Comments
Description
Transcript
セリウム置換イットリウム鉄ガーネット結晶の成長と その光応用磁界
セリウム置換イットリウム鉄ガーネット結晶の成長と その光応用磁界センサへの応用 Growth of Cerium Substituted Yttrium Iron Garnet Crystals and its Application to Optical Magnetic Field Sensors 2002 年 12 月 樋口 貞雄 目次 第 1 章 序論 1 第 2 章 セリウム置換イットリウム鉄ガーネット結晶と光応用磁界 センサ 9 2.1 セ リ ウ ム 置 換 イ ッ ト リ ウ ム 鉄 ガ ー ネ ッ ト 結 晶( C e x R 3 - x F e 5 O 1 2 ). . . . . . . . 9 2.2 光 応 用 磁 界 セ ン サ の 原 理 ......................................15 2.2.1 磁 化 の 回 転 を 用 い た セ ン サ ..................................15 2.2.2 磁 壁 の 移 動 を 用 い た セ ン サ ..................................17 2.3 セ ン サ 特 性 の 評 価 方 法 ........................................19 2.3.1 感 度 の 定 義 ................................................20 2.3.2 直 線 性 比 の ず れ の 定 義 ......................................20 2.3.3 SNR (Signal-to-noise ratio)の 定 義 ..........................23 第 3 章 溶 媒 移 動 浮 遊 帯 溶 融 法 (TSFZ 法 )に よ る セ リ ウ ム 置 換 イ ッ ト リウム鉄ガーネットの単結晶成長 27 3.1 は じ め に ......................................................27 3.2 実 験 方 法 ......................................................27 3.2.1 TSFZ 法 ......................................................27 3.2.2 X 線 に よ る 評 価 ...............................................31 3.2.3 偏 析 現 象 の 評 価 ..............................................31 3.3 実 験 結 果 お よ び 考 察 ............................................33 3.3.1 結 晶 成 長 ....................................................33 3.3.2 Ce:YIG 結 晶 中 の Ce の 分 布 .....................................36 3.3.3 溶 剤 の 有 無 と Ce の 分 布 .......................................39 3. 3 .4 C e :Y IG 単 結 晶 の S EM 像 と Ce 及 び Y , F e の 分 布 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 0 3.4 ま と め ..............................................................43 第 4 章 セ リ ウ ム 置 換 イ ッ ト リ ウ ム 鉄 ガ ー ネ ッ ト の 磁 気 光 学 特 性 46 4.1 は じ め に ....................................................46 4.2 実 験 方 法 ....................................................46 4.2.1 光 学 特 性 の 評 価 ............................................46 i 4.2.2 4.3 直 流 磁 界 を 印 加 し た と き の 光 出 力 の 測 定 ......................48 実 験 結 果 及 び 考 察 ............................................48 4.3.1 光 吸 収 特 性 ..................................................48 4.3.2 フ ァ ラ デ ー 回 転 能 特 性 ........................................51 4.3.3 磁 界 セ ン サ へ 適 用 す る と き の 最 適 な 結 晶 長 の 算 出 ................51 4.3.4 4.4 直 流 磁 界 を 印 加 し た と き の 光 出 力 特 性 ........................55 ま と め ......................................................57 第5章 Ce0.17Y2.83Fe5O12 単 結 晶 の 光 応 用 磁 界 セ ン サ 特 性 59 5.1 は じ め に ......................................................59 5.2 実 験 方 法 ....................................................59 5.2.1 特 性 評 価 に 用 い る Ce0.17Y2.83Fe5O12 単 結 晶 ......................59 5.2.2 コ ッ ト ン − ム ー ト ン 効 果 の 測 定 ..............................61 5.2.3 セ ン サ 特 性 の 評 価 ..........................................63 5.2.3.1 光 学 測 定 系 ..............................................63 5.2.3.2 外 部 印 加 磁 界 に 対 す る 出 力 信 号 ............................64 5.3 実 験 結 果 及 び 考 察 ............................................66 5.3.1 Ce0.17Y2.83Fe5O12 結 晶 の コ ッ ト ン − ム ー ト ン 効 果 ..................66 5.3.2 コ ッ ト ン -ム ー ト ン 効 果 に よ る セ ン サ 出 力 へ の 影 響 ...............69 5.4 ま と め ......................................................74 第 6 章 「 重 ね あ わ せ 法 」に よ る セ ン サ 特 性 の 改 善 76 6.1 は じ め に ......................................................76 6 . 2「 重 ね 合 わ せ 法 」の 原 理 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7 6 6.3 実 験 方 法 ......................................................77 6.4 実 験 結 果 お よ び 考 察 ............................................78 6 . 4 . 1「 重 ね 合 わ せ 法 」に よ る 感 度 の 改 善 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7 8 6 . 4 . 2「 重 ね 合 わ せ 法 」の セ ン サ 出 力 の 評 価 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8 2 6.5 ま と め ........................................................85 第 7 章 パルスレーザー堆積法によるセリウム置換イットリウム鉄 ガーネットの薄膜成長 87 ii 7.1 は じ め に ....................................................87 7.2 実 験 方 法 ....................................................89 7.2.1 薄 膜 成 長 ..................................................89 7.2.2 構 成 元 素 の 定 量 及 び X 線 に よ る 結 晶 構 造 の 解 析 . .. . . . . . . . . . . . . . . . . 9 0 7.2.3 光 学 特 性 .......................................................90 7.3 実 験 結 果 お よ び 考 察 ..........................................91 7.3.1 薄 膜 成 長 ..................................................91 7.3.2 光 学 特 性 ..................................................99 7.4 ま と め .....................................................102 第 8 章 本研究のまとめ 105 付録 A 等 方 性 媒 質 の コ ッ ト ン − ム ー ト ン 効 果 ....................109 付録 B ファラデー効果と複屈折が共存する場合のジョーンズマトリック ス ..............................................................112 謝辞 117 研究業績一覧 119 iii 第 1章 序論 電 力 系 統 を 安 定 か つ 経 済 的 に 運 用 す る に は ,系 統 状 態 の 監 視 ,雷 な ど に よ る 故 障 の 早 期 発 見 と 除 去 ,そ し て 早 期 復 旧 が 必 要 で あ る .例 え ば ,送 電 線 の 保 護 の 場 合 , 50Hz 系 で 事 故 の 除 去 は 70 ms 以 内 , ま た , 再 閉 路 は 275 kV 送 電 線 で は 0.8 秒 以 内 で 行 う ( 1 ) . 従 来 こ れ ら の 系 統 保 護 の 電 流 測 定 は 変 流 器 (CT)で 行 わ れ て い る . 変 流 器 の 原 理 を 図 1-1 に 示 す .高 電 圧 1 次 導 体 に 検 出 対 象 で あ る 商 用 周 波 数 の 1 次 電 流 I 1 が 流 れ る と ,そ れ に よ っ て 鉄 心 中 に 発 生 す る 磁 束 を 打 ち 消 す よ う に , 2 次 巻 線 に 電 流 I2 が 誘 導 さ れ る . 2 次 電 流 の 大 き さ は 1 次 電 流 を 巻 数 N 2 で 除 し た 値 で あ る .2 次 電 流 は 負 荷 Z に 導 か れ る . こ の 様 な 従 来 の 変 流 器 に は ,鉄 心 の 磁 気 飽 和 に よ る 波 形 の 歪 み ,導 体 と 巻 線 の 間 の 電 気 絶縁を保つために充分な鉄心の半径を確保する必要性,変流器や計器用変圧器からの 電磁誘導による雑音の問題がある. 一 方 ,光 計 測 は ,高 い 絶 縁 性 を 維 持 し な が ら ,送 電 線 か ら の 電 磁 ノ イ ズ を 受 け ず に , 送電線と非接触で測定できるという利点を持っている.これらの利点を生かして電流 測定,電圧測定,温度測定等に用いる光応用センサが研究及び開発されている. 特 に 磁 界( 電 流 )セ ン サ へ の 応 用 に は , 1966 年 の 斉 藤 ,藤 井 ( 2 ) に よ る 先 駆 的 研 究 が 巻数 N2 2次巻線 R 鉄心 負 荷 Z 高電圧1次導体 2次電流 I2 1次電流 I1 I2= 1 I1 N2 図1-1 変流器の原理 1 ある.彼らは鉛ガラスのファラデー効果を利用した光変調器を作製し,光計測の長所 を利用できることを示した.その後の光通信技術の発展に伴い,化合物半導体による 発受光素子,低損失光ファイバ等の高性能で信頼性の高い光部品が得られるようにな ると,光応用磁界センサが一挙に開発,実用化されるようになった. 図 1-2 に 変 流 器 (CT)と し て 光 応 用 磁 界 セ ン サ を 適 用 し た と き の 構 成 例 を 示 す ( 3 ) . 光 源からの光は光磁界センサに入射し,透過光が検知器で光電変換される. 光 応 用 磁 界 セ ン サ に は , 高 感 度 で フ ァ ラ デ ー 効 果 が 大 き く ,か つ 温 度 係 数 の 小 さ い 材 料 が 必 要 で あ る . 表 1-1 に 代 表 的 な フ ァ ラ デ ー 材 料 の ヴ ェ ル デ 定 数 ( ま た は 感 度 ) と その温度変化を示す. 鉛 ガ ラ ス の 一 種 で あ る SF-6 ( 4 ) や BSO 結 晶 ( 3 ) は 反 磁 性 物 質 で あ る . そ の た め , ヴ ェ ル デ定数の温度変化は小さいが,その絶対値も小さい. 希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト 結 晶 と ビ ス マ ス 置 換 希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト (Bi:RIG)は ,巨 大 な フ ァ ラ デ ー 回 転 能 や 高 い 光 透 過 特 性 な ど の 優 れ た 磁 気 光 学 特 性 を 有 す る (5). 従 来 の 鉛 ガ 図1-2 光応用磁界センサの構成例 2 表 1-1 代表的なファラデー材料のセンサ特性 ヴェルデ定数 または感度 光吸収係数 ( cm - 1 ) 温度依存性 波長 (µm) 電圧 階級 線路 電流 SF-6 ( 4 ) (鉛 ガ ラ ス ) 0.854×10 - 3 deg/A ( 0.27×10 - 4 rad/AT) 8.7×10 - 4 0.5 % (-25℃ 85℃ ) 0.87 66 kV 100 A 4000 A BSO ( 3 ) (Bi 1 2 SiO 2 0 ) 4.61×10 - 3 deg/A ( 1.46×10 - 4 rad/AT) 0.0013 %・m/A 8.8×10 - 2 0.5 % (-25℃ 85℃ ) 0.63 66 kV 100 A 4000 A 250 0.5 % (-25℃ 85℃ ) 0.88 6.6 k V 0 A 720 A (BiGdY)IG ( 5 ) -1 (2.4×10 rad/AT) 200 V ラ ス な ど の フ ァ ラ デ ー 材 料 に 1 kOe 程 度 の 磁 界 を 加 え た 場 合 に 比 べ , 飽 和 磁 化 状 態 に あ る Bi:YIG の フ ァ ラ デ ー 回 転 は 百 倍 か ら 千 倍 程 度 大 き い .一 方 ,そ の 光 透 過 特 性 に は 0.6 µm の 可 視 光 か ら 15 µm の 近 赤 外 光 領 域 に 光 吸 収 が 小 さ い 領 域 が 存 在 す る .希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト 結 晶 の 中 で も , 液 相 エ ピ タ キ シ ー (LPE)法 に よ る Bi:RIG 薄 膜 は , 量 産 性 に 富 む の で , 高 感 度 の 光 応 用 磁 界 セ ン サ と し て 一 部 で 実 用 化 さ れ て い る (5). し か し , LPE 法 に よ る Bi:RIG 薄 膜 に は ,膜 厚 の 制 限 や 磁 区 構 造 に よ る 透 過 光 の 回 折 に よ り ,高 感 度 化 の 限 界 や 測 定 可 能 な 磁 界 領 域 が 狭 く な る と い う 問 題 が あ る (6). こ れ ら の フ ァ ラ デ ー 材 料 は , 送 電 線 や 高 圧 の 配 電 線 監 視 用 の 光 変 流 器 (光 CT)に 用 い ら れ て い る . 図 1-3 に 送 電 線 路 電 流 お よ び 従 量 電 灯 契 約 電 流 ( 7 ) を フ ァ ラ デ ー 材 料 と あ わせて示す.従量電灯契約電流は,配電線により需要家へ送られた電力を,各需要家 が 使 用 す る 最 大 電 流 に よ っ て , A( 5 A) , B ( 60 A) , C( 500 A) に 分 け た 契 約 電 流 値 で あ る . 図 1-3 に 示 す よ う に , 従 来 の フ ァ ラ デ ー 材 料 に は 5 A や 60 A の 非 常 に 低 い 電流を測定するのに適した高感度な材料が無く,このような材料の開発が望まれてい る. 近年,イットリウムの一部をセリウムに置換したイットリウム鉄ガーネット Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 ( Ce:YIG) が 巨 大 な フ ァ ラ デ ー 回 転 能 を 示 す こ と が 発 見 さ れ , そ の 磁 気 光 学 特 性 が 報 告 さ れ て き た ( 8 ) . 例 え ば Ce 0 . 7 Y 2 . 3 Fe 5 O 1 2 薄 膜 は , 波 長 1.15 µm で Bi 0 . 7 Y 2 . 3 Fe 5 O 1 2 よ り 約 6 倍 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 を 持 つ .こ の 巨 大 な フ ァ ラ デ ー 回 転 能 を も つ Ce:YIG 結 晶 を 光 応 用 磁 界 セ ン サ に 利 用 で き れ ば Bi:YIG よ り 高 感 度 な 磁 界 セ ン サ が 得 ら れ る が ,そ れ を 実 験 的 に 示 し た 研 究 は な か っ た .Ce:YIG 結 晶 を 光 応 用 磁 界 セ ン 3 サ に 応 用 す る に は , 光 線 を 結 晶 中 に 通 す た め に 直 径 3 mm 以 上 , 充 分 な フ ァ ラ デ ー 回 転 角 を 得 る た め に 厚 さ 300 µm 以 上 の 大 型 の 単 結 晶 が 必 要 で あ る . 単 結 晶 で は Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 (x = 0 - 0.3) を 成 長 さ せ た 研 究 が あ る が ,そ の 報 告 に よ る と 直 径 は 1 mm が 限 界 で あ る ( 9 ) . 一 方 ス パ ッ タ 法 ( 8 ) お よ び LPE 法 ( 1 0 ) に よ る Ce:YIG 薄 膜 作 製 の 研 究 が あ る .ス パ ッ タ 法 で は Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 で Ce を x = 2.5 ま で 置 換 す る こ と が で き る が ,膜 厚 は 1 µm が 限 度 で あ る ( 4 ) . LPE 法 で は Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 で Ce を x ≤ 0.04 ま で し か 置 換 す る こ と が で き な い た め ,巨 大 な フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は 得 ら れ な い ( 1 0 ) . このような背景のもと,広い組成範囲にわたってイットリウムを高濃度のセリウム に 置 換 し た 大 口 径 の YIG 単 結 晶 の 成 長 条 件 を 検 討 し ,磁 界 セ ン サ に 必 要 な 磁 気 光 学 特 性について評価することで,高感度,かつ広い領域の磁界を測定できる光応用磁界セ ンサの開発の基盤となる研究を行った.これらの結果を本論文で述べる. こ の た め に 溶 媒 移 動 浮 遊 帯 溶 融 法 (TSFZ 法 )及 び パ ル ス レ ー ザ ー 堆 積 法 (PLD 法 ) に 送電線路電流または 従量電灯契約電流 送電電圧階級または 従量電灯契約種別(7) 10000 電流値 (A) 1000 4000 A 66 kV 720 A 500 A 6.6 kV 従量電灯 C 60 A 従量電灯 B 5A 従量電灯 A SF-6鉛ガラス(4) またはBSO(3) (BiGdY)IG(5) 100 10 1 図1-3 光応用磁界センサ用ファラデー材料の測定領域 4 よ り 単 結 晶 及 び 薄 膜 の 成 長 を 行 い ,X 線 回 折 ,電 子 プ ロ ー ブ X 線 マ イ ク ロ ア ナ ラ イ ザ ー (EPMA), X 線 光 電 子 分 光 (XPS), 光 吸 収 測 定 , フ ァ ラ デ ー 回 転 角 測 定 , 赤 外 顕 微 鏡 観察によって結晶の評価を行い,特に次のことを明らかにした. ① TSFZ 法 に よ り , 大 型 の Ce:YIG 単 結 晶 が 成 長 で き る . ま た YIG 中 の Ce の 偏 析 係 数 κ は 0.19±0.06 で あ る . ② TSFZ 法 に よ り 成 長 し た Ce:YIG 単 結 晶 は ,フ ァ ラ デ ー 回 転 角 が 大 き く ,近 赤 外 光 領 域で光吸収係数が小さい.従って磁界センサ材料として有望である. ③ Ce:YIG 結 晶 の コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 は YIG よ り 大 き い た め ,そ の セ ン サ 出 力 は , コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 に よ り 影 響 を 受 け る . し か し ,「 重 ね 合 わ せ 法 」 に よ っ て 0.01 %・ m/A の 高 感 度 で , 8 A/m - 1400 A/m の 広 い 領 域 の 磁 界 を 測 定 で き る . ④ PLD 法 に よ っ て Ce:YIG 薄 膜 を 成 長 し , バ ル ク の 単 結 晶 の 比 肩 す る フ ァ ラ デ ー 回 転 能 を も つ Ce:YIG 薄 膜 を 成 長 し た . 本論文は,以上の結果を 8 章にまとめたものである. 第 1 章では,従来の光応用磁界センサの研究の中で本論文に関連するものを概観す る .特 に 送 配 電 線 な ど の 電 力 設 備 の 磁 界 (電 流 )計 測 用 セ ン サ の 開 発 の 歴 史 と そ の 研 究 背 景 , 及 び Ce:YIG 結 晶 の 磁 界 ( 電 流 ) 計 測 用 セ ン サ 素 子 の 開 発 に 対 す る 位 置 付 け を 示す.次に,本論文の目的とその構成を述べ,各章の内容を簡単にまとめる. 第 2 章では,希土類鉄ガーネット結晶の一般的な性質及び光応用センサの原理につ い て 述 べ , こ れ ら を 以 後 の 議 論 の 基 礎 と す る . す な わ ち 2.1 で は , 結 晶 構 造 , フ ァ ラ デー効果,光吸収特性に関する従来の研究を整理して示す.また,今までに行われた セ リ ウ ム 置 換 YIG の 研 究 を 磁 気 光 学 特 性 の 観 点 か ら 概 観 す る . 2.2 で は , フ ァ ラ デ ー 効 果 を 用 い た 光 応 用 磁 界 セ ン サ の 原 理 や 構 成 を 述 べ る 。 2.3 で は , セ ン サ 特 性 の 評 価 方法を述べる. 第 3 章 で は ,溶 媒 移 動 浮 遊 帯 溶 融 法 (TSFZ 法 )に よ る ,セ リ ウ ム 置 換 YIG 単 結 晶 の 成 長 と そ の 中 で の セ リ ウ ム の 偏 析 現 象 を 述 べ る . は じ め に 3.2 で TSFZ 法 の 原 理 , X 線 に よ る 結 晶 構 造 の 解 析 方 法 , Ce の 偏 析 現 象 の 評 価 方 法 を 説 明 す る . 続 い て 3.3.1 で は TSFZ 法 に よ り Ce: YIG 単 結 晶 を 成 長 し た 結 果 , お よ び 3.3.2 か ら 3.3.4 で Ce:YIG 5 単 結 晶 中 の Ce の 分 布 を 述 べ ,直 径 8 mm 長 さ 50 mm の 大 型 の Ce:YIG 単 結 晶 の 成 長 に はじめて成功したことを述べる. 第 4 章 で は , 前 章 の 方 法 で 作 製 し た Ce:YIG 単 結 晶 の 光 吸 収 特 性 , 磁 気 光 学 特 性 を 扱 う .は じ め に 4.2 で 光 学 特 性 の 評 価 方 法 ,直 流 磁 界 を 印 加 し た と き の 光 出 力 の 測 定 方 法 を 説 明 す る . 続 い て 4.3 で フ ァ ラ デ ー 回 転 能 , 光 吸 収 特 性 , 磁 界 セ ン サ へ 適 用 す る と き の 最 適 な 結 晶 長 , 直 流 磁 界 を 印 加 し た と き の 光 出 力 を 述 べ , Ce 0 . 7 Y 2 . 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 の 磁 界 セ ン サ の 感 度 は LPE 法 で 成 長 し た (BiGdLaY) 3 (FeGa) 5 O 1 2 膜 の 約 2 倍 の 0.0048 %・ m/A で あ る こ と を 示 す . 第 5 章 で は ,Ce:YIG 結 晶 の 磁 化 の 回 転 に 伴 う フ ァ ラ デ ー 効 果 を 利 用 し た 磁 界 セ ン サ を 提 案 す る .さ ら に フ ァ ラ デ ー 効 果 に 併 せ て 生 じ る コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 を 評 価 し , そ れ が セ ン サ 特 性 に 与 え る 影 響 を 検 討 す る .は じ め に 5.2 で 特 性 評 価 に 用 い る Ce:YIG 単結晶,コットン−ムートン効果の測定方法,センサ特性を評価する光学測定系,光 出 力 が 受 光 器 に よ っ て 変 換 さ れ る 出 力 信 号 を 説 明 す る . 続 い て 5.3 で は コ ッ ト ン − ム ートン効果の測定結果,およびセンサ出力の計算結果及び測定結果から,コットン− ム ー ト ン 効 果 の セ ン サ 出 力 へ の 影 響 を 述 べ る .Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 の コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 は YIG の そ れ の 約 3 倍 で あ る た め ,磁 界 セ ン サ の 感 度 は コ ッ ト ン ー ム ー ト ン効果により大きく影響を受けることを明らかにする. 第 6 章では,コットン−ムートン効果による感度低下に対する改善策として光路中 に バ イ ア ス 磁 界 方 向 が 90 度 異 な る 二 枚 の 結 晶 を お く ,「 重 ね 合 わ せ 法 」 を 提 案 す る . は じ め に 6.2 で 「重 ね 合 わ せ 法 」の 原 理 を 述 べ る . 続 い て 6.3 で は 「 重 ね 合 わ せ 法 」 に よ る セ ン サ 出 力 測 定 方 法 を 述 べ ,6.4 で は 「重 ね 合 わ せ 法 」に よ る 感 度 の 改 善 ,お よ び 「重 ね 合 わ せ 法 」を 利 用 し た セ ン サ の 出 力 特 性 を 述 べ ,こ の 方 法 に よ っ て ,磁 界 感 度 定 数 を 約 0.01 %・ m/A ま で 向 上 し , 8 A/m - 1400 A/m の 広 い 領 域 を 直 線 性 比 の ず れ が ±1 %以 内 で 測 定 で き , 低 磁 界 (電 流 )測 定 用 の セ ン サ と し て 有 望 で あ る こ と を 明 ら か に す る . 第 7 章 で は , パ ル ス レ ー ザ ー 堆 積 法 (PLD 法 )に よ っ て Ce 0 . 6 Y 2 . 4 Fe 5 O 1 2 (Ce:YIG)薄 膜 の 成 長 と そ の 磁 気 光 学 特 性 を 評 価 す る . は じ め に 7.2 で Ce:YIG 薄 膜 の 成 長 方 法 , Ce:YIG 薄 膜 を 構 成 す る 元 素 の EPMA に よ る 定 量 方 法 お よ び X 線 に よ る 結 晶 構 造 の 解 析 方 法 ,光 学 特 性 の 評 価 方 法 を 説 明 す る .続 い て 7.3 で は X 線 回 折 に よ る Ce:YIG 薄 膜 の 結 晶 構 造 の 解 析 , お よ び Ce:YIG 薄 膜 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 , 光 吸 収 特 性 , 磁 界 セ ン サ に 必 6 要 な 磁 気 光 学 特 性 を 評 価 し ,磁 界 に 対 す る 感 度 が Ce:YIG 単 結 晶 と 同 等 の Ce:YIG 薄 膜 を成長できることを明らかにする. 最後に第 8 章で,論文を総括し,各章の結果を整理して示す. また,付録では等方性媒質のコットンームートン効果およびファラデー効果と複屈 折が共存する場合のジョーンズマトリックスを表す式を導き出す. 7 参考文献 (1) 電 気 学 会 電 気 規 格 調 査 会 : 「 電 気 規 格 調 査 会 標 準 規 格 計器用変成器 JEC-1201 」, pp. 15, (1997). (2) S. Saito, Y. Fujii, K. Yokoyama, J. Hamasaki and Y. Ohno: “8Cl-the laser current transformer for EHV power transmission lines”, IEEE. J. Quantu m Electron., Vol. QR-2, pp. 255, (1966). (3) H. Katsukawa and S. Yokoi: “Optical current transducer with bulk type Bi 1 2 SiO 2 0 Faraday sensor for power systems”, Opt. Rev., Vol. 4, pp. 50-52, (1997). (4) K. Kurosawa: “Optical current transducers using flint glass fiber as the Faraday sensor element”, Opt. Rev., Vol. 4, pp. 38-44, (1997). (5) O. Kamada, H. Minemoto and N. Itoh: “Magneto-optical properties of (BiGdY) 3 Fe 5 O 1 2 for optical magnetic field sensors”, J. Appl. Phys., Vol. 75, pp. 6801, (1994). (6) 伊 東 伸 器 , 峯 本 尚 , 石 河 大 典 , 石 塚 訓 : 「 光 方 式 磁 界 セ ン サ の 高 精 度 化 」 , 日 本 応 用 磁 気 学 会 誌 , Vol. 20, No. 2, pp. 185-188, (1996). (7) 東 京 電 力 株 式 会 社 :「 電 気 供 給 約 款 」, Ⅲ . 契 約 種 別 お よ び 料 金 , 14. 契 約 種 別 , (2002). (8) M. Gomi, K. Satoh and M. Abe: “Giant Faraday rotation of Ce-substituted YIG films epitaxially grown by RF sputtering”, J. Appl. Phys., Vol. 27, pp. L1536-L1538, (1988). (9) T. Sekijima, T. Funakoshi, K. Katabe, K. Tahara, T. Fujii, K. Wakino and M. Okada: “Growth and optical properties of Ce-substituted YIG single crystals”, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 37, Part 1, No. 9A, pp. 4854-4857, (1998). (10) 玉 野 井 健 , 有 泉 み ゆ き , 品 川 公 成 , 斉 藤 敏 明 , 対 馬 立 郎 : 「Ce 置 換 YIG LPE 膜 の フ ァ ラ デ ー 効 果 」, 日 本 応 用 磁 気 学 会 誌 , Vol. 13, No. 1, pp. 44-45, (1989). 8 第 2 章 セリウム置換イットリウム鉄ガーネット結晶と光応用磁 界センサ 本章では,希土類鉄ガーネット結晶について,結晶構造,ファラデー効果,光吸収 特性に関する従来の研究をまとめて説明する.次に,ファラデー効果を用いた光応用 磁界センサの原理と構成を述べる.そして,これらを以後の章の基礎とする. 2.1 セ リ ウ ム 置 換 イ ッ ト リ ウ ム 鉄 ガ ー ネ ッ ト 結 晶 ( Ce x R 3 - x Fe 5 O 1 2 ) ガ ー ネ ッ ト 型 酸 化 物 は , {C 3 }[A 2 ](D 3 )O 1 2 の 組 成 を 有 し , 立 方 晶 系 に 属 す る . そ の 構 造 は 図 2-1 に 示 す ガ ー ネ ッ ト 構 造 で あ る . 単 位 胞 は 24 個 の C イ オ ン , 16 個 の A イ オ ン , 24 個 の D イ オ ン , 更 に 96 個 の O イ オ ン を 含 む . { 面 体 的 に O2-イ オ ン で 取 り 囲 ま れ て い る . [ }は 24c 位 置 と 呼 ば れ , 12 ]の 16a 位 置 ,お よ び ( )の 24d 位 置 は そ れ ぞ れ 4 面 体 的 , 及 び 8 面 体 的 に O2-イ オ ン に 取 り 囲 ま れ て い る (1). 代 表 的 な ガ ー ネ ッ ト 結 晶 で あ る 希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト の 組 成 式 は R 3 Fe 5 O 1 2 ( R: 希 土 –1 –1 0 42 –14 –12 0 1– 1– 1– 422 {C3}[A2](D3)O12 O12 [A2] (D3) {C3} 000 1– 0 1– 4 2 y y x x z z 図2-1 ガーネット構造におけるイオン配置(1) 9 類 ) で あ り , R 3 + イ オ ン は 24c 位 置 , Fe 3 + イ オ ン は 24d 位 置 , 及 び 16a 位 置 を 占 め て い る . こ の 希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト は フ ェ リ 磁 性 体 で あ る . 24d 位 置 の 3 個 の Fe 3 + イ オ ン と 16a 位 置 の 2 個 の Fe 3 + イ オ ン の 磁 気 モ ー メ ン ト は 強 い 負 の 超 交 換 相 互 作 用 に よ っ て 反 平 行 に 配 列 し ,さ ら に Fe 3 + イ オ ン の 磁 気 モ ー メ ン ト に 対 し て ,R 3 + の 磁 気 モ ー メ ン ト が ゆ る く 反 平 行 に 結 合 し て い る . R3+イ オ ン 同 士 の 相 互 作 用 は 弱 い . 各 位 置 の 磁 性 イ オ ン が 形 成 す る 磁 化 を 副 格 子 磁 化 と 呼 び ,そ の 大 き さ を そ れ ぞ れ I d , Ia, Ic で 表 す と , 飽 和 磁 化 ( 自 発 磁 化 ) Is は , Is = Id − Ia − Ic , (2-1) で与えられる. 磁 化 I s が 存 在 す る 物 質 で は 光 学 異 方 性 が 生 じ る .そ れ に 起 因 し た 光 学 現 象 が 磁 気 光 学効果である.特に磁化を有する物質を透過した直線偏光の偏波面が回転する効果を フ ァ ラ デ ー 効 果 と い う . 図 2-2 に フ ァ ラ デ ー 効 果 の 原 理 図 を 示 す . こ の フ ァ ラ デ ー 効 果 に よ る 偏 波 面 の 回 転 角 θ R は , 物 質 の 長 さ d, 及 び 光 の 進 行 方 向 ( 単 位 ベ ク ト ル s) への磁化の成分に比例し, ファラデー回転角θR 入射偏光光 飽和磁化Is 出射偏光光 s 光の伝搬方向の 単位ベクトル d ファラデー素子 図2-2 ファラデー効果 10 θR = V d ( IS ⋅ s ) , (2-2) で与えられる.V は比例定数である. 図 2-3 に YIG 結 晶 の 光 吸 収 係 数 の 波 長 依 存 性 ( 3 ) を 示 す .約 1 µm か ら 7 µm ま で の 遠 赤外から赤外の領域には光吸収係数が著しく小さい領域が存在する.より短波長側の 光 吸 収 係 数 の 波 長 依 存 性( 図 2-4)で 見 ら れ る 光 吸 収 帯 は ,O 2 - イ オ ン の 2p 軌 道 を 主 な 成 分 と す る 結 合 軌 道 か ら ,Fe 3 + イ オ ン の 3d 軌 道 を 主 な 成 分 と す る 反 結 合 軌 道 へ の 電 荷 移 動 遷 移 に よ る 光 吸 収 と さ れ て い る ( 4 ) . YIG 結 晶 は 大 き な フ ァ ラ デ ー 効 果 を 示 す こ と が 知 ら れ て い る .こ の フ ァ ラ デ ー 効 果 は ,図 2-5 に 示 す よ う に ( 5 ) ,2.89 eV (波 長 430 nm) 付近に最大値をもち,その裾が可視から赤外領域へも広がり,光吸収の小さい領域で もなお大きい. –1 Absorption coefficient α (cm ) Bi:YIG 結 晶 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は , 図 2-6 に 示 す よ う に ,Y を Bi に 置 換 し て い く と 150 1.5 1 hν (eV) 0.6 0.25 0.15 100 50 0 800 1600 2400 5000 Wavelength (nm) 10000 図2-3 YIG結晶の光吸収係数の波長依存性(長波長側)(3) 11 図2-4 YIG結晶の光吸収係数の波長依存性(3) 図2-5 YIG結晶のファラデー回転能の波長依存性(8) 12 . . . . . 図2-6 Bi:YIG結晶のファラデー回転能の波長依存性(6) と 符 号 が 変 わ る と と も に 増 加 す る ( 6 ) . こ れ は ス ピ ン ー 軌 道 作 用 係 数 の 大 き な Bi 3 + イ オ ン の 6p 電 子 軌 道 が , O 2 - イ オ ン の 2p 軌 道 に 混 合 す る こ と に よ っ て , 酸 素 の π 軌 道 の ス ピ ン ―軌 道 相 互 作 用 係 数 を 大 き く し , 16a の Fe 3 + イ オ ン へ の π 軌 道 遷 移 だ け で な く , YIG の フ ァ ラ デ ー 効 果 で は 寄 与 の 小 さ か っ た 24d の Fe 3 + イ オ ン へ の π 軌 道 遷 移 か ら も 大 き い 寄 与 が 可 能 に な る た め と 推 定 さ れ て い る (7). Y の 一 部 を Ce に 置 換 し た Ce:YIG 結 晶 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 の 増 大 効 果 及 び 光 吸 収 特 性 は ,五 味 ら に よ り 詳 細 に 報 告 さ れ た ( 5 , 8 , 9 ) .彼 ら は ス パ ッ タ 法 に よ り 成 長 し た Ce:YIG 薄 膜 で 主 に 可 視 光 領 域 の 磁 気 光 学 特 性 を 評 価 し た ( 8 ) . Ce:YIG と Bi 置 換 YIG の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 を 波 長 1150 nm で 比 較 す る と , Ce 1 Y 2 Fe 5 O 1 2 は Bi 1 Y 2 Fe 5 O 1 2 の 約 6 倍 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 を 示 す . 図 2-7 に Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 薄 膜 (x = 0, 1.0, 2.0, 2.5)の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 の 波 長 依 存 性 を 示 す ( 8 ) . フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は 2.89 eV (波 長 430 nm)付 近 及 び 1.85 eV (波 長 750 nm)付 近 に 正 の ピ ー ク ,1.24 eV (波 長 1000 n m) 付 近 に 負 の ピ ー ク が あ る . 彼 ら は , 光 吸 収 係 数 の 波 長 依 存 性 を 検 討 し , そ れ か ら Ce 置 換 に よ っ て フ ァ ラ デ ー 回 転 能 が 増 大 す る 原 因 ( 8 , 9 ) を 考 察 し て い る . Y 3 Al 5 - x Fe x O 1 2 焼 結 体 の 光 吸 収 の 波 長 依 存 性 か ら Ce 0 . 1 Y 2 . 9 Al 5 - x Fe x O 1 2 焼 結 体 の 光 吸 収 の 波 長 依 存 性 を 引 い た 実 験 結 果 , お よ び 最 小 二 乗 法 に よ り 吸 収 曲 線 を フ ィ ッ テ ィ ン グ し た 結 果 を 図 2-8 に 示 す . 鉄 の 濃 度 x は 1.0 と 0.5 で 点 線 及 び 実 線 で 示 す ( 9 ) .2.7 eV 付 近 の 光 吸 収 ピ ー ク は Ce 3 + イ オ ン の 4f-5d 遷 移 13 図2-7 CexY3-xFe5O12薄膜(x = 0, 1.0, 2.0, 2.5)の ファラデー回転能の波長依存性(8) 図2-8 Ce0.1Y2.9Al5-xFexO12の光吸収の波長依存性を最小二乗法によりフィッティングし た結果.鉄の濃度xは1.0と0.5で点線および実線で示す (10) 14 で あ る . 2.5 eV 以 下 に 少 な く と も 二 つ の 吸 収 曲 線 が あ る . 一 つ は ピ ー ク の エ ネ ル ギ ー が 1.4 eV (887 n m),も う 一 つ は ピ ー ク の エ ネ ル ギ ー が 2.0 eV (621 nm)の 吸 収 で あ る . こ れ ら の 光 吸 収 曲 線 の う ち , 1.4 eV (887 n m)の 光 吸 収 は Ce 3 + -Fe 3 + に よ る 電 荷 移 動 遷 移 (Ce 3 + +Fe 3 + - Ce 4 + +Fe 2 + )に よ る 光 吸 収 で あ り , そ れ に よ り 近 赤 外 光 領 域 の フ ァ ラ デ ー 効 果 の 増 大 が お こ る , と 五 味 ら は 結 論 し て い る (9). 2.2 光応用磁界センサの原理 希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト 結 晶 を 用 い た 光 応 用 磁 界 セ ン サ の 測 定 は ,被 測 定 磁 界 H a に よ る 希土類鉄ガーネット結晶の磁化の回転または磁壁の移動を利用する. 2.2.1 磁化の回転を用いたセンサ 図 2-9 に 磁 化 の 回 転 に よ る フ ァ ラ デ ー 効 果 を 利 用 し た セ ン サ の 構 成 を 示 す . バ イ ア Detector Output light x z Ce:YIG crystal Analyzer y Is Hb Ha Polarizer Incident light Is Ha φ Hb Light source 図2-9 磁化回転式磁界センサの構成 15 ス 磁 界 H b を 光 の 伝 搬 方 向 と 垂 直 な 方 向 に 印 加 し ,飽 和 磁 化 I s を 単 磁 区 に す る . 被 測 定 磁 界 H a を 光 の 進 行 方 向 に 印 加 す る と , 飽 和 磁 化 I s は φ だ け 回 転 し ,飽 和 磁 化 I s の 光 の 進 行 方 向 成 分 に よ り フ ァ ラ デ ー 回 転 が 生 じ る .偏 光 子 か ら 45 度 回 転 し て 設 置 し た 検 光 子 を 透 過 す る 光 の 強 度 は ,フ ァ ラ デ ー 回 転 に よ り 変 化 し ,フ ォ ト ダ イ オ ー ド (PD)で 電 気 的 な 出 力 信 号 (V o u t )に 変 換 さ れ る ( こ れ を 「 磁 化 回 転 式 磁 界 セ ン サ 」 と 呼 ぶ ). PD の 出 力 信 号 (V o u t )は ,以 下 の よ う に 求 め ら れ る .フ ァ ラ デ ー 回 転 能 を θ F ,結 晶 長 を d と す る と , 図 2-9 の 構 成 に よ る フ ァ ラ デ ー 回 転 角 は , θ R = θ F dsinφ と な る . x 方 向 に 偏 波 し た 直線偏光を結晶に入射すると透過直線偏光は,ファラデー回転を表すジョーンズマト リックス cosθ R - sinθ R sinθ R , cosθ R (2-3) を 用 い て (2), e x 1 ± 1 cos (θ F dsin φ) sin (θ F dsin φ) 1 e = , y ± 1 1 − sin( θ F dsin φ) cos (θ F dsin φ) 0 ( 2 -4 ) と な る . こ れ は PD で 光 パ ワ ー に 比 例 し た 出 力 信 号 , ( 2 Vout = 2 K e x + e y 2 ) (2-5) = K {1 m sin(2θ F dsinφ)}, に 変 換 さ れ る . K は PD が 受 光 し た 光 を 電 気 信 号 に 変 換 す る 比 例 係 数 (光 電 変 換 係 数 ) で あ る . I s の 回 転 角 は , H a と H b の 比 の 逆 正 接 で 表 さ れ , (2-5)式 は H Vout = K 1 m sin 2θ F dsin tan -1 a , H b 16 ( 2-6) と な る . (2-6)式 で フ ァ ラ デ ー 回 転 能 θ F が -1600 deg/cm (Ce 0 . 2 Y 2 . 8 Fe 5 O 1 2 の 波 長 1.3μ m の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 ),結 晶 長 d が 3.0 mm の Ce 0 . 2 Y 2 . 8 Fe 5 O 1 2 結 晶 を 用 い ,K = 1 と し た 場 合 の セ ン サ 出 力 を 図 2-10 に 示 す . 2.2.2 磁壁の移動を用いたセンサ 磁 壁 の 移 動 を 利 用 し た 光 応 用 磁 界 セ ン サ に 対 し て ,図 2-11 に 示 す よ う な ,周 期 的 磁 区 構 造 の 磁 壁 移 動 に よ る 磁 化 過 程 の モ デ ル を 考 え る (10). 被 測 定 磁 界 Ha が な い と き 反 平 行 な 方 向 の Is を 持 っ た 磁 区 が 交 互 に 並 ん で 磁 区 周 期 p の 多 磁 区 構 造 を 形 成 し て い る . 被 測 定 磁 界 H a の 印 加 に 従 っ て 磁 壁 が 移 動 し ,H a に 平 行 な 磁 区 の 幅 (ω 1 )が 増 加 し ,反 平 行 な 磁 区 幅 (ω 2 )が 減 少 し て 磁 化 過 程 が 進 行 す る .磁 壁 移 動 に よ る 光 応 用 磁 界 セ ン サ で は , 結晶を透過した偏光が回折されるため, 0 次回折光のみを受光した場合と 1 次以上の回 折 光 も 受 光 し た 場 合 で は , 磁 界 セ ン サ の 出 力 信 号 Vout は 異 な る (10). 0 次回折光のみを受光する場合には, 2 Optical output (a.u.) V out θF = –1600 deg/cm d = 3.0 mm 1 0 –5.0 0 Magnetic field (kA/m) 図2-10 センサ出力の計算例 17 5.0 2 Vout I = K 1 + tan( θ F d ) , Is (2-7) と な る ( 1 0 ) .ま た ,全 回 折 光 を 受 光 す る 場 合 の フ ァ ラ デ ー 効 果 の 大 き さ は ,互 い に 反 平 行 の 磁 化 を 有 す る 磁 区 の そ れ ぞ れ の 磁 区 の 体 積 比 よ り 得 ら れ る .従 っ て 図 2-11 に お い て ω 1 の 領 域 で +θ F d, ω 2 の 領 域 で -θ F d の フ ァ ラ デ ー 回 転 角 が 起 こ る と す れ ば , 光 出 力 は, ω1 {1 + sin (θ F d )} + ω1 {1 − sin (θ F d )} Vout = K ω1 + ω 2 ω1 + ω 2 I = K 1 + sin (2θ F d ) , Is (2-8) と な る ( 1 0 ) . (2-7)式 お よ び (2-8)式 で は , 出 力 信 号 は 印 加 磁 界 H に 対 し て 相 対 磁 化 I/I s の 関 数 と な る . 図 2-12 に , (2-7)式 の 0 次 光 と (2-8)式 の 全 回 折 光 を 受 光 し た と き の 光 入射偏光光 p (=ω1+ω2) ω1 ω2 ω1 ω2 ω1 Is YIG d 透過回折光 n = -3 n = -2 n = -1 n=0 θFd Ha n = +2 n = +1 図2-11 YIG単結晶の縞状磁区構造モデル(10).ω1およびω2は磁区幅 (H = 0ではω1 = ω2),pは磁区周期. 18 出力の相対磁化依存性を示す.0 次光を受光した場合は,印加磁界が大きくなるに連 れて非線形誤差が生じる.一方,全回折光を受光した場合の光出力は直線になる. 磁壁の移動を利用した光応用磁界センサでは,微小磁界領域では磁壁抗磁力 ( (BiGdY)IG 薄 膜 で は 25 A/m ( 1 1 ) )に よ り 直 線 性 比 の ず れ が 増 大 す る .一 方 ,高 磁 界 領 域では磁区構造により結晶を透過した偏光光が回折されるため, 回折光の全次数を受 光 で き な い と 直 線 性 比 の ず れ が 増 大 す る . 渡 村 ら は , LPE 法 で 成 長 し た (BiGdY)IG 薄 膜 で は , 図 2-13 の よ う に , 500 A/m 以 下 お よ び 10000 A/m 以 上 で 直 線 性 比 の ず れ が 増 大 す る と 報 告 し て い る ( 11 ) . 本研究では,このような微小磁界および高磁界での直線性比のずれをなくし,広い 領域の磁界を測定するために磁化の回転による光応用磁界センサを採用する. 2.3 センサ特性の評価方法 光応用磁界センサを計測器として考えた場合に,必要となる感度及び直線性比のず れの評価法について述べる. Normalized output intensity 2.5 2 1.5 1 0.5 0 -1 -0.5 0 0.5 1 Relative magnetization I/Is 図2-12 0次回折光と全回折光を受光したときの光出力の相対磁化依存性 (計算結果) 19 2.3.1 感度の定義 被 測 定 磁 界 H a に よ る 出 力 信 号 (V o u t )は ,図 2-14 に 示 す よ う に , (2-5)式 の 右 辺 第 二 項 の 信 号 成 分 (V s )が 第 一 項 の 直 流 バ イ ア ス 成 分 (V b )に 重 畳 さ れ た 形 に な っ て い る .こ の と き , セ ン サ の 感 度 (S)は 単 位 磁 界 当 た り の V s の V b に 対 す る 百 分 率 で 表 す と す る と , S = (Vs / Vb ) / H a × 100% = sin(2θ F dsinφ)/ H a × 100% (2-9) , と な る ( 1 2 ) . 感 度 S の 単 位 は [%・ m/A]で あ る . 感 度 S は , (2-5)式 の V o u t が 線 形 近 似 で き る 被 測 定 磁 界 Ha の 領 域 で 定 義 す る . 2.3.2 直線性比のずれの定義 Relative error (%) 光応用磁界(電流)センサを送配電線の電流計測に適用するときに標準となる規格 0 –50 –100 10 0 10 2 Magnetic field (A/m) 図2-13 Bi:YIG薄膜の直線性比のずれ(11) 20 10 4 は 無 い .従 来 の フ ァ ラ デ ー 材 料 で は ,セ ン サ 出 力 の 直 線 性 は ,電 気 学 会 電 気 規 格 調 査 会 の 計 器 用 変 成 器 の 標 準 規 格 ( 1 3 ) に あ る 直 線 性 比 の ず れ に よ る 評 価 法 を 用 い て い る .そ こ で , 本 研 究 で も こ の 標 準 規 格 を 用 い る . 直 線 性 比 の ず れ は , セ ン サ 出 力 磁 界 を Hout, 被 測 定 磁 界 を Ha と す る と , α= H out − H a × 100% , Ha (2-10) と定義され,被測定磁界に対する出力の誤差を百分率で表す.しかし,実際のセンサ 出力磁界は,被測定磁界による光量変化を受光器で光電変換した電気信号として得ら れる.そこで,被測定磁界に対してセンサ出力磁界を校正する必要がある.センサ出 力 磁 界 が 被 測 定 磁 界 に 対 し て 非 線 形 な 特 性 を 持 つ 場 合 は ,図 2-15 に 示 す よ う に ,測 定 領域の適当な一点で校正し,その点と原点を結んだ直線からのずれを決定する.校正 点は,測定可能な磁界領域が最も広くなり,かつ感度が大きい点を選ぶ.この方法に 従 っ て 校 正 す る と , セ ン サ 出 力 磁 界 Hout は , Kcal を 校 正 す る 係 数 と す る と , H out = K calVout , (2-11) 電気信号 Vout 信号成分(Vs) 直流バイアス成分(Vb) 0 時間 t 図2-14 光強度変調による受光器からの出力信号の概略図 21 と な る . さ ら に , 図 2-15 に 示 し た よ う に , 信 号 成 分 に 受 光 器 の 雑 音 成 分 V n が 含 ま れ る場合には, H out = K cal (Vout + Vn ) , (2-12) となる. 直 線 性 比 の ず れ を 評 価 す る た め に , 表 2-1 で 示 し た JEC1201 に あ る 保 護 継 電 用 の 変 流 器 (CT: Current Transformer)の 規 格 ( 1 3 ) を 適 用 す る . 送 電 線 の 電 流 ( 定 格 電 流 4000 A) を 測 定 し た と き の 直 線 性 比 の ず れ を 確 度 階 級 1PS で 評 価 し た 例 を 図 2-16 に 示 す ( 1 4 ) . こ の 電 流 セ ン サ は 確 度 階 級 1PS の 直 線 性 比 の ず れ の 限 度 内 に 入 り ,こ の 規 格 を 満 た す . 光 応 用 磁 界 セ ン サ を 電 流 セ ン サ と し て 用 い る 場 合 は ,導 体 の ま わ り の 強 度 を 測 定 す る . この磁界は電流に比例する.そこで,本研究では磁界の強度はこの規格の定格電流値 Ir に 対 応 さ せ た . 校正点 Hout Hout = Kcal(Vout+ Vn) Hout = Ha Vn 0 Ha 図2-15 標準入力に対するセンサ出力の較正方法 22 表 2-1 保 護 継 電 器 用 の 変 流 器 に 対 す る 直 線 性 比 の ず れ の 規 格 (13) 直 線 性 比 の ず れ (%) 限度 0.05I r 0.2I r 1.0I r 1P 級 − ± 3.0 ±1.0 3P 級 − ±10.0 ±3.0 1PS 級 ±3.0 ± 1.5 ±1.0 3PS 級 − ± 4.5 ±3.0 1 次電流 確 度 階 数 Ir : 定 格 電 流 値 2.3.3 SNR (Signal-to-noise ratio)の 定 義 ま た セ ン サ 感 度 の 評 価 法 と し て ,SNR(Signal-to-noise ratio)特 性 を 用 い る 場 合 も あ る . こ の SNR は , H o u t r m s に 含 ま れ る 雑 音 成 分 に 対 す る セ ン サ 信 号 の 比 で あ り , K V rms V rms SNR = 20 log out outrms = 20 log outrms , K outVn Vn と な る . SNR = 1 と な る 入 力 磁 界 , つ ま り 雑 音 成 分 に 等 価 な 入 力 磁 界 , 図2-16 電流センサ出力の直線性比のずれとJEC-1201の確度階級1PS による規格(定格電流4000 A)(14) 23 (2 -13 ) Hnm rms = K outVn rms (2-14) , を , 雑 音 等 価 磁 界 強 度 (NEH) と 呼 び , セ ン サ の 最 大 検 出 感 度 を 表 す パ ラ メ ー タ と し て 用いる. 24 参考文献 (1) S. Geller, H. Williams, G. P. Espinosa and R. C. Sherwood: “Importance of intrasublattice magnetic interactions and of substitutional iron type behavior o f substitution yttrium iron garnets”, Bell Syst. Tech. J., Vol. 43, pp. 565-580 (1996). (2) 応 用 物 理 学 会 光 学 懇 話 会 編 : 「結 晶 光 学 」, 森 北 出 版 , pp. 132, (1975). (3) D. L. Wood and J. P. Remeika: “Effect of impurities on the optical properties of yttrium iron garnet”, J. Appl. Phys., Vol. 38, pp. 1038-1045, (1967). (4) 佐 藤 勝 昭 : 「光 と 磁 気 」, 朝 倉 書 店 , pp. 118, (1988). (5) M. Gomi, K. Satoh and M. Abe: “Giant Faraday rotation of Ce-substituted YIG films epitaxially grown by RF sputtering”, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 27, pp. L1536-L1538, (1988). (6) H. Takeuchi, K. Shinagawa and S. Taniguchi: “Faraday Effect of Bi-Substituted Rare-Earth Iron Garnet”, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 12, pp. 465, (1973). (7) 品 川 公 成 : 「磁 性 ガ ー ネ ッ ト の フ ァ ラ デ ー 効 果 」,日 本 応 用 磁 気 学 会 誌 ,Vol. 6,pp. 247-252, (1982). (8) M. Gomi, H. Furuyama and M. Abe: “Strong magneto-optical enhancement in highly Ce-substituted iron garnet films prepared by sputtering”, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 70, pp. 7065-7067, (1991). (9) M. Gomi and T. Kanie: “Ce 3 + , Fe 3 + -induced optical absorption in Ce, Fe:YAG prepared by coprecipitation”, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 35, pp. 1798-1801, (1996). (10) 沼 田 卓 久 , 棚 池 博 行 , 井 口 征 士 , 桜 井 良 文 : 「 多 磁 区 材 料 の お け る 磁 気 光 学 ヒ ス テ リ シ ス ル ー プ ー 固 定 検 光 子 法 に お け る 光 回 折 を 考 慮 し た 計 算 -」,日 本 応 用 磁 気 学 会 誌 , Vol. 14, pp. 642-647, (1990). (11) 渡 村 雄 幸 , 鎌 田 修 , 伊 藤 伸 器 , 峯 本 尚 : 「 磁 界 セ ン サ ガ ー ネ ッ ト の 直 線 性 と 磁 化 過 程 」, 日 本 応 用 磁 気 学 会 誌 , Vol. 20, pp. 165-168, (1996). (12) N. Itoh, M. Minemoto, D. Ishiko and S. Ishizuka: “Optical magnetic field sensors with high linearity using Bi-substituted rare earth iron garnets”, IEEE Trans. Magn., Vol. 31, pp. 3191-3193, (1995). (13) 電 気 学 会 電 気 規 格 調 査 会:「電 気 規 格 調 査 会 標 準 規 格 25 計器用変成器 JEC-1201」, pp. 16, (1997). (14) K. Kurosawa: “Optical current transducers using flint glass fiber as the Faraday sensor element”, Opt. Rev, Vol. 4, pp. 38-44, (1997). 26 第 3 章 溶 媒 移 動 浮 遊 帯 溶 融 法 (TSFZ 法 )に よ る セ リ ウ ム 置 換 イ ッ トリウム鉄ガーネットの単結晶成長 3.1 は じ め に ファラデー材料を磁界センサ素子へ応用する場合,大型の結晶が以下の理由で必要 で あ る .① コ ア 径 50 µm の グ レ ー ト イ ン デ ッ ク ス (GI)フ ァ イ バ か ら 出 射 さ れ ,セ ル フ ォ ッ ク レ ン ズ で 集 光 し た ビ ー ム 径 0.8 mm の 光 線 を 結 晶 に 通 す た め に 直 径 3 mm 程 度 の 結 晶 が 必 要 で あ る .ま た ,② 大 き い フ ァ ラ デ ー 回 転 角 を 得 る た め に 結 晶 を セ ン サ に 用 い , さらに③素子を量産するためにも,大型の結晶が必要である. Ce:YIG の 単 位 置 換 量 あ た り の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は Bi:YIG よ り も 大 き い こ と が 発 見 さ れ る と ( 1 ) , RF ス パ ッ タ リ ン グ 法 ( 1 ) , あ る い は 液 相 エ ピ タ キ シ ー 法 (LPE 法 ) (2) によ り 成 長 が 行 わ れ , 磁 気 光 学 特 性 が 調 べ ら れ た . ス パ ッ タ リ ン グ 法 で は Y を 80 %ま で Ce に 置 換 す る こ と が で き ,Ce 0 . 2 4 Y 0 . 0 6 Fe 5 O 1 2 薄 膜 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は 波 長 700 nm で 6.7×10 4 deg/cm と 大 き い .し か し ,成 長 で き る 膜 の 厚 さ は 1 µm 程 度 が 限 界 の た め ,膜 を厚くしてファラデー回転角を大きくすることができない (1) .従 っ て ,ス パ ッ タ 法 で 成 長 し た Ce:YIG 膜 を 光 応 用 磁 界 セ ン サ に 適 用 す る と そ の 感 度 は 小 さ く な る . ま た , 液 相 エ ピ タ キ シ ー 法 (LPE 法 )で は Y を 1.3 %よ り 多 く の Ce に 置 換 で き な い ( 2 ) .こ れ は , LPE 法 で 成 長 し た ガ ー ネ ッ ト 膜 の 成 長 速 度 は 30 µm/h と 遅 い た め ,Ce の 有 効 偏 析 係 数 が 小 さ く な り , Y を 高 濃 度 の Ce に 置 換 で き な い た め と 考 え ら れ る . 赤 外 集 光 加 熱 方 式 を 利 用 し た TSFZ 法 は , LPE 法 に 比 べ て 成 長 速 度 が 速 い た め , Y を 高 濃 度 の Ce に 置 換 し ,か つ 大 き な Ce:YIG 単 結 晶 を 成 長 す る の に 適 し た 方 法 で あ る と 考 え , 著 者 は TSFZ 法 を 採 用 し た . TSFZ 法 で 成 長 し た YIG 単 結 晶 の 成 長 速 度 は 1 mm/h で LPE 法 の 約 30 倍 で あ る . さ ら に , TSFZ 法 は YIG 単 結 晶 の よ う な 非 調 和 溶 融 組 成 の 結 晶 成 長 が 可 能 で あ り (3,4), 坩 堝 を 用 い な い た め 不 純 物 の 混 入 が 少 な い . 本 章 で は ,TSFZ 法 に よ る 高 濃 度 に Ce を 置 換 し た YIG (Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 )単 結 晶 の 成 長 , 成 長 し た 結 晶 の 組 成 の 均 一 性 , お よ び セ リ ウ ム の 偏 析 に つ い て 述 べ る (5). 3.2 実 験 方 法 3.2.1 TSFZ 法 27 図 3-1 の Fe 2 O 3 と YFeO 3 間 の 状 態 図 に 示 す よ う に , YIG に 対 応 す る Y : Fe = 3 : 5 の 酸 化 物 組 成 が 1582℃ で 融 解 し た と き , 斜 方 晶 フ ェ ラ イ ト YFeO 3 と 融 液 に 分 解 す る ( 6 ) . し か し ,あ る 温 度 で YIG と 平 衡 に 共 存 す る よ う な 鉄 過 剰 の 組 成( 包 晶 組 成 )を 溶 剤 と し て 用 い れ ば , こ の 分 解 を 防 ぎ , YIG 単 結 晶 を 得 る こ と が で き る . TSFZ 法 に よ る 結 晶 成 長 に 必 要 な 原 料 棒 の 作 製 手 順 を 図 3-2 に 示 す .ま ず ,CeO 2 (純 度 99.99 %), Y 2 O 3 (純 度 99.99 %), Fe 2 O 3 (純 度 99.99 %)の 粉 末 の Ignition Loss を 測 定 し た . Ignition Loss と は , 原 料 に 含 ま れ る 水 酸 イ オ ン な ど の 成 分 に よ り 熱 処 理 後 に 質 量 が 減 少 す る こ と で あ る . Ignition Loss は , 各 原 料 を 1000℃ で 5 時 間 焼 成 し て , 焼 成 の前後を秤量して決定した.この結果を考慮し,実際に秤取する原料の質量を以下の 式に従って決定した. (秤 取 す る 質 量 )= ( 焼 成 前 の 質 量 / 焼 成 後 の 質 量 ) ×( 必 要 な 質 量 ) ( 焼 成 前 の 質 量 / 焼 成 後 の 質 量 ) は , CeO 2 で は 1.0047, Y 2 O 3 で は 1.0057, Fe 2 O 3 で は Orthoferrite + Liquid Liquid Temperature ( ℃) 1600 1582 Solvent Compound Garnet + Liquid 1500 Liquid + Magnetite 1455 Orthoferrite + Garnet Hematite + Liquid 1400 Hematite + Garnet 0 Fe2O3 10 20 30 40 Y3Fe5O12 Y2O3 (mole %) 図3-1 酸素中の鉄酸化物とYFeO3の状態図(6) 28 YFeO 3 1.0011 で あ っ た . 次 に , Ce : Y : Fe = x : 3-x : 5 (x = 0 - 0.3)の 比 に 秤 り と っ た 酸 化 物 粉 末 を エ タ ノ ー ル 中 で 機 械 的 に 混 合 し た . 混 合 し た 粉 末 は ラ バ ー チ ュ ー ブ に 入 れ , 静 水 圧 40 MPa の 圧 力 で 棒 状 に プ レ ス し た . こ れ を , 酸 素 気 流 中 1400℃ - 1450℃ で 燒 結 し た . TSFZ 法 の 原 料 棒 に 使 わ れ る 燒 結 棒 は お よ そ 直 径 8 mm で 長 さ は 60 mm, 焼 結 棒 の 密 度 は 結 晶 の 理 論 値 の 85 % - 95 %に な っ た .次 に ,溶 剤 を 作 る た め に 使 わ れ る 小 さ な 燒 結 さ れ た 塊 を 作 製 し た . 溶 剤 の 組 成 は , (Ce + Y) : Fe = 15 : 85 と し た ( 9 ) . Ce と Y の 比 は , Ce の偏析係数を考慮して焼結棒の組成ごとに決定した.混合した原料粉末を上記の方法 で プ レ ス し て 1100℃ で 2 時 間 焼 結 し て 直 径 3 mm の 棒 を 作 製 し た . 単 結 晶 作 成 の 加 熱 源 に 2 本 の 700W の ハ ロ ゲ ン ラ ン プ を 用 い た 赤 外 線 集 光 タ イ プ の フ ロ ー テ ィ ン グ ゾ ー ン 装 置 (株 式 会 社 ア ス カ ル ,FZ-10010F-D)を 用 い た .図 3-3 に 示 す ように,この装置は共通の焦点を持つ二つの楕円鏡を有し,二つのランプは各楕円鏡 の一方の焦点に置かれる.ランプ光の集光によって共通の焦点部分にある原料棒を融 解する. 4NCeO2, 4NY2O3, 4NFe2O3をエタノール中で混合 圧力40 Mpaをかけて棒状を作製 原料棒:1450℃で2時間焼成 溶剤:1100℃で2時間焼成 原料棒 溶剤 種結晶 : YIG (111) 気流 : 酸素 育成方向 単結晶 種結晶 図3-2 Ce:YIG原料の作製手順 29 TSFZ 法 に よ る 結 晶 成 長 は , 図 3-4 に 示 し た よ う に , 以 下 の 手 順 で 行 っ た . ① Ce 置 換 YIG の 原 料 棒 を ,上 シ ャ フ ト の 下 に 吊 す .種 結 晶 に は ,[111]方 向 に 伸 び た YIG 単 結 晶 を 用 い た . 溶 融 帯 を 作 る た め に , 焼 結 し た ペ レ ッ ト (溶 剤 部 分 )を 種 結 晶 の 先 端 に 設 置 し , 純 酸 素 を 石 英 管 内 に 50 ml/min で 流 す . ②はじめに,ランプ出力を上げて種結晶上のペレットを昇温する. 回転 原料棒 楕円鏡 楕円鏡 溶剤 単結晶 ハロゲンランプ 石英管 種結晶 反対回転 図3-3 赤外線集光加熱装置の概略図 原料棒 原料棒 溶剤 溶剤 種結晶 (a) 単結晶 種結晶 (b) (c) 図3-4 溶融帯の作製 30 (d) ③ ペ レ ッ ト の 先 端 部 が 一 部 融 解 し た と き に , 図 3-4(a)の よ う に , 原 料 棒 を 下 方 へ 移 動 する.原料棒が溶けたペレットに触れたとき,ランプ出力を落として,ペレットを 原料棒に凝固させる. ④ 原 料 棒 を 上 に 移 動 し , 原 料 棒 の 下 に つ い た ペ レ ッ ト を 種 結 晶 か ら 離 す (図 3-4(b)). ⑤上記手順の後,原料棒の下部についたペレットを,再度昇温,融解する. ⑥ 次 に ,上 シ ャ フ ト を 下 方 に 移 動 し , ペ レ ッ ト の 溶 け た 下 部 を 種 結 晶 に 接 合 す る (図 3-4(c)).ラ ン プ 出 力 を コ ン ト ロ ー ル し て 溶 け た ゾ ー ン (溶 剤 )の 長 さ と 直 径 を 調 整 す る . ⑦ 種 結 晶 ―焼 結 棒 間 の 距 離 が 5 mm 程 度 に 安 定 し た 後 , 原 料 棒 と 種 結 晶 を 速 度 1 mm/h - 2.5 mm/h の 速 度 で 下 方 に 移 動 し て ,結 晶 成 長 を 行 う (図 3-4(d)).上 下 の シ ャ フ ト を 15 rpm で 反 対 方 向 に 回 転 さ せ る . ラ ン プ 出 力 は , 結 晶 成 長 中 に 溶 け た 溶 剤 が 安 定 す るように調節する. ⑧ 結 晶 成 長 の 終 了 時 は ,ラ ン プ 出 力 を 下 げ な が ら ,上 シ ャ フ ト を 上 方 に 移 動 す る こ と で , 結晶から切り離す. TSFZ 法 で 原 料 棒 を ス ム ー ズ 且 つ 定 常 的 に 溶 剤 に 溶 か す た め に は , 原 料 棒 の 品 質 は 非常に重要である.本研究では,上記に示した方法(シングルパス法)で成長した結 晶 を ,も う 一 度 原 料 棒 に 用 い て 単 結 晶 を 成 長 し た( ダ ブ ル パ ス 法 ).こ の 方 法 で は ,一 度 結 晶 化 し た 原 料 棒 は ス ム ー ズ に 溶 剤 へ 融 解 し た . 二 回 目 の 成 長 は , 速 度 1 mm/h よ り遅い速度で行った. 3.2.2 X 線 に よ る 評 価 結晶を粉砕して得られた粉末の X 線回折により結晶がガーネット構造の単相である ことを確認した.また背面反射ラウエ法により結晶の成長面を決定した. X 線 回 折 で は , X 線 源 に CuKα を 使 用 し , 湾 曲 グ ラ フ ァ イ ト の モ ノ ク ロ メ ー タ を 使 用 し た .電 圧 40 kV を 印 加 し ,電 流 200 mA を 通 電 し て X 線 を 発 生 し た .2θ = 15 度 70 度 ま で 2θ お よ び θ を 同 時 に 走 査 し た . ラ ウ エ 法 で は , X 線 源 に Cu を 使 用 し た . ま た , 電 圧 20 kV, 電 流 40 mA を 印 加 し て , 結 晶 を 反 射 し た X 線 を 10 分 間 フ ィ ル ム に露光した. 3.2.3 偏 析 現 象 の 評 価 31 成 長 し た 結 晶 の Ce, Y, Fe の 成 分 比 は 電 子 プ ロ ー ブ X 線 マ イ ク ロ ア ナ ラ イ ザ ー (EPMA, 日 本 電 子 JXA-8600MX)を 用 い て 定 量 し た .ま た ,電 子 ビ ー ム 観 察 装 置( SEM, Nikon ESEM-2700L) で Ce:YIG 単 結 晶 の 表 面 を 観 察 し , 多 元 素 を 同 時 に 分 析 で き る エ ネ ル ギ ー 分 散 型 X 線 分 析 装 置 (EDAX)で Ce:YIG 単 結 晶 中 の Ce,Y,Fe の 濃 度 分 布 を 測 定した. 成 長 方 向 の 組 成 比 の プ ロ フ ァ イ ル を 決 定 す る た め ,成 長 方 向 に 平 行 に 結 晶 を カ ッ ト し , カ ッ ト 面 を 粒 径 1 µm の 研 磨 材 で 鏡 面 状 に 研 磨 し た . EPMA の 測 定 は 以 下 の 手 順 で 行 っ た . 結 晶 表 面 に 直 径 10 µm の 電 子 ビ ー ム を 照 射 し た と き に 試 料 か ら 発 生 す る 特 性 X 線 を 分 光 結 晶 に よ り 分 光 し ,そ の 強 度 を 半 導 体 検 出 器 で 検 出 す る .標 準 試 料 で も 同 様 に 特 性 X 線 の 強 度 を 測 定 し ,被 測 定 試 料 と 標 準 試 料 の 特 性 X 線 の 強 度 比 か ら 各 元 素 の 濃 度 を 決 定 す る . 分 光 結 晶 は , Ce は PETJ( ペ ン タ エ リ シ リ ト ー ル ), Y は TAP( フ タ ル 酸 タ リ ウ ム ), Fe は LIFH( フ ッ 化 リ チ ウ ム ),O は LDE2( 面 間 隔 100Å の コ ー テ ィ ン グ 多 層 膜 分 光 素 子 ) を 用 い た . 標 準 試 料 は , Ce は CeB 6 , Y 及 び Fe は YFeO 3 を 用 い , 測 定 値 の 校 正 に は ZAF( Z:原 子 量 , A:吸 収 , F: 蛍 光 )補 正 法 を 用 い た .EPMA で は ,Ce:YIG 結 晶 に 電 子 線 を 照 射 し た と き ,結 晶 の 表 面 に 電 荷 が 溜 ま る の で , 表 面 に カ ー ボ ン を 50 nm の 厚 さ に 蒸 着 し た 後 , 試 料 台 の 上 に 結晶を銀ペーストで固定して電荷が溜まるのを避けた. 上 記 の 測 定 を 試 料 表 面 の 直 線 上 で 100 µm ず つ 位 置 を 変 え て 1 点 に 5 回 ず つ 測 定 し , その値の平均値を実験値とした. 各 元 素 の 濃 度 分 布 は ,加 速 電 圧 25 kV,プ ロ ー ブ 電 流 2×10 - 8 A で 発 生 し た 電 子 線 を 試 料 に 入 射 し ,試 料 か ら 励 起 さ れ た 特 性 X 線 の 強 度 か ら EDAX に よ り 測 定 し た .特 性 X 線 の 強 度 が 強 い エ ネ ル ギ ー 準 位 か ら , Ce は L 線 , Y の L 線 , Fe は K 線 を 選 ん だ . 検 出 の 積 算 は 300 回 行 っ た . 表 3-1 EPMA の 測 定 条 件 加速電圧 15 kV プ ロ ー ブ 電 流 2×10 - 8 A 分光結晶 Ce PETJ Y TAP Fe LIFH O LDE2 32 標準試料 CeB 6 YFeO 3 YFeO 3 YFeO 3 ま た ,単 結 晶 の 成 長 界 面 を 観 察 す る た め に ,結 晶 の 表 面 を リ ン 酸 で エ ッ チ ン グ し た . まず,成長した単結晶の中心部を成長方向に平行にカットした.ダイヤモンドカッタ ー で 切 断 し た 面 を 表 面 粗 さ 1 µm の 研 磨 剤 に よ り 鏡 面 状 に 研 磨 し た . エ ッ チ ン グ は リ ン 酸 中 ,300℃ で 40 秒 間 表 面 洗 浄 し た 後 ,さ ら に リ ン 酸 中 ,190℃ - 200℃ で 10 分 - 20 分 間 エ ッ チ ン グ し た .成 長 界 面 は 反 射 型 赤 外 線 顕 微 鏡 を 用 い ,倍 率 は 10 倍 で 観 察 し た . 3.3 実 験 結 果 お よ び 考 察 3.3.1 結 晶 成 長 ダ ブ ル パ ス 法 で 成 長 し た Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 単 結 晶 (x = 0.14 - 0.28)を 図 3-5 に 示 す . 速 度 1 mm/h で 成 長 し て 直 径 約 8 mm, 長 さ 50 mm の 単 結 晶 を 得 た . 成 長 速 度 が 1 mm/h 以 下 の 場 合 , 図 3-5 の よ う に 表 面 が 非 常 に 滑 ら か で , 光 沢 の あ る 結 晶 が 得 ら れ る . 酸 素 気 流 中 1440℃ で 3 時 間 焼 成 し た Ce 0 . 3 Y 2 . 7 Fe 5 O 1 2 多 結 晶 , お よ び Ce:YIG 単 結 晶 を 粉 砕 し た 粉 末 の X 線 回 折 パ タ ー ン を 図 3-6 お よ び 図 3-7 に 示 す .Ce:YIG 単 相 の ピ ー ク 以 外 に , わ ず か に CeO 2 の ピ ー ク が 現 れ た . 図 3-8 は , Ce:YIG 焼 結 体 を 原 料 棒 に 用 い て , 速 度 3 mm/h で 結 晶 成 長 し て い る と き の CCD カ メ ラ の 画 像 で あ る .こ の と き 焼 結 棒 の 密 度 は 単 結 晶 の 密 度 の 約 87 %で あ る . 上 部 が 焼 結 棒 , 下 部 が 成 長 し た 結 晶 と 種 結 晶 で あ る . 溶 融 帯 の 左 部 分 に 直 径 約 3 mm の気泡が存在する.これは焼結棒から発生した気泡である.焼結棒の密度が単結晶の 密度より小さいほど気泡が多く発生する.成長中にこの気泡が生成して弾けると,結 晶の直径が不均一になる.また,成長界面が安定しない.気泡が多く弾けたときに溶 剤 が 単 結 晶 に 垂 れ た 結 果 を 図 3-9 に 示 す .一 方 焼 結 棒 の 密 度 が 単 結 晶 の 密 度 の 90 %以 上ではほとんど気泡は出ない. 図3-5 CexY3-xFe5O12 (x = 0.14 - 0.28)単結晶 33 34 0 10 4000 8000 12000 Intensity (counts) (211) 20 (321) 30 (400) (420) (332) CeO 2(200) (422) (431) 50 60 2Θ/ ° 70 (842) (1020) 80 図3-6 Ce:YIG多結晶の粉末X線回折パターン 40 (521) (440) (611) CeO 2(220) (444) (640) (642) (721) CeO (311) 2 (732) (800) (840) (921) (664) (932) (941) (1011) (1031) (1040) (1042) 90 (1121) (880) (1132) (1060) 100 (1200) (1152) (1222) (1163) 110 (1244) (1260) (1332) 120 (1262) 35 0 10 4000 8000 12000 Intensity (counts) (211) 20 (321) 30 (400) (420) (332) CeO 2(200) (422) (431) 50 60 2Θ/ ° 70 80 図3-7 Ce:YIG単結晶の粉末X線回折パターン 40 (521) (440) (611) CeO 2(220) (444) (640) (721) CeO 2(311) (732) (642) (800) (840) (842) (921) (664) (932) (941) (1011) (1020) (1031) (1040) (1042) 90 (1121) (880) (1132) (1060) 100 (1200) (1152) (1222) (1163) 110 (1244) (1260) (1332) 120 (1262) このように,密度の大きな焼結棒が安定した成長に必要である.原料に単結晶を用 い る ダ ブ ル パ ス 法 で は 2 回 目 の 成 長 時 に 気 泡 は 出 な い た め ,溶 剤 が 単 結 晶 か ら 垂 れ ず , か つ 成 長 界 面 が 安 定 す る . そ し て , 成 長 速 度 を 1 mm/h 以 下 に す れ ば , CeO 2 が わ ず か に 析 出 す る も の の , Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 単 結 晶 (x = 0.14 - 0.28)を 成 長 で き る . 3.3.2 Ce:YIG 結 晶 中 の Ce の 分 布 本 節 お よ び 次 節 で は , 成 長 し た Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 単 結 晶 (x = 0.14 - 0.28)中 の Ce の 濃 度 分布について調べる. Ce の 濃 度 分 布 を 表 す 記 号 を 図 3-10 に 示 す . Ce の 有 効 偏 析 係 数 は κ = C s / C l で 定 義 原料棒 気泡 ソルベント 育成した結晶 種結晶 1 cm 図3-8 原料棒から結晶を育成したときの気泡の発生 1 cm 図3-9 溶剤が育成途中で垂れた結晶.育成速度:2.5 mm/h. 焼結棒の組成はCe0.3Y2.7Fe5O12. 36 さ れ る .こ こ で C s は 結 晶 中 の Ce 濃 度 , C l は 溶 融 帯 中 の Ce 濃 度 で あ る .有 効 偏 析 係 数 κ を 見 積 も る 式 は ,以 下 の 手 順 で 求 め ら れ る .溶 剤 中 の Ce が 蒸 発 し な い と す る と ,帯 溶 融 法 (Zone Melting)に お け る 不 純 物 の 偏 析 を 求 め る 式 ( 7 ) と 同 様 に L0 (C l ( L) + dC l ) + C 0 dL = L0 C l ( L) + C 0 dL − κC l ( L)dL , (3-1) と な る . こ こ で , L は 種 結 晶 か ら の 距 離 ( L = 0 は 成 長 開 始 ), L 0 は 溶 剤 の 長 さ , C 0 が 原 料 棒 の Ce 濃 度 で あ る .(3-1)式 の 左 辺 は dL だ け 結 晶 成 長 し た と き に 原 料 棒 か ら 溶 融 帯 に Ce が 入 っ た と き の 溶 融 帯 中 の Ce 濃 度 , 右 辺 は 溶 融 帯 か ら 結 晶 に Ce が 出 た と き の 溶 融 帯 中 の Ce 濃 度 を 表 す .(3-1)式 を L で 微 分 し ,初 期 条 件 L = 0 で ,C l は 溶 剤 中 の Ce 濃 度 (C s o l )と 等 し い と す る と ,結 晶 中 の Ce 濃 度 分 布 (κC l (L))は [ ] κC l ( L) = C 0 1 − {1 − (C sol / C 0 )κ }e −κL / L , 0 (3-2) 原料棒 C0 : 原料棒のCe濃度 溶剤 L+L0 L 単結晶 Cl : 溶融帯のCe濃度 Csol : 溶剤中の最初のCe濃度 Cs = κCl : 結晶中のCe濃度 0 種結晶 図3-10 Ceの濃度分布を表す記号 37 と な る . (3-4)式 で C s o l = C 0 と す る と , 結 晶 中 の Ce 濃 度 分 布 { } C s = C 0 1 − (1 − κ )e −κL / L0 , (3 - 3 ) が 得 ら れ る . 成 長 方 向 に 沿 っ た Ce の 濃 度 分 布 を EPMA に よ り 測 定 し た 結 果 を 図 3-11 に 黒 丸 で 示 す . こ の と き 原 料 棒 と 溶 剤 の Ce 濃 度 の 比 率 は , Ce : Y = 0.15 : 2.85 で , 成 長 速 度 は 2 mm/h で あ る .ま た ,溶 剤 の 長 さ L 0 は 約 5 mm で あ る .κ を パ ラ メ ー タ と し て 最 小 二 乗 法 に よ り (3-3)式 を 実 験 値 に フ ィ ッ テ ィ ン グ し た 結 果 を 図 3-11 に 示 す .図 3-11 の 曲 線 で は , Ce の κ は 0.19±0.06 で あ る . Ce の 有 効 偏 析 係 数 が 1 よ り 非 常 に 小 さ い と き に ,均 一 な Ce 濃 度 を 持 つ Ce:YIG 単 結 晶 を 成 長 す る に は , (Ce)/(Ce+ Y)の 比 率 が 成 長 す る 単 結 晶 よ り 大 き い 溶 剤 を 用 い る こ と が 必 要 で あ る . 有 効 偏 析 係 数 が 0.19 の と き , κ = 0.19 ±0.06 1 Cs/C0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 2 4 6 8 10 Distance from seed crystal L/L0 図3-11 Ce:YIG結晶の育成方向のセリウムの偏析係数. フィッティング曲線のR値は0.923. 38 12 (単 結 晶 の Ce 濃 度 )/(単 結 晶 の Ce 濃 度 +単 結 晶 の Y 濃 度 ) = 0.19×(溶 剤 の Ce 濃 度 )/(溶 剤 の Ce 濃 度 +溶 剤 の Y 濃 度 ) が 均 一 な Ce 濃 度 を 持 つ Ce:YIG 単 結 晶 を 成 長 す る の に 適 当 で あ る . 3.3.3 溶 剤 の 有 無 と Ce の 分 布 3.3.2 で , 均 一 な Ce 濃 度 を 持 つ Ce:YIG 単 結 晶 を 成 長 す る に は , 成 長 す る 単 結 晶 よ り (Ce)/(Ce + Y) の 比 率 が 大 き な 溶 剤 を 用 い る こ と が 必 要 で あ る こ と を 述 べ た . 本 節 で は こ の よ う に (Ce)/(Ce+Y)比 が 結 晶 の そ れ よ り 大 き い 溶 剤 を 使 用 す る と , 実 際 に Ce が 単結晶の広い領域で均一に置換されることを示す.また,溶剤を使用しない場合には 液相が不安定になることを述べる. 図 3-12 に , 出 発 原 料 の 組 成 が Ce : Y = 0.3 : 2.7 で あ る Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 単 結 晶 の Ce の 濃 度 分 布 を 示 す . こ こ で Cryst. No.1 で は 成 長 す る 単 結 晶 の Ce / (Ce + Y)よ り 3 倍 Ce ▲ 0.35 Cryst. solvent No. Y : Ce 1 : 0 1 7 : 3 2 0.3 Ce content x 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0 0 2 4 6 8 10 Distance from seed crystalL/L0 図3-12 異なるCe濃度の溶剤で育成したCe:YIG結晶のセリウムの濃度分布. フィッティング曲線のR値はCrysta. No. 1は0.985,Crysta. No. 2は0.940. 39 を 多 く ド ー プ し た Ce : Y = 3 : 7 の 溶 剤 を 使 用 し , Cryst. No.2 で は 溶 剤 を 使 用 し な い . Cryst. No.1 の 場 合 , 結 晶 を 成 長 す る に 従 っ て , Ce の 濃 度 が 増 大 し , 0.3 に 近 づ き , L / L 0 = 4 - 8 の 広 い 領 域 で は , Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 で x = 0.24 - 0.28 の ほ ぼ 均 一 な 組 成 が 得 ら れ る . Cryst. No.2 の 場 合 に は , L / L 0 = 4.5 で 溶 融 帯 が 垂 れ 落 ち て 原 料 棒 と 種 結 晶 が 分 離 す る .そ の 後 ,結 晶 成 長 を 再 開 す る と Ce 濃 度 は 増 大 し ,L / L 0 = 6.5 で 溶 融 帯 が 再 び 垂れて落ちる. 以 上 の 結 果 か ら , Ce の 置 換 量 は x = 0.24 - 0.28 で 安 定 す る た め , Y を Ce に 置 換 で き る 限 度 は , 8 % - 9 %と 考 え ら れ る . ま た , L / L 0 が 4 以 下 の 領 域 で も x = 0.24 - 0.28 の 組 成 を 得 る に は ,種 結 晶 に Ce:YIG を 使 用 し ,溶 剤 の Ce の 比 率 を 高 く す る 必 要 あ る . 溶 剤 を 用 い な い と 溶 融 帯 が 垂 れ る の は 図 3-1 の 状 態 図 か ら 以 下 の よ う に 説 明 で き る . 結 晶 成 長 の 開 始 時 は , YIG が 溶 け る と YFeO 3 と 溶 液 に 分 解 し , YFeO 3 が 結 晶 中 に 析 出 す る . こ の と き に 溶 融 帯 の 組 成 は YIG か ら Fe 2 O 3 の 方 向 に 移 動 す る . こ の と き 溶 融 帯 の 融 点 が 下 が り , 溶 融 帯 の 領 域 L0 が 広 が る た め に , 溶 剤 が 垂 れ 落 ち た と 考 え ら れ る . 3.3.4 Ce:YIG 単 結 晶 の SEM 像 と Ce 及 び Y, Fe の 分 布 YAG レ ー ザ ー 加 熱 を 使 っ た 浮 遊 帯 溶 融 法 (FZ 法 )に よ り 成 長 し た Ce 置 換 YIG フ ァ イ バ 結 晶 で は , 結 晶 中 に CeO 2 が 析 出 す る と 報 告 さ れ て い る ( 7 ) . TSFZ 法 で 成 長 し た Ce:YIG 結 晶 で も Ce 酸 化 物 が 析 出 し て い る 可 能 性 が あ る の で , 結 晶 中 の Ce 及 び Y, Fe の 濃 度 分 布 に つ い て 調 べ た . 図 3-13 に Ce:YIG 単 結 晶 の SEM 像 と CeL 線 , YL 線 , FeK 線 に よ る 各 元 素 の 濃 度 分 布 を示す.結晶成長方向と垂直な方向に沿って結晶を①中部,②境界部,③端部に分け て 検 討 す る .① 中 部 は 中 央 部 の 約 5 mm の 領 域 ,② 境 界 部 は 中 部 の 外 側 約 0.5 mm の 領 域 , ③ 端 部 は 境 界 部 の 外 側 約 0.8 mm の 領 域 で あ る . CeL 線 を 示 す 薄 紫 色 は Ce が 分 布 し て い る 部 分 ,YL 線 の 黄 緑 色 は Y の 分 布 し て い る 部 分 ,FeK 線 の 赤 色 は Fe の 分 布 し て い る 部 分 で あ る .こ の 図 に よ る と ,① 中 部 及 び ③ 端 部 で は Ce 及 び Y, Fe は 均 一 に 分 布 し て い る . 一 方 , 境 界 部 で は Ce の 濃 度 が 高 い 縞 状 の 領 域 が あ る . Ce が 境 界 部 に 析 出 す る 原 因 は 以 下 の よ う に 考 え る こ と が で き る .結 晶 成 長 中 の 溶 剤 と 単 結 晶 の 成 長 界 面 は 図 3-14(a)の よ う な 形 を し て い る .ま た ,エ ッ チ ン グ し た 単 結 晶 40 中部 境界部 端部 SEM像 100μm 100μm Ce L line Y L line Fe K line 図3-13 Ce:YIG単結晶のSEM像とCeおよびY, Feの濃度分布 41 100μm の 表 面 の 左 側 半 分 を 赤 外 線 顕 微 鏡 で 観 察 し た 結 果 を 図 3-14(b)に 示 す .成 長 界 面 は ,そ の形状から①中部②境界部③端部に分けることができる.①中部は結晶の中央部の幅 原料棒 融解界面 ①中部 溶剤 ②境界部 ③端部 成長界面 単結晶 ③ ② ① ② ③ (a) 端 ③ ② ① (b) 図3-14 (a) 結晶成長中の界面の模式図. (b) Ce:YIG単結晶の成長界面. 42 中央 約 5 mm の 領 域 , ② 境 界 部 は 中 部 の 外 側 約 0.5 mm の 領 域 , ③ 端 部 は 境 界 部 の 外 側 約 0.8 mm の 領 域 で , 図 3-13 の ① 中 部 , ② 境 界 部 , ③ 端 部 の 領 域 と 一 致 す る . 図 3-15 は 北 村 ら の 考 察 に よ る TSFZ 法 に お け る 成 長 界 面 付 近 の 溶 剤 の 対 流 の 様 子 を 示 す ( 8 ) . 成 長界面には,中部では結晶の回転に起因する強制対流が,一方端部では融液内の温度 差 に 起 因 す る 熱 対 流 (マ ラ ン ゴ ニ 対 流 )が そ れ ぞ れ 生 じ て い る . そ の 結 果 , 強 制 対 流 と 熱対流とが衝突する境界部では乱流が生じ,複雑な結晶成長界面が生じる.また結晶 中 に 固 溶 さ れ な か っ た 溶 剤 中 の Ce は , こ の 強 制 対 流 と 熱 対 流 に よ り 境 界 部 に 運 ば れ て 堆 積 す る . こ の よ う に , 溶 剤 か ら Ce:YIG 単 結 晶 を 成 長 す る と き に は , 単 結 晶 中 に セリウム酸化物が不純物として堆積する. Ce と Y が 均 一 に 分 布 し て い る ① 中 部 は ,結 晶 の 成 長 方 向 と 垂 直 な 方 向 に 直 径 約 5 mm の 円 筒 状 で あ る .Ce:YIG 単 結 晶 を 磁 界 セ ン サ に 適 用 す る の に 必 要 な 直 径 は 3 mm 以 上 で あ る か ら , 成 長 し た Ce:YIG 単 結 晶 の 中 部 を 磁 界 セ ン サ 用 素 子 に 利 用 で き る . そ こ で ,次 章 以 降 は ,Ce:YIG 単 結 晶 の 中 部 を 使 っ て ,磁 気 光 学 特 性 お よ び セ ン サ 特 性 を 評 価する. 3.4 ま と め 我 々 は ,溶 媒 移 動 浮 遊 帯 溶 融 法 (Traveling solvent floating zone method, TSFZ 法 )に よ 図3-15 成長界面付近の溶剤の流れの概略図(8). 育成方向に対して右側半分を示す. 43 り , 直 径 8 mm, 長 さ 50 mm の Ce 置 換 YIG 単 結 晶 の 成 長 に 成 功 し た . ダ ブ ル パ ス 法 に よ る 最 適 な 成 長 速 度 は 1 mm/h で あ る .酸 素 雰 囲 気 中 で 8 %ま で の Y を Ce で 置 換 し た Ce 置 換 YIG 単 結 晶 を 成 長 で き た .置 換 さ れ な か っ た 溶 剤 中 の Ce は , 強 制 対 流 と 熱 対 流 に よ り 成 長 界 面 の 境 界 部 に 運 ば れ て Ce が 高 濃 度 に 分 布 し た . YIG 中 の Ce の 偏 析 係 数 κ は 0.19±0.06 で あ る .こ の よ う に κ が 小 さ い た め に 単 結 晶 成 長 に は 結 晶 の 組 成 よ り も 高 濃 度 の Ce を 置 換 し た イ ッ ト リ ウ ム 鉄 酸 化 物 を 溶 剤 と し て使用する必要がある. 一 例 と し て , 成 長 す る 単 結 晶 の Ce / (Ce + Y)よ り 3 倍 Ce を 多 く ド ー プ し た Ce : Y = 3 : 7 の 溶 剤 を 使 用 し て 成 長 し た Ce:YIG 結 晶 の Ce の 置 換 量 は , L / L 0 = 4 - 10 の 広 い 領 域 で ,Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 に お い て x = 0.24 - 0.26 と な り 均 一 に 置 換 さ れ て い る .こ れ は Y を 約 8 %ま で 均 一 に Ce に 置 換 で き る こ と を 示 す .こ の 結 晶 で は 長 さ 20 mm - 50 mm の 領域で一定のファラデー回転角を得ることができる. 44 参考文献 (1) M. Gomi, K. Satoh and M. Abe: “Giant Faraday rotation of Ce-substituted YIG films epitaxially grown by RF sputtering”, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 27, No. 8, pp . L1536-L1538, (1988). (2) 玉 野 井 健 , 有 泉 み ゆ き , 品 川 公 成 , 斉 藤 敏 明 , 対 馬 立 郎 : 「Ce 置 換 YIG LPE 膜 の フ ァ ラ デ ー 効 果 」, 日 本 応 用 磁 気 学 会 誌 , Vol. 13, No. 1, pp. 44-45, (1989). (3) S. Kimura and I. Shindo: “Single crystal growth of YIG by the floating zone method”, J. Cryst. Growth, Vol. 41, pp. 192-198, (1977). (4) Y. Furukawa, M. Fujiyoshi, F. Nitanda, M. Sato and S. Makio: “Valency control of iron in Y 3 Fe 5 O 1 2 single crystals grown by the floating zone method”, J. Cryst. Growth, Vol. 143, pp. 243-248, (1994). (5) S. Higuchi, Y. Furukawa, S. Takekawa, O. Kamada and K. Kitamura: “Magneto-optical properties of cerium-substituted yttriu m iron garnet single crystals grown by traveling solvent floating zone method”, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 38, Part 1, No. 7A, pp. 4122-4126, (1999). (6) H. J. Van Hook: “Phase relations in the ternary system Fe 2 O 3 -FeO-YFeO 3 ”, J. Am. Ceram. Soc., Vol. 45, pp. 162-165, (1962). (7) W. G. Pfann: Zone Melting (Robert E. Kriegner Publishing, Huntington, NY, 1978) 2nd. ed., pp. 29. (8) K. Kitamura, N. II, I. Shindo and S. Kimura: “Interface shape and horizontal variations of Al and Ga contents in substituted YIG single crystals grown by the floating zone method”, J. Cryst. Growth, Vol. 46, pp. 277-285, (1979). 45 第 4章 4.1 セリウム置換イットリウム鉄ガーネットの磁気光学特性 はじめに 第 3 章 で は 高 感 度 な 光 応 用 磁 界 セ ン サ の 材 料 を 得 る た め に 行 っ た TSFZ 法 に よ る Ce:YIG の 結 晶 成 長 を 述 べ た .フ ァ ラ デ ー 効 果 を 用 い た 高 感 度 な 光 応 用 磁 界 セ ン サ を 得 る た め に は , Ce:YIG 結 晶 の 単 位 磁 界 あ た り の フ ァ ラ デ ー 回 転 角 が 非 常 に 大 き い こ と , および光吸収係数が小さいことが必要である.ファラデー素子の結晶長を長くすれば 感度は増大するが,光の吸収により透過する光量は減少し,最終的には出力光がノイ ズに埋もれてしまう.そこで,実用上は感度を最大にする結晶の厚さを決める必要が ある. 本 章 は 第 3 章 を う け ,TSFZ 法 に よ り 成 長 し た Ce:YIG 単 結 晶 に つ い て ,磁 界 セ ン サ に 必 要 な 光 吸 収 特 性 , 磁 気 光 学 特 性 を 評 価 し , ビ ス マ ス 置 換 RIG と 比 較 す る . ま た , 感 度 を 最 大 に す る Ce:YIG 結 晶 の 厚 さ を 決 め る . こ れ ら の 結 果 か ら , Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 感 度 は ,ビ ス マ ス 置 換 RIG 膜 の 約 2 倍 の 0.0048 %・ m/A で あ る こ と を 示 す .な お ,伊 藤 ら は ,ビ ス マ ス 置 換 RIG 膜 で は 感 度 が 0.0023 %・ m/A で あ る と 報 告 し て い る (1) . 4.2 4.2.1 実験方法 光学特性の評価 光 学 特 性 の 評 価 に 用 い た Ce:YIG 結 晶 成 長 に は 原 料 の Ce 0 . 3 Y 2 . 7 Fe 5 O 1 2 の 焼 結 体 を 用 い ,ダ ブ ル パ ス 法 で ,1 回 目 を 10 mm/h,2 回 目 を 0.8 mm/h の 速 度 で 成 長 し た .EPMA よ り 決 定 し た 組 成 は ,Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 (x = 0, 0.06, 0.15, 0.18, 0.24)で あ っ た .得 ら れ た 結 晶 は 成 長 方 向 に 垂 直 に 0.1 mm - 1 mm の 厚 さ に 切 断 し , 表 面 を 鏡 面 状 に 研 磨 し て 測 定 試料にした. 光 透 過 率 は 自 記 式 分 光 光 度 計( 島 津 製 作 所 (株 )製 ,MPC-3100)に よ り 波 長 1100 nm - 2500 nm の 範 囲 で 測 定 し た . 光 吸 収 係 数 は 厚 さ の 異 な る 2 枚 の 結 晶 の 透 過 率 か ら 以 下 の 式 に よって求めた. 46 α= I 1 ln 1 (d 2 − d1 ) I 2 , (4-1) こ こ で , α は 光 吸 収 係 数 , d 1 ,d 2 は 結 晶 1, 結 晶 2 の 厚 さ , I 1 ,I 2 は 結 晶 1 , 結 晶 2 の 透 過 率 で あ る .Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 は 厚 さ 260 µm 及 び 106 µm,攪 拌 す く い 上 げ フ ラ ッ ク ス 法 ( 2 ) に よ り 作 製 し た Bi 0 . 8 2 Y 2 . 1 8 Fe 5 O 1 2 結 晶 は 厚 さ 350 µm 及 び 230 µm の 試 料 の 透 過 率から光吸収係数を求めた. フ ァ ラ デ ー 回 転 能 を ク ロ ス ー ニ コ ル 法 ( 3 ) に よ り 波 長 1600 nm - 1100 nm の 領 域 で 50 nm ご と に 測 定 し た . 図 4-1 に 測 定 装 置 の 概 略 図 , 図 4-2 に 測 定 装 置 の 概 観 を 示 す( ネ オ ア ー ク (株 )製 , BH-M600F-D). ハ ロ ゲ ン ラ ン プ の 入 射 光 を 分 光 し て レ ン ズ で 平 行 光 にし,偏光子により直線偏光にして,試料に入射する.このときレンズで絞ってビー ム 径 を 1.5 mm に す る . レ ン ズ で 平 行 光 に 戻 っ た 透 過 光 は 検 光 子 を 透 過 し , レ ン ズ で 集 光 し て 検 出 器 の Ge フ ォ ト ダ イ オ ー ド (以 下 Ge-PD)に 入 る .磁 界 発 生 に は ヘ ル ム ホ ル ツ 型 配 置 コ イ ル を 有 す る 電 磁 石 を 用 い た . 磁 界 は ガ ウ ス メ ー タ ( F. W. BELL 製 , 4048) で 測 定 し た .分 光 器 に は ,半 値 幅 0.8 n m の 分 解 能( 500 n m で 0.01 mm の ス リ ッ ト 幅 の とき)を有するツェルニターナー型モノクロメーターを使用した. フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は ±250 kA/m の 直 流 磁 界 (こ の と き 反 磁 界 を 引 い た 試 料 内 の 磁 界 PC パルスモータ コ ン ト ロ ーラ イ ン タ ーフ ェ イ ス ユニッ ト インターフェイス 電磁石用 ユニット 電源 インターフェイス ユニット ロッ ク イン アンプ レンズ ハロ ゲン 分光器 ラ ンプ 検光子 試料 オプ テ ィ カ ル チョ ッ パー Ge-PD 偏光子 レンズ 電磁石 図4-1 ファラデー回転能測定装置の概略図 47 は 23 kA/m)を 印 加 し て 試 料 の 磁 化 が 完 全 に 飽 和 し た 状 態 で 測 定 し た .Ge-PD に 入 射 す る光量は微弱であるから,分光器を透過した光をオプティカルチョッパーによりチョ ッピングし,オプティカルチョッパーの信号に同期させてロックインアンプで増幅し た Ge-PD の 出 力 信 号 を 測 定 し た .偏 光 子 及 び 検 光 子 は 消 光 比 が 5×10 - 5 の グ ラ ン ト ム ソ ン プ リ ズ ム を 使 用 し た .フ ァ ラ デ ー 回 転 能 の 符 号 は 光 源 か ら Ge-PD に 向 う 方 向 に 磁 界 を か け た と き , 光 源 を 背 に し て 偏 光 面 が 時 計 回 り に 回 転 す る 場 合 を 正 と し た (2). 4.2.2 直流磁界を印加したときの光出力の測定 分 光 器 を 通 っ た 波 長 1300 nm の 直 線 偏 光 光 を 試 料 に 入 射 す る . 検 光 子 は 偏 光 子 か ら 方 位 角 を 45 度 傾 け た 状 態 で 固 定 し , 印 加 磁 界 が ゼ ロ の と き の 受 光 量 に 対 す る , -250 kA/m - 250 kA/m の 磁 界 を 印 加 し た と き の 受 光 量 の 比 を 測 定 し た . 4.3 実験結果及び考察 4.3.1 光 吸 収 特 性 図 4 - 3 に 波 長 11 5 0 n m - 2 5 0 0 n m の C e 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 F e 5 O 1 2 結 晶 の 光 吸 収 係 数 を , 図4-2 ファラデー回転能測定装置 48 Bi 0 . 8 2 Y 2 . 1 8 Fe 5 O 1 2 結 晶 と 比 較 し て 示 す . Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 光 吸 収 係 数 は 1250 nm 付 近 よ り 短 い 波 長 で は 急 激 に 増 大 す る . YIG で こ れ に 相 当 す る 波 長 は 約 1000 n m で あ る .1250 nm 付 近 よ り 長 い 波 長 領 域 で Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 光 吸 収 が 小 さ く ,そ の 光 吸 収 係 数 は Bi 0 . 8 2 Y 2 . 1 8 Fe 5 O 1 2 結 晶 よ り 小 さ い . 五 味 ら ( 4 ) は , Ce:YIG 薄 膜 で は 1.4 eV (829 nm), 2.1 eV (592 n m)に 光 吸 収 ピ ー ク が 存 在 し ,1.4 eV (829 nm)の 光 吸 収 が フ ァ ラ デ ー 回 転 能 を 増 大 さ せ る と 報 告 し て い る .1300 nm よ り 短 い 波 長 で の Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 光 吸 収 係 数 の 急 激 な 増 大 は ,波 長 829 nm の光吸収ピークの裾に相当する. 図 4-4 に Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 及 び YIG 結 晶 の 2500 nm - 8000 nm で 光 吸 収 係 数 の 波 長 依 存 性 を 示 す . Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 で は , 2600 n m (3850 cm - 1 )付 近 - 5000 nm (2000 cm - 1 )付 近 で Ce の 置 換 に よ り 多 数 の 光 吸 収 ピ ー ク が で き る . こ れ ら の 光 吸 収 ピ ー ク の 原 因 は 以 下 の よ う に 考 え ら れ る . 波 長 2500 nm - 3000 nm, お よ び 波 長 4700 nm の 光 吸 収 ピ ー ク に は Ce:YAG 結 晶 ( 図 4-5) で も 対 応 す る ピ ー ク hν(eV) Absorption coefficient (cm-1) 30 0.8 1.0 0.6 Ce 0.24Y2.76 Fe5 O 12 Bi 0.82Y2.18 Fe 5 O 12 25 20 15 10 5 0 1200 1400 1600 1800 2000 2200 Wavelength (nm) 図4-3 Ce0.24Y2.76Fe5O12結晶およびBi0.82Y2.18Fe5O12結晶 の光吸収係数の波長依存性 49 2400 が 存 在 す る か ら ( 5 ) , Ce と Y に 起 因 す る 光 吸 収 で あ る . 一 方 , Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 3500 nm お よ び 4000 nm の 光 吸 収 ピ ー ク は , 図 4-5 の Ce:YAG 結 晶 に は な い た め , Ce と Fe に 起 因 す る 光 吸 収 で あ る . 光応用磁界センサのレーザー光源の波長は,低コスト化や高信頼性を考慮して, hν(eV) Absorption coefficient (cm-1) 5 0.4 0.3 0.2 Ce0.24Y2.76 Fe5 O12 YIG 4 3 2 1 0 3000 4000 5000 6000 7000 8000 Wavelength (nm) 図4-4 Ce0.24Y2.76Fe5O12結晶およびYIG結晶の光吸収係数の波長依存性 図4-5 Ce:YAG結晶の光透過率の波長依存性(4) 50 光 通 信 用 に 用 い ら れ る 1.3 µm ま た は 1.55 µm を 使 用 す る .そ れ ら の 波 長 で セ ン サ 特 性 の 評 価 基 準 の 一 つ で あ る 光 吸 収 係 数 が よ り 小 さ い Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 は , Bi 0 . 8 2 Y 2 . 1 8 Fe 5 O 1 2 結 晶 よ り 光 応 用 磁 界 セ ン サ に 適 し て い る .以 下 の 磁 気 光 学 特 性 の 評 価 で は ,Ce:YIG 結 晶 の 光 吸 収 が 小 さ い 領 域 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 を 測 定 す る .ま た ,セ ン サ 特 性 の 評 価 で は , 波 長 1300 nm の 光 源 を 用 い る . 4.3.2 フ ァ ラ デ ー 回 転 能 特 性 図 4-6(a)に Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 (x = 0, 0.15, 0.24)及 び Bi 0 . 8 2 Y 2 . 1 8 Fe 5 O 1 2 の 波 長 1150 nm 1600 nm に お け る フ ァ ラ デ ー 回 転 能 の 波 長 依 存 性 を 示 す . 図 4-6(b)に 波 長 1300 n m 及 び 波 長 1550 nm の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 の Ce 濃 度 依 存 性 を 示 す . セ リ ウ ム の 置 換 量 に し た が っ て フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は 負 の 方 向 に 増 大 す る .TSFZ 法 に よ り 成 長 し た Ce:YIG 結 晶 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 θ F (deg/cm)と セ リ ウ ム の 置 換 量 x の 関 係 は , 波 長 1300 nm で は 以下の式に従う. θ F = −9390 x + 220 , (4-2) 攪 拌 す く い 上 げ フ ラ ッ ク ス 法 に よ り 成 長 し た Bi:YIG 結 晶 で は 波 長 1300 n m に お け る (4-2)式 の 比 例 定 数 は -1700 deg/cm・ mol と な る . こ の よ う に , 本 研 究 に よ る Ce:YIG 結 晶の方が置換量によるファラデー回転能の増大が大きい. 図 4-7 に Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 及 び YIG 結 晶 の 波 長 1550 n m の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 の 300 K か ら 600 K ま で の 温 度 依 存 性 を 示 す .温 度 が 上 昇 す る に 従 っ て Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は 減 少 し ,約 560 K±5 K で 1 deg/cm 以 下 に な る .こ れ は YIG 結 晶 の ネ ー ル 温 度 553 K に 近 い 値 で , 測 定 さ れ た フ ァ ラ デ ー 効 果 が ほ と ん ど 自 発 磁 化 に伴うものであることを示す. 4.3.3 磁 界 セ ン サ へ 適 用 す る と き の 最 適 な 結 晶 長 の 算 出 磁 界 セ ン サ の 検 出 最 小 磁 界 を 小 さ く す る た め に ,SNR (signal-to-noise ratio)を 最 大 に するような結晶の厚さを決める.以下光吸収係数及びファラデー回転能の測定結果か ら , Ce 0.24 Y 2.76 Fe 5 O 12 結 晶 の こ の よ う な 最 適 結 晶 長 を 求 め る . 51 hν(eV) Specific Faraday rotation (deg/cm) 1.0 0 × × × -1000 ▲ ▲ ■ ▲ ■ -2000 0.8 0.9 × ▲ ■ × × ■ ▲ ■ ▲ × × × ■ ▲ ■ ▲ ■ ▲ ● ● ● × ■ ▲ ● ● ● ● ■ ● -3000 ● Ce0.24Y2.7 6 Fe5 O12 Ce0.15Y2.8 5 Fe5 O12 Bi 0.82Y2. 18 Fe 5 O12 YIG ● ■ -4000 ● ▲ × -5000 1200 1300 1400 1500 1600 Wavelength (nm) Specific Faraday rotation (deg/cm) (a) 500 0 -500 -1000 -1500 1300 nm 1550 nm -2000 -2500 0 0.04 0.08 0.12 0.16 0.2 0.24 Ce contentx (b) 図4-6 CexY3-xFe5O12結晶のファラデー回転能の波長依存性. (a) CexY3-xFe5O12 (x = 0, 0.15, 0.24)結晶およびBi0.82Y2.18Fe5O12結晶 のファラデー回転能の波長依存性. (b)波長1300 nmおよび1550 nmの ファラデー回転能のCe濃度依存性 52 Temperature ℃ ( ) 50 Specific Faraday rotation (deg/cm) 200 100 150 200 250 300 0 -200 -400 -600 -800 -1000 Ce 0.24Y2.76Fe5O12 YIG 300 350 400 450 500 Temperature (K) 550 600 図4-7 Ce0.24Y2.76Fe5O12結晶およびYIG結晶の波長1550 nmの ファラデー回転能の温度依存性 磁 界 測 定 に 応 用 す る 場 合 に は , (2-5)式 に 示 し た よ う に , 被 測 定 磁 界 が ゼ ロ の と き の 受 光 量 に 対 す る 被 測 定 磁 界 を 印 加 し た 時 の 受 光 量 の 比 を 測 定 す る .そ の 光 信 号 強 度 P o u t は , 感 度 及 び 光 吸 収 の 因 子 exp(-αd)を 用 い て , 以 下 の 式 で 表 さ れ る . Pout = sin( 2θ F dsinφ)exp(−αd ) , (4-3) 光 信 号 強 度 が 磁 界 に 対 し て 直 線 的 に 変 化 す る 領 域 で は (4-3)式 は Pout = (2θ F dsinφ)exp(− αd ), (4-4) で 近 似 さ れ る . 一 方 , 信 号 電 流 i s に よ る シ ョ ッ ト 雑 音 が 支 配 的 な 場 合 の SNR は 53 Pout i hν SNR = s = , in P0 12 [2eη B] hν eη (4-5) で 与 え ら れ る ( 6 ) .こ こ で e は 素 電 荷 ,B は 測 定 帯 域 幅 ,η は 受 光 器 の 量 子 変 換 効 率 , P0 は 平 均 受 光 強 度 ( exp(− αd ) ), h は プ ラ ン ク 定 数 , ν は 振 動 数 で あ る . 信 号 強 度 の SNR 特 性 は , (4-4)式 を (4-5)式 に 代 入 し て , 以 下 の 式 で 表 さ れ る 2eη 2 1 SNR = ( ) (θ F dsinφ)exp( − αd ). hν B 2 1 (4-6) SNR が 最 大 に な る と き の 結 晶 長 は , d= 2 α (4-7) , と な る .こ れ は ,最 大 の SNR が 得 ら れ る こ と を 意 味 し ,磁 界 セ ン サ と し て 最 適 な 結 晶 SNR 長 と な る . 以 上 の SNR と 結 晶 の 厚 さ の 関 係 を 図 4-8 に 示 す . 図 4-3 に よ っ て 2/α 結晶の厚さ d 図4-8 SNRの結晶の厚さ依存性 54 Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 及 び Bi 0 . 8 2 Y 2 . 1 8 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 最 適 な 結 晶 長 を 求 め , 比 較 す る と , 表 4-1 の よ う に な る . 波 長 1250 nm 付 近 よ り 長 い 波 長 で は , Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 は Bi 0 . 8 2 Y 2 . 1 8 Fe 5 O 1 2 結 晶 よ り 結 晶 長 を 長 く で き る .そ の た め ,Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 印 加 磁 界 に 対 す る 感 度 は , Bi 0 . 8 2 Y 2 . 1 8 Fe 5 O 1 2 結 晶 の そ れ よ り 増 大 す る . 以 上 の 結 果 を ま と め て ,磁 界 セ ン サ へ の 応 用 に 関 わ る 磁 気 光 学 特 性 を 表 4-2 に 示 す . Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 と 比 較 す る た め に , 従 来 磁 界 セ ン サ と し て 用 い ら れ て い る (BiGdLaY) 3 (FeGa) 5 O 1 2 膜 ( 1 ) に つ い て の 値 を 併 せ て 示 す . Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 は 光 フ ァ イ バ 通 信 で 最 も 頻 繁 に 使 わ れ て い る 1.3 µm の 波 長 領 域 で 評 価 す る . Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 厚 さ は ,(4-7)式 で 決 定 し た 360 µm と す る .そ の と き の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は -2000 deg/cm で あ る .Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 感 度 は 0.0048 %・m/A で ,(BiGdLaY) 3 (FeGa) 5 O 1 2 膜の約 2 倍である. 4.3.4 直流磁界を印加したときの光出力特性 図 4-9 に Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 に 直 流 磁 界 を 印 加 し た と き の 光 出 力 の 感 度 と 印 加 磁 界 との関係を示す.結晶を透過した光のうち全回折光および 0 次光のみを受光した場合 の 光 出 力 ( 図 2-12) を 実 線 お よ び 点 線 で 示 す . 全 回 折 光 を 受 光 し た 場 合 の 光 出 力 は 実 験結果と一致している. こ の 結 果 は , Ce: YIG 結 晶 の 磁 区 周 期 か ら 説 明 で き る . 厚 さ 0.5 mm の 表 4-1 Ce 0.24 Y 2.76 Fe 5 O 12 結 晶 及 び Bi 0 . 8 2 Y 2 . 1 8 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 磁 界 セ ン サ と し て 最適な結晶長 1300 n m 0.36 mm 0.28 mm Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 Bi 0 . 8 2 Y 2 . 1 8 Fe 5 O 1 2 結 晶 表 4-2 1550 n m 0.82 mm 0.40 mm Ce 0.24 Y 2.76 Fe 5 O 12 結 晶 及 び (BiGdLaY)IG ( 1 ) 膜 の 磁 界 セ ン サ の た め の 磁気光学特性 成長法 Ce 0.24 Y 2.76 Fe 5 O 12 結 晶 (BiGdLaY) 3 (FeGa) 5 O 1 2 膜 TSFZ LPE 波長 (n m) 1300 880 結晶長 (µm) 360 50 55 感度 (%・ m/A) 0.0048 0.0023 光吸収 係数 (cm - 1 ) 57 200 ファラデー 回転角 (deg) -72 -25 Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の (111) 面 を 赤 外 偏 光 顕 微 鏡 に よ り 観 察 し た 結 果 ,迷 路 形 磁 区 パ タ ー ン の 磁 区 周 期 は 100 µm だ っ た . こ れ は , LPE 法 で 成 長 し た 厚 さ 10 µm の Bi 置 換 希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト 薄 膜 の 磁 区 周 期 (約 10 µm)よ り 大 き い . 透 過 光 は こ の 磁 区 に よ っ て 回 折 さ れ , n 次 回 折 光 の 回 折 角 θd は p(sinθ i − sinθ d ) = nλ , (4-8) と な る .こ こ で p は 磁 区 周 期 ,θ i は 入 射 光 の 進 行 方 向 と 格 子 (磁 区 )面 の 法 線 と の 角 度 (0 度 ),λ は 入 射 光 の 波 長 で あ る .Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 波 長 1300 nm の 1 次 回 折 光 の 回 折 角 は 0.7 度 で , Bi 置 換 希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト 薄 膜 の 回 折 角 7.5 度 よ り 小 さ い . Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 透 過 光 の 回 折 角 が 小 さ い た め ,全 次 数 を 受 光 し た 場 合 に 近 い 光 出力特性を示すと考えられる. Optical output (a. u.) 2 Experimental 0th order Real image 1.5 θFd = -36 deg 1 0.5 0 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 H/Hs 図4-9 Ce0.24Y2.76Fe5O12結晶に直流磁界を印加したときの光出力 −は全回折光, は0次回折光のみを受光した時の光出力の計算結果 56 4.4 まとめ TSFZ 法 に よ り 成 長 し た Ce:YIG 結 晶 の ,磁 界 セ ン サ に 必 要 な 磁 気 光 学 特 性 を 評 価 し た. 波 長 1300 nm の Ce:YIG 結 晶 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は ,同 一 置 換 量 の Bi:YIG 結 晶 の そ れの約 5 倍である. 磁 界 セ ン サ の 信 号 強 度 が 最 小 に な る 結 晶 の 厚 さ は , 2/α( α は 光 吸 収 係 数 ) で 表 さ れ る . Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 光 吸 収 係 数 は , 1250 nm 以 上 の 波 長 で Bi 0 . 8 2 Y 2 . 1 8 Fe 5 O 1 2 結 晶 よ り 小 さ い .従 っ て ,例 え ば 波 長 1300 nm で は ,Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 最 適 厚 さ は 2/α= 0.36 mm で ,Bi 0 . 8 2 Y 2 . 1 8 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 0.28 mm よ り 大 き い .こ の よ う に 結 晶 を 厚 く で き る た め に , Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 磁 界 セ ン サ の 感 度 を LPE 法 で 成 長 し た (BiGdLaY) 3 (FeGa) 5 O 1 2 膜 の 約 2 倍 の 0.0048 %・ m/A に す る こ と が で き た . 57 参考文献 (1) N. Itoh, H. Minemoto, D. Ishiko and S. Ishizuka: “Optical magnetic field sensors with high linearity using Bi-substituted rare earth iron garnet”, IEEE Trans. Magn., Vol. 31, No. 6, pp. 1991-3193, (1995). (2) 玉 城 孝 彦 ,対 馬 国 郎 : 「ビ ス マ ス 多 量 置 換 ガ ド リ ニ ウ ム 鉄 ガ ー ネ ッ ト の 結 晶 育 成 と 0.8µm 光 ア イ ソ レ ー タ へ の 応 用 」,日 本 応 用 磁 気 学 会 誌 ,Vol. 9,No. 2,pp. 125-128, (1985). (3) 佐 藤 勝 昭 : 「光 と 磁 気 」, 朝 倉 書 店 , pp. 90, (1988). (4) M. Gomi, K. Satoh and M. Abe: “Giant Faraday rotation of Ce-substituted YIG films epitaxially grown by RF sputtering”, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 27, No. 8, pp. L1536-L1538, (1988). (5) W. W. Holloway, JR. and M. Kestigian: “Optical Properties of Ceriu m-Activated Garnet Crystals”, J. Opt. Soc. Amer., Vol. 59, No. 1, pp. 60-63, (1969). (6) A. Yariv 著 , 多 田 邦 雄 ,神 谷 武 志 共 訳 : “光 エ レ ク ト ロ ニ ク ス の 基 礎 ”, 丸 善 , pp. 407, (1988). 58 第5章 Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 の 光 応 用 磁 界 セ ン サ 特 性 5.1 は じ め に 第 4 章 で 述 べ た よ う に , Ce 0.24 Y 2.76 Fe 5 O 12 単 結 晶 を 用 い た 磁 界 セ ン サ の 感 度 は 0.0048 %・ m/A に な る . こ れ は (BiGdLaY) 3 (FeGa) 5 O 1 2 膜 に よ る セ ン サ の そ れ よ り 約 2 倍 大 き い .そ の 結 果 ,Ce:YIG 結 晶 を 光 応 用 磁 界 セ ン サ に 利 用 す る と ,さ ら に 低 い 電 圧 階 級 の 配 電 線 (100V)や 一 般 家 庭 な ど の 需 要 家 に 供 給 さ れ る 電 灯 (最 大 電 流 5 A - 60 A)の 電 流 を 測 定 す る 高 感 度 な 光 応 用 磁 界 (電 流 )セ ン サ が 実 現 で き る . 本 章 で は Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 を 用 い た 光 応 用 磁 界 セ ン サ の 特 性 を 評 価 す る .そ れ に 基 づ い て , 500 A/m 以 下 の 低 磁 界 を 測 定 で き る セ ン サ を 提 案 す る . 本 章 で は , フ ァ ラ デ ー 素 子 に Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 を 用 い た 場 合 の 磁 化 回 転 式 磁 界 セ ン サ (図 2-9)の 特 性 を 論 ず る . 鎌 田 ら は ,YIG 単 結 晶 を セ ン サ 材 料 に 用 い , 20 A/m 程 度 の 低 磁 界 領 域 ま で 測 定 で き る こ と を 示 し た (1). 鎌 田 ら の 方 式 で は 光 の 進 行 方 向 が 磁 化 に 垂 直 で あ る た め ,コ ッ ト ン -ム ー ト ン 効 果 の 影 響 を 考 慮 す る 必 要 が あ る . ま ず , Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 の コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 を 評 価 し ,続 い て ,コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 の 直 線 性 と 感 度 へ の 影 響 を 明 ら か に す る . そ の 結 果 に よ る と , Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 の コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 は ∆ n 111 = -1.7×10 - 4 で YIG に 比 べ て 3 倍 大 き い .従 っ て ,単 純 な セ ン サ 構 成 で は セ ン サ 特 性 の 直 線 性 比 の ず れ は 増 大 し , 感度は低下することを述べる. 5.2 5.2.1 実験方法 特 性 評 価 に 用 い る Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 波 長 1.3 µm で の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 が -1370 deg/cm の Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 を 用 い た .こ れ か ら 図 5-1 に 示 す よ う な , ( 1 1 2) 面 , (111) 面 , (1 1 0) 面 で 囲 ま れ た 試 料 を 切 り 表 5-1 実 験 で 用 い る Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 ファラデー回転能 形状 -1370 deg/cm d 1 (mm) d 2 (mm) d 3 (mm) 3.53 mm 3.49 mm 3.00 mm 3.53 mm 3.49 mm 1.53 mm 3.53 mm 3.49 mm 0.50 mm 59 出 し た . 試 料 の 諸 元 を 表 5-1 に 示 す . 結 晶 の 厚 さ d 3 = 3.00 mm の Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 実 測 セ ン サ 特 性 と , (2-6)式 に よ る 計 算 結 果 と あ わ せ て 図 5-2 に 示 す . こ こ で 図 2-9 の よ う に , 磁 化 に 対 し て 垂 直 な 方 向に光を伝播させる配置にセンサを構成した.測定結果と計算結果には大きな違いが (112) (111) d3 (110) d2 d1 図5-1 Ce:YIG単結晶の概略図 Optical output (arb.units) 2 Experimental result Calculated result 1 d = 3.00 mm 0 –10 0 10 Magnetic field (kA/m) 図5-2 厚さ3.00 mmのセンサ出力の測定および計算結果 60 現 れ た .こ の こ と は ,Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 の コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 の 影 響 を 考 え る 必要があることを示している. 5.2.2 コットン−ムートン効果の測定 磁性体をある方向に磁化すると,複屈折を生じ,磁化方向とそれに垂直な方向の屈 折 率 が 異 な る 現 象 を コ ッ ト ン − ム ー ト ン 効 果 と い う . 図 5-3 に コ ッ ト ン − ム ー ト ン 効 果 の 原 理 及 び 測 定 装 置 を 示 す .磁 化 に 平 行 な 方 向 の 屈 折 率 を no, 垂 直 方 向 の 屈 折 率 を n e と す る と , コ ッ ト ン − ム ー ト ン 効 果 の 大 き さ ∆n は , Δn = n o − n e , (5-1) である. コ ッ ト ン − ム ー ト ン 効 果 は , 屈 折 率 楕 円 体 を 用 い て 記 述 で き る ( 付 録 A を 参 照 ). InGaAs–PD 検光子 (-45o) 左右に移動して 屈折率差をゼロにする バビネソレイユ位相補償板 [001] ne β n0 Ce:YIG (110) Δn = n o – ne H 偏光子 (+45o) InGaAsP-LD (λ= 1.3μm) 図5-3 コットン-ムートン効果 61 屈折率楕円体の主軸のうちの光の進行方向と垂直な方向の一つを z 軸とし, z 軸と磁 化 の な す 角 度 を β と す る と , ∆n と β の 関 係 は { ( ) ( )} ∆n = C cos2β1 − 3cos 2β − asin 2β1 + 6cos 2β , (5-2) となる.ここで, C=− a= n03 I 2 (ρ11 −ρ12 ) , 4 (5-3) ρ44 , ρ11 −ρ12 (5-4) で あ る . C は 複 屈 折 の 大 き さ , a は そ の 異 方 性 を 表 す パ ラ メ ー タ で あ る .光 を (1 1 0) 面 に垂直な方向に伝搬させた場合の,コットン−ムートン効果によるリターデーション (δ)は , δ = ω c ( no − n e ) d = ω c ∆ nd , (5-5) となる.ここで ω は入射光の角周波数,c は光速,d は結晶長である. コ ッ ト ン - ム ー ト ン 効 果 に よ る ∆n の 測 定 は 以 下 の よ う に 行 う . 光 源 に 発 振 波 長 1.3 µm の InGaAsP レ ー ザ ー ダ イ オ ー ド( 以 下 ,LD )を Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 の [1 1 0] 軸 方 向 に 入 射 す る . 測 定 に 用 い る 結 晶 は 40 kA/m 付 近 で 飽 和 す る か ら , 入 射 光 に 対 し て 垂 直 方 向 に 160 kA/m の 磁 界 を 印 加 し て 充 分 に 飽 和 さ せ る . リ タ ー デ ー シ ョ ン の 測 定 に は バビネソレイユ位相補償板を用いた.バビネソレイユ位相補償板は,光学軸方向が互 いに垂直な二つの相対した水晶楔を有し,一つの楔はマイクロメーターによって光学 軸方向に移動する.結晶を透過した偏光の磁界印加前後の位相差をゼロにするように こ の 楔 を 移 動 し , ∆n は そ の 移 動 距 離 よ り 求 め る . Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 を 回 転 さ せ , 62 コ ッ ト ン − ム ー ト ン 効 果 の (1 1 0) 面 内 の 印 加 磁 場 方 位 角 ( β) 依 存 性 を 測 定 し た . 5.2.3 5.2.3.1 センサ特性の評価 光学測定系 図 5-4 に セ ン サ 特 性 の 測 定 装 置 の 概 略 図 を 示 す .光 源 に は 発 振 波 長 1.3 µm ,出 力 5 mW の InGaAsP レ ー ザ ー ダ イ オ ー ド ( 以 下 ,LD ) を 用 い た . 定 偏 波 フ ァ イ バ 伝 搬 後 の 出 射 光 を コ リ メ ー タ で 光 系 が 1 mm 以 下 の 平 行 光 に 変 換 し , さ ら に λ /4 板 を 用 い て 円 偏 光 にしてから偏光子で直線偏光にした光を結晶に入射する.結晶は入射直線偏光に対し て 飽 和 磁 化 I s が ち ょ う ど 90 度 に な る よ う に 設 定 す る .飽 和 磁 化 I s の 角 度 が 90 度 か ら ず れ る と , セ ン サ 出 力 は ゼ ロ 点 ず れ を 生 じ る . 偏 光 子 , 検 光 子 に は , 消 光 比 が 5×10 - 5 の グ ラ ン ト ム ソ ン プ リ ズ ム を 用 い ,検 光 子 を 偏 光 子 に 対 し て 方 位 角 を 45 度 に 設 定 す る . ヘ ル ム ホ ル ツ コ イ ル で 被 測 定 磁 界 Ha を 印 加 し , と く に 交 流 磁 界 を 発 生 さ せ る 場 合 は , 発 振 器 か ら 200 Hz の 信 号 を パ ワ ー ア ン プ で 増 幅 し て ヘ ル ム ホ ル ツ コ イ ル に 電 流 を 流 す .磁 界 強 度 は ガ ウ ス メ ー タ( F. W. BELL 製 , 4048 )で 測 定 し た .受 光 器 に は 直 径 が 3 mm の InGaAs PIN-PD を 用 い ,光 電 変 換 さ れ た 信 号 を デ ジ タ ル ボ ル ト メ ー タ ま た は ロ ッ ク イ ン ア ン プ( 磁 界 の 周 波 数 に 同 期 )に よ り 測 定 し た . Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 を 飽 和 さ せ る た め に ,市 販 の フ ェ ラ イ ト 永 久 磁 石 を 用 い た .表 5-2 に こ の H b 印 加 用 磁 石 の 特 性 を 示 す . こ の 円 柱 状 磁 石 を 2 個 重 ね た も の を 20 mm 離 し 対 向 さ せ た . 図 5-5 に , 直流電源 ビーム スプリッタ LD フェライト磁石 Ce:YIG結晶 ヘルムホルツ コイル 検光子 偏光子 PD λ/4 plate PD フェライト磁石 増幅器 ヘルムホルツコイル デジタルボルトメータ 図5-4 磁界センサ特性の測定系の概略図 63 表 5-2 フェライト磁石の特性 組成 残 留 磁 束 密 度 ( Br ) キュリー温度 形状 SrO-6Fe 2 O 3 360 mT 730 K 直 径 20 mm 厚 さ 400 mm こ の 磁 石 間 の 磁 界 分 布 の 測 定 値 を 示 す . 試 料 の 大 き さ は 最 大 で 3.00 mm で あ る か ら , 中 心 付 近 4 mm の 範 囲 内 に 結 晶 を 置 け ば , 磁 界 の 分 布 が ±2 % 以 内 に 収 ま る . 測 定 は 以 下 の よ う に 行 う .フ ェ ラ イ ト 磁 石 に よ り ,光 の 伝 播 方 向 と 垂 直 な 方 向 に 磁 界 H b を 印 加 し て Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 を 単 磁 区 化 す る . ヘ ル ム ホ ル ツ コ イ ル に よ り 被 測 定 磁 界 で あ る Ha が Hb と 垂 直 な 方 向 に 印 加 さ れ る と , Ha の 方 向 に 磁 化 (Is)が 回 転 し , 光 の 伝 播 方 向 の 磁 化 成 分 に よ っ て フ ァ ラ デ ー 回 転 が 生 じ る .被 測 定 磁 界 H a に よ っ て 検 光 子 を 通 過 す る 光 量 が 変 化 し , PIN-PD で 受 光 し た 光 か ら 出 力 信 号 が 得 ら れ る . 5.2.3.2 外部印加磁界に対する出力信号 図 5-4 の 構 成 の セ ン サ に つ い て , 印 加 磁 界 に 対 す る 出 力 信 号 ( V o u t ) の 式 を 求 め る . こ の構成では,磁化が入射光に対して垂直な成分を有するので,ファラデー効果とコッ 100 Magnetic field (103A/m) a pair of 2 magnets (44.3×103 A/m) 4 mm 50 0 –10 0 Distance (mm) 図5-5 磁石中心線上の磁界強度分布 64 10 トンームートン効果の両方を考慮する必要がある.そこで,ファラデー効果と複屈折 が 同 時 に 存 在 す る 光 学 媒 質 に 対 し て , 以 下 Tabor ら に よ り 求 め ら れ た ジ ョ ー ン ズ マ ト リ ッ ク ス ( 2 ) を 応 用 し て セ ン サ 出 力 を 計 算 す る .次 に ,コ ッ ト ン - ム ー ト ン 効 果 の 影 響 を 明らかにするために実験値と比較する. 複 屈 折 と フ ァ ラ デ ー 効 果 が 共 存 す る 場 合 の ジ ョ ー ン ズ マ ト リ ッ ク ス は ,z = 0 点 で 媒 質に入射した平面電磁波が z = d 点で媒質から出射するとき,透過前後における光波 の x, y 軸 方 向 の 電 界 成 分 の 関 係 を 示 す 以 下 の 行 列 で 表 さ れ る ( 付 録 B を 参 照 ) . φF φF cos 2 − i cosχ sin 2 C= φ − sinχ sin F 2 , φF φF cos + i cosχ sin 2 2 sinχ sin φF 2 (5-6) である.ここで, cos χ = sinχ = 1− τ 2 η = 2 1+τ η 2+ γ γ 2τ = 2 2 1+τ η +γ 2 2 (5-7) , (5-8) , ω 2 µ 0 (η 2 + γ φ F = ω 2 µ0 η 2 + γ 2 d ≅ ε 2 ) d , (5-9) 2 2π 2 2 = ∆ n d (cosφ ) + (2θ F dsinφ ) λ η = ε 0 n ∆ n(cosφ )2 , γ = 2θ F sinφ ωd (5-10) ε , µ 0 (5 -10) 65 と な る . こ こ で n = ( n 0 + n e )/2 は n 0 と n e の 平 均 屈 折 率 , ε 0 は 真 空 中 の 誘 電 率 , ∆n は コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 に よ る 複 屈 折 の 大 き さ , ω は 真 空 中 の 光 波 の 角 周 波 数 , θF は フ ァラデー回転能である.ジョーンズマトリックスを用いれば,電界が x 方向の直線偏 光を入射したとき出射光の偏光状態は, φF φF Ex out 1 1 ± 1 cos 2 − i cosχ sin 2 E = φ y out 2 ± 1 1 − sinχ sin F 2 φF 1 , φF φF 0 cos + i cosχ sin 2 2 sinχ sin 2 (5-11) となる.したがってセンサの光出力は, Pout = E x out = 2 + E y out 2 1 sinφ F sinχ m , 2 2 (5 - 1 2 ) と な る . 第 2 章 (2-9) 式 と 同 よ う に , 単 位 印 加 磁 界 当 た り の (5-12) 式 の 右 辺 第 一 項 の 直 流 バ イ ア ス 成 分 ( V b ) に 対 す る 第 二 項 ( V s ) の 百 分 率 で 表 す と , (5-12) 式 の 感 度 は S= sinφ F sinχ × 100% , H (5-13) となる. 5.3 実験結果及び考察 5.3.1 Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 の コ ッ ト ン − ム ー ト ン 効 果 Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 の コ ッ ト ン − ム ー ト ン 効 果 ( ∆n ) の 測 定 結 果 を 図 5-6 に ● で 示 す . 横 軸 は (1 1 0) 面 内 で 印 加 し て い る 磁 場 の [001] 方 向 か ら の 角 度 β で あ る .∆n は 4 つ の ピ ー ク を 示 し ,そ の 値 は [001] 方 向 で 最 小 値 ∆n 0 0 1 = -1.2×10 - 4 及 び [111] 方 向 で 最 大 値 ∆n 111 = -1.7×10 - 4 で あ る . (5-2) 式 で C = 0.6×10 - 4 及 び a = 1.43 と し て 計 算 し た 結 果 を 実 線 66 で 示 す . 一 方 , YIG 結 晶 ( 図 5-7 ) で は , C = 0.21×10 - 4 , a = 1.22 で あ る . –3 C = 0.6×10-4 a = 1.43 –2 [111] [001] [001] –1 [110] [112] [112] [111] [111] 0 0 100 [112] [110] [112] [111] [111] 200 300 [001] [001] [001] Direction of magnetic field β (deg) 図5-6 Ce:YIG単結晶の(110)面のコットン-ムートン効果 –10 Y3Fe5O12 experimental result parameter fitting result C = 0.21×10-4 a = 1.22 –5 [110] [112] [112] [111] [111] 0 0 [001] [111] experimental result parameter fitting result [111] Δn (10-5) Δn (10-4) Ce0.17Y2.82Fe5O12 [112] [110] [112] [111] [111] 100 200 [001] 300 [001] Direction of magnetic field β (deg) 図5-7 YIG単結晶の(110)面のコットン-ムートン効果 67 [111] セリウム置換による複屈折の大きさ Cの変化は大きく,異方性パラメータ aの変化 は 小 さ い . Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 の ∆n 0 0 1 及 び ∆n 111 は , YIG に 比 べ て 3 倍 程 度 大 き い . Dillon ら は , コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 に よ る 複 屈 折 は , 磁 気 ひ ず み 定 数 に 依 存 す る と 報 告 し て い る ( 3 ) .Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 の ∆n 0 0 1 及 び ∆n 111 の 磁 気 ひ ず み 定 数 の 依 存 性 を , Dillon ら に よ る 希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト 結 晶 の 複 屈 折 の 磁 気 ひ ず み 定 数 依 存 性 の 結 果 と 併 せ て 図 5-8 に 示 す ( 3 ) . Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 の 磁 気 ひ ず み 定 数 は , Y を Ce に 1 % 置 換 し た Ce:YIG 結 晶 の [001] 方 向 及 び [111] 方 向 の 磁 気 ひ ず み 定 数 が 12×10 - 7 及 び 5.22×10 - 7 で あ る と い う Comstock ら の 報 告 の 置 換 量 に 比 例 し た 値 を 用 い て い る (4) . Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 お よ び YIG の コ ッ ト ン - ム ー ト ン 効 果 は 磁 気 ひ ず み 定 数 に 良 く 依 存 し て お り ,Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 の コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 が 大 き い こ と を 説 明 し て Linear magnetic birefringence (10-5) 10 DyIG [001] in this work [111] in this work DyIG 0 [001] by Dillon [111] by Dillon HoIG YIG YIG HoIG YIG -10 GdIG GdIG YIG Ce0.17 Y2.83 Fe5 O12 Ce0.17 Y2.83 Fe5 O12 -20 EuIG EuIG -10 0 10 20 -6 Magnetostriction constant λ001 λ111 (10) 図5-9 磁気ひずみに対してプロットしたコットンームートン効果 [100]軸方向および[111]軸方向を測定.Ce0.17Y2.83Fe5O12 の磁気ひずみはCe1%YIGの結果(9)より推定. 68 いる. 安 藤 ら の 実 験 結 果 に よ る と , フ ラ ッ ク ス 徐 冷 法 に よ り 成 長 し た Bi:YIG 単 結 晶 の (1 1 0) 面 内 の 複 屈 折 の 磁 化 方 向 依 存 性 は , 図 5-9 に 示 よ う に , as-grown で は 2 つ の ピ ー ク , 熱 処 理 を 行 う と 4 つ の ピ ー ク を 示 す (5). こ れ は , 結 晶 成 長 時 に 発 生 す る 複 屈 折 が あ る こ と を 示 し て い る . TSFZ 法 で 成 長 し た Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 及 び YIG 結 晶 に は , このような成長時に発生する複屈折はないと考えられる.そこで,以下のセンサ特性 の 評 価 で は ,コ ッ ト ン - ム ー ト ン 効 果 に よ る セ ン サ 特 性 へ の 影 響 だ け を 考 慮 し て 計 算 を 行う. 5.3.2 コ ッ ト ン -ム ー ト ン 効 果 に よ る セ ン サ 出 力 へ の 影 響 センサ出力に対するコットン−ムートン効果のセンサ出力への影響を評価するため に ,Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 の セ ン サ 出 力 の 結 晶 の 厚 さ に よ る 変 化 に つ い て 測 定 及 び 計 算 を 行 っ た . (5-12) 式 に よ る Ce:YIG 結 晶 の セ ン サ 出 力 の 結 晶 長 依 存 性 の 計 算 結 果 を 図 5 -1 0 に 示 す . C e: Y I G の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は θ F = - 1 3 7 0 d eg / c m , 複 屈 折 は ∆n 1 1 1 = -1.7×10 - 4 と し た .ま た ,セ ン サ 出 力 の 結 晶 長 依 存 性 を 測 定 し た 結 果 を 図 5-11(a) に ,計 算 結 果 を 図 5-11(b) に 示 す . セ ン サ 出 力 の 測 定 は ,[ 1 1 2] 方 向 の 結 晶 の 厚 さ が 3.00 mm , 図5-9 Bi:YIG単結晶の(011)面の複屈折(5) 69 1.53 mm 及 び 0.50 mm の 試 料 を 用 い た . 単 磁 区 化 す る た め の 磁 界 ( H b ) は [111] 方 向 に 印 加 し た .ま た ,被 測 定 磁 界 H a は 磁 化 が (1 1 0) 面 内 で 回 転 す る よ う に [ 1 1 2] 方 向 に 印 加 し た .図 5-10 の 計 算 結 果 は ,結 晶 長 が 短 い 場 合 は 低 感 度 で あ る が 直 線 性 が 良 く ,結 晶 の 厚さが大きくなるに従って,コットンームートン効果のために,直線性が大きく影響 を 受 け る こ と を 示 す .図 5-11 の 実 験 結 果 と 計 算 結 果 は ,出 力 傾 向 が 比 較 的 一 致 し て お り,センサ出力の磁場依存性の直線性からのズレはコットンームートン効果によるこ とを良く説明している. セ ン サ 特 性 の 評 価 に は , ① 直 線 性 比 の ず れ ((2-10) 式 ) 及 び ② 感 度 ((2-9) 式 ) が あ る . 以 下 で は , こ れ ら の 条 件 に つ い て Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 の セ ン サ 出 力 特 性 を 評 価 す る . 図 5-10 の 結 果 を 用 い て (2-7) 式 で 計 算 し た 直 線 性 比 の ず れ の 結 晶 の 厚 さ 依 存 性 を 図 5-12 に 示 す .結 晶 の 厚 さ が 大 き く な る に し た が っ て , ±1 % 以 内 に 直 線 性 比 の ず れ が 収 ま る 領 域 が 狭 く な る こ と が 判 る . 結 晶 の 厚 さ 3.3 mm で は , 直 線 性 比 の ず れ が ±1 % 以 内 に 収 ま る 磁 界 は 700 A/m 以 下 で あ る . さ ら に , 図 5-13 に 結 晶 の 厚 さ が 3.0 mm の と き の ∆n = 0 及 び ∆n = -1.7×10 - 4 に 対 す る 直 線 性 比 の ず れ を 示 す . 両 者 の 直 線 性 比 の ず Optical output (arb. units) 2 1.5 1 0.3 mm 0.5 3.3 mm d = 0.3∼3.3 mm 0 -10 -5 0 5 Magnetic field (103 A/m) 図5-10 センサ出力の結晶長依存性(計算結果) 70 10 [110] [112] Ha Is φ Hb [111] 2 d = 3.00 mm Optical output (arb.units) Optical output (arb.units) 2 1 0 –10 0 d = 3.00 mm 1 0 10 -8 Optical output (arb.units) Optical output (arb.units) d = 1.53 mm 1 –40 –20 0 Magnetic field 8 1 –40 –20 0 20 40 (103 A/m) Magnetic field (kA/m) 2 d = 0.50 mm Optical output (arb.units) Optical output (arb.units) 4 d = 1.53 mm 0 20 40 (103 A/m) (kA/m) 2 1 0 –40 0 2 2 0 -4 3 A/m) Magnetic field (10 (kA/m) 3 A/m) Magnetic field (10 (kA/m) –20 0 20 40 d = 0.50 mm 1 0 –40 –20 0 20 40 3 A/m) Magnetic field (10 (kA/m) 3 A/m) Magnetic field (10 (kA/m) (b) Calculated results. (a) Experimental results. 図5-11 センサ出力の(a)測定結果(b)コットン-ムートン効果を考慮した計算結果 71 れはほぼ等しい.したがって,直線性比のずれという条件下では,コットン−ムート ン効果の影響は小さい. 図 5-11 の 結 果 を 用 い て (5-42) 式 よ り 得 ら れ た 感 度 の 結 晶 長 依 存 性 を 図 5-14 に 示 す . 計 算 結 果 に よ る と , 結 晶 の 厚 さ が 約 2.5 mm 以 上 で は , 感 度 が 著 し く 低 下 す る こ と が 判 る. 以 上 の 結 果 よ り , 結 晶 の 厚 さ が 大 き く な る と , 感 度 は 増 大 す る が , ±1 % 以 内 に 直 線 性 比 の ず れ が 収 ま る 領 域 が 狭 く な り , 結 晶 の 厚 さ が 3.3 mm で は , ±1 % 以 内 に 直 線 性 比 の ず れ が 収 ま る 領 域 が 700 A/m 以 下 に な る . ま た , 結 晶 の 厚 さ が 約 2.5 mm 以 上 で は 感 度 は 著 し く 低 下 し , 結 晶 の 厚 さ が 3.3 mm で は 0.0002 % ・ m/A に 低 下 す る . こ の ように,直線性比のずれと感度を満足する条件は得られないことが判った. Relative error (%) 1 0 d = 0.3 mm ±1 % -1 d = 3.3 mm -2 -3 102 103 Magnetic field (A/m) 図5-12 直線性比のずれの結晶長依存性(計算結果) 72 104 Δn = –1.7×10-4 Δn = 0 d = 3.0 mm Relative error (%) 0 ±1% –2 10-4 10-2 100 Ha / Hb 図5-13 Δn = 0とそうでない場合を比較した直線性比のずれの計算結果 0.02 Sensitivity (%・m/A) calculated result measured result 0.01 0 0 2 Crystal thickness (mm) 図5-14 感度の結晶長依存性 73 4 5.4 まとめ Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 の コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 を 評 価 し ,コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 が,磁化の回転に伴うファラデー効果を利用した磁界センサ特性に与える影響を評価 した. Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 の (1 1 0) 面 内 に 磁 界 を 印 加 す る と き コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 を 調 べ た 結 果 , Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 の ∆n 0 0 1 及 び ∆ n 111 は -1.2×10 - 4 及 び -1.7×10 - 4 で , YIG のそれの 3 倍である. 次 に ,コ ッ ト ン - ム ー ト ン 効 果 に よ る セ ン サ 出 力 の 直 線 性 と 感 度 へ の 影 響 を 評 価 し た . そ の 結 果 , 結 晶 の 厚 さ が 大 き く な る と , 感 度 は 増 大 す る が ±1 % 以 内 に 直 線 性 比 の ず れ が 収 ま る 領 域 が 狭 く な る . ま た , 感 度 は 結 晶 の 厚 さ が 約 2.5 mm 以 上 で は , 感 度 が 著 しく低下する.以上より,センサ出力は,コットンームートン効果により大きく影響 を受け,直線性比のずれと感度の両方を満足するセンサ出力の条件は得られない.そ こで,コットンームートン効果を補償し,感度を改善する方法を次章で検討する. 74 参考文献 (1) 鎌 田 修 , 高 瀬 屋 京 子 : 「 YIG 単 結 晶 を 用 い た 光 応 用 磁 界 セ ン サ の 検 討 」, 日 本 応 用 磁 気 学 会 誌 , Vol. 23 , pp. 1417-1420 (1999) . (2) W. J. Tabor and F. S. Chen: “Electromagnetic propagation through materials possessing both Faraday rotation and birefringence : experiments with ytterbium orthoferrite”, J. Appl. Phys., Vol. 40, pp. 2760-2765, (1969). (3) J. F. Dillon, J. P. Remeika and C. R. Staton: “Linear magnetic birefringence in the ferromagnetic garnet”, J. Appl. Phys., Vol. 41, pp. 4613-4619, (1970). (4) R. L. Comstock and J. J. Raymond: “Magnetostriction of ytterbium and cerium YIG”, J. Appl. Phys., Vol. 38, pp. 3737-3739, (1967). (5) K. Ando, H. Le Gall and J. M. Desviges: “Linear birefringence in Bi-substituted iron garnet crystals”, Proc. Int. Magneto-Optics, Kyoto, 1987, J. Magn. Soc. Jpn., Vol. 11, pp. 295-298, (1987). 75 第 6章 「重 ね 合 わ せ 法 」に よ る セ ン サ 特 性 の 改 善 6.1 は じ め に 本章では,コットン−ムートン効果による感度の低下に対する改善策として「重ね 合わせ法」を提案し,その有効性を実験的に評価する.特に,この方法による磁界セ ン サ を 電 力 設 備 の 磁 界 (電 流 )計 測 用 の 変 成 器 に 適 用 で き る こ と を 示 す . す な わ ち ,感 度 定 数 が 従 来 Bi 置 換 希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト で 得 ら れ て い る 値 0.0025 % ・ m/A (0.2 %/Oe) ( 1 ) 以 上 で あ る こ と , ま た , JEC1201 に あ る 保 護 継 電 用 の 変 調 器 (CT: Current Transformer) の 規 格 (2)を 満 た す こ と を 述 べ る . こ れ ら の 事 実 は 著 者 の 提 案 す る 「 重 ね 合 わ せ 法 」 と Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 を 採 用 し た 磁 界 セ ン サ が 電 力 設 備 の 低 磁 界 ( 電 流 ) 計 測 用 の セ ン サに適していることを示している. 6.2 「 重 ね 合 わ せ 法 」 の 原 理 コ ッ ト ン − ム ー ト ン 効 果 の 影 響 を 補 償 す る 方 法 と し て , 図 6-1 の 構 成 が あ る . こ こ Output Light z x x no Hb // [111] y ne ne no Is Hb // [111] Is Ha y Ha Incident Light 図6-1 「重ね合わせ法」 の概略図 76 で は ,2 枚 の 同 じ 形 状 の Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 を ,そ れ ぞ れ の 光 学 軸 が 直 交 す る よ う に 配 置 す る .こ の 構 成 に よ り , コ ッ ト ン − ム ー ト ン 効 果 の 影 響 を 補 償 で き る と 期 待 さ れ る . 本論文では,この改善方法を複数の結晶を重ね合わせることから「重ね合わせ法」と 呼ぶ. 「重ね合わせ法」によるセンサ出力を,ジョーンズマトリックスを用いて求める. (5-11) 式 を 重 ね 合 わ せ 法 に 適 用 す る と , π π cos − sin cosφF − icosχsin φF E xout 1 1 ± 1 2 2 2 2 E = φ π π 1 1 ± 2 F yout sin cos − sinχsin 2 2 2 π φF π φ − icosχsin F cos 2 sin 2 cos 2 2 φF - sin π cosπ − sinχsin 2 2 2 φ φ cos F + icosχsin F 2 2 sinχsin φ φ cos F + icosχsin F 2 2 sinχsin φF 2 φF 2 1 0 2 φF 2 φF 2 φF m i χ χ φ χ + ± cos cos 2 sin sin sin sin 2 sin F 1 2 2 2 , = 2 ± cos 2 φF ± cos2χsin 2 φF − sinχsinφ + isin 2χsin 2 φF F 2 2 2 (6-1) となり,最終的にセンサ出力として, Pout = E xout = 2 + E yout 2 1 m sinχsinφF ± sin 3χsinφF (1 − cosφF ) , 2 (6-2) が得られる. 6.3 実験方法 こ の「 重 ね 合 わ せ 法 」に よ る セ ン サ 特 性 の 評 価 実 験 で 用 い た 光 学 系 の 概 略 図 を 図 6-2 に 示 す . 実 験 は 2 枚 の 結 晶 を 図 6-2 の よ う に 光 軸 上 に 設 置 し , 5 章 で 用 い た も の と 同 じ 円 筒 状 の フ ェ ラ イ ト 永 久 磁 石 で [111] 方 向 に H b を 印 加 し , 単 磁 区 化 す る . こ の 時 , 77 Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 は マ シ ナ ブ ル セ ラ ミ ク ス 板 上 の 中 央 に 固 定 し た ガ ラ ス の 試 料 台 上 に 接 着 剤 で 固 定 す る . ま た フ ェ ラ イ ト 永 久 磁 石 は Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 結 晶 か ら 20 mm 離 し て を 対 向 さ せ て 接 着 剤 で 固 定 す る . 2 枚 の 結 晶 は , 一 方 の 結 晶 に 印 加 す る 磁 界 Hb に よ る 影 響 を 受 け な い よ う に 10 cm 離 し て 設 置 す る . そ の 他 の 光 学 系 は 5.2.3.1 を 用 いた. 6.4 実 験 結 果 お よ び 考 察 6.4.1 「 重 ね 合 わ せ 法 」 に よ る 感 度 の 改 善 図 6-3 に 「 重 ね 合 わ せ 法 」 に よ る セ ン サ 出 力 の 結 晶 長 依 存 性 を 求 め た 結 果 を 示 す . こ こ で パ ラ メ ー タ に は 以 前 と 同 じ 値 を 用 い θ F = -1370 deg/cm , ∆n = -1.7×10 - 4 , d = 3.0 フェライト磁石 Ce:YIG結晶 Is Ce:YIG結晶 Is フェライト磁石 フェライト磁石 ヘルムホルツ コイル ビーム スプリッタ LD 検光子 偏光子 PD λ/4 plate PD 増幅器 ヘルムホルツコイル 直流電源 デジタルボルトメータ 図6-2 「重ね合わせ法」 によるセンサの特性評価装置の概略図 78 mm と し た .「 重 ね 合 わ せ 法 」に よ る 結 晶 長 d は 2 枚 の 結 晶 の 厚 さ の 和 で あ る .次 に こ の 「 重 ね 合 わ せ 法 」 の 有 効 性 を 検 証 す る た め に , 表 5-1 の d 1 = 3.53 mm, d 2 = 3.49 mm, d 3 = 1.5 mm の 結 晶 2 枚 を 用 い て 実 験 を 行 っ た . 実 験 結 果 を 図 6-4(a) , (6-2) 式 に よ る 計 算 結 果 を 図 6-4(b) に 実 線 で 示 す .実 験 結 果 と 計 算 結 果 は よ く 一 致 し て い る .「 重 ね 合 わ せ 法 」 に よ る セ ン サ 特 性 と 一 枚 の 3.00 mm の 結 晶 に よ る セ ン サ 特 性 を 比 較 す る と , 「重ね合わせ法」により感度が明らかに改善されていることが判る. 図 6-5 に 感 度 の 結 晶 長 依 存 性 を 示 す .「 重 ね 合 わ せ 法 」 に よ る 実 験 値 を ● , 一 枚 の 結 晶 に よ る 実 験 値 を ■ で 示 す .「 重 ね 合 わ せ 法 」 で は , 結 晶 長 の 増 大 に 従 っ て 感 度 が 増 大 す る . d = 3.0 mm の 場 合 , 感 度 定 数 は 約 0.01 % ・ m/A で あ る . こ の 感 度 は , Bi 置 換 希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト で 得 ら れ て い る 値 0.0025 %・ m/A (0.2 %/Oe) ( 1 ) に 比 べ て ,約 4 倍 の 高 い値である. 図 6-6 に 「 重 ね 合 わ せ 法 」 に よ る セ ン サ 出 力 の 直 線 性 比 の ず れ を 計 算 し た 結 果 を 示 す .±1 % 以 内 の 直 線 性 比 の ず れ が 得 ら れ る 領 域 は 1 枚 の 結 晶 の 場 合 よ り 広 く 1000 A/m Optical output (arb. units) 2 1.5 3.3 mm 1 0.3 mm 0.5 d = 0.3 ∼3.3 mm 0 -10 -5 0 5 Magnetic field (103 A/m) 図6-3 「重ね合わせ法」によるセンサ出力の結晶長依存性 79 10 Optical output (arb.units) 2 a pair of crystal ■ one crystal ■ ■ ■ 1 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ d = 3.0 mm 0 –10 0 10 Magnetic field (103 A/m) Optical output (arb.units) (a) Experimental result 2 a pair of crystal one crystal 1 d = 3.0 mm 0 –10 0 Magnetic field 10 (103 A/m) (b) Calculated result 図6-4 「重ね合わせ法」によるセンサ特性の改善 (a)実験結果(b)計算結果 80 Sensitivity (%・m/A) 0.02 calculated result a pair of crystal one crystal a pair of crystal 0.01 one crystal 0 0 2 4 Crystal thickness (mm) 図6-5 感度の結晶長依存性 Relative error (%) 1 0 d = 0.3 mm -1 ±1 % d = 3.3 mm -2 -3 102 103 104 Magnetic field (A/m) 図6-6 「重ね合わせ法」によるセンサの直線性比のずれ 81 以下である. 6.4.2 「 重 ね 合 わ せ 法 」 の セ ン サ 出 力 の 評 価 「 重 ね 合 わ せ 法 」 に よ る 感 度 向 上 の 効 果 が 検 証 で き た の で , d = 3.0 mm の 場 合 に つ いて,センサとしての特性を実験的に評価する. 図 6-7 に セ ン サ 出 力 特 性 を 示 す .こ の 印 加 磁 界 の 範 囲 で は 良 好 な 直 線 性 を 有 し て い る . 感 度 は 0.01 % ・ m/A 程 度 で あ る こ と が 判 る . 図 6-8 に SNR ( (2-28) 式 ) の 測 定 結 果 を 示 す . SNR = 1 に 対 応 す る 印 加 磁 界 強 度 , 雑 音 等 価 磁 界 強 度 (NEH) は 26.8 A/m で あ る . 200 Hz の 交 流 磁 界 及 び 直 流 磁 界 を 印 加 し た 場 合 に つ い て ,直 線 性 比 の ず れ を 測 定 し た 結 果 を 図 6-9 に 示 す . こ こ で 実 線 は 交 流 磁 界 に 対 す る 計 算 結 果 で あ る . 計 算 結 果 と 実 測 値 は よ く 一 致 し て い る . 交 流 磁 界 8 - 1400 A/m の 広 い 領 域 で 直 線 性 比 の ず れ は ±1 % 以 内 の お さ ま る . (BiGdY)IG 薄 膜 で 直 線 性 比 の ず れ が 1 % 以 内 に お さ ま る の は , Optical output Vs/Vb 10-1 10-2 10-3 1 10 102 Magnetic field Ha (A/m) 図6-7 「重ね合わせ法」の交流磁界センサ出力 82 103 図 2-13 に 示 し た よ う に 500 A/m - 10000 A/m で あ る . す な わ ち ,「 重 ね 合 わ せ 法 」 と Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 を 合 わ せ た 磁 界 セ ン サ は , 従 来 の Bi:RIG に よ る そ れ よ り 1/60 の低い磁界を測定でき,かつ 1 桁広い磁界領域を測定できる. 図 6-9 の 点 線 は 変 流 器 (CT) の 1 次 電 流 の 定 格 値 を 500 A/m に 設 定 し た 場 合 の JEC1201 に よ る 規 格 で あ る . 定 格 値 の 500 A/m は , 図 6-10 の 「 従 量 電 灯 A 」 の 5 A の 電 流 を 電 線 か ら 1 cm 離 れ た 場 所 で 測 定 す る こ と に 相 当 す る . そ し て ,「 重 ね 合 わ せ 法 」 と Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 を 合 わ せ た 磁 界 セ ン サ は ,従 来 の 光 応 用 磁 界 セ ン サ よ り 低 い 磁 界( 電 流 )を 測 定 で き る こ と が 判 る .受 光 器 の シ ョ ッ ト 雑 音 を V s h r m s = 1.4×10 - 4 V に 仮 定 し た 場 合 の 計 算 結 果 も 図 6-9 に 点 線 で 表 し て い る .こ の 値 は ,平 均 受 光 パ ワ ー が 5 µW で , PD を 含 む 光 電 変 換 回 路 の 帯 域 を ∆B = 16 kHz と し た 場 合 の 推 定 値 で あ り ,実 際 の センサシステムにおける標準的な条件である.この評価から低磁界領域の測定限界は 0.5 A/m 程 度 で あ る . 40 SNR (dB) NEH = 26.8 (A/m) 20 0 101 102 103 Magnetic field Ha (A/m) 図6-8 「重ね合わせ法」によるセンサのSNR特性 83 Vshrms = 1.4×10-4 V calculated result (AC) JEC–1201 1PS Standard Limit (CT) 10 Relative error (%) measured result (AC) measured result (DC) 0 –10 100 102 104 Magnetic field (A/m) 図6-9 「重ね合わせ法」によるセンサの直線性比のずれ 送電線路電流または 従量電灯契約電流 送電電圧階級または 従量電灯契約種別(3) 10000 電流値 (A) 1000 4000 A 66 kV 720 A 500 A 6.6 kV 従量電灯 C 60 A 従量電灯 B 5A 従量電灯 A SF-6鉛ガラス(4) またはBSO(5) (BiGdY)IG(6) 100 10 Ce:YIG結晶 1 図6-10 光応用磁界センサ用ファラデー材料の測定領域 84 以 上 よ り ,「 重 ね 合 わ せ 法 」 を 用 い た 光 応 用 磁 界 ( 電 流 ) セ ン サ は Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単結晶の磁壁抗磁力およびコットンームートン効果のセンサ出力への影響を補償し, 低磁界(電流)を測定できることが判った. 6.5 ま と め コットン−ムートン効果による感度の低下に対する改善策として「重ね合わせ法」 を提案し,その実験的な評価を行った. そ の 結 果 Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 と「 重 ね 合 わ せ 法 」を 用 い た 光 応 用 磁 界 セ ン サ で は 大 き な 感 度 が 得 ら れ る . 例 え ば , 結 晶 の 厚 さ が d = 3.00 mm の 場 合 , 感 度 は 約 0.01 %・m/A と な る . こ れ は , 高 感 度 の 光 応 用 磁 界 セ ン サ 用 フ ァ ラ デ ー 材 料 に 用 い ら れ て き た Bi 置 換 希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト の 0.0025 %・ m/A (0.2 %/Oe) ( 1 ) に 比 べ て ,約 4 倍 の 高 い 値 で あ る. こ の 高 感 度 な Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 を 用 い た 光 応 用 磁 界( 電 流 )セ ン サ は ,交 流 磁 界 8 A/m - 1400 A/m の 広 い 領 域 を 直 線 性 比 の ず れ は ±1 % 以 内 で 測 定 で き る . こ れ は , 図 6-10 に 示 す よ う に , 電 力 供 給 の 中 で 供 給 電 流 が 一 番 小 さ い 規 格 「 従 量 電 灯 A 」 の 電 流 を 測 定 で き る こ と を 意 味 す る .よ っ て , Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 と「 重 ね 合 わ せ 法 」を 用 い た 磁 界 (電 流 )セ ン サ は 低 磁 界 (電 流 )測 定 用 の セ ン サ と し て 有 望 で あ る . 85 参考文献 (1) N. Itoh, H. Minemoto, D. Ishiko and S. Ishizuka: “Optical magnetic field sensors with high linearity using Bi-substituted rare earth iron garnet”, IEEE Trans. Magn., Vol. 31, No. 6, pp. 1991-3193, (1995). (2) 電 気 学 会 : 「電 気 規 格 調 査 会 標 準 規 格 計器用変成器 JEC-1201 」 . (3) 東 京 電 力 株 式 会 社 :「 電 気 供 給 約 款 」, Ⅲ . 契 約 種 別 お よ び 料 金 , 14. 契 約 種 別 , (2002). (4) K. Kurosawa: “Optical current transducers using flint glass fiber as the Faraday sensor element”, Opt. Rev., Vol. 4, pp. 38-44, (1997). (5) H. Katsukawa and S. Yokoi: “Optical current transducer with bulk type Bi 1 2 SiO 2 0 Faraday sensor for power systems”, Opt. Rev., Vol. 4, pp. 50-52, (1997). (6) O. Kamada, H. Minemoto and N. Itoh: “Magneto-optical properties of (BiGdY) 3 Fe 5 O 1 2 for optical magnetic field sensors”, J. Appl. Phys., Vol. 75, pp. 6801, (1994). 86 第 7 章 パルスレーザー堆積法によるセリウム置換イットリウム 鉄ガーネットの薄膜成長 7.1 はじめに Ce 0 . 1 7 Y 2 . 8 3 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 と 「 重 ね 合 わ せ 法 」 を 用 い た 光 応 用 磁 界 セ ン サ は 磁 界 8 A/m - 1400 A/m の 低 磁 界 を 測 定 で き る こ と を 前 章 で 示 し た .し か し ,「 重 ね 合 わ せ 法 」で は , 単 結 晶 を 重 ね る と き に ,一 方 の 結 晶 が も う 一 方 の 結 晶 に よ る 印 加 磁 界 H b の 影 響 を 受 け な い よ う に 10 cm 程 度 離 し て 設 置 す る . そ の た め に セ ン サ の 小 型 化 に は 限 界 が あ る . その一方で,磁界センサでは,光源とセンサ部分,受光器の一体によるセンサの小型 化 , フ ァ イ バ 接 続 時 の 光 損 失 の 低 減 な ど が 要 求 さ れ て い る . 解 決 策 と し て , 図 7-1 に 示すように,同じ基板上に磁気光学素子と偏光子や電気光学素子などを集積化する方 法 が 提 案 さ れ て い る ( 1 ) .こ れ ら と 並 行 し て ,光 を 合 分 波 す る 平 面 光 波 回 路 (PLC) に 関 す る 研 究 が 行 わ れ て お り ( 2 ) .岡 本 ら は ,PLC 内 に プ ラ ッ ト ホ ー ム を 作 製 し ,そ の 上 に LD 光 源 を 実 装 し た 光 回 路 を 実 現 し て い る (2). こ の よ う な 観 点 か ら Ce:YIG 薄 膜 を 成 長 す れ ば ,磁 界 セ ン サ を 小 型 化 で き る .図 7-2 図7-1 光集積回路の提案例(1) 87 の よ う に , 基 板 上 に Ce:YIG 膜 と フ ェ ラ イ ト 磁 石 の 薄 膜 を 作 製 す る こ と で , Ce:YIG 薄 膜 と 「 重 ね 合 わ せ 法 」 を 用 い た 小 型 の 光 応 用 磁 界 セ ン サ が 実 現 す る . 図 7-2(a) は GGG 基 板 に Ce:YIG 膜 の 導 波 路 と フ ェ ラ イ ト 膜 を 作 製 し た も の 二 つ を 直 交 す る よ う に 配 置 し た 構 成 で あ る . 図 7-2(b) は GGG 基 板 の 両 面 に 印 加 磁 界 H b が 直 交 す る よ う に そ れ ぞ れ Ce:YIG 膜 と フ ェ ラ イ ト 膜 を 作 製 し た 構 成 で あ る . こ れ ら の 磁 界 セ ン サ 素 子 を PLC 内のプラットホームに実装すれば磁界センサを小型化できる. Ce:YIG 薄 膜 は , RF ス パ ッ タ リ ン グ 法 ( 3 ) や 液 相 エ ピ タ キ シ ー 法 (LPE 法 ) ( 4 ) に よ り 薄 入射偏光光 GGG基板 フェライト膜 Ce:YIG膜 フェライト膜 Ce:YIG膜 GGG基板 透過偏光光 (a) 基板にCe:YIG導波路とフェライト磁石膜を作製し, 直交するように配置 Ce:YIG膜 入射偏光光 フェライト膜 GGG基板 Ce:YIG膜 透過偏光光 フェライト膜 (b) 基板の両面にCe:YIG膜とフェライト磁石膜を作製 図7-2 Ce:YIG薄膜と「重ね合わせ法」を用いた 磁界センサ素子の例 88 膜 成 長 が 行 わ れ た . Ce 置 換 YIG エ ピ タ キ シ ャ ル 膜 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は , Ce の 置 換 量 に 比 例 し て 増 大 す る . RF ス パ ッ タ リ ン グ 法 で は , 非 平 衡 状 態 で Ce:YIG 薄 膜 を 成 長 で き る た め ,Ce x Y 3 - x Fe 5 O 1 2 で Ce を x = 2.5 ま で 置 換 す る こ と が で き る ( 3 ) .単 結 晶 で は , x = 0.25 程 度 し か Y を Ce に 置 換 で き な い . これらの研 究に続いて,著者は,パルスレーザー堆積法 (PLD 法 ) に より,セリ ウム置換イ ットリウム鉄ガーネット (Ce:YIG, Ce 0.6 Y 2.4 Fe 5 O 12 ) 薄膜を 成長し (5) ,導波路型磁界センサに 必 要な磁気光学特性を評価した. PLD 法 は,ターゲットと成長された薄膜間の組成ずれが 小 さいので,広範な複合酸化物材料にお ける薄膜成長法として応用されている.ま た , ス パ ッ タ リ ン グ 法 と 同 じ よ う に 非 平 衡 状 態 で Ce:YIG 薄 膜 を 成 長 す る た め , Ce:YIG 単 結 晶 に 比べて高濃度のセリウムをイットリウムに置換することができる. 7.2 7.2.1 実験方法 薄膜成長 図 7-3 に薄 膜成長装置の概略図を示 す.真空容器中央部に結晶成長用基板と Ce : Y : Fe = 0.6 : 2.4 : 5 の Ce:YIG 焼結体(高純度化学研究所,Lot No. 29684 G )を相対して設置する. 外部からビューポートを介して強度 4 J/cm 2 の A r F エキシマレーザー (LAMBDA PHYSIK, model COMPEX 102, λ= 193 nm, 20 Hz) を入射 し,その焦点を焼結体上に調整する.高いエネ ルギー密度を得るためにより短波長,かつ堆積速度の高速化のためにより高強度のレーザ ー を用いた.真空容器内はターボポンプ とロータリーポンプで 10 -4 Pa まで排気した後,ア ル ゴ ン ま た は 酸 素 ガ ス 中 で ア ブ レ ー シ ョ ン を 行 う . ア ル ゴ ン 及 び 酸 素 ガ ス の 圧 力 は 1.3 Pa 26.4 Pa とする.基板は 10 mm×10 mm の GGG の (111) 面を用い, SiC ヒーター上に直接クラ ンプ止めして固定する.基板と制御温 度が異なるので,温度を放射温度計で測定する.基 板 温度は 750 ℃ - 900 ℃とする.成長が始まると温度が設定値より 10 ℃ほど下がる.これは 黒 みを帯びた膜が透明な基板を覆い輻射率が高くなるためと思われる.以下に記述する温度 は 薄膜成長中の温度である.また,ターゲットと基板の距離は 45 mm で,ターゲットを 20 rpm で回転させる.成長速 度毎分約 18 nm で, 0.2 µm – 12 µm の 厚さの Ce:YIG の 薄膜を成長し た.成長後は 酸素またはアルゴンガス 中で自然に冷却した.膜厚は触針計 (Kosaka Laboratory Ltd., Surfcorder SE-1100) で測定し た. 89 7.2.2 構成元素の定量及び X 線による結晶構造の解析 構成元素の 成分比は,「第 3 章 3.2.2 結 晶 の 評 価 」と同様に , 電子プローブ X 線 マイクロ ア ナライザー (EPMA,JXA-8900RL) を用い, ZAF〔原子番号,吸収,蛍 光〕補正を行って定量 し た. CeB 6 及 び YFeO 3 を 標 準 試 料 と し て 使 用 し た . 成 長 し た 膜 の 結 晶 構 造 の 解 析 は X 線 回 折 装 置 (XRD( 株 ) マ ッ ク サ イ エ ン ス , M03XHF) により行った.X 線 源 に CuKα を 使 用 し ,湾 曲 グ ラ フ ァ イ ト の モ ノ ク ロ メ ー タ を 使 用 し た . 電 圧 40 kV を 印 加 し , 電 流 20 mA を 通 電 し て X 線 を 発 生 し た . θ 軸の角度を設定 した後, 2 θ お よび θ を 同時に走査させ ,測定間隔は 0.006 度,走査速度は毎分 1 度で X 線 の回折強度を測定した.薄膜と試料ホルダーの平面が一致するように粘土で固定した. 7.2.3 光学特性 ファラデー 回転能及び光透過率測定 の波長依存性の測定を「第 4 章 4.2.1 光学特性の評 価 」 と同様の方法で行った.ファラデ ー回転 能の波長依存性は,膜に対 して垂直方向に 240 kA/m の磁界をかけ,クロスーニコル法によ り波長 400 nm - 1200 nm の 範囲で測定した.光透 過 真空チャンバ ターゲット O2 基板 レンズ ヒータ ArF レーザ ミラー ターボポンプ 温度調節器 ロータリーポンプ 図7-3 パルスレーザー堆積法の概略図 90 率は自記式分光光度計〔島津,MPC-3100 〕に より波長 300 nm - 2500 nm の範囲 で測定した . 光吸収係数( α)は透過率( T)と反射率( R),膜厚( d)から,以下の Lambart-Beer の式 に より求めた (6) . 2 ( 1 − R ) e −αd T= 1 − R 2 e − 2αd , ( 7-1 ) 反射率は, 膜の法線方向に対して 12 度の角度から光線を入射し,(膜から 反射光強度 ) / (参照光強度)を測定した. 7.3 7.3.1 実験結果および考察 薄膜成長 本 節 で は , 磁 気 光 学 特 性 を 評 価 す る た め に 必 要 な Ce:YIG 薄 膜 の 成 長 条 件 を 決 定 す る . Ar ガ ス 圧 力 お よ び 基 板 温 度 を 変 化 さ せ , 90 分 間 成 長 し た と き の , 膜 の 厚 さ を 表 7-1 に 示 す . 膜 の 厚 さ は 0.25 µm - 0.95 µm で あ る . こ れ ら の 膜 に 関 し て , X 線 回 折 に よる構造解析を行う. ま ず , ア ル ゴ ン ま た は 酸 素 に よ り 成 長 し た 薄 膜 の 2θ=116 度 付 近 の X 線 回 折 の 結 果 を 図 7-4 に 示 す .基 板 温 度 及 び ガ ス 圧 力 は そ れ ぞ れ 900 ℃ ,2.6 Pa で あ る .ア ル ゴ ン 中 で 成 長 し た 場 合 ,Ce:YIG の (888) 面 の ピ ー ク お よ び GGG の (888) 面 の ピ ー ク が そ れ ぞ れ 115.5 度 - 118 度 付 近 ,118 度 - 120 度 に か け て 現 れ る .一 方 ,酸 素 中 で 成 長 し た 場 合 , Ce:YIG の (888) 面 の ピ ー ク が 得 ら れ な い . こ の よ う に , ア ル ゴ ン 中 で 成 長 し た 方 が 酸 素 中 で 成 長 す る よ り 結 晶 化 し た Ce:YIG 薄 膜 が 得 ら れ る こ と が 判 っ た の で , 以 後 の X 線回折による構造解析はアルゴン中で成長した薄膜について行う. 基 板 温 度 900 ℃ , Ar ガ ス 圧 力 が 2.6 Pa - 26.4Pa で 成 長 し た Ce:YIG 薄 膜 の 2θ=116 度 付 近 の X 線 回 折 を 図 7-5 に 示 す .Ce:YIG の (888) 面 の X 線 回 折 強 度 は ,Ar ガ ス 圧 力 2.6 Pa 及 び 6.6 Pa の 低 い ガ ス 圧 力 で 成 長 し た 薄 膜 の 方 が ,Ar ガ ス 圧 力 13.2 Pa 及 び 26.4 Pa の高いガス圧力で成長した薄膜より大きい. 91 表 7-1 Ar ガ ス 圧 力 と 基 板 温 度 を 変 え て 成 長 し た Ce:YIG 膜 の 厚 さ ( 単 位 は µm ) ℃ Pa 0 1.3 2.6 6.6 13.2 26.4 900 ― ― 0.7 0.7 0.55 0.55 850 ― ― 0.8 0.7 0.4 ― 800 0.45 0.75 0.4 750 0.25 0.95 ― 異 な る 基 板 温 度 で 成 長 し た Ce:YIG 薄 膜 の X 線 回 折 の 結 果 を 図 7-6 に 示 す . 成 長 条 件 は (a) 基 板 温 度 900 ℃ , Ar ガ ス 圧 力 6.6 Pa, (b) 基 板 温 度 850 ℃ , Ar ガ ス 圧 力 6.6 Pa,(c) 基 板 温 度 800 ℃ , Ar ガ ス 圧 力 2 .6 Pa , (d ) 基 板 温 度 7 50 ℃ , Ar ガ ス 圧 力 1 .3 Pa で あ る . よ り 高 温 で 成 長 し た 薄 膜 で 大 き な Ce:YIG の (888) 面 の 回 折 が 得 ら れ た . 成 長 し た Ce:YIG 薄 膜 が (111) 面 に 配 向 し て い る か 調 べ る た め に ,5 度 - 122 度 の 広 範 囲 の X 線 回 折 を 行 っ た .図 7-7 は (a) 基 板 温 度 900 ℃ ,Ar ガ ス 圧 力 6.6 Pa で 成 長 し ,Ce:YIG が 結 晶 化 し た 薄 膜 , (b) 基 板 温 度 800 ℃ , Ar ガ ス 圧 力 1.3 Pa で 成 長 し , Ce:YIG が 結 晶 化 な か っ た 薄 膜 の X 線 回 折 を 示 す .図 7-7(a) で は CeO 2 お よ び YIG が で き る が ,Ce:YIG の 回 折 強 度 ((444) 面 で は 37000 カ ウ ン ト ) に 比 べ て 充 分 小 さ い の で , 図 7-7(a) の 薄 膜 は Intensity (103 cps) 8 Ar 2.6 Pa O 22.6 Pa 4 0 115 Ce:YIG (888) 116 117 GGG (888) 118 2θ(deg) 119 120 図7-4 アルゴンまたは酸素で成長した薄膜のX線回折.基板温度および ガス圧力はアルゴン(実線),酸素(点線)ともに900℃,2.6 Pa 92 8 (a) Ar 2.6 Pa 6 4 GGG (888) Ce:YIG (888) 2 0 115 116 117 118 119 120 119 120 119 120 119 120 2θ (deg) 8 6 4 (b) Ar 6.6 Pa Ce:YIG (888) GGG (888) 2 0 115 8 116 117 118 2θ (deg) (c) Ar 13.2 Pa 6 4 2 0 115 GGG (888) Ce:YIG (888) 116 117 118 2θ (deg) 8 (d) Ar 26.4 Pa 6 GGG (888) 4 2 0 115 Ce:YIG (888) 116 117 118 2θ (deg) 図7-5 異なるArガス圧力で成長したCe:YIG薄膜のX線回折パターン.基板温度900℃で (a)Arガス圧力2.6 Pa, (b) Arガス圧力6.6 Pa, (c) Arガス圧力13.2 Pa, (d) Arガス圧力26.4 Pa 93 8 6 4 (a) 900℃ Ce:YIG (888) GGG (888) 2 0 115 116 117 118 2θ (deg) 119 120 119 120 119 120 119 120 8 6 (b) 850℃ 4 GGG (888) 2 0 115 Ce:YIG (888) 116 117 118 2θ (deg) 8 6 (c) 800℃ 4 GGG (888) 2 0 115 Ce:YIG (888) 116 117 118 2θ (deg) 8 6 (d) 750℃ 4 GGG (888) 2 0 115 116 117 118 2θ (deg) 図7-6 異なる基板温度で成長したCe:YIG薄膜のX線回折パターン.基板温度及びガ ス圧力はで(a) 900℃,Arガス圧力6.6 Pa, (b) 850℃, Arガス圧力6.6 Pa, (c) 800℃, Arガ ス圧力6.6 Pa, (d) 750℃, Arガス圧力1.3 Pa 94 Ce:YIG の 単 一 相 と 考 え ら れ る .ま た ,図 7-7(a) の Ce:YIG が 結 晶 化 し た ば あ い ,Ce:YIG の (444) 面 お よ び (888) 面 以 外 の Ce:YIG の 回 折 ピ ー ク は 無 い の で , Ce:YIG 薄 膜 は [111] 軸 方 向 に 配 向 し て い る と 考 え ら れ る . 図 7-7(b) の Ce:YIG が 結 晶 化 し な か っ た 薄 膜 は , CeO 2 お よ び YIG の ピ ー ク が 得 ら れ る . 以 上 の X 線 回 折 の 結 果 を ま と め て 表 7-2 に 示 す.本研究で調べた範囲では,より高温,より低いガス圧力で成長した薄膜がより X Intensity (cps) 10 10 5 (a) 900 ℃, Ar 6.6 Pa GGG (444) GGG (888) Ce:YIG (444) 4 Ce:YIG (888) 1000 100 10 20 40 YIG (541) 60 80 100 120 Intensity (cps) 2θ (deg) 10 5 10 4 (b) 800 ℃, Ar 1.3 Pa GGG (444) GGG (888) 1000 100 10 20 40 YIG (541) 60 80 100 120 2θ(deg) 図7-7 (a)Ce:YIGが結晶化した薄膜(基板温度900℃,Arガス圧力6.6 Pa) (b)Ce:YIGが結晶化しなかった薄膜(基板温度800℃,Arガス圧力1.3 Pa) のX線回折パターン 95 表 7-2 Ar ガ ス 圧 力 と 基 板 温 度 を 変 え て 成 長 し た Ce:YIG 膜 の X 線 回 折 結 果 Pa 0 1.3 2.6 6.6 13.2 26.4 900 ― ― ◎ ◎ ○ ○ 850 ― ― × × × ー 800 ◎ × × 結晶化 750 × × ― ◎ ℃ 表 7-3 非結晶化 × ○ ZAF 補 正 に よ る セ リ ウ ム 及 び 鉄 の 組 成 比 x 0.57 0.58 0.59 0.55 0.6 0.54 Ce x Y 3 - x Fe y O 1 2 900 ℃ , Ar 2.6 Pa 900 ℃ , Ar 6.6 Pa 900 ℃ , Ar 26.4 Pa 850 ℃ , Ar 2.6 Pa 850 ℃ ,O 2 26.4 Pa 750 ℃ ,10 - 4 Pa y 4.68 4.30 4.44 4.90 4.85 4.72 線 回 折 強 度 の 大 き い (111) 面 に 配 向 し た Ce:YIG 薄 膜 に な る . 表 7-3 に , ZAF 補 正 か ら 定 量 し た Ce 及 び Fe の 組 成 比 を 示 す . 温 度 や 雰 囲 気 に 関 係 な く Ce 量 が 0.6 , Fe 量 が 5 の 付 近 に あ り , タ ー ゲ ッ ト 組 成 に 近 い 値 で 薄 膜 を 成 長 で き ている. 磁界センサに必要な磁気光学特性を評価するには,充分な厚さの薄膜が必要であり, そのためには成長速度が速い条件を探す必要がある.そこで成長速度のガス圧力依存 性 を 調 べ た . Ar ガ ス 中 , 成 長 時 間 90 分 で 成 長 し た と き の 成 長 速 度 の ガ ス 圧 力 依 存 性 を 図 7-8 に 示 す . ガ ス 圧 力 を 1.3 Pa か ら 大 き く す る と , 成 長 速 度 は 遅 く な る . 一 方 , Ar ガ ス を 導 入 し な い と き( 真 空 容 器 内 の 圧 力 は 10 - 4 Pa )で は ,成 長 速 度 が 著 し く 遅 く なる. Ar 雰 囲 気 ガ ス 圧 力 1.3 Pa で 薄 膜 を 成 長 し た と き の 成 長 時 間 と 触 針 計 に よ り 測 定 し た 膜 厚 の 関 係 を 図 7-9 に 示 す . 膜 厚 5 µm( 成 長 時 間 6 時 間 ) ま で 膜 厚 は 直 線 的 に 増 加 し て い る . 5 µm 以 上 の 厚 さ に な る と 著 し く 成 長 速 度 が 遅 く な る . 以 上 の 結 果 か ら , 磁 気 光 学 特 性 を 評 価 す る の に 適 し た Ce:YIG 薄 膜 を 成 長 す る た め のガス圧力や基板温度,成長時間の条件を選ぶ. ま ず , Ar ガ ス 圧 力 ( 図 7-5) を 変 え た 場 合 , Ar ガ ス 圧 力 2.6 Pa 及 び 6.6 Pa の 低 い ガ ス 圧 力 で 成 長 し た 薄 膜 は ,Ar ガ ス 圧 力 13.2 Pa 及 び 26.4 Pa の 高 い ガ ス 圧 力 で 成 長 し た 薄 96 Growth rate (10-6 m/hour) 0.6 0.4 0.2 0 0 5 10 15 20 25 Ar pressure (Pa) 図7-8 90分間成長したCe:YIG薄膜の 成長速度のArガス圧力依存性 Film thickness (10-6 m) 6 4 2 0 0 4 8 Deposition time (hour) 図7-9 基板温度900℃,Arガス圧力1.3 Paで成長した Ce:YIG薄膜の膜厚の堆積時間依存性 97 12 膜 よ り , [111] 軸 方 向 に 配 向 し た Ce:YIG 薄 膜 に な る . Ar ガ ス 圧 力 6.6 Pa で 成 長 し た Ce 0 . 5 8 Y 2 . 4 2 Fe 4 . 3 O 1 2 膜 の 半 値 幅 (Cu-Kα 1 ( ) 図 7-5(b) )は 0.16 度 で ,GGG 基 板 の 半 値 幅 0.12 度 に 近 い た め ,[111] 軸 方 向 に 配 向 し た 結 晶 性 の 良 い 薄 膜 に な っ て い る .基 板 温 度 900 ℃ , Ar ガ ス 圧 力 2.6 Pa で 成 長 し た Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 6 8 O 1 2 膜( 図 7-5(a) )で は ,115.5 度 か ら 117 度 に か け て 複 数 の Ce:YIG の Kα 1 及 び Kα 1 の 回 折 ピ ー ク が 重 な る . こ れ は [111] 軸 長 の 異 な る 複 数 の Ce:YIG 薄 膜 が 成 長 し た こ と を 示 す . Mino ら は , ス パ ッ タ 法 に よ り 成 長 し た Ce 1 Y 2 Fe 5 O 1 2 薄 膜 で も 図 7-10 に 示 す よ う に 基 板 側 (lower layer) と 膜 表 面 (upper layer) に [111] 軸 長 の 異 な る Ce:YIG 薄 膜 が 成 長 し , こ れ は Ce:YIG 薄 膜 と GGG 基 板 の (111) 面 の 格 子 定 数 の 不 整 合 に よ っ て 起 こ る と 報 告 し て い る (7) . 図 7-5(a) の Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 6 8 O 1 2 膜 の 結 果 は , Mino ら の 結 果 と 一 致 す る . 基 板 温 度 ( 図 7-6) を 変 え た 場 合 ,よ り 高 温 で 成 長 し た Ce:YIG 薄 膜 が [111] 軸 方 向 に 配 向 し た .本 装 置 で は 基 板 温 度 は 900 ℃ が 最 大 値 で あ る た め , 900 ℃ で 成 長 す る こ と が 望 ま し い . 次 に 成 長 速 度 ( 図 7-8) で は ,ガ ス 圧 力 を 1.3 Pa か ら 大 き く す る と ,成 長 速 度 は 遅 く な る.これは,ガス圧力が高圧になるにつれてプルームの閉じ込め効果が大きくなり, 基 板 ま で プ ル ー ム が 直 接 届 か な い た め で あ る .一 方 , Ar ガ ス を 導 入 し な い と き( 圧 力 10 - 4 Pa ),成 長 速 度 が 著 し く 遅 く な る の は ,雰 囲 気 ガ ス に よ る プ ル ー ム の 閉 じ 込 め 効 果 がなくなるためである.以上の結果より,本装置により厚い薄膜の成長を高速で行う た め に は , Ar ガ ス 圧 力 を 制 御 で き る 最 小 値 の 1.3 Pa が 最 も 速 く , 0.5 µm/h で あ る .膜 厚 の 成 長 時 間 依 存 性 ( 図 7-9 ) よ り , 膜 厚 が 5 µm 以 上 の 厚 さ に な る と 著 し く 成 長 速 度 が遅くなる.この原因は,長時間のアブレーションによりアブレーションスポットに 図7-10 スパッタ法により成長したCe1Y2Fe5O12薄膜のX線回折(7) 98 生じた溝が,徐々に深さを増し,その結果スポットサイズが広がってフルエンスが低 下するため,と考えている. 以 上 よ り , 成 長 条 件 は , ① [111] 軸 方 向 に 配 向 し た Ce:YIG 薄 膜 を 得 る た め に , 基 板 温 度 900 ℃ で 低 い Ar ガ ス 圧 力 で 成 長 す る ② 厚 い Ce:YIG 薄 膜 を 得 る た め に ,Ar ガ ス 圧 力 が 1.3 Pa で 成 長 す る , と な る . そ こ で , 以 下 の 光 応 用 磁 界 セ ン サ に 必 要 な 光 学 特 性 の 評 価 で は , 基 板 温 度 900 ℃ , Ar ガ ス 圧 力 1.3 Pa で 5 時 間 成 長 し た 厚 さ 4 µm の Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 を 用 い る . ま た , 基 板 温 度 が 900 ℃ で 異 な る Ar ガ ス 圧 力 で 成 長 し た Ce:YIG 薄 膜 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 の 波 長 依 存 性 を 測 定 し , X 線 回 折 の 結 果 と 比 較する. 7.3.2 光学特性 Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 の 光 吸 収 係 数 の 波 長 依 存 性 を ,結 晶 化 し な か っ た 薄 膜 と あ わ せ て 図 7-11 に 示 す . Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 で は , 波 長 1100 nm 付 近 - 600 n m に か け hν(eV) Absorption coefficient (cm-1) 3.0 15 2.0 1.5 1.2 Ce 0.57 Y 2.43 Fe4.73 O 12 800℃,O 2 1.3 Pa 10 5 0 400 600 800 1000 Wavelength (nm) 図7-11 Ce:YIG薄膜の光吸収係数の波長依存性.●はCe0.57Y2.43Fe5O12薄膜, ×は基板温度800℃,酸素ガス圧力1.3 Paで成長し結晶化しなかった薄膜 99 て 徐 々 に 光 吸 収 が 増 大 し , 波 長 500 nm よ り 短 波 長 で 光 吸 収 が 大 き く 増 加 す る . 薄 膜 の 色 は 黄 緑 色 で あ る . 五 味 ら ( 5 ) に よ る と , 図 2-8 に 示 し た よ う に , Ce 3 + イ オ ン の 4f-5d 遷 移 に よ る 光 吸 収 の ピ ー ク 以 外 に ,少 な く と も 波 長 890 nm (1.4 eV) と 波 長 630 nm (2.0 eV) に 光 吸 収 の ピ ー ク が 存 在 し , 波 長 890 nm の 光 吸 収 が フ ァ ラ デ ー 回 転 能 の 増 大 に 寄 与 す る . 結 晶 化 し た Ce:YIG 薄 膜 の 波 長 1100 n m - 500 nm ま で の 光 吸 収 の 増 大 は , 図 2-8 と 同 様 の 結 果 を 示 す .一 方 ,基 板 温 度 800 ℃ ,酸 素 ガ ス 圧 力 1.3 Pa で 成 長 し ,結 晶 化 し な か っ た 薄 膜 で は , 波 長 1100 n m - 600 n m は 光 吸 収 が 小 さ い . 次 に ,基 板 温 度 900 ℃ ,Ar ガ ス 圧 力 1.3 Pa - 26.4Pa で 成 長 し た Ce:YIG 薄 膜 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 の 波 長 依 存 性 を 図 7-12 に 示 す .こ の 結 果 は rf ス パ ッ タ リ ン グ に よ る Ce:YIG 薄 膜 ( 5 ) の そ れ に 近 い .基 板 温 度 900 ℃ ,Ar ガ ス 圧 力 2.6 Pa で 成 長 し た Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 6 8 O 1 2 薄 膜 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は 波 長 430 nm で 正 の 極 大 値 4.2×10 4 deg/cm を 示 す .こ の 値 は , r f ス パ ッ タ リ ン グ に よ り 成 長 し た C e 0 . 7 Y 2 . 3 F e 5 O 1 2 薄 膜 の 波 長 4 3 0 n m で の 3 .5 × 1 0 4 Specific Faraday rotation (104 deg/cm) hν(eV) 3.0 2.0 1.5 4 1.2 1.3 Pa 2.6 Pa 6.6 Pa 13.2 Pa 26.4 Pa 2 0 -2 400 600 800 1000 Wavelength (nm) 図7-12 基板温度900℃,Arガス圧力×1.3 Pa, ●2.6 Pa, ■6.6 Pa, ○13.2 Pa, □26.4 Paで成長したCe:YIG薄膜の ファラデー回転能の波長依存性 100 deg/cm ( 5 ) よ り 大 き い .Ar ガ ス 圧 力 13.2 Pa お よ び 26.4 Pa で 成 長 し た Ce:YIG 薄 膜 と Ar ガ ス 圧 力 2.6 Pa お よ び 6.6 Pa で 成 長 し た Ce:YIG 薄 膜 で は , X 線 回 折 強 度 ( 図 7-5) に 大 き な 違 い が あ っ た . し か し , Ar ガ ス 圧 力 13.2 Pa お よ び 26.4 Pa で 成 長 し た Ce:YIG 薄 膜 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 の 波 長 依 存 性 は ,Ar ガ ス 圧 力 2.6 Pa お よ び 6.6 Pa で 成 長 し た Ce:YIG 薄 膜 の そ れ に 近 い フ ァ ラ デ ー 回 転 能 を 持 つ . こ れ は , 成 長 し た Ce:YIG 薄 膜 の 結 晶 粒 の 大 き さ に 関 わ ら ず , Y を Ce に 置 換 で き れ ば フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は 増 大 す る た めと考えられる. Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 と Ce:YIG 単 結 晶 の 波 長 1300 nm で の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 の セ リ ウ ム 濃 度 依 存 性 を 比 較 し た 結 果 を 図 7-13 に 示 す .薄 膜 の デ ー タ は ,-5400 deg/cm で , 第 4 章 の 図 4-6(b) の Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 の -2000 deg/cm よ り 非 常 に 大 き い . さ ら に , Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は 単 結 晶 の そ れ の 延 長 線 上 に あ り , Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 が Y を 高 濃 度 の Ce に 置 換 で き て い る こ と を 示 し て い る . 以 上 の 光 学 特 性 結 果 か ら ,Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 を 光 応 用 磁 界 セ ン サ へ 適 用 す る 時 Specific Faraday rotation (104 deg/cm) の磁気光学特性を評価する.まず光源として使用する波長を決める.ファラデー回転 0 -0.2 -0.4 -0.6 0 0.2 0.4 0.6 Ce content x 図7-13 Ce0.57Y2.43Fe5O12薄膜(●)及びCe:YIG単結晶(□)の 波長1300 nmのファラデー回転能のセリウム濃度依存性 101 能 が 大 き い 430 nm で は 光 が 透 過 し な い た め 光 吸 収 係 数 を 測 定 で き な い . ま た 780 nm の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は 1.9×10 4 deg/cm と 大 き い が ,光 吸 収 係 数 は 3300 cm - 1 と 非 常 に 大 き い . 波 長 1300 nm で の 光 吸 収 係 数 は 370 cm - 1 で , 750 nm で の そ れ の 約 1/10 と 小 さ い の で , 最 適 な 光 路 長 (2/α)を 長 く す る こ と が で き る . よ っ て , 光 源 と し て 使 用 す る 波 長 は 1300 nm と す る .磁 気 光 学 特 性 の 結 果 を 表 7-4 に 示 す . Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 を 磁 界 検 出 素 子 に 用 い る ば あ い の 感 度 は , Ce0.24Y2.76Fe5O12 単 結 晶 と 同 程 度 の 0.0046 %・ m/A で あ る .Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 よ り 優 れ て い る が , そ の 反 面 光 吸 収 係 数 は 370 cm-1 と 大 き い . そ の た め , Ce0.57Y2.43Fe4.73O12 薄 膜 で 適 当 な 光 路 長 2/α (α は 光 吸 収 係 数 )は 54 µm で , Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 よ り 短 く な り ,感 度 は Ce 0 . 2 4 Y 2 . 7 6 Fe 5 O 1 2 単 結 晶 と 同 程 度 に な る . 7.4 まとめ PLD 法 に よ り Ce:YIG 薄 膜 を 成 長 し , 磁 気 光 学 特 性 を 評 価 し た . ま ず ,Ce:YIG 薄 膜 の 成 長 条 件 を 決 定 し た .そ の 結 果 ,[111] 軸 方 向 に 配 向 し た Ce:YIG 薄 膜 を 成 長 す る に は , 基 板 温 度 900 ℃ , Ar ガ ス 圧 力 2.6 Pa - 6.6 Pa が 最 適 で あ る . 成 長 速 度 の Ar ガ ス 圧 力 依 存 性 は ,本 装 置 で Ar ガ ス 圧 力 を 制 御 で き る 範 囲 で は 1.3 Pa が 最 も 速 い . 膜 厚 の 成 長 時 間 依 存 性 は , 膜 厚 が 5 µm 以 上 の 厚 さ に な る と 著 し く 成 長 速 度 が 遅 く な る . こ れ ら の 成 長 条 件 か ら , 基 板 温 度 900 ℃ , Ar ガ ス 圧 力 1.3 Pa で 5 時 間 成 長 し た 厚 さ 4 µm の Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 を 用 い , 光 学 特 性 の 評 価 し た . Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 6 8 O 1 2 薄 膜 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は ,波 長 430 n m で は rf ス パ ッ タ 法 で 成 長 し た Ce 0 . 7 Y 2 . 3 Fe 5 O 1 2 薄 膜 の そ れ よ り 大 き い 4.2×10 4 deg/cm と な る . ま た Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 の 波 長 1300 n m で の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は , Ce:YIG 単 結 晶 の セ リ ウ ム 濃 度 依 存 性 の 延 長 線 上 に あ り , Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 は Y を 高 濃 度 の Ce に 置 表 7-4 Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 及 び Ce 0.24 Y 2.76 Fe 5 O 12 単 結 晶 の 磁 界 セ ン サ の た め の 磁気光学特性 Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 Ce 0.24 Y 2.76 Fe 5 O 12 単 結 晶 成長法 波長 光路長 感度 光吸収係数 (n m) (µm) (% ・ m/A) (cm - 1 ) PLD 1300 54 0.0046 370 TSFZ 1300 360 0.0048 57 102 ファラデー 回転角 (deg) -32 -72 換できた. 以 上 よ り ,フ ァ ラ デ ー 回 転 能 の 優 れ た Ce:YIG 薄 膜 を PLD 法 に よ り 成 長 で き る こ と が 判 っ た . 表 7-4 に 示 し た よ う に , Ce 0 . 5 7 Y 2 . 4 3 Fe 4 . 7 3 O 1 2 薄 膜 の 磁 界 セ ン サ の 感 度 は 薄 膜 と 単 結 晶 で ほ ぼ 同 じ で あ る . 従 っ て , 数 十 µm 2 以 下 の 狭 い 領 域 の 磁 界 を 測 定 す る と き は Ce:YIG 薄 膜 を ,そ れ 以 上 の 領 域 の 磁 界 を 測 定 す る と き は Ce:YIG 単 結 晶 を 選 ぶ べ き である. 103 参考文献 (1) P. K. Tien: “Integrated optics and new wave phenomena in optical waveguides”, Rev. Mod. Phys., Vol. 49, No. 2, pp. 361-420, (1977). (2) 岡 本 勝 就:「集 積 型 平 面 光 波 回 路 」,レ ー ザ ー 研 究 ,Vol . 26 ,No . 8 ,pp . 608-614 , (1998) . (3) M. Gomi, K. Satoh and M. Abe: “Giant Faraday rotation of Ce-substituted YIG films epitaxially grown by RF sputtering”, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 27, No. 8, pp. L1536-L1538, (1988). (4) 玉 野 井 健 , 有 泉 み ゆ き , 品 川 公 成 , 斉 藤 敏 明 , 対 馬 立 郎 : 「 Ce 置 換 YIG LPE 膜 の フ ァ ラ デ ー 効 果 」, 日 本 応 用 磁 気 学 会 誌 , Vol . 13 , No . 1 , pp . 44-45 , (1989) . (5) S. Higuchi, K. Ueda, F. Yahiro, Y. Nakata, H. Uetsuhara, T. Okada and M. Maeda, “Fabrications of cerium-substituted YIG thin films for magnetic field sensor by pulsed-laser deposition”, IEEE Trans. Magn., Vol. 37, No . 4, pp. 2451-2453, (2001). (6) P. M. Grant, “”, Appl. Phys. Lett., Vol. 11, pp. 166-168, (1967). (7) S. Mino, A. Tate, T. Uno, T. Shintaku and A. Shibukawa: “Structure and lattice deformation of Ce-substituted yttrium iron garnet film prepared by RF sputtering”, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 32, No. 7, pp. 3154-3159, (1993). 104 第 8章 本研究のまとめ セ リ ウ ム 置 換 イ ッ ト リ ウ ム 鉄 ガ ー ネ ッ ト (Ce:YIG) の 結 晶 成 長 を 行 い , そ の 磁 気 光 学 特性を評価した.磁界に対する感度が大きく,実用に十分な測定レンジを有する光応 用磁界センサの開発の基盤となる研究を行った. TSFZ 法 に よ り , 大 型 の セ リ ウ ム 置 換 YIG 単 結 晶 を 成 長 で き る こ と を 示 し , セ リ ウ ム の 偏 析 現 象 に つ い て 述 べ た . TSFZ 法 に よ り 成 長 速 度 を 1 mm/h に す る こ と で , 8 % の Ce を 置 換 し た , 直 径 約 8 mm , 長 さ 約 50 mm の Ce:YIG 単 結 晶 を 成 長 で き る こ と を 示 し た .成 長 し た Ce:YIG 単 結 晶 の 磁 気 光 学 特 性 評 価 し た 結 果 ,波 長 1300 n m の Ce:YIG 結 晶 の フ ァ ラ デ ー 回 転 能 は ,同 じ 置 換 量 の Bi:YIG 結 晶 の そ れ よ り 約 5 倍 大 き い こ と が 判った. 次 に ,Ce:YIG 結 晶 の 磁 化 の 回 転 に 伴 う フ ァ ラ デ ー 効 果 を 利 用 し た 磁 界 セ ン サ を 提 案 し ,セ ン サ 特 性 を 評 価 し た .ま た 、コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 も 併 せ て 評 価 し た . Ce:YIG 単 結 晶 の コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 は YIG の そ れ の 3 倍 で あ る . そ の た め , セ ン サ 特 性 の 感 度 は ,コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 に よ り 大 き く 影 響 を 受 け る . こ の コ ッ ト ン − ム ー トン効果による感度低下に対する改善策として「重ね合わせ法」を提案し,その実験 的 な 評 価 を 行 っ た .そ の 結 果 ,感 度 を 約 0.01 % ・ m/A ま で 向 上 さ せ , 8 - 1400 A/m の 広 い領域の低磁界を測定できることを示した.これは送配電技術の中で供給電流が一番 小さい規格の電流を測定できることを意味する. こ の よ う に し て , 「 重 ね 合 わ せ 法 」 と Ce:YIG 単 結 晶 を 採 用 し た 磁 界 セ ン サ に よ り , 従来以上の高感度の光応用磁界センサ素子を得ることができた. 高感度の光応用磁界センサを実用化するためには,センサ本体の①小型化②温度変 化 な ど 外 部 環 境 の 変 化 に 対 す る 出 力 信 号 の 安 定 化 ③ 安 価 化 ,な ど を 進 め る 必 要 が あ る . また監視システムに組み込むには,センサの①設置場所②光源用の電源をどこから確 保するか③出力信号光の処理方法④出力信号光の伝送方法,などを検討する必要があ る. Ce:YIG 単 結 晶 を 用 い た 高 感 度 な 光 応 用 磁 界 ( 電 流 ) セ ン サ と 図 6-10 に 示 し た 従 来 の 高 磁 界 ( 電 流 ) セ ン サ を 送 配 電 線 の 監 視 に 適 用 し , 送 配 電 線 の 架 空 地 線 (GW) に 組 み 込 まれた光ファイバによる通信を利用すれば,送配電線及び需要家の監視を行える.現 105 在 の 監 視 シ ス テ ム を 図 8-1(a) , 高 感 度 光 応 用 電 流 セ ン サ を 配 電 線 や 需 要 家 の 監 視 に 用 い る 例 を 図 8-1(b) に 示 す . 高 感 度 な 光 応 用 磁 界 ( 電 流 ) セ ン サ を 低 圧 配 電 線 (100 V) や 一般家庭などの需要家にの電流監視に適用すれば,給電指令所は電力使用状況を把握 した上で系統運用を制御できるため,送配電線の電流供給量を上げられる.また,支 店は,需要家の電力利用状況をリアルタイムで把握できるため,検針の必要がなく 発電所 給電指令所 光CT 送電線 光ファイバ 支店 変電所 光CT 毎月検針を行う 配電線 積算電力計 需要家 (a) 現在の監視システム 発電所 給電指令所 光CT 送電線 光ファイバ 光ファイバ 変電所 光CT 支店 配電線 需要家 光CT (b) 高感度光応用電流センサを配電線や需要家の監視に 取り入れたシステム 図8-1 電力線監視システムの概略図 106 なる. 高感度光応用磁界(電流)センサは,電力設備への計測応用として,送配電線の監 視 だ け で な く , 電 力 設 備 の 診 断 や 点 検 に も 適 用 で き る ( 図 8-2 ). 例 え ば 火 力 発 電 用 の 蒸 気 タ ー ビ ン な ど は 600 ℃ 近 い 高 温 の 条 件 で 運 転 を 続 け る た め , タ ー ビ ン の 表 面 に 亀 裂 が 入 る な ど の 劣 化 が 起 こ る . 現 在 で は , 図 8-3(a) の よ う に , タ ー ビ ン 表 面 に 交 流 電 流を流し,亀裂によるインピーダンスの変化を測定することで,亀裂の進展具合を診 断 し て い る . 光 応 用 磁 界 セ ン サ を 用 い る と , 図 8-3(b) の よ う に , タ ー ビ ン の 亀 裂 を 可 視化することで欠陥性状を特定できるため,診断の効率化を期待できる.また,電力 設備の点検では,高感度光応用電流センサは,送配電線などの電力設備から発生する 誘導磁界を測定でき,誘導磁界が電力設備の周辺にある電気機器や通信機器に与える 影響を評価できる. 監視 高感度 磁界(電流)センサ 診断 点検 図8-2 高感度光応用磁界(電流)センサの 電力設備への計測応用 107 磁束 コイル 渦電流 試料 (a) CCD 光源 検光子 偏光子 Ce:YIG単結晶 試料 フェライト磁石 (b) 図8-3 (a)電磁誘導法および(b)ファラデー効果を用いた表面 の視覚化による亀裂の診断の概略図 108 付録 A 等方性媒質のコットン−ムートン効果 コットン−ムートン効果は,屈折率楕円体を用いて記述できる.仮想的に自発磁化 の な い YIG を 考 え る 場 合 の 屈 折 率 楕 円 体 は , そ の 主 軸 を x , y , z と す る と , B0 ( x 2 + y 2 + z 2 ) = 1 , (A-1) となる.ここで, 2 1 B0 = , n (A-2) であり,n は媒質の屈折率である.媒質が磁化した場合の屈折率楕円体は一般に, B1 x 2 + B2 y 2 + B3 z 2 + 2 B4 xy + 2 B5 yz + 2 B6 zx = 1 , (A-3) となる.ここで, B1 = 1 εx ,B2 = 1 εy ,B3 = 1 εz ,B4 = 1 ε xy ,B5 = 1 ε yz ,B6 = 1 ε zx , (A-4) で あ る .立 方 晶 結 晶 で あ る Ce:YIG の 屈 折 率 楕 円 体 の 係 数 の 変 化 は ,そ の 対 称 性 か ら , ∆B1 B1 − B0 ρ11 ρ12 ρ12 ∆B2 B2 − B0 ρ12 ρ11 ρ12 ∆B B − B ρ ρ ρ 0 12 11 = 12 3= 3 0 0 ∆B4 B4 0 0 ∆B B 0 0 5 5 0 ∆B B 0 0 6 6 0 0 0 0 0 0 0 2ρ44 0 0 2ρ44 0 109 0 α1 2 0 α2 2 0 α3 2 2 I 0 α1α2 0 α2α3 2ρ44 α1α3 ρ11α1 2 +ρ12α2 2 +ρ12α3 2 ρ12α1 2 +ρ11α2 2 +ρ12α3 2 2 2 2 ρ12α1 +ρ12α2 +ρ11α3 2 = I , 2ρ44α1α2 2ρ44α2α3 2ρ44α1α3 (A-5) と な る ( 1 ) .こ こ で , I は 磁 化 の 大 き さ , ρ i j (i, j = x, y, z) は 光 弾 性 定 数 と 同 じ 対 称 性 を 有 し , α i (i = x, y, z) は 磁 化 の 方 向 余 弦 を 示 す . (A-3) 式 お よ び (A-5) 式 よ り ,(1 1 0) 面 内 で 磁 化 が 回 転 す る 場 合 の コ ッ ト ン − ム ー ト ン 効 果 を 表 現 す る 式 を 求 め る . (1 1 0) 面 内 に あ る 磁 化 の 方 向 余 弦 は α1 = sinβ sinβ , α2 = , α3 = cosβ, 2 2 (A-6) で あ る .た だ し ,β は z 軸 と 磁 化 の な す 角 度 で あ る .(A-5) 式 及 び (A-6) 式 を (A-3) 式 に 代 入 す れ ば , (1 1 0) 面 内 で 磁 化 が 回 転 す る 場 合 の コ ッ ト ン − ム ー ト ン 効 果 は , 以 下 の よ う な ∆n の β 依 存 性 と し て 求 ま る . { ( ) ( )} Δn = C cos2β1 − 3cos 2β − asin 2β1 + 6cos 2β , (A-7) ここで, C=− a= n0 3 I 2 (ρ11 −ρ12 ) , 4 (A-8) ρ44 , ρ11 −ρ12 (A-9) で あ り ,C は 複 屈 折 の 大 き さ , a は そ の 異 方 性 を 表 す パ ラ メ ー タ ,β は z 軸 と 磁 化 の な す角度である. 110 (1) R. V. Pisarev, I. G. Sinii, N. N. Kolpakova and Yu. M. Yakovlev: “Magnetic birefringence of light in iron garnets”, Sov. Phys. JETP, Vol. 33, pp. 1175-1182, (1971). 111 付録 B ファラデー効果と複屈折が共存する場合のジョーンズマトリックス ファラデー効果と複屈折が共存する場合の誘電率テンソルは, ε x ~ ε = − iγ 0 iγ εy 0 0 0 , ε z (B-1) で 与 え ら れ る ( 1 ) . 図 2-9 に 示 す よ う に , 磁 界 H a が 印 加 さ れ て 自 発 磁 化 が φ だ け 回 転 し た 状 態 で は , 光 の 伝 播 方 向 の 磁 化 成 分 は I s sinφ で あ り , そ れ と 垂 直 な 方 向 の 成 分 は I s cosφ で あ る . (B-1) 式 に お い て , 複 屈 折 は , 対 角 成 分 ε x , ε y に 差 が あ る 場 合 に 生 じ る の で , ε x= ε +η ε y= ε −η , (B-2) とおく.このような媒質中での光波の伝播モードは,マックスウェルの方程式を解く ことによって得られる.誘電率テンソル ~ ε を有する媒質中を伝搬する光波について, その伝搬モードを与える基本方程式は, k × (k × E ) + ω 2 µ 0 ~ ε E = 0, (B-3) と な る ( 2 ) .こ こ で ω は 真 空 中 の 光 波 の 角 周 波 数 で あ る .(B-1) 式 を (B-3) 式 に 代 入 し ,さ らに伝搬方向を z 方向とすると, ω 2 µ 0 ε x − k z 2 2 − iω µ 0 γ 0 iω 2 µ 0 γ 2 ω 2 µ 0ε y − kz 0 0 0 2 ω µ 0ε z Ex E = 0 , y E z (B-4) こ の 二 つ の 伝 播 モ ー ド は そ れ ぞ れ 楕 円 偏 光 と な り , 誘 電 率 の 固 有 値 を kz±2 と す る と , 112 E ′ 1 E' = x′ = E y 1+τ 2 1 iτ exp(− iζ E ″ iτ E '' = x ″ = E y 1+τ 2 1 − i τ ( k z + = µ 0ω 2 ε − η 2 + γ 2 ( 2 ), (B-5) exp(− iψ ) , (B-6) ), (B-7) ) (B-8) k z − = µ 0ω 2 ε + η 2 + γ 2 , 2 で与えられる.ここで, ζ = ω t − k z+ z , (B-9) ψ = ω t − k z− z , (B-10) ( τ = γ η + η 2+ γ 2 ), (B-11) である. ファラデー効果と複屈折が共存する場合のジョーンズマトリックスを求める.z = 0 の点で媒質に入射した平面電磁波が z = d の点で媒質から出射するとき,透過前後に お け る 光 波 の x, y 軸 方 向 の 電 界 成 分 の 関 係 を 示 す 行 列 C が ジ ョ ー ン ズ マ ト リ ッ ク ス である.すなわち Ex Ex = C , E y z =d E y z =0 (B-12) で あ る . (B-5) 式 お よ び (B-6) 式 を (B-12) 式 に 代 入 し て ,基 底 の 変 換 を 行 っ た 後 に 係 数 比 較をすることにより, 113 φF φF cos 2 − i cosχ sin 2 C= φ − sinχ sin F 2 , φF φF + i cosχ sin cos 2 2 sinχ sin φF 2 (B-12) が求まる.ここで, cos χ = sinχ = η 1−τ 2 = 2 2 1+τ η +γ γ 2τ = 2 2 1+τ η +γ 2 2 (B-13) , (B-14) , ω 2 µ 0 (η 2 + γ ϕF = ω 2 µ0 η 2 + γ 2 d ≅ 2 ) ε d , (B-15) 2 2π 2 2 = ∆ n d (cosφ ) + (2θ F dsinφ ) λ で あ る .こ こ で θ F は フ ァ ラ デ ー 回 転 能 で あ る .コ ッ ト ン ー ム ー ト ン 効 果 に よ る 複 屈 折 の大きさは,磁化の二乗に比例することを考慮すると, η = ε 0 n ∆ n(cosφ )2 , (B-16) と な る ( 2 ) . こ こ で n = ( n 0 + n e )/2 は n 0 と n e の 平 均 屈 折 率 , ε 0 は 真 空 中 の 誘 電 率 , ∆n は コットンームートン効果による複屈折の大きさである.また,ファラデー効果は,光 の伝播方向の磁化の大きさに比例し, γ = 2θ F sinφ ωd ε , µ 0 (B-17) 114 と な る (2). 115 (1) W. J. Tabor and F. S. Chen: “Electromagnetic propagation through materials possessing both Faraday rotation and birefringence : experiments with ytterbium orthoferrite”, J. Appl. Phys., Vol. 40, pp. 2760-2765, (1969). (2) 佐 藤 勝 昭 : 「光 と 磁 気 」, 朝 倉 書 店 , pp. 30-53, (1988). 116 謝辞 本論文の作成にあたり,早稲田大学理工学部物理学科教授 近桂一郎先生には,多 大なご指導とご助言を賜りました.ここに深く感謝に意を表します.近教授には,著 者が学生の折よりご指導頂き,現在まで研究者として多くのご教示,ご鞭撻を賜りま し た .重 ね て 感 謝 の 意 を 表 し ま す .早 稲 田 大 学 理 工 学 部 物 理 学 科 教 授 上 江 洲 由 晃 先 生 , 応用物理学科助教授 竹内淳先生,超電導工学研究所 森下忠隆先生には,論文作成に 当たり,多くの貴重なご教示,ご助言を賜りました.深く感謝の意を表します. 本 研 究 に お い て ,九 州 大 学 名 誉 教 授 赤 崎 正 則 先 生 ,先 端 科 学 技 術 共 同 研 究 セ ン タ ー 長 教 授 前 田 三 男 先 生 に は 光 学 に 関 す る 多 く の ご 教 授 を 賜 り ,深 く 感 謝 致 し ま す .研 究 全般において財団法人電力中央研究所狛江研究所 植田清隆理事待遇より多大なるご 教授を賜り,深く感謝致します. Ce:YIG 単 結 晶 の 成 長 で は ,独 立 行 政 法 人 物 質・材 料 研 究 機 構 物 質 研 究 所 の 結 晶 育 成 装 置 を 使 用 さ せ て 頂 き ま し た .ま た ,独 立 行 政 法 人 物 質・材 料 研 究 機 構 木 村 茂 行 顧 問 , 物 質 研 究 所 機 能 化 領 域 北 村 健 二 機 能 化 領 域 長 ,単 結 晶 グ ル ー プ 竹 川 俊 二 主 任 研 究 員 , 株 式 会 社 オ キ サ イ ド 代 表 取 締 役 古 川 保 典 社 長 よ り ,多 大 な る ご 教 示 ,ご 助 言 を 賜 り ま した.本論文の全ては,この結晶成長から始まりました.心より御礼申し上げます. Ce:YIG 単 結 晶 の 磁 気 光 学 特 性 の 評 価 で は , 独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 エ レ クトロニクス研究部門 安藤功兒副研究部門長にご援助頂き,深く感謝致します. PLD 法 に よ る Ce:YIG 薄 膜 の 成 長 で は , 九 州 大 学 大 学 院 シ ス テ ム 情 報 科 学 研 究 院 電 気 電 子 シ ス テ ム 部 門 と の 共 同 研 究 に よ り 行 わ れ ま し た .岡 田 龍 雄 教 授 ,中 田 芳 樹 助 手 , 八 尋 文 明 氏 (現 九 州 松 下 )よ り 多 大 な る ご 教 示 , ご 助 言 を 頂 き , 心 よ り 深 く 感 謝 致 し ま す. Ce:YIG 単 結 晶 の コ ッ ト ン - ム ー ト ン 効 果 の 測 定 や セ ン サ 特 性 の 評 価 は , 職 業 能 力 開 発 総 合 大 学 校 電 子 工 学 科 助 教 授 鎌 田 修 先 生 と の 共 同 研 究 に よ り 行 わ れ ま し た .鎌 田 助 教授,岡本光央氏には,多大なるご教授,ご助言を頂きました.心より深く感謝致し ます. 研究全般においてご教示頂いた財団法人電力中央研究所狛江研究所電気物理部 秋 田調部長,電気絶縁部 藤波秀雄部長,横須賀研究所電力部 高須和彦部長に深く感謝 117 致します.財団法人電力中央研究所狛江研究所電気物理部の皆様には,実験やディス カッションなどで多大なるご教授,ご助言を頂きました.心より深く感謝致します. 本論文の研究は,多くの研究者の方々との共同研究の成果でもあります.共同研究 者の方々に,この場をお借りして心より感謝致します. 最後に,研究活動をいつも暖かい目で見守ってくれた妻と二人の愛児に深く感謝致 します. 118 研究業績一覧 種類別 題名、発表・発行掲載氏名、発表・発行年月、連名者 論文○ S. Higuchi and O. Kamada, "Study of Optical Mgnetic Field Sensor using Cerium-Substituted Yttrium Iron Garnet Single Crystal", Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 41, No. 6A, pp. 3994-3999, (2002) 論文 Y. Nakata, Y. Tashiro, T. Okada, M. Maeda, K. Ueda and S. Higuchi, " Fabrication of Ce:YIG film with different composition by pulsed-laser deposition ", Proc. SPIE, Vol. 4426,Laser Precision Microfabrication, pp. 256-259, (2001) 論文○ S. Higuchi, K. Ueda, F. Yahiro, Y. Nakata, H. Uetsuhara, T. Okada and M. Maeda, “ Fabrications of cerium-substituted YIG thin films for magnetic field sensor by pulsed-laser deposition” , IEEE Trans. Magn., Vol. 37, No. 4, pp. 2451-2453, (2001) 論文 O. Kamada and S. Higuchi, “ Magnetic Field Sensors Using Ce:YIG Single Crystals as a Faraday Element” , IEEE Trans. Magn., Vol. 37, No. 4, pp. 2013-2015, (2001) 論文○ 樋 口 貞 雄 , 植 田 清 隆 , 林 宏 充 , 栗 林 英 行 , 「磁 界 セ ン サ 用 セ リ ウ ム 置 換 イ ッ ト リ ウ ム 鉄 ガ ー ネ ッ ト の 磁 気 光 学 特 性 」, 電 気 学 会 論 文 誌 A 部 門 誌 , Vol.121-A, No.6, pp. 541-546, (2001) 論文○ S. Higuchi and O. Kamada, “ Influence of Linear Magntic Birefringence in Ce:Y 3 Fe 5 O 12 on Linearity of Magnetic Field Optical Sensors” , Ferrites : 8 th International Conference on Ferrite (ICF 8), Kyoto and Tokyo, Japan, pp. 1018-1020, (2000) 論文 Y. Nakata, H. Uetsuhara, F. Yahiro, T. Okada, M. Maeda, K. Ueda and S. Higuchi, “ Fabrication of Ce:YIG film for electric and magnetic field sensor by pulsed-laser deposition and laser-induced forward transfer” , Proc. SPIE, Vol. 4088, First International Symposium on Laser Precision Microfabrication, pp. 333-336, (2000) 論文 Y. Nakata, H. Uetsuhara, F. Yahiro, T. Okada, M. Maeda, K. Ueda and S. Higuchi, “ Fabrication of Optically Functional Thin Films for Electric and Magnetic Fields Sensors by Pulsed-Laser Deposition", Proc. SPIE, Vol. 3885, High-Power Laser Ablation II, pp. 304-310, (2000) 論文○ S. Higuchi, Y. Furukawa, S. Takekawa, O. Kamada and K. Kitamura, "Magneto-Optical Properties of Ce-Substituted Yttrium Iron Garnet Single Crystals Grown by Traveling Solvent Floating Zone Method", Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 38, No. 7A, pp. 4122-4126, (1999) 講演 S. Higuchi, Y. Furukawa, S. Takekawa, O. Kamada K. Kitamura and K. Uyeda, "Magneto-Optical Properties of Ce-Substituted Yttrium Iron Garnet Single for Magnetic Field Sensor", Eurosensors XVI, Prague, TP04, 2002-9 講演 O. Kamada and S. Higuchi, "Magnetic Field Sensors Using Ce:YIG Single Crystals as a Faraday Element", Eurosensors XVI, Prague, TP21, 2002-9 講演 樋 口 貞 雄 , 小 林 陽 , 高 原 光 里 , 「TSFZ 法 に よ り 育 成 し た Ce:YIG 単 結 晶 の 結 晶 性 の 評 価 」, 第 49 回 応 用 物 理 学 会 関 係 連 合 講 演 会 , 東 海 大 学 , 30a-ZN-3, 2002-3 講演 中 谷 努 , 鎌 田 修 , 樋 口 貞 雄 , 「Ce:YIG 単 結 晶 を 用 い た 光 応 用 磁 界 セ ン サ の 検 討 」, 第 28 回 光 波 セ ン シ ン グ 技 術 研 究 会 , 東 京 工 業 大 学 , LST28-7, 2001-12 講演 樋 口 貞 雄 , 「希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト を 用 い た 高 感 度 磁 界 セ ン サ 用 材 料 の 開 発 」, 平 成 13 年 度 電 力 中 央 研 究 所 研 究 発 表 会 -電 力 部 門 -, 電 力 中 央 研 究 所 , pp. 105-108, 2001-11 講演 T. Okada, Y. Tashiro, Y. Nakata, M. Maeda, S. Higuchi and K. Ueda , 「 Pulsed-Laser 119 Deosition of Optically Functional Thin Films for Current Sensing」, 2 0 0 1 J a p a n - K o r e a J o i nt S ym p . E l ec t r . D i sc h a r g e a n d H i g h V o l t . E n g . , 宮 崎 公 立 大 学 , 2001-11 講演 O. Kamada, T. Nakaya and S. Higuchi, 「M a g n e t i c f i e l d o p t i c a l s e n s o r u s i n g C e : Y IG s i n gl e c ry s ta l s a s a F a ra d ay e l e m e n t 」, T h e 4 t h J a p a n e s e - F i n n i s h Jo i n t S y m p o s i u m: O p t ic s in E ng i ne e r in g (O I E ' 0 1 ) , 大 阪 大 学 , P16, 2001-10 講演 樋 口 貞 雄 ,鎌 田 修 ,「Ce:YIG 単 結 晶 を 用 い た 光 応 用 磁 界 セ ン サ の 検 討 」,電 気 学 会 A 部 門 大 会 , 愛 媛 大 学 , A7-04, 2001‐ 9 講演 田 代 裕 子 , 中 田 芳 樹 , 岡 田 龍 雄 , 前 田 三 男 , 樋 口 貞 雄 , 植 田 清 隆 , 「PLD 法 に よ る Ce:YIG 薄 膜 の 作 製 と 評 価 」, 第 48 回 応 用 物 理 学 会 関 係 連 合 講 演 会 , 明 治 大 学 , 31p-ZF-5, 2001-3 講演 中 谷 努 , 岡 本 光 央 , 樋 口 貞 雄 , 鎌 田 修 , 「Ce:YIG を 用 い た 光 磁 界 セ ン サ の 直 線 性 の 改 善 」, 第 48 回 応 用 物 理 学 会 関 係 連 合 講 演 会 , 明 治 大 学 , 30p-V-18, 2001-3 講演 田 代 裕 子 ,中 田 芳 樹 ,岡 田 龍 雄 ,前 田 三 男 ,樋 口 貞 雄 ,植 田 清 隆 ,「PLD に よ る 電 流 セ ン サ 用 Ce:YIG 薄 膜 の 作 製 」,電 気 学 会 光・量 子 デ バ イ ス 技 術 研 究 会 ,九 州 大 学 ,OQD-01-15,2001-2 講演 樋 口 貞 雄 ,岡 本 光 央 ,鎌 田 修 ,「Ce:YIG 単 結 晶 の 作 製 と 光 応 用 磁 界 セ ン サ の 検 討 」,電 気 学 会 光 ・ 量 子 デ バ イ ス 技 術 研 究 会 , 電 力 中 央 研 究 所 , OQD-01-18, 2001-2 講演 S. Higuchi, K. Ueda, F. Yahiro, Y. Nakata, H. Uetsuhara, T. Okada and M. Maeda, “ Fabrications of cerium-substituted YIG thin films for magnetic field sensor by pulsed-laser deposition” , The 8 th Joint MMM-Intermag Conference, サ ン ア ン ト ニ オ ( 米 国 ) , BP-12, 2001-1 講演 O . Ka m ad a a nd S. H i gu c hi , “ M a g n e t i c F i e l d S e n s o r s U s i n g C e : Y I G S i n g l e C r y s ta l s a s a F a ra d a y El e me n t ” , Th e 8 t h J o i n t M M M - I n t e r m a g C o n f e r e n c e , サ ン ア ン ト ニ オ ( 米 国 ) , H P- 0 3, 2 00 1 - 1 講演 中 田 芳 樹 , 田 代 裕 子 , 岡 田 龍 雄 , 前 田 三 男 , 樋 口 貞 雄 , 植 田 清 隆 , 「希 ガ ス 雰 囲 気 中 PLD に よ る Ce:YIG 薄 膜 の 作 製 」,レ ー ザ ー 学 会 学 術 講 演 会 第 21 回 年 次 大 会 ,東 京 国 際 フ ォ ー ラ ム , Dk-37, 2001-1 講演 岡 本 光 央 , 鎌 田 修 , 樋 口 貞 雄 , 「Ce:YIG 単 結 晶 を 用 い た 光 応 用 磁 界 セ ン サ の 検 討 」, 第 24 回 日 本 応 用 磁 気 学 会 学 術 講 演 会 , 早 稲 田 大 学 , 12aF5, 2000-9 講演 S . Hi g uc h i a n d O. K a ma d a, “ I n f l u e n c e o f L i n e a r M a g n t i c B i r e f r i n g e n c e in C e : Y 3 F e 5 O 1 2 on L in e ar i t y o f M a g n e t i c F i e l d O p t i c a l S e n s o r s ” , 8 t h I n t e r n a t i o n a l C o n fe r e nc e on Fe r r it e (I C F - 8 t h ) , 京 都 国 際 会 議 場 , 1 8 P p I - 4 1 , 2 0 0 0 - 9 講演 岡 本 光 央 , 鎌 田 修 , 樋 口 貞 雄 , 「Ce:YIG 単 結 晶 を 用 い た 光 応 用 磁 界 セ ン サ の 検 討 」, 第 47 回 応 用 物 理 学 会 関 係 連 合 講 演 会 , 30p-P15-3, 2000-3 講演 樋 口 貞 雄 ,八 尋 文 明 ,上 津 原 大 史 ,中 田 芳 樹 ,岡 田 龍 雄 ,前 田 三 男 ,植 田 清 隆 ,「PLD 法 に よ る 電 磁 界 セ ン サ 用 薄 膜 の 作 成 と 光 学 特 性 の 評 価 」, 電 気 学 会 光 ・ 量 子 デ バ イ ス 技 術 研 究 会 , 電 力 中 央 研 究 所 , OQD-00-2, pp. 7, 2000-1 講演 岡 田 龍 雄 , 八 尋 文 明 , 上 津 原 大 史 , 中 田 芳 樹 , 前 田 三 男 , 植 田 清 隆 , 樋 口 貞 雄 ,「 レ ー ザ ー ア ブ レ ー シ ョ ン 法 に よ る 電 磁 界 セ ン サ 用 薄 膜 の 作 成 」,第 1 回 光 量 子 科 学 研 究 シ ン ポ ジ ウ ム , 九 州 大 学 ,1999-11 講演 八 尋 文 明 ,上 津 原 大 史 ,中 田 芳 樹 ,岡 田 龍 雄 ,前 田 三 男 ,植 田 清 隆 ,樋 口 貞 雄 ,「 PLD 法 に よ る 電 流 セ ン サ の た め の Ce:YIG 薄 膜 の 作 製 」, 応 用 物 理 学 会 九 州 支 部 大 会 , 1999-9 講演 八 尋 文 明 ,上 津 原 大 史 ,中 田 芳 樹 ,岡 田 龍 雄 ,前 田 三 男 ,植 田 清 隆 ,樋 口 貞 雄 ,「 PLD 法 に よ る 電 圧 ・ 電 流 セ ン サ の た め の 薄 膜 の 作 製 」,第 46 回 応 用 物 理 学 会 関 係 連 合 講 演 会 ,東 京 理 科 大 学 , 30p-C-16, 1999-3 120 講演 樋 口 貞 雄 , 古 川 保 典 , 竹 川 俊 二 ,北 村 健 二 ,「 Ce-doped YIG 単 結 晶 の 育 成 と 特 性 」,第 2 8 回 結 晶 成 長 国 内 会 議 , 北 海 道 大 学 , 23aA6, pp. 76, 1997-6 その他 (論 文 ) H. Hayashi, S. Iwasa, N. J. Vasa, T. Yoshitake, K. Ueda, S. Yokoyama and S. Higuchi, "Characteristics of Bi:YIG Magneto-Optic Thin Films Fabricated by Pulsed Laser Deposition Method for an Optical Current Transformer", Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 41, No. 1, pp. 410-411, (2002) その他 (論 文 ) H . Ha y as h i , S . I wa s a , K . U e d a , H . T a k e s h i t a a n d K . T e r a z o n o , S . H i g u c h i, " D e ve l o pm e n t of a n Op t ic a l C u r r e n t T r a n s f o r m e r b y U s i n g a B i - Y I G C r y s t a l f or E l e ct r i c P o we r Sy s te m Pr o te c t i o n a n d S t a b i l i z a t i o n C o n t r o l " , T e c h . D i g . o f th e P a c if i c Ri m Co n fe r e nc e on L a s e r s a n d E l e c t r o - O p t i c s , V o l . I , p p . 4 8 4 - 4 8 5 , ( 2 0 0 1 ) その他 (論 文 ) H. Hayashi, S. Iwasa, N. J. Vasa, T. Yoshitake, K. Ueda, S. Yokoyama, S. Higuchi, H. Takeshita and K. Terazono, "Fabrication of Bi-doped YIG optical thin film for electric current sensor by pulsed laser deposition", Proc. Int. Symp. on Laser-Aided Plasma Diagnotics, pp. 259-264, (2001) その他 (論 文 ) 林 宏 充 , 岩 佐 宗 八 , 植 田 清 隆 , 寺 園 完 一 , 竹 下 博 人 , 樋 口 貞 雄 , 「Bi-YIG 光 CT 開 発 の た め の 材 料 合 成 , 材 料 特 性 測 定 及 び 試 作 光 CT の 評 価 」, 九 州 大 学 大 学 院 総 合 理 工 学 研 究 科 報 告 , 第 2 3 巻 , 第 1 号 , p . 1- 7 ,( 2 0 0 1 ) その他 (論 文 ) O. Kamada, H. Tamura and S. Higuchi, “ Magnetic Field Sensors based on a Ring Interferometry using a YIG single crystal as a faraday element” , Ferrites : 8 th International Conference on Ferrite (ICF 8), Kyoto and Tokyo, Japan, pp. 1009-1011, (2000) その他 (論 文 ) T. Okada, F. Yahiro, H. Uetsuhara, Y. Nakata, M. Maeda, S. Higuchi and K. Ueda,"Deposition of Hily Oriented Bi 12 SiO 20 Thin Films on Y-stabilized Zirconia and SiO 2 by Pulsed-Laser Deposition", Appl. Phys. A, Vol. 69, pp. S723-S726, (1999) その他 (論 文 ) 林 宏 充 , 近 藤 剛 , 植 田 清 隆 , 栗 林 英 行 , 能 見 和 司 , 樋 口 貞 雄 , 「発 電 機 の 保 護 ・ 安 定 化 制 御 の た め の 光 計 測 シ ス テ ム の 開 発 」,九 州 大 学 大 学 院 総 合 理 工 学 研 究 科 報 告 ,第 21 巻 ,第 3 号 , p257-262,( 1999) その他 (論 文 ) 樋 口 貞 雄 ,「 光 機 能 材 料 の 開 発 ( 1 ) ー ビ ス マ ス 置 換 希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト (RE: Y,Yb,Tb,Dy) の 結 晶 育 成 と 磁 気 光 学 特 性 評 価 ー 」, 電 中 研 研 究 報 告 , T95074, 1996-6 その他 (論 文 ) K.Asai,O.Yokokura,N.Nishimori,H.Chou,J.M.Tranquada,G.Shirane,S.Higuchi,Y.Okajima and K.Kohn,"Neutron-scattering study of the spin-state transition and magnetic correlations in La 1-X Sr X CoO 3 (x=0 and 0.08)", Physical Review B, Vol. 50, No. 5, pp. 3025-3032, (1994) その他 (論 文 ) N. Ikeda, S. Higuchi and K. Kohn,"Cd substitution effect on the superconductive transition temperature in RE 1-X Cd X Ba 2 Cu 3 O Y ” , Phase Transition, Vol. 41, pp. 209-215, (1991) その他 (特 許 ) その他 (特 許 ) 樋 口 貞 雄 , 植 田 清 隆 , 「温 度 測 定 法 お よ び 装 置 」, 単 独 出 願 , 特 願 2001-285253 樋 口 貞 雄 , 「セ リ ウ ム 希 土 類 鉄 ガ ー ネ ッ ト 結 晶 の 製 造 方 法 並 び に そ の 単 結 晶 を 用 い た 磁 界 セ ン サ 」, 単 独 出 願 , 特 開 2001-030136 その他 (特 許 ) 樋 口 貞 雄 , 植 田 清 隆 , 岡 田 龍 雄 , 「結 晶 の 製 造 方 法 お よ び 製 造 装 置 」, 共 同 出 願 , 特 開 2001-261489 その他 34 件 121