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化学実験基礎 - 岩手県立総合教育センター

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化学実験基礎 - 岩手県立総合教育センター
平 成 19 年 度
冬 季 公 開 講 座
「化学実験基礎」
○
○
観察・実験における安全指導
○
加熱器具とガラス器具の取り扱い
○
水溶液の調製、薬品の保存と廃棄
身の回りの化学「環境を化学的に調べる実験」
平成19年12月26日(水)
9:00∼16:30
岩手県立総合教育センター
科学産業教育室
化学研修室
観察・実験の安全指導
1
観察・実験にともなう主な事故
(1)
理科の観察・実験における三大事故
(2)
1
(
)器具の破損によるけが
2
(
)器具に関わるやけど
3
(
)による皮膚等の腐食や中毒
その他の事故
容器の破裂によるけが、刃物の使用によるけが、太陽光線やレーザー光線による目の損傷、
感電、野外観察での事故(川や海への転落、生物による危害、落雷など)
2
事故防止のためのチェックポイント
(1)
教師の計画と準備
①
(
)により、実験の安全性を確かめておく。
・実験器具の破損や劣化
・操作の難易、
・薬品の量や濃度、加熱の程度
②
(2)
万が一の火災に備え、(
)の位置を確かめておく。
児童・生徒の服装の注意
①
衣服の材質・・・・引火しにくいもの、溶融しにくいもの
②
衣服のそで口・・・・広いと実験器具転倒の原因に。臨時的に固定するなどの措置。
③
皮膚が露出した衣服・・・・破損部品や薬剤飛沫による事故の重大化。
④
長い頭髪・・・・実験器具転倒や引火の原因に。三角巾やピン止めによる固定。
(3)
観察・実験時の安全指導
①
観察・実験前
児童・生徒が十分に納得するように、次のポイントで指導する。
②
1
この実験で、どんな危険が予想されるか。
2
その理由は何か。(器具や薬品の特性)
3
どう取り扱えばよいのか。
4
万が一事故が起きた場合はどうすればよいのか。
観察・実験中
(
)をし、観察・実験の状況を把握し確認する。不適切な操作や、危険が
予想される行動をしないように、児童・生徒に声かけをする。
- 1 -
3
安全指導の具体例
(1)
「理科室使用時のルール」指導
①
理科の観察・実験を安全に行うためのルールの確認
大きく書いて理科室に掲示し、最初の時間に確認する。
例)
理 科 室 使 用 時 の ル ー ル
1
実験が始まる前に、服装や髪の毛を整えておく。
2
理科室では、絶対に走ったり、ふざけたりしない。
3
先生の話をよく聞き、勝手な実験をしたりしない。
4
実験中は、実験や記録に必要なものだけを机の上に出す。
5
実験中は椅子を机の下に入れ、実験は立って行う。
6
実験器具や薬品の容器はていねいに扱う。
※
「器具は両手で持つ」や「先生の話を聞くときは目とへそと足を先生に向ける」
など、児童・生徒の実態にあわせて表現を工夫する。
※
自分たちで、ルールを考えさせるのもよい。
※
安全指導以外でもが、「班内の役割分担の徹底」や「後始末の徹底」などを含めても
よい。ただし、安全のためのルールとそれ以外のルールを分けたほうがよい。
②
継続的に根気強く反復指導する。
・ルール違反は見逃さず、即座に注意をする。
・あきらめず、何度でも繰り返し指導する。
・
「事故が起こってからでは遅い。自分たちの安全を守るため。」を強調する。
(2)
危険図(中村重太、1980)を利用した安全教育
- 2 -
(3)
パフォーマンステストを活用した安全指導
<例1>アルコールランプの使いかたチェック
<例2>ガスバーナーの使いかたチェック
- 3 -
Aさんたちが理科の実験をしています。「あぶない!」と思うところを見つけ
○
て、下の表に書きましょう。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
- 4 -
加熱器具とガラス器具の取り扱い
1
アルコールランプの取り扱い
(1)
アルコールランプの使い方
①
使用前の確認
ア
アルコールランプの点検【図1】
(ア)
芯の長さはちょうどよいか。
【図1】ランプの点検
(イ)
欠けていたり、ひびが入っていたりしないか。
(ウ)
アルコールは8分目まで入っているか。
【図2】アルコールの補充
イ
アルコールの補充【図2】
(ア)
燃料のアルコールはロートを使って入れ、こぼれたアル
コールはきれいにふき取って乾かす。
ウ
まわりの準備【図3】
【図3】周りの準備
(ア)
濡れ雑巾
(イ)
燃えさし入れ(水を少し入れておく)。
(ウ)
椅子を机の下に入れる
②
火のつけ方
【図4】横から火をつける
ア
アルコールランプの下をおさえてふたを取る。
イ
横から火をつける。【図4】
ウ
火のついたアルコールランプを、ゆっくりと三脚の下に押
し入れる(持ち上げないようにする)。【図5】
エ
炎の半分ぐらいが、金網に当たるようにする。
【図5】三脚の下に入れる
③
火の消し方
ア
三脚の下からアルコールランプを静かにずらす。【図6】
熱いので気をつける(軍手などを利用する)。
【図6】静かにずらす
- 1 -
イ
横から覆うようにふたをかぶせて火を消す。【図7】
ウ
ふたをし直す。
【図7】横から覆うように
(2)
事故防止の留意点
①
危ない使い方
・アルコールランプの火をもらうこと 【図8】
・転びやすい台にのせること【図9】
・手で持って歩くこと【図10】
・吹き消そうとすること【図11】
【図8】火をもらう
②
【図9】転びやすい台
【図10】持ち歩く
【図11】吹き消す
こんな時どうする
ア
こぼれたアルコールに火がついたとき
(ア)
あわてずに、そのままにする。
(イ)
濡れ雑巾を使う。
イ
アルコールがこぼれたり、手についたとき
(ア)
たくさんこぼれたときには、換気をする。
(イ)
こぼれたアルコールは雑巾でふき取り、雑巾をよく水洗いする。
(ウ)
手についたときは、あわてずに石けんで洗う。
- 2 -
2
(1)
ガスバーナーの取り扱い
ガスバーナーの使い方
- 3 -
(2)
事故防止の留意点
①
火を消しても、ガスバーナーの筒の部分は、しばらくは熱いので、手で触らない。
→ぬれぞうきんや作業用手袋を机上に用意しておくとよい。
②
使用後は、冷めるまでしばらく机の上に置いておく。
③
火をつけて使うとき、空気の量を多すぎず、少なすぎずに調節する。
→空気の量が多すぎると、ガスが筒のノズルの所で燃えるバックファイヤーが起きやすい。
このときはすぐに元栓を閉じる。ガスバーナー全体が熱くなっているので、冷えるまで
触らない。
④
ゴム管の点検をする。
→割れ目や裂け目がないかを石けん水を塗って調べる。5年に1度くらいは取り替えるよ
うにする。
⑤
ガス漏れに気づいたときは、火気を使わず、すぐ窓を開ける。電気スイッチは使用しない
(換気扇は使わない)。
→都市ガス(大部分天然ガス)は、特有のにおいがつけてある。
→プロパンガスは、二酸化炭素くらいの重さだから、床の上を這うように流れる。ほうき
などで掃き出すとよい。
図
ガスバーナー内部の構造
- 4 -
- 5 -
3
主なガラス器具の取り扱い
(1)
試験管の使い方
①
持ち方は、親指、人差し指、中指の3本で、できるだけ上の方を持つ。
②
入れる液の量は、試験管の長さの1/4∼1/5にする。
③
加熱するときは、試験管の口を人のいない方に向ける。
④
中のものを混ぜるときは、持っている所を支点に底を左右に振る。円を描くように回しても
よく混ざらない。また、上下に振ると中のものが飛び出るので危険である。
⑤
試験管ばさみで持つときは、はさみを開く部分を持たない。
⑥
洗うとき、ブラシで底を突き破らないように注意する。
⑦
固体を加熱するときは、口の方が低くなるようにスタンドに固定する。
(2)
駒込ピペットの使い方
①
持ち方は、小指と薬指の2本で持つ。親指と人差し指は、自由にしておく。
②
空気を出してから液体に入れる。
③
ゴムキャップを押している手を離すと、液体が上がってくる。再び、ゴムキャップを静かに
親指と人差し指で押して、計り取りたい目盛りに液量をあわせる。
④
(3)
ゴムキャップを押している手を離して、別の容器まで移動する。移動している間は小指と薬
指の2本で支え、ゴムキャップを押してはいけない。また、駒込ピペットを逆さまにしてはい
けない。
メスシリンダーの使い方
①
水平な机の上に置いて使うが、転倒しやすいので注意する。
②
液体の量を読み取る際には、液面と目の高さを同じにする。
③
メニスカスの最下端の位置を、最小目盛りの1/10まで目分量で読む。
④
メスシリンダーの中で物質どうしを混ぜ合わせてはならない。
(4)
ろうとの使い方、ろ紙の使い方、ろ過の仕方
①
ろ紙の大きさは、ろうとの縁から1cmくらい下にくる大きさのものを選ぶ。
②
ろ紙は、まずしっかり半分に、次に軽く四つ折りにして、一つの折り目を開いてろうとの内
側に当てる。ろうとの形状に合わせるようにしっかり折り、水で湿らせて密着させる。
③
ろうとの脚の長い方を、ビーカーの内壁につける。
④
ろ紙の3枚の方にガラス棒を軽く当てて、ろ過する液体をガラス棒に伝わらせて流し込む。
⑤
あらかじめ沈殿を十分に沈ませておいて、上澄みだけをろ過するのが上手なやり方である。
<ガラス器具の洗い方>
・実験に使ったガラス器具は、実験後速やかに洗う。
・時間がない場合でも、水につけていくようにすると汚れがこびりつかない。
・とくに、駒込ピペットは先端が細くて洗いづらいので、使用したらすぐに水につけておく
のがよい。なお、ゴムキャップは正しい使い方をすれば計り取った溶液で濡れたりしてい
ないはずであるので、洗う前にはずしなるべく水につけない方がよい。
・落ちにくい汚れは、クレンザーを使うとよく落ちる。また、石灰水と二酸化炭素の反応で
生じる白い汚れは、うすい塩酸できれいにとれる。
- 6 -
水溶液の調製、薬品の保存と廃棄
1
2
はじめに
化学実験に使用される種々の薬品は、実験の目的に応じて、その使用する量が決められる。
とくに、溶液の形で使用されることがきわめて多いため、決められた濃度の試薬溶液を調製
することは、化学実験を準備する際の最も重要な基本操作である。
また、化学実験を行うと、それにともなって廃棄物が出る。この廃棄物には環境を汚染する
おそれのある物質も少なくない。これらの物質はみだりに放出せず、無害化したのち放出する
か、固化して外には放出しないという原則を、実験を通して児童・生徒に体得させることも教
育上きわめて重要である。
試薬溶液の調製
(1) 濃度の表示法
実験の目的、ねらい、精度に応じて、種々の単位による表示法がある。
①
重量百分率…溶液100g注の溶質の質量(g)で表す濃度(単位:%(w/w)または単に%)
溶質(g)
重量百分率=―――――×100
溶液(g)
②
体積百分率…溶液100ml中の溶質の質量(g)または体積(ml)で表す濃度
(単位:%(w/v)または%(v/v))
溶質(g)
体積百分率=―――――×100
溶液(ml)
③
または
溶質(ml)
体積百分率=――――――×100
溶液(ml)
モル濃度…溶液1 l 中の溶質の物質量(mol)で表す濃度(単位:mol/l またはM)
溶質(mol)
モル濃度=――――――
溶液(l)
④
質量モル濃度…溶媒1kg中の溶質の物質量(mol)で表す濃度(単位:mol/kg)
溶質(mol)
質量モル濃度=――――――
溶媒(kg)
- 1 -
(2) 種々の濃度表示法に従う試薬溶液の調製
上記の濃度表示に従う試薬溶液の調製法を示す。
①
a[%(w/w)]溶液の調製
・溶質とする試薬a(g)をてんびんではかりとる。
・ビーカー内で100−a(g)の溶媒に溶かす。
・水溶液の場合は、メスシリンダーを用いて100−a(cm3 )の水を加えても、近似的にほと
んど差し支えない。
②
b[%(v/v)]溶液の調製
・液体の溶質c(cm3 )をメスシリンダーにとる。
・溶媒を加えて100cm3までうすめる。
③
c[mol/l](c[M])溶液の調製
・溶質の分子量(式量)のc倍に相当する質量(g)をてんびんではかりとる。
・ビーカー内で少量の水に溶かす。
・ビーカー内の溶液を漏斗を用いて1l のメスフラスコに移す。このとき、ビーカーの内
壁面を洗瓶の水で洗い、その洗浄液もすべてメスフラスコに入れる。
・洗瓶でさらに水を加え、回転させるようにしてよくかくはんする。
・最後に洗瓶からゆっくりと水を加え、液面のメニスカスを正確に標線にあわせる。
・共栓をして、数回逆さにして全体を均一にする。
④
d[mol/kg]溶液の調製
・溶質の分子量(式量)のd倍の質量(g)の溶質をでんびんではかりとる。
・これに、正確に1000gの溶媒を加えて溶かす。
- 2 -
(3) よく使う試薬溶液の調整方法
試
薬
硫酸
調
整
方
法
3mol/l
市販の濃硫酸(約18mol/l)10ml を水50ml の中に、ガラス
棒でかきまぜながら徐々に加える。温度が下がったら、
さらに水を加えて全体を60ml とする。(6倍希釈)
1mol/l
濃硫酸1体積を17体積の水に加える。(18倍希釈)
6mol/l
市販の濃塩酸(約12mol/l)を水でうすめて2倍の体積に
する。(2倍希釈)
1mol/l
濃塩酸1体積に11体積の水を加える。(12倍希釈)
硝酸
6mol/l
市販の濃硝酸(約15mol/l)を水でうすめて2.5倍の体積に
する。(2.5倍希釈)
酢酸
1mol/l
市販の氷酢酸を水でうすめて約18倍の体積にする。
アンモニア水
6mol/l
市販の濃アンモニア水(約13または15mol/l)を水でうす
めて2.2または2.5倍の体積にする。
2mol/l
濃アンモニア水を水でうすめて7.5倍の体積にする。
塩酸
フェノールフタレイン溶液(約1%)
フェノールフタレイン粉末1gを、95%エタノール90ml
に溶かし水を加えて100ml とする。
(強酸または弱酸と強塩基の中和に用いる)
メチルオレンジ溶液(約0.1%)
メチルオレンジ0.1gを温水100ml に溶かし、冷やしてから
ろ過する。(強塩基または弱塩基と強酸の中和に用いる)
リトマス液
粒状リトマス1gを乳鉢で粉末にし、水100ml を加えて煮
沸し、その上澄み液をろ過する。
リトマス試験紙
リトマス液を細長く切った紙に直接吸収させて乾燥する。
(変色域pH4.5赤∼8.3青)
BTB溶液(ブロモチモールブルー溶液)
ブロモチモールブルー粉末0.1gをエタノール20ml に溶か
し、水で100ml にする。(変色域pH6.0黄∼7.6青)
フェーリング液A
硫酸銅(Ⅱ)五水和物7gを水に溶かして100ml とする。
フェーリング液B
酒石酸ナトリウムカリウム35gと水酸化ナトリウム10gを
水に溶かし100ml の溶液をつくる。
使用する直前にA、B両液を同体積ずつ混ぜる。
デンプン溶液
デンプン1gを水約30ml に加え、よくかきまぜながら沸騰
水を加えて約100ml とし、これを煮沸する。
ヨウ化カリウムデンプン溶液
(ヨウ化カリウムデンプン紙)
デンプン0.1gに冷水10ml を加えて、よくかきまぜながら
熱して煮沸する。ヨウ化カリウム0.1gを水10ml に溶かし
た溶液を、上のデンプン溶液に加えてかき混ぜる。
[日本化学会編、「中・高校生と教師のための化学実験ガイドブック」、丸善(1993)、p255]
- 3 -
3
薬品の保存
薬品には、毒物・劇物や危険物として、法令によって適切な管理が厳しく義務づけられてい
るものもある。また、薬品の変質を防止する意味においても、適正な保存が必要である。
(1) 毒物及び劇物取締法による毒物・劇物の保存
施錠した薬品室の中の、さらに施錠した薬品庫に保存し、毒物・劇物の表示をする。
分類
半数経口致死量(体重1kgあたり)
物質例
毒物
30mg以下
水銀、ネスラー試薬など
劇物
30mgを超え、300mg以下
塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、アンモ
ニア水、メタノール、過酸化水素、硫酸
銅(Ⅱ)、ヨウ素など
(2) 消防法による危険物の保存
施錠した薬品室の中に、熱や衝撃、他の物質との接触をさけて保存する。
分類
性
質
物質例
第1類
酸化性固体
硝酸カリウムなど
第2類
可燃性固体
硫黄、マグネシウム粉末など
第3類
自然発火物質及び禁水物質
金属ナトリウムなど
第4類
引火性液体
エーテル類、石油類、アルコール類など
第5類
自己反応性物質
ニトロ化合物など
第6類
酸化性液体
過酸化水素水、硝酸など
(3) 高圧ガス取締法による危険な気体の保存
気体は、ボンベに保存するが、火災・爆発や中毒を引き起こす危険性のある気体も多く、
ボンベの点検を定期的に行う。
分類
性
質
物質例
可燃性ガス
爆発限界が10%以下または上限と
下限の差が20%以上の気体
水素、プロパン、ブタンなど
毒性ガス
許容濃度が200ppm以下の気体
塩素、二酸化硫黄、アンモニアなど
- 4 -
(4) 一般的な薬品の保存の関する留意点
①
試薬びんによる保存
・ガラス製とプラスチック製(主としてポリ
分類
長
エチレン製)の長所と短所
所
短
所
ガラス製
・水酸化ナトリウムや過酸化水
素水などを除くほとんどの薬
品の保存に適する
・衝撃で割れやすい
・すり合わせの共栓が付いている
ので洗浄時に注意を要する
プラスチック製
・びんの成分の溶出が少ない
・溶質の器壁への吸着が少ない
・高温で変形する
・有機溶媒や濃硝酸、ヨウ素など
には侵される
・細口びんは主に液体試薬、広口びんは主に固体試薬の保存に用いる。
・光により分解しやすい試薬は、褐色のびんに保存する。
例)塩酸、ヨウ素溶液、硝酸銀水溶液、過マンガン酸カリウム水溶液など
・試薬溶液を調整したら、必ずラベル表示をする。表示内容は、最低限「物質名(または
化学式)」、「溶液の濃度」であるが、さらに、調整年月日や調整者名があるとよい。
なお、見間違いを防ぐため、物質名と化学式の併記が望ましい。
例)ラベル表示の例
3mol/l
塩
HCl
酸
2006.7.31
②
保存に関する留意点
・必ず「薬品管理台帳」を作成し、保有する薬品名、保有量、購入年月日、購入者等をデ
ータベース化する。パソコンの表計算ソフトの利用も有効である。
・保存の前にまず、「必要な試薬を、必要なだけ購入」を心掛ける。保存場所は限られて
いる。いつ誰が購入したか分からない古い試薬は、結局使わず無駄にしてしまうことが
多い。
・購入したら「薬品管理台帳」を記入すると同時に、びんのレベルまたは底などにも購入
年月日を記入する
・薬品保存室では、薬品を性質によって分別整理する。
例)酸、アルカリ、無機塩(軽金属類、重金属類)、金属、有機化合物など
- 5 -
4
薬品の廃棄
実験後に生じた廃棄物の中には、人間の健康に対して有害な物質、または生物の生態系に変
化を及ぼして環境汚染をもたらすような物質もある。したがって、これらを安全でしかも適切
に処理することは実験者の責任である。
とくに、液状廃棄物(廃液)については、次のような分類にしたがってポリタンク等に貯め
ておき、以下のように適正に処理をしなければならない。
(1) 酸、アルカリ廃液
塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、水酸化アルカリ、炭酸アルカリ、アンモニア水などを含む液
は、pHが5∼9になるように中和した後、多量の水で希釈して下水に流す。
酸廃液、アルカリ廃液がともにある場合には両者を混合し、不足分だけを塩酸や水酸化ナ
トリウム水溶液などを用いて中和すればよい
(2) 重金属廃液
Hg 2+ を除く重金属(銅、鉄、鉛、カドミウム、マンガン、ニッケル、銀、クロム、コバル
トなど)イオンは、硫化物等の沈殿とし、放置して硫化物を十分沈積させ、上澄みはpH5
∼9に調整してから放流する。沈殿物は水分を蒸発乾固させたあと、専門の処理業者に処理
を委託する。
(3) 酸化剤廃液
過マンガン酸カリウム、ニクロム酸カリウムなどの酸化剤を含む廃液は、還元剤を加えて
通常の金属イオンの状態にしたのち、重金属廃液と同様に処理する。
(4) 有機物水溶液
重金属類を含む場合にはまず重金属廃液と同様の処理により重金属成分をとりのぞく。酢
酸、糖類、アルコール、アセトンなど毒性のあまり高くない生分解性有機物を含む水溶液は
pHを調整したあと、濃度が0.1%以下になるように水で希釈して放流する。その他の有機
物を含む場合は、次の有機廃液として処理する。
(5) 有機廃液
C、H、O以外の元素を含まない有機廃液は少量ずつ布などにしみこませて焼却炉で焼却
処分する。
有機塩素系溶剤を含む場合は焼却が困難であり、かつ、塩化水素やその他の有毒物質を発
生する恐れがあるので処理は専門の廃液処理業者に依頼する。
参考文献
日本化学会編,『中・高校生と教師のための化学実験ガイドブック』,丸善,2002
- 6 -
パックテストで「水」を調べよう
1
はじめに
パックテスト
は、誰でも簡単にできる水質分析器具です。パックテストを使い、身近な
「水」について調べてみましょう。
注)「パックテスト」は株式会社共立理化学研究所の登録商標です。
(1)
(2)
パックテストの操作
概ね、次のような操作を行います。
パックテストの長所と短所
ア 長所
①
②
③
④
イ
(3)
操作が簡単・・・・スポイト式で簡単
小さく軽い・・・・1個1g前後
結果が早い・・・・ほとんどの測定が5分以内
こわれない・・・・ポリエチレン製チューブ
短所
① 濃度の読み取り(比色)に個人差が生じる。
② 細かい数値が読み取れない。
③ 測定結果に影響を及ぼす妨害物質を除けない。
→非公式の測定値
パックテストの用途
ア 工場排水の簡易検査・・・・重金属類、CODなど。
イ 飲料水の簡易検査・・・・・・残留塩素、硬度、鉄など。
ウ 河川等の環境調査・・・・・・pH、COD、アンモニア、亜硝酸、リン酸など。
- 1 -
(4)
パックテストの使用上の注意
ア 使用時の注意
少量ですが化学薬品が含まれています。次のことを守りましょう。
①
②
③
イ
ウ
エ
2
中の薬品はチューブの外に絶対に出さない。
使用後の液は穴から絶対に出さない。
測定の前後はかならず手を洗う。
保管方法・・・・幼児の手の届かない乾冷暗所。冷蔵庫には入れない。
有効期限・・・・製造から1∼2年。箱に表示があり。
使用後の処理・・・・ポリ袋などに入れ、「燃えるゴミ」として処分。
よく使われるパックテストの種類
注)*には、WまたはZが付き、WAK-またはZAK-となる。
測定項目
パックテスト型式
測定範囲とその評価
1
酸性雨
*AK-BCG
pH3.6∼6.2で測定。pH5.6以下が酸性雨。
2
河川の水のpH
*AK-pH
pH5.0∼9.5で測定。普通pH6∼9の範囲。
3
残留塩素
*AK-ClO・DP
0.1∼5ppmで測定。水道水は0.4∼1.0の範囲が普通。
4
COD
*AK-COD
0∼100ppmで測定。川や湖では、普通10ppm以下。
5
COD(低濃度)
*AK-COD(D)
0∼8ppmで測定。ほとんど0でないと飲料には不適。
6
亜硝酸
*AK-NO2
0.02∼1ppmで測定。ほとんど0でないと飲料には不適。
7
硝酸
*AK-NO3
1∼45ppmで測定。井戸水で2∼20、雨水で最大10程度。
8
リン酸
*AK-PO4
0.05∼2ppmで測定。川・湖で0∼1。生活排水で増加。
9
ホルムアルデヒド
*AK-FOR
0∼2ppmで測定。家具から放出される量の大小を比較。
10
全硬度
*AK-TH
0∼200ppmで測定。Ca2+ とMg2+ の合計で水の硬軟判定。
11
アンモニウム
*AK-NH4
0.2∼10ppmで測定。川・湖で0.2∼10。し尿等で増加。
12
おいしい水
AZ-DK
残留塩素、全硬度の2項目で、おいしさを数値化。
13
井戸水
AZ-2W
pH、COD、亜硝酸、全硬度、Feの5項目で安全性確認。
注1)CODとは、「化学的酸素要求量」といい、水中の有機物による汚れの目安となる。
注2)生物のもつ窒素分は、アンモニウムから亜硝酸、亜硝酸から硝酸に変化する。
- 2 -
3
実習
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
- 3 -
気体検知管で「空気」を調べよう
1
はじめに
気体検知管は、空気の中に含まれるいろいろな種類の気体の量(空気中の体積%)をはかる
ことができる器具です。
(1)
気体検知管の使い方
① はかりたい気体の種類によって検知管も違う。
また、同じ気体でも、濃度によって検知管が異な
る場合もある。
例)二酸化炭素
・0.03∼1.0%用
・0.5∼8%用
②
気体検知管の両端を、チップホルダーを使って
折る。
その後、Gマークのある方の先にゴムカバーを
つける。
③
気体採取器に気体検知管のもう一方の先を差し
込む。このとき、気体採取器のハンドルは押し込
まれている状態にする。
④
気体検知管のゴムカバーをつけた方の先を、気
体採取場所に入れ、ハンドルを一気に引いて固定
する。
⑤
一定時間を待って、気体検知管をはずし、目盛
りを読む。
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(2)
気体検知管の使用上の注意
ア 使用時の注意
①
②
③
イ
ウ
エ
2
気体検知管の折り口でけがをしないようにする。
気体検知管はガラス製なので、破損しないようにする。
酸素の気体検知管は使用後かなり熱くなるので注意。
保管方法・・・・冷暗所に保管する。
有効期限・・・・製造から1∼2年。箱に表示あり。
使用後の処理・・・・「燃やせないゴミ」として処分。それができないときは、ある程度の
本数がたまったら、教材会社に引き取ってもらう。
よく使われる気体検知管の種類
注)型式は、「気体の検ちゃん」用検知管(50ml用)
気体名
型式
測定範囲
主な用途
1
酸素
159KA
6∼24%
空気中で約21%。燃焼後で減少。
2
二酸化炭素
126KC
0.03∼1.0%
空気中で約0.035%。有機物の燃焼後で増加。
3
二酸化炭素
126KH
0.5∼8%
有機物燃焼後の濃度測定。
4
二酸化窒素
175EA
100∼2000ppm
5
二酸化窒素
175EB
1∼20ppm
6
二酸化硫黄
103EA
5∼100ppm
7
一酸化炭素
106EA
5∼100ppm
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実習
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