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Hot Tub Lung が強く疑われた肺 Mycobacterium
962 日呼吸会誌 44(12),2006. ●症 例 Hot Tub Lung が強く疑われた肺 Mycobacterium avium complex 症の 1 例 佐藤 長人1) 河端 美則2) 永田 真1) 萩原 弘一1) 金澤 實1) 要旨:症例は 56 歳男性.2004 年 2 月より労作時呼吸困難を自覚し,3 月に当院を受診した.胸部 CT 上, 両側びまん性の汎小葉性スリガラス陰影と小葉中心性の小粒状陰影を認めた.気管支肺胞洗浄液ではリンパ 球の増加を認めた.臨床経過と画像所見からは過敏性肺臓炎に矛盾しなかった.胸腔鏡下肺生検を行い,増 殖期の壊死性肉芽腫,気腔内に形成された集合性類上皮細胞肉芽腫ならびに小葉中心性の傾向のある胞隔炎 を認めた.細菌学的検査より Mycobacterium avium が検出され,Hot tub lung が強く疑われた Mycobacterium avium complex(MAC)症と診断した.副腎皮質ステロイド剤が有効であったが,抗結核剤単独の治 療中に再燃し,ステロイド剤の併用が必要となった.本疾患は本邦での報告例は少なく,本例は胸腔鏡下肺 生検を行うことで確定診断できたが,治療に難渋した貴重な症例であった. キーワード:過敏性肺臓炎, Mycobacterium avium complex,Hot tub lung,胸腔鏡下肺生検, ステロイド治療 Hypersensitivity pneumonitis,Mycobacterium avium complex,Hot tub lung, Video-assisted thoracoscopic surgical biopsy,Steroid therapy 緒 言 非結核性抗酸菌症はわが国において近年増加傾向にあ る.本症は結核症よりも治療抵抗性であり,今日の呼吸 主訴:労作時呼吸困難. 既往歴:50 歳から高脂血症と高血圧症,51 歳時に右 肺炎. 喫煙歴:30 本! 日,15∼50 歳,その後禁煙中. 器感染症における課題のひとつである.本症のうち,My- 職業歴:土木作業員(汚れた工事現場器材などに井戸 cobacterium avium complex(MAC)症がその 7 割以上 水をシャワー状に吹き掛けて,掃除・清掃を行う業務) . を占める.その病型には,結核類似の空洞形成を主体と 生活歴:加湿器,防水スプレー,24 時間風呂,Hot tub する症型と,中葉・舌区を主体とする小葉中心病変・気 (24 時間循環型ジャグジー浴槽)の使用歴なし.築 15 管支拡張症を呈する病型があるとされていたが1),近年, 年の鉄筋アパートに居住. エアゾル状の MAC 吸入による過敏性肺臓炎に類似の病 現病歴:2003 年 7 月の検診時,胸部 X 線写真は異常 像を呈する疾患,いわゆる Hot tub lung が欧米から報 なしであった.2004 年の 2 月下旬より労作時の呼吸困 告された2)∼8).本疾患は基礎疾患のない健常人に発症し, 難を自覚し,徐々に増悪したため 3 月 8 日に近医を受診 Hot tub(24 時間循環型ジャグジー浴槽)の使用が危険 した.胸部 X 線写真および胸部 CT 所見上間質性肺炎 因子と考えられている.今回,筆者らは病理組織学的に が疑われ,3 月 9 日に当科を紹介受診となり,精査加療 壊死性ならびに非壊死性類上皮細胞肉芽腫,胞隔炎を認 のため同日入院した. め,病理標本から Mycobacterium avium を証明でき,い 入院時現症:身長 160cm,体重 57kg,体温 36.1℃, わゆる Hot tub lung と考えられた症例を経験したので 脈 拍 64! 分(整) ,血 圧 136! 84mmHg,呼 吸 数 18! 分, 報告する. チアノーゼなし,表在リンパ節触知せず,ばち状指なし, 症 例 症例:56 歳,男性. 肺野:右背部で軽度 fine crackles を聴取,心音整,腹 部異常なし,下腿浮腫なし. 入院時検査成績(Table 1) :血液検査所見では,血小 板の上昇,LDH の上昇,CRP の軽度上昇を認めたが, 〒350―0495 埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷 38 1) 埼玉医科大学呼吸器病センター呼吸器内科 2) 埼玉県立循環器・呼吸器病センター病理科 (受付日平成 18 年 3 月 30 日) KL-6 の上昇はなく,真菌・イソシアネート・トリコス ポロンの抗体価の上昇はなかった.インフルエンザウィ ルス抗体・マイコプラズマのペア血清の抗体価上昇もな かった.また,HIV 抗体も陰性で自己免疫能の異常も Hot Tub Lung と考える肺 MAC 症 963 Tabl e 1 La bo r a t o r yda t a He mo gr a m WBC 8 , 1 0 0 / μl Ne ut r o 7 0 % Lymph 1 7 % Eo s i no 5 % Mo no 8 % 6 RBC 4 . 8 0 ×1 0 / μl Hb 1 2 . 1g/ dl 3 Pl t 5 2 1 ×1 0 / μl Bi o c he mi c a ls t udy TP 6 . 7g/ dl Al b 3 . 8g/ dl AST 4 1I U/ l ALT 1 0I U/ l LDH 4 3 9I U/ l BUN 1 8mg/ dl Cr 0 . 8mg/ dl Na 1 4 0mmo l / l K 3 . 8mmo l / l Cl 1 0 4mmo l / l TC 1 9 0mg/ dl TG 1 2 0mg/ dl FBS 1 2 6mg/ dl Ar t e r i a lbl o o dga s( r o o ma i r , a tr e s t ) pH 7 . 4 3 Pa O2 5 9t o r r Pa CO2 3 8t o r r HCO3- 2 5mmo l / l Aa DO2 4 4t o r r Se r o l o gi c a ls t udy CRP I gG I gA I gM I gE KL6 ACE RF ANA MPOANCA PR3 ANCA BNP βDgl uc a n As p e r g i l l usAg Cr y p t o c o c c usAg CMVI gM Tr i c o s p o r o nAb I s o c ya na t e TDI , MDI , HDI CEA SCC pr o GRP HI V Ab CD4 / CD8 PPD ( mm) 0 ×0 2 0 ×2 0 0 . 8mg/ dl 1 , 2 8 6mg/ dl 2 5 4mg/ dl 4 7mg/ dl 2 3I U/ ml 4 8 4U/ ml 8 . 0U/ l (- ) (- ) (- ) (- ) 1 0 . 7pg/ ml (- ) (- ) (- ) (- ) (- ) (- ) 4 . 6ng/ ml 1 . 2ng/ ml 3 0pg/ ml (- ) 2 . 0 Tabl e 2 Re s ul t so fpul mo na r yf unc t i o nt e s t a ndBALF Pul mo na r yf unc t i o nt e s t VC 3 . 1 7L %VC 9 3 % FEV1 2 . 1 0L FEV1% 6 9 % %DLCO 5 1 % DLCO 9 . 0ml / mi n/ t o r r Br o nc ho a l ve o l a rl a ve gef l ui d( r t . B5b) Re c o ve r y 8 5 / 1 5 0ml 5 To t a lc e l lc o unt 1 1 . 8 ×1 0 / ml Ma c r o pha ge s 4 6 % Ne ut r o 5 % Eo s i no 4 % Lymph 4 7 % CD4 / CD8 0 . 9 Cyt o l o gy c l a s sI I Ba c t e r i a lc ul t ur e ne ga t i ve Ac i df a s tba c t e r i um Sme a r ;Ga f f ky( 0 ) , c ul t ur e ;ne ga t i ve I L1 2 2 4 7 . 4pg/ ml(< 3 1 . 2pg/ ml ) RANTES 2 3 3 . 6pg/ ml(< 3 1 . 2pg/ ml ) TARC (- ) MDC (- ) I L4 (- ) I L5 (- ) Fi g.1 Che s tr a di o gr a ph t a ke no n Ma r c h8 ,2 0 0 4 s ho we dr e t i c ul o no dul a rs ha do wsi nt hewho l el ung f i e l ds .Thes ha do wi st hi c ke ri nt hemi ddl ea ndl o we r f i e l dso fbo t hl ungs . 認めなかった.室内気吸入下における動脈血液ガス分析 では,Aa-DO2 の開大を伴う低酸素血症を認めた.ツベ ルクリン反応は陽性であった.呼吸機能検査では軽度の 閉塞性換気障害と拡散能の低下を認めた(Table 2) . 964 日呼吸会誌 a 44(12),2006. b Fi g.2 A c he s thi ghr e s o l ut i o nCT s c a nt a ke no nMa r c h8 ,2 0 0 4r e ve a l e ddi f f us egr o undgl a s so pa c i t i e s t i pl ec e nt r i l o bul a rs ma l lno dul e si nbo t hl ungf i e l ds( Fi g. 2 a ) . Ac he s tCT s c a nt a ke no nMa r c h2 6 , a ndmul 2 0 0 4s ho we dmul t i pl eno dul a rc o ns o l i da t i o nse mbe dde di ngr o undgl a s so pa c i t i e s( Fi g. 2 b) . 入院時胸部画像所見:胸部 X 線写真(Fig. 1)では両 3d)を認めた.また,肉芽腫性病変から離れた間質に, 側びまん性にやや下肺野,右肺優位の線状・網状影を認 リンパ球や形質細胞浸潤や腔内壊死物質を認め,一部は めた.胸部 HRCT 上(Fig. 2a) ,両側びまん性に汎小葉 小葉中心性分布であった. 性のスリガラス陰影と小葉中心性の小粒状陰影を認め 術後経過:病理組織学的所見から Hot tub lung を疑 た.胸膜直下には陰影は認められず,病変は経気道性の い,術後に喀痰培養検査を行った.塗沫陰性であったが, 分布に矛盾しない所見であった. M. avium が PCR 陽性となり,3 回連続で 4 週間後の培 気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage : BAL)液 養で MAC が確認された.さらに,肺病理組織標本の 所見:入院後 3 日目(同年 3 月 12 日)に気管支鏡検査 polymerase chain reaction(PCR)検査を追加したとこ を施行した.各亜区域枝までの可視範囲に異常所見はな ろ, M. avium の PCR が陽性であった.この結果を踏ま く,右 B5b に生理食塩水 150ml を注入して気管支肺胞 え,後日職場で使用している井戸水の培養検査を施行し 洗浄を行った.85ml 回収され,回収率は 58% であった. たが,同菌は検出されなかった.社会的背景によりこれ ml と増加していた.細胞分画で 総細胞数は 11.8×105! 以上の職場調査を行うことはできなかった.また,BAL はリンパ球の増加を認めた.CD4! CD8 の上昇はなく, 液の免疫動態の再評価を行ったところ,IL-12,RANTES 結核菌および MAC を含む非結核性抗酸菌は検出されな が上昇しており,Th1 優位の感染症である MAC 症に矛 かった(Table 2) . 盾しない所見であった.一方,選択的 Th2 ケモカイン 入院後経過:胸部 CT 所見および BAL 液所見から, である TARC,MDC,Th2 サイトカインの IL-4,IL-5 吸入抗原不明であったが何らかの抗原曝露による過敏性 はいずれも陰性であった(Table 2) .以上,臨床経過, 肺臓炎を疑い,入院による抗原隔離で経過観察した.し 画像所見, M. avium の PCR・培養陽性の結果より Hot かし,陰影は完全には消失せず,第 18 病日の胸部 CT tub lung に極めて近い病態を呈した肺 MAC 症と診断し 上(Fig. 2b),スリガラス陰影は気管支周囲の結節様コ た.入院による病原からの隔離だけでは自覚症状は改善 ンソリデーションへと変化し,病変の残存が示唆された. せず,画像上の異常陰影は残存した.また,軽度の拘束 このため確定診断目的で,第 22 病日(3 月 30 日)にイ 性換気障害(%VC 80%),拡散能の低下(%DLco 70%) ンフォームドコンセント取得のうえ胸腔鏡下肺生検(右 も残存したため(4 月 20 日) ,入院 6 週後(4 月 21 日) 3 S a)を施行した. よりプレドニゾロン 40mg! 日を開始した.5 月 13 日 病理組織学的所見(Fig. 3a∼d):ルーペ像では細気管 の胸部 X 線上陰影は改善し,8 月 5 日の胸部 CT で間質 支に沿って樹枝状・索状ならびに多発結節性病変がみら 性 陰 影 は 消 失 し た.呼 吸 機 能 検 査 上 も%VC れた(Fig. 3a) .それらは 1)気道病変.細気管支から 90%,%DLco 76% と改善した.プレドニゾロンを徐々 連続する多発性結節性病変を認め,細気管支内腔には変 に漸減したが,転職はしなかった.治療導入 7 カ月後(11 性壊死物質を含む粘液が充満していた.細気管支壁にリ 月 18 日) ,プレドニゾロン ンパ球,形質細胞浸潤を認めた (Fig. 3b) .2) 結節病変. ガラス陰影の再燃を認めた.局所的な MAC 感染病巣は 肺実質には増殖期の壊死性肉芽腫(Fig. 3c)および気腔 なかった.依然として転職および職場調査の了解が得ら 内に形成された繁殖期の集合性類上皮細胞肉芽腫(Fig. れなかったため,12 月 16 日より RFP 450mg,EB 750 5mg! 日投与下で両側スリ Hot Tub Lung と考える肺 MAC 症 a b c d 965 Fi g.3 Hi s t o l o gi cf i ndi ngso ft hel ungt i s s ue sbi o ps i e dbyVATS( Fi g.3 a 3 d) .I nal o upe vi e wi ma ge ,no dul a rl e s i o nswe r edi s t r i but e da l o ngbr o nc hi o l i( Fi g.3 a ) .Thi c ke ne da l ve o l a rs e pt awe r ei nf i l t r a t e dbyl ympho c yt e s , whi c ha r emo r ec l e a r l yo bs e r ve da r o undt hec e nt e ro fe a c hl o bul e( Fi g. 3 b) . Ne c r o t i z i nggr a nul oma swe r ei de nt i f i e d( Fi g. 3 c ) . Or ga ni z i ngpne umo ni aa s s o c i a t e dwi t hc o l l e c t i vee pi t he l i o i dc e l lgr a nul o ma s wi t ho utne c r o s i swa spr e s e nt( Fi g. 3 d) . ( H. E. s t a i n, 3 b: ×2 0 0 , 3 c : ×4 0 , 3 d: ×1 0 0 ) mg,CAM 400mg による抗結核剤を追加した.陰影の 認め,過敏性肺臓炎に類似の病像を呈す,いわゆる Hot 改善は乏しかったが徐々に改善傾向を示した.RFP+ tub lungが欧米から報告された2)∼8).Hot tub lung は 1997 EB+CAM 投与 7 カ月後にスリガラス陰影は消失した 年に Hot tub(24 時間循環型ジャグジー浴槽)の使用に ため,2005 年 7 月 21 日からプレドニゾロンの投与を中 関連した免疫正常人に発症する肺 MAC 症として初めて 止し,RFP+EB+CAM のみで治療を継続した.しか 報告された2)3).本疾患は MAC が原因で,基礎疾患のな し,同年 11 月 10 日よりスリガラス陰影が再び急速に増 い健常人に発症する過敏性肺臓炎様の疾患として Khoor 悪し,呼吸困難も出現した.原病の 2 度目の再燃と考え, らがこの病名を提唱した4).その特徴のひとつとして Hot 12 月 22 日よりプレドニゾロン 30mg! 日を再度導入し tub の使用歴が挙げられた.本邦では浴槽は頻用される た.その後,スリガラス陰影は速やかに消失した.2006 が Hot tub を使用する生活習慣がないため,これまで国 年 3 月現在,プレドニゾロンを徐々に漸減中であるが, 内からの報告はなかった.しかし,2005 年と 2006 年に 陰影の再燃は認められていない. Hot tub lung に類似する MAC による過敏性肺臓炎が 2 考 察 例報告された9)10).本疾患は MAC によるエアゾル粒子 状の感染症あるいは過敏性肺臓炎,もしくはその両者と 非結核性抗酸菌症のうち,Mycobacterium avium com- 考えられているが,その病態は解明されていないため, plex(MAC)症がその 7 割以上を占める.その病型に 疾患概念の結論は出ていない4)5)7).発症機序は MAC を は,結核類似の空洞形成を主体とする症型と,中葉・舌 含むエアゾルを吸入して感染,発症すると推察されてい 区を主体とする小葉中心病変・気管支拡張症を呈する病 る2).本邦からの報告9)10)同様,本例には Hot tub の使用 1) 型があるとされていたが ,近年,基礎疾患のない健常 歴はなかったが,MAC がエアゾル粒子状に吸入されれ 人に発症し,両側びまん性汎小葉性のスリガラス陰影を ば Hot tub lung 同様の病態を呈することが知られてい 966 日呼吸会誌 44(12),2006. る11).したがって,必ずしも Hot tub 使用歴がなくても 行えなかったため,2 度再燃した.この再燃時には局所 Hot tub lung と類似の疾患を呈するものと考えられる. 的感染病巣はなく,職業を通じて外来性に曝露したこと 本例は汚れた工事現場器材などに井戸水をシャワー状に が原因であると判断した.Hot tub lung が強く疑われ, 吹き掛けて,掃除・清掃を行う業務に携わっており,職 治療に難渋した症例であった. 場の井戸水が感染源と推測されたが,本人が持参した井 戸水からは MAC は検出されなかった. 本 論 文 の 要 旨 は 第 160 回 日 本 呼 吸 器 病 学 会 関 東 地 方 会 (2004 年 7 月,東京)で発表した. 本疾患の画像所見は,過敏性肺炎にみられる両側びま 謝辞:稿を終えるに当たり,肺病理組織標本の Mycobacte- ん性の汎小葉性のスリガラス陰影,浸潤影,小葉中心性 rium avium PCR 検査をお引き受け賜わりました,結核予防 結節影などとされている2)∼11).本例も同様の所見を呈し 会結核研究所抗酸菌レファランスセンター 大友幸二先生, た.MAC 症の BAL 液所見は,CD4! CD8 上昇を伴うリ 菅原勇先生に深謝申し上げます. ンパ球の増加と報告されており12),Hot tub lung の BAL 引用文献 液所見も同様の所見が報告されている3)7)10)11).本例はリ ンパ球の増加を認めたが CD4! CD8 の上昇は認めなかっ 1)American Thoracic Society. Diagnosis and treat- た.しかし,IL-12,RANTES が著明に上昇しており Th1 ment of disease caused by nontuberculous myco- 優位の感染症である MAC 症に矛盾しない所見であっ bacteria. Am J Respir Crit Care Med 1997 ; 156 : S た.一方,気管支喘息などの I 型アレルギーで上昇する, 選択的 Th2 ケモカインである TARC,MDC,IL-4,IL5 はいずれも陰性であり,MAC による Th1 免疫系の過 剰発現状態が示唆された. 1―S25. 2)Kahana L, Kay M, Yakrus M, et al. Mycobacterium avium complex infection in an immunocompetent young adult related to hot tub exposure. Chest 1997 ; 111 : 242―245. Hot tub lung の病理組織学的特徴は,リンパ球浸潤を 3)Embli J, Warren P, Yakurs MA, et al. Pulmonary ill- 伴う胞隔炎と非乾酪性類上皮細胞肉芽腫である.10∼ ness associated with exposure to Mycobacterium 20% には壊死性肉芽腫を伴うとされている4)5)7).本例で avium complex in hot tub water : hypersensitivity も過去の報告同様,過敏性肺臓炎と肉芽腫性肺炎の両方 pneumonitis or infection? Chest 1997 ; 111 : 813― の所見が認められた.肺病理組織学的検討からは MAC 816. 感染症と過敏性肺臓炎様のアレルギー反応の両者の存在 4)Khoor A, Leislie KO, Tazelaar HD, et al. Diffuse pul- が示唆された.過敏性肺臓炎の所見が顕著でなかったの monary disease caused by nontuberculosis myco- は,VATS 施行時の胸部 CT 上,入院時には著明であっ bacteria in immunocompetent people (hot tub lung). たスリガラス陰影は減少し,気管支周囲の結節様コンソ リデーションが顕著となっていたことから,その所見を 反映しているものと考えられる.また,本例における過 敏性肺臓炎様の抗原として,細気管支内腔に認めた変性 壊死物質(同定できず)の可能性も考えられる. Am J Clin Pathol 2001 ; 115 : 755―762. 5)Rickman OB, Ryu JH, Filder ME, et al. Hypersensitivity pneumonitis associated with Mycobacterium avium complex and hot tub use. Mayo Clin Proc 2002 ; 77 : 1233―1237. 6)Cappelluti E, Fraire A, Schaefer O. A case of Hot 本疾患の治療法としては,過敏性肺臓炎様疾患の観点 Tub Lung due to Mycobacterium avium complex in から副腎皮質ステロイド剤が主に使用される.本例も副 an immunocompetent host. Arch Intern Med 2003 ; 腎皮質ステロイド剤で治療を開始した.MAC 感染症の 病態を考慮し,抗結核剤の投与が有効であるとの報告2)11) もあるが,副腎皮質ステロイド剤を併用した方が有効で 163 : 845―848. 7)Aksamit TR. Hot tub lung : Infection, inflammation, or both? Semin Resp Infect 2003 ; 18 : 33―39. あると考えられている4)5)7)9)10).抗結核剤の投与期間につ 8)Pham RV, Vydraney KH, Gal AA. High-resolution いては 1 年で有効との報告2)もあるが,未確定である. computed tomography appearance of pulmonary また抗原からの隔離,つまり Hot tub の使用を中止する Mycobacterium avium complex infection after expo- 3) だけで治癒する報告もあり ,いずれも予後良好と考え られている. 本例は,BAL 液所見から MAC による Th1 免疫系の 過剰発現を認め,肺病理組織学的検討から MAC 感染症 と過敏性肺臓炎様のアレルギー反応を確認し確定診断に 至った.しかし,副腎皮質ステロイド剤と抗結核剤によ る内科的治療で経過観察するも,転職などの抗原隔離が sure to hot tub : Case of hot-tub lung. J Thorac Imaging 2003 ; 18 : 48―52. 9)釼持広知,本多淳郎,馬場智尚,他.24 時間循環 風 呂 に 関 連 し た MAC に 対 す る hypersensitivity pneumonitis の 1 例.日 呼 吸 会 誌 2005 ; 43 : 689― 692. 10)大橋里奈,赤川志のぶ,倉島篤行,他.過敏性肺炎 Hot Tub Lung と考える肺 MAC 症 967 12)Yamazaki Y, Kubo K, Sekiguchi M, et al. Analysis of 類似のびまん性陰影を呈した Mycobacterium avium 症の 1 例.結核 2006 ; 81 : 19―23. BAL fluid in M. aviumintracellulare infection in indi- 11)Marras TK, Wallace RJ, Koth LL, et al. Hypersensi- viduals without predisposing lung disease. Eur tivity pneumonitis reaction to Mycobacterium avium Respir J 1998 ; 11 : 1227―1231. in household water. Chest 2005 ; 127 : 664―671. Abstract A case of pulmonary Mycobacterium avium complex disease, mimicking hot tub lung Nagato Sato1), Yoshinori Kawabata2), Makoto Nagata1), Koichi Hagiwara1) and Minoru Kanazawa1) 1) Department of Respiratory Medicine, Saitama Respiratory Center, Saitama Medical University 2) Departments of Pathology, Saitama Cardiovascular and Respiratory Center A 56-year-old man in whom reticulonodular shadows had been noted on a previous chest radiography study was admitted to our hospital with complaint of exertional dyspnea in March 2004. His thoracic computed tomography (CT) showed diffuse ground-glass opacities and multiple centrilobular small nodules in both lung fields. Lymphocytes occupied a high proportion in the cells recovered from the bronchoalveolar lavage fluid. These findings were compatible with those for hypersensitivity pneumonitis. Histopathological findings observed in the videoassisted thoracoscopic surgical biopsy specimens included necrotizing granulomas, organizing pneumonia associated with collective epithelioid cell granulomas without necrosis, and alveolar septal thickening with lymphocyte infiltration that showed a centrilobular distribution. These findings were also compatible with those for hot tub lung. Further information that supported the diagnosis were the identifications of Mycobacterium avium complex in his sputum by acid-fast bacteriological culture as well as positive for Mycobacterium avium polymerase chain reaction in lung specimen. He responded well to corticosteroid therapy, resulting in improvement in his clinical condition as well as in his chest radiographs. He was later put on an antituberculosis therapy, and the corticosteroid therapy was discontinued. This led to an exacerbation of his disease and corticosteroid therapy was restarted. It is not long time since the disease was first recognized, and thus few cases have been reported in Japan. Our report may provide valuable information on the disease in this country.