/g と炭水化物の 4kcal/g に比べて れに 100 を乗じたものを消化率(%)という。 例えば, 1.4 倍多いが,なぜこの算出式では 1.4 倍がしてな 一定期間(3~5 日間) に摂取したタンパク質が 500g, いのかとの疑問がわく。これも既述の通り,タンパ その期間にふんに排せつされたタンパク質が 100g ク質(アミノ酸)は一度体内に吸収されても余った だったとすれば,タンパク質の消化率は 80%(=(500 部分は尿素として尿中に排せつされてしまい,それ -100)/500×100)となる。 によるエネルギーロスがあるので,タンパク質と炭 飼料の消化率は,その飼料に含まれる栄養素ある 水化物のエネルギー価は同等とみなしているため いは養分がどれだけ消化されて体内で役立つかを である。この点で,TDN は後述する代謝エネルギー 示す指標であるので,栄養評価法としてきわめて重 (ME)に近いエネルギー単位といえる。 要である。後述するが,可消化粗タンパク質(DCP) , TDN は長い間エネルギー単位として親しまれ, 可消化養分総量(TDN),可消化エネルギー(DE) 今でもかなり使われているが,飼料の 6 成分の分析 などでは,すべてこの消化率にもとづいて算出する。 には手間と時間がかかり,一方,直接的なエネル 4)飼料の 6 成分と TDN,DE の算出 ギーの測定が容易に行われるようになったため,可 飼料の化学的分類として,飼料の 6 成分がある。 これは,三大栄養素のうち炭水化物を小腸で消化酵 素の作用を受けやすい可溶無窒素物(デンプンや糖 類等)と大腸で微生物によって分解を受ける粗繊維 の 2 つに分け,これに粗タンパク質,粗脂肪,灰分 消化エネルギー(DE)への移行が進んでいる。 可消化エネルギー(DE,kcal/g)=飼料中のエネルギー 含量(kcal/g)×エネルギーの消化率(%)/100 5)代謝エネルギーと正味エネルギー (無機物)および水分を加えたものである。タンパ 豚におけるエネルギー単位として,TDN と DE ク質,脂肪および繊維の前には「粗」という字がつ のほかに,代謝エネルギー(ME)と正味エネルギー いているが,これは純粋な成分だけではなく雑多な (NE)がある。代謝エネルギーは,DE から尿に排せ ものが混じっているという意味である。例えば,粗 つされるエネルギー(タンパク質の分解産物である タンパク質では,アミノ酸が長く連なった純粋のタ 尿素のエネルギーが主体をなす)を差し引いたもの ンパク質でなくても,窒素を含む成分であればすべ である。 1029 「東アフリカと東南アジアにおける水の安全安心」 ―ケニアとタイにおける活動事例― 板 山 朋 聡 * 前世紀より 21 世紀は水の世紀と言われてきた。 キスム市 実際,西暦 2000 年の 9 月に採択された国連ミレニ 1) アム宣言の中の開発目標の中では ,「環境の持続 可能性の確保」の項目のターゲット 7−C において, ビクトリア湖 「2015 年までに安全な飲料水と衛生施設を継続的 に利用できない人々の割合を半減する」が目標と ニャンザ湾 ケニア共和国 なっている。2015 年はまさしく今年のことである。 2014 年の国連の報告では,ほぼ達成されたとなって ビクトリア湖 いるが,東アフリカを含むサハラ砂漠以南の,いわ ゆるサブサハラ地域での達成率は低い。できれば実 際の状況を,この目で見て確認したいものである。 長崎大学は以前からケニアのナイロビに熱帯医 学研究所の現地拠点を持っており,感染症分野の研 究で長い実績がある。そこで,水環境の分野におい 図 1 ビクトリア湖とその中のニャンザ湾 てもこの施設を足がかりに 2011 年度からケニアで の活動を開始しており,2013 年度 1 月 31 日からは 構成されている。さらにマセノ大学のキスム市内の 本学の水産学部と共同で,「ビクトリア湖における キャンパスにあるビル内にラボを設置し,現地で水質 包括的な生態系及び水環境研究開発プロジェクト 分析やアオコ毒素の分析等が実施できるように整備 英語名:The Lake Victoria Comprehensive Research してある。また,現地には 3 名の日本人がマネー for Development Project」(通称 LAVICORD)を開 ジャー,研究コーディネータとして常駐しており, 始した(日本の外務省が現地政府経由で出資するカ 現場での研究活動の運営と実験指導を行っている。 。 ウンターパートファンドを活用:研究期間は 2 年間) 研究の準備段階から含めれば,すでに 4 年間に これは世界第三位の巨大な淡水湖であるビクトリア わたってケニアに足を踏み入れていることになる 湖の水環境と水産資源に関する研究である。実際の が,ケニアの経済発展は目で見て確かにその成長が 研究対象となる水域はケニアに属する有明海ほど 実感できる。さすがに,東アフリカ諸国の中では, のニャンザ湾という内湾である(図 1) 。現在,この 一番の経済発展国であり,ナイロビだけでなく地方 ニャンザ湾の奥,キスム市にある国立マセノ大学, でもショッピングセンターや道路がいたるところ そこから内陸に入った場所の高原地帯の都市エルド で建設されている。携帯電話,とりわけ中国製の レットの近くにある国立モイ大学,さらにケニア国立 スマートフォンもよく売れており,地方都市のキス 海 洋 水 産 研 究 所 (KMFRI) と と も に , こ の ム市やエルドレット市の街中も携帯ショップだら LAVICORD Project を 実 施 し て い る 。 こ の けである。湖岸の漁村でも皆が携帯を持っている。 LAVICORD は,ビクトリア湖のモニタリングとシ 日本よりは安いとはいえ,携帯の値段も通話料金も ミュレーションを中心とした Component-1,現地適応 それなりの金額である。その一方で,生活用水や 型の水処理手法の開発等の技術開発を中心とした 飲料水を湖から直接採水したり,また湖岸で洗い物 Component-2,水産を中心とした Component-3 から をしている場面を頻繁に見かける(図 2)。現地では, * 長崎大学 工学研究科 (Tomoaki Itayama) 0369-5247/15/¥500/1 論文/JCOPY 1030 畜産の研究 第69巻 第12号 (2015年) 図 2 ビクトリア湖の湖岸での食器洗い 図 3 湖面を漂うアオコと岸辺に集積したアオコ(右上) 水道水を売っているウォ-ターキオスクという場所 Pump があり,20L あたり約 20KS(1KS ケニアシリング~ 約 1.15 円)で買うことができる。携帯電話に払う お金を考えれば,飲料水を買えると思えるのだが, 湖岸住民にとって水はそこにあるもので,それを自 由に使えばよく,買うものではないという発想のよ うである。湖水が清浄であった昔であれば,もっと もなことである。 木炭等の生物担体 図 4 バイオフェンスの原理 しかし近年の経済発展は水質悪化を加速させて を実施している。年 4 回実施するニャンザ湾の全域 いる。人口が増加するにつれて湾内の富栄養化も進 調査の他に,2 週間に一度,キスム近郊と河川での 行している。キスム市からの都市排水のみならず, 水温等の測定や水質調査を実施している。さらに, 流域の放牧地や茶畑からの栄養塩流出がかなり多い これらのデータは,ニャンザ湾のコンピュータシ と言われている。その結果,有毒藍藻のブルーム ミュレーションのための数値モデル(流動+生態 (アオコ)が発生している。特に有毒藍藻 Microcystis 系)に統合し,今後の流域管理や施策提言に役立て はニャンザ湾のキスム近郊では縞状になって漂っ たいと考えている。 ており,それが湖岸に集積することも多い(図 3)。 モニタリングを行い,リスクを明らかにするだけ 湖岸の住民はこのビクトリア湖の水を汲んで,その では水は奇麗にはならない。もちろん,現代の高度 ままお湯をわかしてお茶を入れているが, 処理技術を使えば,湖水からでも純水を得ることは Microcystis 属 等 の 有 毒 藍 藻 が 産 生 す る 藍 藻 毒 可能である。しかし,現地で持続的に使うことがで microcystin(MC)は強い肝臓毒(発ガン作用)で熱 きる十分に低コストで管理が容易な技術でなければ にも強い 2)。そのため,お湯を沸かすだけでは分解 意味がない。LAVICORD では有毒アオコ含有湖水を しない。WHO が定めた飲料水中の MC 暫定基準は 浄化し生活用水を供給するためのシステムとして 1µg/L 以下であるが 2) ,湖岸住民は 1µg/L 以上の バイオフェンスというものを導入し試験を開始し MC を含んだお茶を飲んでいるかもしれない。 現在, ている。これは,後述するように,最初タイで試験 実際に湖岸から水を採取し,さらに,各家庭で使っ して一定の効果があることを確認したシステムで ている水も採取して MC のリスクを疫学的観点か ある。本システムの原理は簡単である(図 4) 。木炭 ら調査しているところである。まだ,完全なデータ (他の担体でも可)等でフェンスを構成し,そこに湖水 ではないので,そのリスクを正確に示すことはでき をゆっくりと通過(6~12 時間程度)させることで, ないが,近年の研究においても 1µg/L をはるかに超 担体に定着した原生動物や細菌類等の微生物が藍藻 3) える MC がニャンザ湾で検出されていた 。そこで 細胞と MC を分解する。現在,漁民や湖岸住民の協力 湖岸だけではなく,ニャンザ湾の全体に対して調査 が得られたニャンザ湾のオガルビーチという場所に, 1043 シカ肉の有効活用を目指して ~衛生的なシカの解体処理方法の検討~ 押 田 敏 雄 * ・ 青 木 和 夫 鳥獣による農業被害は深刻で,その対策はヒトと 鳥獣のイタチごっこと言っても過言ではない。山間地 ** ・ 坂 田 亮 一 ** * スライドを作成したので,それを公表し,標準化への 提言とすることを目的に本稿をまとめた。 では住民の老齢化の進行によって限界集落が至る所 野 生 動 物 に よ る 農 業 被 害 に見られるようになり,ついには農耕や農業生産を 農水省のまとめ 3)によると,2013 年度の鳥獣による 放棄するケースも散見されるようになってきた。 鳥獣被害を静観するのではなく,鳥獣を適正な数に 農作物被害は,総額が 199 億円で前年度に比べ 31 抑制する動きも見られ,各地で鳥獣対策が真剣に取り 億円減少(対前年 13%減),被害面積が 7.9 万 ha で 組まれるようになってきた。それら捕獲された鳥獣 1.8 万 ha 減少(対前年 23%減),被害量は 63 万 t で, を有効活用する動きとして,「ジビエ」と言う言葉も 7 万 t 減少(対前年 11%減)している。 また主要な獣種別の被害金額については,シカが 頻繁に耳にするようになってきた。 折も折,2015 年 2 月には鳥取県で日本ジビエ振興 76 億円で, 前年度に比べ 6 億万円減少(対前年 7.8%減), 協議会主催の「第 1 回ジビエサミット」(詳細は本誌 イノシシが 55 億円で,7 億円減少(対前年 12.7%減), 69 巻 4 号 1)参照)が開催された。また,2016 年 2 月 サルが 13 億円で,2 億円減少(対前年 15.4%減)して には福岡県で「第 2 回ジビエサミット」(日程は 2 月 いる。また,鳥類ではカラス,スズメが問題となって 11~13 日:詳細は日本ジビエ振興協議会の HP を参照) いる。表 1 に直近 6 年間の農業被害を受けた面積と が開催される予定である。 被害額を示す。 捕獲されたシカやイノシシの処理について,いわ 鳥 獣 対 策 へ の 取 組 ゆるジビエ先進県である長野や和歌山では,衛生管理 に関するガイドラインやマニュアルを策定し,関係者 国や各地の地方公共団体で,最重要課題として取 の指導に努めている。また,厚生労働省も「野生鳥獣 組んでいるのはシカとイノシシなので,それらにつ 肉の衛生管理に関する指針 2) (以下,厚労ガイド いて述べる。 その対策方法は以下に示す 3 つである。 1)侵入防止柵の設置:シカは跳躍力に優れるので, ライン)」を策定・公表した。 しかしながら,標準化された解体方法は具体的に ネットでの柵の設置と電気柵が有効である。ネットを は示されておらず,当然,「この方法がベスト」と 設置する場合には,跳躍力を考慮して柵の高さは 2m 言ったものは未だ無いのが現状である。 程度が必要である。電気柵を設置する場合の柵の高さは, 長野県茅野市でジビエ関連の業を営んでいる青木 最下線を地面から 25cm 以下,最上線を 120cm 程度 和夫氏の協力のもと,シカの解体処理の方法に関する (シカの鼻先の高さ)とし,20~25cm 間隔で電線を 表 1 主な鳥獣による農業被害の実態(農林水産省による) 2008年 面積 金額 2009年 面積 金額 2010年 面積 金額 2011年 面積 金額 2012年 面積 金額 2013年 面積 金額 カラス 17.1 2,539 10.3 2,303 10.2 2,287 9.3 2,209 6.4 2,060 5.9 スズメ 6.1 619 4.9 514 4.0 476 3.0 447 2.6 393 2.4 408 シカ 44.8 5,816 57.1 7,059 63.7 7,750 62.2 8,260 62.3 8,210 48.3 7,555 イノシシ 12.4 5,376 12.4 5,590 14.3 6,799 14.3 6,231 12.0 6,221 10.9 5,491 1,811 面積:千ha 金額:百万円 東京農業大学客員教授・麻布大学名誉教授 (Toshio Oshida) 信州ナチュラルフーズ (Kazuo Aoki) *** 麻布大学獣医学部 (Ryoichi Sakata) * ** 0369-5247/15/\500/1 論文/JCOPY 1044 畜産の研究 第69巻 第12号 (2015年) 4 段以上張ることが求められる。なお,当然のこと 出産期は 5 月下旬~7 月上旬で,通常一仔を出産 として,感電対策を十分に施す必要がある 4,5)。 する。交尾期は 9 月下旬~11 月で,妊娠期間は 220 日。 2)捕獲:捕獲の方法は狩猟とワナの 2 つである。何れ 一夫多妻制の社会で,雄の一部は交尾期にナワバリ も狩猟期間が定められており,取扱いにあたっては をつくり,その中にハーレムを形成する。 免許が必要となる。捕獲は個体数の調整に有効である。 近年,北海道や丹沢(神奈川),尾瀬ヶ原(群馬・ 3)誘引物の除去:収穫の取り残しの野菜残渣や果樹 栃木・福島),大台ヶ原(奈良)など全国各地で個体数 はシカを引き寄せる格好のエサとなるので,早期の が著しく増加している生息地が多くなり,農林業被害 引き抜きが必要となる。また,水田でのヒコバエや や森林生態系への影響が深刻となっている。 法面の青草は冬場のエサとなることが多い。 北海道内のエゾシカの列車障害事故 6)は冬期間に 多発するが,その理由として,線路際の斜面は日当 野生鳥獣肉の解体ガイドライン と場でと畜,解体処理される家畜はウシ,ブタ, たりや風の影響が少なく,エサを求めにくる個体が ウマ,ヒツジ,ヤギの 5 畜と,「と畜場法」と「食品 集まることに起因している。 衛生法」で規定されている。これらについては,と ニ ホ ン ジ カ の 生 態 畜場以外でのと畜および解体が法により禁止され ている。これらと畜・解体と並行して行われるのが ニホンジカ(図 1)とは,日本に生息する野生シカの 「食肉衛生検査」である。食肉衛生検査は「と畜場法」 総称で,学名(Cervus nippon)にニッポンと入るが, の下に,食用に供するために行う獣畜の処理の適正 日本固有種ではなく,ベトナムから極東アジアにかけて の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制そ 広く分布する。日本産亜種は,エゾシカ(北海道), の他の措置を講じ,もつて国民の健康の保護を図る ホンシュウジカ(本州),キュウシュウジカ(四国・ ことを目的として行われている。 九州),マゲジカ(馬毛島),ヤクシカ(屋久島),ツシマ 厚生労働省は 2014 年に野生鳥獣肉の衛生管理に ジカ(対馬),ケラマジカ(慶良間列島)の 7 亜種で, 関する指針を公表した。シカやイノシシを食肉とする 大きさは亜種や生息地によって大きく異なる。最大は ために,現行では,食品衛生法第 52 条第 1 項の規 エゾシカ,最小はヤクシカ。国内の哺乳類としては 定による営業許可のうち,食肉処理業の許可を受け 大型で,ヒグマ,ツキノワグマ,イノシシ,カモシカ た施設で解体処理が行われているが,これは全国で とともに 5 大大型獣とされる。 約 400 箇所ある(厚生労働省調べ)。また,各地方公共 ニホンジカは険しい山岳地以外の草地を含む森林 地帯を中心に生息する草食獣で,夏毛は茶色で特徴的 な白斑(鹿の子模様)があるが,冬毛は灰褐色である。 団体でもジビエ対応が求められ,それぞれでガイド ラインやマニュアルが策定されるようになってきた。 何人も食用に供する目的で,と畜場法に規定する 顕著な性的二型(雌雄で外形が異なる)を示す。生息 獣畜以外の獣畜,若しくは食鳥処理の事業の規則及び 環境は常緑広葉樹,落葉広葉樹,寒帯草原など多様 食鳥検査に関する法律に規定する食鳥(鶏,あひる, であるが,森林から完全に離れて生活することはなく, 七面鳥)以外の鳥をと殺し,もしくは解体するには パッチ状に草地が入り込んだ森林地帯に多く生息 「食肉処理業」の営業許可が必要となる。つまり,「食肉 する。 処理業」の許可を得ていない施設で解体処理された シカやイノシシは販売できないこととなる。 ジビエ以外の肉については,検査の手順などは標準 化 7)されているが,その前段階としてのと畜・解体の 方法も同じように標準化された状態となっている。 しかしながら,ジビエについては食肉衛生検査が実施 されていないのが現状である。これによって,と畜, あるいは解体方法についてのマニュアルは正式には 存在していない。 図 1 長野県内に生息するニホンジカ(蓼科にて)