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経済魚としてのブラックバス活用
長野大学 前川ゼミ 平林義雄 小林貴樹 ブラックバスとは 通称ブラックバス 北米原産のスズキ目 サンフィッシュ科に属する肉食淡水 魚 日本では淡水に生息する固有種を駆逐する特定外来生物 ルアーフィシングとは ルアー(疑似餌)を使い、釣り人自らアクションをつけて魚の 捕食本能を刺激し釣る。 大きな個体ほど経験が豊富なため、魚を騙すための高度な 技術が要求される。 近年の日本のバスフィッシングの動向 米国に比べブラックバスのハイプレッシャー化が各地で進む ハイプレッシャー化が進んだブラックバスを釣るためのダウン ショット、ベイトフィネス、ネコリグなど新たな釣方が生まれる など高度な技術を求められる釣りが主流になりつつある。 世界初のデジタルコントロールブレーキ搭載の両軸リールが 開発されるなど日本の釣り具は世界で高い評価を得ている。 研究の動機 米国では、バスフィッシング人口1500万人 バスフィッシングによる経済効果は1兆2000億円 日本のバスフィッシング市場(300万人 経済効果1000 億円)も米国のような巨大市場にできないだろうか? 目的 日本バスフィッシング市場を米国のような経済魚として積 極利用できる市場にするための方法を日本バスフィッシ ング市場の現状・課題、野尻湖の成功例を通して考察す る。 日本バスフィシング市場の現状 世代を超えて人気が高い 地域に及ぼす経済効果1000億円 経済魚としての一面を持つ レンタルボート業やバスフィシングガイド業が生まれる 全国各地で賞金を懸けたトーナメント開催 トーナメントで培われたノウハウが生かされた釣具が世界で高い評 価を受ける 日本全体で消費される釣り用品の1/4がバス用品 日本バスフィシング市場の現状 バスフィシング愛好者は全国で300万人 釣り用品小売市場規模は2246億円 ルアーフィッシング用品の小売り販売総額は649億940万 円 バス用品小売り販売総額は454億3658億円 日本バスフィッシング市場の抱える問題 特定外来生物指定+駆除・規制の強化 バスフィッシング人口減少 バスフフィッシング市場の縮小 レンタルボート・バスフィシングガイド廃業 湖沼周辺のホテル・旅館廃業 バスフィシングに頼った経営を行っている湖沼では死活問 題 野尻湖での経済魚としての成功例 野尻湖-1995年バスフィシング導入 日本中からバスフィシング愛好家が集まる 野尻湖一帯にあったバスボートが釣り客で全て埋まる バスフィシングの解禁は、停滞する野尻湖の観光業に とって救世主となる 野尻湖の経済魚としての活用後の変化 遊魚収入は200% 以上成長 ※野尻湖漁業協同組合業務 報告書より作成 野尻湖における多様な集客圏 ※2012年5月4日 野尻湖において調査 野尻湖の経済魚としての活用後の変化 1995年のルアーフィシング解禁に伴い、遊魚収入は200%以上成長 貸しボート一軒による収入は年間で2000万円~2500万円 ピークから減少こそあれ、2000年から現在まで安定した観光業種 近隣県に加え関東圏からも多くの釣り人が訪れている バブル崩壊後、観光客が減少し危機的状況であった野尻湖経済の 救世主となる。 野尻湖のバスフィシング 野尻湖では、ブラックバスが経済魚として利用されている。 根絶の糸口が見えないブラックバスを利用することで成功。 ワカサギ釣り以外の貴重な収入源として地域経済に貢献している。 ブラックバスは、遊魚として利用されている地域において、 貴重な「観光資源」 野尻湖の抱える問題 ルアーフィッシング解禁後ブラックバスの生息数減少 釣られたブラックバスは、ほとんどが死んでしまう ハイプレッシャー化が進んでいることから使用されるライン (釣り糸)が細くラインブレイクしてしまうことが多く生息数 減少に繋がっている 野尻湖漁業組合の問題解決に対する活動 リリース解禁、積極的なリリースを呼び掛ける ブラックバスの産卵床の保護 湖周辺の環境保全 人為的な努力で生態系の維持 生態系維持のため遊魚料収入が必要 野尻湖のバスフィッシング成功の要因 多くの釣り客を呼び込めるだけの宿泊施設・駐車場 地域住民の理解 漁業組合(バスフィシング関係者が組合長)の理解 バスフィシングから得た収益で在来種の放流・湖の清掃活動な ど在来種の個体数維持を行っている 既存漁業や釣りに対する配慮ができている バスフィッシングを容認し積極利用できる環境が整っている 野尻湖漁業組合の主張 ブラックバスは全て害魚とは言えない。各湖沼河川ごとにブラックバスを 利用するしないを決めるべき 生態系を考えるなら駆除はかえってバランスを崩す 在来種の個体数は人為的に維持できる(ワカサギの放流) リリース禁止や駆除は、漁協、地元観光業、貸しボート店、みやげ屋、 スーパー・コンビニに大打撃を与える(影響は斑尾高原、妙高高原にまで 及ぶ) 漁業は遊魚と観光にリンクした形で行っていく バス釣りを認めない漁協は理解に苦しむ(利用できる環境でありながら利 用しない諏訪漁協に対して) 芦ノ湖の例 芦ノ湖では、環境ホルモンが在来魚に与える影響を考慮し、魚 漁協がソフトルアーの使用を禁止 釣り客年間22万人ほどいたが、 禁止後 使用禁止が影響し現在では約4万〜5万人まで落ち込んだ 主要な収入源である遊魚料激減 河口湖の例 芦ノ湖同様ソフトルアー禁止後 釣り客減少 貸ボート業を営む大町悦章さん(32)は、予約が入らな い日もあるといい「廃業するかもしれない」 河口湖漁協の対策 ブラックバスの減少に歯止めがつかず、年間にわたって膨 大な量のバスを放流し、安定した釣り場の維持に努めて いる。 原産国の米国などでもバスフィッシングによりブラックバス の減少が歯止めがたたない状況になっている 日本における積極利用の課題 漁業関係者からの理解 バスフィシングに必要な施設 地域住民からの理解 地域社会からの理解が得られるか 理解を得るためには 在来魚保護の保護 漁業関係者の漁獲高の維持が必要 そのための 防護柵の設置 在来魚保護のための稚魚の放流 これを バスフィッシング経済利用者が行う 結論 ブラックバスを経済利用するには地域社会の理解が必要。そ のために在来魚の保護、漁業関係者の漁獲高の維持のため の活動をバスフィッシング経済利用者が行う必要がある。 これができない経済利用者のバス擁護論は一方的な主張に 過ぎず、野尻湖のような経済利用は不可能であり、米国のよ うな大規模市場を目指すことは不可能である。 引用文献 リリース禁止処置に対する意見交換書(野尻湖漁協作 成) バスフィッシングの経済効果を示す根拠の資料(日本釣 振興会) 経済魚としての琵琶湖での ブラックバス 長野大学 前川ゼミ 平林義雄 小林貴樹 研究目的 • 日本ではブラックバスが積極的に駆除されているな かで、欧米ではスポーツフィッシングとして利用され ていて人気がある。(アメリカ:バス釣り人口1,500 万人、経済効果1兆2千億円) • • 日本でも駆除せず経済魚として有効活用すべきと感 じたためである。(日本:バス釣り人口300万人、経 済効果1,000億円) 琵琶湖 琵琶湖を研究する目的 • 琵琶湖は日本最大のバスフィッシングのフィー ルドであり、1000億円の市場のうち300億 円の経済効果があり、バスフィッシングを語る 上で切り離せないものである。野尻湖を研究 する上で、琵琶湖の現状を研究しなければ、 野尻湖がどういう現状なのか認知が難しいの で、比較し双方での認知のされ方の違いにつ いて研究し明らかにしたいと思う。 漁獲量・生産額 • 漁獲量は全盛期の5分の1以下までに減少。 • 平成20年の総漁獲量は、1,816トン、生産額は1 2億4,600万円だった。 漁獲量の推移 生産額の推移 琵琶湖漁業総漁獲量 • アユなどの固有種は魚価が高く生産額 の50%以上を占める。 漁獲量の内訳1 漁獲量の内訳2 在来種減少の要因 • 1、ブラックバス・ブルーギルによる捕食圧 • 2、クリーク・水田での洗剤・農薬による卵・稚魚の死滅、 生育環境の悪化 • 3、湖岸堤建設によるヨシ帯の減少および琵琶湖と内 湖・クリーク・水田との連続性の寸断 • 4、湖岸の整備によるクリーク・水田での産卵・稚 魚の生育場所・機能の喪失 • 5、急激な人工的水位変動によるヨシ帯の産卵場・稚魚 の生育場所としての機能低下 • 6、漁獲圧の増加(特に北湖から南湖への産卵魚) 琵琶湖のブラックバス • 在来種減少の主要因としてブラックバス があげられている。 • ソフトルアー、ラインなどによる汚染問題。 琵琶湖のバスフィッシング • 琵琶湖のバスフィッシングは多大な経済効果 を生んでいる。 • 琵琶湖には年間約80万人の釣り人が訪れる。 (滋賀県有名観光地の多賀神社の観光客が 約100万人) 琵琶湖でのバスフィッシングに経済効果 (約80万人訪れる釣り人から計算) 外来種回収ボックス • 琵琶湖の周囲にはバスフィッシングで釣りあげ たブラックバスをはじめとした外来種を処分す るためのボックスが一定の間隔で設置されて いる。 外来種回収ボックス 琵琶湖観光客数(年間訪れる釣り人は約 80万人) 研究からの結論 • 生態系に及ばす影響。 • 漁協とバスフィッシングで生計立てている 方の双方利益をあげる方法。 • 食用としてのブラックバスを活用。 生態系に及ぼす影響 • 水産試験場でブラックバスの飼育試験を行ったとこ ろ体重が11.0kg増えるのに餌が8.8kg必要と いう結果が得られた。単純な計算だが琵琶湖で年間 60トンのブラックバスが捕獲されているということは、 少なくとも530トン以上の琵琶湖の魚介類が食べら れていることになる。琵琶湖の年間漁獲量が昭和6 0年度で3,840トンであることを考えると琵琶湖の 生物、琵琶湖の自然が急激に変わっていくのではな いかと思われる。 漁協と経済利用する方法1 • 琵琶湖では漁協・自治体と経済利用する方が 反発しあっていてブラックバスを駆除する、利 用する極端な意見に分かれていて有効的に 活用されていないので利益が思うように出て いない。その反面で野尻湖では漁協、自治体、 経済利用する方が協力してブラックバスを観 光資源として効率よく利益を上げている。 漁協と経済利用する方法2 • 最終的にはブラックバスは完全駆除するべき なのかもしれないが、駆除するだけに何十億 円もかけるなら野尻湖のように漁協・自治体 と経済利用する方が協力し双方が利益をあげ られるようにしていくべきだと思う。 食用として活用 • 琵琶湖では過去にブラックバスをビワスズキと いうブランドで売り出した経緯があり、その時 食用として広まることはなかった、現在も琵琶 湖周辺ではブラックバスの料理を提供してい る店があるが、今後ブラックバス減らすために も食用としてさらに広く流通させていくべきだ。 ブラックバス天丼 引用文献 • 滋賀農政事務所「平成20年次滋賀農林水産統計 年報」 • 滋賀県水産試験場HP