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購入の家高ソーヌ

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購入の家高ソーヌ
菜食主義の実態
仁 科 亮 太
2016年1月8日
都留文科大学英文学科卒業論文
署名:____________________
​
英文学科 2016年1月8日
指導教員署名: _______________
1
CONTENTS
1
3
24
41
48
49
序論
第一章 菜食主義の発展
第二章 菜食主義の現状
第三章 今後の展開
結論
参考文献
2
序論
11―1 背景
私は動物を倫理的に扱いたいという理由で菜食主義を貫いている。人間が生命
維持のためでなく味覚や精神を充足させる目的で動物を搾取する、つまり、無念
に不条理に殺されるその日まで彼らに苦悶に満ちた短い生涯を課すことは、非人
道的行為の極みであり、正常な精神を持つ人間ならば行えることではないと私は
考える。
“...as long as people massacre animals, they will kill each other. Indeed,
those who sow the seed of murder and pain will never reap joy or love.”
人間が動物を殺戮する間は人間は人間を殺しあう。殺人や悲痛への種を蒔く者に
は愛も喜びももたらされない。
“...and the time will come when men such as I will look upon the murder of
animals as they now look upon the murder of men.”
動物の殺害と人間の殺害を同等にみなす時が来るだろう。
“If a man aspires towards a righteous life, his first act of abstinence is from
injury to animals.”
正当に生きることに焦がれるなら、最初の自粛は動物に危害を加えることだ。
1はピタゴラス、2はレオナルドダビンチ、3はアインシュタインによる箴言で
ある。ピタゴラスは紀元前6世紀頃、ダビンチは16世紀頃、アインシュタイン
は20世紀頃に存命していた。程度の差こそあれ、三者とも菜食主義を標榜して
いた。偉人と称される者では他にもボルテール、バーナードショー、ガン
ディー、トルストイ等も菜食主義者である。彼らが喝破した動物の搾取は、二一
世紀の現在も依然根強く墨守されている。
この論文の趣旨は、遥か遠い未来、菜食主義が主流を占め、恒久に続くかのよ
うに思われる暴力から動物が解放される可能性があるのか検討し、それに極力早
く近づく為に現在模範となる国や制度を提示することである。
尚、菜食主義を動物の搾取の一つの方法である肉食に対抗する手段として重要視
し、この主義の普遍的な浸透が最も能率的な動物愛護への方法だとするが、これ
の根拠は、2009年度にアメリカで殺された動物のうち食用に殺された動物が98
パーセントを占める、という数字である。人々が肉食を捨て菜食主義に変節する
だけで、アメリカで殺される動物は現在の2パーセントまで軽減されるのである。
1
11―2 構成
まず第一章で人間が肉食になった過程、たびたび採食を選択した過程をみる。
第二章では現在の世界の菜食主義の状況と、それに起因するものを考察し、主に
ニュースを参照し各国の菜食に関する最新の状況をつかむ。第三章では、今後の
課題について検討する。
FARM: Report: Number of Animals Killed In US Increases in 2010
<http://farmusa.org/statistics11.html>
1
3
第12章
菜食主義の発展
12―1 菜食から肉食へ
出典: Colleen M. Belk & Virginia Borden Maier, ​
Biology: Science for Life, ​
Benjamin
Cummings, 2015, 220
言うまでもないが、ヒトは肉を食べている。ヒトは霊長類であるが、同じ霊長
類のどの祖先から肉を食べ始めたのか追っていく。
まず、共通の祖先をもつ類人猿であるチンパンジーは食肉の性質を持ってい
る。彼らは集団で狩りを行い、また、同種の子を殺し食す習性があることも知ら
れている。しかし、摂取する肉の総量は決して多くはなく、観察されたある群れ
は平均して一日に2.4gの肉を食べるに過ぎなかった (Spencer 10)。チンパン
ジーの食肉は仲間内での優位性を示すために行われ、植生の食事を非定期的に補
うに留まると考えられている。また、ヒト[ホモサピエンス]とチンパンジーは共
通の祖先からおよそ600万年前に分化して現在に残った動物である。チンパン
ジーから人間が進化した訳ではないのであり、600万年まえから人間の祖先が食
肉性だったということにはならない。
4
確認される石器の使用は200万年ほど前に出現したホモハビリスによるもので
ある。これまでタンザニアのオルドゥバイ渓谷で発掘された約180万前のものが
従来最古であったが、近年ケニアのビクトリア湖畔で200万前に遡るとされるも
のが確認されている。これらの石器は歯肉をあさる際に骨から肉を剥ぐのに使わ
れていたと考えられており、少なくともこのホモハビリスの時期から食肉は行わ
れていたと考えられる。さらに同研究は、残置された動物の骨はライオンやハイ
エナに捕食された後のものではないことを示唆するとし、また、他研究では湖に
残存したホモハビリスの足跡は、肉食動物が狩りをする際にできるものと共通点
があるとし、同年代から狩りをしていたことも考えられる。
しかし明確に狩りの後が残るのは槍が発見されるおよそ60万年前のホモエレク
トスのものである。
Peter Wilsonは、猿人または原人が狩猟を開始することになった引き金は、他
霊長類との食の競合だったという (Spencer 17)。
Early hominids in Africa seem to have been primarily vegetarian
and probably preferred grasses, grains, and seeds. But they could
equally well have subsisted on leaves and fruits. Either way, any
such preference for staple would bring early hominids into
competition with baboons (if they preferred seeds) or with the
great apes (if they preferred fruits and leaves). Modern Homo
sapiens is nowhere near as strong as a chimpanzee or as agile.
(Spencer 17)
ヒト科の進化に伴い脳の容量が増加した。この原因を肉の摂取によるものだと
する説が広く信じられているが、Stephen OppenheimerはEltonによる研究から
鑑みるに、信憑性が低いとする。Eltonは顎の形状から肉の摂取が考えにくいとさ
れパラントロプスも同時期に同量程度脳の増加が認められることを指摘する。
The relative increase in size in both hominid branches is also
surprising since the Paranthropus branch, with their huge jaws,
were supposed to be specialist vegetarian grinders. Over the
million-year period that Elton studied, the average hominid brain
size more than doubled, from 400 cm3 to 900 cm3.o Brute
Animals. ...it puts the meat theory under some strain...
(Oppenhheimer 11)
Stephen Oppenheimerはヒト科の脳は数百年前から潜在的に容量増加可能な能
力が備わっていたという説を紹介し、同時にEltonがパラントロプスも完全に草食
ではなかったことを指摘していることに注意を促す。
Colin SpencerはPeter Wilsonを引用し、脳の容量の増加は肉の摂取によるも
のではなく、狩りに伴う戦略的思考の結果だと断定する。パラントロプスの脳の
増加を認め、彼らもおそらく採集生活において戦略的思考が必要になった可能性
もあるとすれば、妥当であろう。
しかしSpencerは、狩りは人間にとって自然なことではなく、必要性に迫られ
ての行動に過ぎない[killing is not natural to humans, it does not fit either
their physical or their dietary nature. Ways and means of hunting and
killing were devised simply through necessity and the urge to survive
5
(Colin 18)]と述べる。だが、もし狩りを行うことによってヒト科が最終的にヒト
へ進化し、環境に適応し自然淘汰を免れたのであれば、狩りはヒトにとってその
発生に必要不可欠ことであり極めて自然なことであったと言えるだろう。いずれ
にせよ、狩猟を行うことでヒトの祖先は獲物を求めることになり、広範囲にその
勢力を広めた。
12―2 耕作の開始と動物の家畜化
現在までに確認された最初の植物の栽培は、イタリアのガリラヤ湖畔に残るお
よそ23000年前の穀物である。最終氷期終了前後、イランのザグロス山脈のふも
とでは12000年前の栽培が確認されている。また確認される種の選択・交配を含
む最初の農耕は、シリアのテルアブフレイラ[Tell Abu Hureyra]で見つかるライ
麦である。
定住を開始したヒトは、動物の家畜化も開始した。豚・羊・牛・犬・ヤギ等で
ある。犬だけは、その時期が推定される植物の栽培の開始より前の、約30000年
前から家畜化されている。狩りの代わりに家畜化された動物が食されるようにな
る。
家畜動物の食への利用はいまだに続いている。
12―3 12―3―1 菜食主義者の発生 ピタゴラス、ヒンドゥー、仏教、ジャイナ教
菜食主義は、19世紀にベジタリアン協会によってvegetarianという造語がもたら
される(使用される)以前、ピタゴリアンダイエットと呼ばれていた。菜食家と
して名を残す最初の人物はピタゴラスであった。紀元前6世紀に数学者また哲学者
として功績を残した彼は菜食主義者であった。彼の食肉の節制は健康の為だと
も、平和への為だとも、倫理的な斟酌の為だとも考えられている。
彼は動物を含む生命の魂の輪廻を信じていたとされるが、これは彼が知識とし
て学んだヒンドゥー教やゾロアスター教の影響があるという指摘がある。
Through Pythagoras, who absorbed much of this
teaching[Zoroaster’s] and its rites in Babylon, and the older
complete Avesta, Zoroastrianism was a considerable influence on
Greek thought: (Spencer 60)
In Pythagoras,too, there are many parallels to Hinduism, but the
evidence has been differently interpreted by different scholars. All I
can attempt is a brief recapitulation of the evidence. A fundamental
doctrine was that "we are strangers in this world and the body is
the tomb of the soul, and yet that we are not to escape by
self-murder; for we are the chattels of God who it our herdsman,
and without his command we have no right to make our escape."
The belief in transmigration is mistakenly attributed by Herodotus
to the Egyptians, and was apparently taken over by Pythagoras
from an Oriental source; along with this came the prohibition of the
slaughter of animals and the vegetarian diet. The doctrine of
purification by ascetic practices and by theoria (contemplation)
seems familiar. (Marlow 35-45)
6
Simoonsは余剰生産物増加という国家政策のため上流階級が農耕民に牛肉禁止を
強制したのだというダイナーの説を、バラモン階級自体が禁令を遵守していたと
いうことから否定する。代わりに、彼は牛の殺生禁止は「宗教上の論争から生ま
れてきた」とする。同ヒンドゥー教で神への生贄にしばしば牛が捧げられたこと
に反発して生贄を伴わない仏教・ジャイナ教が生じ、結果ヒンドゥー教にも牛の
不殺生が取り入れられたという。「牛の供犠をやめることで民衆の心をつかむ戦
いをより有利な立場で進めること」をヒンドゥー教は狙った。 (フレデリック
198)
Swami Abhedanandaは、仏陀は聖典ヴェーダでも解かれる不殺生を広めただ
けにすぎず、仏陀以前からすでにヒンドゥー教の賢人たちは菜食をしていたとい
う。ヒンドゥー教の聖典の一つリグヴェーダは紀元前1500年ごろから存在し、確
かに肉食を非難するととれる箇所はある。しかし強調はせず、また、紀元前数世
紀まで牛肉は食べられており、また非暴力というアヒンサ[Ahimsa]の概念が発達
し確立したのは紀元前500年頃である。
田辺雄一は老牛が老衰で死ぬまで常に場所と飼料を用意する経済的負担は少な
くないと指摘する。牛を保護するそれを上回る利点は、農耕中心のインドでの労
役家畜として・乳の利用として・牛糞の建築素材、調理用燃料の利用として牛が
役立ったからだという。
仏陀は托鉢で得た食物の中に肉があってもそれを食することを禁じず、自身も
食べた。初期仏教は三種の浄肉という、殺されるところを見ていない・聞いてい
ない・自分の為に殺されていない肉を摂取可能と設定した。頼住は最古の仏典と
されているスッタニバータ中に「肉食することが〈なまぐさい〉のではない[中村
元訳]」と複数回繰り返されている箇所ふれ、
「「なまぐさ」を口にしないことを、修行者として行いを慎み清浄を達成す
ることであると捉えたのである。また、この引用からは、同時に、当時のイ
ンドでは、菜食主義に基づき宗教者が一切肉食をしないことを尊ぶ風潮が
あったことも窺える。断食修行も飽食も両方とも斥けて、供養によって得ら
れた最低限の食を摂ることを主張する仏教においては、同様の論理から、肉
食禁止に拘ることはなかったのである」 (頼住光子 303)
と指摘し、例えば同時期発祥したジャイナ教は菜食主義を徹底していたと述べ
る。さらに、インドでは仏教は菜食主義を取り入れられなかったが、他国では可
能だった理由について、「​
インドでは、乞食行が僧侶の生活形態として定着して
おり、となると、供養されたものは、肉であれ、魚であれ食べることを許容せざ
るを得ない。それに対して、中国社会においては、僧侶が日常の糧を日々の托鉢
によって得るという生活形態は一般化しなかった。中国においては、仏教が伝来
した早い段階から国家による保護(と統制)が仏教に対して与えられ、日々の生
活も国家によって支えられていたおかげで、托鉢行などの必要あがなかったので
ある。そこでは、肉食禁止の規定は托鉢をする場合よりも遵守し易いものとな
る。
まとめると、それぞれの宗教は不殺生を謳ったが、菜食主義を教義とするのは
「宗教上の都合(托鉢)から困難(インドでの仏教)」であったり「他宗教に対
抗するため(ヒンドゥー教)」であったりした。また徹底した菜食主義を教義と
した宗教(ジャイナ教)は現在ではインドの0.5%にのみ支持されており、伸び悩
7
んだ。また、特定の宗教に属していないピタゴラスが菜食主義者であったことは
画期的であったといえるであろう。
ユダヤ教、キリスト教
二世紀末、アレクサンドリアの神学校でのキリスト教神学者であったティトゥ
ス・フラウィウス・クレメンス[Titus Flavius Clement]は菜食者であり、肉食を
非難した。旧約聖書レビ記及び申命記は不浄の動物とそうでない動物を挙げるの
で、特にユダヤ教、加えてキリスト教で一定の範囲の動物が禁忌とされていた。
クレメンスはギリシャ哲学を称賛しキリスト教にギリシャ哲学の倫理観を混ぜよ
うとした。Spencerによれば、クレメンスの肉の完全な節制はキリスト教の範疇
で禁欲主義を提示する目的でのみ公の実践が可能だったという (Spencer 127)。
12―3―2 Vegetarian Christians like Clement could only get away with their
behaviour on the grounds of pure asceticism. The ethics of
non-violence towards animals or metaphysical doctrines on
animal souls were never given as reasons for a vegetarian mode of
life. ...The very act of being vegetarian suggests that Mosaic law is
entirely irrelevant… For Christians, it was only acceptable to
renounce meat-eating if you called it asceticism. (Spencer 127)
浄・不浄の区別がある以上、キリスト教は一定の肉は人間に与えられたと考え、
頑なな菜食主義はキリスト教に反発することになりかねなかった。
創世記において洪水後も洪水前も、人間には動物への支配が神から認められて
いる。創世記ではアダムとエバがエデンにいるとき、創世記1:29-30で
Then God said, “I give you every seed-bearing plant on the face of
the whole earth and every tree that has fruit with seed in it. They
will be yours for food. And to all the beasts of the earth and all the
birds of the air and all the creatures that move on the
ground—everything that has the breath of life in it—I give every
green plant for food.” And it was so. (NIV)
と草食だと思わせるが、大洪水後、創世記9:1-5で
Then God blessed Noah and his sons, saying to them, “Be fruitful
and increase in number and fill the earth.The fear and dread of
you will fall upon all the beasts of the earth and all the birds of the
air, upon every creature that moves along the ground, and upon all
the fish of the sea; they are given into your hands. Everything that
lives and moves will be food for you. Just as I gave you the green
plants, I now give you everything. “But you must not eat meat that
has its lifeblood still in it. And for your lifeblood I will surely
demand an accounting. I will demand an accounting from every
animal.” (NIV)
と肉食が認められている。この変化について学者からは「環境が変わり植物だけ
で人間が生存できなくなったから」「もともと行われていた肉食に神が改めて許
可を与えることでの神の権威づけ」などの意見がある (Hughes)。
8
例えば創世記では血抜きをしていない肉を、レビ記では豚肉等を禁じている。
Frederick J. Simoonsは食物禁令は聖書時代より古代から継承されてきたのであ
り、聖書にその起源を求めるのは聖書の「範囲を超えている」としている (フレ
デリック 124)。豚が禁忌とされた理由について、Simoonsは豚は人間と食物を競
合したという環境的な理由を「豚にはそれ以上に財政的見返りがあった」と否定
し、腐りやすいという衛生学的な理由を「饗宴でも振る舞われなかったうえ、保
存方法の開発も行われなかった」と否定し、ソレールの「浄・不浄の基準は副次
的であり、それよりもその設定で民族的独立を確立することに一義をおいた」と
いう説を支持する。そしてダグラスの「死肉をあさる習慣のあった豚は「あまた
の不浄」を背負うことになった」という考えを提示し、人間の近くで排泄物や死
骸をあさっていた豚が人間から敬遠されるようになったという。豚の禁忌はキリ
スト教では消えたが、ユダヤ教またイスラム教で残っている。
11世紀頃、キリスト教カタリ派は肉を断つ生活を送った。イタリアからフラン
ス含むヨーロッパへ広まったカタリ派はブルガリアのボゴミル派から影響を受け
たというが、その起源についてMcDonaldはこういう。
The next question is how the religion got to Bulgaria. The answer
is that it probably spread from the Eastern Part of the Byzantine
Empire to the Western Part. It may have originated in a form of
Manichaen belief, itself a melange of Persian Zoroastrianism and
early Christian Gnostic Dualism, but it is more likely that it
represented a separate strand of early Christian Gnostic Dualism.
(McDonald)
禁欲的なカタリ派の菜食主義について、カトリック派は神が人間の為に用意した
動物を食べないのは罪だとした。そして宗教闘争の中、カタリ派は14世紀には消
滅した。
人間に動物への支配権が与えられた旧約聖書を聖典とするユダヤ教・キリスト
教・イスラム教では、この時期、カタリ派やクレメンスなどの例外を除き、菜食
主義は発展できなかった。
日本
675年、天武天皇は史料の上で最初の漁猟と肉食禁止令を発布する。
今後、漁業や狩猟を営む者に、檻穽、機槍などの仕掛の類を設置することを
禁止する。また四月一日から九月三十日まで、比満沙伎理・梁を設置するこ
とも禁止する。また牛・馬・犬・猿・鶏の宍を食べることを禁止する。これ
以外は禁止の事例としない。もし、これらの禁制を犯したならば処罰する。
(平林章仁 173)
12―3―3 頼住は、この五畜の選択は仏教の大般涅槃経に由来するものだという。また、天
武天皇の禁令は鹿・猪はしていない点は留意すべきであろう。天武天皇後も持統
天皇・聖武天皇・孝謙天皇・桓武天皇等が殺生禁止や肉食禁止令を出している。
これらはしばしば飲酒の禁止や大祓、貧窮者への救済処置、放生会と同時期に行
われ、平林は各事例を旱魃に対する祈雨・長雨に対する止雨祈願・喪・痘瘡流行
の沈静・病気からの回復祈願などに結び付ける。耕作の予祝祭で豊穣の祈願のた
めに古代から日本では殺牛供犠が行われていたが、この時期にも祈雨のために牛
馬の生贄が捧げられている。
9
神祇的な牛馬を生贄に捧げる儀礼と、仏教的な肉食や殺生の禁止という、
相反する儀礼が同時的に行われるという矛盾した実態にあった。施政者に
すれば、願いがかなうなら儀礼内容や拠り所とする宗教思想はこだわると
ころではなかったのだろう。 (平林章仁 183)
平林はさらに、遷都に伴い必要になる役畜の確保なども指摘する。いずれにせ
よ肉食禁止や殺生禁止は「動物自身のため」に行われたのではかった。
後に発展する血肉への穢れ意識を、平林は「宗教的タブーの侵犯が原因で宗
教的秩序が破壊された結果、生起すると信じられたさまざまな災厄への呪的恐
怖心」から育まれたものだと述べる。 (平林章仁 229)
近世・近代
個人
近世になると、動物愛護を唱える個人が登場してくる。代表的な人物を挙げて
いく。
ルネサンス期にはイングランドで1516年、トマスモアが著書「ユートピア」で
動物の殺戮を非難する。イタリアでレオナルド・ダ・ビンチは菜食で生きる。
商人トマス・トライオン[Thomas Tryton](1634-1703)はイングランドで菜
食主義を唱道した最も初期の一人である。彼は ​
The Way to Health, Long Life
and Happiness, Or a Discourse of Temeperance [​
健全・長命・多幸への方途、
あるいは節制についての論説]を著する。また、これを読み、米国の政治家・科学
者であるベンジャミン・フランクリン(1706-1790)は菜食に転向する。
スコットランドの医師チェーン[Dr. Cheyne](1671-1743)は健康上の理由から
菜食主義者になり、普及に努める。メソジスト派創始者であるウェスリー[John
Wesley](1703-1791)は彼によって菜食に転向されたという(Spencer 217
)。
また、ボルテールを筆頭とし、ロック、ルソー、ベンサム等の思想家は動物の
愛護に関心を抱いていた。
医師ラム[Dr. William Lambe](1765-1848)は完全菜食主義を徹底した初期の
人間であり、詩人シェリーは影響を受け菜食になった。バーナード・ショー(
1856-1950)は彼の菜食主義はシェリーが“opened my eyes to the savagery of
my diet.”した結果だとしている (Preece 214)
12―3―4 12-3-4-1
​と機関
法
一見動物への憐憫から制定されたようにみえる法が17世紀から複数登場する
が、その思惑は動物愛護以外であるとそれぞれ指摘されている。
1641年、マサチューセッツ自由法典[Body of Liberties]は第92項で家庭動物へ
の加虐を禁止する。清教徒の聖職者ウォード[Nathaniel Ward]が考案し、全体的
に宗教的思想が強い。
12-3-4-2
92. No man shall exercise any Tirranny or Crueltie towards any
bruite Creature which are usuallie kept for man's use. ...
94.1 If any man after legall conviction shall have or worship any
other god, but the lord god, he shall be put to death.
10
アイルランドで1635年にAn Act against Plowing by the Tayle, and pulling the
Wooll off living Sheep[馬の尾での鍬の使用及び生きた羊の毛の剥離の禁止法]が
発効された。これは貧窮した農民は馬具を購入できなかったため、鍬の柄を馬の
尾に括りつけていたことに由来する。外面的には動物愛護の目的に思われるが、
イギリス人が罰金の回収のために制定した可能性があるとMarie BloshはBeirne
を引用した後、指摘する
Milton condemned plowing by tail and sought to uphold the
existing law against it not because he saw the practice as cruel to
animals – an idea that he did not mention – but because he
thoughtit a custom that showed the Irish to be primitive, savage,
idiots, and fools. (Beirne 54)
クロムウェルが統治する1660年、鶏頭等が禁止されるが、意図は下層民が集う
場を無くすことだったとAlan Dundesは言う。
During the reigns of Oliver Cromwell (1653-1658) and Charles II
(1660-1685), prohibitions were also enacted, but for political not
humane, reasons: cockpits were seen as meeting places of riffraff and
hence spelled potential trouble, not the least of which might be
rebellion. (Dundes 60)
1800年、パルトニー[Sir William Pulteney]は牛攻め[bull-baiting]を禁止する法
案を提出するが、否決される。これの意図も、Spencerは娯楽を減らし労働者階
級の労働を統制するためだったと考えられるといい、Menelyも同様のことをい
い、
The bill itself was framed narrowly, as a matter of social regulation
rather than animal rights, an attempt to discourage "Idleness,
Rioting, and Drunkenness." William Wilberforce later compalined
that Pulteney had defended the legislation "like a parish officer,"
focused on public order, and "never once mentioned the cruelty."
(Menely 174)
19世紀、イギリスで憐憫からの法が制定されるようになる。
1806年、イギリス大法官アースキン[Lord Thomas Erskine](1750-1823)は動
物の虐待を禁止する法案を提出する。動物愛好家であった彼の法案は上院を通る
が下院で反対される。
1822年、議員マーティン[Richard Martin]は Cruel Treatment of Cattle Act[
牛の虐待禁止法]を可決へ導く。動物保護のための最初の議会法である。
1824年、マーティンらは動物虐待防止協会[The Society for the Prevention of
Cruelty to Animals]を設立する。世界で最初の動物愛護団体である。
1832年、動物虐待防止協会設立者の一人であるゴンペルツ[Lewis Gompertz]
(1783-1863)は協会を退団し、新たにThe Animal Friend’s Society[動物の友協
会]を立ち上げる。馬車の使用や動物性の食事に反対していた彼は、SPCAにはピ
11
タゴラス的であり非キリスト教主義的であると、異端視されており、退団の原因
となった。
1847年、ベジタリアン協会[The Vegetarian Society]が設立される。キリスト
教で菜食を主義とするThe Bible Christian Churchと完全菜食主義の寄宿学校で
あったThe Alcott House Concordiumが設立の中心であり、水治療の病院を運営
していたWilliam Horsell(1807-1863)が彼の発行する雑誌 The Truth Testerでベ
ジタリアンの団体を設立したらどうかという読者の声に応え、二者の橋渡しに
なった。しかし、Horsellは医師ラムの完全菜食を実践しており、乳と卵などの動
物性食品を完全に除外しようとうはしないベジタリアン協会とは確執があった。
ベジタリアン協会で力があったThe Bible Christian Churchは創立者William
Cowherd(1763-1816)が出エジプト記 3:8の“out of that land into a good and
spacious land, a land flowing with milk and honey (NIV)”を根拠にむしろ乳・
卵の摂取を勧めていた。ベジタリアン協会の書記から解任された彼は1850年代に
ヴィーガン化した団体であるThe London Vegetarian Associationの代表になっ
ている。
1875年、Frances Power Cobbeによって世界初の動物実験反対団体 The
Victorian Street Societyが設立される(1897年にThe National
Anti-Vivisection Society と名称を変える)。Cobbeによって立ち上げられた団
体であったが、1898年の会議で
The council affirm that, while the demands for the total abolition
of vivisection will ever remain the object of the National
Anti-Vivisection Society, the society is not thereby precluded from
making efforts in Parliament for lesser measures, having for their
object the saving of animals from scientific torture. (Williamson
193)
との決議に憤慨し、彼女は動物実験の制限ではなく完全な廃止のみを目的とする
団体The British Union for the Abolition of Vivisection (BUAV)を設立する。た
だし彼女は菜食主義者ではなかった。 (Preece 239)
1891年、菜食主義者でもあるHenry Saltが生物へ苦痛を与えることの軽減を目
的とする団体The Humanitarian Leagueを立ち上げる。当時、動物実験の反対す
る人へ「肉は食べている」「狩りは行う」の批判が動物実験を擁護する学者から
起こっていたが、これをSaltは妥当だとしていた。
...if we are to fight vivisection, we must rid ourselves of this false
‘love of animals’, this pampering of pets and lap-dogs by people
who care nothing for the real welfare of animals, or even the
welfare of men. Humanitarianism must show that it is not
‘bestarian’, and must aim at the redress of all needless suffering,
human and animal alike - the stupid cruelties of social tyranny, of
the criminal code, of fashion, of science, of flesh-eating. (Spencer
111)
また、Saltの出版した​
Plea for Vegetarianism​
はガンディーの菜食主義に強い影
響を与える。
12
1876年、最初の菜食料理店がロンドンのファリンドン通りで始業する。 (Kean
123)
1800年代、健康や宗教上の理由から菜食主義が普及し始め、また、同時期に動
物虐待や動物実験への反対も強まった。複数の団体では、その理念をめぐり会員
間で不和が起きた(菜食か肉食か・ベジタリアンかヴィーガンか・制限か撤廃
か)。菜食主義と動物愛護の運動が交わったのは1870年代以降だとSpencerは述
べる。 (Spencer 285)
奴隷制との比較
What other agents then are there, which, at the same time that they
are under the influence of man's direction, are susceptible of
happiness? They are of two sorts: (1) Other human beings who are
styled persons. (2) Other animals, which, on account of their
interests having been neglected by the insensibility of the ancient
jurists, stand degraded into the class of ​
things.
…​
the question is not, Can they​
reason? ​
nor, Can they ​
talk? ​
but, Can
they ​
suffer? ​
(Bentham)
12―3―5 It has pleased God the Father of all men, to cover some men with
white skins and others with black skins: but as there is neither
merit not demerit in complexion, the white man (notwithstanding
the barbarity of custom and prejudice) can have no right by virtue
of his colour, to enslave and tyrannize over a black man; nor has
any fair man any right to despise, abuse, and insult a brown man.
… for the same reason, a man can have no natural right to abuse
and torment a beast, merely because a beast has not the mental
powers of a man. (Linzey 129)
上は功利主義の創始者ベレミー・ベンサムのAn Introduction to the
Principles of morals and Legislation [道徳および立法の諸原理序説]中の、下は
英国国教会の司祭Humphry Primatが1776年に発刊した A Dissertation on the
Duty of Mercy and Sin of Cruelty to Brute Animals[慈愛の義務と獣類への加虐
の罪についての論]の中での言葉である。
動物の搾取はしばしば奴隷制と比較されて語られる。上記のほか、例えば
Anti-Slave Societyの創立会員であるウィリアムウィルバーフォースはRSPCAの
会議にも出席していた。不遇にも文化や皮膚の色が支配側と異なる人々を奴隷と
して扱うことは当時一般人にとって疑問視されない至極当然のことであった。種
の差異が同様に痛覚を持ち苦しむ能力を持つ他種の動物を人間の為に利用しても
構わないという根拠になるのだと、現在も人々は考えている。ここで、アメリカ
の奴隷制の終了の経過をたどることで、動物の搾取の終了に役立てたい。
南北戦争中1863年にリンカーン大統領が奴隷解放宣言を発し、戦後1865年に憲
法修正第13条によって奴隷制はアメリカ全土で正式に禁止された。しかし、リン
カーン自身の黒人に対する態度を示す言葉には相反するものがあり、どの程度奴
隷制また黒人への差別に反対していたか明確に定めることは難しい。
“If I could save the Union without freeing any slave, I would do it;
and if I could save it by freeing all the slaves, I would do it; and if I
13
could save it by freeing some and leaving others alone, I would
also do that. What I do about slavery and the colored race, I do
because I believe it helps to save the Union; and what I forbear, I
forbear because I do not believe it would help to save the Union.”
(The New York Times: A LETTER FROM PRESIDENT LINCOLN.;
Reply to Horace Greeley. Slavery and the Union The Restoration of
the Union the Paramount Object.)
I am not, nor ever have been, in favor of bringing about in any way
the social and political equality of the white and black races, that I
am not nor ever have been in favor of making voters or jurors of
negroes, nor of qualifying them to hold office, nor to intermarry
with white people; and I will say in addition to this that there is a
physical difference between the white and black races which I
believe will forever forbid the two races living together on terms of
social and political equality. (Collected Works of Abraham Lincoln.
Volume 3.)
仮にリンカーンが真摯に倫理的に奴隷制に異議を唱えていたとして、彼が属す
る北部自体は倫理的な理由で奴隷制からの脱却を目指していたわけではないよう
である。北部で南部よりも奴隷制が発展した要員は地形的・天候的に北部より南
部で農業の発展が見込めたからである。農業に奴隷を必要としない北部では反奴
隷制が高まったという経済的な理由が一般的に受け入れられているが、Litwack
によると北部では工業の職を黒人が占め白人が職をなくすことを危惧し、黒人の
奴隷の排斥を試みたようである。いずれにせよ、南部は「奴隷がいたほうが自分
たちにとって得」なので奴隷制を擁護し、北部は「奴隷がいなくてもあるいはい
ないほうが自分たちにとって良い」ので奴隷制に反対したのである。一方で、キ
リスト教一派の多くのクエーカー教徒は平和を信条に奴隷制に早期から反対して
いた。しかしこれも、山形は「キリスト教でもはや多数派になれないことが自明
の理であったクエーカー教徒は18世紀に存在を意義するものにするために人道
主義運動の促進者になった」と、宗教的確執を強調する。
この構図を現代の肉食をとりまく状況に当てはめてみると、経済的な理由また
は個人的な嗜好からの奴隷制支持者が畜産事業・食品業界・肉食者で、無力さを
感じながらも主義を貫くクエーカー教徒が菜食主義者で、そして、自分たちの都
合で反対した北部的な団体の登場を待っている状況であろうか。
12―4 第1章まとめ
菜食の初期の段階において宗教が菜食促進の原動力になった。近代では、倫理
的観点や健康的理由から菜食が波及していった。
14
第13章
菜食主義の現状
13―1 家畜動物と野生動物
2007年における世界の家畜の総数は、約240億と推定されている。
日本の個別の野生動物個体数は、以下のように推定されている。
出典: 生物多様性センター 各種哺乳類の推定個体数と推定現存量<www.biodic.go.jp/cbd/2/ei3-3-8.pdf>
また、イノシシの個体数は2012年に89万頭となっている。
2007年の肉用牛の飼育頭数は289万頭、出荷頭数は120万頭、乳用牛の飼育頭
数は150万頭、豚の飼育頭数は974万頭、出荷頭数は1626万頭、ブロイラーの飼養
羽数は1億299万羽、出荷羽数は6億2283万羽、採卵鶏の使用羽数は1億8166万羽
2
である。
代表的な野生哺乳類の数よりも、家畜数のほうが多い。動物はもはや
自然に生きるのではなく、ヒトに利用される存在である。
2
九州農業漁業大冒険:​
飼養羽数・生産量 <http://www.maff.go.jp/kyusyu/kid/village/chikusan/index.html>
15
13―2 菜食主義者の数と割合
地球全体における菜食主義者の数は無論流動的だが2014年において3億7500万人
3
と推定されている 。主要国の菜食主義者の割合は以下に列挙する。ただし、これ
らの数字は決して現実を正確に表している保証はない。ある一国の菜食主義者の
割合が統計によって2%であったり、14%であったりしている。以下の数字は
複数の統計の中から筆者が恣意的に選んだものであり、数字の信憑性は蔑ろにし
ていないものの、ある程度他の情報(この国は菜食主義者にとって住みやすい・
菜食主義が発展していないなどの情報)と整合がとれるものを選んでいる。基本
的な傾向として、数字は高めに推定されている。例えばスウェーデンの10%はイ
ンターネットの掲示板Redditではスウェーデン在住の複数のヴィーガンから高す
ぎるとの声があるし、日本の5%にしても筆者は多すぎる数字だと感じる。あく
まで、一機関が行った統計に過ぎないことに留意してほしい。
国名
割合
インド
31%
台湾
13%
45
イギリス
6-12%
6
スウェーデン
10%
78
ドイツ
6-9%
9
イタリア
7.1%
日本
4.7%
10
フィンランド 3.3%
11
フランス
3%
Exponet:375 million vegetarians worldwide. All the reasons for a green lifestyle <
http://magazine.expo2015.org/cs/Exponet/en/lifestyle/375-million-vegetarians-worldwi
de.-all-the-motives-for-a-green-lifestyle->
4
Daily Express: Meat is off the menu as more Britons become vegetarian.
<http://www.express.co.uk/life-style/health/517246/Vegetarians-are-on-the-increase-inBritain>
5
Carmichael, Richard. Becoming vegetarian and vegan: rhetoric, ambivalence and
repression in self-narrative. <
https://dspace.lboro.ac.uk/dspace-jspui/bitstream/2134/6904/2/272914.pdf>
6
Djurens Rätt: Var tionde svensk är vegetarian. <
http://www.djurensratt.se/om-djurens-ratt/nyheter/var-tionde-svensk-ar-vegetarian>
7
Organic-market.info: The vegetarian lifestyle is a long-term development. <
http://organic-market.info/news-in-brief-and-reports-article/vegetarian.html >
8
ZEIT Online: Der Fleischkonsum steigt mit dem Einkommen. <
http://www.zeit.de/lebensart/essen-trinken/2013-08/umfrage-fleischkonsum-veggie-da
y>
9
Eurispes: Comunicato Stampa | Rapporto Italia 2014. <
http://www.eurispes.eu/content/comunicato-stampa-rapporto-italia-2014>
10
Vinnari, Markus., et al. Identifying vegetarians and their food consumption
according
to self-identifi
cation and operationalized defi
nition in Finland. <
https://foodethics.univie.ac.at/fileadmin/user_upload/inst_ethik_wiss_dialog/Vinnari_
2008__Identifying_vegetarians_and_..._in_Finland.pdf>
11
Terra Eco: Etes-vous prêts à devenir végétarien ?. <
http://www.terraeco.net/Etes-vous-prets-a-devenir,43689.html>
3
16
ノルウェー
スペイン
ポルトガル
12
2-4%
13
0.5%
14
0.3%
上位二国はアジアに属するが、どちらの国の数字もその宗教的要素(インドは
ヒンドゥー教、台湾は仏教等)を反映したものになっている。菜食主義を信奉す
る理由は倫理的なものだったり環境的なものだったりあるいは個人の健康の為
だったりするが、上位二か国は主に宗教的な理由で信条としているのである。そ
してそのあとに続くイギリス、イタリア、スウェーデンなどのヨーロッパの国が
諸々の理由で菜食主義者を多く内包している。
数字の信憑性については疑問が残るが、この序列をもとにして、ある一国での
菜食の割合に相関する条件を探っていきたい。この論文では欧州を中心に扱うの
で、日本より割合の高い(概ね6%以上)4カ国(イギリス・スウェーデン・ドイ
ツ・イタリア)対、日本より割合の低い(概ね3%以下)5カ国(フィンランド・
フランス・ノルウェー・スペイン・ポルトガル)の構図でみていきたい。
13―3 ベジタリアンになる動機
出典: Ruby, Matthew B. Vegetarianism. A blossoming field of study. Appetite. Volume 58, Issue
1(2012):141-150. 143
<https://foodethics.univie.ac.at/fileadmin/user_upload/p_foodethik/Ruby__Matthew_2012._Research
_Review_Vegetarianism._A_blossoming_field_of_study.pdf>
上図はベジタリアンになった動機の統計である。環境の考慮・健康上の理由、
嗜好など様々な理由があるが、ヴィーガンにしてもベジタリアンにしても一番多
く選ばれている理由は、倫理的理由である。ここから、何等かの理由で動物への
倫理観がもともと高い国は菜食主義者の割合が高いと推測できる。まず、動物に
関する条件と菜食主義の関係をみていきたい。
13―4 動物の状態と菜食主義
Norsk Vegetarforening: Hvor mange vegetarianere er det egentlig i Norge?. <
http://veg-veg.no/vegetarnytt/diverse/hvor_mange_vegetarianere>
13
ETICA ANIMAL Y AMBIENTAL: Datos estadísticos. <
http://web.archive.org/web/20100316181939/http://blogs.larioja.com/anima/2007/11/6/da
tos-estadisticos>
14
Centro Vegetariano: Estudo da Nielsen, para o Centro Vegetariano. <
http://www.centrovegetariano.org/Article-451Portugal:%2030%20000%20Vegetarianos
-Portugal%253A%2B30%2B000%2BVegetarianos.html>
12
17
12―1―1 X world animal protection
動物保護NPO団体world animal protectionは各国の動物保護の状態をA-Fで評
価した。Aの評価を与えられたのはイギリス・スイス・オーストリアの3カ国、B
の評価はドイツ・スウェーデン・デンマーク・オランダ等、Cはフランス・スペ
イン・イタリア・インド等、Dはアメリカ・日本等となっている。イギリス・ド
イツ・スウェーデンが高く、フランス・スペイン・日本が低いあたり、ある程度
15
菜食主義の割合と相関性がうかがえる。
狩り
狩りの文化が残っている国は、菜食主義者が少ない傾向がある。以下は各国の
16
狩猟者数の割合である。
国名
割合
ドイツ
0.4%
イタリア
1.3%
イギリス 1.3%
フランス 2.1%
スペイン
2.4%
12―1―2 北欧
スウェーデン 3.2%
ノルウェー
4.0%
フィンランド 6.0%
闘牛
ヨーロッパではフランス・スペイン・ポルトガルで闘牛が行われるが、これら
の3カ国はどれも菜食主義の割合が低い。フランスは2015年、国の無形文化遺産
への闘牛の登録を撤回した。一方でスペインは2013年に国の文化遺産に闘牛を指
定し、動物愛護団体から非難を集めた。「文化の為ではなく、EUから支払われる
1億ユーロ以上の助成金を得るという経済的な理由だ」とCare in the Wild
InternationalのCEOは述べていたが、2015年、EUはスペインの闘牛への助成金
を廃止することを決定した。一年に殺された牛の数はスペインが11458頭(2006
年)でポルトガルがおよそ4000頭である。ポルトガルの2007年の国の調査で
は、50.5%が闘牛を法律で禁止すべきだと答え、39.5%が禁止すべきではないと
17181920
答えた。
12―1―3 World Animal Protection Animal Protection Index
<http://api.worldanimalprotection.org/?_ga=1.216311198.944513821.1445829647>
16
FACE Hunters in Europe. <
http://www.face.eu/sites/default/files/attachments/data_hunters-region_sept_2010.pdf
>
17
The Telegraph, French court removes bullfighting from country's cultural heritage
list <
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/europe/france/11655767/French-court-re
moves-bullfighting-from-countrys-cultural-heritage-list.html >
18
The Telegraph, Spain grants bullfighting protected status <
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/europe/spain/10353287/Spain-grants-bull
fighting-protected-status.html>
19
The Telegraph, EU cuts subsidies that support Spanish bullfighting <
15
18
犬(捨て犬、殺処分)
健康な犬の殺処分を法律で禁じる国は、ドイツ、ギリシャ、イタリアの3か国
21
のみである 。
ドイツ
ドイツに野良犬はほぼ存在しないが、愛護団体にペット所有者は動物を捨て
る。2009年には、前年より70000万匹増加した数が愛護団体へ捨てられ、元所
22
有者の69%が経済的な理由だとしている ​
。
12―1―4 ギリシャ
2010年の経済危機後、野良犬・野良猫の数は爆発的に増加し、2015年現在300
23
万頭に近づき、これは2011年のおよそ二倍である ​
。去勢は自治体に責任がある
が、多くは財政を言い訳に処置をしない。このため、イギリスやドイツから獣医
師が到来し、去勢化を手助けしている。動物は狩猟者などにに虐待されたり殺さ
24
れたりするが、処罰はまず与えられない。
イタリア
イタリアは路上で生きる動物の数が多い。816610匹の犬と1290692匹の猫が
25
2001年には特定の家屋内ではなく、路上で暮らしていた。
動物の福祉を重要視した政府は、その政策の一環として1991年、健康な犬・猫の
安楽死を禁止した。その結果、年に平均300000捨てられる犬・猫のうち、85
%が20日のうちに交通事故で死ぬ。一年で交通事故で死ぬ動物の数は280000
26
匹である 。1000程度ある公営シェルターでは間に合わないため、民営シェル
ターの数は5000から更に増加傾向にある。しかし、善意の運営がされている訳で
はないと一定の人々は考える。ドイツから移り住みナポリで動物病院を営むFriz
氏は、「民営シェルターは商業化している」という。一匹当たり4-5ユーロ支
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/europe/spain/11961010/EU-cuts-subsidie
s-that-support-Spanish-bullfighting.html>
20
ESDAW Bullfithing – Portugal < http://www.esdaw.eu/bullfighting---portugal.html >
21
Tasker, Louisa. Stray Animal Control Practices (Eorope).
<http://www.fao.org/fileadmin/user_upload/animalwelfare/WSPA_RSPCA%20Internati
onal%20stray%20control%20practices%20in%20Europe%202006_2007.pdf>
22
The National World: Germany's abandoned dog crisis. <
http://www.thenational.ae/news/world/europe/germanys-abandoned-dog-crisis>
23
GR Reporter: The crisis has doubled the number of stray dogs in Greece <
http://www.grreporter.info/en/crisis_has_doubled_number_stray_dogs_greece/13369
>
24
Docs 4 Dogs: Greece - Abusing, Neglect and Killing Stray Dogs
<http://www.aerztefuertiere.de/index.php?option=com_content&view=article&id=117:g
reece&catid=132&Itemid=582&showall=&limitstart=6&lang=en >
25
Slater, Margaret R., et all. “Free-roaming dogs and cats in central Italy:
Public perceptions of the problem.” ​
Preventive Veterinary Medicine​
84 (2008) 27–47.
<
http://www.fao.org/fileadmin/user_upload/animalwelfare/Free-roaming%20IZS%20AM
%20(2).pdf>
26
IPS. ITALY: Thousands of Pets Abandoned During Summer Vacation. <
http://www.ipsnews.net/2006/08/italy-thousands-of-pets-abandoned-during-summervacation/>
19
払われるため、限られた空間にできる限り動物を押し込み、また、故意的に栄養
27
不良にし、支払われる額を増やすシェルターもあるという 。
ギリシャ・イタリアでは法が整っているにも関わらず、決してペットが良好に
保護されている状態だとは思われないことが読み取れる。
スイス
スイスでは犬肉の販売は禁止されているものの食べること自体は禁止されていな
い。自身が飼う犬を自分または肉屋で屠り、公式な統計は出されていないが、特
にライン渓谷で根強く残る。インタビューされたある人は「社会の目が気にな
28
る」から犬肉をやめたという 。
フランス
フランスでは夏の休暇の間に旅行に出かけ、世話ができなくなった犬を捨てる習
29
慣がある。60000から100000匹のペットが夏に捨てられると推定されている
。
イギリス
北アイルランドを除くイギリスでは2016年から犬へのマイクロチップの埋め込
30
みが法律で義務付けられる 。地方自治体は102363頭の犬を2014年に扱い、その
31
うちの47596頭が所有者と再会し、5142頭が殺処分された ​
。RSPCAは2012年に
32 ​
救助した犬のおよそ半分にあたる53000頭を殺処分した 。そのうちの3400頭が
健康上問題のない犬で、空間が限られたため仕方なく殺された。動物愛護団体で
あるRSPCAのこの態勢に対して批判はあるが、PETAは下記のコメントで擁護し
ている。
Justice For Mary - Animal Advocacy.: TAKE ACTION against Italy's dog
concentration camps!. <
http://justiceformaryanimaladvocacy.blogspot.jp/2013/02/take-action-against-italys-do
g_10.html >
28
The Daily Mail Online: Farmers in Switzerland routinely EATING cats and dogs with
their meals. <
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2255684/Farmers-Switzerland-routinely-EAT
ING-cats-dogs-meals.html>
29
NPR: In France, The (Abandoned) Dog Days Of Summer. <
http://www.npr.org/2012/07/11/156609037/in-france-the-abandoned-dog-days-of-sum
mer>
30
BBC News: Dogs in England must be microchipped from 2016. <
http://www.bbc.com/news/uk-21345730>
31
Dogs Trust: Over 47,000 people heartlessly abandoned their dogs in one year. <
https://www.dogstrust.org.uk/whats-happening/news/over-47-000-people-heartlesslyabandoned-their-dogs-in-one-year>
32
The Daily Mail: Revealed: RSPCA destroys HALF of the animals that it rescues - yet
thousands are completely healthy. <
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2254729/RSPCA-destroys-HALF-animals-resc
ues--thousands-completely-healthy.html?ito=feeds-newsxml>
27
20
Life is easy for those of us who do not take in abandoned dogs and
cats. It’s hard to justify a holier-than-thou attitude towards those
like the RSPCA that refuse to turn their backs on animals who are
abandoned on motorways, left in boxes outside their doors or
trapped in abusive households. Anyone with the attention span of
a mayfly can acquire and then toss away a dog, cat or rabbit. The
finger of blame for high levels of animal euthanasia should be
pointed towards those who tut-tut but do nothing to mop up the
mess. There are simply too many companion animals and not
enough good homes. To help address this issue, spay or neuter
your animal companions and choose to adopt, rather than buy,
33
animals.
34
2015年現在RSPCAはスペースの都合上健康な犬は引き取らない方針である ​
。
日本
出典:環境省自然環境局: 犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況. <
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html>
日本では犬猫の投棄数も減少しているが、引き取られた犬・猫の殺処分率も年々
減少している。
犬の保護状態はどの国も完全と言い難いが、ドイツ・イギリスは他国よりは良
好、イタリアも法に限っては悪くなく、多少は採食主義の発展と関連がありそう
である。
PETAUK: Who’s Really Responsible for Animal Euthanasia?. <
http://www.peta.org.uk/blog/whos-really-responsible-for-animal-euthanasia/>
34
RSPCA: Lost, found and stray dogs. <
http://www.rspca.org.uk/adviceandwelfare/pets/dogs/straydogs>
33
21
12―2 一日の野菜・果物の摂取量と菜食の関係
出典:EUFIC: Fruit and vegetable consumption in Europe – do Europeans get enough?.
<http://www.eufic.org/article/en/expid/Fruit-vegetable-consumption-Europe/>
野菜・果物の消費量と菜食主義者の割合には相関がみられない。
22
12―3 食に関する時間
各国の一週間の平均調理時間と一日の平均食事時間を以下の二つの図は表す。
出典:Statista: Number of hours spent cooking per week among consumers worldwide as of June
2014, by country. <
http://www.statista.com/statistics/420719/time-spent-cooking-per-week-among-consumers-by-count
ry/>. データを元に著者が作成
23
各国の一日の食事時間
出典:OECD. Society at a Glance 2009 28.
<http://www.oecd-ilibrary.org/social-issues-migration-health/society-at-a-glance-2009_soc_glance-2
008-en>
調理時間と菜食主義の割合に相関性はあまり見られない。同様に、食事時間と
菜食主義もあまり関係はないようである。ただし、フランス・日本の食文化を国
の誇りとする二カ国は食事時間が長く、食文化へのこだわりが高く菜食へ関心が
向きにくい国は食事時間が長いととれなくもない。
24
12―4 文化への誇り
出典:内閣府:平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査
< http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/pdf_index.html>
内閣府が各実施した「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」の項目の一
つに、自国の何を誇りに思うかという質問があった。「文化や芸術」を選択した
割合はフランスの44.6%が一番高く、日本の41.2%、韓国の34.6%と続く。「文
化や芸術」の選択の割合が上位3位以内の国はフランス(歴史や文化遺産に続き2
位)、日本(治安の良さ・歴史や文化遺産に続き3位)、韓国(歴史や文化遺産・
科学や技術に続き3位)、イギリス(歴史や文化遺産・スポーツに続き3位)の4
カ国である。ドイツやスウェーデンは「文化や芸術」の選択が低く、イギリスも3
番目に挙がりつつも20%代である。食文化がその国の文化の中で重要な位置を占
めるかは各国によるだろうが、文化を重要視する国は菜食主義者の割合が低い傾
向があるといえる。
25
12―5 経済的・金銭的観点
12―5―1 食物全般に対する肉の値段
出典:eurostat: Significant differences in price levels for food, beverages and tobacco across Europe in 2012.
<http://ec.europa.eu/eurostat/statistics-explained/index.php/Comparative_price_levels_for_food,_beverages_a
nd_tobacco>
食物全般に対する肉の値段と菜食主義の割合は若干の相関性がみられる。以下
に主要国だけ抜き出した。
26
国
EU平均に対する食物の価格​
​
​
EU平均に対する肉の価格
ドイツ
106
128
フランス
110
123
イタリア
113
115
スウェーデン
124
126
フィンランド
118
119
イギリス 102
100
ノルウェー 184
179
スペイン 94
83
ポルトガル 90
75
菜食主義者の割合が低いスペイン・ポルトガルは、国内の食物全般に対して肉
の値段が著しく低い。ただし、同じ菜食主義者の割合が低いフランスは肉の値段
が高い。
27
12―5―2 収入に対する食への支出の割合
出典:Washington University: Annual income spent on food.
<http://wsm.wsu.edu/researcher/wsmaug11_billions.pdf>
食への支出の割合と菜食主義者の割合はかなり高い相関性がみられる。支出の
割合が12%を切る3カ国はどれも菜食主義の割合が高い国である。イタリアは菜食
主義者の割合が高いが、支出の割合も高い。
12―6 各国の近況
フランス
With a culture and cuisine that is so deeply in love with meat in all
its forms, avoiding eating it in France is a tricky business. (The
Guardian: French government 'banning vegetarianism' in school
canteens)
Unfortunately, the strong traditions of French cuisine tend to
make life very difficult for vegetarians. France today is one of very
few Western countries where a request for food without meat can
be met with outright derision -going without meat is widely
considered to be absurd. The Vegetarian magazine in the UK
regularly receives reports from travelers who have struggled to
obtain vegetarian food in France, faced with restaurateurs who
thought a little meat wouldn't matter, or that by using their
home-made rich beef stock they would be giving the vegetarian
diner a treat. One recent report describes a French waiter's
response to 'Je suis vegetarienne" as one of immense sorrow and
sympathy, as if the diner had confided information about a
28
life-threatening illness. …The majority of the population remains
convinced that a meal without meat is not a meal and that
vegetarians are malnourished and complicated individuals. (J.
Hughes 127)
多くの菜食者・文献が、フランスの菜食への障害はフランスの根付いた食
文化だと指摘する。
スウェーデン Umeå is also widely considered the most 'metal' town in Sweden,
thanks to its thriving metal and straight-edge music scene. (Lonely
Planet: Introducing Umeå)
Straight edgeというドラッグやアルコールの節制を提唱する音楽ジャンル(パ
ンク)があり、これは菜食への呼びかけも行う。旅行ガイドブックロンリープラ
ネットでそのmetal・straight-edge音楽が認知されるスウェーデンの街ウメオで
は、統計では学生の菜食主義者の割合が高い。15歳の菜食主義者の割合が、ス
35
トックホルムの4.8%、ベルゲンの3.8%に対してウメオでは15.6%である ​
。
Larssonはこの数字を90年代のウメオでのstraight edge音楽の高まりに結び付
け、またそこからのメディアでの菜食の報道も菜食主義者の増加につながったと
している。もしこの統計の数字が正確であれば、現代において、サブカルチャー
が発言力を持つことに成功し、菜食に影響を与えた稀有な成功例だろう。
ノルウェー
ノルウェーでは2014年から2015年の一年で、冷凍の菜食食品の売り上げが二倍
36
になった。スウェーデンの菜食ブランドvegetarmatの進出が大きいという ​
。
ドイツ
世界初のヴィーガンスーパーマーケットチェーンVeganzはドイツのベルリンに
2011年に始業した。2015年現在国内に10店舗構え、イギリス・アメリカにも出店
する計画である。近年の同国の菜食への関心は、同国のベジタリアン協会への下
院数の増加に反映されており、2010年・2011年・2012年にそれぞれ前年比130
37
%・140%・150%と会員が大幅に増加している ​
。
インド
菜食主義者の割合が40パーセント前後と推定され、インドは世界一の菜食国家
とみなされる。しかし、経済成長に伴い肉の消費量はこの5年で二倍になり、ま
た、20年前は3%を占めていた肉のうちの牛肉の消費量は、現在50%になっ
Larsson, Christel. Young vegetarians and omnivores Dietary habits and other
health-related aspects.
<https://www.diva-portal.org/smash/get/diva2:143626/FULLTEXT01.pdf>
36
Dagbladet News: Vegetarmat blir stadig mer trendy
<http://www.dagbladet.no/2015/03/24/nyheter/vegetar/veganer/frossen/hlsans_kk/383
67413/>
37
Organic-market.info: The vegetarian lifestyle is a long-term development.
<http://organic-market.info/news-in-brief-and-reports-article/vegetarian.html>
35
29
38
ている 。もともとインドの不可触民(人口の16.6%)、イスラム教徒(14.88
39
%)、キリスト教徒(2.3%)、シク教徒(1.9%)は牛肉を食べる ​
。インドのヒ
ンドゥー至上主義団体Rashtriya Swayamsevak Sangh [民族義勇団]が支援する
Bharatiya Janata Party [インド人民党]はムンバイ州とのマハラシュトラ州で牛
肉を2015年3月に禁止し、9月にはインドの中で唯一イスラム教徒が多数派であ
るジャンムーカシミール州でも禁止した。過激なヒンドゥー教主義者が文化的覇
40
権を握ろうと、牛肉の禁止によってイスラムを押し込めようとしたのである 。
12―7 第2章のまとめ
動物愛護の動きは直接菜食を訴えなくても、菜食の普及に効果的だといえる。
動物性の食文化は菜食の普及に非常に障害になる。各菜食企業の展開・各家庭の
経済状況は菜食主義の割合に大きな影響を与える。
The Times of India: The flesh-eaters of India.
<http://timesofindia.indiatimes.com/edit-page/The-flesh-eaters-of-India/articleshow/12
73309.cms>
39
The Financial Times: India’s only Muslim-majority state hit by beef ban.
<http://www.ft.com/intl/cms/s/0/7bb5973a-57af-11e5-97e9-7f0bf5e7177b.html>
40
Scroll.in: Beef ban is an attempt to impose upper-caste culture on other Hindus:
Kancha Ilaiah.
<http://scroll.in/article/714661/beef-ban-is-an-attempt-to-impose-upper-caste-culture-o
n-other-hindus-kancha-ilaiah>
38
30
第13章
今後の展開
13―1 文化の保護
2013年12月、日本の和食がユネスコの無形文化遺産に登録された。和食で使用
する動物性の材料は他国の料理に比較して少量だとしても、和食は決して菜食料
理ではない。世界の文化として保護されることで、使用される動物たちは殺され
続けることが確約された。無形文化遺産に指定されたものは和食に限定されず、
フランス料理、メキシコ料理、地中海料理が文化遺産に定められている。
現在までに無形文化遺産から抹消された唯一の例は、2010年に登録され2012年
に取り消された「ウィーン舞踏会」である。ネオナチ的な極右の政治家との結び
つきが指摘され、抗議の結果同遺産は「他文化の尊重」を重要視するUNESCOの
原則から外れ遺産のレッテルを免れた。発言できない動物からの抗議は起こり得
ないので、各国の食文化が遺産から除かれるには、人間からの抗議が必要にな
る。鯨肉のように一か国に限定されるものならば他国は非難できるが、肉食その
もののようにすべての国が行っていることに対しては、同様に行う他国は責めよ
うがない。
13―2 特定の個人から菜食主義の影響を受けたか
31
出典:Draper, Alizon K. VEGETARIANISM IN THE UK.
<http://researchonline.lshtm.ac.uk/682289/1/361159.pdf>
上図は菜食主義を抱くにあたって特定の個人や情報から影響を受けたか、受けた
なら何かからなのかの統計である。およそ二分の一が何等かの影響で菜食主義者
になったと回答している。注目すべきは、家族・活動家からの影響がそれぞれ
2.9%・5.8%と低いことであろう。一番多くの時間を過ごす家庭からの影響も、一
番熱心に菜食主義を普及させようとする活動家からの影響も、残念ながら数字に
は反映されていない。それよりもメディア/本からの割合が14.5%と高く、また、
友達からの影響が50.7%と突出している。
13―3 資本主義
化粧品の動物実験
日本の大手化粧品会社の海外売上高比率は年々高まっている。花王は2012年度
41
から2014年に26.8%から33.1%に伸び ​
、資生堂の海外売上高比率は2014年度に
4243
55%を超え、同社の2013年度の欧州の売上高比率は26パーセントを占めた。
13―3―1 41
花王株式会社、 平成26年12月期のハイライト <http://www.kao.com/jp/corp_ir/imgs/presentations_fy2014_01.pdf>
42
資生堂 News release 2013-6
<http://www.shiseidogroup.jp/releimg/2165-j.pdf?rt_pr=tr046>
43
Yahoo Japan ニュースBusiness:超優等生・花王の怠慢 P&Gとの「ケタ違い」の差を
生んだ「やる気のなさ」
<http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150814-00010000-biz_bj-nb&p=2>
32
EUは2003年にて化粧品指令第7次改正を公布し、2004年に化粧品の動物実験
を、2009年に化粧品の材料の動物実験とEU外で製造された動物実験された化粧
品の販売を、2013年度にはそれまで代替法が確立していなかった動物実験すべて
を禁止した。これに相次ぎ、日本国内の化粧品会社資生堂は2013年に動物実験の
廃止を決定し、花王も2015年に廃止した。倫理的な観点からというよりも、動物
実験の有無が海外の売り上げの有無に直結する以上、禁止せざるをえなかったと
いうのが本音ではないだろうか。
補足だが、医療用の動物実験への人々の態度は、近年は容認の方向である。イ
ギリスでは、代替や苦痛の低減を考慮したうえでの動物実験に1999年では84%
44
が、2005年には89%が受け入れるとし、増加がみられる。
13―3―2 菜食に支払える金額
出典:アニマルライツセンター:畜産動物に関する消費者意識・行動調査
<http://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=340>
NPO法人アニマルライツセンターが実施主体となりインテージに依頼して
行った「畜産動物に関する調査」の中の一つの質問である。前後の質問では回答
者が比較的動物の福祉に高い関心を持っていることが窺える。例えば「日本の企
業にも畜産動物の飼育環境の改善に取り組んでほしいと思か」との質問にはそう
思う・ややそう思うと答えた人の割合は80.5%にもなる。だが、実際に自身が金
銭的な負担を強いられることになることは我慢ならない人が多く、許容しない・
お情け程度の1.1-1.3倍未満までしか許容しないと回答した人の割合は79.4%であ
る。菜食の普及のためには、菜食を低価格で提供可能にすることが必要不可欠で
あるといえるであろう。
The National Center for Biotechnology Information, EMBO Reports, The ethics of
animal research. Talking Point on the use of animals in scientific research
<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2002542/>
44
33
Indeed they argue that vegetarianism is in the process of being
absorbed or incorporated into nutritional culture as the capitalist
food market responds to `asignificant new minority niche', thus
effectively lowering the `threshold of entry' for new converts
(Beardsworth & Keil, 1992a; p. 239-40). (Carmichael 43)
菜食料理が多様な食の選択の中の一つとなりつつあり、資本主義の中で菜食料理
が選ばれるには競争に勝たなければならないだろう。
Capitalism has the rational pursuit of profit as its driving force and
is essentially amoral, or at least morally neutral, with regard to the
tastes and values of its consumers and clients. Thus capitalism is
not likely to attempt to "judge" a challenging or "deviant"
nutritional movement. Rather, it will tend to react to such a
phenomenon as a new marketing and profit-generating
opportunity. (Beardsworth 232-233)
菜食料理も一つではなく、多様化している。菜食主義者率10%を誇る台湾の素
食は「素食料理」として文化になりつつある。日本であれば菜食料理店の半分以
上はマクロビオティック料理だろう。様々な菜食料理は生き残り主流になってい
かなければならない。また、ベルギーでの週一菜食運動の成功を研究した本間友
香里は、その成功の要因に「動物愛護を直接的に訴えないこと」「健康的という
ポジティブさを強調したこと」「活動がデザイン性に優れていたこと」を挙げ
る。
13―3―3 菜食業界の規模
2009年には世界の全食品の6%が菜食主義者に対応した食品だったが、2013年
には12%まで拡大している。イギリスでは、2009年に菜食業界は5億4300万ユー
45
ロの規模であったが、2013年には6億2500万ユーロまで拡大している ​
。
13―3―4 菜食対象者
…theVegetarian Resource Group estimates that about 40 percent of
US consumers constitute a good market for meatless items, while a
2008 national poll has shown that more than half the population
“always”, “often” or “sometimes” order vegetarian meals when
eating out, making them potential customers of meatless dishes in
restaurants (Stahler, 2008). (Rivera 1052)
RiveraはStahlerなどを引用し、狭義のベジタリアン以外にも健康的な理由など
で日定期的に菜食を実施する人の増加を指摘する。アメリカの人口の半分以上が
菜食業界の潜在的顧客になりえるとのことである。
13―4 給食
消費者が食べるものを直接選択することなく、用意されたものを食する機会も
おおい。病院食、路上生活者の炊き出し、給食等である。病院食は日本ではキリ
Mintel: NUMBER OF GLOBAL VEGETARIAN FOOD AND DRINK PRODUCT
LAUNCHES DOUBLES BETWEEN 2009 AND 2013.
<http://www.mintel.com/press-centre/food-and-drink/number-of-global-vegetarian-fo
od-and-drink-product-launches-doubles-between-2009-and-2013>
45
34
スト教アドベンチスト教会が神戸・東京・沖縄で営む病院が提供している。同教
会の三育学院大学は菜食の給食を提供している。
Animal Aidの統計によると、イギリスでは77%の小学校が毎日1-4つ菜食の
46
代替を用意している 小学生の満足度を向上することを課題としている。。
フランスのシャロン=シュル=ソーヌの市長Gilles Platretはイスラム教徒のた
めの豚肉を含まない給食オプションを「政教分離の国の方針に反する」として、
2015年提供を停止し、相次いでほかの幾らかの市もメニューから消した。遡って
2011年、フランス政府は80人以上に給食を提供する場合の栄養のガイドラインを
設定し、菜食団体から「動物性のたんぱく質の摂取を前提とし、暗に菜食を禁止
47
している」と抗議が起きた 。フランスの政教分離は徹底しており、2004年には
学校でのムスリムのスカーフの着用を禁止した。一方で、国会議員Yves Jégoは
48
すべての学校で菜食のオプションの義務化を呼び掛けている 。菜食の提供は特
定の宗教の優遇に当たらなく、現実的な解決方法だという意見だ。
ニューヨークの公立小学校PS244は2013年にアメリカではじめて給食を菜食
化した。菜食化は健康面での理由であり、生徒の80%は給食を食べ、学校への出
49
願者は増加しており、概ねに支持されていると考えられる 。
台湾の小中学校の86%は週に一回は給食を菜食にしている。健康面ととともに
50
環境面も強調している 。
菜食の給食の提供の実施は、毎日大量の肉の消費を減らせるという点。大人に
なっていく子供の自主的な食品の選択に大きな影響を与えられるという点で非常
に効果的な手法だと考える。実際、菜食の給食の提供率が高いイギリス・台湾で
は菜食主義者の割合も高い。
13―5 第三章まとめ
​
この資本主義社会の中で菜食を普及させるためには、企業側にも消費者側にも
利点がなければならない。健康の観点から菜食に興味を持つ消費者が増え企業は
菜食を助長しやすくなったが、動物の福祉に考慮した食品に普段より多い金額を
支払うことはできない消費者が多数である。企業の経済活動は菜食の普及に一役
買うが、一方で、菜食になるきっかけに友人からの影響が大きいことから、個人
が菜食を貫くことは決して菜食の普及に無駄にはならないだろう。
Animal Aid: A UK-wide survey of school meals provision for veggie children.
<http://www.animalaid.org.uk/images/pdf/vm02r.pdf>
47
The Guardian: French government 'banning vegetarianism' in school canteens:
http://www.theguardian.com/lifeandstyle/wordofmouth/2011/oct/26/french-governme
nt-banning-vegetarianism-schools
48
BBC News: French MP Yves Jego calls for vegetarian school meals:
<http://www.bbc.com/news/world-europe-34019374>
49
Fast Company: The Nation’s First Vegetarian Public School Is Thriving.
<http://www.fastcoexist.com/3044823/the-nations-first-vegetarian-public-school-is-thr
iving>
50
中華民國駐外單位: 台湾の小・中学校の86%は一週間に一度の菜食給食を実施.
<http://www.taiwanembassy.org/ct.asp?xItem=196320&ctNode=2237&mp=2&nowPage
=3&pagesize=30>
46
35
第14章
結論
現代において、宗教(的対立)からの菜食の徹底では、成長する経済の中での
肉食の勢いに勝てない。倫理的な理由から菜食主義者になる人が多いのは事実だ
が、昨今はもっと軽い気持ちで菜食を試す人が増えている。そのような環境の中
で菜食を提供する企業がいかに顧客をつかむかが菜食の普及の鍵である。また、
菜食の環境を提供するという意味・菜食主義に興味を持ってもらうという意味
で、菜食の給食などの提供も有効だろう。
日本で菜食を広める意義
日本人の一年間の肉の消費量はおよそ45kgであり、これは例えばイギリス
の二分の一である。イギリス人一人が菜食主義者になると、日本人二人が菜食主
義者になる分量と同じだけ動物を救える計算になる。だがこれは日本で菜食主義
を広よることを断念する言い訳にはできないであろう。「肉の消費量が減った世
界」ではなく「肉の消費がなくなった世界」を目指すのであれば、すべての日本
人も菜食主義者に変えていく必要があるのであり、日本が菜食後進国という事実
に甘えることなく、同じだけ労力が必要であろう「人一人を菜食主義者に変え
る」ということを繰り返ししていくしかない。自分が自国の人を変えなければ、
他に誰がしてくれるのか、という当事者意識を持てば、困難に立ち向かう推進力
が生まれてくるだろう。
36
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