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ワーク・ライフ・バランスを定着させるための風土づくり
5 ワーク・ライフ・バランスを定着させるための風土づくり 両立支援制度を導入しても、社員が利用しやすい職場風土がない限り、ワーク・ライフ・バランスの取組の効 果は上がりません。そこで、制度の定着に特に重要な「職場のマネジメント改革」と「目標設定・評価制度の見 直し」を取り上げ、推進担当者、管理職、社員の皆さん、それぞれが取り組むことを紹介します。 その1 推進担当者の方へ (1)職場のマネジメント改革 ①職場環境を整え意識改革を 社員のプライベートな時間を犠牲にするこれまでのような 「働き方」は、通用しない時代になってきました。会社の都合 だけでなく、社員の都合にも配慮した職場環境を整え、老若 男女を問わず優秀な社員を確保・定着させることが求められ ています。 経営トップからの方針説明/管理職研修・ワーク ・ ライ フ ・ バランス研修の実施/出産・結婚などのライフイベ ントを踏まえたライフプラン・キャリアプラン研修/外 部講師によるセミナーなど 5 取組事例 事例 5-1 管理職のための実践的なタイムマネジメント研修 (建設コンサルタント業/ 1,000 人以上) 仕事の生産性・効率性を高めるためには、管理職にとっては業務管理だけでなく、部下の労働管理が重要 である。管理職に、効率的な仕事の進め方や職場が活性化しない理由等を見つめ直してもらうため、タイム マネジメント研修を行った。少しの発想の転換で労働時間が削減できることが明らかになり、部下のマネジ メントにいかされている。 事例 5-2 女性の部下を持つ管理職の意識改革(サービス業/ 101 人以上 300 人以下) 女性の部下の多い管理職を対象に、次世代育成支援法や会社の子育て支援の方針、育児支援制度などにつ いて研修を行っている。両立支援制度の重要性を理解し、育児との両立ができる職場づくりを管理職自らが 実践することを狙いとしている。 事例 5-3 経営トップのメッセージを毎月発信(運輸業/ 1,000 人以上) ワーク・ライフ・バランスに関する社内ポータルサイトを立ち上げている。その中に、経営トップからのメッ セージを毎月 1 回発信するコーナーを設けている。経営トップ自らが想いをつづる。更新時にはそれを知ら せるポップアップをつけた。閲覧数は飛び抜けて多く、社員の関心の高いコーナーになっている。 32 ②仕事の見直し支援を 社員の多様な働き方を実現するには、仕事の見直しによる生産性の向上が不可欠です。仕事の見直しのきっ かけづくり、ノウハウの共有などの支援で各職場の雰囲気づくりをしましょう。 業務改善研修・管理職のマネジメント研修/好取組事例の紹介/部門を越えた改善支援など 取組事例 事例 5-4 社員のアイディアを載せたポスター掲示による仕事の見直しのきっかけづくり (がん具製造業/ 301 人以上 999 人以下) 残業時間の削減など、ワーク・ライフ・バランス推進のためのポスターを社内各所に掲示している。ポスター には、 ワーク・ライフ・バランスの意義や社員が工夫しているアイディアを載せて、ノウハウの共有を図っている。 これにより、社内にワーク・ライフ・バランスが浸透し、残業時間も確実に減少してきている。 ③現場とのコミュニケーションを ワーク・ライフ・バランス推進の取組を運用する上で欠かせないのが、推進担当者と職場の管理職とのコ ミュニケーション、そして、管理職と部下とのコミュニケーションです。職場のマネジメントに関する管理 職のニーズ把握や両立支援制度利用の促進についてのサポートや、部下とのコミュニケーションを図るため のツール提供等、推進担当者の支援が求められます。 現場の課題把握/現場からの相談対応/職場内や社内横断的なグループセッションなど 取組事例 5 事例 5-5 人事担当と現場の管理職、制度利用者とのきめ細やかなコミュニケーション (生命保険業/ 101 人以上 300 人以下) 両立支援制度利用前と復職時に、人事担当が現場の管理職、制度利用者それぞれとマンツーマンで面談する など、きめ細やかなコミュニケーションをとることで、働き方の調整を行い、個々人が希望する働き方に合っ た両立支援制度の利用ができている。こうしたきめ細やかな対応をとることによって、次第に、制度やワーク・ ライフ・バランスに対する理解が社内に広がりつつある。 ④日常的に情報収集を ワーク・ライフ・バランスを推進する上で、日常的に取組の動向や先進的な取組について情報収集するこ とが必要です。有識者のセミナーに参加するなど、情報収集に努めましょう。 専門家のセミナーや講習会への参加/自治体の施策の収集/他社の取組事例の収集など 取組事例 事例 5-6 講習会を通じて最新動向を把握(建設コンサルタント業/ 1,000 人以上) 仕事と介護の両立支援に関する情報収集のため、専門家の講演会に参加した。講演会では、 「会社は介護に携 わる社員に対し、情報発信を行うとともに、介護休業期間は自らが介護に専念するのでなく、仕事と両立しな がら働き続けられるような体制づくりを整える期間であるということを伝え「会社を辞めてはいけない」とい うことを発信し続けることが大事である」という話を聞くことができ、非常に参考になった。 33 (2)目標設定・評価制度の見直し 企業戦略として職場全体にワーク・ライフ・バランスを浸透させていくためには、個々の職場目標にワーク・ ライフ・バランスの項目を入れることが大切です。また、管理職や制度利用者はもとより、周りのメンバーに理 解を得られるよう、目標・評価制度を周知することも必要です。 ①管理職の目標・評価にワーク・ライフ・バランスの視点を加える 管理職に対して、会社が、経営戦略としてワーク・ライフ・バランスに本気で取り組んでいることを示す ことが重要です。その1つの方法として、管理職の評価項目に、ワーク ・ ライフ ・ バランスに関連する項目 を入れることが効果的です。自社の課題に応じた評価項目を選択し、定量的な目標を設定し、半期や年間単 位でPDCAサイクル(「プラン→ドゥ→チェック→アクション」)を回しましょう。 ワーク ・ ライフ ・ バランス制度の利用状況/残業時間削減率/総労働時間削減率/ 年次有給休暇取得率/生産性/社員満足度 ②社員の目標・評価の納得性を高めよう 社員に「評価が下がるのではないだろうか」 「キャリア ・ ロスとなってしまうのではないだろうか」といっ た不安があると、両立支援制度の利用が進みません。そうした不安が生じないような人事評価システムをつ くり、評価の仕組みを周知しましょう。管理職など評価者の適正な運用を促すことも重要です。評価の仕組 みは、制度利用者を優遇することなく、周囲でサポートした人の理解も得られるものであることが重要です。 取組事例 事例 5-7 管理職の評価項目に組み込み 5 (化粧品等製造業/ 1,000 人以上) 部下のいる管理職の評価項目の一つに「働き方の見直し、労働生産性の向上」を追加し、成果評価の 10% を充て、経営戦略としてワーク・ライフ・バランス推進に取り組むことを管理職に明確に示し、率先した取組 を促している。 (建設コンサルタント業/ 1,000 人以上) 管理職の人事考課においては、時間外労働時間の削減、労働生産性の向上を評価項目の一つに組み込んだ。 その結果、会議において業務時間削減を組み込んだ仕事の進め方について発言が出るなど管理職の意識にも変 化がみられる。 事例 5-8 「ダイバーシティ」が人事評価に組み込まれていることを社員に周知 (生命保険業/ 1,000 人以上) 「ダイバーシティ推進に向けた取組」を全管理職の共通業務遂行課題とし、人事評価に反映する仕組みとして いる。それは全社員向けの人事制度ハンドブックにも記載し、社員への周知を図っている。 事例 5-9 社内表彰制度に「労働時間削減の取組」を導入 (建設コンサルタント業/ 1,000 人以上) 年 1 度の業績表彰に加え、労働時間削減に向けた取組を公募し、優れた 取組に対して表彰を行った。その結果、各部署で労働時間削減に取り組む 部 ×× 34 ○○賞 ようになってきている。 その 2 管理職の方へ ワーク ・ ライフ ・ バランスの制度をいかすのは、現場管理職のマネジメント力です。多様な働き方を認めると、 これまでの画一的なマネジメントでは対応できないケースが発生します。そのため、マネジメント ・ スキルのレ ベルアップが求められます。 (1)職場のマネジメント改革 ①ワーク・ライフ・バランスを推進するという意識を 職場におけるワーク・ライフ・バランスを推進するためには、管理職自身がワーク・ライフ・バランスに 対する理解を深め、効率的な仕事の進め方に対する認識を持つことが大切です。管理職の意識が変わること で、職場の意識は変わります。 社内のワーク ・ ライフ ・ バランス研修への参加/部門単位でのグループセッションの開催/外 部セミナーの受講など 取組事例 事例 5-10 上司の理解が部下の育児を後押し (精密機器等製造業:育児休業利用者/ 301 人以上 999 人以下) 上司自身、子育てに積極的に関わり、日頃から、仕事だけでなくプライベートの話をしてくれるので、男性 として当社で初めて育児休業を利用しようと思った時にも相談しやすかった。やはり上司がワーク・ライフ・ バランスに理解を示しているかどうかは部下にとって与える影響も大きい。 5 ②仕事を見直し、適切な割り振りを ワーク・ライフ・バランス推進のための取組をきっかけとして、業務内容を整理して無駄な仕事をなくす とともに、部下のスキルを把握し、その能力に応じた適切な仕事の割り振りをしましょう。自分の仕事につ いても、管理業務以外の仕事を抱え込みすぎていないかなど、見直しましょう。社員がスキルを身につけ、 多様な仕事を担えるようにすると、休業者や短時間勤務者のサポート体制として役立ちます。 業務の棚卸し/業務量と必要工数の把握/業務プロセスの見直し/仕事の平準化/ 社員のスキル診断・認定/多能工(多様な業務を担える社員)の育成など 取組事例 事例 5-11 部下にスケジュール管理の習慣を(生命保険業:管理職/ 101 人以上 300 人以下) 部下には、自分で仕事を組み立てる習慣をつけてもらうようにしている。現在、短時間勤務を活用中の社員 も替えのきかない人員なので、長い時間をかけて、自分自身で努力して仕事を組み立てることができるように 促している。上司のマネジメント力が大きく影響すると考えている。 事例 5-12 部下の能力に応じた適切な仕事の割り振りを (電気機械器具製造業:管理職/ 101 人以上 300 人以下) 休業者が出るとき、滞りなく仕事がまわるように、また、休業者も他の社員も共に安心できる職場体制を整 えるために、これまで休業者がやっていた仕事を、部下のスキルに応じて適切に割り振り、代替要員を確保し、 引継ぎをしっかりと行わせた。休業者以外の社員にとって仕事の幅が広がり、成長する良い機会となった。 35 ③業務進捗状況の「見える」化を 多様な働き方を認めつつ、業務を滞りなく遂行していくためには、管理職は業務の進捗に応じて適切なサ ポートをすること、職場内で互いにサポートしやすい体制を作ることが必要です。そのために、メンバー各 人の仕事を「見える」ようにしておくことが重要です。 定期ミーティング/工程表作成/イントラネットでのスケジュール共有/資料の共有化など 取組事例 事例 5-13 メンバー全員で業務の状況を共有(銀行:管理職/ 1,000 人以上) 部下とコミュニケーションをとる中で、部下のニーズを把握したり、仕事の適切な割り振り方を見出したり、 業務の進捗状況をチェックしたりしている。こうしたやりとりは、上司と部下の一対一で行うのではなく、オー プンな場所でするよう心掛けているので、自然と他の社員も情報を共有できている。 このほか、自分自身も上層部から得た情報などをできるだけ部下に話すようにしている。困難なタスクが発 生した時も、部下たちはその状況をしっかりと察知して、機敏に仕事の進め方の軌道修正を図ってくれて助かっ ている。 ④部下とのコミュニケーションを密に 社員が希望するワーク・ライフ・バランスは、人それぞれですし、同じ人でも、ライフステージに応じて 希望するバランスは変わっていくものです。また、短時間勤務や在宅勤務など多様な働き方を導入する場合、 職場内で「納得感」を得られるような運用も必要です。そのためには、部下の声に耳を傾けるなど、日頃か らのコミュニケーションが重要です。仕事の合間に、家庭や趣味など生活の話を少し交えるだけでも職場の 雰囲気は変わります。 5 定期ミーティングの実施/ワーク・ライフ・バランスや時間管理などについての説明/ 育児休業復帰者の仕事配分や評価に関する職場への説明/部下とのコミュニケーションに生活 の話題を入れるなど ライフステージの変化とワーク・ライフ・バランス 取組事例 事例 5-14 「お互い様」の意識を保ちながら部下の仕事と生活の両立を支援 (銀行:管理職/ 1,000 人以上) 短時間勤務をしている女性社員には、できる限り無理のない働き方ができるようにしている。急用で早目に 仕事を切り上げなければならない場合には、周りのメンバーに協力してもらっている。本当に忙しい時には、 短時間勤務制度利用中であっても、時間を延長して共に頑張ってくれるので、互いに助けられた時は、 「今度は こちらがお返しするね」という意識で仕事をするような職場の風土づくりに努めている。 36 取組事例 事例 5-15 管理職は休業者、他のメンバーの不安を軽減する役割を (電気機械器具製造業:管理職/ 101 人以上 300 人以下) 制度利用者がスムーズに育児休業に入れるよう取り組んでいる。作業の振り分け、代替要員の確保、引継ぎ などを行うとともに、 「復帰後にはもとの部署に戻すよ」との声かけなどを行っている。制度利用者だけでなく、 他のメンバーも安心して仕事を進めることができる体制を整え、不安の軽減を図っている。 事例 5-16 上司の勧めで継続就業(運輸業:介護休業利用者・男性/ 1,000 人以上) 最初は介護離職を考えたが、上司に相談したところ、 「まずは介護休業をとってみては」と勧められた。それ までは休職して職場に迷惑をかけられないという気持ちがあったが、上司の勧めにより制度を利用し離職せず 働き続けることができた。 ⑤自ら率先してワーク・ライフ・バランスの実践を 職場のメンバー各人がワーク・ライフ・バランスを実践しやすい風土を醸成するためには、管理職が率先 して両立支援制度を活用することも有効です。部下だけでなく、自分自身にとってのワーク・ライフ・バラ ンスも考え、自身の働き方も見直しましょう。管理職が制度を活用し、ワーク・ライフ・バランスを実践し ていると、部下もそれに倣いやすくなります。年次有給休暇や特別休暇などを率先して取得してみましょう。 年次有給休暇の積極的な取得/短期間の特別休暇の取得(誕生日休暇や孫誕生休暇など) 取組事例 事例 5-17 管理職が率先して年次有給休暇を取得(証券/ 1,000 人以上) 管理職自らがワーク・ライフ・バランスを実践するために、管理職が率先して年次有給休暇を取得すること 5 を勧める「年休取得キャンペーン」に取り組んだ。結果として、部下も年次有給休暇を取得しやすくなり、年 次有給休暇取得率は高まっている。 事例 5-18 自ら両立支援制度を活用して介護との両立を実践(生命保険業:管理職/ 1,000 人以上) 介護をしていることなどを「職場に言える風土」づくりに管理職が積極的に関わることが大切である。自分 も会社に影響する家庭事情などの情報は部下にオープンにしている。 また、 現在、 フレックスタイムと介護サポー ト休暇を活用して介護との両立を実践中である。職場に気軽に言える風土ができて、情報を共有できていれば、 繁忙期に誰かが突然休んでも、周囲が迷惑するという事象は防げる。 (2)目標設定・評価制度の見直し 両立支援制度利用者の評価については、社内基準を人事に確認し、部下の多様な働き方を理解した上で、業績 への貢献も踏まえながら公平な評価をすることが大切です。制度利用者や周囲のメンバーの納得が得られるよう、 評価についての説明を丁寧にすることが重要です。 また、管理職の目標にワーク ・ ライフ ・ バランスの評価指標が設定されている場合もあります。経営戦略上の 観点から、部門の目標を立て、その達成に向けて社員の動機付けと、具体的な計画作りをしましょう。 取組事例 事例 5-19 両立支援制度利用者への公平な評価を(情報サービス業/ 1,000 人以上) 優秀な人材に長く働いてもらうために、管理職から部下に対して両立支援制度の利用を促すとともに、制度 利用者の業務達成状況をきちんと管理し、業績への貢献を踏まえた公平な評価を行っている。また、管理職の 評価の中に「部下の育成」という項目があり、管理職に対する研修等において、ワーク・ライフ・バランスに 対する理解を深めており、ワーク・ライフ・バランスの観点も含めた部下の育成を行っている。 37 その 3 社員の方へ ワーク ・ ライフ ・ バランスの推進は、社員が「希望する生活を実現する」、「仕事以外の家庭や地域での役割 を果たす」 、 「長期的な視点で自己啓発に努める」ために必要なものです。社員も、職場のマネジメント改革の担 い手として、目的意識を持って、自己管理、自己啓発に取り組むことが求められます。 社員一人一人が働き方を見直し、ワーク・ライフ・バランスを推進することはすべての社員に必要なことです。 すべての社員がこのような意識を持ち、ワーク・ライフ・バランスを実践することによって、職場にワーク・ラ イフ・バランスが定着しやすくなります。また、現在制度を利用していない社員も、将来利用する立場になる可 能性があることも視野に入れて考えることが大切です。 (1)働き方の見直し ①自分自身のキャリア・ライフ・デザインを明確に 仕事以外の時間を有益に活用するためには、各人が自分のキャリアプランをしっかりと考えることが重要 です。これからは、女性だけでなく男性も、結婚・出産といったライフイベントや介護など、生涯設計をし ていく必要があります。近年、能力開発は企業ではなく個人の責任と考える企業が増えています。雇用の流 動化も進んでおり、これからは、職場の外に目を向け、自ら能力開発をする時間を確保するなど、生活を楽 しみつつも、付加価値やスキルを向上させることが大切です。 ワーク ・ ライフ ・ バランス研修への参加/部門単位でのグループセッションへの参加/ 外部セミナー(男女平等参画センターや大学のキャリア・ライフプランのセミナー等)の受講 など 5 取組事例 事例 5-20 育児休業から早期に復帰(証券:育児休業利用者・女性/ 1,000 人以上) もともと仕事と育児の両立を図るという意識を持って入社した。出産・育児に当たっては社内の制度等の情 報収集に自ら努めた。また、育児休業からも早期に復帰したいと考えており、ちょうどタイミングよく 0 歳で 保育園に入園できたため、半年で職場に復帰した。子がある程度大きくなれば仕事と育児の両立に慣れてくる と思うので、他の業務分野や資格取得にも挑戦し、スキルアップに励んでいきたいと考えている。 事例 5-21 キャリア・デザインを明確にし、長期にわたる仕事と介護の両立 (情報通信業:介護目的のフレックス等利用者・女性/ 1,000 人以上) 仕事と介護の両立を図りながらどのように成長していくかの具体的なライフ・キャリア設計を自分自身でしっ かりと行っている。介護者の負担は、体力的にも精神的にも大きいので、公的および私的サービスなどの援助 が得られるものは利用して、自分のための時間を持つことも仕事との両立を図る上では大切である。 38 ②タイム・マネジメントをしっかり 育児や介護、自身の成長や休養のための時間を創出するため、仕事の生産性を高めてメリハリをつけましょ う。そのためには、業務時間を見積もり、テキパキと効率よく仕事を行えるよう、タイム・マネジメントの スキルを身につけましょう。 タイム・マネジメント研修への参加/仕事の棚卸し/業務スケジュールの作成など 取組事例 事例 5-22 期日 2 日前に作業を終わらせる(銀行:短時間勤務利用者・女性/ 1,000 人以上) 勤務時間に制約があるため、作業完了の見通しが付きやすい仕事や作業時間をコントロールしやすい仕事を 任されている。こうした配慮を受けているので、自分に与えられた仕事は期限の 2 日前に終わらせるように心 がけている。 「明日の仕事は今日やる」という意識を持って業務に取り組んでいる。職場の同僚の理解と協力が あってこそ仕事と生活の両立が可能であり、常に感謝している。 事例 5-23 育児との両立を図る先輩を見て、自分自身の働き方も見直し (がん具製造業:社員・女性/ 301 人以上 999 人以下) 所属するチームの先輩が育児休業復帰後、短時間勤務制度を利用して仕事をしている姿を見て、「自分が 17 時半で帰宅するとしたら、どのように働いて、どのような付加価値を出せるのだろうか」と常日頃、考えて仕 事を進めるようになった。 事例 5-24 裁量労働制の理解と、時間ではなく成果を重視した働き方を実践 (がん具製造業:短時間勤務利用者・女性/ 301 人以上 999 人以下) 当社は裁量労働制を設けているので、実労働時間ではなく成果で評価される。このため、決められた時間の 中できっちりと成果を上げるという意識を持って、育児との両立を図りながら仕事を進めている。 5 ある一日のスケジュール 9時 1時 3時 6時 テキパキと仕事をこなして帰宅 39 ③上司や同僚とコミュニケーションを 早く 帰らないと… 特に自身が育児や介護といった理由で制約のある働き方を している場合、上司や同僚のサポートが不可欠です。自分で 無理をして抱え込まずに、周囲がサポートしやすいように仕 事の進捗状況の報告や仕事の見える化に努め、必要な時は助 けを求めましょう。 互いのワーク・ライフ・バランスを尊重し、周囲への感謝 の気持ちも忘れずに。 自分の担当業務のリスト ・ アップと可視化/ スケジュール(休みや終業時間の予定等も含 む)の共有/仕事の進捗状況の共有など サポートするわよ 取組事例 事例 5-25 介護をしていることも職場にオープンに (生命保険業:介護サポート休暇等利用者・管理職・女性/ 1,000 人以上) 自分の置かれている状況に合わせて、フレックスタイム制度や介護サポート休暇などを組み合わせて活用 することで、仕事と介護を両立させることができている。また、介護をしていることを職場にオープンにし ていることも、職場の理解と支援を得ながら働き続けられる重要なポイントになると考えている。 事例 5-26 自分自身も働きやすい風土づくりに貢献したい (証券:短時間勤務等利用者・女性/ 1,000 人以上) 育児休業から復帰して仕事を続ける先輩社員が身近にいたため、育児休業を取得し、復帰することに対し て抵抗がなかった。自分自身も、後に続く後輩たちのためにも女性が継続就業しやすい雰囲気づくりに役立 ちたいと思っている。 5 事例 5-27 ママ友とのコミュニケーションも助けに (生命保険業:短時間勤務利用者・女性/ 101 人以上 300 人以下) 同じ境遇で働く仲間と話すことで「がんばろう」という意識になる。社内のママ友はいつでも話せる貴重な 存在である。また、会社の両立支援の取組の一つに、短時間勤務者を対象とした役員説明会がある。これはラ ンチの時間帯に弁当を食べながら役員から情報を得たり、コミュニケーションをとる場として有効である。 事例 5-28 周囲がサポートしやすいよう情報を共有化 (不動産業:短時間勤務利用者・女性/ 101 人以上 300 人以下) 当社の仕事の進め方は個人制であるが、自分が帰宅する 15 時半以降に外部から連絡があった際にチーム のメンバーの誰でも対応ができるよう、帰宅時にメンバー全員に連絡事項や進捗を伝えるなど情報を共有し、 フォローをお願いするようにしている。 事例 5-29 職場のメンバーとの関係を大切に (サービス業:短時間・短日勤務利用者・女性/ 50 人以下) 短時間・短日勤務中であり、周囲から手助けしてもらいながら仕事を進めているが、決して甘えすぎるこ とのないようにしている。また、周囲との関係づくりが大事であり、自分から仕事や家庭の状況について積 極的にコミュニケーションをとるようにしている。周囲からのアドバイスも真摯に聞くことを心がけている。 事例 5-30 サポートを得られやすくするために早目にSOS (製造販売業:短時間勤務利用者・女性/ 101 人以上 300 人以下) 仕事と育児の両立が実現できているポイントは、職場のメンバーの理解と支援が得られていることである と思う。また、勤務時間内での解決が難しく、業務が遅延しそうな時には早めにSOSのサインを出して、 周りのサポートを得るようにしている。 40 取組事例 事例 5-31 日頃から業務の情報共有に努めておくことが大切 (運輸業:介護休業利用者・男性/ 1,000 人以上) 介護休業取得時に日頃から業務の情報共有をしていたことで引継ぎをスムーズに行えた。職場での情報共 有や仕事を属人化させないことを日頃から実践しておくのが大切であると思う。 事例 5-32 休職中に仕事をうまくまわしていくには、日頃からの人間関係が大切 (精密機器等製造業:育児休業利用者・男性/ 301 人以上 999 人以下) 会社が積極的に男性の育児休業取得を推進していたので、第 2 子が誕生した際に育児休業を 2 週間取得し た。第 1 子の時に突然の発熱などで休暇が必要なケースが度々生じたことから、年次有給休暇を残しておき たかったという考えもあり、 無給ではあるが育児休業制度の利用を選択した。2 週間という短期間であったが、 日頃から周囲とのコミュニケーションがとれていたので、休職中、問題が生じることはなく、周囲も全面的 にサポートしてくれた。やはり職場の人間関係が最も大切であると感じている。 事例 5-33 職場のサポートに感謝(運輸業:育児休業利用者・男性/ 1,000 人以上) 育休の取得にあたっては葛藤もあったが、実際に取得をしてみて本当によかったと思っている。取得を勧め てくれた上司、サポートしてくれた同僚に、仕事の成果をもって恩返ししたい。また、妻が仕事に復帰したら 最初の1年は同様のやりくりが必要になると思うが、職場の同僚にサポートしてもらいながら仕事と育児を両 立していきたい。 5 (2)目標設定・評価制度の理解 自分に与えられた目標の重要度や、評価の仕組みの意味を理解しましょう。長い目で自らのキャリアプランを 描きながら、各々が必要なタイミングに、ワーク ・ ライフ ・ バランスの制度を利用できるよう、自己管理能力を 向上させていくことも大切です。育児休業や短時間勤務等の利用で、他の人よりもキャリアが遅れたとしても、 昇進・昇格を諦めることなく、上司に相談し、一緒に自分なりのキャリアプランを立て、ステップアップしてい きましょう。 取組事例 事例 5-34 育児休業復帰後に管理職に昇進 (建設コンサルタント業:育児休業利用者・管理職・女性/ 1,000 人以上) ちゅう ちょ 復帰後、管理職への昇級試験を受けることを躊躇していた時に、上司が背中を押してくれ、昇格試験を受 験し、合格した。育児休業利用が本人のキャリアのマイナスにならないことについて会社には感謝している。 育児休業からの復帰直後は、職場のメンバーにサポートしてもらい、申し訳ないという気持ちがあったが、 今では思い切って育児休業を取って復帰して良かったと感じている。 41