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非GMDSS船遭難時における連絡手段の 確保等
助成 競艇の交付金による日本財団の助成金で作成しました 平 成 13 年 度 非GMDSS船遭難時における連絡手段の 確保等に関する調査研究事業完了報告書 平成 14 年 3 月 社団法人 日本海難防止協会 ま え が き この報告書は、当協会が日本財団の助成金及び日本海事財団の補 助金を受けて、海難防止事業の一環として平成 12 年度及び 13 年度 に実施した「非GMDSS船遭難時における連絡手段の確保等に関 する調査研究」事業の内容を取りまとめたものである。 平成14年3月 社団法人 日本海難防止協会 委員会の名称、構成は次のとおりである。 1 委員会 (1) 名称 「非GMDSS船遭難時における連絡手段の確保等に関する調査研究委員会」及び 「作業部会」 (2) 委員会(順不同、敬称略) ( )内氏名は前任者 委員長 庄司 和民 東京商船大学名誉教授 委 員 荒井 郁男 電気通信大学教授 高橋 海上保安大学校教授 勝 中村 勝英 水洋会事務局長 安藤 久司 日本海洋レジャー安全・振興協会理事長 (高野 武王) 原 美都雄 日本マリーナ・ビーチ協会事務局長 片山 泰夫 日本舟艇工業会事務局長 蛭子 徹也 日本船舶品質管理協会技術指導 西沢 徹 移動無線センター業務部担当部長 長屋 信博 全国漁業協同組合連合会漁政部長 (宮原 邦之) 小坂 智規 大日本水産会常務理事 (高橋 幹治) 山崎 保昭 全国漁業無線協会業務部長 古屋 博司 株式会社ワムネットサービス代表取締役 喜多 一記 カシオ計算機株式会社時計事業部企画室長 関係官庁(順不同、敬称略) 松尾 龍介 ( )内氏名は前任者 国土交通省海事局安全基準課長 (矢萩 強志) 田 中 圭 国土交通省海事局舶用工業課長 (木澤 隆史) 伊藤 茂 佐村 知子 (池田 佳史) 国土交通省海事局検査測度課長 総務省総合通信基盤局電波部衛星移動通信課長 磯谷 兵衛 海上保安庁総務部情報通信業務課長 渡部 典正 海上保安庁総務部情報通信企画課長 高尾 留雄 海上保安庁警備救難部救難課長 (冨賀見栄一) 中山 博文 水産庁増殖推進部研究指導課海洋技術室長 (津端 英樹) (3) 作業部会 部会長 庄司 和民 東京商船大学名誉教授 委 員 荒井 郁男 電気通信大学教授 中村 勝英 水洋会事務局長 安藤 久司 日本海洋レジャー安全・振興協会理事長 (高野 武王) 原 美都雄 日本マリーナ・ビーチ協会事務局長 片山 泰夫 日本舟艇工業会事務局長 蛭子 徹也 日本船舶品質管理協会技術指導 長屋 信博 全国漁業協同組合連合会漁政部長 (宮原 邦之) 古屋 博司 関係官庁(順不同、敬称略) 佐村 知子 株式会社ワムネットサービス代表取締役 ( )内氏名は前任者 総務省総合通信基盤局電波部衛星移動通信課長 (池田 佳史) 磯谷 兵衛 海上保安庁総務部情報通信業務課長 渡部 典正 海上保安庁総務部情報通信企画課長 高尾 留雄 海上保安庁警備救難部救難課長 (冨賀見栄一) (4) 作業班 班 長 中村 勝英 水洋会事務局長 委 員 天野 均哉 古野電気(株) 朝倉 義幸 本多電気(株) 平野 英二 (株)光電製作所 高橋 健一 国際化工 (株) 内野 一明 日本無線(株) 大野 大野電子開発(株) 晃 矢作 2 勝 (株)緑星社 内村 隆之 太洋無線株) 山田 秀光 (株)トキメック 吉田 久明 長野無線(株) 蛭子 徹也 (社)日本船舶品質管理協会 上記委員等のほか、次の諸氏に格別のご協力をいただいた。 待 場 畑 純 全国漁業協同組合連合会 武彦 株式会社ワムネットサービス 太楽 匡宏 株式会社ワムネットサービス 田口 昭門 国土交通省海事局安全基準課 小玉 真一 国土交通省海事局舶用工業課 竹内 智仁 国土交通省海事局舶用工業課 村 上 崇 国土交通省海事局舶用工業課 池田 隆之 国土交通省海事局検査測度課 金子 純蔵 国土交通省海事局検査測度課 板垣 正志 総務省総合通信基盤局電波部衛星移動通信課 無線局検査官 遠藤 修一 総務省総合通信基盤局電波部衛星移動通信課 海上係 小関 幸一 総務省総合通信基盤局電波部衛星移動通信課 河 原 総務省総合通信基盤局電波部衛星移動通信課 悟 森部 賢治 海上保安庁総務部情報通信業務課 柿本 和利 海上保安庁総務部情報通信業務課 宮尾 海上保安庁警備救難部情報通信管理課 努 平田 友一 海上保安庁警備救難部管理課 秋好 晋 海上保安庁総務部情報通信企画課 畠山 仁 海上保安庁総務部情報通信企画課 三國 利弥 海上保安庁総務部情報通信企画課 那須 繁勲 海上保安庁総務部情報通信企画課 中村 公亮 海上保安庁警備救難部救難課 松瀬 博文 海上保安庁警備救難部救難課 西分 竜二 海上保安庁警備救難部救難課 岡本 顕 海上保安庁警備救難部救難課 川田 忠宏 水産庁増殖推進部研究指導課海洋技術室 3 事務局 津田 慎吾 日本海難防止協会常務理事 (田島 邦雄) 児林 秀雄 (菅野 瑞夫) 池嵜 哲朗 日本海難防止協会企画国際部長 日本海難防止協会企画部長 日本海難防止協会企画国際部主任研究員 目 次 第1章 調査研究の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.1 事業目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.2 事業計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.3 調査研究の経過・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 第2章 調査研究委員会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2.1 平成 12 年度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2.1.1 第 1 回委員会議事概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2.1.2 第 1 回作業部会議事概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 2.1.3 第 2 回作業部会議事概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 2.1.4 第 3 回作業部会議事概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 2.1.5 第 2 回委員会議事概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 2.2 平成 13 年度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 2.2.1 第 1 回委員会議事概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 2.2.2 第 1 回作業部会議事概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 2.2.3 第 2 回作業部会議事概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 2.2.4 第 3 回作業部会議事概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 2.2.5 第 2 回委員会議事概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 第3章 調査研究の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 3.1 3.1.1 小型船舶海難の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 概況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 3.1.2 船舶海難の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 3.1.3 海中転落の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 3.2 海難発生時に使用された通信手段の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 3.3 緊急時における連絡手段の確保に関するアンケート調査 ・・・・・・・・・・・・・ 53 3.3.1 アンケート調査の結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 3.3.2 所見 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88 3.4 遭難時の連絡手段として小型船舶搭載に適した通信機器類の検討 ・・・・・・ 91 3.4.1 既存設備、機器類の現状及び検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91 3.4.2 非GMDSS小型船舶用衛星イパーブの検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91 3.4.3 3.5 その他の機器類の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 99 外国製衛星イパーブ等の性能比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100 3.5.1 各製品の比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100 3.5.2 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 101 3.6 海上用PLB(Personal Locator Beacons)の開発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 102 3.6.1 海上用PLBの開発に至る経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 102 3.6.2 海上用PLBの仕様及び模型 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 102 3.6.3 海上用PLBの評価と今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106 3.7 沿岸海域における緊急時の通信手段確保のためのグランドデザイン ・・・・ 107 3.7.1 グランドデザインの基本方針 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107 3.7.2 船舶用衛星イパーブ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107 3.7.3 小型船用PLB ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108 3.7.4 既存の海上通信システム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108 3.7.5 携帯電話 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 110 3.7.6 搭載を推奨する通信機器等のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 111 第4章 今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112 4.1 イパーブの周知 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112 4.2 海上用PLBの普及 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112 4.2.1 PLBの我が国における使用環境整備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112 4.2.2 PLBの警報への対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112 4.3 既存海上通信システムの活性化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113 4.3.1 既存海上通信システムの高度化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113 4.3.2 無線局免許、検査及び資格制度の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115 4.3.3 海岸局の体制整備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115 4.4 携帯電話による通信の確保 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115 4.4.1 利用可能エリアの明確化及び拡大 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115 4.4.2 船上における携帯方法の確立 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 116 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 117 参考資料編 参考資料−1 アンケート調査関係資料 参考資料−2 作業班による「小型船舶に搭載すべき通信機器の検討」 参考資料−3 小型PLB開発に関する報告 第1章 調査研究の概要 1.1 事業目的 GMDSS体制の整備により、大型船については、遭難時において衛星EPIRB等によ り、その位置等の情報をいち早く海上保安庁等に知らせることが可能であり、短時間のう ちに救出されるための担保を得ている。 しかし、海難全体の7割以上を占めているのは、EPIRB(以下「イパーブ」という。 ) の搭載義務のない小型船舶(非GMDSS船)であり、これら小型船舶については、イパ ーブ等の搭載義務がないため、その多くは遭難時における自動通報手段がなく、一部で漁 業無線や携帯電話等が使用されているに過ぎないのが実態である。しかしながら、漁業無 線は使用する周波数帯による無線局からの距離の問題があり、また携帯電話も沖合が不感 地帯となること等、遭難時における連絡手段としては必ずしも十分なものではない。一方、 イパーブ等の機器は現在のところ一般的に高価であり、その維持についてもかなりの経費 がかかるうえ、小型化、携帯化されていないので、船外への持ち出しが容易ではないとい う問題がある。また既存のイパーブ等の機器では、小型船舶における死亡事故の多数を占 める乗組員の海中転落事故に対応できないといった問題もある。 小型船舶の海難は、発生自体が即座に人命の安全に関わることが多く、迅速な救助が必要 であるにもかかわらず、イパーブが搭載されていないため遭難の事実の把握、またその遭 難位置の特定に時間を要することとなり、迅速な救助が期待できないのが現状である。 このような状況に鑑み、小型船舶についてもイパーブの搭載を検討するとともに、それに 代わる小型自動遭難信号発射機器その他の有効な連絡手段等を検討し、もって小型船舶の 遭難者救助の迅速化に資することを目的とする。 1.2 事業計画 事業は、平成12年度及び平成13年度の2カ年計画で実施する。 (1) 事業計画の内容 本調査研究は、小型船舶(非GMDSS船)について、 ① 遭難等緊急時の連絡手段、イパーブ又はそれに代わる機器等の自主的な搭載に関 する意識等について実態を調査する。 ② 小型船舶に搭載すべき機器として既存の機器の利用及び新たな機器の開発を検討 する。 ③ 小型船舶に最適な通信連絡体制のグランドデザインを策定するものとする。 1 (12 年度) a 小型船舶を対象とした実態調査 小型船舶の通信連絡手段の現状並びに通信連絡手段に関するニーズ及び問題点、 小型船舶への自主的なイパーブ又はそれに代わる機器の搭載に関する意識をアン ケートにより調査する。 b 既存機器についての改良検討 既存の各種機器の有効性、小型船舶への利用可否、改良開発について種々の面 から検討する。 c 遭難時における連絡手段の確保に係る検討 前記 a 及びbを踏まえた上で、遭難時における小型船舶の最適通信連絡体制のグ ランドデザインを策定する。 d 報告書の作成 「非GMDSS船遭難時における連絡手段の確保等に関する調査研究(中間報告) 」 (13 年度) a 非 GMDSS 船用小型イパーブ等の調査研究 (a) イパーブの小型軽量化及び低価格化 (b) PLB(Personal Locator Beacons)の海上救難用としての導入 b 既存のその他通信システムの調査研究 (a) 漁業無線、マリン VHF 等既存の通信システムの活用 (b) 携帯電話の海上での使用 c 非 GMDSS 船の緊急時における連絡手段確保のためのグランドデザイン構築 d 報告書の作成 「非 GMDSS 船遭難時における連絡手段の確保等に関する調査研究(完了報告) 」 (2) 実施の方法 当協会に学識経験者、関係団体、関係官庁等からなる委員会を設置し、海事関係団 体及び関係研究機関の協力を得て実施する。 一部専門的な技術及び知見を必要とする事業内容については、専門の調査研究機関 に業務を委託して実施する。 (3) 事業成果の公表の方法 この事業は競艇公益資金による日本財団の助成金を受けて実施した旨を明示すると ともに、報道機関、機関誌等を通じて、一般に公表し、機会あるごとに利用者、関係者 に周知徹底させる。 (4) 補助事業の開始及び完了の時期 開 始 平成12年4月 1日 完 了 平成14年3月31日 2 1.3 調査研究の経過 平成12年 7月 4日 平成12年度第1回委員会開催 7月31日 平成12年度第1回作業部会開催 8月27日 緊急時における連絡手段の確保等に関するアンケート 調査開始 9月27日 平成12年度第1回作業班会合開催 9月30日 緊急時における連絡手段の確保等に関するアンケート アンケート締め切り 10月25日 平成12年度第2回作業部会開催 平成13年 2月 6日 平成12年度第3回作業部会開催 3月 7日 平成12年度第2回委員会開催 6月26日 平成13年度第1回委員会開催 8月28日 平成13年度第1回作業部会開催 10月 1日 海上用小型PLBの開発を太洋無線(株)へ依頼 12月10日 平成13年度第2回作業部会開催 平成14年 2月22日 海上用小型PLB開発成果受領 2月26日 平成13年度第3回作業部会開催 3月13日 平成13年度第2回委員会開催 3 第2章 2.1 調査研究委員会 平成12年度 2.1.1 第1回委員会議事概要 (1) 開催日時及び場所 日 時:平成 12 年7月4日(火)1400 ∼ 1635 場 所:日本海難防止協会会議室 (2) 議 題 ① 非 GMDSS 船の遭難時における連絡手段の現状等 ア 小型漁船 イ プレジャーボート ウ イパーブ等の機器 エ 非 GMDSS 船の海難事例 オ イパーブ以外の機器 ② 遭難時緊急時の連絡手段、イパーブ又はそれに代わる機器の自主的な搭載に関する 意識等についての実態調査 ③ 小型船舶に搭載すべき機器として既存の機器の利用及び新たな機器の開発の検討 ④ その他 (3) 出席者 ① 委 員 庄司 和民 荒井 郁男、高橋 勝、中村 勝英、高野 武王、原 美都雄、片山 泰夫、蛭子 徹也、 西沢 徹、宮原 邦之、高橋 幹治、山崎 保昭、古屋 博司、喜多 一記 ② 関係官庁 矢萩 強志(代理:田口 昭門) 、木澤 隆史(代理:小玉 真一) 、伊藤 茂(代理: 池田 隆之) 、池田 佳史、板垣 正志、磯谷 兵衛、渡部 典正、冨賀見 栄一、中村 公 亮、津端 英樹 ③ その他 西分 竜二、松瀬 博文 ④ 事務局 田島 邦雄、菅野瑞夫、池嵜 哲朗 (4) 資 料 ① GM(00)1−1 平成 12 年度調査研究委員会及び作業部会名簿 ② GM(00)1−2 平成 12 年度調査研究事業計画 4 ③ GM(00)1−3 GMDSS 体制下における漁業無線による遭難通信の概要 ④ GM(00)1−4 プレジャーボート愛好者の使用無線設備 ⑤ GM(00)1−5 GMDSS 機器の搭載を義務付けられていない小型船舶の海難事例等 (5) 議事概要(◎:委員長 ○:委員 △:関係官庁 □:事務局) ① 第 1 回委員会の開催に当たり、日本海難防止協会田島常務理事が挨拶を行った。 ② 第 1 回委員会の開催に当たり、海上保安庁警備救難部冨賀見救難課長が挨拶を行っ た。 ③ 事務局が各委員及び関係官庁出席者の紹介を行った。また、事務局が資料GM(00)1 −1 の委員会名簿及び作業部会名簿について説明し、作業部会においても漁船の意見 を反映させる必要から、作業部会のメンバーとして全国漁業協同組合連合会の宮原 委員を追加することを提案、これが承認された。 ④ 東京商船大学名誉教授の庄司委員が、本年度の委員長に選出され、以後委員長によ り議事が進められた。 ⑤ 平成 12 年度調査研究事業計画について、事務局が資料GM(00)1−2 により説明し、 これに対して次の質疑応答、意見等があった。 △ 本調査研究事業においては、何か新たな機器を開発するというところまで含む のか否か。 □ 本委員会では、これまでと異なる新たな発想で小型船の連絡手段の確保という 問題を皆様にご検討いただき、その結果、具体的にそういった機器の開発に結び つくものが出てくれば、その有効機器を開発するということも視野に入れている。 △ 実際に新たな機器を開発し、それによりモデル事業を行うとなると、かなりの 費用が掛かるものと思う。それを考えると、本委員会においては新たな機器の開 発につながる提言に止める、また既存の機器の改良を主として考えるという方法 もあるのではないか。 □ モデル事業は、基本的には既存の機器に必要な改良を加えたもので実施するこ とを考えている。ご指摘のとおり、新たな機器の開発には、かなりの費用が必要 であることから、場合によっては提言に止める、或いは可能な範囲内でできるだ けのことを実施するということも考えられる。 ○ 小型船で実際にどのような通信機器が使用されているか、またそれらの通信機 器の性能等がどうかといったことを基礎データとして収集整理しておく必要が ある。 □ 小型船に対するアンケート調査の内容を、今後事務局と海上保安庁とで検討し ていくこととしているので、各委員の方々からアンケート調査の内容についてご 意見があれば、反映させていきたい。 ◎ 現在、小型船用の機器としては、小型船用イパーブ、小型船用サートといった ものがあるが、そういったものを含めて何か有効、的確また迅速に遭難の事実を 5 通報できるようなものがないかということを、色々な問題を踏まえながら、検討 していきたいと考えている。従って、法制化につながる或いはつながらない、現 行法上の制約といったことにあまり捕らわれずに、自由に議論し、方策を検討し ていくこととし、皆様のご意見をお願いしたい。 ○ 小型漁船の場合は、一人乗り操業が多いのが現状であり、一人乗り漁船の通信 手段についても是非ご検討いただきたい。 □ 一人乗り漁船の海難は元より、一人乗り漁船での海中転落事故も含めて検討し ていきたいと考えている。 ○ 船舶を使わない海洋レジャー、例えばダイビングでも毎年多くの事故が発生し ている。海中転落に対応した有効な機器ができるのであれば、それをダイビング にも応用できると考えるので、期待したい。 □ ダイビングまでは対象としていなかったが、海中転落事故への方策で応用でき れば幸いである。 ◎ 個人個人が装備するような通信機器が、将来的に充実すれば、海中転落事故に も、お話のあったダイビング事故等にも対応できる訳であり、現在の科学技術を 以ってすれば、遠からず実現するものと思うが、この委員会の 2 年間では難しい のではないか。 ○ 過去に水産庁等の委員会において、海中転落事故に対応する機器の検討が行わ れ、そういった機器も考えられているが、その普及を図るとなると、製品の価格 の問題等があってなかなか難しいというところであった。今回の委員会ではそう いった問題も含めて検討できればと考えている。 ⑥ 議題 1「非 GMDSS 船の遭難時における連絡手段の現状等」 ア・イ 小型漁船及びプレジャーボート 「GMDSS 体制下における漁業無線による遭難通信の概要」について、全国漁業無 線協会の山崎委員が資料GM(00)1−3 により、「プレジャーボート愛好者の使用無 線設備」について、海上保安庁警備救難部救難課が資料GM(00)1−4 により、それ ぞれ説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 ○ 最近では、小型船舶にも携帯電話が普及しているようであるが、携帯電話を利 用した捜索の方法について、現状はどうか。 △ 例えば、行方不明の船舶について、乗組員が携帯電話を所持してれば、携帯電 話会社に照会することにより、どの中継局のエリア内にいるかを知ることができ るので、その中継局を中心として約 10 海里程度の捜索海域を設定し、捜索する という方法を採っている。 ○ それは、携帯電話の電源が入っていなくても判別できるか。 △ 電源が入っていなければ判別できない。電源が入っていなければ、最後に使用 した中継局までの記録が残っている。 6 □ 小型漁船に現在携帯電話がどの程度普及しているかという正確なデータは、な いと思うが、ある漁協で聞いてみたところ、現在約半数程度であり、なお増加傾 向にあるという回答があった。 ウ イパーブ等の機器 「イパーブ等の機器」について、水洋会の中村委員が小型船におけるその現状を説 明(小型船用イパーブのリーフレット配布)し、これに対して、次の質疑応答、意 見等があった。 ◎ 小型船用イパーブの価格、普及状況等はどうか。 ○ 価格は通常のイパーブの半分程度に設定されている。小型船用イパーブの搭載 対象船舶は、300 隻程度であり、販売台数も大体その程度である。 ◎ 通常のイパーブと小型船用イパーブとの違いとしては、電池の時間が短いこと と、自動離脱装置が付いていないことか。 ○ そのとおり。スペックとしては、国際基準があるので、それを充たさなければ ならないのが現状である。 ○ 最近では、イパーブに GPS を組み込み、位置精度を向上させたものがあると 聞くが。 ○ そのとおり。既に外国のメーカーにおいては製品化されている。 ◎ イパーブの位置精度を向上させても、イパーブと遭難船の船体が常に同じ場所 にある訳ではないということが、別の問題としてある。 エ 非 GMDSS 船の海難事例 「非 GMDSS 機器の搭載を義務付けられていない小型船舶の海難事例等」につい て、海上保安庁警備救難部救難課が資料GM(00)1−5 により説明し、これに対して 次の質疑応答、意見等があった。 ○ イパーブが発射されなかった海難と発射された海難の「到着時間」を比べると、 発射された海難の方に時間が長いものが多いが、これは何故か。 △ 「到着時間」は、海上保安庁が海難の発生を認知してから救助勢力が現場に到 着するまでに要した時間である。イパーブを使用した船舶つまりイパーブを搭載 する船舶は、一般的に遠くの海域まで出て行く船舶であり、イパーブを搭載しな い船舶は主に沿岸域を航行する船舶である。従って、イパーブを使用した海難事 例で、到着時間が長くなっているのは、遠くまで行くのに時間を要しているとい うことである。 「発見時間」は、海難の発生を認知してから海難船舶を発見する までに要した時間であるが、これを見ると、イパーブを発射しない海難は、沿岸 域での発生であるにも関わらず、多くの時間を要していることが分かる。 オ イパーブ以外の機器 MCA(Multi−Channel Access)無線について、移動無線センターの西沢委員が、 投下式レーダートランスポンダー(サート)について、日本船舶品質管理協会の蛭 7 子委員が、また GPS 組み込み型携帯電話について、ワムネットサービスの古屋委員 がそれぞれ概要を説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 (投下式レーダートランスポンダーについて) ○ 価格はどの程度であるか。 ○ 具体的には未だ設定していないが、10 万円以下を目指している。こういった機 器の場合、ある程度まとまった数を作ることになれば、1 台当たりの単価は安く なる訳であり、どの位普及させられるかが問題である。 ○ 14∼15 年前に、試験的に 200 台ほどを漁船に搭載させてみたことがある。当 時は、自動離脱式の、かなり大きな物で、高価でもあったが、性能的には良いも のであったと記憶している。 ⑦ 議題 2「遭難時緊急時の連絡手段、イパーブ又はそれに代わる機器の自主的な搭載 に関する意識等についての実態調査」及び議題 3「小型船舶に搭載すべき機器として 既存の機器の利用及び新たな機器の開発の検討」 上記 2 議題について、委員長から具体的な検討を、作業部会において行うことの指 示があり、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 ○ アンケート調査は、質問の仕方によってその意図が解答者に伝わらないことが 多々あるので、その点特に注意する必要がある。また、既に何らかの通信機器を 保有している者に対し、更に追加でもう一つの設置を求めるのは難しいと考える。 従って、既存の機器に新たな機能を加えることで、より迅速、確実に救助機関に 通報できるようにするといった方向での検討が有効ではないか。例えば、携帯電 話などは、現在広く普及しているので、これにボタン一つで最寄りの海難救助機 関に遭難通報を発信するといった機能を付加する等も方法としてあると思う。 □ 別の委員会の関係で調査した結果がここにあるが、20 総トン数未満の漁船では、 距岸 12 海里以内での発生が全体の 88 パーセントである。漁船全体でも距岸 12 海里以内での発生が全体の 82 パーセントとなっている。携帯電話の通話可能エ リアを考えると、当委員会において携帯電話に関する検討が、当然必要であろう と考える。緊急の場合のみ使用する機器の普及を図ることは、確かに難しいと思 う。 △ 携帯電話に関する検討は、結構であるが、携帯電話の元々の使用目的、機能と いったことを踏まえたうえでの議論とする必要がある。 □ 携帯電話に例えば防水性といった機能を付加することにより、海上での緊急連 絡手段をより確保できる訳で、そういった検討は意味あることと考える。 △ 携帯電話に係る種々の規制もある訳で、単に広く普及しているから、これを利 用するという考えは如何なものか。 ○ 携帯電話にも種々の制約があり、携帯電話だけあれば、他の通信手段は一切必 要ないという事にはならない訳であるが、緊急時に使用できる連絡手段の一つで 8 ある。そういったことを踏まえてアンケート調査を実施し、また結論に持ってい って欲しい。 □ 携帯電話の議論が長くなったが、本委員会としては、携帯電話を含めて種々の 通信システムを検討し、小型船舶に最適な通信連絡体制を考えるということで認 識している。 ◎ 実際には色々な面で種々の規制が存在し、実施に問題があることも出てくると は思うが、委員会としては、先ずそういった制約に捕らわれず、自由な発想で検 討していこうという趣旨であるので、ご理解いただきたい。 ⑧ その他特段の意見なく委員会を終了した。 2.1.2 第1回作業部会議事概要 (1) 開催日時及び場所 日 時:平成 12 年7月 31 日(月)1400 ∼ 1630 場 所:日本海難防止協会会議室 (2) 議 題 ① 小型船舶の緊急連絡手段等に関する意識調査の実施 ② 小型船舶に搭載すべき通信機器の検討 ③ その他 (3) 出席者 ① 委 員 庄司 和民 荒井 郁男、中村 勝英、高野 武王、原 美都雄、片山 泰夫、蛭子 徹也、宮原 邦 之、古屋 博司(代理:畑 武彦) ② 関係官庁 池田 佳史(代理:板垣 正志) 、磯谷 兵衛(代理:森部 賢治)、渡部 典正(代理: 宮尾 努) 、冨賀見 栄一(代理:中村 公亮) ③ その他 松瀬 博文 ④ 事務局 田島 邦雄、菅野瑞夫、池嵜 哲朗 (4) 資 料 ① GM(00)1W−1 平成 12 年度調査研究委員会作業部会名簿 ② GM(00)1W−2 遭難時における連絡手段の確保に関する意識等の実態調査実施要 領(案) 9 (5) 議事概要(◎:委員長 ○:委員 △:関係官庁 □:事務局) ① 平成 12 年度調査研究委員会作業部会名簿について、事務局が資料 GM(00)1W‐1 により説明するとともに、郵政省電気通信局電波部衛星移動通信課長の本作業部会 への参加について提案し、承認された。 ② 作業部会長に、委員会委員長である庄司委員が選出され、以後作業部会長により議 事が進行された。 ③ 議題 1「小型船舶の緊急連絡手段等に関する意識調査の実施」について、事務局が 資料 GM(00)1W‐2 により説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 (実施要領(案)について) ○ 「目的」のところには、本委員会の目的と実態調査の目的が含まれているが、 その関係が整理されていないのではないか。 □ 事務局としては、2 行の最後「既存機器…」から以降の部分が最終的な目的で、 それ以前がそのため実態調査の内容という考えで作成している。 ○ それであれば、前段と後段を入れ替えては。 ◎ この内容は、後段が目的で、前段がそのための手段という関係である。従って、 順序はこのままとし、1 行目の最後から 2 行目にかけての「…、小型船舶への自 主的なイパーブ又はそれに代わる機器の搭載に関する意識を調査し、…」の部分 を、 「…、小型船舶への自主的なイパーブ等の搭載に関する意識の調査を行って、 …」と修正することで、目的と手段の関係を明確にするのが良い。 □ そのように修正する。 △ 標題には、「遭難時における」という言葉が入っているのに対し、目的の中には 入っていない。目的の内容も合わせた方が良いのではないか。 ◎ 指摘のとおりと思う。目的の 3 行目「…小型船舶の最適通信連絡体制…」を「… 小型船舶の遭難時における最適通信連絡体制…」と修正することでどうか。 □ そのように修正する。 ○ この要領(案)の中に、 「イパーブ」と「EPIRB」が混在しているので、整理 した方が良い。 ◎ 要領(案)に最初に登場した時に、「イパーブ(EPIRB)」とし、以後カタカナ のイパーブのみを使用することでどうか。 □ そのように修正する。 ○ アンケート調査を実施する数はどの位か。 □ 全国を8地方に分け、それぞれの地方で漁船、プレジャーボート各 50 隻、従 って、合計各 400 隻としている。また遊漁船については、全国で合計 50 隻程度 の調査を予定している。 10 (アンケート(案)について) ◎ アンケート用紙の前に、お願いのための文書といったものを添付するのか。 □ 調査の目的、調査の対象、記入上の注意事項といったものを示した文書を添付 するつもりでいる。 ◎ それならば、アンケート用紙冒頭の※部分は不要ではないか。 □ ご指摘のとおりと思う。削除する。 ○ 問 1 は、誰に対する問なのか不明確である。 □ 当該船舶の船長に対する問であるが、説明が必要と思われるので、理解できる よう説明を入れる。 ○ 小型漁船に対する調査について、具体的にはどのように実施するのか。 □ 全国を8地方に分け、全漁連のご指導を受けて各地方ごとに4、5個所の漁協 を選定し、各漁協で所属船 10 隻程度のアンケート調査を実施していただく。ア ンケート用紙は、当協会から直接各漁協あて送付し、アンケート用紙の回収につ いては、各漁協で取りまとめて当協会へ送付いただくか、解答者に直接投函して もらうか検討する。なお、各漁協の担当者には、なるべく多種類の船舶からアン ケート結果が得られるよう依頼するつもりである。 ○ 各漁協に対しては、例えば総トン 0∼5 で何隻、同 5∼10 で何隻というように なるべく具体的に指示を与えて欲しい。また、活字をもっと大きくして欲しい。 □ 了解した。そのように明示する。 ○ 回答する側に立って、なるべく平易な表現でお願いしたい。例えば、「受有する」 、 「運航する」というよりは、 「現在お持ちの」 、「船を使用する」という方が一般 的ではないか。また、経験年数については、例えば 4 級で 10 年、その後 1 級を 取得して 10 年といった例も考えられるので、どの経験年数を記載するのか注意 書きが必要である。 □ 見直したうえで、配慮する。 ○ 遭難等の経験に関しての問があるが、遭難等というと例えば海上保安庁に救助 を求めざるを得ないような大きな事故を連想するのではないか。海難等以外でも 通常と異なる状態となった時、どのような通信を行ったのかを広く聞けるよう言 葉を考えた方が良い。 □ 了解した。そのように修正する。 ○ イパーブ等種々の機器の存在を、何を通じて知ったか、という問があり、マリ ン雑誌、ボート販売店という回答項目が用意されているが、ここに例えば漁協、 造船所といった項目も必要ではないか。 □ 検討して整理する。 ○ 問 13 は、「遭難時等緊急の場合に有効な既存通信機器として…」として、携帯 電話も挙げられているが、携帯電話を緊急の場合の有効な既存通信機器とするの 11 は、如何なものか。 △ 「有効な」を削除することでどうか。 ○ 「緊急の場合に使用できる既存通信機器として…」程度の表現でどうか。 ○ 同じ項目で、携帯電話について「搭載」という言葉は適切ではないので、修正 願いたい。 □ それぞれそのように修正する。 ○ 該当する項目に○を付ける形よりは、四角の欄を設けてそこにチェックする形 の方が美しいのではないか。 □ そのように修正する。 ○ 問2の船舶の種類について、③の遊漁船の中に遊漁の専用船と漁船兼用船の双 方が入るようになるが、遊漁専用船だけのデータが分かるようにこの項目は専用 船だけとした方が良い。 □ 確かに兼用船の通信機器の状況等は、漁船と同様であり、遊漁専用船の特異性 を見るためには、③の項目は遊漁専用船のみとした方が良いと考えるので、その ように修正する。 △ 問2の船舶の種類において、プレジャーボートの「その他」には、どのような 船舶が入るのか。 □ 今回の調査においては、水上オートバイ、無動力船等それほど沖合まで進出し ないであろうものは、対象としていないので、実態としてはないものと思われる。 従って、「その他」は削除する。 △ 問 15 において、「現在、小型船舶においても携帯電話が広く普及していますが、 …」のところは、小型船舶に普及している訳ではなく、小型船舶に乗り組む人の 間に普及しているのであるから、表現が適切ではない。また、同問の(3)として、 携帯電話の海上での使用に係る新たな機能を問うているが、携帯電話のサービス は元々陸上でのものであって、現段階ではその一部が海上で使用できるに過ぎな い状況である。携帯電話に何らかの機能を付加するといった検討は、将来的には 有り得ない訳ではないが、現時点で色々なアイデアが出てきても、それを直ぐに 製品に反映させることはできない訳であるから、この質問の仕方は検討の必要が ある。 ◎ 「現在、小型船舶においても携帯電話が広く普及していますが、…」の部分は なくても意味は通じるので、削除してはどうか。また、携帯電話について、実現 可能かどうかに関わらず、あれば便利だというアイデアを聞くのは、参考になる ことなので、この設問は残して良いと思う。 ◎ 問 16(2)のカッコ内に「例えば腕時計型」とあるが、これは「例えば腕時計型 機器等」とした方が分かり易い。 □ それぞれご指摘のとおり修正する。 12 ○ 問 13 の機器の中に、漁業無線があるが、一口に漁業無線の機器といっても色々 な型のものがあるので、少なくとも搭載しているものが SSB か DSB か判別でき るようにして欲しい。 □ ご指摘のとおり新たな項目を設ける。 ◎ 問6の乗船者数にかかる質問の意味は何か。 △ この質問は、主として一人のみで航海する人が、どの位あるか知りたいという ことで用意した質問である。 ◎ それであれば、遊漁船については、乗客を含まない旨の注意書きが必要であろ う。 ○ 一人乗り船の割合を調べることが主目的であれば、回答は、1 人、2 人、3 人以 上程度の区分でも十分ではないか。 ○ 参考資料の中に携帯電話の説明が入っていないが、これを入れる必要がある。 □ それぞれご指摘のとおり修正する。 △ 先程の問 15(3)において、携帯電話に求める新たな機能の質問であるが、ユー ザーの一方的な要望を突き付けられる形になるのは、関係官庁の立場では非常に 苦しいところであり、やはり質問の仕方を検討して欲しい。 ◎ これについて、(3)として項目を設けるのではなく、(1)の一部として「携帯電話 にあれば便利だと思う機能があれば記入下さい」程度の質問とすればどうか。 □ そのように修正する。 ○ 問 14 において、「…現在、殆どの小型船舶には、イパーブを搭載する義務はあ りませんが、…」という部分があるが、今回の調査対象は、イパーブの搭載義務 のない小型船舶としているのであるから、この一文は必要ないのでは。 □ ご指摘のとおりと考えるので、削除する。 ◎ この問には冒頭に「イパーブを搭載していない方に伺います。」といった一文が 必要と考える。 □ ご指摘のとおり修正する。 ○ 問 16 の(2)に「海中転落した場合、自動的に遭難信号を発信するような機器」 とあるが、実際にそういった機器が存在するのか。 △ 米国において似たようなものが実用化されている。航空機のパイロット等が着 水した場合に、狭い範囲に限られるが、121.5MHz の遭難信号を発射するもので、 価格は 70 数万ということである。 ④ アンケート用紙については、指摘のあったところを事務局で修正し、委員長確認の 後成案とすることで合意された。また、アンケート用紙の具体的な配布先について は、海上保安庁、全漁連、海レ協からの意見を元に事務局が配布先リストを作成し、 その他の委員の方々に送付のうえ了解を得て発想することで合意された。 ⑤ 議題 2「小型船舶に搭載すべき通信機器の検討」について、事務局が、本議題に当 13 たっては、既存通信システムの問題点の整理、既存のイパーブに変わる機器に開発 といったところを、先ず専門の技術者の方々に検討いただきたく、水洋会にこの件 依頼したい旨提案したところ次の質疑応答、意見等があった。 ○ 本件検討するに当たっては、国際的基準が避けて通れない問題であり、関係官 庁として海上保安庁にもその作業班に参加いただきたい。水洋会として、先ず既 存の通信システムの問題点といったことを取りまとめて見たいと思う。 ◎ 先ず既存の通信システムの問題点を全て洗い出して、そのうえで実行可能なも のを選択し、その方策を検討していくという方法であろうと考える。その方向で 水洋会にお願いしたい。 ⑥ その他として次の質疑応答、意見等があり、午後 4 時 30 分委員会を終了した。 △ アンケート調査に話を戻すが、現在の携帯電話のシステムは、既に陸上用とし て完成されたものであり、これに対して海上での使用のため改造、新たな機能の 付加といった提言に結びつく可能性のある質問の仕方は、やはり避けていただき たいと考える。 △ 携帯電話のユーザーが、海上においてどういった機能を望んでいるのか調査し、 その結果可能なことについては、改良を提言するというのは特に問題ないのでは ないか。 △ 既存の携帯電話のシステムを海上での使用のために変更することは、非常に困 難であり、実現性が薄い。 ◎ 現行のシステムでは、種々の制約があって不可能なものでも、将来的に可能に なることが有り得る訳で、将来に繋がる検討を行うということでご理解いただき たい。 ○ 例えばプレジャーボート用の無線として、マリン VHF があるが、これには免 許が必要、検査が必要といったことがネックとなって、あまり普及していないの が現状である。しかし、これについても現行法下でそうなっているから仕方がな いと処理するのではなく、将来的にどうしていくかといった検討をすべきではな いか。 ○ 携帯電話の場合、海上でのサービスが保証されていないという現状で、安全確 保のための手段として検討することを危惧するのは理解できるので、そういった 配慮も必要であろう。 ◎ そういった色々な問題があり、またそれに対する色々な方策がある、それらを 全て抽出し、検討したうえで小型船舶に最適な通信連絡体制を考えていかなけ ればならないと思うので、どうかご協力をお願いしたい。 14 2.1.3 第2回作業部会議事概要 (1) 開催日時及び場所 日 時:平成 12 年 10 月 25 日(水)1400 ∼ 1600 場 所:日本海難防止協会会議室 (2) 議 題 ① アンケート調査の中間報告 ① 作業班の設置 ③ その他 (3) 出席者 ① 委 員 庄司 和民 荒井 郁男、中村 勝英、高野 武王、原 美都雄、片山 泰夫、蛭子 徹也、宮原 邦 之 ② 関係官庁 池田 佳史(代理:板垣 正志)、渡部 典正(代理:平田 友一)、冨賀見 栄一(代 理:中村 公亮) ③ その他 西分 竜二、松瀬 博文 ④ 事務局 菅野瑞夫、池嵜 哲朗 (4) 資 料 ① GM(00)2W−1 平成 12 年度調査研究委員会作業部会名簿 ② GM(00)2W−2 アンケート調査の中間報告 ③ GM(00)2W−3 小型船に搭載すべき通信機器の検討 作業班の設置 (5) 議事概要(◎:委員長 ○:委員 △:関係官庁 □:事務局) ① 前回の第 1 回作業部会において、郵政省電気通信局電波部衛星移動通信課長の本作 業部会への参加が承認されたことに伴い、事務局が、変更した作業部会名簿を資料 GM(00)2W‐2 として提案し、承認された。 ② 議題 1「アンケート調査の中間報告」について、事務局が資料 GM(00)2W‐2 によ り、当日までに集計の終了した 400 隻分の結果を説明し、これに対して次の質疑応 答、意見等があった。 ○ アンケート回答者の船種別、トン数別の構成はどうなっているか。 □ 本来それを2項目として添付する予定であったが、事務局の手違いにより今回 の資料には入っていない。次回報告には間違いなく入れるのでご容赦願いたい。 ○ アンケート用紙を約 1,400 通配布したとのことであるが、地域別の配布数はど うなっているか。 15 □ 全国を 8 地域に分け、各地域殆ど均等になるよう配布した。 ○ 回答者の受有する海技免状を見ると、1 級が非常に多い。またプレジャーボー トの年間の航海日数については、従来の調査では 15 日程度、マリーナを通じて 実施した調査で 30 日程度という結果だったのに対し、今回の調査では 40 日か ら 60 日が最も多く、従来の年間航海日数の平均よりかなり多いという気がする。 これは、よく整備されたマリーナを調査対象にしたことによるものか。 □ プレジャーボートに対する調査は、殆ど全国の小型船舶安全協会(小安協)を 通じて実施しており、従って、回答者も殆どが小安協の会員であって、一般の方 に比べて活発に行動され、また安全意識も高いということがいえるのかもしれな い。 ○ 携帯電話に関して、 「混み合ってくると、繋がり難くなる。 」という意見がある が、これはどういう原因によるものか。 ○ 限られた海域においては、使用できる中継局も限られる訳で、その海域で多数 のものが携帯電話を使用すると、中継局が処理できる容量を越えてしまって、繋 がらなくなるという現象をいっているのであろう。 △ 陸上では、人口密度が高いので、中継局も高密度に設置されているが、海上で は、使用できる中継局が限られ、一つの中継局に集中するためではないか。 ◎ 逆に、見通しの良い場所では、複数の中継局にカバーされるため、携帯電話が 繋がらないという現象も見られる。 △ 例えば、東京湾がそうである。 ○ 海上での使用を前提として、中継局が配置されていないためと考える。 ○ 問 10 の回答として、無回答が非常に多いが、これはどういうことか。 □ この設問は、緊急事態の経験に関連したものであり、緊急事態を経験していな い者については、全て無回答に計上している。 ◎ 緊急事態を経験していない者を、無回答としてこの表に入れるのはおかしいの で、それを除いた表にすべきである。 □ ご指摘のとおりとする。 ◎ この回答者は、ほぼ全員が海技免状受有者であるにも関わらず、イパーブ及び 小型船用イパーブを知らない者が、半数以上いるというこの事態をどう理解する べきか。海技免状取得の際の研修、更新の講習等において、これを教えていない ということではないか。現在、船に乗る者にとって、GMDSS の知識は必須であ り、この教育を一層徹底して欲しいと感じる。 ◎ 全体的に、通信手段として携帯電話に対する期待が大きいという気がするが、 この点については如何か。例えば、海上における使用可能エリア等を調査したも のがあるか。 △ 一部の限られた海域で調査したことはあるが、各携帯電話会社によってまちま 16 ちであり、基準となるような資料はない。地元のユーザーは多分良く知っている と思う。 ○ NTT では、携帯電話の使用可能エリアを図にしたものがあるが、おおざっぱな もので、入江や岬の陰等の不感地帯については、はっきり分からないというのが 現状である。 □ 海上における携帯電話の使用に関する実態、例えば今話に出た使用可能エリア 等もそうであるが、こういった分かっていない部分、問題点、改善策等を調査し ていく必要があると感じている。現在では、漁業無線を搭載している漁船におい ても、陸上との連絡は、専ら携帯電話を使用しているという話も聞いている。 ○ マリン VHF の不便に関して、「国際 VHF とチャンネルが共通でない。 」という 意見があるが、これは本当か。 ○ 実際には、国際 VHF と共通のチャンネルがあり、通話は可能であって、この 意見は適切でないと思う。 ○ マリン VHF の普及を妨げている原因と思われる意見がいくつか挙げられてい るが、最も大きな問題は、資格と検査が必要だということだと考える。これをど うしていくかは、今後の課題だと思う。 ○ 最後に参考意見が全て列挙されているが、これを体系的のまとめてはどうか。 □ 最終的には何らかの形でまとめるように考えてはいるが、意見が多岐に亘って いるために非常にまとめ難く、取り敢えず本日はこのような形とした。最終報告 においては整理することとしたい。 □ 参考意見の中に、救命胴衣と携帯電話の組み合わせに言及しているものが見受 けられるが、現在、漁船からの海中転落防止策を検討する他の委員会において、 そういった組み合わせについて検討されているところである。 ○ アンケート調査に添付されている参考資料を見ると、様々なシステムがあるの に驚くとともに、これらを上手く整理して有効なシステムを絞り込むことができ ないかと思う。 △ これらのシステムがどの程度普及しているかを見るために、例えば、それぞれ の機器の販売台数が分かる資料はないか。 ○ メーカーでも総販売台数については分かると思うが、それがどの地域で、どう いった船舶に搭載されているかというところまでは分からない。 △ 郵政省にそういった資料があるかを確認してみる。 ③ 議題 2「作業班の設置」について、前回の作業部会において、委員長から指示のあ った事項に対し、作業班長である水洋会の中村委員が、資料 GM(00)2W‐3 により 説明し、これに対して、次の質疑応答、意見等があった。 △ 検討の対象とする通信機器は、船体に装備するもの、個人が装着するものの両 方を含めてという理解で良いか。 17 ○ そのとおり。小型船舶についていえば、通信機器は究極的に個人個人が携帯す る形のものが望ましいと考えている。また、パーソナル化することにより、販売 台数が増加し、価格が抑えられる効果もある。 ④ その他特段の意見なく、作業部会を終了した。 2.1.4 第 3 回作業部会議事概要 (1) 開催日時及び場所 日 時:平成 13 年 2 月 6 日(火)1000 ∼ 1230 場 所:日本海難防止協会会議室 (2) 議 題 ① アンケート調査の最終報告(案)について ② 平成 12 年度事業報告書(案)について ③ その他 (3) 出席者 ① 委 員 庄司 和民 荒井 郁男、中村 勝英、原 美都雄、蛭子 徹也、宮原 邦之、古屋 博司 ② 関係官庁 渡部 典正(代理:平田 友一) 、冨賀見 栄一(代理:中村 公亮) ③ その他 西分 竜二、松瀬 博文 ④ 事務局 菅野瑞夫、池嵜 哲朗 (4) 資 料 ① GM(00)3W−1 平成 12 年度調査研究委員会作業部会名簿 ② GM(00)3W−2−1 第 1 回委員会議事概要(案) ③ GM(00)3W−2−2 第 1 回作業部会議事概要(案) ④ GM(00)3W−2−3 第 2 回作業部会議事概要(案) ⑤ GM(00)3W−3 小型船用衛星 EPIRB の検討 ⑥ GM(00)3W−4 アンケート調査の最終報告(案) ⑦ GM(00)3W−5−1 平成 12 年度「非 GMDSS 船遭難時における連絡手段の確保等 に関する調査研究」事業報告書骨子(案) ⑧ GM(00)3W−5−2 非 GMDSS 船遭難時における連絡手段の確保等に関する調査 研究(報告書項目案) (5) 議事概要(◎:委員長 ○:委員 △:関係官庁 18 □:事務局) ① 官庁の省庁再編により組織の改変、名称の変更等があったことに伴い、事務局が、 変更した委員会及び作業部会名簿を資料 GM(00)3W‐1 として提案し、組織の名称 について、いくつかの修正の後承認された。 ② 第 1 回委員会議事概要(案) (GM(00)3W‐2‐1)について、事務局がこれについ ては第 2 回委員会において審議いただくが、何か指摘等があればそれまでに連絡い ただきたい旨依頼した。第 1 回及び第 2 回作業部会議事概要(案)について、事務 局が資料 GM(00)3W‐2‐2 及び GM(00)3W‐2‐3 により説明し、これに対して誤 字、誤植等の指摘があったほか、特段の意見なく承認された。 ③ 議題 1「アンケート調査の最終報告(案) 」について、事務局が資料 GM(00)3W‐4 により説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 △ 例えば、問 14−(1)のように、複数回答の回答数をパーセンテージで表す場合、 母数を本来のものに合わせないと正しい比率が出ないと思う。 □ ご指摘のとおりと考える。他にも複数回答の問があるので、併せて表現を修正 する。 ○ 漁船では、20 総トン未満といっても大きさによって活動海域が大きく異なって いる。例えば問 11 の「緊急通信機器の必要性」に関する問への回答を見ると、 携帯電話で十分とする意見が多いが、実際には活動海域によって意見が異なって いるものと思う。少なくとも携帯電話のサービスエリア外で活動する漁船は、携 帯電話で十分とは思っていないはずである。そういった点が統計の難しいところ である。 ○ 遊漁船においては、衛星船舶電話がかなり使用されているようであるが、今回 の調査においては、使用機器として衛星船舶電話の項目が設けられていない。衛 星船舶電話について、回答者は携帯電話として回答している可能性もある。 □ ご指摘のとおり、今回の調査では衛星船舶電話の項目を設けていないので、衛 星船舶電話の使用者がどの程度なのか判別はできない。 ○ 回答者の多くが、携帯電話のサービスエリア内を活動海域としていることから、 携帯電話があれば十分という意見が多くなっているものと思う。しかしながら、 携帯電話のサービスエリアを越える海域で活動するものが、どういった意見を持 っているのか分類できればと思う。 □ 今回の調査の回答者の所有する船舶を見ると、7 割以上が 5 トン未満であり、 必然的に活動海域も約 7 割が 10 海里未満となっている。これらの方々は携帯電 話で十分という意見を持たれても不思議ではないと思う。 ○ 今後の本委員会の方向として、多数を占める携帯電話のサービスエリア内を活 動海域とする船舶を対象とするのか、その外側まで出て行く船舶を対象とするの かによって、対策が大きく違ってくると考える。 □ 本委員会が対象とする船舶は、非 GMDSS 船ということであり、漁船でいえば 19 100 海里以内までを対象海域とする必要がある。沿岸域においてはどういった緊 急連絡手段を普及させるのが良いのか、それ以遠についてはどのような手段が良 いのか、既存の通信システムの改良、新たな通信機器の開発を含めて幅広く検討 していく必要があるものと考える。 ○ 目標とするのが将来なのか、近未来なのかということによっても対策が変わっ てくると思うが。例えば一人乗り漁船における海中転落事故への対応といったこ とも視野に入れて検討していただければと考える。 □ 先ずは現在の科学技術を元として、現状の問題点に、近未来的に対応すること を第一に考えていきたいと思う。将来的な対応については委員の方々のご意見を 頂きながら、提言その他の形を考えていきたいと思う。 △ 問 12 のイパーブに関する知識であるが、余りに多くの者が知らないと回答し ているのに驚く。特に漁船については新生丸海難事故を契機として、関係団体が 周知を図っているにも関わらず、7 割近くの者が知らないと回答しているのは問 題であり、何らかの方法を検討する必要があるのではないかと考えられる。 □ 今回の調査対象は、非 GMDSS 船ということで、イパーブの搭載義務がないこ とから、関心も薄いということがいえるのかもしれない。 ◎ 今回の調査の回答者には、1 級小型船舶操縦士の免状受有者が比較的多いにも 関わらず、これだけ多くの者が知らないというのは、やはり問題であろう。アン ケートの結果、携帯電話が非常に普及していることが分かるが、その割に携帯電 話の機能に関しての改良要望が多くないという気がする。これは、サービスエリ ア等現在の機能を十分理解した上で、現状にある程度満足しているのではないか とも思う。 □ 以前、4つの地方の漁業者に対して、携帯電話の海上での到達距離を尋ねたと ころ、その地方により様々であり、10 数海里程度まで通話できるというものが ある一方で、1∼2 海里程度しか届かない海域もあるとのことであった。海上に おける携帯電話の使用可能エリアを明確にする必要があり、それによって今後の 対策を検討する必要がある。 ○ 相模湾の中心付近で実験した際には、10 海里以上の到達距離があった。しかし、 その時同時に神津島から漁船を出港させ、これとの間での通話実験を行ったとこ ろ、漁船が近づいてくるにも関わらず、漁船が中継局との島陰に入ると通話でき なくなった。そういった危険性があると思う。 ○ 携帯電話各社間でも海上での到達距離には差があり、海上での使用に関する各 社の考え方を確認してみる必要がある。 ◎ 実態として、携帯電話の海上での使用者がこれだけ多くいるということは、海 難救助のために、これを緊急時の連絡手段として活用していくのは当然のことと して、関係先と調整していくべきであろう。 20 ○ 携帯電話に関して、海上で確実に使用できる範囲が明確になっていないことが、 通信の確実性を考えた場合に問題となる訳である。 △ 昨年、沖縄地方で、 「レスキューIT ネットワーク」という漁船も含めた小型船 舶向けのサービスが計画された。これは小型船舶の運航者が、自船の行動計画等 をメールで送ると、プロバイダーのサーバーにそれが蓄積され、その登録された 船舶に対して安全情報が配信されるものである。また船舶に何かトラブルがあっ た場合、その状況をメールで送ると、その情報が海上保安庁にも送信されるし、 付近の船舶に対しても連絡され、必要な救助が受けられるというものである。こ のシステムの実施の前提として、携帯電話の海上での使用可能エリアを明らかに して欲しいと携帯電話各社に依頼したが、結果として明確な解答が得られなかっ たという例がある。 □ 海上での利用可能エリアの明確化については、現場の利用者のニーズとして、 関係団体等が取りまとめ、関係官庁へ要望していく等の方法が必要であろう。 ○ 海上での携帯電話利用者のためにもある一定のサービスエリアを確保すること が理想であると思う。また一方では、携帯電話のサービスエリアを越える海域で 活動する船舶に対し、例えばマリン VHF の普及を図るというのも方法であると 思う。 ◎ アンケート調査についてまとめられた結果は、個々の質問に対する全体、漁船 或いはプレジャーボートの回答をまとめたものであるが、例えばいくつかの条件 を付してその対象について解答がどうなっているかといった分析は可能か。 □ それは可能である。 □ 海上保安庁では、携帯電話の海上での使用可能エリアを全国的に調査し、取り まとめたような資料があるか。 △ 海上保安庁としては、全国的な資料はない。携帯電話各社は、それぞれ独自に 調査し、それを資料化しているようであるが、外部には公表していないのが現状 である。 ○ 中継局のアンテナの位置、高さから海上での到達距離を算出することも可能で はあると思う。 □ アンケート調査の結果については、 必要な細部の分析を行うとともに、 問題点、 意見等を集約して、報告書に反映させたいと考えている。 ◎ 詳細な分析については、必要に応じて来年度に実施しても良いとも思う。 ④ 作業班資料「小型船用衛星 EPIRB の検討」について、作業班長である中村委員が、 資料 GM(00)3W‐3 により説明し、これに対して特段の意見等はなかった。 ⑤ 議題 2「平成 12 年度非 GMDSS 船遭難時における連絡手段の確保等に関する調査研 究事業中間報告書」について、事務局が資料 GM(00)3W‐5‐1 及び 3W‐5‐2 によ り説明し、これに対して特段の意見等はなかった。 21 ⑥ その他特段の意見なく作業部会を終了した。 2.1.5 第 2 回委員会議事概要 (1) 開催日時及び場所 日 時:平成 13 年 3 月 7 日(水) 1000 ∼ 1230 場 所:日本海難防止協会会議室 (2) 議 題 ① 平成 12 年度「非 GMDSS 船遭難時における連絡手段の確保等に関する調査研究」 中間報告書(案) ② その他 (3) 出席者 ① 委 員 庄司 和民 荒井 郁男、高橋 勝、中村 勝英、原 美都雄、片山 泰夫、蛭子 徹也、 西沢 徹、宮原 邦之、山崎 保昭、喜多 一記 ② 関係官庁 矢萩 強志(代理:田口 昭門)、木澤 隆史(代理:竹内 智仁)、 伊藤 茂(代理:池田 隆之) 、池田 佳史(代理:板垣 正志) 、渡部 典正 (代理:秋好 晋) 、冨賀見 栄一(代理:中村 公亮) 、津端 英樹(代理: 川田 忠宏) ③ その他 遠藤 修一 ④ 事務局 田島 邦雄、菅野 瑞夫、池嵜哲朗 (4) 資 料 ① GM(00)2-1 委員会及び作業部会名簿 ② GM(00)2-2 第1回委員会議事概要(案) ③ GM(00)2-3 第3回作業部会議事概要(案) ④ GM(00)2-4 平成 12 年度「非GMDSS船遭難時における連絡手段の確保等に 関する調査研究」中間報告書(案) (5) 議事概要(◎:委員長 ① ○:委員 △:関係官庁 □:事務局) 官庁の省庁再編により組織の改変、名称の変更等があったことに伴い、事務局が、 変更した委員会及び作業部会名簿を資料 GM(00)2-1 として提案し、特段の意見なく 承認された。 ② 第 1 回委員会議事概要(案)及び第 3 回作業部会会議事概要(案)について、事 務局が、資料GM(00)2−2 及び同 2−3 により説明し、これに対して発言の内容、機 22 器等の名称、誤字誤植等に関するいくつかの修正提案があり、これを修正すること で承認された。 ③ 議題 1「平成 12 年度 非 GMDSS 船遭難時における連絡手段の確保等に関する調 査研究中間報告書(案) 」について、事務局及び作業班長である中村委員が、資料G M(00)2−4 により説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 ○ 第 3 章 3.1.1 の最後の部分で、「…非 GMDSS 船の海難実態と乖離していない ものと思われる。 」とあるが、乖離というとかけ離れているという感じがあるの で、言葉を変えた方が良いのではないか。 □ この部分は、殆ど同じだということを述べたい訳であり、表現を修正する。 △ 同じく第 3 章 3.1.1 のところで「沖合い操業」とあるが、こういった場合、通 常水産庁では「沖合操業」と、送り仮名を送らないのが普通である。 □ そのように修正する。 △ 第 3 章 3.3.2 の(8)の④にワムネットサービスが入っているのは、実態と異なる のではないか。 □ アンケート調査にあった意見をそのまま記載したものであるが、ご指摘のとお り実態に合っていないので削除する。 ○ 同じ 3.3.2 の(8)の⑥において、「マリン VHF に国際 VHF とのチャンネルが欲 しい。」とあるが、マリン VHF には国際 VHF と共通のチャンネルがあり、認識 が誤っている。 □ これについても前項同様削除することとする。 ○ 3.4 の標題は、 「…通信機器類の検討」となっているのに対し、その内容はイパ ーブ等の救命設備の方に偏っており、標題と内容が合っていないと思う。海難救 助機関が最も必要としているのは、勿論海難の発生及びその位置を知らせる第一 報であるが、その後の通信設定も大きな問題であり、通信機器についてもう少し 整理して記載する方が良いのではないか。 ○ 今年度においては、先ず海難発生の事実及び位置の通報ということを優先して 検討し、その他の通信機器については、情報の収集に止め、来年度具体的な検討 を実施することとして整理した。中間報告書の項目の立て方を再考する必要があ るかもしれない。 ◎ イパーブは、世界的には通信機器の範疇である。 □ 本委員会の大きな目的としては、イパーブ搭載義務のない小型船舶について、 転覆その他通常の通信機器を使用できない事態を想定し、海難の発生を如何に早 く認知するかを検討することであり、それに重点を置いた形で中間報告書も整理 しているとご理解いただきたい。 ◎ それについては、勿論一つの柱として検討する必要があるものと理解している が、その他の通信機器についての検討も当然必要でありこれをどのようにするか。 23 ○ 遭難に関する通信としては、遭難通報と遭難通信がある訳で、これを整理して おく必要がある。 ○ 先ずイパーブについての検討をするということは結構と思うが、ユーザーの立 場からは、ここで小型船舶に対しては小型船向けの新たなイパーブ搭載で対応す るといった方向付けするような書き方にならないよう配慮願いたい。既存の機器、 例えば携帯電話の利用といったことも、小型船舶にとっては重要と思う。 □ 今後の調査研究の方向については、次の第 4 章において記述することとしてい るので、第 3 章では結論に結びつくような記述は避けるものとする。 ◎ 例えば、小型船舶用として小型船用イパーブというものがあるにも関わらず、 何故この普及が上手くいっていないのかといった理由については、第 3 章で良く まとめられており、今後機器の普及を検討する上での参考になると思う。ただ報 告書の内容としては、3.4.3「その他の機器類の検討」の内容をもう少し充実さ せる必要があると思う。 □ 報告書の構成については、報告書の作成期限も迫っているが、皆様からのご意 見を元に事務局で検討し、修正することとする。 ◎ 第 4 章の中に、「…国民のニーズ…」という言葉が出てくるが、これについて は「…海上活動者のニーズ…」程度に止めるのが良いのではないか。 □ その様に修正する。 ○ 4.2 と 4.3 の順番を入れ替えた方が良いのではないか。 ◎ 4.2 と 4.3 の順番はこのままでも良いと思うが、4.3 の標題は、 「その他の通信 システムの調査研究」ではなく、「他の通信システムの調査研究」とすべきであ ろう。 □ その様に修正する。 △ 本委員会においては、非 GMDSS 船について、遭難時の連絡手段を確保するた めにどうあるべきかを検討するということであり、例としては、現在非適用にな っている船舶に対する GMDSS の適用、また非適用船に対するこれの普及等を 検討検討しても良いと考える訳であり、それによって対策も見えてくるのではと も思う。 ○ それについても来年度の研究課題として認識している。 ◎ 4.2 の標題としては、 「非 GMDSS 船舶用小型イパーブ等の調査研究」としては どうか。また、第 4 章の前文において、 「…船舶・人的被害対応…」とあるとこ ろは、 「…船舶・人的災害対応…」と修正すべきではないかと思う。 ○ 4.2 の「…外国における開発事例の研究…」は、「…外国における開発事例の調 査…」程度に止めておくのが妥当ではないか。 □ そのとおり修正する。 ◎ 4.3 最後の(参考)の部分は、あえて必要ないのではないか。 24 □ ご指摘のとおりと考えるので、削除する。 ○ 資料編のアンケート調査用紙の別添として添付されている「緊急時に使用でき る既存の通信機器」の表の中で、「MCA 移動無線」については、機器名を「MCA 無線」とし、周波数は「352/1500MHz」を「800/1500 MHz」に修正願いたい。 □ その様に修正する。 ④ 本年度最終の委員会に当たり、日本海難防止協会田島常務理事が挨拶を行った。 ⑤ その他特段の意見なく、委員会を終了した。 25 2.2 平成 13 年度 2.2.1 第1回委員会議事概要 (1) 開催日時及び場所 日 時:平成 13 年 6 月 26 日(火)1400 ∼ 1630 場 所:日本海難防止協会会議室 (2) 議 題 ① 今後の調査研究の方針について ② その他 (3) 出席者 ① 委 員 庄司 和民、 荒井 郁男、高橋 勝、中村 勝英、安藤 久司、原 美都雄、片山 泰夫、蛭子 徹也、 西沢 徹、小坂 智規、山崎 保昭、古屋 博司、喜多 一記 ② 関係官庁 木澤 隆史(代理:村上 崇)、伊藤 茂(代理:金子 純蔵) 、池田 佳史、板垣 正 志、渡部 典正(代理:三國 利弥) 、高尾 留雄、岡本 ③ 顕 事務局 津田 眞吾、児林 秀雄、池嵜 哲朗 (4) 資 料 ① GM(01)1−1 平成 13 年度調査研究委員会及び作業部会名簿 ② GM(01)1−2 平成 13 年度調査研究事業計画 ③ GM(01)1−3 平成 13 年度の調査研究方針について (5) 議事概要(◎:委員長 ① ○:委員 △:関係官庁 □:事務局) 平成 13 年度第 1 回委員会の開催に当たり、日本海難防止協会津田常務理事が挨拶 を行った。 ② 平成 13 年度第 1 回委員会の開催に当たり、海上保安庁警備救難部高尾救難課長が 挨拶を行った。 ③ 事務局が各委員及び関係官庁出席者の紹介を行った。また、事務局が資料GM(00)1 −1 の委員会名簿及び作業部会名簿について説明した。 ④ 東京商船大学名誉教授の庄司委員が、本年度の委員長に選出され、以後委員長によ り議事が進められた。 ⑤ 平成 12 年度調査研究事業計画について、 事務局が資料GM(01)1−2 により説明し、 これに対して次の質疑応答、意見等があった。 ○ 「事業の目的」の中で、漁業無線に関する記載に「しかしながら、漁業無線は 無線局からの距離の問題があり、…」とあるが、これは表現が適切ではないので 26 修正願いたい。 □ 表現を検討する。 ⑥ 議題 1「今後の調査研究の方針について」 「今後の調査研究の方針について」について、事務局が資料GM(01)1−3 により説 明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 ⅰ 「非 GMDSS 船用小型イパーブ等の調査研究」 ○ 「イパーブの小型軽量化及び低価格化」については、昨年度の事業において、 外形寸法で現状の 7 割程度、容積で半分程度までの小型化の可能性があり、また 価格面では、生産規模にもよるが、現在の価格の半分程度にする可能性があると の結論を出したところである。今年度の事業において、 「それを具体化する」と あるが、費用との関係で何処までやるかが問題である。一方で、昨年度の調査研 究の結果、イパーブに代わる機器として PLB というものを提案している訳であ り、今年度の事業として、既存イパーブの小型化と PLB の導入検討のどちらに 重点を置いて実施していくべきであると考えているか。 □ イパーブの小型軽量化及び低価格化について、確かに昨年度の調査研究で、ど の位の大きさまで小型化できるとの結果は出てきている。今年度においては、実 際にそれを形にして見て、小型船にどのように搭載するか等を検討する必要があ ると考える。勿論予算も限られているので、その限られた予算の中で何処までの ことができるのか、作業部会で具体的な方策を検討して頂ければと考えている。 一方、船舶用のイパーブについては、昨年度の事業で、小型軽量化、また低価 格化を図ってもこの程度までという一応の結果が出たことから、より小型軽量、 より低価格なイパーブに代わる機器として、PLB が考えられると提案した次第 である。 ◎ イパーブの小型軽量化、低価格化については、ある程度の可能性が示された訳 であるが、これを実際に小型船に搭載することを考えると、自動離脱方式で、自 動発信のブイ方式が望ましいと考える。 「具体化」とは、実際に船舶に搭載する ための検討を行うとの意味ではないか。 □ 小型にしたイパーブを製品化までするということは、現状の予算では困難であ ることは認識している。しかし、検討したイパーブを何らかの形にして見て、こ ういった形状のものをどのようにして小型船に搭載するのが良いか等の検討を 行って頂ければと考えている。 ○ 将来的な搭載の義務化を考えての開発なのか、またあくまで自主的な搭載を念 頭に置いての開発なのか。 □ 義務化といったところまでは考えていない。従来のイパーブより小型軽量で、 低価格のイパーブをユーザーに提案し、その自主的な搭載を促進できればと考え ている。 27 ◎ 本委員会としては、搭載の義務化まで言及するものではなく、小型船の搭載に 適した機器を開発し、万一の事故の際に備えて、その自主的な搭載を促すことを 目的にすべきであろう。 ○ 義務化することに伴い、生産台数が増加、逆に生産コストの低減する訳で、そ の場合の 1 台当りの価格を算出するという必要はないか。 △ 義務化するしないということではなく、小型船の搭載に適した小型軽量また低 価格の新たな機器を開発して、その小型船への普及を図るということが本調査研 究の趣旨と考える。 ○ イパーブの低価格化については、生産ベースで計算して、従来の半額程度とい う一応の推定を出している。半額としても 10 万円を切ることは難しく、アンケ ートにより調査した結果出てきたユーザーが購入したいと思う価格である 5 万 円程度とは、かなりの開きがあるのが現実である。そこで、イパーブに代わる機 器として PLB を考えた訳であるが、あくまでイパーブを試作してみるのか、PLB の導入普及策を検討する方に重きを置くのか、方向を示して欲しい。 ○ プレジャーボートの立場からいえば、どの種のものにしても、新たな良い製品 が出てくれば、それは価格を勘案したうえで購入、搭載を検討する訳で、それを 義務化の方向へ持っていくのは好ましくないと考える。 ◎ 義務化することにより、生産コストは低減されるが、一方で、義務化されると メーカーは低価格化のための競争をしなくなる傾向が見受けられるのも事実で ある。 ○ イパーブの小型化等について、「現行の性能要件を充たすことを前提として、」 とあるが、例えば電気的な性能要件については、IMO 等の基準があってこれを 充たす必要があるが、その他の性能要件では変更可能なものもあるので、この表 現は修正すべきではないか。またその他の性能要件を変更することにより低価格 が図られると考える。 ○ 「現行の」という表現は、適当ではないかもしれないが、意味としては、コス パス・サーサットの性能要件を充たすということであり、最低この性能要件を充 たす必要はある。例えば、周波数安定度を緩和することにより低価格化が図られ るが、それは捜索区域の拡大を招く結果を伴う。こういったことを真剣に検討す るのであれば、関係官庁の意見を頂く必要がある。 △ 海上保安庁の立場としては、小型船が全てイパーブを搭載すれば、捜索が容易 になるのは勿論であるが、これを義務化するというのは別の議論が必要と考える。 ⅱ 「既存のその他通信システムの調査研究」及び「非 GMDSS 船の緊急時における 連絡手段確保のためのグランドデザイン構築」 ○ 「漁業無線、マリン VHF 等既存の通信システムの活用」については、昨年度 から検討作業を実施しているが、未完成なので今年度引き続き作業班の方で検討 28 することとしたい。 ◎ そのように願う。 ○ 海上保安庁の発表した資料によるイパーブを搭載していた海難船舶の救助に要 した時間等とイパーブを搭載していない海難船舶のそれを比較したものを見る と、海難発生から海上保安庁の認知までの時間、認知から現場到着までの時間、 また現場到着から発見までの時間、それぞれイパーブを使用したものに比べて使 用していないものは、はるかに多くに時間を要していることが分かる。何よりも 海難の発生を救助機関が認知できないということが問題であるが、これをもって イパーブの搭載義務化に結びつけるのは無理があると思う。連絡手段の確保につ いては、法的な、或いは技術的なその他種々の問題点がある。法的な問題は別に して、技術的な問題として、ユーザーに受け入れられる新たな機器の開発は、勿 論有効であるが、既存の通信システムの活用によるネットワークの構築、即ちグ ランドデザインの構築が最も重要と考える。その際に、GMDSS 船と非 GMDSS 船の接点を考えたうえで、陸上も含めたネットワークとする必要がある。 ◎ 漁業無線、マリン VHF 等は、海上での船舶用の通信システムである。一方、 携帯電話は当初から海上での使用を目的とした通信システムではないが、今日で は非常に普及しており、各自が何処へ行くにもこれを持ち歩き、海上においても 使用しているという実態がある。これを船舶の非常時の連絡手段として上手く活 用できる方策を検討する必要がある。 ○ グランドデザイン構築のためには、イパーブの代替手段としての各通信システ ムに係る利点欠点等を整理し、それらを見比べながら判断していく必要がある。 ○ 既存の通信システムについて、ご指摘の合った事項を含めて整理検討すること にしているので、グランドデザイン構築のための基礎資料として欲しい。 ○ 最近では、漁船、プレジャーボート共に船体、エンジンの性能が一昔前に比べ て格段に向上している。その結果、今日ではこれらの行動海域が大きく広がって いるという実態があるので、グランドデザイン構築に当たっては、そういった実 態も考慮した方が良い。 ○ 日本海洋レジャー安全振興協会では、関東地区で関東 BAN という事業を展開 しており、会員制でプレジャーボートの救助活動を行っている。会員から救助ス テーションに、海難の発生とともに自船の位置を携帯電話で通報してくるが、位 置情報が非常に不正確である場合が多く、捜索に手間取るケースが多々あった。 そこで、小型の GPS と携帯電話をセットにして、携帯電話のボタンを押せば、 自動的に GPS の位置情報が救助ステーションに通報されるシステムを開発し、 運用を開始したところ、結果は良好で、以来捜索時間が大幅に短縮された。現在 このシステムの普及を図っている。 ○ 今話のあったワムネットサービスは、陸上の山岳救助用にも使用され、やはり 29 捜索時間の短縮に役立っている。しかし、一番の問題は、携帯電話を使用してい る関係上、携帯電話のサービスエリア内での使用に限られる点である。 ◎ 色々な意見、問題点の提起等があったが、本委員会においては、安全確保に役 立ち、かつ皆が使いやすい通信システムを検討していくということで今年度もご 協力頂きたい。 ⑦ 議題 2「その他」 ブライトリング・ジャパン(株)が救難信号送信機付き腕時計「EMERGENCY」の、 (財)移動無線センターが業務用移動通信システム「mcAccess」の、そして日本無線(株) が防水型携帯電話「ドコモ・デジタル・ムーバ R691i」の紹介をそれぞれ行った。 ⑧ その他特段の意見なく、第 1 回作業部会を平成 13 年 8 月 28 日(火)1400 から開 催することとして、委員会を終了した。 2.2.2 第 1 回作業部会議事概要 (1) 開催日時及び場所 日 時:平成 13 年 8 月 28 日(火)1400 ∼ 1630 場 所:日本海難防止協会会議室 (2) 議 題 ① 小型軽量及び低価格イパーブの具体化について ② PLBの海上救難用としての導入について ③ 既存の通信システムの活用について ④ 携帯電話の海上での使用について ⑤ その他 (3) 出席者 ① 委 員 庄司 和民 荒井 郁男、中村 勝英、原 美都雄、蛭子 徹也、長屋 信博(代理:待場 純) ② 関係官庁 池田 佳史(代理:小関 幸一)、河原 悟、渡部 典正(代理:那須 繁勲)、高尾 留 雄(代理:岡本 顕) ③ 事務局 津田 眞吾、池嵜 哲朗 (4) 資 料 ① GM−(01)−1W−1 平成 13 年度調査研究委員会作業部会名簿(修正版) ② GM−(01)−1W−2 平成 13 年度第 1 回委員会議事概要(案) ③ GM−(01)−1W−3 平成 13 年度調査研究の具体的方策 30 (5) 議事概要(◎:委員長 ○:委員 △:関係官庁 □:事務局) ① 全国漁業協同組合連合会漁政部長が「宮原 邦之」氏から「長尾 信博」氏に交代し たことに伴い、事務局が、変更した委員会及び作業部会名簿を資料 GM(01)1W‐1 として提案し、承認された。 ② 平成 13 年度第 1 回委員会議事概要(案) (GM(01)1W‐2)について、事務局がこ れについては第 2 回委員会において審議いただくが、何か指摘等があればそれまで に連絡いただきたい旨依頼した。 ③ 議題 1「小型軽量及び低価格イパーブの具体化」について、事務局が資料 GM(01)1W ‐3 により説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 ○ より一層の小型軽量化を図るのであれば、 小型船舶の活動海域の現状を勘案し、 作動時間を現行の 24 時間から例えば半分の 12 時間に短縮するといった方法も 考えられる。 ○ それは尤もであるが、現在 COSPAS-SARSAT が定めている基準が作動時間 24 時間以上であり、先ずこの基準を満たさなければならないという問題がある。 ◎ 現在の小型船用イパーブは、自動離脱装置がない分価格的には安くなっている 訳であるが、瞬時の転覆等の場合対応できないことが欠点となっている。また、 価格としては、現在の 10 倍規模での生産を仮定しても、現在の半分程度の約 10 万円であり、ユーザーの購入意識(5∼6 万円程度)とはまだかなりの開きがあ る。 ○ 自動離脱装置について、 「2 年毎に交換の必要がある」と資料にあるが、確かに 2 年毎にセンサーを交換しなければならない外国製品もあるが、有効期限 4 年の もの、或いは無期限のもの等様々であって表現が適切ではない。 □ そのように修正する。 ○ 自動離脱装置については、小型船の場合、転覆した場合でも船体が沈まず、水 圧センサーが作動しないという問題もある。 ○ 海中転落への対応、例えば海中転落を察知してエンジンが停止する、また自動 的に遭難信号が発射されるといった機能を付加しようとすれば、機器の価格が上 がり、普及を妨げるという結果になるのではないか。 ○ あれもこれもと機能を欲張らず、衛星イパーブについてはあくまで船舶の救難 用機器として整理し、海中転落といった事故への対応は、PLB 等他のシステム に期待したほうが良い。 ◎ これまでの意見を総合すると、わが国においての衛星イパーブの小型軽量化及 び低価格化には、限界が見えてくるようであるが、外国製品について現状はどう か。また、外国製品の輸入についてはどうか。 ○ 外国製品の中には日本のものに比べかなり小型のものもあるが、価格的にはそ れ程安くはないのが現状である。また、外国製品を輸入し、販売するためには型 31 式承認といった手続きが必要ではあるが、基本的には可能である。 ○ 外国製品の中には、確かに安価なものもあるが、輸入、流通に掛かる経費を考 えると、国内での販売は外国で売られている状態よりは高いものになるのは間違 いない。また、購入後のサービスを考えると一概に販売価格の安い外国製品が良 いとは言えない。 ○ 国内における型式承認の際の周波数安定度の測定方法について、わが国の基準 は国際基準に比べて厳しいものとなっているので、これが国際基準並に緩和され れば、価格面に多少は反映できるのではないかと考える。COSPAS-SARSAT の 性能基準については、緩和されれば製品の価格が安くなるのは勿論であるが、現 状ではこの議論をすることは困難である。 □ 周波数安定度の基準を下げた場合に、それが位置の精度にどのように影響して くるかといった資料はあるか。 ○ 資料はある。確かに、周波数安定度の基準を下げた場合、位置のばらつきが大 きくなるのは事実である。救助活動の迅速化と機器の価格低減の兼ね合いが問題 である。 ④ 議題 2「PLBの海上救難用としての導入」について、事務局が資料 GM(01)1W‐ 3 により説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 ○ わが国においては、現在のところ PLB の制度自体が未だないので、この制度 作りから必要であるということが最大の問題である。 ○ 既にかなり小型化されたものもあるし、低価格のものもある。個人個人が携帯 することによりイパーブに比べ多くの普及が見込まれ、更なる低価格化も期待で きる。また、波及的効果として海中転落事故にも対応できる利点もある。 ◎ 小型船用のイパーブと比べた場合の欠点は何か。 ○ 水密性が弱い、浮揚性がない、落下基準が緩いといったことが挙げられる。PLB の場合は、主として陸上での個人の救難用機器の範疇といえる。 ○ PLB はオーストラリア等では既に広く普及しているが、これまでは 121.5MHz の周波数を使用するものが主流であった。しかし、既に COSPAS-SARSAT が 121.5MHz の周波数のサービスを止めることが決定しているので、406MHz に順 次変更されている。メーカーにとって最大の利点は、一々申請により ID を得る 必要がない点である。 □ 現在ある PLB を加工して、海上救難用として適した試作品というか、何らか の形を作って頂き、最終的にそれを使用して海上での性能実験といったものを行 うという方向ではどうか。 ○ 試作品というとそれは製品化であり、そこまでは難しいのではないかと思う。 ただこういったものができるということを形にして見せる程度のことは可能か と思う。 32 ◎ 現在制度自体がないものなので、これについての海上実射実験ということは認 められないのではないか。 ○ 実験もできないものであれば、将来PLBの普及が望ましいといった提言に止 めるという方法が適当ではないか。 □ 先ほどイパーブのところで話があったとおり、現在のイパーブについて小型軽 量化及び安価化を図ってもユーザーの要望とは隔たったところに限界がある。そ れなら、イパーブに代わるものとして PLB はどうかという提案をしている次第 である。 ○ 個人装備を考えると、価格的にまだまだ普及は難しいと思う。船舶用の救命器 具として目的を絞っていったほうが良いのでは。 ◎ 個人用、船舶用といったことにはそれ程拘らなくても良いのではないか。偶々 個人が装備できるような形状のものであれば個人が装備しても良いし、またそれ を船舶に装備したとしても勿論良い訳で、遭難通報としての結果は同じである。 研究の方向としては、PLB を海上救難用として利用する場合、どういう問題が あり、どういった対応が可能であるかといったことを整理して行くことだと思う。 ○ 関係官庁の方々にも PLB の導入に係る問題点の検討をお願いしたいと思う。 ⑤ 議題 3「既存の通信システムの活用」について、事務局が資料 GM(01)1W‐3 によ り説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 ○ 昨年度調査した結果をもとに、今年度は特定の通信システムについて活用を提 案するという方向で良いのではないかと思う。 ◎ それでは、そういったことで整理をお願いしたい。 議題 4「携帯電話の海上での使用」について、事務局が資料 GM(01)1W‐3 により ⑥ 説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 ○ 利用可能エリアの明確化については、色々な問題があって難しいようである ◎ 今後携帯電話のサービスエリアをどうすべきか考える上でも、現状の利用可能 エリアを明確にすることは不可欠であり、これは是非実施してほしいと考える。 その他特段の意見なく、次回第 2 回作業部会の開催日時を、平成 13 年 12 月 10 日 ⑦ (月)1400 からとし、第 1 回作業部会を終了した。 2.2.3 第 2 回作業部会議事概要 (1) 開催日時及び場所 日 時:平成 13 年 12 月 10 日(月)1400 ∼ 1600 場 所:海事センタービル第 204 号会議室 (2) 議 題 ① 海上救難用PLB試作品について 33 ② その他 (3) 出席者 ① 委 員 庄司 和民 中村 勝英、安藤 久司、片山 泰夫、蛭子 徹也 ② 関係官庁 佐村 知子(代理:河原 悟) 、磯谷 兵衛(代理:柿本 和利) 、渡部 典正(代理: 那須 繁勲) 、高尾 留雄(代理:岡本 顕) ③ 事務局 津田 眞吾、池嵜 哲朗 (4) 資 料 ① GM−(01)−2W−1 平成 13 年度調査研究委員会及び作業部会名簿(修正版) ② GM−(01)−2W−2 平成 13 年度第 1 回作業部会議事概要(案) ③ GM−(01)−2W−3 海上救難用PLB試作品について (5) 議事概要(◎:委員長 ○:委員 △:関係官庁 □:事務局) ① 国土交通省海事局安全基準課長が「矢萩 強志」氏から「松尾 龍介」氏に、同局舶 用工業課長が「木澤 隆史」氏から「田中 圭」氏に、総務省総合通信基盤局電波部 衛星移動通信課長が「池田 佳史」氏から「佐村 知子」氏にそれぞれ交代したこと に伴い、事務局が、変更した委員会及び作業部会名簿を資料 GM(01)2W‐1 として 提案し、承認された。 ② 平成 13 年度第 1 回作業部会議事概要(案)について、事務局が資料 GM(01)2W‐ 2 により説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 ◎ 3 ページの上から 2 行目から「国内における型式承認の際の周波数安定度の測 定方法について、・・・」とあるが、これは国内における型式承認の際の周波数安 定度測定と、COSPAS-SARSAT の周波数安定度の基準との双方に対する意見を 述べているものであり、誤解を生じないよう区切りで改行する等の配慮が必要で ある。 □ そのように配慮する。 ③ 議題 1「海上救難用PLB試作品」について、中村委員が資料 GM(01)1W‐3 によ り説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 ○ 今回計画しているPLBと 406MHz イパーブとの相違点は何か。406MHz イ パーブと別にあえて 406MHz のPLBを開発する意味はどこにあると考えれば 良いか。 ○ 両者は、基本的には同じである。しかし、PLBによりイパーブ以上の小型軽 量化及び低価格化が図れる。また、PLBであれば、申請・付与の手続きが面倒 なMID(海上識別符号)も必要なくなる利点がある。PLBは個人用のイパー 34 ブとして理解願いたい。 ○ 個人の装備として、例えば救命胴衣に格納するといったことを考えると、現在 示されている寸法は未だ大きいと思われる。 ◎ 現在のイパーブにある 121.5MHz の信号を、計画しているPLBについて、や はり必要とするのか、省略しても良いのか。勿論これがない方が機器の構造が簡 素化され、小型化できる、また価格的にも安くできるという点を踏まえて検討が 必要である。 ○ 121.5MHz を使用したポジショニングについて、既に COSPAS-SARSAT は 2009 年にはサービスを終了することの決定をしている。問題はホーミング信号 としての使用であり、これが本当に必要かどうかが問題である。 ○ 海保の航空機においては、捜索の場合、121.5MHz のホーミング信号が非常に 役立っているとの話も聞く。寧ろサート等よりも役立っているとのことであるが。 △ 勿論 121.5MHz のホーミング信号は捜索の上で有効とは考えるが、これを省略 することにより、計画している PLB の価格が安くなり、より多く普及するので あれば、それはそれで意味のあることとも思われる。まして小型船舶の場合、活 動海域が沿岸部に限られることから、捜索範囲が狭いという条件もある。 ○ 121.5MHz のホーミング信号の機能を機器に付加すること自体は技術的に難し いことではない。しかし、絶対に必要なものであれば、それは勿論入れるが、そ うでなければなるべく機能を省略し、小型化、低価格化させていきたいというの が正直なところである。 △ 試作品の段階では、やはり 121.5MHz を入れておいた方が良いのではないか。 406 MHz の信号が上手く受信できず、121.5MHz の方が受信できるというケー スも考えられ、406 MHz 一本に絞るのは現状では未だ危険ではないかという気 がする。その後実験の結果等を見て、406 MHz だけで十分であれば 121.5MHz を削除していくという方法が良いのではないか。 アメリカで販売されている PLB は、121.5MHz がオプションとして付けられるようになっている。 ○ 基本設計を後に色々と変更するのは大変なことであり、この場で 121.5MHz を 入れる、あるいは入れないとはっきり決めておく必要がある。 ◎ 121.5MHz の必要性は、ホーミング信号としての必要性であり、ここでは「な くても良い」程度で整理しておくのが良いと思う。次に浮揚性については、アン テナが水中に浸かった状態では電波が伝播しない訳であり、海上において大きな 問題と考える。少なくともアンテナを水面上に出す程度の浮揚性が必要ではない か。 ○ 使用をどのように想定するかによって、変わってくると思う。例えば船上での 使用であれば浮揚性は必要ないし、ライフジャケットに装着するのであれば、こ れも PLB 自体には浮揚性を持たせる必要はないのではないかと思う。 35 ○ 計画の機器の寸法は、個人装備にしては大きいし、船体装備としては小さく中 途半端なものとなっている。これに浮体を付けると、現在のイパーブとさほど変 わらない大きさになってしまうと思う。SART の場合は十分に小型化されている ため、ライフジャケットに付ける個人装備とした。 ○ 現在計画している PLB は、水面に横になった状態で浮くことはできる。しか し、これを立たせて、正常に電波を飛ばすことができるようにするには、錘と浮 体が必要であり、更に大きく重いものになってしまう。逆に沈んでしまっても良 いのであれば、寸法はもっと小さくできる。 ○ 船体に装備しておいて、有事の際にそれを持って出るというのであれば、現在 の小型船用イパーブと何ら変わらないのではないか、まして浮揚性がなければ小 型船用イパーブの方が優れているといえる。 ◎ 結局、現在の状況を連絡するためには、携帯電話も持って出る必要があるとい うことになるのではないか。 ○ 本日見て頂いているのは、図面上だけであり、なかなか寸法の実感が湧かない のではないかと思う。次回は、モックアップを提示したいと考えているので、そ れを見て検討頂きたい。 ◎ 色々な条件を考えると、取り敢えず浮揚性については、提案どおり何とか水面 に浮く程度として検討を進めることとする。 ○ 誤って落水させた場合の回収を考えると、少なくとも水面に浮くものでなくて はならず、できればライフジャケットに装備できるものが望ましいと考える。 ◎ その他の仕様については、当面提案のとおりで良いのではないかと考える。問 題は、国内での制度、基準であり、主管庁の判断で可能な部分は良いが、国際的 な基準についてどうすべきか。 △ 国内の基準については検討の余地があるが、COSPAS-SARSAT の基準につい て、現状での交渉は容易なことではないと思う。 ◎ 次回作業部会までに試作品の具体化を進めるとともに、問題点を整理して頂き、 次回作業部会において検討することとする。 ④ その他特段の意見なく、作業部会を終了した。 ⑤ 作業部会終了後、 (株)日本緊急通報サービスが携帯電話を利用した緊急通報サービ スシステムについて、またカシオ計算機(株)が GPS 内臓携帯電話についてそれぞ れプレゼンテーションを実施した。 2.2.4 第 3 回作業部会議事概要 (1) 開催日時及び場所 日 時:平成 14 年 2 月 26 日(火)1030 ∼ 1215 36 場 所:日本海難防止協会会議室 (2) 議 題 ① 小型海上用PLBの開発成果について ② 「非 GMDSS 船遭難時における連絡手段の確保等に関する調査研究(完了報告書) 」 (案)について (3) 出席者 ① 委 員 庄司 和民 中村 勝英、安藤 久司、片山 泰夫、蛭子 徹也、古屋 博司 ② 関係官庁 佐村 知子(代理:河原 悟) 、磯谷 兵衛(代理:柿本 和利) 、渡部 典正(代理: 那須 繁勲) 、高尾 留雄(代理:岡本 顕) ③ 事務局 津田 眞吾、池嵜 哲朗 (4) 資 料 ① GM−(01)−3W−1 平成 13 年度第 2 回作業部会議事概要(案) ② GM−(01)−3W−2 小型船用PLB開発に関する報告について ③ GM−(01)−3W−3 外国製小型衛星イパーブ等の比較 ④ GM−(01)−3W−4 「非 GMDSS 船遭難時における連絡手段の確保等に関する 調査研究(完了報告書) 」スケルトン(案) ⑤ GM−(01)−3W−5 「非 GMDSS 船遭難時における連絡手段の確保等に関する 調査研究(完了報告書)」 (案) (5) 議事概要(◎:委員長 ○:委員 △:関係官庁 □:事務局) ① 平成 13 年度第 2 回作業部会議事概要(案) (資料 GM(01)3W‐1)については、各 委員等が持ち帰り、後日事務局に修正事項等を連絡、次回委員会においてそれを確 認することとなった。 ② 議題 1「小型海上用PLBの開発成果」について、中村委員が資料 GM(01)3W‐2 及び同 GM(01)3W‐3 により説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 ○ この模型の重量は、バッテリーの重量が大部分を占めているということか。 ○ その通り。また模型については本体をステンレスで作成しているが、これをプ ラスチックで作成すれば、多少の軽量化が図れる。また、消費電力を削減するこ とができれば、バッテリーとして市販のカメラ用電池 CR123 等が使用可能とな り、更なる小型軽量化が期待できる。但し、市販のカメラ用電池の動作温度範囲 は 0℃以上との制約がある。 ◎ 動作温度の基準は、世界中どこでも使用可能なよう非常に厳しいが、小型船で あれば活動海域は限られており、日本近海での基準といったものを適用できるよ 37 うになれば良いと考えるが。 今回のこの資料については、良く研究されているので全て報告書に収録される よう配慮願いたい。 □ そのように報告書の内容を調整する。 ○ その模型においては、バッテリーはどのようなものとしているか。 ○ 単三電池 4 本である。 ○ 市販の塩化チオニール・リチウム電池の場合、0℃以下になると急激に機能し なくなるという実験結果がある。 ○ そのことについては承知しており、現在電池メーカーに検討を依頼している。 ○ 新たな電池の開発ということになれば、かなりの数の消費がなければ採算が取 れないのではないか。 ○ その点についても現在研究中である。 ○ レーダートランスポンダーでの例を考えると、カメラ用電池の使用が最も実用 的ではないかと思う。 ③ 議題 2「非 GMDSS 船遭難時における連絡手段の確保等に関する調査研究(完了報 告書)」 (案)について、事務局が資料 GM(01)3W‐4 及び同 GM(01)3W‐5 により 説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。 ◎ 96 ページ 3.7.3「PLB」の中に「・・・作動時間も小型船舶用イパーブの半分の 12 時間に設定・・・」とあるが、今回開発を提案しているものは、小型船舶用イパー ブと同様の 24 時間であるので、この 1 文は削除する必要がある。また、次項 3.7.4 「既存の海上通信システム」の中に「・・・機器が高価等の欠点がある・・・」とある が、 「欠点」は「難点」とするのが適当である。また「・・・利点欠点を勘案のうえ・・・」 とあるが、 「利便性を勘案のうえ」とするのが適当である。97 ページから次のペ ージにかけて「・・・現在の体制を存続させていくことが望ましい。」とあるが、「・・・ 現在の体制を存続させていくことは欠かせない。 」としたほうが良い。 ○ 衛星経由の携帯電話が市販されているので、98 ページ 3.7.5「携帯電話」の中 にそれをいれる必要があると思う。 ○ 96 ページ 3.7.2「船舶用衛星イパーブ」の中で、 「地上携帯電話海上通信システ ムの通信可能エリア」、 「イパーブの搭載を義務図けられる海域」等の記述があ るが、それぞれについて具体的数値を入れて表示した方が良い。 △ 今回の報告書の内容は、昨年の報告書の内容によるものか、それとも今回初め て出されたものか。 □ 中間報告書の内容をそのまま使用した部分、その内容を修正した部分、また今 回新たに作成した部分がある。 ○ 3.7.3「PLB」の最後の 2 行に「ユーザーは、・・・搭載すべき機器を選択するこ とが望ましい。 」とあるが、この項目に入れるべき内容ではないのではないか。 38 また、こういう形でユーザーに判断を求めるのは本調査研究の主旨に馴染まない ように思うが。 △ 3.7.3「PLB」の中で、 「・・・我が国には未だ PLB の制度自体がなく、・・・」とあ るが、これでは今現在 PLB の制度がないことが即ち問題であると受け取られ、 表現が適切ではないと考える。 □ 「制度自体がなく」を「利用環境が整備されておらず」と修正する。 ○ 同じ文章の中で「・・・これを直ちに実用化することは不可能であるが・・・」とあ るが、これも適当な表現ではないと思う。 ◎ 「これを直ちに利用することは種々の制約があるが」と修正するものとする。 ◎ 100 ページ 4.1.1「PLB の我が国における制度化」の標題については、先の議論 を踏まえて適切に修正願いたい。「イパーブの周知」を 4.1 に、 「海上用 PLB の 普及」を 4.2 に、 「既存海上通信システムの活性化」を 4.3 に、 「携帯電話の海上 緊急用としての使用」を 4.4 として、項目の順番を入れ替えた方がすっきりする と考える。また、4.2「イパーブの周知」の中で、 「・・・半数の者が理解していな いという現実は、如何なものかと考える。 」とあるが、この表現は適当ではない と思われるので修正を検討願いたい。4.1.2「PLB の警報への対応」の中で、 「如 何なる機関がどのように責任を持って・・・」とあるが、「責任を持って」は不要で あり削除されたい。同項に「PLB の管理処理体制・・・」とあるが、これも[処理] は不要である。次のページの 4.3.1「サービスエリアの明確化及び拡大」の中で、 「・・・携帯電話の搭載・・・」とあるが、 「携帯電話の利用」と修正すべきである。 同項の「・・・中継局からの距離・・・」は、正確には「中継局からの電波到達距離」 と記すべきである。同項の「・・・ユーザーの通信手段選択の、逆に活動海域選択 の・・・」とあるが、これは「ユーザーの通信手段選択・活動海域選択の」とした ほうが良い。同項の「・・・灯台、灯標、浮標等を利用して中継局を設置すること も有効・・・」は、 「灯台、灯標、浮標等を利用して中継局を設置することも利便性 を与え、有効」と書き加えてほしいと思う。4.3.2「船上における携帯方法の確 立」の中で、 「一般のユーザーの志向・・・」とあるが、 「志向」は「利便性」程度 の表現に修正した方が良い。4.4.1「現行免許、検査及び資格制度の検討」の中 で、 「またそれ以上の規制緩和・・・」については、削除するのが適当と考える。 ○ 携帯電話のサービスエリアは電波の到達距離だけの問題ではなく、ネットワー クの問題があり、この点を書いておく必要がある。 ○ 4.3.1「サービスエリアの明確化及び拡大」の中で、 「・・・中継局が陸上にしかな いこと・・・」とあるが、これも不要である。 ○ 海上における「サービスエリア」との表現は適切ではない。「利用可能エリア」 といった表現に修正すべきである。 △ 厳密にいえば、海上にサービスエリアはない訳であり、指摘の通りと考える。 39 しかし、海上であっても使用できる範囲で使用することは何ら問題ないし、業者 に対して利用できる範囲を教えてほしいという要求も妥当なものと思う。 ◎ PLB については、これが普及した場合、当該事故が海上のものなのか、陸上の もの何かの判別、それに対する救助活動の調整といったことが問題となってくる 可能性がある。 ○ 陸上においては、山の中にまで段々と携帯電話のサービスエリアが広がってき ており、実際には陸上で PLB を使用する例はそれ程無いのではないかとも思 われる。 ◎ いずれにせよ PLB の警報を受ける機関としては海上保安庁しかないわけであ って、警察、消防といった陸上の機関との調整が必要になってくるであろう。 ○ 簡易型の DSC の今後の動向といったことも気になるところであり、これへの 対応についても海上保安庁のご意見を伺っていきたいと考えている。 ◎ DSC についても報告書に記載しておく必要がある。 ○ 灯台等への中継局の設置について、もう少し具体的に計画提案して行く必要が あるものと思われる。 △ 4.3.1「サービスエリアの明確化及び拡大」の中で、 「関係者は海難救助の効率 化に資するため、・・・」とあるが、この「関係者」は誰を指しているのか明確に 分るようにしておく必要がある。 ④ その他特段の意見なく、作業部会を終了した。 2.2.5 第 2 回委員会議事概要 (1) 開催日時及び場所 日 時:平成 14 年 3 月 13 日(水)1000 ∼ 1215 場 所:海事センタービル第 801・802 号会議室 (2) 議 題 ① 「非 GMDSS 船遭難時における連絡手段の確保等に関する調査研究(完了報告書)」 (案)について ② その他 (3) 出席者 ① 委 員 庄司 和民 荒井 郁男、高橋 勝、中村 勝英、安藤 久司、原 美都雄、片山 泰夫、蛭子 徹也、 西沢 徹、小坂 智規、山崎 保昭、古屋 博司、喜多 一記 40 ② 関係官庁 松尾 龍介(代理:植村 忠之) 、伊藤 茂(代理:金子 純蔵) 、佐村 知子(代理: 成瀬 芳之) 、磯谷 兵衛(代理:柿本 和利) 、渡部 典正、那須 繁勲、高尾 留雄(代 理:岡本 顕) 、中山 博文(代理:斎藤 春夫) ③ 事務局 西山 知範、池嵜 哲朗 (4) 資 料 ① GM(01)2−1 平成 13 年度第 1 回委員会議事概要(案) ② GM(01)2−2 平成 13 年度第 3 回作業部会議事概要(案) ③ GM(01)2−3 「非 GMDSS 船遭難時における連絡手段の確保等に関する調査研究 (完了報告書)」 (案) (5) 議事概要(◎:委員長 ○:委員 △:関係官庁 □:事務局) ① 事務局が各委員及び関係官庁出席者の紹介を行った。 ② 平成 13 年度第 1 回委員会議事概要(案) (資料GM(01)2−1)及び平成 13 年度第 3 回作業部会議事概要(案) (資料GM(01)2−2)については、各委員等が持ち帰り、 後日事務局に修正事項等を連絡し、委員長の了解を得て修正することとなった。 ③ 議題 1「非 GMDSS 船遭難時における連絡手段の確保等に関する調査研究(完了報 告書)」 (案)について、中村委員及び事務局が資料GM(01)2−3 により説明し、こ れに対して次の質疑応答、意見等があった。 (a) 報告書第 3 章「調査研究の実施」 △ 97 ページの表 3.5.1「外国製イパーブ等の性能比較」において、製品 A につい ては中期安定度(コスパス試験法で測定)が「規格外」となっているが、この製品 はコスパスの型式承認を得たものか。また、「発信器」は「発振器」に、 「MMID」 は「MMSI」に、それぞれ修正願いたい。 ○ 型式承認を得たものである。 □ 修正についてはそのとおりとする。 ○ この中期安定度の測定値は、作動後十分な時間を経た上での数値か。 ○ そのとおり。 ◎ GPS の組み込まれたイパーブについては、位置の精度については GPS により 担保されているので、周波数安定度の基準は多少緩和しても良いのではないかと いう気がする。 ○ 製品 A の性能の詳しい分析結果については、事務局に提出してあるので、必要 であれば申し出てほしい。 △ 各製品個価格について、お知らせ願いたい。 41 ○ 定価を調べたうえで回答する。 ○ 104 ページの 3.7.2「衛星イパーブ、小型船用イパーブ」の内容が難解である。 遭難通報システムと海上通信システムの混同が見受けられるので、これを整理の うえ分りやすく修正願いたい。また、例えば携帯電話の欠点として緊急用のチャ ンネルがないことを挙げているが、これを「欠点」と表現するのは適当でないと 考える。108 ページの表 3.7.6.1 についても難解であるので、内容を整理したうえ で分りやすく工夫願いたい。 □ ご指摘の趣旨を踏まえ修正する。 ○ 108 ページの表 3.7.6.1 に「MCA 移動無線」とあるが、「MCA 無線」が正しい ので修正願いたい。また、同表の各通信システムについては名称だけではなくそ れぞれ簡単な説明が必要と思う。参考資料のアンケート調査用紙の末尾に通信機 器の一覧表についても「MCA 無線」に、併せて周波数を「850/1500MHz」に修 正するとともに、参考資料-2 の方へも記載をお願いしたい。 □ 了解した。 ○ 3.7.3「小型船用 PLB」について「・・・本来陸上における個人用救難機器・・・」 と説明しているが、PLB は陸上に使用が限定されるものではなく、表現に修正 が必要である。本調査研究の対象は小型船舶であって、陸上でのことについて詳 しい説明は不要ではないかと考える。また、携帯電話について、 「特定の相手と 一対一での通信しかできない」ことを欠点としてあげているが、 「欠点」とは適 当ではなく修正した方が良い。 □ ご指摘の趣旨を踏まえ修正する。 ○ 3.7「沿岸海域における緊急時の通信手段確保のためのグランドデザイン」の内 容について、 「通信システム」と「通報システム」を整理して記述する必要があ ると考える。 ◎ SOLAS 条約においては、遭難通報システムとしてイパーブ等が定められてい る訳であるが、例えば携帯電話、衛星携帯電話といった一般公衆回線による遭難 通報も可能であって、 「通信」と「通報」を明確に区分して記述することは困難 ではあるが、遭難通報として特別に認められたものとそれ以外のものを書き分け る方向で、事務局と調整して整理することとしたい。 (b) 第 4 章「今後の課題」 ○ 111 ページ 4.3.3「海岸局の体制整備」の中で漁業無線について書かれているが、 漁業無線についてはこういった体制が整備されているということが GMDSS の 代替措置の前提であって、漁業無線については削除すべきであると考える。また 同項中に「・・・所管官庁は日頃から指導を徹底させておく・・・」とあるが、既に指 導は行われていることから、 「・・・所管官庁は指導を継続させていく・・・」と修正 すべきである。110 ページ 4.3.1「既存海上通信システムの高度化」の「本来、海 42 上通信は・・・」以降の部分は趣旨が分り難いので整理が必要と考える。109 ページ 4.2.2「PLB の警報への対応」において、誤警報の防止については強力に推進し て頂きたいと考える。 □ ご指摘の趣旨を踏まえ修正する。 ◎ 4.1「イパーブの周知」について、船長のみならず、およそ船舶に乗り組む者に ついては全てがイパーブをはじめとする GMDSS 体制を正しく理解しておくべ きものと考える。また、バッテリー、モックアップ等の英語は可能な限り日本語 に直し、誰もが読み易いものとしてほしい。 □ 了解した。 ○ 例えば 110 ページに「ネットワーク化」という言葉が出ているが、何をどのよ うにネットワーク化するのか具体的に説明されていない。 □ 例をいくつか示し、分り易くする。 ◎ 111 ページ 4.4.1「利用可能エリアの明確化及び拡充」において、 「・・・海上保安 庁が設置する灯台、灯標、浮標等を利用させることは有効・・・」とあるが、 「・・・ 海上保安庁が設置する灯台等を利用できるよう図ることは有効・・・」とするのが 適切である。 □ そのとおり修正する。 △ 既に灯台に中継局を設置している例がある。110 ページ 4.3.1「既存海上通信シス テムの高度化」の「しかし、小型船の遭難・安全通信に簡易 VHF DSC を導入・・・」 以下の部分について、海上保安庁は陸上局には DSC が整備されていないが、巡 視船艇には装備されており聴守しているので、その旨明記願いたい。 ○ その旨書いたつもりであるが、表現について相談のうえ修正する。 ○ 会員等へ配布するため、本報告書の要約版を数ページ程度で作成してほしい。 □ 作成することとするので利用されたい。 ④ その他特段の意見なく、委員会を終了した。 43 第3章 3.1 調査研究の実施 小型船舶海難の状況 3.1.1 概況 平成 11 年の要救助海難(台風及び異常気象下のものを除く)の状況は、合計は 1,844 隻 で、そのうちプレジャーボート等 (遊漁船を含む) が 783 隻(42.5%) 、漁船が 671 隻 (36.4%)、 以下貨物船(8.9%) 、その他(8.8%) 、タンカー(1.8%) 、旅客船(1.6%)となっており、 プレジャーボート等と漁船の両者で約 8 割(79.3%)を占めている。 また、これら海難に伴った乗船者の死亡・行方不明者の状況は、合計 146 人で、そのう ち漁船が 101 人(69.2%)と突出して多く、以下プレジャーボート等が 21 人(14.4%) 、 貨物船(12.3%) 、その他(2.7%)となっており、漁船とプレジャーボート等の 2 者で 83.6% もの多くを占めている。 (注: 「その他」は、曳船、台船、作業船など) 平成 11 年における海中転落者についてみると、事故者 215 人、死亡・行方不明者 169 人 である。 死亡・行方不明者については、そのうち漁船におけるものが 107 人(63.3%)と突出し て多く、プレジャーボート等が 23 人(13.6%)、旅客船(8.9%)となっており、漁船及び プレジャーボート等の 2 者で 76.9%を占めている。 なお、漁船、プレジャーボート等の死亡・行方不明者については、海中転落に伴うもの 169 人に比べ船舶海難に伴うものが 122 人と、前者が多いことに注目すべきである。 一方、非GMDSS船の大半を占めるのは小型の漁船及びプレジャーボート等である。 小型船舶の緊急時における通信連絡手段の検討を行うに当たっては、通信可能距離との 関係でこれら小型船舶の海難の状況(特に海難発生の陸からの距離)を把握することが必 要であり、以下この 2 者についての分析を行うこととする。 分析資料は、船舶海難については要救助海難統計(1990 年∼1999 年の 10 年間) 、海中 転落については船舶海難によらない乗船者の人身事故統計(1993 年∼1999 年の 7 年間) による。 なお、これらの海難資料からは、GMDSS船、非GMDSS船の仕分けはできないが、 漁船及びプレジャーボート等ではGMDSS装備対象となる比較的中大型や沖合航行、沖 合操業の船舶は極めて少ないので、分析結果は非GMDSS船の海難実態と殆ど同じと思 われる。 44 3.1.2 船舶海難の状況 (1) 漁船 20 トン未満の漁船(以下「小型漁船」という。 )について分析を行った。 (表 3.1.2-1 参照) 小型漁船では、GMDSS対象除外要素の一つである 100 海里未満が 97.8%である。 20 海里未満が 93.1%、 12 海里未満で 88.7%、3 海里未満でも 72.1%の多くを占め ており、大多数の小型漁船の海難は比較的沿岸部で発生している。 (2) プレジャーボート 長さが 12m未満のプレジャーボートについて分析を行った。(表 3.1.2-2 参照) 全体では、20 海里未満が 99.6%と大半を占めており、12 海里未満で 99.1%、3 海里 未満でも 91.6%であり、漁船よりも沿岸寄りでの海難が多い。 (注:プレジャーボートのGMDSS対象除外要素の一つである沿海区域は、陸岸か ら 20 海里としている海域が多い。 ) 3.1.3 海中転落の状況 (1) 漁船(表 3.1.3-1 参照) 海中転落に伴う死亡・行方不明者についてみると、小型漁船については、100 海里未 満が 98.5%、20 海里未満が 95.7%で、12 海里未満で 91.7%、3 海里未満でも 74.9% を占めている。 (2) プレジャーボート(表 3.1.3-2 参照) 同死亡・行方不明者については、12m未満のプレジャーボートでは、20 海里未満 100%で 12 海里未満が 97.0%、3 海里未満が 92.1%となっている。 45 表3.1.2-1 20トン未満の漁船の遭難(不要救助含)における漁業種類別/総トン別/距岸別の 事故隻数(1990∼1999) 距 岸 港内 漁業種類 定置 総トン数 5トン未満 5∼20トン 定置 計 一本釣 5トン未満 5∼20トン 一本釣 計 はえなわ 5トン未満 5∼20トン はえなわ 計 刺網 5トン未満 5∼20トン 刺網 計 まき網 5トン未満 5∼20トン まき網 計 敷網 5トン未満 5∼20トン 敷網 計 機船底びき 5トン未満 5∼20トン 機船底びき 計 以西底びき 5トン未満 5∼20トン 以西底びき 計 ひき網 5トン未満 5∼20トン ひき網 計 運搬・母船 5トン未満 5∼20トン 運搬・母船 計 その他 5トン未満 5∼20トン その他 計 総 計 3海里 未満 3∼12 海里 12∼20 海里 20∼100 海里 100海里 以上 合 計 47 12 59 567 138 705 62 55 117 293 42 335 6 35 41 7 12 19 106 50 156 0 0 0 29 23 52 11 19 30 336 59 395 1909 55 14 69 1073 306 1379 188 114 302 611 80 691 18 79 97 11 18 29 405 121 526 0 0 0 71 55 126 18 64 82 623 121 744 4045 2 3 5 296 269 565 77 75 152 95 64 159 5 34 39 2 9 11 161 99 260 1 0 1 25 20 45 0 21 21 62 49 111 1369 0 0 0 63 122 185 17 44 61 11 13 24 1 5 6 2 5 7 11 30 41 0 0 0 3 5 8 0 2 2 12 14 26 360 0 1 1 38 111 149 6 130 136 5 20 25 0 2 2 1 16 17 0 19 19 0 2 2 5 3 8 0 1 1 9 18 27 387 0 0 0 2 18 20 0 128 128 2 27 29 0 0 0 0 0 0 1 2 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 3 183 104 30 134 2039 964 3003 350 546 896 1017 246 1263 30 155 185 23 60 83 684 321 1005 1 2 3 133 106 239 29 107 136 1042 264 1306 8253 23.1% 49.0% 16.6% 4.4% 4.7% 2.2% 100.0% 46 表3.1.2-2 長さ12m未満のプレジャーボートの遭難(不要救助含)における 全長別/距岸別の事故隻数(1990∼1999) 距 岸 港内 船型 総トン数 エアクッション船 7∼12m エアクッション船 計 モーターボート 7m未満 7∼12m モーターボート 計 ヨット 7m未満 7∼12m ヨット 計 手漕ぎボート 7m未満 7∼12m 手漕ぎボート 計 和船型ボート 7m未満 7∼12m 和船型ボート 計 水上オートバイ 7m未満 7∼12m 水上オートバイ 計 総 計 3海里 未満 3∼12 海里 12∼20 海里 20∼100 海里 100海里 以上 合 計 0 0 634 485 1119 140 180 320 98 5 103 378 192 570 201 0 201 2313 1 1 845 643 1488 296 202 498 191 2 193 595 367 962 318 1 319 3461 0 0 109 170 279 5 43 48 20 0 20 49 65 114 10 0 10 471 0 0 6 12 18 0 5 5 0 0 0 1 6 7 0 0 0 30 0 0 1 3 4 1 6 7 1 0 1 1 1 2 0 0 0 14 0 0 0 0 0 1 9 10 1 0 1 0 1 1 0 0 0 12 1 1 1595 1313 2908 443 445 888 311 7 318 1024 632 1656 529 1 530 6301 36.7% 54.9% 7.5% 0.5% 0.2% 0.2% 100.0% 47 3.2 海難発生時に使用された通信手段の状況 平成 12 年、海上保安庁が海難情報を入手した方法の状況は、表 3.2-1 のとおりである。 なお、この調査時点では、携帯電話の区分は設けられておらず、また電話による緊急番 号「118番」の創設は5月1日からである。 海上保安庁が平成 12 年5月下旬に2日間にわたって同「118番」への事故発生の通報 について調査したところ、携帯電話による通報は全体の 40%を占めた。 「118番」創設直 後の調査であるが、その後は「118番」の周知によりその割合は増加しているものと思 われる。 なお、平成 13 年からは形態電話の区分を設けた調査が行われるとのことである。 49 表3.2-1 平成12年の海難発生状況(海難情報入手方法等別) 船種 貨 物 船 ー タ ン カ 旅 客 船 ー ボ ト 等 船種 3 4 33 1 20 17 1 1 13 9 5 1 3 3 8 10 1 1 1 8 9 5 2 10 3 2 5 1 1 1 1 1 3 1 1 2 2 3 2 2 9 3 14 31 2 32 1 1 7 4 4 7 2 17 3 2 14 8 50 貨 物 船 タ ン カ ー ャー プ レ ジ 1月から4月まで 海難情報発信者 情報入手方法 隻数 遭難通信 緊急通信 一般通信 海難船舶 海のダイヤル110番 一般船舶電話 陸上電話 その他 遭難通信 一般通信 相手船舶 一般船舶電話 陸上電話 その他 一般通信 付近在泊船 一般船舶電話 陸上電話 陸上電話 陸上目撃者 口頭 その他 一般船舶電話 その他 陸上電話 その他 一般通信 海のダイヤル110番 海難船舶 一般船舶電話 陸上電話 一般通信 相手船舶 一般船舶電話 陸上電話 海のダイヤル110番 付近在泊船 一般船舶電話 陸上目撃者 陸上電話 一般通信 その他 陸上電話 その他 一般通信 海難船舶 一般船舶電話 陸上電話 陸上目撃者 陸上電話 陸上電話 その他 その他 一般通信 海のダイヤル110番 一般船舶電話 海難船舶 陸上電話 口頭 その他 一般通信 相手船舶 海のダイヤル110番 陸上電話 一般通信 一般船舶電話 付近在泊船 陸上電話 その他 陸上電話 陸上目撃者 その他 一般船舶電話 その他 陸上電話 その他 旅 客 船 5月から12月まで 海難情報発信者 情報入手方法 隻数 遭難通信 緊急通信 一般通信 118番通報 海難船舶 一般船舶電話 陸上電話 口頭 その他 遭難通信 緊急通信 一般通信 118番通報 相手船舶 一般船舶電話 陸上電話 口頭 その他 一般通信 118番通報 一般船舶電話 付近在泊船 陸上電話 口頭 その他 118番通報 陸上電話 陸上目撃者 口頭 その他 一般通信 118番通報 その他 一般船舶電話 陸上電話 その他 遭難通信 緊急通信 一般通信 海難船舶 118番通報 一般船舶電話 陸上電話 その他 遭難通信 一般通信 118番通報 相手船舶 一般船舶電話 陸上電話 口頭 118番通報 一般船舶電話 付近在泊船 陸上電話 口頭 陸上電話 陸上目撃者 その他 陸上電話 その他 その他 遭難通信 118番通報 海難船舶 一般船舶電話 陸上電話 その他 118番通報 相手船舶 一般船舶電話 一般船舶電話 付近在泊船 陸上電話 その他 118番通報 その他 陸上電話 6 4 58 16 15 18 2 1 1 1 13 12 8 8 1 1 3 7 4 4 1 1 1 9 1 1 1 1 1 6 9 2 1 16 6 10 6 2 1 6 2 3 2 1 2 1 2 1 2 1 1 3 1 2 5 8 1 1 1 2 1 1 1 3 船種 漁 船 船種 プ レ ジ ー 2 1 5 25 50 2 11 4 10 4 1 4 1 17 30 2 4 1 31 12 3 37 2 8 2 4 9 4 1 2 2 2 3 3 6 1 8 3 2 11 5 ャー そ の 他 海難情報発信者 情報入手方法 隻数 遭難通信 緊急通信 一般通信 海難船舶 一般船舶電話 陸上電話 口頭 その他 一般通信 一般船舶電話 相手船舶 陸上電話 口頭 一般通信 海のダイヤル110番 一般船舶電話 付近在泊船 陸上電話 口頭 その他 航空機 その他 陸上電話 陸上目撃者 その他 一般船舶電話 陸上電話 その他 口頭 その他 一般通信 一般船舶電話 海難船舶 陸上電話 その他 一般通信 一般船舶電話 相手船舶 陸上電話 その他 一般通信 一般船舶電話 付近在泊船 陸上電話 その他 陸上目撃者 陸上電話 一般通信 一般船舶電話 その他 陸上電話 その他 ボ ト 等 漁 船 51 海難情報発信者 情報入手方法 隻数 遭難通信 2 一般通信 6 118番通報 269 一般船舶電話 69 海難船舶 陸上電話 81 遭難信号 9 口頭 8 その他 147 一般通信 1 118番通報 26 一般船舶電話 6 相手船舶 陸上電話 19 口頭 4 その他 1 一般通信 5 118番通報 63 一般船舶電話 12 付近在泊船 陸上電話 24 口頭 2 その他 10 一般船舶電話 1 航空機 その他 2 118番通報 21 一般船舶電話 1 陸上目撃者 陸上電話 73 その他 6 一般通信 2 118番通報 40 一般船舶電話 3 その他 陸上電話 54 口頭 3 その他 11 遭難通信 4 一般通信 14 118番通報 61 一般船舶電話 24 海難船舶 陸上電話 124 遭難信号 1 口頭 15 その他 25 遭難通信 1 一般通信 18 118番通報 20 相手船舶 一般船舶電話 13 陸上電話 37 口頭 2 その他 5 一般通信 7 118番通報 43 一般船舶電話 11 付近在泊船 陸上電話 70 口頭 3 その他 3 航空機 その他 1 118番通報 19 一般船舶電話 1 陸上目撃者 陸上電話 68 口頭 2 その他 8 一般通信 1 118番通報 21 一般船舶電話 13 その他 陸上電話 70 口頭 7 その他 14 船種 そ の 他 52 海難情報発信者 情報入手方法 隻数 遭難通信 一般通信 118番通報 海難船舶 一般船舶電話 陸上電話 口頭 その他 一般通信 118番通報 相手船舶 一般船舶電話 陸上電話 その他 一般通信 118番通報 一般船舶電話 付近在泊船 陸上電話 口頭 その他 118番通報 陸上目撃者 陸上電話 一般通信 118番通報 その他 一般船舶電話 陸上電話 その他 1 7 9 12 15 2 9 7 3 3 6 1 6 14 9 8 1 1 2 16 1 3 3 14 4 3.3 緊急時における連絡手段の確保等に関するアンケート調査 3.3.1 アンケート調査の結果 53 3.3.2 所見 (1) 船舶の大きさ、乗船者(2 項、5 項関連)漁船、プレジャーボート等では 5 トン未満の 船舶が、それぞれ 72.3%、75.9%と多くを占めている。また、漁船は一人乗りが 59%、プ レジャーボート等は 28%である。 これらの状況から、装備する通信機器については、より小型化、軽量化及び低価格化が 求められ、また特に一人乗り船舶における海中転落対応が求められる。 (2) 行動海域(6 項関連) 漁船では 5 海里未満が 49%、10 海里未満が 62%で、プレジャーボート等では 5 海里未 満が 53%、10 海里未満で 75%にのぼっている。また、両者ともに 20 海里未満が大半で ある。 これら活動海域の陸岸からの距離は、後述の各種通信機器について検討を進める場合 には、十分に参考とする必要がある。 (3) 緊急事態の経験(9 項関連) 緊急事態の経験は、約1/4の者が経験しているとのことで意外に多いと思われる。 このことは海上活動の危険性の大きさを示しているといえる。 衝突、乗揚げ、転覆などの緊急性の大きい海難の他、機関故障、推進器障害などが多 発しており、後者といえども小型船舶の場合は救助が遅れた場合には2次海難に陥る可能 性もあることを認識する必要がある。 (4) 主に使用する通信機器と緊急事態に使用する通信機器(7 項、10 項、12 項関連) 7 項「船上で主に使用する通信機」では、漁船では漁業無線(40.1%) 、携帯電話(39.3%) でほぼ同じレベルにあり、次いでアマチュア無線(6.2%)などとなっている。 プレジャーボート等では、携帯電話が半数(53.3%)以上も占めており、次いでアマチ ュア無線(16.9%) 、マリンVHF(14.0%)と続いている。 また、10 項「救助を求めるために使用した通信手段」は、漁船では携帯電話(39.2%) と漁業無線(36.7%)の二つの使用が多く、他の手段は少ない。プレジャーボート等では、 携帯電話が半数近く(47.1%)次いでアマチュア無線(12.5%) 、マリンVHF(11.0%) と続いている。 また、12 項(1)の⑨「携帯電話の搭載(所有)」では、プレジャーボート等では 85.9%、 漁船でも 73.2%が携帯電話を船に搭載(携帯)している。 これらの状況は、携帯電話の活用の検討及び携帯電話と他の通信機器の相互補完関係に ついて検討する必要があることを示唆している。 (5) 緊急通信機器の必要性(11 項関連) 「必要を感じない」が「必要である」より多くなっていることは、問題視されること であるが、前述のように、小型船舶が多いこと、活動海域が沿岸部のものが多いこと、ま たアンケート設問の「特別の機器」(この設問は対象が明確でないが)について「イパー ブ」を想定して書いた人が多いことによるものと推測される。 88 「必要性を感じない」具体的理由の記載には「現有の通信機器で十分である」が非常に 多く(その半数以上が携帯電話)、 「必要性を感じる」記載には「現有通信機器では通信で きない海域がある(その半数以上が携帯電話) 」との相反する意見がみられるが、これは 活動海域の遠近を反映しているものと思われ矛盾するものではないと思料する。 また、このことは近距離での携帯電話の有効性と、距離が離れた海域では他の通信器機 を必要とすることを示唆している。 また、「万一の場合に簡単、かつ確実に連絡できる機器が必要」が多いのは、イパーブ 類への期待の大きさを表しており、「転覆、海中転落等に対応できない」が多いのは、小 型船舶に多くみられ乗船者の生命に直結するこの種事態への対策を強く求めていること を示している。 (6) 機器に対する知識(12−(1)項関連) 漁業無線については漁船、プレジャーボ−ト等双方に、またマリンVHFについては プレジャーボート等によく知られているが、他の機器については知られていない実態を浮 き彫りにしている。 特にイパーブについては、小型船舶の大半には搭載義務がないために関心が薄いものと 思われる。 いずれの機器についても、周知・広報の重要性、その強化の必要性を示している。 (7) イパーブについて(13 項、12−(2)項関連) 13 項「イパーブを搭載(自主)したいと思う」が全体で 23%、 「思わない」が 53%と 後者が倍以上となっている。 しかし、12 項の(2) 「搭載したいと思う器機」では、 「イパーブ」と「小型イパーブ」 を加算した数値はプレジャーボート等、漁船ともに最も多くなっているのが注目され、こ の種機器への期待は高いことが伺える。 搭載希望者は「万が一の場合に信頼できる」「何時でも何処でも使用できる」などの有 用性を評価し、いわゆるイパーブの搭載を望んでいるといえる。 後者は、 「価格が高い」 「義務でないから」 「機器が大きい」が理由で、小型化、低価化 を望む声が多く、小型船舶への搭載を促進するためには、これらをクリアーする必要性が 大きいことを示唆している。 なお、回答からは、購入が期待される価格は 5∼6万円程度が目安と思われる。 (8) その他各通信機器に関する主な意見 前各項に記載した以外のアンケートに書かれた指摘、意見(要望)などの主なものは 次のとおりである。 なお、同じ事項に各機器について記載があった訳ではないので、記述のない機器につい ては問題がないという訳ではないと思われるので、その点留意すること。 ① 機能に関するもの 「通信距離が 漁業無線、マリンVHF、400メガ無線、アマチュア無線などでは、 89 短い」 「通信できない海域がある」という指摘が多く見られる。 小型船舶といっても比較的沖合海域において行動する船舶の意見と思われるが、特 に携帯電話利用者にこのような意見が多いのが目立っている。 なお、400メガ無線については、 「通信距離が長い」との評価もみられる。 ② 通信相手に関するもの 漁業無線、マリンVHF、400メガ無線などでは、「ワッチしていない時がある」 との肝心の時への不安がみられる。 また、アマチュア無線では、「必ずしも海事関係者と通信ができるとは限らない」と の指摘がある一方「誰とでも連絡がとれる」 「使用者が多い」との意見もみられる。 マリンVHFについては上記と異なり「多数の船が搭載している」という意見、携 帯電話では「何時でも、何処とでも連絡できる」という意見がある。 ③ 混信などに関して 漁業無線では「漁業者の話しが多い」 「混信が多い」、マリンVHF、400メガ無 線、アマチュア無線では「混信が多い」 、MCA移動無線では「聞き取りにくいこと がある」との指摘がみられる。 ④ 免許などに関して マリンVHF、400メガ無線では、表現の違いは様々であるが、現在の免許制度、 規制について問題ありとし、これらの廃止、緩和を求めている意見が多くみられる。 ⑤ 価格に関して マリンVHF,400メガ無線について、 「価格が高い」「低価格化を望む」との意 見がみられる。 他方、携帯電話、マリンホーン、ワムネットサービスでは、 「価格が安い」という意 見がある。 なお、衛星携帯電話の低価格化を望む意見もみられる。 ⑥ その他 次のような意見がみられる。 ・突発的な転覆や海中転落等の乗員落水時に対応できるものが必要である。 ・救命胴衣(浮器)と緊急通信機器(防水)とを一体化する。 ・マリンVHFでの気象・海象の定時放送があってもよい。 ・携帯電話については、大型船や浮標などを中継、ブースターとして活用を図る。 90 3.4 遭難時の連絡手段として小型船舶搭載に適した通信機器類の検討 3.4.1 既存設備、機器類の現状及び検討 現存の沿岸海域を航行する船舶で使用できる通信設備システムの調査を行い各々につい て、制度、技術面からの問題点の抽出を行い、改善の可能性を検討することとした。なお、 調査内容及び調査結果の一部を資料編に添付した。 調査を行った現存の海上通信設備のうち、表 3.4.1-1 に「日本沿岸海域を航行する船舶 が使用できる通信システムの概要」を示す。 前記調査結果では、一部の機器で問題点の指摘はあるが、全体的に現状把握が不十分と 考えられる。今後、補充調査を行い、今回の調査研究会で行った 3.3 項のユーザへのアン ケート結果を併せ、対応の検討を行うこととする。 既存の通信設備のうち、27MHz帯設備(DSB/SSB)や国際VHF設備のよう に、音声による安全・緊急通信が行える機能を持っている設備はあるが、電源を有しない 船舶や、船舶の転覆、沈没等の遭難時の救命設備として機能しないことが懸念される。 国際的にはSOLAS条約で衛星イパーブやレーダートランスポンダ(SART)を救 命設備として指定している。しかし、義務化された船舶以外へのこれら設備の搭載は少な く、3.3 項のアンケート調査でも、必要性を理解していても価格面などにより装備されな い状況にあるので、今年度の調査研究会でこれら救命設備のうち、特に小型船舶用に適し た衛星イパーブの検討に力を入れ、国内、海外製品の調査や基本性能の検討を行うことと した。 3.4.2 非GMDSS小型船舶用衛星イパーブの検討 平成4年2月1日から段階的に導入が開始され、平成11年2月1日から全面移行とな ったGMDSSにおいては、遭難船舶の遭難自動通報設備として、COSPAS−SAR SATシステムを利用した衛星イパーブの搭載が義務化された。 (1) COSPAS−SARSATシステム COSPAS−SARSATシステムは、周波数 121.5MHz 及び 406MHz で送信する遭 難ビーコンの位置を決定するように設計された、衛星を利用した捜索救助システムである。 COSPAS−SARSATシステムの基本概念を図 3.4.2-1 に示す。 ① システムの性能概要 COSPAS−SARSATシステムの性能の概要は次の通りである。 特 性 検出確率 位置測定の確立 位置精度 容 量 121.5MHz 406MHz ――― 0.9 10∼20 km 10 0.98 0.9 5km 以内 90 91 表 3.4.1-1 電気通信 事業回線 との接続 システム名 局 中短波・ 短 波 無線電話 船舶局 2,4,6,8,12,16,22 MHz 帯 150 W 以下 通話範囲:280km 以上 特定 船舶局 27 MHz 帯、1W DSB、55CH 通話範囲:60km 船舶局 27 MHz 帯、25W SSB、90CH 通話範囲:100km 27 MHz 帯 無線電話 種 日本沿岸海域を航行する船舶で使用できる通信システムの概要 シ ス テ ム 概 要 不 27 MHz 帯、5W DSB、66CH 通話範囲:60km 緊急時 の通話 通信の 相手方 所属海岸局 港湾海岸局 船舶局 船舶に備付け 可 所属海岸局 船舶局 船舶に備付け 所属海岸局 船舶局 船舶に備付け 可 CH16 海岸局 船舶局 船舶に備付け 可 CH16 所属海岸局 船舶局 船舶に備付け 可 一部可 可 可能(但し 有無線接続 装置 要) 直接不可 備 考 40 MHz 帯 無線電話 特定 船舶局 国際VHF 船舶局 150 MHz 帯、25W、 12-14CH 通話範囲:60km マリン VHF 特定 船舶局 150 MHz 帯、5W、20cH max 通話範囲:15 - 30km 400MHz 帯 無線電話 特定 船舶局 400 MHz 帯、5W、3CH 通話範囲:30km 不 可 不 可 所属海岸局 船舶局 船舶に備付け 携帯型 マリンホー ン 携帯局 400 MHz 帯、5W、16CH 通話範囲:30km 不 可 不 可 陸上・海上 の携帯局 携帯型 携帯 移動局 800 MHz 帯 5W 事業者の公開エリア 加入者電話 携帯電話 可 能 携帯型 (自動車電話は 据付型) アマチュア 無線 アマチュア 無線局 3.5 MHz から 1200 MHz 不 可 アマチュア 無線局 据付型 携帯型 インマルサ ット 船舶 地球局 インマルサット・船 舶地球局 C、M は小型船 舶への搭載が 可能 不 1.6 / 1.5 GHz 帯 衛星船舶電 話(N-STAR) A、B、C、M 型 (M 型以外は GMDSS 対象設備) 2.6 / 2.5 GHz 帯 可 一部可能 有無線接続 装置必要 可 能 (KDDI-NTT) 可 (NTT) 92 携帯型 118 番で 海上保安庁 に接続 不 可 可 M 型以外は 一挙動で遭 難発呼可能 118 番で 海上保安庁 に接続 加入者電話 N-STAR 端末 加入者電話 据付型 ② 406MHzビーコン端末装置 COSPAS−SARSATシステムにおけるビーコン端末装置は図 3.4.2-1 の システム概要に示す通り、EPIRB(海事救難用)、ELT(航空救難用)及びP LB(個人の救難用)の3種類に分類される。 表 3.4.2-1 に各端末装置の比較、相違点を示す。 (2) 衛星イパーブ及び小型船舶用衛星イパーブの現状と問題点 ① 衛星イパーブと小型船舶用衛星イパーブの相違について 衛星イパーブは、GMDSSにおける衛星非常用位置指示無線標識としてSOL AS条約で決められた船舶への装備を義務付けた設備で、COSPAS−SARS ATの性能基準に加え、IMOの「406MHz で運用する浮揚式衛星非常用位置指示無 線標識の性能基準」 [最新の改訂版は、決議 A.810(19)]の一般要件と、追加要件 を適用したものである。 我が国では、船舶救命設備規則で浮揚型(自動離脱装置付)と非浮揚型が規定さ れているが、ほとんどの船舶には浮揚型(自動離脱装置付)が装備されている。 一方、小型船舶用衛星イパーブは我が国が独自に導入した設備で、平成5年5月 の「小型船舶安全規則」の全面見直し、改正時に「小型船舶安全規則」が適用され る小型船舶に対して装備を要求された設備である。 設備の性能基準は、一般船舶用衛星イパーブの性能基準に対して、小型船舶の実 体に合わせて幾つかの項目を緩和されている。 ② 小型船舶用衛星イパーブの現状と問題点について 小型船舶用衛星イパーブの設備は、装備の対象となる小型船舶以外に、対象外の 小型漁船、レジャー船への搭載・普及を図るため、表 3.4.2-2 に示す通り衛星イパ ーブに比べ一部の性能基準を緩和し低価格化を図ることとした。しかし、現在小型 船舶用衛星イパーブとして型式承認を取得し、販売されている設備は1機種しかな い。また、船舶への装備の実体は、装備が対象となる小型船舶以外には殆ど普及し ていない。これには、次のような問題があると考えられる。 ア 対象となった船舶の絶対隻数が少なく、また、装備する場合は、一般船舶用衛 星イパーブ(自動離脱機能は無い)でも可とされたため、需要増加への期待が乏 しく開発メーカーが殆どなかった。 イ 基本設計は一般船舶用衛星イパーブと同じであるので、小型船舶に装備するた めに適した小型化に至っていない。 ウ 小型船舶用衛星イパーブは、一般船舶用衛星イパーブの性能基準の一部を緩和 された効果で販売価格は、一般船舶用衛星イパーブの1/2以下(約4割)との 調査結果がある。しかし、ユーザの意識との開きが大きい。 エ 出荷検定時での周波数安定度の測定がIEC基準より厳しい測定法となってお り、発振器に汎用品が利用出来ず特注品を用いるため、機器コストに影響してい 94 表 3.4.2-1 COSPAS−SARSATにおける端末装置の比較 No 項 目 EPIRB ELT 1 名 称 Emergency Position Indicating Radio Beacons 2 用 途 海事救難用 3 性能概要 PLB Emergency Locator Personal Locator Transmitters Beacons 航空救難用 個人の救難用 無線関係 ・ 搬送波周波数 : 406.025 / 406.028MHz ± 2KHz -9 ・ 短期間(100ms)周波数安定度 : 2 × 10 ・ 中期間周波数安定度 : 1 × 10 ・ 中期間周波数安定度のばらつき: 3 × 10 -9 /min -9 ・ 送信出力 : 5W ± 2 dB ・ データ・エンコーディング : バイフェーズ L ・ 変調(位相変調) : 1.1 ± 0.1 ラジアン メッセージ関係 ・ 反復率 ・ 送信時間 ・ ・ ・ ・ プリアンブル ビットレート ビット同期 フレーム同期 ・ 継続送信時間 4 温度条件 5 環境条件 6 連続動作時間 7 デジタル・メッセージ : 50 秒 ± 5% : 440ms ± 1% (短メッセージ) 520ms ± 1% (長メッセージ) : 160ms ± 1% (短メッセージ) : 400bps ± 1% : 「111111111111111」( 1 ∼ 15 ビット) : 「000101111」 (16 ∼ 24 ビット) 「011010000」(テストモード) : 45 秒をこえないこと クラス1:-40 ∼ +55 ℃ / クラス2:-20 ∼ +55 ℃ 湿度、高度、耐水圧、防水性 の環境条件は主管庁で決定する。 24時間以上 24時間以上 24時間以上 (IMO GMDSS 対応は 48時間以上) 25 ビット目:0 = 短メッセージ / 1 = 長メッセージ 26 ビット目:1 = 利用者プロトコル(0 = 海事/位置プロトコル) 27∼36 ビット:ITU-R RR 付録第 43 号に基づく国別番号 37∼39 ビット 010 : 海事 001 : 航空 (37∼39 が 011) 40∼42 ビット 43 ビット以降 010 : 海事 000: 航空 製造番号他の各種デジタル情報 95 ----110 : 個人 表 3.4.2-2 No 項 目 1 性 能 概 要 衛星イパーブと小型船舶用衛星イパーブの比較 衛星イパーブ 小型船舶用衛星イパーブ 備 考(緩和の理由) 無線関係 ・搬送波周波数:406.025/406.028 MHz ± 2KHz -9 ・短期間(100ms) 周波数安定度 : 2 × 10 ・中期間の周波数安定度 : 1 × 10 -9 /min ・中期間周波数安定度のばらつき: 3 × 10 -9 ・送信出力 : 5 W ± 2 dB ・データ・エンコーディング : バイフェーズ L ・変調 (位相変調) : 1.1 ± 0.1 ラジアン メッセージ関係 ・反復率 ・送信時間 ・プリアンブル ・ビットレート ・ビット同期 ・フレーム同期 ・継続送信時間 ホーミング信号 ・周 波 数 ・送信出力 ・変調方式 : 50 秒 ± 5% : 440 ms ± 1%(短メッセージ) 520 ms ± 1%(長メッセージ) : 160 ms ± 1% : 400bps ± 1% : 「111111111111111」 : 「000101111」 「011010000」(テストモード) : 45 秒を超えないこと : 121.5 MHz ± 6.075 kHz : 50 mW ± 3 dB(PEP) : 振幅変調 2 作 動 時 間 48時間以上 3 起 動 方 式 自動及び手動 4 ストロボライト 0.75 カンデラ以上 ‐‐‐‐‐‐ 5 離 脱 方 式 自動離脱(4m以内) 手動取外し 6 浮 揚 方 式 7 温 度 条 件 浮 24時間以上 手 揚 動 型 -20 ∼ +55 ℃ (動作) / -30 ∼ +70 ℃ (保存) 8 落 下 条 件 9 水 密 性 小形船は遠方を航行する ことがまれで、救助に比較 的時間を要しないため。 自動浮揚の義務がないた め 乗員が持出すため必要な い 自動浮揚の義務がないた め 20m 5m 10 m / 96 5分 小型船は水面からの高さ が低い(他の救命設備に合 わせた) る。 オ 船舶識別信号(MMSI)の取得のための付加経費や、手続き面で装備終了ま でに期間がかかる。 (3) 新しい小型船舶用衛星イパーブの検討 小型船舶に救命設備を導入・普及させるには、小型化と低価格が重要なポイントと なり新しく小型船舶用衛星イパーブを検討する場合もこの2項目を重点に検討する 必要がある。 ① 小型化 表 3.4.2-3 に現有のGMDSS対応の衛星イパーブ及び小型船舶用衛星イパーブ 外形寸法例を示す。 表 3.4.2-2 に示す通り小型船舶用衛星イパーブの性能要件は緩和されているので、 新たに小型船舶用衛星イパーブとして、現在の技術を使用して開発した場合は、表 3.4.2-3 に示す小型船舶用衛星イパーブ(本体)に対し、外形寸法で約 70%、容積 で約1/2までの小型化の可能性がある。 表 3.4.2-3 現有衛星イパーブ及び小型船舶用衛星イパーブの外形寸法の例 (国内、海外製品より選択、小形船舶用は国内製品) 外形寸法 及び 重量 高さ(アンテナ含 む) 高さ(本体) 幅 × 奥行き (単位:mm) 重量(kgf) 備 一 般 船 舶 用 衛 星 イ パ ー ブ (本体) A B C D E 小型船舶用 (本体) 795.5 651.5 695 430.0 432.0 651.5 305.5 φ175 280.0 φ170 390 φ150 210.0 110.5 × 108.5 --173 × 160 280.0 φ170 2.1 2.4 1.7 1.9 3.3 2.4 コンテナ式 430 X 220 X 160 コンテナ式 433 X 145 X 128 コンテナ式 455 X 220 X 180 考 ② 低価格化 価格については生産台数により左右されるが、現在の小型船舶用イパーブの性能 要件で製品化し、一般船舶用衛星イパーブの約10倍の規模で生産することで算出 した場合は、現在の小型船舶用衛星イパーブの約1/2近くまでの低減が可能であ ると思われる。 さらに、許可申請手続き(特に識別番号の指定方法)の簡素化などが図れれば付 加経費が軽減されると思われる。 ③ PLB(個人の救難用)の導入 97 小型船舶用イパーブを新たに開発した場合でも小型化、低価格化にも限度がある。 そのため、小型船舶に普及させる設備として、表 3.4.2-1 に示すPLB(個人の 救難用)の海上使用が考えられる。 参考 : PLBは 121.5MHz(121.5MHz 及び 243MHz)の周波数を使用する機器が主 流で、小形で安価な製品が海外で利用されている。 しかし、COSPAS−SARSATにおいては、121.5MHz(121.5MHz 及び 243MHz)の周波数の信号を衛星で処理することを中止する決定がされ ており、海外でもこれらに代えて 406MHz の周波数を使うPLB小型化、低 価格化の検討が始められている。 表 3.4.2-4 に、現存するPLBの外形寸法の例を示すが、小型な物であることが わかる。 表 3.4.2-4 現存PLBの外形寸法の例 (海外製品のみ) 外形寸法他 (単位:mm) 高さ(アンテナ除く) 幅 奥 行 き (gf) 重 量 水 密 性 電 池 寿 命 F 165 95 50 450 1 m/1 H 5.5 年 G 154 70 34 315 1 m/1 H 4 年 H 150 70 45 600 2m/1 H 5 年 I 121 57 25.4 250 1 m/1 H 4 年 PLBを海上使用とした場合の利点や問題点など検討すべき課題は次の通りであ る。 ア PLBとした場合の利点 ・ 識別番号をメーカーで取ることができるので、出荷するまでの工程の合理化 と時間の短縮が図れる。 ・ 個人の装備とするので、一人乗船の転落事故時の位置確認に有効である。 イ PLBを導入する場合の検討課題 ・ 我が国ではPLBの制度がないので、新たな制度化の検討が必要。 ・ 検査に係わる要件を適用外とするか、大幅に簡略化するなどの検討が必要。 ウ PLBの性能要件の検討 機器の性能要件の内、COSPAS−SARSATの基本要件に加え、PLB としての環境条件や運用面について幾つかの要件を検討する必要がある。 ・ 作動時間:海外のPLBは24時間であるが、更に短縮するか、できるか検 討 ・ 起動方式:自動起動か手動起動か。 98 ・ 浮揚方式:浮揚式か非浮揚式か、海外のPLBは非浮揚である。 ④ ・ 装備方法:船舶取付か救命胴衣のポケットに収納可能なものにできるか。 ・ 水 密 性:10mが必要か、海外のPLBは1∼2m 将来に向けての課題 現在の基準及び技術では、表 3.4.2-4 でのFからHの外形寸法が限界と考えられ る。 (Iは現在、もっとも小さく新たな技術的な工夫がされている) 前述の通り、現在のCOSPAS−SARSATの要件では小型化、低価格化に 限度あることから、性能基準である周波数安定度の一部緩和することが検討されて いる。 この緩和により、消費電力が少ない発振器の使用が可能となり、小形電池が採用 できて、更なる小型化が可能となるとともに、安価な発振器が使用できる。 しかし、問題は位置精度・確率が悪化することである。これに関してCOSPA S−SARSATから、現時点では の緩和は認められない 位置精度・確率の悪化が明白な周波数安定度 ことが公式に表明されている。周波数安定度の一部緩和は 小型化、低価格化に対して大変有効であるので、我が国としてもCOSPAS−S ARSATに提案していきたい。 3.4.3 その他の機器類の検討 小型船舶において一般通信や緊急・遭難時の連絡に利用できる設備の検討を行うために、 今回「日本沿岸海域を航行する船舶で使用できる通信システム」の調査を行ったが、併せ てそれ以外に海上で使用されている通信設備や、陸上通信設備の調査も行った。 これは、携帯電話のようにある程度の海域まで陸上と同様に利用できる設備や、MCA のように海上での業務通信に利用している設備があるため、これらを含めできるだけ多く の設備について小型船舶への利用の可能性や、一部の変更での利用を検討するために調査 を行ったものである。 一方、3.3 項のアンケート調査でも多くの船舶が携帯電話を利用しており、携帯電話の 通話可能エリアでは一般通信、緊急通信に役立つ設備であるとされているが、通話可能エ リアについての保障がないことや、海岸線から遠く離れる船舶に対しては利用出来ない等 の問題がある。 海上活動者のニーズに応えるべく、通信の高度化を図るためデジタル化による電子メー ル、インターネット等のサービスを可能にするなど、現有の様々な機器を含め今後検討を 行う必要がある。 さらに、付加機能として陸船間のみでなく船舶間の通信機能や遭難時通信や、船舶の情 報の伝送の可能性の検討も合わせて行うため、 従来のような単独の設備、 システムでなく、 必要により船舶や海上構造物を利用した中継システムや、陸上ネットワークでサポートを する等、海上、陸上の枠を越えたネットワークの構想も検討課題である。 99 3.5 外国製衛星イパーブ等の性能比較 平成 12 年度の小型船用衛星イパーブの検討では、国内、海外製の衛星イパーブと小型船 用衛星イパーブ並びに海外製のPLBの例について、外形寸法の比較を実施した。また合 わせて比較を行なった海外製の衛星イパーブとPLBを入手出来たので、今年度はこれら の製品についての性能確認を行なった。なお、各機器の性能試験はシールドルーム内での 試験のみとした。 3.5.1 各製品の比較 表 3.5.1 に各々の比較を示す。 表 3.5.1 外国製衛星イパーブ等の性能比較 製品A 製品B 製品C PLB EPIRB EPIRB 70W×34D×156H 115W×105D×210H 115W×105D×210H 320 770 770 塩化 チオニール・リチウム 二酸化 マンガン・リチウム 二酸化 マンガン・リチウム 単2×3本 単2×3本 単2×3本 動作時間 (H) 24 48 48 自動離脱装置 なし あり あり 水センサー なし あり あり ホーミング信号 なし 121.5MHz 121.5MHz 表 示 灯 なし あり あり 位置情報 なし あり(GPS内臓) あり(GPS内臓) OCXO (ユーロウェーブ製) OCXO (ユーロウェーブ製) OCXO (ユーロウェーブ製) 10.150625MHz 源振 12.688375MHz 源振 12.688375MHz 源振 機器分類 外形寸法 (mm) 重 量 (g) 使用電池 406MHz 発振器 中期安定度 (国内試験法で測定) -9 -9 2.04×10 0.81×10 -9 0.86×10 -9 (規格 1×10 以下) 中期安定度 -9 (コスパス試験法で測定) -9 (規格 1×10 以下) MMSI -9 -9 1.33×10 0.30×10 0.43×10 常温でのデータ 常温でのデータ 常温でのデータ サンプル購入のため、各機ともシリアル番号を書込み 100 3.5.2 考 察 衛星イパーブの小型化、低価格化についてのキーポイントは、位置精度の性能を左右す る周波数安定度を確保する発振器の性能であることから、今回の性能確認では、中期周波 数安定度についての試験を中心に実施した。 なお、各機とも、その他の機能・電気的性能とも各社の仕様を満たしている事の確認は された。以下に各機の性能について考察する。 (1) 製品A 本製品は、昨年の報告で、現在の性能基準で設計した場合に国内メーカでも製品化が 可能な外形寸法であるとした機器で、海外においても小型の部類に属し、主にPLBと しての使用を目的としている。 構造は、筐体をシリコン接着剤で接着することで、水密性を保つ方法を取り入れてい るため、電池交換や内部の修理点検は極めて困難であり、使い捨てを想定した製品の可 能性がある。また、水密性はあるが浮揚性はなく、浮揚させるためには、別売りの収容 袋が必要である。 性能比較で判るように、周波数安定度の試験において、国内の試験法及びコスパスサ ーサットで規定の測定法でも規格を満足していなかった。これは、入手した機器の問題 かも知れないが、これだけ規格から逸脱していると、測位精度に影響が生じると考えら れる。なお、海外の検定では、多少周波数安定度が外れていても実際の動作(遭難通報動 作)確認で救助への支障がなければ問題なし、とされる場合があるとのコメントがあった。 (2) 製品B 本製品は、コスパスサーサットの技術基準並びにIMOの性能要件に完全に合致し、条 約船に装備される設備で、同性能機器の中でも小型の製品である。 EPIRB本体はコンテナ内の自動離脱装置に取り付けてあり、水圧を検出するとコン テナから自動的に離脱し浮上する構造となっている。しかし、構造的にコンテナへのE PIRB本体の収納に安定感がなく、コンテナ内部で本体が外れ易い。このため、自動 離脱装置は水圧を感知することにより、バネで離脱させる方法となっているが、本体が 正しく収納されていない場合に離脱するかの心配が残る。 電池交換は、上蓋を取外した後、プリント基板や水検知センサーなど全てのユニットを 分解・取外し行う構造であり、作業は簡単であるが手間がかかる。 なお、電気的性能については、周波数安定度を含め問題が無い事は確認した。 本製品はGPSの内臓が特徴であるが、今回フィールドでの試験が出来なかったので、 GPSによる位置とEPIRBによる位置の相関に関するデータの検証は行なえなかっ た。 101 (3) 製品C 本製品の本体は (2) と同じ製品であるが、自動離脱装置が無く、架台による取付けで あり、性能的には十分すぎるが、国内での小型船用衛星EPIRBとしての装備に適し た機器と考えられる。従って本製品の考察は (2) と同じであるが、本製品は架台への取 付けであるため、取付け・動作設定後の誤発射防止は水センサーの動作のみに依存する こととなるため、海水を被ったり、雨などによる誤発射の心配が考えられる。 3.6 海上用PLB(Personal Locator Beacon)の開発 3.6.1 海上用PLBの開発に至る経緯 平成 12 年度に実施した「小型船舶の連絡手段の確保に関するアンケート調査」の結果を 見ると、衛星イパーブの搭載義務のない船舶は、機器が高価、形状が大きい等の理由によ り、自主的に衛星イパーブや小型船用イパーブを搭載している小型船舶は殆んどないのが 現状である。 3.4.2 項において説明した通り、現在我が国において製造販売されている小型船用イパー ブは、義務船用衛星イパーブから自動離脱装置を取除き、また、動作時間や落下条件を緩 和しただけで、基本的には同様のものであって、小型船舶搭載用に十分小型化されたもの となっておらず、価格については義務船用衛星イパーブの約半分であるが、ユーザの求め ている価格帯とは未だ隔たりがある。 本委員会での調査研究の結果、現在の技術で最初から小型船用として開発した場合には 外形寸法で約 70%、容積で約 50%までの小型化の可能性があること、また、価格について は、現在の義務船用衛星イパーブの約 10 倍規模での生産台数で仮定すると、現在の小型船 用イパーブの約 50%までの低減の可能性があることが判った。 しかし、逆にこれが現在の限界であって、大きさ、価格ともにユーザが望むものと合致 させることは困難な状況である。そこで着目したのが、個人用の遭難信号発信装置として 開発され、これから普及・促進が進むと考えられる 406MHz 帯のPLBである。 ユーザの要望に適う程度の小型化、低価格化の可能性のあるこの機器を、新たな小型船 用遭難通報設備として使用するために小型船用PLBの開発を行なう事とした。 3.6.2 海上用PLBの仕様及び模型 前項の開発に至る経緯に基づいて、PLBを開発する事での基本調査と基本設計を行い、 図 3.6.2.1 に示す外観の小型船用PLBの仕様及び模型を作成した。 小型船用PLBの仕様を以下に、模型による外観イメージを図 3.6.2.2 に示す。 102 また、参考資料−3として添付の「小型船用PLBの開発に関する報告」に基本設計に ついての詳細を示す。 図 3.6.2.1 PLBの外観図 103 (1) 機能仕様 ① ホーミング周波数 :121.5MHz ② 表示灯 :通電・送信を表示する LED 表示器を有する ③ テスト機能 :電池電圧確認、1バーストの送信を含む機能あり。 1バーストの送信時間は440ms±1%で、送信している ことを確認できる LED 表示機能有り ④ 浮揚 :浮き得るが自立しない。(横になったままの姿勢で浮く) 浮かせた状態で送信するにはオプションの 浮き が必要 ⑤ 再帰反射板 :なし ⑥ 表示 :製造者名、機器の型式、製造番号、製造年月、簡易操作法 起動および停止法、電池の有効期限、MMID ⑦ 余熱時間 :15分以内 ⑧ 始動方法 :独立した2つ以上の操作でスイッチを ON にする(手 動)水センサーは無し ⑨ 停止方法 :スイッチを OFF にする(手動) (2) 電気的仕様 ・ 一般的仕様 ① 空中線 パターン VSWR :直線偏波 :1.5以下 インピーダンス :50Ω ② 電池 タイプ :パック式二酸化イオウ・リチウム電池(単3サイズ×4本) 公称電圧 :7.2V ③ 動作時間 :24時間以上 ・ 406MHz送信部の仕様 ① 送信周波数 :406.028MHz±1kHz ② 周波数安定度 短期安定度 :2×10−9以下/100ms 中期安定度 :±1×10−9以内/min 中期安定度のばらつき :3×10−9以下 長期安定度 :406.028MHz+2kHz,−5kHz 104 ③ 空中線電力 :5W±2dB以内 ④ 変調 :位相変調 ±1.1±0.1ラジアン ⑤ 符号形式 :バイフェーズ L ⑥ 送信繰り返し周期 :50秒±5%(ランダム) ⑦ 送信時間 :440ms±1% ⑧ 送信立ち上がり時間 :5ms 以内 ⑨ 変調速度 :400bit/s±1% ⑩ 変調立上り、立下り時間 :50μs∼250μs ⑪ 変調対称度 :0.05以内 ⑫ 連続送信 :送信制御と別回路で45秒以内に連続送信を防止 ・ 121.5MHz送信部の仕様 ① 送信周波数 :121.5MHz±6.075kHz ② 尖頭輻射電力 :50mW±3dB ③ 変調 :AM ④ 変調周波数 :300Hz∼1600Hz ⑤ 変調繰り返し周期 :2Hz∼4Hz (3) 機械的仕様 ① 自動離脱機能 :なし(ライフジャケットのポケットなどに入れ常に 携帯する) ② 余剰浮力 :約40g(浮き得るのみ) 浮揚姿勢での送信にはオプションの 浮き が必要 ③ 曳航ロープ :浮力を有するナイロンロープ φ 2mm 引張りの強さ :180kg 長さ :約3.5m ④ 外形寸法 :幅74mm 高さ150mm 奥行44mm (アンテナ・突起を除く) ⑤ 重 量 :約 450g ⑥ 水 密 :水温より45℃高い温度に1時間放置した後、20℃以 下の水に深度2mで5分間放置し浸水がないこと ⑦ 水面落下 :5mの高さから水面への2回落下に異常がないこと ⑧ 使用温度範囲 :−20 ∼55 ℃ ⑨ 保存温度範囲 :−30 ∼70 ℃ 105 図 3.6.2 PLBの外観イメージ(模型) 3.6.3 海上用PLBの評価と今後の課題 今回、基本設計を行い、模型の作成を行なった小型船用PLBは従来の小型船用衛星 EPIRBに比較し大幅な小型化が図られており、表 3.5.1 外国製衛星イパーブ等の性 能比較に示す「製品A」の外形寸法まで近づけることが出来た。しかし、本寸法であって も、設計目標であるライフジャケットへ収容するには十分でなく、更なる小型化軽量化が 必要である。 106 一方、価格については参考資料−3の「小型船用PLBの開発に関する報告」によれば、 要望に適う価格に到達していないと述べられている。価格は生産台数にも依存する事であ るが、更なる技術開発でのコスト低減と普及促進による生産台数を確保することにより低 価格製品の実現を期待したい。 機器の性能については、基本的にはコスパスサーサットの技術基準に基づいて設計され ており問題ないと考えるが、機能、装備、運用面の仕様については十分審議された内容で ないと思われるので、製品化に際してはユーザ始め、関係者と意見交換を行い、運用実体 に合った機器となることを期待する。 現在、外国製PLBの最小製品は、今回の小型船用PLBに比べ、容積、重量で約60% の物が存在する。今回の設計は従来の技術に加え、一部新技術を取り入れているが、更に、 小型船舶に最適なPLBとしての基本仕様の再見直しや、新しい発想と技術開発による超 小型化に加え、価格においても市販の一般部品が使用できる工夫を設計に取り入れ、低価 格化を実現する事が今後の課題である。 3.7 沿岸海域における緊急時の通信手段確保のためのグランドデザイン 3.7.1 グランドデザインの基本方針 海上で活動する全ての小型船に対して、遭難時緊急の場合に使用できる何らかの有効 な通信連絡手段を確保することを基本方針として、グランドデザインを策定する。 3.7.2 船舶用衛星イパーブ 衛星イパーブは、船舶の遭難時の通報設備で、言うまでもなく現在のGMDSS体制の 主役であり、コスパスサーサット衛星を利用したこのシステムは世界中のどこの海域でも 使用が可能で、発信された信号から遭難船舶や遭難海域を判別することができる。 自動離脱装置による自動浮揚と自動発信機能(小型船舶用衛星イパーブにはない)があ り通報の信頼性も高く、現在のところ最高の遭難通報システムといえる。 現在、小型船用衛星イパーブ(又は衛星イパーブ何れでも良い)の搭載義務がある小型 船舶は以下の船舶で、それ以外の小型船舶には搭載義務はない。 〇 海岸から 100 海里以遠の海面で漁労に従事する漁船 〇 限定近海以上の区域を航行区域とする漁船以外の船舶 一方、一般的な地上系通信システムの通信可能エリアは概ね 100Km 以下(参考資料「小 型船に搭載すべき通信機器の検討」を参照)である。従って、この通信可能エリアを越え、 イパーブの搭載を義務付けられる海域までの間を活動海域とする小型船舶について、何ら かの緊急連絡手段を確保する必要があり、その方策が衛星イパーブ又は次項において説明 107 する小型船用 PLB である。 3.7.3 小型船用PLB PLBは既に説明した通り、コスパスサーサット衛星を使用するシステムで、基本的な 性能要件は衛星イパーブと同様である。本委員会においては、小型船舶に衛星イパーブを 搭載するとした場合にユーザーが問題点と考えている、形状、重量、価格といった点につ いて解決すべく検討を行い、本来、コスパスサーサットで個人用遭難通報機器として位置 付けられているPLBに着目し、これを小型船舶に使用できるように検討、基本設計を行 った。 2002 年 3 月現在、我が国には未だPLBを利用する環境の整備出来ておらず、この小型 船用PLBを直ちに導入することは難しいが、将来的には利用環境を整備し沿岸海域を航 行する小型船舶用の遭難通報設備として自主的な搭載を強く奨励するものである。 さらに、本委員会で検討した小型船用PLBは、遭難通報としては小型であり、救命胴 衣を始め、洋服、ズボン等の衣類のポケットに収納できる構造、寸法となっている。この ため、船舶における利用に限定されず磯釣り、潮干狩り等の水際での利用を始めとして、 登山、ハイキング、山菜取り等における陸上での遭難時にも有効であると思料する(ただ し、陸上に利用範囲を拡大する場合は、遭難通報を受信するMCC(我が国においては海 上保安庁)からの警察・消防等の陸上救助機関との連絡・連携体制を検討する必要がある) 。 小型船用PLBは衛星イパーブに比べ汎用性があることから、衛星イパーブよりも利用 範囲の拡大が予想されるが、その結果、量産効果により低価格化が進展し一層の普及が起 きるものと期待される。反面、小型船用PLBは衛星イパーブに比べて小型、軽量、低価 格化を図るため、自動離脱、自動発信などの機能を省略している。このため船上での使用 については特段の問題はないと思料されるが、水中においての使用では手動による発信操 作に加えて海上での本体の姿勢の保持(オプションで浮揚自立のための収納袋等の利用も 可能となる)や救命胴衣などに固着しての自立姿勢の保持といった工夫も必要となる。 3.7.4 既存の海上通信システム 一般通信、公衆通信は利便性が高く、多くの利用者が「何時でも」「どこでも」「だれと でも」通信が可能であることが期待されるが、遭難時の緊急通信はそれに加え、船舶間、 陸船間で安定した、確実な通信を必要とするものである。 船舶の遭難時の緊急通報設備として、どのような海域からも直接海難救助機関に通報可 能であり、最も確実な通報設備は、衛星イパーブ、小型船用衛星イパーブであるがこれら は一般通信に利用される設備ではない。一方、一般通信の手段として従来から小型船舶に おいて使用されている海上通信システムである漁業無線、マリンホーン、マリンVHF、 108 国際VHF、400MHz 帯無線電話、MCA無線、アマチュア無線等(参考資料「小型船舶 に搭載すべき通信機器の検討」を参照)があるが、これらは遭難時には遭難通報用として 利用可能である。 従来の、海上通信システムは、通信可能エリアが広く、利用料金が不要であり、不特定 多数の相手との通信や複数の相手との同時通信も可能である等の特徴がある。さらに、マ リンVHFや国際VHF等のように海上保安庁や一般船舶と直接連絡ができる等遭難緊急 時における利点を有するものもある。反面、これらの海上通信システムは、公衆通信用の 携帯電話と比較した場合、無線局免許の申請、無線従事者資格の取得、定期的な検査の受 検等が必要であり、また機器によっては高価であるといった難点があるものがある。海上 活動者は各システムの特性を勘案のうえ、船舶での使用目的に合致する通信システムの選 択をすることが望ましい。 漁業無線は従来から多くの漁船が装備しており、また、各漁協単位、漁業無線局単位で の通信、情報の伝達体制が確立されているので、今後も現在の体制の存続と、将来的には 各漁協、無線局間を陸上回線等でネットワーク化することで強固な通信体制が確立される ことが期待される。一方、プレジャーボートはマリーナ等を単位として海岸局を設置して 通信、情報の伝達を行っているが、携帯電話の利便性に押され、既存の海上通信システム の利用者は伸び悩んでいる。 全体としては小型船舶においては、特定の通信設備が必要となる既存の海上通信システ ムを設置している船舶は少なくなってきている。 小型船舶、特にプレジャーボートは特定の通信設備を設置せずに携帯電話のみを携帯し ている船舶が多数存在しているが、携帯電話が利用できるエリアを越えて活動する場合も 多数あり遭難時の連絡手段の確保を考えた場合に、相互に補完するようなサービスの構築 が求められる。 その方策として、マリンVHFシステムについては、4.3.1 項に述べるVHF DSCの導 入と、国際VHFのディジタル化に合わせ、現在、各マリーナが単独で運営しているマリ ンVHFの海岸局をネットワークで結ぶことで、一般通信的機能を与え、利便性の向上と ともに、遭難・安全通信にも有効な通信システムとして利用できる可能性が考えられる。 なお、遭難を直接陸上の救助機関(日本でいえば海上保安庁)に通報するものではないが、 遭難した船や救命艇や救命いかだの位置を捜索船舶や捜索航空機のレーダー画面上に現し てしらせ、その位置にホーミングさせるための設備として捜索救助用レーダートランスポ ンダー(SART)がある。SART と EPIRB は比較してその優劣を述べたりされていることが あるが、SART は EPIRB とその役割が異なり、EPIRB は遭難の通報と概略の位置 EIPIRB の位置)を通報することがその役割であるのに対し、SART は救助に来た船舶や航空機に対 してそのレーダーの画面上に特定の信号を現して接近(ホーミング)させ、迅速な救助が できるようにするのが役割である。従って遭難にあたっては、EPIRB と SART の両者がそ れぞれの機能を発揮してはじめて迅速な救助が期待されるものである。 109 3.7.5 携帯電話 平成 12 年度に実施した「小型船舶の連絡手段の確保に関するアンケート調査」の結果を 見ると、調査対象の 8 割以上が携帯電話を携帯して乗船しており、通常使用する通信機器 としては、漁船において漁業無線に次いで第 2 位、プレジャーボートにおいては圧倒的に 1 位の地位を占めている。また調査から 1 年半を経過した 2002 年 3 月の現時点においては、 携帯電話は一層普及して殆どのプレジャーボートの個人が利用しているものと思われる。 携帯電話が、海上においても急速に普及していった背景として、無線局の検査、無線従 事者の資格等が不要であること、機器の価格が安価であること、小型軽量であること、陸 上で使用している機器がそのまま利用できること、通信に秘匿性があること等が挙げられ る。 平成 12 年 5 月 1 日に海上保安庁の緊急番号「118番」をスタートし、翌平成 13 年に は防水型の携帯電話、また GPS 搭載型の携帯電話が相次いで発売される等、携帯電話の海 上での使用についての環境が急速に整備されてきた。 一方、小型船舶の海難発生状況(1990∼1999 年)を見ると、全体の約 93 パーセントが 12 海里未満の海域で発生している。特に、プレジャーボートについては約 99%が 12 海里 未満の海域での発生である。前記アンケート調査による通常活動する海域を見ても、10 海 里未満が約 70%、15 海里未満が約 82%となっており、その大部分が沿岸海域を活動海域 としていることが判る。 現在の携帯電話の通信網は、本来陸上での使用を対象として整備されていったものであ って、海上における利用可能エリアは個々の電話会社によって様々であるが、概ね 10 海里 程度までで、しかも不感地帯が随所に存在する等使用できる海域は限定される。 また、携帯電話での通信は、電話番号を知っている特定の相手方と一対一での通信であ り、例えば、遭難時に、付近に他の船舶の存在があっても、未知のそれら船舶に対して救 助を要請することは困難である。また、イパーブと異なりあくまで遭難者が自らの意思に より通信を行なう必要がある。 これらの特徴を考慮した上での、携帯電話の海上での使用法としては、携帯電話の利用 可能エリアを十分認識したうえで、防水型の携帯電話を救命胴衣に連結する等の方法によ り、常に身の回りから離さないよう心がけ、遭難の際にできるだけ簡便な方法により遭難 の事実を通報できるよう工夫することが推奨される。 なお、携帯電話は必要最小限の通信手段と位置付けることができるが、通信不感帯の存 在や通信が混みあった場合にかかり難いなどのことを考えると、遭難通報の確実性を確保 するためには、他の遭難安全通信システムの利用も考慮すべきである。 また現在では、ワムネットサービス、ヘルプネットといった携帯電話を使用した民間の 緊急通報サービスも運用されており、これらを利用することも有効と思われる。 更に、衛星を使用し、我が国沿岸から概ね 200 海里までをカバーする衛星移動通信サー 110 ビス、これと GPS を組み合わせた緊急通報システムも既にサービスを開始しており、この 対象海域で活動する船舶は考慮すべきものと考える。 3.7.6 搭載を推奨する通信機器等のまとめ 表 3.7.6.1 に小型船舶の航行エリアに対し搭載を推奨する通信機器等を示す。 表 3.7.6.1 非GMDSS小型船舶への搭載を推奨する遭難通報・通信機器 遭難通報・通信機器 ( a ) 衛星イパーブ、小型船用衛星イパーブ、小型船用PLB(1)等の遭難通報機器のいずれか。 ( b ) MF/HF 無線、インマルサット、N−スター(ワイドスター)等の通信機器のいずれか。 ( c ) 漁業無線(27MDSB、27MSSB 等)、マリンホーン、マリン VHF、国際VHF、400MHz 帯 無線電話、MCA 無線等の通信機器(2) のいずれか。 ( d ) 携帯電話(3) (4) 。 活 動 海 域 推奨遭難通報・通信機器 携帯電話の通話が可能なエリアのみを活動海域とする ( a ) の遭難通報機器のいずれか、及び( b )の 小型船舶 通信機器のいずれか。 又は、( c )の通信機器のいずれか。 又は、( d )の携帯電話。 携帯電話の通話が可能なエリアを越え、漁業無線、VH ( a ) の遭難通報機器のいずれか、及び( b )の F等の通信システムの通話可能エリア内を活動海域と 通信機器のいずれか。 する小型船舶 又は、( c )の通信機器のいずれか。 漁業無線、VHF等の通信システムの通話可能エリアを ( a ) の遭難通報機器のいずれか、及び( b )の 越える海域を活動海域とする小型船舶 通信機器のいずれか。 注(1) 将来普及する可能性があるシステムである。 注(2) 活動海域がそれぞれの通信システムでカバーされていることが前提となる。 注(3) 携帯電話は防水型が推奨される。更に GPS が内蔵型であれば有効である。 注(4) ワムネットサービス、ヘルプネット等の緊急通報サービスを利用すれば効果的である。 111 第4章 4.1 今後の課題 イパーブの周知 平成 12 年度に実施した「小型船舶の連絡手段の確保に関するアンケート調査」の結果を 見ると、調査対象の約半数がイパーブについて「知らない」と回答している。GMDSS 体 制が未だそれ程長い歴史を有していないこと、本アンケート調査の対象となったのは GMDSS の対象とならない小型船舶の船長であって、イパーブの搭載義務がなく、通常目 にすることがないという事情は考慮した上でも、小型船舶船長の半数の者が理解していな いという現実は、問題があると考える。搭載義務の有無を問わず、およそ船舶に乗り組む 者全てに対して一層の周知を図る必要があるものと思われる。 また、イパーブによる遭難通報の仕組みを正しく理解することが、イパーブの自主的な 搭載の促進に役立つと期待できる。さらに、船に乗り組む人達は船長に限らず新人も含め て、全ての乗組員がイパーブといった基本的な遭難通報機器及びレーダートランスポンダ ーといった救助用ホーミング機器についての正確な知識をもっていることが大切であり、 特別講習を行うなどを行って周知徹底を図ることが肝要である。 4.2 海上用 PLB の普及 4.2.1 PLB の我が国における使用環境整備 先にも記したが、我が国においては未だ PLB の使用環境が整備されていないことから、 実際の導入に先だって国内の制度化を含めた使用環境の検討、整備が必要となる。 また、本調査研究の結果、模型として作成提案した海上用 PLB は、未だ個人の装備とし て乗船中常時携帯する程度の小型軽量化には至っていない。小型軽量化のネックとなって いるのは、主として電池の問題であるが、これは今後の技術進歩の他、作動時間短縮等の 性能要件の基準緩和によっては一層の小型軽量化の可能性がある。従って、今後も継続的 な研究が望まれる。 4.2.2 PLB の警報への対応 イパーブは船舶搭載用の機器であり、その警報は当然のことながら我が国の海難救助機 関である海上保安庁が受信し、また関係先と調整を取りつつ必要な捜索救助活動を実施し ている。 一方、PLB は元々個人を対象とした救難用機器であり、その使用は湖、川あるいは山岳 といった海上以外の場所も当然想定される。これらの海上以外の場所から発射された警報 について、如何なる機関がどのように対応すべきかについて整理する必要がある。 また、PLB が多数普及するようになれば、警報の件数も増大することが予想され、中に 112 は海上からの発射か、陸上からの発射かが容易に判別できないケースも想定される。こう いった色々な場合の対応等についても、受信側(救助機関)の体制整備が必要である。 その一方で、廃棄される PLB も多数生じること予想されるが、投棄された PLB が誤警 報の原因となることが懸念されるので PLB の管理体制についても確立が必要である。 4.3 既存海上通信システムの活性化 4.3.1 既存海上通信システムの高度化 3.7 のグランドデザインで、既存の海上通信システムについてディジタル化、ネット ワーク化による高度化の検討を課題としている。その内の漁業無線については既にディ ジタル化、ネットワーク化による高度化の検討が進んでいるので、その一例を図 4.3.1 に示す。 図 4.3.1 漁業無線の高度化通信システムの例 漁業無線情報通信システムの高度化イメージ 漁業無線情報管理センタ (社)全国漁業無線協会 中央情報(関係省庁他) 水産試験場 漁業情報 センタ 魚市場 市場情報 海象情報 漁業情報 気象庁 気象図 漁業無線安全指導情報 ファイヤウォール メールサーバ 管理センタ ホームページ 海上保安庁 共同通信社 遭難・安全・ 救助・水路 情報 インターネットFAX データサーバ I/O端末 ISDN(INS64) プリンタ 新聞 <中央情報取込・編集・配信> 公衆電話網 中央情報 配信情報 漁船への配信情報 インターネット 配信情報 地域情報 漁業用海岸局 その他 農水産 試験場 漁業共 同組合 INS64 (各漁業海岸局事務所内) FAX受画装置 FAXシステム 海象情報 漁業情報 A3スキャナー 陸上 地域情報 ファイヤウォール メールサーバ インターネットFAX 編集端末 送信機 地域情報 送信端末 ・地域情報の取込 海上 ・センター配信情報取込 漁労通信 ・取込データの編集/プリントアウト 実現に当たっての課題 ① 陸上局間ネットワーク技術 ・国内無線局及び海外基地局とのネットワーク化 ② 陸船間通信回線設定技術の研究 ・最適周波数選択等による自動回線接続 ・情報の自動配信 公衆電話網へ 小型船の活動海域は既に記述の通り、大半が携帯電話の通信可能エリア内であるが、次 に多いのは、携帯電話の通話可能エリアを越え、VHF 帯での通信が可能な海域を活動する 113 船舶であり、双方で約 90%近くの船舶をカバーできる。従って既存の小型船用の通信シス テムとしては、漁業無線、携帯電話を除けば VHF 帯を使用する通信システムが最適と考え られるので、今後の課題として機器のディジタル化と、それぞれの海上通信システム間、 又は/及び、異なったシステム間を、運用面を考慮し、陸上のインターネット回線により 接続し、ネットワーク化を図り、通信、情報システムの高度化を進める事を提案したい。 海上通信システムで主として使用されている VHF 通信は、いわゆる、国際 VHF として 国際条約により指定されている周波数を使用しており、マリン VHF は本周波数の一部を使 用したシステムである。また、GMDSS においても沿岸海域(A1 海域、我が国においては 設定されていない。 )では、国際 VHF の 70CH を使用した VHF DSC が遭難・安全通信に 利用されている。 GMDSS の対象船舶は IMO の性能基準に規定された VHF DSC の装備が必要であるが、 非 GMDSS 船については各国の主官庁判断で、簡易 VHF DSC が任意で導入可能である。 一方、国際 VHF もアナログ通信から、ディジタル通信への移行の検討が進められており 近い将来には実現する見通しである。ディジタル化により通信の内容も従来の電話に加え、 メール、インターネット通信等のサービスが可能となり、海上通信も陸上通信に一歩近づ く事となる。更に、海岸局で陸上回線やネットワークと接続する事により海上と陸上の間 での通信が可能となり、携帯電話に近いサービスが実現できると考える。 このことから、遭難・安全通信の設備としての主体は簡易 VHF DSC とし、合わせて、 一般通信用として検討、開発するディジタル VHF にも、遭難・安全通信の補助的機能を持 たせることで、小型船舶の遭難・安全の確保のために有効な設備となることと考える。 現在、GMDSS における国内の VHF DSC の聴守は、海上保安庁の船舶や一般の船舶で 常時行われており問題はないが、遭難通信をより確実とするには VHF DSC の陸上局を整 備し、陸上での聴守と船舶、陸上間の通信が行なえる体制を整備することである。しかし わが国では GMDSS 体制における、いわゆる A1 海域が設定されていないので、この体制 作りが一つの課題である。 一方、国内では約 90 局のマリン VHF の海岸局が運営されており、船舶へ必要な情報の 提供や船舶から呼出しの聴守をしており、遭難・安全のための通信は確保されている。 また、一部の局では BAN と呼ばれる救助事業を実施されている。 将来的には、簡易 VHF DSC 設備を持った VHF DSC 海岸局の整備や、マリンVHFシ ステムにディジタル VHF を導入し、合わせてマリン VHF の海岸局にも簡易 VHF DSC の 設備を整備し、これらマリン VHF 海岸局、VHF DSC 海岸局相互並びに海上保安庁等の間 を陸上回線、ネットワーク網等で結んだ通信システムを構築し、遭難・安全のためのネッ トワーク体制として活用する事も一案である。 今後は、小型船舶の通信システムに VHF 帯を活用し、高度化した通信システムとするこ とにより、小型船舶の遭難・安全通信の確保に加え、より便利な通信設備として利用でき る可能性があるので、積極的に検討することが望まれる。 114 4.3.2 無線局免許、検査及び資格制度の検討 前章3.7.6に記したとおり、小型船舶に搭載が望まれる通信連絡機器はコスパス・サ ーサットシステムを利用した遭難通報設備と一般的な海上通信システムである漁業無線、 マリンホーン、マリン VHF 等であり、本委員会においても、携帯電話の利用可能エリアを 超えて活動する小型船舶は元より、携帯電話の利用可能エリア内で活動するものについて も、緊急時通信の確実性を担保する意味で搭載を推奨している。 しかし、アンケート調査によるユーザーの意見を見ると、遭難通報設備を導入するにあ たり機器の高価さ、無線従事者資格の取得、船舶局免許の取得及び定期的な無線局検査の 受検等の費用負担と手続きの煩雑さが海上通信システムの普及に影響していることが窺え る。 普及を促進するためには、簡易な船舶局免許制度の拡充及び海技免状取得のための講習 に併せて無線従事者資格取得のための講習もオプションとして行なう等の工夫も有効では ないかと考える。 4.3.3 海岸局の体制整備 一般的な海上無線通信システムを緊急時の有効な連絡手段として機能させるためには、 海岸局の責任ある体制が必要である。海岸局として、漁業無線の場合は各漁協等、マリン VHF 及び 400MHz 帯無線電話については各小型船舶安全協会、マリーナ等が一般的である。 漁業無線については、以前から海岸局の当直体制が確立しているが、各小型船舶安全協 会、マリーナ等の海岸局にあっても、所属船が海上で活動している間、常時連絡が取れる ような体制を整備する必要があり、また緊急時における海難救助機関への連絡が適切にな されるよう所管官庁には一層の指導をお願いするものである。 4.4 携帯電話による通信の確保 4.4.1 利用可能エリアの明確化及び拡充 2000 年に実施した小型船舶に対するアンケート調査の結果を見ると、調査対象の 8 割以 上が携帯電話を携帯して乗船しており、2002 年 3 月現在ではこの比率はさらに増加してい るものと思われる。このような現状を踏まえ、本委員会としては、専ら携帯電話の利用可 能エリア内で活動する船舶に対しては、必要最小限の通信連絡機器として携帯電話の携帯 を推奨しているものであるが、現状における問題として、携帯電話の海上における利用可 能エリアが必ずしも明確にされていないという点が挙げられる。 携帯電話の利用可能エリアは、基本的には中継局からの電波の到達距離によって定まる。 一般的に海上の電波到達距離は陸上よりも遠距離となるが、沿岸部における中継局の配置 は陸上に比べ密度が低い場合が多いこと、また海上においては岬、島等が障害物となって その陰に不感地帯が生じること、気象条件等により電波の伝播状況が異なること等の現象 115 に注意する必要がある。 しかし、小型船舶が無線による通信手段として携帯電話のみを保有している場合が多い 現状に鑑み、利用可能なエリアの明確化をすべての携帯電話会社に要請するものであり、 既存の海上無線システムと携帯電話の利用区分が明確となり、利用者にとって有意義なこ とである。 更に、調査の結果、小型船舶海難の約 93%は距岸 12 海里未満で発生していることが判明 している。これは逆にいえば距岸 12 海里までを利用可能エリアとすることができれば、小 型船舶海難の約 93%を携帯電話でカバーできることとなる。仮に距岸 3 海里の利用可能エ リアが確保されたとした場合でも、小型船舶海難の約 81%を携帯電話でカバーできること となる。この状況に鑑み、小型船舶の所有者は自らの安全を確保するために最低限の無線 設備としての携帯電話の携行を励行するべきである。さらに、海難救助関係者は携帯電話 会社に海難救助における携帯電話の果たす役割の大きさを強くアピールし通話可能エリア の拡充を要請することが必要である。具体的には、通話可能エリアの拡充には携帯電話会 社による中継局の設置が必要であるが、その方策として海難救助機関である海上保安庁が 施設している灯台等を利用できるよう図られていることは、非常に有効と考えられ、携帯 電話の一層の普及に役立つものと思われる。 4.4.2 船上における携帯方法の確立 本委員会での検討が開始されて以降、 海上保安庁では緊急電話番号 118 番を運用開始し、 また防水型の携帯電話、GPS 内臓の携帯電話が発売される等、携帯電話の海上での使用を より有効にするシステムが整備されてきた。 しかし、2002 年 3 月現在、防水型の携帯電話の中には自力で浮揚する能力を有している ものはない。これは、そういった機能の要望が多くないことに加え、現在の携帯電話に浮 力を付加することが機器の大型化を招き、一般のユーザーの利便性に逆行するためと考え られる。仮に将来浮力を有する携帯電話が登場したとしても、小型船舶の事故として多々 ある瞬時の転覆、乗組員の海中転落といった海中に投げ出される事故の際に通信を可能と するためには、携帯電話を常に身の回りに確保しておく必要がある。 そのためには、携帯電話を着衣等に装着しておく方法が有効であるが、特に救命胴衣に 携帯電話を予め装着しておく方法は、救命胴衣の自主的な着用の面からも推奨されるもの である。 116 おわりに 本調査研究は、GMDSS 体制の対象外となる小型船舶(非 GMDSS 船)について、緊急 時何らかの有効な連絡手段を確保することにより、当該小型船舶の遭難者救助の迅速化に 資することを目的として開始した。 先ず、小型船舶の海難の実態を分析し、また小型船舶の運航者に対するアンケート調査 により通信手段に関するユーザーのニーズを把握して、実施した調査研究の結果が、これ まで記してきたとおり海上用 PLB の開発、既存の海上通信システムの活性化、携帯電話の 利用等である。 海難救助において恐ろしいのは時間の経過である。機関故障、舵故障、推進器障害、燃 料欠乏、バッテリー上がり等発生そのものは必ずしも直接生命の危険に関わるものではな い海難であっても、時間の経過により危険は増大し、救助は段々と困難なものとなる。従 って、有効な連絡手段の確保は海難救助において最も重要な事項であるといえる。 本調査研究の成果が生かされ、非 GMDSS 船の遭難者救助の迅速化に資することを念願 する。 なお、本調査研究の実施に当っては、委員をはじめ関係官庁及び各方面の関係の方々に 格別のご指導ご協力を賜った。ここに深く謝意を表する次第である。 平成 14 年 3 月 社団法人 日本海難防止協会 117 (118,欠) (150,欠) 社団法人 日本海難防止協会 東京都港区虎ノ門一丁目 15 番 16 号 〒105-0001 海洋船舶ビル TEL 03(3502)2231 FAX 03(3581)6136