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6月号 - ジュンク堂書店

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6月号 - ジュンク堂書店
I S S N 0914−3157
2013 .
6月号
2013年6月5日発行
︵毎月1回5日発行︶
通巻 号
昭和 年7月 日第三種郵便物認可
415
ほんのしるべ
61
15
世界の本屋さん
vol.18
ジャマイカ・モンテゴベイ
サングスター書店
ノセ事務所
能勢
仁
ブの楽園として有名な都市で、首都キング
である。筆者の訪れたモンテゴベイはカリ
県 位 の 広 さ で 人 口 は 二 七 八 万 人︵ 〇 八 年 ︶
キューバ、ドミニカに次ぐ国である。秋田
た A3判、八十ページのうすい大型絵本が
た。値段の高いことにも驚いた。筆者の買っ
であった。次に多いのがこどもの本であっ
書の多いことに驚いた。店の半分は学習書
書店としてはテキストブック、辞書、参考
雑 誌、 文 具、 学 校 教 材、 事 務 用 品 で あ る。
チ ェ ー ン 店 で あ る。 扱 っ て い る 商 品 は 本、
ストン︵七十三万人︶に次ぐ十三万人の街
ジ ャ マ イ カ は 中 南 米 カ リ ブ 海 に 浮 か ぶ、
である。ジャマイカは今やウサイン・ボル
一二〇〇円であった。
タ ー 書 店 は 交 差 点 角 に あ る 好 立 地 で あ る。
二 百 米 に 亘 っ て 拡 が っ て い た。 サ ン グ ス
裏腹に、潮が引くと、女性四名がカウンター
時 の 女 子 従 業 員 の 仕 草 で あ る。 繁 忙 時 と は
を積みあげていた。この店の面白さは閑散
似ている。書棚にノートを並べる様に書籍
陳列も面白かった。文具屋さんの陳列に
トで知られる陸上王国であるが、商店街も
町並みは食料品、衣料品、薬、雑貨、工作
に集まって楽しそうにおしゃべりを始め
賑 わ っ て い た。 商 店 街 は 街 の 中 心 地 に 約
機械等の店が多い。業種店が商店街を形成
る。若い男性店長は棚整理をしている。い
つもこうだと店長が言っていた。
していた。各商店は五坪から十五坪程度と
サングスター書店は市内に三店舗をもつ
小さい。
(表紙題字・陳舜臣)
6月
三 四 郎 は 又 見 惚 れ て い た。 す る と 白 い
世界の本屋さん
月
タ
書
1
三宅
一志
2
著書を語る
○ ﹁おばちゃんが教えてくれたこと﹂
﹁書標﹂歳時記
書標・書評
﹃もうひとつの街﹄ほか
科
学 コ ン ピ ュ ー
学
学
医
方が動き出した。用事のある様な動き方
会
科
ではなかった。自分の足が何時の間にか
然
特集
児童文学、読んでみませんか
今月のおすすめ
社
自
人 文 科 学
文 学 ・ 文 芸
術
文 庫 ・ 新 書
芸
用
書
地 図 ・ 旅 行 書
実
童
書
語 学 ・ 辞 典
児
往復書簡をはじめませんか
洋書の話
パート9
読者から
トーク・レポート
インフォメーション
4
6 18
本屋うらばなし
﹁時間のない男﹂
※表示価格はすべて税込価格です。
−1−
動いたという風であった。見ると団扇を
持 っ た 女 も 何 時 の 間 に か 又 動 い て い る。
二人は申し合わせた様に用のない歩き方
を し て、 坂 を 下 り て 来 る。 三 四 郎 は や っ
ぱり見ていた。
夏目漱石著﹃三四郎﹄︵新潮文庫︶より
24 23 21 19 17 14
6
25 23 22 20 18 16
31 30 29 28 26
494
著書を語る
○
︱︱
三宅
一志
が 突 然、 蒸 発 ﹂ と し て 家 を 売 り、 当 座 の 生 活 費 は 確 保
した。田舎の中古住宅、得た金は知れている。
私 が 生 ま れ た 昭 和 二 十 二 年 ご ろ の こ と。 静 脈 注 射 で
用 い る ラ イ 病 の 特 効 薬・ プ ロ ミ ン が 出 来 た ば か り だ が
高 価 過 ぎ た。 国 が 五 千 万 円 の 予 算 を 付 け た 同 二 十 四 年
度 か ら 本 格 的 に 使 わ れ た。 驚 異 的 な 効 果 を 発 揮 し た。
不 治 か ら 可 治 へ、 コ ペ ル ニ ク ス 的 展 開 で あ っ た。 し か
し 日 本 で は 昭 和 六 年 か ら 国 策 と し て、 離 島 や 辺 地 の 療
養 所 に 在 宅 患 者 を 引 っ 張 っ て い く﹁ 終 生 絶 対 隔 離 ﹂ を
続 け て い た。 官 民 挙 げ て の 無 癩 県 運 動 で﹁ ラ イ は 強 烈
伝 染 病 ﹂ と 嘘 の 情 報 を 流 し 続 け た。 一 般 大 衆 の ラ イ 病
恐怖心は元々強かったのに、この運動がそれを煽った。
い っ た ん 入 っ た ら 死 ぬ ま で 出 ら れ な い。 そ ん な 状 況 は
今 も 何 ら 変 わ ら な い。 ほ と ん ど の 入 所 者 が 後 遺 症 を 抱
え 社 会 復 帰 を 試 み て も﹁ 秘 密 ﹂ を 守 り 通 す こ と に 疲 れ
果て、帰園する人が圧倒的に多いのである。
外 来 者 は 納 骨 堂 の 立 派 さ に 驚 く。 差 別 か ら 家 族・ 親
類 を 守 る た め に 籍 を 抜 い た り、 自 分 は 死 ん だ こ と に し
て 偽 名 ま で 使 っ て 入 所 者 は 生 き、 そ こ で 果 て る。 明 治
﹁おばちゃんが教えてくれたこと﹂
﹁ か ず っ さ ん。 馬 鹿 な こ と ぉ、 言 わ れ な。 私 に ゃ あ、
姪 が 二 人 お る。 私 の た め に 嫁 に 行 け ん か っ た ら、 だ れ
がどう、責任とるんじゃあ﹂
普 段 は 品 の あ る﹁ お ば ち ゃ ん ﹂ が、 私 の 愚 問 に 声 を
荒げた。﹁おばちゃん、健康なのに里に帰らんの?﹂と
聞 い た 時 だ。 私 は 二 十 五 歳、 こ の 病 に ま つ わ る﹁ あ つ
い壁﹂には無知同然だった頃の話しである。
我が家の粗壁の農作業小屋にムシロ二十数枚をぶら
下 げ て 独 居 す る お ば ち ゃ ん。 五 回 ほ ど 尋 ね た 時 の こ と
で あ っ た。 底 冷 え す る 大 晦 日 の 夕 刻。 裸 電 球 の 下 で 練
炭 火 鉢 が ガ ン ガ ン 燃 え て い た。 天 井 で ネ ズ ミ が 走 り 回
る。 お ば ち ゃ ん は 私 と 妹 の 育 て の 親 同 然。 農 機 具 や 米
俵 で 小 屋 が 満 杯 の 時 は、 外 壁 に ム シ ロ を 垂 ら し て 住 ま
わ れ た ︱︱ 私 た ち の 村 に 嫁 ぎ、 新 婚 早 々 に 夫 が ラ イ 病
を 発 症。 離 島 に あ る 長 島 愛 生 園︵ 岡 山 ︶ に 入 ら れ た。
普通なら警察官立ち会いのもと保健所が、住まいを真っ
白 に 消 毒 す る。 だ が 夫 の ト ラ オ さ ん は 夜 中 に さ っ さ と
入 園 し、 村 人 に 気 づ か れ る こ と は な か っ た。 お ば ち ゃ
んは︵といっても当時は二十歳前後だが︶世間には﹁夫
−2−
494
末 か ら の 死 亡 患 者 数 は 二 万 五 千 五 百 人。 全 国 十 三 カ 所
の 国 立 療 養 所 の 入 所 者 は 三 月 末 に、 二 千 人 を 切 っ た。
平 均 年 齢 は 八 十 三、 日 本 人 男 性 の 平 均 年 齢 よ り 上 だ。
新 発 生 患 者 は 年 間 ゼ ロ ∼ 二 人。 こ の 病 気 は 世 間 の 差 別
意識に包囲されたまま、﹁終末期﹂に入った。﹁その後﹂
をどうするのか。国、入所者組織で詰めている。
五 月 に 出 た﹃ ハ ン セ ン 病 ︱︱ 差 別 者 の ボ ク た ち と 病
み棄てられた人々の記録﹄︵札幌市・寿郎社刊︶は、背
筋 が 震 え る 事 象 と 全 体 像 の 提 示 を 試 み つ つ 描 い た。 取
材 は 親 友 の 在 日 コ リ ア ン 研 究 家 と。 沖 縄 の 西 表 島 ∼ 東
京 の 十 近 い 療 養 所 等 に 行 っ た。 入 所 者 ら 十 余 人 に イ ン
タ ビ ュ ー、 収 録 し た。 解 説 と 資 料 編 を 厚 く し た。 今 回
こ の 本 を 出 し て く れ た 寿 郎 社 の 土 肥 寿 郎 さ ん は、 私 が
三 十 五 年 前 に ラ イ 病 問 題 を 新 聞 連 載 し て ま と め た﹃ 差
別者のボクに捧げる ! ﹄︵晩聲社︶を、二十年前に﹁増
補新装版﹂として改めて本にしてくれた編集者だ。
私 た ち が﹁ 安 井 の お ば ち ゃ ん ﹂ と 呼 ん だ 婦 人 は、 我
が 家 の 農 作 業 を 手 伝 い つ つ、 私 た ち 兄 妹 の 面 倒 を み て
くれた。代わりにクズ米をあげた。すべてが自給自足。
水 は 山 裾 の 泉 か ら、 ト イ レ は 田 圃 に 穴 を 掘 っ て 板 二 枚
を 渡 し て。 金 欠 で 買 い 物 は 一 切 せ ず。 医 者 に か か っ た
こ と も な い。 眼 と 耳 を や ら れ 六 十 五 歳 ご ろ、 列 車 に は
ね ら れ 即 死 し た。 小 屋 に 住 む こ と 四 十 余 年。 往 き 来 し
た読書の女友達に、実家の住所を教えていた。
死 後 三 日 目。 倉 敷 で 指 折 り の 旧 家 か ら 姉 と 長 男 が 御
礼 に み え た。 母 が﹁ 娘 さ ん は?﹂ と 問 う と、 姉 は﹁ お
−3−
か げ さ ま で ⋮⋮﹂ と 頭 を 下 げ て 嗚 咽。 背 中 を 振 る わ せ
続けた。いつもは気丈な母もボロボロに泣いた。
ト ラ オ さ ん は イ ン テ リ。 愛 生 園 で も 本 名 で 通 し た。
権利回復の患者運動に尽くしたが、長生きしなかった。
二人は離婚後、一度たりとも会ってない。
私 の ハ ン セ ン 病 に お け る ル ー ツ は、 あ く ま で も 安 井
の お ば ち ゃ ん で あ る。 今 も 日 焼 け し た 笑 顔 が 脳 裏 に あ
る。ライ病の原稿を書く時、涙がにじんだりする。
『ハンセン病――差別者のボクたち
と病み棄てられた人々の記録』
寿郎社・2,100 円
ウ ン 寸 前 で あ る。 い っ た い 私 は 何 を 読 み、
している事実を認識し、その原因を知るこ
ネットが社会に望ましくない変容をもたら
手に取った、あの古書なのだ。それは﹁も
マクルーハンがいう﹁クール﹂なメディア
品 位 か つ 散 漫 で あ る。 そ れ ゆ え ネ ッ ト は、
ネットが与える情報は、テレビ同様、低
とだ、と高田は言う。
この本では何が起きているのだろうか。
違う。これがその﹁本﹂なのだ。ここに
うひとつの街﹂の文字や文法で書かれてい
であり、それに触れる人々を、﹁巻き込む︵イ
書かれてあることの全てが冒頭で﹁私﹂が
ミハル・アイヴァス著
阿部賢一訳
河出書房新社・一九九五円
るので、見えない文字があるし、意味が通
﹃もうひとつの街﹄
雪の降るプラハの古書店でふと﹁私﹂が
イ ン タ ー ネ ッ ト に ア ク セ ス す る と き、
ンボルヴ︶﹂ことを属性とする。
広くなったかに見える世界は、実際は狭く
我々は知らず知らずのうちに、好きな情報
なっている。その結果、ネットは、強力な
二度と戻れないあの﹁もうひとつの街﹂の
こ の 本 を 初 読 で 難 な く 理 解 で き る 方 は、
じなくて当然なのだ。
手にした一冊の古書。そこには﹁私﹂の見
その文字の放つ妖しい光に魅せられた
たことのない文字が印刷されていた。
この作品を料理にたとえてみた。
﹁ 増 幅 装 置 ﹂、﹁ 汚 染 装 置 ﹂、﹁ 偏 向 装 置 ﹂ と
を選択してしまっている。ネットによって
﹁ボルヘスハムのブルガーコフワイン煮
住人に違いない。
い歩く。引き寄せられる場所ごとで﹁私﹂は、
込み、パスタ・カルヴィーノに春野菜と円
﹁私﹂は、物語の意味を求めて夜の街を彷徨
的な光景の中で不思議な人物たちと会話を
﹁もうひとつの街﹂との境界に近づき、夢幻
して働いてしまうのである。
まりにシュールで想像できない形容詞、こ
目くるめく移り変わる幻想的背景に、あ
る﹂からと言って、相互に排除し合うわけ
ネ ッ ト と 社 会 は、﹁ ネ ッ ト が 社 会 を 破 壊 す
今や、ネットは社会の不可欠な一部である。
社 会 と 対 峙・ 対 立 し て い る わ け で は な い。
そ の た め に は、 ネ ッ ト に ば か り 頼 ら ず、
まれるのではなく、意味の生成を行うこと。
︵ 反 射 的 ︶に で は な く、 reflective
reflexive
︵反省的︶に。そして、意味の増幅に巻き込
と、即ち﹁適切な期待﹂を持つこと。
ネットに対して過度な期待をしないこ
ていると言っていい。
は、ネットに向き合う我々の姿勢にかかっ
いインフラとすることができるかどうか
とを回避し、ネットを社会にとって頼もし
だから、ネットが﹁社会を破壊する﹂こ
城塔を添えて﹂
︵P︶
リーダーズノート出版・一四七〇円
高田明典著
﹃ネットが社会を破壊する﹄
想像を絶する、おぞましさ。
交わす。
あらすじはこうである。が、一頁たりと
もまともに読めない。半頁進むと、知らな
い人物が知らない場所で、聞いたこともな
い話を訳知り顔で述べたてる。半頁前はお
ろか、読み始めて以来そんな名前は一度も
れでもかと出てくる謎の人物達のまくし立
には、もはや、いかないのだ。必要なのは、
イ ン タ ー ネ ッ ト は、 社 会 の 外 に あ っ て、
てる哲学的戯れ言。容易な理解を阻む作者
出て来ないというのに。
のトリプルパンチをくらって、こちらはダ
−4−
新潮社・一三六五円
﹃ ぼくがいま、死について思うこと﹄
に 自 ら 熟 慮 す る こ と が、 何 よ り
reflective
大切なのではないか?
︵フ︶
じ っ く り と 本 を 読 ん で、 知 識 を 積 み 上 げ、
すれてゆく意識の中で、一瞬だけ死を意識
手術と聞いていたが、二時間を超えた。か
ら、心臓カテーテル手術を受けた。簡単な
私事になるが、この原稿を依頼されてか
いたページがなくなるのは、寂しいものだ。
との対談で締めくくっている。毎週読んで
せ赤マント﹂が終了した。最後は沢野ひとし
野葉舟や、日露戦争前夜、皇后陛下の夢枕
記録まで。遠野物語の誕生にも関係する水
み、海外怪奇小説の翻訳本から、座談会の
く第二弾にあたる。内容はバラエティに富
怪談本からのアンソロジーで、昭和篇に続
である。今では入手困難となった大正期の
来たのか。その資料の一つとなるのが本書
浮 か ぶ。 帯 に 著 者 の 写 真 と﹁ 六 十 九 歳 ﹂。
白い表紙に黒のゴシック体でタイトルが
久しぶりに海べりでキャンプをしてみよう
した。恐怖感より諦観があった。この夏は
は、この時代を感じさせるようで興味深い。
燈といった舞台道具が一冊に同居する混沌
いる。幕末・明治の因縁譚と、都電や瓦斯
に坂本龍馬が立った逸話なども収録されて
椎名
誠著
死よりも生のイメージが強いので、どうし
か。昼は釣り、もちろん夜は焚き火を囲む。
じ込んだ上で、徒に恐れ慄いてそれを語っ
さて、大正期の人々は、頭から怪異を信
ビールを﹁ウグウグ﹂と飲んだら、文句あ
椎名誠に初めて接したのは三十年以上
︵K︶
ているだろうか。行間からは、
﹁この開明の
時 代 に 化 物 な ど 実 在 し な い の は 承 知 の 上、
これまでSF作家、写真家、エッセイス
んな迷信﹂
﹁昔の人じゃあるまいし﹂といっ
大の大人が﹁怪談﹂と口にしただけで、﹁そ
東
雅夫編
メディアファクトリー・二六二五円
う単語と科学用語を置き換えただけで、
﹁科
不思議な出来事に対して、化物幽霊とい
しろ柔軟で懐が深い︱怪談認識が窺われる。
れを楽しむ﹂という今日と変わらない︱む
﹃大正の怪談実話
ヴィンテージ・コレクション﹄
りません。
ても違和感を覚える。
前、 学 生 の 頃 だ っ た。﹃ 哀 愁 の 町 に 霧 が 降
るのだ﹄﹃かつをぶしの時代なのだ﹄﹃さら
ば 国 分 寺 書 店 の オ バ バ ﹄。 む さ ぼ る よ う に
読んだ。当時、昭和軽薄体と呼ばれた文体
ト、映画監督など、様々な分野で活躍する
学 的 に 解 決 し た ﹂﹁ 迷 信 な ど 聞 く に 値 し な
あえて興味の赴くままに収集・公開し、そ
多作の作家である。また、日本全国、世界
た 否 定 的 な 反 応 が︵ 心 の 中 に ︶ 聞 こ え て く
い ﹂ と 耳 を 塞 ぐ の で は な く︵﹁ 科 学 に 対 す
は新鮮で、面白かった。
の辺境を旅する行動力にあふれる人物の印
る 気 が し て な ら な い。 ご 丁 寧 に も、﹁ 科 学
る 声 ま で 聞 こ え る︵ よ う な 気 が す る ︶。 実
万 能 の 時 代 に ﹂﹁ 非 科 学 的 ﹂ と 唱 和 し て く
その椎名が人間ドッグに入り、友人、肉親
る 迷 信 ﹂ は 寺 田 寅 彦 が 随 筆︵﹃ 怪 異 考
化
物 の 進 化 ﹄ 中 公 文 庫 ︶ に 記 し た 言 葉 だ ︶、
象が強い。
の死に直面し、自身の死について考察した一
際にそんな絵に描いたような反応をする人
︵あ︶
冊である。もちろん、これまでのエッセイと
ける大正期を楽しみたい。
純粋にこれらの怪談群と、その向こうに透
では﹁昔の人﹂はどのように怪を語って
は存在しないだろうが⋮⋮。
先頃、週刊文春に連載していた﹁風まか
違い文体まで落ち着いたものとなっている。
−5−
児童文学、読んでみませんか
いた書籍が、気が付けば文庫化し、文庫売
る。児童文学として児童書売り場に置いて
り年齢層の幅が広がったのだろうと思われ
児童文学と文芸作品の垣根が低くなり、よ
いる。書き手の意向が変わったというより、
芸誌にも作品を発表している作家が増えて
ものの、大人向けの文芸作品を執筆し、文
近年、児童文学作家としてデビューした
賞、さらに翌一九九二年坪田譲治文学賞を
文庫・四五二円︶で産経児童出版文化賞受
る。 一 九 九 一 年﹃ こ う ば し い 日 々﹄
︵新潮
はないちもんめ小さな童話賞大賞を受賞す
めたいよるに﹄新潮文庫・四五二円所収︶で、
し、一九八七年﹁草乃丞の話﹂
︵どちらも﹃つ
童文学雑誌﹃飛ぶ教室﹄に﹁桃子﹂が入選
﹃ ユ リ イ カ ﹄ だ っ た も の の、 一 九 八 六 年 児
最初に詩作品を投稿したのは文芸雑誌
活を描き、一躍話題となった﹃きらきらひ
受賞。同年、奇妙な夫婦とその恋人との生
か る ﹄︵ 新 潮 文 庫・ 四 五 二 円 ︶ で 紫 式 部 文
り場で積まれている光景はもはや当然にな
具体的に、児童文学から文芸作品に作風
りつつある。
が変化し、文芸誌に活動の場を移した作家
学賞を受賞。
と、デビューとその数年間でもはや、児
や、上記のようにどちらの層にも読まれて
童 文 学 と 文 芸 作 品 の 両 方 で 作 品 を 発 表 し、
いる作家をざっと列挙してみる。
あさのあつこ
さまざまな賞を受賞している。
梨木香歩
香月日輪
荻原規子
児童書や文芸書のカテゴライズが見受けら
あ る。 そ の 言 葉 の と お り、 江 國 作 品 に は、
だった﹂と語っている記事を読んだ覚えが
応募した作品がたまたま児童書の出版社
が﹁児童文学を書こうと思ったのではなく、
出典がさだかではないのだが、江國自身
上橋菜穂子
森絵都
江國香織
湯本香樹実︵あいうえお順︶
れない。
て い る。﹁ 江 國 香 織 ﹂ と い う ひ と り の 作 家
媚 び が な く、 ど こ か 落 ち 着 い た 視 点 で 描 い
江國作品は、童話であっても子どもへの
などがあげられる。
品の垣根をひょいとまたいだ最初の作家で
なかでも江國香織は、児童文学と文芸作
はなかろうか。
−6−
にあどけない瑞々しい感性、とろりと成熟
今現在も、江國香織自身の軸や根底に絵
した質感が共存しているのだ。
本や児童文学作品があるからか、翻訳や絵
本ガイドなどを出版し続け、﹁垣根フリー﹂
一九九〇年代に入り、児童文学はさらに
の第一人者として軽やかに活動している。
進化し、さまざまな枷から解き放たれたか
のように、新しい作品が産まれていく。
同じく新潮文庫の﹁ナツイチ﹂といえば
梨木香歩だろう。敏感な感性ゆえ、揺れる
との連絡が入る。かつて過ごした家に来た
まいは、思いがけないものを目にする。西
の魔女からの、あふれんばかりの愛。秀逸
なラストシーンに、心を揺さぶられる。こ
の作品は二〇〇一年に文庫化され、従来の
まさに、児童文学が十代から大人まで﹁読
児童書とは桁違いの売れ行きをみせた。
ませる﹂文学としての地位を、数字でも確
したすれ違いが重なり、不登校になった少
死 ん だ ﹄︵ 新 潮 文 庫・ 四 五 二 円 ︶ は、 ふ と
繊細に書き上げた。代表作の﹃西の魔女が
こ と な く、 穏 や か に、 ま っ す ぐ に 見 つ め、
生になってからと、小学生のころの作品で
妹作﹂とでもいおうか、同じ主人公が大学
︵一二六〇円、新潮文庫・五四六円︶は﹁姉
同 年 十 二 月 発 行 の 偕 成 社﹃ り か さ ん ﹄
らくりからくさ﹄
︵新潮文庫・六六二円︶と、
また、一九九九年五月発行の新潮社﹃か
立した記念すべき作品である。
﹄
︵新潮文庫・四五二円︶を発表。
﹁死
Friends
んだ人を見たい﹂メガネの河辺、
でぶの山下、
女が祖母の家で過ごすうちに、自分の心の
十代の心情を、荒れ狂う感情の波に溺れる
語り手の﹁ぼく﹂木山の三人は、
﹁もうすぐ
あり、﹃からくりからくさ﹄以前の物語が﹃り
一九九二年、湯本香樹実が﹃夏の庭
死 に そ う ﹂ な 一 人 暮 ら し の 老 人 を 見 張 り、
落ち着き先を見つける、たおやかなすがす
The
観察する。生きる屍のように毎日テレビば
がしい傑作だ。
一九九四年文庫化されて﹁ナツイチ﹂の定
か に 書 き 上 げ た 作 品 で あ る。
﹃夏の庭﹄は
感が強かった死や損失、老いを、抒情性豊
児童文学で語られてきたものの、まだタブー
十 二 歳 の 少 年 た ち の 夏 の ひ と と き を 通 じ、
な る。 そ し て、 静 か に 訪 れ る 最 期 の と き。
一人の人間として少年たちと接するように
過ごすうち、朽ち果てていく老人ではなく、
生活を暮していたまいに、西の魔女が危篤
たシーツを干す。やがて家に戻り、新しい
庭を丹精し、ジャムを作り、たらいで洗っ
シャ・テューダーの暮らしを彷彿とさせる。
る。魔女とまいの静かな日々はどこかター
魔女になるべく精神力を鍛える修行を重ね
き も 自 分 の 意 思 の 力 で 追 い 払 え る よ う に、
すことになったまいは、悪魔と出会ったと
西の魔女こと、イギリス人の祖母と暮ら
も な く、 大 人 に な っ た 主 人 公 が 回 想 で 書 い
生時代を、第三者の視点で書いているので
しかし﹃りかさん﹄では、主人公の小学
きあげた文芸作品である。
マの軸になっている織物のように丁寧に書
それぞれの生き様と関わりを、作品のテー
さ ﹄ は 日 本 家 屋 に 下 宿 す る 四 人 の 女 性 と、
て い る の に ふ さ わ し く、﹃ か ら く り か ら く
発行元の新潮社が文芸作品を主に出版し
かさん﹄という時間軸になっている。
かりみていた老人は、夏休みの少年たちと
番作品になり、広く読まれるようになった。
−7−
『夏の庭 The Friends』
のが特徴であり、物語の奥行きをさらに深
さわしい物語の主人公として書かれている
かさん﹄のようこが、それぞれの年代にふ
なのだが、﹃からくりからくさ﹄の蓉子と﹃り
品ももちろん十代から大人も楽しめる作品
から語られる児童文学である。どちらの作
て い る の で も な く、 小 学 生 の 主 人 公 の 視 点
発 表 し て い く。 文 芸 作 品 と 児 童 文 学 の は ざ
六〇〇円︶など、文芸作品などを精力的に
六 二 〇 円 ︶、﹃ 弥 勒 の 月 ﹄︵ 光 文 社 文 庫・
文庫・五三〇円︶、
﹃福音の少年﹄︵角川文庫・
か ら、 作 者 は﹃ あ り ふ れ た 風 景 画 ﹄︵ 文 春
化 さ れ︵ 既 刊 七 巻 各 五 〇 〇 円 ︶、 同 じ こ ろ
取り込んだ。﹃NO.
6﹄は二〇〇六年文庫
ファンとは異なる、BLファンも読者層に
と思いきや、漫才の相方になって欲しいと
る。 お つ き あ い と は ラ ブ? 男 同 士 で?
された瀬田歩は、おつきあいを申し込まれ
カー部次期キャプテンの秋本貴史に呼び出
完 結 し た﹃
れ、二〇一〇年ポプラ文庫ピュアフルにて
また一九九九年に岩崎書店から発行さ
これらの作品を機に、児童文学または児
作品、しっかりと読み応えのある時代小説
まのような作品から、小学校中学年向けの
歩。十代がすごす毎日を、リズムある言葉
いわれ、あれよあれよと翻弄されてしまう
﹄ は、 ま さ に 児 童
The MANZAI
書と文庫をまたにかけた作品である。サッ
めている。
童 書 発 行 が 中 心 の 出 版 社 か ら 出 た 作 品 が、
のやりとりと、個性豊かなキャラクターた
で過ごした日々が鮮やかに描かれる。そこ
ちで描いていく。友人たちの会話や、学校
には驚きがあり、声に出せない苦しさがあ
やSF、十代へのメッセージなど、作品の
しかし、あさのあつこの特徴は、人物を
文庫化される機会が飛躍的に増えた。
描き続けている点だ。舞台が学校であって
幅が広く、多作である。
あさのあつこの﹃バッテリー﹄
︵全六巻、
それはデビュー作の﹃ほたる館物語﹄か
そう、あさのあつこは物語に寄りかかる
教育画劇・角川文庫など︶も、文庫化によ
ら 一 貫 し て い る。 舞 台 は 地 方 の 温 泉 旅 館。
のをよしとしない。人間を書いているのだ。
り、 と ん で も な く 楽 し い ひ と と き も あ る。
いわゆる旅館ものなのだが、困ったお客が
言いたいことを言えないばかりに、自分を
読み終えたとき、キャラクターが自分のク
庫ピュアフルなど︶でデビューし、児童文
来て翻弄されたり、ライバルの旅館に立ち
限界まで追い詰めてしまう。または、頭脳
も、宇宙であっても、かつての日本であっ
学の作家として確立しているなか、すでに
向かうべく奮闘する、といった展開はない。
明晰ながらも、報われない環境のなかでの
り爆発的に読者層が広がった代表的な作品
刊行されていた﹃バッテリー﹄が二〇〇三
毎日ポンポン言いたいことを言い合い、喧
人には言えない確執が、他者と関わること
巻、講談社・各九九八円︶も、講談社
YA!
くなる。
ラスメイトのように思えて、別れがせつな
年に角川文庫で発売されるやいなや、あっ
嘩しつつもお互いを認めあう母と祖母は丁
ても、人間を書き続ける。
という間にベストセラーになり、映像化な
寧な接客をこころがけ、日ごろ寡黙な父は
﹁ そ の 人 物 が 書 き た い か ら 物 語 を 書 く。
により垣間見える、そんな人間たち。
だ。一九九一年﹃ほたる館物語﹄
︵ポプラ文
どを経て、角川文庫の﹁定番﹂になった。
心づくしの料理を作る。そんな家族と暮ら
二〇〇三年発売された﹃NO.
6﹄︵全九
す、一子の暮らしを淡々と描く。
の主なターゲットで
ENTERTAINMENT
ある十代の読者を獲得しつつ、﹁文学作品﹂
−8−
児童文学でも文芸作品でもその姿勢を貫
は、 物 語 に 深 み を 与 え、 読 者 は 共 感 す る。
けれど確かに存在する屈託をもった人物
を絞り、濃厚な人間関係、表面にださない
な い。﹂ と 本 人 が 語 る よ う に、 人 物 に 焦 点
大人向けとか子ども向けとかはあまり関係
外伝も出るほどの人気シリーズである。
円︶
﹃妖怪アパートの幽雅な食卓
るり子さ
んのお料理日記﹄
︵同・一一五五円︶などの
人々
妖アパミニガイド﹄︵講談社・一〇五〇
み 進 め た く な る。
﹃妖怪アパートの幽雅な
生きと?暮らしていく様子が面白く、次々読
のない存在になっていく。住人たちが生き
ろ、 読 後 感 は さ わ や か で、 す が す が し い。
した筆は物語を陰湿なものにしない。むし
これでもかと突きつけているのに、飄々と
めまで、現代の子どもが抱えている問題を
表された﹃妖怪アパートの幽雅な日常﹄
︵全
﹃NO.
6﹄と同じシリーズで同時期に発
ノベルも読書範囲にある読者たちに広く読
従来の児童書のファン層とは違う、ライト
で、 四 二 〇 ∼ 四 七 〇 円 ︶、 こ ち ら も ま た、
二〇〇八年に講談社文庫になり︵八巻ま
が、自分たちの隣にいるような主人公たち
児童文学作品に違和感があった子どもたち
と 書 い た。﹁ い い こ ち ゃ ん ﹂ が 多 い、 古 い
子 ど も で は な く、 等 身 大 の 十 代 を あ り あ り
森絵都は大人が理想とする、都合のよい
たちは、けっこうタフなのだ。
現 代 の 状 況、 そ の な か で 生 き て い く 子 ど も
き、作風を確立している。
十巻、講談社・各九九八円︶の香月日輪も、
や世界観に共感し、本を手に取るきっかけ
る。案の定、住人たちは曲者ぞろい。なんと
が出るという格安アパートに住むことにな
をなくした夕士は、いわくつきの﹁オバケ﹂
入学直前に火事で全焼してしまい、行き場
寮に入るのを目的に受験した高校の寮が
ラクターだ。
常﹄もタイトルどおり、妖怪たちが主なキャ
り 込 ん で お り、﹃ 妖 怪 ア パ ー ト の 幽 雅 な 日
四ヶ月の物語。父親の会社の汚職、母親の
す こ と に な り、 地 上 へ ホ ー ム ス テ イ し た
に選ばれ、小林真少年の体に入って生き直
﹃ カ ラ フ ル ﹄ は、 死 ん だ は ず な の に 抽 選
五三〇円︶で絶大な人気を博した。
を リ ア ル に 描 き、﹃カ ラ フ ル﹄︵ 文春 文 庫・
︵ 同・ 四 六 〇 円 ︶ で 今 を 生 き る 子 ど も た ち
を 受 賞 し、 一 九 九 四 年﹃ 宇 宙 の み な し ご ﹄
文庫・四二〇円︶で講談社児童文学新人賞
森 絵 都 は、 一 九 九 一 年﹃ リ ズ ム ﹄︵ 角 川
子だろうか。日本神話をモチーフに、骨太
さらに違う風を送りこんだのは、荻原規
読み応えのある作品を書き続けている。
作 品 は、 す べ て 大 人 が お も な 対 象 で あ る。
一部翻訳や絵本作品を除き、発表している
五 七 〇 円 ︶ で 直 木 賞 を 受 賞 す る。 現 在 は、
上 が る ビ ニ ー ル シ ー ト ﹄︵ 文 春 文 庫・
け に 活 動 を 文 芸 誌 中 心 に 移 し、﹃ 風 に 舞 い
出 口 ﹄︵ 集 英 社 文 庫・ 五 八 〇 円 ︶ を き っ か
ようになったのち、二〇〇三年の﹃永遠の
五八〇円︶でさらに広い年齢層に読まれる
﹃ D I V E!﹄︵ 角 川 文 庫・ 上 下 巻 各
になった作家である。
まれている。
一方、児童文学を卒業し、文芸作品に活
文 庫 化 に よ り 人 気 が 拡 大 し た 作 家 だ。 デ
ビ ュ ー 作 品﹃ 地 獄 堂 霊 界 通 信 ﹄︵ 講 談 社 ノ
ベルズ・八四〇∼一〇五〇円︶から、妖怪
いっても、
﹁妖怪アパート﹂なのだから。妖
不倫や初恋の君の援助交際、おまけにいじ
動の場を移した作家もいる。
怪 が 普 通 に い る 環 境 に と ま ど い な が ら も、
や 幽 霊 な ど、﹁ 怪 ﹂ の 要 素 を ふ ん だ ん に 取
いつしか夕士にとって住人たちがかけがえ
−9−
作 り 上 げ た﹃ 空 色 勾 玉 ﹄︵ 徳 間 書 店・
のファンタジーを十代から楽しめるように
統や風習があるのだ。それをなぜか誇らし
だが、確かに美しいものや、他にはない伝
ら、ストイックに生きていくさまを書く一
諸国の政治的陰謀や思惑に巻き込まれなが
た。守り人シリーズは、女用心棒バルサが、
ファンタジーの水準を飛躍的に発展させ
方、﹁ サ グ ﹂ と い わ れ る 現 実 の 世 界 と、 目
く思い、日本をもっと楽しみたくなるよう
に見えないけれど存在する、精霊の世界﹁ナ
一〇〇〇円、文庫七二〇円︶は、児童文学
荻 原 規 子 は、﹁ 自 分 が 読 み た い 作 品 し か
な、不思議な面白さがある。
書けない。それが、ファンタジーになった
界に落雷のような衝撃を落とした。日本独
自の文化や伝承を、重厚でクオリティーの
り人﹂の舞台の土台を確実に作り上げるこ
高い作品にすることによって、読み応えあ
とで、登場人物に生命を吹き込んだ。
文化人類学者である作者は、広大な﹁守
からずっと語っている。児童文学であると
ユグ﹂を書いたハイファンタジーである。
か、ファンタジーであるとか、そういった
二 〇 〇 三 年﹃ 狐 笛 の か な た ﹄︵ 理 論 社・
だけで、ファンタジーを書こう、といった
最新作﹃RDGレッドデータガール﹄
︵全
一六八〇円、新潮文庫・六六二円︶で、荻
る作品を渇望している大人達も児童書売り
六 巻、 角 川 書 店・ 一 六 八 〇 ∼ 一 七 八 五 円、
ことはすべて後付でしかない。そこにある
原規子と同じく日本風土独特な神秘的物語
意図的な作品は書けない﹂とデビュー当時
文庫は五巻まで︶は二〇〇八年に一巻が刊
のは、
﹁面白い物語﹂。ただそれだけである。
場まで足を運ばせた作品である。
行され、昨年末完結した。
学園の生徒会執行部の一員になり、学園の
だった泉水子も友人にひっぱられるように
中の深行と鳳城学園に入学し、極端に内気
た、姫神の器であることを知る。山伏修行
をきっかけに、自分がこの世で最後に残っ
深行とともに行った高校入学前の修学旅行
る﹂と認識した読者が、上橋菜穂子を手に
あるファンタジーは児童書売り場にもあ
を描いた。荻原規子で﹁骨太な読み応えの
︵ 偕 成 社 文 庫・ 七 三 五 円 ︶ で 日 本 古 代 世 界
円︶でデビューし、
﹃月の森に、カミよ眠れ﹄
一九八九年﹃精霊の木﹄
︵偕成社・一二六〇
さ せ た 作 家 と し て、 上 橋 菜 穂 子 が い る。
同じく、日本をテーマにし、物語に昇華
王権を授ける印として、国力の象徴である、
を 志 す。 学 び の 場 所 の カ ザ ル ム 保 護 場 で、
エリンは、数奇な運命を経て、獣ノ医術師
蛇 ﹂。 闘 蛇 を 育 て、 管 理 す る 村 に 生 ま れ た
ない物語を書き上げた。
円︶は圧倒的な完成度で、他の追随を許さ
者﹄
︵全四巻、講談社・一五七五∼一六八〇
を書き、二〇〇六年に発表された﹃獣の奏
それが、荻原規子の最大の魅力だ。
世 界 遺 産 の 山 に あ る 神 社 で 生 ま れ 育 ち、
中心にかかわっていく。神霊と共にある学
人にはなれないはずの王獣と心通わす。政
﹁箱入り娘﹂だった泉水子は、幼馴染である
園。夏の合宿も、学園祭も、結界を張るの
とるのは当然だろう。
から始まる守り人シリーズで、児童文学の
成 社・ 一 五 七 五 円、 新 潮 文 庫・ 六 二 〇 円 ︶
さらに一九九六年の﹃精霊の守り人﹄
︵偕
きずりこまれていく。
能力を持つエリンは、王国の策略の渦に引
治的な獣である闘蛇と王獣の間で、特異な
戦場で戦士を乗せ、戦うための生き物﹁闘
が普通な学園生活って。荻原規子が描くと
自 分 の 生 き て い る 国 の 日 本 は、 嫌 な
こうなるのか、と思わずうなってしまう。
ニュースが続いたり、面倒なことが多い国
− 10 −
王獣と闘蛇、王国の歴史を変えることにな
た エ リ ン は、 つ い に は 戦 闘 に 駆 り 出 さ れ、
さかの続巻三・四巻が発売される。母になっ
一・二 巻 で 完 結 し た 物 語 は 二 〇 〇 九 年 ま
解き放った。その扉から次に出てくるのは、
の卓越した筆力は、児童文学の扉を大きく
に生きていることに感謝する。上橋菜穂子
読むたび、この作家が世に出た、この時代
る。共通しているのは、現代の子どもたち
ら離れて、文芸作品を書いている作家もい
品を書いている作家もいるし、児童文学か
児童文学の枠組みのなか、さまざまな作
などが代表的だろう。
の 作 品 を 発 表 し て い る の が 梨 屋 ア リ エ だ。
最 も デ ビ ュ ー が 早 く︵ 一 九 九 九 年 ︶ 多 く
をもった作家である、という点だ。
にもしっかり届き、大人をも魅了する力量
誰だろう。次の世代の風も吹いている。
の年齢はほぼ同世代である。この時代に生
余談であるが、上記に紹介した作家たち
る。さらに外伝︵同・一五七五円︶が発表
され、壮大な大河物語になっている。
点があるのは、時代性と切り離せないのだ
日本の作家で、自らをYA作家︵ヤングア
まれ、児童文学に携わった作家たちに共通
ろう。そのあたりから考察するのも面白い
ダルト作家︶と名乗りだしたのは、梨屋ア
リ エ か ら で は な か ろ う か。︵ ヤ ン グ ア ダ ル
と表記されることが多い︶が物語に深く絡
河合二湖
樫崎茜
片川優子
石川宏千花
A読書クラブを主催、誰でも参加できる読
説明については差し控える。︶
指す。詳細は文脈から外れるので、今回は
もに十二∼十九歳を対象に書かれた作品を
トは小さい大人の意で、書籍についてはお
んでいき、綿密になっていく人間関係も魅
朽木祥
綿密な構成力や、物語を構築するほころび
膨大であろう資料、取材に裏打ちされた
椰月美智子︵あいうえお順︶
まはら三桃
廣嶋玲子
濵野京子
まはら三桃がデビューする。
家のうち、菅野雪虫、濱野京子、廣嶋玲子、
二〇〇六年はあたり年で、先に挙げた作
− 11 −
かもしれない。
さて、新しい風である、次世代の作家た
力の一つである。政治とは人間が動かして
草野たき
げている。
書会 YA*café
も主催している。YAを広く
普 及 す べ く、 作 品 以 外 に も 活 動 の 場 所 を 広
ちをご紹介しよう。
いくということを、上橋菜穂子作品で初め
菅野雪虫
のない世界は、上橋菜穂子でしか書けない、
日本YA作家クラブを発足し、さらにY
て理解できた気がする。自分が知らないだ
梨屋アリエ
唯 一 無 二 の 作 品 を 生 み 出 し て い く。 新 作 を
信じてしまうほどだ。
けの実存する国の政治の話、と言われても
上 橋 菜 穂 子 作 品 は、 政 治︵ ま つ り ご と、
『獣の奏者』
野京子は、小学校中学年向けのエンタメか
ら、YA向けのスポーツ青春作品、ハイファ
また、同じころデビューした廣嶋玲子も、
ファンタジーの書き手としてこれからが楽
菅野雪虫は、二〇〇六年﹃天山の巫女ソ
ニ ン ﹄︵ 全 五 巻、 講 談 社・ 各 一 四 七 〇 円 ︶
ニンは、素質がないとして、十二歳で親元
祀っていた。山の神は血を嫌い、女は火鍛
を 操 り、 鉄 を 生 む 火 鍛 冶 た ち は 山 の 神 を
完成度の高さで注目を集めた。その昔、火
ラ文庫ピュアフル・五八八円︶の主人公栞
少女の小学校六年生沢崎菜奈が、皆と協力
︵ 全 四 巻、 童 心 社・ 各 一 六 八 〇 円 ︶ は、 美
デ ビ ュ ー 作 の﹃ 天 下 無 敵 の お 嬢 さ ま!﹄
ンタジーまで巧みに書く作家である。
に戻される。巫女としては落ちこぼれなが
冶になれない掟だった。しかし、類まれな
は、変装して山手線の駅でぶらりと降りて
﹃火鍛冶の娘﹄︵角川書店・一五七五円︶は、
しみである。
らも、家族と平穏に暮らすが、沙維の国の
才能を持つ沙耶は、掟に背き、男として火
巫女になるべく天山で修業をしていたソ
で講談社児童文学新人賞を受賞する。
末の王子イウォルに才能を見いだされ、侍
鍛冶として生きることを選ぶ。
父の亡き後、世継ぎの王子への賜物を依
リアルを描く。﹃碧空の果てに﹄
︵角川書店・
た耕也との微妙な距離感を書き、高校生の
みるのが趣味。そんなある日、偶然再会し
一方、﹃トーキョークロスロード﹄
︵ポプ
して事件を解決する軽快な物語。
女として城にあがることになる。沙維、巨
ら、自分の生きる道を確立していくソニン。
頼された沙耶は、激情に突き動かされるよ
− 12 −
山、江南の三つの国の争いのなかにいなが
その姿が、はかなげながらもまっすぐで美
分に嫌気がさし、王国を飛び出す。男装し
一五七五円︶のメイリンは、王女でいる自
て出会ったシーハン王国の首長に仕えるこ
うに剣を鍛え上げた。その剣は思いがけな
また、それぞれの国の描写や登場人物が
ていく。剣を贈られた阿古矢王子、兄弟の
とになり、国の中枢を担っていく。続編に
い力を秘め、都の運命までも禍々しく歪め
独自の世界を作り、読み手を飽きさせない。
加津稚王子や王族の人間、そして沙耶。登
あたる﹃白い月の丘で﹄︵同・一六八〇円︶
しく、魅了される。
外伝も二点︵講談社・各一四七〇円︶発表
場人物は自由に生きることのできないなが
マ平原を描いたドラマチックファンタジー
﹃紅に輝く河﹄︵同・一七八五円︶も、シュー
らも懸命に生き、苦しくも立ち向かって行
自己の世界を作り上げていく力量があ
く。 そ の 生 き 様 が 美 し く、 目 が 離 せ な い。
された。
り、今後が期待される作家の一人である。
だ。﹃レガッタ!﹄︵現在二巻まで、講談社・
ている。元バスケ部で運動能力が高くやる
各九九八円︶は女子高ボート部を舞台にし
気も体力もある有里は、ボート部に中途入
孤立。部活のメンバーとのぶつかりを経て、
部したものの、空回りばかりで周囲からも
小学校中学年∼高学年の作品も多数書いて
﹁ 二 〇 〇 六 年 デ ビ ュ ー 組 ﹂ の な か で、 濱
おり、安定した作品を送り出している。
他 に も 廣 嶋 玲 子 は、﹁ ち ょ っ と 怪 し い ﹂
目頭が熱くなる。
ラストの終章が秀逸。最後の一行で、また
『火鍛冶の娘』
有里は自分のボートを見つけ出す。体力勝
メ ア リ ー は 気 が 付 い て し ま う。 そ れ で も、
でいる子どもたちは、我々より物語を楽し
思いがある。そんな作家たちの作品を読ん
だから、あきらめないで欲しい﹂と痛切な
んでいるようにみえる。
メアリーはお願いをかなえていくのか。ぞ
と、 作 品 の 一 部 を 取 り 上 げ た だ け で も、
みやすくやさしい語り口なのでするすると
くぞくする展開と、人物の描写が見事。読
多彩なのがよくわかる。個々の作品力も高
読めるが、人間の奥深さを突きつける、珠
負のマッチョ部活小説 !
く、どれを読んでも、もはやベテランの域
玉の作品。
い。名前もない。バケモノじみた異形の生
一三六五円︶は傑作。メアリーは人ではな
二〇一二年に発売された﹃密話﹄︵講談社・
いる。
人間の裏側に迫る﹁妖面﹂について書いて
自 分 の 思 う 姿 に な れ る か、 異 形 に な る か、
ま で、 講 談 社・ 各 九 九 八 円 ︶ シ リ ー ズ で、
千 花。 近 著﹃ お 面 や た ま よ し ﹄︵ 現 在 二 巻
筆者としては、注目しているのは石川宏
だった、あの頃の自分に届くような物語を
二湖は、今の十代はもちろん、かつて十代
する十代の子どもたちの姿が愛しい。河合
破する表現方法を見つけ、生きていこうと
プレや写真など、閉塞した自分の状況を打
今 の 子 ど も た ち を 静 謐 な 筆 先 で 描 く。 コ ス
一四七〇円︶を発表。作品は少ないものの、
そ の 二 年 後﹃ 深 海 魚 チ ル ド レ ン ﹄︵ 同・
夜﹄︵講談社・一三六五円︶でデビューし、
河合二湖は二〇〇九年﹃バターサンドの
と書いている。
とずっと親しく付き合うことができます。
﹂
いヤツなんですよ。一度友達になれば、ずっ
だったりするように、本も実はとっても好
メイトが、話してみると優しくて面白い子
も、無口でおとなしくてめだたないクラス
ラナイ活字だけが並んでいるだけです。で
こえてこないし、ぱっと見ただけではツマ
﹁﹁本﹂というものは絵がないし音楽も聞
とがきで
フ ァ ザ ー・ ス テ ッ プ ﹄︵ 一 〇 五 〇 円 ︶ の あ
宮部みゆきが、青い鳥文庫版﹃ステップ
に達している。
き 物。﹁ メ ア リ ー﹂ と い う 名 前 を つ け て く
紡いでいる。
有できたら素晴らしい、と思いませんか。児
子どもたちが面白いと思う作品を、大人も共
今の児童文学は、力量がある作品が多い。
れたのは、マミヤくん。ずーっとひとりぼっ
いはなんでも叶えてあげる。マミヤくんは
ヤくんが大好きだから、マミヤくんのお願
をした、十二才の男の子。メアリーはマミ
な大切な友達。とてもきれいな、優しい声
どもも大人も納得させられる作家たちばか
共 通 し て い る の は、﹁ 物 語 は 面 白 い ﹂ と 子
今回ご紹介させていただいた作家たちに
勉強ではない。エンターテイメントなのだ。
もたちに届ける文学である。しかし、文学は
児童文学は、子どもを読者として、子ど
ておきたい。
なかった作家がたくさんいることお断りし
相違があったり、字数の関係上ご紹介でき
作家はもっともっといる。今回のテーマに
最後に、十代から大人まで読まれている
童書売場で、大人達もお待ちしております。
メアリーを利用し、気に入らない人たちを
りだ。作家たちの根底には、﹁物語は面白い。
ちだったメアリーにできた、初めての大切
傷つけ、陥れていく。マミヤくんの心の中
︵MJ梅田店・森口︶
に は ぞ っ と す る よ う な 空 洞 が あ る こ と を、
− 13 −
新大陸主義
社 会 科 学
ケント・E・カルダー著
様々な資料をもとに分析。特に若者文化
いる。その街の魅力を地元在住の著者が
経済学者が、経済学的な考え方を使って
思うことはいくらでもある。本書は交通
一九九五円
交通問題を解き明かしていく。
ネルギー戦略の研究書。特にユーラシア
一方韓国では、独島へのこだわりが政府
度は、一般的にそう高くないのが実際だ。
のの、日本人の間における竹島への関心
テレビや新聞の報道で時々目にするも
高月
靖著
独島中毒
NTT出版
がもたらした影響について論じた箇所は
読みごたえがある。歴史や自然環境、ビ
ジネスの側面など、あらゆる角度から吉
一四七〇円
祥寺を掘り下げた密度の濃い一冊。
ぶんしん出版
大陸各国を対象とし、安全保障や軍事と
レベル・民間レベルともに日本の比では
アメリカの知日派の政治学者によるエ
して研究されてきた地政学と経済学や市
わかる。特に企業の﹁独島愛﹂を利用し
ないくらい強いことが本書を読むとよく
たマーケティング手法など、一見ユニー
場経済の議論で扱われるエネルギーを合
一九七〇年代後半から説き起こしなが
ク と も 思 え る 現 実 を 多 数 紹 介 し て い て、
﹁飛行機のチケットは直前だとなぜ高
文藝春秋
一〇五〇円
隣国を理解するうえで貴重な一冊。
ら、グローバル化がユーラシア大陸各国
わせて両面から分析している。
なぜタクシーは動かなくても
メーターは上がるのか
﹁J Rは二時間遅れたら特急料金を払い
竹内健蔵著
にもたらした変化を浮かび上がらせてい
る。その上で、変化したユーラシア大陸
というものを大上段から捉えようという
意欲作である。
﹁なぜ子供運賃は大人の半額なのか﹂
戻してくれるが、なぜタクシーは渋滞で
い ん だ ろ う。﹂ 交 通 に 関 し て 日 常 的 に 受
三一五〇円
吉祥寺が﹁いま一番住みたい街﹂
になった理由
け入れてはいるが、考えてみれば疑問に
潮出版
斉藤
徹著
吉祥寺は﹁一人暮らしで
も﹂﹁子育てを行うにも﹂﹁老後を過ごす
止まっていてもメーターが上がるんだ﹂
にも﹂住みやすい街として高評価を得て
− 14 −
社会科学
カイジ﹁命より重い ! ﹂お金の話
ひとつであるYコンビネーターに長期間
イバル他社との闘いなど、クロネコヤマ
シリコンバレーのベンチャーキャピタ
い方は間違っていないのかを問いかけ
登場するのは喫茶店のマスター、コンビ
がいくつもあり、いぶし銀の出来ばえだ。
が多いのだが、皆さん人生の渋いドラマ
なんかでいいのですかという微妙な反応
タビューする。聴かれる側の方々は、私
長く働いてきた人の言葉
一七八五円
ル業界ではYコンビネーターの卒業生は
トの歴史はとにかく闘いの歴史でもある。
福本伸行の漫画﹃カイジ﹄を題材にし
﹁もっとも成功の可能性の高いスタート
北尾トロ著
﹃裁判長 ! ﹄シリーズで人気を博した
密着取材したノンフィクションである。
た﹁マネー・リテラシー﹂の向上を訴え
アップ﹂とみなされている。第二のグー
著者が、市井で働くふつうの人々をイン
木暮太一著
た本である。漫画の一場面を引き合いに
グルやフェイスブックがここから生み出
日本経済新聞出版社
出しながら、借金の利率、クレジットカー
されることが期待される。
一八九〇円
ドの一回払いとリボ払いなどの支払方法
日経BP社
の違いを解説していく。投資や詐欺、ギャ
ンブルのカラクリもおさえ、自分が日ご
る。加えて、挿絵の大部分が漫画からの
ニのオーナー、理髪店主、スクラップ業
小倉昌男氏と共に宅急便事業を発展さ
がほっこりする逸品。
飛鳥新社
一五七五円
− 15 −
ろ何気なくお金を使っているが、その使
引用で、若い読者に親近感を与える配慮
せてきた、ヤマト運輸元社長の著者が初
方ばかり。味わい深い言葉の数々に、心
者など、身近に感じる仕事をされている
一五七五円
がなされており、文章はさらに万人向け
どん底から生まれた宅急便
に読みやすくなっている。
サンマーク出版
Yコンビネーター
し、 開 拓 す る こ と を 目 的 と す る ベ ン
めて書いた本。宅急便誕生秘話から現在
都築幹彦著
チャー企業をスタートアップという。本
の隆盛に至るまでの数十年を綴る。
爆発的に成長可能な潜在的市場を発見
ランダル・ストロス著
書はIT系スタートアップに少額を一括
古参社員を相手にした社内での闘い、ラ
運輸省や郵政省との闘い、労働組合や
投資し、助言を与えて育成するというビ
とも成功しているベンチャーファンドの
ジネスモデルのパイオニアであり、もっ
社会科学
コンピュータ
ガイドブック
BACKBONE.JS
高橋侑久著
は、 昨 年 あ た り か ら 知 名
Backbone.js
度 を 上 げ て き て い る JavaScript
フレー
ムワーク。軽量でありながら大規模開発
ルールズ・オブ・プレイ
下
ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン著
ゲーム、ひいては遊びが持つ要素を体
山本貴光訳
られたが、下巻では文化の表現法として
ムの核となる概念やルールについて論じ
壮大な目論見を持つ本の下巻が、二年
系立てて、あまさず語りつくす。
の導入はアプリケーショ
Backbone.js
ン開発に、文字通りビシッと一本﹁背骨﹂
のゲームなど、より広範な視点からゲー
にも適しているのが特徴だ。
となる構造を与える。書籍としてはこれ
コーディングを支える技術
プログラミング初心者の場合、コード
が日本初となるので、本書を片手に早め
の歳月を経てついに登場。上巻ではゲー
の﹁写経﹂には一定の効果があるといわ
西尾泰和著
れている。しかし関数やクラスなどの概
ソフトバンククリエイティブ
四六二○円
ムというものの本質に迫る。
二四九九円
のスタートで差をつけよう。
ラトルズ
念が﹁なぜこうなっているのか﹂という
ところまで理解が及んで、はじめて真の
川添
愛著
魔道書を思わせる装丁に、中身は魔法
ティングが隆盛だが、本書は新たなファ
アートをつないだフィジカルコンピュー
脇田
﹂
玲著
オ ラ イ リ ー の﹁ make
シリーズを筆頭に、エレクトロニクスと
白と黒のとびら
成長といえるだろう。本書では文法成立
使い見習いの少年が奇妙な遺跡の謎に挑
クター﹁素材﹂に着目した本。描いた線
の過程や複数の言語の比較を通して、言
む話。まるでファンタジー小説だが、読
が電子回路になる導電インクや温度で色
Access To Materials
み終えるころにはオートマトン理論につ
が 変 わ る サ ー モ ク ロ ミ ッ ク イ ン ク、 銀
オートマトンと形式言語をめぐる冒険
いての確かな知識と考え方が身について
メッキされた導電布⋮⋮。プログラマビ
語 設 計 者 の 意 図 を 学 ん で い く。 人 気 の
二五九四円
+ DB PRESS plus
シリーズ新刊、
WEB
今回も必読の出来だ。
いるだろう。それこそ、この本があなた
リティを付与された素材は、あなたの創
技術評論社
にかける魔法。専門的な知識なしで読め
二七三○円
るように書かれているので、幅広い層に
ビー・エヌ・エヌ新社
作物を斜め上のステージへと誘う。
二九四○円
読んでほしい。
東京大学出版会
− 16 −
コンピュータ
自 然 科 学
数学はあなたのなかにある
今回この本を手に取ったのはタイトル
クレマンス・ガンディヨ著
昔から数学を日常のどこでどう使えば
に惹かれたためである。
い 人 に も、 敬 遠 し て い た 人 に も、 自 分
子孫を絶滅させるというものである。害
て殺すことで雌の交尾を妨げ、その結果
二七三〇円
の中の数学を発見する良い機会をくれ
築地書館
虫の生態にも詳しくなるお勧めの一冊。
一七八五円
るはずだ。
河出書房新社
首都高ドライブ編
けんちく体操
チームけんちく体操・体操と文
今回は首都高周辺の建築を観
﹁チーム けんちく体操﹂による書籍化
第二弾
〝けんちく体操〟とは、建物を観察し、
察して〝けんちく体操〟する。
を使うことを一つの解決方法としてきた
る。この害虫から作物を守る戦いは農薬
作物を食べる昆虫は、害虫と名を変え
性を深めてくれる。
や負荷を体感し、建築の隠れた見方や感
を使うことで、観察した部分のバランス
ノマネだと思ったら大間違い。自らの体
ている。この体操をただのシュールなモ
で、世界各地でワークショップを行なっ
あるいは部分のマネをする体操のこと
対 象 の 建 物 を 自 分 の 体 を 使 っ て、 全 体、
いいのか分からず苦手意識を持っていた
昆虫と害虫
私にとって、生の営みの中にある数学を
シンプルな色と絵で淡々と解説していく
本書はすんなり頭に入ってきた。
きた経緯になぞらえていくと不思議と
が、著者は農薬に頼らない駆除方法を研
小山重郎著
﹁そういうことか﹂と理解ができる。
究してきた。本書ではその研究方法と成
何事も自分に直接関わらなければよく
さらに、学校で慣れ親しんだ数学で使
駆除方法がとても残酷で興味深い。ここ
研 究 方 法 と 聞 く と 堅 苦 し く 感 じ る が、
ひ〝けんちく体操〟のワークショップに
書籍を機に、子どもだけでなく大人もぜ
身体感覚の拡張ともいえるだろう。この
分からないことが多いが、自分も辿って
用する記号もユーモアに溢れた形で登場
果を知ることができる。
でいる。形を変えながら、きちんとした
で果実を食うミバエ︵実蝿︶の駆除なら
これは人と建築を用いた視線の誘導と
してくれるため、親しみやすさにも富ん
意味も含みつつ展開されていく内容に
一〇〇〇円
は、知らずに根付いていた数学の存在を
エクスナレッジ
参加していただきたい。
する。これは字の通り、雄を大量に集め
ぬ根絶方法のひとつ﹁雄除去法﹂を紹介
本 書 を 読 め ば、 数 学 を 愛 し て や ま な
− 17 −
!
!
思い知らされるようだ。
自然科学
医
学
基礎編
書
Dr .
オヤマの見る読むわかる
胸部X線画像
小山倫浩著
様々な症例を呈示し、正確な診断、病態
カ ン フ ァ 形 式 に ま と め た 書 籍 で あ る。
ナー︵著者たち有志が作った︶の内容を
と言われる﹁落ちこぼれ﹂からスタート
ら﹁今まで受け持った十人の中で七番目﹂
験に三度失敗し、研修医時代には恩師か
天野医師の半生が綴られている。大学受
天野
篤著
天皇陛下の心臓バイパス
手 術 執 刀 医 と し て 一 躍 時 の 人 と な っ た、
一途一心、命をつなぐ
の解釈などを議論、症例を情報共有して
した医師人生。彼は心臓外科医になるが、
書は、双方向式ディスカッションを通し
相互理解を深め、診療レベルの向上を図
心臓病だった父親を自分も立ち会った手
て 症 例 に つ い て 考 え るC AD E T セ ミ
る。緊急対応や予後診療が重要な循環器
術 で 亡 く す。 救 え な か っ た 父 の 存 在 が、
瞬時に判定することが重要だという。解
としてみる、見た目診断の意。各分野の
つまりゲシュタルト診断とは全体を全体
ゲシュタルトはドイツ語で形、見た目、
本書に描かれているのはサクセスス
は天皇陛下の執刀医に選ばれるのである。
といわれるまでになった。そして、ついに
臓外科医として、日本一どころか世界一
九十八パーセントの確率で成功させた心
を 重 ね た 結 果、 約 六 千 の 症 例 を 執 刀 し
原動力となった。寝る間も惜しんで努力
彼を心臓外科医の道でひたすら猛進する
疾患。身近な地域病院にエキスパートの
三九九〇円
育成が求められる。
羊土社
診断のゲシュタルトとデギュスタシオン
答と解説、見方のコツ、次に行う検査や
エキスパートである執筆陣が、自らの経
岩田健太郎編集
治療が簡潔で解りやすい。臨床医に必要
犯人は誰か?
〝 か な り の 〟 自 信 を 持 っ て 贈 る 一 冊。 鮮
く形で表現する。編者・岩田健太郎氏が
ね、各疾患の﹁本質﹂をずばり核心を突
験を踏まえて力と想いを込めた言葉を重
彼の生き方は、﹁努力することの大切さ﹂
つ と ﹂ 努 力 し て き た 人 間 の 姿 で あ る。
か っ て も、﹁ 一 途 に ﹂﹁ 一 心 に ﹂﹁ こ つ こ
り 越 え、 ど れ だ け 高 い 苦 難 の 壁 に ぶ つ
ト ー リ ー で は な い。 大 切 な 人 の 死 を 乗
二三一〇円
循環器臨床の推理の極意
と﹁生きるとはなにか﹂ということを改
一五七五円
や か に 想 起 さ れ る 病 気 の イ メ ー ジ が、
飛鳥新社
個々の患者のデギュスタシオンへと繋
高齢化・生活習慣病・社会的ストレス
香坂俊也編著
三三六〇円
めて考えさせてくれる。
などで循環器疾患患者数は増え続けてお
金芳堂
がってゆく。
診断と治療社
不可欠な読影力を養おう。
け れ ば﹁ ヒ ン ト ﹂ を 読 ん で 再 度 十 五 秒。
イズ形式で解く。一問十五秒、わからな
ング書籍。難易度ごとに五十の症例をク
が解ったら﹂という方に最適なトレーニ
近 な 画 像 診 断。﹁ も う 少 し 胸 部X 線 写 真
日常診療や健康診断で行われている身
50
り、三大死因の一つにもなっている。本
− 18 −
医学書
てしまったドイツに滞在していた人たち
巻き込まれた人々はいた。突如敵国となっ
いである。しかしそんな日本人の中にも
火事﹂であった日本での捉え方とは大違
次世界大戦のことを指すらしい。
﹁対岸の
ヨーロッパで﹁大戦﹂というと、第一
う治っていったのかを全て体験させてく
ラピストと患者が何を話し、何を考え、ど
本書はあるカウンセリングの現場で、セ
いるかは経験者にしかわからないものだ。
たるカウンセリングの中で何が行われて
部を見たことはあっても、数十回にもわ
はあるだろうか? 映画やドラマでその一
まんが
サイコセラピーのお話
フィリッパ・ペリー著
鈴木
龍監訳
心理療法の過程の一部始終を見たこと
広田照幸他編
﹁八月の砲声﹂を聞いた日本人
である。著者は大正期の政治家加藤高明
奈良岡聰智著
二〇一〇年代に入り、日本の大学進学
に関する書籍を執筆する過程でドイツ抑
人 文 科 学
率は五十%を超えた。一方で、学生の基
れる。心理療法に興味がある全ての人に
大衆化する大学
礎学力不足や不勉強の問題がより浮上し
留日本人の手記を発見し、知られざる日
説も収められている。本書を理解する一
わせて訳者によるシュライアマハーの解
− 19 −
二五二〇円
ている。大学が多すぎるという批判も大
薦めたい一冊。
金剛出版
宗教について
本人の苦難の経験へ踏み込んでゆく。
千倉書房
がきによればこれ以前の最も新しい高橋
名著の久々の翻訳である。訳者のあと
英夫訳の刊行が半世紀前というから、ま
フリードリヒ・シュライアマハー著
的場昭弘著
希望がない国、日本。絶
望しかないこの世界で希望を持つことは
待ち望む力
困 難 か も し れ な い。 い や、 だ か ら こ そ、
望〟を語り、未来を描こうとした哲学者
助 と な る だ ろ う。 難 解 な 部 分 も あ る が、
また、本書では﹃宗教について﹄にあ
さに待望の翻訳と呼ぶにふさわしい。
︵ ブ ロ ッ ホ、 ス ピ ノ ザ、 ヴ ェ イ ユ、 ア ー
一語一語ゆっくりと噛み締めるうように
四二〇〇円
レント、マルクス︶の言葉から今の時代
春秋社
における希望のあり方を探ろうとしてい
一五七五円
読んでいただきたい一冊である。
晶文社
る。まるで、著者の祈りのような一冊。
著者は、それぞれの時代の転換期に〝希
著者は未来を語ろうとしている。本書で
三三六〇円
きい。グローバル化が進み、日本の将来
を担う人材の育成が求められる今日。大
衆化大学のあり方を検討し、今後いかに
導いていくかが問われている。労働市場
との関係も再検討され、多様化と序列化
二三一〇円
が進む大学の未来を展望する。
岩波書店
人文科学
文学・文芸
早く家へ帰りたい
高階杞一著
内臓に障害を持って生まれて、たった
四年弱でこの世を去ったこども。生まれ
てすぐに手術を重ね、その切なさを綴っ
の匂いでその家の女主人と使用人の怠慢
作品では、ひどいインゲン豆のスープ
街でレストランを開くことになった時代
﹁ぼくは/早く家へ帰りたい/時間の
を示唆し、逆に滋味豊かなブイヨンスー
背景までを活写している。
川をさかのぼって/あの日よりもっと前
プの匂いで行き届いた家事を演出したバ
こどもにとってのことか、自分にとって
までさかのぼって/もう一度/扉をあけ
ルザックも、執筆中は食事をとらず、美
のことか、父は考える。
るところから/やりなおしたい﹂と結ば
味しいコーヒーだけで自らを奮い立た
を百個がっつき、白ワインを四本あける
せ、創作が終わると、オードブルの牡蠣
れる詩に、静かだが強い悲しみと愛を感
一八九〇円
じる。
夏葉社
ト ラ ン の 食 卓 ﹂﹁ 宴 の 食 卓 ﹂ と 続 き、 最
﹁バルザックの食卓﹂に始まり、
﹁レス
終 章 は﹁ 女 た ち と 食 卓 ﹂。 他 の 章 で も 出
などの過食に走っていた。
て、 突 然 死 ん で し ま っ た わ が 子 を 思 い
食卓で人間性を描いたのは、バルザック
綴った詩。そのどれも、生きることのき
が 始 ま り で あ っ た と 締 め く く っ て い る。
てくる、晩年に結婚したハンスカ夫人と
フランス料理の奥深さに驚嘆しつつ、一
のエピソードが微笑ましい。最後にモー
九 十 三 編 か ら な る バ ル ザ ッ ク の 小 説、
冊読み終えるとなんだかお腹いっぱい
らめき、死の切なさ、やりきれなさ、人
表題作は、突然死んでしまったわが子
人間喜劇。その登場人物は様々で、大貴
で、フランス料理はしばらくいいや⋮⋮
パッサンやゾラ、プルーストが描いた作
と対面した時の詩だ。子が自分のCD盤
族から洗練されたブルジョワ、伯爵夫人
という気になるのはご愛嬌 ! だけど読
を愛するということの尊さに満ち満ちて
をいじっていたことがわかり、あの子は
から娼婦までが描かれている。著者は本
中の食事風景に触れつつ、文学において、
最後に何を聴こうとしたのだろうと確か
書で、バルザックの作品に登場する人物
いて、こどもを持ったことすらない私の
めると、一曲目がサイモン&ガーファン
み応えたっぷりの一冊。
胸にも強く響き、涙が出る。
た 詩、 こ ど も が 言 葉 を 話 す よ う に な り、
世紀パリの食卓
元気に動く様子を優しく綴った詩、そし
バルザックと
ク ル の﹁ 早 く 家 へ 帰 り た い ﹂ で あ っ た。
の食生活を読み解くことで、フランス革
二三一〇円
それがまるでこどもからのメッセージの
命 で 王 族 や 貴 族 の 元 を 離 れ た 料 理 人 が、
白水社
様 に 思 わ れ、 早 く 家 へ 帰 り た い、 と は、
19
− 20 −
文学 ・ 文芸
文庫・新書
し、それが家族を形成しているが、そこ
する。家の中では各々が当たり前を過ご
ん﹂のあの人の自慢一四八連発付き。人
と思わせる。なんとふろくに﹁ドラえも
六一〇円
名、作品名の索引がついているのも便利。
﹁失敗やつまずきを経験したことのな
松岡修造著
挫折を愛する
文春文庫
には狂気と珍妙さが漂っており、にやり
としてしまう。
みんなにはすすめにくい。
て、反応を伺いたくなる、そんな不思議
けれど好きなひとにはそっとさしだし
な一冊である。
いい子は家で
どこかの家を盗撮してそのまま文章に
青木淳悟著
い 人 よ り も、 何 度 も 転 ん で つ ま ず い て、
そのたびに立ち上がった人のほうが強く
り遊びにゆく、どこにでもいそうな大学
母・兄を持ち、女ともだちの家にこっそ
﹁いい子は家で﹂の主人公・孝裕は父・
さ加減がぐっと胸によみがえってきた。
と、無遠慮な他者と生活するわずらわし
である﹂という言葉が登場する。まさに
談 で、﹁ マ ン ガ は﹃ 共 有 す る メ デ ィ ア ﹄
ブルボン小林さんとピエール瀧さんの対
が多々ある。本書﹁文庫版ふろく﹂著者
合ったりするのが楽しい ! と思うこと
合 っ た り、 キ ャ ラ ク タ ー に つ い て 語 り
マンガを読んだら友達とセリフを言い
を、直接取材してきた松岡さんならでは
ションを保って結果を出してきたのか
トが大きな試合でどのようにモチベー
くても参考になる。また、トップアスリー
心のコントロール法は、アスリートでな
基づいた、人生のあらゆる局面における
プロテニスプレーヤーとしての経験に
実は元々消極的で弱い人間だった⋮⋮。
七七七円
ちくま文庫
生 な の だ が、﹁ い い 子 ﹂ ゆ え に、 母 親 に
そのとおりなのだ。そんなマンガの面白
TVでおなじみ、あの松岡修造さんも、
なれる﹂︵﹁はじめに﹂より︶
気を遣い、女の子の家に遊びにいってい
の視点で取り上げている。
ブルボン小林著
マンガホニャララ
起こしたのでは?と思うくらい、リアル
な家族像が印象的な短篇集だ。
一人暮らしをはじめて十年経つが、読
ることを知られないようにするための偽
さを共有できるコラム集である。連載誌
返るかが後々の成功につながる。失敗す
ることを恐れて何もできない人間になる
八二〇円
な、ということを教えてくれる一冊。
角川one テーマ
− 21 −
了後、実家で生活することへの懐かしさ
装を怠らない。年頃なのだし、それくら
を乗り換えながら語られてきた、マンガ
失敗してもいい、その失敗をどう振り
いばれてもよいのではないか、と思うの
ンガは﹁面白そう ! 読んでみたい ! ﹂
あ っ た ん だ ! ﹂ と 思 う し、 知 ら な い マ
知っているマンガは﹁そんな読み方が
への愛にあふれるツッコミ。
父がとある現象にみまわれた際の対応
だが本人は必死である。
も 秀 逸 で、﹁ 波 風 を 立 て ﹂ な い た め、 思
わず父親の自然な失踪を画策してみたり
21
文庫・新書
neoneo vol.2
芸
道の可能性はどこへ向かうのかつきつめ
本書をパラパラとめくり、開口一番に曰
潔に言い表している。朝、入荷してきた
く︱︱。
三月に第一巻が刊行され好評を博した
である。日本各地で生きる猫たちを、活
人者、岩合光昭氏による最新の猫写真集
一〇〇一円
た特集が興味深い号。
neoneo 編集室
至言ではあるまいか。
﹁岩合さんって、
猫だと思うんですよ!﹂
加藤嶺夫写真全集の第二巻が早くも登場
き活きと写し出している。
本書では日本における動物写真の第一
した。今回は台東区篇。昭和四十年頃か
台東区
巻頭ページを飾る、きらきらとして美
ら平成十年頃までの台東区の町並を写し
ある。一体どうしたら、ここまで自然体
術
昭和の東京2
しい星座のような画像。写った光が福島
で、かつリラックスした猫たちを撮れる
加藤嶺夫著
第一原発事故による放射性物質だと、す
た二百点あまりの作品が集められている。
neoneo 編集室著
ぐに結びつく人は少ないのではないか。
上 野 駅 か ら は じ ま り、 ア メ 横、 浅 草、
ト動画を通し﹁事故現場の中継を眺める﹂
我々のイメージは、TVメディアやネッ
福島原発の事件以後、放射能に対する
て作られている。
物質を感光させて写真にする手法を取っ
の土を採取し、その土がはらんだ放射性
記録﹂は、現代美術家武田慎平が東日本
川本三郎、泉麻人の両氏による解説も見
ている。東京の街あるきに一家言のある
で、資料としても価値のある一冊となっ
末で撮影地点を地図で紹介している点
一点の写真すべてにナンバーを振り、巻
和の情緒がたっぷり。特筆すべきは一点
くくられており、どの一枚をとっても昭
下谷、上野桜木ときて最後は谷中で締め
自身が猫だからできるとしか思えない御
命の可愛さ﹂がそこにある。まさに、彼
る。 人 形 の よ う な 可 愛 さ で は な い、﹁ 生
最も﹁可愛い﹂瞬間を、完璧に捉えてい
合 氏 の カ メ ラ は 野 外 で 生 き る 猫 た ち の、
い演出は一切ない。にもかかわらず、岩
いかにも可愛らしく見えるようなあざと
のであろうか。よくある猫写真のように、
いやもう、活き活きにも程があるので
﹁痕︱写真感光材による放射能汚染の
という否応なくも距離を含んだものが占
辰巳出版
一八九〇円
違いにゃい。いや、違いない。
あなた自身もだんだん猫になっていくに
に お す す め の 一 冊。 読 ん で い る う ち に、
老若男女、猫が好きなら文句なく万人
業である。
一八九〇円
逃せない。
売場の先輩が放った一言が、本書を簡
岩合光昭著
ネコと歩けば
デコ
拠する結果となった。武田が採取した土
の場所は、城郭や神社等、先人の文化の
痕跡が残るところが選ばれている。痕跡
がさらに痕跡を残し、それは﹁みえない
も の ﹂ と し て の 恐 怖 を 二 重 に 提 示 す る。
不可視性や距離とどう向き合い、今後報
− 22 −
芸術
実
用
書
地図・旅行書
命を救った道具たち
探検家が愛用し、その旅をともにする
髙橋大輔著
〝 道 具 〟 た ち。 時 に 命 を 救 い、 時 に 心 を
支える、かけがいのないものとして存在
する道具の、そのひとつひとつには冒険
目からウロコだったのは、パンを浸す卵
向けのおつまみなど幅広く提案している。
しいおやつはもちろん、お酒に合う大人
本書では、基本をもとに、子どもに嬉
Dで聴けるのも嬉しい。もっと駅メロに
載っている。その曲をこれまた付属のC
譜には、駅メロのタイトルやイメージが
とが、文面から伝わってくる。付属の楽
二二〇五円
耳を傾けたくなる一冊である。
野菜と肉の旨みが凝縮されたルゥ。鼻と
カレーが食べたい。あつあつのごはん。
水野仁輔著
カレーの教科書
扶桑社
液は必ずしも牛乳+卵+砂糖でなくてい
いということ。お茶やジュース、酒など
梅雨の季節。
いつもと違うフレンチトー
をプラスして様々な風味を楽しめる。
ストで気分転換してはいかがだろうか。
ブルーロータスパブリッシング
ど、 世 界 を め ぐ り フ ィ ク シ ョ ン と ノ ン
ブックが出版された。塩塚さんが作曲し
こと塩塚博さんの集大成ともいえるCD
を多く手掛けている鉄のみゅーじしゃん
駅ホームに流れる音楽の事だ。その作曲
塩塚
博著
駅メロとは、電車が接近、発車する時
駅メロ ! THE BEST
ルゥ、別名﹁飛び道具﹂を使わずしてカ
な い が 公 式 は あ る と い う こ と。 市 販 の
て改めてわかるのは、カレーには正解は
まとめあげた渾身の一冊だ。本著を通し
レーの世界を論理的に解析し、体系的に
ら 向 か っ て 行 っ た の が 著 者 で あ る。 カ
この奥深い旨みは各店の秘伝であって
舌を刺激するスパイス。
フィクションの接点を探す旅を続ける探
たSHシリーズは山手線・メトロ・京急・
レーを作るのは、思いの外誰にでもでき
一二三九円
険家が語る四十五の道具と旅の物語。
山陽電鉄などで採用されており、都内に
そうだ。
一六八〇円
の足跡を追い、その住居跡を発見するな
アスペクト
フレンチトーストBOOK
このあなた。水野氏の研究から学び、自
カレーの腕には自信があるという、そ
毎日聴いても飽きない、嫌いにならな
三七八〇円
分のカレーを進化させたくはないか。
NHK出版
い十秒程度の短い音楽の中には、塩塚さ
んの色々な思いが詰まっているというこ
− 23 −
の数だけ物語がある︱︱。
星谷菜々著
住んでいる方なら聞けばあの曲かと解る
再現できない、という思い込みに正面か
〝 フ レ ン チ ト ー ス ト 〟 と 聞 く と、 あ の
メロディばかりだろう。
実 在 し た〝 ロ ビ ン ソ ン・ ク ル ー ソ ー〟
甘い香りとふんわりした食感が思い出さ
いだろうか。
皆さんも同じような記憶をお持ちではな
れて何とも幸せな気持ちになる。きっと
実用書/地図・旅行書
語学・辞典
二部では、よりフランス語らしく正確
な発音で読めるように発音の仕組み・発
音記号などの解説がされているので、音
一九九五円
考え方を柔軟にして、発想の幅を広げる
ことができるだろう。
東京大学出版会
外国人とどんどん話せる
とスペルを再確認できる。本書の内容を
英会話トレーニングBOOK
次にそれらを使って話すトレーニングを
語 彙 や 文 法 な ど の 暗 記 を 進 め た な ら、
高橋正彦著
しっかりと習得すれば、難しいと感じて
一八九〇円
いたフランス語のスペルが読め、基礎固
めができるだろう。
駿河台出版社
してみよう。本書は、会話相手との単文
本書は二部構成になっており、一部で
将来的に英語を本格的に使用することに
は 広 く、 興 味 を も て そ う な 内 容 も 多 い。
学、地理、歴史、文学などジャンルの幅
められている。美術、映画、哲学、物理
様々なテーマについて書かれた文章が集
う考え方をモットーに、理系・文系から
ことが、大学で学ぶべき英語であるとい
知的な内容をきちんと読んで理解する
入する欄が設けてあって、単なる例文の
と捉えてみてはいかがだろうか。
ユーモアがあっても大丈夫、という目安
さ れ て い る の で、 む し ろ こ の ぐ ら い の
収録している例文はネイティブの監修が
高い、と感じる方もいるかも知れないが、
入っている点で、それは少しハードルが
珍しいのはジョークと銘打った例文が
に 答 が 各 五 例 と な か な か の ボ リ ュ ー ム。
による問答集になっており、全三六五問
はカタカナでフランス語のスペルをなん
なる人にとっては、この本が読めないよ
暗記で終わるのではなく、自分らしい答
い人にとっても、少し背伸びをした外国
また、英語を将来的に使う可能性が低
る。たくさん回答を作れば、その分やり
えを返す練習ができるようになってい
− 24 −
東京大学
教養英語読本Ⅰ
東京大学教養学部英語部会編
となく読めるようにしていく。既に日本
うでは英語を実用的に使うことは難し
その中で、実際のフランス語の音をかな
ごたえの増す一冊になるだろう。
大岩昌子著
語になっているフランス語だけを例とし
い、と編者はいう。
り忠実に再現したものが多いので、カタ
語の文章を読んで言語能力を鍛えること
二三一〇円
カナ読みでもフランス語が上手に読めて
により、様々なものごとに対処する際の
ベレ出版
発音できるようになるのだ。
また、各質問に対して自作の回答を記
て取り上げているので、見かけたことの
日間でフランス語のスペル
が読める !
10
あ る 単 語 が 多 く、 頭 に 入 っ て き や す い。
語学・辞典
児
童
りんごかもしれない
書
ピーボディ夫妻とくいしんぼうなメイベ
会 に 飛 び 出 し て し ま い ま す。 気 の 毒 な
たメイベルはピーボディの奥さんのお茶
理の匂いに我慢ができなくなってしまっ
き来する二人の友情は、時に切なさやや
す。タイムスリップし、過去と現在を行
て、ルミナという一人の少女と出会いま
かれるようにその扉を開け、時空を超え
つけられていくエリは、ある日ついに導
り切れなさが織り込まれながらも、深い
版。読者の熱い思いにより、この度復刊
一五七五円
ルの攻防に夢中になりました。
グーテンベルクのふしぎな機械
されました。時間が流れてもこのファン
福音館書店
ジェイムズ・ランフォード著 千葉茂樹訳
タジーは少しも古びたところがなく、う
復刊ドットコム
二五二〇円
一九八五年に一度出版されましたが絶
作家の頭の中をのぞきたくなるほど面
一冊の本が作られるまでには、様々な
れしさと感動をおぼえます。
特別な関係へと変わっていきます。
白い発想です。大人だけでなく子どもか
工程があります。そんな本の歴史をひも
ヨシタケシンスケ作
ら大人まで楽しめます。やわらかな発想
といていくなかで外すことができないの
がグーテンベルクです。彼が発明した活
は こ ん な に も 人 を 楽 し ま せ る の か と、
一四七〇円
アジア・子どもの本紀行
− 25 −
ちょっと発見したような気持ちです。
ブロンズ新社
版印刷の技術により、一四五〇年代以降
山花郁子著
図書館司書だった著者は
読 書 活 動 に も 熱 心 に 取 り 組 ん で い ま す、
ヨーロッパ中に印刷機が広まり、たくさ
著者の講演を聞いたボランティアの人た
んの本が刷られるようになりました。当
時の作業工程が美しい絵で丁寧に描かれ、
かわいいゴキブリのおんなの子
本に込められた中世ヨーロッパの人びと
メイベルのぼうけん
ケイティ・スペック作
介していて、読書活動を長年やってきた
を綴っています。現地に関連した本も紹
ジア・ベトナムへ孫娘と一緒に旅した事
この本は、著者が昨年八十歳でカンボ
ちも沢山いるのではないでしょうか。
一五七五円
の想いが伝わってくる歴史絵本です。
あすなろ書房
おびかゆうこ訳
大野八生画
かわいいゴキブリの女の子メイベルは
ピーボディさんの家の冷蔵庫の下に住ん
でいます。メイベルの夢はテーブルいっ
ふたりは屋根裏部屋で
人というだけでなく、社会事情にも精通
ぱいに並べられているごちそうを食べる
さとうまきこ作
牧野鈴子絵
エリが引っ越した古い西洋館には、あ
こと。しかしきれい好きなピーボディの
奥さんは家には一ぴきの虫もいないと信
一五七五円
した本選びでもあると思います。
めこん
かずの間となっている屋根裏部屋があり
ました。いけないと分かっていても惹き
じきっているため、うかつに出て行くこ
とはできません。ある日、素晴らしい料
児童書
によって、整然とした空間を提示する﹁空
に専門知識に裏付けされたプロジェクト
関東大震災後の都市のなかで、既存の
さて、先月の手紙で、震災後の﹁明る
芸術のルールを徹底的に超越して、過激
さ﹂に触れた本のことを書きました。過
私の好きな映画、クロード・ルルーシュ
に新しい芸術のかたちを生みだした村山
間の表象﹂がある他方で、そこに生きる
監督の﹁しあわせ﹂
︵原題は﹁偶然と必然﹂
知義︵昨年回顧展﹁すべての僕が沸騰す
人々がそのふるまいを通して、空間に意
というほどの意味︶は失意の女性の精神
酷な状況のなかでこそ生まれる希望、そ
的回復を描くロードムービーで、そのな
る
村山知義の宇宙﹂があり、その図録
も素晴らしいものでした︶や、被災地や
味を与えていく﹁表象の空間﹂という側
かの印象的なセリフに﹁不幸が大きいほ
震災後の急速に変貌する都市を独特の視
ういう意味だったと思います。それを読
ど 生 命 力 が 湧 く ﹂ と い う の が あ り ま す。
点 で 観 察 し た 今 和 次 郎︵﹃ 考 現 学 入 門 ﹄
面があるといいます。
もちろん関東大震災では天災、また人災
ちくま文庫︶は﹁表象の空間﹂を生きた
んで、私は一九二三年の関東大震災後の
による悲惨な被害があったことを重く受
人々でしょう。また作家竜胆寺雄の小説
の歴史については林順信さん、小林しの
ます。ぜひ遊びに来てくださいね︵駅弁
都市空間には、たとえば後藤新平のよう
間の生産﹄
︵青木書店・斎藤日出治訳︶で、
社会学者アンリ・ルフェーヴルは﹃空
な価値を見出した人々がいたことを物
の悲惨さを受け止めつつ、そこから新た
大きな魅力を放ち、いつの時代にも災害
芸術家たちや、そこから生まれた作品は
ぶさん﹃駅弁学講座﹄︵集英社新書︶など︶。
− 26 −
ことを思い起こしました。
いま、埼玉県立歴史と民俗の博物館で
け止める必要があるでしょう。同時に﹁し
鈴木健司様
あわせ﹂のセリフのように、あまりにも
は震災後の混沌とした都市の街頭を奔放
は、大正期から現代までの駅弁の掛紙百
に生き抜く少年少女の生活をいきいきと
数 十 点 を 中 心 に﹁ 旅 の 楽 し み ∼ 駅 弁 ∼﹂
越沢明さんの﹃東京の都市計画﹄
︵岩波
た ち と 僕 と ﹄ 講 談 社 文 芸 文 庫、 品 切 れ ︶
新書、品切れ︶など多くの本で知ること
描いています。
﹁ 放 浪 時 代 ﹂︵﹃ 放 浪 時 代・ ア パ ア ト の 女
に添えられた﹁窓からゴミを捨てないで﹂
のできる、政治家後藤新平による﹁帝都
ひどい状況からこそ生まれる、新たな営
という注意書は往時の旅の雰囲気を伝え
復興﹂
、つまり現代の東京へとつながる都
みがあったことも見逃せません。
ま す し、﹁ 国 民 精 神 総 動 員 ﹂ の 標 語 の あ
という小さな展示を開催しています︵七
る戦争中のラベルからは、駅弁さえも国
市計画のことはよく知られています。
これら関東大震災後の街頭で活動した
策宣伝のメディアとなったことがわかり
月 十 五 日 ま で ︶。 多 様 な デ ザ イ ン の 掛 紙
第4回
語っています。
こういう歴史を知ることができるのも
◀復・鈴木◀◀
また、読書の良さだと思っています。
▶▶往・佐藤▶
の駅弁に深い衝撃を受けました。小学校
い得がたい体験でした。とりわけ戦時中
き、なかなか他では味わうことができな
わっていく駅弁の歴史を見ることがで
するとまさに圧巻です。時代とともに変
した。
メ ン タ リ ー﹄︵ 河 出 書 房 新 社 ︶ を 読 み ま
画人生をまとめた著作﹃セルフ・ドキュ
もっと知りたいと思い、自身の文章で映
映画を観て松江哲明監督のことを
の頃、社会の教科書で目にした﹁欲しが
げられた掛紙など、旅情とはほど遠い駅
りません勝つまでは﹂のスローガンを掲
佐藤美弥様
こ ん に ち は。 唐 突 で す が、﹁ マ イ・ ベ
話題は変わりますが、今回のお手紙で
弁に目を丸くしてしまいました。
ス ト・ 駅 弁 ﹂ は 仙 台 の 牛 タ ン 弁 当 で す。
東京に行くとき、秋田に帰るときの車内
いていました。これを読んで私が連想し、
﹁震災後の明るさ﹂について佐藤君は書
の楽しみのひとつです。実は初めてこれ
を食したとき、加熱を忘れてしまいまし
そんな私ではありますが、先日上京し
踏み続けました。
れるばかりで、心の中で激しく地団太を
ついてしまった自分の食い意地にただ呆
ります。一瞥もくれずに紙を外してがっ
紙には﹁加熱﹂の注意書きがきちんとあ
んど食い尽くしていました。もちろん掛
して気づいたときにはもう手遅れ。ほと
周囲から立ち込める湯気と匂いにはっと
とができる仕組みになっているのです︶。
い寂しさやあいまいな不安、根拠のない
てさまざまな感情︵うまく言葉にできな
彼が歌う姿と街の光景が渾然一体となっ
な気持ちを、暗い東京の路上で歌います。
ルな退廃や露悪的とさえ思えるあけすけ
主演はミュージシャンの前野健太。リア
た。タイトルは﹁トーキョードリフター﹂。
灯りが消えた新宿や渋谷を記録しまし
です。映画監督の松江哲明は停電で街の
つまり震災後に発生した計画停電のこと
の 暗 さ で は な く、 光 の 量 と し て の 暗 さ、
を描写した一本の映画です。雰囲気など
一読を。
を憶えました。もし機会があればぜひご
にしてしまうこの表現手法にとても興味
頁︶です。製作の葛藤や舞台裏すら素材
えも﹃映画﹄にしてしまう作り方﹂︵二十六
実を記録し、時には作る過程そのものさ
現実の中に飛び込み、そこで生まれる事
と は、﹁ 作 り 手 自 身 が キ ャ メ ラ を 回 し、
なっている﹁セルフ・ドキュメンタリー﹂
ンツを脱いでいる﹂一冊。タイトルにも
半 生 で す。 変 な 表 現 で す が、﹁ 文 章 が パ
か ! ﹂とさえ思える露悪的で赤裸々な
﹁こんなことまで書いちゃっていいの
− 27 −
た︵ご存知と思いますが、容器の紐を引っ
た折に、お手紙冒頭の展示﹁旅の楽しみ
希望など︶が押し寄せてきます。
紹介したいと思ったのは﹁震災後の暗さ﹂
∼駅弁∼﹂を拝見させていただきました。
張ると加熱され熱々の牛タンを味わうこ
百点以上の駅弁のパッケージが一堂に会
『セルフ・ドキュメンタリー』
(河出書房新社・2310 円)
Out of Stock,
また一時的な品切は Temporary Out of Stock
で再版予定ありなんていう表現もあります。
︵再版︶ under consideration
となれ
Reprinting
ば品切再版考慮中といったところでしょうか。
O S ︶ と 表 現 さ れ ま す。 更 に
洋書の話 パート9
今回は洋書業界で使用されている書店用語
最 初 は﹁ 事 故 伝 ﹂ に つ い て。 い わ ゆ る 書 籍
について書いてみます。
業界で日常使用している用語としての事故伝
で す。 コ ン ビ ニ な ど で は 全 く 違 う 意 味 で 使 っ
ま た、 入 荷 は し た が 発 注 し た 商 品 と 違 う 商
品 で あ っ た と い う 場 合 も あ り ま す。 発 送 ミ ス
ろ発注した品物が入荷してこない場合の理由
︶し、替わりの商品を
ちに版元に連絡︵ Claim
送 っ て も ら う 処 理 が 必 要 と な り ま す。 洋 書 の
︵
事 故 伝 と は 絶 版 と か 品 切 と か、 い ず れ に し
ているようですのでご注意ください。
が 書 か れ た 注 文 伝 票 の 様 な も の で す。 こ れ を
仕入れ業務は結構煩雑です。
︶ が そ の ケ ー ス で、 こ れ は た だ
misdelivery
洋書の世界ではどんな表現をしているので
なみに、三十%は日本流にいえば七掛けです。
続いて、定価からその二十%を割引した金額、
︶と税金︵ Tax
︶が表記
さらに送料︵ Postage
さ れ、 最 終 的 に 書 店 が 支 払 う べ き 金 額︵ Net
正 味 ︶ で 終 わ り ま す。 暫 く す る と 請 求
Price,
︶ が 到 着 し、 い よ い よ 支 払
書︵ Statement
︶ と な り ま す。 支 払 い の 期 日
︵ Payment
︶は納品書の日付からだいた
︵ Payment Terms
い 三 十 日 か ら 六 十 日 で す が、 厳 し い 条 件
︶ の 場 合 は、 納 品 書 が 届
︵ Business Condition
︶ と か、
い た ら す ぐ に 支 払 う 場 合︵ At Sight
さ ら に 厳 し い と 先 払 い︵ Advanced Payment,
︵
︶ が 存 在 し ま す。
Distributor
と
Ingram
の日販やトーハンと同じような二大取次
︶します
次 に 納 品 に 関 し て。 発 注︵ Order
︶ が 表 記 さ れ ま す。 こ れ は
︵ Publisher's Price
あ る 種 版 元 の 希 望 小 売 価 格 で、 ペ ー パ ー バ ッ
︶といった条件もあります。
Pre-Payment
出 版 社 と の 取 引 以 外 に、 ア メ リ カ で は 日 本
クでいえば表紙のどこかに表示されています。
︶から納品書︵ Invoice
︶
とまず版元︵ Publisher
が 届 き ま す。 こ の 納 品 書 に は ま ず 定 価
しょうか。
まずは絶版。これは発注した書籍がもうまっ
た く 手 に 入 ら な い こ と を 意 味 し ま す が、 英 語
︵略してOP︶と言います。
Out of Print
こ こ 数 年 の 傾 向 と し て、 十 年 ほ ど でO P に な
る 商 品 が 増 え て い る よ う に 感 じ ま す。 次 に 品
では
切 で す。 絶 版 と は 違 っ て 現 在 手 に 入 り ま せ ん
です。この取次を卸問屋とい
Baker & Taylor
︶ も し く は 取 次
う の か︵ Wholesaler
︶と表現するのか分かれるところ
Distributor
で す。 こ の 二 大 取 次 に 関 し て は、 い ず れ ま た
︵
商品は結構割引して販売されているようです。
と い っ た 表 記 で す。 ア メ リ カ で は 再
US$7.99
販 制 度 が 存 在 し ま せ ん の で、 ハ ー ド カ バ ー の
版元品切再版未定と、再版予定ありです。品
書き記したいと思います。
︶される状態のこと
がいずれは再販︵ Reprint
を言います。品切には二種類あります。
店 員 お 薦 め 商 品︵ Staff's Recommendation
︶
コーナーなどを注目してみてください。
︶、 未 刊 は
Retailer
現されます。
、と表
Not Yet Published
︵洋書の鬚︶
つ い で な が ら、 我 々 書 店 は 小 売 業 者
切は一時的なものであり、絶版とは違って再版
︵
される可能性があります。その中でも、再版未
︶が表記さ
納 品 書 に は、 割 引 率︵ Discount
れ ま す。 二 十% と か 三 十% と 記 さ れ ま す。 ち
︵略して
Out of Stock
定は再版するつもりではあるがいつになるか
分からない状態。品切は
− 28 −
﹃仙台ぐらし﹄
関
博之
仙台に住む作家伊坂幸太郎のエッセイをまとめた小さな本である。
テーマは﹁タクシーが多すぎる﹂をはじめとして、消える店、機械まか
せ、ずうずうしい猫、心配事、映画化、見知らぬ知人、などすべて〝多す
ぎる〟ことに焦点を当てている。言われてみれば、われわれの日常生
活はこれらの多すぎることに囲まれて苦労しながら生きている。文章
はやさしくユーモラスで、そうだそうだと共感しながら面白く読んだ。
どこの町に住んでいても、消える商店は多いし、野良猫も多い。
﹁ ポールオースター
﹃ニューヨーク三部作﹄を読み終えて﹂
渋谷良一
この三部作に共通テーマは﹁他人の脅威﹂である。﹁他人﹂にか
﹃ガラスの街﹄では、主人公のクィンが見知らぬ探偵オースター
かわることで、主人公のアイデンティティがこわれてゆく。
﹃鍵のかかった部屋﹄では、失踪した友人ファンショーが残した
いるうちに、ブラックの人生を推理して、不安になってゆく。
﹃幽霊たち﹄では、探偵のブルーがブラックという男を見張って
になりすまして、他人を尾行する。
しも減らない。﹁見知らぬ知人﹂というのは作家ならではの悩みで、
あ ら ゆ る も の が 機 械 ま か せ に な っ て 便 利 に な っ た が、 心 配 事 は 少
町 を 歩 い て い る 時 な ど に よ く﹁ 伊 坂 さ ん で す か ﹂ と 声 を か け ら れ
我 々 は 他 人 の 影 響 を う け て 生 き て ゆ く し か な い。 し か し 他 人 を
原稿を整理する﹁僕﹂が、ファンショーの人生の一部になってゆく。
理解しようとすればするほど迷路にまよいこみ、自己を見失う。だ
る 経 験 を 書 い て い る。 す べ て 愛 読 者 か も 知 れ な い と 思 う と、 そ っ
か ら﹁ 自 分 探 し ﹂ を は じ め る。 そ れ が 終 わ り の な い 旅 だ と わ か っ
けない態度はとれないから苦労するらしい。﹁機械まかせ﹂は車を
買 い 換 え る 話 で、 伊 坂 さ ん は﹁ 軽 自 動 車 で、 マ ニ ュ ア ル 車 ﹂ を 購
柴田元幸訳・九九八円︶
*﹃鍵のかかった部屋﹄︵白水社Uブックス・ポール・オースター著・
四二〇円︶
*﹃ 幽 霊 た ち ﹄︵ 新 潮 文 庫・ ポ ー ル・ オ ー ス タ ー 著・ 柴 田 元 幸 訳・
一七八五円︶
ていても⋮⋮。
︵四十九歳
会社員︶
*
﹃ ガ ラ ス の 街 ﹄︵ 新 潮 社・ ポ ー ル・ オ ー ス タ ー 著・ 柴 田 元 幸 訳・
入したいという。マニュアル車が好きとはいまどき珍しい人だ。
震 災 に ふ れ た 文 章 も あ る が、 伊 坂 さ ん は﹁ 震 災 に 関 す る コ メ ン
トや文章を求められる仕事は基本的にすべて断り続けている﹂と
い う。 こ れ も 一 つ の 見 識 で、 作 家 と し て 文 章 を 大 事 に す る 人 で あ
り ま た シ ャ イ な 人 で も あ る よ う だ。 こ の 本 も﹁ で き る だ け 普 遍 的
︵七十六歳
無職︶
な お 話 に な っ て い れ ば い い な ﹂ と 書 か れ て い る。 私 は た の し い 身
辺雑記になっていると思った。
*﹃仙台ぐらし﹄︵荒蝦夷・伊坂幸太郎著・一三六五円︶
− 29 −
ト
ーク
レポ
ート
にきれいに消す。掃除をきっちりやる。
窓はいつだってきれい。主婦のプロの
④係の仕事に手を抜かない。黒板を本当
ような人もいらっしゃるし、係を与え
そういう方々が一ヶ月もかけて、何回
は、文字も、そこに含まれた意味も本当
られたら、一生懸命にその仕事を全う
も書き直してつくったえんぴつポスター
に深くて、それらを集めたのがこの本で
を、夜間中学の国語の漢字の書き取り
⑤真剣そのもの。静寂という言葉の意味
する。
て一緒に授業を受けました。その時に見
の時間に初めて分かった。人が一つの
す。私は、この本を完成するために、一ヶ
︻難波店︼
つけた夜間中学のビックリポイント。
ことに集中して本当に真剣に文字を書
月ほど夜間中学に、潜入というか、通っ
五月三日︵金︶
歌というか夜間中学生の歌を歌うとき、
①夜間中学生は、声が大きい。始業式で校
︵敬称略︶
やる気とか、元気の出る話
子は教育を受ける必要がないという考え
かった年配の女性の方々がほとんど。女の
戦後の混乱期に義務教育を受けられな
金
益見︵神戸学院大学講師︶
東生野中学の夜間学校の生徒は、戦中
金
益見﹃やる気とか元気が出るえんぴ
つポスター﹄︵文藝春秋︶出版記念
て、自分が大切にされている気がする、
れて初めてちゃんと挨拶をしてもらっ
大切にされている。ある作文に、生ま
るお辞儀の時間が長い。挨拶を本当に
②学生さんたちが一人一人の先生にかけ
歌う。学校が始まるのが嬉しいから。
窓ガラスが割れんばかりの大きな声で
ピ ア ノ 伴 奏 の 音 も 聞 こ え な い ぐ ら い、
消し、書いては消ししているから。
いた文字に自信がないから、書いては
カスが山盛りになっていく。自分の書
の真剣さに心を打たれた。消しゴムの
いている時、静寂の空気が流れる。そ
∼なんて素敵な﹁えんぴつポスター﹂∼
方が、特に在日の社会で強かった。そうい
と書かれていました。
た一番の理由は、
たちが学校に来
な っ た。 そ の 人
方がなかった学校にやっと通えるように
一段落ついて、若いときに行きたくて仕
キストをつくり、ファイルして教室に
運ばずに済むように、先生はA3のテ
り。遠くから通う生徒が重い教科書を
り、椅子に自作のクッションをつけた
を持ってきて即製の加湿器を作った
③教室に独自の工夫がある。コンロと鍋
*﹃ やる気とか元気が出るえんぴつポスター﹄
と。﹂と答えるようになりました。
見 え る よ う に な る ん で す よ、 勉 強 す る
ポ ス タ ー に 出 会 っ て か ら、﹁ 少 し 未 来 が
を答えられなかった私は、このえんぴつ
と聞かれて、それまでちゃんとしたこと
大学生に﹁勉強、何でやるんですか?﹂
すこし未来が見える
勉強が面白い
時間がたらない
でもがんばりたい
う人たちが年配になり、子育ても仕事も
文字を習いたい
掛けている。
︵文藝春秋・金益見著・九九八円︶
からなんです。
− 30 −
II N
N FF O
O RR M
MA
A TT II O
ON
N
旭 川 店
池袋本店
☎(0166)26 1120
京都朝日会館店
三宮駅前店
☎(075)253 6460
☎(078)
252 0777
〔営業時間〕10時∼ 19時半 〔営業時間〕月 ∼ 土 10時 〔営業時間〕10時∼ 20時
∼ 23時、日祝
10時∼ 22時
大阪本店
MARUZEN &ジュンク堂書店
〔営業時間〕10時∼ 21時
札 幌 店
☎(03)5956 6111
☎(011)223 1911
プレスセンター店
〔営業時間〕10時∼ 21時
☎(03)3502 2600
☎(06)4799 1090
〔営業時間〕10時∼ 21時
MARUZEN &ジュンク堂書店
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弘前中三店
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午後7時
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☎(03)5456 2111
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☎(06)6343 8444
秋 田 店
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吉祥寺店
〔営業時間〕11時∼ 22時
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☎(06)4396 4771
〔営業時間〕10時∼ 21時
岡島甲府店
千日前店
☎(055)231 0606
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仙台ロフト店
〔営業時間〕10時∼ 21時
☎(054)275 2777
仙台 TR 店
☎(06)6635 5330
〔営業時間〕10時∼ 21時
☎(022)726 5660
ロフト名古屋店
西 宮 店
〔営業時間〕月∼土10時半∼
(052)249 5592 ☎(0798)68 6300
20 時半、日祝 ☎
10時∼ 20時半 〔営業時間〕10時半∼ 20時 〔営業時間〕10時∼ 21時
新 潟 店
名古屋店
芦 屋 店
☎(025)374 4411
☎(052)589 6321
〔営業時間〕10時∼ 21時
☎(0797)31 7440
〔営業時間〕10時∼ 21時
〔営業時間〕10時∼ 20時
郡 山 店
〔営業時間〕10時∼ 21時
舞 子 店
☎(078)
787 1250
〔営業時間〕10時∼ 21時
明 石 店
☎(078)
913 8201
〔営業時間〕10時∼ 21時
姫 路 店
☎(079)
221 8280
〔営業時間〕10時∼ 21時
岡 山 店
☎(086)
236 1877
〔営業時間〕10時∼ 21時
☎(022)716 4511
☎(06)6771 1005
三 宮 店
☎(078)
392 1001
京 都 店
神戸住吉店
〔営業時間〕10時∼ 21時
広島駅前店
☎(082)
568 3000
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松 山 店
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915 0075
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福 岡 店
☎(092)
738 3322
〔営業時間〕10時∼ 21時
大 分 店
☎(097)
536 8181
〔営業時間〕10時∼ 20時
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☎(099)
216 8838
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☎(075)252 0101
☎(078)854 5551
☎(098)
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〔営業時間〕10時∼ 19時
〔営業時間〕10時∼ 21時
〔営業時間〕10時∼ 21時
〔営業時間〕10時∼ 22時
営業時間は変更する場合がございます。ご了承ください。
定休日については、お手数をおかけしますが弊社 HP または直接各店までお問い合わせ下さい。
− 31 −
本にまつわるエッセイ、など本に関するもの。最近読んでおも
☆読者の皆様の投稿を募集しています。最近読まれた本の感想文、
しろかった本、感動した本、考えさせられた本を教えて下さい。
四〇〇字∼六〇〇字程度で、おすすめの本のタイトル、出版社、
掲載分には二千円の図書カードを差し上げます。なお、原稿はお
い つ も﹁ 書 標 ﹂ を ご 愛 読 い た だ き ま し て
ありがとうございます。本誌定期購読料は
以下の通りです。
定期購読料
年間一二〇〇円︵送料込︶
現金書留もしくは八十円切手十五枚で
お申し込み先
│
ジュンク堂書店ジュンク特急便係
東京都豊島区南池袋二 一五 五
五九五六 六一〇〇
五九五六 六一二〇
〇三
│
http://www.junkudo.co.jp/
パソコンから
http://www.junkudo.co.jp/
mobile/
携帯・MOBILE から
mobile QR コード
︵茉︶
す。どうぞよろしくお願いい
に移転オープンする予定で
二十一日に高島屋大宮店七階
店 大 宮 ロ フ ト 店 は、 六 月
先日閉店したジュンク堂書
編集後記
│
住所、氏名、年齢、職業を明記の上、お送り下さい。
〒
│
〇三
FAX TEL
返しいたしませんのでご了承下さい。
│
ジュンク堂書店﹁書標﹂編集室係
東京都豊島区南池袋二 一五 五
│
│
│
たします。
− 32 −
☆尚、本誌掲載と同時に、ホームページにも掲載させていただきます。
〒
1710022
ᛩ
Ⓜ
൐
㓸
1710022
﹁時間のない男﹂
私は雑誌を担当している。私には時間
この千日前店で私にとって転機になっ
数が増えたりと、状況が好転し続け、毎
やすくなったり、お客様のお買い上げ冊
を頂けたのか、新しく出る雑誌を注文し
品期限にこだわらずロングで販売を続け、
た雑誌がある。日之出出版の﹁Fine ﹂
月五〇〇〇冊が完売する商品を取り扱う
ら大いに取り扱い、応援しようと待って
二〇一一年八月号である。この若者向け
ことも現実となった。全てのジャンルで
それにより出版社の方や、お客様の安心
の月刊サーファーファッション雑誌には、
いたのを思い出す。
のミニ写真集が別冊付録
私 が 勤 務 す る 千 日 前 店 は N G K︵ な
で、お勧めPOPをつけて一面の平積み
の販売だった雑誌を、あえて付録メイン
としてついていた。通常は毎月一∼二冊
にすることを変わらぬ目標としている。
を引き、ふと足を止めて頂ける棚ばかり
り難しいが、それでもよりお客様の関心
それを行うことは陳列する棚に限界があ
唐突にNMB
ん ば グ ラ ン ド 花 月 ︶ の 向 か い 側、
︵私は同じ位置で多面陳列するくらいな
のメンバーが様々な雑
グループで、もう四期生まで在籍してい
ンの方の力には圧倒されたが、今この千
結果四二九冊を売り切らせて頂いた。ファ
出 版 社 に 在 庫 が な く な る ま で 注 文 を し、
で 販 売 し た 所、 お か げ さ ま で 売 れ 続 け、
客様の目に触れるようあらゆる方法でア
してくれた商品を、できるだけ多くのお
に気づいて頂けるのに。出版社が作り出
Pが書けていない。書ければ絶対お客様
も試してみたい。あの雑誌にお勧めPO
が多すぎる。あれも試してみたい、これ
毎日私には時間がない。やりたいこと
ビルの一階から三階に
Y.E.S.NAMBA
入っている。その地下にはNMB の専
誌で表紙やグラビアを何ページも飾るこ
日前店に何が求められ、何が強みになる
ピールしたい。何かお客様に喜んでもら
はAKB
とが珍しくなく、シングル曲が発売され
かを考え、しっかり仕入れて売り切る一
る。今やNMB
る時期にはアイドル雑誌、コミック雑誌
手間をかけたことで、長く売れ続ける雑
用劇場がある。NMB
ら、そのスペースを他の商品に与えたい︶
がない。
TEL TEL
の妹
48
が掲載されることは
48 48
の表紙を独占することもある。しかし最
48
OPをつけ、売れ続けるものは通常の返
誌になった。それからも雑誌にお勧めP
まだまだやれることはある。
える、千日前店ならではの特典はないか。
415
653- 6500013 0021
︵千︶
が掲載されるな
くなろうとするNMB
│
│
48
二〇一三年六月五日発行
﹁書
﹂ 第 号
ほんのしるべ
頒価五十円︵本体四十八円︶
標
編集・発行人
工
藤
恭
孝
神戸市中央区三宮町一の六の十八
︵〇七八︶三九二
発 行 所
㈱ジュンク堂書店 〒
印 刷 所
︵〇七八︶五七五
㈱七
旺
社
〒 神戸市長田区一番町二丁目一
一〇〇一
五二一二
少なく、同じビルで、ここ難波から大き
初は雑誌にNMB
48
48
ほんのしるべ﹂ 昭和 年7月 日第三種郵便物認可
2013年6月5日
毎月1回
5日発行
通巻第 号
﹁書標 61
15
415
頒 価 五十円︵本体
四十八円︶
http://www.junkudo.co.jp/
e-mail:info @ junkudo.co.jp
携帯からは http://www.junkudo.co.jp/mobile/
Fly UP