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142 - 外航船員医療事業団

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142 - 外航船員医療事業団
外医療ニュース 10月1日 NO. 142
目 次
◇ 医 療
☆内科の無線医療の事例
横浜船員保険病院
庄田昌隆 . . . . . . . . . 1
☆生活習慣病の予防・
治療のための食事療法
◇ 安全衛生
ホトトギス . . . . . . . 4
☆命は、何よりも尊い
◇ 医 療
(日本語/英語対訳)
常理理事
鈴木武志 . . . . . . . . . 11
☆胃潰瘍、十二指腸潰瘍
(日本語/英語対訳)
神戸掖済会病院
山村 誠 . . . . . . . . . 16
◇ 事業団だより
☆第21回通常総会の報告 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
◇ 衛生の窓
☆ゲノム解析の戦略
◇ 随 想
☆ハイキング
新日本石油タンカー㈱
25
海ほたる . . . . . . . . . 29
村山陽子 . . . . . . . . . 31
医 療
77777777
77777777
77777777777777
内科の無線医療の事例
(診断の確定できない事例について)
横浜船員保険病院
副院長
庄 田 昌 隆
77777777777777
無線医療の交信で診断の困難な事例は内
科疾患の場合時々みられる。胸痛や腹痛の
場合は検査ができないだけに症状のみで診
断を確定することは余程の正確かつ精細な
観察の情報なしにはしばしば難渋する。今
回は胸痛と腹痛で下船する段階で診断未確
定の事例を3例示す。
事例1
46才 コック長 漁船 日本人
(船)
ニトログリセリンがないのでニトロール
舌下をし胸痛おさまった。足のしびれも消
失した。血圧140-80mmHg 脈拍80 /分
体温36.8℃
(無線医療センター )
心筋梗塞も否定できないが状態から狭心
症が考えられる。ニトロール3錠/日服用
させ、安静を保って下さい。寄港したらす
ぐ医療機関で受診して下さい。
(船)
(船)
インド洋で仕事中、30分前より胸痛を
訴え、うずくまっている。手足に冷感著明、
右 足 の し び れ を 伴 っ て い る。 血 圧198122mmHg 脈拍57 /分 体温35.6℃
指示をお願いします。
その後むかむかして気分悪い。体温下が
ると心臓付近が痛くなる。体を暖めると心
臓の痛み和らぐ。
(無線医療センター )
急性心筋梗塞が疑われる。ニトログリセ
リン舌下で様子をみて下さい。他に解離性
胸部大動脈瘤も否定できない。状態を再度
連絡して下さい。
(無線医療センター )
胸痛は2時間位続いているのか。現在症
状はないのか。また胸痛の部位を図示して
下さい。既往症はありますか。最初の症状
から解離性大動脈瘤も考えられまた心筋梗
塞も否定できません。早急に受診必要です。
1
(船)
ニトロール舌下するもその後胸痛は続い
ている。右足のしび れは取れた。胸痛は胸
骨 の 部 分 で 背 中 も 痛 い。 既 往 症 は 平 成
10年 よ り 健 康 診 断 で 高 血 圧(180/110)
を指摘されているが治療していない。
(無線医療センター )
昨日より腹痛、背部痛強く持続している
ことから、急性心筋梗塞や解離性胸部大動
脈瘤が強く疑われる。緊急入港が必要です。
ヘリコプター出動も可能なら要請すべきで
しょう。
事例2
54才 二等航海士 汽船 日本人
ット、ザンタックなど)を少量の水分で内
服させて下さい。入港したらすぐ病院で受
診させて下さい。
(船)
H2ブロッカーは持ち合わせていません。
イイラック、サクロンなどの胃薬はありま
す。
(無線医療センター )
サクロン内服でよろしいですが、すみや
かに入港し病院での受診をすすめます。
(船)
サクロン服用していますがその後黒っぽ
い血液を含む嘔吐をしました。意識ははっ
きりしています。血圧は108-60 シンガ
ポール入港の手配をします。
(船)
(船)
1月20日頃から胃が痛くなり胃薬を服
用していた。一時胃痛は止まったが、1月
27日頃から胸の辺りが痛く、腰も痛い。
昨夜より胸の痛みは重い感じとなり立って
歩くとめまいもある。横になるとめまいは
消える。顔色も悪い。血圧140-90、便は
黒色。1月31日日本の港に入る予定。
1月30日朝 吐血 150㏄前後あり顔色
悪くなりましたがその後嘔気なく顔色もよ
くなってきました。血圧104-68 岩国ま
で航行継続よろしいでしょうか。1月31
日早朝着く予定です。
(無線医療センター )
安静を保ち岩国に入港後すぐ受診させて
下さい。緊急内視鏡検査を受けることにな
ると思いますので朝より水分も取らずにい
て下さい。
事例3
17才 実習生 練習船 日本人
(船)
(無線医療センター )
上部消化管(胃叉は十二指腸)よりの出
血が疑われる。めまいは出血による血圧低
下や貧血の症状と思われます。食事は絶食
とし、H2ブロッカー(ガスター、タガメ
2
2月6日朝より胃部付近の痛みあり食べ
ると吐いてしまう。1日様子を見ても症状
とれない。右下腹部痛はない。ブスコパン
を1錠とクロマイ1錠を服用させた。
(無線医療センター )
現時点の症状からは急性胃腸炎、胃十二
指腸潰瘍、膵胆道疾患、腸閉塞などが考え
られますが、断定できません。取り敢えず、
ガスター2錠/日2回にわけ服用し、腹痛
に対してはブスコパン1回2錠、1日3回
まで悪心に対してはナウゼリン1回2錠1
日3回まで服用で様子みて下さい。食事は
1日程止め、可能であれば飲水は少量づつ
瀕回にとらせて下さい。飲水も不可能なら
点滴が必要です。腹部手術の既往の有無、
排ガス、排便下痢の有無、発熱、背部痛の
有無などをチェックしながら経過を見て連
絡下さい。
(船)
2月7日朝の状態は胃部痛変わりなくつ
づいており食欲もありません。背部痛右下
腹部痛はありません。手術歴ありません。
その後排便ありません。
(無線医療センター )
ガスターの継続投与、腹部痛のブスコパ
ン使用は続けて下さい。食事を中止し水分
を与えて下さい。点滴無理であれば液状の
栄養剤、流動食を始めて下さい。
(船)
2月8日ガスターは続けているが症状変
わりません。ポカリスエット与えるも飲用
後余計腹痛強くなります。船での点滴は不
可能です。ホノルルまで3昼夜要します。
その後排便はないがおならは出ています。
(無線医療センター )
内服の追加としてアルサルミン3錠/日
とコランチル3包/日を飲ませて下さい。
水分補給して下さい。
(船)
2月9日その後も胃部痛と下腹部の張り
があります。食欲なく水分を少量とってい
る程度で脱水症を心配しています。ホノル
ルは2月11日入港できるかも知れません。
(無線医療センター )
引き続き薬服用し水分を取らせて下さ
い。
(船)
2月10日ブスコパン筋注で少し腹痛和
らぎましたが薬が切れるとまた腹痛が出て
きます。水分はジュースを800ml /日取り
ました。2月11日18時ホノルルに緊急入
港できることになりました。
事例1は狭心症から急性心筋梗塞叉は解
離性胸部大動脈瘤に診断が変化して行く過
程を。
事例2は最初ははっきりしなかったもの
の経過を追う中で上部消化管出血の可能性
が強くなった症例そして事例3は最初から
最後まで診断がはっきりしないまま入港を
迎えた症例でありいずれも受診した医療機
関の検査結果の報告が待たれる症例であっ
た。
このような診断不明のまま状態が悪化し
て行くか、改善の見られない例はやはり近
くの港に可能な限り速く入り医療機関にみ
ていただくことが必要です。
3
食事療法のページ
生活習慣病の予防・
治療のための食事療法
ホトトギス
333333
333333
33333333333333
33333333333333
生活習慣病の原因を極言すれば、適正を
欠いた食生活と運動不足といえます。これ
らについては多くの論文があります。この
度、糖尿病の食事療法を専門とされる清野
京都大学教授と、予防医学を専攻される和
田埼玉医大教授の対談記録を目にしまし
た。
衛生管理者の皆様にも是非お目を通して
頂きたいと、編集者にお願いして掲載して
いただきました。
和田:生活習慣病の予防あるいは是正のた
めの健康習慣では食生活、すなわち食習慣
や食事は運動と並んで最も重要とされてい
ます。有名なブレスローの「7つの良い健
康習慣」のなかにも、適正体重とか朝食を
摂る、あるいは間食をしない、または適正
飲酒と、食事に関係する項目が4つも含ま
れています。本日は生活習慣病の予防・治
療のための食事療法、そのポイントとコツ
を京都大学の清野先生に伺うことにいたし
ました。
4
食生活と生活習慣病
和田:早速ですが、日本人の食生活からみ
た生活習慣病の現状はどのようになってい
ますか。
清野:糖尿病などの生活習慣病は、日本も
アメリカもほぼ同じ頻度で発症していま
す。ただ、アメリカ人はものすごく太って
いるのに、日本人はそうでもない。外見も
違えば病気の内容や状態も違うといえま
す。これには食生活が大きく関わっており、
日本人は数千年前から、穀物類中心の生活
をしてきて、動物性の脂肪摂取量は抑えら
れてきました。ところが第二次世界大戦後、
肉類を中心とする脂肪摂取量が上がったの
ですが、これが生活習慣病の増加の原因に
なっているといわれています。
和田:アメリカ人と違う点は、食事のカロ
リーや脂肪摂取量にあるのでしょうか。
清野:そうですね。近年、急激に穀物類の
摂取量が減ってきています。脂肪摂取の中
身は、特に飽和脂肪酸という肉由来のもの
が増えていることが大きな特徴です。しか
図1
し、脂肪摂取総量はまだアメリカの半分強
程度で、絶対量としては、さほど増えては
いません。
和田:確かに日本人の糖質摂取量は最近、
減っていますね(図1)
。さて、食事療法
の基本的な目的は、どのように考えておけ
ばよいのでしょうか。
清野:私たちの体内の代謝がうまくいくよ
うにすることが基本です。しかし、私たち
の食生活は長年培われてきたものですから
一朝一夕には変えられません。制限ばかり
を強調するのではなく、食習慣や嗜好、食
べる量など、長く続けられるような食生活
をすることが大切です。
和田:本題に入りますが、予防と治療のた
めの食生活のポイントはどのように考えれ
ばよいのでしょうか。
食生活の改善
清野:第1は食事をきちんと摂っているか
5
どうかです。最近は、朝食抜きで(図2)、
昼は軽くすませ、夜はアルコールと共にド
カ食いをして寝てしまう人が意外に多く、
これが内臓に脂肪を蓄積させる大きな原因
となっています。総カロリーの40%以上
を夕食で摂ると、内臓脂肪がより多く沈着
するというデータもあります。ですから子
どものときから、きちんとした食行動を身
に付けさせることが大事だと思います。
和田:早食いもよくない習慣ですね。
清野:そのとおりで、肥満者のほとんどが
早食いです。早食いの人は他人と話しなが
らでも絶えず食べるので、単一時間当たり
の摂取エネルギーが多いことも指摘されて
います。
和田:早食いの問題点は、満腹感が得られ
る前にたくさん食べてしまうこともその1
つでしょうか。
清野:そうですね。食べ物を咀嚼すること
によって神経系の調節機構が働いて、タイ
ミングよくインスリンが分泌されます。ま
た消化管運動がうまくいくなど、利点が多
いので、ゆっくり時間をかけてよく噛んで
食べることが代謝の観点からも望ましいと
思います。
和田:朝食はきちんと食べたほうが良いで
すね。
清野:これは運動療法と食事療法の兼ね合
いからも重要です。たとえば糖質なら筋肉
へ運び入れて利用する必要がありますか
ら、食べたら動くことが食事療法の基本で
す。朝食、昼食後は動きますが、夕食後は
ほとんど動きませんので、朝昼中心に食べ
ていただきたいと考えています。
和田:太っている人の行動的な共通項とし
ては、早食い、まとめ食いなどの面が指摘
されますね。もう1つは、太っている人は
6
喉までつかえるくらい食べて満腹だと感じ
ている人が多いようですが、普通の人は腹
八分目くらい食べると満腹を感じる。
清野:おっしゃるとおりです。それは消化
管が拡張して、そのあとにインスリンが出
るからです。最近の知見ですが、脂肪細胞
からレプチンというホルモンが出て、中枢
神経に満腹になったという信号を送るので
すが、肥満者ではそのセッティングポイン
トが変わってしまっているそうです。です
から、ある程度の空腹感に慣れることも大
事だと思います。
和田:やはり摂取カロリーが基本になるの
ですか。
清野:口から入る量の制限が、摂取エネル
ギーの設定のうえでは最も重要です。
和田:カロリー摂取は具体的にはどのよう
にすればよいのでしょうか。
清野:標準体重に一定のカロリー数を掛け
るわけですが、太っている人では、標準体
重当たり25kcalになります。極端に太っ
ていれば、さらに少なくなりますが、3食
にきっちり配分することが大事です。
和田:たとえば身長が約160㎝の人では大
体1,400〜1,500kcalくらいのカロリーが
最 も 良 い で す ね。 日 本 人 は 平 均 約
2,000kcal以上摂っていますか。
清野:そうですね。若い人では3,000kcal
というのもざらにあります。特にファース
トフードをよく食べる人では3,000kcal、
そのうち脂肪が100gということもまれで
はありません。
和田:ファーストフードやレトルト食品、
加工食品はかなりの脂肪分を含んでいます
ね。その際、3大栄養素(脂肪、糖、蛋白)
の割合や摂取法は基本的にはどのように考
えておけばよいですか。
栄養成分による食事指導
清野:総エネルギーのうちの50〜55%く
ら い を 糖 質 で 求 め る こ と に な り ま す。
1,400kcalですと糖質が200g前後となり
ますから、ごはんで茶碗軽く1杯半ですね。
和田:そのくらいが適量ですね。
清野:次に脂肪摂取量を決めますが、60
g程度を超えないことが重要です。特に脂
肪の中身も大事です。飽和脂肪酸とか不飽
和脂肪酸、あるいは多価のものとか一価の
もの、特に重要なことは、肉類に含まれて
いる飽和脂肪酸が多くなると動脈硬化など
が起こりますので、魚やオリーブオイルな
どで脂肪を摂るように指導することが重要
です。
和田:魚には動脈硬化を抑える脂肪があり
ますね。
清野:そうですね。いわゆるω 3という脂
肪があり、コレステロールの合成を抑制し
たり、中性脂肪を下げる作用がありますか
ら、脂肪といっても内容が重要だといえま
す。
和田:一般の人にとっては、多価不飽和脂
肪酸についてまで気を配ることは非常に難
しいと思いますが、動物性の脂はなるべく
控えて、魚や植物性のものを摂ると考えて
いただければよいですね。蛋白質はどのよ
うに考えればよいのでしょうか。
清野:わが国ではおかずが少ない時代が続
いていたことから、その反動で、蛋白質だ
けは好きなように食べなさいという風潮が
あり、最近は蛋白質の過剰摂取になってき
ました。蛋白質が多いと、それと共に脂肪
が入ってくることになります。特に脂身の
多い肉には悪いほうの脂肪(飽和脂肪酸)
が一緒に入っていますので、一定量にとど
めるべきです。また、血圧の高い人や糖尿
病などで蛋白質の過剰摂取を続けていると
腎臓障害が起こることも知られてきていま
すから、病気の程度に応じて蛋白質の制限
も必要になってきています。
和田:その場合、動物性蛋白質の摂取量を
減らすことが優先するのでしょうか。植物
性の蛋白質についてはどうでしょうか。
清野:蛋白質のなかにも非常に蛋白価の高
い蛋白質とそうでないものがありますの
で、それを上手に食べ合わせることが必要
です。動物性か植物性かにこだわらず、そ
れに付いてくる脂肪がなければよいと思い
ます。
和田:日本人は米を中心として食べてきた
民族ですが、米との相性が良いことから、
食塩の摂取量がかなり多いですね。これに
関してはどのように対処すればよいでしょ
うか。
清野:食塩摂取量は一時減っていました
が、最近また増えてきており、国民1日平
均16gくらいになっています。食塩を摂
り過ぎますと、食塩に敏感な人は血圧が上
がりますから、薄味に慣れることが第1で
す。それから塩分の多い食事の際は、果物
とか生野菜に含まれているカリウムを摂り
ますと、塩分を体内に吸収させない効果が
あります。
7
和田:食塩を急に減らすと食事がおいしく
食べられなくなってしまう人が多いよう
で、非常に難しい問題ですね。日本では食
塩摂取の最大目標値を1日10gといって
いますが、アメリカでは6g程度でしょう
か。そのくらいでも人間は生きていけます
ね。
清野:十分生きていけます。ただ、味が淋
しいですね。
和田:食塩以外のもので味付けをすること
が基本になるのでしょうか。
清野:栄養師の人がよく言うことは、だし
を上手にとれば食塩はあまり必要ないと。
結局、塩、砂糖、脂が健康に最も悪い食べ
物の代表であり、それらをできるだけ食卓
から減らすことがよいと思います。
和田:先ほど先生が触れられましたが、カ
リウムの摂取量は、ナトリウムと拮抗する
ということから、なるべく多く摂ったほう
がよいのですね。
清野:そのとおりです。健康者には生野菜
や果物を十分に摂ることです。
和田:最近、カルシウムやマグネシウムの
摂取について盛んにいわれるようになりま
したが、どんな食品から摂るとよいのです
か。
清野:日本人に不足しているカルシウム
は、牛乳、小魚、キノコ、海藻などにたく
さん含まれており、マグネシウムは、ゴマ
とかソバなどに含まれています。
和田:それらを摂ることで、単に骨粗鬆症
の予防のみでなく、血圧を下げる効果があ
るといわれていますね。
清野:そうですね。健康者では多く摂取す
る必要があります。ただし、果物の摂取で
注意していただきたいことは、果物のなか
に蔗(しょ)糖が含まれていること、糖尿
8
病の人では、果糖が体内ですぐにブドウ糖
に変わってしまい、著しく血糖が上がりま
すので、厳重に注意していただきたいと思
います。
和田:中性脂肪なども果物で値が上がるこ
とがあるようですね。そうすると野菜が良
いことになりますね。最近、食物繊維が非
常に強調されていますが、日本人には不足
しているのでしょうか。
清野:これは1日20g摂るように勧めて
いますが、現在でも15〜16gぐらいは摂
っていると思います。食物の加工が進み、
果物でも繊維の多い皮を捨てるなど、より
精製される方向に変わってきたことから、
減っているのではないかと思います。
和田:食物繊維が多く含まれる食品は、野
菜と果物が中心でしょうか。
清野:食物繊維は大きく分類して、水に溶
けるものと溶けないものがあります。たと
えばコレステロールを下げるという点では
水に溶ける繊維がよく、ワカメとかコンニ
ャク類などのように水に溶けて膨らんで悪
い物を吸着したり、糖の吸収を遅らせる役
割をします。もう1つ、水に溶けないもの
は野菜類が中心となり、ゴボウ、ニンジン、
大豆のようなものです。これは腸の中で食
べ物の通過時間を短くして腸をきれいにす
るので、大腸癌の予防などには良いといわ
れています。
和田:水溶性のものも、不溶性のものも、
両方とも摂ったほうがよいのですね。
清野:そうだと思います。
和田:現在の1.5倍以上は摂ったほうがよ
いと。
清野:ぜひ摂っていただきたいと思いま
す。
和田:最近、抗酸化食品のことが盛んにい
われるようになりましたが、これはどのよ
うなものを指すのでしょうか。
清野:食品のなかには酸化ストレス(注)
を起こしやすいものがあります。また、栄
養素でも糖や脂肪が酸化ストレスを起こし
て、細胞中の核酸や細胞質を傷害し、その
結果、臓器そのものを傷害することもあり
ます。生体内には、それらの傷害を防ぐシ
ステムもありますが、抗酸化食品であるビ
タミンEとかビタミンCなどを摂ると、よ
り効果的です。
和田:ほかにはどんな食品がよいのでしょ
うか。
清野:具体的にはβカロチンを含む食品に
なりますが、サツマイモ、ニンジン、カボ
チャ、ホウレンソウ、ブロッコリーなどに
たくさん含まれています。緑茶などにはカ
テキンが含まれていますし、昆布茶などに
も入っています。それから、近年話題にな
っていますポリフェノールを含んでいる赤
ワインやオリーブオイルにも酸化ストレス
を抑える作用があり、非常に注目を集めて
います。ただ、野菜類は調理をしますと抗
酸化成分が3〜4割減少することになりま
すので、調理法を工夫する必要があります。
和田:生活習慣病の予防としては、抗酸化
作用が非常に重視されていますね。しかし、
それを食品で解決できればこんなに良いこ
とはないと思います。大豆はどうでしょう
か。
清野:大豆は抗酸化作用がありますし、食
物繊維も含んでいる大変良い食べ物です。
和田:日本人は昔から大豆製品をたくさん
摂っていますが、非常に良い食習慣ですね。
先ほどお話が出ましたカボチャもそうです
が、日本人が昔から食べている食品ですね。
清野:ですから昔は生活習慣病が少なかっ
たともいえますね。
和田:そうですね。動物性の脂や蛋白質を
あまり摂っていなかったという点でも、日
本人の食習慣はかなり模範的ですね。
清野:現代の若者のように揚げ物を中心と
した食生活を続けていきますと、病気が増
えることが予想されます。だからこそ家庭
では子どものころから手作りの味に親しま
せることが最も大事なことだと考えていま
す。
和田:お母さんが、日本的な食材を使って
手作りの料理を作ることが基本といえます
ね。
良い食事習慣を
和田:いかに楽しい食生活をするかが食事
療法の基本になると思いますが、具体的な
方法についてお伺いします。
清野:苦痛を伴う食事療法は長続きしませ
んから、楽しみながら行ってほしいですね。
食事をしますと熱産生が起こり、うまくエ
ネルギーとして使われるようになっていま
す。食べる楽しみが伴うことで代謝もうま
くいきますが、いやいや食べていては体の
ためにもよくありません。ボリュームや、
味もいろいろ工夫して、家族が団らんをし
ながらよく噛んで食べることが重要ではな
いかと考えます。
もう1つ、食べた後は一定の時間をおいて
9
運動することが内臓脂肪の沈着を防ぐ唯一
の方法で、成人病の治療や予防につながり
ます。
和田:食事だけでは予防や治療になりにく
いので、食事と運動を必ず一緒に考えてい
くことが非常に重要ですね。
清野:食事療法だけでは筋肉が衰えて脂肪
が残ります。ですから運動を伴って初めて
脂肪を減らすことができます。
和田:そうですね。現代のサラリーマン家
庭では、お父さんが夜遅く帰るので一緒の
夕食にはなりません。昔の日本人は家族揃
っての夕食を楽しんで、しかも非常に健康
的な食べ物を食べていたといえますね。生
活習慣そのものも重要だといえるでしょう
か。
清野:夕食後、3時間程度は代謝が活発に
行う必要がありますから、その間は起きて
いてほしいですね。食事のあとすぐに寝ま
10
すと副交感神経が優位になって脂肪の蓄積
が始まります。就眠の3時間前に夕食をす
ませることも大事です。
和田:現代人は夜食もよく食べますね。こ
のような習慣はどうでしょうか。
清野:あれは絶対によくありません。自分
から病気に近づいていくようなものです。
和田:それから、非常に脂っこい食品、塩
分の多い加工食品など、現在の食生活は非
常に乱れていますね。
本日は生活習慣病の予防ないし治療に際
してどのような食生活をすればよいか、そ
の基本とポイントをお話しいただきまし
た。
(注)生体は常時酸化の方向へストレス
がかかっています。酸化ストレスは、健
康で正常な状態から老化や病気の状態に
向けて誘導します。
“私からのアドバイス”
命は、何よりも尊い!
常務理事 鈴木武志
22222
22222
222222222222222
222222222222222
当事業団の会員28船社の船員の配乗状
況は、大多数の船舶が外国人船員との混乗
配乗形態である。
邦人船員と外国人船員の混乗形態の配乗
が生まれてから相当長い年月が経過してい
る。混乗が始められた当初、混乗船に乗り
組んだ邦人船員から、生まれ育った環境も
言葉、食べ物、飲み物、仕事の仕方、生活
様式、宗教などすべてが異なる人間が限ら
れた船内で一緒に就労し生活していること
から、言葉では言い尽くせない苦労と悩み
があったと言い聞かされてきた。そのため、
船社も船員も混乗船の円滑な運航を図るべ
く、船員相互が船内融和に努め、就業にあ
たっての指揮命令系統の整理調整や船内生
活面での改善に取り組んで、大きな事故も
なく今日に至ってきた。しかし、外航海運
関係者が予期し得ない、起こってはならな
い、起こしてはならない悲しい残念な事件
が発生した。
邦人船員にとっても、外国人船員にとっ
ても悲しい、残念なことである。
当事業団は、外航船に乗り組む船員のた
めの外地及び海上における医療体制の整備
並びに健康管理体制の充実を図ることを事
業目的にしている。船員の健康管理は、体
だけではなく心の健康管理も重要であると
認識していることから、この種悲しい残念
な事件の再発防止に向け取り組まなければ
ならない。
◎心身ともに健康体でありたい。
体だけではなく、心も健康体で乗船就労
することが大切である。
心の病は、仕事上や日常生活における不
満感や不安感の蓄積、即ちストレスの蓄積
が最も大きな要因と言われている。
次に掲げるストレスの蓄積解消法は、既
にほとんどの船社では実施されていること
ではあるが、その実施状況を再チェックす
る必要が感じられる。
① 乗組員の中からリーダーを選任指名
し、仕事上の相談事や苦情を処理する
組織をつくり、不満感・不安感を小さ
いうちから摘み取ること。キャビンで
の一人の飲酒(solitary drinking)は
禁止する。
② 乗船前のオリエンテーションを的確
に実施する。混乗する相手船員の異な
る生活文化や乗船する船種、就労環境
などの周知徹底することが大切であ
る。
11
③ 気分転換を図るために、船内レクリ
エーションを実施する。少しでも体を
動かすゲームとかゴルフ練習など。テ
レビは余りストレス解消にならない。
④ 家族とのコミュニケーションづくり
も大切。母国の派遣会社に、留守家族
担当者を選任してもらい、家族から船
員宛にレターを出すよう指導してもら
う。また、留守家族担当者は、家族か
らの相談を受け、船員に心配負担を掛
けさせぬようする。家族とのコミュニ
ケーションを図るための電話使用方法
などいろいろな工夫が求められる。
⑤ 船内生活面の工夫
1週間の内、月曜日から金曜日までア
ルコール類飲酒を禁止し、土曜日にパ
ーティーを行い、仕事上の話しは厳禁
にし、楽しいパーティーを催する。こ
のパーティーには、邦人船員も招待参
加させ懇親の場とする。パーティーの
時間は限定し、時間厳守の慣習を付け
12
る。日曜日は、個人的な休息時間帯と
する。
船内における日常生活で自己管理の意識
向上が必要と思われるが、心の病に罹った
者に自己管理を求めても無駄であると言わ
れる。要は、心の病に罹らない心身共に健
全な人間であることが求められる。その要
因はストレスの蓄積にある。ストレスの解
消は自らの工夫と努力によって図らなけれ
ばならない。悲しみを家族に与えないため、
常に冷静にものごとを判断し船内融和に努
めトラブルを起こさないことである。自分
の命も大切であるが、他人の命はもっと尊
重されなければならない。この基本原則は
人類共通の理念である。
外航船船員の海上医療体制の整備と健康
管理体制の充実を図ることを目的にしてい
る当事業団として、この悲しい事件の再発
がないことを願い所見の一端を述べること
とした。
My Advice:
Nothing is as valuable as life!
Director General, Takeshi Suzuki
Japan Seamen's Medical Affairs
Corporation
55555
55555
555555555555555
555555555555555
The main manning arrangement for seafarers serving onboard ships of the 28
members of Japan Seamen's Medical Affairs Corporation is the "mixed manning
scheme."
Quite a long period has passed since the mixed manning scheme made its debut
in the world merchant shipping scene.
One day, at an early stage of the history of mixed manning, I was told by a
Japanese seafarer who served onboard a ship with a mixed Japanese and nonJapanese crew that the difficulties and mental stresses he experienced were
beyond description, because seafarers of different nationalities who had been
born and grown up under different environments, speaking different languages,
having different diets, having different religions, and doing work in different
ways must live and work together onboard the same ship. Under these
circumstances, both shipping companies and seafarers have made great efforts to
smoothly operate ships served by mixed crew members through enhanced
shipboard morale; reviewing and reorganizing the system of shipboard work
command; and, improving various aspects of shipboard life. As a consequence of
great efforts by all parties concerned, the mixed manning scheme made sound
progress without experiencing major accidents.
However, there have been unfortunate accidents that should not have occurred,
which affected both Japanese and non-Japanese seafarers.
It is sad and regrettable to both Japanese seafarers and non-Japanese seafarers.
The objectives set for this Corporation in its corporate activities are to maintain a
medical system at sea and overseas for seafarers serving onboard ocean-going
13
ships, and to improve their health management systems. Reaffirming the
importance of the health management of seafarers, not only physical but also
mental health, we must take vigorous steps to prevent the recurrence of such
accidents.
◎ We want people to be both physically and mentally
healthy.
It is important that seafarers live and work onboard ships in good physical and
mental health.
It is said that mental illness is mostly caused by accumulated stress,
dissatisfaction and fear in daily live and work; i.e., accumulated stress.
Although the following methods of relieving mental stress have already been
implemented in many shipping companies, it is considered to be necessary to
examine the actual state of implementation.
① Assign a leader from among crew members, set up an organization to
undertake consultation services, hear complaints from crew members and
give advice on shipboard work and life as required, so that the seeds of
dissatisfaction and fear can be eliminated before they can grow.
Prohibit solitary drinking in cabins.
② Implement pre-boarding orientation correctly.
It is important to thoroughly acclimatize incoming seafarers to the living
culture and the habits of existing seafarers, and familiarize them with the
equipment and the work environment of the ship they are joining.
③ Conduct shipboard recreational gatherings to help crew members to relax. Games requiring physical actions such as exercising golf are recommended. Watching TV does not help much to relieve stress.
④ It is also important to encourage crew members to communicate with their
families.
Have the manning agency in the native country of crew members assign a
person in charge of communication to encourage crews' families to send
14
letters as frequently as possible. In addition, have the person in charge to
promote consultation services for families so that unnecessary mental stress
is not caused among seafarers.
There seems to be a lot of room for improving telephone use to ensure good
communication between crews and families.
⑤ Improving shipboard life
Prohibit the drinking of alcohol from Monday to Friday, and hold a party on
Saturday at which work-related topics must not be discussed. Have Japanese
crew members join such parties to improve mutual understanding.
Restrict the length of such a party to discipline all crew members for punctual
shipboard life to make it second nature.
Set Sunday aside for free personal time.
It is considered to be necessary to improve self-control through daily shipboard
life, but it is said to be useless to ask for self-control from a person suffering from
mental illness.
The point is - every seafarer must be tough so that he does not suffer from both
physical and mental illness. The accumulation of mental stress is the real enemy. Relieving mental stress must be realized through individual ideas and efforts. Make cool judgements, and avoid making trouble onboard the ship so that the
families of seafarers do not worry. Every life is valuable, but the lives of others
must be respected more. This is a common idea among all human beings. Before
concluding this message, Japan Seamen's Medical Affairs Corporation, which is
engaged in maintaining medical systems for seafarers at sea and overseas, and
improving the health management system hopes there will be no more accidents.
15
医 療
胃潰瘍、十二指腸潰瘍
神戸掖済会病院
内科部長
山 村 誠
llllllll
llllllll
llllllllllllll
llllllllllllll
図1 胃潰瘍の組織分類(村上の分類)
UL-Ⅰ
UL-Ⅱ
UL-Ⅲ
UL-Ⅳ
粘 膜 層
粘膜筋板
粘膜下層
固有筋層
將 膜
びらん
潰瘍は図1で示すように、粘膜筋板を越
えた粘膜下層より深い組織欠損を言う。ま
た、粘膜筋板を越えないものはびらんと言
う。胃潰瘍、十二指腸潰瘍は総称して消化
16
潰 瘍
性潰瘍と呼ばれ、胃潰瘍は胃角や胃体部の
小彎、十二指腸潰瘍は前壁に好発する。性
比では男性に多い。好発年齢は30歳以上
で十二指腸潰瘍の方が胃潰瘍より若く発症
する傾向にある。これは、胃潰瘍は低酸症
または正酸症の症例が多いのに対し、十二
指腸潰瘍は過酸症の症例が多いことに由来
していると考えられる。自覚症状は、心窩
部痛、胃部膨満感、胸焼け、嘔気などがみ
られる。重症の場合には吐血、下血なども
みられる。まれに穿孔し、緊急手術になる
こともある。
胃液の分泌:胃液は無色透明、強酸性で、
一日に約1Lから2L分泌される。その主
成分は塩酸、ペプシンと粘液である。胃液
の分泌は神経性および体液性に調節され、
分泌刺激機転により脳相、胃相、腸相に分
けられる。
食物を連想したり、見たり、においを嗅
いだりすることにより迷走神経を介して胃
底腺細胞を刺激し、ペプシノゲンの多い胃
液を分泌する。これが脳相である。次に、
摂取された食物が胃幽門洞にあるガストリ
ン分泌細胞(G細胞)を刺激し、内分泌さ
れたガストリンが胃底腺にある壁細胞を刺
激し塩酸(胃液)を分泌する。これが胃相
である。続いて塩酸が分泌され幽門洞の
pHが2.0以下になるとガストリンの分泌は
停止する。次に胃酸が十二指腸粘膜に達す
ると十二指腸粘膜にあるセクレチンが分泌
細胞(S細胞)を刺激し、セクレチンが内
分泌される。そのセクレチンが膵臓の外分
泌 細 胞 を 刺 激 し、 水 と 重 曹(NaHCO3)
が外分泌され十二指腸内腔の塩酸は中和さ
れる。また、セクレチンは胃底腺の主細胞
も刺激し、ペプシノゲンを分泌される。こ
のペプシノゲンは酸によりペプシンとなり
蛋白を分解する。これが腸相である。この
ように消化の過程が進んで行く。しかし、
消化の過程
脳相
食物を見る
迷走神経
胃底腺
(ペプシノゲン)
においを嗅ぐ
胃相
食物摂取
幽門腺(ガストリン)
胃底腺
(HCl)
腸相
pH2以下
HC l
ガストリン分泌停止
十二指腸
(セクレチン)
NaHCO3, 水分泌
胃底腺
(ペプシノゲン)
17
この過程のいずれかの部位で不都合が生じ
ると潰瘍が形成される。
成因:これについてはいろいろな説がある
が、多くは攻撃因子と防御因子のバランス
潰瘍
正常
潰瘍
正常
防御因子
防御因子
攻撃因子
十二指腸潰瘍
正常
攻撃因子
胃 潰 瘍
潰瘍
防御因子
攻撃因子
健 常 人
S h a y のバランス説
攻撃因子
1) 塩酸(HCl)
:前述のように十二
18
が崩れて起こってくると考えられている
(Shayの バ ラ ン ス 説 )。 ま た、 最 近 で は
Helicobacter pyloriの感染が大きく影響
していると言われている。
指 腸 潰 瘍 の 場 合、 最 高 酸 分 泌 量
(maximal acid output MAO)も基
礎分泌量(basal acid output BAO)
も正常な人に比べ高い症例が多い。
2) ペプシン:胃底腺の主細胞からペプ
シノゲンが分泌され、酸により活性化
される蛋白分解酵素。
3) Helicobacter pylori:ヒトの胃粘膜
に生息するグラム陰性杆菌である。ウ
レアーゼ活性があり、尿素を分解しア
ンモニアを作り粘膜を傷害する。また、
このアンモニアにより酸を中和し胃液
の中で生息が可能となっている。最近
この菌と胃炎、胃・十二指腸潰瘍との
深い関連を示すデーダーが多く、再燃
を繰り返す患者にはプロトンポンプ阻
害剤、クラリスロマイシンとアモキシ
シリンを投与して除菌する事が多くな
っている。
4) N S A I D(non-stroidal antiinflammatory drugs):消炎鎮痛剤
であるが、胃粘液の減少や胃粘膜血流
の減少などを起こしてくる。
5) 喫煙:胃粘膜血流の減少、酸分泌の
増加などを起こす。
6) ストレス:自律神経を介して粘膜血
流を減少を起こしてくる。
防御因子
1) 粘液・粘膜関門:胃内腔は胃液があ
りpH 2と高酸である。それが粘液・
重炭酸により濃度勾配ができ胃粘膜細
胞表面は約pH7.4となる。
2) 粘膜血流:胃粘膜血流は、酸素や重
炭酸イオンを供給し、水素イオンや老
廃物を排泄する。
3) プロスタグランディン(PG)
:胃
粘液分泌、粘膜血流増加により胃粘膜
細胞保護作用(cytoprotection)を示
す。
治療:内科的に治療する場合は、まず安静
にしてストレスを取り除く必要がある。規
則正しい生活を心がけ、適度な運動や趣味
により気分転換が必要である。
1) 食事療法:基本的には胃の負担を軽
くするため消化の良い食事とし、食物
繊維などはできるだけ避ける。また、
肉類などの胃液の分泌を亢進させた
り、胃内停滞時間の長い脂肪など、胃
粘膜を刺激する香料、嗜好品などは避
けるべきである。
2) 薬物治療:前述した攻撃因子の抑
制、防御因子の増強を図る薬剤が必要
である。攻撃因子の抑制するのは、従
来は制散剤、抗コリン剤、抗ペプシン
剤、抗ガストリン剤などであったが、
現在はプロトンポンプ阻害剤やH2受
容体拮抗剤などが良く用いられる。
また、防御因子の増強には、粘膜保護
剤、組織修復促進剤、粘液産生・分泌
促進剤、粘膜血流改善剤があり、プロ
スタグランディン製剤、プロスタグラ
ンディン合成促進剤等もある。
19
333333
Gastric ulcers and duodenal ulcers
Director of the Internal Medicine Department.
Kobe Ekisaikai Hospital
Makoto Yamamura, M.D.
333333
33333333333333
33333333333333
Fig. 1. Classification of gastric ulcers by tissues
(Dr. Murakami's classification)
UL-Ⅰ
UL-Ⅱ
UL-Ⅲ
UL-Ⅳ
Mucosal layer
Mucosa muscular tunica
Mucosa substratum
Peculiar muscular
tunica
Serous membrane
Erosion
Ulc e r
Ulcers are tissue defects existing deeper than the mucosa substratum across the
mucosa muscular tunica as shown in Fig. 1. Tissue defects that do not exceed
the mucosa muscular tunica are called erosion. Gastric and duodenal ulcers are
generically called peptic ulcers. A gastric ulcer favors the gastric angle and the
small flexure of the stomach, while the duodenal ulcer favors the anterior paries. 20
A peptic ulcer occurs in men more frequently than in women. Predilection ages
for developing a peptic ulcer are older than 30 years. A duodenal ulcer tends to
occur at younger ages than a gastric ulcer. This is thought to be derived from
the fact that there are many cases of hypochlorhydria or normal acidity in gastric
ulcer, while there are many cases of hyperchlorhydria in duodenal ulcer. Subjective symptoms include epigastrium pain, feeling of stomach distention,
heartburn, and nausea. In severe cases, there are haematemesis and bloody
discharge. Infrequently, the peptic ulcer, when it perforates, requires an
emergency operation.
Secretion of gastric juice: Gastric juice is colorless and transparent, and strongly
acid. It is secreted in amount of 1 liter to 2 liters a day. Its main ingredients are
Process of digestion
(1)Brain phase:
(2)Appearance of food
(4)Vagus nerve
(3)Smel of food
(5)Gastric fundus gland
(pepsinogen)
(6)Gastric phase:
(8)Pyloric gland
(gastrin)
(7)Ingestion
(9)Gastric fundus gland
(HCl)
(10)Bowel phase:
(11) pH
2
(13) HCl
or lower
(12)Gastrin secretion stop
(14)Duodenum
(secretion)
(15)NaHCO3, water secretion
(16)Gastric fundus gland
(pepsinogen)
hydrochloric acid, pepsin, and viscous liquid. Secretion of gastric juice is
regulated by neurogenic and body fluid conditions, and it is divided into brain
phase, gastric phase, and bowel phase by secretion-irritating mechanisms.
When man thinks about, looks at, or smells food, the gastric fundus gland cell is
stimulated via the vagus nerve to secrete gastric juices which have abundant
21
pepsinogen. This is called a brain phase. Then, the food ingested stimulates the
gastrin secretion cell (G cell) in the stomach pyloric antrum, and the internally
secreted gastrin stimulates the mural cell in the gastric fundus gland and secretes
hydrochloric acid (gastric juice). This is called the gastric phase. Hydrochloric
acid is secreted successively, and when the pH of the pyloric antrum becomes 2.0
or lower, gastrin secretion stops. Next, when gastric acid reaches the duodenum
mucosa, it stimulates the secretion cell (S cell) in the duodenum mucosa, and
internal secretion occurs. Secretion stimulates the exocrine cell of the pancreas to
secrete water and sodium bicarbonate (NaHCO3), and hydrochloric acid in the
duodenum lumen is neutralized. Secretion also stimulates the chief cell of the
gastric fundus gland to secrete pepsinogen. This pepsinogen is converted into
pepsin by acid to resolve proteins. This is called the bowel phase. The process of
S h a y 's b a l a n c e t h e o r y
Normal subject
Ulcer
Normal
Defense factor
Aggression factor
Ulcer
Gastric ulcer
Aggression factor
Normal
Defense factor
Ulcer
Normal
Duodenal ulcer
Defense factor
Aggression factor
22
digestion progresses in this way. When a locus in this process causes a problem,
an ulcer occurs.
Cause: Many theories on cause have been reported, and most suggest that ulcers
are caused by a disturbance of the balance between aggression factors and
defense factors (Shay's balance theory). Recently, it was reported that infection
by Helicobacter pylori is greatly involved in the development of ulcers.
Aggression factors
(1) Hydrochloric acid (HCl) : As mentioned above, the maximal acid output
(MAO) and the basal acid output (BAO) are higher in many patients with
duodenal ulcers than those in normal persons.
(2) Pepsin: This is a protease produced by the action of acid on pepsinogen
secreted from the chief cell of the gastric fundus gland.
(3) Helicobacter pylori: This is a gram-negative bacillus inhabiting the
gastric mucosa of man. This bacillus decomposes urea to make ammonia
through its urease activity, and the ammonia damages the mucosa. Neutralization of acid by this ammonia makes it possible for Helicobacter
pylori to live in the gastric juice. Extensive data recently reported show
the deep involvement of this bacillus in gastritis and duodenal ulcers. Therefore, proton-pump inhibitor, clarithromycin, and amoxycillin are
frequently administered to patients with recurrences of gastritis and
duodenal ulcers to remove the bacillus.
(4) Non-steroidal anti-inflammatory drug (NSAID) : This is an antiphlogistic
analgetic, but tends to cause a decrease in the blood flow of the gastric
mucosa.
(5) Smoking: This causes a decrease in the blood flow of the gastric mucosa
and an increase in acid secretion.
(6) Stress: This tends to cause a decrease in the blood flow of the mucosa
through the autonomic nerve.
Defense factors
(1) Viscous liquid and mucosa barrier : Gastric juice exists in the stomach
lumen, and is strongly acid with pH 2. A concentration gradient is
formed in the gastric juice by viscous liquid and bicarbonate, and the pH
of the cell surface in the gastric mucosa becomes about 7.4.
23
(2) Mucosa blood flow : The gastric mucosa blood flow supplies oxygen and
bicarbonate ions and excretes hydrogen ions and waste product.
(3) Prostaglandin (PG) : PG performs cytoprotection of the gastric mucosa by
stomach mucous secretion and increase in mucosa blood flow.
Treatment : When a patient is treated with internal medicine, the patient must be
kept quiet to remove stress. The patient has to live a well-regulated life and
recreate himself/herself with adequate exercise or hobbies.
(1) Diet therapy: The patient should basically take digestible food to lighten
the load on the stomach and avoid dietary fibers as much as possible. The patient should also avoid eating meat, fat, and spices and favorite
foods. This is because meat enhances the secretion of gastric juice, the
fat stays in the stomach for a long time, and spices and favorite foods
stimulate the gastric mucosa. (2) Medicine treatment: Pharmaceutical treatment requires drugs to hold
down aggression factors and enhance defense factors. Conventionally,
antacid, anticholinergic, anti-pepsin medicine, anti-gastrin medicine, etc. were used to hold down aggression factors, but proton pump inhibitor or
H2 receptor antagonism medicine is frequently used at present. On the
other hand, mucosa protective agent, tissue-healing accelerator, viscous
liquid production/secretion accelerator, and mucosa blood flow
amelioration agent are used to augment defense factors. Further,
prostaglandin agent, prostaglandin synthesis accelerator, etc. are also
used for this purpose.
24
事業団だより
第21回通常総会および
第84回理事会の開催
さる6月20日10時30分から日本海運倶楽部において、第21回通常総会および
第84回理事会が開催されました。
審議事項は次の通りです。
第1号議案
平成13年度事業報告書及び決算報告書(案)の承認について
第2号議案
平成14年度事業計画書及び収支予算書(案)の承認について
第3号議案
理事及び監事の選任について
各議案は、いずれも提案通り承認あるいは決定されましたが、このうち平成13
年度事業報告書ならびに平成14年度事業計画の大要をお知らせします。
25
平成13年度事業報告
(13. 4. 1〜14. 3. 31)
事 業 概 要
本年度は、総会において決定された事業計画に基づき、その遂行に努めた結果、海外
における船員の医療体制の整備及び船員の健康管理体制の充実等について、概ね所期の
目的を達成することができた。
な お、 本 年 度 は 会 費 及 び 基 金 運 用 の 果 実 の ほ か、(財)日 本 海 運 振 興 会 よ り 補 助 金
7,299,000円の交付を受けて、事業を遂行することができた。
1.海外における船員医療体制の整備
(1) 海外特約医療機関の整備・世話役ネットワークの維持
本年度までに指定した全特約医療機関及び世話役の名称、所在地並びに利用要領
等を記載した「特約医療機関・世話役一覧(グリーンブック)
」を作成し、会員各
船社、海外船社代理店、特約医療機関及び世話役等に配布した。
追加事業として、特約医療機関との緊密な連携を維持するため、医療衛生用品
(テルモ電子体温計10本入1ケース)を各特約医療機関に提供した。
(2) 世話役の選任 世話役辞退の申し出があり後任者なし。
①平成13年10月31日付にて、いすず自動車㈱ポートエリザベス事務所閉鎖、新福世
話役帰国、後任者不在のため減員。
(3) 英文情報誌(JSMAC NEWS)の作成
これまでに整備してきた海外特約医療機関・世話役ネットワークを維持するとと
もに相互の円滑な交流を図るため、海外の特約医・世話役等から寄せられた情報を
内容とした英文情報誌を作成し、特約医療機関・世話役など関係者に配布した。
2.船員の健康管理体制の整備
(1) 国内特約医師による訪船診療
26
前年度に引き続き、次表の20医療機関等と契約を結んでこれを実施し、乗組員の
健康維持につとめた。特に昨年度から実施した国土交通省主管の船員労働安全衛生
月間(9月)に協賛した医師訪船診療は、タンカー、LNG船、コンテナ船などの
8隻に実施し、受診した船員から評価を得た。訪船要請件数は12隻であったが入港
地や入港日時の変更により医師との調整がつかずキャンセル船が4隻あった。
港別では、千葉1隻、川崎1隻、知多2隻、四日市2隻、徳山1隻、喜入1隻で
ある。
(2) 衛生管理者の再講習
本年度の衛生管理者再講習は、せんぽ東京高輪病院、横浜船員保険病院及び横
浜・神戸掖済会病院の4病院において延べ4回行った。受講者数は前年に比し3名
減で本年度に主任衛生管理者の資格を取得した者の数は32名であった。
再講習の実施にあたり教材の整備を図るため、各病院にニプロ輪液ポンプ1台、
ナビスペンライト、静脈注射パットけっかんくん、IMGベットパンカバー1個、
おしぼり保温バック、機器卓子、聴診器2人用、ソニー・デジタルプロジェクタ
(VPO-MX10)、ナースパット(補助枕大・小)
、MTS−リフト(三恵薬品)など
を寄贈した。
● 衛生管理者再講習用テキスト編纂委員会
長年にわたって衛生管理者再講習は、
『再講習用テキスト』にもとづいて船員災
害防止協会発行の『船舶衛生管理者教本』を副本として講習を行われていた。この
不便さと再講習の講義効率化を図るため、改めてコンパクトに1冊にまとめること
を目的に編纂委員会を設置した。再講習実施病院の医師等に委員を委嘱し編纂内容
の執筆作業を行った。一部の執筆作業が遅れ、年度内に完了することができず次年
度に継続することとなった。
(3) 外医療ニュースの発行
本年度も船員の船内衛生教育を目的とした機関誌「外医療ニュース」を年4回発
行し、会員各社の船舶及び関係団体に配布した。
(4) 生活習慣病予防対策冊子の出版・配布
(財)日本海運振興会の補助事業として、生活習慣病予防対策の冊子『生活習慣病
は、こうして防ごう』を日本語、英語、タガログ語の3カ国語版をそれぞれ作成し、
会員所属船舶に配布した。
27
理 事 会 の 開 催
前記の合同会議で理事、監事の選任が行われ、引き続き第84回理事会が開催され、
下表のとおり新役員が選任されました。
役 員 名 簿
平成14年7月1日現在(※印 新任)
役 職
非・常勤別
会 長
非 常 勤
副 会 長
〃
※ 黒 石 真 日本船主協会外航労務部会会長
〃
井出本 榮 全 日 本 海 員 組 合 組 合 長
〃
氏 名
現 職 等
﨑 長 保 英 日 本 船 主 協 会 会
長
専 務 理 事
常 勤
菅 英 輔
常 務 理 事
〃
鈴 木 武 志
理 事
非 常 勤
山 本 勝 日 本 郵 船 ㈱ 専 務 取 締 役
〃
〃
※ 鏡 敏 弘 ㈱ 商 船 三 井 執 行 役 員
〃
〃
※ 小 島 茂 川 崎 汽 船 ㈱ 船 員 グ ル ー プ 長
〃
〃
森 田 徹 夫 共 栄 タ ン カ ー ㈱ 取 締 役
〃
〃
内 田 和 也 明 治 海 運 ㈱ 代 表 取 締 役 社 長
〃
〃
紀伊国 献 三 ㈶ 笹 川 記 念 保 健 協 力 財 団 理 事
非 常 勤
※ 戸 川 剛 出 光 タ ン カ ー ㈱ 取 締 役
監 事
〃
〃
臼 居 勲 ㈶日本船員福利雇用促進センター常務理事
〃
〃
※ 森 田 欣 造 国際エネルギー輸送㈱常務取締役
(順不同)
28
333333
ゲノム解析の戦略
海 ほ た る
333333
33333333333333
33333333333333
ゲノム科学総合研究センターが設置され
責任者になった。
ている理化学研究所・横浜研究所。現在、 当時アメリカは既にEST(cDNA断片)
林崎氏は遺伝子構造・機能研究グループの
を大量に特許申請していた。公開されてい
プロジェクトディレクターを務めている。 たものだけで2百万個。日本は7万個しか
目標は「全遺伝子に対応する完全長cDNA
持っていなかった。このままではゲノムが
を収集したマウスゲノム百科辞典の確立」。 関連する創薬、食品、環境などの産業はア
cDNAとは、mRNAを鋳型にしてDNA
メリカの傘下に入ってしまう。遅れを取り
に逆転写したもので、実際にタンパク質に
戻すためにはどうすべきか。
翻訳される遺伝子情報そのものだ。「完全
林崎氏は、まず方針を立てた。一つ目、
長」とは、あるタンパク質をコードする遺
絶対に他国と同じ戦略をとらない。同じこ
伝子全部という意味である。断片ではなく
とをすれば負ける。二つ目、一連の新技術
完全長のcDNAを合成するのは難しいのだ
を開発し「技術の壁」を作ろう。その結論
が、林崎氏らは独自の手法を考案した。病
が完全長cDNAデータベースの作製だっ
気の発症機構を遺伝子から明らかにするこ
た。断片をコンピュータで繋げる必要のあ
とが目的だ。完全長cDNA解析では、日本
るESTと違って、完全長cDNAならば最初
は世界をリードしていると言われる。
から繋がっている。配列から実際に薬の標
「カネも何もなかったペーペー」時代に、 的となるタンパク質の構造を調べることも
現在もゲノム解析の必須の手段の一つとし
可能だ。
て使われている「RGSL」という遺伝子の
発現状況を調べる画期的な手法を開発し、 「精度は悪くてもいい 全体をざっと
注目されていた林崎氏が理研にやってきた
やる方が大事」
のは1992年。95年にはプロジェクトディ
対象動物にはマウスを選んだ。各組織を
レクターになり、理研のゲノム研究の統括
簡単に取りやすく、理研がマウスの純系を
29
大量に持っていたことが理由だった。交配
生まれの大阪育ちで、阪大の医学部で医者
が簡単なことも重要だ。90年代には難病
になった。そこでまず検査部に入ったのだ。
の遺伝子は全て特定されていた。だが、ガ
医学部五年生のときに起きた事件がきっか
ンや成人病など肝心の身近な病気は全く治
けだった。当時、乳幼児を対象に甲状腺刺
るようになっていないし、原因すら明確で
激ホルモン欠損症の検査が始まったところ
はない。複数の遺伝子に支配されているか
だった。放置すると脳障害などになるのだ
らだ。多因子の病気を調べるには、交配実
が、3カ月以内に治療を開始すれば知能障
験が不可欠である。こうして、マウスの全
害にならなくてすむ。その検査に林崎氏の
遺伝子辞書作成と、実行するための技術開
身内はひっかかったおかげで、障害になら
発、この二つを目標にした闘いが始まった。 ずにすんだ。「検査、診断の重要性を思い
林崎氏らは完全長cDNAを合成する技術
知った」という。
以外にも大容量DNAシーケンサー等もほ
時代は遺伝子診断へと進み、林崎氏は甲
とんど全て独自に開発、システムとして統
状腺刺激ホルモン欠損症の遺伝子を世界で
合して、大規模cDNA解析システムを構築
初 め て ク ロ ー ニ ン グ し、 学 位 を 取 っ た。
した。
1986年のことである。林崎氏は当時を回
実際にラボを案内してもらった16×24
想して言う。「当時は、遺伝子を1つ取っ
個、合計384個の穴のあいたプレートの中
ただけで学位がもらえた。ところがいまは、
にサンプルが収められている。そのサンプ
学生のときの苦労はなんだったのかと思う
ルがベルトコンベア式に行程から行程へ移
ような成果が毎日毎日、出てくるんですよ」
動しては処理にかけられていく。1個の穴
技術の進歩は凄まじい。セレーラ社のベ
の中のサンプルは外に出されることなく、 ンター以前のゲノム計画は、高い精度で端
最初から最後まで処理されていく。1日に
から順に決めていきましょう、といった考
4万個の検体を処理できるという。
え方が主流だった。ところが林崎氏は「取
2001年2月、理研は機能注釈を付けた
りあえず全部バッと作ってしまおう。精度
マウス完全長cDNA情報を公開した。新規
は悪くてもいいから全体をざっとやること
遺伝子は約1万2400種に及んだ。今後は、 の方が大事だ」と主張したことがあったの
cDNAデータベースを基盤にし、遺伝子の
だという。だが当時は周囲から猛反発を喰
ネットワーク解析を行う。遺伝子間の相互
らった。
作用が解明されれば、どの遺伝子、どのタ
歴史に「もし」はない。だが、もしも日
ンパク質のカスケードをターゲットにすれ
本が最初から明確な戦略を持ち、その道を
ば効率的な薬や治療が行えるのか、分かる
選んでいたらどうだっただろうか−。
はずだ。
(「選択」2002-07号より)
林崎氏は経歴も少し変わっている。大阪
30
随 想
ハ イ キ ン グ
44444
44444
44444444444444
44444444444444
私が最近はまっているのは山歩きです。
といっても、テントを背負って山奥に入っ
たり、ザイルを使って険しい山を登ったり
するというような本格的なものではなく、
ハイキングコースを歩くという気軽なレベ
ルです。
今年のゴールデンウィークには、山開き
直後の上高地を訪れました。花を楽しむに
は時期が早かったのですが、梓川のせせら
ぎの音を聞きながら、美しい新緑を満喫し
ました。
ハイキングの魅力は「綺麗な景色を見る
ことができる」という点です。
私は、ハイキングには必ずオートフォー
カスの一眼レフを持参します。美しい木々
の緑、青空にくっきりと浮かび上がる山の
稜線、雪解け水の流れる小川のせせらぎ、
苔生した地面などをカメラに収めながら、
あそこが綺麗、ここもステキ!と歩き回っ
ていると、あっという間に時間が経ってし
まいます。
自然界には2つと同じ場所に出会うこと
はありません。移り変わる景色を眺めなが
らハイキングするのは爽快です。旅行から
戻り、撮影した写真を見るのも山の景色を
思い出す、楽しい時間です。
歩いて新鮮な空気を吸うのですから身体
に良いのは当たり前。その上、心も元気に
なる気がします。
森林の出す「香」が疲労回復、ストレス
緩和、肝機能改善などの効果をもたらすと
言われています。そんな効果を期待して山
にでかけるわけではありませんが、確かに
ハイキングのあとは、夫婦喧嘩も陰を潜め
る気がします。
賑やかなアミューズメントスポットで遊
んだり、デパートに買い物に出かけたりす
るのも決して嫌いではありません。しかし
近頃は、森の空気に触れて過ごしたいと思
うようになりました。
そろそろ紅葉情報が流れる季節です。秋
の上高地にも行ってみたいし、混雑しても
日光の紅葉はすてきだし、行きたいところ
が沢山あります。
皆さんもお近くの山へ気軽に出かけてみ
てはいかがでしょうか。きっと新しい発見
があると思いますよ。
31
新日本石油タンカー㈱
総務部
村 山 陽 子
海外特約医療機関(含歯科)・世話役一覧 変更/訂正
港名(頁数)
名 称
変更・訂正事項(アンダーライン部分)
Shanghai SHANGHAI SEAMEN'S
(4)
HOSPITAL (名称変更)
Bankok (8) THE BANGKOK
[email protected] CHRISTIAN HOSPITAL (追加)
Port Said & Ms. Yumiko Uehara
(Tel) 064-912326, 397439
Suez (23) (上原 由美子)
(Fax) 064-912326
─世話役─
Cape Town Ms. Yuko Butler
9 Elston Court Pinewood Road,
(27)
─世話役─
Rondebosch 7700, Cape Town
(Tel) Office 440-5001 Home 685-4293
Durban (28) Ms. Winnie Chung
(Tel) 337-1565/6 Home 562-8778
─世話役─
(Fax) 332-4379 Home 572-5855
[email protected]
[海外特約医療機関含歯科)
・世話役の概要]
5.
大連
(71)
8.
上海
(73)
58.
ダーバン
(91)
81.
ポートケンブラ
(100)
32
なお、大連市中心医院日本人医療相談室(TEL. 441-3012 海外邦人医
療基金開設)には、日本人医師が常駐されているので、必要な際には相
談することができる。
特約医 SHANGHAI SEAMEN'S HOSPITAL(上海海員医院)
─以下同じ─
特約医 DRS PETERS AND FAURIEは─以下同じ─
特約医 ILLAWARRA MEDICAL SERVICESは─以下同じ─
「外医療ニュース」は発行の都度、前広に編集委員会を開き、委
員の方がたに編集内容等についてご審議を願っておりますが、委員
の方がたはつぎのとおりです。
記
日 本 郵 船 ㈱
古 賀 晋一郎
日 正 汽 船 ㈱
桝 本 進
㈱ 商 船 三 井
吉 井 裕一朗
東 京 タ ン カ ー ㈱ 下山田 亘
川 崎 汽 船 ㈱
小 山 英 之
外 航 労 務 部 会
大 西 康 文
(平成14年10月1日現在)
外航船員医療事業団正会員会社(ABC順)
旭 海 運
太平洋汽船
飯 野 海 運
大洋日本汽船
イイノマリンサービス
第一中央汽船
出光タンカー
玉井商船
乾 汽 船
タンダマリン
大阪フリート
新日本石油タンカー
川 崎 汽 船
新日本石油タンカー近海
共栄タンカー
日正汽船
国際エネルギー輸送
日鉄海運
国際マリントランスポート
日本郵船
三 光 汽 船
八馬汽船
商 船 三 井
三菱鉱石輸送
新 和 海 運
明治海運
太平洋海運
雄洋海運
賛助会員
海外漁業船員労使協議会 共同船舶
日本海洋事業
(平成14年10月1日現在)
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