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東京オリンピック・パラリンピック開催
に向けて千葉県が取り組むべき課題
~千葉県の持続可能なまちづくりに向けて~
2014 年 10 月
株式会社 千葉銀行
1
2
目
次
はじめに ··········································································································································· 1
調査 の概要 ····································································································································· 3
I. 千葉 県を取り巻く環境変 化 ··································································································· 19
1. 社 会潮流 の変化 ·············································································································· 19
アベノミクスの進展による日本 経済の明 るい兆 し ····················································· 19
2020 年東京 オリンピック・パラリンピックの開催決 定 ················································ 21
アジアにおける急速な人口増 加と大交流時代 の幕開 け ········································· 25
国 内の人口 減少 ・高齢 化の進 行に伴 う経済下 押 し圧力 の強まり ························· 28
グローバル化 の進展に伴う国 内産業 の空洞化 ························································ 32
2. 千 葉県が抱えている7つの課 題 ····················································································· 33
2020 年東京 オリンピック・パラリンピックへの対応 ····················································· 35
成 田空港及 び圏 央道 (アクアライン)を活用した地域活性 化 ·································· 38
千 葉県の地 域特性と優位 性を活 かした産業 のイノベーション ································ 42
観 光分野のフィールド拡大 ·························································································· 44
東 日本大震 災からの完全復興 (地 域の防災対 応力 ・防犯力 の強化 ) ·················· 48
安 心・安 全な医 療・福祉 体制の確立 ·········································································· 49
コンパクト&スマートシティの推進 ··············································································· 51
II. 東京オリンピック・パラリンピックのレガシー(未来 への資産 ) ·········································· 52
1. 1964 年東 京オリンピック・パラリンピックのレガシー ····················································· 52
2. 2020 年東 京オリンピック・パラリンピックで期待 される5つのレガシー分野 ··············· 57
III. 千葉県 が東京 オリンピック・パラリンピック開催 に向けて進 むべき道 ····························· 60
1. 東 京オリンピック・パラリンピック後 の千葉県 の将来像 ················································ 60
地 域が輝き、すべての人が笑 顔で暮 らせる「ちば」 ··················································· 60
国 内外から人が集まる交流が盛んな「ちば」 ····························································· 60
先 端技術 と新産 業が日本 と世界 の経済 をリードする「ちば」 ··································· 61
2. 千 葉県が東京オリンピック・パラリンピック開催 に向けて取り組 むべきこと ················ 62
公 共交通の利便性向上 ······························································································ 63
産 業のイノベーション ···································································································· 85
観 光分野のフィールド拡大 ························································································ 101
教 育・文 化・スポーツ振興 ·························································································· 120
安 心・安 全なまちづくりの推進 ··················································································· 132
3. 千 葉県が東京オリンピック・パラリンピック開催 期間中に取り組 むべきこと ············· 154
千 葉県への来訪者を心 からもてなそう ····································································· 154
東 京オリンピック・パラリンピックを観 て、応援して、支 えよう ·································· 154
3
4
はじめに
2013 年8 月の国際オ リンピッ ク委員 会総 会におい て、 2020 年オリン ピッ
ク・パラリンピックの開催都市を 1964 年以来 56 年ぶりの東京都に決定して
一年が経過した。
東京 オリンピ ック・パラ リンピッ ク(以下、 東京オリ ・パラと記 載)の 決
定は、日本経済を一変させた第2次安倍内閣( 2012 年 12 月成立)のアベノ
ミク スの「第4 の矢」に も例えられ 、多くの 中・長期的 課題に取 り組まな け
れば ならない国 民が一体 感を持って 共有でき る前向きの 中期目標 として歓 迎
された。
もっ とも、そ の後の計画 具体化に 伴い、会場 建設費の 高騰や職人 不足な ど
わが 国が抱える 制約によ る会場の一 部見直し を迫られた り、首都 圏(特に 東
京) 一極集中加 速に伴う 地方の人口 減少に対 する危機意 識も強ま るなど、 新
たな課題も明確になっている。
こう した中に あって、千 葉県に隣 接して開か れる東京 オリ・パラ は県経 済
にとっても課題を克服し大きく発展するチャンスとなる。
すな わち、千 葉県は、 ① 東京オリ ・パラへの 対応(経 済波及効果 の確実 な
取り込みとレガシー [未来への資産 ]創造)をはじめ、②成田空港及び圏央道、
東京 湾アクアラ インを活 用した地域 活性化、 ③千葉県の 地域特性 と優位性 を
活か した産業の イノ ベー ション、④ 観光分野 のフィール ド拡大、 ⑤東日本 大
震災からの完全復興(地域の防災対応力・防犯力の強化)、⑥安心・安全な医
療体 制の確立、 ⑦コンパ クトシティ ・スマー トシティの 推進 、と いう7つ の
課題を有している。
一方、千葉県が期待できる東京オリ・パラの レガシー分野として、今回は、
①公共交通、②産業振興(イノベーション)、③観光振興、④安心・安全、⑤
教育 ・文化・ス ポーツ、 の5分野 が あげ られ る が、 これ ら の分野 に真摯か つ
可能 な限り前倒 しの対応 で取り組ん で いくこ とは、 千葉 県が抱え ている課 題
の克服に直接的につながり、激化する地域間の生き残り競争に打ち克 って、
「千 葉県の持続 可能なま ちづくりに 向けて 」 道筋をつけ るうえで 、極めて 重
要である 。
そこ で、 本稿 では、千葉 県が、 東 京オリ・パ ラ開催に 伴う果実 の 獲得及 び
開催 後のレガシ ー 分野を 取り込むた めに推進 すべきテー マ及びロ ードマッ プ
を明 らかにした 。千葉県 の自治体や 企業、 各 種団体、市 民などの 関係者 が 調
査結 果を 参考に して 各種 取り組みを 積極的に 進め、 東京 オリ・パ ラ後の 千 葉
県の 競争優位性 及び持続 可能性 がさ らに高ま る とともに 、東京オ リ・パラ が
成功 裏で終わり 、次世代 の千葉県の スタート となるこ と に少しで も貢献 で き
れば幸いである 。
1
2
調査の概要
I.千葉県を取り巻く環境変化
1.社会潮流の変化
東 京オリ・ パラは、 会場 整備など 各種準備 や訪 日客増加 で千葉県 経済 にも直接大
き な効果を もたらし 、そ の効果は この一年 で よ り大きく 期待され てい るが、千葉県
経済 には東京 オリ・パラと 同時に考 慮すべきいく つかの潮 流変化が存在 する。
第一 は、日本経済は、第2 次安倍内 閣( 2012 年 12 月 成立)のアベノミ クスによ り
一 変 し た が 、成 長 戦 略 を 実 現 し 、 民 間 活 力 を 発 揮 し て グ ロ ー バ ル 社 会 に お け る 高 い
競 争力を実 現すると とも に財政再 建を達成 する には長期 の挑戦が 必要 なことである。
第 二に、日 本は人口 減少 ・超高齢 化に伴う 問題 も克服し なくては なら ない。 全国
の人 口は、08 年の 1 億 2,808 万人 をピークに減 少に転じ 、13 年 には 1 億 2,730 万人
( 08 年比 ▲78 万 人)となり 、この間の 高齢化率 は 08 年の 22.0%から 13 年 の 25.1%
( 同+3.1 ポイント )に 上昇し た 。先行き をみ ても、一 貫した人 口減 少の動きが続
いて 、40 年には 1億 728 万人(13 年比▲ 15.7% 、国立社 会保障・人口 問題研究 所に
よ る 12 年1月の 中位推計 )となる 見込みとなっ ている。
一 方、本県 の人口( 国勢 調査ベー スの実績 ・推 計値)は 、 東日本 大震 災後の減少
期 を克服し つつある が、 いずれ全 国同様減 勢に 転じる。 また、 高 齢化 率(総人口に
占め る 65 歳以上 の人口割 合)は、右 肩上がりの 上昇を続 けて、40 年に は 36.5%(平
成 22 年 比+ 15.0 ポイント )と急速 に高齢化が進 む見込み である。こう した人口 減
少 や高齢化 の急速な 進行 、労働力 人口の減 少は 、千葉県 経済にと って は、需給両面
に 渡って下 押し圧力 とし て働くこ とが懸 念 され る。 また 、国内 製 造業 の海外シフト
は 、近年で は、アジ アの 新興国を 中心とし た海 外の旺盛 な消費需 要の 獲得などを目
指す 傾向が強 まっている。
わ が国が人 口減少・ 高齢 化、財政 再建とい う長 期的な課 題に取り 組む に当たり、
国 民全体が 共有でき る中 長期的な マイル・ スト ーンとし て 、国際 オリ ンピック委員
会(IO C)総会において 、東 京オリ・パラの開 催都市 が 2013 年8月 に東京都 に決
定 された意 義は大き い 。 東京オリ ・パラを 日本 が新たな 成長に向 かう ターゲットイ
ヤ ーと位置 付け、ア ジア 新興市場 及び途上 国・ 地域にお ける 人口 増加 及び 経済成長
に 伴う様々 な需要を 国内 に取り込 みつつ 、 日本 の社会を 元気にす る取 り組みをオー
ル日 本で推進 していくこと が求めら れている。
2.千葉県が抱えている7つの課題
本調 査では 、
「千葉 県の 30 年 後の将来 像」の課 題認識を ベースに、2013 年4月 以
降の 前提条件 の変化などを 踏まえ、 改めて千葉県 の課題を 以下の7つに 集約した 。
① 東京 オリ・パ ラへの対応( 経済波及 効果の確実な 取り込み とレガシー創 造)、
② 成田 空港及び 圏央道、東京 湾アクア ラインを活用 した地域 活性化、
③ 千葉 県の地域 特性と優位性 を活かし た産業のイノ ベーショ ン、
④ 観光 分野のフ ィールド拡大 、
⑤ 東日 本大震災 からの完全復 興(地域 の防災対応力 ・防犯力 の強化 )、
⑥ 安心 ・安全な 医療体制の確 立、
⑦ コン パクトシ ティ・スマー トシティ の推進、
千 葉県が東 京オリ・ パラ に戦略的 に対応し てい くことは 、千葉県 が抱 えている課
題 の緩和に 寄与する だけ に、東京 オリ・パ ラ開 催に伴う 果実とと もに 、開催後のレ
ガシ ー創出を 視野に入れた 取り組み が求められる 。
3
Ⅱ.東京オリ・パラのレガシー
1 .1964 年東京オリ・パラのレガシー
1964 年東 京オリ・ パラの レガシー を 検証すると 、以下の 5分野に整理 できる。
第1 は、公共交 通の目覚ま しい発展 である。64 年東京 オリ・パラ に合 わせ 、東海
道新 幹線や首 都高速の一部 区間 が開 通した。
第 2は、市 民の暮ら しが 急速に豊 かになっ たこ とがあげ られる。 千葉 県民の暮ら
しに 目を転じ ると、人口は 、 64 年から 74 年にか けて東京 湾岸地域や常 磐地域を 中
心に 人口が 同 1.8 倍 に増加 する中で 、 74 年の県 土木事業 費は 64 年比 7倍とな るな
ど 県内の主 要インフ ラが 集中的に 整備され 、県 民の生活 利便性も 格段 に向上した。
人 口増加の ほか、 勤 労者 世帯の実 収入が同 約3 倍に増加 したこと もあ って、小売業
の 年間販売 額は6倍 に急 増した。 観光面で も、 市民の可 処分所得 の増 加やモータリ
ゼー ションの 進展に伴い、 観光宿泊 客数が同 1.9 倍と大 幅に増加した 。
第 3は、消 費活発化 を映 じた各種 産業の裾 野の 拡大であ る。経済 成長 の追い風に
乗 って、カ ラーテレ ビが 急速に家 庭内に普 及し たほか、 自動車メ ーカ ー各社 は相次
い で新車を 発売、電 機メ ーカーは 電子式卓 上計 算機の開 発、食料 品メ ーカーでは、
現在 も店頭に 並ぶロングラ ン商品を 次々と発売し た。
第4 は、本格的 な海外旅行 時代の幕 開けである 。64 年東 京オリ・パラ は、外為規
制 の緩和を 伴って、 日本 に本格的 な海外旅 行時 代をもた らした( 日本 人の海外渡航
が自 由化 )。
第 5は、市 民の公徳 心・ 美化意識 の向上が あげ られる。 東京都首 都美 化審議会で
示さ れた「 都民への 期待(吸い殻 や紙くず の散ら かしをや めるなど )」で 当時の 日 本
国 民の日常 行動 をみ る 限 りでは 、 日本人の マナ ー及び道 徳心の先 進国 入りも東京オ
リ・ パラのレ ガシーの一つ と考えら れる。
64 年東京 オリ・パラから の直接の レガシーは 千 葉県には 必ずしも多く ない。むし
ろ 、その後 に急成長 した とも言え る。しか し、 今回は、 しっか り と首 都圏・全国と
もに 県内に未 来への遺産を 築かなく てはならない 。
2.東京オリ・パラで期待される5つのレガシー分野
東京 オリ・パラ の 開催をき っかけと して、千葉県 において 期待できる レ ガシーを 、
1964 年東 京オリ・ パラの レガシー と比較検討し てみた。
まず、公共交通 の分野では、64 年 東京オリ・パラ 開催時と 同様に、首都 圏空港( 成
田 空港・羽 田空港) 及び 圏央道な どの大型 の公 共交通イ ンフラの 整備 計画が着々と
進 んでいる 。これら が順 調に進展 し、県内 外と のアクセ ス利便性 を飛 躍的に高める
こと が出来れ ば、千葉県の 半島性の デメリットを 払拭する 効果も期待で きる。
産業 分野では 、64 年当時に みられた ような飛躍的 な産業規 模の拡大は期 待しにく
い 状況にあ るが、現 在の 精神的豊 かさや生 活の 質の向上 を重視す る「 成熟社会」や
環 境問題の 意識の高 まり に対応し た産業の イノ ベーショ ンが実現 でき れば、県内産
業の 一段の底 上げにつなが る可能性 が高い。
観 光分野で は、今後 更な る活性が 見込まれ てい るア ジア 圏域の大 交流 時代の波に
うま く対応で きれば、イン バウンド を大きく増や すことが できる。
また 、東日本 大震災の発生 を契機と して変化した「他者を 思いやる気持 ち」や「他
者 との絆」 を、スポ ーツ 振興によ る心身の 健全 化を伴い つつ、東 京オ リ・パラ成功
に 向けた国 民の一致 団結 及び訪日 外国人に 対す るおもて なしの心 に深 化させること
は、増 加する高 齢者を地域 で支える 心構えなどの 環境整備 につながるも のと考え る。
市 民生活の 分野では 、現 在の日本 社会は、 前回 大会にお ける高度 経済 成長期とは
4
異 なり、少 子高齢化 ・人 口減少社 会の真っ ただ 中にある 。 今後は 、安 心・安全な社
会 保障体制 の確立や 、持 続可能性 を念頭に おい たコンパ クトなま ちづ くりが求めら
れて いる。
以 上より、 本稿では 、東 京オリ・ パラ開催 に伴 い千葉県 で期待で きる レガシー分
野と して 、①公共 交通、②産業 振興( イノベーシ ョン )、③ 観光振興 、④教 育・文 化 ・
スポ ーツ、 ⑤ 安心・安全 の 5分野と 定義する。
III.千葉県が東京オリ・パラ開催に向けて進むべき道
1.東京オリ・パラ後の千葉県の将来像
(1) 地域が輝き、すべての人が 笑顔で暮らせる「ちば」
東 京オリ・ パラの開 催を きっかけ に、高齢 者を はじめと して県民 のス ポーツ参加
が 活発化し 、心身と もに 元気な高 齢者が増 加し ている。 その結果 、自 治体財政の圧
迫 要因とな っていた 社会 保障費が 抑制され 、自 治体の財 源は各種 まち づくりに向け
ら れるよう になって いる 。また、 障がい者 への 理解が深 まったこ とや 、日本人が本
来 持ってい る「思い やり ・おもて なし」の 心が 一段と高 まったこ とな どから、電車
のな かでは、 高齢者や障が い者に席 を譲ることが 当たり前 の世の中にな っている 。
成 田市の国 際医療学 園都 市構想の 進展に伴 い、 県内の医 療・介護 ・ヘ ルスケ ア環
境 が向上し 、高齢者 や障 がい者が 安心して 医療 ・福祉サ ービスを 享受 可能な体制が
構 築されて いる。パ ラリ ンピック を契機と して 、障がい 者スポー ツに 係るハード整
備 やソフト の充実が 進み 、県内の いたると ころ で気軽に スポーツ を楽 しむ障がい者
や 高齢者と それを支 える ボランテ ィアの姿 がみ られる。 また、イ ベン トや大会も多
数 開催され るように なる 。これに 伴い、ま ちの バリアフ リー化・ ユニ バーサルデザ
イン 化も進み 、高齢者や障 がい者に 優しいまちと なってい る。
中 心市街地 では、千 葉駅 前地域の 再開発や 柏の 葉キャン パスシテ ィの 取り組みな
ど コンパク トなまち づく りが進み 、高齢者 が徒 歩で生活 できるス タイ ルが確立され
て いる。一 方、鴨川 市な ど南房総 地域では 、シ ルバータ ウン構想 が開 花し、元気な
高齢 者と若者 が共存するま ちづくり が実現してい る。
(2)国内外から人が集まる交流が盛んな「ちば」
成 田空港で はLCC 専用 ターミナ ルが供用 開始 となり、 成田空港 と国 内の主要空
港 及び世界 (特にア ジア の主要拠 点)をL CC が結んで いる。割 安な LCCは個人
観 光からビ ジネス利 用ま で幅広い 層に支持 され 、人々の 主要な移 動手 段となってい
る。 インバウ ンドは、年 間 2,000 万人を 突破し、 首都 圏空 港のさらなる 容量拡大 が
大 きな課題 となって いる 。成田空 港の3本 目の 滑走路の 必要性が 一層 高まり、最先
端の 技術と知 見を結集して 、騒音問 題の改善 に向 けた研究 がなされてい る。
圏 央道や北 千葉道路 、外 環道が開 通したほ か、 県内のア クセス利 便性 が飛躍的に
高ま っている 。東京湾アク アライン 通行料金 800 円 が恒久化 され、成 田空港の 機能
強 化と国際 医療学園 都市 構想の進 展もあっ て、 圏央道沿 線には東 京圏 の旺盛な需要
を 支える物 流企業を はじ め、成長 分野の企 業立 地が盛ん となり、 人流 ・物流の往来
が 活発化し ている。 大規 模アウト レットや モー ルが 周辺 観光地と 連携 して周遊ルー
ト を整備し 、初めて 千葉 県を訪れ た外国人 観光 客がおも てなしの 心に も触れて「ち
ば 」の良さ を実感し てい る。また 、館山道 が4 車線化さ れ、南房 総方 面への観光客
の 交通渋滞 が緩和さ れた ほか、成 田空港か ら南 房総への 2次交通 (高 速バス等)が
確 立された こともあ って 、増加し たリピー ター のインバ ウンドが 南房 総の豊かな自
5
然を 楽しんで いる。
東 京オリ・ パラ開催 をき っかけに 、スポー ツツ ーリズム が定着し 、温 暖な気候に
恵 まれた千 葉県は、 スポ ーツ合宿 や競技大 会の 受け入れ 先のメッ カに なり、一年を
通し てスポー ツ施設や周 辺 観光地が 賑わっている 。
コ ンパクト &スマー トシ ティの取 り組みが 進む とともに 、地域の 公共 交通は、各
地 域の実状 に応じて 最適 化され、 中心市街 地と 郊外地域 の往来が 盛ん になり、それ
ぞ れの地域 が個性を 発揮 し、自立 すること が可 能となり 、若者は もち ろん高齢者も
安心 して暮ら せるようにな っている 。
(3)先端技術と新産業が日本 と世界の経済をリードする「ちば」
成 田市の国 際医療学 園都 市構想の 進展によ り、 医療業界 を目指す 若者 が成田市で
育 成されて いる。県 内で 医療・介 護職及び 病床 ・介護施 設が増え て、 人々が安心し
た 暮らしを 実感して いる 。国際戦 略特区に よる 各種の規 制緩和や 成田 空港との相乗
効果 もあって 、医療 系企業 が地域に 相次いで立地 し、
「なり たメディカ ルバレー 」を
形 成してい る。国内 外の 医者や介 護関連の 学会 等が、成 田市や幕 張メ ッセなど県内
で 連日開催 されてい る。 柏の葉キ ャンパス シテ ィでは、 地域活性 化総 合特区を活か
し て、地域 で生まれ たエ ネルギー を地域で 循環 する安心 ・安全な スマ ートシ ティが
実現 している 。
京 葉臨海工 業地帯に 立地 する既存 産業が一 定の 規模を保 つととも に、 圏央道など
の 公共交通 網の整備 によ るアクセ ス利便性 の向 上もあり 、千葉県 の生 産施設をマザ
ー工 場と位置 付ける企業が 増加して いる。研究開 発環境が 一段と整備さ れたこと で、
「 ちば」発 の高機能 ・高 付加価値 の新製品 が続 々と生ま れ、世界 のマ ーケットで高
い シェアを 誇ってい る。 高い技術 力を持つ 中小 企業を含 めて、東 京オ リ・パラ開催
を 通じて高 まった日 本製 品のブラ ンド力を 活か して海外 に販路を 拡大 する企業が増
加 し、さら に大学の 知財 を活用し た新製品 開発 への 動き が加速し てお り、商業面で
も 大規模小 売店が積 極的 に賑わい 創出や防 災・ 減災活動 に協力し 、商 店街と協働で
ま ちづくり に貢献し てい る。そし て、地域 の商 店街・商 業施設は 、地 域の課題に対
応 したまち づくり活 動に 積極的に 取り組み 、地 域住民に とってな くて はならない存
在に なってい る。
農 水産業は 、農地の 大規 模化や水 産物のブ ラン ド化の動 きに加え 、6 次産業化や
海 外への輸 出が拡大 し、 大規模化 ・法人化 によ る生産性 の向上も 進み 、農漁家の所
得 環境が好 転してい る。 稼げる農 業・漁業 を好 感した若 者が担い 手と して農業・漁
業 に参入し 、持続可 能な 産 業体制 となって いる 。また、 柏の葉ス マー トシティ(柏
市 )の植物 工場は本 格的 な実用段 階に至り 、国 内外にプ ラントを 供給 する一大産業
に なってお り、海外 、特 にアジア やアフリ カか らの多く の研究者 や研 修生が技術を
学 んでいる 。先進的 な生 産技術と ノウハウ は海 外にも拡 がり、高 い評 価を受けてい
る。
6
2.千葉県が東京オリ・パラ開催に向けて取り組むべきこと
千 葉県が東 京オリ・ パラ に戦略的 に対応す るこ とで得ら れるレガ シー の 5つの分
野 と千葉県 が抱えて いる 7つの課 題は、そ れぞ れがリン クしてい る 。 従って、 東京
オ リ・パラ への時機 を捉 えた 統一 感のある 対応 は、分野 を超え た 課題 の解決に寄与
する ことが期 待でき 、2020 年の 開催まで に重点 かつ集中 的に取り組む ことが求 めら
れる 。
東京 オリ・パ ラは、東京圏 にあ る 33 競技会場の うち 28 会 場が選手村 から8k m
圏内 に位置す るコンパクト な大会 を 目指している が、一部 の競技(セー リング [ヨッ
ト ]など )につ いては、当初計画 の会場以 外での 開催が検 討されている 。競技 を県内
で 開催する ことは、 開催 準備に向 けた県民 の結 束力や集 中力、志 気の 高まりなど幅
広 い多層な 面で意義 が大 きいだけ に、開催 場所 につい て は、今後 の帰 趨をつぶさに
見守 りつつ、 チャンスがあ れば関係 者が一丸とな った誘致 活動が求めら れる。
(1)公共交通の利便性向上
千葉 県の公共 交通は、1964 年東 京オリ・パラ開 催以降に 目覚ましい発 展を遂げ て
きた 。すなわち 、1978 年開 港の成田 空港をはじ め、東京湾 アクアライ ン( 全線開 通
85 年 )や圏央 道(木更津 IC~松 尾横芝IC開 通 13 年)な どの道路 網整備が 着々
と進 められて きた。
鉄 道に目を 転じると 、都 内通勤者 の急増に 対応 する形で 、総武線 や京 成スカイラ
イ ナー、京 葉線、つ くば エクスプ レスなど の複 々線化・ 延伸や新 たな 路線の整備な
ど が相次ぎ 、県民の 生活 利便性が 飛躍的に 高ま るととも に、県内 への 人口流入が進
ん だ。この ように千 葉県 の経済発 展に伴う 急速 な人流・ 物流の増 加に 相前後する形
で、 空路や陸 路(道路・鉄 道)のア クセス利便性 が向上し てきた。
「交 通政策基 本計画(国土 交通省)[14 年8月 ]」原 案などの 方向性を踏 まえつつ 、
千 葉県の人 流・物流 の動 きを展望 すると、 成田 空港のL CC及び 国内 線の充実やア
ジ ア圏の人 口増加・ 経済 成長に伴 う国内外 の交 流人口の 増加に加 え、 成 田市の「国
際 医療学園 都市構想 」や 柏市の「 柏の葉ス マー トシティ プロジェ クト 」の進展、袖
ケ 浦椎の森 ・茂原に いは る工業団 地の整備 など から物流 ニーズの 取り 込みも期待で
きる 。千葉県 が こうした 人 流・物流 の需要増加に 中長期的 に対応してい くために は、
「① 成田空港 の機能向上(成田空 港の機能 向上と 競争力強 化など )」や「② 道路整備
によ るアクセ ス利便性の向 上(圏央 道の早期開通 など )」、
「③地 域の2 次交通の 充実
(公 共交通の 最適化の実現 など )」などを 着実に 進めてい くことが求め られる。県内
の公 共交通の 利便性向上に 向けた取 り組みには、東 京 オリ・パラ が開催 され る 2020
年 には間に 合わない もの もあるが 、いずれ も、 東京オリ ・パラの レガ シー創出にむ
けた 重要な基 盤であるだけ に、可能 な限り前倒し の対応が 求められる。
(2)産業のイノベーション
①製造業のイノベーション
日 本の製造 業を取り 巻く 経営環境 は厳しさ を増 している 。すなわ ち、 内需型産業
が 人口減少 による市 場規 模縮小の 影響を受 けて いるなか 、外需型 産業 も親会社や関
連 業界のグ ローバル ・サ プライチ ェーン化 など の時代の 流れのな かで 、為替円高時
代に 海外シフ ト した生産拠 点 は、過 度の円高修正 後も 国内 には戻って い ない。
千 葉県の京 葉臨海工 業地 帯には、 鉄鋼業や 石油 化学、食 料品、火 力発 電所などわ
が 国を代表 する企業 群が 集積して いる。今 後も 京葉工業 地帯が、 国内 向けのエネル
ギ ー・素材 ・食料品 の供 給基地と して一定 の地 歩を保ち つつ、地 の利 や東京オリ・
7
パ ラのレガ シーを活 かし て新たな 産業を構 築す る必要が ある。例 えば 、マザー工場
化 や研究施 設の誘致 を促 進し、付 加価値の 高い 分野にお ける高度 な集 積を目指して
い くことや 、東日本 大震 災の発生 に伴う安 定的 なエネル ギー供給 に対 する不安感の
増 大などを 背景に、 同コ ンビナー トにおけ る圧 倒的なエ ネルギー や 県 内の水溶性天
然 ガスの活 用なども 視野 に入れつ つ、環境 ・新 エネルギ ー産業の 拠点 を形成するポ
テン シャルも ある。
千 葉県のも のづくり 産業 を支える 中小製造 業者 のなかに は、高い 技術 力や製品開
発 力に磨き をかけ、 積極 的に国内 外への販 路開 拓を図る 企業や新 たな 顧客の価値を
創造 するなど 力強く活躍し ている企 業が多い。政 府・自民 党は、 13 年 12 月に公 表
し た「好循 環実現の ため の経済対 策」のな かで 、競争力 強化のた めの 投資促進やイ
ノ ベーショ ン創出等 に向 けて、競 争力強化 に資 する設備 投資や科 学技 術イノベーシ
ョ ン・技術 開発の推 進な どに取り 組む とし てお り、これ らの分野 への 取り組みは国
の後 押しも期 待できる。
千葉 県の企業 誘致の推進に ついて、短期 的には、2017 年度 の分譲開始 を目途に 整
備 を進めて いる2つ の工 業団地( 袖ケ浦椎 の森 、茂原に いはる) 及び かずさアカデ
ミ アパーク の早期完 売を 目指すと ともに、 中長 期的には 、企業の 立地 ニーズの動き
を注 視するな かで 、新たな 工業団地 の整備も視野 に入れつ つ、県内立地 企業の育 成・
支援 に取り組 むことが求め られる。
②非製造業のイノベーション
政府 が掲げて いる「日本再 興戦略( 2014 年6月 )」では、「健康寿命 」関連産業 や
エ ネルギー 産業、次 世代 インフラ 関連、地 域資 源の活用 を戦略市 場と 位置付けて、
今 後の成長 を後押し して いくとし ており、 千葉 県もこう した流れ も逃 すことなく正
確 に捉える 必要があ る。 千葉県で は、成田 市が 推進して いる「国 際医 療学園都市構
想」及 び「エアポ ート都市 構想 」
(国家戦 略特区 対象区域 に指定)の進 展や東京 オリ・
パ ラ開催に 伴う観光 分野 のフィー ルド拡大 など が期待で きる。ま た、 首都圏の旺盛
な 物流ニー ズを背景 とし た、物流 ・流通産 業な どが圏央 道や北千 葉道 路の周辺地域
に新 たに立地 する可能性も 高い。
③農水産業のイノベーション
農 水産業を 取り巻く 環境 は、就業 者の高齢 化や 後継者難 に伴う就 業者 数の減少、
農 地面積の 縮小や耕 作放 棄地の増 加など従 来型 の問題に 加え、T PP 交渉の行方次
第 では、国 内の農産 物・ 水産品の 価格優位 性が 低下する リスクも 抱え ている。この
よ うな状況 下、国内 農水 産業は、 東京オリ ・パ ラを契機 にブラン ド力 を高め、 6次
産 業化や海 外への販 路拡 大、植物 工場など の新 事業展開 などを複 合的 に進めていく
こと が求めら れている。
(3)観光分野のフィールド拡大
千 葉県の観 光産業の 現状 を踏まえ つつ、将 来を 見据えた 観光振興 の今 後の方向性
と しては、 地域特性 を活 かしたグ リーン・ ブル ーツーリ ズム(海 水浴 等)などの体
験 型観光や インセン ティ ブ旅行、 修学旅行 とい った従来 型の観光 の魅 力アップに加
え 、スポー ツツーリ ズム など新た な視点を もっ た観光に 徐々に軸 足を 移していくこ
とも 必要と考 える。折しも 、東京オ リ・パラの開 催が決ま り、プレ大会 など の 合 宿 ・
キ ャンプの ニーズへ の対 応などス ポーツー リズ ムの推進 機運が全 国的 に高まってい
る 。この機 に乗じて 、ス ポーツ・ 交流施設 を整 備してサ ッカーや 野球 チームのスポ
8
ー ツ合宿を 誘致した り、 アクアラ インマラ ソン のような スポーツ イベ ントを 新規に
開 催する取 り組 みな どを 全県レベ ルで 行う こと ができれ ば、国内 観光 客・インバウ
ン ドの増加 につなが るだ けでなく 、地元住 民の 健康増進 及び自治 体の 医療・介護費
用 の削減に つながる こと も期待で きる。ま た、 観光を地 域の文化 ・教 育・交流に活
かす 視点も重 要性を増して いる。
統 合型リゾ ート(I R) が持って いる機能 であ るビジネ スやコン ベン ション、レ
ジ ャーなど のうち、 既に 千葉県内 に整備さ れて いるイン フラも少 なく ない。これら
地 域資源の 連携も視 野に 入れた『 ちば型』 のI Rの誘致 を目指す とと もに、千葉県
の 弱点とも 言われて きた アフター コンベン ショ ンについ て も、地 域一 体となって魅
力 的なプラ ンを提供 でき るよう魅 力的なリ ゾー ト地とし てブラッ シュ アップしてい
く必 要がある 。
少 子高齢化 ・人口減 少社 会のもと で、千葉 県の 観光が持 続的に発 展し ていくため
に は、成田 空港や東 京デ ィズニー リゾート が立 地してい るという 千葉 県ならではの
優 位性を生 かして、 IR 等の立地 の可能性 を含 めて、 東 京オリ・ パラ 開催前から、
イ ンバウン ド誘致に 官民 をあげて 注力すべ きで ある。そ の方策と して は、インバウ
ン ドに対す るおもて なし 力の向上 や各種サ イン の多言語 化対応、 IC T対応(公衆
無 線LAN など)の 推進 、観光関 連 施設の バリ アフリー ・ユニバ ーサ ルデザイン化
の推 進などが あげられる。
ま た、地域 ブランド 化の 取り組み は、県内 各地 で実施が 可能かつ 関連 産業のすそ
野が 広いため 、多様な主体 の参画が 可能である。また、地元 企業の育成(経営支 援)
の みならず 地域のイ メー ジアップ と活性化 に直 結するこ とから、 地域 づくりそのも
であ り観光振 興にも大きく 貢献する 。
こ れらの取 り組みを トー タルで進 めること によ って、地 域活性化 につ なげるとと
も に、来訪 時に高い 満足 度を得た 観光客な どへ のアプロ ーチやサ ポー トにより、二
地域 居住や移 住など定住促 進につな がる効果 も期 待できる 。
(4)教育・文化・スポーツ振興
東 京オリ・ パラのレ ガシ ーとして 、スポー ツ及 び文化芸 術活動( 千葉 県の文化の
発 信等)を 通して、 千葉 県内の教 育・文化 ・ス ポーツの 底上げを 図る ことは重要な
視点 である。
大 きな取り 組みとし ては 、①次世 代を担う 人材 の育成、 ②文化・ 芸術 活動の活発
化 、③地域 のスポー ツ振 興があげ られるが 、と りわけ、 次世代を 担う 人材を育成す
る 教育部門 との連携 は欠 かせない 。千葉県 の「 みんなで 取り組む “教 育立県ちば”
プラ ン[千葉県教 育振興基 本計画 ] ( 2010 年3 月 )」の各プ ロジェク ト及び施 策は 、
子 供たちに 対する教 育と いう観点 からいず れも 重要性が 高く、前 向き に推進してい
くも のである が、東京オリ・パラの開 催という新 たな動き を踏まえ、2020 年を大 き
な 発展過程 の一里塚 とし て優先的 に推進す べき 施策につ いて検討 すべ きである。本
プラ ンの施策 のなかで、優先 的に取り 組むべき施 策は、①歴 史と伝統文 化に親し み、
郷 土と国を 愛する心 を育 てる、② 異文化を 理解 し、国際 コミュニ ケー ション力のあ
る 真の国際 人を育て る、 ③道徳心 を高める 実践 的人間教 育を推進 する 、④フェアプ
レ ーの精神 を育てる スポ ーツ、健 康 ・体力 づく りと食育 を推進す る、 の4点と考え
ら れる。こ れらの施 策を 優先的に 進めるこ とで 、東京オ リ・パラ の教 育・文化・ス
ポー ツ関連の レガシーにつ いて、次 世代を担う子 供たちが 享受すること ができる 。
東 京オリ・ パラは、 子供 たちから 大人まで が日 本という 国の今後 の方 向性を考え
る絶 好の機会 であり、有効 に活用す べきである。
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(5)安心・安全なまちづくりの推進
東京 オリ・パ ラが開催され る 2020 年は、日本社 会にとっ てエポックメ ーキング な
年 となる。 すなわち 、東 京都の人 口が減少 に転 じ、日本 の全都道 府県 で人口が減少
する ほか、後 期高 齢者( 75 歳以上 )の割合が 15%を 上回り、生産年 齢人口( 15~ 64
歳)の割合 は 54.7%と終 戦直後( 1945 年:58.1%)の水 準を下 回る 。このよう な人
類 史上初め て経験す る超 高齢社会 のもとで 、千 葉県が持 続的な発 展を 続けるために
は 、可能な 限り早い 段階か ら 2020 年以 降の社会 を想定し つつ、安心・安全な まちづ
くり に取り組 むことが不可 欠である 。
① 持続可能なまちづくりの推進
人 口減少・ 高齢化 に 起因 するまち の活気の 停滞 は、 現在 、人口が 増加 している地
域 でも今後 数十年の 間に ゆっくり と進行し てい くため、 今後のま ちづ くりは中長期
的 な視点に 基づいた 持続 可能なま ちづくり を推 進するこ とが不可 欠に なる。都市部
と 郡部では 、地域特 性や 抱えてい る課題、 人口 減少の程 度が異な るた め対応すべき
取 り組みは 異なる。 都市 部では、 駅前地域 など の再開発 時がまち のコ ンパクト化の
好機 となる一 方、南 房総地 域等は 、
「 気候が温暖 で過ごし やすい 」、
「 圏央道や 東京湾
ア クアライ ンを使っ て簡 単に都心 に出かけ られ る」など の地理的 な強 みを活かした
「シ ルバータ ウン」のポテ ンシャル がある。
ま た、地域 固有の再 生可 能エネ ル ギーを活 用し た発電シ ステムの 構築 や大規模災
害 等の電力 のバック アッ プ機能な どについ て、 地域の自 治体や企 業、 住民が主体と
なっ て、まち づくりや地域 活性化の 視点で取り組 むことが 望まれる。
② 防災・防犯力の強化
千 葉県経済 が東日本 大震 災を教訓 として持 続的 な発展を 遂げるた めに は、世界に
向 けた放射 能汚染の 風評 被害の払 拭や抜本 的な 液状化対 策・津波 対策 などを着実に
進 めるとと もに、道 路や 空港、港 湾、物流 施設 、工業団 地、駅舎 建て 替え、駅前地
区 の再開発 、大型商 業施 設の新設 、大型マ ンシ ョン建設 など目白 押し の開発プロジ
ェ クトを活 用し 、震 災か らの復旧 ・復興と とも に、地域 の活性化 につ なげていく必
要 がある。 また、自 治体 や関連団 体(町内 会な ど)が中 心となっ て、 有事の際に助
け合 える地域 コミュニティ の形成は「 減災」に向け た取り組 みとして重要 性が高い 。
③ 医療・介護・ヘルスケア体制の充実
将 来の県内 医療を展 望す ると、高 齢者の絶 対数 が増える 都市部を 中心 に大幅な医
師 ・看護師 不足と病 床不 足に陥る ことが予 想さ れる。都 市部の医 療・ 福祉の崩壊を
回 避するた めに、高 齢社 会という 現実を直 視し た長期的 なビジョ ンに 基づいて、救
急 医療や在 宅医療を 行え る病院の 誘致を積 極的 に 進める とともに 、医 療・介護・ヘ
ルス ケアを担 う人材の育成 ・確保が 求められてい る。
④ 子育て環境の充実
出 産・子育 て支援は 、国 や自治体 、企業、 家庭 などが各 々対策を とっ てきたが、
現 在の少子 化問題は 、晩 婚化や若 年層の非 正規 雇用の増 加など、 複数 の社会構造的
な要 因が重な っている。従っ て、政府は就 業支援や 所得控除 の拡大などの 経済支援 、
自 治体は保 育所の拡 充な ど共働き をしやす い環 境整備、 企業は育 児休 業取得や短時
間 勤務によ る継続雇 用、 家庭は男 性の育児 参加 、といっ たように 役割 分担を明確化
す るなか、 社会全体 が一 体となっ て総合的 かつ 継続的に 出産・子 育て 世代を支える
こと が必要と なっている。
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3.千葉県が 2020 年東京オリ・パラ開催期間中に取り組むべきこと
(1)千葉県への来訪者を心からもてなそう
東 京オリ・ パラの開 催期 間中は、 国内外か ら多 くの観戦 客及び選 手、 関係者など
が 主に東京 都の競技 場及 び周辺地 域を訪れ る。 東京都に 隣接した 千葉 県には、海外
と の玄関口 である成 田空 港や高い 集客力を 誇る 東京ディ ズニー・ リゾ ートのほか、
らら ぽーとT OKYO -BAY やアウト レットモ ールなど の大型商業施 設、門前町 の
町 並みが色 濃く残る 成田 山新勝寺 界隈の風 景、 自然豊か な南房総 地域 など多様な魅
力 にあふれ ている。 東京 オリ・パ ラ開催期 間中 は、東京 オリ・パ ラの 観戦者など外
国人 履行者が 千葉県を訪れ る機会が 増えることだ ろう。
外 国人旅行 者が日 本 に来 て困った こととし て、 4人に1 人が「コ ミュ ニケーショ
ン 」をあげ ているこ とは 、日本人 の外国人 に対 するコミ ュニケー ショ ン不足を示唆
し ている。 東京オリ ・パ ラ開催期 間中に千 葉県 を訪れた 外国人が 日常 生活やレジャ
ー で困るこ とがない よう 、簡単な 道案内を はじ めとして 、飲食店 のオ ーダーや観光
視 閲のチケ ット購入 方法 、日常的 な挨拶な どあ らゆるシ ーンで外 国人 との積極的な
コミ ュニケー ションに千葉 県をあげ て取り組みた い。
アフ ターオリ ンピックにお ける外国 人の評価で 、
「 千葉 県のおも てなしが とても気
持 ちよかっ た」と言 われ るような 対応を す るこ とができ れば、千 葉県 の魅力や快適
性 が口コミ で世界に 伝わ って、千 葉県への リピ ーターの 増加とい う大 きなレガシー
につ ながるこ とが期待でき る。
(2) 東京オリ・パラを観て、応援して、支えよう
県 民にとっ て、 東京 オリ ・パラは 、 世界ト ップ レベルの アスリー トの 躍動する姿
を 目の当た りにでき る絶 好のチャ ンスであ る。 東京オリ ・パラ開 催期 間中は、全県
民 をあげて オリンピ ック ・パラリ ンピック を見 に行こう 。東京オ リ・ パラ開催を機
会 にオリン ピック・ ムー ブメント (スポー ツを 通じて友 情・連帯 ・フ ェアプレーの
精 神を培い 、相互に 理解 す ること で、世界 の人 々が手を つなぎ世 界平 和を目指す運
動 のこと) を理解し 、各 競技種目 や出場し てい る国・選 手に高い 関心 を持って応援
しよ う。
ま た、東京 オリ・パ ラの 円滑な競 技運営に 欠か せない「 オリンピ ック ・ボランテ
ィア (約8万 人)」の募集 は 2016 年 から開始さ れる見込 みとなってい る(ロン ドン
五輪 では約7 万人の募集枠 に 20 万人 の応募があ った )。ボラ ンティア の内容は 、大
会 運営の管 理や競技 場内 の観客誘 導から通 訳・ 医療スタ ッフなど の専 門的な分野ま
で多 岐にわた る。オリンピ ックの開 催期間は、 2020 年7月 24 日~8月 9日、パ ラ
リン ピックは 8月 25 日~ 9月6日 と何れも夏休 み期間中 であるだけに、学生など の
若年 者を中心 に東京オリ・ パラを支 える活動への 積極的な 参加に期待し たい。
11
12
東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて千葉県が取り組むべき課題(概要版)
Ⅰ.千葉県を取り巻く環境変化
Ⅲ.千葉県が 2020 年東京オリ・パラに向けて進むべき道
1.社会潮流の変化
1.東京オリ・パラ開催後の千葉県の将来像
○千葉県を取り巻く社会潮流は、プラス・マイナス面が入り乱れた変化が激しい時代。
○2020 年東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京オリ・パラと記載)の開催決定
(2013 年8月)が日本の経済・社会のポジティブインパクトになる。
(1)地域が輝き、すべての人が笑顔で暮らせる元気な「ちば」
(2)国内外から人が集まる交流が盛んな「ちば」
≪千葉県を取り巻く社会潮流の変化≫
①アベノミクスの進展による日本経済に明るい兆し
(3)先端技術と新産業が日本と世界の経済をリードする「ちば」
②2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催決定
実現に向けて
③アジアにおける急速な人口・所得の増加と大交流時代の幕開け
2.千葉県が東京オリ・パラ開催までに取り組むべきこと(ロードマップは別紙参照)
④国内の人口減少・高齢化の進行に伴う経済下押し圧力の強まり
(1) 公共交通の利便性向上
① 成田空港の利便性向上(成田空港の機能向上と競争力強化など)
② 道路整備によるアクセス利便性の向上(圏央道の早期開通など)
③ 県内各地の2次交通の充実(公共交通の最適化の実現など)
⑤経済のグローバル化の一層の進展
Ⅱ.東京オリ・パラにおけるレガシー(未来への資産)創造
○
(2) 産業のイノベーションと成果の世界への発信
東京オリ・パラへの戦略的な対応を推進することは、千葉県が抱える課題の克服(=東
京オリ・パラのレガシー)につながる。
① 製造業のイノベーション(京葉臨海コンビナートの競争力向上と中小製造業の技術革新など)
② 非製造業のイノベーション(医療・福祉・健康産業の集積促進など)
③ 農林水産業のイノベーション(農林水産業の6次産業化など)
≪2020 年東京オリ・パラのレガシーと千葉県が抱えている7つの課題の相関図≫
千葉県が抱えている7つの課題
5つのレガシー分野
(1)公共交通
公共交通
(2)産業振興
産業の
(イノベーション)
イノベーション
(3)観光振興
観光
推進
推進
(5)安心・安全
安心・安全
① 各種ツーリズムの推進(スポーツツーリズムの推進など)
② インバウンドの誘致推進(首都圏空港を活用した誘致強化とおもてなし力の向上など)
②成田空港及び圏央道(アクアライン)を
活用した地域活性化
③千葉県の地域特性と優位性を活かした
産業のイノベーション
推進
④観光分野のフィールド拡大
教育・
(4)教育・
文化・
スポーツ
文化・スポーツ
(3) 観光分野のフィールド拡大
推進
推進
⑤東日本大震災からの完全復興
(地域の防災対応力・防犯力の強化)
推進
⑥安心・安全な医療・福祉体制の確立
(
経
済
波
及
効
果
の
確
実
な
取
り
込
み
と
レ
ガ
シ
ー
創
造
)
③ 地域ブランドの創出(地域ブランドの創出による地域活性化など)
①
東
京
オ
リ
ン
ピ
ッ
ク
・
パ
ラ
リ
ン
ピ
ッ
ク
へ
の
対
応
(4) 教育・文化・スポーツ振興
課
題
の
解
決
① 次世代を担う人材の育成(グローバルな人材の育成及び女性が活躍できる環境づくりなど)
② 文化芸術活動の向上(文化・芸術・学術イベントの開催など)
③ 地域のスポーツ振興(地域住民の健康づくりなど)
千
葉
県
の
持
続
的
な
発
展
(5) 安心・安全なまちづくりの推進
① 持続可能なまちづくりの推進
(コンパクト&スマートシティ・シルバータウンの形成推進など)
② 防災・防犯力の強化(災害対策の推進など)
③ 医療・介護・ヘルスケア体制の充実(救急医療体制の充実及び在宅医療の推進など)
④ 子育て環境の充実(安心して子育てができる環境整備など)
3.千葉県が 2020 年東京オリ・パラ開催期間中に取り組むべきこと
(1) 千葉県への来訪者を心からもてなそう
推進
⑦コンパクト&スマートシティの推進
(2) 東京オリ・パラを観て、応援して、支えよう
13
あらゆる機会をとらえ、
オリンピック・ムーブメントに
参加しよう!
■ 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて千葉県が取り組むべき課題(ロードマップ)
レガシー
分野
公
共
交
通
の
利
便
性
向
上
産
業
の
イ
ノ
ベ
ー
シ
ョ
ン
フ
ィ観
ー光
ル分
ド野
拡の
大
ス教
ポ育
ー・
ツ文
振化
興・
ま
ち安
づ心
く ・
り安
の全
推な
進
短期
取り組むべき課題
2014
2015
①成田空港の利便性向上
a.成田空港の機能向上と競争力強化
b.3本目の滑走路の整備
c.「都心直結線」構想の実現
②道路整備によるアクセス利便性の向上
a.圏央道(大栄JCT~松尾横芝IC)の早期開通
b.北千葉道路の早期開通
c.外環道の早期開通
d.東京湾アクアラインの800円化の恒久化
e.館山道の4車線化
f. その他道路の整備促進(銚子連絡道路、長生グリーンライン等)
③県内各地の2次交通の充実
a.公共交通の最適化の実現
b.バスターミナル拠点の戦略的な活用
①製造業のイノベーション
a.京葉臨海コンビナートの競争力向上
b.産官学連携及びベンチャー企業の育成・強化(中小企業の技術革新)
c.企業誘致の促進
②非製造業のイノベーション
a.医療・福祉・健康産業の集積促進
b.観光分野のフィールド拡大(次章で詳述)
③農林水産業のイノベーション
a.農林水産業の6次産業化
b.海外への販路拡大
c.植物工場のノウハウ・プラントの輸出
①各種ツーリズムの推進
a.スポーツツーリズムの推進
b.グリーン・ブルーツーリズムの推進
c.IR・MICE拠点の整備及び世界会議の誘致促進
②インバウンドの誘致推進
a.首都圏空港を活用した誘致強化とおもてなし力の向上
b.ICT対応の推進
c.各種標識・ホームページ等の多言語対応
d.バリアフリー・ユニバーサルデザイン化の推進
③地域ブランドの創出
a.地域ブランドの創出による地域活性化
①次世代を担う人材の育成
a.グローバルな人材の育成及び女性が活躍できる環境づくり
b.障がい者への理解促進
②文化芸術活動の向上
a.文化・芸術・学術イベントの開催
③地域のスポーツ振興
a.地域住民の健康づくり
b.競争力のある競技選手の育成・強化
①持続可能なまちづくりの推進
a.コンパクト&スマートシティ・シルバータウンの形成推進
b.商店街・商業施設による地域貢献活動の推進
c.地域エネルギー創出によるまちづくり
②防災・防犯力の強化
a.放射能汚染・液状化・津波対策など災害対策の推進
b.地域の防災力・防犯力の向上
③医療・介護・ヘルスケア体制の充実
a.救急医療体制の充実及び在宅医療の推進
b.医療・介護・ヘルスケアを担う人材育成及び連携体制の構築
①子育て環境の充実
a.安心して子育てができる環境整備
中期
2016
2017
2018
2019
2020
長期
2020
(東京オリ・パラ前) (東京オリ・パラ後)
早期実現
早期実現
早期実現
継続対応
継続対応
継続対応
超長期で推進
継続対応
継続対応
継続対応
継続対応
15
東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う千葉県への経済波及効果((株)ちばぎん総合研究所の推計)
◎
東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い千葉県内で発生する直接・間接の関連需要合計は852億円となった(2014 年1月推計)
。
【内
訳】
千葉県への経済波及効果201億円
+
東京都の施設整備に伴い千葉県内で発生する関連需要651億円
 東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い231億円の消費が発生する。この231億円の消費から誘発される千葉県への経済波及効
果(県内での生産・サービス誘発額)は201億円と推計される。
 東京都での施設整備費(3,557億円)がもたらす経済波及効果(上記の201億円には含まれていない)は、千葉県事業者による建設受
注及び施設整備費の波及効果のうち千葉県で享受する生産・サービス額として651億円の経済効果が発生する。
※
その他効果:圏央道整備の前倒し効果による企業立地の促進や物流施設の集積、五輪開催期間の参加者・観戦客の支出増加など
変化要因
その1
変化要因
その2
(施設整備費)
従来4,554億円→7,141億円
に上るとの試算
( セ ー リ ン グ [ヨ ッ ト ]会 場 )
若洲オリンピックマリーナ→
稲毛ヨットハーバー(千葉市美浜区)
への変更を検討
2つの変化要因をふまえた千葉県への経済波及効果(改訂結果)
施設整備費が増加した場合
852億円
セーリング
[ヨット]競技
が千葉県で開催
された場合
2つの変化要因を
ふまえた増加額
千葉県への
経済波及効果
(改定値)
10%増加
+65億円
+3億円
+68億円
920億円
30%増加
+195億円
+3億円
+198億円
1,050億円
50%増加
+392億円
+3億円
+395億円
1,247億円
(2014 年1月推計)
17
I.千葉県を取り巻く環境変化
1. 社会潮流の変化
アベノミクスの進展による日本経済の明るい兆し
日本 経済は、 第2次安倍内 閣( 2012 年 12 月成立 )が進め る 一連の経済 政策 「ア
ベノ ミクス ( 注 1)」の取り組 み もあっ て 、物価及び 雇用面 に おい て 徐 々 に 経 済 効 果 が
発 現してい る。その 結果 、 バブル 崩壊以降 長期 に 亘って 続いてき た日 本 経済のデフ
レ構 造及び極 端な円高 に終 止符が打 たれようとし ている。
第 2次安倍 内閣発足 後の 実質GD P(四半 期 、 季調済・ 年率換算 )は 、5四半期
連続 でプラス 成長となり、14 年1~ 3月には、4 月からの 消費税率引 き上げの 駆け
込み 需要の影 響もあって、個人消費 及び民間企業 の設備投 資が全体を底 上げし、535
兆円 となって いる(図表 1 、2 )。こうし た着実 な経済成 長を映じて 、千葉 県の有効
求人 倍率は 、12 年 12 月 の 0.69 倍から 右肩上が りの上昇 を続け 、14 年6月 には 0.91
倍( 12 年 12 月 比+0.22 ポイン ト)となってい る(図表 3)。消費者 物価指数(千葉
市 )は、こうした 雇用環境 の改善 や 円安の動き を 受けて 、12 年 11 月 の 98.9 から 14
年3 月の 100.7( 12 年 11 月 比+1.8 ポ イント)に水準を 引き上げた あと、消費 税率
引き 上げの影 響から4月 には 102.7 に上昇したあ と、5~6月は 102.9、7月は 102.8
と横 ばい圏内 で 推移した( 図表 4 )。
そ の 一 方 で、 わ が 国は、 引 き 続 き人 口 減 少・高 齢 化 、 財政 再 建 という 長 期 的 な課
題を 抱えて お り、取り組み を継続し ていく必要が ある のも 事実である。
540
(兆円、季調済年率)
図 表 1 実 質 GDPの推 移 (四 半 期 )
535
535
「東日本大震災」発生
「第2次安倍内閣」成立
530
526
525
(13年平均)525
520
(12年平均)518
515
510
(10年平均)512
(11年平均)510
505
500
Ⅰ Ⅱ
(2010年).
Ⅲ
Ⅳ Ⅰ Ⅱ
(2011年)
Ⅲ
Ⅳ Ⅰ Ⅱ
(2012年)
Ⅲ
Ⅳ Ⅰ Ⅱ
(2013年)
Ⅲ
Ⅳ Ⅰ Ⅱ
(2014年)
(出所)内閣府「国民経済計算」
(注1)アベノミクスの基本方針(安倍首相は「三本の矢」と表現)
。
①大胆な金融政策
2%のインフレ目標/無制限の量的緩和/円高の是正/日本銀行法改正
大規模な公共投資(国土強靱化)/
日本銀行の買いオペを通じた建設国債の買入・長期保有
政策金利のマイナス化(マイナス金利)/
③民間投資を喚起する 「健康長寿社会」から創造される成長産業
成長戦略
「日本版NIH:国立衛生研究所」/全員参加の成長戦略?
世界に勝てる若者/女性が輝く日本
②機動的な財政政策
19
図 表 2 実 質 GDP(寄 与 度 )の推 移
3
民間最終消費支出
(%)
2
民間住宅
1
民間企業設備
0
民間在庫品増加
▲1
政府最終消費支出
▲2
公的固定資本形成
▲3
純輸出
▲4
Ⅰ Ⅱ
(2010年).
Ⅲ
Ⅳ Ⅰ Ⅱ
(2011年)
Ⅲ
Ⅳ Ⅰ Ⅱ
(2012年)
Ⅲ
Ⅳ Ⅰ Ⅱ
(2013年)
Ⅲ
Ⅳ Ⅰ Ⅱ
(2014年)
(出所)内閣府「国民経済計算」
図 表 3 千 葉 県 の有 効 求 人 倍 率 ・新 規 求 人 倍 率 の推 移
(倍)
1.7
1.53
1.6
有効求人倍率
「第2次安倍内閣」成立
1.5
新規求人倍率
1.4
1.3
1.17
1.2
1.1
0.91
1.0
0.9
0.8
0.69
0.7
0.6
0.5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6
(2012年)
(2013年)
(2014年)
(出所)千葉労働局「最近の雇用失業情勢」
103
(2010年=100)
図 表 4 千 葉 市 の消 費 者 物 価 指 数 の推 移
102.9
102.8
102.7
「第2次安倍内閣」成立
102
101
100.7
100
98.9
99
98
5月 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7
(2013年)
(2014年)
(2012年)
(出所)千葉県「千葉市消費者物価指数の動向」
20
2020 年東京オリンピック・パラリンピックの開催決定
日 本経済が 長期的な 課題 に取り組 んでいる 中で 、 第2次 安倍内閣 によ る アベノミ
クス 効果もあ って、日本経 済に明る い兆しが見え 始め た 2013 年8月、国際オリ ンピ
ック 委員会(IOC)総会に おいて 、東京オ リ・パラの開 催都市が 東京都 に決定した。
東 京 2020 オリ・パラ 誘致委 員会によ ると 、東京 オ リ・パラのビ ジョンは 、
「 Discover
Tomorrow 未 来 ( あ し た ) を つ か も う 」 と し 、 大 会 の コ ン セ プ ト は 、 東 京 圏 に あ る
33 競 技会場の うち 28 会場 及び全て のIOCホテ ルが選手 村から半径8 km圏内 に
位置 するコン パクトな大会 を志向し ている (図表 6)。内閣官 房 2020 年オリ ・パラ
東京 大会推進 室 によると 、東京 オリ・パラ は、
「 東京だけ でなく 、スポ ーツだけ でな
く、2020 年 だけでなく( Beyond Tokyo、Beyond Sports Beyond 2020)」を合 言葉に、
日 本社会全 体を元気 にす る取り組 みを推進 して いく方針 としてお り 、 その全国の経
済波 及効果 は 2.5~ 150 兆円( 図表7 )、千葉県へ の経済波 及効果( 14 年1月 に ちば
ぎん 総合研究 所が推計) は 852 億円(図 表8)と それぞれ 推計されてい る。 全国 の
各 地域では 、東京オ リ・ パラ を地 域活性化 の 起 爆剤と位 置づけ 、 様々 な取り組みに
着手 している(図 表5)が、千葉県に は直接的な 会場設営 等の建設効果 がないた め、
東 京オリ・ パラの開 催期 間及び開 催期間ま での 間に観光 客等をい かに 県内に呼び込
める かが、経 済波及効果を 高めるポ イントといえ る 。
ま た、東京 オリ・パ ラ開 催までに 、日本の 文化 を世界に 発信して いく ことも重要
な テーマと いえる。 ロン ドン大会 では「 London 2012 Festival」 とし て、音楽・演
劇・ダンス・美術・文学・映画・ファッショ ン・公演・展覧 会のイベ ント な ど合 計 12,000
件 を 実 施 した 。こ れ らの 文 化 事 業や イ ベン トへ の 参 加 者は 、 オリ ンピ ッ ク ・ パラ リ
ンピ ック大会 に参加した 204 か国の アーティス ト 25,000 人以 上にのぼ り、史上最 大
規 模であっ た。 この よう にみると 、 東京オ リ・ パラ は、 世界の ス ポー ツ・文化の 祭
典 であると 同時に日 本再 生の契機 と もとら え ら れる。東 京オリ・ パラ を日本が長期
的 な課題に 取り組み つつ 、 新たな 成長に向 かう ターゲッ トイヤー と位 置付け、日本
の社 会を元気 にする取り組 みをオー ル日本で推進 していく ことが求めら れ ている 。
北
青
秋
山
福
群
埼
千
新
福
山
長
岐
静
三
滋
奈
鳥
道県
海 道
森 県
田 県
形 県
島 県
馬 県
玉 県
葉 県
潟 県
井 県
梨 県
野 県
阜 県
岡 県
重 県
賀 県
良 県
取 県
図 表 5 2014 年 度 の道 県 ・政 令 指 定 都 市 の五 輪 関 連 事 業
取組内容
道県
取組内容
キャンプ誘致へ道内施設調査
広 島 県 トップアスリート育成強化
開催効果の調査検討
徳 島 県 選手育成など新規5事業
関係団体から情報収集
香 川 県 障害者スポーツ協会設置
国際大会への出場支援
愛 媛 県 スポーツイベント誘致促進
医学・心理学などで選手支援
福 岡 県 アスリート育成
スポーツイベント誘致
佐 賀 県 スポーツの裾野拡大
組織委員会との連絡調整
熊 本 県 市町村と連携しキャンプ誘致
受け入れ体制の整備
大 分 県 キャンプ誘致へ情報収集
選手育成、基金設置
宮 崎 県 観光客やキャンプ誘致促進
政令指定都市
用品の販路獲得
取組内容
観光客受け入れ体制整備
千 葉 市 先進事例の調査・視察
スポーツ合宿誘致促進
横 浜 市 小中学生と選手の交流
スポーツのまちづくり支援
相 模 原 市 庁内に推進本部設置
キャンプ誘致、観戦客対応
京 都 市 外国人観光客の誘致
キャンプ誘致推進
神 戸 市 市内の競技施設調査
庁内に作業部会
岡 山 市 競技力強化事業を拡充
キャンプ招致調査検討
北 九 州 市 各国選手団のキャンプ誘致
代表選手育成プロジェクト
熊 本 市 大会関係者から情報収集
(注)1.出所:共同通信アンケート(2014年2月実施)
2.千葉県は「2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた取組の基本方針(2014年7月)」、千葉市が
「2020年東京オリンピック・パラリンピック千葉市プロジェクト推進基本方針(2014年8月)」を策定。
21
図 表 6 東 京 オリンピック・パラリンピックの概 要
第32回オリンピック競技大会
開催日程
競技種目
ビジョン
第16回パラリンピック競技大会
2020年7月24日(金)~8月9日(日)≪予定≫ 2020年8月25日(火)~9月6日(日)≪予定≫
28競技≪予定≫
22競技≪予定≫
陸上競技、水泳、サッカー、テニス、ボート
アーチェリー、陸上競技、ボッチャ、カヌー
ホッケー、ボクシング、バレーボール、体操
自転車、馬術、5人制サッカー
バスケットボール、レスリング、セーリング
7人制サッカー、ゴールボール
ウエイトリフティング、ハンドボール、
柔道、パワーリフティング、ボート、セーリング
自転車競技、卓球、馬術、フェンシング
射撃、水泳、卓球、トライアスロン
柔道、バドミントン、射撃、近代五種、カヌー
シッティングバレーボール
アーチェリー、テコンドー、トライアスロン
車いすバスケットボール、車椅子フェンシング
ゴルフ、ラグビー
ウィルチェアーラグビー、車いすテニス
Discover Tomorrow 未来(あした)をつかもう
○都市の中心で開催するコンパクトな大会
大会
コンセプト 東京圏にある33競技会場のうち、28会場及び全てのIOCホテルが選手村(東京都中央区
晴海)から半径8km圏内に立地
経済波及 【日本全体】2.5兆円(みずほ総研)~150兆円(大和証券) ※東京都の推計は約3兆円
効果
【千 葉 県】852億円(ちばぎん総合研究所)
○4,554億円
会場設備 うち建設工事費用:3,831億円
費用
(新国立競技場:1,300億円、選手村:954億円 等)
うち仮設施設建設・設備使用料:723億円
2013年9月7日 IOC総会で東京都が開催都市に決定
10月4日 「2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室(内閣府)」設置
2014年1月24日 「東京都オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」設立
これまでの
経緯及び
今後の主な
スケジュール
2015年10月 新国立競技場建設着工
2019年9月頃 新国立競技場完成
2020年5月頃 聖火リレースタート
2020年6月 選手村完成
2020年7月 東京オリンピック開会
(出所)内閣府他各種資料からちばぎん総合研究所が作成。
22
図 表 7 東 京 オリ・パラの経 済 波 及 効 果 の推 計
(単位:億円)
調査機関名
需要増加項目(全国)
・大会施設整備
費
東京都
試算
日本総研
試算
みずほ
総研
三菱UFJモ
ルガン・スタ
ンレー証券
大和証券
競技場等の新増設・
改築
3,557
4,660
4,554
キャンプ用施設の新
増設・改築
資
本
支 ・空港関連施設(成田空港、羽田空港な
出 ど)、道路整備(首都高、三環状など)、
その他公共投資
・ホテルや飲食店、観光施設などの新
増設・改築、その他都内再開発による
民間建設需要
対象外
対象外
対象外
対象外
22,000
~49,000
対象外
・大会運営費
3,104
・観戦客等の消費支出、その他家計の
消費支出(関連グッズやテレビ等)
5,578
消
費
・ホテル宿泊需要の発生
支
出
・観光需要の発生(東京都の知名度向
上による外国人観光客の増加を含む)
・キャンプ需要の発生(パラリンピックの
整備を含む)、見学者の消費支出の発
生
3,100
対象外
9,620
対象外
53,000
550,000
(注)
48,000
対象外
2,050
2,074
(観戦客)
1,346
(家計消費)
対象外
11,000
(観光客)
10,000
(家計消費)
対象外
950,000
(注)
対象外
需要増加額
12,239
39,320
~66,320
10,025
122,000
1,500,000
(注)
経済波及効果
29,600
67,780
~117,780
25,000
293,000
1,500,000
(注)
(注)大和証券の試算は、公共投資による経済効果55兆円は需要増加額、観光客増加による95兆円は二次波及ま
で含めた数字。これを合計して、150兆円の経済効果を見込んでいる。
23
図 表 8 東 京 オリ・パラ開 催 に伴 う千 葉 県 への経 済 効 果
(2014 年 1月 にちばぎん総 合 研 究 所 が推 計 )
需要増加額
施設整備費の経済波及効果 6,884億円
大会組織委員会予算
+
観戦客・家計消費額
直接効果
波及効果 3,327億円
建設
対事業所
サービス
金属製品
鉄鋼
他部門
3,557億円
479億円
366億円
334億円
2,148億円
全
国
全国 12,239億円
※県外で発生した経済波及効果のうち千葉県で取込可能な効果
うち
施設整備費
3,557億円
651億円 (※県外からの取込効果)
東京都
東京都の施設整備費
のうち千葉県事業者
による建設受注額
東京都における施設整備の
波及効果により、千葉県が
享受できる生産・サービス額
67億円 (注1)
584億円 (注2)
9,669億円
852億円
千葉県への経済波及効果(県内での生産・サービス誘発額) 201億円
その他地域
2,570億円
直接効果
千葉県
231億円
波及効果 65億円
県内の
生産・サービス
誘発額
(9%)
千
葉
県
×自給率
136億円
第1次波及効果
第2次波及効果
直接効果により
更に誘発される
生産・サービス
雇用者所得増加
により誘発される
生産・サービス
39億円
26億円
●自給率:県内で発生した需要に対して県内産で賄われた割合(五輪に伴う消費が県内で行われることにより、県内の各
産業に新たな生産・サービスが発生する)
(注)1.東京都の建設投資額を平成24年の首都圏(1都7県)における千葉県の元受・下請受注額(1.9%)で按分
2.全国の波及効果を平成17年産業連関表の首都圏における部門別の千葉県生産額で按分
(例:鉄鋼59.1%、石油・石炭38.1%、金属製品19.0%、窯業・土石18.7%、運輸16.7%)
3.上記推計は、14年1月時点のものであり、その後、関連施設の整備費が増加するとの報道があるが、増加した
場合の再試算値については、35ページに記載されているので、そちらを参照のこと。
24
アジアにおける急速な人口増加と大交流時代の幕開け
世界 の人口の 将来推計 をみ ると 、10 年 の 69 億 1,600 万人か ら 50 年 には 95 億 5,100
万人( 10 年比+ 26 億 3,500 万人 )に増加 する見 通しとな っている( 総務省 推計 、図
表 9)。 そのうち アジア における 人口増加 は同 + 10 億人と世 界の人 口増加の 約 4割
を占 めており 、10~ 40 年に かけて ア ジアで増加す る人口は 、10 年 時点の 南北アメ リ
カの 人口とほ ぼ同じ 規模と なってい る。
ま た、アジ ア 新興市 場及 び 途上国 ・地域に おけ る経済成 長予測( IM F調べ)を
みる と、 12 年 から 15 年に かけて 6 %台半ばの高 い成長率 が見込まれて いる(図 表
10)。こう したアジ アの人口 増加や 高 い経済成長の 伸びに支 えられた市民 の 可処分 所
得 の増加は 、今後の アジ ア圏内の ビジネス 及び 観光面の 交流活動 にプ ラスの影響を
与え る可能性 が高い。
近年 の訪日外 客数(インバ ウンド) の推移をみる と、 10 年 の 861 万人 から 11 年
には 622 万 人(10 年比 ▲ 27.8%) と東日本大震 災の影響 から大幅 に 落 ち込んだ が、
その 後、 12 年( 836 万人) には増加 に転じ、 13 年に は 1,036 万 人と、 初め て 1,000
万人 を突破し た (図表 11)。さら に、 14 年入り 後も、1 ~6月合計 で 626 万 人(前
年同 期比+ 26.5%)と増勢 が続いて おり、 年間 1,200 万人超え も視野に 入ってき て
いる 。14 年 1~6月 の 訪日 外客数 を 国別にみると 、11 年 9月にビ ザ発給 要件の緩 和
を 行った中 国が 政治 要因 による前 年の落ち 込み もあって 前年同期 比+ 88.2%と大幅
に増 加してい るほか、13 年7月 にビザの 免除及 び数次ビ ザの発給を行 った タイ、マ
レー シア、フ ィリピンも同 +6割を 超える増加率 となって いる(図表 12、 13)。
図 表 9 世 界 人 口 の推 移 (推 計 )
10,000
(百万人)
オセアニア
アフリカ
ヨーロッパ
南アメリカ
北アメリカ
アジア
8,000
6,000
4,000
2,000
2050年
52億人
(アジア人口)
10億人増加
2010年
42億人
0
50 55
(年)
60
65
70
75
80
85
90
95
(注)総務省「世界の統計2014」
25
00
05
10
15
20
25
30
35
40
45
50
図 表 10 世 界 経 済 見 通 し
2012年
2013年
(単位:%)
見通し
2014年
2015年
世界
3.5
3.2
3.4
4.0
先進国・地域
1.4
1.3
1.8
2.4
日本
1.4
1.5
1.6
1.1
米国
2.8
1.9
1.7
3.0
▲ 0.7
▲ 0.4
1.1
1.5
新興市場及び途上国・地域
5.1
4.7
4.6
5.2
うちアジア新興市場
及び途上国・地域
6.7
6.6
6.4
6.7
中国
7.7
7.7
7.4
7.1
インド
4.7
5.0
5.4
6.4
ASEAN5
6.2
5.2
4.6
5.6
ユーロ圏
(注)1.出所:世界通貨基金「世界経済見通し(2014年7月)
2.インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム。
図 表 11 訪 日 外 客 数 (インバウンド)の推 移
(推計値)
1,310
1,400
(万人)
1,200
1,036
(7~12月推計)
683
1,000
(7~12月)
800
541
600
400
861
679
836
622
(1~6月)
(1~6月)
495
200
626
0
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
(注)1.出所:日本政府観光局
2.2014年は1~6月の実績をもとに7~12月及び通期を推計。
26
2014年
図 表 12 訪 日 外 客 数 (インバウンド)の推 移 ≪国 別 ≫
2010年
2011年
2012年
2013年
2012年比
総数
8,611
6,219
8,358
10,364
24.0
アジア計
6,528
4,724
6,388
8,116
27.0
韓国
2,440
1,658
2,043
2,456
20.2
中国
1,413
1,043
1,425
1,314
▲ 7.8
台湾
1,268
994
1,466
2,211
50.8
香港
509
365
482
746
54.9
タイ
215
145
261
454
74.0
シンガポール
181
111
142
189
33.1
マレーシア
115
82
130
177
35.6
インドネシア
81
62
101
137
34.8
フィリピン
77
63
85
108
27.4
ヨーロッパ計
853
569
776
904
16.5
英国
184
140
174
192
10.2
フランス
151
95
130
155
18.8
ドイツ
124
81
109
122
11.8
北アメリカ
906
685
876
982
12.0
米国
727
566
717
799
11.5
カナダ
153
101
135
153
12.9
オセアニア
261
189
242
285
18.0
豪州
226
163
206
245
18.5
その他
63
52
76
77
1.0
(注)1.出所:日本政府観光局「訪日外客数の動向」
2.国別は2013年の実績が10万人以上を掲載。
3.網掛けは2013年以降にビザの波及要件を緩和した国。
(単位:千人、%)
2014年
1~6月 前年同期比
6,260
26.4
1,276
▲ 3.3
1,009
88.2
1,391
35.1
421
14.9
331
63.8
98
17.5
116
62.5
75
15.6
92
62.9
104
11.0
82
12.8
67
15.0
446
12.4
87
15.2
155
17.8
-
図 表 13 最 近 のビザ緩 和 措 置 一 覧
国名
2011年
9月1日
2013年
7月1日
中国
以前の措置
緩和措置
(括弧内は滞在期間)
ビザ波及要件:一定の職業上の地 ビザ波及要件:一定の経済力を有
位及び経済力を有する者(15日)
する者(30日)
タイ
数次ビザ(90日)
ビザ免除(15日)
マレーシア
数次ビザ(90日)
ビザ免除再開(90日)
ベトナム
一次ビザ(90日)
数次ビザ(15日)
フィリピン
一次ビザ(90日)
数次ビザ(15日)
インドネシア
数次ビザ(15日)
数次ビザの滞在期間延長
(最長30日に延長)
10月15日
アラブ首長国連邦
一次ビザ(90日)
数次ビザ(90日)
11月18日
カンボジア
一次ビザ(90日)
数次ビザ(15日)
ラオス
一次ビザ(90日)
数次ビザ(15日)
パプアニューギニア
一次ビザ(90日)
数次ビザ(15日)
一次ビザ(90日)
数次ビザ(15日)
11月25日
2014年
7月3日
(出所)外務省
インド
27
国内の人口減少 ・高齢化の進行に伴う経済下押し圧力の強まり
わ が国の人 口 動向に つい ては、3 ページの 通り であるが 、 本県の 人口 は、 国勢調
査ベ ースの千 葉県人口のピ ーク が 2010 年となる か 2015 年 となるかは 今後の動 向次
第だ が、千葉 県人口もいず れ減少に 転じ、 40 年には 536 万人 ((国勢 調査ベー スの
実績 ・推計値 )、 10 年比▲ 86 万人) になると推 計されて い る(図表 14)。ま た、本
県の 産業の主 な担い手であ る生産年 齢人口( 15~ 64 歳 )は、00 年( 424 万人)に は
既に ピークア ウト しており 、40 年の 288 万人( 平成 12 年比 ▲136 万人 )まで減 少す
る見 通しとな っている 。こ の間、高 齢化率(総人 口に占め る 65 歳以上 の人口割 合)
は、 右肩上が りの上昇を続 けて、 40 年に は 36.5%( 平成 22 年比 + 15.0 ポイ ント )
と 急速に高 齢化が進 む 見 込みであ る。こう した 人口減少 や高齢化 の急 速な進行、労
働力 人口の減 少は、千葉県 経済にと って は、消費 マーケッ トや生産活動 の縮小な ど、
需 給両面に 渡って 下 押し 圧力とし て働くこ とが 懸念され る 。本県 の産 業が持続的に
発 展してい くために は、 こうした 人口動態 や社 会構造 の 変化に対 応し 、マーケット
の拡 大が見込 まれる成長産 業に事業 領域をシフト していく ことが重要で あ る。
東日 本大震災 の発生以降の 県内の人 口動向をみる と、11 年3月 の 621 万人か ら 漸
減の 動きを続 け、 12 年4 月には、 620 万 人を下 回る水準 となった (図 表 15)。その
後も マイナス の動き が続い たあと、 13 年 入り後 は、 619 万人を挟んだ 水準で 横 ばい
圏内 の動きと 、下げ止まり の様相な がら力強い回 復軌道は 描けていない 。
こ の間、県 内の人口 動向 を地域別 にみると 、当 面増加が 見込める 地域 と減少が続
く地 域 ( 注 2) との 2極化が顕 著であり(図 表 16)、今 後 の 千 葉 県 に お い て は 、少 子 高
齢 化及び人 口減少の トレ ンドを注 視するな か、 各地域の 実情に応 じて 、地域の活力
を維 持・向上 に向けた「持 続可能な まちづくり ( 注 3)」の推 進が求められ る。
(注2)日本創成会議の提言「ストップ少子化・地方元気戦略(14 年5月)
」によると、2010 年か
ら 2040 年にかけて若年女性(20~39 歳)が 50%以上減少する県内 26 市町村について、人
口の再生産力が乏しく総人口の減少に歯止めがかからない「消滅可能性都市」と定義した(図
表 17)
。これらの市町村は、いずれも東京都心から半径 50 ㎞圏外に位置しており、過疎化
の進行が懸念されている地域である。
(注3)本レポートでは、持続可能なまちづくりを「将来世代のニーズを満たす機能を損なうこと
なく、現在の市民満足度を高めるまちづくり」と定義します。
28
図 表 14 千 葉 県 人 口 の推 移 (2015 年 以 降 は推 計 )
図 表 15 千 葉 県 の人 口 推 移 (東 日 本 大 震 災 以 降 )
6,220
(千人)
6,210
6,200
6,190
6,180
2011年
2012年
2013年
(出所)千葉県「千葉県毎月常住人口調査」
29
2014年
図 表 16 千 葉 県 の人 口 推 移 (増 加 ・減 少 自 治 体 別 )
(前年比、単位:人)
2010年
2011年
2012年
2013年
2013年
県内人口増加自治体
の人口増減数
(15自治体注2)
人口増減
34,189
3,544
3,950
13,886
社会増減
25,589
▲ 3,219
▲ 877
9,635
自然増減
8,600
6,763
4,827
4,251
2013年
県内人口減少自治体
の人口増減数
(39自治体)
人口増減
▲ 4,481
▲ 14,237
▲ 16,932
▲ 15,252
社会増減
1,871
▲ 6,951
▲ 8,441
▲ 6,423
自然増減
▲ 6,352
▲ 7,286
▲ 8,491
▲ 8,829
人口増減
29,708
▲ 10,693
▲ 12,982
▲ 1,366
社会増減
27,460
▲ 10,170
▲ 9,318
3,212
自然増減
2,248
▲ 523
▲ 3,664
▲ 4,578
2013年
千葉県人口増減総数
(54自治体)
(注)1.出所:千葉県「千葉県毎月常住人口調査報告書」のデータをもとにちばぎん総合研究所が作成。
2.15自治体は以下の通り。
千葉市、市川市、船橋市、木更津市、成田市、習志野市、柏市、流山市、八千代市、浦安市、四街道市、
袖ケ浦市、印西市、白井市、酒々井町
30
図 表 17 消 滅 可 能 性 都 市 (地 図 の網 掛 けの市 町 村 )
市町村
栄町
長南町
鋸南町
東庄町
睦沢町
銚子市
長柄町
御宿町
山武市
富津市
白子町
大多喜町
南房総市
匝瑳市
香取市
八街市
多古町
芝山町
九十九里町
横芝光町
勝浦市
神崎町
東金市
いすみ市
君津市
館山市
酒々井町
富里市
茂原市
佐倉市
旭市
長生村
市原市
我孫子市
大網白里市
木更津市
市川市
流山市
松戸市
鴨川市
袖ケ浦市
白井市
四街道市
印西市
船橋市
野田市
千葉市
一宮町
浦安市
習志野市
柏市
鎌ヶ谷市
成田市
八千代市
20~39歳女性
人口減少率
▲ 77.3
▲ 72.0
▲ 70.1
▲ 68.0
▲ 67.3
▲ 65.4
▲ 65.1
▲ 65.1
▲ 64.9
▲ 64.5
▲ 63.9
▲ 61.8
▲ 61.7
▲ 61.4
▲ 61.1
▲ 61.0
▲ 60.8
▲ 60.6
▲ 59.3
▲ 58.5
▲ 58.2
▲ 57.2
▲ 56.2
▲ 55.3
▲ 55.2
▲ 51.2
▲ 47.6
▲ 47.0
▲ 46.8
▲ 45.1
▲ 45.1
▲ 43.8
▲ 43.6
▲ 43.4
▲ 43.0
▲ 42.5
▲ 41.5
▲ 39.9
▲ 39.4
▲ 35.6
▲ 34.7
▲ 31.3
▲ 30.6
▲ 30.4
▲ 30.3
▲ 30.2
▲ 27.8
▲ 26.7
▲ 22.2
▲ 21.6
▲ 21.0
▲ 19.6
▲ 18.4
▲ 11.3
東京駅から半径50㎞のエリア
圏央道
(注)1.出所:日本創成会議のデータをもとにちばぎん総合研究所が作成。
2.数表の網掛けは消滅可能性都市(2010年から2040年にかけて20~39歳の女性人口の減少率が50%以上)。
31
グローバル化の進展に伴う国内産業の空洞化
製 造業の海 外シフト は、 バブル期 以降、主 に海 外の安価 な労働力 を活 用した生産
コ ストの削 減を目的 に進 んできた が、近年 では 、アジア の新興国 を中 心とした海外
の旺 盛な消費 需要の獲得な どを目指 す傾向が 強ま ってい る 。
製 造 業 の 過 去 5 年 間 の 海 外 生 産 比 率 ( 上 場 企 業 ) の 推 移 を み る と 、 2009 年 度 の
17.1%か ら 13 年度に は 21.6% (09 年度比+ 4.5 ポイン ト)に上昇し ており( 図表
18)、業種 別では、労働生産 性 の高い 加工型産業の 海外進出 意欲の高さが 際立って い
る 。企業の 海外展開 の 先 行きをみ ても 、海 外に 生産拠点 を置く理 由と して、「現 地、
進 出先近隣 国の需要 が旺 盛又は今 後の拡大 が見 込まれる 」をあげ る企 業が 約半数を
占め ているこ とから (図 表 19)、更 に強まる見通 し となっ ている( 18 年度製 造業海
外生 産比率見 通し: 25.5% )。
図 表 18 海 外 生 産 比 率 の推 移 (上 場 企 業 )
見通し
35
製造業
(%)
30
加工型
素材型
その他
25.5
25
21.6
20
17.1
15
10
5
0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 18
(年度)
(注)1.出所:内閣府「2013年度企業行動に関するアンケート調査報告書」
2.2013年度は実績見込み、2018年度は見通し。
図 表 19 海 外 に生 産 拠 点 を置 く理 由 (構 成 比 )
(単位:%)
2012年度
調査
2013年度調査
製造業
素材型
製造業
加工型
製造業
その他の
製造業
製造業
現地・進出先近隣国の需要が旺盛
又は今後の拡大が見込まれる
50.8
62.8
42.1
54.3
45.8
労働力コストが低い
19.1
12.8
21.1
22.2
23.1
現地の顧客ニーズに応じた対応が可能
14.4
12.8
19.1
7.4
11.4
資材・原材料、製造工程全体、物流、
土地・建物等のコストが低い
7.5
5.8
9.2
6.2
9.1
親会社、取引先等の進出に伴って進出
5.0
4.7
5.3
4.9
5.5
現地に部品、原材料を安定供給する
サプライヤーがある
1.3
1.2
0.7
2.5
2.6
その他
1.9
0.0
2.6
2.5
2.6
(注)1.出所:内閣府「2013年度企業行動に関するアンケート調査報告書」
2.選択肢の中から最も近いものを1つ選んで回答。
32
2. 千葉県が抱えている 7 つの課題
こ れまで見 てきたよ うに 、千葉県 を取り巻 く環 境は、ア ベノミク スに よる 国内の
景 気回復の 兆しや ア ジア における 人口・経 済規 模の拡大 に伴う日 本経 済 への波及効
果 への期待 がある一 方 、 国内にお ける少子 高齢 化・人口 減少の動 きが 経済の下押し
圧 力となっ ているこ とや 、グロー バル化の 進展 に伴う国 内産業( 主に 製造業)の空
洞 化などマ イナス面 も少 なくない 。こうし たプ ラス・マ イナスの 動き が相 まった変
化が 激しい時 代のなかで、 2013 年 8 月 に は 、 東 京 オ リ ・ パ ラ の 開 催 が 決 定 さ れ た 。
千 葉県が持 続的な発 展を 遂げるた めには、 現在 、置かれ ている環 境( 外部環境)
及 び内在し ている 課 題 へ の対応策 を 千葉県 や市 町村、企 業・各種 団体 、市民などの
関係 主体が 一 丸となって 推 進してい く実行力が求 められて いる。
千葉 県が抱え ている課題は、千葉県 経済 同友会が まとめた レポート「千葉 県の 30
年後 の将来像( 2013 年4 月公表 )( 注 4)」のなか で 10 項目にま とめてい るが 、そ の 後
の約 1年強の 間に、 以下の ような前 提条件の変化 が生じ た 。
≪ 2013~ 14 年にか けて生 じた前提 条件の変化≫
①東 京オリ・ パラの開催 が 決定した こと 、
② 成田市が 「国際医 療学 園都市構 想」及び 「エ アポート 都市構想 」で 国家戦略特
区に かかる区 域の指定を受 けたこと 、
③首 都圏空港 の容量拡大方 針が示さ れたこと( 71.7 万回 [2013]→ 74.7 万回+ 最大
7.9 万 回)
④ 羽田空港 の国際線 が二 次増枠 し た影響が 大き かった こ と(昼間 時間 帯に発着枠
が年 間3万回 増加)
⑤「日 本創成会 議」が指摘 した消滅 可能性都市に 千葉県の 半数の自治体( 26 市町
村) が含まれ たこと、など
そこ で、本調 査では 、「千 葉県 の 30 年後の将来 像 」の課 題認識をベー ス に、上 記
の前 提条件の 変化などを踏 まえ、改 めて千葉県の 課題を見 直し てみ た( 図表 20)。
そ の結果、 ①東京オ リン ピック・ パラリン ピッ クへの対 応( 経済 波及 効果の確実
な取 り込みと レガシー創造 )、② 成田空港 及び圏 央道、東 京湾アクアラ インを活 用し
た 地域活性 化、③千 葉県 の 地域特 性と 優位 性を 活かした 産業のイ ノベ ーション、④
観 光分野の フィール ド拡 大、⑤東 日本大震 災か らの完全 復興(地 域の 防災 対応力・
防犯 力の強化 )、⑥安心・安全な医 療・福祉 体制 の確立、⑦コンパクト シティ・スマ
ート シティの 推進、の7つ に集約 し た。
千 葉県が東 京オリ・ パラ に戦略的 に対応 し てい くことは 、 千葉県 が抱 えている 課
題 の緩和に 寄与する だけ に、 東京 オリ・パ ラ開 催 に伴う 果実とと もに 、開催後のレ
ガシ ー創出を 視野に入れた 取り組み が求められる 。
(注4)千葉県経済同友会が設立 40 周年の記念提言として、千葉県の 30 年後の将来像を4つの成
長エリアの発展の方向性・アクションプランとしてまとめたレポート(調査は(株)ちばぎん
総合研究所に委託して実施)
33
図 表 20 千 葉 県 が抱 えている7つの課 題 (2014 年 9月 時 点 )
「千葉県の30年後の将来像」における課題
(千葉県経済同友会)
≪2013年4月時点≫
今回調査時点の課題
≪2014年9月時点≫
(1)成田空港を活用して県内への経済波及
効果を高めること
( 2)成田空港及び圏央道、東京湾アクアライン
を活用した地域活性化
(2)圏央道の早期全線開通及びアクアライン
800円の恒久化
(3)グローバル化の進展に伴う京葉臨海工業
地帯の利活用
(4)幕張新都心における新たな産業振興
( 3)千葉県の地域特性と優位性を活かした
産業のイノベーション
(5)かずさアカデミアパークへの企業立地の
促進
(6)南房総地域の地場産業(農業・漁業、
観光産業)の育成
( 4) 観光分野のフィールド拡大
(7)東日本大震災に伴う放射能・液状化
・津波被害への対応及びブランド力の回復
( 5) 東日本大震災からの完全復興
(地域の防災対応力・防犯力の強化)
(8)急速な高齢化の進行への対応
( 6)安心・安全な医療・福祉体制の確立
(
(9)医療のキャパシティ不足への対応
(特に都市部)
(10)2011年に人口が初めて減少したことを
どう克服するか
( 7)コンパクト&スマートシティの推進
34
(
1
)
東
京
オ
リ
ン
ピ
ッ
ク
・
パ
ラ
リ
ン
ピ
ッ
ク
へ
の
対
応
(
経
済
波
及
効
果
の
確
実
な
取
り
込
み
と
レ
ガ
シ
ー
創
造
)
2020 年東京オリンピック・パラリンピックへの対応
( 経済波及効果の確実な取り込みと レガシー創造)
東京 オリ・パラの開催に伴 う千葉県 の経済波及効 果は 、852 億円 と推計 される(ち
ばぎ ん総合研 究所が 2014 年 1月に推 計)。 その 内訳とし ては、 東京オ リ ・パラ開催
期 間中の参 加者 等の 県内 消費や大 会運営費 (舞 浜地区の ホテル保 証費 、成田国際空
港の広告スペース確保費用など)
、千 葉 県 民 の 五 輪 グ ッ ズ ・テ レ ビ 購入 費 な ど 県 内 消
費増 加額 が 201 億円、東京 都内の設 備投資に係る 千葉県へ の波及効果 (下請工事・建
材販 売代金な ど) が 651 億円と なってい る。 こ の経済波 及効果の 規模 は、東京 湾ア
クア ラインの 料金引き下げ 社会実験 (普通車通行 料 :3,000 円→ 800 円)に伴う県内
観光 分野の経 済波及効果 195.1 億円/年の約4年 分に相当 する大きな効 果 といえ る 。
最 近の新聞 報道によ ると 、 東京オ リ・パラ 関連 施設 の整 備費が大 規模 な追加工事
や周 辺の道路 整備など を織 り込む と 7,141 億円( 当初 4,554 億円 比+ 57%)に上 る
と の試算が 出されて いる 。 また、 セーリン グ( ヨット) の競技会 場と して稲毛ヨッ
ト ハーバー (千葉市 美浜 区)が検 討されて いる との報道 もある 。 仮に 、施設整備費
が当 初の 4,554 億円から 10%増 加した 場 合の経 済波及効 果 の増加額 は 65 億円 、30%
増加 の場合 は 195 億 円、 50%増加の 場合 は 392 億円と なり、プ ラス効 果 は大き い 。
ま た、セー リング( ヨッ ト)の競 技会場 が 稲毛 ヨットハ ーバー に 決定 した場合は、
観 戦客の来 場及び消 費需 要の増加 により3 億円 の経済波 及効果が 期待 できる。 この
2つ の変化要 因 を合算する と 、千葉 県の経済波及 効果 は最 大 1,247 億円 に拡大す る
可 能性があ る(図表 21)。こうし た経済波 及効 果を県内 に確実に 取り 込む ことが望
まし く、関係 者が一丸とな った競技 の誘致活動が 求められ る。
こ の経済波 及効果額 は、 東京オリ ・パラ開 催期 間中(施 設整備費 を除 く)の効果
で あり、東 京オリ・ パラ 開催前に 増加する 需要 (外国人 観光客の 訪日 増加や選手等
の事 前合宿に 伴う 来訪者 の 増加、東京 オリ・パラを 先取りし た企業の設備 投資 など )
は含 まれてい ない 。例えば 、日 本政府は 、東京オ リ・パラ が開 催され る 2020 年まで
にイ ンバウン ド を 2,000 万人に すること を目指 して いる が、この目標 が達成さ れた
際の 千葉県に おける 追加的 な 直接効 果 (消費増加 額 ・推計 値 ) は 883 億円/ 年にの
ぼる(図 表 22)。また、千葉県内企 業の 2014 年度 の設備投 資額は 、東京オリ・パラ
を 視野に入 れた運輸 ・ 不 動産など の設備投 資( 空港施設 拡充・安 全対 策投資等)が
けん 引役とな って、約 3,500 億円( 13 年度比 +3割 [+ 約 900 億円 ])と 大幅増加 し
て いる(図表 23)。 この ように み ると、 東 京オ リ・パラ の 開催に 伴う 千葉県の 経済
波 及効果は 、開催期 間中 の消費額 及び 新国 立 競 技場など の 東京都 内の 施設整備費の
恩 恵もさる ことなが ら、 東京オリ ・パラ に 向け た 各種取 り組みに 伴う 東京オリ・パ
ラ 開催まで に発生す る 波 及効果の 方がはる かに 大きい こ とが分か る 。 もっとも、東
京 オリ・パ ラの開催 を大 きなビジ ネスチャ ンス ととらえ 、 何らか のア クションを興
さ なければ 、インバ ウン ドも増え ないし、 新た な 消費需 要も生ま れ は しない。千葉
県 が、これ らの果実 を得 るために は、訪日 外国 人や事前 キャンプ の誘 致 推進及び受
け 入れ体制 の向上に 向け た環境整 備( 設備 投資 )などを 積極的に 進め るとともに、
自治 体と民間 が一体となっ た「 オール千 葉」の推 進体制の 確立が不可欠 といえる(図
表 24)。
35
図 表 21 2つの変 化 要 因 をふまえた千 葉 県 への経 済 波 及 効 果 (改 訂 結 果 )
セーリング
[ヨット]競技 2つの変化要因を
が千葉県で開催 ふまえた増加額
された場合
施設整備費が増加した場合
852億円
千葉県への
経済波及効果
(改定値)
10%増加
+65億円
+3億円
+68億円
920億円
30%増加
+195億円
+3億円
+198億円
1,050億円
50%増加
+392億円
+3億円
+395億円
1,247億円
(2014年1月推計)
(出所)ちばぎん総合研究所が推計
図 表 22 インバウンド 2,000 万 人 達 成 時 の千 葉 県 の直 接 効 果 額
2014年
2020年
2013年
(見込み) (推計) 2013年比
インバウンド数
(万人)
1,036
1,300
2,000
964
(訪日外国人)
千葉県訪問率
(%)
9.62
9.62
9.62
-
千葉県訪問者数
(万人)
100
125
192
93
消費単価
(円)
75,257
77,356
84,852
-
750
967
1,633
883
千葉県観光消費総額
(億円)
(直接効果)
(注)1.出所:日本政府環境局「訪日外客数の動向」及び観光庁「平成25年 訪日
外国人消費動向調査」のデータを用いてちばぎん総合研究所が作成。
2.消費単価は物価の上昇を考慮(日本経済研究センターの推計値)した。
図 表 23 首 都 圏 1都 3県 内 企 業 の設 備 投 資 計 画 額 (2014 年 度 )
(単位:億円、カッコ内は前年度比増減率%)
全産業
製造業
増加する
主な業種
非製造業
増加する
主な業種
34,605
7,518
27,087
(31.6)
(20.1)
(35.1)
3,542
922 化学・一般機械
2,620 運輸・不動産
千葉県
(33.6)
(20.5)
(38.9)
25,450
3,710 石油・一般機械
21,740 不動産・運輸
東京都
(38.6)
(17.6)
(42.9)
3,665
2,011 輸送用機械・石油
1,654
卸売・小売
神奈川県
(▲4.5)
(18.3)
(▲22.6)
1,949
876 電気機械・化学
1,073 運輸・不動産
埼玉県
(34.6)
(37.0)
(32.7)
(出所)日本政策投資銀行「2013・2014・2015年度 首都圏設備投資計画調査」
首都圏全体
36
図 表 24 東 京 オリンピックに向 けて取 り組 むべき事 項
訪日外国人誘致
キャンプ誘致
環境整備
推進体制
・ターゲットを絞った資
源の洗い出し(食、買
物、観光など)
・外国人専門観光プラ
ンの開発
・メニューのユニバー
サル化(ベジタリア
ン、ハラール)
・従業員の外国語対
応
・滞在型施設の充実
・他に先駆けた積極
的な誘致活動の取組
み
・パラリンピック競技
の積極誘致
・可能性が高い種目
への重点的な誘致活
動(※)
・県内施設のリスト
アップ
・各国競技団体、大
使館等への働きかけ
・自治体や民間施設
との連携
・バリアフリー化
・交通インフラ整備の
前倒し
・外国語表示
・二次交通の充実・低
価格化
・情報化への対応(公
衆無線LAN、SNSで
の情報発信)
・自治体と民間が一
体となったオール千
葉での推進体制
・成田空港活用協議
会との連携
・首都圏での広域連
携
(注)1.出所:(株)ちばぎん総合研究所「2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う千葉県への経済波及効果
2.陸上、水泳、バレーボール、柔道、卓球、ゴルフ、サッカーなどは誘致実績や世界規模の大会の経験がある。
37
成田空港及び圏央道(アクアライン)を活用した地域活性化
成田 空港は、 国際 線 34 か国 ・3地域 の 100 都市 、国内 線 15 都市の合 計 115 都市
( 2014 年 夏ダイヤ 開始時 点)を結ぶ 日本の空の 玄関口で あり 、千葉県 最大の交 通イ
ンフ ラであ る 。
成田 空港の航 空旅客数(国際 線+国内 線)は、2009 年度 に 3,685 万人 となった あ
と、 11 年 3月の東 日本大 震災の発 生の影響によ り、 11 年度に は 2,885 万人 (09 年
比 ▲21.7% )に落ち 込ん だ 。その 後、時間 の経 過ととも に風評被 害が 払拭されてき
たこ とや中国・タイなどの ビザ 発給 要件の緩和、L CCの新 規就航など を映じ て 12
年度 (3,343 万人)、13 年 度(3,604 万人)と2 年連続で 増加した(図 表 25)。 もっ
とも 、13 年度の国 際線の 航空旅客 数は、 10 年 10 月の羽田 空港の再 国際化の 影響な
どか ら 3,086 万人( 09 年 度比▲ 466 万人)に減 少してい る (羽田空港 国際線の 航空
旅客 数: 09 年度 275 万人 → 13 年度 803 万人、 09 年 度比+ 528 億円、 図表 26)。
成田 空港 の 14 年 度の航空 取扱量(見通 し)をみ ると 、航空機 発着回数 は、オープ
ン スカイ効 果による 新規 就航や国 内線LC Cの 増便・新 規就航な ど か ら前年度を上
回る 見通しと なっている(図 表 27)。一方、航空旅 客数は、羽 田空港の2 次増枠( 2014
年 夏ダイヤ より国際 線が 3万回増 枠) や地 方空 港の国際 線就航な ど の 影響もあって
前 年度比マ イナスと なる 見通し。 また、国 際航 空貨物量 は、メー カー の海外 への生
産 拠点の移 転の動き など から前年 割れが見 込ま れている 。 このよ うに 成田空港の 運
用 状況は、 羽田空港 など との競合 激化や産 業の グローバ ル化の進 展に 伴 って厳しさ
が強 まってい る。
一方 、圏央道 の整備状況を みると、 千葉県内では 、 13 年4月 27 日に木 更津東I
C~ 東金JC T間、 14 年4月 12 日 には稲敷I C~神崎 IC間がそれ ぞれ開通 し、
神崎 IC~ 大 栄JCT間 が 14 年度中の 供用開始 予定とな っているが、大 栄JCT ~
松尾 横芝IC 間( 18.5km )は、いま だに開通目 標年度が 定められてい ない。な お、
圏央 道と連結 している 東京 湾アクア ライン では、 09 年8月 から 13 年度 までの予 定
で普 通車の通 行料金を 800 円 とする社 会実験が 実施され てい たが、 社 会実験が 終わ
る 14 年 度以降も 当面 10 年間 は 800 円( 普通車 )の通行 料 を続けるこ ととな っ た。
ま た、千葉 県には、 北千 葉道路や 外環道( 東京 外かく環 状道路 ) をは じめ、茂原・
一 宮・大原 道路(長 生グ リーンラ イン)や 銚子 連絡道路 といった 道路 の整備計画も
あ り、何れ も早期開 通が 地域住民 や事業者 など から求め られてい る。 とりわけ、 成
田 空港及び 圏央道、 東京 湾アクア ラインは 、 千 葉県の半 島性とい う 地 理的な デメリ
ット を払拭す るポテンシャ ルがある( 図表 28)だけに、圏 央道の 大栄 JCT~ 松尾
横 芝IC間 の早期開 通 や 成田空港 の利活用 の促 進は千葉 県にとっ て大 きな課題とい
え る。千葉 県の森田 知事 は、 首都 圏中央連 絡自 動車道建 設促進県 民会 議や関東地方
知 事会議に おいて、 大栄 JCT~ 松尾横芝 IC 間 を東京 オリ・パ ラの 開催 までに完
成さ せたい意 向を表明して いる。
近年 、千葉 県内の湾 岸部や 東葛地域 で大型物流施 設(延 べ床面 積 10 万㎡ 超)の 開
発 が相次ぐ なか、こ れら の地域に おける適 地不 足の状況 が強まっ てい る。今後、圏
央 道や北千 葉道路の 周辺 地域は、 将来の全 線開 通に伴う アクセス 利便 性の向上が見
込ま れるだけ に、物流企業 の立地候 補地としての ポテンシ ャルが高まっ ている。
38
東京 オリ・パ ラとの関連性
日 本と世界 を結ぶ中 枢的 な役割を 担う 成田 空港 と羽田空 港 を結ぶ 圏央 道及びアク
ア ラインは 県内各地 域 に 人・物・ 金・情報 を運 ぶ 最大の 動線であ る。 東京オリ・パ
ラ の開催決 定に中国 ・タ イなどへ のビザの 発給 要件の緩 和が相 ま って 、インバウン
ド が急速に 増加して いる なか、今 後は、実 需に 対応して 物流規模 が 拡 大する可能性
も ある。成 田空港の 国際 ハブ機能 が強化さ れれ ば、乗り 継ぎ待ち 時間 の観光客(ト
ラ ンジット 客)も増 加す る。 一方 、国内で は、 人口の先 細りが見 込ま れるなか、イ
ン バウンド などの交 流人 口の獲得 競争 が激 化し ている。 東京オリ ・パ ラ開催をイン
バ ウンドの 来訪増加 の好 機ととら え、千葉 県を 訪問しや すい 公共 交通 の整備と とも
に 、地域の 魅力づく り と 受け入れ 体制の整 備及 び 産業振 興による 需要 の創造などが
求め られてい る。
図 表 25 成 田 国 際 空 港 の航 空 旅 客 数 の推 移
4,000
(万人)
3,318
3,500
3,026
3,000
2,500
111 2,996
80 2,744
67
3,665 3,685
114 111 115 123
113 133
3,604
3,343
3,252
169 2,885 372
110
518
4,000
3,500
3,000
193
2,500
2,000
1,500
3,512 3,467 3,534 3,539
2,946
3,207
2,677
3,398 3,356 3,419 3,416 3,551 3,552
2,886
3,083
2,971
3,086
2,693
2,000
1,500
1,000
1,000
500
500
0
0
00
01
02
(年度)
03
04
05
国際線
06
07
国内線
(出所)成田国際空港㈱
39
08
09
10
11
12
13
図 表 26 国 際 線 航 空 旅 客 数 (成 田 空 港 と羽 田 空 港 )の推 移
4,100
(万人)
成田空港+羽田空港
3,900
成田空港
485
130
84
724
3,500
3,5513,552
14
3,300
2,900
791
161 195
3,700
3,100
803
243 275
97
2,946
3,398
3,207
3,356
3,4193,416
35
2,971
2,886
2,700
2,693
2,677
2,500
00
3,086
3,083
95
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
(年度)
(出所)成田国際空港(株)及び日本空港ビルディング㈱
図 表 27 成 田 空 港 の航 空 取 扱 量 見 通 し(2014 年 度 )
航空機発着回数(万回)
2013年度
2014年度
実績[A]
見通し[B]
22.6
23.4
増減数
増減率(%)
[B-A]
[B/A]
0.7
3.3
国際線
17.8
18.0
0.2
1.2
国内線
4.8
5.3
0.5
11.1
3,604
3,537
▲ 67.0
▲ 1.9
国際線
3,086
2,913
▲ 174.0
▲ 5.6
国内線
518
624
106.0
20.5
国際航空貨物量(万t)
199
183
▲ 16.0
▲ 7.8
給油量(万kl)
(出所)成田国際空港(株)
481
467
▲ 14.0
▲ 2.9
航空旅客数(万人)
40
図 表 28 千 葉 県 の首 都 圏 空 港 及 び圏 央 道 ・アクアラインの活 用 による半 島 性 の払 拭 (イメージ)
北関東からの
ア ク セス効果
成田空港
羽田空港
産業・物流面の
経済波及効果
袖ケ浦椎の森
工業団地
羽田空港からの
ア ク セス効果
茂原にいはる
工業団地
観光・交流面の
経済波及効果
(出所)ちばぎん総合研究所が作成。
41
観光・交流面の
経済波及効果
千葉県の 地域特性と優位性を活かした産業のイノベーション
千葉 県は、製 造業の製造品 出荷額( 2012 年) が 11 兆 8,867 億円(構 成比 4.2% 、
全 国7位) と全国有 数の 工業県で ある (図表 29)。と りわけ、 浦安 市から富 津市に
か けて広が る 東京湾 臨海 部に位置 する京葉 臨海 工業地帯 は、県内 の製 造品出荷額の
約 3分の2 を占め、 県内 製造業を 強く牽引 して いる 。一 方、県内 製造 業の付加価値
額は 、3.2 兆円(構成比 3.5%)と全国9 位の水 準で 、全国順 位及び構 成比とも 製造
品 出荷額よ り低位に 留ま っている 。これは 、県 内製造業 の業種構 成が 、素材型産業
( 石油・鉄 鋼など) が多 い ことに 加え 、一 般的 に付加価 値が高い 加工 産業(輸送用
機 械や電気 機械など )が 少ないこ とがあげ られ る。また 、 国内製 造業 の経営環境を
み ると、生 産のグロ ーバ ル化 が加 速してお り 、 海外投資 に伴う国 内製 造業の 空洞化
はさ らに強ま っていくもの とみられ る。
千葉 県内製造 業の将来を展 望すると、首都圏の台 所の役割 を担 う食料品 製造業(船
橋 市の京葉 食品コン ビナ ート等) は、人口 減少 の影響を 受けつつ も首 都圏の旺盛な
消 費需要を 映じて 国 内に おける競 争力 を維 持す る可能性 が 高い。 一方 、千葉県の製
造 品出荷額 の約6割 を占 める 素材 型産業 ( 石油 ・石炭、 化学、鉄 鋼) は、国内の需
要 縮小をに らみつつ 、 新 興国など の需要拡 大を 取り込む ため の海 外進 出が 今後も続
く とみられ る。 千葉 県の 製造業が 持続的な 発展 を遂げる ためには 、 起 業家精神と経
済 合理性の 発揮によ って 、 空洞化 が進む産 業 に 代わる 新 たな産業 振興 を目指すこと
が求 められる 。
折し も、14 年5月 1日に は、成田 市が「国際医 療 学園都 市構想 」及び「 エアポ ー
ト 都市構想 」で国家 戦略 特区 対象 区域 に位 置付 けられた 。千葉県 は、 医療機械の生
産額( 2012 年)は 921 億円 で全国8 位の水準と、も ともと医 療系の産業 集積が多 い
こと に加え 、成田空 港など の交通イ ンフラや亀田 病院( 鴨川市 )、旭中央 病院( 旭市)
な ど著名な 病院が立 地し ている 。 そのメリ ット を最大限 活用し、 相乗 効果を図るこ
と ができれ ば、 医療 産業 都市(千 葉県版メ ディ カルバレ ー) とし ての 道が開かれる
可 能性が高 い 。千葉 県 が 実施した 企業アン ケー トによる と、千葉 県内 の中小製造業
の新 たな進出 分野(意向含 む)は 、
「健康医 療もの づくり」が 27.4%と最 も多く 、
「新
エ ネルギー ( 23.3% )」、「IT ・情報関 連( 19.6% )」が 続いて お り、 これらの分野
に関 する企業 の参入意欲は 高い(図 表 30)こと からみて 、千葉県 に は 、産業面の 優
位性 を活かし た産業のイノ ベーショ ンを目指す 素 地はある ものと考えら れる 。
東京 オリ・パ ラとの関連性
千 葉県の製 造業は、 これ まで素材 型産業が 牽引 してきた が、素材 型産 業の海外展
開が 加速して いることを踏 まえると 、今後 もさら に空洞化 が進む 可能性 がある。
一 方、千葉 県内の中 小製 造業のな かには、 高い 世界シェ アを誇る 高度 な技術力を
持 ちながら 知名度が 低い 企業も少 なくない 。 東 京オリ・ パラの開 催 決 定に伴い 、こ
う した日本 の高品質 なも のづくり ( メイド ・イ ン・ジャ パン )の 注目 度 が世界中で
高 まること は、 千葉 県 内 製造業 の 高い技術 力 で 生産され た 製品等 を世 界に売り込む
絶好 のチャン スであ る。
こ のような 追い風を 千葉 県の産業 がイノベ ーシ ョンを図 る好機と とら え、アベノ
ミ クスで戦 略市場に 位置 付けられ ている「 健康 寿命延伸 関連産業 」 や 「環境・エネ
ル ギー」、「 次世代イ ンフ ラ」、「地 域資源( 農業 等)の活 用」、「観 光」 などの分野に
経 営領域を シフト し てい くことが 、千葉県 の製 造業が今 後も安定 的な 成長カーブを
描く ためにも 必要と考えら れる 。
42
図 表 29 製 造 品 出 荷 額 等 及 び付 加 価 値 額 (都 道 府 県 別 ランキング)
製造品出荷額等
順
1位
都道府 実 数 構成比
位 県 名 (兆円)
(%)
付加価値額
2位
3位
産業
構成比
産業
構成比
産業
1-3位 都道府 実 数 構成比
構成比 構成比 県 名 (兆円)
(%)
1位 愛 知 県
37.0
13.0
輸送
48.6
鉄鋼
6.9
電気
4.5
59.9 愛 知 県
10.8
11.8
2位 神奈川県
17.9
6.3
輸送
20.3
石油
15.1
化学
9.8
45.3 大 阪 府
5.5
6.0
3位 大 阪 府
16.5
5.8
化学
12.4
石油
8.9
鉄鋼
8.3
29.6 神奈川県
5.3
5.8
4位 静 岡 県
14.9
5.2
輸送
26.1
化学
10.7
電気
10.0
46.8 静岡県
5.2
5.7
5位 兵 庫 県
14.4
5.0
鉄鋼
13.4
化学
12.1
食料
9.9
35.4 兵 庫 県
4.6
5.0
6位 埼 玉 県
12.1
4.3
輸送
15.8
化学
12.5
食料
11.4
39.7 埼 玉 県
4.4
4.8
7位 千 葉 県
11.9
4.2
化学
22.6
石油
19.9
鉄鋼
14.6
57.1 東 京 都
3.6
3.9
8位 茨 城 県
10.5
3.7
化学
12.6
生産
10.3
食料
9.9
32.8 茨 城 県
3.5
3.9
9位 三 重 県
9.4
3.3
輸送
24.0
電子
14.9
化学
12.1
51.1 千 葉 県
3.2
3.5
広島県
8.7
3.1
輸送
27.6
鉄鋼
17.0
生産
7.8
52.5 群 馬 県
2.8
3.1
285.0
100.0
輸送
17.8
化学
9.2
食料
8.5
35.5 全
国
91.6
100.0
(%)
30
10位
-
全
国
(出所)総務省「平成24年経済センサス(従業者4人以上の事業所)」
図 表 30 千 葉 県 内 企 業 の新 たな進 出 分 野 (進 出 意 向 含 む)
0
5
10
15
20
25
健康医療ものづくり
27.4
新エネルギー
23.3
IT・情報関連
19.6
その他
17.6
環境関連
14.0
食品
9.8
農業
3.9
ナノテクノロジー
3.9
(n=51)
(注)1.出所:千葉県「新たな産業振興の方針」策定に係るアンケート調査(2013年10月実施)」
2.集計対象は中小企業。
43
観光分野のフィールド拡大
千葉 県の観光 入込客数の推 移をみる と、 1990 年代は 111~ 128 百万人 のレンジ で
推移 していた が 、 2000~ 08 年 は 128~ 148 百万人 にレンジ を切り上げ、 09~ 10 年は
2年 連続 で 150 百万 人を上 回った ( 図表 31)。 11 年は 、東日本 大震災 の影響 で 133
百万 人に大き く落ち込んだ が、 13 年に は 166 百万 人と過去 最高を記録 した 。
一 方、三方 を海に囲 まれ た千葉県 にとって 観光 の原点と もいえる 海水 浴客のシェ
ア(年間観 光入込客 数= 100% )をみ ると、90 年 の 6.9%から 趨勢的に マイナス 傾向
が続 いて 12 年に は 1.0%とな っている。海水浴 客の減少 の背景には、90 年代 後半以
降 の美白ブ ームなど 消費 者の嗜好 の変化や 娯楽 の多様性 に加え、 東日 本大震災の津
波 発生や原 発事故 に 伴 う 風評被害 などが複 合的 に絡んで いるだけ に 、 中長期的にみ
て海 水浴客の 大きな回復は 今のとこ ろ 期待しにく い状況に ある。
銚 子・九十 九里から 南房 総地域の 夏場の観 光は 、海水浴 への依存 度が 否が応でも
大 きいだけ に、 季節 によ る 繁閑の 差の克服 は 千 葉県の観 光産業の 積年 の課題でもあ
っ た。こう した繁閑 の差 を克服し つつ、通 年型 のツーリ ズムを実 現す る有効 な手法
とし て「スポ ーツツーリズ ム ( 注 5)」(図表 32)が あげられ る。千葉県は 、年間平 均
気温 が 16℃前後と 温暖な 気候に恵 まれており 、スポー ツ施設の 造成に 欠かせな い平
地 も多い。 また、千 葉県 の「見る スポーツ 」と しては 、 千葉ロッ テマ リーンズやジ
ェ フユナイ テッド市 原・ 千葉、柏 レイソル 、千 葉ジェッ ツなど プ ロス ポーツ の本拠
地が あるほか、プロゴルフ のツアー トーナメント( 13 年 度は9回開催 )。ま た、
「す
る スポーツ 」として は、 野球や テ ニス、マ ラソ ン などの 代表的な スポ ーツ 大会の開
催 に加え、 美しい海 やな だらかな 丘陵を活 用し たトライ アスロン や ク ロスカントリ
ー なども盛 んである (図表 33、34)。こう した スポーツ 面のポテ ンシ ャルや大会 の
開 催実績な どを前面 に押 し出して 、ちばア クア ラインマ ラソンに 代表 される世界か
ら 参加者を 呼ぶこと がで きる新た な大会を 創設 するほか 、 スポー ツ合 宿・大会を誘
致 すること は、通年 の交 流人口の 増加に 大 いに 寄与する ことが期 待で きる 。また、
成 田空港や 医療産業 集積 を活用し たメディ カル ツーリズ ムなども 視野 に入れつつ、
従 来型のス ポーツ振 興か らの脱却 を図る な ど、 観光分野 における 複線 型のフィール
ド拡 大が求め られている。
東京 オリ・パ ラとの関連性
東 京オリ・ パラやプ レ大 会におけ る事前キ ャン プ等を誘 致するた めに は、県内各
エ リアのス ポーツ施 設や 宿泊施設 、医療施 設、 アミュー ズメント 施設 などの魅力を
パ ッケージ 化して提 供す ることが 求められ る。 東京オリ ・パラに 向け て、こ れらの
地 域資源や 地域固有 の 魅 力を洗い 出し、 そ の地 域資源を 行政区域 にこ だわらず組み
合 わせたう えで 、需 要者 に提供す る仕組み づく りが出来 れば、 東 京オ リ・パラ後に
も スポーツ 合宿を受 け入 れるベー ス(東京 オリ ・パラの レガシー )に なり得る。 と
り わけ、パ ラリンピ ック 関連の 事 前キャン プ ・ 大会等を 誘致する ため には、 スポー
ツ 施設や宿 泊施設 、 公共 施設・公 共交通機 関な ど のバリ アフリー 化 が 課題となる 。
こ うした取 り組みを 地域 ぐるみで 推進する こと は、今後 急速に進 む高 齢社会への対
(注5)スポーツツーリズムとは、①スポーツを「観る」
「する」ための旅行そのものや周辺地域観
光、②スポーツを「支える」人との交流、③旅行者が旅先で主体的にスポーツに親しむこ
とのできる環境の整備、④国際競技大会の招致・開催、⑤スポーツ合宿の招致を含有した、
複合的でこれまでにない「豊かな旅行スタイルの創造」を目指すもの(観光庁)
。
44
応力 強化につ ながり 、
「 高 齢者や障 害者が暮らし やすいま ち 」というレ ガシーを 生み
出す ことも可 能である 。
従 来型の観 光(名所 旧跡 巡り・海 水浴・ド ライ ブなど) は活かし つつ 、スポーツ
ツ ーリズム やメディ カル ツーリズ ムなど観 光の フィール ドを拡大 する ことは、地域
の所 得増加ひ いては定住人 口の維持 にも寄与する 。
図 表 31 千 葉 県 の観 光 入 込 客 数 及 び海 水 浴 客 のシェアの推 移
(百万人)
166 (%)
170
8
157
155
152
160 6.9
148
150
7
140 136
134 132
134
133
140
129
128
128
124 121 125 125 128
130
6
119
115
115
112 111
120
110
5
100
90
4
80
70
3
60
50
2
40
1.1
30
1
20
10
0
0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
観光入込客数
海水浴客のシェア
(出所)千葉県観光入込調査報告書」
図 表 32 スポーツツーリズムのイメージ
ツーリズム
(移動・宿泊・観光)
「観る」スポーツ
◆プロスポーツ観戦
・プロ野球
・Jリーグ
・プロバスケットボール等
◆全国・国際規模の競技
大会観戦
「する」スポーツ
◆スポーツ合宿
・サッカー、テニス、
陸上競技等
◆スポーツイベントの参加
・市民マラソン大会等
「支える」スポーツ
◆スポーツイベント開催・
支援
・イベントの運営
・地域住民の応援
・ボランティア参加
◆趣味・娯楽
・ゴルフ
・マラソン、サイクリング等
(出所)「スポーツツーリズム推進基本方針」などのデータをもとにちばぎん総合研究所が作成。
45
図 表 33
13 年 度 に千 葉 県 で開 催 された主 な競 技 大 会 、スポーツイベント位 置 図
(競 技 大 会 ・スポーツイベントは図 表 34 参 照 )
46
図 表 34 千 葉 県 で開 催 された主 な競 技 大 会 ・スポーツイベント(2013 年 度 中 心 )
大会名
1 ちばアクアラインマラソン2012
2 2013国際千葉駅伝
3
第49回千葉国際クロスカントリー大会
第27回昭和の森市民クロスカントリー大会
4 第4回 鋸山トレイルランレース & アドベンチャーフェスタ
種目
マラソン
開催地
木更津市、袖ケ浦市
開催期間
継続
開催
参加者数
12年10月
13,946名
-
143名
(応援約32万人)
○
-
○
1,104名
○
駅伝
千葉市(県総合スポーツセンター等)
13年11月
クロスカントリー
千葉市(昭和の森)
14年2月
トレイルラン
鋸南町、富津市
13年12月
オープンウォーター
5 オープンウォータースイミング ジャパンオープン2013館山 スイミング
館山市(北条海岸沖)
13年7月
6 第1回日本マスターズ水泳スプリント選手権大会
水泳
習志野市(千葉県国際総合水泳場)
13年11月、12月
第36回 全国JOCジュニアオリンピックカップ
7
春季水泳競技大会 水球競技
水球
習志野市(千葉県国際総合水泳場)
8 2013幕張チャレンジトライアスロンフェスタ
ロードレース、アクアスロン、
トライアスロン
9 第4回館山わかしおトライアスロン大会
トライアスロン
10 第8回手賀沼トライアスロン大会
11 第9回銚子マリーナトライアスロン大会
54名
○
3,410名
-
14年3月
-
○
千葉市(幕張海浜公園等)
13年6月
約1,240名
○
館山市(沖ノ島、海上自衛隊館山航空基
地)
13年6月
1,035名
○
トライアスロン
柏市
13年8月
404名
○
トライアスロン
銚子市(銚子マリーナ等)
13年10月
約520名
○
12 第16回千葉市海浜アクアスロン大会
アクアスロン
千葉市(稲毛海浜公園)
13年9月
約440名
○
13 2013鋸南アクアスロン+オーシャンスイム大会
アクアスロン
オーシャンスイム
鋸南町(勝山海岸)
13年10月
約240名
○
14 全日本サーフィングランドチャンピオンゲームス2013
サーフィン
南房総市(千倉海岸)
13年11月
216名
-
15 第5回全日本ユースライフセービング選手権大会
ライフセービング
南房総市(岩井海岸)
13年6月
約200名
○
16 第10回全日本ジュニア・ライフセービング競技会
ライフセービング
南房総市(岩井海岸)
13年8月、9月
-
-
ILS公認 インターナショナル・サーフレスキュー・チャレン
17
ライフセービング
ジ
御宿町(御宿海岸)
13年9月
-
-
18 第28回全日本学生ライフセービング選手権大会
ライフセービング
御宿町(御宿海岸)
13年9月
42校
○
近代三種
長柄町
(日本メディカルトレーニングセンター)
13年9月
定員290名
-
20 ツール・ド・ちば2013
自転車
富津市、成田市、鴨川市等
13年10月
延べ1,744名
○
21 StationRide in 南房総
自転車
南房総市、館山市
13年11月
290名
-
ファミリーマートカップ第33回全日本バレーボール小学生
22
バレーボール
大会
浦安市(運動公園総合体育館)ほか
13年8月
98チーム
○
23 第8回15U全国KB野球秋季大会
野球
成田市(ナスパスタジアム)ほか
13年10月
31チーム
○
24 第59回 全日本教員ソフトボール選手権大会
ソフトボール
千葉市(県総合スポーツセンター等)
13年8月
32チーム
-
25 全日本学生バドミントン選手権大会
バドミントン
19
第1回近代3種日本選手権大会 in 千葉
兼 第8回JOCジュニアオリンピックカップ
千葉市(千葉ポートアリーナ等)
13年10月
26 2013 DUNLOP CUP全国選抜ジュニアテニス選手権大会 テニス
柏市(吉田記念テニス研修センター)
13年5月
27 かしわ国際オープンテニストーナメント2013
テニス
柏市(吉田記念テニス研修センター)
13年6月、7月
28 第35回記念全日本レディースソフトテニス決勝大会
ソフトテニス
白子町
13年8月
29 第20回 全日本クラブソフトテニス選手権大会
ソフトテニス
白子町
13年11月
30 第13回全国小学生ソフトテニス大会
ソフトテニス
白子町
14年3月
31 第23回 NEC 全日本選抜車いすテニス選手権大会
車いすテニス
柏市(吉田記念テニス研修センター)
13年11月、12月
32 講道館杯全日本柔道体重別選手権大会
柔道
千葉市(千葉ポートアリーナ)
13年11月
33 第67回全日本体操団体選手権
体操
千葉市(幕張メッセ)
13年11月
34 Nationals 2014
チアリーディング
千葉市(幕張メッセ)
14年3月
第8回オールジャパン・ジュニアダンススポーツカップ
35
2013inちば
ダンス
千葉市(千葉ポートアリーナ)
13年8月
-
-
36 2014スーパージャパンカップダンス
ダンス
千葉市(幕張メッセ)
14年3月
-
○
37 日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯
ゴルフ
印西市(総武カントリークラブ)
13年5月
38 ブリヂストンオープンゴルフトーナメント2013
ゴルフ
千葉市(袖ヶ浦カンツリークラブ)
13年10月
39 Hitachi 3Tours Championship 2013
ゴルフ
千葉市(平川カントリークラブ )
13年12月
40 サイバーエージェント レディスゴルフトーナメント
ゴルフ
市原市(鶴舞カントリー倶楽部)
13年5月
41 ニチレイレディス2013
ゴルフ
千葉市(袖ヶ浦カンツリークラブ)
13年6月
42 アース・モンダミンカップ
ゴルフ
袖ケ浦市(カメリアヒルズカントリークラブ)
13年6月
43 富士通レディース2013
ゴルフ
千葉市(東急セブンハンドレッドクラブ)
13年10月
44 樋口久子 森永製菓 ウイダー レディス2013
ゴルフ
市原市(森永高滝カントリー倶楽部)
13年11月
45 伊藤園レディスゴルフトーナメント2013
ゴルフ
長南町(グレートアイランド倶楽部)
13年11月
(注)1.出所:各種資料をもとにちばぎん総合研究所が作成。
2.アクアラインマラソンのみ12年度の開催。「継続開催」は12年度またはそれ以前にも県内で実施している大会。
47
-
-
約120名
○
-
○
48チーム
-
-
○
-
○
20名
○
約430名
○
144名
-
406チーム
○
144名
(観戦19,890人)
102名
(11,496人)
18名
103名
(9,459人)
108名
(11,365人)
120名
(8,932人)
96名
(6,980人)
96名
(8,060人)
92名
(12,397人)
-
○
○
○
○
○
○
○
○
東日本大震災からの完全復興(地域の防災 対応力 ・防犯力の強化)
2013 年9 月に行わ れた国 際オリン ピック委員会( IOC)総会 の五輪 招致プレ ゼ
ン テーショ ン におい て 、 安倍晋三 首相 は、 福島 第 一原子 力発電所 ( 以 下、原発)の
汚 染水問題 に関して 「コ ントロー ル下にあ る」、「完全に ブロック され ている」など
と 発言した 。 その後 、 東 京オリ・ パラの 開 催が 決ま った ことから 、東 京電力福島第
一原 発の汚染 水問題の解決 は 日本が 国際社会へ示 した 「公 約」となった 。
東 京オリ・ パラの開 催決 定を契機 として世 界中 の注目が 日本に集 まっ ている。東
京 オリ・パ ラは、安 倍首 相が明言 した 汚染 水問 題の 抜本 的な解決 の み ならず、放射
能 に汚染さ れた土壌 の除 染推進や 液状化 問 題に 対する根 本的な解 決策 の実行、津波
被 害を食い 止めるイ ンフ ラ整備・ ソフト事 業の 展開など 、地域の 防災 ・ 減災・防犯
力 の強化を 短期集中 的に 推進する ことで、 日本 は安心・ 安全な国 であ るということ
を 世界中に 発信でき る千 載一遇の チャンス とい える。 東 京オリ・ パラ を契機に多く
の 外国人が 来日する 可能 性が高い だけに、 東日 本大震災 のマイナ ス イ メージ を完全
に払 拭するこ とも東京オリ ・パラの 大きなテーマ といえる 。
また 、前回( 1964 年)の東 京オリ・パラを契機と して整備 された道路や 橋梁、学
校 などの社 会インフ ラは 、その後 、約半世 紀が 経過し、 老朽化が 著し い ものも少な
く ない。今 後の少子 高齢 化や人口 減少社会 のも とで大き く変化す る公 共インフラに
対 する市民 ニーズに 対応 すること や、平成 の大 合併に伴 う公共施 設の 最適化の実現
は 、今後の 自治体運 営の 大きな命 題となっ てい る。既に 一部の自 治体 では、公共施
設 白書を作 成し 、公 共施 設再生( 保全)計 画を 策定して いるとこ ろも みられるが、
こ うした動 きを全県 的な 動きに広 げ、持続 可能 な公共イ ンフラの 整備 の道筋を示す
こと も、東京 オリ・パラの 大きなレ ガシーといえ る。
東京 オリ・パ ラとの関連性
千 葉県は、 東日本大 震災 の 発生に 伴い 、主 に放 射能のホ ットスポ ット や津波、液
状 化の被害 を受けた 。 こ れらの被 災地 は、 各自 治体など の懸命な 努力 により、 全体
感 としては 着実に復 旧・ 復興が進 んでいる が、 一部には 課題も残 って いる。すなわ
ち 、銚子や 南房総地 域の 旅館・ホ テルの客 室稼 働率が震 災前の水 準に 戻っていない
こ とや中国 ・台湾な ど9 か国・地 域で千葉 県産 品の輸入 禁止が続 いて いること、 液
状化 の抜本的 な対策工事( 住民の合 意が必要)、放射能 の汚染土 壌や焼 却灰の最 終処
分場 の選定や 処分方法など の課題が 残っている 。
東 京オリ・ パラ 開催 時に は、世界 中の注目 が否 が応でも 日本に集 まる だけに、 こ
れら の課題に 対し て 2020 年 までの 短 期集中的な 取り組み により、世界 に安心・安全
な 地域であ ることを アピ ールする ことが求 めら れている 。 とりわ け 、 世界の玄関口
で ある「成 田空港」 を抱 える千葉 県にとっ て、 地域の防 災・防犯 力の 強化は、東京
オリ ・パラの 成否を分ける 重大事で あり、千葉県 全体が担 っている責務 といえる 。
48
安心・安全な医療・福祉 体制の確立
千葉 県では、前回( 1964 年)の 東京オリ・パラ 開催前後 の 高度経済 成 長期( 54~
73 年)に大量 に転入した 団塊世代 が 既に高齢期 を迎え て おり、今後 も 急速な高 齢化
の 進行が見 込まれ て い る 。国立社 会保障・ 人口 問題研究 所 の推計 によ ると、千葉県
の高 齢者( 65 歳以 上)の人口は 、10 年 の 134 万人( 高齢化 率 21.5%)か ら 2040 年
に は 196 万人 (同 36.5%)に 達する見 込みであ る。
このように千葉県では、これまで経験したことがない超高齢社会 (高齢化率が
21%以上) を迎える ため 、民生費 (高齢者 ・障 がい者福 祉費など )の 増加に伴う自
治体 財政のひ っ迫 も懸念さ れている 。自 治体財政 もさるこ とながら、千葉県 の医療・
介護 現場のサ ービス供給体 制をみる と、人 口 10 万人当 りの医師 数が全 国ワース ト3
位 、同看護 師数がワ ースト 2位の 低 水準となって いる( 図表 36)。また 、病床 数は、
2040 年に は千葉・東葛地域 などを中 心に 約 5,000 床が 不足する 見通し と なって いる
(図 表 37)。高 齢者( 65 歳以上) は 10 年 から 40 年に かけて 62 万人 増加(う ち 75
歳 以上の後 期高齢者は 53 万人 増加)す るこ とが見込 まれてい るだ けに、現 在の医
療 ・介護の キャパシ ティ では、医 師・看護 師数 及び病床 や介護施 設・ 介護職員 が不
足す ることは 自明である。
こ うした状 況を打開 する ため、県 内各地で は、 病院の新 設・増築 等が 相次いでい
る (図表 35)。こう した 動きは歓 迎すべき であ るが、同 時にこれ らの 病院で働く 医
療 職の育成 と地域に よる 偏在の解 消 に中長 期的 な視点を もって取 り組 む必要がある。
医 療・介護 業界で働 く就 業者の定 着・新規 参入 を促進す るために 、職 場・労働環境
の 改善も不 可欠であ る。 さらには 、 地域包 括ケ アシステ ムの導入 によ る地域で支え
合 う体制づ くりに加 え、 病診連携 や在宅医 療を 推進する ため の電 子カ ルテ化の推進
と共 有ネット ワークの構築 など「医療に おけるI CT化 」に加 え、
「 医療・介護 ロボ
ット の実用化 」など の 取り 組みも求 められている 。
東京 オリ・パ ラとの関連性
東京 オリ・パラ やプレ 大会 の事前キ ャンプ及び 国 際スポー ツ大会の誘致 に向けて 、
地 域のスポ ーツ施設 や 宿 泊施設 な どを洗い 出し 、ブラッ シュアッ プす るとともに、
選 手の怪我 や病気に 対応 可能な 病 院・診療 所な どの医療 体制もパ ッケ ージで 提案す
る 必要があ る。安心 ・安 全な 地域 の医療体 制づ くりを 進 めること は 、 東京オリ・パ
ラへ の対応 及 びスポーツツ ーリズム の推進にとっ て欠かせ ないテーマと いえる 。
図 表 35 千 葉 県 における病 院 建 設 の動 き
病院名
立地
建設形態
開院(予定)年月
病床数
おゆみの中央病院
千葉市
新築
2014年3月
149床
東千葉メディカルセンター
千葉市
新築
2014年4月
314床
千葉みなとリハビリテーション病院 千葉市
新築
2014年4月
120床
季美の森リハビリテーション病院
千葉市
新築
2014年4月
120床
柏市
新棟建設
2014年6月
318床
千葉徳洲会病院
船橋市 新築・移転 2014年7月
391床
行徳総合病院
市川市 新築・移転 2015年3月
307床
成田富里徳洲会病院
富里市
2015年8月
485床
松戸市立病院
松戸市 新築・移転 2017年1月
600床
柏厚生総合病院
新築
(出所)各種資料からちばぎん総合研究所が作成。
49
図 表 36 人 口 10 万 人 当 たり医 療 施 設 の従 事 者 (都 道 府 県 別 )
医師数
看護師数
順位 全
国 226.5
24 宮
崎 228.0
順位 全
国 796.6
24 長
1 京
都 296.7
25 兵
庫 226.6
1 高
知 1222.9
25 山
2 徳
島 296.3
26 北 海 道 224.6
2 鹿 児 島 1140.5
26 京
3 東
京 295.7
27 宮
城 218.3
3 長
崎 1111.2
27 沖
4 高
知 284.0
28 奈
良 217.9
4 熊
本 1106.4
28 青
5 福
岡 283.0
29 山
梨 216.0
5 佐
賀 1096.1
29 新
6 鳥
取 279.6
30 群
馬 214.9
6 宮
崎 1093.6
30 滋
7 岡
山 277.1
31 長
野 211.4
7 大
分 1073.4
31 山
8 長
崎 275.8
32 山
形 210.0
8 島
根 1062.7
32 兵
9 和 歌 山 269.2
33 秋
田 207.5
9 石
川 1060.0
33 群
10 熊
本 266.4
34 栃
木 205.0
10 山
口 1037.6
34 奈
11 石
川 264.1
35 滋
賀 204.7
11 愛
媛 1032.9
35 三
12 島
根 262.1
36 愛
知 198.1
12 岡
山 1031.8
36 福
13 香
川 260.4
37 三
重 197.3
13 徳
島 1031.8
37 宮
14 大
阪 256.7
38 岐
阜 195.4
14 鳥
取 1016.2
38 静
15 大
分 256.5
39 神 奈 川 193.7
15 富
山 1003.8
39 岐
16 佐
賀 249.8
40 岩
手 189.6
16 北 海 道 999.2
40 大
17 広
島 245.5
41 静
岡 186.5
17 福
岡 997.3
41 栃
18 愛
媛 244.1
42 青
森 184.5
18 香
川 995.0
42 東
19 山
口 241.4
43 新
潟 182.1
19 岩
手 956.3
43 愛
20 鹿 児 島 240.7
44 福
島 178.7
20 福
井 943.7
44 茨
21 福
井 236.3
45 千
葉 172.7
21 秋
田 940.8
45 神 奈
22 沖
縄 233.1
46 茨
城 167.0
22 和 歌 山 911.5
46 千
23 富
山 232.8
47 埼
玉 148.2
23 広
島 908.6
47 埼
(出所)医師数:2012年医師・歯科医師・薬剤師調査、看護師数:2012年衛生行政報告例。
図 表 37
野
形
都
縄
森
潟
賀
梨
庫
馬
良
重
島
城
岡
阜
阪
木
京
知
城
川
葉
玉
899.4
897.9
896.8
881.2
871.0
843.5
835.4
820.1
798.8
783.5
774.4
766.0
743.6
740.3
739.7
734.8
724.7
704.8
682.8
680.0
633.6
625.1
572.0
528.4
千 葉 県 の病 床 過 不 足 数 (推 計 )
(単位:床)
2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年
千葉県
12,730
7,256
1,688 ▲ 3,520 ▲ 5,703 ▲ 5,493 ▲ 5,282
千葉
2,450
1,360
東葛南部
2,408
910
▲ 678 ▲ 2,107 ▲ 2,723 ▲ 2,869 ▲ 3,248
東葛北部
2,145
758
▲ 668 ▲ 1,951 ▲ 2,478 ▲ 2,432 ▲ 2,404
印旛
2,006
1,354
661
▲ 71
▲ 479
▲ 528
▲ 460
香取海匝
1,019
935
914
848
854
956
1,097
山武長生夷隅
781
531
306
29
▲ 79
▲4
163
安房
843
814
799
769
797
880
975
君津
476
209
▲ 40
▲ 265
▲ 359
▲ 314
▲ 246
市原
602
385
159
▲ 36
▲ 111
▲ 58
24
235
▲ 734 ▲ 1,126 ▲ 1,123 ▲ 1,184
(注)1.出所:千葉経済センター「安心して暮らせる千葉の再構築(2013年8月)」
(ちばぎん総合研究所受託調査)
2.人口の想定は2012年10月に㈱千葉銀行が実施した中位推計がベース。
50
コンパクト&スマートシティの推進
千 葉県の都 市 (とり わけ 東京都に 近いエリ ア) は、高度 経済成長 期を 経て、東京
の ベッドタ ウン的な 位置 づけで発 展を遂げ てき た。その 過程にお いて 、居住スペー
ス を確保す るため、 主に 郊外地域 に大規模 な宅 地が造成 され、団 塊世 代などの移住
が進 んだ。また 、モータリ ゼーショ ンの進展や大 店法の改 正( 2000 年)に 対応した
大 型ショッ ピングセ ンタ ーやロー ドサイド 型の 店舗の進 出は、都 市の 郊外化に拍車
をか けた。これ らの新興住 宅地等で は、四半世紀 の時の流 れのなかで高 齢化が進 み、
交 通弱者や 買い物弱 者の 存在が社 会問題化 して いる 地域 もみられ る 。 また、 都市の
郊 外化は、 上下水道 など 公共施設 の 投資効 率 の 悪化につ ながり 、 これ らの維持にか
かる 自治体の 財政負担が大 きくなっ ている。
一 方、最近 の行政運 営を 取り巻く 環境をみ ると 、国全体 では、第 4次 一括法が成
立 するなど 地方分権 の流 れが加速 するなか 、地 域では、 少子高齢 化や 人口減少の進
行 を映じた 医療・介 護費 用など民 生費の増 加に 伴い、 自 治体財政 のひ っ迫が急速に
進 んでいる 。このよ うな 状況下、 多様化す る市 民ニーズ に自治体 が持 続的に応えて
い くために は、選択 と集 中の行財 政運営及 び市 民参加・ 協働の視 点が 不可欠の要素
とな っている 。
こ うした地 域の課題 に対 応するた め、都市 のス プ ロール 化を抑制 する とともに、
中 心市街地 を核とし たコ ンパクト なまちづ くり が見直さ れている 。持 続可能なコン
パ クトシテ ィを実現 する ためには 、中心市 街地 と郊外地 域を結ぶ 公共 交通網を整備
し 、両者の 相互補完 性を 確立する ことがポ イン トと なる 。そのう えで 、中心市街地
の 都市機能 の充実及 び郊 外地域か ら中心市 街地 への移住 を 長期的 な視 点をもって 促
進 し、駅周 辺部など に徒 歩圏のコ ンパクト な市 街地を形 成 するま ちづ くり が求めら
れ ている。 また、今 後の まちづく りを展望 する と、再生 可能エネ ルギ ーなどを活用
し たエネル ギーの地 産地 消及びエ ネルギー の 効 率的利用 促進など スマ ートシティの
推 進も重要 なテーマ と な る。もっ とも、 経 済合 理性に 基 づいて郊 外に 拡散した市民
や 社会イン フラを中 心市 街地に再 配置 した り、 新たにシ ルバータ ウン を建設するこ
と は容易で はない。 例え ば、郊外 地域の 団 地や 公共施設 を建替え る際 などには、中
心市 街地への 移転・移住 を 検討・促進す る ( 注 6) など 、長期的 なまちづ く り の 視 点 が
求 められる 。こうし た社 会インフ ラの再配 置な どの際に は、高齢 者や 障 がい者に配
慮 したバリ アフリー やユ ニバーサ ルデザイ ンの 考え方を 取り入れ るこ とで、高齢者
や障 がい者が 暮らしやすい まちの実 現につながる 。
東京 オリ・パ ラとの関連性
中 心市街地 と郊外地 域を 結ぶ交通 網の充実 は、 スポーツ 合宿や 競 技 を 誘致する際
には 、地域の 2次交通とし て 戦略的 にアピールす ることが 可能である。
ま た、コン パクト & スマ ート シテ ィを推進 する 過程にお いて、中 心市 街地がバリ
ア フリー化 ・ユニバ ーサ ルデザイ ン化する こと は、障害 者スポー ツの 合宿や 競技の
誘致 において 大きなアドバ ンテージ となる。
ま た、コン パクト& スマ ートシテ ィを推進 する ことは、 その各種 取り 組みに伴う
環境 負荷の軽 減を世界にア ピールす ることもでき る。
(注6)高根台団地(船橋市)は 1961 年に日本住宅公団(現都市再生機構)が造成した団地で老朽
化による建替えが進められている。団地の建替えに伴い、住民の一部は、利便性に優れた
JR船橋駅前の新築マンションに移住するケースもみられた。
51
II.東京オリンピック・パラリンピックのレガシー(未来への資産)
1. 1964 年東京オリ ンピック ・パラリンピック のレガシー
1964 年 東京オリ ・パラ は、アジ ア地域で 初め て開催さ れたオリ ンピ ックで あ る。
当 時のわが 国を取り 巻く 環境をみ ると、日 本が 経済協力 開発機構 (O ECD)に正
式 加盟する など、 日 本 経 済が高度 成長期を 迎え てお り、 国立競技 場を はじめとした
施設 整備など 一大国家プロ ジェクト であった。
今回 調査で 東 京オリ・パラ のレガシ ーを考えるに あたり 、64 年東京オ リ・パラの
レガ シーを改 めて検証 する と、以下 の5分野に整 理できる 。
①公 共交通イ ンフラの目覚 ましい発 展
第 1は、公 共交通の 目覚 ましい発 展である (図表 38)。 東京オリ ・パ ラが開催さ
れ た 64 年には 、東海道新 幹線や首 都高速の一部 区間、東京モノ レール 、営団 地下鉄
日 比谷線、 伊豆スカ イラ インなど の開業・ 開通 が相次い だほか、 その 後の鉄道建設
の礎 となった 日本鉄道建設 公団法が 公布・施行( 2月)さ れた(図表 39)。
②市 民の暮ら しが急速に豊 かに(市 民の所得増加 )
第 2は、市 民の暮ら しが 急速に豊 かになっ たこ とがあげ られる。 千葉 県民の暮ら
しに 目を転じ ると、人口は 、 64 年から 74 年にか けて東京 湾岸地域や常 磐地域を 中
心に 人口が 同 1.5 倍に増加(図 表 40)する中で 、74 年 の県土木 事業費 は 702 億円(64
年比 7倍 )、市町 村土木事 業費は 約 760 億 円( 同 11 倍)と 県内の主要 インフラ が集
中 的に整備 され、県 民の 生活利便 性も格段 に向 上した。 人口増加 のほ か、勤労者世
帯の 実収入 ( 注 7) は、 64 年の 74,984 円 から 74 年には 233,372 円と約 3倍に増加し
た こともあ って、小 売業 の年間販 売額 は6 倍に 急増した 。 観光面 では 、市民の可処
分 所得の増 加やモー タリ ゼーショ ンの進展 (保 有自動車 台数: 64 年 134 千台→ 74
年 696 千台、64 年比5倍 )に伴い、観光宿泊客 数が 同 1.9 倍と大幅に 増加した 。ま
た、 65 年から 75 年にかけ ての産業 別就業者数の 動きをみ ると、第一次 産業が▲ 4
割減 少する一 方、第三次産 業は 同 1.9 倍、 第二次 産業は 同 1.7 倍 と産業 構造はが ら
りと 変わった 。
③消 費活発化 を映じた各種 産業の裾 野の拡大
第 3は、消 費活発化 を映 じた各種 産業の裾 野の 拡大であ る。経済 成長 の追い風に
乗 って、カ ラーテレ ビが 急速に家 庭内に普 及し たほか、 自動車メ ーカ ー各社は相次
い で新車を 発売、電 機メ ーカーは 電子式卓 上計 算機の開 発、 食料 品メ ーカーでは、
現在 も店頭に 並 ぶロングラ ン商品を 次々と発売し た ( 注 8)。
④本 格的な海 外旅行時代の 幕開け
第4 は、本格的 な海外旅行 時代の幕 開けである。64 年東 京オリ・パラ は、外為規
制の 緩和を伴 って、日本に 本格的な 海外旅行時代 をもたら した。64 年4 月には、日
(注7)いわゆる税込収入であり、世帯員全員の現金収入を合計したものをいう。
(注8)本田技研工業の「S600」やトヨタ自動車の「コロナ(モデルチェンジ)
」のほか、早川電
気(現・シャープ)とソニーは電子式卓上計算機を完成させた。また、カルビー㈱の「か
っぱえびせん」
、ロート製薬㈱の「V・ロート」
、ヱスビー食品㈱の「ヱスビーカレー」
、大
関㈱の「ワンカップ大関」などが相次いで発売された。
52
本人 の海外渡 航が自由化( 年1回、 所持 金 500 ドルま での制限 あり) されたほ か、
同 6月には 日米航空 交渉 が開始さ れ、日本 航空 のニュー ヨーク乗 入れ など航空路線
が 急速に拡 充された 。ま た、同7 月には、 パス ポート発 給業務が 外務 省から都道府
県に 移管され た。
⑤市 民の公徳 心・美化意識 の向上
第 5は、市 民の公徳 心・ 美化意識 の向上が あげ られる。 東京都首 都美 化審議会で
示さ れた「都 民への期待」をみると 、
「吸 い殻や 紙くずの 散らかしをや める」や「町
中 での放尿 やたん、 つば の吐きす てをやめ る」 などの項 目が並び (図表 42)、これ
ら は当時の 日 本の社 会道 徳環境を 表してい る。 現在の日 本国民の 日常 行動からみる
と 、やや非 常識的な 文言 も散見さ れること から 、日本人 のマナー 及び 道徳心の先進
国入 りも東京 オリ・パラの レガシー の一つと考え られる。
64 年東京 オリ・パラから の直接の レガシーは千 葉県には 必ずしも多く ない。むし
ろ 、その後 に急成長 した とも言え る。しか し、 今回は、 しっかり と首 都圏・全国と
もに 県内に未 来への遺産を 築かなく てはならない 。
図 表 38 1964 年 東 京 オリ・パラのレガシー
【公共交通】
① 公共交通インフラの目覚ましい発展
【高度経済成長期】
② 市民の暮らしが急速に豊かに(市民の所得増加)
【産業振興】
③ 消費活発化を映じた各種産業の裾野の拡大
【観光振興】
④ 本格的な海外旅行時代の幕開け
【市民生活】
⑤ 市民の公徳心・美化意識の向上
53
図 表 39 東 京 オリンピック・パラリンピック開 催 時 (1964 年 )の主 な出 来 事
主な出来事
1月 カルビーが「かっぱえびせん」を発売
第9回冬季オリンピック・インスブルック大会(オーストリア)開幕
2月 ロート製薬が新しい目薬「V・ロート」発売1年間で1500万個売り上げる
日本鉄道建設公団法公布・施行
本田技研工業が「S600」を発売
3月 早川電気(現・シャープ)とソニーが電子式卓上計算機を完成と発表
4月 日本人の海外観光渡航自由化(年1度、所持金500USドルまで)
IBM、汎用コンピューター「System/360」を発表
日本、OECDに正式加盟
6月 「新潟地震」発生死者26人
日米航空交渉開始
7月 日本国外務省、パスポート発給業務を都道府県に移管
8月 営団地下鉄日比谷線全線開業
8~10月 首都高速道路の一部区間が供用開始(鈴ヶ森 - 空港西他7区間)
9月 ホテルニューオータニ、東京プリンスホテル開業
東京モノレール開業(片道250円)
トヨタ自動車が「コロナ」をモデルチェンジ
エスビー食品が「エスビーカレー」発売
10月 東海道新幹線開業
伊豆スカイライン開通
第18回夏季オリンピック・東京大会(東京オリンピック)開催
大関酒造(現大関株式会社)が「ワンカップ大関」発売
11月 東京パラリンピック開催
12月 (株)世界貿易センタービルディング設立
(出所)各種データよりちばぎん総合研究所が作成。
54
図 表 40 千 葉 県 の各 種 指 標 (1964 年 前 後 ・1974 年 前 後 ・現 在 [2012 年 前 後 ])
項目
カテゴリー
人口
世帯数
1人当たり世帯人員
人口 別 年 年少人口
齢
割
階 生産年齢人口
合
級 老年人口
登録外国人数
就
産 第一次産業
業
業 第二次産業
者
別
数
第三次産業
事業所数
従業者数
販売農家数
うち専業
うち兼業
農業産出額
漁業就業者数
海面漁業漁獲量
産業
小 商店数
売 従業者数
業 年間販売額
卸 商店数
売 従業者数
業 年間販売額
製造品出荷額等
県土木事業費
市町村土木事業費
新設住宅着工戸数
発生電力量
観光入込客
観光
宿泊客
一般道路実延長
インフラ 保有自動車台数
単位
人
世帯
人
%
%
%
人
人
人
人
事業所
人
戸
戸
戸
億円
人
t
店
人
億円
店
人
億円
億円
百万円
百万円
戸
億kwh
1964年前後
2,701,770
637,164
4.83
26.0
67.7
6.4
7,603
432,951(33.0)
346,787(26.4)
531,216(40.5)
88,054
518,563
173,991
67,825
106,166
1,110
36,882
304,794
32,458
93,785
1,991
4,453
30,570
2,143
6,147
10,087
6,969
31,877
62.4
千人地点
37,633
千人泊
4,365
㎞
31,957
台
134,074
普通乗車人員(国鉄+私鉄)
万人
23,883
預金
億円
2,137
金融
貸出金
億円
1,252
勤労者世帯実収入
円
74,984
家計 勤労者世帯実支出
円
54,610
有効求人倍率
倍
1.21
病床数(病院+一般診療所)
床
24,852
医療
医師数
人
2,583
%
16.7
教育・ 進学率(高等学校)
子育て 幼稚園数
園
178
うるち米(5㎏)
円
690
まいわし(100g)
円
23
物価
牛肉(100g)
円
80
理髪料(大人1回)
円
359
県民総所得
億円
5,410
千
歳入総額(普通会計) 億円
497
葉
財政 県 歳出総額(普通会計) 億円
487
市
歳入総額(普通会計) 億円
365
町
億円
341
村 歳出総額(普通会計)
刑法犯認知件数
件
32,122
社会 交通事故件数
件
11,812
出火件数
件
1,079
(注)1.出所:各種資料をもとにちばぎん総合研究所が作成。
2.各年とも該当年(年度)に最も近い統計数値を掲載。
1974年前後
4,149,147
1,152,380
3.54
26.5
67.1
6.3
11,267
266,946(14.2)
600,452(32.0)
1,007,223(53.7)
136,117
984,113
150,587
25,269
125,318
3,224
18,333
244,464
43,406
158,392
12,297
5,534
42,661
12,099
51,307
70,235
75,973
68,088
197.3
53,793
8,248
34,285
696,222
50,271
18,768
11,210
233,372
182,563
1.41
36,406
3,454
30.0
449
1,370
36
313
1,270
43,732
3,404
3,343
3,677
3,537
39,068
13,193
2,951
主
要
品
目
小
売
価
格
55
1964年比
53.6
80.9
▲ 26.7
1.9
▲ 0.9
▲ 1.6
48.2
▲ 38.3
73.1
89.6
54.6
89.8
▲ 13.5
▲ 62.7
18.0
190.4
▲ 50.3
▲ 19.8
33.7
68.9
517.6
24.3
39.6
464.7
734.6
596.3
990.1
113.6
216.1
42.9
89.0
7.3
419.3
110.5
778.1
795.5
211.2
234.3
16.5
46.5
33.7
79.6
152.2
98.6
58.6
292.7
253.8
708.4
585.2
586.8
908.7
935.9
21.6
11.7
173.5
2012年前後
6,216,289
2,515,904
2.44
13.0
65.7
21.5
87,946
82,826(3.1)
556,856(20.5)
2,074,615(76.4)
190,239
2,042,622
73,716
14,075
40,387
4,009
5,916
169,244
28,051
244,939
47,789
7,613
64,400
52,522
123,805
109,824
197,321
46,013
155,100
14,669
40,230
3,522,279
248,341
123,493
464,161
370,393
0.56
59,959
11,075
53.8
569
2,324
70
702
3,838
234,084
16,130
15,911
20,951
20,097
80,802
22,931
2,098
1974年比
49.8
118.3
▲ 31.1
▲ 50.9
▲ 2.1
241.3
680.6
▲ 69.0
▲ 7.3
106.0
39.8
107.6
▲ 51.0
▲ 44.3
▲ 67.8
24.4
▲ 67.7
▲ 30.8
▲ 35.4
54.6
288.6
37.6
51.0
334.1
141.3
56.4
159.7
▲ 32.4
188.3
77.8
17.3
405.9
1,223.2
1,001.6
98.9
102.9
▲ 60.3
64.7
220.6
79.3
26.7
69.6
94.4
124.3
202.2
435.3
373.8
376.0
469.7
468.2
106.8
73.8
▲ 28.9
図 表 41 千 葉 県 の人 口 の推 移 (5つのエリア別 )
1965年
(人)
地域区分
1975年
(人)
東京湾岸地域
915,510
1,990,572
圏央道・アクアライン沿岸地域
418,561
651,261
成田空港周辺・印旛地域
310,286
478,963
常磐・つくばエクスプレス沿線地域
428,788
994,224
銚子・九十九里・南房総地域
628,625
620,417
2,701,770
4,735,437
千葉県 計
1965年比
(上段:人)
(下段:%)
1,075,062
117.4
232,700
55.6
168,677
54.4
565,436
131.9
▲ 8,208
▲ 1.3
2,033,667
75.3
2010年
(人)
2,671,483
824,612
815,547
1,340,684
545,618
6,197,944
(出所)国勢調査のデータをもとにちばぎん総合研究所が作成。
図 表 42 東 京 都 首 都 美 化 審 議 会 で示 された「都 民 への期 待 」
①吸い殻や紙くずの散らかしをやめる
②家の周りは毎日はく
③道路や公園などの木や花をだいじにする
④町中での放尿やたん、つばの吐きすてをやめる
⑤犬のふんは飼い主が始末する
⑥路上に商品や車などをおかない
(1963年の資料から)
56
1975年比
(上段:人)
(下段:%)
680,911
34.2
173,351
26.6
336,584
70.3
346,460
34.8
▲ 74,799
▲ 12.1
1,462,507
30.9
2.2020 年東京オリンピック・パラリンピックで期待される5つのレガシー分野
最近( 2013~ 14 年)の 日 本の主な 出来事をみる と(図 表 43)、14 年6 月には第 2
次安 倍内閣が 推進するアベ ノミクス の「日本再興 戦略 改 訂 2014」が閣 議決定さ れ
た ほか、経 済再生に 向け て国家戦 略特区な ど の 取組みが 動き始め てい る。また 、 13
年6 月には、富 士山―信仰 の対象と 芸術の源泉 が、世界文化 遺産に登録 されたほ か、
12 月には「和食 日本人 の伝統的 な食文化」が無形 文化財に 、14 年6 月には「富岡
製 糸場と絹 産業遺産 群」 が世界 文 化遺産に 登録 されるな ど明るい ニュ ースも相次い
で いる。一 方、 中東 (パ レスチナ ) やアフ リカ 、旧共産 国の一部 を中 心に 地政学的
リ スクが世 界各地で 高ま っており 、 平和の 祭典 である「 オリンピ ック ・パラリンピ
ッ ク」の開 催意義は 急速 に拡大し ている。 この ようにみ ると、 現 在の 日本経済は、
ア ベノミク スの進展 で明 る い兆し が見え始 めた ものの、 消費増税 の影 響や世界経済
の行 方など懸 念材料は 少な くない。
以上 のような 前提条件のも とで、千 葉県の東京オ リ・パラ のレガシー を 1964 年東
京オ リ・パラ のレガシーと 比較検討 してみた(図 表 44)。
まず、公共交通 の分野 では、64 年 東京オリ・パラ 開催時と 同様に、成田 空港及び
圏 央道など の大型の 公共 交通イン フラの 整 備計 画が着々 と進んで いる 。これら が順
調 に進展し 、県内外 との アクセス 利便性 を 飛躍 的に高 め ることが 出来 れ ば、千葉県
の半 島性のデ メリットを払 拭する 効 果も期待でき る。
産業 分野では 、64 年 当時 に みられた ような 飛躍的 な産業規 模の拡大は期 待しにく
い 状況にあ るが、現 在 の 精神的豊 かさや生 活の 質の向上 を重視す る「 成熟社会」 及
び 環境問題 の意識の 高ま りに対応 した産業 のイ ノベーシ ョンが実 現で きれば、 県内
産業 の一段の 底上げに つな がる 可能 性が 高い。
観 光分 野で は、 今後 更な る活 性が 見込 まれ てい る ア ジア 圏域 の大 交流 時代 の波 に
うま く対応 で きれば、 イン バウンド を 大きく増や すこと が できる。
市 民生 活の 分野 では 、 現 在の 日本 社会 は、 前回 大会 にお ける 高度 経済 成長 期と は
異 なり、少 子高齢化 ・人 口減少社 会の真っ ただ 中にあ る 。今後は 、 安 心・安全な 社
会 保障体制 の確立 や 、 持 続可能性 を念頭に おい た コンパ クトな ま ちづ くりが求めら
れ ている。 また、東 日本 大震災の 発生を契 機と して変化 した「他 者を 思いやる気持
ち 」や「 他者との 絆」を 、スポー ツ振興に よる心 身の健全 化を伴いつ つ 、東 京 オ リ ・
パ ラ成功に 向けた国 民の 一致団結 及び訪日 外国 人に対す るおもて なし の心に深化さ
せ ることは 、増加す る高 齢者を地 域で支え る心 構えなど の環境整 備に つながるもの
と考 える。
以 上よ り、 本稿 では 、東 京オ リ・ パラ 開催 に伴 い千 葉県 で期 待で きる レガ シー 分
野と して、①公 共交通、②産 業振興(イ ノベーシ ョン )、③観光 振興、④ 安心・安全 、
⑤教 育・文化 ・スポーツ、 の5分野 と定義する ( 図表 45)。
57
図 表 43 最 近 (2013~14 年 )の主 な出 来 事
主な出来事
2013年
2月 北朝鮮が2009年以来3度目となる核実験を実施
3月 東日本大震災追悼式を中国がボイコット
4月 米国ボストンマラソン爆弾テロ事件
5月 三浦雄一郎がエベレストに史上最高齢(80歳7ヶ月)で登頂成功
7月 エジプトで軍部によるクーデター発生
6月 「富士山―信仰の対象と芸術の源泉(山梨県、静岡県)」が世界遺産に登録
8月 IOC総会において2020年夏季オリンピックの開催都市が東京に決定
10月 欧州合同原子核研究機構は新たな粒子をヒッグス粒子と確定
フィリピン・ボホール島地震発生(142名死亡)
ヨーロッパとアジアを結ぶボスポラス海峡トンネル・地下鉄が開通
12月 「和食日本人の伝統的な食文化」が無形文化遺産に登録
中華人民共和国の無人月探査機「嫦娥3号」が月面着陸に成功
2014年
2月 ソチオリンピック開催
3月 ソチパラリンピック開催
マレーシア航空の旅客機370便(乗客乗員239人)が消息を絶つ
ロシアのプーチン大統領がクリミア自治共和国の編入を表明
4月 韓国珍島沖でクルーズ旅客船「セウォル号」が沈没
5月 タイ軍のクーデター宣言により憲法停止
6月 「日本再興戦略」改訂2014を閣議決定
6月 「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界遺産に登録
6月 2014FIFAワールドカップブラジル大会開催
(出所)各種データよりちばぎん総合研究所が作成。
58
図 表 44 東 京 オリ・パラの千 葉 県 のレガシーに関 する考 え方
≪1964年東京オリ・パラのレガシー≫
≪2020年東京オリ・パラの千葉県のレガシー≫
【公共交通】
【公共交通】
① 成田空港・圏央道等の整備による
交通アクセス利便性の向上
① 公共交通インフラの目覚ましい発展
【産業振興】
【産業振興】
② 消費活発化を映じた各種産業の
裾野の拡大
② 産業のイノベーションの推進
【観光振興】
【観光振興】
③ インバウンドの増加
(アジア圏域の大交流時代の到来)
③ 本格的な海外旅行時代の幕開け
【市民生活】
【教育・文化・スポーツ振興】
④ 市民の公徳心・美化意識の向上
④ 思いやり・おもてなしの心の醸成
【高度経済成長期】
【安心・安全】
⑤ 市民の暮らしが急速に豊かに
(市民の所得増加)
⑤ 安心・安全な医療・福祉体制の確立
図 表 45 千 葉 県 において期 待 される東 京 オリ・パラのレガシー分 野
公共交通
教 育・文化
・スポーツ
産業振興
(イノベーション)
観 光振興
安心・安全
59
III.千葉県が東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて進むべき道
1. 東京オリ ンピック・パラ リンピック 後の千葉県の将来像
地域が輝き、すべての人が笑顔で暮らせる「ちば」
東 京オ リ・ パラ の開 催を きっ かけ に、 高齢 者を はじ めと して 県民 のス ポー ツ参 加
が 活発化し 、心身と もに 元気な高 齢者が増 加し ている。 その結果 、自 治体財政の圧
迫 要因とな っていた 社会 保障費が 抑制され 、自 治体の財 源は各種 まち づくりに向け
ら れるよう になって いる 。また、 障がい者 への 理解が深 まったこ とや 、日本人が本
来 持ってい る「思い やり ・おもて なし」の 心が 一段と高 まったこ とな どから、電車
のな かでは、 高齢者や障が い者に席 を譲ることが 当たり前 の世の中にな っている 。
成 田市 の国 際医 療学 園都 市構 想の 進展 に伴 い、 県内 の医 療・ 介護 ・ヘ ルス ケ ア 環
境 が向上し 、高齢者 や障 がい者が 安心して 医療 ・福祉サ ービスを 享受 可能な体制が
構 築されて いる。パ ラリ ンピック を契機と して 、障がい 者スポー ツに 係るハード整
備 やソフト の充実が 進み 、県内の いたると ころ で気軽に スポーツ を楽 しむ障がい者
や 高齢者と それを支 える ボランテ ィアの姿 がみ られる。 また、イ ベン トや大会も多
数 開催され るように なる 。これに 伴い、ま ちの バリアフ リー化・ ユニ バーサルデザ
イン 化も進み 、高齢者や障 がい者に 優しいまちと なってい る。
中 心市 街地 では 、千 葉駅 前地 域の 再開 発や 柏の 葉キ ャン パス シテ ィの 取り 組み な
ど コンパク トなまち づく りが進み 、高齢者 が徒 歩で生活 できるス タイ ルが確立され
て いる。一 方、鴨川 市な ど南房総 地域では 、シ ルバータ ウン構想 が開 花し、元気な
高齢 者と若者 が共存するま ちづくり が実現してい る。
国内外から人が集まる交流が盛んな「ちば」
成 田空 港で はL CC 専用 ター ミナ ルが 供用 開始 とな り、 成田 空港 と国 内の 主要 空
港 及び世界 (特にア ジア の主要拠 点)をL CC が結んで いる。割 安な LCCは個人
観 光からビ ジネス利 用ま で幅広い 層に支持 され 、人々の 主要な移 動手 段となってい
る。 インバウ ンドは、年 間 2,000 万人を 突破し、 首都圏空 港の さらなる 容量拡大 が
大 きな課題 となって いる 。成田空 港の3本 目の 滑走路の 必要性が 一層 高まり、最先
端の 技術と知 見を結集して 、騒音問 題の改善ぬ向 けた研究 がなされてい る。
圏 央道 や北 千葉 道路 、外 環道 が開 通し たほ か、 県内 のア クセ ス利 便性 が飛 躍的 に
高ま っている 。東京湾アク アライン 通行料金 800 円 が恒久化 され、成 田空港の 機能
強 化と国際 医療学園 都市 構想の進 展もあっ て、 圏央道沿 線には東 京圏 の旺盛な需要
を 支える物 流企業を はじ め、成長 分野の企 業立 地が盛ん となり、 人流 ・物流の往来
が 活発化し ている。 大規 模アウト レットや モー ルが周辺 観光 地と 連携 して周遊ルー
ト を整備し 、初めて 千葉 県を訪れ た外国人 観光 客がおも てなしの 心に も触れて「ち
ば 」の良さ を実感し てい る。また 、館山道 が4 車線化さ れ、南房 総方 面への観光客
の 交通渋滞 が緩和さ れた ほか、成 田空港か ら南 房総への 2次交通 (高 速バス等)が
確 立された こともあ って 、増加し たリピー ター のインバ ウンドが 南房 総の豊かな自
然を 楽しんで いる。
東 京オ リ・ パラ 開催 をき っか けに 、ス ポー ツツ ーリ ズム が定 着し 、温 暖な 気候 に
恵 まれた千 葉県は、 スポ ーツ合宿 や競技大 会( 障がい者 スポーツ を含 む)の受け入
れ先 のメッカ になり、一年 を通し て スポーツ施設 や周辺観 光地が賑わっ ている。
コ ンパ クト &ス マー トシ ティ の取 り組 みが 進む とと もに 、地 域の 公共 交通 は、 各
地 域の実状 に応じて 最適 化され、 中心市街 地と 郊外地域 の往来が 盛ん になり、それ
ぞ れの地域 が個性を 発揮 し、自立 すること が可 能となり 、若者は もち ろん高齢者も
60
安心 して暮ら せるようにな っている 。
先端技術と新産業が日本と世界の経済をリードする「ちば」
成 田市 の国 際医 療学 園都 市構 想の 進展 によ り、 医療 業界 を目 指す 若者 が成 田市 で
育 成されて いる。県 内で 医療・介 護職及び 病床 ・介護施 設が増え て、 人々が安心し
た 暮らしを 実感して いる 。国際戦 略特区に よる 各種の規 制緩和や 成田 空港との相乗
効果 もあって 、医療 系企業 が地域に 相次いで立地 し、
「なり たメディカ ルバレー 」を
形 成してい る。国内 外の 医者や介 護関連の 学会 等が、成 田市や幕 張メ ッセなど県内
で 連日開催 されてい る。 柏の葉キ ャンパス シテ ィでは、 地域活性 化総 合特区を活か
し て、地域 で生まれ たエ ネルギー を地域で 循環 する安心 ・安全な スマ ートシ ティが
実現 している 。
京 葉臨 海工 業地 帯に 立地 する 既存 産業 が一 定の 規模 を保 つと とも に、 圏央 道な ど
の 公共交通 網の整備 によ るアクセ ス利便性 の向 上もあり 、千葉県 の生 産施設をマザ
ー工 場と位置 付ける企業が 増加して いる。研究開 発環境が 一段と整備さ れたこと で、
「 ちば」発 の高機能 ・高 付加価値 の新製品 が続 々と生ま れ、世界 のマ ーケットで高
い シェアを 誇ってい る。 高い技術 力を持つ 中小 企業を含 めて、東 京オ リ・パラ開催
を 通じて高 まった日 本製 品のブラ ンド力を 活か して海外 に販路を 拡大 する企業が増
加 し、さら に大学の 知財 を活用し た新製品 開発 への 動き が加速し てお り、商業面で
も 大規模小 売店が積 極的 に賑わい 創出や防 災・ 減災活動 に協力し 、商 店街と協働で
ま ちづくり に貢献し てい る。そし て、地域 の商 店街・商 業施設は 、地 域の課題に対
応 したまち づくり活 動に 積極的に 取り組み 、地 域住民に とってな くて はならない存
在に なってい る。
農 水産 業は 、農 地の 大規 模化 や水 産物 のブ ラン ド化 の動 きに 加え 、6 次産 業化 や
海 外 へ の 輸 出 が 拡 大 し 、大 規 模 化 ・ 法 人 化 に よ る 生 産 性 の 向 上 も 進 み 、 農 漁 家 の 所
得 環 境 が 好 転 し て い る 。稼 げ る 農 業 ・ 漁 業 を 好 感 し た 若 者 が 担 い 手 と し て 農 業 ・ 漁
業に 参入し 、持続可能な産 業体制と なっている 。また、柏の葉スマート シティ(柏 市)
の 植 物 工 場 は 本 格 的 な 実 用 段 階 に 至 り 、国 内 外 に プ ラ ン ト を 供 給 す る 一 大 産 業 に な
っ ており、 海外、特 にア ジアやア フリカか らの 多くの研 究者や研 修生 が技術を学ん
でい る。先進的な生産技術 とノウハ ウは海外にも 拡がり 、高い評価を受 けている 。
図 表 46 東 京 オリ・パラ後 の千 葉 県 の将 来 像
地域が輝き、
すべての人が
笑顔で暮らせる
「ちば」
国内外から
人が集まる
交流が盛んな
「ちば」
先端技術と新産業が
日本と世界の経済を
リードする
「ちば」
61
2.千葉県が東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて取り組むべきこと
前 ペー ジで 定義 した 通り 、千 葉県 が東 京オ リ・ パラ に戦 略的 に対 応す るこ とで 得
られ るレガシ ーの分野は 、①公共 交通、② 産業振 興(イ ノベーシ ョン )、③ 観光振興 、
④教 育・文化 ・スポーツ、 ⑤安心・ 安全 、の5つ が考えら れる。
一方 、千 葉県が抱 えている 課題は 、以下 の通り 、
「成田空 港及び圏央道(ア クアラ
イ ン)を活 用した地 域活 性化」や 「千葉県 の優 位性を活 かした産 業の イノベーショ
ン 」、「東京 オリンピ ック ・パラリ ンピック への 対応」な ど大きく 7つ の分野に集約
で きる。こ れらの課 題に 速やかに 対応でき るか どうかが 千葉県の 今後 の持続的な発
展 の鍵を握 っている 。と りわけ 、 東京オリ ンピ ック・パ ラリンピ ック への 時機を捉
えた 対応は、分 野を超えて 課題の解 決に寄与する ことが期 待できるため、2020 年 の
開催 までに重 点かつ集中的 に取り組 むことが求め られる。
東 京オ リ・ パラ の レ ガシ ーと して 期待 でき る 5 つの 分野 と千 葉県 が抱 えて いる 7
つ の課題は 、それぞ れが リンクし て いるこ とか ら 、東京 オリ・パ ラの レガシー創造
を 目指す取 り組みは 、千 葉県が抱 える課題 の克 服につな がり、最 終的 には、千葉県
の持 続的な発 展に寄与する ものと考 えられる (図 表 47)。
次 頁以 降で は、 5つ の レ ガシ ー の 創出 に向 けて 、千 葉県 が 今 後推 進す べき 取り 組
みに ついて検 討した。
図 表 47 東 京 オリ・パラで期 待 されるレガシー分 野
千葉県が抱えている7つの課題
5つのレガシー分野
(1)公共交通
公共交通
推進
②成田空港及び圏央道(アクア
ライン)を活用した地域活性化
(2)産業振興
産業の
(イノベーション)
イノベーション
推進
③千葉県の地域特性と優位性を
活かした産業のイノベーション
(3)観光振興
観光
推進
④観光分野のフィールド拡大
教育・
(4)教育・
文化・
スポーツ
文化・スポーツ
推進
推進
(5)安心・安全
安心・安全
⑤東日本大震災からの完全復興
( 地域の防災対応力・防犯力の強化)
推進
⑥安心・安全な医療・福祉体制
の確立
推進
⑦コンパクト&スマートシティ
の推進
62
(
経
済
波
及
効
果
の
確
実
な
取
り
組
み
と
レ
ガ
シ
ー
創
造
)
①
東
京
オ
リ
ン
ピ
ッ
ク
・
パ
ラ
リ
ン
ピ
ッ
ク
へ
の
対
応
課
題
の
解
決
千
葉
県
の
持
続
的
な
発
展
公共交通の利便性向上
概要
千葉 県の公共 交通は、1964 年東 京オリ・パラ開 催以降に 目覚ましい発 展を遂げ て
きた 。すなわ ち、1978 年開 港の成田 空港をはじ め、東関 道(全線開 通 78 年)、千葉
東金 道路( 同 79 年)、京葉 道路( 同 80 年)、常磐 道( 同 85 年 )、 東京湾 アクアライ
ン( 同 85 年 )、富津 館山道 路( 同 04 年 )、 館山道 (同 07 年 )、圏 央道( 木更津IC
~松 尾横芝I C開 通 13 年) など の道 路網整備が 着々と進 められてきた 。
鉄道 に目を転 じると、都内 通勤者の 急増に対応す る形で、60 年代後半 より常磐 線
( 71 年に 綾瀬~我 孫子間 が複々線 化 )や総武線( 72 年 に錦糸町 ~津田 沼間が複 々線
化、 81 年 に津田沼 ~千葉 間が複々 線化 )、京成 スカイラ イナー( 78 年に京 成上野~
成田 空港間が 開業 )、京葉 線( 90 年全通 )、つく ばエクス プレス( 05 年開業)など の
複 々線化・ 延伸や新 たな 路線の整 備などが 相次 ぎ 、県民 の生活利 便性 が飛躍的に高
ま るととも に、県内 への 人口流入 が進んだ 。こ のように 千葉県の 経済 発展に伴う急
速 な人流・ 物流の増 加に 相前後す る形で、 空路 や陸路( 道路・鉄 道) のアクセス利
便性 が向上し てきた。
国土 交通省( 交通政 策基本 計画小委 員会 )が 14 年8月 にとりま とめた「交通 政策
基本 計画(原案 )」では、
「 A .豊かな国 民生活に資 する使い やすい交通の 実現 」や「B .
成長 と繁栄の 基盤となる国 際・地域間の旅 客交通・物流 ネットワ ークの 構築 」、
「C .
持 続可能で 安心・安 全な 交通に向 けた基盤 づく り 」とい った次世 代を 見据え た取り
組 みが網羅 されて い る( 図表 48)。その問 題意 識は千葉 県の今後 の公 共交通やまち
づく りの施策 を考えるに当 たり参考 になる点が多 い 。
こ うした国 の大きな 公共 交通に関 する 方向 性を 踏まえつ つ、 千葉 県の 人流・物流
の 動きを展 望すると 、 成 田空港の LCC 及 び国 内線の充 実や アジ ア圏 の人口増加 ・
経済 成長に伴 う 国内外の 交 流人口 の 増加に加え、成田市の「 国際医療学 園都市構 想」
や 柏市の「 柏 の葉ス マー トシティ プロジェ クト 」の進展 、袖ケ浦 椎の 森・茂原にい
はる 工業団地 の整備など か ら物流ニ ーズの 取り込 み も期待 できる。
千葉 県が人流・物流の需要 増加に 中 長期的に 対応 していく ためには、
「①成田 空港
の 機能向上 」や「② 道路 整備によ るアクセ ス利 便性の向 上」、「③ 地域 の2次交通の
充 実」など を着実に 進め ていくこ とが求め られ る。県内 の公共交 通の 利便性向上 に
向け た取り組 みに は、東京 オリ・パ ラが開催され る 2020 年に は間に合 わないも の も
あ るが、い ずれも 、 東京 オリ・パ ラのレガ シー 創出 にむ けた重要 な 基 盤である だけ
に、 可能な限 り 前倒しの対 応が 求め られる 。
63
図 表 48 交 通 政 策 基 本 計 画 (原 案 )の概 要
A.豊かな国民生活に資する使いやすい交通の実現
(施策の目標)
① 自治体中心にコンパクトシティ化等まちづくり施策
と連携し、地域交通ネットワークを再構築する。
② 地域の実情を踏まえた多様な交通サービスの展
開を後押しする。
③ バリアフリーをより一層身近なものにする。
④ 旅客交通・物流サービスをさらなる高みへ引き上
げる。
(主な数値目標)
デマンド交通の導入市町村
311市町村(2013)→700市町村
コミュニティサイクルの導入数
54都市(2013)→100都市
ノンステップバスの導入割合
41%(2012)→70%
バスロケーションシステム導入の系統数
11,684系統(2014)→17,000系統
B.成長と繁栄の基盤となる国際・地域間の旅客交通・物流ネットワークの構築
(施策の目標)
① 我が国の国際交通ネットワークの競争力を強化す
る。
② 地域間のヒト・モノの流動を拡大する。
③ 訪日外客2,000万人の高みに向け、観光施策と連
携した取組を強める。
④ 我が国の技術とノウハウを活かした交通インフラ
サービスをグローバルに展開する。
(主な数値目標)
首都圏空港の空港容量拡大
71.7万回(2013)→74.7万回+最大7.9万回
道路による都市間伝達率の確保率
48%(2012)→約50%(2016)
交通分野における日本企業の海外受注額推計
0.5兆円(2010)→7兆円
無料Wi-Fiの導入割合
[主要空港]87%(2013)→100%
C.持続可能で安心・安全な交通に向けた基盤づくり
(施策の目標)
① 大規模災害や老朽化への備えを万全なものとす
る。
② 交通関連事業の基盤を強化し、安定的な運行と安
全確保に万全を期する。
(主な数値目標)
大規模地震に備えた主要鉄道の耐震化率
91%(2012)→概ね100%(2017)
運輸安全マネジメント評価実施事業者数
6,105事業者(2013)→10,000事業者
主要航空会社への航空操縦士の年間新規供給数
③ 交通を担う人材を確保し、育てる。
④ さらなる低炭素化、省エネ等の環境対策を進め
る。
120人(2012)→約210人倍増
新車販売に占める次世代自動車の割合
23.2%(2013)→50%
(出所)国土交通省交通政策基本計画小委員会「交通基本計画中間とりまとめ(案)[2014年8月]」
64
「公共交通の利便性向上」のアクションプラン
「 公共交通 の利便性 向上 」のアク ションプ ラン として、 ①成田空 港の 機能向上、
② 道路整備 によるア クセ ス利便性 の向上、 ③地 域の2次 交通の充 実、 という3つの
方策 が考えら れる。
各プ ランの具 体的な取り組 み及び ロ ードマップ( 行程表) は 図 表 49 の通 り。
図 表 49 「公 共 交 通 の利 便 性 向 上 」のアクションプランの体 系 図 及 びロードマップ
短期
(年度)
中期
長期
2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
2021
以降
①成田空港の利便性向上
a.成田空港の機能向上と競争力強
化
b.3本目の滑走路の整備
早期実現
c.「都心直結線」構想の実現
早期実現
②道路整備によるアクセス利便性の向上
a.圏央道(大栄JCT~松尾横芝I
C)の早期開通
b.北千葉道路の早期開通
c.外環道の早期開通
d.東京湾アクアラインの800円化の
恒久化
e.館山道の4車線化
f. その他道路の整備促進(銚子連
絡道路、長生グリーンライン等)
早期実現
③県内各地の2次交通の充実
a.公共交通の最適化の実現
b.バスターミナル拠点の戦略的な
活用
65
【参考】
「(1)公共交通の利便性向上」関連の千葉県の主な事業(平成26年度当初予算)
事業名
新規
①成田空港の機能向上
成田空港活用協議会負担金
空港のノンストップゲート化に向けた警備の高度化事業
②道路整備によるアクセス利便性の向上
圏央道整備事業(直轄事業負担金)
外環道整備事業(直轄事業負担金)
北千葉道路整備事業(直轄事業負担金)
圏央道インターチェンジへのアクセス強化事業
北千葉道路整備事業
外環道インターチェンジへのアクセス強化事業
東京湾アクアライン料金割引事業
③県内各地の2次交通の充実
銚子電鉄に対する支援
○
ふさのくに観光道路ネットワーク事業
南房総地域交通円滑化事業
○
(合 計)
(注)1.出所:千葉県ホームページ
2.主な事業を掲載
66
予算(百万円)
118
25
93
16,202
1,600
6,120
900
1,820
3,262
2,000
500
945
9
760
176
17,264
構成比(%)
一般会計=
100%
0.007
0.002
0.006
1.004
0.099
0.379
0.056
0.113
0.202
0.124
0.031
0.059
0.001
0.047
0.011
1.069
成田空港の利便性向上
成田 空港は 、開港 後 36 年が 経過し 、空港機能や アクセス 利便性の向上 、空港 関連
産業 の立地な ど 多方面 で大 きな発展 を遂げた。すな わち、2010 年には、成 田スカイ
アク セスが開 通し、空港と 都心を最 短 36 分で結 ぶなど ア クセス が向上 したほか 、ジ
ェッ トスター やエアアジア ジャパン ( 13 年 11 月 にバニラ エアに改名 )など の LC
C就 航が増え た 。また、12 年には、ビ ジネスジェ ットの 専 用ターミナル が整備さ れ
る などサー ビスの選 択肢 も広がっ ている。 産業 面では、 空港周辺 への ホテルやフォ
ワ ーダーな どの集積 が進 んだほか 、空港自 体が 約4万人 の雇用を 抱え る一大事業所
に成 長した ( 成田空港内従 業員数: 84 年 10 月 22,198 人→ 11 年 11 月 38,689 人)。
一 方、アジ アの主要 ハブ 空港との 競合激化 に加 え、羽田 空港の再 国際 化 ・2次増
枠 や地方空 港からの 海外 直行便の 増加 など によ り、成田 空港の航 空需 要の一部がこ
れ らの空港 にシフト す る など、成 田空港を 取り 巻く経営 環境は 順 風満 帆とはいえな
い 。こうし た変化に 対応 し 、成田 空港 が持 続的 な発展を 続けてい くた めには 、空港
機 能やアク セス 利便 性を 更に高め るととも に、 成田空港 を活用し た地 域活性化に向
け た取り組 みを 、官 民一 体となっ て推進し てい くことが 求められ てい る 。その活動
の 中核とな っている 「成 田空港活 用協議会 ( 13 年7 月設立 )」で は、 プロモーショ
ン 事業や空 港利用促 進事 業、調査 広報事業 、要 望活動な ど 官民連 携に よ る各種取組
を実 施して お り、実効性を 伴う新た な 事業展開に 期待した い (図表 50)。
図 表 50 成 田 空 港 活 用 協 議 会 の事 業
2013年度(実績)
2014年度(予定)
札幌における現地プロモーションの実施
北海道の旅行業者を招へいした
プロモーション事業 モニターツアーの実施
(誘客促進事業) レンタカーを活用した香港プロモーション
事業の実施
国内線就航先向けプロモーション
海外向けプロモーション
千葉県起用誘致セミナーにおけるPR
現地旅行業者等の招へい事業
(現地旅行事業者等への情報発信、
現地旅行事業者等の招へい)
利用促進キャンペーンの実施
利用促進キャンペーン
県産食材等を使用したスイーツのPR
ナリタファンの拡大に向けた情報・魅力
発信
空港利用促進事業
第1回県内経済活性化ビジネスセミナー
~成田空港と圏央道の活用~の開催
第2回県内経済活性化ビジネスセミナー 経済活性化セミナー(外客受入体制、
調査・広報事業
~MICEとその魅力(基礎編)~の開催 観光・産業振興)
成田空港国内線の利用状況と国内線を
マーケットリサーチ
利用する来県者動向に係る調査
圏央道建設促進に関する要望活動
要望活動
国等関係機関に要望実施
(国土交通省)
(出所)成田空港活用協議会「平成26年度成田空港活用協議会総会議案書」をもとに
ちばぎん総合研究所が作成。
67
a. 成田空港の機能強化 と競争力強化
≪LCC専用ターミナルの整備≫
成田 空港に 就 航している L CC の 2014 年夏ダイ ヤ におけ る発着シェア( LCC/
国際 線または 国内線) は、 国際線 が 5.3%、国内 線が 55.5%と なって おり 、国 際線
と国 内線合計 の全旅客便に 占めるシ ェアは、17.1%となっ ている(図 表 51)。更に、
14 年8月 には、春 秋航空 が、高松・佐賀・広島 線 に新規 就航したほか 、アジア アト
ラン ティック 航空( タイ )やタイ・エア アジアX(タイ )、ノックスク ート( タイ )、
Vエ アー(台 湾)などアジ アのLC C が 14 年内 に相次い で就航する予 定となっ てい
る 。こうした LCCの就航 の拡大は 、特に、国内 線航空旅 客数の増加( 09 年 度:約
133 万 人→ 13 年度 518 万人 [09 年度比 + 3.9 倍 ])に 大きく寄 与してい る。
成 田空港は 、 こうし た L CCの就 航 増加に あわ せて、第 2旅客タ ーミ ナルビルの
開館(3 時 30 分)やチェ ックイン カウンター付 近の売店・軽食 コーナ ー の営業 開始
(5 時)、 シャワ ールー ム(出 国手続 き前エ リア )の営業 開始( 6 時 30 分 )の 時
刻 をそ れぞれ 早めたほか 、13 年7月に は、国内 旅客ター ミナルビル内 としては 初め
てと なる 24 時間 営業のコ ンビニエ ンスストア も オープン し た。また、 14 年7月 に
は、 駐車場棟 にカプセルホ テル「ナ インアワーズ 成田空港 ( 129 室、う ち男性 用 71
室 )」がオ ープン し 、早朝便 利用者 等 の宿泊需要に 対応する など LCC利 用客の 受 入
態勢 を整えて いる。
アク セス面で も、東京駅な どの都心 と成田空港を 結ぶ 安価 な高速バス と して 、
「東
京シ ャトル 」
( 900 円/京 成バス・成田空港交通・京成バ スシステム 、リムジン・パ
ッセ ンジャー サービス)と 「 THE アクセス成田 」( 1,000 円/ ビィー ・トラン セ・
グル ープ)が運 行 している ほか、14 年6月から は、京成バ ス が、京成 成田駅発 のL
CC 早朝便 に 対応した 路線 バス(4 時 55 分に成 田空港到 着)の運行 を 開始する など
利用 者ニーズ に応えている 。
成 田空港で は、さら なる LCCの 参入を促 すた め、施設 使用料を 安く 抑えたLC
C専 用ターミ ナルの整備を 進めてお り、2014 年度 中に完成 見込みとな っている。今
後 は、空港 運用時間 の 緩 和も視野 に入れつ つ、 LCCを 含む全て の航 空会社にとっ
て利 用しやす い環境 整備 を 進めてい くこと が求め られてい る 。
図 表 51 成 田 空 港 に就 航 しているLCCの週 間 発 着 回 数 及 びシェア (2014 年 夏 ダイヤ)
国際線
バニラエア
(単位:回)
週間
週間
週間
国内線
国内線
発着回数
発着回数
発着回数
56 ジェットスター・ジャパン
356 国際線+国内線合計
638
チェジュ航空
28 バニラエア
98 全旅客便のシェア(%)
ジェットスター航空
24 ピーチ・アビエーション
34
セブパシフィック航空
14 国内線合計
488
イースター航空
14 国内線のシェア(%)
55.5
スクート
14
国際線合計
国際線のシェア(%)
150
5.3
(出所)成田国際空港(株)ホームページ
68
17.1
≪入場ゲートのノンストップ化 ≫
成 田空港の セキュリ ティ チェック は、日本 国内 の空港で は唯一の 検問 が実施され
る など、依 然厳しい 警備 体制が敷 かれてい る。 成田空港 は、都心 から 遠い イメージ
があ ることに 加えて、厳し いセキュ リティチェッ ク の存在 が、
「 成田空 港 を利用 しよ
う」 という動 機を阻害して いる側面 も否めなかっ た 。
成田 空港は、空港 利用者の 快適な入 場環境を整え るため、2014 年度中 に 入場ゲ ー
トに 機械設備 等を導入し、 ノンスト ップゲート化 を実現す る予定と して いる。
14 年7月 には、成田空港 の第1タ ーミナル(出 国手続き前 のエリア)の「エアポ
ー トモール 」がリニ ュー アルオー プンした 。こ れまで同 空港にな かっ た靴や帽子、
ステ ーショナ リー( 文房具 )、アート 雑貨といっ た新しい ショップがオ ープンし 、シ
ョ ッピング スポット とし ての 魅力 を高める 努力 が行われ ている 。 入場 ゲート のノン
スト ップ化は、成田空港で ショッピ ングやイベン トなどを 楽しむ層の拡 大 を通じ て 、
航空 外収入の 増加に寄与す ること も 期待される。
≪その他の旅客サービス・旅客取扱能力・運用効率の向上に向けた取り組み≫
成田 空港が、中 期経営計画「 イノベイ ティブ Narita2015」で取り組 んでいる 重要
な設 備の新設 投資は 図表 52 の 通り。
図 表 52 成 田 空 港 の新 設 投 資 一 覧 (2014 年 3月 時 点 )
投資予定額
(百万円)
設備内容
着手及び完了予定
着手
完了予定
2PTB本館-サテライト連絡通路整備
10,489
2012年3月
2016年3月
旅客ターミナルビル固定ゲート延伸
13,375
2013年4月
2016年3月
誘導路及びスポット整備
8,081
2013年8月
2017年3月
LCCサテライト北側エプロン整備
5,084
2014年4月
2017年3月
旅客サービスの向上
運用効率の向上
(出所)成田国際空港(株)「有価証券報告書(2014年3月)」
b. 3本目の滑走路の整備
観光 庁は、訪 日外国人 3,000 万人プロ グラムに おいて、 東京オリ・パ ラが開催 さ
れる 2020 年までに 訪日外 国人を 2,000 万人にす ることを 目標に各種施 策に取り 組ん
で い る 。 仮 に 、 こ の 目 標 を 達 成 し た 場 合 の 成 田 空 港 の 航 空 旅 客 数 を 推 計 す る と 10
年比 約 1.6 倍 程度となり、30 万回で は容量不足 となる可 能性がある(本 推計は、機
材 の変化や 地方空港 から の海外渡 航者の伸 びな どは考慮 していな い 等 の前提をおい
た もの、図表 53)。 国も 同様の問 題意識か ら、 交通政策 基本計画 にお いて、首都圏
空港 の容量に ついて 、2013 年時 点の 71.7 万回か ら 74.7 万回 +最大 7.9 万回に 拡大
する ことを想 定している が 、アジア 地域の人口が 2010 年 から 2050 年 にかけて 10
億人 増加する ことをベース に置くと 、訪日外国 人 3,000 万人プ ログラム の達成は 十
分に ありうる ため、更なる 首都圏空 港の機能強化 が求めら れる 。
成 田空港は 、国際ハ ブ空 港として の競争力 を強 化し、こ うした将 来の 航空旅客増
に 対応する ため、3 本目 の滑走路 を視野に 入れ つつ、 で きるだけ 早期 に 空港内設備
の グランド デザイン の見 直しをは じめる必 要が ある。ア ジアのハ ブ空 港争いをして
い る仁川空 港(韓国 )で は、4本 目の滑走 路整 備計画が あるほか 、将 来的には、暫
69
定 的にゴル フ場とし て 利 用してい る用地に 5本 目の滑走 路も拡張 でき る設計と なっ
て いる。ま た、羽田 空港 で は、こ れまで 騒 音対 策のため 認めてこ なか った航空機の
都 心上空飛 行 の解禁 やC 滑走路沖 合への新 滑走 路の整備 など によ り、 発着容量を拡
大さ せる調査・検 討が行わ れている が、東京オリ・パ ラ開催と いう追い 風を受け て、
そ の動きが 加速 させ る 可 能性が 高 い。一方 、成 田空港 の 3本目の 滑走 路の実現に向
けた 動きとし ては、2014 年以降、県 内経済団体 による国 土交通省への 要望や「成 田
第3 滑走路実 現する会」の 設立などの 動きが みら れる(図 表 54)が、未だ実現に 向
け た具体的 な動き を 本格 化するに は 至って いな い。 成田 空港の発 着枠 拡大には、 地
元 が長年苦 悩してき た騒 音問題も 含めた 地 元と の合意 が 不可欠で ある など課題はあ
る が、人口 減少が加 速す るわが国 にとって 、世 界の需要 を取り込 みつ つ持続的な成
長 を図るこ とが国家 的な 戦略命題 であり、 世界 の玄関口 である成 田空 港を整備し、
輸 送量の拡 大を実現 する ことによ る国家 利 益等 の大きさ などに加 え、 地元の 雇用や
税 収、交流 ・定住人 口の 増加など 、空港が 拡張 すること による地 域へ の 大きな経済
効 果と地域 の発展を 考慮 すると 、 今後3本 目の 滑走路の 新設や離 着陸 可能な時間帯
の拡 大による 発着容量拡大 を検討す ることも重要 性が増し てい る。
図 表 53 成 田 空 港 の航 空 旅 客 数 の将 来 推 計
訪日外国人
2,500万人注3及び
日本人海外旅行者注4
2,000万人達成時
2010年注2
航空旅客数
(単位:千人、%)
2010年比
増加率
増加数
33,869
55,787
64.7
21,918
32,216
52,659
163.5
20,443
日本人
17,412
20,929
20.2
3,517
外国人
8,778
25,491
190.4
16,713
通 過 者注5
6,026
6,238
9.2
212
1,652
3,128
89.3
1,476
国際線
国 内 線注6
(注)1.出所:成田国際空港㈱及び総務省、観光庁、国立社会保障・人口問題研究所のデータをもとにちばぎん総合研究所が推計。
2.東日本大震災発生前の2010年を基準年として推計した。
3.観光庁は訪日外国人3,000万人プログラムで訪日外国人が2020年までに2,500万人になることを目指している。
(実績)2009年679万人→2010年861万人→2011年622万人→2012年900万人(目標)
4.観光庁は観光立国の実現に関する目標で日本人海外旅行者数が2020年までに2,000万人になることを目指している。
(実績)2009年1,545万人→2010年1,664万人→2011年1,699万人(推計)
5.通過者は2020年の推計値。
6.国内線は2012年14~10月実績の2010年(同)比増加率をベースに算定した。
●航空機年間発着回数
22万回
30万回
1.4倍
70
(容量不足)
図 表 54 成 田 空 港 の3本 目 の滑 走 路 整 備 に向 けた動 き
年月
取組事項
2014年1月 千葉県内経済6団体(注)が国土交通省に要望書を提出
2014年3月 成田商工会議所などが成田市長に要望書を提出
自民党の成田空港推進議員連盟が国土交通省に成田
空港の機能強化を要請
成田商工会議所などが中心となり「成田第3滑走路実現
2014年4月
する会」を設立
2014年3月
(注)千葉県経済同友会と成田商工会議所、県経済協議会、県経営者協会、
成田市観光協会、成田空港対策協議会
c. 「都心直結線」構想の実現
政府 は、2014 年度 予算案で 成田 空港 及び羽田空港 と東京都 心のアクセス を改善す
る 「都心直 結線 (図表 55)」な ど鉄道新 線の 調査費補 助金とし て1 億8千万 円を計
上 した。都 心直結線 構想 は、都営 浅草線の 押上 -泉岳寺 間をバイ パス 線で結 び、両
空 港間を直 通運転す る も ので、 東 京駅に隣 接し て「新東 京駅」 の 新設 も想定されて
おり 、リニア 中央新幹線が 開業す る 2027 年ごろ の完成を 目指 している(事業費 は約
4,000 億円 程度 )。同構想 では、 土 地買収が不要 な深さ 40 メ ートル以 上の地下 を利
用す るため、14 年度は地 下に障害 となる建物の 基礎部分 などがないか を調査 し、実
現 可能なル ートの絞 り込 みを 行う 。本構想 が実 現すると 、新東京 -成 田空港 間の所
要時 間は最短 で 36 分 (東 京駅発着 より 17 分短 縮)、新東京 -羽田 空 港間 は 同 18 分
(同 9分短縮 )に短縮され る。
一方 、JR東 日本は、都心 と羽田空 港を結ぶ「羽 田空港ア クセス線構想(図表 56)」
を 掲げてい る 。同構 想は 、既存線 や休止中 の貨 物線など を活用し て3 ルートを整備
する とともに 、東京貨物タ ーミナル ~羽田空港間 に約 5.7 ㎞の トンネル を建設す る
計 画で、新 ルート開 業後 は羽田空 港 に直接 乗り 入れ る路 線が大幅 に増 加す る。主要
駅か らの所要 時間は 、新宿 から 約 23 分( 現行よ り短縮さ れる時間:18~23 分 )、東
京か ら約 18 分(同 10~ 15 分 )、新木場か ら約 20 分( 同 21 分 )とそれ ぞれ 大幅 に短
縮さ れる。JR東日 本は 、総事業 費を 約 3,200 億円 、工期 は 10 年程度 と 見込んで い
る が、新木 場ルート は 東 京オリ・ パラの 競 技会 場となる 臨海部を 通る ことから、五
輪前 の開業を 目指す として いる 。
こ のように 首都圏空 港を 取り巻く 公共交通 イン フラの整 備 プロジ ェク ト は、上記
の 構想に加 えて、羽 田・ 成田リニ ア新線構 想な ど複数の 構想が 浮 上し てお り、今後
は 東京オリ ・パラの 開催 予定を睨 みつつ、 重要 性・ 経済 性・工事 の容 易性などの観
点 から、優 先順位を つけ て整備を 進めてい くも のとみら れる 。成 田空 港の都心への
アク セス利便 性の向上に向 けて 、
「都 心直結線 」整備 の 有効性 は 高いだ けに 、千葉県
が 一丸とな って 同構 想の 実現に向 けた取り 組み を 推進し ていくこ とが 求められてい
る。
71
図 表 55 都 心 直 結 線 の整 備 の概 要
(出 所 )国 土 交 通 省 ホームページ
図 表 56 羽 田 空 港 アクセス線 構 想
(出 所 )日 本 経 済 新 聞 (2014 年 8 月 20 日 朝 刊 )
72
道路整備によるアクセス利便性の向上
a. 圏央道の早期開通
圏央 道は、東京 都心から半 径 40~60 ㎞ の位置に 計画され る延長約 300 ㎞の環 状の
自 動車専用 道路で、 千葉 県内の木 更津、茂 原、 東金、成 田 などの ほか 、つくばや川
越、八王子、厚 木、横浜な ど首都圏 の各都市を結 ぶ 予定と なっており、14 年8 月末
現在 、約 196 ㎞(全体の 65.3% )が開 通している 。
千葉 県におけ る 圏央道の整 備状況を みると、 13 年 4月 27 日に 木更津東 IC~東
金J CT間、 14 年 4月 12 日に稲敷 IC ~神崎 IC 間が 開通したほか 、14 年度中に
は 神崎~大 栄JCT 間 が 開通し、 常磐自動 車道 と東関東 自動車道 水戸 線がつながる
予 定となっ ている ( 図表 57)。一 方、大栄 JC T~松尾 横芝IC 間( 18.5km)の
進捗 状況をみ ると 、13 年度 に用地取 得に着手し、14 年度 には埋蔵 文化財 の調査を す
る予 定となっ ている 。その 後、15 年度 には工事を 開始し 、22 年度の 暫定 2車線に よ
る開 通を目指 している( 図 表 58)。
成 田空港~ 羽田空港 間に は、東関 道水戸線 及び 湾岸線ル ート や千 葉東 金道路・館
山 道・アク アライン を通 るルート があるが 、こ れらのル ートは慢 性的 に渋滞が発生
し ている箇 所もみら れる 。大栄J CT~松 尾横 芝 IC間 の開通に よる 両空港を結ぶ
新 たなルー ト の形成 は 、 東京オリ ・パラの 開催 を控え、 成田空港 と都 心を結ぶルー
ト の多様化 といった 面で 意義が大 きい。ま た、 圏央道は 、首都直 下型 地震 などの大
規 模災害時 に、アク アラ インとの 連携 で西 日本 と北日本 を結ぶ代 替ル ートとして機
能 すること も期待で き る 。さらに 、千葉県 が首 都圏の各 地域と環 状に つなが ること
で 、人・物 ・情報の 流れ がスムー ズにな り 、圏 央道周辺 地域への 新た な 企業・物流
の 立地など 、地域の ビジ ネスチャ ンスが拡 大す る可能性 が高い。 県内 区間の 圏央道
の 全線開通 が遅れれ ば遅 れるほど 、 圏央道 の整 備が進ん でいる 埼 玉県 や立地コスト
面 で優位性 がある 茨 城 県 などに企 業の投資 が 向 かい、千 葉県は企 業 立 地のチャンス
を逸 すること になる。
こ のように 大きな経 済効 果が期待 される大 栄 J CT~松 尾横芝 I C 間 の(早期)
開通 は、千葉 県にとって 喫 緊の課題 である。12 年 10 月 には、千葉 県と沿 線5市町 (成
田 市、山武 市、多古 町、 芝山町、 横芝光町 )が 「用地取 得促進プ ロジ ェクトチ ーム」
を 立ち上げ た が、圏 央道 の 早期供 用開始に 向け て、 関係 者が一丸 とな って国や地域
に 対して積 極的に働 きか けていく ことが 求 めら れている 。千葉県 の森 田知事は、首
都 圏中央連 絡自動車 道建 設促進県 民会議や 関東 地方知事 会議にお いて 、大栄JCT
~松 尾横芝I C間を東京オ リ・パラの 開催までに 完成させ たい意向を表 明してい る。
73
図 表 57 圏 央 道 の整 備 進 捗 状 況
(注)1.出所:千葉国道事務所「圏央道ちば館
2.開通目標は2014年7月時点。
図 表 58 圏 央 道 (大 栄 JCT~松 尾 横 芝 IC)の事 業 計 画 から完 成 までの工 程 表
都市計画
測量
(年度)
07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29
●
● ●
調査・設計・協議
● ● ● ●
設計・用地説明会
●
用地取得
埋蔵文化財調査
暫定2車線工事
● ● ● ● ● ● ●
● ● ● ● ● ● ●
● ● ● ● ● ● ● ●
完成4車線工事
● ● ● ● ● ● ●
(出所)国土交通省関東地方整備局事業評価監視委員会(2013年度第5回資料)
74
b. 北千葉道路の早期開通
国 道 464 号北千葉 道路 (以下「 北千葉道 路」とい う )は、市川 市 (外環道 )か ら千葉
ニュ ータウン を通り成田市 に至る延 長約 43 ㎞の 一般国道 であり、北総 鉄道沿い の鎌
ケ谷 市~印西 市間の約 20 ㎞ が開通 済 みである る(図表 59)。
未開 通区間の うち、印西市 (旧 印旛村 )若萩から成 田市大山 までの延長 約 13.5 ㎞は 、
国 土交通省 関東整備 局と 千葉県が 共同で事 業を 進めてい る。印西 市若 萩から成田市
松崎 まで の 8.4km に ついて は 16 年度の 供用開始 、全線開 通は 23 年度 前後を目 標と
し ている。 また、西 側の 未開通区 間である 市川 市 (外 環道 )~鎌ケ 谷市 の間は、事業
化さ れておら ず、開通目標 時期も定 められていな い。
北 千葉道路 は、県内 人口 の約4分 の1 が居 住し ている 東 葛飾地域 から 成田空港へ
の アクセス 利便性を 大幅 に 高める ことにな る。 また 、将 来的に 外 環道 へつながるこ
と で、東京 都心との 時間 距離も大 幅に短縮 され 、成田空 港利用者 の底 上げ効果 も期
待で きる。
北 千葉道路 は、成田 市 の 市街地の 渋滞緩和 効果 も期待さ れており 、な かでも慢性
的に 渋滞が発 生している国 道 408 号の土 屋交差点 周辺の渋 滞が緩和され れば、外 国
人 に人気の 高いイオ ンモ ール成田 や「千葉 県立 房総のむ ら」 (印旛郡 栄町 )等へも行
き やすくな り、地域 経済 への効果 も期待で きる 。加えて 、空港周 辺に は多くの保税
蔵 置場が集 積し国内 最大 級の物流 拠点とな って いるが、 渋滞緩和 は物 流業者の経営
効 率化にも 直結する 。こ のように 、北千葉 道路 は本県北 部地域の 活 性 化に不可欠な
道 路であり 、 まずは 、供 用開始目 標が定め られ ている東 側区間の 早期 整備が求めら
れる 。
本道 路の開通 により活性化 が期待で きる地域とし て 、つくば エクスプレ ス(TX)
周 辺地域が あげられ る。 柏の葉地 域 では、 地域 活性化総 合特別区 域 (総合特 区 )の認
定を 受けて 、
「公民 学連携 による自 律した都市経 営」をテ ーマに新たな まちづく りに
取 り組んで いる ほか 、 交 通アクセ スをみる と、 TXの開 通により 都心 へのアクセス
は大 幅に改善 された(柏の 葉キャン パス -秋葉原 間:約 30 分 、同 -東京 間:約 50 分 )。
一 方、成田 空港との アク セスには 課題 が残 って いる 。柏 の葉キャ ンパ ス駅から成田
空港 へは、電車の場 合、武蔵野線 、京成 成田スカ イアクセ スを経由し て 70 分程度か
かり 、自動車 では 100 分程 度か かる 。ちなみに、 先の 北千 葉道路 が開通 すれば、 所
要時 間は 70 分程 度と な り 30 分の時間 短縮が見 込まれる 。
75
図表 59 北千葉道路計画図
(出 所 )国 土 交 通 省 千 葉 国 道 事 務 所 ホ ー ム ペ ー ジ
c. 外環道の早期開通
東京 外かく観 光道路( 外環 道)は 、東京 都心から 半径 約 15 ㎞ のエリア を結ぶ 延 長
約 85 ㎞ の環状道 路で、千 葉県内の 市川、松戸の ほか、川 口、練馬、世 田谷など 都心
近郊 の各都市 を 通るルート となって いる( 図表 60、14 年8 月末現在 、約 34 ㎞ [全体
の4 割]が開通 )。
千葉 県区間は 、市川市高谷 から松戸 市小山に至る 12.1 ㎞で、 17 年度の 開通を目
ざ して整備 が進めら れて おり、同 区間 が開 通す れば、東 関道 から 都心 を経由せずに
常磐 道や東北 道、関越道等 に通じる こととなる。
国 土 交 通 省 の 調 査 に よ る と 、 千 葉 県 は 渋 滞 損 失 時 間 ( 道 路 1 ㎞ 当 た り ) が 40.5
千 人時間/ ㎞年と全 国ワ ースト 7 位である が、 なかでも 市川市及 び松 戸市 の渋滞損
失時 間(同 )は 107~122 千人時 間/ ㎞年 と県平 均の約 3 倍となって お り、市 川松戸
線や 松戸原木 線、市川柏線 などで著 しい交通渋滞 が発生し ている 。
ま た、市川 市や松戸 市で は、 通行 車両が 混 雑す る幹線道 路を避け て生 活道路に入
り込 むケース が多く、市道 における 死傷事故件数(道路1 ㎞当たり)は、市川市(市
川松 戸線に並 行する市道 )が 8.8 件と県 平均の 17.6 倍、松戸市(同 )が 4.4 件と同
じ く 8.8 倍に も及ぶ。
外 環道の千 葉県区間 が開 通すれば 、市川松 戸線 は渋滞損 失時間が 約 8 割削減され
るほ か、その 他の路線でも 2~5割 が 減少すると 予想 され ている(図 表 61)。また、
生活 道路の交 通量が減少 す ることで 、交通事故の 減少も期 待できる。
76
図表 60 外環道計画図
(出 所 )国 土 交 通 省 関 東 地 方 整 備 局 ホ ー ム ペ ー ジ
図表 61 外環道周辺道路の渋滞損失時間
(出所)国土交通省関東地方整備局ホームページ
77
d. 東 京 湾アクアラインの 800 円の恒久化
国 土交通省 は、 2014 年 2月に「 新たな高 速道 路料金( 案)」 を公表 し、東京 湾ア
クア ラインの 通行料金を当 面 10 年間 は 800 円の まま継続 することとし た(同時に 千
葉県 の負担金 は 2013 年度 まで の 15 億円/年か ら5億円 /年 に引き下 げられた )。 千
葉 県の半島 性という 産業 立地及び 観光振興 面 の デメリッ トは、東 京湾 アクアライン
を活 用するこ とで払拭可能 なだけに 、通行料金 800 円 の恒久化 は千葉県 の経済発 展
にと って欠か せない 条件 と いえる。
「 東京湾ア クアライ ン料 金引き下 げ社会実 験協 議会」で は、 東京 湾ア クアライン
の 通行料金 引き下げ によ る首都圏 ( 千葉県 、東 京都、神 奈川県、 埼玉 県 )全体の経
済波 及効果を 約 358 億円 と試算し ている (図表 62)。 料金引き 下げを きっかけ とし
て、 観光客の 宿泊や土産物 購入など の消費(約 148 億 円)が生 まれたほ か、企業 に
よる 設備投資 (約 44 億円 )も実施 された 。この 直接効果約 192 億円の 87%( 167
億 円)が千 葉県で発 生し 、 間接効 果を含め た 経 済波及効 果全体 で も千 葉県は約 249
億円 (全 体の 70%)と首都 圏 で最大 とな っている 。
料 金引き下 げ効果は 、成 田空港と 羽田空港 との アクセス 向上のほ か、 南房総地域
へ の交流人 口の流入 促進 など 県内 に広く及 ぶが 、 とりわ け 恩恵が 大き いのは接岸地
の 君津地域 4市(袖ケ浦 市、木更 津市、君 津市 、富津市 )と考 えられ る 。東京 湾アク
アラ インの千 葉県側の接岸 地である 木更津市金田 地区には 、
「 龍 宮城スパ /ホテル 三
日 月」など の温泉宿 泊施 設 に加え 、12 年4月 に「三井 アウトレ ット パーク木 更津」
が新 たにオー プンし 、その 後、
「ベ イシアスーパ ーセンタ ー木更津金田 店」や「 カイ
ン ズモール 木更津 金田 」 などが オープン する など 、一 大商業・ アミ ューズメント
エ リアに発 展してい る 。 また、J R内房線 袖ケ 浦駅海側 地域では 特定 土地区画整理
事 業が動き 出し、駅 前の 商業開発 とともに 、新 たな居住 エリア の 出現 が見込まれて
おり 、同地域 は 内房地域の 一大交流 ・定住拠点に 発展する 可能性がある 。
ま た、かず さアカデ ミア パークや 県が整備 を推 進してい る新 しい 工業 団地(袖ケ
浦 椎の森、 茂原にい はる ) のほか 、 首都圏 では 相対的に 地価の安 い圏 央道沿線地域
への 企業誘致 を進めるため にも 、ア クアライン通 行料 の 800 円 の恒久化 は必要不 可
欠で ある。例え ば、東京都 や神奈川 県、埼玉県か ら君津地 域へ移転して きた企 業 10
社 の旧工場 所在地を みる と、いず れもアク アラ イン対岸 の神奈川 県 ま たは東京都大
田区 となって いる。これら の 企業の なかには、移転 後も対岸 に住む従業 員のため に、
ア クアライ ン経由 の 通勤 バスを運 行してい る と ころもあ り、 料金 引き 下げ の継続が
経営 上の重要 な 条件となっ ている。
78
図表 62 料金引き下げによる経済波及効果
(出所) 東京湾アクアライン料金引き下げ社会実験協議会「東京湾アクアライン料金引下げ社会実験
(09 年 8 月~11 年 3 月)報告書」(ちばぎん総合研究所調査)
e. 館山道の4車線化
館 山自動車 道 (以 下「館 山道」と いう )は、北 側は京葉 道路、南 側は 富津館山 道路
と接 続する延 長 55.7 ㎞の 高速自動 車国道で 、木更 津JCT の 西側は東 京湾アク アラ
イ ン連絡道 、東側は 圏央 道と接続 している 。国 土開発幹 線自動車 道建 設法上の路線
名 は「東関 東自動車 道館 山線 」と され、高 速自 動車国道 の路線を 指定 する政令では
「東 関東自動 道千葉富津線 」とされ ている。
95 年4月 に京葉道 路から 姉崎袖ケ 浦 IC間、同年 7月 に姉崎袖 ケ浦 I C~木更 津
南I C間が開 通し 、その後 、03 年に木 更津南 JC T~君津 IC間 、05 年に富 津中央
IC ~富津竹 岡 IC間が開 通 した 。07 年 には最後 の未開通 区間であった 君津 IC ~
富 津中央I C間の開 通 に より全線 開通とな り、 同時に木 更津南 J CT ~ 君津ICが
4車 線化とな った 。09 年に は、君津PA にて千 葉県では 初のスマート インター チェ
ンジ の運用が 開始され、周 辺地域の アクセス利便 性は更に 高まっ た 。
12 年 12 月に開 催された 平 成 24 年度東 日本高速 道路株式 会社事業評価 監視委員 会
によ ると、木 更津南 JCT ~富津竹 岡 IC間 20.7km のうち、既に追 越車線を 設置済
み の 6.0 ㎞(木更 津南JC T~君津 IC )を除 く 14.7 ㎞(君津I C~富 津竹岡I C)
の4 車線化工 事について、18 年度の 完成を目途 に進めて いくこと が発 表された( 図
表 63、 64)。
4車 線化工事 対象区間 にお ける 8月 中の休日( 日)平均 の 交通量(10 年 )は 49,100
台と 、平日平均( 20,800 台)の 2.4 倍となって おり、4 車 線化工事 で 追越車線 が 新
た に整備さ れること によ り、南房 総地域へ の夏 季の観光 需要増加 に伴 う渋滞緩和 及
び 事故や工 事等によ る通 行止め リ スクの減 少、 あるいは 津波災害 時に おける緊急輸
送機 能の強化 ( 注 9) や高速バ スの運行 による利便性 向上など の効果が 期待 できる 。
(注9)館山道に並行するJR内房線及び国道 127 号は、地震による津波で浸水することが予測さ
れているが、館山道は海から離れており標高も高いため浸水の心配はない。
79
図 表 63 館 山 道 4車 線 化 工 事 位 置 図
図 表 64 館 山 道 4車 線 化 工 事 の工 程 表
2012
事業化・有料事業許可
測量・調査・設計
土木工事
2013
2014
2015
2016
2017
(年度)
2018
●
●●●●●●
●●●●
●●●●●●●●●●●●●
舗装工事
●●●●●●
施設工事
●●●●●●
供用開始
(出所)平成24年度東日本高速道路株式会社事業評価監視委員会
80
●
地域の2次交通の充実
a. 公共交通の最適化の実現
県内 の路線バ ス の年間輸送 人員 は、1990 年代以 降、モータリ ゼーショ ンの 急速 な
進展 や生産年 齢人口の 減少 などから 大きく減少し た ( 90 年度 335 百万 人→ 11 年度
196 百 万人、図 表 65)。
02 年には 道路運送 法が改 正され 、バス事 業者の 路線撤退 が許可制から 届出制と な
っ たことも あって 、 交通 需要の少 ない地域 にお いて不採 算路線か らの 撤退が 加速し
た 。このよ うに 、路 線バ スが廃止 された地 域 で は、市町 村 など公 的フ ァクター がコ
ミュ ニティバ スの運行を 相 次いで 開 始した。コミ ュニティ バス は 01 年 から 10 年に
かけ て毎 年 10 系 統以上が 新たに導 入され 、11 年現在 では県 内 225 系統 に のぼり(図
表 66)、年 間利用者 数は 637 万人 となっている 。 一方、 コミュニティ バスの収 支を
み ると、収 入が支出 の 3 割ほどに 過ぎず 、 不足 する経費 は 各自治 体の 負担となって
いる 。09 年度に国 土交通省 が全国 1,798 市区町村 に行った アンケート調 査による と、
1 市 区町村あ たりの地域公 共交通予 算額は平均 248 百万 円に上り 、 07 年度調 査時点
より 、わずか 2年間で 34 百 万円(16% )も増加 している 。
今 後、高齢 化が進み 、 病 院への通 院ニーズ が高 まる なか で、車を 運転 できない人
が 増加する と、路線 バス の廃止は 困難に な る。 このよう な交通弱 者に 必要な インフ
ラ である路 線バスを 将来 にわたっ て維持し てい くために は、自治 体や 地域住民がバ
ス 事業者と 連携して 路線 維持に努 める必要 があ る。 とり わけ 、地 域に とって必要な
路線 でありな がら不採算と なってい る路線 につい て は、当該 路線の利用 者 確保策 に、
バ ス事業者 と自治体 、住 民が連携 して 取り 組ん で いくこ とが求め られ る。例えば 、
運 行ルート や時間帯 ごと の便数 、 バスの定 員数 を住民ニ ーズに対 応 さ せるなど、 公
共交 通の地域 の実状に応じ た最適化 を図ること が 考えられ る。
図 表 65 千 葉 県 内 の路 線 バスの年 間 輸 送 人 員 及 び
乗 用 自 動 車 保 有 台 数 、生 産 年 齢 人 口 の推 移
450
401
400
350
355
299
300
250
319
424
407
404
254
263
264
200
206
196
289
318
232
279
198
211
146
150
417
335
303
200
100
423
107
80
路線バス年間輸送人員(百万人)
乗用自動車保有台数(万台)
生産年齢人口(万人)
50
50
0
1975
(年度)
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
2011
(出所)路線バス年間輸送人員:関東運輸局
乗用自動車保有台数:一般社団法人自動車検査登録情報協会
生産年齢人口:1975年~2010年=国勢調査(総務省)、2011年=人口推計(総務省) 81
図 表 66 千 葉 県 内 のコミュニティバスの系 統 数 の推 移
300
(系統)
250
30
増加数(右軸)
累計(左軸)
(系統)
225 25
200
20
150
15
100
10
50
5
0
0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11
以前
(年)
(出所)千葉県「県内におけるコミュニティバスの現況について」
82
b. バスターミナルの戦略的活用
成 田空港国 内線の利 便性 の高まり や アジア の 人 口増加に 伴うイン バウ ンドの拡大
な どを踏ま え ると、 千葉 県にとっ て首都圏 空港 (成田空 港・羽田 空港 )の航空旅客
をい かに取り 込んでいくか が今後の 観光面の大き な課題に なる。
例 えば、首 都圏空港 を利 用する観 光客 を南 房総 地域 等に 呼び込む 際に は、 成田空
港 から南房 総地域へ の直 行便はな いため、 県内 のバスタ ーミナル (木 更津金田・袖
ケ浦・市原鶴 舞など)をハ ブとした 高速バス の活 用が有効 と 考えられ る(図表 67)。
すな わち 、首都圏 空港 -バスタ ーミナル 間は、圏央道 や東関道・館山道・東 京湾アク
ア ラインを 経由する 高速 バスを利 用し、バ スタ ーミナル で南房総 地域 方面への高速
バ スに乗り 継ぐルー トで ある。 な お、こう した 乗り継ぎ ルートは 、現 在も運行され
て いるが、 知名度の 低さ がネック となって 、 残 念ながら 活発に利 用さ れているとは
言 い難い状 況となっ てい る。今後 は、 官民 一体 となった 積極的な 広報 活動を通じた
利 用促進や アクセス 利便 性の向上 を さらに 高め るととも に、 観光 地の 魅力を一層高
め て国内外 にPRす る必 要がある 。 例えば 、京 浜急行電 鉄 (株 )で は、 電車や 三浦半
島 内の路線 バス、マ グロ 料理の食 事券、温 浴施 設の利用 券などが セッ トになった企
画 乗車券「 みさきま ぐろ 切符」を 発売し、 年間 4万人を 超える利 用者 がいる人気ぶ
り となって いる。千 葉県 でも、成 田空港と バス 会社、関 連 観光事 業者 が 協力して両
港 関連商品 をパッケ ージ 化するこ と ができ れば 、観光客 にとって お得 感が増し、利
用増 加につな がる可能性が ある。
南 房総地域 へのイン バウ ンドの来 訪が増え 、そ の魅力が 海外メデ ィア などに伝わ
れ ば、東京 オリ・パ ラの 開催とも 相 まって 、 南 房総地域 の訪問ニ ーズ が高ま り、将
来 的には首 都圏空港 と南 房総地域 を結ぶ 定 期便 の導入な どにつな がる可能性もある。
交通 事業者と 観光事業者の 連携(例 )
みさ きまぐろ きっぷ
京浜 急行電鉄 (株 )では、観光客に お得かつ お 手軽 に「三 崎のまぐ ろ 」を楽しん
でも らうとと もに 三浦三崎 地区への 旅客誘致を図 るため、①京急線三崎 口駅まで
の往 復割引乗 車券 、②三崎 エリアの バスフリー乗 車券 、③厳選 メニュー のまぐろ
食事 券、④温 浴施設等の施 設利用券 がセットとな った企画 乗車券を 2009 年か ら
販売 している。取り扱い食 事店舗・利 用施設数は、食事店舗 が 09 年 の 12 店舗か
ら 12 年 には 20 店舗 、利用 施設は 同 3施設から5 施設に増 加 している 。みさ きま
ぐろ きっぷ の 発券枚数 は 、販売開 始 時から 約4倍 に増加し 、12 年に は 40,000 人
を超 える利用 がみられた 。この 取り組み は、第4 回かなが わ観光大賞の 審査委員
特別 賞に輝い た。
83
図 表 67 バスターミナルを活 用 したインバウンド等 の取 り組 み(例 )
成田空港
第一ターミナル(バス乗り場)
第二ターミナル(
〃
)
袖ケ浦バスターミナル
市原鶴舞バスターミナル
木更津金田
バスターミナル
高速バス
路線バス
周遊
(出所)ちばぎん総合研究所が作成。
84
産業のイノベーション
概要
≪製 造業のイ ノベーション ≫
日 本の製造 業 を取り 巻く 経営環境 は厳し さ を増 している 。すなわ ち 、 内需型産業
が 人口減少 による市 場規 模縮小の 影響を受 ける なか、外 需型産業 も親 会社や関連業
界 のグロー バル・サ プラ イチェー ン化など 流れ のなかで 、円高時 代に 海外シフトし
た生 産拠点を 、過度の円高 修正後も 呼び戻すには 至ってい ない。
千 葉県の京 葉臨海工 業地 帯には、 鉄鋼業や 石油 化学、食 料品、火 力発 電所など 、
わ が国を代 表する企 業が 集積して いる。今 後 は 、京葉臨 海工業地 帯が 、国内向けの
エ ネルギー ・素材・ 食料 品の供給 基地とし て一 定の地歩 を保ちつ つ、 地の利 や東京
オ リ・パラ のレガシ ー を 活かして 新たな産 業を 構築する 必要があ る。 例えば、マザ
ー 工場化や 研究施設 の誘 致を促進 し、付加 価値 の高い分 野におけ る高 度な集積を目
指 していく ことや、 東日 本大震災 の発生に 伴う 安定的な エネルギ ー供 給に対する不
安 感の増大 などを背 景に 、 同コン ビナート にお ける圧倒 的なエネ ルギ ーや県内の水
溶 性天然ガ スの活用 など も視野に 入れ た環 境・ 新エネル ギー産業 拠点 の形成も有望
であ る。
千 葉県のも のづくり 産業 を支える 中小製造 業者 のなかに は、高い 技術 力や製品開
発 力に磨き をかけ、 積極 的に国内 外への販 路開 拓を図る 企業や新 たな 顧客の価値を
創造 するなど 、力強く活躍 している 企業が多い。 政府・自 民党は、 13 年 12 月に公
表 した「好 循環実現 のた めの経済 対策」の なか で、競争 力強化に 資す る設備投資や
科 学技術イ ノベーシ ョン ・技術開 発の推進 など に取り組 むとして おり (図表 68)、
これ らの分野 への取り組み は国の後 押しも期待で きる。
千葉 県におけ る 企業誘致に ついて は、短 期的には、2017 年 度に分譲開 始 予定の 2
つ の工業団 地(袖ケ 浦椎 の森、茂 原にいは る) の整備と 、 かずさ アカ デミアパーク
の 早期完売 を目指 し 、中 長期的に は、新た な工 業団地の 整備も視 野に 入れつつ、県
内立 地企業の 育成・支援に 取 り組む ことが求めら れる。
≪非 製造業の イノベーショ ン ≫
政府 が掲げる「日本再興戦 略( 2014 年6 月)」で は、
「健康寿 命」関連 産業やエ ネ
ル ギー産業 、次世代 イン フラ関連 及び地域 資源 の活用を 戦略市場 と位 置付け、今後
の 成長を後 押し する とし ており( 図表 69)、千 葉県 とし ては、 こ うし た流れ を逃す
こ となく確 実に捉え る必 要がある 。 現状、 成田 市が 推進 している 「国 際医療学園都
市構 想」と「 エアポート都 市構想 」
(国家戦略特 区対象区 域に指定 )の進展 及び東京
オ リ・パラ 開催に伴 う観 光分野の フィール ド拡 大などが 期待でき る。 また 、首都圏
の 旺盛な物 流ニーズ を背 景とし て 、物流・ 流通 産業な ど が圏央道 や北 千葉道路の周
辺地 域に新た に立地する可 能性も高 い。
≪農 林水産業 のイノベーシ ョン ≫
農林 水産業を 取り巻く環境 は、就業者 の高齢化や 後継者難 に伴う就業者 数の減少 、
あ るいは農 地面積の 縮小 や耕作放 棄地の増 加 と いった 従 来型の 問 題 に 加え、TPP
交 渉の行方 次第では 、国 内 の農産 物・水産 品 の 価格優位 性が低下 する リスクも 抱え
て いる。こ のような 状況 下、国内 農林水産 業は 、6次産 業化や海 外へ の販路拡大、
植物 工場など の新たな 事業 を複合的 に 展開してい くことが 求められ てい る。
85
図 表 68 好 循 環 実 現 のための経 済 政 策 「競 争 力 強 化 のための投 資 促 進 、イノベーション創 出 等 」
競争力強化に資する設備投資等の促進
・中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業(経済産業省)
・地域オープンイノベーション促進事業(経済産業省)
・研究開発成果実用化支援事業(経済産業省)
・リースによる先端設備投資支援(経済産業省)
・ヘルスケアリートの上場推進等を通じたヘルスケア施設向けの資金供給の促進
〈予算措置以外〉(金融庁、国土交通省、厚生労働省)
科学技術イノベーション、技術開発の推進
・革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)(内閣府)
・イノベーション創出に向けた科学技術研究開発の加速、国立大学等における最先端研究
基盤の整備(文部科学省)
・研究開発成果実用化支援事業(再掲)(経済産業省)
・産業技術開発加速化事業(経済産業省)
・革新的な医薬品等の研究開発等の推進(厚生労働省)
・ロボット介護機器導入実証事業(経済産業省)
・健康・医療産業国際展開等推進事業(健康・医療分野への資金供給の強化)(経済産業省)
・実用準天頂衛星の打上げ推進(内閣府)
・海洋の開発・利用・保全の戦略的推進(国土交通省)
・グローバル認証基盤等整備事業(経済産業省)
・ICTによる経済成長・社会的課題解決の推進(総務省)
・廃炉・汚染水対策事業(経済産業省)
・世界最速かつ最高品質の知財システムの実現<予算措置以外>(経済産業省)
(出所)内閣府「好循環のための経済政策(2013年12月5日)。
図 表 69 日 本 再 興 戦 略 における戦 略 市 場
目指す社会像
(戦略分野)
予防から治療、早期在宅復帰に至る適正なケアサ
イクルの確立
国民の「健康寿命」の延伸
健康増進・予防サービス、生活支援サービ
ス、医薬品・医療機器、高齢者向け住宅等
多様・双方向・ネットワーク化によるクリーン・低廉
クリーンかつ経済的な
なエネルギー社会を構築
エネルギー需給の実現
再生エネルギー、高効率火力発電、蓄電池、
省エネ建築物等の省エネ技術関連製品など
最先端の技術を活かして、インテリジェント・インフラ
安全・便利で経済的な
を実現
次世代インフラの実現
インフラマネジメント、車両安全運転支援シス
テム、宇宙インフラ整備
世界を惹きつける地域資源ブランドを成長の糧とす
世界を惹きつける地域資源 る誇り高い地域社会
で稼ぐ地域社会の実現
農林水産物・食品、6次産業、コンテンツ・文
化等の日本ブランド
テーマ
1
2
3
4
(出所)首相官邸「日本再興戦略(2014年6月24日)」
86
市場規模(兆円)
現在
→ 2020年
(国内)16
→
26
(海外)163 →
311
(国内)4
→
10
(海外)40
→
108
(国内)2
→
16
(海外)56
→
167
(国内)100 →
120
(海外)340 →
680
ア ク ションプラン
「 産業のイ ノベーシ ョン 」 のアク ションプ ラン として、 ①成長産 業の 振興、②工
業振 興、③商 業振興、④農 林水産業 振興、という 4つの 方 策が考えられ る。
各プ ランの具 体的な取り組 み及びロ ードマップ( 行程表) は 図 表 70 の通 り。
図 表 70 「産 業 のイノベーション」のアクションプランの体 系 図 及 びロードマップ
短期
(年度)
中期
2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
①製造業のイノベーション
a.京葉臨海コンビナートの競争力
向上
b.産官学連携及びベンチャー企業の育
成・強化(中小企業の技術革新)
c.企業誘致の促進
②非製造業のイノベーション
a.医療・福祉・健康産業の集積促
進
観光分野のフィールド拡大
b.
(次章で詳述)
④農林水産業のイノベーション
a.農林水産業の6次産業化
b.海外への販路拡大
c.植物工場のノウハウ・プラントの
輸出
87
長期
2021
以降
【参考】
「(2)産業のイノベーション」関連の千葉県の主な事業(平成26年度当初予算)
事業名
新規
①製造業のイノベーション
工業団地整備事業
立地企業補助金
戦略的企業誘致の推進
千葉県中小企業連携強化推進事業
東京湾アクアライン・圏央道を活かした地域産業活性化事業
②非製造業のイノベーション
千葉の未来を支える成長産業育成事業(医工連携)
中小企業振興資金
小規模事業経営支援事業費等補助金
ちばアクアラインマラソン開催事業
おいでよ千葉 マラソンランナー優待キャンペーン
ちばアクアラインマラソン開催に伴うPR事業
国際千葉駅伝開催事業
○
○
平成26年度全国高等学校総合体育大会(高校総体)開催事業
観光ウェブサイトのリニューアル事業
千葉の魅力発信推進事業
観光地魅力アップ事業(観光トイレ等の整備)
「がんばろう千葉」有料道路利用観光振興事業
大規模イベント支援事業
観光プロモーション事業
宿泊・滞在型観光推進事業
IR導入検討基礎調査事業
国際会議開催補助金
東京オリ・パラに向けた受入体制の整備事業
世界に向けた千葉の魅力発信事業
外客誘致関係事業
訪日教育旅行誘致事業
○
観光客誘致のための公衆無線LAN環境整備モデル事業
○
○
○
海外の大学生を対象にしたモニターツアー事業
訪日観光客の食文化等に関する調査・推進事業
③農林水産業のイノベーション
農地中間管理事業等推進基金事業
中山間地域等直接支払交付金事業
6次産業化推進事業
農林水産物魅力発信事業
海外における知事トップセールス
「世界に飛び出せ千葉の農林水産物」輸出促進事業
○
○
東京湾アクアライン・圏央道を活かした農林水産物直売所支援事業
ちばの園芸産地活性化支援事業
新「輝け!ちばの園芸」産地整備支援事業
園芸施設省エネルギー化推進事業
園芸産地競争力強化総合対策事業
東京湾漁業総合対策事業
水産物販売促進対策事業
○
(合 計)
(注)1.出所:千葉県ホームページ
2.主な事業を掲載
88
予算(百万円)
1,292
726
500
16
20
30
193,537
14
190,000
2,210
120
20
35
22
336
25
180
200
36
30
127
40
5
24
5
24
21
17
20
23
3
2,233
1,020
101
92
31
20
16
10
22
300
30
380
204
7
197,063
構成比(%)
一般会計=
100%
0.080
0.045
0.031
0.001
0.001
0.002
11.989
0.001
11.770
0.137
0.007
0.001
0.002
0.001
0.021
0.002
0.011
0.012
0.002
0.002
0.008
0.002
0.000
0.002
0.000
0.001
0.001
0.001
0.001
0.001
0.000
0.138
0.063
0.006
0.006
0.002
0.001
0.001
0.001
0.001
0.019
0.002
0.024
0.013
0.000
12.207
製 造業のイノベーション
a. 京葉臨海コンビナートの競争力向上
日 本の製造 業 を取り 巻く 経営環境 をみると 、少 子高齢化 や人口減 少の 動きを映じ
た 国内需要 の 伸び悩 み に 加え、製 造業にお ける 海外生産 の拡大や 中東 ・アジア等で
の 最新鋭大 型施設の 稼働 開始など 、グロー バル 競争が激 化してい る。 県内製造業で
は 、こう した経営 環境の変 化に対応 するために 、①三 井化学で は 14 年度 末までに「京
葉エ チレン 」
(丸 善石油化 学、住 友化学、三井化 学が共同 運営)からの 出資引き 揚げ、
②住 友化学で は千葉工場で のエチレ ン生産を 15 年 9月まで に停止、③ 新日鐵住 金で
は同 君津製鉄 所の第3高炉 を 15 年度末 までに休 止するな ど、素材型産 業を中心 に 老
朽 化した設 備の更新 見送 りと海外 生産比率 の引 き上げ の 発表が相 次い でいる。 ちば
ぎ ん総合研 究所が実 施し たアンケ ート調査 によ ると、 既 に県内製 造業 の約3割が海
外展 開してい る(図表 71)ことに 加え、京葉臨 海南部に 立地している 大企業の 約7
割が 今後海外 市場への対応 を「強化・拡大してい く」とし ている(図 表 72)ことか
らみ て、今後 も生産の海外 シフトの 動きは 容易に 止まらな い 可能性が高 い。
京 葉臨海工 業地帯に は、 4つの石 油化学コ ンビ ナート( 出光興産 ・住 友化学・丸
善 石油化学 ・三井化 学) や2つの 製鉄所( 新日 鐵住金君 津製鐵所 ・J FEスチール
東 日本製鉄 所千葉地 区)、 京葉 食品コン ビナー ト(船橋 市)、 5つの 火力発電 所(千
葉 ・五井・ 姉崎・袖 ケ浦 ・富津) など 、製 造業 の 拠点と なってい る。 京葉臨海工業
地 帯は、県 内製造業 にお ける従業 者数、出 荷額 、付加価 値額、投 資額 において大き
な割 合を占め ている(図 表 73)だけ に、千葉県に とって同 地域 に立地し ている企 業
の競 争力の維 持・向上は極 めて重要 な課題といえ る。
京 葉臨海部 に立地す る製 造業は、 今後も国 内向 けのエネ ルギー・ 素材 ・食料品の
供 給基地と して一定 の地 歩を保ち つつ、空 港( 成田空港 ・羽田空 港) や港湾(千葉
港 や東京港 等)など の物 流 、本社 ・取引先 など と至近で あること や雇 用確保 の情報
キ ャッチな どの優位 性を 活かして 事業所の あり 方の見直 しや立地 を活 かした産業構
造 の変革を 目指すこ とが 求められ ている 。 例え ば、 マザ ー工場化 や生 産設備の さら
な る合理化 、設備の 共同 運営 に加 え、①効 率的 な設備の スクラッ プ・ アンド・ビル
ド を目指し た企業間 連携 の強化、 ②設備合 理化 で生じる 遊休 スペ ース の利活用(高
付加 価値化に 向けた研究開 発投資の 促進 や物流機 能 への転 用など )、③地 域一体と な
っ た災害対 策 への協 力も 重要であ るが 、新 産業 への取り 組みの例 とし て、 京葉臨海
コ ンビナー トの既存 イン フラ に最 先端技術 を活 用して、 大幅な需 要増 加への期待が
高 まってい る燃料電 池向 け「産業 用水素」 の国 内供給基 地となる 方向 性も考えられ
る。
89
図 表 71 海 外 に進 出 している千 葉 県 の企 業 割 合 の推 移
海外進出企業計
製造業
大企業
第1回
(95年7月)
第2回
(97年7月)
第3回
(99年10月)
第4回
02年6月)
第5回
(07年5月)
第6回
(11年7月)
前回比
(単位:%)
非製造業
中小企業
大企業
中小企業
大企業
中小企業
11.3
17.6
7.2
19.9
37.9
12.5
5.6
9.2
2.3
12.2
18.4
7.2
22.8
35.9
13.8
2.4
4.8
0.0
13.1
23.4
9.2
21.2
37.1
14.0
5.3
6.1
5.0
28.2
45.7
23.9
34.4
53.7
28.3
20.5
29.6
19.0
24.6
41.1
20.9
31.7
45.9
28.0
14.7
31.6
11.8
29.6
50.0
25.5
33.8
51.4
28.2
22.7
40.0
22.0
(5.0)
(8.9)
(4.6)
(2.1)
(5.5)
(0.2)
(8.0)
(8.4)
(10.2)
(出所)ちばぎん総合研究所「海外取引等についてのアンケート調査(第6回は新興国進出動向に関する実態調査)」
図 表 72 京 葉 臨 海 南 部 地 域 の製 造 業 の中 長 期 的 な事 業 展 開 の方 向 性 (国 内 ・海 外 )
(国
0%
20%
全体
40%
28.6
中小企業
60%
42.9
大企業 10.0
(海
内)
80%
23.8
60.0
4.8
27.3
強化・拡大していく
縮小する
20%
全体
40%
中小企業
27.3
60%
62.5
大企業
20.0 10.0
45.5
0%
100%
外)
80%
25.0
77.8
42.9
100%
6.3 6.3
11.1 11.1
42.9
14.3
現状程度を維持
検討中
(注)1.出所:ちばぎん総合研究所「京葉臨海部立地企業動向調査(13年4月)」
2.京葉臨海南部地域(千葉市生浜地区以南)の製造業92社を対象に実施。有効回答数22社(有効回答率23.9%)。
図 表 73 京 葉 臨 海 地 域 (コンビナート)の製 品 出 荷 額 のシェアの推 移
100
(%)
80
60
34
34
31
26
19
18
16
17
その他地域
17
16
20
19
内陸工業団地
40
20
49
46
50
57
65
65
京葉臨海地域
0
1990年 1995年 2000年 2005年 2010年 2012年
(注)1.出所:千葉県「工業統計調査確報」
2.京葉臨海地域:浦安市、市川市、船橋市、習志野市、千葉市、市原市、袖ヶ浦市、
木更津市、君津市、富津市の臨海埋立地
90
b. 産官学連携及びベンチャー企業の育成・強化 (中小企業の技術革新)
県 内製造業 のなかに は、「もの づくり日 本大賞 」(文 部科学省 、厚生 労働省、 経済
産 業省およ び国土交 通省 が主催) の内閣総 理大 臣賞を受 賞した㈱ 河野 製作所( 2009
年 )や特別 賞を受賞 した (株 )アビ ー(同) など 、革新的 な技術を 有し 、世界からも
高 い評価を 得ている もの づくり企 業が 存在 する 。また、 千葉県が 毎年 認定している
「も のづくり 認定製品」に選ばれ た 企業(図表 74、75)やベン チャー 企業など 、高
度 な技術力 や開発力 を持 ち、業界 トップシ ェア を誇る製 品を開発 ・製 造 する中小製
造 業者も多 数存在し てい る。 こう した先進 的な 企業をい かに多く 輩出 できる かが、
京 葉臨海コ ンビナー トの 維持・発 展と とも に、 本県製造 業の持続 的な 発展の鍵を握
っ ており、 来る東京 オリ ・パラは 、こうし た 県 内の先進 的な中小 企業 を世界に羽ば
たか せるチャ ンスでもある 。
その ためには 、地 域の経済 活動の主 体である「 産 」
(企 業)と地域の知 の柱であ る
「学 」
(大学等 )とが積極 的に連携 し、新 たな産 業創出 を 志向していく ことが求 めら
れる 。近年、民 間企業と大 学等の共 同研究件数及 び 研究費 は増加傾向 と なってお り 、
「産 学連携」ニーズ は 高ま っている(図 表 76)が、産学 連携 による新 技術・新産業
の創 出を促進 するためには 、
「 官(公 )」
( 行政)が中立的 な立場で音頭 を取 り、両者
を 結び付け る地域内 ネッ トワーク づくり や ファ イナンス 及びビジ ネス マッチングな
ど の面にお ける地域 の金 融機関の サポート も 重 要になる 。 とりわ け、 ベンチャー企
業 の創業期 は、企業 の信 用力が乏 しいこと から 、資金調 達や販路 開拓 、技術・商品
開発 など、経 営全般のサポ ートが必 要である(図 表 77)。
千 葉県内の 産学官連 携の 動きとし ては、 柏 市が 地域活性 化総合特 別区 域 と環境未
来都 市の認定 を受け 、
「 公民学 」の連携 による自 律した都 市経営を目指 すなかで 、ス
マ ートシテ ィや健康 長寿 都市とと もに新産 業創 造都市づ くりに取 り組 んでいる。 ま
た、つくば市 では 、
「ライ フ・イノ ベーション、グリーン イノベーショ ンの推進 」の
中 で「新し い産学官 連携 の仕組み づくり」 を目 標に掲げ ており、 柏市 の目指す「公
民 学連携に よる自律 した 都市計画 」との関 連性 は強い。 柏市とつ くば 市は、つくば
エ クスプレ スで結ば れて いること もあって 、今 後お互い に交流・ 連携 するメリット
は大 きい。連携 手段として は、11 年 に組織され た「一般社 団法人TX アントレ プレ
ナパ ートナー ズ(T EP )」などの外 部組織を活 用 するこ とが有効であ る。こ のよう
な連 携を成功 させるには、 県や国の 後押しも必要 である。
91
図 表 74 千 葉 ものづくり認 定 製 品 の認 定 企 業 (過 去 5回 )
製品名
フライス用簡易傾斜台
観覧車式自動フライヤー
12回
高精度高温多軸成型機
(12年2月)
マイクロバブルセーバー
ライティング&ブルートゥース・スピーカーシステム
In Vitro & In Vivo 遺伝子導入装置「NEPA21」
レーザ溶接のインラインモニタリング装置「AGLAIA-L」
高速応答光増幅器
CNC30型左右曲げベンダー
13回
セラミック溶射精密定盤
(12年9月) 悪路走行性を高めるリフトアップスプリング
鉛コリメータ
再生ポリエチレン製敷板「スーパージュライト」
人に優しい内視鏡用クリップ鉗子システム
ノイズに強いウェアラブル生体センサー用電極パッド
手間をかけず野菜が作れるインテリア照明
高天井用代替えLEDランプ
14回
強アルカリイオン水生成装置
(13年1月)
すべり止め舗装用エポキシ樹脂接着剤
防汚型 車線分離標
エンジン用排気ガス小型温度指示計
ナノパウダーメタル製理美容ハサミ
15回
高分子分析解析ツール Discrim-Mass
(13年8月) 組込みLinuxボードに多様な入出力を付加する拡張ボード
天然素材を圧縮成形した緑化製品
自動車盗難防止器具「タイヤガード」
FG処理チタン製2輪摺動部パーツ
タッチパネル用フィルム導電膜のシート抵抗測定装置
16回
消防車用カーボン製ハイルーフ
(14年3月) 軽薄短小「パチン」と止まる丸バネホック
ドーナツ型の筋トレ器具「くるくるパンプアップ」
折りたためる植木鉢・野菜や果実を袋で育てる「ベルポット」
企業名
有限会社曽田金属製作所
株式会社メカ
有限会社渡辺機械
株式会社ファインテック高橋
株式会社アカリネ
ネッパジーン株式会社
有限会社西原電子
株式会社トリマティス
京葉ベンド株式会社
株式会社藤田製作所
株式会社Forest Auto
ヨシザワLA株式会社
京葉興業株式会社
株式会社ニチオン
株式会社アイ・メデックス
有限会社葉っぱや
株式会社ランドマークジャパン
株式会社Eプラン
ユニーク株式会社
エヌティーダブリュー株式会社
ネステック株式会社
有限会社水谷理美容鋏製作所
株式会社パーク
有限会社ウィン電子工業
柳川建設株式会社
有限会社錠商
株式会社オーファ
ナプソン株式会社
株式会社ベルリング
丸山金属工業株式会社
有限会社光精工
鈴木特殊化工株式会社
(出所)千葉県ホームページ
図 表 75 千 葉 ものづくり認 定 製 品 の認 定 企 業 の所 在 地
市町村
柏市
船橋市
千葉市
市川市・松戸市
白井市
市原市
習志野市・茂原市・野田市
浦安市・我孫子市
印西市・鎌ケ谷市・佐倉市
八千代市・富津市・富里市
木更津市・睦沢町・多古町
長南町・長柄町・東京都
(出所)千葉県ホームページ
92
認定企業数(社)
21
18
17
11
5
4
3
2
1
所在地
松戸市
白井市
鎌ケ谷市
松戸市
千葉市
市川市
柏市
市川市
市川市
茂原市
多古町
柏市
市川市
船橋市
千葉市
市原市
船橋市
船橋市
市川市
柏市
習志野市
松戸市
浦安市
船橋市
千葉市
千葉市
浦安市
東京都
柏市
船橋市
富津市
八千代市
図 表 76 民 間 企 業 と大 学 等 との共 同 研 究 数 と研 究 費 受 入 額 の推 移
18,000
(件)
16,000
14,974
16,925
45,000
(百万円)
40,000
13,790
14,000
12,000
14,779
15,544
16,302
35,000
12,489
11,054
30,000
10,000
25,000
8,000
20,000
6,000
24,857
28585
31,077
33,907
29,451
31,407
33,433
34148
15,000
4,000
10,000
2,000
5,000
0
0
05
(年)
06
07
08
09
研究費受入額(右軸)
10
11
12
実施件数(左軸)
(出所)文部科学省「2012年度 大学等における産学連携等実施状況について」
図 表 77 ベンチャー企 業 の成 長 ステージごとの問 題 点 と課 題
成長ステージ
課 題
・企業の信用力が乏しく、資金調達、販路開拓、営業活動、技術・商品開発、人材・家賃の
シードステージ
安い事業所の確保など、経営全般のあらゆる支援ニーズがある。
(創業期)
・特に、資金調達が困難で、大半を自己資金や親戚、知人に依存せざるをえない。
成
長
ス
テ
ー
ジ
別
課
題
アーリー
ステージ
(創業間
もない時期)
・成長していくうえで、資金調達と技術・商品開発、販路拡大を必要とする先が多い。
・商品開発後の販路開拓や営業力の強化などの経営面のサポートが必要である。
・インキュベーション施設の卒業後、適当な入居施設がないため、企業が市外や県外に流
出するケースがあり、ポストインキュベーション施設の確保が必要。
・事業計画づくりや上場など、一層の事業拡大に向けて、財務・管理等の責任者、技術者
エクスパンション
の確保が必要となる。
ステージ
・本業での資金繰りがスムーズに回る企業も多く、販売実績内での銀行借入もしやすくなる
(成長期)
ことから、資金調達面での課題を挙げる先は少なくなる。
・事業の業績向上のため、会社経営や事業運営全般、人事・資金繰りなど、会社全体のマ
レーターステージ
ネジメントに精通した人材を必要とする先が多い。
(成熟期)
共通課題
・経済の低成長や景気・株価の長期低迷などベンチャー企業を育む環境の悪化。
・起業家のほとんどが、技術者や大学教授のため、どちらかといえば経営に疎いことから、
経営コンサルタントなど外部人材の取り込みが必要。
・ベンチャー企業サイドと支援サイドは交流会等により、相互理解を深めることが重要。
・日本はアメリカなど起業が盛んな他国に比べ、法の制約が多く、関係省庁の許認可に時
間がかかることや助成金、補助金制度の活用に当たっての手続きが煩雑。
・千葉県では、ベンチャー企業や特定産業の支援施策より、中小企業全般の支援策を優
先しており、ベンチャー企業向け支援策の予算確保が困難。
(出所)千葉経済センター「千葉県内ベンチャー企業-その生存と飛躍のためには何が必要か-(2011年12月)」
(ちばぎん総合研究所受託調査)
93
c. 企業誘致の推進
千 葉県への 企業誘致 を進 めること は、県民 にと っては働 く場所の 確保 、自治体に
と っては安 定的な税 収の 確保、そ して千葉 県全 体にとっ ては、産 業振 興、地域経済
の 活性化に つながる など メリット が多い。 千葉 県への近 年の工場 立地 件数(電気業
を除 くベース )の推移をみ ると、 09 年( 15 件) 以降横ば い 状態が続 き 、13 年は 15
件と 、隣県の 茨城県( 55 件で全 国トップ の実績 )や埼玉 県( 37 件)に 比べ大き な差
がみ られる( 図表 78)。
千葉 県におけ る企業誘致に ついては、短 期的には、2017 年 度に分譲開 始予定の 2
つの 工業団地(袖ケ 浦椎の 森、茂 原にいは る)( 注 10) の整 備と、か ずさア カ デ ミ ア パ
ーク の早期完 売を目指し、中 長期的に は、新たな工 業団地の 整備も視野に 入れつつ 、
県 内立地企 業の育成 ・支 援に取り 組むこと が求 められる 。 内陸部 にお ける企業誘致
の 促進には 、県と圏 央道 沿線の自 治体 との 連携 ・協力が 不可欠で ある 。用地情報や
工 業用水、 各種イン フラ の整備、 ICまで のア クセス道 路の整備 、県 や自治体の連
携 によるト ップセー ルス など 、千 葉県が一 丸と なって企 業誘致を 推進 していること
を 企業に対 してPR して いくこと が 重要で ある 。 また、 将来的に 圏央 道が全線開通
す れば、国 内物流業 者 に とって は 、圏央道 北部 の香取・ 山武地域 から 東京都、横浜
市 卸売市場 までが 約 1時 間 で結ば れるほか 、国 際物流業 者は成田 ・羽 田の両 空港を
利 用できる こと、海 運業 者は千葉 港・木更 津港 に加え、 アクアラ イン 経由で東京港
や 横浜港に も容易に アク セスでき る など多 方面 で 優位性 が高 まる こと から 、物流・
流通 産業を中 心に圏央道 や 北千葉道 路 沿線地域へ の新たな 企業立地も期 待できる 。
千 葉県の農 業のポテ ンシ ャル を最 大限活用 する ため、農 業と連携 が 可 能な業種に
特 化して企 業誘致活 動を 展開する のも一法 であ る 。具体 的な対象 業種 としては、①
県 産の農産 物を収穫 後す ぐに加工 ・販売す る食 料品メー カー、② 無農 薬や有機栽培
を アピール したい外 食産 業の農業 生産子会 社、 ③今後 、 食料需要 の 大 幅な増加 が見
込 まれるア ジアやア フリ カ地域へ の野菜や 加工 品を輸出 する農業 法人 や加工業者な
どが あげられ る。
図 表 78 工 場 立 地 件 数 の推 移 (東 京 都 を除 く東 京 圏 及 び茨 城 県 )
100
(件)
千葉県
90
神奈川県
80
茨城県
70
埼玉県
60
55
50
40
37
30
20
10
15
10
15
0
00
(年)
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
(注)1.出所:経済産業省「工場立地動向調査」
2.電気業(メガソーラー発電所)を除くベース。
(注10)千葉県は、2014 年9月の補正予算で工業団地整備費 7,600 万円及び債務負担行為9億
4,700 万円を計上し、
2015 年度に予定していた両工業団地の着工を 14 年度中に前倒しした。
94
非製造業のイノベーション
a. 医療・福祉・健康産業の集積促進
千葉 県の医療・介護現場の サービス 供給体制 は、人口 10 万人当 りの医 師数が全 国
ワ ースト3 位、同看 護師 数がワー スト2位 の低 水準とな っている ほか 、病床数は、
2040 年に は千葉・東葛地 域を中心 に約 5,000 床が不 足する見 通しと なって い る。こ
れら医療インフラの整備や医療職の人材育成が大きな課題となって おり、東京オ
リ・ パラ開催 に向けて整備 ・育成を 進めることが 望ましい 。
こ のような 状況下、 成田 市が内閣 府(地域 活性 化推進室 )に提案 した 「国際医療
学園 都市構想」及び「エア ポート都 市構想」が、2014 年 3月に開催さ れた国家 戦略
特 区諮問会 議におい て 認 められ 、 成田市が 東京 圏の一部 として特 区対 象区域に指定
され た。
医療 学園都市 構想では、16 年4月の 開校を目指 す国際医 療福祉大学( 成 田看護学
部: 収容定 員 100 名 ・成田 保健医療 学部 :収容定 員 960 名)を中 核施設 として、 医
学 部の新設 や国際医 療福 祉大学成 田病院( 仮称 )の整備 、製薬会 社・ 医療機器メー
カ ーなど医 療産業の 集積 を目指し ている ( 図表 79)。こ れらの取 り組 みが 実現すれ
ば 、県内の 医療 や介 護 の 人材不足 解消 とい った 医療環境 の向上 や 医療 関連の産業集
積 に一定の 貢献を果 たす とともに 、 国際会 議な どのMI CE需要 の 取 り込みやメデ
ィ カルツー リズムの 推進 など 、新 たな需要 創造 につなげ ることも 可能 となる 。とり
わけ 、千葉県 は、医療機器 の生産額( 2012 年)が 921 億 円(全国8位 )と大き い だ
け に(図表 80)、国 家戦 略特区の 取り組み との 相乗効果 により医 療関 連産業の一層
の底 上げが期 待できる。
ま た、千葉 県には 先 進的 な取り組 みを進め る 亀 田病院( 鴨川市) など の医療施設
あ るいは木 更津市の 温浴 施設 や勝 浦市のタ ラソ テラピー 施設 等の スパ 関連施設 ・温
泉 、ゴルフ 場 等のス ポー ツ施設な ど「健康 」に 関連する 施設が多 い ほ か、新鮮な海
の 幸・山の 幸 を活用 した ヘルシー メニュー の提 供も可能 である。 これ らの健康に関
す るインフ ラや食材 、エ ステティ ックの技 術を 活用 した 健康・美 容 に 特化した ツー
リ ズムは、 インバウ ンド 誘致にも 新たな切 り口 として 有 効と考え る。 アジア諸国に
お ける日本 のブラン ド力 を考慮す れ ば、ア ジア の女性を 中心とし た「 健康で美しく
なり たい」と いうニーズを 県内に取 り込め むこと は十分に 可能である。
医 療・福祉 ・健康産 業の 活性化を 目指すこ とは 、今後、 急速に進 行す る ことが見
込 まれる高 齢社会に おい て、 高齢 者や障が い者 が安心し て暮らせ るま ちづくりにも
大 いに寄与 するもの であ る。 なお 、このよ うな 取り組み を推進し てい るのは 、千葉
県内 では、成 田市のほか、鴨川市が 医療・福祉・健康産業 を 効果的に 融 合させた「プ
ラチ ナタウン 構想 」( 注 11) を推進 している 。
(注11) プラチナタウン構想とは、県内外から健康長寿を目指した中高年世代の移住を促進し、
新たに生まれる消費需要や医療・介護・健康サービスなどから若年者の雇用を創出するま
ちづくりを指している。
95
図 表 79 成 田 市 「国 際 医 療 学 園 都 市 構 想 」の概 要
■取組(案)
取組(案)
概 要
国際医療福祉大学により国際標準の医学教育の提供を図り、国内の医
師不足や国際医療協力に資する人材育成を目指す
国際医療福祉大学成田病院(仮称)の設置により、最先端で高付加価値
な医療の提供を行う
外国人向けの医療環境の整備や、国際遠隔診断センター(仮称)による
ミャンマー・ベトナム等を中心にアジアの医療過疎地域へ遠隔医療(写真
診断・技術指導等)の提供を行う
(1)大学・大学院教育
(2)最先端医療の推進
(3)国際的な医療提供
(4)介護施設の設置
病院に介護施設を併設するとともに、外国人介護スタッフの雇用や介護
ロボットの共同研究・導入などの実験的な試みも行っていく
(5)企業との連携
成田市、国際医療福祉大学、既存医療・福祉機関、製薬会社、医療機器
メーカー、他大学等の多様な参加者が協力し、医療技術研修を行う「ト
レーニングセンター(仮称)」を設置する
■規制改革(案)
規制改革(案)
目的
(1)医学部新設の解禁
医療ニーズの増加や研究・開発における医師不足の解消
(2)病床規制の撤廃
医療機関の適正な競争による患者サービスの向上
(3)保険外併用療養の拡大
先進的な医療を受ける機会の確保
(4)外国医師による診察
外国人に対する医療サービス提供の充実
(5)外国看護師等による臨床修練
(6)外国人による介護業務への従事
介護・福祉部門における人材不足の解消
(7)土地利用に関する規制の緩和
農地法上の土地利用制限緩和による集積のための用地確保
(出所)成田市企画政策課
図 表 80 医 療 機 器 の都 道 府 県 別 生 産 額 ランキング
0
1,000
2,000
3,000
1位 静岡県
1,886
3位 東京都
1,247
4位 福島県
1,089
5位 埼玉県
1,085
6位 大分県
1,031
7位 茨城県
993
8位 千葉県
10位 兵庫県
4,000
3,652
2位 栃木県
9位 山梨県
(億円)
921
582
539
静
栃
東
福
埼
大
茨
千
山
兵
岡
木
京
島
玉
分
城
葉
梨
庫
県
県
都
県
県
県
県
県
県
県
生産額
1社当り
(参考)
構成比
生産額 製造所数
(%)
(億円)
19.3
52
70.2
10.0
29
65.0
6.6
565
2.2
5.7
27
40.3
5.7
151
7.2
5.4
10
103.1
5.2
43
23.1
4.9
90
10.2
3.1
16
36.4
2.8
80
6.7
(出所)厚生労働省「2012年薬事工業生産動態統計年報」
96
農水産業 のイノベーション
千葉 県は平坦 な土地と温暖 な気候に 恵まれ 、農業 産出額( 12 年度 )は北 海道 、茨
城 県に次い で全国3 位と なってい る。また 、千 葉県が 三 方を海に 囲ま れていること
もあ って 、県内に は合計 69 港 の漁港(第3管区 海上保安 本部HP)があり 、一 年を
通じ て豊富な 魚介類が水揚 げされて いる( 12 年の海面 漁業 漁獲 量は約 15.4 万tで
全国 7位 )。
この ように 全 国有数の規模 を誇る県 内農水産業で はあるが、農業・漁業 ともに担
い 手の減少 ・高齢化 や輸 入産品と の競合、 燃料 費の高止 まりに伴 う収 益悪化など、
経 営環境は 厳しさを 増し て おり、 年を追っ て産 出量 ・漁 獲量 は減 少傾 向となってい
る 。さらに 、東日本 大震 災の発生 に伴う放 射能 汚染の風 評被害か ら、 アメリカや中
国を はじめ 9 か国・地域 が 千葉県産 の食品等の輸 入を停止 している( 14 年8月末 現
在) ことが、 経営難に追い 打ちをか けている (図 表 81)。
この ように閉 塞感に苛まれ ている県 内の農 水産業 の現状を 打破するため には、農
業 は、農産 物の品質 向上 や後継者 の育成、 大規 模化・効 率化 、企 業 参 入の促進 など
の 取り組み に加え、 6次 産業化の 推進や海 外へ の販路拡 大、新規 事業 への参入(植
物 工場他) などが求 めら れる。漁 業には、 県内 産の水産 物 と全国 トッ プレベルの規
模 を誇る水 産加工品 の付 加価値向 上など 、 ブラ ンド化を 推進する とと もに、海外市
場へ の売り込 みを強化し、 事業者の 所得向上を図 る必要が ある。
図 表 81 千 葉 県 産 の食 品 等 に対 する輸 入 停 止 状 況 (2014 年 5月 23 日 現 在 )
国名
中国
香港
マカオ
台湾
韓国
アメリカ
ロシア
ニューカレドニア
レバノン
輸入停止品目
全ての食品、飼料
野菜、果実、生乳、乳飲料、粉ミルク
野菜、果物、乳製品
全ての食品(酒類を除く)
ほうれんそう、かきな等注2、きのこ類、たけのこ、茶、ギンフナ
シイタケ、タケノコ、コイ、ギンブナ、イノシシの肉
水産品、水産加工品
全ての食品、飼料
出荷制限品目
(注)1.出所:農林水産省「諸外国・地域の規制措置(2014年5月23日現在)」
2.ほうれんそう、かきな等は3市町(旭市、香取市、多古町)のみが対象。
97
a. 農水産業の6次産業化
千葉県の伝統的な基幹産業の一つである農 水産業の経営環境は、担い手の高齢
化 ・減少に 伴う産出 ・漁 獲 量の減 少や燃料 費の 高止まり による収 益悪 化などから厳
し さを増し ている。 また 、政府や 農業関連 団体 の間で「 環太平洋 戦略 的経済連携協
定(TP P)」への 参加の 是非を巡 り、さまざま な考え方 があるものの 、仮 にTPP
に 参加する ことにな れば 、高関税 率によっ て政 府に保護 されてき た米 や小麦など農
産物 への影響 は少なくない 。一方 、千葉 県では 、県 内 11 金 融機関が農 林漁業者 の新
規事 業や海外 展開 を支援す る地域フ ァンド(総 額 20 億円) を 12 年度に 立ち上げ る
など 攻めの農 業 に取り組む 事業者に は追い風 も吹 いている 。
こ のよ うな 状況 下、 県内 の農 水産 業が 持続 的 に 発展 して いく ため には 、 運 営主 体
の 法人化や 農地の大 規模 化による 経営効率 化の 取り組み とともに 、 所 得の向上につ
な がる6次 産業化や アジ アを中心 とした海 外へ の販路拡 大などに より 、稼げる農業
に転 換を図る 必要がある。6 次産業化 に取り組む 農家の収 入の変化につ いてみる と、
観 光農園、 農家レス トラ ン、直接 販売、農 産物 加工のい ずれも「 1~ 3割程度の増
収 」が最多 となって いる (図 表 82)。この よう に 農家の 所得環境 が好 転すれば、後
継者 問題の解 決につながる 可能性も ある。
も っと も、 生産 者は 「誰 に」、「 何を」、「 どのよ うに 」売 るの かと いう 販売 面の 企
画力・営業 力はあま りない ことから 、
「農業コー ディネー ター」のよう な 専門家 の知
見を 活用する ことも有効で ある 。千葉県 には 23 か 所の「道の駅」や 205 か所の「農
水 産物直売 所」があ るが 、これら の施設を 産品 ・加工品 の販路と する ことは、地域
ブラ ンドを育 てるためにも 比較的取 り組み易く 、 有効であ る。
6 次産 業化 の取 り組 みを 成功 に導 く た めに は、 生産 者や 食料 品加 工 業 、小 売業 、
行 政などの ネットワ ーク をいかに 構築する かが 重要であ る。全国 の6 次産業化の先
進 事例をみ ると、強 いリ ーダーシ ップで ネ ット ワークづ くりを 推 進す るキーマンが
い ることが 多い。さ らに は、産品 ・加工品 に付 加価値が 付くよう 、地 域外への情報
発 信等によ るブラン ド化 の推進も 求められ る。 東京オリ ・パラは 、千 葉県産の安全
で 美味しい 農産物・ 魚介 類を世界 の人に知 って もら い、 食しても らう 絶好の機会で
あり 、今のう ちから 着実な 準備が求 められる。
図 表 82 6次 産 業 化 への取 り組 みによる農 業 者 の収 入 の変 化
0%
10%
【凡 例】
減った
農家レストラン
15.4
観光農園
5.3
直接販売
5.4
農産物加工
4.4
20%
30%
特に変化なし
7.7
10.5
40%
1割程度の
増収
22.4
1~3割程度
の増収
60%
70%
3~5割程度
の増収
30.8
18.4
17.7
50%
80%
5割以上
の増収
23.1
31.6
23.4
32.7
(注)1.出所:農林水産省「平成24年版食料・農業・農村白書」
2.集計対象は、6次産業の取り組みを行っている農業者延べ628人。
98
100%
無回答
23.1
23.7
33.9
20.0
90%
10.5
12.4
10.2
6.5
9.8
0.8
0.5
b. 海外への販路拡大
千 葉県 には 、世 界へ の玄 関口 であ る「 成田 空港 」が あり 、世 界 各 国と の人 や物 の
往来 が盛んで ある。とりわ け、アジ ア圏の人口は 、 今後 約 40 年間で 10 億人の増 加
が 見込まれ ており、 世界 一のマー ケットに 成長 すること が確実と 言わ れている。一
方 、国内に 目を転じ ると 本格的な 人口減少 社会 に突入し ており、 あら ゆる分野にお
い て需要が 伸びにく い構 造になり つつある 。こ のような 状況下、 地場 産業の持続的
な 発展を目 指すため には 、販路を 海外に求 める ことは当 然の流れ であ り、県内の農
水 産業も決 して例外 では ない。現 在 の海外 マー ケットを みると、 アジ アを中心とし
た 人口増加 や所得の 向上 に加え、 日本食ブ ーム といわれ る 追い風 が吹 いている。 千
葉 県の安心 ・安全な 農産 物 や魚介 類を海外 の 富 裕者層を 対象に販 売す る 勝機は十分
ある 。
12 年度 の千葉県 の農産物(水 産物を除 く)の輸出 額は年間 33.8 億円 で 、うち 99.8%
( 33.8 億 円)は植木・盆 栽類が占め 、コメや野 菜、畜産物 などの 主要 品目はご くわ
ずか となって いる。放射能 汚染の風 評被害のなか った 10 年度 でも、植 木以外の 輸出
金額 は全体 の 3.4%( 87 百万円 )に過ぎ な かっ た 。県内 農産物の輸出 を促進す るた
め には、販 売ターゲ ット の明確化 や高品質 のア ピール、 日本の文 化や 技術とセット
で輸 出するな どの工夫が求 められる (図 表 83)。
例え ば、 13 年3 月には「 ワールド ・スシ・カッ プ・ジャ パン 2013」が幕 張メッ
セ で開催さ れ、県内 外か らの来場 者で賑わ った が、県内 産の米( その 他農産物も含
む )と魚介 類をセッ トで 売り込 む ことが可 能な 「寿司」 に着目し て 海 外への 販売促
進を 図ること は 、マーケッ トへの訴 求力も強く、 効果的な 取り組みとい える。
ま た、 森田 千葉 県知 事は 、タ イや 台湾 、マ レー シア で 県 産農 水産 物の 販路 拡大 と
外 国人観光 客の誘致 を進 めるため のトップ セー ルスを 積 極的に 行 って い るが、千葉
県の 知名度 の 向上とマーケ ットの拡 大に極めて有 効な 取り 組み である 。
図 表 83 海 外 への販 路 拡 大 の方 策
(2)高 品 質 をアピール
・台 湾 やシンガポールなどアジアの富 裕 層 をターゲットに
日 本 の安 心 ・安 全 な農 作 物 ・魚 介 類 を販 売 。
・中 間 所 得 者 層 に販 路 を拡 大 (消 費 者 ニーズの把 握 、適
正 価 格 維 持 のための生 産 コストの引 き下 げが必 要 )
・現 地 百 貨 店 やスーパーにおける試 食 会 の開 催
・現 地 の飲 食 店 などで期 間 を決 めて試 供
(3)文 化 と共 に輸 出
・歴 史 的 なストーリー性 を強 調 (幕 府 の献 上 米 など)
・箸 や伝 統 的 な食 習 慣 、低 カロリー性 などをアピール
(1)販 売 ターゲットの明 確 化
≪富 裕 者 層 ・中 間 所 得 者 層 等 ≫
・日 本 の高 性 能 な電 気 機 器 (炊 飯 器 など)との連 携
(4)日 本 の技 術 とセットで輸 出
(出 所 )千 葉 経 済 センター「千 葉 県 経 済 へのTPPの影 響 とその評 価 ( 2014 年 6月 )」(ちばぎん総 合
研 究 所 の受 託 調 査 )
99
c. 新規事業への参入(植物工場など )
30 年後の 農業・漁業を展 望すると 、日 本の栽培 技術を活 用した新規事 業 の参入 と
いう 方向性も 考えられる 。現在 、千葉 大学が中心 となって「N PO植物 工場研究 会」
を 立ち上げ 、千葉大 学柏 の葉キャ ンパス内 の植 物工場施 設で トマ トや レタスの栽培
に挑 戦する( 11 年8月か ら本格栽 培)など、県内 でも植物 工場の取り 組みが始 まっ
て いる。こ うした 新 たな 事業領域 へのチャ レン ジ が求め られる。 植物 工場によるビ
ジネ スモデル を 確 立 す る こ と が で き れ ば 、 世 界 の 耕 作 不 適 地 ( 砂 漠 や 寒 冷 地 、 湿
地 、山岳地 帯など) にお ける食糧 確保 に向 け 、 これらの 地域に栽 培技 術を輸出する
方 向性も考 えられる 。 植 物工場の 事業推進 は、 生産性 の 向上に加 え 、 世界の食料問
題の 改善に貢 献する。世界 の耕作不 適地には「山 岳地帯( 日本の国土の 約 105 倍)」
や「 砂漠(同 約 95 倍 )」、「 寒冷地( 同約 95 倍 )」な どがあり 、これら の 地域に とっ
て食 料の確保 は大きな課題 となって いる。また、世界の人 口は既 に 70 億人を 突破し
増 え続けて いる こと から 、 日本の 植物工場 事業 が、将来 、 海外の 耕作 不適地や人口
増加 地域に輸 出されるなど 、ビジネ スチャンスが 世界に 広 がる可能性が 高い。
100
観光分野のフィールド拡大
概要
千葉 県におけ る近年の観光 振興に関 する取り組み をみると 、2002 年 の「観光立 県」
宣言 のあと、08 年3月に は「千葉県 観光立県の 推進に関 する条例」、同年 10 月に は
「観 光立県ち ば推進基本計 画」を策定し 、
「住む 人も 、訪れる 人も和み 、元 気になれ
る“ 花と海の 故 郷ちば”」とい う将来像 の実現に 向けて観 光振興に取り 組んでき た。
千 葉県 の観 光産 業の 現状 を踏 まえ つつ 、 将 来を 見据 えた 観光 振興 の方 向性 とし て
は 、地域特 性を活か した グリーン ・ブルー ツー リズムな どの体験 型観 光 やインセン
テ ィブ旅行 、修学旅 行と いった従 来型の観 光の 魅力アッ プに 加え 、ス ポーツツーリ
ズ ムなど新 たな視点 での 観光への 取り組み も 必 要である 。特に、 千葉 県の大きな観
光 資源であ る海岸や 砂浜 において は、近年 の海 水浴離れ から、マ リン スポーツや欧
米 のリゾー トのよう な通 年型の新 たな利活 用が 求められ る。折し も、 東京オ リ・パ
ラ の開催が 決まり、 プレ 大会など の合宿・ キャ ンプニー ズ への対 応な ど 、スポーツ
ー リズムの 推進機運 が全 国的に高 まってい る。 この機に 乗じて、 スポ ーツ・交流施
設 を整備し て サッカ ーや 野球チー ムのスポ ーツ 合宿を誘 致したり 、ア クアラインマ
ラ ソンのよ うなスポ ーツ イベント にこれま で以 上に 注力 するなど 、 全 県レベルで取
り 組むこと ができれ ば、 国内観光 客やイン バウ ンドの 増 加につな がる だけでなく、
地 元住民の 健康増進 や自 治体の医 療 費削減 につ ながるこ と も期待 でき る。 また、観
光を 地域の文 化 や教育 、交 流に活か す視点も重要 性を増し ている。
統 合型 リゾ ート ( I R ) が有 する ビジ ネス やコ ンベ ンシ ョン 、レ ジャ ーな ど の 機
能 のうち、 既に千葉 県内 に整備 済 のものも 少な くない。 これら地 域資 源の 連携も視
野 に入れた 『ちば型 』の IRの誘 致を目指 すと ともに、 千葉県の 弱点 とも言われて
き たアフタ ーコンベ ンシ ョンにつ いても、 地域 一体とな って魅力 的な プランを提供
でき るよう 、 リゾート地と して の質 を高めていく 必要があ る。
少 子高 齢化 ・人 口減 少社 会の もと で、 千葉 県の 観光 が持 続的 に発 展し てい くた め
に は、成田 空港 と東 京 デ ィズニ ー リゾート を擁 する 千葉 県ならで はの 優位性を生か
し て、東京 オリ ・パ ラ開 催前から 、 インバ ウン ド誘致に 官民をあ げて 注力すべきで
あ る。その 方策とし ては 、インバ ウンドに 対す るおもて なし力の 向上 や各種サイン
の多 言語化対 応、I CT対 応(公 衆無線L ANな ど)、観光関 連 施設の バリアフ リー・
ユニ バーサル デザイン化 な どの推進 があげられる 。
ま た、 地域 ブラ ンド 化の 取り 組み は、 県内 各地 で実 施が 可能 かつ 関連 産業 のす そ
野が 広いため 、多 様な主体 の参画が 可能である 。また 、地 元企業の育成(経 営支援 )
の みならず 地域のイ メー ジアップ と活性化 に直 結するこ とから、 地域 づくりそのも
であ り観光振 興にも大きく 貢献する 。
こ れら の取 り組 みを トー タル で進 める こと で来 訪者 の満 足度 を高 め、 ファ ンや リ
ピ ーターを たくさん つく るととも に、これ らの 層を二地 域居住や 移住 につなげる取
り組 み ( 注 12) も重 要である 。
(注12)2009 年4月に設立された「NPO法人おせっかい(館山市)
」は、官民一体となって館山
への移住をサポートしている。活動メンバーは館山市商工会青年部が中心となっており、
①定期的に移住体感ツアーを開催、②不動産物件(土地、古い民家の賃借など)の情報提
供と内見の同行、③移住者へのインタビュー、④館山移住かわら版の発行、⑤おせっ会
ONLINE サイトの運営を通した情報発信、などに取り組んでいる。
101
アクションプラン
「 観光分野 のフィー ルド 拡大」 の アクショ ンプ ランとし て、① 観 光施 設等のリノ
ベ ーション 、②イン バウ ンド向け おもてな し力 の向上 、 ③各種ツ ーリ ズムの推進 、
とい う3つの 方策が考えら れる。
各プ ランの具 体的な取り組 み及びロ ードマップ( 行程表) は 図 表 84 の通 り。
図 表 84 「観 光 分 野 のフィールド拡 大 」のアクションプランの体 系 図 及 びロードマップ
短期
(年度)
中期
2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
①各種ツーリズムの推進
a.スポーツツーリズムの推進
b.
グリーン・ブルーツーリズムの推進
c.IR・MICE拠点の整備及び世界会
議の誘致促進
②インバウンドの誘致推進
a.首都圏空港を活用した誘致強化と
おもてなし力の向上
b.ICT対応の推進
各種標識・ホームページ等の多言
c.
語対応
d.バリアフリー・ユニバーサルデザイ
ン化の推進
③地域ブランドの創出
a.地域ブランドの創出による地域活
性化
102
長期
2021
以降
【参考】
「(3)観光分野のフィールド拡大」関連の千葉県の主な事業(平成26年度当初予算)
事業名
新規
①各種ツーリズムの推進
ちばアクアラインマラソン開催事業
おいでよ千葉 マラソンランナー優待キャンペーン
ちばアクアラインマラソン開催に伴うPR事業
国際千葉駅伝開催事業
○
平成26年度全国高等学校総合体育大会(高校総体)開催事業
観光地魅力アップ事業(観光トイレ等の整備)
「がんばろう千葉」有料道路利用観光振興事業
大規模イベント支援事業
観光プロモーション事業
宿泊・滞在型観光推進事業
IR導入検討基礎調査事業
国際会議開催補助金
②インバウンドの誘致推進
東京オリ・パラに向けた受入体制の整備事業
外客誘致関係事業
訪日教育旅行誘致事業
○
○
観光客誘致のための公衆無線LAN環境整備モデル事業
海外の大学生を対象にしたモニターツアー事業
訪日観光客の食文化等に関する調査・推進事業
③地域ブランドの創出
観光ウェブサイトのリニューアル事業
千葉の魅力発信推進事業
世界に向けた千葉の魅力発信事業
○
○
(合 計)
(注)1.出所:千葉県ホームページ
2.主な事業を掲載
103
予算(百万円)
995
120
20
35
22
336
200
36
30
127
40
5
24
89
5
21
17
20
23
3
229
25
180
24
1,313
構成比(%)
一般会計=
100%
0.062
0.007
0.001
0.002
0.001
0.021
0.012
0.002
0.002
0.008
0.002
0.000
0.002
0.006
0.000
0.001
0.001
0.001
0.001
0.000
0.014
0.002
0.011
0.001
0.081
各種ツーリズムの推進
東京 オリ・パラ の開催決定 を受けて 全国各地で 取 組気運が 高まっている「 スポー
ツ ツーリズ ム」の推 進を はじめ、 千葉県の 豊か な自然を 活用した グリ ーン・ブルー
ツ ーリズム のブラッ シュ アップや IR・M IC Eニーズ への対応 を図 ることで、東
京 オリ・パ ラに向け て増 加基調に あるイン バウ ンド や日 本人観光 客 を 県内の観光地
に呼 び込み、 地域活性化に つなげる 取り組みを推 進する 。
a. スポーツツーリズムの推進
千葉 県の観光 地は、豊かな 海洋資源 や美しい里山 の風景、温 暖な気候な ど により 、
これ まで多く の 観光客 を受 け入れて きた。しかし、2011 年 3月の東日 本大震災 の発
生に 伴う放射 能汚染の風評 被害 や津 波への警戒 か ら、11 年の海 水浴客 は 115 万人 と
前年 比半減の 状況に落ち込 み、 13 年 は 182 万人 に回復し たものの、震 災前( 10 年 )
の8 割の水準 に留まっ てい る(図 表 85)。
千 葉県の観 光を中長 期的 に展望す ると、少 子高 齢化の進 行や本格 的な 人口減少社
会 の到来、 レジャー の多 様化、修 学旅行の 誘致 合戦の激 化 などの 動き と相まって、
家 族連れの 海水浴客 や修 学旅行な どに依存 する 従来型の 観光振興 は伸 び悩 んでいる。
本 県の観光 産業が持 続的 な発展を 遂げるた めに は、 伝統 的な観光 スタ イルは維持し
つつ 、新たな 観光需要を創 り出す取 り組みが不可 欠である 。
近 年、健康 志向の高 まり を背景に 、ウォー キン グやジョ ギング、 サイ クリング等
の 軽スポー ツがブー ムと なるなか 、国では スポ ーツとツ ーリズム を融 合させたスポ
ー ツツーリ ズムの可 能性 に着目し 、観光振 興を はじめ活 力ある長 寿社 会づくりや産
業 振興、雇 用の創出 など を目的と した「ス ポー ツツーリ ズム推進 基本 方針」を策定
(11 年6月 )した。 さらに 、「 スポーツ 基本法」 の施行( 11 年 8月 )、「スポー ツ基本
計画 」の策定( 12 年3月 )など、ス ポーツツー リズムの 推進 体制の整 備 を加速 させ
てい る。
千 葉県は、 千葉県総 合ス ポーツセ ンターや QV Cマリン フィール ド、 千葉県国際
総合 水泳場な ど 1,281 施設 のスポー ツ施設を有し ているほ か、ゴルフ場 は全国で 2
番 目に多く 、ゴルフ やマ ラソン、 水泳など 多種 多様なス ポーツ大 会が 開催されてい
る 。さらに は、 多く のス ポーツチ ームが千 葉県 を本拠地 として い るこ とから (図表
86)、千葉県 は、
「観 る」スポ ーツ、
「 する」スポ ーツ に加 え、地域の一 体感や人 材育
成に もつなが る「 支える 」スポ ーツ と観 光振興を 融合させ た「 スポーツ ツーリズ ム 」
のポ テンシャ ルが 高い県と いえ る 。また 、成田空 港に就航 してい る格安 航空会社( L
C C)が千 葉県と北 海道 を結 んで おり 、千 葉県 の温暖な 気候の優 位性 を活かしたス
ポー ツ合宿の 避寒地として のポテン シャル も飛躍 的に高ま っている。
スポ ーツツー リズムを地域 活性化に 活用するため には 、
(1)県 や自治体 における
スポ ーツ・観光部 門の組織 づくり と 連携強化、
( 2)ス ポーツ合 宿・キャン プの受入
強 化、( 3)地域 の特色 を活かし たスポー ツイ ベントの 開催・誘 致 、(4) プロ・企
業 スポーツ チームを 活用 した交流 創出 など の取 り組みが 必要にな る ( 図表 87)。例
えば 、千葉県 のサッカー人 口は 45,699 人(2011 年度)で 全国4位の 水準なが ら、
主な 練習場 は 19 施設しか なく 、
「圧倒的 にサッ カー場が 不足している 」
(千 葉県サッ
カー 協会 )。茨城 県神栖市 の波崎で は、 約 60 面 のサッカ ー場を整備し 、主に青 少年
の サッカー 合宿や試 合ニ ーズを取 り込んで いる 。こうし た県外の 施設 と県内の白子
町 のテニス リゾート やゴ ルフ場な どが連携 しつ つ、さら には、南 房総 地域に各種ス
ポ ーツのイ ンフラを 整備 し、地元 の宿泊施 設と の連携を 図ること がで きれば、全国
の スポーツ 需要を取 り込 むことが 可能とな る。 また、鋸 南町では 、 民 間主体で サッ
カ ー場など のスポー ツ施 設が整備 され るな ど 、 スポーツ 合宿を呼 び込 む環境 づくり
が進 められて いる (図表 88)。
104
こ うした取 り組み を 全県 レベルで 推進する とと もに 、地 域住民に 対し て、 スポー
ツ 関連施設 を開放 し 、各 種スポー ツ大会へ の参 加を促す ことで、 地域 住民の健康増
進 を図るこ とが重要 であ る。こう した取り 組み は、 自治 体の医療 ・介 護費用の削減
につ ながるこ と も期待でき る。
図 表 85 千 葉 県 の海 水 浴 客 数 の推 移
8,000
7,983
(千人)
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,304
1,816
2,000
1,147
1,000
0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
(年)
(出所)千葉県「千葉県観光入込調査報告書」
図 表 86 千 葉 県 に本 拠 地 を置 く主 なプロ・企 業 スポーツチーム
チーム名
千葉ロッテマリーンズ
プ
ロ
ジェフユナイテッド市原・千葉
ス
ポ
ー 柏レイソル
ツ
千葉ジェッツ
種 目
本拠地
主な活動場所
野球
千葉市美浜区
QVCマリンフィールド
サッカー
市原市・千葉市
フクダ電子アリーナ
サッカー
柏市
日立柏サッカー場
バスケットボール
千葉県
船橋アリーナ等
新日鐵住金かずさマジック
野球
君津市
新日鐵住金君津球場
JFE東日本硬式野球部
野球
千葉市
JFE東日本犬成グラウンド
アメリカン
フットボール
習志野市
オービック習志野グラウンド
ラグビー
我孫子市
我孫子事業場グラウンド
ラグビー
市川市
NTT千葉総合運動場
ラグビー
船橋市
クボタ京葉工場内グラウンド
JX-ENEOSサンフラワーズ
バスケットボール
柏市
柏市中央体育館等
バルドラール浦安
フットサル
浦安市
浦安市総合体育館
オービックシーガルズ
企
業
NECグリーンロケッツ
ス
ポ NTTコミュニケーションズ
ー シャイニングアークス
ツ
クボタスピアーズ
(出所)各種資料をもとにちばぎん総合研究所が作成
105
図 表 87 スポーツツーリズムを地 域 活 性 化 に活 かすための方 法
(1)県や自治体におけるスポーツ・観光部門の組織づくり・連携強化
①庁内での情報共有
②スポーツツーリズムの推進主体づくり
③県内地域間による情報交換の場の創出
(2)スポーツ合宿・キャンプの受入強化
①スポーツ合宿データベースの構築
②民間活力の積極的な活用
③オリンピック・パラリンピックに向けた受入態勢の整備
(3)地域の特色を活かしたスポーツイベントの開催・誘致
①スポーツイベントの積極誘致
②魅力ある市民参加型イベントの継続開催とおもてなしの醸成
(4)プロ・企業スポーツチームを活用した交流創出
①ホームタウンを中心としたファン・サポーターの一層の拡大
②ビジター向けの来場促進
(出所)千葉経済センター「スポーツツーリズムを地域活性化に活かす取り組み
と今後の可能性(2014年3月)」(ちばぎん総合研究所受託調査)
図 表 88
≪参考≫鋸南町における民間主導のスポーツ合宿誘致の事例
館山 道の鋸南 保田ICから 車で5分 の場所に位置 する「サン セットブリ ーズ保田 」
は、㈱ R.project が 07 年に オープン した宿泊施 設である。かつて千代 田区が保 有し
て いた「保 田臨海学 園」 のリノベ ーション で、 人工芝の フットサ ルコ ート3面、ス
カ ッシュコ ートを兼 ねた インドア スペース のほ か、バー ベキュー が楽 しめる施設が
整 備されて いる。ス ポー ツ合宿は 全体の約 6割 を占め、 大学ゼミ 合宿 、企業研修な
ど 幅広い用 途で利用 され ている。 また、鋸 南町 の総合型 地域スポ ーツ クラブである
「 鋸南クロ ススポー ツク ラブ」が 主体とな り、 スポーツ 振興くじ ( toto)助成金の
活用 により、12 年に公式 サイズの サッカー場「勝 山サッカ ーフィール ド」がオー プ
ン した。南 房総地域 初の 人工芝コ ートで、 サッ カーのほ かアメフ ト、 ラグビーでの
使 用も可能 である。 民間 によって 整備され た施 設である が、合宿 誘致 による交流人
口 の増加だ けでなく 地域 住民のス ポーツ振 興と いう点も 重視して おり 、鋸南町民は
合宿 利用者よ りも低価格で 施設を利 用することが できる。
現 在鋸南町 では、地 元企 業の鋸南 開発㈱が 中心 となって 新たなサ ッカ ー場の建設
が計 画されて おり、用地造 成 が進め られている。
(出所)千葉経済センター「スポーツツーリズムを地域活性化に活かす取り組みと今後の方向性(2014 年3月)」
(ちばぎん総合研究所受託調査)
106
b. グリーン・ブルーツーリズムの推進
千葉 県は、4方を 海と川に 囲まれて いるほか、200~ 300 メ ートル級の なだらか な
山 々が続く 房総丘陵 など 豊かな緑 に恵まれ てお り、これ らの地域 資源 を活用したグ
リー ン・ブル ーツーリズム のポテン シャルは全国 有数とい える。
千葉 県内のグ リーン・ブル ーツーリ ズム関連の施 設等の数 を地域別にみ ると 、
「安
房地 域(南房 総地域 )」が 113 か所 と最も多く、次いで「君 津地域( 92 か所 )」、「印
旛 地域( 61 か所 )」 とな っている 。南房総 地域 が グリー ン・ブル ーツ ーリズム のメ
ッ カとして 存在感を 発揮 している ことが目 立つ が、都市 的なイメ ージ が強い千葉地
域 も 57 か所と相 当のポテ ンシャル を持っている ことが分 かる (図表 89)。
千葉 市では、2014 年3月 に 観光ガ イドブック「 umidori(うみどり )」を発 行した
(図 表 90)。「umidori」と は、海( umi)と緑( midori)をあわせた愛 称で、日 本一
の 人工海浜 を擁する 海辺 から緑豊 かな都市 公園 ・里山ま で、海と 緑の 自然の豊かさ
を コンパク トにまと めて いる。千 葉市の海 の地 域資源と しては、 日本 初の人工海浜
で あるいな げの浜と 検見 川の浜、 幕張の浜 の総 延長 が 4,320mに およ び、人工海浜
と しては日 本一の長 さを 誇ってい る。いな げの 浜には、 稲毛ヨッ トハ ーバーや三陽
メデ ィアフラ ワーミュージ アム(旧称:花の美術 館)、稲 毛海浜公園プ ール 、アクア
リ ンクちば が立地し 、幕 張の浜 周 辺には Q VC マリンフ ィールド や幕 張メッセなど
もあ る。千 葉みなと 地区で は、
「恋人 の聖地」プロジェ クトに認 定され た千葉ポ ート
タワ ーのほか 、2015 年度の 供用開始 を目指して旅 客船桟橋(長さ 約 50m ×2基 、350
t 規模の旅 客船が接 岸可 能)の整 備 も進め られ ている。 千葉市の 緑の 癒しスポット
と しては、 昭和の森 や泉 自然公園 などの都 市公 園 や千葉 市ふるさ と農 園や千葉市富
田 都市農業 交流セン ター 等の体験 施設、い ちご 狩りや栗 拾い がで きる 観光農園を同
ガイ ドブック で 紹介してい る。
海 と緑の相 乗効果を 狙っ た観光振 興は、 広 域的 な連携の 視点が重 要と なる。例え
ば 、海や里 山がない 県内 の 地域で も 周辺地 域と 連携して 取り組む こと で 、県内全地
域 で展開す ること が 可能 である。 特に、千 葉県 の大きな 観光資源 であ る海岸や砂浜
に おいては 、近年の 海水 浴離れか ら、マリ ンス ポーツや 欧米のリ ゾー トのような通
年型 の新たな 利活用が求め られる。
図 表 89 千 葉 県 のグリーン・ブルーツーリズムの施 設 数
(単位:所)
農林水産物
直売所
千 葉 地域
30
農林漁業
体験
22
農林漁家
民宿
農林漁家
レストラン
朝市・夕市
合計
0
1
4
57
東葛飾 地域
12
10
0
1
5
28
印 旛 地域
34
15
0
3
9
61
香 取 地域
8
18
0
1
8
35
海 匝 地域
10
9
14
3
5
41
山 武 地域
15
17
0
2
7
41
長 生 地域
19
5
0
1
0
25
夷 隅 地域
19
13
3
3
7
45
安 房 地域
30
43
26
9
5
113
君 津 地域
27
60
0
0
5
92
(出所)千葉県「大地と海のグリーン・ブルーツーリズムinちば」のデータをもとにちばぎん総合研究所が作成
107
図 表 90 千 葉 市 の観 光 ガイドブック「umidori」
(注 )1.出 所 :千 葉 市 ホームページ
2.実 物 のガイドブックは両 面 が表 紙 。片 方 からは「海 」の魅 力 、反 対 側
からは「緑 」の魅 力 を伝 えるリバーシブル仕 様 となっている。
108
c. IR・MICE拠点の整備 と世界会議の誘致促進
統合 型リゾー ト( IR )( 注 13)・MIC Eの 先進事例 であ る シ ン ガ ポ ー ル で は 、核
と なるIR (マリー ナベ イサンズ など) の 整備 とともに 、既存の MI CE施設やマ
リ ーナ、動 物園、コ ンサ ートホー ル、映画 館な どが連携 し、各施 設 や 地域がさらに
活性 化する こ とで一大リゾ ート に成 長し ている( 図表 91)。
IR が持つべ き機能として は、宿泊施設 や ビジネ ス・コンベン ション 、レジ ャー、
カ ジノが核 となるが 、こ れらの機 能のなか には 、既に千 葉県内に 整備 されているも
の も多くあ るため、 既存 施設と の 連携も視 野に 入れた『 ちば型』 のI R を目指すべ
き である。 すなわち 、 千 葉県の財 産である 成田 空港や幕 張メッセ 、東 京ディズニー
リ ゾート、 ららぽー とや アウトレ ット モー ル と いった 特 徴ある商 業施 設、QVCマ
リ ンフィー ルドやフ クダ 電子アリ ーナなど のス ポーツ施 設とプロ スポ ーツ球団、ゴ
ル フ場、南 房総の海 と自 然、国立 歴史民俗 博物 館(佐倉 市)や成 田山 新勝寺、佐原
市 の歴史的 町並み 等 の歴 史遺産な ど を利用 者ニ ーズに応 じてカス タマ イズして提供
す るもので ある 。こ れら の施設を 有機的に つな ぐ 交通ル ートの整 備( 海上交通も含
む )やI Rとして 欠けてい る又は弱 い機能(カジ ノ・アフター コンベン ションな ど)
を 導入でき れば 、国 内外 のMIC Eニーズ に も 対応可能 となる。 特に 、 これまで千
葉 県の弱点 とも言わ れて きたアフ ターコン ベ ン ションに ついても 、 県 をあげて 魅力
的 なプラン を提供で きる ようブラ ッシュア ップ していく ことが 重 要で ある 。また、
南房 総地域な どの豊かな自 然をアフ ターコンベン ションで 活用する際に は、IR・M
ICE拠 点 と 南 房 総 地 域 及 び 成 田 空 港 を 結 ぶ 2 次 交 通 を 充 実 さ せ る こ と が 求 め ら れ
る。
図 表 91 海 外 の統 合 型 リゾート(IR)の事 例
ザ・ベネチアン・マカオ
(マカオ)
入場規制なし
入場規制
(内国人の入場料制度もなし)
敷地面積
約 30ha
約 11ha、会議室数:11 室(分割時は最大
108 室)
会議施設
大会議室(Venetian Ballroom)の収容人数
は最大約 7,200 人
ホール数:6 ホール
展示施設
最大 4,756 個のブース設置可能
宿泊施設
ホテル:約 3,000 室
ショッピングモール:約 9.3ha、350 店舗以
ショッピングモール:約 80ha、ブランドショ
商業施設
上のブランドショップ、30 店舗以上のレス
ップ、レストラン等が約 250 店舗
トラン
1,800 席規模の劇場、スパ、
娯楽施設
劇場、博物館、結婚式場等
ゴルフコース等
カジノ施設 約 1.5ha、個室 30 室(会員専用)
約 5.1ha
(注)各種資料をもとにちばぎん総合研究所が作成。
場所
マリーナ・ベイ・サンズ
(シンガポール)
外国人:パスポートチェック
内国人:割高な入場料制度
約 16ha
約 12ha、会議室数:最大 250 室、最大約
45,000 人収容
大会議室(Sands Grand Ballroom)は、面
積 8,140 ㎡、最大約 11,000 人収容
1 階展示場:14,560 ㎡(5 ホール)
地下 2 階展示場:17,190 ㎡(5 ホール)
ホテル:約 2,500 室
(注13)統合型リゾート(Integrated Resort)とは、国際会議場・展示施設などの MICE 施設、
ホテル、商業施設(ショッピングモール)
、レストラン、劇場・映画館、アミューズメント
パーク、スポーツ施設、温浴施設などにカジノを含んで一体となった複合観光集客施設。
109
インバウンド の誘致推進
訪 日外国人 数は、 2003 年から国 による訪 日旅 行促進事 業 (ビ ジット ・ジャパ ン事
業 )が始 まったこ ともあっ て、03 年の 521 万人か ら 13 年に は 1,036 万人(02 年 比約
2 倍)に増 加した。 将来 を展望 し ても、ア ジア 各国の 人 口増加及 び 経 済発展に伴う
富 裕層・中 間所得層 の増 加を背景 にインバ ウン ドの 大幅 な増加が 期待 され 、国は、
訪日 外国人を 東京オリ・パラ が開催さ れる 20 年ま でに 2,000 万人とする ことを目 標
に各 種施策に 取り組んでい る。
千 葉県は、 インバウ ンド 誘致のポ テンシャ ルと して 、首 都圏空港 ( 成 田空港・羽
田 空港)を 活用でき るこ とや 東京 ディズニ ーリ ゾートな ど他県に はな い強みを持っ
てい る。また、外国人観光 客数の上 位2か国は韓 国 (246 万人 )と台湾 (221 万 人)で あ
る が、千葉 県には韓 国人 に人気の 高いゴル フ場 が多数立 地 (兵 庫県に 次ぐ 全国 2位 )
し 、冬でも ラウンド が 楽 しめるほ か、 台湾 人観 光客の訪 日目的の 一つ である「買い
物 」ニー ズに対応 する施設 として「らら ぽーとT OKYO -B AY」や「イオン モー
ル 幕張新都 心」など のほ か、 アウ トレット モー ルが3か 所 (幕 張、木 更津、酒 々井 )
にあ る。13 年 4月に開業 した 酒々 井プレミアム・ア ウトレ ットでは、成 田空港か ら
車 で 10 分という 好立地を 活かし、空 港や近隣の ホテルと 連携したシャ トルバス の運
行 あるいは 英語・中 国語 に対応し た案内ス タッ フの配置 、外貨両 替所 の設置、公衆
無線 LANの 無料提供など を行って いる。14 年 2 月には、訪日 ムスリ ム客に向 けた
礼 拝のための Prayer Room(祈祷 室)も設 置す るなど、 積極的に イン バウンド を取
り込 み、一定 の成果を上げ ている。
近 年は仁川 国際空港 (韓 国)など アジアの ハブ 空港争い が激化し てい るが、トラ
ン ジット( 乗り継ぎ )客 が一泊し てみたく なる 魅力づく りも、国 際空 港を抱 える千
葉 県にとっ て重要な 視点 である。 少子高齢 化・ 人口減少 社会のも とで 、千葉 県の観
光 が持続的 に発展し 、地 域経済を 潤してい くた めに は、 千葉県な らで はの優位性を
生か し、イン バウンド 誘致 に官民を あげて 取り組 む必要 が ある。
a. 首都圏空港の活用による誘致強化と おもてなし力の向上
イ ンバウン ドに対す る お もてなし 力 を向上 させ るために 最も重要 なの は、相手の
国の 文化・宗 教・習慣など を、正し く理解し たう えで対応 することであ る。
例 え ば 、 東 京オ リ ・ パラ 開 催 に 向 けて 、 ム スリ ム ( 注 14) の 訪 日 機 会 の増 加 が 見 込
まれ ている が 、ムスリムは 宗教上の 制約でハラル 食品( 注 15)しか食 べられ ないため、
東 京オリ・ パラ開催 時の おもてな し力の向 上に 向けて、 ハラル食 品へ の対応 が必要
に なる。も っとも、 本格 的なハラ ル対応は 企業 にとって コスト負 担が 大きい (製造
ラ インごと ハラル対 応と しなけれ ばならな いな ど) ため 、できる こと から始めてい
く姿 勢が重要 といえる 。例 えば、
「豚及び 豚由来 の 成分やア ルコールは使 用してい な
い 」との メニュー 表示 や礼 拝所(水場 [ウドゥ ]と礼 拝スペー スが必要 )の 設置など 、
ムス リムフレ ンドリー ツー リズ ムに 取り組むこと が重要で ある。
な お、成田 空港では 、ム スリムへ の対応と して 、既に、 ① 礼拝施 設の 整備・機能
強 化、②有 料待合室 にて ハラルの ケ ータリ ング サビスを 開始 、③ ハラ ール認証レス
ト ラン(う どん・天 ぷら ) の導入 、④空港 スタ ッフ向け ム スリム 対応 研修 などに取
り組 んでいる 。また、神田 外国語大 学では、ハラ ル食品に 対応した アジ アン食堂「食
(注14) 2010 年時点のイスラム教徒(ムスリム)の人口は約 16 億人で宗教別の人口では世界最
大で、50 年には世界人口の4分の1に達する見通し。
(注15)ハラルとは、アラビア語で「許されたもの」を意味し、イスラム法で合法とされるもの
をいう。ムスリムは、食事に関して基本的にアルコールや豚肉及びその派生品は忌避する
ものとされ、それ以外の食材もイスラム法に則って処理・調理されている必要がある。
110
神 (しょく じん)」をオ ープンし 、「食 」を通 してアジ アの言語 と文 化を学ぶ 取り組
み を行って いる。 こ のよ うな 世界 の宗教・ 文化 ・風習な どを理解 し、 対応する 取り
組み を全県レ ベルで展開す ることが 求められる 。
「 国際理解 ・親善」 に関 する取り 組みを、 継続 的な 取り 組み につ なげ る工夫とし
て「 一校一国 運動 ( 注 16)」や 「一店一 国運動」 など は有効 で ある。
b. ICT化対応の推進
外 国人旅行 者が訪日 中に 困ったこ と につい て、 観光庁が 実施した アン ケート調査
( 2011 年 10 月)でみると 、
「公 衆無線L AN環 境」が 36.7%と最も多 く、次いで「 コ
ミュ ニケーシ ョン( 24.0% )」、
「目的 地までの公 共交通の 経路情報の入 手( 20.0% )」
とな っている (図 表 92)。
千 葉県内の ICT化 対応 の状況を みると、 成田 空港では 、第1タ ーミ ナル(出国
手 続き後の エリア) 及び 第2ター ミナル( 出国 手続き前 後のエリ ア) において、有
償・ 無償の無 線LAN・パ ソコンデ スクコーナー を整備し ている。
ま た、成田 市では、 市内 の公民館 、スポー ツ施 設等の公 共施設 22 か 所に Wi-Fi
スポ ット ( 注 17) を 独自に 設置 したほか 、成田市観光 協会では 、2014 年 4 月 か ら ス マ
ー トフォン ・タブレ ット 端末向け 街歩き観 光情 報サービ ス「アク セス フリー成田」
を 開始し、 今後は、 成田 山新勝寺 表参道周 辺 や 成田市内 ホテルロ ビー 、イオンモー
ル 成田など 成田市内 観光 スポット 各所 で、 順次 サービス 提供を 拡 大し ていく 予定と
して いる(図 表 93)。
この ような動 きを 2020 年ま でに 全県 で展開でき れば、外国 人が 日本国 内で スマ ー
ト フォンや タブレッ ト端 末 などの 機能をス トレ スなく利 用し、 公 共交 通や観光情報
な どさまざ まな情報 を タ イムリー に 入手す るこ と が可能 となる。 こう した取り組み
は 、訪日外 国人の県 内 観 光やビジ ネス に対 する 満足度を 高め、再 訪を 促すことに も
つな がる。千葉 県では、2014 年度の 新規事業と して、観光 客誘致のた めの公衆 無線
LA N環境整 備モデル事業( 1 団体 あたり上限 200 万円の 補助制度)( 注 18) を 新 設 し
た が、この ような 補 助制 度をうま く活用 し て、 県内各地 でLAN 環境 の整備を進め
てい くことが 重要である 。
(注16 )オリンピック開催地の学校が応援する国や地域を決め、当該国・地域の文化や言語を学
習したり、当該国・地域のオリンピック選手や子どもたちと交流したりする活動。1998
年2月の長野オリンピックで始まった。
(注17)Wi-Fi とは、Wi-Fi Alliance という団体が認定した製品で、パソコン、携帯電話などの
機器が Wi-Fi ルーターを経由してインターネットに接続できる。Wi-Fi ルーターによりイ
ンターネット接続が可能な領域を「Wi-Fi スポット」と呼ぶ。
(注18)補助対象は公衆無線LAN環境の整備に係る費用で、事業主体は、市町村や市町村観光
協会などで構成される協議会等を想定している。補助率は2分の1以内、補助上限額は1
団体当たり 200 万円(2014 年度の予算額 2,000 万円)
。
111
図 表 92 外 国 人 旅 行 者 が訪 日 中 に困 ったこと
旅行中困ったこと
割合(%)
1 公衆無線LAN 環境
36.7
2 コミュニケーション
24.0
3 目的地までの公共交通の経路情報の入手
20.0
4 公共交通の利用方法(乗り方)、利用料金
17.1
5 両替・クレジットカード利用
16.1
6 飲食店情報の入手
11.5
7 公共交通の乗り場情報の入手
10.2
8 地図、パンフレット(多言語)が少ない
9.8
9 割引チケット・フリー切符の情報の入手
9.4
10 飲食店の予約
6.5
(出所)観光庁「外国人旅行者に対するアンケート調査(11年10月実施)」
図 表 93 「アクセスフリー成 田 」のサービス内 容
サービス名
対応言語
スマートフォン・タブレット端末向け街歩き観光情報サービス
「アクセスフリー成田」
日本語、英語
(簡体字中国語、繁体字中国語、韓国語に順次対応する予定)
成田にお越しのお客様ご自身がお持ちのスマートフォンやタブレット端
から、無料のWi-Fiスポット(認証不要)を通じて、最寄りの観光スポット
情報のページをその場で、手軽に閲覧ができるサービス。
サービス
ガイド件数は日本語/英語 各350件を収容。
今回導入する公衆無線LANターミナルは、Wi-Fiスポットに接続した際
に、特定のサイトが自動的に表示される機能があり、それを使って成田
の観光情報をお客様に提供する。
成田市を訪れる観光客がその場で、最も必要とする「観る」「食べる」
「買う」「泊まる」「移動する」といった、観光情報を表示し市内を自由に回
遊してもらえる。
成田山新勝寺表参道周辺、成田市内ホ
テルロビー、イオンモール成田ほか成田
市内観光スポット各所にて、順次サービ
公衆無線LANサー
ス提供を予定しています。
ビスエリア
公衆無線LANターミナル設置箇所周辺で
は、右図のデザインのステッカーを掲示し
ています。
(出所)成田市観光協会ホームページ。
112
c. 各 種標識・ホームページ 等の多言語 対応
成 田空港の 多言語対 応 は 、ご案内 カウンタ ー及 び館内案 内表示、 フロ アガイド等
で は、日本 語・英語 ・中 国語・韓 国語の4 か国 語 対応を 実施して いる 。成田空港で
は 、訪日外 国人にと って 更に使い やすい空 港と なるため 、 2014 年3 月には 、「(1)
多 言語リー フレット の発 行(上記 4か国語 +タ イ語、フ ランス語 、ス ペイン語、イ
ン ド ネ シ ア語)」、「( 2)「 NariTra」( 注 19) の 言 語 追 加 (( 1)と 同 様 の言 語)」、「(3)
デジ タルサイ ネージによる 多言語( 25 か国語 ( 注 20))によ る歓迎・再訪 日喚起メッ
セ ージの表 示 」、「(4) 多言語( 25 か 国語) によるウ ェルカム ボ ー ドの設置 」を行
って いる。また、15 年3月 には自動 音声によるフ ライト案 内の言語追加( 日本語対
応の み→日・ 英・中・韓の 4か国 語 対応)を実施 する予定 としている。
こ のように 成田空港 では 着々と多 言語対応 を進 めている ところで ある が、訪日外
国 人旅行者 が迷うこ とな く千葉県 内の目的 地に 辿りつく ためには 、 成 田空港から目
的 地までの 多様な場 面( 駅や道路 、商業施 設、 宿泊施設 、観光地 など )における 多
言 語表記の 統一性、 連続 性を確保 すること が必 要 となる (サイン 等の 多言語化の好
事例 として図 表 94 参照 )。観光庁は 、
「 観光立国 実現に向 けた多言語対 応の改善・強
化 のための ガイドラ イン ( 2014 年3月 )」 を公 表し、 多 言語対応 を行 う対象・範囲
や 多言語で の表記方 法、 具体的な 対訳語一 覧( 日本語・ 英語・中 国語 [簡体 字]・韓
国語 )などを 解説している(図 表 95)が 、県内の 自治体及 び施設管理者 、ガイド ブ
ッ ク・ネッ ト・アプ リ等 で情報提 供を行う 事業 者などは 、 外国人 旅行 者が多様な表
記 で戸惑わ ないよう 、 本 ガイドラ インなど を参 考 として 使用する 固有 名詞の表記統
一を 図る必要 がある 。
こ のような 、観光案 内所 における 多言語に よる 案内や観 光地の各 種施 設(観光施
設 や飲食店 等 )の対 応は 、 訪日外 国人 の円 滑な 移動や 、 観光を心 ゆ く まで楽しんで
も らうため に不可欠 な取 り組み で ある(自 治体 による飲 食店等の 多言 語化支援は図
表 96 参照 )。さら に は、訪 日前にイ ンターネット 等 で必要 な情報を 入手 してもら う
こ とも重要 であ り、 ウェ ブサイト の多言語 化対 応も 求め られる 。 なお 、千葉県は、
平 成 26 年度に新 規事業と して「観 光ウェブサイ トのリニ ューアル事業(5か国 で情
報発 信するな ど外国語サイ トの機能 充実を図るな ど)」に取り組 んでい るが、県 内の
市 町 村 や 観 光 協 会 ( 注 21)、 観 光 事 業 者 、 交 通 事 業 者 に お い て も 、 可 能 な 限 り 早 い 段
階で 外国語対 応を進める こ とがイン バウンドの誘 致に 効果 的であ る。
(注19)成田国際空港(株)と独立行政法人情報通信研究機構、株式会社フィートが独自に開発
した多言語音声翻訳アプリ。当アプリによる社会還元活動が評価され、2013 年8月には
第 11 回産学官連携功労者表彰総務大臣賞を受賞。
(注20)日本語、英語、中国語(繁・簡)
、韓国語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、オラン
ダ語、イタリア語、デンマーク語、フィンランド語、ロシア語、トルコ語、モンゴル語、
ミャンマー語、タイ語、ベトナム語、マレー語、インドネシア語、フィリピン語、アラ
ビア語、ウルドゥー語、ヒンディー語、シンハラ語、パラオ語)
(注21)公益社団法人千葉県観光物産協会のホームページにリンクがある県内の観光協会 39 団体
のうち、ホームページで多言語対応をしているのは7団体(全体の 18%)となっている
(2014 年8月末現在)
。
113
図 表 94 ピクトグラム (注 22) を活 用 した多 言 語 化 対 応 の例 (登 別 地 域 [北 海 道 ])
(出 所 )観 光 庁 「言 語 バリアフリー施 策 取 組 み好 事 例 集 ( 2012 年 3月 )」
図 表 95 多 言 語 対 応 を行 う対 象 ・範 囲 等
対象範囲
多言語対応の対象となる情報の種類
美
博
術
物
館
館
・
自
然
公
園
観
光
地
道
路
対象施設
公
共
交
通
機
関
(例)
禁止・注意を促す ・立入禁止、危険
(タイプA)
・禁煙、飲酒禁止
◎
◎
◎
◎
◎
基
本
ル
ー
ル
ら や致外
必
英地目国
要
語域標人
性
以特等の
が
外性、 来
高
のの施訪
い
表観設者
施
記点特や
設
のか性誘
用専
にら
る
供地
施
さ域
設
れ住
等
て民
いの
日本語
日本語
日本語
英語
英語
中国語・韓国
語、その他必要
とされる言語
・非常時等の情報提供
(例)
日本語
・駅名表示
英語
◎
◎
◎
◎
日本語
英語
中国語・韓国
語、その他必要
とされる言語
・路線図、停車駅案内
名称・案内・誘
導・位置を示す ・施設名称表示
(タイプB)
・駅構内図の表記
日本語
◎
・乗車券・入館券
・ICカードの使い方
(例)
展示物等の理解
のために文章で ・展示物の作品解説
解説をしている ・展示テーマの解説
(タイプC)
◎
○
○
・展示会全体の解説
△
△
日本語
日本語
英語
英語
日本語
中国語・韓国
語、その他必要
とされる言語
(注)1.出所:観光庁「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン(2014年3月)」
2.◎:場所を問わずよく見られる、○:場所により見られる、△:稀にしか見られない
3.白抜きの外国語は併記、それ以外の外国語は、視認性や美観に問題がない限り、表記を行うことが望ましい。
(注22)
「絵文字」
「絵単語」 などと呼ばれ、各種情報や注意を喚起するために表示される視覚記
号(サイン)の一つ。
114
図 表 96 自 治 体 による飲 食 店 等 の多 言 語 化 支 援 の例 (三 重 県 伊 勢 市 )
伊勢 市では、外国人観光客 の 来訪時 の 満足度を高 められる よう、商品メ ニ ュ
ーやパンフレットを英語表記のあるものに改修または作成する店舗を対象に
補助 金を交付 している。具 体的な取 組内容は以下 の通り。
対
≪伊 勢市おも てなし多言語 化促進事 業補助金 の概 要≫
・商品メニュー
・パンフレット、リーフレット(合計 500 部以上必要)
象
・看板、施設案内物(同時に商品メニューかパンフレット、リーフレッ
トの作成が必要)
対象となるお店
助成内容
対象となる経費
市内に店舗または事業所のある飲食店、宿泊施設、土産店など
補助金=対象となる経費×3分の2(限度額 20 万円)
同一年度内に1事業者1回限り
パンフレットなどの作成または改修にかかる経費。
(出 所)伊勢 市ホームペー ジ
115
d. バリアフリー・ユニバーサルデザイン化の推進
千 葉県は、 車いす利 用 者 や視覚障 がい者、 聴覚 障 がい者 、高齢者 、妊 産婦、幼児
連 れなどの 人が、安 心し て 外出し 、 各種活 動に 参加 でき るよう 、 県内 の様々な施設
のバ リアフリ ー情報を紹介 する「ち ばバリアフリ ーマップ 」を 作成 して いる。
「ち ばバリア フリーマップ」には、2014 年8月末 現在 で 1,627 件(うち スポーツ
施設 は 60 件)のバリアフ リー情報 が登録されて いる。同マップ では 、各施設 の駐車
場 や敷地内 通路、出 入口 、室内誘 導、昇降 設備 、飲食設 備、閲覧 設備 、子育て支援
設備 などのバ リアフリー化 の状況を 写真入りで紹 介してい る。
その 他にも 、我孫 子市が『バリ アフリー おでかけ マップ「らっ く楽!あ びこ 」』を
作成 したり 、船橋 市では「ふな ばしバリ アフリー ガイド 」を発 刊してい る( 図表 97)
が、バリアフ リー・ユニバ ーサルデ ザインの情報 発信は、今のところ一 部の自治 体・
地 域に限定 されてい る。 また、南 房総地域 など の観光地 では、多 目的 トイレ(オス
ト メイト付 き)の設 置が 少ないこ とも課題 とい える。障 がい者に やさ しい観光地と
な るために は、多目 的ト イレやお しゃれな パウ ダールー ムなどの 整備 が不可欠であ
る。
東 京オリ・ パラの開 催を バリアフ リー・ユ ニバ ーサルデ ザイン 化 推進 の好機とと
らえ 、積極 的に 取り 組む 地 域(市 町村)は 、
「高齢 者や障が い者が暮らし やすいま ち 」
と 市民や来 訪者 に認 識さ れ、 定住 促進につ な が るととも に、 障が い者 スポーツ大会
など を誘致す る際には強み にもなる 。
図 表 97 千 葉 県 のバリアフリー関 連 の実 施 事 業
名称
分類
作成者・運用者
バリアフリーおでかけマップ
「らっく楽!あびこ」
ホームページ
ふなばしバリアフリーガイド
PDF
NPO船橋障害者自立生活センター
そでらーマップ
PDF
袖ケ浦市社会福祉協議会
「袖ケ浦やさしい街づくりの会」
我孫子市
習志野バリアフリーガイド
ホームページ
習志野バリアフリーガイド製作委員会
鎌ケ谷市バリアフリーマップ
ホームページ
バリアフリーマップ検討委員会
ちば医療なび
ホームページ
千葉県医療情報提供システム (医療機関・
薬局のバリアフリー対応状況が検索可能)
ちば福祉ナビ
ホームページ
千葉県福祉施設等総合情報提供システム
(出所)千葉県ホームページ
116
地域ブランドの創出
a. 地域ブランドの創出による地域活性化
全 国の自治 体で地場 産業 の育成に 注力する 動き が広がっ ている。 農産 加工品や工
業 製品を“ ブランド 化” し“儲か る産業” に育 成しよう とするも ので ある。ブラン
ド 化の対象 は、特産 品開 発や地場 産業の育 成、 商品・工 業製品に 加え 、地域独自の
サ ービスや おもてな し等 も含まれ る。こう した 取 り組み は、県内 各地 で 実施が可能
で あり、か つ、関連 産業 のすそ野 が広いた め、 商工業者 から農林 水産 事業者、観光
関連 事業者ま で多様な主体 の参画が 可能である 。また 、地元 企業の育成(経 営支援)
の みならず 地域のイ メー ジアップ と活性化 に直 結するこ とから、 地域 づくりそのも
であ り観光振 興にも大きく 貢献する (図 表 98)。
地 域ブラン ドの定義 は様 々だが、 一般にブ ラン ドが「企 業が自社 の商 品を競争相
手 の商品と 差別化す るた めの名称 やロゴ、 マー ク」とさ れている こと から、企業を
地域 に置き換 え、
「 地域が自 地域の魅 力を他地域の 魅力と差 別化するため の名 称や ロ
ゴ 、マー ク」と定義するこ とができ る。換言すれ ば、
「他 の地域と差別 化された 地域
の 魅力」と いうこと もで きる。そ れでは、 この 「地域の 魅力」と は何 だろうか。一
言 でいえば 「ブラッ シュ アップさ れた地域 固有 ・独自の 地域資源 」で ある。この地
域 固有・独 自の地域 資源 を活用す るからこ そ他 地域との 差別化に なり 、かつ、それ
ら をブラッ シュアッ プす ることで 魅力度が 増す のである 。この地 域資 源とは、地域
の 歴史や文 化、自然 、自 然の恵み (農林水 産物 )とその 加工品、 産業 ・製品、生活
文 化などを 差し、都 市部 から農漁 村まで多 様な 地域特性 を有する 千 葉 県には、多様
な 地域資源 が豊富に 存在 している 。日頃、 地域 で何気な く接して いる ものが、来訪
者、特 に外国人 旅行者から 見ると非 日常的であっ たり、興味 の対象とな るのであ る。
ちば ぎん総合 研究所では、平 成 25 年度に 千葉県商 工会議所 連合会からの 委託を受
け 、商工会 議所等の 地域 ブランド 創出への 取組 動向に関 する調査 を実 施した。県内
外 10 カ 所の商工 会議所等 の事例を 調査・分析し た結果、各事例に共通 する取組 ポイ
ン トとして 、「ご 当地ら しさ、ス トーリー 性( 地域資源 等の関わ り)」と「 地域産業
の活 性化(6 次産業化、地 産地消、シティセール ス 、郷土 愛の醸成等 )」を 重視して
いる ことが分 かった (図 表 99)。現状、地 域ブラ ンドの対 象は、特産品 等の商品 や製
品 が中心と なってい るが 、観光地 や名所旧 跡、 地域の自 然や文化 をも 対象とし、情
報 発信して いくこと でリ ピーター やファン をた くさんつ くり、交 流と 消費と繰り返
し てもらう とともに 、ゆ くゆくは 二地域居 住や 定住を狙 うことが 重要 である。今後
は 、こうし た地域活 性化 に資する 地域ブラ ンド の創出に 、地域の 経済 団体と地元企
業、 自治体、 地域住民が一 体となっ て持続的に取 り組んで いくことが重 要である 。
東 京オリパ ラ開催が 決定 し、その 経 済波及 効果 の取り込 みが、観 光施 策の重点ポ
イ ントとし て全国い たる ところか ら聞こえ てく る。千葉 県は、競 技場 建設や大会運
営 予定され ていない ため 、観戦客 や観光客 を能 動的かつ 積極的に 県内 に誘引し、宿
泊 ・飲食・ 土産物等 の消 費を誘発 させる必 要が ある。今 後、東京 オリ パラ開催に向
け 、関係者 のみなら ず一 般の外国 人旅行者 の増 加も予想 される。 パッ ケージツアー
であ れば、その 旅行商品に 予め千葉 県の観光地が 組み込ま れていなけれ ばならな い。
ま た、今後 はFIT (個 人や少人 数でコー スや 日程・宿 泊施設な どを 自由に決めて
行 う旅行) の増加も 見込 まれ るの で、旅行 プラ ンを練る 際のガイ ドブ ック等に千葉
県 の観光地 や見どこ ろが 紹介され ている必 要が ある。ホ ームペー ジも 重要な情報ツ
ー ルなので 、そこに も千 葉県の観 光地や土 産品 が魅力的 に紹介さ れて いる必要があ
る 。そのた めには今 のう ちから地 域ブラン ド創 出に着手 し、強力 かつ 持続的に情報
発 信し続け 、認知さ れる ことが重 要である 。な お、情報 発信にあ たっ て大事なこと
は 、個々の 地域にお ける 取り組み を千葉県 全体 としてと りまとめ 、多 様かつ大きな
魅 力として 国内外に 発信 すること である。 ちば ぎん総合 研究所の ホー ムページでも
117
「千 葉ブラン ド応援コ ーナ ー(図表 100)」を設け ているの で、こうした 県内の地 域
ブラ ンド創出 への取り組み や県全体 の情報発信を 積極的に 応援していき たい。
図 表 98 地 域 ブランド創 出 による地 域 活 性 化 のイメージ
地域ブランド
特産品・
商品・製品
観光地・
名所旧跡
地域
(自然・文化)
↓
↓
↓
情報発信
販路開拓
情報発信
プロモーション
情報発信
プロモーション
↓
↓
↓
←
※地域資源
発掘・磨き上げ
←
地域の住民・
企業・自治体
↑
交流&コミ ュ ニ
ケーシ ョン
↓
地域の知名度向上・イメージアップ
↓
↓
↓
また買いたい
また来たい
また来たい
住んでみたい
↓
↓
↓
事業者の業績
・知名度向上
リピーター
ファンづくり
二地域居住
定住の促進
←
来訪者
⇒ファン
←
最終目標
地域活性化
←
(出所) ちばぎん総合研究所作成
図 表 99 地 域 ブランド創 出 の特 徴 ・ポイント
項目
取り組みのポイント
ブランド名
○地域を連想させる名称・印象に残る名称など
テ ーマ
○ご 当地らしさ
○ストーリ ー性・ 物語性( 地域特性との因果関係)
位置づけ・
取組目的
○地域産業の活性化 ( 含: 6 次産業化、 地産地消)
○地域づく り ・ 地域活性化
―地域のイメージ ア ッ プ・ シ テ ィセールス、 郷土愛の醸成
ブランド対象
○食品・加工食品(商品・土産品・農水産物)
○工業製品・工芸品・技術
○自然、歴史、文化、風習 (○企業)
メリット1
(情報発信)
○ホームページ ( 専用サイト・ コーナー) ・ 広報誌で情報発信
○ブランド品を紹介するカタログやパンフレットを作成
○マスコミの積極活用
メリット2
(販売促進)
○アンテナショップ・オフィシャルショップでの販売
○観光施設、宿泊施設の売店、コンビニでの販売
○各種市内イベントでの販売・PR
○ネッ トシ ョッ プでの販売( 含: リ ンク)
(出所) 全国の商工会議所等へのヒアリングをもとにちばぎん総合研究所が作成
118
図 表 100 ちばぎん総 合 研 究 所 ホームページ「千 葉 ブランド応 援 コーナー」
119
教育・文化・スポーツ振興
概要
東 京オ リ・ パラ のレ ガシ ーと して 、ス ポー ツや 文化 芸術 活動 (千 葉県 の文 化の 発
信 等)を通 して、千 葉県 内の教育 ・文化・ スポ ーツの底 上げを図 るこ とは重要な視
点で ある。
大 きな 取り 組み とし ては 、① 次世 代を 担う 人材 の育 成、 ②文 化・ 芸術 活動 の活 発
化 、③地域 のスポー ツ振 興があげ られるが 、と りわけ、 次世代を 担う 人材を育成す
る教 育部門と の連携は欠か せない 。千葉 県は、2010 年3月に「み んなで 取り組む“教
育 立県ちば ”プラン [千 葉県教育 振興基本 計画 ]」を 策定し、 3つの プロジェ クトに
よ り、子供 たちが郷 土と 国を愛し 、真の国 際人 として活 躍できる 「教 育立県ちば」
の実 現を目指 している(図 表 101)。本 プランの各 プロジェ クトと施策は、子供たち
に 対する教 育という 観点 からいず れも重要 性が 高く、前 向きに推 進す べきものであ
る が、東京 オリ・パ ラの 開催を大 きな発展 過程 の一里塚 として捉 え、 政策の優先度
を 検討すべ きである 。本 プランの なかで優 先的 に取り組 むべき施 策は 、① 歴史と伝
統 文化に親 しみ、郷 土と 国を愛す る心を育 てる 、②異文 化を理解 し、 国際コミュニ
ケ ーション 力のある 真の 国際人を 育てる 、 ③道 徳心を高 める実践 的人 間教育を推進
す る、④フ ェアプレ ーの 精神を育 てるスポ ーツ 、健康・ 体力づく りと 食育を推進す
る 、の4点 と考える 。こ れらの施 策を優先 的に 進めるこ とで、東 京オ リ・パラの教
育 ・文化・ スポーツ 関連 のレガシ ーが創造 され 、次世代 を 担う子 供た ちがそのメリ
ット を享受す ることができ る。
東 京オ リ・ パラ は、 子供 たち から 大人 まで が日 本と いう 国の 今後 の方 向性 を考 え
る絶 好の機会 であり、有効 に活用す べきである。
120
図 表 101 みんなで取 り組 む「教 育 立 県 ちば」プラン[千 葉 県 教 育 振 興 基 本 計 画 ](2010 年 3月 )
プロジェクトⅠ 過去と未来をつなぎ世界にはばたく人材を育てる
~夢・チャレンジプロジェクト~
1
志を持って、失敗を恐れずチャレンジする人材を育てる
2
歴史と伝統文化に親しみ、郷土と国を愛する心を育てる
(1)郷土と国の歴史や伝統文化等について学ぶ教育の推進
(2)文化に触れ、親しむ環境づくり
2020年東京オリ・パラ関連
で重要性が高い施策
及び連携すべき分野
②a
文化・芸術・学術
イベントの開催
(3)文化財の保存・継承
3
異文化を理解し、国際コミュニケーション力のある真の国際人を育てる
(1)多様な文化を認め合う国際社会の担い手の育成
(2)外国語教育の充実
①a
グローバルな
人材育成
(3)外国人児童生徒等の受入れ体制の整備
プロジェクトⅡ ちばのポテンシャル(潜在能力を生かした教育立県の土台づくり
~元気プロジェクト~
1
読書県「ちば」を推進する
2
多様な自然、産業、人材などを生かした体験活動を推進する
3
教育現場を重視し、教職員の質と教育力の高さでトップを目指す
4
道徳心を高める実践的人間教育を推進する
(1)道徳性、規範意識・社会貢献態度の育成
(2)自他ともに尊重し命を大切にする心の教育の推進
①b
障がい者への
理解促進
(3)豊かな人間関係づくりのためのコミュニケーション能力の育成
5
フェアプレーの精神を育てるスポーツ、健康・体力づくりと食育を推進する
(1)体力向上を主体的に目指す子どもの育成
(2)ちばの自然や恵みを生かした食育の推進
(3)「みるスポーツ」・「するスポーツ」の推進
(4)人々に夢と感動を与える競技力の向上
6
1人1人の特性に目を向けた特別支援教育を推進する
7
豊かな学びを支える学校づくり
8
安全・安心な教育環境の整備
プロジェクトⅢ 教育の原点として家庭の教育力を高め、人づくりのために力を
つなげる ~チームスピリットプロジェクト~
1
「親学」の導入など、家庭教育を支援する
2
学校教育と社会教育、国公立教育と私学教育、産・学・官、公と民などの
ネットワークを構築する
3
様々な困難を抱えている子どもとその家族を支援する取組を強化し、教
育のセーフティネットを確保する
121
③a
地域住民の健康づくり
③b
競争力のある
競技選手の育成・強化
アクションプラン
「 教育・文 化・スポ ーツ 振興」の アクショ ンプ ランとし て、①次 世代 を担う人材
の 育成、② 文化芸術 活動 の向上、 ③地域の スポ ーツ振興 、という 3つ の 方策が考え
られ る。
各プ ランの具 体的な取り組 み及びロ ードマップ( 行程表) は 図 表 102 の通り 。
図 表 102 「教 育 ・文 化 ・スポーツ振 興 」のアクションプランの体 系 図 及 びロードマップ
中期
短期
(年度)
2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
①次世代を担う人材の育成
グローバルな人材の育成と女性
a.
が活躍できる環境づくり
継続対応
b.障がい者への理解促進
継続対応
②文化芸術活動の向上
a.文化・芸術・学術イベントの開催
③地域のスポーツ振興
継続対応
a.地域住民の健康づくり
b.競争力のある競技選手の育成・
強化
122
長期
2021
以降
【参考】
「(5)教育・文化・スポーツ振興」関連の千葉県の主な事業(平成26年度当初予算)
事業名
新規
①次世代を担う人材の育成
グローバル人材プロジェクト事業
英語等外国語教育推進事業
国際交流推進事業
道徳教育推進プロジェクト事業
②文化芸術活動の向上
「県民の日」事業
ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉関連事業
千葉県少年少女オーケストラ育成事業
県立美術館「平山郁夫(仮称)」事業
文化財保存整備事業
③地域のスポーツ振興
めざせ東京オリンピックちばジュニア強化事業
千葉県競技力向上推進本部事業
○
○
(合 計)
(注)1.出所:千葉県ホームページ
2.主な事業を掲載
123
予算(百万円)
336
73
226
4
32
207
46
70
35
23
34
300
100
200
843
構成比(%)
一般会計=
100%
0.021
0.005
0.014
0.000
0.002
0.013
0.003
0.004
0.002
0.001
0.002
0.019
0.006
0.012
0.052
次世代を担う人材の育成
a. グローバルな人材の育成と女性が活躍できる環境づくり
東京 オリ・パラ の開催 を契 機と する 外国人の日本 に対する 関心の高まり もあって 、
訪 日外国人 の数が増 加傾 向となっ ている。 千葉 県は、成 田空港や 東京 ディズニーリ
ゾ ート、幕 張メッセ など の集客施 設を擁す るこ とから、 今後、県 民が 外国人旅行者
と接 する機会 の増加が見込 まれる。
外 国人旅行 者が日本 に来 て困った ことは、 4人 に1人が 「コミュ ニケ ーション」
を あげてい ることか ら、 日本人の 訪日外国 人に 対する応 対は十分 とは 言い難い。 東
京 オリ・パ ラの開催 を一 つの契機 として、 県民 の外国語 によるコ ミュ ニケーション
能 力の向上 を目指す 取り 組みが求 められる 。東 京オリ・ パラの開 催は 、次世代を担
う 子供たち が世界の 人々 と触れ合 える貴重 な機 会であり 、外国人 との コミュニケー
シ ョンが取 れるよう 英語 を中心に 語学力の 向上 に努める とともに 、異 文化に対する
理解 を深める 教育が必要で ある 。千葉県 が実施し た「 千葉県民 アンケー ト調査( 2010
年 3月実施 )」に よると 、グロー バル化の 進展 に伴い県 が取り組 むべ きことと して、
「学 校教育等 における国際 理解のた めの教育を充 実させる こと」が 50.3%で最多 と
なっ ている(図 表 103)。本アン ケート調 査が東 京オリ・パ ラ開催決定 の前に実 施さ
れた ことを考 慮すれば、同 分野にお ける県民の期 待は更に 高まっている 。
な お、上記 の通り、 外国 人とのコ ミュニケ ーシ ョンには 、語学力 や異 文化理解が
重 要だが、 あわせて 日本 や自分が 暮らす地 域( 郷土)の ことを良 く知 り、自信と誇
りを 持って相 手に伝えるこ とのほか 、女性が活躍 できる環 境づくりも重 要である 。
図 表 103 社 会 の国 際 化 (グローバル化 )が進 む中 で県 が取 り組 むべきこと
0
10
20
30
40
50
(%)
50.3
学校教育等における国際理解のための教育を充実させること
40.9
県内に住む外国人への情報提供や生活相談を充実させること
30.8
県民が主役となる国際交流・協力活動を促進すること
25.1
外国人観光客を増やす取組や国際的な会議・イベントを誘致すること
21.8
県内に住む外国人の生活を支援するボランティアを養成すること
19.3
外国の自治体と千葉県の交流を推進すること
15.9
県内企業の海外ビジネスの支援や外資系企業を誘致すること
2.8
その他
10.5
特にない
6.2
無回答
(出所)千葉県「千葉県民アンケート調査報告書(2010年3月)」
124
60
b. 障がい者への理解促進
千葉 県の身体 障がい者・知 的障がい 者数の直近 10 年 間の推移 をみると 、 03 年度
の 163 千人 から右肩 上がり の増加を 続け 、12 年度 には 214 千人(03 年度 比+ 31.2%)
とな っている( 図表 104)。将来 を展望し ても、高齢化の進 行(特に後 期高齢者 の増
加 )などか ら障がい 者数 は更に増 加してい くも のとみら れる。ま た、 加齢に伴って
身体 機能が低 下していくこ とを考慮 すれば、障が い者が暮 らしやすいま ちづくり は、
県全 体の課題 といえる。
東京 パラリン ピックでは、全 22 競技が予 定され ている。出場選手の障 がいの程 度
は 様々では あるが、 懸命 に頑張る 選手の姿 は、 オリンピ ック同様 、 見 るものに 大き
な感 動を与え る。世界で初 めて障 が い者による競 技大会を 主催し 、
「障 がい者ス ポー
ツの 父 」と呼ばれ るドイ ツ人医師 ルードヴィッ ヒ・グットマ ン は、「失 われたも の
を数 えるな 。残って いるも のを最大 限に生かせ 。」という名 言を残して いるが 、まさ
に パラリン ピックを 通じ た障がい 者の理解 促進 につなが る理念と いえ る。このよう
に 東京オリ ・パラ の 開催 を契機と して、 障 がい 者への理 解を深め ると ともに、障が
い者 や高齢者 が暮らしやす いまちづ くり を推進す る ことは 大きなレガシ ーとなる 。
千 葉 県 は 、「 障 が い の あ る 人 も な い 人 も 共 に 暮 ら し や す い 千 葉 県 づ く り 条 例 」 を
2007 年に 施行し、 障がい 者への誤 解や偏見及び 障がい者 の社会参加を 妨げる建 物・
施 設、制度 などの解 消に より、誰 もが暮ら しや すい社会 づくりを 推進 している。ま
た、13 年に は、県内事業 者等の「障 がいのある 人へのや さしい取組み 」を支援す べ
く取 組事例を 広く募集 し、応 募者 128 件のなかで 特に優れ た取 り組み 10 件 に認定書
を授 与した(図 表 105)。こうし た取り組 みは、事 業者や市 民の障がい 者に対す る理
解 の促進に とても有 効で あり、 2020 年 に向け て継続的 に実施す るこ とが望ま れる。
また 、千葉県 は、
「 みんな で取り組 む“教育立県 ちば”プ ランの施策で「人権を 尊重
し、あらゆる 不合理な差別 を許さな い教育の推進 」を掲げ ており、2020 年 に向けて 、
総 合的な学 習の時間 など を活用し 、子供た ちの 障がい者 へに対す る理 解促進を図る
こと が重要で ある。
図 表 104 身 体 障 がい者 ・知 的 障 がい者 手 帳 交 付 数 の推 移
250
214
(千人)
200
163
150
100
22
60
23
60
23
62
24
25
26
26
64
67
69
71
27
28
29
74
77
79
軽度
中度
重度
50
81
85
88
91
94
97
99
101
103
105
03
(年度)
04
05
06
07
08
09
10
11
12
0
(注)1.出所:千葉県「千葉県統計年鑑」
2.各年度とも年度末現在の数
125
図 表 105 「障 害 のある人 へのやさしい取 組 み」に認 定 された取 組 み一 覧 ( 2013 年 度 )
№
活動名
1
障害のある人への不動産 賃貸
やグループホーム等の設 立支
援
団体名・事業者名
取組内容
長野建設(株)
単 身 の 知 的 障 害 や 精神 障害 のあ る人 が地 域で
生 活 で き る よ う に 、賃 貸物 件の 仲介 やグ ルー
プ ホ ー ム 設 立 支 援 を行 うと とも に、 地域 住民
か ら の 居 住 者 に 関 する 苦情 等へ の対 応な ども
行っている。
滝口仲秋
難 病 と 闘 い な が ら 、車 いす ユー ザー の視 線で
高 齢 者 や 障 が い 者 が安 心し て外 出で きる よう
に 、 施 設 や 商 店 等 のバ リア フリ ー度 調査 を行
い 、 県 南 地 域 を 広 く網 羅し た福 祉マ ップ を作
成した。(計6冊)
2
夷隅郡市等の福祉マップ作成
3
様 々 な 理 由 で 就 労 に困 難を 抱え てい る人 たち
社会福祉法人
働きたいのに働きにくい 人の
の 、 一 人 ひ と り の 個性 や事 情を 尊重 した 就労
生活クラブ風の村ユニ
ための「ユニバーサル就労」
支 援 シ ス テ ム の 整 備と 誰に とっ ても 働き やす
バーサル就労支援室
い職場環境づくりを行っている。
4
車 両 は 全 て 中 扉 乗 降口 にス ロー プ版 が装 着で
き る 車 両 で 、 車 椅 子介 助の 技術 研修 を受 けた
障 害 の あ る お 客 様 に 配 慮 す る 京成トランジットバス 運 転 手 が 運 転 し て いる 。ま た、 筆談 用メ モを
バス会社
(株)
車 内 に 備 え 付 け る など 、障 害の ある 人が バス
を 利 用 す る 際 に 不 便が ない よう に配 慮を 行う
ことで社会参加を促している。
5
対 面 式 セ ミ セ ル フ レジ 導入 など 、備 品を 工夫
障害のある人もない人も 共に
NPO法人
し て障 害の ある 人を スー パー で雇 用し てい
働 き 、 相 互 に 交 流 を 深 め る 場 ぽぴあC&Cスーパー る 。 ま た 、 地 域 住 民が コミ ュニ ケー ショ ンの
の提供
のぞみ野マルシェ
場 と し て 利 用 で き るス ペー スを 無料 で提 供し
ている。
6
障害のある人にもやさし いタ
クシー
(有)武藤自動車
ムトータクシー
障 害者 や高 齢者 等の 特性 やニ ーズ を理 解し
て 、 円 滑 な コ ミ ュ ニケ ーシ ョン と適 切な 対応
を 行 う と と も に 、 一般 タク シー と同 様の 料金
で 福 祉 兼 用 車 両 に よる 安全 ・安 心・ 快適 な移
送 を 目 指 し た 運 行 を行 って いる 。( 乗務 員の
75%は2級ホームヘルパー有資格)
7
高校生と行う知的障害児 ・者
サッカー教室と交流サッカー
千葉県知的障害者
サッカー連盟
高 校 サ ッ カ ー 部 員 の協 力( ボラ ンテ ィア )を
得 て 、 障 害 の あ る児 ・者 に1 対1 でサ ッカ ーを
教 え る サ ッ カ ー 教 室や 交流 サッ カー 大会 を開
催している。
いしざき歯科
職 員 は 全 員 手 話 が でき るが 、筆 談用 ボー ドも
活 用 し コ ミ ュ ニ ケ ーシ ョン をと って いる 。診
療 予 約 は F A X や 電子 メー ルを 活用 し、 重要
事 項 は 文 書 を 提 供 する など 障害 に配 慮し た診
療を行っている。
株式会社千葉銀行
福 祉 車 両 用 駐 車 ス ペー スの 設置 や視 覚障 害者
対 応 A T M の 設 置 、預 金取 引明 細の 点字 通知
サ ー ビ ス な ど 障 害 のあ る人 に配 慮し た取 組み
に 努 め て き た 。 2013 年 3月 から は視 覚障 害の
あ る人 の利 便性 向上 に向 けて 、「 点字 IC
キャッシュカード」の取り扱いを開始した。
(有)やすらぎの郷
障 害の ある 人が 労働 で得 た収 入に 喜び を感
じ 、 友 人 等 と 喜 び を分 かち 合え る楽 しさ を味
わ う こ と が で き る よう に就 労の 場を 提供 して
い る 。 ま た 、 就 労 準備 とし て職 場体 験を 受け
入れている。
8
9
10
聴覚障害のある人に配慮 した
歯科診療所
障害をお持ちの方に配慮 した
取組み
障害者雇用と職場体験の 受入
れ
(出所)千葉県ホームページ
126
文化芸術活動の向上
a. 文化・芸術・学術イベントの開催
千 葉県民の 文化・芸 術・ スポーツ に関する 満足 度(満足 +どちら かと いえば満足
の合 計)を みると 、
「地域 が誇る文 化芸術が県内 外に広く 知られている 」の満 足度が
12.7%で最も 低くなってい る(千葉県 民アンケー ト調査、図 表 106)。東京オ リ・パ
ラ の開催に 向けて 、 多様 な千葉県 の文化 ・ 芸術 ・学術 等 を発信し てい くこと は、県
民の 満足度を 高めるうえで も 重要な テーマといえ る。
千葉 県は千葉 の魅力 を広く 伝えるた めに「 ちば遺 産 100 選(1983 年選定 )」や「房
総の 魅力 500 選」及び「 ち ば文化的 景観( 60 地区 )」
( 2008 年選定 )を選 定してい る
(図 表 107)。また 、千葉 県のホー ムページには 、千葉県 伝わる民話( 282 話) や千
葉県 のゆかり の人物( 136 人 )も所在 地別に整理 されてい る(図表 108)。
東 京オリ・ パラの開 催を 契機に、 千葉県の 地域 ごとに、 地元が誇 る伝 統文化や文
化遺 産、自然 景観、民話、ゆかりの 人物などにつ いて、今 一度クローズ アップし て、
学 校教育や 生涯学習 ある いは自治 体のホー ムペ ージや広 報誌など を通 じて地域住民
で 共有する とともに 、広 く世界に 発信する よう な取り組 みを各地 域の 主導で進めて
は どうか。 東京オリ ・パ ラを控え て増加す る外 国人旅行 者とのコ ミュ ニケーション
に おいては 、語学力 も大 事だが、 何といっ ても 自分が暮 らす地域 の魅 力を自信と誇
り を持って 伝えるこ とが 重要であ る。アフ ター オリンピ ックでは 、各 地域の 魅力ア
ップ とともに 、市民の郷土 愛が高ま るレガシーが 期待でき る。
図 表 106 文 化 ・芸 術 ・スポーツ部 門 の市 民 満 足 度
0%
【凡
例】
音楽や芸術など文化・芸術の活動を通じた
住民同士の交流の機会がある
20%
どちらかと
いえば
満足
満足
4.6
優れた文化・芸術に触れ、
4.0
感動できるような機会がある
40%
23.0
どちらかと
いえば
不満
19.9
21.1
地域が誇る文化や芸術が県内外に
2.3 10.4
広く知られている
60%
不満
9.7
23.6
23.5
祭りや文化財、伝統芸能などの地域文化や
伝統が守られ、次の世代へと継承されている
6.0
29.0
地域でスポーツや運動に参加できる
機会がある
5.2
32.4
トップレベルのスポーツ・運動選手の
競技を見る機会がある
5.4
18.0
(出所)千葉県「千葉県民アンケート調査(2010年3月)」 127
わからない
39.3
14.5
32.6
13.5
18.3
45.5
9.1
20.4
20.6
80%
22.2
無回答
3.6
4.1
4.7
33.7
11.3
100%
26.8
30.0
3.9
4.0
3.8
図 表 107 ちば遺 産 100選
地域
1
種別
名 称
地域
種別
名 称
九十九里地域の神楽と獅子舞 北之幸谷の獅子舞(東金市)・鎌数の神楽
伝
(旭市)・永田旭連の獅子舞(大網白里町)
伝 浅間神社の祭礼と神楽(千葉市) 50 伝
50
伝 下総三山の七年祭り(千葉市・船橋市・習志野市・八千代市)
51
文 加曽利貝塚(千葉市;国指定)
52
文 青木昆陽の甘藷試作地(千葉市)
53
文 旧神谷伝兵衛稲毛別荘(千葉市;国登録)
54
文 中山法華経寺の日蓮筆『立正安国論』(市川市;国宝)
55
文 中山法華経寺の伽藍(市川市;国指定)
56
自 検見川の大賀蓮(千葉市)
57
自 葛飾八幡宮の千本イチョウ(市川市;国指定)
58
10
自 三番瀬と谷津干潟(市川市・船橋市・習志野市・浦安市)
59
11
伝 松戸の万作踊り(松戸市)
60
12
伝 野田のつく舞(野田市)
61
伝 野田のばっぱか獅子舞(野田市)
62
文 幸田貝塚出土品(松戸市;国指定)
63
文 旧徳川家松戸戸定邸と庭園(松戸市;国指定)
64
文 野田の醤油生産と髙梨氏庭園(野田市;国指定)
65
文 北ノ作1・2号墳(柏市)
66
文 利根運河(流山市)
67
文 19 文相馬郡衙正倉跡(我孫子市)
68
文 下総小金中野牧の捕込跡(鎌ヶ谷市;国指定)
69
自 浅間神社の極相林(松戸市)
70
自 柏市内、手賀沼上流域の森林と水辺(柏市)
71
23
自 鎌ケ谷市内の社叢林 八幡春日神社・根頭神社の森(鎌ケ谷市)
72
24
伝 武術 立身流 (佐倉市)
73
文 成田山新勝寺の伽藍(成田市;国指定)
74
文 南羽鳥中岫第1遺跡第1号土坑出土遺物(成田市;国指定)
75
文 旧堀田家住宅と庭園(佐倉市;国指定)
76
文 旧川崎銀行佐倉支店(佐倉市)
77
文 鹿山文庫関係資料(佐倉市)
78
文 佐倉順天堂(佐倉市)
79
文 本佐倉城跡(佐倉市・酒々井町;国指定)
80
文 清戸の泉(白井市)
81
文 松虫寺の薬師如来像(七仏薬師)(印旛村;国指定)
82
文 龍角寺と銅造薬師如来坐像(栄町;国指定)
83
文 岩屋古墳と龍角寺古墳群(栄町・成田市;国指定)
84
自 麻賀多神社の森(成田市)
85
自 清澄の大スギ(鴨川市;国指定)
37
自 木下貝層(印西市;国指定)
86
自 鴨川の枕状溶岩(鴨川市)
38
伝 佐原の山車行事(香取市;国指定)
87
伝 中島の梵天立て(木更津市)
伝 香取神宮の神幸祭とおらんだ楽隊(香取市)
88
伝 武術 天真正伝香取神道流(香取市・成田市・酒々井町)
89
(
香
取
市
・
神
崎
町
・
東
庄
町
伝 笹川の神楽(東庄町)
90
文 香取神宮の本殿と楼門(香取市;国指定)
91
文 香取神宮の海獣葡萄鏡(香取市;国宝)
92
文 良文貝塚の香炉型顔面付土器(香取市)
93
文 城山一号古墳の出土品(香取市)
94
)
文 伊能忠敬旧宅と遺品(香取市;国指定)
95
自 府馬の大クス(香取市;国指定)
96
自 香取神宮の森(香取市)
97
自 神崎森・神崎の大クス(神崎町;神崎の大クス:国指定)
98
2
3
4
5
6
7
8
9
干
潟
の
海
岸
と
谷
津
田
景
観
ゾ
ー
ン
13
14
15
16
17
18
19
20
利
根
川
・
江
戸
川
と
水
運
の
ゾ
ー
ン
21
25
27
28
29
30
31
32
33
34
35
印
旛
沼
の
恵
み
と
ニ
ュ
ー
タ
ウ
ン
の
ゾ
ー
ン
36
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
(
松
戸
市
・
野
田
市
・
流
山
市
・
我
孫
子
市
・
鎌
ヶ
谷
市
)
22
26
(
千
葉
市
・
八
市
千
川
代
市
市
・
・
船
浦
橋
安
市
市
・
)習
志
野
市
・
香
取
の
海
と
水
郷
、
香
取
神
宮
・
社
農
林
ゾ
ー
ン
(
成
田
市
・
佐
倉
市
・
四
街
酒道
々市
井 ・
町八
・ 街
栄市
町 ・
)印
西
市
・
白
井
市
・
富
里
市
・
九
十
九
里
浜
(
海
岸
平
野
)
と
地
引
漁
業
・
水
産
業
の
ゾ
ー
ン
風
光
明
媚
な
海
山
と
古
寺
、
城
ゾ
ー
ン
(
銚
多
子
古
市
町
・
・
東
九
金
十
市
九
・
里
旭
町
市
・
・
芝
匝
山
瑳
町
市
・
・
横
山
芝
武
光
市
町
・
・
大
白
網
子
白
町
里
)市
・
伝 九十九里大漁節 (九十九里町)
伝 広済寺の鬼来迎(横芝光町;国指定)
文 常灯寺の木造薬師如来坐像(銚子市;国指定)
文 粟島台遺跡出土の椰子の実容器と琥珀(銚子市)
文 大原幽学遺跡旧宅・墓および宅地耕地地割(旭市;国指定)
文 飯高檀林跡《飯高寺》(匝瑳市;講堂・鼓楼・鐘楼・総門:国指定)
文 宮谷県庁跡(大網白里町)
文 芝山古墳群と埴輪(芝山町・横芝光町;古墳群:国指定)
自 犬吠埼白亜紀浅海堆積物とアンモナイト化石(銚子市;国指定)
自 渡海神社の極相林(銚子市)
自 屏風ヶ浦(銚子市)
自 食虫植物群落(東金市・山武市;国指定)
自 山武市のクマガイソウ(山武市)
(
茂
原
市
・
長
勝
柄
浦
町
市
・
・
長
い
南
す
町
み
・
市
大
・
多
一
喜
宮
町
町
・
・
御
睦
宿
沢
町
町
) ・
長
生
村
・
伝 上総十二社祭り(茂原市・いすみ市・一宮町・睦沢町・長生村)
文 妙楽寺の大日如来坐像(睦沢町;国指定)
文 長柄横穴群(長柄町;国指定)
文 笠森寺観音堂(長南町;国指定)
文 渡辺家住宅(大多喜町;国指定)
文 大多喜藩初代藩主の本多忠勝像(大多喜町)
文 上総大多喜城本丸跡(大多喜町)
自 ミヤコタナゴ(千葉県内;国指定)
自 鶴枝ヒメハルゼミ発生地(茂原市;国指定)
自 太東海浜植物群落(いすみ市;国指定)
自 笠森寺自然林(長南町;国指定)
伝 安房やわたんまち(館山市)
伝 吉保八幡のやぶさめ(鴨川市)
黒
潮
と
山
の
恵
み
ゾ
ー
ン
(
館
山
市
・
鴨
川
市
・
南
房
総
市
・
鋸
南
町
)
伝 白間津のオオマチ行事(南房総市;国指定)
那古寺観音堂・多宝塔及び銅造千手観音立像 (館山市;銅造千手観音立
像:国指定)
館山市内の洞穴遺跡 大寺山洞穴・鉈切洞穴・安房神社洞窟遺跡(館山
文
市)
文
文 館山市内の戦争遺跡群(館山市)
文 里見氏関係城郭群(館山市・南房総市)
文 嶺岡山系の牧遺構(鴨川市)
文 波の伊八と後藤の宮彫り彫刻(鴨川市)
自 沼のサンゴ層(館山市)
伝 上総掘り技術と同用具(木更津市・袖ケ浦市;国指定)
東
京
湾
を
望
む
上
総
丘
陵
の
ゾ
ー
ン
(
木
更
津
市
・
市
原
市
・
君
津
市
・
富
津
市
。
袖
ケ
浦
市
)
文
長須賀古墳群(金鈴塚古墳)と出土遺物 (木更津市;金鈴塚古墳出土遺
物:国指定)
文 小櫃川流域の古墳時代前期前方後円墳(木更津市・君津市)
文 飯香岡八幡宮の社殿と宝物(市原市;本殿:国指定)
文 王賜銘鉄剣(市原市)
文 神門5号墳・神門3号墳出土遺物(市原市)
文 上総国分僧寺・尼寺と出土遺物(市原市;僧寺跡・尼寺跡:国指定)
文 姉ヶ崎古墳群(市原市)
文 内裏塚古墳群と出土遺物(富津市;内裏塚古墳:国指定)
自 三石山自然林(君津市)
自 高宕山のサル生息地(君津市・富津市;国指定)
(注)1.出所:千葉県ホームページ。
99
自 竹岡のヒカリモ発生地(富津市;国指定)
2.伝:伝統文化 文:文化遺産 自:自然遺産
100
自 大福山自然林(市原市)
128
図 表 108 千 葉 県 の民 話 及 びゆかりの人 物
主なもの
掲載数
名称・氏名
酒の井(酒々井町の由来)
民話
282
概要
親孝行の息子が汲むと井戸の水が酒
酒々井町
に。
龍角寺の七不思議
栄町
銚子大漁節
銚子市
薬王寺の薬師如来
匝瑳市
十二天神社弓掛松
睦沢町
本多忠朝と駒返し坂
大多喜町
八犬伝と白浜
ゆかりの
人物
所在地
印旛沼に雨を降らせた龍のその後など。
元和元年(1864)の豊漁をきっかけにつく
られる。
富岡にある薬王寺の薬師如来にまつわ
る話。
源頼朝が弓を掛けたという。
大坂夏の陣に出陣した本多忠朝と「駒返
し坂」の言われ。
南総里見八犬伝のモデルとなった里見
南房総市
氏と白浜の深いつながり。
浮島伝説
鋸南町
きみさらず伝説
木更津市 弟橘媛の悲恋の伝説。
近藤勇
流山市
志賀直哉
我孫子市
北原白秋
市川市
伊能忠敬
香取市
徳川家康
東金市
136
高村光太郎
日本書紀と高橋氏文書に見える浮島。
最後に陣を敷き、ここで捕えられる。
大正4~12年まで居住。数々の名作を発
表。
大正5年(1916)閑静な場所を求めて真
間に移り住む。
我が国最初の実測日本地図を作成。
鷹狩のため東金御殿(現東金高校)を造
営。
昭和9年に妻の千恵子が九十九里浜で
九十九里町
病気療養。
芥川龍之介
一宮町
青木繁
館山市
武志伊八郎伸由
鴨川市
早川雪洲
南房総市 日本人最初のハリウッドスター。
(注)1.出所:千葉県ホームページ。
2.主なものは任意選定。
129
大正5年(1916)に滞在。
明治37年(1904)の夏に滞在し「海の幸」
を描く。
宮彫刻師「波の伊八」と呼ばれた名人。
市内の打墨で生まれる。
地域のスポーツ振興
a. 地域住民の健康づくり
千葉 県民の文 化・芸術・ス ポーツ部 門の市民満足 度をみる と、
「 地域で スポーツ や
運動 に参加で きる機会があ る」 が 37.6% で最も 多くなっ ている(図 表 109)。一方 、
「ト ップレベ ルのスポーツ・運動選手 の競技を見 る機会が ある」は不満 が 42.8%と
満足 (23.4% )を大きく上 回ってい る。
東 京オ リ・ パラ の開 催に より 、世 界ト ップ レベ ルの 競技 を直 接見 る機 会に も恵 ま
れ ることか ら、各種 スポ ーツに対 する県民 (子 どもから 大人、健 常者 と障がい者の
区 別なく) の興味・ 関心 の高まり が期待で きる 。 東京オ リ・パラ を地 域住 民の健康
増 進の好機 ととらえ 、ス ポーツを 通じた健 康意 識の向上 やスポー ツ交 流を通した地
域 のコミュ ニケーシ ョン の広がり などに結 びつ ける取り 組みを推 進す ることが求め
ら れる。ス ポーツへ の参 加機会の 増加によ り、 元気な高 齢者が増 える ことは、医療
や福 祉にかか る経費の削減 効果も期 待できる。
図 表 109 文 化 ・芸 術 ・スポーツ部 門 の市 民 満 足 度
0
10
20
30
40
(%)
37.6
地域でスポーツや運動に参加できる機会がある
31.7
祭りや文化財、伝統芸能などの地域文化や
伝統が守られ、次の世代へと継承されている
35.0
27.4
音楽や芸術など文化・芸術の活動を通じた
住民同士の交流の機会がある
27.6
29.6
満足
不満
優れた文化・芸術に触れ、
感動できるような機会がある
25.1
38.1
トップレベルのスポーツ・運動選手の
競技を見る機会がある
23.4
42.8
地域が誇る文化や芸術が県内外に
広く知られている
12.7
37.0
(出所)千葉県「千葉県民アンケート調査(2010年3月)」 130
50
b. 競争力のある競技選手の育成・強化
東京 オリ・パラ の各競技に おいて、千 葉県出身あ るいは千 葉県に縁のあ る選手が
活 躍するこ とは、東 京オ リ・パラ に対する 県民 の関心を 一層高め 、同 大会の盛り上
がり を牽引す る効果がある 。
千葉県は、オリンピック出場を目指すジュニア世代の選抜選手強化支援として、
平成 26年度 に「め ざせ東 京オリン ピックちばジ ュニア強 化事業(予算 1億円 )」を
推進 しており(図表 110)、次世代を 担う若きアス リートの 育成・強化に 期待した い。
図 表 110 「めざせ東 京 オリンピックちばジュニア強 化 事 業 」の概 要
対
象
東 京 オ リ ン ピ ッ ク 実 施 28 競 技 の ジ ュ ニ ア 世 代( 全 国 上 位・関 東 上 位 レ ベ ル )
( 平 成 26 年 度 : 12 歳 ~ 22 歳 を 想 定 )
期
間
2014 年 ~ 2018 年 の 5 年 間
実施内容
・各競技団体が作成した競技力向上計画に基づく取組に対して助成
(計画の例)日本代表メンバー輩出に向けた強化5ヶ年計画
(取組の例)
○海外遠征の実施 ○全国大会遠征費補助 ○競技用具の整備
○全国トップレベル指導者を招聘した講習会の実施 等
・ 補 助 率 1 0 /1 0 ~ 1 /2
131
安心・安全な まちづくりの推進
概要
東京 オリ・パ ラが開催され る 2020 年は、 日本 社 会にとっ て 新しい時代 を切り拓
く 年となる 。すなわ ち、 東京都の 人口が減 少に 転じ、日 本 の全都 道府 県で人口が減
少 す る ほ か 、 後 期 高 齢 者 ( 75 歳 以 上 ) の 割 合 が 15% を 上 回 り ( 20 年 の 高 齢 化 率
29.1%)、生産年齢 人口( 15~64 歳)の割 合は 54.7% と終戦直 後(1945 年:58.1%)
の 水準を下 回る。こ のよ うな 世界 が初めて 経験 する 超高 齢社会の もと で、千葉県が
持続 的な発展 を続けるため には、可能 な限り早い 段階か ら 2020 年の社 会を想定 しつ
つ、 安心・安 全なまちづく りに取り 組むこと が不 可欠であ る。
≪持 続可能な まちづくり の 推進≫
人 口減少に 起因する まち の 地域活 力の低下 は、 今後数十 年の間に ゆっ くりと進行
し ていくた め、今後 のま ちづくり は中長期 的な 視点に 立 った持続 可能 なまちづくり
を 推進する ことが不 可欠 になる。 都市部と 郡部 では、地 域特性や 抱え ている課題、
人 口減少や 高齢化 の 程度 が異なる ため対応 すべ き取り組 み も異な る。 都市部 では、
駅 前地区な どの再開 発 時 がコンパ クト なま ちづ くり の好 機となる 一方 、 南房総地域
な どの郡部 で は、「気候 が温暖で 過ごしや すい 」といっ た自然条 件や 、「圏 央道や東
京 湾アクア ラインを 使っ て簡単に 都心に出 かけ られる 」 などの地 理的 な強み を活か
した 「シルバ ータウン」 を 形成する ポテンシャル がある。
商 店街及び 商業施設 は、 地域コミ ュニティ の活 性化や防 災・防犯 活動 への取り組
み 、高齢者 の生きが いづ くりの場 の提供や バリ アフリー 化、子育 て支 援など地域住
民 の生活を サポート する ような地 域貢献活 動に 率先して 取り組み 、地 域に受け入れ
られ 、地域と 共存すること が必要で ある。
ま た、地球 温暖化防 止や 大災害時 の備え及 び新 たな産業 振興の観 点か ら、地域に
賦存 する太陽 光や風力等の 再生可能 エネルギーを 活用した「 エネルギー の地産地 消」
へ の取り組 みも有効 であ る。これ らの取り 組み は、地域 経済の活 性化 につながるこ
と から、自 治体や企 業、 地域住民 が一体と なっ てまちづ くりの視 点で 取り組むこと
が重 要である 。
≪防 災・防犯 力の強化≫
千 葉県経済 が 東日本 大 震 災を教訓 として持 続的 な発展を 遂げるた めに は、世界に
向 けた放射 能汚染の 風評 被害の払 拭や抜本 的な 液状化・ 津波対策 を着 実に進めると
と もに、道 路や空港 、港 湾、物流 施設 、工 業団 地、駅舎 建て替え 、駅 前地区の再開
発 、大型商 業施設の 新設 、大型マ ンション 建設 など目白 押しの開 発プ ロジェクトを
活 用し、震 災からの 復旧 ・復興 を 地域の活 性化 につなげ ていく必 要が ある。 また、
自 治体や関 連団体( 町内 会など) が中心と なっ て、 有事 の際に 助 け合 える地域コミ
ュ ニティを しっかり と 形 成するこ と は「減 災」 に向けた 取り組み とし て も重要性が
高い 。
≪医 療・介護 ・ヘルスケア 体制の充 実≫
将 来の県内 医療を展 望す ると、高 齢者の絶 対数 が増える 都市部を 中心 に大幅な医
師 ・看護師 不足と病 床不 足が予想 される。 都市 部の医療 ・福祉の 崩壊 を回避するた
め に、高齢 社会とい う現 実を直視 した長期 的な ビジョン に基づい て、 救急医療や在
宅 医療を行 える病院 の誘 致を積極 的に進め ると ともに、 医療・介 護・ ヘルスケアを
担う 人材の育 成・確保が求 められる 。
132
≪子 育て環境 の充実≫
出 産・子育 て支援は 、国 や自治体 、企業、 家庭 などが各 々対策を とっ てきたが、
現 在の少子 化問題は 、晩 婚化や若 年層の非 正規 雇用の増 加など、 複数 の社会構造的
な要 因が重な っている。従 って、政府 は就業支援 や所得控 除の拡大など の経済支 援、
自 治体は保 育所の拡 充な ど共働き をしやす い環 境整備、 企業は育 児休 業取得や短時
間 勤務によ る継続雇 用 等 のワーク ライフバ ラン スの推進 、家庭は 男性 の育児参加、
と いったよ うに役割 分担 を明確化 し、社会 全体 が一体と なって総 合的 かつ継続的に
出産 ・子育て 世代を支える 必要 があ る。
アクションプラン
「 安心・安 全なまち づく りの推進 」 のアク ショ ンプラン として、 ①コ ンパクトシ
テ ィ・スマ ートシテ ィの 推進、② 防災・防 犯力 の強化、 ③医療・ 介護 ・福祉環境の
充実 、④子育 て環境の充実 、という 4つの 方策が 考えられ る。
各プ ランの具 体的な取り組 み及びロ ードマップ( 行程表) は 図 表 111 の通り 。
図 表 111 「安 心 ・安 全 なまちづくりの推 進 」のアクションプランの体 系 図 及 びロードマップ
短期
(年度)
中期
長期
2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
2021
以降
①持続可能なまちづくりの推進
a.コンパクトシティ・スマートシティ
の推進
b.商店街・商業施設による地域貢
献活動の推進
c.地域エネルギー創出によるまち
づくり
超長期で推進
②防災・防犯力の強化
a.放射能汚染・液状化・津波対策
など災害対策の推進
継続対応
b.地域の防災力・防犯力の向上
③医療・介護・ヘルスケア体制の充実
a.救急医療体制の充実及び在宅
医療の推進
b.医療・介護・ヘルスケアを担う人
材育成及び連携体制の構築
継続対応
継続対応
①子育て環境の充実
a.安心して子育てができる環境整
備
継続対応
133
【参考】
「(4)安心・安全なまちづくりの推進」関連の千葉県の主な事業(平成26年度当初予算)
事業名
①持続可能なまちづくりの推進
人口減少・少子高齢化に対応した施策検討事業
住宅用省エネルギー設備等導入促進事業
再生可能エネルギー等導入推進基金事業
地域主導型新エネルギー活用プロジェクト支援事業
海洋再生可能エネルギー導入・産業創出研究事業
②防災・防犯力の強化
地籍調査事業(災害復旧の迅速化支援)
放射能モニタリング調査事業
新規
○
○
○
指定廃棄物対策事業(放射能物質を含むごみ焼却灰関連)
農林水産物等放射性物質対策事業
地震被害想定調査・減災対策検討等事業
大規模災害時における応援受入計画策定事業
防災緊急情報の即時発信事業
海外津波対策事業
県立学校耐震化推進事業
市立学校耐震化緊急促進事業
県有施設・インフラの耐震化の推進
施設の長寿命化の推進
地域防災力向上事業
○
○
○
○
地域住民による自発的な防災ネットワークづくり支援事業
消防学校・防災研修センター整備事業
○
コンビニ防犯ボックス設置等モデル事業
③医療・介護・ヘルスケア体制の充実
医師確保関係事業
○
保健師等修学資金貸付事業
○
病院内保育所運営・施設整備事業
看護師養成力の強化による看護師確保対策
救命救急センター運営費補助、施設設備整備費補助
東千葉メディカルセンター助成事業
定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービス支援事業 ○
サービス付き高齢者向け住宅整備補助事業
○
老人福祉施設整備事業補助
障害者就業・生活支援センター事業
障害者グループホーム等に対する支援
④子育て環境の充実
子育て応援!チーパス事業
企業内保育所の整備促進に係るモデルケースの構築
○
保育所の整備促進
保育士人材確保等事業
保育対策等促進事業
すこやか保育支援事業
放課後児童クラブ関連事業
放課後子ども教室関連事業
子ども医療費助成事業
(合 計)
(注)1.出所:千葉県ホームページ
2.主な事業を掲載
134
予算(百万円)
1,322
10
500
802
9
1
29,738
578
17
170
25
30
10
45
2,400
8,469
954
5,080
11,849
4
12
73
22
5,850
608
168
471
820
717
718
27
120
1,594
159
449
17,807
25
3
6,478
704
1,441
350
2,032
73
6,700
54,717
構成比(%)
一般会計=
100%
0.082
0.001
0.031
0.050
0.001
0.000
1.842
0.036
0.001
0.011
0.002
0.002
0.001
0.003
0.149
0.525
0.059
0.315
0.734
0.000
0.001
0.005
0.001
0.362
0.038
0.010
0.029
0.051
0.044
0.044
0.002
0.007
0.099
0.010
0.028
1.103
0.002
0.000
0.401
0.044
0.089
0.022
0.126
0.005
0.415
3.389
持続可能なまちづくり の推進
a. コンパクト& スマートシティの推進
東 京オリ・ パラでは 、わ が国で超 高齢化社 会の あり方の 手本にな るよ うな先進的
な取 り組みを 世界に向けて 発信する ことが必要と なる。
日本 創成会議 によると、千葉 県内 54 市町 村のう ち 26 市町が 2040 年にか けて子供
を産 み育てる 女性( 20~ 39 歳)が 半減し、消滅 する可能 性があるとい う。これら の
市 町では、 人口の加 速度 的な減少 による税 収減 や産業の 衰退、ま ちの 賑わい喪失な
ど から一つ の自治体 とし て存続が 困難にな るリ スクを抱 えている 。ま た、 木更津市
以 北 の 臨 海 部 及 び 近 東 地 域 に 位 置 す る 自 治 体 で は 、 20~ 39 歳 の 女 性 の 同 減 少 率 が
50% 以下と推 計されている ものの、人 口が減少フ ェーズに 入ることは例 外ではな く、
高 齢者の急 増への対 応が 深刻な問 題となる 。人 口減少に 起因する 地域 の活力の低下
は 、今後数 十年の間 にゆ っくりと 進行して いく ため、 今 後のまち づく りは中長期的
な視 点に立っ た持続可能な まちづく り を推進する こと が必 要不可欠にな る 。その際 、
都 市部と郡 部では 、 地域 特性や 抱 えている 課題 、人口減 少の程度 が異 なる ことから
対 応すべき 取り組み は異 な ってい る が、多 様な 価値と地 域特性が 共存 する多極集中
型の コンパク トシティ ( 注 23) を 目指すこ とが成功の ポイント といえる 。
≪都市部におけるコンパクトシティの推進(再開発に伴うコンパクト化)≫
コ ンパクト シティを 推進 する際の ポイント は、 中 心市街 地と郊外 地域 が共存・共
栄で きる環境 づくりや 公共 交通の充 実(最 適化 )、高齢社会 への対応 、市民や NPO
等と の協働の 推進などがあ げられる( 図表 112)。もっ とも、経済合理 性に基づ いて
郊 外に拡散 したまち を中 心市街地 に集約し てい くには、 超長期の まち づくりのビジ
ョ ンや取り 組みが求 めら れるが、 駅前 地区 を再 開発する 際にはコ ンパ クトシティを
推進 する好機 となる。
都市 部におけ る最近の 市街 地の再開 発は、駅前の 中心市街 地に居住・商 業・医療・
福 祉・保育 などのあ らゆ る機能を 集め、生 活利 便性を高 めるコン パク トシティへの
取り 組みが多 くなっている 。ひと 昔前は 、
「商業+ 業務 」が主流で あった が、近 年は、
同 じ団地内 に多世代 が同 居するま ちづくり が可 能である ことから 、居 住系開発(マ
ン ション) が主流と なっ ており、 高齢者棟 (高 齢者専用 住宅等) や高 齢者福祉施設
を 整備する 事例も見 られ る。コン パクトシ ティ では、高 齢者の健 康維 持や子育ての
し やすい環 境、交通 弱者 対策など により暮 らし やすさを 創出 する こと で 、移住・定
住 の促進が 可能にな る 。 例えば、 柏の葉キ ャン パスシテ ィ では、 大学 などの研究機
関が 集積した 特徴を活かし 、
「公 民学連携 による 自律した 都市経営」を ビジョン に掲
げ、
「都 市経営 」、
「 地域エ ネルギー 」、
「地域の健 康・介護 」を軸とした 新しい街 づく
りが 進められ ている。2014 年7 月には 、多彩な 都市機能 を集積させた スマート シテ
ィ の 玄 関 口 で あ る 「 ゲ ー ト ス ク エ ア ( 注 24)」 が グ ラ ン ド オ ー プ ン し 、 更 な る ま ち の
(注23)多極集中型のコンパクトシティの先進事例として、富山市の取り組みがあげられる。富山
市では、一定水準以上のサービスレベルの公共交通を「串」
、串で結ばれた徒歩圏点を
「団子」に見立て、
「お団子と串の都市構造」を目指している。
(注24) ショップ&オフィス棟と商業施設「ららぽーと柏の葉 北館」
、賃貸住宅とシェア型の国
際交流住宅の「パークアクシス柏の葉」
、エリア一帯のエネルギーをマネジメントする
「柏の葉スマートセンター」の入居・運用は 2014 年4月から開始。7月に宿泊施設「三
井ガーデンホテル柏の葉」及び小規模ミーティングから国際会議まで対応する「柏の葉
カンファレンスセンター」が開業し、グランドオープンとなった。
135
活気 が生まれ ている。
ま た、政令 指定都市 であ る千葉市 の玄関口 「千 葉駅」周 辺 では、 千葉 駅ビルの建
替え( 18 年春 に全面開業 予定)や西 口地区 及び 東口地区 の 再開発が施 行・計画 さ れ
るな ど、大きな変 貌を遂げ ようとし ている 。この ような状 況のもと、千葉市 は、
「千
葉 駅周辺の 活性化グ ラン ドデザイ ン の策定 」に 取り組ん でいる( 三菱 地所設計 とち
ばぎ ん総合研 究所 の共同 調 査)。こ れは、千葉駅 周辺の発 展方向(将来 像、機能集積
等 )とそれ を実現す るた めの方策 並びにア クシ ョンプラ ンを 策定 する ものである 。
千葉 駅周辺地 域は、千葉市 のみなら ず千葉県の 玄 関口とし て位置付けら れるだけ に、
当 調査結果 を踏まえ るな か、 高齢 化社会に 対応 したコン パクトシ ティ のモデルケー
スと なるよう な視点でまち づくりに 取り組む こと が求めら れている 。
課 題
中心市街地と
郊外地域の
共 存 ・共 栄
公共交通の
充 実 (最 適 化 )
高齢社会
への対 応
図 表 112 コンパクトシティ推 進 上 の留 意 点
概 要
中 心 市 街 地 と郊 外 地 域 の地 域 特 性 を吸 引 力 としてまちづくりを進 め 、各 地
域 が自 立 可 能 なまちづくりが必 要 である。
各 地 域 で不 足 するインフラ・機 能 は公 共 交 通 の充 実 (最 適 化 )などでお互 い
が補 完 し合 えるような環 境 づくりを行 う。
街 の中 心 部 には総 合 的 なヘルスケア施 設 を整 備 し、高 齢 者 を中 心 に住 民
同 士 のコミュニティの役 割 を果 たすことも有 効 。高 齢 者 の健 康 維 持 により医
療 費 や介 護 費 の上 昇 が抑 制 できる効 果 も期 待 できる。
子 育 て支 援
仕 事 と育 児 の両 立 を目 指 す親 の支 援 のため、保 育 所 を駅 周 辺 に集 積 する
など通 勤 し やすい環 境 を整 備 する。ソフト面 では、子 育 ての経 験 豊 富 な高
齢 者 による育 児 支 援 も有 効 と考 えられる。
働 く場 の確 保
積 極 的 な産 業 育 成 や企 業 誘 致 による新 産 業 創 出 などにより地 域 に働 く場
(産 業 振 興 )
を確 保 する。
協 働 の推 進
地 域 固 有 の課 題 を解 決 するた めに、自 治 体 と各 地 域 の自 治 会 ・ 町 内 会 、
公 益 活 動 に取 り組 むNPO法 人 などが連 携 してまちづくり活 動 を行 う。
シティセールス
タウンコンセプトを明 確 にしたまちづくりと、戦 略 的 なシティセールスの推 進
の推 進
が定 住 ・交 流 人 口 増 加 の起 爆 剤 となる。
スマートシティ
地 域 全 体 で発 電 量 ・充 電 量 ・消 費 電 力 を一 元 管 理 する「AEMS(エリアエネ
の構 築
ルギー管 理 システム)」の構 築 や、省 エネだけでなく、再 生 可 能 エネルギーを
活 用 した「創 エネ」、蓄 電 池 やEV(電 気 自 動 車 )との連 携 による「蓄 エネ」を
推 進 し、災 害 発 生 時 のエネルギー供 給 不 足 に備 えるインフラを整 える。
(出 所 )ちばぎん総 合 研 究 所 。
≪南房総地域等 におけるコンパクトシティの推進(シルバータウンの形成)≫
ちば ぎん総合 研究 所 12 年 10 月 推計した 千葉県 の将来推 計をみると 、2040 年の老
年( 65 歳以上)人口は 200 万人を 超える見通し で、右肩上 がりで増加 する 高齢 者を
どの ようにマ ネジメントす るかが今 後の まちづく りの大き な 課題と なっ ている 。
千 葉県の南 房総地域 は、 ①気候が 温暖で過 ごし やすい、 ②自然が 豊か で空気がき
れ い、③農 業・漁業 が盛 んで食べ 物がおい しい 、 ④圏央 道や東京 湾ア クアラインを
使 って簡単 に 都心に 出か けられる 、 ⑤都心 に住 んでいる 友人・親 族の 訪問を受け入
れ やすい、 などの地 理的 な強み が ある。南 房総 地域 は、 これらの 強み を 活かすこと
で 、全国的 にも成功 例が 少ない 、 シニアが 住み たいと思 う街「シ ルバ ータウン (国
内外 の先進事 例は図表 113、114 参 照)」を展開 するポテ ンシャルを 有 している 。シ
ル バータウ ンには、 高齢 者の個々 のニーズ に基 づ く医療 ・福祉・ 介護 サービス事業
者が 必要不可 欠であり、その 担い手と して若年者 の雇用も 確保される。こ のことは 、
136
新 たな職を 求めて都 市部 に若者が 流出する 過疎 化の進行 に歯止め をか ける効果も期
待 できるこ とから、 南房 総地域は 、高齢者 と若 者が共存 できる地 域と してモデルケ
ー スとなり 得る 。健 康 で 豊かな ラ イフスタ イル を自ら創 出するク リエ イティブかつ
ア クティブ な高齢者 の定 住を 促進 し、日本 を代 表する シ ルバータ ウン を形成するこ
と ができれ ば 、人口 減少 に歯止め がかから ない といった 閉塞感の 強い 南房総域の活
性 化を図る ことがで きる 。シルバ ータウン の形 成で重要 な ことは 、 取 り組み をリー
ド する民間 企業の参 入で ある。シ ルバータ ウン としての 千葉県の 優位 性をPRし、
高 齢者向け 大規模住 宅を 開発して いる民間 業者 にアプロ ーチ する ため には、 県、市
町村 、関連団 体など 支援や 連携も不 可欠であ る。
な お、シル バータウ ンの 形成に関 する県内 の取 り組みと しては、 鴨川 市の「 プラ
チ ナタウン 構想 」が ある 。同市で は 、県内 外か ら健康長 寿を目指 した 中高年世代の
移 住を促進 し、新た に生 まれる消 費需要や 医療 ・介護・ 健康サー ビス などから若年
者の 雇用を創 出するまちづ くりを 推 進している 。
図表 113 海外のシルバータウン(アリゾナ州サンシティ)の事例
住宅
サービス施設
介護福祉施設
開発面積
人口
住宅戸数
販売方法
一戸建て、コンドミニアム、アパートなど分譲住宅
レクリエーションセンター、ゴルフコース、劇場、野外劇場、教会、ホテル、医
療施設、ショッピングセンター(コミュニティによって異なる)
あり
3,560ha
38,000 人
27,731 戸
不動産会社による売買
≪アリゾナ州サンシティの外観≫
( 出 所 ) Del Webb 社ホームページ
137
図表 114 国内のシニアタウン(シルバータウン)事例
所在地
名称
規模
和歌山県西牟婁郡白浜町
白浜ホープヒルズ サンシティエリア
666区画(温泉付き分譲地)
福岡県朝倉市
美奈宜の杜
804区画(一部温泉付き分譲地)
静岡県熱海市
あじろ南熱海ヶ丘
293区画(温泉付き分譲地)
沖縄県今帰仁村
サンシティ希望ヶ丘
400区画
千葉県千葉市稲毛区
スマートヴィレッジ稲毛
810戸
(出所)各種資料をもとにちばぎん総合研究所が作成。
138
b. 商店街・ 商業施設による地域貢献活動の推進
千葉 県では、2000 年の「 大規模小売 店舗立地法 」施行以降 も大型小売 店(店舗面
積 1,000 ㎡以 上)の出店が 加速(大規模 小売店数:00 年 177 店→ 13 年 248 店 )して
い る。一方 、県内の 消費 需要は 、 景気動向 や生 産年齢人 口の減少 など により伸び悩
んで おり 、大型小 売店の年 間販売額 は、直近ピー クの 96 年(1 兆 1,472 億円 )から
減少 傾向が続 き、13 年に は 9,514 億 円(96 年比▲ 17.1%)となっている(図表 115)。
この 間、大型小 売店1か店 当たりの 年間商品販売 額は、96 年の 83.7 億円 から 13 年
の 38.4 億円( 96 年比▲ 54.1%)に 大幅減少して いる。
地 域密着型 の商店街 に目 を移すと 、モータ リゼ ーション の進展や 消費 者のライフ
ス タイルの 変化への 対応 の遅れや 後継者難 など 、中小商 店の適応 力不 足等から衰退
に歯 止めがか からない状況 が続いて いる(図表 116)。商店 街 がシャッ ター通り とな
っ たり、中 小スーパ ーが 撤退した 地域では 、地 域住民の 高齢化と 相ま って買い物弱
者問 題がクロ ーズアップさ れている ところも徐々 に 増加し ている 。
自 治体によ る商店街 支援 も曲がり 角に来て いる 。すなわ ち、高度 経済 成長時代の
も のが不足 している 時代 には、地 域住民に 公平 な購買機 会を提供 する という主旨で
商 店街支援 の必要性 が高 かったが 、大型小 売店 の相次ぐ 進出やイ ンタ ーネット通販
等 の販売チ ャネルが 多様 化した現 代では、 一部 の高齢者 を除いて 、商 店街がなくて
は 困るとい う市民の ニー ズは低下 し ている 。ま た、産業 振興(地 域の 雇用確保)の
面で も大型小 売店の雇用吸 収力に比 べて、商店街 (一般商 店)の それ は 弱い。
この ような状 況下、地域の 商店街が 今後生き残っ ていくた めには 、
「物 やサービ ス
を 売る」機 能に磨き をか け、店舗 の魅力向 上を 図るなど 個店が頑 張る ことを第一義
と し、商店 街及び商 業施 設単位で は、地域 住民 の生活を サポート する ような地域貢
献 活動に率 先して取 り組 み、地域 に受け入 れら れ 、地域 と共存す るこ とが必要 であ
る 。例えば 、地域コ ミュ ニティの 活性化 に 向け た祭り・ イベント の実 施や防災・防
犯 活動への 取り組み 、 あ るいは 高 齢者の生 きが いづくり の場の提 供や バリアフリー
化 といった 高齢社会 への 対応、子 育て支援 など は 、市民 が地域の 商店 街に期待する
機能 といえる( 図表 117)。自治 体は、地域貢献 活動 に積 極的に取り組 む 商店街 や商
業 施設を重 点的に支 援す べきであ る。この こと で地域住 民は心身 とも に豊かに暮ら
せ る生活環 境を享受 でき 、商店街 は来街者 の増 加に伴う 販売機会 が増 加し、自治体
は地 域課題を 解決すること ができる といった Win-Win-Win の 関係を構 築するこ とが
でき る。
139
図 表 115 千 葉 県 の大 型 小 売 店 販 売 額 の推 移 (百 貨 店 +スーパー)
12,000 111.1
120
11,472
(億円)
(億円)
10,000
9,514 100
83.7
8,000
6,233
80
7,029
6,000
7,124 60
38.4
4,000
40
2,000 4,436
4,443
20
2,390
0
0
91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
(年)
百貨店(左軸)
スーパー(左軸)
1か店当り
販売額(右軸)
(注)1.出所:関東経済産業局のデータを元にちばぎん総合研究所が作成
2.百貨店は従業員50人以上かつ店舗面積が1,500㎡以上(特別区及び政令指定都市は3,000㎡以上)、
スーパーは売り場面積の50%がセルフサービス方式かつ店舗面積が1,500㎡以上の店舗
図 表 116 商 店 街 と大 型 小 売 店 の売 上 高 の推 移
14,000
(億円)
13,000
13,127
12,282
11,689
12,000
11,000
11,139
10,616
従業員100人以上の店舗
(≒大型小売店)
10,000
9,000
従業員5人未満の店舗
(≒商店街)
8,000
7,000
6,146
6,000
6,133
5,000
1982年
1985年
1988年
1991年
1994年
1997年
1999年
(出所)千葉県「千葉県の商業」のデータを元にちばぎん総合研究所が作成
140
2002年
2004年
2007年
図 表 117 商 業 者 の地 域 貢 献 (例 )
地域貢献として求められる役割
具体例(抜粋)
・地域の団体との連携強化
地域との連携促進、各種事業への協
・地域で実施される活性化に向けた取り組みへの参加
力・参加・費用負担
・地域で活動しているNPO等への寄付
・地域連携による活性化イベントの実施
地域の活性化や地域商業者と大型
2
・販売促進のための共同事業
店の協働に向けた取組
・テナントミックス事業(適正業種の配置など)
・地域情報の発信
3 地域情報の発信
・商店街内の空き店舗を情報交換の場として活用
・インターネットの地域サイトへの参加
・地元農作物の販売コーナー常時開設
4 千産千消、地元産品普及への協力 ・地元市場・農家からの仕入
・ふるさと産品運動、地域ブランドづくり
・観光イベントへの協力
5 観光振興への協力
・観光ポスターの貼り出し、観光案内の協力
・観光客に対するトイレの解放
・従業員の地元雇用の推進
6 地域雇用の確保
・障がい者の積極的な雇用、仕事体験など社会勉強の
機会提供への協力
・従業員の雇用の確保
大型店の撤退時対応・商店街の空き
7
・後継店の確保への協力
店舗の活用
・空き店舗の有効活用
・景観に配慮した施設建設・外壁の色等への配慮
地域資源の保全、景観形成、街並み
8
・緑地の確保
づくりへの協力
・屋外広告物設置に当たっての景観への配慮
・店舗周辺の清掃活動
9 環境対策、リサイクルの推進
・花いっぱい運動
・食品廃棄物の有効活用の推進
・市町村との災害時の物資提供等に関する協定締結
10 地域防災への協力
・消防団活動への参加
・共同避難訓練の開催・避難場所の提供(駐車場等)
・街路灯の設置・維持管理
防犯・青少年非行防止、安全・安心
11
・地域との連携による防犯パトロールの実施
なまちづくり
・防犯カメラの設置・運営、緊急時の駆け込み場所
・学校単位の職場体験学習
青少年健全育成、職場体験学習機
12
・食育等の体験学習会、カルチャー教室の開催
会の提供
・学校行事への支援
・ユニバーサルデザインの導入
13 地域福祉、少子高齢化対応
・空き店舗を活用した地域福祉の拠点づくり
・赤ちゃん休憩室・育児相談室等の開設
・混雑時の交通整理員の配置
14 交通対策
・駐車場等の整備
・地域における交通安全活動への参加
(出所)千葉県「商業者の地域貢献に関するガイドライン(2008年3月)」
1
141
チーパス(千葉県)
商店 街・商業施設 の子育て 支援(例)
千葉 県は、 2012 年 7月2 日から「 子育て応援! チーパス 事 業 」 を 開 始 し た 。
「 チ ー パ ス 」 とは 、 利用 者 が 「 チ ー パス の 店( 協 賛 店 )」 で カ ードを 提 示 す
ると 様々な子 育て応援サー ビスを受 けることがで きる カー ドのことで、県内 在
住で 中学校終 了までの子供 または妊 婦がいる家庭 を対象に 配布され てい る。
「チ ーパスの 店( 協賛店 )」には 、子育て 応援サー ビスの実 施に賛同し た 4,741
店 舗 ( 2014 年 8 月 末時 点 ) が 加 盟 し てい る。 子 育 て 支 援 サ ービ スの 内 容 は 、
商品・サービ スの割引や特 別プレゼ ント、授乳用 のお湯を サービスする など 多
彩で 、子 育て 中の 家庭から 高 い評価 を得ている 。同様 の子育て 支援事業 は、松
戸市「子育て 未来カード」と浦安市「子育て支援 パスポー ト」でも 実施 され て
いる 。
(出 所 )千 葉 県 ホームページ
142
c. 地域エネルギー創出によるまちづくり
我が 国のエネ ルギー政策は 、東日 本大震災 と東京 電力福島 第一原子力発 電所事故
に よる原子 力のリス クの 顕在化や 国際的な 地政 学的リス クの増大 とい った環境変化
を 受け、電 力供給の あり 方や化石 燃料に大 宗を 依存する エネルギ ー供 給システムの
見 直しなど 、大きな パラ ダイムシ フトが起 こり つつあ り 、東京オ リ・ パラは、こう
し た移行状 況が続く なか で開催さ れ る。こ のよ うな状況 と地球温 暖化 防止の観点を
踏ま え、平成 26 年4月に 閣議決定 された新しい「エ ネルギー 基本計画 」で は、徹底
し た省エネ ルギー社 会の 実現と再 生可能エ ネル ギーの導 入加速化 、及 び蓄電 池・燃
料 電池技術 等による 分散 型エネル ギーシス テム の普及拡 大などの 方策 が示されてい
る。 また 、「日本 再興戦略 」改 定 2014- 未来へ の挑戦- (平 成 26 年 6月 24 日政 府
公 表)で示 された 3 つの アクショ ンプラン の一 つ「戦略 市場創造 プラ ン」で対応す
べ き4つの テーマが 設定 されてい る。その うち の一つに 「クリー ン・ 経済的なエネ
ル ギー需給 の実現」 があ る。この 中では、 再生 可能エネ ルギー導 入の ための規制・
制 度改革や 電力シス テム 改革の実 行、蓄電 池の 技術開発 ・普及拡 大な どの他、エネ
ル ギーを賢 く消費す る社 会に向け 、住宅・ 建築 物の省エ ネ基準 の 段階 的適合義務化
や燃 料電池技 術開発・低コ スト化な どが盛り込ま れている 。
これ ら国のエ ネルギー政策 の中で注 目すべき大き な流れは 、それ までの 国や電力
会 社主導の 大規模集 中シ ステムか ら、再生 可能 エネルギ ーの利用 促進 による「地域
主 導の自立 ・分散型 シス テムの構 築・推進 」と いった視 点がより 鮮明 に打ち出され
て いること である。 これ は、住宅 の屋根や 公共 施設の屋 根・空地 等に おける太陽光
や 海岸・山 林部にお ける 風力、小 河川や農 業用 排水路等 での小規 模水 力、あるいは
地 域の木材 を活用し た木 質バイオ マスなど 、地 域に賦存 する再生 可能 エネルギ ーを
中 心とした システム であ る。これ らのエネ ルギ ーは地域 に密着し たも のであり、発
電 システム の構築や 運用 面で地域 に新たな 産業 を創出さ せる可能 性が 高いこと、あ
る いは大規 模災害等 の緊 急時に一 定のバッ クア ップ機能 を果たす こと などから、地
域 の自治体 や企業、 住民 が主体と なり、ま ちづ くりや地 域活性化 の視 点で取り組む
こ とが望ま れる。東 日本 大震災以 降、再生 可能 エネルギ ーの固定 価格 買取制度(F
I T)の創 設・運用 開始 もあり、 地域でエ ネル ギーを創 出する動 きが 、全国の自治
体 で徐々に 増加して いる 。これら は、従来 の再 エネ・省 エネとい った 環 境負荷の軽
減 やコスト 削減を主 たる 目的とす る取り組 みに 加え、エ ネルギー を地 域で創り地域
で 消費する 「エネル ギー の地産地 消」への 取組 であり、 災害時へ の備 えと産業振興
等の 地域活性 化の両方を狙 うもので 、
「 地 域エネル ギーの創 出をまちづく りに生か す
取組 」と言う ことができる 。
千葉 県におい ては、柏市の 「柏の葉 キャンパスシ ティ」 が 11 年 に「地 域活性化
総 合特区」 と「環境 未来 都市」に 指定され 、安 心・安全 で持続可 能な スマートシテ
ィ を目指し ているほ か、 佐倉市ユ ーカリが 丘で は、「 エネルギ ーの自 立・効 率利用」
や「住民 ・企業 参加の新た なコ ミュ ニティ創造 」など安 心・安全で快適 なまちづ くり
を目 指す「ユー カリが丘地 区スマー トコミュニテ ィ構想」が 13 年 から始 動してい る。
こ の他、家 庭や学校 にお ける太陽 光発電の 普及 、企業あ るいは自 治体 によるメガソ
ー ラー事業 やごみ発 電な どの動き も見られ るが 、これら は主に個 々の 取組・事業で
あり 、地域に より普及状況 等が異な る。
全国 に目を移 すと、特徴的 な取組事 例が見られる 。北九州 市では 13 年に 旗揚げ
し た「北九 州市地域 エネ ルギー拠 点化推進 事業 」により 、低炭素 で安 定・安価なエ
ネ ルギー拠 点を形成 し、 安心して 市民生活 や産 業活動が でき る持 続可 能な都市づく
り を目指す 取組が始 動し ている。 また、群 馬県 中之条町 では、町 と民 間企業が共同
143
出資 して「一般 財団法人中 之条電力」を設立し、13 年9 月に新電力の 登録(経済 産
業 省)を行 った。こ れは 自治体初 の新電力 の登 録であり 、町内 3 つの メガソーラー
で 発電した 電気を新 電力 が購入し 、町内の 学校 等の公共 施設に安 価に 販売する仕組
みと なってい る。これらは いずれも 単独の自治体 での取組 だが、東京都 では 06 年に
23 区の清 掃一部事 務組合 と東京ガ ス㈱が共同出 資して「東 京エコサー ビス㈱」を 設
立し、清掃工場 のごみ発電 の電気を 買い取り地 域 の公共施 設等に安価に 販売する「 資
源・ エネルギ ー循環型のビ ジネスモ デル」に取り 組んでい る。
このような大震災等の災害時への備えと産業振興等の地域活性化の両方を狙う
「 エネルギ ーの地産 地消 」への取 り組みは 、地 域で電力 を創出・ 供給 するサイドと
そ れらを購 入する需 要サ イドで参 加者が多 いほ どコスト パフォー マン スもよくなり
メ リットが 増大する 。従 って、可 能な限り 複数 の自治体 が参加す る広 域での取 り組
み が望まし い。あわ せて 、創出し た電力を 大量 かつ安定 的に購入 する 需要者の存在
も不 可欠であ る。こうした 問題意識 のもと、13 年度に は、地域のエネ ルギー会 社で
ある 千葉ガス ㈱が中心とな り、千葉県 ほか複数の 自治体と 民間企業の参 加を得て「 C
h i b a -地 域 エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム 事 業 化 構 想 研 究 会 」 が 4 回 に わ た り 開 催 さ れ た
(図表 118)。その過 程で 、環境負 荷の軽減 に加 え災害時 の備えと 地域 活性化を目指
す 「エネル ギーの地 産地 消」につ いて、取 組意 義と事業 スキーム の有 効性が確認さ
れ た。一方 、実際の 事業 化につい ては、官 民共 同 新電力 会社( P PS )の設立への
出 資に対す る理解と 合意 の取り付 けが容易 では ないこと がわかっ た。 これに対応す
る ためには 、事業ス キー ムとメリ ッ ト・収 支を 明確にす るととも に、 広域での取り
組 みに係る 自治体間 の負 担調整な どの課題 をク リアする 必要があ る。 今後、具体的
な 事業推進 にあたっ ては 、これら の課題を クリ アすると ともに、 広域 での枠組みに
こ だわらず 、やる気 のあ る自治体 が先行し て取 り組み、 取組成果 やメ リットを発信
して いくこと も一案である 。
図 表 118 Chiba-地域エネルギーシステム事業化構想研究会の事業スキーム
PPS
供給側
地域エネルギー創出
・清掃工場のごみ発電
・メガソーラー
・公共施設等における
太陽光発電
(出所)千葉ガス㈱
地域電力会社
・自治体と民間企業等
の共同出資
・安定電源:ガス発電又
は電力会社から調達
144
需要側
地域エネルギー消費
・庁舎・学校・図書館等
の公共施設
・工業団地・大規模施設
等の大口需要家
○先進事例 1:東京エコサービス㈱の取組
東京 エコサー ビス㈱は、平 成 18 年 10 月、清掃工 場の効率 的な運営と効 果的な余
剰電 力の販売 を目的に、東 京 23 特別区の 理解を得 て東京二 十三区清掃一 部事務組 合
と東 京ガス㈱ の共同出資に より設立 された(図 表 119)。同 社は特定規 模電気事 業者
(P PS ( 注 25))とな り、都内の清 掃工場で 、ごみ 焼却によ る熱エネルギ ー( CO2 の
排 出量が少 ない環境 にや さしいバ イオマス エネ ルギー) を利用し て発 電された電力
を買 い取り、 都内 23 区の 小中学校 等に安価に販 売してい る。
図 表 119 東京エコサービスの電力小売事業の仕組み
(出所)東京エコサービス㈱ホームページ
○先進事例 2:群馬県中之条町の取組(自治体初の新電力登録)
中之 条町では、災害時に自 立できる 電力供給体制 を確立す べく、地域に 眠る再生
可 能エネル ギーを開 発し て町内に 供給する 「エ ネルギー の地産地 消」 に取り組んで
いる(図表 120)。町内に は 3か所 でメガソーラ ー発電所( 3か所合計 5MW)が 稼
働し 、供給電 力は年間約 600 万 kWにの ぼる(町 内の公共 施設の年間電 力量消費 量
約 450 万kW を上回る規模 )。今 後は小水 力発電事 業や木質 バイオマス発 電事業に も
展開 する(平 成 25 年度、 木質バイ オマス発電事 業化検討 協議会を設立 )。 また、町
議会 において も、
「 再生可 能エネル ギーのまち中 之条」宣 言及び再生可 能エネル ギー
推進 条例を制 定し、全町を あげて再 生可能エネル ギーの導 入を推進して いる。また 、
町内 で発電し た電気を売買 するため 、平 成 25 年 8月に「 一般財団法人 中之条電 力」
( 新電力会 社/ PP S ) を設立し た。これ は民 間の PP Sととも に設 立し、地方自
治 体が設立 する法人 とし ては初め て新電力 事業 者に登録 された。 町 の施策で ある
電 力の地産 地消をよ り目 に見える 形とし、 買い 上げた電 気は、当 面、 町内の役場庁
舎や 小中学校 などの公共施 設に供給 している。
(注25)電気事業法の改正で電力販売が自由化になり、一般電気事業者以外のもので一定規模以
上の需要家に電力を供給する電気事業者(特定規模電気事業者)
。
145
図 表 120 中之条町が取り組むエネルギー地産地消の仕組み
(出所)中之条町
○先進事例 3:北九州市の取組(北九州市地域エネルギー拠点化推進事業)
北 九州市で は、これ まで の地球温 暖化対策 の観 点での省 エネ・新 エネ への取組に
加 えて、東 日本大震 災を 踏まえ、 市民生活 や産 業活動な ど地域を 支え る観点から、
安 定かつ安 価なエネ ルギ ーの創出 ・供給に 取り 組むこと とし、響 灘地 区を中心とし
た「 北九州市地 域エネルギ ー拠点化 推進事業」に 取り組んで いる(図 表 121)。これ
は 、北九州 市の新成 長戦 略の方向 性の一つ 「地 域の成長 を支える エネ ルギーミック
スの 構築によ る地域エネル ギー拠点 の形成」を実 現化する 取組である。具 体的には 、
同 地区にお けるエネ ルギ ー拠点施 設の立地 、需 要と供給 を束ねる エネ ル ギー網の構
築 を目指し 、発電事 業の 立地可能 性調査、 高効 率火力発 電、洋上 風力 発電、地域エ
ネ ルギーマ ネジメン トに 取り組む 。また、 電力 の供給側 だけでな く、 需要側もエネ
ル ギーマネ ジメント に参 加する産 業版スマ ート グリッド 「響灘ス マー トインダスト
リ 」の実現 を目指し てお り、この 仕組みを 構築 するため 、発電事 業者 と市内産業界
を つなぐ「 地域エネ ルギ ー会社」 を設立し 、複 数企業全 体の最適 化を 図る制度設計
と 企業に眠 っている 自家 発電の活 用及び電 力不 足時に需 要を調整 する ネガワットの
取組 などを検 討することと している 。本事業への 市内事業 者の関 心は高 い。
図 表 121 北 九 州 市 地 域 エネルギー拠 点 化 推 進 事 業
(出所)北九州市
146
防災・防犯力の強化
a. 放射能汚染・液状化・津波対策など災害対策の推進
2011 年3 月に発生 した 東 日本大震 災から 3年半 が経過し た が、千葉県 では自治 体
や 民間企業 など が全 力で 復旧・復 興に取り 組ん できたこ とから、 復旧 ・復興工事や
除 染作業は おおむね 順調 に進捗し て いる。 一方 、銚子や 南房総地 域の 旅館・ホテル
の 客室稼働 率が震災 前の 水準に戻 っていな いこ とや中国 ・台湾な ど9 か国・地域で
千 葉県産品 の輸入禁 止が 続いてい ること、 液状 化の抜本 的な対策 工事 (住民の合意
が必 要)、放射能汚 染土壌や 焼却灰の 最終処分場の 選定 と処 分方法などの 課題が残 っ
て いる。千 葉県が 今 回の 震災を教 訓として 持続 的な発展 を遂げる ため には、震災後
の 環境変化 も織り込 んで 創造的な 復興を遂 げる ことが求 められ る 。今 後は 、世界に
向 けた放射 能汚染の 風評 被害 の払 拭や抜本 的な 液状化対 策 ・津波 対策 などを 着実に
進 めるとと もに、道 路や 空港、港 湾、物流 施設 、工業団 地、駅舎 建て 替え、駅前地
区 の再開発 、大型商 業施 設の新設 、大型マ ンシ ョン建設 など目白 押し の開発プロジ
ェク トを活用 し、震災から の復旧・ 復興 を地域活 性化につ なげていく必 要がある 。
東 京オリ・ パラ開催 の決 定を受け て、世界 の人 々が日本 に注目し て お り、とりわ
け 千葉県は 世界の玄 関口 である成 田空港が 立地 している だけに注 目度 は高い。東京
オ リ・パラ の 開催は 、 東 日本大震 災からの 完全 復活及び 災害対策 を強 化した安心・
安全 なまちづ くりを世界に 示す 絶好 の機会で ある 。
一方 、我が国 の道路や橋梁 、 港湾等 の社会資本 の 多くは、 50 年代半ば から 70 年
代 初頭まで の高度経 済成 長期に整 備され た もの であり 、 老朽化 の 進行 が著しく 、近
い 将来、更 新時期が 集中 すること が予想さ れて いる 。今 後は、 財 政的 な制約も考慮
し て、いか に効率的 に道 路ストッ クを維持 管理 していく か も同時 に 検 討する必要が
ある 。
147
b. 地域の防災力・防犯力の強化
大 規模災害 時には、 消防 や警察、 自衛隊な どに よる救助 活動 (公 助 ) は、瓦礫な
ど が道路を ふさいで しま い、本来 の救助 機 能を 有効に活 用 できな い こ とが少なくな
い ( 注 26)。こ うした「公助 」の限 界を 自治 体や地域 の住民と 企 業 が そ れ ぞ れ 自 覚 し 、
「 自助」と 「共助」 を災 害時の基 本として 考え られるよ う、自治 体や 関連団体(町
内 会など) が中心と なっ て、防災 面の 意識 啓発 や近所の 助け合い と 連 帯のための小
組織 を組成し、日頃から避 難訓練 等 に取り組むこ とが 重要 であ る。2011 年3 月の東
日 本大震災 でも、日 ごろ からコミ ュニケー ショ ンのとれ てい る行 政区 や地域では、
避 難所への 避難や被 災後 の安否確 認がスム ース に行われ ていた。 この ように、いざ
と い う と き に 助 け 合 え る 地 域 コ ミ ュ ニ テ ィ の 形 成 は 「 減 災 ( 注 27)」 に 向 け た 取 り 組
みと しても重 要性が高 い。
千葉 県では、2014 年度の 事業とし て「地域住民 による自 発的な防災ネ ットワー ク
づく り支援事 業(予 算額 1,150 万円 )」や、
「地域 防災力向 上事業(予算 額 400 万 円)」
を 立ち上げ 、地域防 災力 向上セミ ナーや企 業・ 学生消防 隊と連携 した 消防団の活性
化 に取り組 んでいる 。こ うした 地 域のコミ ュニ ティ活動 を強化し てい くことは、人
間関 係が希薄 化している都 市部 にお ける 減災への 取り組み に貢献するは ずである 。
(注26)阪神・淡路大震災では、全壊家屋に閉じ込められた被災者のうち、自力で脱出した人が
約8割(自助)
、家族や近所の人などに助けられた人が約2割(共助)で、消防・警察・
自衛隊に助けられた人は僅か5%(公助)に満たなかった。
≪阪神・淡路大震災によって家屋に閉じ込められた被災者・被救助者等≫
(注27)阪神・淡路大震災後の 2008 年頃から生まれた概念。災害時に発生す被害を最小化するた
めの取り組み。防災が被害を出さない取り組みであるのに対して、減災はあらかじめ被
害の発生を想定した上で、その被害を低減させていこうとするもの。
148
医療・介護・ ヘルスケア体制 の充実
千葉 県の高齢 化率( 65 歳以 上の人口 割合 )は 、現在 は約5人 に1人だ が、15 年に
は約 4人に1 人となり、30 年 には約3 人に1人と なる。また、75 歳以上 の人口割 合
も、現 在の 約1 割か ら 30 年には 約2割に 倍増す るなど高 齢化が急速に 進む見通 しと
なっ ている。こうした高齢 化の進行 に伴い、病床 数は 40 年に は約5千 床不足す るこ
とが 見込まれ ている。 40 年の病 床不足数 を地域 別にみる と、東葛南部 が▲ 3,248 床
と最 も不足 数 が多く 、最も 余る香取 海匝(+ 1,097 床) に比べると 4,345 床 の差が
あ る。こう した状況 をベ ースに将 来の県内 医療 を 展望す ると、高 齢者 の絶対数が増
え る都市部 を中心に 大幅 な医師・ 看護師不 足と 病床不足 に陥るこ とが 予想される。
都 市部の医 療崩壊を 回避 するため に は、高 齢社 会という 現実を直 視し た長期 的なビ
ジ ョンに基 づいて、 救急 医療や在 宅医療 を 担う ハード・ ソフトの 体制 づくりと 病院
の 誘致を積 極的に進 める とともに 、 医療・ 介護 ・ヘルス ケアを担 う人 材の育成・確
保を 急ぐ必要 がある (図 表 122)。
図 表 122 ちばの医 療 ・介 護 と健 康 づくりの将 来 に向 けての提 言
提言
具体的内容
(1) 高 齢 社 会 に対 応 する 医
・今後訪れる高齢社会という現実を直視した長期ビジョンの策定
療・介護に関する長期ビジ
・長期ビジョンの県民への周知
ョンの策定とその共有化
(2) 長期ビジョン を前提と し
た医療・介護サービスの充
実に向けた体制づくり
①医療・介護に携わる人材の確保・定着促進
・医科大学や看護師・介護士養成機関の誘致・定員増加
・「働きやすい職場」の提供
・医師:質の高い臨床研修が可能な医師にとって魅力的な職場づくり
・看護師・介護職員:労働環境の改善
②行政によるスキーム作りを通した各主体間の地域連携の促進
・行政の「医療」と「介護」の縦割り意識の解消と連携構築
・行政主導による介護事業者と民間の NPO、家族との間の連携強化
・各自治体間での連携が必要なものについては、協議会等の組織を
速やかに設置して迅速に行うことが必要
③健康維持のための具体的な仕組みづくり
・「高齢者毎日ラジオ体操」を県民運動として県内全域で推進
(3) 千 葉 県 の 特 性 を 活 か し
た、健康を中核に据えたま
ちづくりの推進
・「病気」や「介護が必要な状態」にならないこと
~いつまでも元気な身体を維持し続け、最高の QOL を追及すること
・千葉県が持つ「自然や気候」「スポーツ環境」「食」といったポテンシャ
ルを活かした健康増進への取り組みを地域全体で推進するなど「千
葉県の特性」を活かした、健康を中核に据えたまちづくりの推進
(出 所 )千 葉 経 済 センター「安 心 して暮 らせる千 葉 の再 構 築 ( 2013 年 8月 )」(ちばぎん総 合 研 究 所 受 託 調 査 )
149
a. 救急医療体制の充実及び在宅医療 ・介護の推進
成田 市は、国際 医療福祉大 学( 2016 年4月開学 予定)の誘 致に成功し たほか、J
R成 田駅から 徒歩 10 分の ロケーシ ョンに成田富 里徳洲会 病院(病床 数 285 床)が
2015 年9 月に新規 オープ ンする予 定となってい る。また、同地 域は国 家戦略特 区に
位 置付けら れており 、成 田国際空 港を擁す るメ リットを 活かして 、外 国人研究者の
受 け入れに ついても 各種 優遇措置 を図り、 国内 外の優秀 な研究者 や 技 術専門家等の
人材 の育成・ 確保 が可能で ある 。
千 葉県は、 救急医療 体制 の充実に 向けて、 成田 市のよう な医科系 大学 ・同附属病
院 及び介護 ・ヘルス ケア 関連 の研 究機関 や 民間 企業 の誘 致促進が 求め られている 。
2014 年9 月には、官民フ ァンドの 地域経済活性 化支援機 構が中心とな り「地域ヘ ル
スケ ア産業支 援ファンド(最 大 100 億円 を目指す )」が地 銀連携に より設 立され た(千
葉銀 行も出資 )。今後は 、同ファ ンドをも とに ヘ ルスケア に関する事業(食事 の宅配
や 医療・介 護機器の 開発 、人間ド ッグツア ーな ど) など に投資が 行わ れる 予定であ
り、 金融界 も 同分野の発展 をファイ ナンス面で支 えていく 。
千葉 県の人口 10 万人当た り在宅療 養支援診療所 数 ( 2011 年7月) を みると、 全
国平 均の 10.1 診 療所 に対 して、千 葉県は 4.2 診療 所と低水 準(富山県 の 3.9 に 次ぐ
ワ ースト2 位) とな って いる。 今 後、地域 包括 ケアシス テムの運 用が 本格化してい
く 中で、需 要者が適 切に 在宅医療 ・介護サ ービ スを受け る ことが 可能 な 体制づくり
が 求められ る。 在宅 医療 を担う医 師には、 プラ イマリ・ ケアに長 けた 総合医として
の 経験が求 められる が、 こうした 医師を 地 域で 育て 、活 躍できる 環境 を整える必要
が ある。ま た、医師 と一 緒になっ て在宅医 療を 推進する 看護師の 存在 も不可欠であ
り 、リハビ リスタッ フ の養 成も含め 、コ ・メディ カルの人 材育成も 重要 であ る 。在宅
医 療には病 診連携が 不可 欠であり 、診療所 、特 に在宅療 養支援診 療所 の電子カルテ
化 と地域中 核病院と のネ ットワー ク の構築 が必 要となる 。但し 、 この ようなシステ
ム の導入に は相当の 費用 がかかる ため、将 来に 向けて、 核となる 医療 拠点を中心に
統一 規格を構 築するなどコ ストを削 減する取り組 み も必要 である 。
b. 医療・介護・ヘルスケアを担う人材育成及び連携体制の構築
千 葉県は、 医療分野 は「 千葉県保 健医療計 画 ( 期間5年 )」、福祉 分野 は「千葉県
高齢 者保健福 祉計画( 期間 3年 )」に基づい て 各種 取り組み を行って いる 。も っとも 、
いず れの計画 も 取組期間が 3~5年 と短期 であり 、20~ 30 年先 を見据え た長期的 な
ビジ ョンでは ない 。
「今 後 30 年間で 78 万人の膨 大な高齢 者が増加する 」という 現実
に どう対峙 していく の か を明確に 示したビ ジョ ン と実効 性の高い アク ションプラン
を策 定するこ とが強く求め られてい る 。
医 療・介護 に携わる 人材 や施設が 不足し、 将来 的には一 層厳しい 状況 が予想され
る なかで、 計画的な 人材 育成 と人 材確保の 取り 組みが 真 に必要で ある 。医療・介護
ス タッフの 確保のた めに は、 スタ ッフ 養成 機関 の誘致・ 定員増加 を図 るとともに、
職 場におけ る待遇 改 善 あ るいは職 場を離れ た看 護師等の 復帰促進 など の取り組み も
必要 である。ま た、介護職 員数不足・負担軽減対 応策とし て 、14 年 6 月に政府 が掲
げ た「日本 再興戦略 」で は、「 ロボット 革命実 現会議」 を立ち上 げ、 2014 年度末ま
で に「5か 年計画」 を策 定 するこ とが 盛り 込ま れて いる 。ロボッ ト介 護機器の実用
化 は、高齢 社会にお ける 在宅介護 支援の手 段の 一つとし て大きな 効果 が見込めるた
め、 県や自治 体でも国の推 進計画に 呼応して支援 策等の検 討を急ぐ必要 がある。
ま た、患者 1人に提 供す る在宅医 療・介護 サー ビスは、 各主体と もそ の役割やで
き る範囲に 限りがあ るた め、 地域 包括ケア を実 効あるも のとする ため に、 医療機関
150
や 介護施設 、地域包 括支 援センタ ー、民間 企業 、行政の ほかに、 老人 クラブや自治
会 、NPO 、ボラン ティ ア団体な ど地域住 民・ 団体の協 力 ・連携 も必 要である。ま
た 、地域 の中核病 院と診療 所 、あるいは 病院と介 護専門家(ケ アマネー ジャーな ど)
間 の連携を 密にする ため 、 ICT を活用し たネ ットワー ク の構築 にも 力を入れる必
要 がある。 県内の医 療分 野の連携 事業とし ては 、柏市で は、高齢 化の 進行が深刻な
豊 四季台団 地とその 周辺 地域(豊 四季台地 域) において 、柏市 と 東京 大学高齢社会
総合 研究機構、UR都市機 構の 3者 が、09 年6 月に公民 学の連携組織 である「柏 市
豊 四季台地 域高齢社 会総 合研究会 」を立ち 上げ 、 団地の 再開発と 合わ せ、 地域が一
体 となって 「いつま でも 在宅で安 心した生 活が 送れるま ち」、「い つま でも元気で活
躍で きるまち 」の実現を目 指した取 り組みを実施 している 。
151
子育て環境の充実
a. 安心して子育てができる環境整備
千葉 県におけ る 90 年以降 の合計特 殊出生率の推 移をみる と、90 年の 1.47 から趨
勢的 に減少を 続け 、03 年 に 1.20 となっ たあとは 緩やかな 増加に転じ 、12 年に は 1.31
とな った(図 表 123)。こ の間、千葉 県の合計特 殊出生率 は、一貫して 全国平均 を下
回 る水準で 推移して いる 。 また、 千葉県の 若年 ( 15 歳未満) 人口の 推移をみ ると、
90 年の 1,034 千人 から 12 年 には 821 千人(90 年比▲ 20.6%)に大幅減 少している。
子ど もを産み 育てやすい環 境づくり に 関する県民( 30 歳代 の女性)の 期 待をみる
と 、「妊 娠・出産 や子ど ものた め の医療体 制を 充実させ ること」が 76.9%で最も 多
く 、「保 育所をは じめと する保育 サービス を充 実させる こと( 72.4% )」、「 仕事と子
育て が両立で きるような働 き方を支 援すること( 64.2% )」が続 いている(図表 124)。
ま た、「 結婚をし ない 」、「子ど もを生ま ない( 生めない )」理 由とし ては、将 来の教
育 費の負担 が大きい など 、経済的 な 理由を あげ る向きが 多いこと など からみて、仕
事と 子育ての 両立支援が少 子化対策 の中核的な施 策と いえ る。
こ れまでの 出産・子 育て 支援は、 国や自治 体、 企業、家 庭など の 各セ クター が、
政 府は就業 支援や所 得控 除の拡大 などの経 済支 援、自治 体は保育 所の 拡充など共働
き をしやす い環境整 備、 企業は育 児休業取 得や 短時間勤 務による 継続 雇用、家庭は
男 性の育児 参加 とい った ように個 別に取り 組ん できた。 しかし 、 現在 の少子化問題
は 、晩婚化 や若年層 の非 正規雇用 の増加な ど、 複数の社 会構造的 な要 因が重なって
い るため、 社会全体 が一 体となっ た総合的 かつ 継続的 な 出産・子 育て 支援が必要と
なっ ている。
図 表 123 千 葉 県 の合 計 特 殊 出 生 率 の推 移
(千人)
1.70 1,034
1,100
1,000
1.60
821 900
800
1.50
1.40
1.41
1.47
1.31
1.30
700
600
500
400
300
200
1.20
1.20
100
1.10
0
90
(年)
92
94
96
98
00
02
若年人口(右軸)
04
06
全国(左軸)
(出所)千葉県ホームページ
152
08
10
12
千葉県(左軸)
図 表 124 子 どもを産 み育 てやすい環 境 づくりに向 けて千 葉 県 に期 待 すること (複 数 回 答 可 )
0
20
40
60
80
(%)
76.9
妊娠・出産や子どものための医療体制を充実させること
67.4
72.4
保育所をはじめとする保育サービスを充実させること
64.8
64.2
65.7
仕事と子育てが両立できるような働き方を支援すること
58.2
54.7
女性が子育て後に再就職しやすくなるような取組を進めること
52.2
52.6
経済的に安定して生活できるための就労支援に取り組むこと
42.5
地域が子育てを支える取り組みを推進すること
36.6
妊婦や子ども連れのための段差解消などの
バリアフリー化を推進すること
32.8
27.3
(注)1.出所:千葉県「千葉県民アンケート調査報告書(2010年3月)」
2.30代女性の降順に掲載
153
30代女性
全体
3.千葉県が東京オリンピック・パラリンピック開催期間中に取り組むべきこと
千葉県への来訪者を心からもてなそう
東 京オリ・ パラの開 催期 間中は、 国内外か ら多 くの観戦 客及び選 手、 関係者など
が 主に東京 都の競技 場及 び周辺地 域を訪れ る。 東京都に 隣接した 千葉 県には、海外
と の玄関口 である成 田空 港や高い 集客力を 誇る 東京ディ ズニー・ リゾ ートのほか、
らら ぽーとT OKYO -BAYや アウトレ ットモ ールなど の大型商業施 設、門 前町の
町 並みが色 濃く残る 成田 山新勝寺 界隈の風 景、 自然豊か な南房総 地域 など多様な魅
力 にあふれ ている。 東京 オリ・パ ラ開催期 間中 は、東京 オリ・パ ラの 観戦者など外
国人 履行者が 千葉県を訪れ る機会が 増えることだ ろう。
外 国人旅行 者が日 本 に来 て困った こととし て、 4人に1 人が「コ ミュ ニケーショ
ン 」をあげ ているこ とは 、日本人 の外国人 に対 するコミ ュニケー ショ ン不足を示唆
し ている。 東京オリ ・パ ラ開催期 間中に千 葉県 を訪れた 外国人が 日常 生活やレジャ
ー で困るこ とがない よう 、簡単な 道案内を はじ めとして 、飲食店 のオ ーダーや観光
視 閲のチケ ット購入 方法 、日常的 な挨拶な どあ らゆるシ ーンで外 国人 との積極的な
コミ ュニケー ションに千葉 県をあげ て取り組みた い。
アフ ターオリ ンピックにお ける外国 人の評価で 、
「 千葉 県のおも てなしが とても気
持 ちよかっ た」と言 われ るような 対応を す るこ とができ れば、千 葉県 の魅力や快適
性 が口コミ で世界に 伝わ って、千 葉県への リピ ーターの 増加とい う大 きなレガシー
につ ながるこ とが期待でき る。
東京オリ ンピック・パラ リンピック を観て、応援して、 支えよう
県 民にとっ て、東京 オリ ・パラは 、世界ト ップ レベルの アスリー トの 躍動する姿
を 目の当た りにでき る絶 好のチャ ンスであ る。 東京オリ ・パラ開 催期 間中は、全県
民 をあげて オリンピ ック ・パラリ ンピック を見 に行こう 。東京オ リ・ パラ開催を機
会 にオリン ピック・ ムー ブメント (スポー ツを 通じて友 情・連帯 ・フ ェアプレーの
精 神を培い 、相互に 理解 すること で、世界 の人 々が手を つなぎ世 界平 和を目指す運
動の こと、図 表 125 参照 ) を理解し 、各競技種目 や出場し ている国・選 手に高い 関
心を 持って応 援しよう。
ま た、東京 オリ・パ ラの 円滑な競 技運営に 欠か せ ない「 オリンピ ック ・ボランテ
ィア (約8万 人)」の募集 は 2016 年 から開始さ れる見込 みとなってい る(ロン ドン
五輪 では約7 万人の募集枠 に 20 万人 の応募があ った )。ボラ ンティア の内容は 、大
会 運営の管 理や競技 場内 の観客誘 導から通 訳・ 医療スタ ッフなど の専 門的な分野ま
で多 岐にわた る。オリンピ ックの開 催期間は、 2020 年7月 24 日~8月 9日、パ ラ
リン ピックは 8月 25 日~ 9月6日 と何れも夏休 み期間中 であるだけに、学生など の
若年 者を中心 に東京オリ・ パラを支 える活動への 積極的な 参加に期待し たい。
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図 表 125 オリンピズムの根 本 原 則
1. オリンピズムは人生哲学であり、肉体と意志と知性の資質を高めて融合させた、均衡のとれた総体とし
ての人間を目指すものである。スポーツを文化と教育と融合させることで、オリンピズムが求めるものは、
努力のうちに見出される喜び、よい手本となる教育的価値、社会的責任、普遍的・基本的・倫理的諸原則の
尊重に基づいた生き方の創造である。
2. オリンピズムの目標は、スポーツを人類の調和のとれた発達に役立てることにあり、その目的は、人間
の尊厳保持に重きを置く、平和な社会を推進することにある。
3. オリンピック・ムーブメントは、オリンピズムの諸価値に依って生きようとする全ての個人や団体によ
る、IOC の最高権威のもとで行われる、計画され組織された普遍的かつ恒久的な活動である。それは五大陸
にまたがるものである。またそれは世界中の競技者を一堂に集めて開催される偉大なスポーツの祭典、オリ
ンピック競技大会で頂点に達する。そのシンボルは、互いに交わる五輪である。
4. スポーツを行うことは人権の一つである。すべての個人はいかなる種類の差別もなく、オリンピック精神
によりスポーツを行う機会を与えられなければならず、それには、友情、連帯そしてフェアプレーの精神に
基づく相互理解が求められる。
5. スポーツが社会の枠組みの中で行われることを踏まえ、オリンピック・ムーブメントのスポーツ組織は、
自律の権利と義務を有する。その自律には、スポーツの規則を設け、それを管理すること、また組織の構成
と統治を決定し、いかなる外部の影響も受けることなく選挙を実施する権利、さらに良好な統治原則の適用
を保証する責任が含まれる。
6. 人種、宗教、政治、性別、その他の理由に基づく国や個人に対する差別はいかなる形であれオリンピッ
ク・ムーブメントに属する事とは相容れない。
7. オリンピック・ムーブメントに属するためには、オリンピック憲章の遵守及び IOC の承認が必要である。
(出所)公益財団法人 日本オリンピック委員会「オリンピック憲章」
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2014年度 千葉銀行受託調査
東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて千葉県が取り組むべき課題
2014年10月
■調
査
株式会社 ちばぎん総合研究所 受託調査部
〒263-0043 千葉県千葉市稲毛区小仲台 2-3-12
(電話)043-207-0621
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