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2. - 三重大学

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2. - 三重大学
2.3 教育連携
2.4 教育連携
2.4.1 大学としての教育連携の現状と改善方向
2.4.1.1 大学間連携
2002(平 14)年 6 月に「みえ連合大学センター(仮称)構想」が提案されて以来,準備委員
会(全体会)や部会長運営委員会により,その事業内容が検討されてきた。
この中には,大学間の連携に係わる事業や,地域への貢献,特に地域のシンクタンクとして
の機能の充実や,地域住民に学習機会をより多く提供する事業など数多く盛り込まれている。
16 年 3 月これまでの検討結果に基づきセンターの概要,事業概要,必要と見込まれる経費の
概要などについて,事務局案を取りまとめ,各機関に説明し,各機関の意見を伺うこととして
いる。
今後は,知事・学長会議の開催,大学間連携(単位互換,研究交流,授業交流,学生交流な
ど)のための代表者会議の開催,
「三重の歴史,文化,自然,産業」研究会の設置(ビデオシリ
ーズものを作成),NPO 法人としての定款の作成と認可の申請などを予定している。
2.4.1.2
放送大学との連携
本学は,2003(平 15)年 7 月 4 日に放送大学との単位互換協定を締結した。生物資源学部に
おいて,同年 10 月から特別聴講学生として放送大学の科目を履修することにより,修得した単
位を卒業要件の単位として認定することが可能となっている。
また,今後特別聴講学生として放送大学の科目を履修することにより,修得した単位を共通
教育科目の卒業要件の単位として認定する方向で検討に入っている。
学生には,より豊かな教養を培うとともに,幅広い知識の修得等,教育内容の充実に役立つ
ものと期待されている。
2.4.1.3
海外の大学との連携
2004(平 16)年 2 月 1 日現在における大学間交流協定校 15 校,うち学生交流協定校 10 校,
学部間交流協定校 16 校,うち学生交流協定校 9 校で,この数字は,1998(平 10)年度の大学間
交流協定校 5 校(学生交流協定校 4 校),学部間交流協定校 11 校(学生交流協定校 6 校)の数
字と比較すると格段の伸びを示している。
また,受入れ留学生数においては,11 名に対して 14 名,派遣留学生数においては,6 名に対
して 13 名というふうに,堅調に伸びを維持している。
ただし,受け入れ校の場合には,アジア地区 7 名,ヨーロッパ地区 4 名,派遣校の場合には,
アジア地区 1 名,ヨーロッパ地区 7 名,オセアニア地区 5 名というように受け入れの場合には,
アジア地区が主流を占め,逆に,派遣の場合には,ヨーロッパ地区,オセアニア地区に偏る傾
向にある。
また,授業料等相互不徴収に係る学生交流協定の締結状況においても,アジア地区等の大学
が 15 校に対し,ヨーロッパ地区 3 校,オセアニア地区 1 校,アメリカ 0 校というふうに偏在化
傾向にある。
以上の点を踏まえて,特に今後は派遣留学生の増加を目指し,留学生委員会の中にワーキン
ググループを設置し,鋭意,検討の結果,別添のような答申が行われた。今後は,この答申に
そって積極的に施策を進めていく予定である。
2.4.1.4
遠隔事業室の現状
1.デジタルコミュニティスクール事業
1998(平 10)年より DCs 推進協議会設立準備委員会に三重県とともに係わり,主としてバー
チャル・ユニバーシティの協同社会実験に関わってきた。バーチャル・ユニバーシティは国内
では三重大学,岩手県立大学,三重県立看護大学,東京大学社会情報研究所が連携し,米国の
ノースカロライナ大学ウイルミントン校との間でテレビ会議システムを利用した遠隔授業やシ
ンポジウムを行ってきたものである。その後も引き続きデジタルコミュニティスクール事業と
してノースカロライナ大学ウイルミント校と遠隔事業を行っている。2003(平 15)年度は,英
語 ESL 上級コースの講義を 6 回行った。2004(平 16)年度についても,英語 ESL 上級コースの
講義を実施する予定である。
2.SCS(スペース・コラボレーション・システム)事業
(大学,高等専門学校及び大学共同利用機関が衛星通信による映像交換を中心とした大学間ネ
ットワークを構築し,高度情報通信社会にふさわしい教育・研究利用を推進する事業・文部科
学省 大学共同利用機関
メディア教育開発センター所管)
SCS を利用して本学の教育・研究の活性化を図るため導入について検討され,1999(平 11)
年 2 月に生物資源学部に設置し,同年 4 月開局した。
1999(平 11)年度から本学が議長局,参加局の場合があるが,講義,講演会,研究会,会議
等で利用されている。2003(平 15)年度の講義等の利用回数は議長局,参加局を含めて例年と
ほぼ同数の 61 回であり,利用時間数も例年とほぼ同時間数の 152 時間 40 分であった。2004(平
16)年度の利用については,国立大学法人化にあわせてメディア教育開発センターも独立行政
法人となり,それを契機に SCS の利用のあり方に関しても再検討することも必要である。
3.三重大学の広場
2001(平 13)年 12 月から「三重大学の広場」と題して,三重大学における学術研究成果を
60 分番組に作成し,県内に広く放送エリアをもつ商用情報通信施設の協力を得て,インターネ
ットと放送を駆使し広く一般県民に公開することにより,県民の生涯学習への協力支援を行う
こと,あわせて,生活,教育,福祉,医療,産業等の情報提供を通して県民と大学の交流を行
うことを開始した。放送枠組みは,全体が 60 分から成り,今月のひとこと 7 分,講演・講義 51
分,三重大学の紹介 1 分,三重大学からのお知らせ 1 分で構成されている。2003(平 15)年度
は,今月のひとことコーナーは,学内者では上野副学長,生物資源学部大宮教授,教育学部兼
重教授,教育学部根津助教授等の各氏に,学外者では三重県教育長,小山田記念温泉病院長,
三重県文化会館長,三重県知事等の各氏に講演をお願いした。講演・講義コーナーは,工学部
提供で 2003(平 15)年 2 月∼7 月「(主テーマ)21 世紀のものづくり」のもとで毎月サブテー
マを順次放送した。サブテーマとしては, もぐらロボットづくり の話,建築とデザイン,ロ
ボットからナノテクノロジーへ:ロボットで遊ぼう
などである。2003(平 15)年 9 月∼11 月
「(主テーマ)ふれあい」のもとで人文学部朴教授をコーディネーターとして座談会を行い,主
に人文学部教官と学外者との触れ合いについて放送した。2003(平 15)年 12 月∼2004(平 16)
年 2 月教育学部提供で「(主テーマ)癒しの音楽文化について」を放送した。2003(平 15)年 8
月は,豊田副学長との座談会,2004(平 16)年 3 月は,本学前学長,現学長,次期学長の座談
会を放送した。2004(平 16)年 4 月以降については,国立大学法人化を契機に,全学的な広報
戦略の中で検討される必要がある。
4.遠隔事業室公開講演会
本学教職員,学生の知識を向上させていくため,毎年 1 回から 2 回学外講師を招いて公開講
演会を開催している。
2003(平 15)年度は,6 月に三重県警察本部から講師を招いて「ネットワーク社会における
ハイテク犯罪の現状と対策」について,12 月にニフティ株式会社から講師を招いて「個人情報
保護法の考え方とその課題」について講演会を行った。講演会への参加者は 2 回とも教職員,
学生を含めて 100 名程度であった。
2.4.1.5
教育連携の改善に向けて
2004(平 16)年 4 月から国立大学は国立大学法人に改組される。2004(平 16)年度以降の教
育連携の改善については,なによりもこの国立大学法人化の趣旨にそって,その方向が検討さ
れなければならない。各大学の責任のもとに独自な発展を求められる法人化の中で,大学の存
在価値を高めたり,教育サービスを向上させるために,教育連携を発展させることは欠かせな
い。しかしこの発展のためには,法人に求められる中期目標と中期計画に基づきながら,従来
の取組を抜本的に見直したり,重点化して取り組むなどの工夫が必要とされるだろう。
教育連携に関する中期目標・中期計画は下記のとおりである。
中期目標:大学,地域,国を超えた教育連携を促進する。
中期計画:1.連合大学間,国内大学間,放送大学間,海外大学間での教育連携,単位互
換を促進する。
2.みえ連合大学センター等の大学間連合の活動に積極的に係わる。
3.高校との教育連携を推進する。
またその他,学内国際化に関する中期目標として次の 2 点が挙げられている。
・インターネット,遠隔授業等により海外大学との教育交流を試みる。
・テレビ会議システムなどを用いて,学生,教育職員の積極的な国際交流活動への参画
を促す。
この中期計画によれば,まず求められるのは多様な大学間連携の促進である。三重県内の大
学に限らずに,国内や海外の大学との積極的な連携が必要とされている。しかし単に連携を量
的に拡大するだけでなく,質的な面での見直しも求められている。
「みえ連合大学センター」に
ついては,本学だけが先行するのではなく,三重県との連携を強化するなかで今後の方向が探
られる必要がある。それが県内の大学間の連携を恒常化するために欠かせないだろう。また放
送大学との連携,単位互換は,教育内容の充実のためのみならず,学生に多様な学習形態を提
供したり,成績評価の見直しの参考にするなどの意義があることを踏まえ,連携を発展させる
方法が検討される必要がある。国内の大学との連携については,本学が地域圏大学を目指して
いることを鑑みれば,紀伊半島に存在する大学との連携がまず追求されなければならない。
さらに中期計画で高校との連携の推進が記され,より幅の広い連携が求められていることが
示されている。単位互換を将来的に展望するような組織的な高大連携によって,高校教育の改
善や高校から大学へのアクセスの強化を図ることができる。
遠隔事業については,遠隔授業等自体は推進される必要があるが,これまで進めてきたデジ
タルコミュニティスクール事業,SCS 事業,三重大学の広場については,国立大学法人化を契機
に,それらの事業の現状を的確に評価し,今後の発展性を吟味するなど,根本的な見直しが必
要である。今後の大学の情報化や広報の全体的な戦略を構築する中で,諸事業の在り方を検討
することが求められている。
2.4.2
部局における教育連携の現状と改善方向
【共通教育機構】
2.4.2.1
大学間連携
現在,共通教育機構において,国内の他大学との連携は行われていない。今後三重県内の他
大学との間でコンソーシアムなどを形成してより地域に根ざした教育を行っていくことが求め
られる。
2.4.2.2
放送大学との連携
放送大学との連携は現在のところ行われていない。今後より幅広い共通教育を行っていくた
めに,放送大学との連携は重要な課題となっていくであろう。
2.4.2.3
海外の大学との連携
本学と海外のいくつかの大学との間で一般協定が結ばれている。それに基づいて夏季語学研
修参加者に対して単位認定制度が存在している。具体的には,ミシガン州立大学とタスマニア
大学への語学研修参加者には,それぞれの大学が交付する成績表をもとに「英語Ⅲ」(2 単位)
が認定されている。また,エアランゲン・ニュルンベルク大学への語学研修参加者には,同大
学が交付する成績表をもとに「ドイツ語Ⅱの科目」の中から 2 単位が認定されている。
さらにより多くの外国の大学と協定を締結し,学生交流・留学制度の一層の拡充を図る必要
がある。
2.4.2.4
教育連携の改善に向けて
現在のところ共通教育における他大学との連携はほとんど行われていないといっても過言で
はないだろう。今後,より厳しい予算や人員の下で幅広く深い共通教育の授業科目を提供して
いくためには,国内の他大学及び法大学との提携がより一層重要になろう。また,実践的な語
学教育の重要性はますます高まっていくように思われるので,海外の大学との間の提携の拡大
が急がれるであろう。
【人文学部】
2.4.2.1
大学間連携
大学間連携に関しては,今後の検討課題である。
2.4.2.2
放送大学との連携
放送大学との連携は,総論として議論されたが,具体的な科目を指定して各論として検討し
たことはなかった。今年度,放送大学との間で協定が結ばれたことを機に専門科目の連携と有
機的編成を考えていくことが必要であろう。
2.4.2.3
海外の大学との連携
2003(平 15)年度の 6 月にフランスのリヨン大学のレクレル教授を人文学部にお呼びして,
自動車産業に関する講演会を行った。この講演は三重県庁情報政策課及びドイツのエアランゲ
ンニュールンベルグ大学に向けてインターネットを利用して動画像をリアルタイム配信して議
論をおこなった。また,この講演は,試験的にリアル・サーバからインターネットを通じて配
信し,e-ラーニング実験をおこなっている。レクレル教授とは今後,社会科学科の教官との共
同研究の道を探っていこうということになった。
2.4.2.4
教育連携の改善に向けて
文化学科
他学部での単位修得に対する全学的な取り組みに合わせて,文化学科でも従来の枠組みを超
えて,指導教官の承認の下,履修可能範囲を拡大する方向で検討が進んでいる。
大学内教育ではないが,「フォーラム in みえ」を文化学科教官を中心に積極的に進めている
ほか,ドイツ語教官によって「ドイツ語市民講座」が開催され,地方自治体と連携した生涯教
育に積極的に取り組んでいる。いずれも年々参加者が増加し,高い評価を得ており,来年度も
さらに充実した「フォーラム」「講座」へと進化する予定である。その他歴史学,社会学,地
理学,日本文学などの諸分野での地域連携,環境学や諸外国文学・言語研究での国際連携の取
り組みがなされている。大学の地域連携や国際貢献が叫ばれて久しいが,文化学科における外
部教育・研究機関との積極的な連携,活動は高く評価されてよいだろう。
国立大学法人下での第 1 期中期目標・中期計画では,こうした地域連携,国際貢献の諸研究・
活動を統括し,成果の透明性を確保するため,各種「研究センター」を立ち上げる計画を立て
ている。
社会科学科
社会科学科の教育連携の取り組みとしては,人文学部の共通であるが,他学科科目を 24 単位
まで履修可能としてきたことがあげられる。12 単位までは自由であるが,それをこえる場合は,
3 年次への進学時に計画書を提出し,指導教官の承認を条件に履修が可能となる。人文学部で,
他学部の単位が履修可能とする方向で議論が進んでいるため,他学科及び他学部科目をあわせ
て 24 単位までの履修を認めるという方向で検討が進んでいる。
ここでいう教育連携にはあてはまらないかもしれないが,インターンシップについても検討
を始める予定である。インターンシップを経験した学生の声や受け入れて頂いた方の声を聞き
ながら,議論を進める予定である。
【教育学部】
2.4.2.1
大学間連携
現在、教育学部においては、国内の他大学との連携は行われていないが、今後積極的に連携
を進めていく必要がある。
2.4.2.2
放送大学との連携
放送大学との単位互換については,2003(平 15)年 7 月 4 日に三重大学と放送大学の間で協
定が結ばれ,一部の専門科目について実施されている。さらに,共通教育科目についても,条
件付きで卒業単位として認定される方向で調整が進んでいる。
ただし,教育学部においては,現在のところ,その利用者はいないようである。その理由と
して,入学金は免除されるものの一科目 10,000 円という受講料の問題,教職科目について,課
程認定を受けていない放送大学の単位は教職科目として認めない,という三重県の判断などが
あると思われる。
2.4.2.3
海外の大学との連携
1998(平 10)年から,遠隔操作による海外の大学との同時中継を用いた語学の授業が英語科
において行われている。アメリカのノースカロライナ大学のウィルミントン校との相互乗り入
れの遠隔授業である。おおむね 10 月から 12 月の 8,9 週にわたって行われ,英語のコミュニケ
ーション技能の獲得,異文化理解などに大きな成果を挙げている。
派遣留学生に関しては,この 5 年間で国費短期派遣留学生は過去 5 年間に 1 名と少ない。し
かも,2001(平 13)年 10 月1日∼2002(平 14)年 3 月 31 日の半年間であった。現在のところ,
タスマニア大学への私費による短期語学留学が主である。また,2003(平 15)年 3 月からは私
費による天津師範大学への中国語短期留学制度が開始され,8 名の教育学部生が 2 週間の研修を
行った。
留学制度の本格的な導入が必要であり,留学中に取得した単位を卒業単位として認定するな
どの措置,あるいは財政措置,支援が必要である。
2.4.2.4
教育連携の改善に向けて
放送大学との連携については,制度上は単位互換制度が作られたが,実際には活用されてい
ない。「2.4.2.2 放送大学との連携」でも指摘したが,費用などの問題,単位認定の問
題などが壁としてある。本学教官の専門外で開講ができない科目などの履修など,学生にとっ
てもメリットがある制度なので,より学生にとって受講しやすい環境を整えることが必要だろ
う。
海外の大学との連携については,留学生の交換や語学の研修など,より幅広く行っていく必
要があろう。そのためには,財政的な措置や支援,単位認定などの整備が必要である。
【医学部】
2.4.2.1
<医学科>
大学間連携
他大学,他学部,他学科からの聴講・履修と単位互換
学部においては,いくつかの専門科目について,他学部,他学科からの聴講・科目履修を認
めている。
他大学大学院との単位互換については,三重大学大学院学則第 24 条に定められたようによう
に,10 単位まで認めている。また他学部に対する履修科目の開放も積極的に検討され,2004(平
16)年度より解剖学を除く基礎医学講義を開放することとなった。
<看護学科>
他大学,他学部,他学科からの聴講・履修と単位互換
他学部からの科目履修については,看護学科で 2003(平 15)年度に他学部学生 1 名を受け入
れている。現在,全学教務委員会において全学的に専門科目を開放する方向で検討されており,
看護学科においても実習・演習を除く専門科目の開放を原則として認めることにしている。
他大学大学院との単位互換については,三重大学大学院学則第 24 条に定められたように,10
単位まで認めている。
2.4.2.2
<医学科>
放送大学との連携
放送大学との単位互換については,選択科目を中心として今後具体化していくことが検討さ
れている。しかし授業料の負担をどうするかなど,解決せねばならない問題も多い。また医学
科においては,他大学や高等学校において放送大学より生物学や物理学などの単位を取得した
場合にも,既修単位として認めることも検討している。
<看護学科>
放送大学との単位互換については,2003(平 15)年度に放送大学と三重大学との単位互換に
関する協定が締結された。看護学科では,共通教育科目の一部を単位認定することを認めてい
る。
2.4.2.3
<医学科>
海外の大学との連携
学部間協定を締結している大学は米国に 3 校,中国に 1 校あり,それらの大学を中心に交流
を図っている。学生の相互派遣を推進したり,それらの大学への短期間研修を海外研修として
クリニカル・クラークシップのカリキュラムの中へ取り入れている。詳細は,「6 国際交流」
を参照願いたい。
<看護学科>
学部間協定を締結している大学は米国に 3 校,中国に1校あり,それらの大学を中心に交流
を図っている。詳細は,
「6 国際交流」を参照願いたい。
その他に看護学科では,2001(平 13)年度に選択科目の一部においてノースカロライナ大学
ウイルミントン校看護学部・岩手県立大学看護学部・三重県立看護大学とのバーチャルユニバ
ーシティの実験に参加した。
2.4.2.4
<医学科>
教育連携の改善に向けて
他大学や放送大学などとの連携をさらに緊密にして,単位互換や共通カリキュラム化などを
推進していくことは大切であるが,本学において他学部や共通教育との連携を強化していく必
要もさらに重要である。特に 2004(平 16)年度より共通教育に対する学部負担が増加すること
になり,共通教育と学部教育との均衡を図る上でも大切である。
<看護学科>
今後,放送大学との連携や海外の大学と看護学科との連携をより密にしていくことが課題で
ある。
また,学内においてまず看護基礎教育と卒後教育を継続していくための組織的な取り組みと
して,看護学科と附属病院看護部との教育連携を推進していく必要がある。
【工学部】
2.4.2.1
○
大学間連携
他大学,他学部,他学科からの聴講・履修と単位互換
他大学で開講される科目の聴講・履修については特別聴講学生の制度がある。教育上有益と
認められた場合には,他大学(短期大学を含む)と協議の上学生に当該大学の授業科目を履修
させることができ,修得した単位は工学部教授会の議を経て 60 単位を超えない範囲で本学で修
得したものと認められる。他大学から工学部へ特別聴講学生を受け入れる場合も同様で,当該
大学と協議の上工学部教授会の議を経て許可される。過去に国内他大学から受け入れた例はな
いが,外国大学との協議により受け入れた外国人留学生特別聴講学生は 1996(平 8)年度 2 名
及び 1997(平 9)年度 1 名である。
学生が他学科又は他学部の科目の聴講・履修を希望した場合は,他学科の場合は授業担当教
官の,他学部の場合は工学部長を経て当該学部長の許可が必要であり,科目及びその履修単位
は工学部教授会の議を経て選択科目として取り扱われる。他学部から工学部の科目を聴講した
例としては 1996(平 8)年度に教育学部から 2 名(3 科目 6 単位),人文学部から 1 名(1 科目
2 単位),1997(平 9)年度には 1 名(2 科目 5 単位)がある。
○
他大学(研究科)との単位互換,研究指導委託の方針状況
三重大学大学院学則第 24 条(他の大学院における授業科目の履修)及び第 40 条(特別聴講
学生)に基づいて,他大学との単位互換ができる制度的体制は確立されている。
工学研究科においては,1990(平 2)年 11 月 27 日に「東海地区国立大学大学院工学研究科間
における協定書」を締結した。本協定書は,福井大学,岐阜大学,静岡大学,名古屋工業大学,
豊橋技術科学大学,三重大学,京都工芸繊維大学の間で,各大学の規則の定めるところにより,
大学院工学研究科(京都工芸繊維大学にあっては,工芸科学研究科,以下「工学系研究科」と
いう。)の学生が,相互に他の工学研究科において授業科目を履修し,単位を修得することを
認め,それに必要な事項に合意したので締結したものである。また,名古屋大学大学院を加え
た東海地区の単位互換も検討中である。
○
研究指導委託
三重大学大学院学則第 24 条の 3(他の大学院等における研究指導)及び第 42 条(特別研究学
生)に基づいて,他大学院等に研究指導を委託又は他大学院より研究指導委託を設ける制度的
体制は確立されている。
○
他大学等との単位互換及び研究指導委託については
博士後期課程設置により実施に移されつつある
以上,学部,大学院ともに,他大学や他学部,他学科との単位互換については制度の整備が
され,実施例もでてきている。しかし,連携は充分とはいえず,今後どのように実施していく
かが課題である。
2.4.2.2
放送大学との連携
2003(平 15)年 7 月 4 日付けで三重大学長と放送大学長との間で三重大学及び放送大学は,
双方の大学の規則を定めるところにより,両大学の学生が,それぞれ相手大学の行業授業科目
を履修し,単位を取得することを目的に「三重大学と放送大学との間における単位互換に関す
る協定書」が取り交わされた。
工学部においては,各学科の指針に従って単位互換を実施する準備が整っている。
2.4.2.3
海外の大学との連携
大学間協定に伴う交換留学生制度があり,海外の大学で取得した単位を本学の単位に振り替
えるなどの連携を行っている。これにより学生は,海外へ留学し,帰国した後も遅れることな
くスムーズな学習計画をすることができる。
2.4.2.4
教育連携の改善に向けて
国内外の大学間,学部間,学科間の連携については整備されつつある。これらの連携は,大
学間,学部間,学科間の幅広い知識を習得しようとする学生に非常に有効であり,今後はその
実施方法の改善が望まれる。例えば,制度のさらなる紹介,該当学生へアンケートなどが考え
られる。
【生物資源学部】
2.4.2.1
大学間連携
本学部としては特に行っていないが,大学院レベルで他大学研究科からの聴講生を毎年 4∼5
名受け入れ,連携を図っている。
2.4.2.2
放送大学との連携
2003(平 15)年 7 月 4 日に放送大学と単位互換の協定を結び現在に至っている。なお,本学
部においては,放送大学で取得した科目は自由科目として認定する。
2.4.2.3
海外の大学との連携
大学レベルでの海外の 16 大学との学術交流協定に加えて,本学部独自に,韓国,インドネシ
ア,フィリピン,モロッコ,タイ各 1,中国 2 の計 7 大学と学部間協定を結び,現在に至ってい
る。教育面の国際的な連携としては,UMAP を含む短期留学制度と大学院修士・博士課程への留
学生に集約される。両制度を通じて最近 5 年間を見てみると,いずれも総数 20 名前後で,平均
的に 4∼5 名の短期留学生の受け入れ,及び大学院生の修了を数えている。留学生の出身国はア
ジアが主流である。
2.4.2.4
教育連携の改善に向けて
2004(平 16)年 4 月の国立大学法人化にともない立てられた三重大学の中期目標・中期計画
に,
「国内大学,放送大学,海外の大学との間で教育連携を促進する方策の検討を進め,可能な
ところからその実現を図る」とあり,生物資源学部も大学レベルの委員会の方針を受けて,単
位互換など具体的な検討を進める。放送大学については,生物資源学部は他学部に先駆けて学
習要項に自由科目として単位認定を行うことを明記しており,今後さらに受講生を増やすよう
ガイダンス等で履修指導する。また,海外の大学との連携については,留学生への対応策とし
て,留学生を受け入れた学科には少なくとも 1 科目の英語による講義を義務づけてきたが,大
学院の講義を含め,英語の講義を増やす等,今後さらに,留学生向けのシラバスの充実を図り
たい。
国内大学,放送大学,海外の大学などとの連携を図ることにより,学生に多様な教育の機会
を与え,国際化・グローバル化に対応した教育を充実させるべく,JABEE の導入も含めて教育の
充実を図りたい。
2.5
教育学部附属学校園の活動
2.5.1 理念・目的
2.5.1.1 目的
教育学部には 4 つの附属学校園がある。幼稚園が幼児を保育し適当な環境を与えて心身の発
達を助長する,小学校が児童の心身の発達に応じて初等普通教育を施す,中学校が小学校にお
ける教育の基礎の上に生徒の心身の発達に応じて中等普通教育を施す,養護学校が知的障害の
ある児童・生徒に対して小学校・中学校または高等学校に準ずる教育を施し,併せてその欠陥
を補うために必要な知識技能を授けることを目的にしている。4 校園ともに三重大学教育学部
の教育計画に従い①教育の理論及び実際に関する研究並びにその実証を行う,②学生の教育実
習を行う,③地域教育の改善進歩に寄与することを使命としている。
2.5.1.2
附属学校における教育目標
2004(平 16)年度国立大学法人化以降の変化を踏まえ,4 附属校園間及び大学との連携を一層
深めるため,2002(平 14)年度から正副校園長会が中心となり教育課程検討準備委員会を設置し
た。2003(平 15)年度には,正式な教育課程検討委員会を発足させ,その中の教育目標部会にお
いて,各学校園学校教育目標から「主体的,創造的に生き抜く心豊かな子ども」という共通目
標の設定について精力的に検討した。
(1)幼稚園
幼稚園では幼稚園教育要領の趣旨にそって,幼児期の特性を踏まえ,環境を通して行う教育
を基本とし,幼児が自発的に周りの環境に働きかけながら,幼児なりの目当てをもって課題に
取り組んだり,個人生活や社会生活に必要な態度,技能,知識などを身につけたり,多様な人
との係わりがもてるようになることを目的として教育を行っている。目指す幼児像として「明
るく健康で豊かな心情をもち,友達と考えあってのびのびと活動する子ども」を掲げている。
(2)小学校
小学校では,児童の心身の発達に応じて,文部科学省の定める学習指導要領に則って,初等
中等普通教育(義務教育)を施すことを基本としている。教育目標として「創造性をもった主
体的行動人」をかかげ,次のような人間像の育成を目指している。
①
正しいことを進んで求め,自分で考えて行動する子
②
美しいものに親しみ,自分を豊かに高めようとする子
③
たくましい心とからだをきたえ,ねばり強く行動する子
④
一人ひとりをだいじにし,よいなかまを作ろうとする子
(3)中学校
中学校では,生徒の心身の発達に応じて中等普通教育を行うとともに,教育の理論及び実際
に関する研究並びにその実証,教育実習の実施,地域教育の改善進歩等に寄与することを目的
としている。
また,豊かな創造性とたくましい実践力をもち,生活をきりひらく生徒の育成を目標にしな
がら,下記のような具体的な目標を掲げて教育を行っている。
①
真理を追究し,正しい判断ができる生徒
②
豊かな心をもち,自然や文化を愛し,真実を求める生徒
③
心身ともに健康で,進んで物事に取り組み,最後までやりぬく生徒
④
互いの人権と人格を尊重し,協力して集団を高めあえる生徒
(4)養護学校
2001(平 13)年度までの教育目標は,豊かな心と頑健な体をもち,社会生活によりよく適応で
きるたくましい生活力をもった人間を育成する。
①
心身ともに健康な人
②
身辺処理が確実にできる人
③
集団生活へ積極的に参加できる人
④
誠実で明るく生活できる人
⑤
働くことに喜びをもつ人
⑥
可能な限り文化的な生活に即応できる人
しかし,障害のある子ども一人ひとりが,自立と社会参加を目指して,その個性・能力を調
和的に高めていくための主体的な行動を身につけるようになるため,教育目標も障害児教育か
ら特別支援教育への転換ということを受けて,2002(平 14)年度からは「人間性豊かで,主体的
に生きる子ども」の育成を中心に据えて,以下のように改めた。
①
心身ともにすこやかな子ども
②
いろいろなことに,進んで取り組めるこども
③
広く社会生活に興味を持って,活動できる子ども
④
働くことに喜びを持つ子ども
2.5.2 教育活動
2.5.2.1 幼児・児童・生徒の定員と受け入れの現状
(1)幼稚園
1.幼児の定員
定員は 4 歳児,5 歳児各 70 名,3 歳児 20 名である。
2.入園者選抜状況
入園者の選抜状況は表 2.5.2-1 のとおりである。
表 2.5.2-1
入学者選抜状況(幼稚園)
(単位:人,合格倍率の項を除く)
1999(平 11) 2000(平 12) 2001(平 13) 2002(平 14) 2003(平 15)
年度
年度
年度
年度
年度
募集人員
70
70
70
70
70
応募者数
155
173
169
165
150
受験者数
153
173
166
165
150
一次合格者
151
173
166
165
150
最終合格者
68
68
70
70
71
合格倍率
1.3
2.5
2.4
2.4
2.1
入学者数
68
68
70
70
71
3.応募資格
親権者とともに津市内に居住
4.選考方法
・発達調査:行動観察(遊びの部屋で 10 人程度の集団で遊ぶ様子を観察)
・面接:保護者を対象に面接(応募資格と教育方針について確認)
・抽選
5.選考時期
10 月末∼11 月
6.検定料
1,600 円
7.入園者状況
年度により違いはあるが,少子化の影響が出はじめているよう感じられる。また 2 年保育課
程については,津市公立幼稚園就園可能なため,3 年保育課程に比較し,応募者が減少している。
8.募集案内
募集要項の配布は,新聞社,テレビ局に記事記載の依頼。ホームページに搭載。
(2)小学校
1.定員と入学者選抜状況
1 学年の児童定員は 120 名で,過去 5 カ年間における附属小学校の入学者選抜状況は,表
2.5.2-2 のとおりである。
表 2.5.2-2
入学者選抜状況(小学校) (単位:人,合格倍率の項を除く)
1999(平 11) 2000(平 12) 2001(平 13) 2002(平 14) 2003(平 15)
年度
年度
年度
年度
募集人員
61
55
62
58
55
応募者数
183
152
184
171
141
受験者数
176
148
183
166
138
一次合格者
104
96
106
93
99
最終合格者
61
54
62
58
55
合格倍率
2.9
2.7
3
2.9
2.5
連絡進学者数
59
65
58
62
65
入学者数
120
117
120
119
120
一
年度
般
外
部
2.応募資格
通学圏として,片道 1 時間程度としている。なお,在籍者全員の居住地は表 2.5.2-3 のとお
りである。
表 2.5.2-3
児童の居住地
(単位:人)
2000(平 12)
2001(平 13)
2002(平 14)
2003(平 15)
年度
年度
年度
年度
桑名市
0
0
1
1
四日市市
10
10
9
7
鈴鹿市
19
19
29
39
亀山市
6
7
1
2
市
595
597
592
573
久居市
19
16
15
15
松阪市
13
12
16
12
上野市
1
1
0
1
名張市
4
3
2
3
三重郡
0
1
0
0
安芸郡
21
25
23
26
一志郡
9
8
11
10
阿山郡
1
1
1
0
多気郡
1
1
1
1
鈴鹿郡
0
1
1
1
699
702
702
691
104
105
110
118
津
合
計
うち津市外
3.入学者選抜方法
一次検査・・・面接
二次検査・・・抽選
4.途中入学者(転入者)
小学校では,2 年生から 5 年生の間で定員に余裕がある場合,他大学の附属小学校児童に限り,
転入を認めている。2003(平 15)年度の転入者は 2 名であった。
(3)中学校
過去 5 カ年間における附属中学校の入学者選抜状況は,表 2.5.2-4 のとおりである。また,
2003(平 15)年度における入学者選抜方法は表 2.5.2-5 のとおりである。
表 2.5.2-4
入学者選抜状況
(単位:人,合格倍率の項を除く)
1999(平 11) 2000(平 12) 2001(平 13) 2002(平 14) 2003(平 15)
般
外
募集人員
年度
年度
年度
年度
年度
71
67
67
74
58
応募者数
368
366
366
296
275
受験者数
361
364
356
295
275
一次合格者
361
364
356
295
275
最終合格者
71
67
67
74
58
合格倍率
5.1
5.4
5
4
4.7
連絡進学者数
89
93
93
86
102
入学者数
160
160
160
160
160
表 2.5.2-5
入学者選抜方法(2003(平 15)年度)
検査
選抜方法
一次検査
抽選
二次検査
学力テスト,書類審査
(4)養護学校
1.定員と入学者選抜
入学者定員は,小学部 3 名,中学部 6 名,高等部 8 名と校則で定められている。ただし,連
絡進学が認められているため,実際には中学部 3・高等部 2 の一般入試による入学者は,毎年 3
名程度となる。法人化されると,抽選でしかも少数の者しか入学できないこと,入学後は高等
部卒業まで連絡進学が可能である制度については,今後の検討課題である。
入学者選抜状況は表 2.5.2-6 のとおりである。
表 2.5.2-6
入学者選抜状況(養護学校)
(単位:人,合格倍率の項を除く)
1999(平 11) 2000(平 12) 2001(平 13) 2002(平 14) 2003(平 15)
年度
年度
年度
年度
募集人員
11
14
13
9
11
応募者数
20
19
29
20
16
受験者数
19
17
29
19
16
一次合格者
19
17
29
18
15
最終合格者
11
8
13
9
11
合格倍率
1.73
2.13
2.23
2.11
1.45
連絡進学者数
6
6
4
8
6
入学者数
17
14
17
17
17
一般
年度
ただし,表の人数は,小学部・中学部・高等部を合計したものである。
各学部の募集人員は,年度により異なることはあるが,次のとおりである。
小学部:3 名,中学部:4 名,高等部:3 名(2 名)
連絡進学数は,小学部から中学部,及び中学部から高等部への連絡進学者数であって,小学
部は「0」である。
2.応募資格
応募資格は,1999(平 11)年度までは,(ア)小学入学学齢に達した者,及び小学校(小学部)・
中学校(中学部)卒業見込みの者 ,(イ)学校教育法施行令第 22 条 3 に該当する者のうち,学
校生活に支障のあるような身体障害を有しない者,及び通学可能な範囲に居住している者であ
った。
2000(平 12)年度からは障害児教育から特別支援教育への移行に基づき,(イ)の項が 「知的
発達障害があり,養護学校就学が適当と判断された者」と改善された。
※ 参考 『学校教育法施行令第 22 条 3』(盲者等の心身の故障の程度)知的障害者
1 精神発達の遅滞の程度が中度以上のもの
2 精神発達の遅滞の程度が軽度以上のもののうち,社会的適応性が特に乏しいもの
3.選考方法
発達調査・行動観察・能力(口頭)・実技検査・本人面接・保護者面接・健康診断・書類審査・
抽選
4.選考時期
小・中学部・・・・毎年 11 月末,高等部・・・・毎年1月下旬
5.検定料
小学部・・・1,000 円,中学部・・・1,500 円,高等部・・・2,500 円
6.入学者の状況
年度により違いはあるが,男子児童・生徒の入学者が多い。このことは絶対数として男子の
方が多いということもあるが,第二次選考を,性差を考慮せずに抽選により合格者を決定して
いることにもよる。
7.募集案内
募集要項の配付は,三重県教育委員会・県福祉部の許可を得て,通学可能地域にある市町村
教育委員会事務局・福祉課,及び私学幼稚園・保育所協会を通じ関係校・園に送付依頼すると
ともに,直接訪問し配布し,報道機関に記事の掲載を依頼している。
2.5.2.2
カリキュラムの編成の現状
(1)幼稚園
幼稚園教育要領に示されている,
「一日の教育時間は 4 時間を標準とし,39 週を下らない。
」
を基本とし,各年齢の発達に応じ,本園独自のカリキュラムを編成し,常に園児の実態を把握
し,柔軟かつ教育効果を考えながら保育活動を行っている。
(2)小学校
附属小学校では 3 学期制を採用しており,教育課程については,学校教育法,学習指導要領
等の法規に沿って編成している。学習指導要領に定められた年間時間数を確保するように努め
ている。
(3)中学校
附属中学校では,生徒の心身の発達に応じて中等普通教育を行っている。教育課程について
は,学校教育法,学習指導要領等の法規に沿って編成している。2003(平 15)年度の教育課程は
表 2.5.2-7 のとおりである。
表 2.5.2-7
附属中学校の教育課程(2003(平 15)年度)
(単位:時間)
数 学
理
外国語
選択教科
年間時数
社 会
140
105
105
105
45
45
90
70
105
30
70
35
35
980
2年
105
105
105
105
35
35
90
70
105
70
85
35
35
980
3年
105
85
105
80
35
35
90
35
105
140
95
35
35
980
科
体
術
楽
技・家
保
美
音
科
道 徳
教
総 合
修
特別活動
国 語
1年
必
なお,選択教科の開設状況は表 2.5.2-8 のとおりである。
表 2.5.2-8
1年
附属中学校の選択教科開設状況
選択英語(30 時間)
選択英語(35 時間)
2年
教科(各 35 時間) 国語
社会
数学
理科
体育Ⅰ
体育Ⅱ 美術
音楽
選択英語(35 時間)
選択美術・選択音楽(各 17.5 時間)
3年
教科(各 70 時間) 国語基礎
数学発展
国語発展
理科基礎
社会Ⅰ
体育
社会Ⅱ
技術
数学基礎
家庭
(4)養護学校
計
領域・教科別の指導
総合
領域・教科を合わせた指導
(単位:時間)
的な
カリキュラムの編成の現状(2003(平 15)年度)
学習
指導
形態
表 2.5.2-9
4
(2)
2
高等部
7.5
2
8
2
2
2
1
(2)
2
3.5
4
2
6
2
自立活動
4
特別活動
10.5
音楽
中学部
図工 ・美術
国語・算数・数学
5∼7
体育・保体
集団生活
12.5
作業学習
生活単元学習
3
日常生活の指導
2
小学部
27.5∼
29.5
1
3
35
2
35.5
・
一校時を 40 分としている。このため,高等部では 2 限続きの授業を行っている。
・
日常生活の時間の中には,朝の会,帰りの会,ホームルーム,給食,着替えの時間が含
まれる。
・
生活単元学習の時間の中に,小学部の教科「生活」としての指導 3∼4 時間が含まれてい
る。
・
「道徳」の学習は,領域・教科を合わせた指導等で行われている。
・
小学部・高等部に「自立活動」の時間は特設されていないが,領域・教科を合わせた時
間の中で行われている。
・
中学部では,教科指導の中で国語・数学・体育を選択制で行っており、かつ丸かっこ書
きで記載されているため,合計時間数が表からでは計算しにくい。
・
週指導時間数は,児童生徒の実態により編成されることがあるため,年度により時間数
に違いがある。
・
「総合的な学習」は,新学習指導要領でうちだされたもので,2001(平 13)年度から実施
している。
2.5.2.3
年間行事の現状・特徴ある教育の現状
(1) 幼稚園
表 2.5.2-10
4月
5月
主な年間行事
6月
7月
始業式
子どもまつり
カレーパーティー
プール開き
入園を祝う会
親子遠足
(1年生と年長児の交流)
七夕まつり
歯科検診
シルエット劇場鑑賞
親子草取り
眼科・内科・耳鼻科検診
終業式
避難訓練
登園日(水遊び)
8月
9月
登園日(お店屋さん)
10 月
始業式
教育実習生お別れ式
親子草取り
運動会
11 月
園外保育
教育実習生お迎え式
遠足
12 月
1月
2月
3月
もちつき
始業式
節分
劇的な活動の参観
ファミリー参観日
新入園児が遊びに来る日 お別れ会
終業式
ひな祭り音楽会
修了証書授与式
終業式
②
特徴ある教育の現状
・
幼小連携を目指す小学校との交流
カレーパーティー,野菜栽培,一緒に遊ぶなど
・教育学部学生が子どもとかかわる機会をつくる(多様な人とのかかわり)
(2)小学校
①
②
年間行事計画(2003(平 15)年度)
4月
始業式・入学式・家庭訪問・遠足
5月
写生大会・合唱発表会・定期健康診断
6月
2 週間教育実習・日曜学級
7月
終業式・6 年キャンプ
9月
始業式・4 週間教育実習・運動会
10 月
修学旅行・校外学習・本物の舞台芸術鑑賞会
11 月
文化祭・
12 月
マラソン大会・終業式
1月
始業式
2月
授業研究会
3月
卒業式・終業式・修了式
特徴ある教育活動
・児童文集「しろあと」の発刊
友だちの優れた作文を読むことにより,様々な考え方があることを知ったり,自分の考
えを広げたり,書く力をのばすことを狙いとして,毎年「しろあと」を発刊している。
児童から作文を募集し,優秀作品を掲載している。
・合唱発表会
音楽科の学習の成果を発表する機会として全学級による合唱発表会を行っている。児童
が生の臨場感あふれる合唱を聴かせたり聴いたりする場となっている。
・ 6 年キャンプ
6 年児童を対象に,校外(2003(平 15)年度は,四日市市少年自然の家)で,1 泊 2 日のキ
ャンプを行った。児童は平素と異なる生活環境で主体的に活動することにより,達成感
や連帯感を養う。
・文化祭
毎年,各学級ごとに,平素の総合的な学習や生活科での学習を,パネルやクイズ,体験
コーナーにまとめたりして発表している。保護者にも公開している。
・マラソン大会
体力向上や寒さに負けない健康な体を作ることを狙いに,11 月から 12 月にかけての 3 週
間,休憩時間を利用してマラソンの練習をしている。自分の努力の結果を確かめる場と
して毎年マラソン大会を行っている。
(3)中学校
①
年間行事
中学校では,1 年間を 3 学期にわけて教育を進めているので,学期毎の主な行事について下記
に示すことにする。なお,過去 5 年間において年間の行事内容に大きな違いがないので,5 年間
を総括して記述することにする。
1 学期:始業式,入学式,身体測定,生徒会立会演説会,内科検診,授業参観,耳鼻科検診,
心臓検診,教育実習事前指導,中体連春季総体,歯科検診,社会見学,修学旅行,
眼科検診,中間テスト,校内美化,教育実習,期末テスト,三者懇談会,終業式,
中体連夏季総体,三重県教育委員会研修
2 学期:始業式,実力テスト,津・安芸陸上大会,教育実習,進路セミナー,中間テスト,津・
安芸駅伝大会,体育祭,附中のハーモニー,進路セミナー,生徒会後期役員選挙,
実力テスト,期末テスト,入学試験(一次),三者懇談会,終業式
3学期:始業式,実力テスト,入学試験(二次),3 年期末テスト,新入生説明会,三者懇談
会,実力テスト,期末テスト,卒業式,修了式
②
特色ある教育
中学校は,教育学部の附属学校であるため毎年 6 月に 2 週間,9 月に 4 週間の教育実習を行っ
ている。教育実習では,大学生が直接生徒に対して教科指導や教科外指導を行う場面があり,
生徒たちにとって貴重な機会でもある。
また,中学校では秋に学校祭として体育祭と文化祭を行っている。特に文化祭における全学
年,全クラスによる合唱の発表の場は,「附中のハーモニー」として伝統的で特色ある教育の 1
つである。
(4)養護学校
学校行事は,学校生活に秩序と変化を与え,全校及び学部集団への所属感を深め,学校生活
の充実と発展に資する体験的な活動をいうが,本校は養護学校で小学部・中学部・高等部の児
童生徒が在籍しているため,学校行事は全校行事と学部行事に分けられる。
①
儀式的行事 : 入学式・卒業式がその代表である。厳粛で清新な気分を味わい,新しい生
活の展開への動機づけとなるような活動を行わなければならないが,子どもの特性から厳粛な
気分とまではなかなかいかない場合がある。
実際には,体育館(ステージなし)の前面(壁面には高等部生徒が制作した作品が多く掲示さ
れている)にまず保護者が着席して待ち,「開式の言葉」を受けて,在校生達の拍手で新入生・
卒業生が迎えられ席に着くという方法を取り入れている。
このため,儀式はすべて保護者と入学・卒業児童生徒が会場前面に並んだ形で行われる。
特に,卒業式には特徴があり,会場側面の特設スクリーンに卒業する児童生徒の日々の学習
の様子や活動の様子などをプロジェクタで写しだすとともにナレーションにより,保護者の感
動を誘っている。
②
学芸的行事
平素の学習活動の成果を発表することで,やればできるという自信と向上に向けての意欲を
高めることを目指し,様々な活動を行っている。
全校生が集って行うものとしては学校祭での学部ごとの劇などの発表がある。なかでも,高
等部生による和太鼓・竹の太鼓などの演奏は伝統的なもので,心を一つにした力強い響きは高
等部生にとって大きな誇りと貴重な思い出の一つになっている。
このほか,学校祭では全校生徒が学習時に制作した作品が多く展示され,なかには素晴らし
い感性あふれる作品が見られる。
また,中学部では学期末毎に保護者を観客に迎え,音楽発表会を行っている。なかなか練習
とおりにいかない場合もあるが,それぞれ一生懸命に取り組む姿に感動する場面が多い。
③
健康安全・体育的行事
健康安全についての関心を高めるとともに,運動に親しみ,楽しさを味わいながら体力の向
上を図ることを目指して,健康診断,大掃除,避難訓練,交通安全指導,健康安全や給食に関
する意識を高める行事,運動会,課外活動,水泳指導,マラソン大会,ソフトボール交流試合
等が行われている。
健康診断は,年度始めの検診だけでなく,特に体育的行事・集団宿泊的行事の事前には必ず
実施するとともに,特に在籍児童生徒の特性を考え,養護学校が創立する前(障害児学級時代)
から精神科医による定期的な診察・健康相談を毎年隔月に実施してきている。
避難訓練は,特に「おかし」(押さない・校内では駈けない・しゃべらない)を基本に避難の
在り方の練習を年 3 回行っている。しかし,子どもによっては,緊急事態が発生したときに落
ち着いて行動することができずパニックを起こす子どももいるため,一人ひとりの性格・行動
特性を充分理解したうえで避難の在り方を考えなければならず,緊急事態発生のアナウンスに
も配慮しなければならないところが本校の訓練の難しさと,回数を重ねることの必要性がある。
地震・火事の発生時訓練は学校管理下では責任もって対応することは言うまでもないが,登
下校中に地震が発生し,交通機関が止まったりするなどの事態が発生したときの本人の居場所
の確認と離れたところにいる児童生徒に対し,安全避難をどのようにして呼びかけて安全確保
に努めるかが大きな課題である。
昨年度から不審者侵入を想定し,職員が侵入者・児童生徒・職員の役に分かれて訓練を行い,
警察署の担当職員からも指導を受けるようにしているが,この訓練に際しても,児童生徒を参
加させる前に,児童生徒の特性をどれだけ職員が把握・理解しているかが問題になるとともに,
全校職員・児童生徒への事件発生のアナウンスの仕方が課題で,直接的なアナウンスをせず,
やさしい口調で職員に事件発生を知らせるとともに,避難誘導,援助に駆けつけるグループの
役割分担の周知徹底を図っている。
体育的行事は,本校児童生徒にとって欠くことのできない活動である。障害に起因する健康
管理・安全管理を基本に据えながら,肥満解消・運動不足解消には必要であるし,運動するこ
とで情緒の安定を図ることもその目的の一つである。
具体的には,小学部児童は朝登校し着替えを済ませたらしばらく屋外運動場(小学部専用)
にある遊具・砂場で思い切り遊んだり,自転車に乗ったりすることを日課としている。同じよ
うに中学生は専用の屋外運動場でトランポリン・一輪車・自転車に乗ったり,ボールを使った
遊びを朝・昼休みに行ったりしている。高等部では,屋内体育館でジョギングを行い,体力づ
くりに励んでいる。また,高等部・中学部では,毎朝係活動として清掃活動を行い,責任感・
連帯感等の育成に努めている。
運動会は,徒歩競争が組まれているが,早く走れる子どもには自信のある競技であり見せ場
でもあるが,逆に走ろうとしない子どもには,それを見ている保護者の気持ちを思うとき,選
手制にして実施するとか今後検討しなければならない課題の一つである。
交通安全指導は,保護者に協力を求め行っている。自宅から学校まで自分の力で通学できる
ようになるためを目指し,行動療法的に距離を少しずつ伸ばしながら自信をつけさせ自分の力
で,公共交通機関の乗り降りができるように毎日指導を続けている。
交通機関に乗車しても降りる場所を間違い捜索をすると言うこともあり,帰宅予定時間に家
庭から何も連絡がないまで気が許せない毎日である。
給食に関しては,2002(平 14)年度から栄養士の配属を得たことにより,児童生徒の肥満・
便秘症・アレルギー等対策に取り組めるようになった。また,給食後は全員が音楽に合わせて
歯磨きの習慣を身に付けさせている。
健康・安全が本校の最大課題であり,1 日の健康観察は家庭からの「連絡帳」の記載だけでな
く行動等を通して的確に判断し,状態が悪化・進行しないように充分相互に連絡を密にとりな
がらおこなっている。特にてんかん発作を起こす生徒の対応の在り方については全員が研修し,
適切な対応が迅速に行えるようにしている。
④ 遠足・集団宿泊的行事
遠足や合宿などは校外での活動を通して自然に触れ,公衆道徳などについて望ましい体験を
積むことを目指し実施されているが,本校児童生徒の場合,この他に日常生活訓練,いわゆる
基本的な生活習慣を身に付けるためいろいろな活動が組まれている。
遠足・社会見学・修学旅行の他に,日々の学習時における校外学習,合宿(集団宿泊学習)
に特徴がある。朝の起床から睡眠までの 1 日の生活を,自分の力で主体的に行えるようになる
社会性・自立を身に付けさせ,社会に送り出せるようにと,子ども達に少しでも多くの体験,
実践を重ねさせている。
勿論,このような行事を実施するためには事前に現地下見,健康診断を始め,諸活動に安全
指導・管理の徹底は言うまでもない。
⑤ 勤労生産・奉仕的行事
毎日取り組んでいる活動として,中学部生徒の飼育活動・校内美化活動(清掃活動)があり,
高等部生徒は,校内美化(清掃・園芸)活動に取り組んでいる。
このほか,特に高等部・中学部を中心に職業教育の一環でもある職場見学,校内実習,就労
体験(現場実習)に 1 か月・2 週間等の取り組みが年間を通して実施されている。このような勤
労や奉仕にかかわる体験的な活動をはじめ,職業や進路に係わる啓発的な体験を重視すること
で,社会的な自立を目指しているのが本校の特色の一つでもある。
2.5.2.4
成績評価の現状
(1)幼稚園
担任は各幼児について以上のような個別の記録を基盤にして,年度末に,指導要録として,
健康,人間関係,環境,言葉,表現の 5 領域の狙い 15 項目について著しく発達が認められたも
のに○をつける。また,指導上参考になる事項を一人ひとりについて記録している。
(2)小学校
新学習指導要領の実施に伴い,絶対評価(到達度評価)を行っている。通知表(「伸びゆく子
ども」)において学習は 3 段階の評定(A
よい,B
ふつう,C
努力が必要)を行う。観点
の項目は,達成度に応じて,○,空欄,△で表す。
(○
よい,空欄
ふつう,△
生活は,10 の項目について○,空欄,△で評価する。
(○ よい,空欄
努力が必要))
ふつう,△
努力が必
要)
なお,通知表は 3 年生以上の保護者に渡し,1・2 年生には渡していない。保護者への対応は,
連絡帳や学期末の個別懇談等で行っている。
(3)中学校
新学習指導要領の実施に伴い,評価についても相対評価から絶対評価を重視する評価に変わ
ってきている。附属中学校においても「通信表」の評定及び観点別評価を絶対評価にするとと
もに,観点別評価と評定の関連性を持たせることとした。必修教科における観点別評価と評定
の評価規準は,表 2.5.2-11 のとおりである。
表 2.5.2-11
観
点
別
評
観点別評価と評定の評価基準
価
評
A
充分満足できると判断されるもの
B
おおむね満足できると判断されるもの
C
努力を要すると判断されるもの
定
5
特にすぐれている
4
充分満足できる
3
おおむね満足できる
2
努力を要する
1
一層努力を要する
(4)養護学校
通知表は,毎学期でなく 3 学期末に保護者に渡している。表記は指導形態ごとに成長の記録
とともに,家庭での課題などが文章で記載されている。毎学期ごとに作成されないのは,毎日
保護者と連絡帳の交換を行っていることにより,子どもの日々の様子,成長の記録はことごと
く報告・連絡されていることによる。連絡帳の交換により,保護者の協力を得ることは勿論,
保護者の意見を聴くことで指導・支援の方法の参考にもなっている。
2.5.2.5
教育指導の現状
(1)幼稚園
1989(平元)年に改訂以来,幼稚園教育要領は,
「幼児期の特性を踏まえ,環境を通して行う」
を基本とし,①主体的な活動を促すこと
②遊びを通して行うこと
③一人ひとりの特性に応
じ,発達課題に即した指導を行うとしている。その後,1998(平 10)年にさらに改訂された。そ
こで,幼稚園教育要領の趣旨を基本とし,本園独自のカリキュラムを編成し,それらの考えの
もとに各年齢やクラスの実態にあった環境構成し,一人ひとりが自ら活動を選び,興味や関心
を深め,充実感や達成感を体験することを願っている。 そうした視点に立って個々の幼児の要
望に応えられる環境つくりに努力し,教育効果を上げているところである。また,様々な社会
問題で指摘を受けているしつけの問題,人との係わりの問題,自然体験不足の問題,子育て支
援の問題等家庭における様々な現代社会の問題にも学級,学年懇談会や個別の対応等を通して
指導に当たっている。
(2)小学校
2002(平 14)年度に学校完全 5 日制が開始されたのに伴い,新学習指導要領が実施された。全
国でゆとりの中で生きる力の育成をめざして自ら学び自ら考える力の育成や総合的な学習の時
間の取り組みが始まった。
本校でも,児童が友達との係わり合いを深めることによって課題の解決に向けて自分の力を
精一杯だしきり,表現力や思考力を高めていく授業作りを進めてきた。また,総合的な学習に
おいては,子どもの求めに応じた内容を取り上げ,自ら考え,判断し,実行する力の育成を図
ってきた。
さらにこれまで伝統として受け次がれてきた「子ども一人ひとりを生かし,自覚と責任をも
たせる教育」も大切にし,子どもを鍛える,子どもを変えることを狙いとして,次のような教
育を行っている。
・子どもを生かし広がる教育
・労働を重視する教育
・困難を克服する教育
・表現力を拡大する教育
・自然を愛する教育
(3)中学校
教科の教育に関する指導については,各教科の教官が教科研究を行い,生徒に理解しやすい
教材を工夫したり,教授法を工夫したりして行っている。また,単に教科の教育だけでなく,
道徳,特別活動など各種の教育の指導を推進していくため,教官相互の意見交換を積極的に行
っている。さらに,給食の時間や掃除の時間,各種学校行事なども教育を進めていくためにと
ても重要な時間になっている。
このように,学校内における各種活動一つ一つが生徒の教育のために大切なものであるとと
らえ,学年内の担任を中心に相談したり,教科の教官で相談しながら,教官同士の連携を密に
しながら取り組んでいる。
(4)養護学校
在籍する児童・生徒の障害の程度・特性により,指導・支援の方法・内容は異なる部分があ
ることは言うまでもないが,一人ひとりの課題を保護者共々考え,それをどのように日々指導・
支援していくか,学級担任を中心にして学部で考え合っている。生活の自立している児童生徒
とそうでない児童生徒がいるため指導形態は常時複数教官が指導・支援に当たるようにしてい
る。
いかに児童生徒に興味関心をもたせるかが学習の基本であるため,教師は絶えず児童生徒に合
った教材・教具の提示・活用を考え,児童生徒の実態・特性に見合った指導・支援法をいつも
協議し合って授業を展開するようにしている。
このため,教科書として検定本を使用することはなく,教科指導より,教科・領域を合わせ
た指導が中心になっているし, 成すことによって学ぶ ということを基本にすえた授業を行っ
ている。ゆえに,教師の教材・教具の選択・作成が重要となっている。 特に,特殊教育(障害
児教育)から特別支援教育へとなってからは,個別の指導計画を作成し,長期的な展望に立つ
とともに一人ひとりの児童生徒のニーズに応じた指導から支援することを重視するようになっ
てきている。
教育指導の目指すものは,児童生徒一人ひとりが,自立と社会参加を目指してその個性・能
力を調和的に高めていくための主体的な行動を身に付けることが大切であるが,今後は例え 1
人でできることが少なくとも,人の援助を積極的に受け,主体的に生活できるようになること
も「自立」と考え,支援を受けながら自らが自立していく教育指導を目指していく必要がある
と考える。中でも,特に職業教育に関することが重要となってくるものと考える。
2.5.2.6
給食指導・健康安全指導の現状
(1)幼稚園
幼稚園では,給食は行っておらず,週に 2∼4 回(年齢,時期に応じて)家庭より弁当を持っ
てきてもらう。弁当時に食事のマナーやはしなどの持ち方,姿勢,準備や片づけなど食生活全
般にかかわる指導を年齢や時期に応じて担任や養護教諭から行っている。また,弁当の内容や
幼児の好き嫌い状況などから,家庭へ問題提起したり,情報を発信したりする。健康・安全指
導についても幼児の日常の姿を出し合い,時期に応じた伝染性の病気への対応,健康への関心
を高める,基本的生活習慣の獲得,幼稚園の生活環境に対しての安全なかかわり方などについ
て計画的かつ繰り返し指導している。また日常の遊具や生活環境の安全点検や毎月全職員で行
う安全点検,定期的な防災訓練などを実施している。
(2)小学校
①
給食指導
健康に過ごすために,子どもの頃から食事を大切にする態度を育てていくことは,これから
成長する子どもにとって必要なことである。年間 169 回(予定)実施される給食で,栄養バラ
ンスのとれた食事を提供することにより,健康の保持・増進や体位の向上を図るとともに,望
ましい食事のあり方や食習慣を体得させている。また,運搬・配膳・後片づけの中で互いに協
力する態度を育てている。給食指導の原案は給食指導担当で行う。またお昼の校内放送の際,
栄養士が作成する栄養講話を放送委員会の児童が紹介し,食べながらその日の献立に関連した
話を聞くことにより,望ましい食習慣定着に役立てるよう計っている。2003(平 15)年度は校長
も講話作成に参加した。
②
健康指導
発育旺盛な児童の健康の保持・増進のため,ほけんだよりを通して,児童・保護者の啓発を
行っている。また,児童委員会の中に保健委員会を置き,掲示物の作成や保健室利用状況のま
とめに取り組み,全校児童の健康に関する意識の向上を図っている。
③
安全指導
日常の安全点検や不審者侵入防止対策の実施,登下校時における子どもの安全確保などの日
常的な対策をたて,事故・事件の防止に努めている。
年 2 回の火災・地震発生を想定した避難訓練のほか,2003(平 15)年には不審者侵入対策とし
て,教官研修を行った。
(3)中学校
①
給食指導
中学校においては,公立の中学校ではほとんど行われていない給食を行っている。生徒の食
育に関しての積極的な取り組みでもある。給食時には,担任教官が教室にて給食の指導を行い
ながら,食事を生徒とともにするスタイルが定着している。また,食育を推進していくために
は,学校だけでなく家庭などの協力も欠かせないことから,学校給食委員会が組織されている。
組織のメンバーは,管理職(学校長,副校長),教官・職員(教頭,給食主任,栄養士,事務係
長),PTA(会長,副会長,など)で構成されている。
生徒に対する給食指導においては,①楽しく会食し,心の交流や好ましい人間関係を育成す
る,②食事についての正しい知識と食事作法を身につけさせる,③健康で衛生的な食生活を身
につけさせる,④健康増進に努める態度を身につけさせる,⑤当番活動を通してともに働くこ
との喜び,進んで他人のために奉仕する態度を養う,を目標に進めている。
②
健康安全指導
主な保健管理は,定期健康診断,水泳参加時の健康管理,インフルエンザ流行時の健康管理
等であり,主な保健指導は,健康診断の意義・診断結果の活用,う歯・歯周疾患の予防・水泳
の安全,傷害予防,視力,生活習慣病,暖房と換気,風邪とインフルエンザの予防,姿勢,耳
の病気の予防などである。健康指導については学校保健委員会を組織し,生徒の保健管理や保
健指導を推進している。学校保健委員会は,管理職(学校長,副校長),教官(教頭,保健主事,
養護教諭),専門医(学校医,歯科医,薬剤師),育友会(会長,副会長など),地区関係(保健
所,市役所,教育委員会)で構成されている。
また,校内において事故などが発生した場合の救急体制についても,教官,保健室,医療機
関,家庭,管理職,大学との連携をとりながら対応することになっている。
台風時については,午前7時以降に,三重県全域または,三重県中部地域に暴風警報が発令
されている場合休校とするなど,生徒・保護者に資料が配付され周知されている。
さらに,学校における生徒たちの安全確保については,これまでも保護者や大学当局の協力
を得ながら防災教育等を中心に努めてきたところである。
しかし,大阪府池田市の附属小学校で起きた児童等殺傷事件以来,本校においてこのような
事件が発生しないようにするために,2001(平 13)年度から警備員の配置や監視カメラの設置
により,不審者等の学内入構を監視するとともに,学校安全管理体制の充実に努めてきている。
このような状況の中で,2003(平 15)年 2 月,文部科学省が作成した「学校への不審者侵入
時の危機管理マニュアル」を参考にして,本校の実態にあったマニュアルを作成し,再度,生
徒,教職員の危機意識を高めるとともに,対応についての訓練を実施し,生徒の安全確保に努
めている。
(4)養護学校
① 給食指導
給食時間における指導。本校の児童生徒の中には,自分でうまく食べられる子どももいるが,
多くの児童生徒が介助を要する。
白衣を着ての給食準備・会食・後片づけなど一連の活動を毎日複数教官が指導している。毎日
繰り返し経験させることによって,望ましい食事の取り方について習慣化を図るとともに,個
に応じた指導を行っている。 また,学校集会や学級活動の時間の中で,栄養士から具体的な指
導を受けている。
一方で,障害のある子どもの運動不足による肥満(傾向)や,糖尿病などの兆候,極端な偏
食や少食などの問題をもつ子どもが多い。家庭と協力して個別指導の充実を図っている。
咀嚼が弱い子どもに対しては,柔らかい物ばかりでなくしっかり噛まなければならない献立
も取り入れるようにしている。
② 健康安全指導
養護教諭・保健主事を中心に学校保健委員会を毎年 2 回開催し,校医(小児科・歯科),薬剤
師,栄養士,保護者代表と各学部代表者とで児童生徒の健康生活の確立を目指す取り組みをし
ている。
校医には,健康診断結果から課題を探り,その解決策を得ることや健康的な生活習慣と疾病
の関係と健康な生活習慣の確立,薬の服用の仕方等の助言を得たりするほか,保護者からの給
食の試食後の感想・意見を収集している。
先の学校行事の所でも述べたが,養護学校の児童生徒にとって健康管理が最優先課題であり,
このため主治医の意見を聴いたり,保護者から依頼を受けて投薬の協力をしているが,ここま
でが限度で,資格のない者が医療的ケアを行えない実態である。宿泊を伴う行事や,激しい運
動が予想されるスキー・水泳・マラソン大会などの事前には必ず校医(小児科医)による健康
診断を受けるようにしている。
校医(小児科医)は本校の創立初期から委嘱しており,生徒の特性・状態を充分把握してい
るということで安心であり,保護者からの信頼も厚い。このため,2002(平 14)年度の全国学
校安全教育大会で,栄えある文部科学大臣表彰を受けた。
毎月の職員会議では,何年も前から「学校安全」
「安全教育」に関する内容の議事をあげ,職
員の意識の高揚と実践研修の機会を設けてきた。
本校の児童生徒に「危険予知能力」「危険回避能力」「危険対処能力」など「安全能力」を身
に付けさせることが学校としての大きな責務であることを鑑み,毎日の生活のあらゆる場を通
して職員が一丸となって体で覚えさせていかなければならないことが課題である。
また,学校の施設に瑕疵があってはならないので,特に遊具等の点検を必ず毎朝行うととも
に学習中,特に作業学習中(調理・園芸・農業・木工)等器具・刃物を使う授業においては徹
底した安全指導管理を行い事故防止に努めている。
職員にはどんな小さな事故でも報告するように指導し,小さな事故が大きな事故につながる
危険性があることの安全教育の徹底を図るとともに,救急処置法の研修を重ねさせている。
一方,保健指導の中で「性」の問題についての学習をしてはいるが,思春期の子どもに対す
る「性」の指導が,性描写の氾濫した現在の中で大きな課題の一つになっている。
2.5.2.7
園児・児童・生徒支援の現状
(1)幼稚園
幼児支援については,年齢も小さく,保護者や家庭とともに支援していくことが必要である。
日常的に保護者と接しているので,話しやすい雰囲気をつくり,悩みを聞いたり,幼児の姿を
知らせたりしていくことを中心に支援をしている。時には専門機関に相談したり,教師も専門
家(臨床心理士など)から学習したりしている。
(2)小学校
生徒支援は,生徒指導委員会と学級担任とが連携を密にしながら行っている。特に,児童を
全人的に受け止め理解し,共感しようとする姿勢を大切にしている。また,保護者とも,学年
便りや連絡帳を通して子どもの様子を互いに伝えあうなど連携を図っている。時には,家庭訪
問をすることもある。
心の悩みを持つ児童や不登校気味の児童においては,養護教諭が果たしている役割に大きい
ものがあるが,スクールカウンセラーの配置が必要である。
(3)中学校
生徒支援については,中学校では生徒指導部を中心に進めている。生徒会,部活動,生活な
どに関する各種の事柄について,教官が連携しながら生徒の支援を行っている。また,生徒支
援のために,時には家庭訪問を行うこともある。さらに,不登校気味の生徒に対する個別学習
の機会を準備したり,スクールカウンセラーを配置しながら生徒の支援を行っている。
スクールカウンセラーによる生徒支援の実状についてみると,2003(平 15)年度の場合 41 回の
相談日が持たれ,延べ人数で約 120 名が来談している(電話相談を含む)
。この相談者の中には,
保護者など生徒以外も含まれている。
(4)養護学校
1.児童生徒の障害の実態は重度化・多様化し,心臓疾患・てんかん等の持病をもっていたり
自閉症の児童生徒も多く,病院との連携,コーディネーター等との連携を強化し,保護者
とも相談して必要に応じて専門的な係わりを受けるよう助言している。
2.長期休業期間中や保護者の健康状態が良くないとき,または生活習慣の基盤を確立させる
ために保護者と相談の上施設でのデイケアを受けることも必要に応じ行っている。
3.経済的な支援として,国の就学奨励制度を活用し,児童生徒の送迎・学用品費・行事参加
費等教育活動に係わる経費の補助制度活用し,保護者の経済的負担の軽減を図るよう便宜
を図っている。
4.進路指導に係わっては労働・福祉関係機関等担当者の協力を得て積極的な就労支援を行っ
ている。
5.自閉症協会・てんかん協会等同じ障害・疾病をもつ保護者の組織への加入をすすめ,子ど
もの係わり方,福祉制度の活用等についての研修を促している。
2.5.2.8
(1)幼稚園
卒業後の進路の現状
附属学校間の連絡進学制度によってほとんどの幼児が附属小学校へ進学するが,若干名の幼
児は地域の公立小学校へ進学する。
(2)小学校
附属学校間の連絡進学制度によって,ほとんどの児童が附属中学校へ進学するが,10 数名は
県内外の私立中学校に進学する。
(3)中学校
中学校卒業の時点でほとんどの生徒が高等学校への進路を希望し,大多数の生徒が実現して
いる。本校の過去 5 カ年間の卒業生の進路は表 2.5.2-12 のとおりである。
表 2.5.2-12
中学校卒業後の進路
(単位:人)
1999(平 11) 2000(平 12) 2001(平 13) 2002(平 14) 2003(平 15)
年度
年度
年度
年度
年度
県内公立高校
86
96
91
100
106
県内国立高校
1
3
1
3
1
県内私立高校
62
54
54
52
39
県外私立高校
2
0
3
1
4
県外国立高校
0
0
1
2
2
2
1
2
0
3
153
154
152
158
155
そ
の
他
計
(4)養護学校
表 2.5.2-13
卒業後の進路
(単位:人)
1999(平 11) 2000(平 12) 2001(平 13) 2002(平 14) 2003(平 15)
※
年度
年度
年度
年度
年度
一 般 就 労
3
2
3
3
1
福 祉 就 労
4
5
3
3
7
施 設 入 所
2
1
0
1
0
訓 練 機 関
0
0
0
0
0
自営手伝い
0
2
0
1
0
計
9
10
6
8
8
福祉就労が多いのは生徒の重度化,多様化や経済的不況もその一因であるが,企業側も中
小企業では障害者の雇用率 1.8%を充足させなくとも法的制裁がないという実態がある。
しかし,学校としては,最初から福祉就労を考えた進路指導でなく,就労の実現には困難
を要するかもしれないが,どの子どもにもあくまでも就労を目指すという目標を設定し,そ
れに向けた進路指導を行わなければならないと考える。
2.5.2.9
交流教育の現状
(1)幼稚園
家庭から初めて社会生活を経験する幼児も多く,まず教師や友達との係わりの楽しさを体験
してほしいと願っている。1999(平 11)年度には「養護学校を基本とした四附属校園の交流」を
テーマに養護学校との交流を実施した。近年では入学時の不安を解消し,
「幼小のなめらかな接
続」を目標に交流を積み重ねているところである。2002(平 14)年度は年長児と 5 年生(総合的
な学習),全園児と 1 年生(生活科)
,2003(平 15)年度は年長児と 2 年生(生活科)の交流がな
され,実績をあげてきた。しかし,交流の要望は持っても単発的で相手学級が見つかりにくい
のが現状である。2003(平 15)年度の教育課程検討委員会の設置を受けて,校種間交流の機会を
積極的に設け取り組みをした。
(2)小学校
2003(平 15)年度の連携について述べる。
①
幼小連携(幼稚園ー小学校2年)
小学校 2 年生の生活科を通して幼稚園児と連携し,連携のあり方を模索した。
②
養小連携(養護学校小学部ー小学校1年)
養護学校小学部と小学校 1 年生がプールで交流した。児童は障害について理解をしたり共生
について学ぶ機会となった。
③
小中連携
小学校 6 年生が附属中学校の文化祭に招かれ,ともに合唱祭に参加した。次年度進学する附
属中学校の様子を知る一つの機会になる。また,附中体育館において,中 1 年生と合同の体育
授業を行った。
(3)中学校
①
社会科学習と総合的学習への連携の可能性(1999(平 11)年度,2000(平 12)年度)
教育学部社会科講座教官を中心として,附属中学校社会科教官と附属小学校社会科教官が「社
会科と総合的な学習の連携のあり方を求めて」という課題で実践研究を行ってきている。
②
カウンセリングについての連絡会の開催
学部教官と附属中学校が連携してカウンセリングについての連絡会を開催している。
・1999(平 11)年度:不登校傾向にある生徒の指導について,附属中学校教官が学部教育心理
学講座教官に年間 3 回程度指導・助言を受けた。
・2000(平 12)年度:附属中学校における生徒や保護者に対するカウンセリング実施に向けて,
附属中学校教官と附属教育実践総合センター教官との間で連絡会をもち検討を行ってい
る。
③
中学校の文化祭への小学校児童の参加
2003(平 15)年度に,中学校の恒例の合唱祭である「附中のハーモニー」に附属小学校の 6 年
生の児童が初めて参加した。
④
中学生と小学生の合同体育授業の実践
2003(平 15)年度に,中学1年生と小学 6 年生が,中学校の体育館にて合同の体育授業を行った。
(4)養護学校
新しい学習指導要領では交流教育の推進をうたい,障害児学級の児童・生徒の多くは通常学
級と交流を図り,1 日の中で通常学級で学習を受ける機会を多くしたり,地域にある盲・聾・養
護学校との交流をしている学校が多い。しかし,附属学校においてはまだまだ交流教育は定着
しておらず次のような実態である。
①
附属小学校との交流学習は,1999(平 11)年度にはすでに行われており,単発的な行事を中
心とした交流学習だけでなく,ある学年の 1 クラスと年間を通した継続的な交流学習を現在ま
で行ってきている。例えば,附属小学校の 1 クラスの児童との合同音楽発表会に向けての取り
組みをグループ別に進めていたり,別のクラスの児童と電車ごっこを中心に位置づけた活動に
取り組んだりしてきた。養護学校児童においては,同世代の友達とともに活動することで様々
な刺激の中での経験ができ,人や環境になじむこと,社会性を培うこと,人間関係を拡げるこ
とにつながっている姿が見られている。また,附属小学校の児童においては,附属養護学校の
児童の名前を自然と覚えて呼んだり,自由遊び場面では仲間としてともに活動したりする姿が
見られ,障害についての認識を深めるきっかけとなり,
「ともに生きる」ことについて考える機
会となっていると考えている。
②
愛知教育大学附属養護学校高等部生徒及び三重県立玉城わかば学園高等部生徒とのソフト
ボールの試合・昼食会等を通しての交流を毎年実施している。
2.5.2.10
教育の改善に向けて
(1)幼稚園
現行の幼稚園教育要領によれば,
「幼児一人一人の特性に応じ,発達に即した指導を行うよう」
にとしている。また一方では,設置基準法によれば,学級定数を 3 歳児 20 名,4・5 歳児 35 名
以下とするとされている。年々幼児の実態は変化し,家庭でしつけるべき基本的習慣も身に付
いていない子どもが増加する現状である。また,最近 ADHD や多動的な様子を見せる子どもも増
加する傾向にあり,一人ひとりの特性に応じたきめ細やかな指導は,現行の定数のもとではで
きにくい現状であり,苦慮している。また幼児だけでなく,保護者自身の人と係わる力不足,
不安定を見せることが多い現状からも「子育て支援」の必要性を感じる中,幼児教育機関とし
ての使命を果たすべく方法を検討していきたい。附属学校の使命としての研究活動や学部生と
の連携等のさらなる推進を図りたい。交流教育についても四附属校園が同敷地にある利点を生
かし,各校教諭の交流教育の意義を共通理解し,職員の人事交流や合同での先進的な研究の推
進を目指していきたい。
(2)小学校
全学年共 1 クラス 40 人である。高学年になると興味や関心の個性的な違いが広がり,学力差
も顕著に表れてくる。そのため,学力に応じたきめ細かい指導を行い,基礎基本の定着が図れ
るように弾力的なクラス編成ができるようにしたい。また,低学年においては公立小学校では 1
年生・2 年生の 30 人学級が実現しつつある。一人ひとりの児童に応じた指導を行い幼稚園と小
学校の連携が円滑にいくように,附属小学校においても 30 人学級が望まれる。
また,展望をもって特色ある小学校教育を実施するために,施設・人的配置を考えていかね
ばならない。
(3)中学校
①
学級編成
1 クラスの人数が 40 人,つまり本校では 40 人学級の中で教育が行われている。公立校は最近
35 人学級の中での教育が一般的になりつつある中で,本校では生徒の教育だけでなく,教育実
習生の受け入れ,研究面の関与や教育学部の実験校としての役割など公立校にはない特別な役
割がある。このような状況を踏まえ,学級の人数を 1 クラスあたり 35 人以下にした編成が望ま
れる。
②
教育課程
従来の教育課程に新しい視点を加えた教育課程を検討していく必要がある。各教科領域の系
統性の問題や連続性について吟味する中で,たとえば小学校との一貫教育を視野に入れるなど
した新たな取り組みが必要であろう。
③
施設・設備
「豊かな創造性とたくましい実践力をもち,生活をきりひらく生徒の育成」の実現を目指し,
楽しく快適な学校生活を実現するため,次の施設・設備の整備は最重要課題である。
・緊急的な面の改善点
(1)校舎の新設又は大規模改修
(2)管理棟の新設又は大規模改修
(3)体育館の新設又は大規模改修(特にフロアー)
(4)運動場,球技場,テニスコートの整備
(5)自転車置き場の新設
(6)プール浄化槽及び排水修理
・中期的な改善点
(1)スポーツ施設の統合と新設
(2)ランチルームの新設
(3)観劇・音楽鑑賞用附属 4 校園共通のホールの新設
(4)幼・小・中の一貫教育可能な施設設備の新設
(4)養護学校
新しい学習指導要領の内容に沿った学習を推進するだけでなく,附属学校の研究機関として
の立場を自覚し,大学との連携を保ち,教育技術の向上と研究の充実を目指すことがますます
重要であると考える。また,「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」を受けて本
校の特色化を図るために,今までのその時代の教育課題に沿った学習指導を研究・公開し,地
域の教育の充実を図ることの他に次のような点について昨年度から検討を始めている。
・教育対象について・センター的機能設置について・学校組織の構造改革について・新しい
教育課程の編成について・学生の活用について等
中でも,教育対象については,在籍者の 6 割以上が自閉症であることと,県立の養護学校と
の重複を避けた特色を出すために,自閉症の指導に関する専門性を有した学校とすることを現
在検討中である。このためには,学部との連携推進は言うに及ばず,交流教育の推進,附属学
校園における特別支援教育の構造的改革と推進を目指した連携の強化が大きな課題である。
2.5.3 研究活動
2.5.3.1 研究資金の現状
(1)幼稚園
定期的な公開研究会は 1 年おきに,その他毎年「保育を語る会」を開催し,国・公・私立幼
稚園,保育園等にその成果を公開している。公開研究会開催の経費は参加費でまかなっている
が,しかしそのための研修活動費用や研究テーマによる予算等はなく,法人化によりさらに予
算が厳しくなり,特色化が実践できるか危惧している。
(2)小学校
教育用経費が逼迫しているので研究に回せる経費はないに等しい。しかし公開研究会などに
要する経費は参加費を徴収することで,一部まかなっている。
個別には,文部科学省の科学研究費を申請して,研究費を受けて研究を進めている教官もい
る。大学教官との共同研究で,配分を受けている教官もいる。
(3)中学校
使用できる研究費は,皆無である。名目上は,教官 1 人あたりの研究費が計上されているが,
生徒の教育が最重要課題であるので管理運営費や生徒指導費に回さざるを得ない状況にある。
このような中,研究資金は教官各自で対応しているのが実状であり,中には大学教官との共
同研究を通じて研究資金の獲得を目指そうとしている教官もいる。
(4)養護学校
附属学校は,教育の技術の向上と研究の充実を推進することが大きな使命であることは誰も
が周知のことであり,このために本校においては開校以来何度も公開研究会を実施して,地域
の教育の推進に供してきた。研究会を開催するには,多くの労力と資金が必要とされることは
言うまでもなく,このために附属学校教官には,大学教官と同じように研究費が予算化されて
いる。しかし,現実には修学旅行引率経費が時代離れした予算が組まれていることや,
(例えば,
小学部 7,000 円で 2 人,中学部 10,000 円で 3 人,高等部 13,000 円で 5 人)校外学習に関する経
費が盛り込まれていないこと等があって,教官用の旅費はこれらの引率旅費にほとんどが使わ
れ,皆無に等しい実態である。このため,研修を深めるための出張も思うようにならず,数人
が研修に出かけられるだけという実態である。今後,法人化を迎えますます予算措置が厳しく
なることを考えると,特色化を目指すための研修も自己研修に頼らなければならなくならない
のではと危惧される。
2.5.3.2
研究成果の公表・評価の現状
(1)幼稚園
幼稚園では研究主任を中心に全員が分担をして研究を推進している。
・2000(平 12)年 11 月・・・「研究教育課程の改訂
−家庭との連携を考える−
」
・2000(平 12)年 11 月・・・教育課程 −指導計画,保育ハンドブック− 発行
・2002(平 14)年 11 月・・・研究紀要「道徳性の芽生えってなあに」
・2002(平 14)年 11 月・・・中間報告「豊かな人間関係をめざして,子どもがかわる,教師
がかわる幼小連携」
・2003(平 15)年 10 月・・・研究紀要「学びをひらく体育の創造−体育ってなに?今を生き
る子どもたちにとって−」
(2)小学校
小学校では,5 名の研究委員が中心になって研究会をリードしている。そして個々の教科での
研究が基礎になり,さらに 3 教科部会で研究を深めている。
2003(平 15)年度は,2001(平 13)年から掲げている「子どものまなざしが真剣になる授業」を研
究主題とし,
「かかわり合いを深めていく子ども」を副主題として,2004(平 16)年 2 月に授業研
究会を開催し,2004(平 16)年 6 月に開催する公開研究会に備えた。指導者・司会者は大学教官
や県・市教育委員会に依頼し,協力を求めている。
研究成果は,研究成果のとりまとめ(例:総合的な学習の実践集,2002(平 14).3)や研究紀
要を発行することで公開している。
(3)中学校
中学校では,3 名の研究委員を中心にして研究を推進している。教科での研究が基盤になるの
で,各教科で随時授業の検討や研究テーマに沿った話し合いを行っているが,美術や音楽は担
当教官が 1 人であるので,9 教科を 3 つの部会に分けて授業研究等を行っている。
研究は 2 年間を一区切りとして取り組み,2 年目の秋には公開研究会を開催して成果を広く問
うている。公開研究会に先だって,1 学期にはミニ公開を開催し,実際の授業をもとに紀要の内
容や実際の授業について指導を受けている。助言者として,大学教官と県の指導主事に依頼し,
協力を求めている。また本校 OB にも参加を求め,研究の系統的継続的な推進を図っている。
本校は,地域社会と強い結びつきがある公立の学校とは異なる環境にあり,地域との連携は
ほとんどないのが実状である。ただ,保護者の居住地が広範囲に広がり,職業も多様であるこ
とから,公立学校とは違った様々な面で学校への協力が期待でき,今後その活用について検討
をしていく必要がある。また,地域社会への貢献や地域社会からの協力についても,中学校と
しての望ましいあり方を今後検討していく必要がある。
(4)養護学校
新しい学習指導要領では,個に応じた指導が強く求められるようになり,このために個別の
指導計画の作成が大きな課題となった。そこで本校では児童生徒一人ひとりの個別の課題を設
定し,この重点課題に基づく個に応じた指導をテーマにして 1998(平 10)年度から取り組みを始
めた。その後研究を推進する中,システム上の問題が提起され,シンプルで実用的なシステム
の開発を求めるようになった。1999(平 11)年度の公開研究会では,これらの問題をクリアすべ
く「システムの整備と指導方法の追求」というサブテーマを掲げて研究を推進した。その結果
「指導の充実」「教師側の見方や対応の変化」「子どもの成長や行動の変容」等の成果が見られ
た。さらに残された課題を解決するために,
「重点課題に基づく個に応じた指導」のパートⅡと
して,個の重点課題について集団の中での場面を想定したモデルプランを作成し,
「重点課題に
迫る授業づくり」について検討を続け,2001(平 13)年度の公開研究会で発表した。2002(平 14)
年度からは新しい学習指導要領完全実施と今後の特別支援教育推進の課題でもある,個別の教
育支援計画を視野に入れた個別の指導計画の作成とそれに基づく指導の在り方についての研究
を始め,2003(平 15)年度末に公開研究会を行った。個別の指導計画の作成は,障害のある子ど
もを支援していくためには必要なものであるため,多くの参加者から大いに参考になったとい
う評価をいただいた。
《参考》
養護学校では 2 年間継続研究したものの成果を公表するようにしており,過去 5 年間の研究
成果は次のとおりである。
・1999(平 11)年度:重点課題に基づく個に応じた指導(Ⅰ)
─
システムの整備と指導方法の追求
―
・2001(平 13)年度:重点課題に基づく個に応じた指導(Ⅱ)
・2003(平 15)年度:学校と家庭が連携した支援をめざして
―
2.5.3.3
個別指導計画へのサイクルシートシステムの導入を通して
―
共同研究の現状
(1)幼稚園
1999(平 11)年度には「附属小・中・幼・養護学校間の交流を基盤に据えた障害児教育の研究」
をテーマに養護学校との交流教育を進め,より豊かな人間関係を体験し,その実践事例を基に
研究を進めた。2001(平 13)年頃から附属小学校へ入学した子どもや保護者から子どもの不安や
心配の相談が寄せられるようになり,文部科学省においてもこの問題が取り上げられるように
なり,幼小の接続や連携についてのテーマを掲げ取り組むこととなった。今後各校種がこの問
題を共通理解し,附属独自のカリキュラム編成の可能性を考えていきたい。
・2002(平 14) ∼2003(平 15)年・・・「幼小接続問題プロジェクト」
・2003(平 15)年 ・・・・・・・・・「知的財産教育の構築」
(2)小学校
大学教官との研究連携は,2003(平 15)年度は「知的財産教育の構築」
「食教育の継続性と連携
に関する研究」「幼小連携接続問題の実践的研究」などがある。
(3)中学校
①
学部との連携
公開研究会に向けてのミニ公開及び公開研究会当日に学部の教官を助言者として招き,指導
を受けている。また,必要に応じて学部の教官が中学校において授業を行っている。
また,教官個人レベルにおいて,例えば知的財産に関する研究を大学の教官と連絡を取りな
がら共同研究を進めている。
②
地域貢献
公開研究会は研究の成果を発表し,地域に貢献できるよい機会であるととらえ,少しでも多
くの参会者があるようあらかじめ県内すべての中学校に案内状を送付したうえで,公開直前に
は FAX により参加を呼び掛けている。さらに,教官一人ひとりが知人に案内を郵送したり電話
をしたりして周知を図るよう努力している。
また,公開研究会は,新規採用教官の研修の場として活用されている。さらに,公開研究会
以外に新規採用教官研修として授業公開及び事後研究会を行っている。研究の成果については,
インターネットのホームページを利用して公開している。
(4)養護学校
研究に対し,教育学部の障害児教育講座の助言があるものの,共同研究にまでは至っていな
い。
2.5.3.4
研究活動の改善に向けて
(1)幼稚園
教育改革の中で,初めて幼児教育に対する諮問がなされた。この現状からみても幼児教育に
対する理解が遅れていることが感じられる。幼児教育の在り方,子育て支援の在り方,幼保の
問題,幼小の問題等がある。そうした山積する課題にむけて先進的な研究活動に取り組み成果
を発信していきたい。
(2)小学校
研究のタイプには,附属小学校教官が独自であるいは共同で行う教育実践的研究や,大学教
官との共同で行う教育実証的研究や教科専門的研究がある。前者は学内だけで研究計画が立て
られるが,後者はキャンパスが小学校と離れているために,それでなくても忙しい教官にとっ
ては会議が持ちにくく,勢い大学教官の主導型になりやすいなど,研究推進には問題点がある。
それを越えて推進するには,勤務時間の問題も解決しなければならない。
(3)中学校
研究活動を進めていくためには,研究をするための環境や体制などいくつかの問題点が存在
する。教官の自助努力も限界があり,下に示した事項を早急に改善していく必要性がある。
・研究時間の確保
・研究費の確保
・学部との連携
・研究施設の充実
・研究設備の充実
(4)養護学校
特殊教育体制から特別支援教育への大転換期を迎えていると言われている現在,研究しなけ
ればならない課題は山積している。その中で,今後本校が特色化を図るために,従来から築き
上げてきたいくつかの成果をもとに,自閉症の子どもに関する基礎的な研究にまず取り組み,
自閉症の子どもを支援するための教育課程の編成を目指した研究を推進するよう今後早急に検
討をしなければならない。また,地域のセンター的機能を持つために,コーディネーターの養
成や教育相談の指導者養成のための研究も併せて行わなければならないと考える。
2.5.4 教官組織
2.5.4.1 専任教官の配置状況と選考基準
(1)幼稚園
本園の教職員は 8 名,園長,副園長,教諭 5 名,養護教諭で構成されている。養護教諭を含
む 6 名を表 2.5.4-1 のように構成している。
表 2.5.4-1
専任教官の配置状況(幼稚園) (単位:人)
園長
副園長
教諭
養護教諭
計
1
1
5
1
8
5 名の教諭のうち 3 名を大学採用者。1 名を県(公立小学校)との交流者,1 名を津市(津市
立幼稚園教諭)との交流者,養護教諭についても県との交流者で教職員構成している。2004(平
16)年度三重県教育委員会との人事交流協定,津市との人事交流協定を要望している。
法人化後も現行の学級定数に準ずるのであれば,せめて現状にあった講師の増員を要望する。
(2)小学校
①
専任教官
附属小学校における教官定数は,表 2.5.4-2 のとおりである。児童定員が減っていないのに,
全学的な教職員定員削減計画のもとに,2003(平 15)年に 1 名削減されたことにより,授業につ
いては非常勤講師で補っている。しかし,上記に述べたような各種の校務は,常勤教官が担う
必要があり,1 名の削減は常勤教官の勤務にしわ寄せが来ている。
また教育実習の指導の際には,非常勤講師に頼っている教科の実習生指導ができない点が問
題である。
表 2.5.4-2
(単位:人)
2000(平 12)
2001(平 13)
2002(平 14)
2003(平 15)
年度
年度
年度
年度
長
1
1
1
1
副校長
1
1
1
1
教
頭
1
1
1
1
教
諭
22
22
22
21
1
1
1
1
26
26
26
25
職種/年度
校
養護教諭
合
②
専任教官の配置状況(小学校)
計
教官人事の在り方
校長以外の教官人事は三重県との人事交流によって行われている。実情は表 2.5.4-3 のとお
りである。
表 2.5.4-3
区
(単位:人)
2001(平 13) 2002(平 14) 2003(平 15) 2004(平 16)
分
転 出
年度
年度
年度
年度
公立校へ
6
5
5
9
県教委へ
0
0
1
0
退
0
0
0
0
0
0
-1
0
新規採用
0
0
0
0
公立校から
6
5
5
9
県教委から
0
0
0
0
他附属から
0
0
0
0
その他
0
0
0
0
育
0
0
0
0
職
定員の変化
転 入
産
小学校の教官人事
休
(3)中学校
専任教官の配置状況は,2003(平 15)年度の場合,表 2.5.4-4 のとおりである。
表 2.5.4-4
専任教官の配置状況(中学校)
(単位:人)
校長
副校長
教頭
教諭
養護教諭
計
1
1
1
23
1
27
校長は,教育学部の教授から選ばれている。また,副校長,教頭,教諭,養護教諭は,三重
県との人事交流において進められている。
(4)養護学校
① 専任教官の配置状況
表 2.5.4-5
専任教官の配置状況(養護学校)(2003(平 15)年度)
(単位:人)
校
長
副校長
1
教
1
頭
教
1
諭
養護教諭
計
1
28
24
専任教官は,創立時代からほとんど増員されていない。 全国の附属養護学校の約半数の 21
校が本校より 1 名多い配置がなされている。そして 「公立義務教育書学校の学級編成及び教職
員定数の標準に関する法律」に準じると,標準定数から 5 名も少ないことになる。
ここ 10 年間,公立の学校においては,国の教官の第 6 次定数改善・第 7 次定数改善が進み,
学級編成は 40 人という上記法律は改正しないものの,特色を出すために,教官の加配を毎年
3,000 人近く行っている。しかし,この制度は国立学校は対象とされない。また,県・市町村教
育委員会の裁量で学級編成を 30 人学級などにするとともに,教官・実習助手・介助員の配置を
行うなど,公立校の人的環境は年々改善され,よりきめの細かい指導・支援体制が組まれてい
る。今後もさらに進むであろう公立学校の教官加配と学級編成の少人数化の中で,附属学校が
国立大学法人化されることによって,ますます教官数の増員は難しい状況が懸念される。
このような中で,在籍する児童生徒の障害の重度化・多様化と安全管理を考えたとき,教官
の負担をこれ以上求めることが難しいなか,最低限講師の増員と介助員の配置が必要である。
② 選考基準
選考は,公立学校教員との割愛による人事交流による。最近の採用状況は表 2.5.4-6 のとお
りである。
表2.5−19
教官の採用状況
(単位:人)
1999(平 11)
2000(平 12)
2001(平 13)
2002(平 14)
2003(平 15)
年度末
年度末
年度末
年度末
年度末
4
2
2
3
4
公立 2
公立 1
(内教頭 1)
県立 2
公立 1
公立 3
公立 2
県立 0
県立 2
(教諭)
県立 1
県立 1
本校は,公立小中学校と県立盲・聾・養護学校との人事交流を行っている。公立校からの場
合は,特に市町村教育委員会の教育長の推薦を受け割愛されるが,県立校の場合,数年前まで
は本校が推薦した教官の割愛人事が多かったが,最近では,県教委・県立の学校長の推薦者が
割愛される傾向が強くなってきた。
三重県教育委員会人事異動規程に基づく附属学校人事異動規程により,人事交流を進めてい
るが,法人化や附属でなくとも地域で充分研究できるという公立校の教育環境の改善が進むな
か人事交流の難しさがある。このことは,教育実習生を受け入れて指導しなければならない附
属学校であるにもかかわらず,養護学校教諭免許所有者の割愛の難しさにもつながり,本校に
着任後,養護学校教諭の免許を取得しているというのが現状である。
法人化でさらにこのことに拍車がかかることが懸念される。このため,大学独自の採用を今
後考える時期にきているものと考える。
附属学校の魅力・特色に負けまいと,外部評価を取り入れたり,教育長と校長とが特色化を
図るための契約がなされるなど,公立校の変革は驚くことが多い。そこで,公立校の校長・教
頭が附属学校に進んで割愛されるような条件整備も必要と考える。また,学内から教頭等への
昇任者に対する研修の必要性があると考える。
2.5.4.2
非常勤講師の配置状況と選考基準
(1)幼稚園
基本的には,非常勤講師については,3 歳,4 歳児 2 クラスに 1 名の配置している。しかし特
に支援を要する子どもが在籍する年度については安全の上からも非常勤講師の増員をしている。
本園の入園児選考の趣旨は実習の意味も鑑み,特別な幼児のみの入園を望まず,対象を広く考
えている。また,選考時は 2 歳代であり,本人の発達を明確にすることが困難であることなど
から柔軟な非常勤講師の配置を強く要望する。また,近年の子どもの実態と学級定数から是非
各クラスへの配置を強く要望し,教育実践や研究の充実,安全管理の充実へつながることを理
解していただき非常勤講師の配置を要望する。非常勤講師の時間数について,幼稚園教育の独
自性から幼児一人ひとりの姿を把握することや,狙いや目標を共通理解することが重要であり,
保育時間に限られた勤務時間では困難で,非常勤講師に負担を負わせることとなり,この点に
ついても理解をしてほしい。非常勤講師の選考については,まず幼児教育に理解のある人材を
確保すべき努力をしている。
(2)小学校
従来から,
「書写」については非常勤講師で対応してきた。新たに 2003(平 15)年度に教官
定員 1 名削減されたことから,非常勤講師採用の必要が喫緊の課題となった。各教官のクラス
担任の有無やクラス担当をどうするか,また 1 人の持ち時間数や常勤教官の担当授業科目の決
定については,現在研究が継続中であることや,紀要の執筆,研究チームの維持などの観点を
総合的に勘案して,2003(平 15)年度は「家庭科」担当を非常勤とすることとなった。したが
って,2003(平 15)年度は非常勤講師を 2 名採用した。
選考基準は,免許の有無が最大の課題となる。書類選考と面接により採用を決定する。
(3)中学校
2003(平 15)年度の場合,専任教官が 1 名の教科である音楽,美術にそれぞれ 1 名の非常勤
講師が配置されており,また外国人による英会話を中心とした英語の非常勤講師 1 名の計 3 名
である。選考方法は,面接による。
なお,専任教官が病気など不測の事態などで非常勤講師を配置する場合があるが,事務手続
き上その任用までに相当に時間がかかり,授業運営において支障を来すことがある。公立校で
は,このようなケースの場合教育委員会を通じて迅速に対応するというのが一般的である。
(4)養護学校
非常勤講師の配置は,1999(平 11)年度まで 3 名だったが,2000(平 12)年度から 1 名増員
することができた。さらに 2 名の増員を要望し続けているが改善されることは難しいようであ
る。現在の非常勤講師は時間講師(年間 444 時間)であるため,学習指導を担当するだけで,
校務分掌は担当させられない状況である。選考については,当然のことながら公募し,障害の
ある子どもに対する知識・理解度と係わり方等について,筆記試験・面接を行っている。この
とき,在勤地に居住していることや養護学校教諭免許所有者を基に考えていることは言うまで
もない。今後,本校の特色化を目指す取り組みを始めようとしている現在,教諭職の配置が難
しければ,5 名以上の講師の配置が必要である。
2.5.4.3
教育ボランティア・TAの活用状況
(1)幼稚園
教育ボランティアについては,行事等に,学生・地域やサークルの方々・保護者に積極的に
依頼し,幼稚園を理解して頂くと同時に子どもたちに多様な人との係わりやそれぞれの人の得
意な技能を見聞きし視野を広く持ってほしいと考えている。近年の取り組みは次のとおりであ
る。
・登園日
県立高等学校教諭・・・「人の入れる大きなシャボン玉つくり」
学生ボランティア・・・粘土製作
学生ボランティア・・・凧つくり
・お別れ会
弦楽器のサークル・・・日頃園にはない音色を楽しむ
・園庭整備
ボーイスカウト・・・・ターザンブランコ作りの協力
・プールの改装
学生ボランティア・・・プールに絵を描き改修
・未就園児の会
学生ボランティア・・・未就園児やその保護者と遊ぶ
・保護者によるボランティアとしては,行事の時に劇やコーラスがある。
(2)小学校
2003(平 15)年度に,大学の教育活動支援委員会で検討された教育ボランティア制度が試験
的に 2 月から運用されたのを機に,本校では,
「書写」
「家庭」,及び図書館で休み時間に読み聞
かせの要員として募集したところ,7 名の教育ボランティアの応募があり,教育活動に参加して
くれた。なお,大学における教育活動の新しい試みとして,新聞記事でも紹介された。
(3)中学校
教育ボランティア,TA の活用についての実績はないが,今後活用の方向で検討していく予定
である。
(4)養護学校
本校では,1 人でも多くの支援者・介助者等が必要とされるものの,現在,ボランティアの活
用はなされていない。本校が国立大学の附属ということもあってなかなか地域の方々に依頼し
にくいのが現状である。今後は,学部との連携にもつながり,学生の障害者理解にもつながる,
学生ボランティアの積極的な活用を考えている。
2.5.4.4
教官組織の改善に向けて
(1)幼稚園
4 附属の教職員,教諭,事務両者の組織を一本化し,教育実践の充実を図るとともに,事務の
効率化を図り,4 校種が強い連携がもてる方向に改善を要望したい。
(2)小学校
教官に関しては,増員または非常勤の配当をねばり強く要望する一方で,児童への教育以外
に課せられている実践研究や教育実習指導をこなすためにはそれらの在り方を,抜本的に検討
していかねばならない。
(3)中学校
教官側についてみると,教官が係わる校務は多種多様であり,校務分掌の見直し,また管理
職の職務の内容について,検討が必要である。
(4)養護学校
法人化後の特色ある学校づくりを目指し,特別支援教育体制の充実強化を図るために,2004
(平 16)年度から学校運営組織の大幅改善を図るようになった。学校長の経営方針のもと,全
教職員が一致団結して子どもを主役とした学校運営推進を図ろうとしている。
2.5.5 国際交流
2.5.5.1 園・学校間交流協定
(1)幼稚園
現在,幼稚園間の交流協定を締結しているところはない。
(2)小学校
現在,学校間協定を締結しているところはない。
(3)中学校
現在,学校間協定を締結しているところはない。
(4)養護学校
現在,協定を結んでいる学校園はない。
2.5.5.2
教育交流の現状
(1)幼稚園
単発的に三重大学留学センターの留学生との交流がなされ,留学生とともに歌ったり,ダン
スを教えてもらったりする活動が行われたが,計画的には実施されていない。
(2)小学校
1997(平 9)年に総合的な学習で国際理解教育を取り上げたことがきっかけになり,児童と三
重大学の留学生との交流が毎年行われるようになった。はじめは,小学校と留学生が直接連絡
を取り合って交流をしていたが,数年前からは三重大学留学センターの仲介で中国,台湾,マ
レーシア,ギリシャ,ドイツなど多くの国々出身の留学生との交流が実現された。2003(平 15)
年度には,5 年生の総合的な学習の時間に一緒に日本の遊びをしたり,日本茶を飲むなど児童が
日本文化を紹介したり,留学生の国々の異文化に触れた。また,2 年生の生活科では,児童が計
画したゲームを一緒にして互いの文化の交流を図った。
(3)中学校
①
国際的な連携及び交流活動に関する理念・目標・計画
本校では,国際理解教育が充実し,国際感覚を身に付けた生徒を育成するために,入学者選
抜において数名程度の国際枠を設け,県内在住の外国人生徒を別途募集している。
入学者選抜は,応募する外国人生徒の日本語習得状況等を考慮し,作文と面接により実施し
ている。
入学する外国人生徒については,日本人生徒と同じように普通学級に在籍し,日常の学校生
活において交流を深めるとともに,共通の教育課程を実施し,学習面における学力の向上を図
る。生徒本人及び保護者の中学校卒業後の進路希望は,グローバルな視点での希望が多く,高
い学力を身に付けさせることが望まれている。
さらに,クラブ活動,学校行事等に積極的に参加させ,日本人生徒と協力して行動すること
により国際理解を深める。
②国際的な連携及び交流活動を支援・実施・改善する体制
日本語で授業を受けることが困難な外国人生徒を支援するため,国語の免許を有する非常勤
講師を配置している。授業形態としては,国語の授業において,取り出し授業やティームティ
ーチングを実施し,日本語習得の支援をしている。また,特に必要な場合は,英語の教師と非
常勤講師が取り出し授業を行い,教科内容の習熟を図っている。
(4)養護学校
1998(平 10)年度には,それまで 20 年間にわたり,制作してきた木版画カレンダーを一冊に
まとめ「輝くひとみ」と題して発行した。さらに,この冊子の英語版を作成し,国内だけでな
く,外国の子どもたちとの交流に役立てた。この結果,アメリカ合衆国ミシガン州の養護学校
や中学校の児童・生徒達から絵画が送られてきた。養護学校の児童生徒にとっては,外国の子
どもたちと交流ができた喜びと,外国の子どもの作品を見るという初めての体験をするととも
に,自分たちが描いた絵を見て外国の子どもたちが喜んでくれたことに対し,絵画に対する関
心と作品に対して自信へと結びつくところがあった。
また,2002(平 14)年度に文部科学省の事業である,教官海外派遣事業に本校教官が参加す
る機会を得たことにより,諸外国の特別支援教育(障害児教育)の視察と関係者との交流を深
めることができた。その成果を,還流学習することと児童生徒に作品・写真等を紹介しながら
話をすることで異文化に触れる機会をもつことができた。
2.5.5.3
国際交流の改善に向けて
(1)幼稚園
国際交流の機会が少なく,クリスマスのサンタクロース役に留学生に来園してもらう以外に
機会がない。子どもたちの視野を広め,国際的感覚を育成するについても今後取り組んでいき
たいと考えている。それには,留学生との連絡を密にできる窓口が必要である。
(2)小学校
現在,三重県下の外国人児童の在籍も増えてきている。また,瞬時に世界の情報が獲得でき
るインターネットの普及などでますます社会のグローバル化が進んできており,国際理解教育
に対する要望が高まっている。附属中学校のように外国人児童の入学枠を設けることも今後検
討しなければならない。
また,公立の小学校でも総合的な学習の時間に英語学習を取り入れている学校も増えてきた。
附属小学校においても,英語学習について先進的な研究が求められてくることも考えられる。
(3)中学校
2002(平 14)年 5 月現在,在籍する外国人生徒は,1 年生 2 名(中国籍のみ),2 年生 3 名(中
国籍 1 名,韓国籍 1 名,フィリピン籍 1 名),3 年生1名(中国籍),計 6 名である。
国際理解教育を推進するためには,多くの国から生徒を受け入れることが望ましいが,現在
の非常勤講師 1 名の配置状況では学習を保障することが困難であり,今後,配置数の拡大を図
る必要がある。
また,2003(平 15)年度は中国籍の生徒 3 名を受け入れており,今後は,中国,韓国等の近
隣諸国の在日外国人生徒を対象に生徒を受け入れるとともに,ホームステイ等を通して国際理
解教育を推進することが望ましい。
(4)養護学校
本校の児童生徒の場合,外国の人たちとの交流は作品等を通じてのものだけであったが,国
際化への対応として学習指導要領に新しい「外国語」という教科の新設がうたわれていること
から,今まで行ってきた,アルファベットや日ごろよく目や耳にする簡単な英語の言葉に興味・
関心をもつようにすることからさらなる取り組みが必要と考える。このためには,日ごろから
外国の人と出会うことが大切であり,三重大学にいる留学生と本校児童生徒との交流ができる
よう働きかけていかなければと考える。
2.5.6
社会連携
社会と附属学校との関係は,実践研究された成果を社会に還元しながら,また先進的な研究
成果を披露・公開し,ともに教育効果を高めていくよう努めていくべきである。その意味でも
公開研究会は,研究の成果を発表し,地域に貢献できるよい機会であるととらえ,少しでも多
くの参加者があるよう努めている。さらに,公開研究会は,新規採用教官の研修の場として活
用されている。また,公開研究会以外に新規採用教官研修として授業公開及び事後研究会を行
うとともに,県教委・市町村教委及び学校からの要請を受けて講師・助言者・相談員として県
内各地で活躍をしている教諭も多い。
2.5.6.1
教育における社会連携の現状
(1)幼稚園
・学生ボランティアとの連携 (園行事,未就園児の会)
・ゲストティーチャー(公立高教師のシャボン玉,楽器演奏会)
・ボーイスカウト役員に園庭のターザンブランコ(紐結びの援助)
(2)小学校
初任者研修・教官研修への協力
2003(平 15)年度には,三重県における初任者研修に協力した。本校の授業を参観し,授業
反省会に参加した。
また,神奈川県現職教員(1 名)の 1 週間研修,福井県現職教員(2 名)の 1 日研修を受け入
れた。研修教員は授業参観だけでなく,附属小学校児童対象に授業体験をするなどして附属小
学校が取り組んでいる研究について実地に研修した。
(3)中学校
三重県教育委員会では,毎年新規採用教諭を対象にした初任者研修を実施しているが,中学
校ではその受け入れに対してここ数年来この研修に積極的に係わってきている。初任者研修に
参加する人数は,当該年度の採用者数によって決まるのであるが,毎年約 60 名前後であろう。
この初任者研修の目的は,三重県教育委員会によると「授業参観や討議に参加することによ
り,教育活動に対する基本的な姿勢や見方を学ぶとともに,実践的な力量をつける」といった
趣旨になっており,午前 10 時頃から夕方の 4 時頃までプログラムが組まれている。
また,三重県教育委員会の依頼により,指導力向上支援研修に対して協力をしてきている。
(4)養護学校
本校の地域社会との連携・貢献の 1 つに研修会・研究会等の講師・助言者として参加がある。
表 2.5.5-1
養護学校における社会連携
(単位:件)
1999(平 11) 2000(平 12) 2001(平 13) 2002(平 14) 2003(平 15)
年度
年度
年度
年度
年度
県・市教委の要請
10
3
6
8
11
公立校からの要請
8
11
10
9
11
計
18
14
16
17
22
中でも,三重県教育センターでの講師が定着し,公立学校の研修会への参加要請が年々増加
している。このほか,直接本校で教育活動を見学し,検討会に参加する形の,県立盲・聾・養
護学校初任者研修会や市町村の特別支援教育振興会の研修会が養護学校で行われることがある。
また,津市就学指導委員会にも委員として参加している。さらに,体験入学と親子教室を実施
し,地域の障害のある子どもをもつ保護者に対し,養育上の相談や就学に関する相談を行うと
ともに,日常的に教育相談・就学相談を受け付ける件数は毎年延べ 100 件を超えている。本校
の児童生徒は,地域から離れ通学している子どもが多いが,地域によっては,小学校時代一緒
だった本校の生徒が地域の中学校の行事に招かれることがある。本校の児童生徒にとって地域
の子どもたちとの交流が時間的に難しいだけに,このような機会をもっていただけるよう,多
くの学校へ今後も働きかけていかなければと考える。
2.5.6.2
研究における社会連携の現状
(1)幼稚園
幼稚園の社会における交流・貢献には次のようなことがある。
①
全国学校体育研究大会の開催
2003(平 15)年 11 月 14 日に第 42 回全国学校体育研究大会が三重県内 14 の会場で開催され
た。附属幼稚園は三重県の国公立幼稚園を代表した公開保育の会場となり,120 名を越える参加
者を全国から迎え,研究協議した。また,研究大会にいたるまで 3 年間にわたり三重県国公立
幼稚園協会から代表のメンバーとして,三重県内の小・中・高・養護・盲・聾学校の教員たち
と協力して研究を深めていった。
②
公開保育研究会・保育を語る会の開催
附属幼稚園においては,2000(平 12)年,2001(平 13)年は道徳性の芽生えを考える研究に,
2002(平 14)年からは幼少の連携に関する研究に取り組んでおり,毎年あるいは隔年毎に公開
研究会を開催した。その他に毎年,2∼3 回の保育を語る会を開催し,公開保育をもとに研究協
議会を行っている。公開研究会の助言者として大学教官や附属小学校教官,他の附属幼稚園教
員を迎えて協議や交流を深めている。
③
本園教官の三重県内研究会などへの協力
2003(平 15)年度に三重県教育研究会(三重県教職員組合)の講師として貢献した。
(2)小学校
附属小学校の社会における交流・貢献には次のようなことがある。
①
全国学校体育研究大会三重大会の開催
2003(平 15)年 11 月 14 日に第 42 回全国学校体育研究大会が三重県内 14 の会場で開催され
た。附属小学校も会場となり,研究主題「運動との関わりを深めていく子ども−出会い・学び
合い・遊び合いを大切にして−」のもと,体育科が中心となり,公開授業・研究協議会を行っ
た。参加者は全国から 400 名にも及んだ。
②
授業研究会の開催
附属小学校においては,2004(平 16)年 6 月開催の公開研究会に向けて 2001(平 13)年度か
ら設定した研究主題のもとに 2004(平 16)年 2 月 11 日に授業研究会を開催した。大学教官や
三重県の教員が助言者・司会者として加わり,附属小学校教官との交流を深めている。
③
本校教官の三重県内研究会などへの協力
表 2.5.6-1 に示すように,各種研究会の講師として貢献した。
表 2.5.6-1
附属小学校園教官の地域への貢献度
(単位:件)
2000(平 12) 2001(平 13) 2002(平 14) 2003(平 15)
年度
年度
年度
年度
教育委員会主催研修会
0
0
0
2
教研集会
1
1
1
1
講演等・研修会
3
2
3
2
(3)中学校
附属学校の使命の 1 つである研究・実験校としての先導的役割は地域社会との交流や連携を
通して教官の資質向上を図るというかたちで従来より活発になされている。その主なものを挙
げる。
公開研究会の開催
附属中学校においては「学ぶ意欲が育つ授業」という一貫したテーマの下で,1974(昭 49)
年より実践研究をスタートさせ,現在までに 15 次を数えている。隔年 11 月にその成果を公開
研究会として公開しているが,教科全部のそれぞれについて,学部の教科専門教官が現職教官
とともに助言者として参加し,附属学校教官との交流を重ねてきている。
(4)養護学校
社会との連携においては,特別支援教育の三重県の研究組織である,三重県特別支援教育振
興会の会長(2000(平 12)∼2002(平 14)年度)
・副会長(2003(平 15)年度)を副校長が,
事務局員を教諭が引き受け,特別支援教育に係わる研究活動の推進を図っている。
2.5.6.3
同窓会・後援会
(1)幼稚園
2001(平 13)年三重大学教育学部附属幼稚園教育後援会を設置,同窓会組織はない。
(2)小学校
2003(平 15)年 8 月 7 日に同窓会が開催された。1895(明 28)年開校から 128 年の歴史を持
つだけあって,最年長者は,亀山女子師範学校附属の同窓生で 89 歳の方の出席があった。また
最も若い同窓生は 2003(平 15)年 3 月に卒業したばかりの附属に進学した中学生で,総勢 120
名余りの出席であった。感激的であったことは,津市丸の内(現在は市役所となっている)に
あった校舎の航空写真遠景を写真屋のギャラリーで見つけてコピーをして小学校にご寄付され
たことであった。ただ,同窓会は充分に組織化されていない。今後の課題である。
後援会については,教育後援会の名称で,在学中の保護者によって構成され,教育振興・研
究発展・環境整備への助成を行っている。強制加入ではないが,かなり入会率はよい。100%に
なることを目指したい。
(3)中学校
本校には,同窓会と後援会の組織がある。同窓会の名称は,三重大学教育学部附属中学校同
窓会であり,卒業生及び本校に在学した者をもって組織され,会員の親睦を図り,母校の発展
を期すことを目的に組織されている。
また,後援会の名称は,三重大学教育学部附属中学校教育後援会であり,三重大学教育学部
附属中学校の教育活動及び研究活動への助成を目的に組織されている。
(4)養護学校
毎年 3 月に卒業生と教官 OB とによる同窓会を開催し,近況報告をしあったり会食をしながら
楽しいひとときを過ごし親睦を図っている。現在高等部卒業生は約 200 人であるが,その中の
50∼60 人が毎年のように参加し,昔の仲間と出会えるこの日を楽しみにし,元気をもらって別
れを惜しみながら帰っていく。年に一度の行事である同窓会が本校の特色のひとつでもある。
また,ソフトボールの親睦試合を毎年数回実施して交流,親睦を図ることも行っているが,こ
の行事も卒業生にとって楽しみの一つである。卒業生だけでなく,卒業生父母の会もあり,OB
のお母さん方が集まり,子どもと一緒にスポーツに興じたり,調理教室等を実施して親睦・交
流を図っている。
後援会組織も 2001(平 13)年度から組織化され,本校の教育活動及び研究活動への助成を目
的として,会員の賛助金を委任経理金として学校への寄付があり,目的に沿った活用を行って
いる。
2.5.6.4
広報活動の現状
(1)幼稚園
パソコンやデジビデオなど教育機器が充実し,実践研究に生かすことができた。今後は指導
案の検討や幼児の姿を教官相互が効率よく共通理解し,日々の教育活動に生かしたい。また園
内研修会においても,効率的な方法で研究を進められるよう整備していきたい。
(2)小学校
学校要覧を作成している。ただ,2003(平 15)年度からはパンフレット形式とし,内容も必
要最小限にとどめ,パソコンで作製し,経費を節約した。またホームページを作成し,児童の
活動やパソコンクラブの児童の作品などを発信している。
また,育友会では,「はぐくみ新聞」を年 2 回,「はぐくみ通信」を年 4 回発行している。学
校行事や子どもたちの活動・育友会活動報告など掲載している。
(3)中学校
学校要覧を作成し,配布している。
(4)養護学校
開かれた学校を目指すための 1 つとして,月に 2 回「ふようつうしん」を発行して学校の行
事を保護者に伝えるとともに,その時々の話題を報告・提供している。学級担任の中には,毎
日のように学級通信を発行し,学級の子どもの様子やその日あったことなどを保護者に報告す
るとともに,担任としての指導観を伝えている者もいる。育友会(PTA)も,年に 2 回,入学時
期と卒業時期に会報「はもん」を発行し,会員の思いや願い,子どもの成長の記事を載せ会員
相互の連携を深めあっている。
2.5.6.5
社会連携の改善に向けて
(1)幼稚園
特になし
(2)小学校
2003(平 15)年度には,総合的な学習で,地元津市の「唐人踊り」や「谷川士清」,
「安濃川」
等について取り上げ,地域の方々をゲストティーチャーとして迎え,専門的に指導していただ
いていた。今後も積極的に地域の専門家や祖父母,保護者などの力を本校の教育に取り入れ,
開かれた学校づくりに努めていきたい。
例年,授業研究会,公開研究会には,全国各地から多くの参加者がある。しかし,三重県内
の参加者が年々減少する傾向がある。本校の研究と公立学校の求めにずれはないのか本校の研
究のあり方について根本的に検討をしていく必要がある。また,三重県総合教育センターや公
立学校の研修会・研究会に講師・助言者として進んで参加し,本校の研究を県下に発信するな
ど主体的に連携の強化を図っていかなければならない。
(3)中学校
学外との連携は今後ますます重要になってくると思われる。本校の設置目的に照らし,県内
の学校と積極的に連携していることが望まれる。
(4)養護学校
2003(平 15)年 3 月に「今後の特別支援教育在り方」(最終報告),及び「障害者基本計画」
が出されてから,特殊教育から特別支援教育への転換を図る取り組みが始まった。このことに
より「個別の教育支援計画」の必要性や,それぞれの学校に,
「特別支援教育コーディネーター」
の位置づけ,さらには,地域の総合的な教育的支援体制の構築が図られようとしている。この
ための研修会が様々な形で計画され,すでに研修が始まっている県もあると聞く。三重県教育
委員会は,2004(平 16)年度に特別支援教育コーディネーター養成のための研修を始めるとい
う。本校も地域の特別支援教育のセンター的役割を果たすとともに,特色ある学校づくりを目
指すなか,地域の関係者の研修機関として役に立つよう努力をしなければならない。県教育委
員会と同じように今まで築いてきた総力を結集して地域の特別支援教育関係者の研修の場に本
校が 1 日も早くならなければならないと考える。このために,教育学部教官の力強い協力を切
望してやまない。
2.5.7 学術情報
2.5.7.1 図書の整備と利用状況
(1)幼稚園
幼稚園では,独立した図書室がないため,実習控室として置かれたプレハブ教室を図書室と
して兼用している現状であり,環境としてはふさわしくない。幼児が活用しやすいように,通
常は図書室からその時期に合った図書を選んで,各保育室の書棚に運び,利用している。
(2)小学校
小学校では,主に 1・2 年生が利用する低学年図書室と,3 年以上が利用する高学年図書室が
ある。図書にまわせる経費が少なく,古い本が多い。
本校の児童は読書意欲が高く,休憩時間等に多くの児童が図書室を利用している。各種の読
書感想文などへの応募も活発であり,当然受賞児も多い。学校図書館法の改正で 2003(平 15)
年度から 12 学級以上の学校には司書教諭が必置となり,小学校にも 1 名司書教諭の免許を持っ
ている教官が配置されたが,専属ではない。そのために児童委員会に図書委員会を置き,貸し
出し,図書の整理などの図書室の運営をはかっている。
(3)中学校
図書室には,生徒のために約 12,000 冊の図書があるが,非常に古い図書が大半を占めており,
利用されていない。また,自然科学系の図書は特に古いものが多く,活用できない状況である。
さらに,これらの図書を収納する書架が古いという現況である。
ここ数年,大学から図書費としての予算は皆無であり,新刊図書が購入できない状況にあっ
た。このような状況の中で教育後援会より 2 年間にわたり,図書購入に対して補助がなされた。
図書室の利用状況は,1 日平均 30 人程度,貸し出し冊数は 1 日平均 10 冊程度である。
なお,司書教諭が専属でないため,クラス毎に生徒の中から図書係を選び,図書室の運営を
計っている。
(4)養護学校
本校は,書架があり蔵書が並ぶ図書室はない。図書室がないまま学校が創立されたという。
このため高等部棟の多目的室に少し蔵書があるぐらいで,他はそれぞれの学級に児童生徒の興
味・関心にあった図鑑・絵本等があるぐらいである。本校の児童生徒は検定本を使用すること
より,図鑑・絵本等を 107 条本として給付されているが,それだけでは充分でないので,いろ
いろな本を購入し,子どもの学習に活用している。
2.5.7.2
情報ネットワークシステムの整備と利用状況
(1)幼稚園
情報ネットワークシステムは,三重大学のネットワークに繋がっているが,システムの管理
や運営を行う専門家は不在である。
(2)小学校・中学校
情報ネットワークシステムは,三重大学のネットワークに繋がっているが,システムの管理
や運営を行う専門家が不在のまま進んでいるのが現状である。また,利用状況についてみると,
インターネットを利用しての研究,授業のための教材作りなど幅広く利用している。
また,情報教育を児童・生徒に向けて進めているところであるが,OS が古いためウイルス対
策が不可能などいくつかの問題がある。
(3)養護学校
情報教育は子どもにとって楽しく学習に参加する手段の 1 つであり,学習ソフトの活用だけ
でなく,インターネットを活用して,児童生徒の興味・関心を深めるとともに学習に活用する
など,活用の増大が期待されるが,機種が古く,充分な活用ができない悩みがある。
職員用としては,学校のホームページの作成だけでなく,文書管理の一元化を目指している。
2.5.7.3
学術情報の改善に向けて
(1)幼稚園
研究の成果を公開研究会に研究紀要として発表しているが,今後はホームページなどを活用
していきたい。
(2)小学校
児童用図書は予算化されておらず,教育後援会費で毎年わずかながら購入している。教官用
図書の予算も少なく,ほとんどが自前で購入している。予算化をし,新しい情報が児童の学習
や教官の研究に反映できるようにしてく必要がある。
蔵書管理のためのパソコンも古く,データベース化も遅れている。学術情報を有効に活用す
るためには,蔵書管理は欠かせない。専属の司書教諭が必要である。
学術情報は,書物だけでなく,様々なメディアやインターネットを利用して収集したり,発
信している。その環境は整いつつあるが,機器の進歩は早く,対応ができないのが現状である。
また,整備にも専門的な知識・技術が必要である。維持費や機器購入費の予算化とともに人的
配置を考えていかなければならない。
(3)中学校
図書購入費を予算化すること,図書を開架できるスペースの確保,図書室を運営する人的問
題の解決など,非常に立ち後れている図書室の整備に向けての緊急の改善が必要である。
また,情報を収集したり,発信したりできる環境は整いつつあるものの,その環境は年々古
くなり,また保守・点検を行う人的問題は棚上げにされており,早急に予算化の上解決を図る
必要がある。
(4)養護学校
専門雑誌は,12 冊ほど購入しているが,学期中にはこれらの情報を収集・発信する時間的な
余裕がない状況にある。長期休業中を利用して,これらの学術情報を活用する研修・研究の機
会を増やす必要がある。
2.5.8 施設・設備・財政
2.5.8.1 教育用施設・設備の現状
(1)幼稚園
園舎は 1966(昭 41)年に新築されて以来大きな改修なく,現在に至っている。特に外壁が老
朽化している。また同様に,園庭の固定遊具が老朽化してきている。回転滑り台,ジェットジ
ムは子どもたちに人気の遊具で,利用の頻度も高い。老朽化とともに危険個所が出てきていて
安全点検実施後補強や溶接を実施してきたが,これに代わる固定遊具の新設が必要である。こ
れらの遊具は回転滑り台が 1975(昭 50)年に,ジェットジムが 1971(昭 46)年に設置された
ものである。
(2)小学校
校舎や体育館は,1963(昭 38)年に新築された。その後,現在に至るまで大改修は行われて
おらず,雨漏り,壁のひび割れ,塗装の劣化など老朽化が至るところで進んでいる。一方で,
現代的な必要性に対応するために,物置などの目的で,いくつものプレハブが設置されており,
校舎について抜本的な対策が望まれる。なお,2003(平 15)年 2 月から 3 月かけて,教室棟及
び体育館の耐震工事が行われた。
また,運動場の鉄棒,ジャングルジム,ブランコなども,旧安全基準で作られたものであり
構造上危険な箇所も多い。腐食も激しく,早急な修繕・改良が必要である。
教育実習生の控え室は専用の部屋がないため,その期間は第 1 会議室を割り当てているが,
教官会議や研究会,育友会会議・活動など第 1 会議室を必要とする活動が制約されている。
(3)中学校
1960(昭 35)年代の中頃に建てられた校舎や体育館は,雨漏り,ひび割れ,塗装の劣化など
非常に劣悪な施設である。また,教育用の設備なども不足していたり,更新できないなどの現
状で教育を進めている。
また,教育実習生が学習する総合教室は,傷みの激しいプレハブである。
(4)養護学校
本校の創立は,附属小学校・中学校の特殊学級開設に始まり,1979(昭 54)年からの養護学
校義務制を控えての教員養成の必要性から,1973(昭 48)年に養護学校として創設された学校
である。このため,最初から養護学校を建設するというのでなく今まである建物を利用しての
学校であったため,施設設備の充足率は 70%にも充たない。ないないずくめの中養護学校が創
立されその後プールが作られたぐらいで,音楽室など必要な教室は無理に作ってはいるものの
その機能は充分でない。最近では,2000(平 12)年度に特別予算で認められた念願の日常生活
訓練棟建設が唯一の新しい建物である。この建設に対しても要望をしてから 10 年余に実現した
ものである。現在,高等部棟・作業棟の新設と現在の高等部棟・小学部棟・中学部棟の大改造
を要求している。30 年以上風雪に耐えてきているだけに壁面のひび割れがひどく,大地震での
災害が心配されている。
2.5.8.2
研究用施設・設備の現状
(1)幼稚園
ネットワークシステムが整備されてきたが,それを管理する担当教官がいないため,充分に
活用できる現状には至っていない。今後 4 附属学校園の在り方を考慮しながら効率的な活用の
方法を考えていきたい。
(2)小学校
国語・家庭・社会・算数・体育・理科・生活科の各教科の研究用の部屋は確保されているが,
研究物を整理する書棚やロッカー等が不足している。図工科や音楽科は,準備室を研究室に兼
ねているので,じっくり研究に専念できる部屋が必要である。また,理科の教官用の実験器具・
装置や音楽科の楽器など研究用の備品・設備はほとんどない。研究用の図書や資料も古いもの
が多い。
(3)中学校
研究用の施設や設備は,非常に少ないのが現状である。研究用の部屋(約 15 ㎡)が 5 部屋確
保されているが,教科の数,教官数からみて問題であろう。また,研究用の設備として,整備
されたものはない。
(4)養護学校
研究用施設はない。
2.5.8.3
(1)幼稚園
財政の現状
施設設備老朽化が著しく,水道管の老朽化による問題,園舎内のひび割れ,外装など建物に
かかわる改修が必要の現状である。多額の予算を必要とするため,計画的に実施すべきである。
耐震工事については,平屋建築であり対象とはならなかったが,災害が発生した際幼児が避難
可能な経路などの整備が必要である。不審者対策については,フェンスなど整備が進んだが,
降園時の午前 11 時頃からは開放の状態にあり,裏門にも警備員の配置が必要である。
(2)小学校
光熱費の増加とともに,建物の老朽化による役務・修繕費が増えている。給食関連経費を削
減したり,教育研究活動に関する経費を圧縮せざるを得ない状況にある。附属学校の研究を行
うという使命を充分に達成することを妨げる大きな要因になっている。
(3)中学校
表 2.5.8-1 は,過去 5 年間の通常予算である。当初予算は,減少の傾向にあるものの,給食
要員経費の必要性から通常予算合計額としては,増加傾向にある。
しかし,光熱費など管理運営に必要な経費などで大半が支出され,教育や研究のための経費は
当初予算の約 2 割弱を占める。例えば,2003(平 15)年度の場合,教育研究活動に支出された
額は,約 350 万円であり,特色ある教育や実験校としての使命を推進していくには財政面の充
実が必要である。
このように,財政面においては厳しい状況の中で工面しているのが現状であるが,校舎など
の施設設備の老朽化による保守修理などが圧迫している現状もある。
表 2.5.8-1
過去 5 年間の通常予算配分状況
(単位:千円)
1999(平 11)
2000(平 12)
2001(平 13)
2002(平 14)
2003(平 15)
年度
年度
年度
年度
年度
当 初 配 分
23,429
22,157
20,831
20,351
20,873
設備充実費
1,479
1,476
1,476
1,476
1,487
1,271
2,083
1,981
5,645
5,670
業務委託費
合
計
給食要員経費含 給食要員経費含
26,176
25,716
24,288
27,472
28,030
(4)養護学校
本校では,限られた予算を有効・計画的に使うよう 4 年前から,小額消耗品の購入にも伺い
を提出し,無駄のない徹底した財政管理を行ってきた。このため,無駄な出費がなくなり,計
画的に備品を購入できるようになった。また,電気・ガス・水道代などの管理上の経費につい
ても月々算定して前年度,前月などと比較して,無駄のないように徹底した管理を行うととも
に,IT 時代に入った現在,書籍類特に例規集などの追録対応をすべて中止するなどにより教材
備品購入費,安全管理費の捻出を図るようにしている。ただ,本校の教育活動の一環として掲
げている自家用車をやむを得ず使用しているが,この予算措置がないのが実態である。
教官の研究活動費も,児童生徒の修学旅行等の引率経費に使われている。修学旅行等の引率
に係わる根拠になる経費は時代離れした金額である。
2.5.8.4
施設・設備・財政の改善に向けて
(1)幼稚園
環境の変化のよって子どもたちの生活体験は大きく変化したが,家庭ではできないような環
境をつくり,子ども達の生活体験を充実したいと考えている。そこで,園内にビオトープなど
の自然体験ができる環境をつくり,幼稚園児だけでなく,附属校園や地域の子どもたちにも開
放できるような場をつくりたいと考えている。そのための財政支援が必要である。
(2)小学校
安全で機能的な校舎は教育活動の基盤であり,老朽化した校舎の改善を早期に行う必要があ
る。
先進的な特色ある研究を進めていく上にも,それぞれの教育の狙いに適合した教育環境を整
備していくことが重要である。そのためにも,教育備品・設備の充実のための予算や研究費の
増額が望まれる。
(3)中学校
老朽化した校舎や教育用の設備の状況を,早急に改善する必要がある。特色ある独自の教育
を推進していくためにも,ハード面にも重点を置いたに環境の整備は非常に重要である。
また,財政面においては,教育や研究に充当する経費の増額が必要不可欠である。
さらに,研究や教育になくてはならない教育機器の充実が望まれる。
(4)養護学校
附属学校の財政は教育学部事務部が扱っているものの,施設設備は大学の事務部施設部に直
接的な交渉によることが多い。このため,なかなか附属側の希望・要望が充たされないという
実態がある。組織の部分でも述べたが,単科の教育大学には組織化されている,附属学校部の
組織化を切望したい。いわゆるミニ教育委員会のような組織で附属学校園の施設・設備の改善
等について長期的な計画を策定し,順次改善していくような発言力のある組織を立ち上げる必
要がある。財政面についても計画的に予算執行できるように専門的な事務員の配置が望まれる。
附属は一つ,附属あっての教育学部というスタンスで学校管理・経理・労務の専門的な担当者
の配置が必要とされる。
2.6
医学部附属病院の活動
2.6.1
卒後臨床研修の現状
1.卒後臨床研修部活動の背景
1)三重大学附属病院における卒後臨床研修の現状
2004(平 16)年度より医師の卒後臨床研修が必修化されることとなり,各大学医学部附属病
院,各研修病院(管理型病院申請予定病院他)では,その準備を進めている。今回の卒後臨床
研修制度の改革は,実にインターン制度廃止以来の大改革であり,戦後の学制移行や医師国家
試験の改革を除けば,まさに初めての未知の領域への改革といえる。その背景として挙げられ
るのは,疾病構造の変化や,高齢化社会など医療の受け手側の変化,医療の高度先進化や専門
分化などの医療者側の変化,さらにそれらを取り囲む財政基盤や,経済状況の変化である。そ
ういったものを含む医療界全体の変化が,今後最も長く日本の医療を担うことになるであろう
研修医に対して,その様な時代に受け容れられるに充分な 知識 ,安心して医療を提供するた
めの 技能 ,そして従来から,医学教育では軽視されがちであった,21 世紀の医療にふさわし
い
態度
を求めていることは,明白である。今まさに時代の要請に即した大改革が進もうと
しているところであろう。
我々が,日々医療を行っている三重県においてもそれは例外ではない。三重県は,南北約 200km,
東西 60km の南北に長い地形に約 190 万の人口を擁する。医療圏として,北勢,中勢/伊賀,南
勢/志摩,さらに南に続く東紀州と 4 つの医療圏を擁する。各医療圏のほとんどの中核病院に三
重大学医学部の各医局から派遣する形で,医師を供給してきた。しかし,大学と関連病院を中
心とする,その様な枠組みは,安定した医師供給を行うという面では,一定の効果は上げてき
たものの,大学関連病院の医局支配,大学の閉鎖性や各地域に根付いた医療が行われない,等
の様々な問題が指摘されているのも周知の事実である。今回の卒後臨床研修制度改革がこれら
の改善に期待される一方で,人材の流動化,都市部への医師集中を招き,三重県における医師
不足を加速させるのではという大きな危惧ももたれている。実際,2003(平 15)年春の三重大
学医学部医学科卒業生のうち,三重県内で研修を始めたのが 96 名中 39 名で,三重県出身者 26
名においても,うち 5 名が県外での研修を開始したところである。
地元での研修医が少ないということの,根本的な問題としては,現在まで三重県において,
研修医や社会のニーズに応える充分な,卒後臨床研修が行われていないということに帰すると
思われる。少なくとも,三重の地元を愛し,三重の地域に最高の医療を提供したいと思ってい
る研修医が,地元で充分な研修を受けられないため県外へ出ていかねばならないという事態は,
180 万三重県民ににとっても不幸なことである。さらに,三重大学が国立大学であることを考慮
すれば,単に三重のためにこだわらず,ゆくゆくは全国から研修医を受け容れ,良医を育て,
その結果として日本全体の医療に貢献することも忘れてはならない。
その様な,思いを一にして,2001(平 13)年度から三重大学では,附属病院院内措置として,
卒後臨床研修部を発足させるとともに,県内 9 つの卒後臨床研修管理型病院及び協力型病院群
とともに三重メディカルコンプレックス(MMC)を形成して,後述の様々な活動を行ってきた。
2)三重大学附属病院卒後臨床研修部と三重メディカルコンプレックス(MMC)
三重県には,1 大学病院の他,34 の病院,10,636 床の病床がある。うち,卒後臨床研修は,
三重大学附属病院,山田赤十字病院他 9 つの臨床研修指定病院で行ってきた。先の目的で,三
重大学附属病院に院内措置で,卒後臨床研修部が,部長,副部長,事務員(いずれも併任)の 3
人体制で発足するのとほぼ同時に,県下 9 つの研修指定病院の研修責任者と,大学病院の研修
担当者を中心とした,連絡機関 MMC 卒後臨床研修部を集め,ほぼ月に 1 回のペースで会合を開
いてきた。会合の内容は,2002(平 14)年度卒業生の研修状況や,2003(平 15)年卒業生の受
け入れ態勢,2004(平 16)年度の必修化後の研修プログラムについて,さらに将来の研修や,
三重大学のあり方,三重県の医療について等,多岐にわたり,従来の医局の壁や,大学の閉鎖
性といった問題を乗り越えて,有意義な討論をもち,実際に,2003(平 15),2004(平 16)年
プログラムの作成や,研修説明会の実施,研修病院の紹介といった成果を上げてきた。特に,
H16 年プログラムの作成については,内科,外科/救急・麻酔,小児科,産婦人科,精神科,地
域保健/医療の 6 部会に分かれ,各病院が特色ある独自プログラムを作るにあたり,基礎となる
MMC 共通プログラムを作成した。実際,それらのプログラムは,各研修病院の特色あるプログラ
ムの中で,どの研修病院でもそれぞれ個性的なプログラムの基盤として,その底流に生きてい
る。
しかし,現時点での活動で,必ずしも充分とは言えない面が出てきているのもまた事実であ
る。むしろ,活動を深めれば深める程,今後求められる問題点が,明らかになってきたといえ
るであろう。
3)卒後臨床研修部/MMC 活動の問題点
まず,痛切な必要性を認めているのが, 評価 である。本来教育のプロセスというのは,社
会や本人のニーズを明確にし,それに到達するための 目標 ,さらに 方略 を実行し,それ
らの成果を適切に
ある程度の
評価
するということが不可欠とされる。しかし,従来の臨床研修では,
目標 , 方略
の実行はあったもののなかなか
評価
に踏み込むことができな
かった。それは,卒後臨床研修の成果というものが元来評価が難しいということはあるが,や
はり,適切な評価法が開発されていないということが挙げられる。卒後臨床研修における評価
は,研修医の弱点や問題点を抽出し,研修医にフィードバックさせることにより,よりレベル
の高い臨床能力を身につけていただき,ひいては地域医療の向上に貢献することが目的である。
さらに,各病院の卒後臨床研修カリキュラムと内容を,中立的な立場から,適切に評価し,問
題のある病院には,卒後臨床研修部が指導を行い,改善を図らなければならない。
さらに,研修医や学生に対する情報提供を積極的に行う。上述の如く説明会など,頻回に行
い情報提供にはつとめてきたが,必ずしも充分に伝わったとはいいきれず,逆に不安を与えて
しまった場合もあった。今後より早く,より確実に研修情報を提供していくことが,必要と考
えられた。各病院の紹介についても同様で,単に研修ガイドに書かれた内容ではなく,よりホ
ットな学生や研修医が必要とする情報を,定期的に的確にアピールすることが必要である。
また,医療現場で問題になっているのは指導医の不足である。様々な医療状況が変わってき
ていることを冒頭に述べたが,それが最も顕著になのが,一般市中病院である。基本的に日常
診療で精一杯で,研修医の指導というのは,上級医師にとって負担であっても,歓迎できるこ
とではないというのが,本音ではなかろうか。しかし,本来人に
教える
ということは,教
える側にとっては最高の勉強法であり,ひいてはよりよい指導をすることは,自分がよりよい
医療を提供することに他ならないはずである。そのため,プログラムの作成からもう一歩踏み
込んで,より効率的で効果的な指導,教育法というものを,広めていかなければ,せっかく作
ったプログラムが, 絵に描いた餅
になってしまうおそれがある。
4)卒後臨床研修部整備の必要性
以上のような背景を踏まえて,よりよい研修を行いよりよい医師を育てることは,県民に,
国民によりよい医療を提供することに他ならないと考える。
しかし,そのための労力は,少なくとも現状のように日常臨床で診療にあたりながら,ある
いは各病院,病棟で主治医をしながらできるものではなく,同時に単に大学内部の問題として
ではなく,各病院間,指導医,研修医との調整,さらに行政や地域医療施設との連絡も要する,
一大事業と考える。また,中には高度な医学的知識や経験も要する場合もあり,また,様々な
行事の運営,研修医の指導など実務的な労力も要求されると考えられる。
以上の業務を効率的かつ効果的にマネージメントし,従来の医局や病院,診療科といった枠
を横断的に活動し,各研修医,各病院,各指導医,さらに各医療スタッフに還元するのが,卒
後臨床研修部の設置目的であり,と同時に必要不可欠な役割である考える。
2.これまでの卒後臨床研修部活動
以上述べた現状に立脚して,本年度以降の活動もにらみ,2003(平 15)年度より,専任教官
(文部科学教官助手)1 名と,専門職員が配属され,以下の活動を行ってきた,あるいは今後行
っていく予定である。
1)研修医募集,採用について
①
MMC 臨床研修説明会の開催
第一回 5 月 30 日(金)・第二回 31 日(土)の両日,臨床第二講義室で開催。三重県内外から,
二日間で 120 名余の学生が参加した。
(含む 5 年生以下)
7 月 25 日(金)プラザ洞津(津市)で第三回説明会を開催。77 名の学生の出席があり,同日中
に約 70 名が,三重大学を含む県内各病院に出願。
②
修医募集ポスターの作成
MMC 研修医募集ポスター作成し,全国の医科大学,医学部へ発送。
③
後臨床研修部ホームページの立ち上げ(5 月 19 日)
7 月末で約 4000 件のアクセスあり。
④
個別の問い合わせへの対応
電話,メール等で,研修問い合わせ,見学希望等の問い合わせに対応。
⑤
三重大学 2004(平 16)年度医員(研修医)採用試験(MMC 合同試験会)の企画,運営。
第一回 8 月 17 日(日)国立三重中央病院,
第二回 8 月 24 日(日)三重県鈴鹿庁舎に開催。
フォーカスグループインタビューによる,学生討論,小論文,個人面接等を実施。
2)研修医福利厚生について
①
卒後臨床研修部医師責任保険制度の立ち上げ。(5 月 12 日)
②
附属病院 10 階研修医医局の整備,清掃。
(5 月 16 日)
3)新研修プログラムについて
2004(平 16)年度プログラムの作成 7 月 14 日(月)最終稿完成,印刷。ネット上で公開。7
月 25 日(金)より配布した
4)卒後臨床研修実行委員会の開催
月例で院内各診療科との連絡,協議を行い,卒後臨床研修に係わる諸問題について,議論,
決定を行っている。決定された内容については,科長会にオブザーバー出席し,報告を行って
いる。
5)MMC 各病院等との調整について
①
MMC 卒後臨床研修部会の開催
月例で県内 15 病院の研修担当者との協議を行っており,臨床研修の協力体制に向けた話し合
いを行っている。
②
東海北陸厚生局臨床研修審査官との連絡,協議。
5 月 21 日(水)東海北陸地区医師臨床研修に係わる連絡協議会準備会合に出席。その後も,
各種連絡を取り合い,各病院に情報提供をしている。
6)セミナー等の企画について
①
卒後研修オリエンテーション
5 月 6 日(火)∼9 日(金) 2003(平 15)年度研修医対象で,社会保険講習会,輸血部実習
他を行った。
②
アーリーバードセミナー
毎月原則第 3 木曜日午前 7 時∼8 時まで,研修医向けのセミナーを行っている。
・5 月 22 日(木)臨床判断学入門—総合診療部
竹村洋典
・6 月 19 日(木)reversed CPC—天理よろず病院検査科
鈴鹿中央病院検査科
先生
浅野
村田哲也
博
先生,
先生
・7 月 17 日(木)現在のリスクマネージメントの考え方—
松阪市民病院
リスクマネージメント委員長,
泌尿器科科長
桜井正樹
先生
・8 月 21 日(木)テーマ:津市の小児救急医療について
∼市町村合併も視野に入れた地域医療の役割と位置づけ∼
—田矢
③
修介
先生(津市会議員)
特別講演会(看護部,医療福祉支援センターと共催)
ヘルパーのカタチ in 三重大学 ∼本当に知っていますか?患者さんの家のこと。
家族のこと。それから患者さんのこと∼
講師:ケアステーション
ゲスト: FM 三重
たきび
代表取締役
赤塚
浩文
さん
ヘルパーのカタチ (毎週月曜日 16:05 過ぎより放送中)パー
ソナリティ
熊谷
洋子
さん
パネラー:水谷
泰子
氏(脳神経外科病棟
副師長)
成田
有吾
先生(医療福祉支援センター助教授)
竹村
洋典
先生(総合診療部助教授)
④ スポーツ大会
10 月
ゴルフ,テニス,キス釣り。
⑤ OSCE(Objective Structured Clinical Examination:客観的臨床能力試験)大会
日 時:2004(平 16)年 2 月 28 日(土)
場
所:山田赤十字病院
主
催:山田赤十字病院,市立伊勢総合病院。
事務局:卒後臨床研修部
内
容:OSCE
SP による医療面接,腹部エコー,基礎的外科手技,
レントゲン読影他各種ステーション。講評。懇親会。
対象者:各病院 1 年目,2 年目研修医。
備
考:成績優秀研修医,優秀研修病院は表彰を行う。
スポーツ大会結果も受けて,Best Resident を選出する。
⑥ 研修指導者要請講習会
2004(平 16)年 2 月。OSCE 大会の課題と評価表の作成を通しての講習。
修了者には厚生労働省の研修指導医の認定を受けられるよう,働きかけていく。
⑦ 研修医手帳
携帯用の研修医評価手帳を企画制作中である。
2.6.2
卒後臨床研修の課題
卒後臨床研修の充実は,単に研修にとどまらず,将来の医療の担い手の確保,特に県内の地
域医療の担い手の確保という面からは,重要な課題であり,まさに医師にとどまらず,全病院
をあげての大きな取り組みが,求められるところである。その中で,以下の人的,経済的基盤
の整備が,目下もっとも重要な課題であることは論を待たない。
1.人的課題
現在,主に研修医 1 年目,2 年目,さらに県内外の医学部 6 年生の研修に関する事項を担当し
ており,セミナーの周知や準備,関係各方面との連絡などについて,人的不足は否めない。今
後,研修の充実のためには,その下地となる,医師,教育職,事務職といった連携の充実が必
要と考えられる。特に,スタッフの多くの時間が,書類の作成や連絡といった事務作業に使わ
れていて,本来の研修の場である,三重大,各病院含めた臨床の現場で研修医に直接コンタク
トをとって行くことが,困難である。これは,各現場と卒後臨床研修部を遠ざけることにもな
り,もっとも優先度の高い課題といえる。
2.経済的課題
院内措置のみで,予算措置を受けていない現在では,関係各部署,あるいは催しものをする
際には,各施設からの一時的なカンパなどで,工面しているのが,現状である。今後,本格的
な活動を行っていくためには,予算措置を含めた経済的な背景が必要不可欠と考えられる。特
に,今回の研修制度の柱でもある,人格の涵養やプライマリケアの充実といった課題でセミナ
ーを行う場合には,必ずしも大学病院のスタッフでやりきれるということはなく,また,場合
によっては,医療関係以外の分野からの講師の招請も必要と考えられる。その様な意味におい
て,予算措置の実施が早急に求められる。
3.意識的課題
緊急性は上記,2 つの課題ほどではない可能性もあるが,重要性においてはもっともプライオ
リティーの高い項目と考えられる。卒後臨床研修が,単に研修医だけのものではなく,病院全
体のもの,医師だけでなく,看護士や薬剤師等のコメディカルを含むもの,さらに患者さんま
でも含む医療全体の問題というとらえ方が必要である。その様な,意識改革のためには,地道
な活動とともに,卒後臨床研修制度に対するさらなる理解を求めていくことが必要であろう。
2.7
小括と提言
【共通教育機構】
小括
共通教育の部局独自としての教育連携の制度は,現在のところまだない。しかし,本学には
全学として,また他部局において,大学間の協定制度が存在し,この制度を利用した教育連携
が共通教育においても実施されてきた。
2004(平 16)年 1 月 28 日に発行された「共通教育の飛躍をめざして−2003(平 15)年度共通
教育委員会答申−」(共通教育委員会・ワーキング委員会編)に掲載されている資料 4 の「三重
大学共通教育 中期目標,中期計画(期間 2004(平 16)年 4 月∼2010(平 22)年 3 月)」の
教育連携の目標として, 大学,地域,国を超えた教育の連携を進める が掲げられており,そ
のために,(1)連合大学間,国内大学間,放送大学間,海外大学間での教育の連携,単位互
換を促進する,
(2)みえ連合大学センター等の大学間連合の活動に積極的に係わる が,教育
に関する目標を達成するための措置として掲げられている。したがって,今後の具体的な展開
が,大いに期待されるところである。
提言
教育提携によって,変化に富んだ広範囲なカリキュラムの構築,効果的な教育方法の構築,
学生の視点の啓蒙や広範囲な交友関係の構築,学生の主体的な学習,客観的な視点に立った教
育システムの構築,等々が期待される。したがって,今後の共通教育にとって,教育提携は非
常に重要である。
しかし,共通教育において,教育提携を効果的に取り入れていくためには,まず,三重大学
における独自の共通教育システムが確固とした基盤を持っていることが前提となる。すなわち,
学部あるいは大学院の教育を通して,三重大学として,どのような教育を学生に授け社会に送
り出したいのかということを,各部局と密接な連携のもとに明確にした上で,最も有効な独自
の確固たる共通教育システムを確立することがまず必要である。こうした過程を経て, 大学,
地域,国を超えた教育連携
に関して,本当に必要な事項や有効な事項について充分吟味,検
討することが可能になる。そして,三重大学独自の共通教育システムを有効に支援する形で,
教育連携を実施することが可能となる。
共通教育の部局独自の制度をもって教育連携を展開していくべきかという点については,こ
れから慎重に検討されるべきであろう。現在,全学的に,国際交流や学術情報をより効果的に
運用するシステムが構築されつつある。こうした全学的なシステムと関連させて展開していく
ことも重要である。この様な場合でも,共通教育の部局として,教育連携のあるべき像を独自
に検討し,主体的に全学的なシステムとの関係を構築していくことが重要である。
【人文学部】
人文学部では,FD 委員会を本年度から立ち上げたことは特記できる事項である。そこでは,
①講義・演習に関する基本データ・資料の蓄積,②FD 研修(講演会及び FD 研修),③学生によ
る授業評価,④授業の質を高めるためのシラバスの効果的活用の検討,⑤FD 活動報告書の作成
という 5 つの方策が有効であると考え,可能な限り 2003(平 15)年度中に着手することを目指
した。個々での検討を生かし 2004(平 15)年度以降の教育改善につなげていくのが課題である。
【教育学部】
教育学部の自己点検・評価について,1999(平 11)年度から 2003(平 15)年度の現状と改善
を主体にまとめた。さらに,教育活動での現状の自己点検・評価について,実際に多数のアン
ケ−トでの調査結果を踏まえた内容としてまとめ,今後の改善のための方策も述べた。
この 5 年間の学部構成の変化として,1999(平 11)年度から「現実の教育問題解決能力育成」
を目指した人間発達科学課程の増設が挙げられる。少子化に伴う教官採用の減少にともなう学
部改組は全国的な動向でもあるが,本学部では学校教育教官養成課程の教職専門の 13 コ−ス,
情報教育課程の 2 コ−ス,生涯教育課程の 2 コ−スに人間発達科学課程を加えた組織構成とな
り,多コ−ス少数教育のシステムとして,一部は充実した教育態勢が取られている。しかし,
この教育内容を充実させ就職などの現実の成果を導くための体制を確立するためには,学生が
多分野にわたる講義・実習・演習などを希望とおり受講でき習得する時間割配分と教官の配置,
さらに内容を充実させ新しい教育方法などの試みも展開できる施設や機器の設置など,学生へ
の提供すべき環境整備と同時に,学生個々に習得したものが社会に還元できる内容であること
を実感させるための教育改善を行い,大学での教育意欲を持たせるための意識改革も必要など,
多くの課題が残されている。
大学院では学部での前述したような教育の問題点を補充するため,2001(平 13)年度より大
学院学生にも学部開講科目を履修する機会を与え,単位修得ができるなどの教育改革を実施し
ている。また,これまでの三重県の現職教員の大学院への受け入れに加え,2001(平 13)年度
からは大学院教育学研究科免許法認定公開講座の開設をするなど,現職教員など社会人の再教
育にも積極的な協力体制を取っている。
学部内での多くの問題点に対応可能な部分としては限られる部分も多く,大学経営面からも
大学全体での連携した考え方と施設・機器の利用,そして簡便な協力態勢が取られる手続きな
どが挙げられるのではないだろうか。
次世代の大学教育行政とも言うべき 2004(平 16)年度からの大学自体の 法人化 という根
本的な組織編成の変化と大学経営の観点からは,これまでの日本のなかの三重大学における「教
育学部での教育の有用性」についての特徴のある教育システムを確立していくことが望まれる
であろう。さらに,大学の 1 学部ではなく,三重大学での教育を望む小・中・高生を育成する
教員を育てるための学部であるために,個々の教育内容の自己点検・評価と,それを生かすた
めの教育システムの自己点検・評価の連携体制の改善と発展を促す流れをつくっていくことが
検討されはじめてもよいのではないだろうか。
そのための個々の自己点検・評価についての成果が望まれる。
【教育学部附属学校園】
(1)幼稚園
幼児理解につとめ,一人ひとりの幼児の発達を支える幼稚園づくりをする。
1.子育てセンター的な役割を担う
保護者と信頼関係をつくり,保護者の子育ての悩みを受け止め,適切な子育て支援について
ともに考え,子育ての楽しさを知らせていく。
2.保育研究を積極的に行う
現代の幼児教育をめぐる問題を先行的に整理し,課題をもって研究に取り組む。成果を実践
に生かすとともに地域に公開する。
3.他校種との連携を進め4校園で共通のカリキュラムつくりを目指す
・幼小の連携を積極的に進め,連続した視点でカリキュラムを構築する。
・幼養の連携を積極的に進め,多様な人との係わりの機会をつくる。
・幼中の連携を積極的に進め,生徒が幼児と係わる機会をつくる。
4.大学の附属機関としての役割を果たす
・学部教官と共同研究をすすめる。
・学生が幼児と係わる場として幼稚園を開いていく。
(2)小学校
児童一人ひとりを大切にしたきめ細かい指導を行い,
「創造性をもった主体的行動人」の育成
を目指すとともに,附属学校としての使命を果たし,特色ある学校づくりに努めたい。
1.教育研究の推進
・教科・総合的な学習の研究の深化・充実
2.先行的な特色ある教育の実施
・少人数指導・ティームティーチング・教科担任制の実施
・特別支援教育・人権教育・環境教育・福祉教育・国際理解教育の実施
・特別支援教育コーディネーター,スクールカウンセラー,司書教諭,栄養教諭,情報教
諭の配置
・附属幼稚園・附属中学校・附属養護学校との共同研究
3.教育実習の充実
・学生のきめ細かい指導を行うための教育実習指導教諭の配置
・教育実習生の控え室の整備及び設備の充実
4.学部との連携の強化
・学部教官と一体となった理論的・実証的な研究
5.施設・設備の充実
・多目的ホールの新設
・ランチルームの新設
・運動場・理科室の整備
・総合的な遊具の新設
(3)中学校
各項目についての点検評価の小括を行い,若干の提言を行う。
1.理念及び目標
中学校では,生徒の心身の発達に応じて中等普通教育を行うとともに,教育の理論及び実際
に関する研究並びにその実証,教育実習の実施,地域教育の改善進歩等に寄与することを目的
としている。
この目標達成には,附属校園間の連携や教育学部・大学などとの連携を進めることが必要で
あり,たとえば 2003(平 15)年度に発足した教育課程検討委員会の積極的な活動が望まれる。
2.教育活動
中学校の入学定員は,1 学年 160 人であり,1学級 40 人での教育が行われている。そして,
1年間を 3 学期にわけて教育を進めていくなかで,教育課程については学校教育法,学習指導
要領等の法規に沿って編成している。また,文化祭における全学年,全クラスによる合唱の発
表の場は,
「附中のハーモニー」として伝統的で特色ある教育の 1 つである。さらに,大学の教
官との交流や附属小学校の教官と連携しながら教育を進めたり,学部教官と附属中学校が連携
してカウンセリングについての連絡会を開催している。
一方,新学習指導要領の実施に伴い,
「通信表」の評定及び観点別評価を絶対評価にするとと
もに,観点別評価と評定の関連性を持たせることとした。教科の教育に関する指導については,
各教科の教官が教科研究を行い,生徒に理解しやすい教材や教授法を工夫したりして行ってい
る。教科以外では,生徒会,部活動,生活などに関する各種の事柄について,教官が連携しな
がら生徒の支援を行っていたり,スクールカウンセラーを配置しながら生徒の支援を行ってる。
また,公立の中学校ではほとんど行われていない給食を行っているのも特徴的であり,保健
管理,健康指導については,年間計画の中で各種内容が検討され実施されている。そして,校
内における救急体制などは,教官,保健室,医療機関,家庭,管理職,大学との連携をとりな
がら対応することになっている。
なお卒業後の進路はほとんどの生徒が高等学校への進路を希望し,大多数の生徒が実現して
いる。このような現状の中で,下記の点についての早急な改善が望まれる。
①
学級編成
学級の人数を 1 クラスあたり 35 人以下にした編成が望まれる。
②
教育課程
従来の教育課程に新しい視点を加えた教育課程を検討していく必要がある。また,小学校と
の一貫教育を視野に入れるなどした新たな取り組みも必要であろう。
3.研究活動
研究資金の現状についてみると,使用できる研究費は皆無である。予算的には,教官 1 人あ
たりの研究費が計上されているが,実態としては管理運営費や生徒指導費に回さざるを得ない
状況にある。
このような中,3 名の研究委員を中心にして研究を推進している。教科での研究が基盤になる
ので,各教科で随時授業の検討や研究テーマに沿った話し合いを行っている。研究は,原則 2
年間を一区切りとして取り組み,2 年目の秋には公開研究会を開催し,研究の成果を発表してい
る。
また,公開研究会以外に新規採用教官研修として授業公開及び事後研究会を行っている。さ
らに,教官個人レベルにおいて,例えば知的財産に関する研究を大学の教官と連絡を取りなが
ら共同研究を進めている。
上記のような環境の中での研究活動も限界があり,研究時間の確保,研究費の確保,学部と
の連携,研究施設の充実,研究設備の充実 ,といった事項を早急に改善していく必要性がある。
4.組織
校務を運営していくために,運営委員会,研究委員会,入試検討委員会,予算委員会などを
組織している。専任教官は 27 名であり,校長は学部の選考基準にて選ばれ,また副校長,教頭,
教諭,養護教諭は,三重県の人事交流において進められている。非常勤講師は,専任教官が 1
名の教科である音楽,美術にそれぞれ 1 名の非常勤講師が配置されており,また外国人による
英会話を中心とした英語の非常勤講師1名の計 3 名である。
事務組織としては,専任の事務員 2 名と用務員 1 名,そして非常勤職員 1 名の計 4 名である。
また,給食要員として 4 名の職員が配置されている。
さらに,保護者の組織として育友会があり,学校内の美化キャンペーンへの参加,新聞「き
ずな 」の発行,ホームページの作成・更新 ,各種研修活動など,学校との連携の中で活動が
展開されている。
このような中で,教官側についてみると,教官が係わる校務は多種多様であり,校務分掌の
見直し,また管理職の職務の内容について,検討が必要である。なお,専任教官が病気など不
測の事態などでの非常勤講師の配置において,事務手続きに相当に時間がかかり,授業運営に
おいて支障を来すことがあり,早急な改善が必要である。
また,事務職員については,学校の管理運営を行っていくために,事務手続き上においてい
くつかの問題があり,抜本的に検討する必要がある。
5.国際交流
現在,学校間協定を締結しているところはないが,国際理解教育や国際感覚を身に付けた生
徒を育成するために,入学者選抜において数名程度の国際枠を設け,県内在住の外国人生徒を
別途募集するなどしての国際交流を進めている。
国際理解教育を推進するためには,多くの国から生徒を受け入れることが望ましいが,現在
の非常勤講師 1 名の配置状況では学習言語を保障することが困難であり,今後,配置数の拡大
を図る必要がある。
6.大学・学部・社会との連携
教育における大学・学部・社会との連携は,学部・附属学校連絡協議会,教育実習実施委員
会などを通して進められている。また,研究における大学・学部・社会との連携は,
「社会科学
習と総合的学習への連携の可能性」といったテーマで進められたり,公開研究会の開催を通し
て連携が行われている。
さらに,本校には,同窓会と後援会の組織があり,生徒の教育環境の充実に向けて協力的な
関係の中で活動がなされている。
今後は,学外との連携がますます重要になってくると思われるが,特に本校の設置目的に照
らし,三重県内の学校と積極的に連携していくことが望まれる。
7.学術情報
図書室には,生徒用図書が約 12,000 冊あるが,非常に古い図書である。また図書室の利用状
況は,1 日平均 30 人程度,貸し出し冊数は 1 日平均 10 冊程度である。
情報ネットワークシステムは,三重大学のネットワークに繋がっており一応現存するが,シ
ステムの管理や運営を行う専門家が不在のまま進んでいるのが現状である。また,利用状況に
ついてみると,インターネットを利用しての研究,授業のための教材作りなど幅広く利用して
いる。
このような現状の中,今後は図書購入費を予算化すること,図書を開架できるスペースの確
保,図書室を運営する人的問題の解決など,非常に立ち後れている図書室の整備に向けての緊
急の改善が必要である。
また,情報を収集したり,発信したりできる環境は整いつつあるもの,その環境は古くなり
コンピュータイルス対策が不可能などいくつかの問題があるとともに,保守・点検を行う人的
問題は棚上げにされており,早急に予算化の上解決を図る必要がある。
8.施設・設備・財政
1960(昭 35)年代の中頃に建てられた校舎や体育館は,雨漏り,ひび割れ,塗装の劣化など
非常に劣悪な施設である。また,教育用の設備なども不足していたり,設備の更新もできない
などの現状で教育を進めている。また,教育実習生が学習する総合教室は,傷みが激しく教育
実習期間中はプレハブ内が気温 40 度以上にもなり,健康面でも問題がある施設であり,早急に
建て替えが必要である。
研究用の施設や設備は,非常に少なく,研究用として整備されたものもない。
予算は,減少の傾向にあるものの給食要員経費の必要性から通常予算合計額としては,増加
傾向にある。 しかし,校舎などの施設設備の老朽化による保守修理費や光熱費など管理運営に
必要な経費などで大半が支出され,教育や研究に必要な経費は当初予算の約 2 割弱を占める。
例えば 2003(平 15)年度の場合,教育研究活動に支出された額は,約 350 万円であり,特色あ
る教育や実験校としての使命を推進していくには財政面の充実が必要である。
以上のような現状の中,老朽化した校舎や教育用の設備に対して,早急に改善する必要があ
る。特色ある独自の教育を推進していくためにも,以下のようなハード面も重点に環境の整備
は非常に重要である。
①
緊急的な面の改善点
・校舎の新設または大規模改修
・管理棟の新設または大規模改修
・体育館の新設または大規模改修(特にフロアー)
・運動場,球技場,テニスコートの整備
・自転車置き場の新設
・プール浄化槽及び排水修理
②
中期的な改善点
・スポーツ施設の統合と新設
・ランチルームの新設
・観劇・音楽鑑賞等附属 4 校園共通のホールの新設
・幼・小・中の一貫教育可能な施設設備の新設
(4)養護学校
附属学校はこれまで地域の先導的役割を果たし,附属の歴史と伝統を築いてきたが,現在の
同じような役割「地域の先導的役割」を充分に果たしているか真剣に考えなければならない時
を迎えていると思われる。
過去の養護学校における教育目標・教育活動等を振り返ってきたが,特に公立校と比べどれ
だけ際だった部分があったのか,どこの学校でもやっていることをやっていたのではなかった
か反省をしなければならない。
ただ,研究においては,全職員が研究校としての「自覚」のもと,その役割を果たそうと努
力してきたことと思われる。
しかし,「法人化を迎える今」,「今後の特別支援教育の在り方」(最終報告)が出されて 1 年
経った現在,附属・学部の意識の大改革がなければ附属養護学校は,輝きを失うものと思う。
そこで,本校が中期目標・中期計画を達成し,学校として生き残るための「構造改革」を次
のように考える。
1.特別支援教育の取り組みについて
文部科学省・三重県教育委員会ともに取り組みを昨年度から始めた。具体的には,ネットワ
ークの地域を指定し関係機関のネットワークづくり推進とコーディネーター養成講座を設け,
法整備の準備を行っている。このため,今後を見通した構造改革を検討しなければならない。
具体的には次のようなことが考えられる。
①
教員を目指すすべての学生に,特別支援教育に係わる必修教科の履修を義務づけする取り
組み。
②
医学部学生と養護学校に在籍する児童生徒との触れ合う機会と肥満・若年性糖尿病,てん
かん,心臓疾患など本校の児童生徒を対象とした研究推進の取り組み。
③
附属病院にある県立養護学校の「院内学級」と附属養護学校の位置づけの検討。
④
県立校が目指すであろう「総合養護学校」と異なる特色化を目指すための学部との真
の
連携のあり方と組織づくり。
⑤
地域のセンター的役割を果たすための学部との真の連携のあり方と組織づくり。
2.学校運営体制の改善について
①
県教委との人事交流は 5 年間ということに決定した現在,附属学校への赴任を希望する人
への期待・魅力づくりが必要。
マイナス要因が多い中,附属に行って仕事をしたいという考えを持たせるために我々は何を
すべきなのか。
公立校では体制・体質が変わり校長と職員そして地域住民が力を合わせて特色ある学校「私
らの学校」づくりに励んでいる。校長は「こんな学校にする」,「こんな教育活動をする」とビ
ジョンを掲げ,それに対し人的・予算的措置も図られているなかで,附属が有利に作用するの
は大学教官と協力して研究・実践ができるということだけである。
②
養護学校がもてる特別支援教育のノウハウを他の 3 附属学校園職員に伝授し支援すること。
そして,どの教諭も特別支援教育ができるようになることが必要ではないかと考える。このこ
とは,教育実習生の受入・指導に大きく反映するものと思う。
③
大学・学部は附属学校部の責任者の配置と事務部の創設が必要である。現在の事務体制,
寄り合い所帯体制では附属学校の体質改善・飛躍は望めない。
事務部だけでなく,校長選考・副校長採用のあり方,学内採用者の研修制度のあり方,高齢
者職員の受け入れ拒否など教官の側の構造改革も必然的に行う必要がある。
人事権・予算執行権・服務に係わる裁量権等をもち,大学・学部と対等に話せるリーダーな
くして附属学校はこれから多難続きになるものと思えてしかたない。先輩方が築いた附属の伝
統・輝きを取り戻すために全大学職員の理解・協力が必要である。
【医学部】
医学科
2004(平 16)年度の教育 GP に選ばれたように,本学医学部の教育を構成する個々のカリキュ
ラムは,初期医学教育,研究室研修,チュートリアル教育,クリニカル・クラークシップ,ど
れを取ってもそれぞれに充分に組織されて充実しており,おそらく全国的にみてもトップクラ
スに在るものと自負される。ただ個々のカリキュラムの充実があまりにも先行し過ぎたために,
教育カリキュラム全体としての調和やバランスを失い,学生に過度の負担を強いている感もあ
る。今後,医学部で検討しなければならないことは,カリキュラムを整理し,それぞれの比重
を調整して有機的に組み合わせ,6 年間の医学教育を全体的に調和の取れたものとしなければな
らない。さらに,医学科と看護学科とのカリキュラムの調和をどのように図っていくか,これ
も医学部の抱える大きな課題である。
看護学科
今後,他大学,他学部,他学科からの聴講・履修と単位互換,放送大学との単位互換,海外
の大学との連携といった様々な方向から教育の連携を推進していく必要がある。そのことが学
生の学習の機会を保障し便宜を図るとともに,特色ある大学づくりや大学の教育・研究の活性
化につながることになる。
看護学科と附属病院看護部との教育連携の推進のために双方向からの検討委員会の立ち上げ
を目指したいと考えている
【工学部】
JABEE 導入に向けた動きが各学科とも強まっており,機械工学科は 2005(平 17)年度に受審
する予定である。学生への教育レベルの確保に伴い,共通教育を含めた様々な改善がなされて
おり,教育活動はここ数年,劇的に変わりつつある。社会から期待のされる教育活動となるよ
う,さらなる努力が必要である。
【生物資源学部】
2000(平 12)年度から 3 学科体制に改組され,学生による講座等の選択に関する不満が相当
に解消された。また,カリキュラムの自由度が高められ,Specialist の養成から Generalist の
養成に重点が移ったが,今後のあり方については改めて検討する必要があろう。
学生指導について,シラバスは 1996(平 8)年度から作成されており,2004(平 16)年度以
降,電子化を推進する予定である。TA 制度も年々拡充されてきて,円滑な授業実施に大きな役
割を果たすようになった。視聴覚設備の利用は拡大していながら,設備の更新・拡充ができて
いないという問題が時間の推移とともに深刻化しつつある。
学生支援については,学科改組に伴い,「修学カウンセラー」制度を発足させ,学業のみな
らず,学生生活についても学生の相談に乗っている。
FD 活動は 2001(平 13)年度に開始され,授業評価アンケート,教官相互の授業参観など多彩
な展開をしているが,学生による評価結果などから授業改善は相当に進んできたといえよう。
また,JABEE も 1 学科で 2003(平 15)年度に試行が行われた。
大学院について,入学者は 2002(平 14)年度,2003(平 15)年度には前期課程・後期課程と
もに,定員を上回っており,就職率は両課程ともにほぼ 100%である。
学科改組から 4 年を経ることになり,2004(平 16)年度から英会話等を取り入れた実用科学
英語科目が開講されるなど,一部のカリキュラムの改訂が行われるが,さらに「食の安全・安
心」等の新しい社会的な要請に応えるために,全面的な検討が必要であろう。また,それに見
合った形で,指導の方法,設備のあり方,学生支援の方法などについて見直しが必要となろう。
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