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ベトナム ホーチミンのファッショントレンド

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ベトナム ホーチミンのファッショントレンド
ベトナム ホーチミンのファッショントレンド
第 II 章 小売店、商業施設等店舗情報
第Ⅲ章 日系企業のベトナム市場進出に向けて
2011 年 3 月
日本貿易振興機構(ジェトロ)
委託先:Dream Incubator (Vietnam) Joint Stock Company
本報告書に関する問い合わせ先:
日本貿易振興機構(ジェトロ)
生活文化産業企画課
〒107-6006 東京都港区赤坂 1-12-32
TEL:03-3582-5313
email: [email protected]
【免責条項】
ジェトロは、本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、あるいは懲罰的損害および利益
の喪失については、一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロがかかる損害の可能性を知
らされていても同様とします。
© JETRO 2011
本報告書の無断転載を禁ずる。
アンケート返送先 FAX 03-5572-7044
日本貿易振興機構 生活文化産業企画課宛
email: [email protected]
● ジェトロアンケート ●
「ベトナム ホーチミンのファッショントレンド」
に関するアンケート
ジェトロでは将来の市場として、潜在的需要が高い可能性のある国や地域のマーケット情報を日本
の中堅中小企業の方々に紹介することを目的に本調査を実施いたしました。報告書をお読みいた
だいた後、是非アンケートにご協力をお願い致します。
■質問1:今回、本報告書で提供させていただきました「ベトナム ホーチミンのファッショントレンド」
について、どのように思われましたでしょうか?(○をひとつ)
4:役に立った 3:まあ役に立った 2:あまり役に立たなかった 1:役に立たなかった
■ 質問2:上記のように判断された理由、また、その他、本報告書に関するご感想をご記入下さい。
■ 質問3:その他、ジェトロへの今後のご希望等がございましたら、ご記入願います。
■お客様の会社名等をご記入ください。(任意記入)
会社・団体名
ご所属
□企業・団体
部署・部署名
□個人
~ご協力有難うございました~
※本アンケートにご記入いただいた情報は、当該サービス向上のために利用します。
はじめに
毎年 GDP が 7%前後で成長し、外資系企業の進出が進む今最も東南アジアで注目されている
国、ベトナム。ベトナム国の輸出産業の屋台骨の縫製産業は年間輸出額が 1 兆円に到達している。
好調な経済発展を背景に、都市部では中間層が物凄い勢いで成長している。首都のハノイと常に
比較される、商業都市ホーチミン市。ここでは、年々世界的に有名なアパレルブランドが続々と進出
している。当レポートでは、ベトナム国ホーチミン市のファッション・アパレル市場の現状を報告し、
今後の日系企業の進出のヒントを考察する。
なお、本文で登場するベトナムの通貨ドンの為替レートは 2011 年 3 月 1 日現在、1 ドル=
20,875 ドン、1円=262 ドンである。
写真は調査協力先ならびに Dream Incubator (Vietnam)による提供
目次
Ⅰ章 市場概要
1.市場規模
2.過去 10 年の変遷
3.主なプレイヤー
4.主要メディア
5.主要展示会
6.ローカルデザイナー
7.ファッショントレンドの形成プロセス
1
1
2
3
9
12
13
15
Ⅱ章 小売店、商業施設等店舗情報
1.A.独立店舗 目抜き通り
1.B.独立店舗 ファッション通り
2.MT(Modern Trade)
3.TT(Traditional Trade)
4.オンラインショッピング
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18
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27
29
Ⅲ章
31
日系企業のベトナム市場進出に向けて
Appendix(別添)
Ⅰ.
Ⅱ.
Ⅲ.
Ⅳ.
Ⅴ.
日系企業インタビュー
業界関係者インタビュー
消費者インタビュー
ベトナムアパレルメーカー
ベトナムを代表するデザイナー
Ⅱ章. 小売店、商業施設等店舗情報
まず始めに、ベトナム小売市場を分析するにあたり市場を大きく 4 つに分類した。この章では、市場毎の特徴と各市場を代表する店舗について
詳しく説明したい。
ベトナムアパレル流通形態
1.独立店舗
概
概要
要
ロケーション
ロケーション
商品単価
商品単価
*
**
2.M T*
3.T T**
4.オンライン
A.目抜き通り
B.ファッション通り
GucciやLoius
Vuitton等の高級
ブランドを取り扱う
独立路面店
ミドルクラスのイン
ターナショナルブラ
ンドやローカルの
服飾を取り扱う独
立路面店
デパートやホテル1
階等に出店する店
舗。ブランドはロ
ケーションに伴い
多様
市場で食料品と共
に販売されており、
主に中国からの輸
入品を取り扱う
ウェブサイトを通じ
て販売される店舗。
主に海外からの輸
入品を取り扱う
ホーチミン市1区の
Dong Khoi通り
ホーチミン市1区の
Nguyen Trai通り
高級デパート、高
級ホテル等
市中心部から少し
離れた場所にある
伝統的市場
Facebook、Zing等
のウェブサイト
3万円~
2,000~3万円
2,000円~
3万円以上
500円~1,500円
2,500~1万円
Modern Tradeの略。デパート、ショッピングセンター、スーパー等が該当
Traditional Tradeの略。伝統的市場等が該当
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1.A 独立店舗 目抜き通り
ほとんどの高級ブランドは集客に有利な市内大通りに面したホーチミン市の、目抜き通りに出
店している。例えば、Louis Vuitton、Gucci 等の高級ブランドは Dong Khoi(ドンコイ)通りに出店し
ている。Dong Khoi 通りは観光客が最も多く訪れる通りで、周辺にはお土産屋がこぞって出店して
いる。また、デパートや 5 つ星ホテルも多く出店している。Dong Khoi 通りは将来的に、ホーチミン
市を代表する“銀座通り”に発展するのではないかと予想される。なお、市内中心部の家賃は月々
150~200 ドル/平米*程かかると言われている。
*
出所:Savills Vietnam Report
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1.B 独立店舗 ファッション通り
ホーチミン市には、ホーチミンっ子の間でファッション通りと呼ばれている通りがある。ホーチミ
ン市 1 区の中心地からバイクで 5 分程の場所に位置している Nguyen Trai 通りだ。ここ Nguyen
Trai 通りには、インターナショナルとローカルのブランドが乱立して出店している。このようなファッシ
ョン通りは Nguyen Trai 通りの他、Hai Ba Trung 通り、Vo Van Tan 通り、Nguyen Dinh Chieu 通り、
Ly Tu Trong 通り、Le Van Sy 通りといったようにホーチミン市内に数カ所点在する。
Nguyen Trai 通りは全長 3km以上にわたる通りで、市の中心部(1 区)とチャイナタウン(5 区)
を結ぶ東西に伸びた通りである。この通りには、大小合わせて 300 店舗以上のアパレルショップが
ひしめき合う。それぞれのショップの営業時間は朝早いところで 9 時から、夜は遅いところで 22 時
まで営業している。また、通りは棲み分けが出来ており、Ton That Tung 通りを境に営業している店
舗は市の中心部に近い A クラスに分類され、市の中心部から少し離れたエリアは B クラスに分類さ
れる。A クラス店舗の家賃は月々100~150 ドル/平米で、B クラスで 50~100 ドル/平米*と言われ
ている。
*
出所:雑誌 Doan Nhan(2010 年 10 月 24 日号)
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(Nguyen Trai 通り A クラス地図)
A クラスの地域では、インターナショナルブランドでは Levi’s、Lacoste、Mango、Burberry、
Lee、Bossini、Etam 等が出店している。ローカルのブランドも積極的に大型店を出店しており、
Maxx Style、N&M、Viet Tien、ローカルの An Phuoc 社が経営する Pierre Cardin も An Phuoc ショ
ップと併設して出展している。越僑や留学経験のあるベトナム人が経営する、海外ブランドのみを扱
ったセレクトショップも多く存在する。セレクトショップの価格帯は若干高めに設定(30~100 ドル以
上)されていることから、富裕層やモデル等が主な顧客だ。
B クラスのエリアは対照的に、低所得者・中間所得者でも手が出し易い価格帯となっている。海外
ブランドも出店しているが、Adidas や Kitty ショップ等、庶民でもショッピングが楽しめる価格帯の店が多
い。ローカルブランドでは、Viet Fashion 社が手がけるローカルブランドの Nino Maxx や紳士服の Viet
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Tien 等が出店している。この地区の特徴としては、ノンブランド商品を取り扱うショップが多いことだ。中
国やタイ等から輸入された有名ブランドのコピー品やノンブランド品を取り扱う店は数え切れない。
(Nguyen Trai 通り風景)
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2.MT(Modern Trade)
Modern Trade はデパート、ショッピングセンター、スーパーマーケット等の近代的な商業施
設の総称である。ここベトナムでは庶民の消費活動は従来 TT(Traditional Trade 伝統的流通)が
中心だったが、近年の経済成長にともない、毎年徐々にではあるが MT での消費活動が盛んにな
ってきている。
中でも、外資系、ローカル系企業による大型デパートやショッピングセンターの開発が進んで
いる。利用客は富裕層や市内オフィスに勤める OL やビジネスマンが中心となっているが、その他
にも現地に駐在する外国人で連日賑わっている。現在、ホーチミン市には合計 24 カ所の商業施設
が営業している。
ホーチミン市で営業しているショッピングセンターの延べ床面積の合計は、31 万平米と言わ
れており、出店率は 90%を超えている。家賃は様々で、ホーチミン市の一等地であれば、最も高い
所で月額 250 ドル/平米と言われている。ベトナムは不動産市場が若干バブル気味の傾向にあり、
周辺 ASEAN 諸国と比較すると非常に高い傾向にあると言えよう。市内中心部(1 区、3 区)の場合、
家賃は平均月々100~120 ドル/平米と言われている。これは国内外のアパレルブランドにとっては
非常に厳しい戦いを強いられており、小売進出の妨げの要因の一つともなっている。市内中心地か
ら車で 30 分近く離れた 7 区や Tan Binh 区になると家賃は月々40~60 ドル/平米に下がると言わ
れている*。
*
出所:CB Richard Ellis Report
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2010 年に開業した Vincom ショッピングセンターは、ホー
チミン市の中心地に立地する好条件を武器に、Emporio Armani、
Jimmy Choo、BeBe 等の人気ブランドを携えてホーチミン市に
華々しくデビューした。週末は家族連れで大盛況だ。店内は買い
物客で賑わっているように一見見えるが、高級ブランドの店内を
覗くと必ずしも買い物客で溢れているとは言い難い状況だ。こう
した高級ブランドはほんの極わずか一部の富裕層に限られた贅
沢品であることが窺える。
Vincom
http://www.vincom.com.vn/
ホーチミン市内に 4 店舗出店している Parkson はベトナ
ムで最も出店数が多い百貨店だ。市内の中心地の Le Thanh
Ton 店や、市の中心地から車で 20 分ほど離れた場所にも積極
出店している。高級ブランドに限らず、中間層でも手が出せる価
格帯のブランドを取り揃えている。
Parkson
http://www.parkson.com.vn/
年々開業が続くショッピングセンター、百貨店と並んで多いのが、5 つ星ホテルへの出店だ。
例えば、Rex、Sheraton 等市内の中心地にある五つ星ホテルが挙げられる。特に、最近、Rex ホテ
ルは市場の注目を集めている。Chloe、Salvatore Ferragamo、Channel、Marc Jacobs 等インター
ナショナル高級ブランドは次々に Rex Hotel にショップをオープンしている。家賃は月々約 82 ドル/
平米と言われている。
ショップのオーナーに聞いたところ、高級ブランドの主な顧客はベトナム人だというから驚きだ。
ベトナム人の富裕層は今まで高級ブランドを購入したくても、香港/シンガポールに出掛ける必要が
あった。彼らは国内でショッピングを楽しめる場所がないことをずっと不満に感じていたそうだ。聞く
ところによると、1 店舗で一人当たり年間 100 万円以上ショッピングを楽しむ顧客が数百人いて、こ
れらのブランドショップの VIP カスタマーとして登録されているそうだ。不動産・証券バブルで財を築
いたベトナム人富裕層の購買力は、日本人以上と言っても良さそうだ。
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Le Loi 通りと Le Thanh Ton 通りの Rex Hotel に隣接する高級ショッピングアーケード
Rex に出店しているブランド
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ホーチミン市の代表的なデパートリスト
デパート
Vincom
Now zone
Parkson
(Le Thanh
Ton 店)
Diamond
Plaza
Zen Plaza
Tax
エリア
1区
1区
1区
1区
1区
1区
設立
(年)
売り場面積
(平米)
2010
57,704
(6 階)
2008
12,000
(4 階)
2005
17,000
(4 階)
*
1999
約 7,700
(4 階)
1999
約 7,000*
(6 階)
1880
4,282
(3 階)
インターナショナル
Emporio Armani、
Versace、Mango、
Bebe、NAF NAF、
Levi’s、Reebok、
Kappa、Nike
Adidas、Levi’s、
Kappa、Sketchers、
Converse、Guess
CK、Nike、Adidas、
Timberland、Esprit、
Lacoste、Puma、
Guess
Adidas、Nike、Bebe、
Lacoste、Converse、
Levi’s、Puma、Ck、
Versace
Diesel、Tommy
Hilfiger、Levi’s、
Kappa、Geox、Nike、
Sketchers、Clarks、
(主に化粧品)
Shiseido、Lancome、
Clarins
ローカル
Viet Tien、An
Phuoc、Mattana、
Kelly Bui、Viet Thy
Kid
F house、Nino
Maxx、N&M、
Mattana、Wow、Hi
Ha Gattini、Nino
Maxx、N&M
N&M、An Phuoc
Designer Boutique
An Phuoc、Viet
Tien、Sanding
* 出所:Dream Incubator 社試算
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特徴
・ ホーチミン市最大規模の地下階を有するデパ
ート(ベトナム初)
・ 多くの世界的に有名なブランドが出店
・ ショップ数 : 250
・ ベトナム資本(Vincom Group)
・ 3 区、5 区、10 区に近い
・ 100%外資系(台湾)
・ 100%外資系(マレーシア)
・ 4 カ所のデパートを拡大した。
・ 100%外資系(韓国)
・ ホーチミン市最初の高級デパート
・ 100%外資系(日本)。前身は Nhat Nam
Plaza
・ 2003 年、Zen Plaza に変更
・ 2010 年、The New Zen に変更
・ http://www.thuongxatax.com.vn
・ ホーチミンで最も古いデパート
・ 観光地として有名で、毎日、多くの観光者が
見学、買い物に来る。
・ 殆どの服飾はローカルブランド。
スーパーでは、販売されているほとんどのアパレルはローカルブランドとなり、値段が 10~30 万ドンと中間層が手を出しやすい価格設定とな
っている。日本に例えるとイトーヨーカドーやイオンで販売されている洋服と捉えて頂ければイメージが沸くだろう。
ホーチミン市内の代表的なスーパーマーケット
スーパー
Co.op
Mart
(21 店舗)
Big C
(5 店舗)
Lotte Mart
(3 店舗)
Metro
(3 店舗)
エリア
・ 1,3,5,6,7,8,9,10,11
区
・ Binh Tan 区
・ Tan Phu 区
・ Phu Nhuan 区
Binh Thanh 区
・ Go Vap 区
・ Binh Tan 区
・ Phu Nhuan 区
・ 10 区
・ Tan Phu 区
・ 7区
・ 11 区
・ Binh Duong 省
・ 2区
・ 6区
・ Dai Han 大路
設立年
1996
1999
2008
2002
売り場面積
(㎡)
2,000~13,000
4,000~15,000
12,500~
33,400
20,000
入っているブランド
特徴
・
・
・
・
Viet Tien
Viet Thang
Pierre Cardin
An Phuoc
・ ベトナム大手小売現地企業 Saigon CO.OP が経
営
・ 全国で 50 店舗展開中
・
・
・
・
・
John Henry
Unicol
Joe Box
Aino Sophia
Wow
・ 前身は Cora スーパー(Bien Hoa 省)。2003 年に
BigC に変更
・ Casino Group(フランス)が出資母体
・ 全国に 14 店舗展開中
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
Nike
Adidas
Ninomaxx
Viettien
John Henry
An Phuoc
Viet Tien
Maxx Style
John Henry
BlueExchange
Nino Maxx
・ 韓国ロッテが経営するショッピングセンター
・ 食料品、生活雑貨がメイン
・ 韓国系資本ということもあり、韓国系化粧品ブラン
ドが多数出店
・ ベトナムの大手卸スーパー
・ 100%外資資本(ドイツ。Metro Cash&Carry 社)
・ 全国 13 店舗展開中
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3. TT(Traditional Trade)
一般ベトナム人がショッピングに行く場合、市場や昔からあるローカルのショッピングセンター
を利用することが多い。これらの市場や、先に挙げたファッション通り沿いでノンブランド品を取り扱
う多くのショップが TT と呼ばれる。特徴としては販売されている商品のほとんどが、中国からの輸
入品か国内の工場で生産された商材のアウトレット商品となる。ここでは、ホーチミン市を代表する
伝統的市場の Saigon Square と An Dong Plaza を紹介する。
1990 年から 20 年以上も続いている Saigon Square。
元々は Hai Ba Trung 通りにあったロシアンマーケットが母体だ。
昔からベトナムはロシア向けにアパレル製品を輸出していたこと
から、在庫品やアウトレット品等をロシアンマーケットで販売して
いた。
ロシアンマーケット外観
2006 年に韓国系資本の Kumho Asiana グループが商業
施設とホテル、オフィスビルを当地に建設するプロジェクトを決定
した際、Saigon Square は移転を迫られた。その後、2007 年に
Le Van Huu 通り、その後 Nam Ky Khoi Nghia 通りと移転を繰り
返した。
Saigon Square I
2009 年、Ton Duc Thang 通りに Sai Gon Square II がオ
ープン。現在、ホーチミン市では 2 カ所で営業している。Saigon
Square は小さなショップが碁盤の目のように出店しており、一度
足を踏み入れると人混みと店子の熱気でムンムンしていて東南
アジアを体感できる場所だ。営業時間は朝 9 時から夜 22 時ま
でで、週末は若者でごった返している。
Saigon Square II
Saigon Square では、ロシアンマーケット時代の名残りか、輸出商材の在庫処分品や不良品の
他に有名ブランドの類似品が販売されている。商品単価は 10 万ドン(約 50 円)位からとなっている。
実際に Saigon Square でショッピングしている客に話を聞いてみると、海外ブランドの類似品はモノ
によってはベトナム製の商品よりも品質が高いとのことだ。多くの若者は、高級ブランドに憧れは持
っているが、高くて買えないので Saigon Square でコピー商品を購入している。Saigon Square に
出店したい場合、預託金 11,000~20,000 ドルと月々家賃・電気代・管理費込みで 1,000 ドルの支
払いが必要とのこと。1 ショップ当りの平均売り場面積が 4 平米と狭い理由も頷ける。
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Saigon Square に続いてホーチミンっ子の間で知名度
が高いのが An Dong Plaza だ。An Dong Plaza は 2004 年
にホーチミン市 5 区にオープンしたローカルのショッピング
センターだ。元々、衣料品卸の An Dong 市場が近くにあり、
衣料品街としての認知度が地元民の間に元々あったことか
らすぐに人気が出た。同プラザ内には、2,200 の店舗が出
店している。
An Dong Plaza 外観
An Dong Plaza は Saigon Square に比べると、より所得の低い消費者をターゲットにしており、
ベトナムブランドの類似品が出回っている。商品価格は Saigon Square に比べ半分の値段となって
いる。現在でも衣料品卸街の文化が混ざっており、大量購入する顧客に対してはボリュームディス
カウントが施される。
出店費用は Saigon Square 同様、ベトナムの生活水準では信じられない金額だ。現在のショ
ップを譲渡希望のオーナーに聞いたが、5 年間の経営権がなんと 60,000 ドル。それに加え月々電
気代・管理費を 150 ドルも支払う必要があるとのことだ。ベトナムでは集客力のある小売市場が限
られていることもあり、市場での経営権しかり、不動産同様にバブルが発生している。
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4. オンラインショッピング
近年、EC サイトや Social Network を経由して、衣料品を購入する若者が増えている。ベトナ
ムアパレル市場を俯瞰する上で今後も目が離すことができない市場だろう。2008 年よりベトナム IT
企業投資活動を行っている、アメブロで有名なサイバーエージェントベトナム社の試算によると、ベ
トナムの EC 市場は現在約 200 億円と見積もられる。その内、アパレル EC 市場の規模は約 4%の
8 億円相当と推測されている。
Social Network を利用しているベトナムの若者は日々増加している。2006 年、Yahoo 社は
ベトナムで Yahoo! 360°ブログを展開し、若者の多くの注目を集め、ユーザー数 100 万人を獲得し
た。Yahoo! 360°はベータ版だったため、2008 年から Yahoo ベトナム社は Yahoo Plus を正式版と
してリリースしたところ、Yahoo! 360°の情報が無くなることを恐れた多くのユーザーが、ローカルの
SNS や Facebook 等に流出した。Facebook の閲覧はベトナムでは規制されているが、インターネッ
トのセキュリティ設定をカスタマイズしてまで Facebook を楽しむベトナム人が多く存在する。
参考)
ベトナム人の Facebook 利用者数*
73,280 人
・ 2009 年 4 月 :
・ 2010 年 3 月 : 1,084,160 人
・ 2011 年 1 月 : 2,010,060 人
Facebook 上で販売されている商品例
*
出所:http://www.checkfacebook.com/
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Facebook のようなオンラインショッピングで消費者が購入する場合は、クレジットカード決済
が普及していないベトナムでは基本的に前払い(銀行振り込み)か、代引決済で対応している。店
主は基本的に、個人の輸入代行業者で、消費者から注文を受けてから海外の親戚等のリレーショ
ンを使って商品を発送してもらう。
オンラインショッピングは大きくブランド品とノンブランド品の 2 種類に分けられる。ブランド品
は、ベトナムに未進出のブランド(Forever21、DKNY 他)を中心に人気が高い。また、正規のルート
で国内に進出しているが、関税の関係上、オンラインを通じて購入した方が安いブランドも人気が高
いと聞いている。単価は安いもので 500,000 ドン(2,500 円)、高いもので 2,000,000 ドン(1 万円)
以上するというからピンキリだ。
ノンブランド商品については、一般的に市内の TT で販売されているものと大きな変わりはな
く、中国・タイからの輸入品となる。価格は 100,000 ドン(500 円)~250,000 ドン(1,250 円)とかなり
お手頃だ。サイズ・デザイン等をホームページで選んで購入するという利用方法が主流で、所得の
少ない学生等や若い OL の間で人気だという。
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Ⅲ章. 日系企業のベトナム市場進出に向けて
以上、ベトナムのアパレル市場について様々な角度から俯瞰してきたが、ここで改めて日系企
業の進出時のボトルネックやチャンスについて考察をしてみたい。
日系企業がクリアしなければならない障壁は大きく 3 つあると見られる。
1. 外資小売業を巡る規制
2. メディアを通じた日本文化(特に芸能、ファッション面)の認知力の低さ
3. 成長市場だが、市場黎明期であること
1つ目の外資小売業を巡る規制については、WTO 加盟公約により 2009 年から 100%外資
の小売業が可能となっている。しかし、2 店目以降の小売店を設置する場合に行われる
ENT(Economic Needs Test、出店地域の小売店の数、市場の安定性、人口密度等に基づく審査)
のような規制や、政府当局の投資ライセンスの発行の遅さはベトナムの小売業の健全な成長を妨
げている。結果、消費者が安心して、かつ楽しんでショッピング出来る環境は東南アジア諸国と比
べて整っているとは言えない状況だ。一等地ショッピングセンターや TT の家賃の高さについてはⅡ
章で言及したように、近代的商業施設の供給不足に直接起因している。そのため、特定の小売業
者にしか販売権が与えられていないのが問題となっている。現状、解決策としては現地販売パート
ナーとの提携しか選択肢は残されていない。
2 つ目のメディアを活用した日本文化の認知力の低さも問題の一つである。現地パートナーを見つ
け、ベトナム市場で製品を販売しようとする時、日本ブランドが全く認知されていないことが壁になる。Ⅰ
章で例に挙げた韓国は、数年前から韓流ドラマを通じて芸能人や韓国ブランドを売り込み、「韓国という
国・文化に対する認知/憧れ」をベトナム社会に浸透させることに成功した *。日本は一部のドラマ(おしん、
星の金貨、北の国から)といった、非常に少数のドラマしか放送されていない。付録の消費者インタビュ
ーにもあるが、ベトナム人消費者の間で芸能・ファッションに対する日本への憧れはほとんど存在してい
ないのが現状だ。もちろん、対ベトナム ODA 供与国としては世界一で、ビジネス界・産業界からの日本
文化への強い尊敬の念は感じるが、ことファッションにおいては皆無に等しい。欧米のブランドも、テレビ
や雑誌を通じて文化を作り上げてきたので、日本も同じような取り組みをしていくべきだ、という見方もあ
る。一企業の力では解決できない問題なので、早くからベトナムに進出して成功している家電企業や日
用品企業と協力し合い日本文化を浸透していく努力や、政府を絡めたメディア戦略を仕掛けていく必要
がある。
3 つ目のアパレル市場のステージについては、Ⅰ章の冒頭でも触れたように、ベトナム人一人当た
りのアパレル消費額は東南アジアにおいてはまだまだ小さい。事業計画を立てる際に、最初の数年は赤
字を覚悟する必要があるだろう。しかし、GDP の成長率(7%)を上回るスピードで成長している点や、都
市部を中心とした中間層・富裕層の購買力、現在の 10 代を中心とした新しいものへの力強い需要等を
鑑みると、これはたいして大きな問題ではない。他社よりも 早く進出し、ファーストムーバーアドバンテー
ジを取得していくような戦略を検討することも必要である。
アパレル市場はベトナム消費財市場の中でも市場規模としては比較的大きい。また、ホーチミン市
の若者は 1 万円以上もする携帯電話を所有し、数万円以上するオートバイも所有している。日々、より
豊かな暮らしを求めて消費意欲は高まっている。欧米や韓国に比べ認知度は低いものの、ベトナム人消
費者の嗜好を捉えたファッションを創出し、中長期で稼ぐビジネスプランで臨めばビジネスチャンスはあ
ると考えられる。
*
参考:JETRO 刊『ベトナムコンテンツ市場』http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000027/05001667.pdf
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