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パーキンソン病細胞モデル研究 part 1 - Thermo Fisher Scientific

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パーキンソン病細胞モデル研究 part 1 - Thermo Fisher Scientific
パーキンソン病細胞モデル研究
パーキンソン病患者ドナー線維芽細胞からのiPSC樹立
およびキャラクタリゼーション
part 1
目次
5 パーキンソン病とは
5 共同研究概要
7 iPSC概説
8 さらなる変異の探索
9 iPSCの樹立
11 リプログラミング効率の算出
12 細胞遺伝学的分析
15 胚様体(Embryoid body, EB)の形成および
3胚葉マーカーの検出
16 遺伝子発現プロファイリング
17 トランスジーンの発現検出
18 TaqMan hPSC Scorecard Panel を用いた分析
19 細胞株の認証
21 まとめ
13 多能性マーカーの免疫細胞化学
14 多能性マーカーの免疫染色およびFACS分析
さらに詳しい情報については、当社ウェブサイト www.thermofisher.com/parkinsons をご覧ください。
ヒトiPSC由来ニューロンのMAP2(緑色)、TH(赤色)および Hoechst 染色(青色)染色像。
マウスiPSC由来ニューロンのβ-IIIチューブリン(緑色)およびHoechst染色(青色)染色像。
研究概要
ドーパミン系
前頭葉
線条体
パーキンソン病とは
黒質
パーキンソン病(PD)は進行性の神経変性疾患であり、60歳を超える人口
の1%、また全世界で5百万人以上が罹患しています[1]。PDは主に黒質の
ドーパミン作動性ニューロンが選択的に喪失することによって起こる病気
です。黒質ドーパミン作動性ニューロンの喪失により、まず動作障害が起こ
りますが、進行すると認知機能にも影響を及ぼし、後期には多くの場合認知
症を伴います。PDには適切な細胞モデルがなく、これがPD研究の大きなボ
トルネックになっています。疾患メカニズムおよび薬剤標的を発見するた
め、またスクリーニングのための新規モデルが緊急に必要とされています。
実現すれば、幅広い臨床的および治療的応用へ迅速につながる可能性を持っ
ています。
腹側被蓋野
共同研究概要
このたび、弊社はカリフォルニア、サニーベールのパーキンソン研究所と提
携し、同研究所で患者から採取された線維芽細胞を用いるPDモデル開発に
取り組んでいます。本書では、モデルシステム創生の第一段階、すなわち人
工多能性幹細胞(iPSC)の樹立についてご紹介します。この第一段階では、
iPSCの樹立および評価を行い、リプログラミングが成功していることを確
い、ゲノム中の特定の変異がもたらす影響について調べていきます。そして
認するために細胞学的および遺伝学的分析ツールを用いました。今回ご紹介
当社の分析ツールを用い、出来上がった細胞においてPDに関連する表現型
する研究は、今後公表する一連の研究の第一報です。今後は、iPSCをドー
を観察する予定です。本研究を通じ、PDの原因となるプロセスを改善する
パミン作動性ニューロンまたはその他関連する細胞へ分化させてPDに関わ
薬物を同定するための系、またはPDの発症に影響を及ぼす要因を解明する
る関連細胞型を調べ、またTALなどの手法を用いて細胞株のゲノム編集を行
ための系を開発する方法について示したいと思います。
5
iPSC概説
患者由来のiPSCは、生存する患者から他の手法では入手できない細胞集
樹立したiPSCについて、研究を先へ進める前に細胞学的および遺伝学的分
団を得ることができ、細胞療法およびin vitro疾患モデル樹立の両分野にお
析ツールを用いた評価を行ってリプログラミングの成功を確認しました。
いて大きな可能性を持っています。この可能性を現実のものにするために
Reprogramming Kitを用いました。このキットは複製欠損性のセンダイウイ
ルス(SeV)ベクター[2,3]を使用しており、インテグレーションを起こ
さず(RNAウイルス)、出来上がったiPSCには、複数箇所への挿入または発
iPSCがトランスジーンフリーで正常な核型を示し、既知の多能性マーカー
を発現していること、
また3系統の胚葉マーカーを発現する胚様体
(Embryoid
body, EB)が形成可能であることから、細胞が分化する能力を持つことが
明らかになりました。これらのiPSCは、親細胞である線維芽細胞とは明確
に異なる遺伝子発現プロファイルを持ち、コントロールiPSCおよびH9胚性
幹細胞(ESC)と高度に一致する発現パターンを示しました。品質管理と
がん性といったリスクがないためです。本キットは、正常ヒト包皮線維芽細
して、各細胞株について細胞株の同一性認証を行うため、また以降の応用研
胞、末梢血単核細胞、およびCD34陽性細胞をリプログラムしてインテグレー
究において細胞株を認証するツールとするために、線維芽細胞およびiPSC
ション・フリーなiPSCを高効率で樹立することが示されており、最近では、
の段階で「遺伝的フィンガープリント」を確認しました。
は、ドナーの体細胞を効率よくiPSCにリプログラムすることが重要です。
我々はドナー細胞のリプログラミングにInvitrogen™ CytoTune -iPS Sendai
™
ゼノフリー条件下で臨床用の網膜前駆細胞へ分化させるためのiPSC作成に
も使用されました[4]。
今回ご紹介する研究では、3名のPD患者ドナー(PD-1、PD-2、およびPD-
3)、1名の多系統萎縮症(MSA)患者ドナー、2名の年齢適合健常対照ドナー
(Ctrl-1およびCtrl-2)より採取した皮膚生検の線維芽細胞を高効率でiPSCに
リプログラムしました。MSAは最初の症状が現れてからの疾患進行がより
早く、PDの重症型と記述されてきました[5]。PD患者ドナーの線維芽細胞
はすでにジェノタイピングが行われており、LRRK2、GBA、およびPARK2
に変異を持つことが知られています。一方、MSAの細胞株は散発性症例由
来であり、PDに関連することが知られている遺伝子内に変異は見つかって
いません。
6種類の細胞株が樹立されました:
• 3名のPDドナー由来(PD-1、PD-2、およびPD-3)
• 1名の多系統萎縮症(MSA)ドナー由来
• 2名の年齢適合健常対照ドナー由来(Ctrl-1および
Ctrl-2)
7
さらなる変異の探索
PDまたはその他の遺伝性疾患に関わる可能性のある変異を調査するため、Ion
™
AmpliSeq™ Inherited Disease Panelおよび Ion PGM シーケンサにより、
各線維芽細胞株のゲノムDNAを分析しました。本パネルはNCBIのClinVar
データベース[6]に基づき、700種類を超える遺伝性疾患で変異している
325遺伝子のエクソンを同時に多数ターゲットにする製品で、最も頻度の高
製品ハイライト
微量DNAから、変異解析、CNV、融合遺伝子検出まで
Ion PGM シーケンサ
い遺伝性の難聴、盲目、心臓疾患、パーキンソン病、免疫不全、様々な運動
失調、貧血、治療可能なメタボリック・シンドロームの一部に関わる遺伝子
を含んでいます。パネル中のPDに関連した遺伝子には LRRK2、FBX07、
PINK1、MAPT、SNCA、およびTAF1が含まれています。
まず、ターゲット濃縮したライブラリーをドナー線維芽細胞から単離したゲ
ノムDNAより作成し、Ion OneTouch™ Systemにてテンプレート調製を行い、
Ion PGM で シ ー ケ ン ス し ま し た。 そ の 後、Torrent Server上 のTorrent
Suite™ Softwareで自動化解析を行いました。今回 Ion AmpliSeq™ Inherited
Disease Panelを使用した結果、これまでに検出されているLRRK2やGBAの
変異が、変異を持つと予測していた細胞株で確認され、MSA細胞株を含む
™
その他の細胞株ではこれまでに知られていない変異は見られませんでした。
MSA細胞株はより幅広いPD関連遺伝子パネルによるジェノタイピンクをす
でに行っていますが、PDに関連する変異は見つかっていません。
Ion PGM シーケンサを用い、リプログラミングを行う前のドナー線維
芽細胞においてさらなる変異の調査を行いました。その結果、変異が
あると予測していた細胞株において、既知のLRRK2やGBAの変異が
見られましたが、それ以外の変異は認められませんでした。
8
iPSC樹立
3名 のPD患 者 ド ナ ー、1名 のMSA患 者 ド ナ ー、
2名の年齢適合健常対照ドナーの皮膚生検から
得 た 線 維 芽 細 胞 を 、 C y t o Tu n e - i P S S e n d a i
Reprogramming Kitを用いiPSCにリプログラム
しました。ワークフローの概要を図1に示します。
線維芽細胞を通常の増殖培地中に播種した後、
キットに含まれる4種類のリプログラミングベク
Replacement(KSR)、10mM 非必須アミノ酸、
™
™
2mM Gibco GlutaMAX -1、 お よ び 10ng/mL
bFGF)に交換し、大きな核、明瞭な境界をもつ
密な細胞塊からなるiPSCコロニーの形成をモニ
培養
エンジニアリング
分化
キャラクタリゼーション
ターしました。リプログラミング中の様々なス
テージにある細胞の代表的な位相差顕微鏡像を図
2に示します。
タ ー、hOct3/4、hSox2、hKlf4お よ びhc-Mycで
一斉に形質導入しました。形質導入の7日後、細
胞を回収し、MEF培養ディッシュに播種しまし
た。 培 養 液 をiPSC用 培 地(Gibco KnockOut
™
™
DMEM/F-12、20% Gibco KnockOut Serum
™
™
線維芽細胞の培養
Day 1 形質導入
Day 7 MEF上に播種
Day 20~26 1. 接着因子でコーティングされ
た 6 ウェルプレートに、 1 ウェ
ルあたり1.25×105個の細胞を
1. CytoTune リプログラミング
1. 回収を行う前に細胞を撮影し
1. コロニーが出現しているか毎
2. TrypLE Selectを用い、室温で
2. Day 20から、コロニーのピッ
クアップを開始し、12 ウェル
のMEFプレートに移しまし
播種しました。
2. 37°C、5% CO2インキュベー
ター中で2日間細胞を培養しま
した。正確な MOI を求めるた
めの細胞数コントロールとし
て、および核型分析と細胞株
ID のため、別途細胞を培養し
ました。
3. 残る細胞はRNA抽出のため
Invitrogen™ RNAlater 中で保存
しました。
キットのユーザーガイドにあ
るプロトコールに従いました。
2. MOIを正確に算出するため、
余分に播種した細胞を回収し
ました。
ました。
細胞を回収しました。
3. 様々な播種密度で10cm MEF
ディッシュ上に細胞を播種しま
した。
3. MOI=3でCytoTuneウイルス
を添加しました
4. 形質導入前、および培養液交
換後 1 日おきに細胞を撮影し
ました。
4. Day 8に培養液をiPSC培地に変
更し、その後毎日、新しい
iPSC培地へ交換しました。
5. 残る細胞はRNA抽出のため
RNAlater中で保存しました。
コロニーのピックアップ
日プレートを確認しました。
た。
3. コロニーのピックアップは、
形態、生細胞染色のどちらか
または両方に基づいて行いま
した。各細胞株から平均で 20
個のコロニーをピックアップし
ました。
コロニーの増殖
iPSCのキャラク
タリゼーション
1. 各細胞株につき 6 クローンを
6 ウェル MEF プレートで増殖
1. 核型分析
2. 6クローン中3クローンをさら
3. SSEA4、Oct4、Tra-1-60お
よびTra-1-81の免疫細胞化学
させ、凍結保存しました。
に増殖させ、凍結保存および
キャラクタリゼーションに使
用しました。
2. 細胞ID
4. NanogおよびSSEA4のFACS分析
5. 多能性遺伝子発現パネル
6. 胚様体形成および3胚葉マーカーの染色
7. Applied Biosystems™ TaqMan™
によるセンダイウイルス検出
を行い、細胞がトランスジー
ンフリーであることを確認
図1. iPSC樹立およびキャラクタリゼーションのワークフロー
9
A
B
C
D
E
F
G
H
図2. PD-3ドナー( A∼D)またはCtrl-1ドナー(E∼H)線維芽細胞からのiPSC 樹立 iPSCの樹立はCytoTune-iPS Sendai Reprogramming Kitのユー
ザーガイドに従って行いました。接着因子でコーティングされた6ウェルプレート上で、20% FBSを含むDMEM中にて線維芽細胞を2日間培養しました( A 、
E)。CytoTune-iPS Sendai Reprogramming Kitを用い、MOI=3にて一晩細胞に形質導入を行いました。形質導入7日後(B、F)の細胞を回収してCountess
5
Automated Cell Counterで細胞数を計測し、1ディッシュあたり0.5、1、2、または3×10 個の細胞を10cmのMEF培養ディッシュに播種しました。20日目から26
日目の間にコロニーをピックアップしました。ピックアップ前の代表的なコロニーについて、22日目のものをC、26日目のものをGに示します。ピックアップした
コロニーは、12ウェルのMEF培養プレートに移しました。各コロニーをさらに増殖させ(D、H)、凍結保存し、またキャラクタリゼーションを行いました。
製品ハイライト
毎日の観察を素早く、便利に、簡単に
EVOS XL Imaging System
リプログラミング中の細胞はInvitrogen™ EVOS™ XL Imaging Systemを用いて観察およ
び撮影を行いました。EVOS XL Imaging Systemはデジタルカメラ、LCDモニター、USB
デバイスストレージを備えた透過型顕微鏡です。線維芽細胞にCytoTuneの試薬を添加し
た20∼26日後にiPSCのコロニーをピックアップし、新しいディッシュに継代しました。
10
リプログラミング効率の算出
リ プ ロ グ ラ ミ ン グ27日 目 にMolecular Probes Alexa Fluor 647標 識 抗
た数とは比例しない、ということが分かりました。今回のように患者由来の
SSEA4抗体で生細胞染色を行いました。この抗体は一般的な多能性幹細胞
細胞株間でリプログラミング効率にばらつきが見られた点、またその他の研
マーカーを検出するもので、リプログラミング効率の決定に使用されました
究成果から、ピックアップするのに十分な数のシングルコロニーを確実に得
(表1)。リプログラミング効率は、CytoTune-iPS Sendai Reprogramming
るためには、7日目に異なる播種密度でMEFディッシュに細胞を播種するこ
™
™
Kitによる形質導入の7日後に、SSEA4陽性コロニー数を同じ10cmディッ
シュに播種した細胞数で割って求めました。その結果、(1)リプログラミ
ング効率は細胞株によって異なり0.01%弱から約0.3%まで幅がある、(2)
年齢の低いドナーの細胞(PD-1)は年齢の高いドナーの細胞に比べて、よ
り低い細胞播種密度でより多くのコロニーを形成する、(3)今回のリプロ
グラミング効率は、形質導入した線維芽細胞を1ディッシュあたりに播種し
とを強く推奨します。各細胞株のコロニーを増殖させ、さらなるキャラクタ
リゼーションを行いました。
表1. リプログラミング効率
Day 7 の播種密度、10 cm MEFディッシュに播種した細胞数
細胞50,000個
細胞株
年齢
性別
PD-1
19
F
細胞100,000個
陽性コロニー
SSEA4
リプログ
ラミング効率
陽性コロニー
SSEA4
リプログ
ラミング効率
55
0.110%
132
0.132%
細胞200,000個
SSEA4
陽性コロニー
583
細胞300,000個
リプログ
ラミング効率
陽性コロニー
SSEA4
リプログ
ラミング効率
0.292%
658
0.219%
Ctrl-1
25
F
35
0.070%
81
0.081%
97
0.049%
161
0.054%
Ctrl-2
69
F
22
0.044%
18
0.018%
63
0.032%
75
0.025%
PD-2
74
M
55
0.110%
63
0.063%
193
0.097%
357
0.119%
MSA
62
F
3
0.006%
20
0.020%
40
0.020%
80
0.027%
PD-3
61
M
3
0.006%
7
0.007%
17
0.009%
24
0.008%
11
細胞遺伝学的分析
時間が経過すると、iPSCにおける染色体突然変
細胞株のクローンは全て正常な核型を示し、染色
異が細胞の健康および潜在的な能力に害をもたら
体異常がないことが確認されました。代表的な結
す可能性があります。引き続きiPSCに染色体異
果を図3に示します。
培養
エンジニアリング
分化
キャラクタリゼーション
常がないことを確認するには、染色体の安定性を
モニタリングすることが重要です。各iPSC株に
ついて、増殖させたクローンからGバンドを表出
した分裂中期細胞20個について細胞遺伝学的な
分析を行いました。その結果、分析した6種類の
A
B
C
図3. PD-2(A)およびPD-3(B)ドナーまたは対照Ctrl-2(C)ドナー由来iPSCの細胞遺伝学的分析 iPSCクローン(パッセージ14(A)、パッセー
ジ11(B)、およびパッセージ12(C))、は6ウェルMEFプレート上で、KnockOut Serum Replacement(KSR)を添加したiPSC培地にて4日間培養し
ました。核型分析のために細胞を回収しました。分析を行ったクローンは全て正常な核型を示しました。Gバンドレベルの解像度では、クローンの異常
は検出されませんでした。
12
多能性マーカーの免疫細胞化学
iPSC樹 立 後、 少 な く と も10回 の 継 代 を 経 た 細 胞 に お け る 多 能 性 マ ー
™
カ ー の 発 現 を 評 価 す る た め、DMEM/F-12で1:100に 希 釈 し たGibco
™
Geltrex LDEV-Free hESC-Qualified Reduced Growth Factor Basement
Membrane Matrixで予めコーティングしておいた8ウェルのチャンバースラ
イドにiPSCを継代し増殖させました。増殖したクローンにおいて、既知の
A
B
C
D
多能性マーカーの発現を、各抗体の使用説明書に従って免疫細胞化学的に検
査しました。全てのクローンにおいて一般的な多能性表面マーカーである
SSEA4、Tra-1-81、およびTra-1-60、そして転写因子Oct4が陽性に染色され、
™
™
™
多能性マーカーの発現が確認されました。Invitrogen EVOS FLoid Cell
Imaging Stationで撮影した代表的な画像を図4に示します。
図 4. PD-3( Aおよび B)またはMSAドナー(Cおよび D)由来の iPSCにお
いて免疫 細胞化 学的に示された多能性マーカーの発 現 iPSC(パッセー
ジ11、Aおよび B;パッセージ13、Cおよび D)はGeltrexでコーティングしたチ
ャンバースライドにて、KnockOut Serum Replacement(KSR)を添加した
iPSC 培地中で 4 日間培養しました。細胞を4% パラホルムアルデヒドで固
定、0.2% Triton X-100で透過処理し、1:400希釈にてOct4(赤色)とTra-1-81
(緑色)
( A 、C)またはSSEA4(赤色)とTra-1-60(緑色)
(B 、D)の2 重染色
を行いました。画像の撮影はEVOS FLoid Cell Imaging Stationで行いまし
た。Hoechst 33342のDNA 染色は青色を呈しています。
製品ハイライト
スピーディーに蛍光3色イメージング
EVOS FLoid Cell Imaging Station
多能性マーカーを発現しているiPSCの蛍光像をEVOS FLoid Cell Imaging Stationで撮影しました。3色のカラーチャンネルおよび位相差によ
り、多重染色の可視化および画像の結合を容易に行えます。iPSCはOct4、Tra-1-81、SSEA4、および Tra-1-60を発現しており、多能性が確認さ
れました。
13
多能性マーカーの免疫染色およびFACS分析
多能性細胞の割合を調べるため、MEF上で培養
A
しているiPSCをリンスしてディッシュから剥が
C
D
Isotype controls
Nanog/SSEA4
Nanog/SSEA4
™
を用いてシングルセルの懸濁液を調製しました。
FACS分析を行うため、細胞を抗Nanog抗体およ
び抗SSEA4抗体、ならびにアイソタイプ・コン
トロール抗体コンジュゲートとインキュベートし
ました。NanogおよびSSEA4は一般的な多能性
マーカーであり、全クローンにおいてNanogの陽
性率は87%超、SSEA4の陽性率はほぼ100%で
した。代表的なFACSデータを図5に示します。
10
10
5
10
5
104
103
102
6
104
103
102
103
104
105
SSEA4 Isotype Controls
106
102
102
103
104
SSEA4
105
106
10
6
10
10
5
105
6
Nanog
10
6
Nanog Isotype Control
Attune NxT Acoustic
™
Focusing Cytometer で 使 用 す る た め、Gibco
™
™
StemPro Accutase Cell Dissociation Reagent
Nanog
™
Nanog Isotype Control
し、Invitrogen
B
Isotype controls
104
103
102
104
103
102
103
104
105
106
102
102
103
SSEA4 Isotype Controls
104
105
106
SSEA4
図5. 免疫染色およびFACS分析により、PD-1ドナー(AおよびB)またはCtrl-1(CおよびD)由来のiPSC
で多能性マーカーの発現を確認 iPSC(パッセージ11、AおよびB;パッセージ12、CおよびD)は、MEF上に
て、KSRを添加したiPSC培地中で4日間培養しました。細胞を回収、固定、透過処理し、アイソタイプ・コント
ロール抗体2種の共染色( AおよびC)、および抗Nanog抗体と抗 SSEA4 抗体の共染色(Bおよび D)を行い
ました。FACS分析はAttune NxT Acoustic Focusing Cytometerを用いて行いました。iPSCは、87%超が
Nanog陽性、またほぼ100%がSSEA4陽性でした。
製品ハイライト
自由に使いこなせるフローサイトメーター。最大4 本レーザー搭載、14 色検出可能
Attune NxT Acoustic Focusing Cytometer
Attune NxT Acoustic Focusing Cytometerを用い、iPSC集団中における多能性幹細胞の割合を評価しまし
た。流体力学的なフォーカシングに比べ、超音波によるフォーカシングではサンプルレートを10倍超に高められ、
本研究ではAttuneサイトメーターを使用することで、少ないスタート材料から分析を行えました。iPSCにおいて
多能性マーカーNanogおよび SSEA4の評価を行い、87%超の細胞が Nanog 陽性であり、ほぼ100%の細胞が
SSEA4陽性であると示されました。
14
胚様体
(Embryoid body, EB)
の形成および
3胚葉マーカーの検出
iPSCは多能性細胞として機能しなければならな
すなわち内胚葉、中胚葉、外胚葉の細胞型へと増
いのと同時に、体内のあらゆる細胞型に分化する
殖 し ま す。14日 ま た は20日 後 にEBをGeltrexで
能力も示さなければなりません。in vitroにおいて
コーティングされたチャンバースライドにまき、
iPSCが3胚葉全ての細胞型に分化可能なことを示
7日後に3胚葉の各マーカーで染色しました。αすため、MEFディッシュ上で維持していた増殖
フェトプロテイン(内胚葉)、β-IIIチューブリン
ク ロ ー ン を、 コ ラ ゲ ナ ー ゼIVを 用 い て 回 収 し、 (外胚葉)、および平滑筋アクチン(中胚葉)のマー
EB 培 地(bFGF を 含 ま な い KSR 添 加 DMEM/
カーが発現していることから、iPSCの3胚葉に分
F-12、bFGFは細胞を未分化な状態に保つ目的で
化する能力が示されました。分析したクローンは
使用されるため)中にて浮遊状態で培養しました。 全て、3胚葉の細胞型への分化能がありました。
EB培 地 はiPSC培 地 と 同 じ 成 分 を 含 み ま す が、 代表的な画像を図6に示します。今回、培養期間
bFGFは含んでいません。bFGFは細胞を未分化
を変化させることによって、細胞株間で、特定の
な状態に保つ目的で使用されるためです。EB培
系統へ分化する程度を変えられることが分かりま
地中で浮遊状態にある細胞はEBを形成し始めま
した。異なる疾患の細胞株を使用する場合、3胚
す。EBは球状の構造をしており、3系統の胚葉、 葉全てに分化させるためには、EBの浮遊培養期
A
B
C
D
E
F
培養
エンジニアリング
分化
キャラクタリゼーション
間、浮遊培養後の接着培養期間、またはその両方
の最適化を行うことを強く推奨します。
図 6. iPSCは、分化可能で3胚葉のマーカーを発現する胚葉体を形成
PD-2ドナー(A、B、C)またはCtrl-2(D、E、F)由来のiPSCをEB培地中
で14日から20日間浮遊培養しました。続いて細胞をGeltrexでコーティン
グされたチャンバースライドにて7日間培養しました。細胞を固定、透過
処理し、α-フェトプロテイン( AおよびD、緑色)、β-IIIチューブリン(Bお
よび E、緑色)および平滑筋アクチン(Cおよび F、緑色)の染色を行いま
した。Hoechst 33342によるDNA 染色は青色を呈しています。画像の
撮影はEVOS FLoid Cell Imaging Stationで行いました。
15
遺伝子発現プロファイリング
単離したiPSC クローンがより幅広いパネルの多
す。遺伝子プロファイリングの結果から、親株の
能性遺伝子を発現していることを示すため、6種
線 維 芽 細 胞 に 比 べiPSCク ロ ー ン で はOCT4、
類全ての線維芽細胞株およびそれらからリプログ
NANOG、NODAL、SOX2、TERT、DNMT3B、
およびREX1といった多能性遺伝子の発現が上昇
している一方、線維芽細胞特異的なCD44等の遺
伝子はiPSCでは発現が低下していました(図7A)
。
階層的クラスター分析の結果、iPSCは親細胞であ
ラミングされたiPSCよりRNAを抽出しました。
cDNA を 合 成 し た 後、Applied Biosystems
™
QuantStudio 12K FlexリアルタイムPCRシステム
™
™
およびApplied Biosystems TaqMan OpenArray
Human Stem Cell Panelを用いて遺伝子発現レベ
る線維芽細胞と明瞭に区別され、本研究で樹立し
ルを測定しました。同パネルには多能性マーカー
たiPSCは、BJ線維芽細胞および臍帯血CD34陽性
として確立されている明確な609遺伝子に加え、
細胞から樹立されたiPSC、およびH9 ESCに似た
22の内在性コントロール遺伝子が含まれていま
発現パターンを持つことが示されました(図7B)
。
A
B
Fold Change
(iPSCs vs Fibroblasts)
™
22
21
20
19
18
17
16
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
OCT4*
NANOG NODAL*
PD-1
Ctrl-2
SOX2*
TERT*
Ctrl-1
LIN28* DNMT3B REX1*
PD-2
MSA
CD44
PD-3
培養
エンジニアリング
分化
キャラクタリゼーション
PD-1 Fibro
Ctrl-1 Fibro
PD-2 Fibro
MSA Fibro
PD-3 Fibro
Ctrl-2 Fibro
BJ Fibro
BJ Fibro-2
PD-1 iPSC
Ctrl-2 iPSC
Ctrl-1 iPSC
PD-2 iPSC
MSA iPSC
PD-3 iPSC
BJ iPSC
Episomal
iPSC
H9 iPSC
*線維芽細胞では発現が検出されませんでした。比較にはCt値36を使用しました。
図 7. 遺伝子発現プロファイルにより親細胞である線維芽細胞とiPSC は明瞭に区別 iPSC を KSR 添加 iPSC 培地にてMEF上で4日間培養した後、TrypLE 酵素を用いて細胞を回収
し、RNAlater溶液中で保存しました。RNAqueous-4PCR Kitを用いてRNAを抽出し、Invitrogen™ SuperScript™ VILO™ Master Mixを使用してcDNAを合成しました。QuantStudio 12K Flex
リアルタイムPCRシステムおよび TaqMan OpenArray Human Stem Cell Panelを用いて遺伝子発現レベルを定量しました。多能性マーカーとしてよく知られている遺伝子の一部について、
親細胞である線維芽細胞に比較した時の発現レベルをAに示します。iPS 細胞およびその親細胞である線維芽細胞のヒートマップ(B)は、他の線維芽細胞や幹細胞と同様、はっきりと異なる
発現パターンを示しました。BJ iPSC:CytoTune-iPS Sendai Reprogramming Kitを用い、BJ線維芽細胞から樹立したiPSC。エピソームiPSC:臍帯血CD34陽性前駆細胞から、エピソーマル
に発現する7因子により樹立したGibco Episomal hiPSC Line。
16
トランスジーンの発現検出
CytoTune-iPS Sendai Reprogramming Kitを使用した場合、ウイルスのト
ランスジーンが存在しないことを確認するため、6種類全てのドナーサンプ
Sendai Detection Kitによるアッセイでは、内因性の因子は検出されません
でした。予想通り、形質導入7日目に回収した細胞では高レベルでトランス
ジーンが発現していた一方、線維芽細胞およびiPSCではこれらのトランス
ジーンは発現していませんでした(図8)。ウイルスクリアランスのタイミ
ルから、3回の異なるタイミングでRNAを単離しました。RNAは、最初の線
ングは細胞株によって異なり、また同じ細胞株でもクローンによって異なっ
維芽細胞、CytoTuneによる形質導入から7日後の細胞、および単離した
ていましたが、これは細胞の増殖率が異なるためと考えられます。ウイルス
iPSCク ロ ー ン か ら 採 取 し ま し た。Applied Biosystems TaqMan iPSC
Sendai Detection Kitを用い、細胞に導入した外来性転写因子(Oct3/4、
Sox2、Klf4、およびc-Myc)の発現の有無およびレベル、ならびにセンダ
™
™
イウイルスRNAの存在を調べました。Applied Biosystems TaqMan iPSC
クリアランスは、早いものではあるクローンにおいてパッセージ10(p10)
ランスジーンはリプログラミング時に体細胞へ導入されますが、やがてリプ
ログラムされた細胞から消失してウイルスフリーのiPSCが得られます。ト
™
™
で、遅いものでは別のクローンにおいてパッセージ15(p15)で見られまし
た(図9)。4種類の外来性因子の発現レベルを測定した結果、ほとんどの細
胞において最後に消失する因子はc-Mycでした。
Ctrl-1における各転写因子の希釈
10,000,000
線維芽細胞
形質導入後7日目
パッセージ13のiPSC
パッセージ15のiPSC
1,000,000
相対的発現
100,000
10,000
10
p10
1
0.1
OCT SeV
SOX SeV
KLF SeV
Myc SeV
図 8. qPCRによって検出されたセンダイウイルスリプログラミング因子全4 種のクリアラ
ンス iPSCをKSR 添加 iPSC 培地にてMEF上で4日間培養しました。TrypLE 酵素を用いて
細胞を回収し、RNAlater 溶液中で保存した後、RNAqueous-4PCR Kitを用いてRNAを抽出
し、SuperScript VILO Master Mixを使用してcDNAを合成しました。TaqMan iPSC Sendai
Detection KitおよびQuantStudio 12K FlexリアルタイムPCRシステムを用いて発現レベル
を測定し、Ctrl-1線維芽細胞、形質導入後7日目のCtrl-1細胞、パッセージ13の Ctrl-1 iPSC ク
ローン10、およびパッセージ15のCtrl-1 iPSC クローン10においてCt値を評価し外来性の転
写因子遺伝子(OCT3/4、SOX2、KLF4、およびc-MYC)およびセンダイウイルス(図示せず)
の相対的発現量を求めました。予想通り、形質導入後7日目では外来性の転写因子が高いレベ
ルで発現していました。特定のiPSCクローンが確立された後は発現レベルが急激に低下し、
パッセージ15で線維芽細胞と同レベル(センダイウイルスなし)になりました。
p11
p12
p13
p14
p15
PD-1 Clone S1
クリア
PD-1 Clone 10
X
–
–
–
–
–
Ctrl-1
–
–
–
X
–
Clear
PD-2
–
Clear
PD-3
X
Clear
MSA
–
Clear
Ctrl-2
–
–
Clear
図 9. 外 来 性リプログラミング 因 子およびセンダイウイルスのクリアランス。
TaqMan iPSC Sendai Detection Kitを用い、本研究で樹立した6種類のiPSC全てに
ついて、センダイウイルスおよび外来性遺伝子OCT3/4、SOX2、KLF4、およびc-MYC
の検出を行いました。クリア:センダイウイルスおよび外来性遺伝子は検出されず。X:
センダイウイルス検出、クリアされていない。–:未検査。
17
TaqMan hPSC Scorecard Panelを用いた分析
iPSCの 多 能 性 お よ びEBの 胚 葉 分 化 バ イ ア ス を 評 価 す る た め、Applied
™
™
™
Biosystems TaqMan hPSC Scorecard Panelを用いてサンプルの分析を
行いました。本パネルは、
qPCRアッセイと使いやすいデータ解析ソフトウェ
アを介し、多能性の評価および胚葉分化のバイアスを検出することができま
す。解析ソフトウェアは全てのサンプルと内部標準との比較を行います。
cDNAを合成した後、サンプルをQuantStudio 12K FlexリアルタイムPCR
™
™
シ ス テ ム で ラ ン し、Applied Biosystems hPSC Scorecard Analysis
Softwareを用いて解析しました。ドナー細胞株6種類の細胞は全て多能性有
りと判定されました(データ未掲載)。継代後期(>p25)のMSAおよび
Ctrl-2由来iPSCサンプルは多能性有りと判定され、対応するEBは3胚葉全て
MSA
+
Pluri
MSA EBs
Ctrl2
Endo
Pluri
+++
Ecto
Meso
+
Ctrl2 EBs
+++
Ecto
Endo
多能性マーカーを発現。実 多目的な多能性細胞株とし 多能性マーカーを発現。実 多目的な多能性細胞株とし
用性を確かめるため分 化 て適格。
用性を確かめるため分 化 て適格。
した細胞をテストしてくだ
した細胞をテストしてくだ
さい。
さい。
図10. TaqMan hPSC Scorecard™ Panel による解析後の多能性および胚葉
マーカーの遺伝子発現結果まとめ
に分化する能力を示しており、両細胞株とも多目的な多能性細胞株として適
していることが示唆されました。サンプルの評価についてはソフトウェアに
まとめられています(図10)。
製品ハイライト
リアルタイムPCRの最高峰
QuantStudio 12K FlexリアルタイムPCRシステム
QuantStudio 12K FlexリアルタイムPCRシステムは、3回の異なるキャラクタリゼーション実験に
おいて、iPSCの遺伝子発現解析に用いられました。
• 第1の実験は、TaqMan OpenArray Human Stem
Cell Panelの609遺伝子による、iPSCの幅広い遺伝子
発現解析です。全てのiPSC 細胞株で多能性遺伝子の
発現が上昇しており、解析結果をヒートマップにプロッ
トすると線維芽細胞とiPSCを明確に区別できること
が示されました。
• 第2の実験は、リプログラミング後のiPSCに残存する
センダイウイルストランスジーンの検出です。TaqMan
18
Meso
iPSC Sendai Detection Kitを使用し、細胞に導入した
外来性の転写因子遺伝子(OCT3/4、SOX2、KLF4、
およびc-MYC)の発現の有無およびレベル、ならびに
センダイウイルスRNAの検出を行いました。クリアラ
ンスは早いものではあるクローンにおいてパッセージ
10で、遅いものでは別のクローンにおいてパッセージ
15で見られました。
• 第3の実験は、TaqMan hPSC Scorecard Panelを用
いた、多能性評価およびEBにおける胚葉分化バイアス
検出のための遺伝子発現解析です。MSAおよびCtrl-2
サンプルに由来するパッセージ25のiPSCは多能性有
りと判定され、またそれに対応するEBは3 胚葉全てに
分化可能であり、両細胞株とも多目的な多能性細胞株
として適格であると示唆されました。
細胞株の検証
iPSCクローンを親細胞である線維芽細胞と比較した際の同一性を検証する
ため、パーキンソン病患者ドナー由来の線維芽細胞およびリプログラムした
iPSCよりゲノムDNAを単離しました。Applied Biosystems AuthentiFiler
PCR Amplification Kitを使用し、iPSCが親細胞である線維芽細胞と同じ縦
列型反復配列(Short Tandem Repeat, STR)、あるいは「遺伝学フィンガー
プリント」を持つことを確かめました。AuthentiFiler PCR Amplification Kit
は、縦列型反復配列のマルチプレックスPCRアッセイで、1回のPCR増幅で
9か所のユニークなSTRおよび性別判定マーカーであるアメロゲニンを増幅
します。ゲノムDNAサンプルとAuthentiFilerマスターミックスおよびプライ
マーセットを用い、キットで推奨されるサイクル条件に従ってApplied
™
™
Biosystems Veriti 96-WellサーマルサイクラーにてPCRを行いました。
™
PCR産 物 のDNAシ ー ケ ン シ ン グ は、Applied Biosystems 3130xlジ ェ ネ
™
™
ティックアナライザを用いキャピラリ電気泳動を行いました。泳動後、
Applied Biosystems GeneMapper ID-X Softwareによりジェノタイピン
グおよびサンプルプロファイルの比較を行いました。MSAおよび年齢適合
対照(Ctrl-2)細胞株の代表的な結果を表2に示します。比較分析の結果、
スタート材料の線維芽細胞とそれに対応するiPSCはSTR遺伝子型が完全に
™
™
表2. 細胞株の検証
MSAドナー
年齢適合対照
領域
染色体
D10S1248
D1S1656
AMEL*
D2S1338
D22S1045
D19S433
TH01
D2S441
D6S1043
D12S391
10q26.3
13, 16
13, 16
14, 14
14, 14
1q42.2
16, 17.3
16, 17.3
15, 16.3
15, 16.3
線維芽細胞
iPSC 線維芽細胞 iPSC
X
X, X
X, X
X, X
X, X
2q35
17, 19
17, 19
22, 26
22, 26
22q12.3
16, 16
16, 16
16, 16
16, 16
19q12
14, 14
14, 14
13, 14
13, 14
11p15.5
6, 9.3
6, 9.3
9, 9.3
9, 9.3
2p14
8, 11
8, 11
11, 11
11, 11
6q16.1
12, 12
12, 12
12, 19
12, 19
12p13.2
18, 22
18, 22
17, 20
17, 20
*AMEL(アメロゲニン)マーカー「X」は女性を示します。
一致することが明らかになりました。また、ターゲット領域の染色体では遺
伝子の大幅な重複または欠損は起こっておらず、また培養細胞中に目的外の
他のヒト細胞が混入するクロスコンタミネーションも起こっていないこと
が示唆されます。これらの結果から、iPSCがスタート材料の線維芽細胞と
遺伝学的に同一であるという信頼性を検証することができます。
19
まとめ
3名のパーキンソン病患者ドナー、1名のMSA患
者ドナー、および2名の年齢適合対照ドナーの皮
膚 線 維 芽 細 胞 か ら、CytoTune-iPS Sendai
Reprogramming Kitを用い、iPSCの樹立に成功
しました。リプログラミング効率は細胞株によっ
て異なり、0.01%からほぼ0.3%までの幅があり、
年齢が低いドナーの細胞は年齢が高いドナーの細
胞に比べてより多くのコロニーを形成しました。
iPSCは十分な評価を行い、形態学、細胞遺伝学、
免疫染色、FACS分析、および遺伝子発現プロファ
イリングの試験により多能性であることが確認さ
れました。iPSCはまた、3胚葉を持つ胚様体を形
成可能であり、分化能を持つことが確認されまし
た。本研究に用いた線維芽細胞について、PDに
関わる別な遺伝子変異を探索しましたが、新たな
変異は検出されませんでした。センダイウイルス
のクリアランスは、一部の細胞株において、最も
早くてパッセージ10で検出されました。しかし、
クリアランスのタイミングは細胞株間、また同じ
細胞株でもクローン間で異なりました。iPSCが
完全に樹立された後、対応する親細胞の線維芽細
胞サンプルに由来するものであることを確認しま
した。成人患者の線維芽細胞をリプログラムした
際の効率、スピード、容易さから、CytoTune-
iPS Sendai Reprogramming Kitが、自動化の方
向やラージスケールでのリプログラミングにおい
て重要なステップであることが明らかです。
完全なキャラクタリゼーションを行ったこれらの
iPSC細胞株を、病歴が明らかな検体から樹立で
きたことは、疾患に関するさらなる研究の礎とな
ります。例えば、MSAは多くの場合、α-シヌク
レインの凝集体を主要な構成要素とするレビー小
体の形成が目立つという特徴があります。TALヌ
クレアーゼによって可能となる遺伝子編集テクノ
ロジーにより、将来α-シヌクレインタンパク質
をコードしている遺伝子のノックダウンが可能に
なります。そうなれば、iPSCを神経細胞に分化
させた後、これらのタンパク質凝集体が、本疾患
に関連する他の表現型におよぼす影響を特定でき
る可能性があります。
References
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scientific and clinical basis for the treatment
of Parkinson disease. Neurology 72(21 Suppl
4):S1–136.
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transgene-free human pluripotent stem cells
using a vector based on Sendai virus, an RNA
virus that does not integrate into the host
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of induced pluripotent stem cells from human
terminally differentiated circulating T cells. Cell
Stem Cell 7:11–14.
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culture substrate for induced pluripotent stem
cell induction and retinal differentiation. Stem
Cells Transl Med 2:16–24.
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cellular and molecular pathology. Mol Pathol
54:419–426.
6. ClinVar database. National Center for
Biotechnology Information (Bethesda, MD). URL:
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/clinvar/. Accessed
17 May 2013.
21
Ordering information
製品名
Reprogramming
CytoTune-iPS Sendai Reprogramming Kit
Fibroblast culture components
DPBS, no calcium, no magnesium (PBS –/–)*
DMEM, high glucose, no glutamine*
Fetal Bovine Serum (FBS)*
L-Glutamine, 200 mM Solution*
Attachment Factor
TrypLE Express
Countess Automated Cell Counter
MEF culture components
Gibco Mouse Embryonic Fibroblasts (Irradiated)
DMEM with GlutaMAX-I (High Glucose)**
Fetal Bovine Serum (FBS), Certified, Heat Inactivated*
iPSC and EB culture components
KnockOut DMEM/F-12*
KnockOut Serum Replacement (KSR)*
MEM Non-Essential Amino Acids (NEAA), 100X
GlutaMAX I Supplement*
Basic FGF, Recombinant Human Protein
2-Mercaptoethanol, 1,000X
Collagenase, type IV
DPBS with calcium, magnesium (PBS+/+)*
Immunocytochemistry
EVOS XL Imaging System
10% Normal Goat Serum*
1% Triton X-100*
Geltrex LDEV-Free hESC-Qualified Reduced Growth Factor Basement Membrane Matrix
Hoechst 33342
Mouse Anti-TRA-1-60 Antibody
Mouse Anti-TRA-1-81 Antibody
Mouse Anti-SSEA4 Antibody
Rabbit Anti-Oct4 Antibody
Mouse Anti-AFP Antibody (Sigma-Aldrich)
Mouse Anti-β-Tubulin III Antibody (Sigma-Aldrich)
Mouse Anti-SMA Antibody (Sigma-Aldrich)
Alexa Fluor 488 Goat Anti-Mouse IgG (H+L) Antibody
Alexa Fluor 594 Goat Anti-Mouse IgG (H+L) Antibody
Alexa Fluor 488 Goat Anti-Rabbit IgG (H+L) Antibody
Alexa Fluor 594 Goat Anti-Rabbit IgG (H+L) Antibody
EVOS FLoid Cell Imaging Station
22
製品番号
A1378001
14190-144
11960-044
26140-079
25030-081
S-006-100
12605-010
C10227
S1520-100
10569-010
10082-139
12660-012
10828-028
11140-050
35050-061
PHG0264
21985-023
17104-019
14040-133
AME3300
50-062Z
HFH-10
A1413301
H3570
41-1000
41-1100
41-4000
A13998
A8452-.2ML
T8660-.2ML
A5228-200UL
A11029
A11032
A11034
A11037
4471136
製品名
FACS analysis
StemPro Accutase Cell Dissociation Reagent
Alexa Fluor 647 mouse anti-SSEA4
Alexa Fluor 488 mouse anti-Nanog (BD Biosciences)
Alexa Fluor 488 mouse IgG (BD Biosciences)
Alexa Fluor 647 mouse IgG2a (BD Biosciences)
Attune NxT Acoustic Focusing Cytometer Blue/Red Lasers
Expression analysis
RNAqueous-4PCR Kit
RNAlater solution
SuperScript VILO Master Mix
TaqMan iPSC Sendai Detection Kit
TaqMan OpenArray Human Stem Cell Panel
TrypLE Express (1X), Phenol Red
Gibco Episomal hiPSC Line
QuantStudio 12K Flex Real-Time PCR System
Other products
AuthentiFiler PCR Amplification Kit
Ion AmpliSeq Inherited Disease Panel
Ion AmpliSeq Library Kit 2.0
Ion OneTouch 200 Template Kit v2 DL and Ion PGM 200 Sequencing Kit
Ion 316 Chip and Ion 318 Chip
Ion PGM System (includes Ion PGM Sequencer and PGM Torrent Server)
製品番号
A11105-01
SSEA421
560791
557702
558053
A24863
AM1914
AM7020
11755050
A13640
4475390
12605-010
www.thermofisher.com/cellmodel
4462921
4479566
4477686
4475345
4480285 and 4474004
4466616 and 4466617
4462921
23
パーキンソン研究所・臨床センターについて
パーキンソン研究所・臨床センターは、パーキンソン病に関する包括的医療、基礎研究、および臨床研究を1施
設でまとめて行っている米国で唯一の独立非営利団体です。同研究所は1988年に設立され、この有効な事業モ
デルの採用によってパーキンソン病の患者やその家族を強力にサポートし、疾患管理の改善、クオリティ・オブ・
ライフ向上の取り組みや、パーキンソン病の科学や医学の情勢を変える画期的な研究を行っています。さらに詳
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