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系統故障時における BTB 式ループコントローラの特性解析
系統故障時における BTB 式ループコントローラの特性解析 学生員 市川 雅英*(農工大) 正 員 岡田 有功(電中研) 正 黒川 浩助(農工大) 員 Simulation analysis of loop power flow controller in fault condition Masahide Ichikawa*, Student Member, (TUAT), Naotaka Okada, Member, (CRIEPI), Kosuke Kurokawa, Member, (TUAT) 1. まえがき I1A I1B I1AA エネルギー・環境問題対策など社会的ニーズから,需要 I1C I1BB I1D I1CC I1E I1DD I1F I1EE L13D I1FF F18 I1SA1 L13A I1G L12A 地域における分散型電源の普及が予想される。配電系統で L12B I1X L13B L12C I1N I1Q I1SB2 I1TT I1SS I1R 図 2. I1P L13E I1RR 生する電圧・潮流問題の解決や,配電設備の有効利用技術 いる配電系統をループ・メッシュ化し,時間的・面的な設 I1O I1L1 I1Z I1M I1SB1 L12D が求められている。電中研では,現在放射状に形成されて I1K I1Y I1L2 行われているため,分散型電源の系統連系により新たに発 I1SA3 I1J L13C 6.6kV/400V は,変電所から需要家への電力供給に対して最適な設計が I1SA2 I1I I1H I1S I1SB3 I1V I1UU I1T I1U I1WW I1V I1W L13F ループコントローラの EMTP モデル(片側) Fig. 2. EMTP model of LPC (left converter) 備利用率の向上と潮流の均等化による問題の解決を検討し ている。しかし,単純なスイッチでループ・メッシュ化す PS1 る運用では現状の保護方式の適用が困難になることが予想 R1 CG フィーダ1 L1 されるため,ループ点に半導体電力変換技術を適用したル R4 L4 R3 CG フィーダ2 LPC1 ループ コントローラ (LPC) LGSW PS2 本稿では,配電系統のループ・メッシュ化に半導体電力 L2 L1SW RG ープ・メッシュ形態を提案している。 R2 F1SW L3 F2SW L2SW LPC2 変換技術を用いたループコントローラ(LPC)を導入した場 合の系統故障時における LPC の特性解析結果を報告する。 図 3. 小規模ループ配電系統モデル Fig. 3. Scale down model of loop distribution system 表 1. 実験回路の条件 2. ループコントローラ(LPC)の構造 図 1 に BTB 式ループコントローラ(LPC)の構造を示す。 Table 1. Condition of test circuit 一方の高圧配電線の三相交流を変圧器と PWM AC/DC コン 項目 値 バータにより一度直流に変換し,再び PWM AC/DC コンバ R1 0.200Ω L3 4.23mH ータと変圧器により交流に戻し他方から出力する。この交 L1 3.71mH R4 0.284Ω 直・直交変換時の制御により,LPC を通じて流す潮流や各 R2 0.268Ω L4 4.21mH 回線の無効電力を任意にコントロールすることができる。 L2 3.82mH CG 7.6μF R3 0.311Ω RG 10Ω これらの制御により電圧の適正化,潮流の均等化および設 値 するため,EMTP によるシミュレーションを行った。解析に (1) (2) 備の有効活用をねらう 項目 。 用いた LPC モデルは三相 PWM スイッチ部分を TACS 制御 3. シミュレーションモデルの検討 スイッチとダイオードにより模擬した。片側の交直変換器 LPC によるループ・メッシュ化に伴い,地絡および短絡 のモデルを図 2 に示す。LPC モデルと配電系統モデルの検 故障などの系統故障時の特性がどのように変化するか検討 高圧配電線 交直変換器 交直変換器 高圧配電線 証のため小規模実験を行った。小規模実験の回路を図 3 に 示し,実験回路における条件を表 1 に示す。 小規模実験による結果とシミュレーションの結果を図 4 AC/DC DC/AC に示す。図 4 はフィーダ 2 側からフィーダ 1 側へ LPC を通 じて 5[kW]の潮流を送る条件下の結果で,(a)は,一線地絡 図 1. BTB 式ループコントローラの構成 Fig. 1. Schematic of BTB loop power flow controller 故障,(b)は三線短絡地絡故障の結果の一例である。小規模 実験とシミュレーションはほぼ一致している。 4. 実規模系統モデルによる解析結果 実規模系統のシミュレーションを行った結果の一例とし て,一線地絡故障時のシミュレーション結果を表 2 に示す。 実規模系統は,配電用変電所から引き出された 2 つのフ 表 2 から,単純なスイッチを用いてループ化したモデルで ィーダの末端を LPC によりループ化する系統モデルを想定 は,健全な回線にも零相電圧および零相電流が出ているこ した(図 5 参照)。フィーダ 2 側からフィーダ 1 側へ LPC を となどから,現状の放射状配電系統と比較した場合系統故 通じて 1[MW]の潮流を送る条件下で,系統故障を図 5 中の 障の範囲が拡大していることがわかる。一方,LPC を用い F22 点もしくは F26 点で発生させた。また同時に,現状の放 てループ化した配電系統は,零相電圧(回線 1:0V,回線 2: 射状配電系統および,ループコントローラを用いずに単純 3800V),零相電流(回線 1:0A,回線 2:15A)と,故障点を流 なスイッチを使用してループ化した配電系統についても, れる地絡電流(17A)が,現状の放射状配電系統の故障時の特 Io_1 [pu] シミュレーションを行い,結果を比較する。 0.4 0.2 0 -0.2 -0.4 -0.03 性とほぼ同じであることがわかった。 三線短絡地絡故障時におけるシミュレーション結果を表 3 に示す。故障回線を流れる故障電流は,LPC ループ,放射 状および単純ループで,それぞれ,4240A,4180A,3910A 0 0.03 0.06 Time [s] 0.09 でほぼ同一である。一方,健全回線の電流は,73A,130A, 0.12 740A で,単純ループでは故障電流が健全回線からも供給さ れるのに対し LPC ループでは放射状系統と同じになる。 一線地絡故障時における故障回線の零相電流 (a) IA_1 [pu] これらから,LPC によって接続された 2 つの系統の一方 4 2 0 -2 -4 -0.03 (b) 図 4. で発生した系統故障の影響が,他方の系統に拡大すること がないと考える。また,LPC が一線地絡故障により停止す ることなく,故障発生前と同様な運転を継続できることが 0 0.03 0.06 Time [s] 0.09 わかった。 0.12 5. まとめ 三線短絡地絡故障時における故障回線の回線電流 系統故障時における BTB 式ループコントローラの特性解 小規模実験およびシミュレーションの結果 析を行った。その結果,ループコントローラを用いたルー Fig. 4. Result of test and simulation プ配電系統の特性は,現状の放射状配電系統の特性に近く, (黒色細線:実験 Ibase:14.4A 灰色太線:シミュレーション Ibase:87.5A) 回線1 PS1 回線2 66kV/6.6kV フィーダ2 F11 他回線 対地静電容量 66kV/6.6kV フィーダ1 PS2 F10 F50 F21 他回線 対地静電容量 F12 F13 F14 F15 F16 F17 F18 高圧配電線 高圧配電線 高圧配電線 高圧配電線 低圧系統 低圧系統 低圧系統 ループ 模擬負荷 模擬負荷 模擬負荷 コントローラ (LPC) られる。 F22 F23 F24 F25 F26 F27 F28 高圧配電線 高圧配電線 高圧配電線 高圧配電線 低圧系統 低圧系統 低圧系統 模擬負荷 模擬負荷 模擬負荷 文 高圧配電線 容量:20MVA 抵抗分:0.15Ω/km リアクタンス分:1.5mH/km 対地静電容量:0.1μF/km 1スパン:1.5km 低圧系統模擬負荷 有効電力:450kW 力率:0.9 他回線対地静電容量:3.9μF 図 5. 現状の系統故障保護方式が適用できる可能性が高いと考え (1) 岡田,「需要地系統におけるループコントローラの開発―制御方式 の提案と実験装置の試作―」,電力中央研究所報告,T99075 (2000) (2) 岡田,「需要地系統におけるループコントローラの開発―移行過程 における自律制御方式―」,電力中央研究所報告,T00045 (2001) 実規模ループ配電系統モデル Fig. 5. Actual scale loop distribution network model 表 2. 献 一線地絡故障時におけるシミュレーション結果(故障点:F22) Table 2. Simulation result under single-line-to-ground fault. 健全な回線(回線 1) 系統故障が起きた回線(回線 2) 零相電圧[V] 零相電流[A] 零相電圧[V] 零相電流[A] 故障点に流れる 地絡電流[A] ループコントローラ 0 0 3800 (5070) 15 (244) 17 (236) 放射状配電系統 0 0 3800 (5200) 14 (183) 15 (258) 3730 (5700) 13 (159) 3800 (4930) 12 (151) 31 (264) 単純なループ 表中の値は,故障後に定常的に続く値の実効値。括弧中の値は,故障直後の過渡的な変化のピーク値。 表 3. 三線短絡地絡故障時におけるシミュレーション結果(故障点:F22) Table 3. ループコントローラ Simulation result under three-phase-short circuit. 故障点における 故障点における 故障電流[A] 線間電圧[V] 4000 3460 健全な回線の 故障回線の 回線電流[A] 回線電流[A] 73 4240 放射状配電系統 4120 3560 130 4180 単純なループ 4460 3860 740 3910