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難航するリコノミクスの経済改革 ー2016年の中国経済の行方

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難航するリコノミクスの経済改革 ー2016年の中国経済の行方
中国通中国セミナー
難航するリコノミクスの経済改革
ー2016年の中国経済の行方
主席研究員
柯 隆
Copyright 2016 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
2016年という年
 3月
全人代
 5月16日 文化大革命発動から50年経過
 6月4日 天安門事件から27年経過
 8月
北戴河会議
 9月4-5日 G20サミット(杭州市)
 9月9日 毛沢東死去・文革終焉から40年経過
 10月
人民元のSDR入り(正式採用)
 11月
共産党中央委員会6中全会
 12月
中央経済工作会議
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Copyright 2016 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
リコノミクスの破綻
 リコノミクス:ディレバレッジ、構造改革、過度な景気刺激策を実施
せず→2016年1Q:銀行の信用創造4兆6000億元、財政出動
15.4%増→リコノミクスの失敗
 2016年5月9日「人民日報」:経済権威による第1四半期経済運営
に関する解説→高いレバレッジは高い経済リスクをもたらす、目下
の中国経済の問題はサプライサイドにあり、サプライサイドの改革
が重点的に行われなければならない、共産党中央経済工作会議
の決定を「全面的に」、「正確に」、「割り引かずに」に実行しなけれ
ばならない。(この経済権威は劉鶴氏と思われる)
 劉鶴:国家発展改革委員会前副主任、中央財経指導
グループ弁公室主任
 2016年5月10日「人民日報」:中央高級幹部に向けた習近平国家
主席の談話を掲載→経済工作の重点:過剰設備の削減、在庫の
削減、ディレバレッジ、コストの削減、技術革新による欠陥の補足
2
Copyright 2016 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
経済政策のディマンドサイドとサプライサイド
需要側(ディマンドサイド) 供給側(サプライサイド)
・金融緩和
・技術革新
・財政出動
・産業構造の高度化
・内需刺激
・社会保障の充実
・「騰籠換鳥」
(鳥籠に新しい鳥を入れる)
負の側面
・ゾンビ企業の閉鎖
・過剰設備
・環境対策
・企業の過剰債務
・ブランド戦略
・社会保障制度の未整備
・国有企業管理の強化
(M&A)
・格差の拡大
3
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主要経済指標(一)
2011
2012
2013
2014
2015
2016.1-3
9.2
7.8
7.7
7.4
6.9
6.7
第1次産業
4.3
4.5
3.8
4.0
3.9
2.9
第2次産業
10.3
8.1
7.9
7.3
6.0
5.8
第3次産業
9.4
8.1
8.3
8.1
8.3
7.6
固定資産投資
23.6
20.6
19.6
15.7
10.1
10.7
不動産投資
27.9
16.2
19.8
10.5
2.8
6.2
小売上高
17.1
14.3
13.1
12.0
10.6
10.5
M2
13.6
13.8
13.6
12.1
13.3
13.4
GDP
4
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主要経済指標(二)
2011
2012
2013
2014
2015
2016.1-3
22.5
6.2
7.5
3.4
-7.0
-5.9
輸出
20.3
7.9
7.9
6.1
-1.8
-4.2
輸入
24.9
4.3
7.3
0.4
-13.2
-8.2
1,549
2,311
2,590
3,831
5,945
1,255
9.7
-3.7
-2.9
1.7
7.9
19.3
3,181
3,310
3,821
3,843
3,330
3,210
消費者物価
5.4
2.6
2.6
2.0
1.4
2.1
失業率
4.1
4.1
5.0
5.1
5.1
5.1
国際貿易
貿易収支(億㌦)
FDI
外貨準備(10億㌦)
5
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-5
-10
-20%
-40%
1978
1980
1985
1990
1995
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
25
1978
1980
1985
1990
1995
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
構造転換の遅れ
GDP寄与率
%
20
輸出
6
資本形成
最終消費
15
10
5
0
GDP貢献度
100%
80%
輸出
60%
40%
20%
資本形成
0%
最終消費
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経済成長と家計消費
実質GDP伸び率
農村住民消費
1990
2000
16.0
都市部住民消費
14.0
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
2014
2012
2010
2008
2006
2004
2002
1998
7
1996
1994
1992
1988
1986
1984
1982
1980
1978
%
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中国経済の発展モデル
経済発展=需要=供給
需要(Y)=投資(I)+消費(C)+輸出(EX-IM)
投資(I)=貯蓄(S)・・・インフラ投資ではなく、技術に投資
貯蓄(S)>消費(C)・・・リバランスが必要
輸出(EX-IM)=f(人件費ℓ,為替レートr,オフィス賃料の高騰)
・・・為替自由化が必要
供給(Y)=資本ストック(K)+労働(L)+生産性(t)
資本ストック(K)・・・過剰設備の削減
労働(K)・・・少子高齢化
生産性(t)・・・研究・開発(R&D)
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中国のチャレンジ
 David Lipton (IMF, managing director)
“Rebalancing China: International Lessons in Corporate Debt”
ー「中国経済は減速している。同時に、中国企業は巨額の債務を抱
えている。これは中国経済にとって深刻なチャレンジとなる。経済が
減速するなかで、中国政府は過剰設備と債務を縮小させようとしてい
るが、ディフォルトを引き起こすおそれがある。これは中国経済のシス
テムリスクを意味する。
中国は体力を失った国有企業を業績のよい企業とM&Aさせよう
としているが、ある意味では、これは体力を失った企業を救済する補
助金となる。しかし、これでは、問題が解決されない。」
李克強首相の悩み
市場に任せると、企業の倒産と失業の深刻化が予想される。中国
政府にとってもっとも心配されるのは、社会の不安定化。結局、改革
が先送りされてしまう。
9
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中国の国際収支(実額:億㌦)
5,000.0
経常収支
4,000.0
3,000.0
金融収支
誤差脱漏
2,000.0
1,000.0
0.0
-1,000.0
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
-2,000.0
-1,401.4 (2013年)
-1,882.0 (2014年)
10
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中国で金利を自由化?
貸出金利
1998-99年
商業銀行による小企業向け貸出金利の上限を基準金利の1.2倍に拡大
2004年10月
商業銀行による貸出金利の上限規制撤廃
12年6-7月
商業銀行による貸出金利の下限引き下げ
13年7月
商業銀行による貸出金利の下限規制撤廃
預金金利
1999年10月
保険会社大口定期預金に協議預金金利適用
2004年10月
商業銀行預金金利の下限規制撤廃
13年12月
インターバンク市場における譲渡性預金の発行解禁
15年8月
商業銀行1年超の預金金利上限規制撤廃
同年10月
商業銀行1年以下預金金利上限規制撤廃
出所:BOJ
しかし、implicitな窓口規制継続
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強国になる条件
経済力
・抑止力
軍事力
・技術力
・ブランド力
文明力
・恐れられる国より尊敬される国
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市場経済+政治改革
市場経済
信 用
政治改革
市場経済改革
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取りうる政策(短期)
 さらなる金融緩和
①利下げ
②公開市場操作(量的緩和)
③預金準備率の引き下げ
 為替の切り下げ
 財政出動
①減税
②インフラ投資の増額
 外資誘致政策
 「走出去」政策
①地場企業の対外投資の促進(AIIB、一帯一路)
②海外企業の吸収・合併
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行われうる改革(長期)
 国有企業改革
①国有企業の管理強化
②ゾンビ企業の閉鎖
③国有企業の吸収・合併
 財政改革
①「営業税」の「増値税」への改革→実質的な減税
②社会保障制度の充実
③固定資産税の導入
 金融改革
①金利の自由化
②為替の市場化
③国有銀行改革
④証券市場改革
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常態化する爆買い
2015年、1億2000万人の中国人は海外旅行
(含む香港・マカオ)に出かけた。海外で消費した
金額は1045億ドルといわれている。
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「一国二制度」とLANCOM事件
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Denise Hoのスポンサー契約がキャンセル
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AIIBと中国の対外進出(年末に参加国が100か国を超える)
中国の経済外交ー対外経済援助(2010-12年)
その他, 3%
欧州, 2%
大洋州, 4%
ラテンアメリカ,
8%
アフリカ, 52%
アジア, 31%
出所:中国国務院、BOJ
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結論ー「内憂外患」
 内憂
・改革の遅れと構造の不合理性
・反腐敗による幹部の人心閑散
・格差の拡大による社会不安の増幅
・経済のリバランスに伴う経済問題と社会問題の深刻化
・19回党大会の人事を巡る権力闘争
 外患
・中国孤立論の台頭
・アメリカの対中政策に異変(内政不干渉と外交戦略の強化)
・経済外交の限界性
・英国のEU離脱のリスク
問われる中国の文明力
20
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