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18肉離れ
24.肉離れ 上記の図の様に大腿部の屈筋群をハムストリングスという。短距離選手にこの肉離れが多い。 ここの肉離れが発生しやすい理由は、 ①神経の二重支配(大腿二頭筋の長頭ー脛骨神経、短頭ー腓骨神経)なので屈曲時にずれが生じやすい。 ②二関節(股関節・膝関節)に作用する。 ③大きな力を出すので疲労しやすい。 以上3つの主な理由があげられる。 また、ハムストリングスの柔軟性の欠如、拮抗筋である大腿四頭筋との筋力比(大腿四頭筋100:ハムストリングス 60以下)が大きいと肉離れを起こしやすい。 ランニングフォームの欠点としてストライドが大きいと肉離れを起こしやすい。 最も肉離れを起こしやすいスタートダッシュ5歩目を分析してみると、足を身体の前に着く。着いてから、膝が曲が る(曲げないと60㌫余計な力が加わらない)。この時、ストライドを伸ばさない事が大切。 ・着地中に膝を曲げるとハムストリングスが伸ばされる(肉離れの要因)。 ・着地後に膝を曲げてもハムストリングスが伸ばされる(肉離れの要因)。 もうひとつ肉離れが起き易い後半80mから膝下を振り出すと肉離れを起こす。 ◇肉離れを発生しやすいとみられる疾走フォーム ・回復期後半で、下腿部を過度に前方へ振り出す。 ・支持期前半(接地時)で、支持脚を身体のかなり前方に接地する。 ・支持期前半で、支持脚の膝関節を大きく屈曲させる。 ・支持期後半で、支持脚の膝関節を大きく伸展させてキックする。 具体的な練習では 1)無理な高くももを上げるもも上げ運動をやめ、自然なもも上げをする様に心掛ける。 2)キックで腰を入れる意識をなくす(キックの後半に膝を伸ばさないようにする為)。 3)キックの原動力である股関節伸展筋群のハムストリングスを強化する。 4)膝関節と足関節が着地衝撃によって負けないようにボックスジャンプを利用して腱反射強化をする。 5)どの練習においてもリラックスを重要課題とする。 短距離走のキック時間は0.1秒しかないが、最大筋力を発揮するのに要する時間は一般に0.3秒以上かかるとい う事実をふまえ、最大筋力を高めるだけでなく、ドリルやハードル、ボックスジャンプ等をして腱・腱反射を鍛えるトレ ーニングをする。 ◇肉離れ・・・筋を包んでいる筋膜の部分断裂から筋そのものの断裂までを含む疾患の総称で、症状により3段階に 分けられる。 1.軽度(1度):筋肉自体や筋周膜にはほとんど変化はなく、筋線維束が引き伸ばされた程度のもの。局所の圧痛の みの事が多い。 2.中程度(2度):筋周膜の断裂、ごく一部の筋線維の断裂があるが、圧痛だけでなく軽い陥凹や軽い運動痛もある。 陳旧例では瘢痕、癒着は比較的軽症なもの。 3.重症(3度):筋周膜の断裂はもちろん筋自体にも部分断裂があり、圧痛、局所陥凹、運動痛も著しい。陳旧例で は瘢痕、癒着が高度のもの。 応急処置から復帰まで 1.RICE処置(R:rest 安静、I:icing 氷冷、C:compression 圧迫、E:elevation 挙上) 受傷後なるべく早く(数分以内)開始する。時間がかかるほど、効果は低くなる。 ※二次的低酸素症(secondary hypoxic injury):一次的外傷性損傷の周辺組織に十分な酸素を供給できない結果とし て発生する。損傷部から末梢にある壊れた血管では血流が停止し、炎症性のうっ血と泥血のため、その部分にある 他の血流が減少する。 結果として起こる酸素不足は、最終的に細胞の浮腫、破壊、アシドーシス、そしてライソソームによる消化をもたらす ことになる。細胞膜の崩壊とライソソームから細胞内への酵素の放出は、細胞の壊死につながる。そこで生じる細胞 片は、血腫に加えられる。従って、損傷を受けた組織の総量は増加する。 上記の二次的低酸素症を防ぐ為にRICE処置を速やかに行う必要がある。 手順 1.損傷部位の皮膚に直接アイスパック(0度が望ましい)を当て、身体の形に沿うようにアイス パックを整える。 2.伸縮包帯でアイスパック並びに損傷部位を固定する。 3.伸縮包帯は受傷後20~24時間、常に巻いておく。 4.損傷部位を心臓より15~25cm挙上する。 5.周辺の筋肉がリラックスする為、固定する。 6.30~45分後にアイスパックを取り除き、伸縮包帯を再び巻いて、挙上する。 7.必要なら患者は短時間でシャワーを浴びるが、損傷部位には伸縮包帯を巻いておく。シャワー後再びアイスパッ クを適用する。 8.就寝するまで、2時間ごとに、上の要領でアイスパックを適用する。 9.夜中に寝ている時間も伸縮包帯を巻いておく。 適用の頻度 ・安静(Rest)-痛みがなく身体部分が機能するまで ・冷却(Ice)-受傷後、間欠的に 12~24時間 ・圧迫(Compression)-常に腫脹が消え去るまで ・挙上(Elevasion)-受傷後 24 時間で、できるだけ ・固定(Stabilization)-痛みなく損傷部位が機能するまで 応急処置後医療機関を受診する 受傷後、復帰するまでのメニュー(痛みが出現しない範囲で行う) 受傷後 2 日間 1 週間 2 週間 3 週間 4~6 週間 RICE処置 ◎ 温熱療法 ○ ◎ 自動運動 ◎ 筋力トレーニング ○ ○ ジョギング ○ ◎ ○ ◎ ○ 軽めのランニング ストレッチ ○ ○ ◎ ◎ *一般的には1度で1週間、2度で3~4週間、3度で6週間、完全復帰までかかる。 *自動運動とは自分の力で痛みが生じない範囲で行う運動をいう。