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消防庁における科学技術政策や研究開発

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消防庁における科学技術政策や研究開発
FDMA of Experience story 2013
消防庁における科学技術政策や研究開発
消防庁消防技術政策室課長補佐 千葉 周平
(平成 16 年入庁・土木)
技術系職員として
「災害から国民の生命・身体・財産を守る」
という消防庁の仕事には、実に様々な側面があ
ります。これまでに、防災(主に災害時の情報
通信・情報伝達等)、国民保護(武力攻撃事態等
における警報伝達や住民避難等)やテロ対策、
火災予防などの分野で、主に「技術」という側
面から現場の制度や活動を支えるということを
役割として、様々な業務を経験することができ
ました。また、消防の現場(福岡市消防局、千
葉市消防局)を経験する機会もあり、国と現場の
両面から消防防災に携わることが出来ました。
消防の現場で勤務をしていた時、
「大切なのは想像力」と言われたことがあります。災害が
起こる前、出動中、そして災害現場での活動中も「何が起きるのか」ということを想像する
ことが大切だということです。東日本大震災が発生した直後は、消防庁と官邸とを行き来し
つつ、大規模かつ広範囲な地震・津波被害や福島第一原発での事故への対応に携わりました
が、そのときの経験からも「何が起きるのか」ということを想像することの重要性を改めて
感じます。災害を起こさないための対策、そして災害が発生した場合の対応などは、災害が
起こるメカニズムや被害が拡大するプロセスなど、災害に際して「何が起きるのか」という
ことから考えることが不可欠です。一方で、過去の災害を教訓として対策を検討する際は、
「何
が起きたのか」ということと同時に、
「その時は起きなかったけれど、いつ起きてもおかしく
ない潜在的な危険性」に対しても、目を向ける必要があります。現場の制度や活動を支える
ためには、科学技術的な側面からのアプローチが不可欠であり、消防庁の仕事には、技術系
職員だからこそ力を発揮することができるクリエイティヴな仕事が必要とされる場面が多く
あると思います。
Fire and Disaster Management Agency
FDMA of Experience story 2013
現在私は、消防防災分野の「科学技術政策」や「研究開発」という側面から、
「災害から国
民の生命・身体・財産を守る」という消防庁の仕事に取り組んでいますので、その一部を紹
介します。
消防研究センターという存在
消防庁には、消防研究センターという研究機関があります。消防研究センターでは、総合
的な消防防災研究機関として、発生する災害に立ち向かう消防を科学技術的側面から支援す
るため、広域版地震被害想定システムの研究開発、東日本大震災における火災分析と防火対
策に関する研究、津波浸水域における消防活動用車両等の研究、石油タンクの津波による損
傷メカニズム及び発生防止策の研究、巨大地震による石油コンビナート地域における強震動
予測及び石油タンク被害予測の研究、がれきなど堆積物の火災危険性評価方法及び消火技術
の開発、再生可能エネルギー関連設備・装置の火災危険性把握のための研究等など様々な研
究を行っています。また、消防防災科学技術の専門家として、大規模地震などの災害発生時
には現場での支援活動に従事するとともに、大規模・特殊な火災等が発生した場合はその原
因調査を行います。
直接の研究活動等は消防研究センターの研究官が行いますが、消防庁の技術系職員は、消
防研究センターにおける研究活動や消防防災科学技術に係る専門的な能力を現場が直面する
課題解決に繋げるための仕組みづくりといった橋渡し役を担い、あるいは、コーディネータ
ーとしてその仕組みを十分に機能させていくといった役割を担います。消防研究センターと
いう頼れる専門家集団と一緒に、消防防災の現場の制度や活動を支えるための科学技術につ
いて、その方向性を創っていくという点は、消防庁における科学技術政策の大きな特徴と言
えると思います。
国家戦略における位置づけ・関係省庁との連携
平成25年6月7日に「科学技術イノベーション総合戦略」が閣議決定されました。また、
6月14日には「世界最先端IT国家創造宣言」及び「日本再興戦略」がそれぞれ閣議決定
されました。科学技術に関するこれらの戦略では、地理空間情報を用いた観測・分析・予測
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FDMA of Experience story 2013
技術や災害情報の迅速な把握・伝達技術、ロボット等による災害対応技術の研究開発、産業
施設による火災等の二次災害の発生防止機能の強化や災害現場からの迅速で確実な人命救助
のための技術の実用化といった消防防災分野の科学技術に関する研究開発課題が位置づけら
れました。消防防災の現場が直面する技術的な課題とそれを解決するための研究開発施策の
重要性や必要性を説明し、様々な関係者の理解を得ながら政府全体の戦略における位置づけ
を明確化していくということも、消防庁における重要な科学技術政策のひとつです。総務省
の情報通信関係の科学技術政策はもちろんのこと、文部科学省、経済産業省、国土交通省な
どの関係省庁と相談し、それぞれの科学技術政策や研究開発施策の目的や進捗等について情
報交換しながら、研究開発課題に対する着実な成果達成や当該成果の円滑な社会実装に向け
た連携施策について、検討・調整などを進めています。
最後に
少子高齢化等による社会構造の変化や新エネルギーをはじめとする新たな技術の普及など、
様々な要因によって我々が備えるべき災害というものが変化し、また、消防防災行政に対す
る社会のニーズが変化します。そのような変化に対応して「災害から国民の生命・身体・財
産を守る」という消防庁の仕事には、科学技術的な側面からのアプローチが不可欠であり、
技術系職員としてのあなたの力を発揮することができるフィールドがあると思います。是非、
消防庁を訪問して先輩方に具体的な話を聞いてみてください。
Fire and Disaster Management Agency
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