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Development of science teaching materials

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Development of science teaching materials
プロジェクト報告書 Project Final Report
提出日 (Date) 2012/1/18
科学教材開発―粘菌―
Development of science teaching materials -Myxomyceteb1009176 庭山和真 Kazuma Niwayama
1 背景
実験道具の考案と、実験をわかりやすく説明した説明書
と DVD の制作、そしてこの3点を付属した迷路実験の
粘菌は、おもしろい生き物である。粘菌は見た目が黄
キット製作である。
色く、ねばねばしており、1 時間に 1cm 程移動するア
メーバ状の変形体である。私達のプロジェクトでは、こ
3 課題解決のプロセスとその結果
の不思議な生き物である粘菌を題材に、科学教材を開発
プロジェクト学習が始まって最初に行ったことは、粘
する。現在、ゆとり教育により、実験をする機会が減少
菌についての学習である。私たちは、粘菌について無知
しているということを耳にする。また最近では、屋内で
であったことから、粘菌とはどういうものなのかという
ゲームやパソコンに熱中しているあまり、屋外で遊ぶこ
ことから勉強を始めた。調べた方法は、担当教員から書
とが減っているということも耳にする。このような原因
籍をお借りしたり、本学の情報ライブラリーを利用させ
から、実際に本物に触れる機会がなく、理科離れが進ん
ていただき、資料を集めてノートにまとめながら、知識
でいることが想像できる。そこで、このような状況を改
を得ていった。次に、手引書の作成にとりかかった。項
善する1つの手段として、楽しめるような粘菌の実験
目ごとに一人ひとり分担し、その項目について詳しく調
キットを開発することにした
べてまとめていった。プロジェクト内でまとめたものを
2 課題の設定と到達目標
各自発表して、問題点を指摘し合い、改善をしていく形
をとり、制作を進めていった。最終的には、1 冊の本と
採集キットグループは、キットを作成しそれをモニ
しての統一性を持たせるために手引書班をつくり、レイ
ター等をしてもらいながら改善していくことを最終的な
アウトや細かい誤字・脱字を直し、手引書が完成した。
目標として、前期ではキット案を考えることと、手引書
次に、担当教員である中垣俊之先生に講義を行ってもら
を作成することを目標とした。そのための課題として前
い、その後実験を行った。キット案を作成するにあたっ
提知識をつけ、実際に本物に触れてみること。後期では
て、より知識を深め、体験するために、中垣先生の講義
前期に考えたキット案を明確にし実際にキットを作成
を聞き、実際に実験を行ってみた。そしてこれを基に、
し、それを改善していくという工程の予定で動くことに
私たちが作成するキット案の手がかりとした。行った実
した。
験は、採集、細胞リズム実験、複室法実験、粘菌の好き
流動グループでは原形質流動に興味を持った。原形質流
嫌いをみる実験、迷路実験、鉄道網実験である。採集で
動は粘菌における基礎的な位置にある。だが粘菌の原形
は、自分達で調べた内容を基に、実際に粘菌を採集する
質流動には多くの面白いと思えることがある。粘菌の原
ことを体験した。私たちは、大学近くの北海道立道南四
形質流動には他の生物では見られにくい往復流動が容易
季の杜公園に行き、やぶの中にはいり、倒木や落ち葉の
に観察できるほか、原形質流動を引き起こしている独特
近辺をくまなく探した。実際にさがしてみると、そう簡
の現象が見られるなど、魅力溢れる面白さを持っている
単には見つけることができないことを痛感した。その中
のである。流動グループではこの原形質流動と実験キッ
で、運よく見つかった粘菌をシャーレのサイズに合わせ
トを結びつけて、本プロジェクトの目的である「粘菌に
て不要な部分を切断し、蓋を閉め、テープで固定して持
触れ合えるような粘菌の実験キット」を製作しようと考
ち帰った。細胞リズム実験では、原形質流動による粘菌
えたのである。
の体形の変化から、リズムを読み取ることを行った。手
迷路キットグループが取り組む課題は、実験に付属する
順としては、粘菌の管が乾燥しないために、ビーカーの
ての勉強をした。そして実際に本物に触れるためにも粘
中に水を少量入れて、ビーカーの内側側面に、水で湿ら
菌の飼育をしている。最初は全員で学校で飼育し、その
せたろ紙を張る。そしてビーカーの蓋となるものを用意
後実際に家で各自飼育している。これらを通し、調べ物
し、粘菌の管をとって、先を蓋に付けてぶら下げる。そ
をしつつ手引書の作成を行った。そして次に最終目標で
して時間の経過で、粘菌が伸縮する様子を見て取るこ
あるキットを作成するにあたり、前期ではそのキットの
とができる。複室法実験では、原形質流動の駆動力を定
原案を考えることもした。キット案を作成するために、
量化することができる。1940 年の時点で、原形質流動
まず先生の講義を聞き、そして実際に実験をしている。
が、粘菌体内に生じる圧力の部分的な差によって起きる
私が担当する採集キットを作成するために数回ではあ
ことを正確に測れなかったが、神谷先生が考案した複室
るが採集に行っている。数回しか行けていない理由の 1
法によって測ることができるようになった。なお、原形
つとして時期が悪いという点があった。この採集という
質流動とは、核と細胞質が流れるように動く現象のこと
経験を経て、“粘菌を探すということはとても容易なも
である。手順としては、写真のように2つに分かれた部
のではない”という実感が得られている。しかし私たち
屋に粘菌を置き、粘菌の管で2つを繋げる。これにグリ
は運よく大きな粘菌を見つけることができ、それを持ち
スを塗って上からプレパラートで密閉して、少し時間を
帰っている。以上の経験より最終目標であるキット作成
置いてから、流れを顕微鏡で観察した。迷路実験では、
にあたり、キット案として、いくつかの工夫や問題点が
粘菌は最短経路をとる性質があるため、その性質を確認
得られている。因みに工夫としては、簡単に粘菌を探せ
するために、実際に実験した。実験ではフィルムで作っ
ないというものの実際には何かしら見つけたものが粘菌
た迷路を用意し、寒天の上に置き、写真のように経路全
かわからない点である。これを考慮し、キットにはミニ
体に粘菌を敷き詰めて、時間を置いた。そして粘菌が経
図鑑をつけ、他にも説明が伝わりやすいように説明書の
路いっぱいに広がったら、スタートとゴール地点に寒天
補足として DVD をつくることとなった。後期ではまず
とえさをおき、さらに時間をおき、経過を観察した。こ
キット案を明確にし、その後に採集のスペシャリストで
のように実験を行い、私たちは後期から採集キット、流
ある福井総合植物園園長の松本淳さんに来ていただき粘
動キット、迷路実験キットを制作することに決めた。そ
菌や採集に関して講義をしていただき翌日には一緒に採
して前期の終わりに、後期からどのような実験キットを
集にも行っていただいた。その採集の時に DVD を回さ
制作していくかを考えた。採集キットでは、幾つかの工
せていただき、これを DVD の土台の映像にしようと考
夫として、「採集の際に持ち歩けるようなミニ図鑑のよ
えていた。採集の次は早速製作にかかった。製作は大き
うなものをつける」、「標本のサンプルをつける」、
「分か
く「ミニ図鑑」
「説明書」
「DVD」の三つにわけ三人で分
りやすいように説明に DVD を使う」ということを考え
担することにした。「ミニ図鑑」に関しては先で言った
た。次に流動キットにおいては、複室法は難易度の高い
ように何かしら見つけたものが粘菌かどうかの判断がつ
実験なので初めての人でも使いやすく、粘菌に触れやす
かないことから、ページの半分を使い大きめに写真を掲
いようにするために、キットに難易度をつけ、複室法に
示している。これに加えちょっとした特徴も加え、探す
到達するまでに段階を踏んでいく実験を行えるような
のにヒントになるような情報も簡単に載せた。更にはど
キットをつくろうと考えていた。迷路キットでは、キッ
こでもよく見つけられる粘菌を掲載し、その正しい簡単
トが届いたらすぐ始められ、気軽に実験が行えるよう
な説明を入れるために松本さんと連絡を取りながらミニ
に、一通りの実験道具を付属し、またわかりやすいよう
図鑑に載せる粘菌について幾度か添削を受けた。「説明
に実験を説明する DVD を同封すること、そして迷路は
書」は前期のほうで軽く作った「採集の手引書」を大元
こちらで与えたものだけではなく、キットを使う人達自
とし更に改善している。大元とはいえ当然初めにあった
身で迷路をつくってもらい、考えながら行うことができ
手引書とはずいぶん違う内容でこの説明書があれば採集
る実験キットを作成しようと考えた。
に関しての基本は網羅できるような物に仕上げられてい
採集キットグループではまず最初に、前期で手引書を作
る。こちらの方でも松本さんに来ていただいた際にいろ
成するために、前提知識のない私たちはまず粘菌につい
いろな質問をさせていただき、それまでに出来ていたも
のとは比べ物にならないほど改善されている。「DVD」
それが ImageJ を用いた実験である。ImageJ という画
では説明書を読むにあたり文字などの文面では分かりづ
像解析ソフトウェアを使用して実験を行うことにした。
らかったり、または「説明書」は文字ばかりで見にくく
「ImageJ の実験」の他、「伸縮運動の観察」と「原形質
ないように写真を掲載したり、箇条書きを入れたりと工
流動の観察」の 3 つの実験で一つの実験キットを構想し
夫してはいるのだが、そもそも文章などを読むのが苦手
た。 後期では前期で構想した実験キットの製作に取り
な人たちのためにあくまで「説明書」の補足の資料とし
掛かった。製作に取り掛かるに当たって、各実験につい
てつまらなく無く、見やすいよう、聞きやすいようにを
てプロジェクト担当教授の講義や指導を受けた。流動グ
心掛けて作った。なお、初めに作った DVD は動画中心
ループが構想した実験キットでは、実験不足のため要所
の物で約 15 分の内容だったのだが、フィードバック後
が掴めないからである。プロジェクト担当教授監修のも
に最も改善されているといっても過言ではないくらいで
と、実験を行うことで各実験の要所を掴むことができた
一から作り直し静止画中心で半分の長さの約 7 分とガ
ら、次は実験キットに使用する DVD の撮影に入った。
ラッと変わっている。これらはできた時点でモニターに
実験を紹介する場合、実際に実験を行なっている様子を
回し、フィードバックを頂いている。「DVD」に関して
見ながら実験キットを使用する方が、教材としての価値
はたくさんのフィードバックが返ってきていまして、先
が高いと考えたからである。この DVD に収録する実験
に述べたように大きく改善している。他の「ミニ図鑑」
は「伸縮運動の観察」と「原形質流動の観察」の 2 つの実
や「説明書」に関しても当然同様に改善している。
験である。伸縮運動の観察の実験は原形質流動が生じる
基となる現象であり、粘菌の管で観察することができる。
原形質流動の観察の実験は粘菌の管内部に生じている原
形質流動を、顕微鏡を使用して観察する実験である。こ
の 2 つの実験は手間も掛からず簡単な実験なので、流動
グループの実験キットには最適な実験である。この 2 つ
の実験の撮影を行うことと同時に、
「ImageJ の実験」の
準備も行った。この実験もプロジェクト担当教授に教わ
図1
採集した粘菌
り、また各自で ImageJ についての知識を深めるため、
インターネットを利用して知識を深めた。この ImageJ
流動キットグループでは前期に、流動グループは粘菌の
実験キットを製作するに当って、まず初めにどのよう
にしたら粘菌に触れ合えるような実験キットを製作で
きるかを考えた。流動グループは「粘菌に初めて触れる
人でも理解できる」を目標とした。本プロジェクトの実
験キットを使用する人は、大半が粘菌を初めて知る人
だろうと考えたため、どのような人であっても使用す
ることのできる実験キットを製作することにした。案
として複数の実験を一つのキットにすることを提案し
た。実験を複数用意し、実験一つ一つの難度を変え、段
階を踏ませるものである。段階を踏ませることでより粘
菌と触れ合える実験キットを製作する魂胆である。だ
が、本来流動グループでは複室法という実験を導入する
予定だったが、複室法の実験が想像以上に難度が高かっ
たため、実験キットにしても実験することが難しいだ
ろうと考えた。そこで違う実験を導入することにした。
を説明する道具として、紙媒体の説明書と付属の DVD
を製作することにした。紙媒体の方が効率良く伝えられ
ると考えたことと、こちらで用意しないといけないもの
ができたためである。2 つの観察実験の撮影と ImageJ
についての知識を深めたら、流動グループは本格的に実
験キットの製作に取り掛かった。DVD に 2 名、ImageJ
の説明書に 1 名の割り当てで実験キットの製作を進めて
いった。DVD を製作する際には効果を多用しない、字
幕を入れるなどのことに注意して製作をし、ImageJ の
説明書では、「ImageJ の実験」自体手間の掛かる実験
なので、できるだけ簡潔にわかりやすくまとめることを
心がけた。また、文字が多くならないよう画像を細目に
いれるようにした。実験キットが完成すると同時に、実
験キットをフィードバックしてもらい、帰ってきた評価
は DVD、ImageJ の説明書ともに悪くない評価だった。
評価自体の数が少なかったため、改善することはほとん
ど無かった。迷路キットグループでは実験キットを製作
き、フィードバックを得たが、大きな改善点の指摘はな
かった。
図2
伸縮運動の観察
図3
迷路を解く粘菌
するにあたって、改めて迷路実験を行った。実験を行う
中で、注意すべき点や重要な点を洗い出していきまとめ
た。それを基に、始めに説明DVDの制作から始めた。
DVD制作には、実験の過程の撮影が必要であり、撮影
環境を整えるのが難しかった。粘菌は暗い場所で身体を
伸ばしていくため、ダンボールの中にシャーレに入っ
た迷路を置き、ライトを設置して撮影をした。撮影が終
わった後は、映像の編集を行った。編集には iMovie と
4 今後の課題
本プロジェクトは、来年も活動を行う予定である。そ
のため来年度のプロジェクトメンバーに、今年度の反省
点や課題を引継ぎ、今年度より充実した活動を行ってほ
しいと考えている。 そこで、中間発表会と最終発表会
のフィードバックを参考にして今後の課題について話し
合い、まとめた。それらを以下に記載する。
いうビデオ編集ソフトを使った。映像に、文字やナレー
ションを入れて、文字だけでは説明しきれない部分を補
• 最終発表会では、グループ毎のポスターセッション
足し、成功例や失敗例を収録した。また映像の編集と同
形式にしたためか、グループで作成した実験キット
時に、迷路実験キットの説明書の作成をした。迷路実験
の目的や結果が伝わりにくかった。
の手順や鉄道網実験やカーナビゲーションシステムの応
• 既存の実験ではなく、自分たちで新しく考えた実験
用などの応用実験について記載している。迷路実験キッ
を行うべきであった。これらの課題から、来年度の
トには、説明DVDと説明書の他に、迷路フィルムとO
活動で改善してもらいたい点について以下に記載
HPシートも同封している。迷路フィルムは、粘菌が通
する。
るための迷路を OHP シートを使って作ったものであ
• 実験キットを制作する際に、既存の実験ではなく、
り、キット1セットにあたり、OHP シートを迷路の経
自分たちで独自に考えた実験を組み込んでほしい。
路に切り取ったもの(迷路フィルム)を2種類を用意し
• 高校の授業カリキュラムに組み込めるような実験
た。迷路フィルムは 1 種類は経路の幅が広く、迷路自体
も単純なもの、もう1種類は経路の幅は少々狭く、迷路
がやや複雑なものを作成した。OHP シートは、キット
1セットにあたり、何も印刷をしていないシートを 1 枚
用意した。これは、ユーザーの考えた迷路をこの OHP
キットを作成してほしい。
• 実際に「販売」や「実用化」を想定して、実験キッ
トを作成してほしい。
• 成果発表会では、常に「目的」を意識して発表をし
てほしい。
シートにプリントし、迷路の経路を切り取って、実際に
粘菌に解いてもらうためである。また、迷路実験キット
の説明書で紹介している交通網実験を行う際に、関東圏
の地形に切り取ったフィルムが必要であるため、そのよ
うな場合もこの OHP シートを使うことができる。これ
らの4つを内容物としてキットを制作し、完成させた。
実際にモニターの方に迷路実験キットをつかっていただ
以上の点を来年度のプロジェクトメンバーに引継ぎ、本
プロジェクトをより良いプロジェクトにしてもらいた
い。そして将来的には、公立はこだて未来大学の「顔」
となる様なプロジェクトに成長してもらいたいと考えて
いる。
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