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教師によるサポートが生徒の教師への信頼感や学校適応

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教師によるサポートが生徒の教師への信頼感や学校適応
掲載された内容はすべて鳴門生徒指導学会に帰属するものである。
Copyright 2010 Naruto Association of School Guidance and Counseling
教師によるサポートが生徒の教師への信頼感や学校適応に及ぼす影響
岡 直希・葛西真記子
要 約
本研究では,教師によるサポートが中学生・高校生の教師への信頼感や学校適応にどのよ
うな影響を及ぼすのかを明らかにするために,中学生 363 名,高校生 145 名に教師に対する
信頼感尺度,知覚されたサポート尺度,学校生活適応感尺度,Self-rating Depression Scale
の 4 尺度の質問紙調査を行った。その結果,教師から生徒にサポートを行うことで,生徒の
教師に対する信頼感が増すことがわかった。さらに,教師からのサポートと生徒の教師への
信頼感は,学校適応や抑うつ傾向に良い影響を及ぼしていることもわかった。中学生と高校
生では,学校適応を高める要因には違いが見られた。また,中学生では教師への安心感が抑
うつ傾向を軽減するということがわかったが,高校生では教師は抑うつ傾向の軽減には影響
を及ぼさなかった。
キーワード:教師,ソーシャル・サポート,学校適応感
Ⅰ 問題と目的
文部科学省の平成 20 年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査(2008)
によれば,小学生と中学生の不登校児童生徒の合計人数は平成 3 年から平成 13 年まで増加し,
平成 17 年まで緩やかに減少し,再び緩やかな増加と減少していることが現在の状況である。
平成 20 年度の中学校の不登校生徒の割合は 2.89 %となっており,35 人に 1 人という状況で
ある。これは,クラスに不登校生徒が 1 人いるということであり,学校への不適応を感じる
生徒が増えていることがうかがえる。しかし,不登校生徒に対して指導の結果,再登校する
又はできるようになった生徒に特に効果のあった学校の措置としては,
「家庭訪問を行い,学
業や生活面での相談に乗るなど様々な指導・援助を行う」
「登校を促すため,電話をかけたり
迎えに行くなどする」
「スクールカウンセラー等が専門的に指導にあたる」などの支援があげ
られている。スクールカウンセラー等の専門的な指導だけではなく,教師の支援(サポー
ト)が生徒の再登校・学校適応の手助けになることが考えられる。学校適応や抑うつに教師
との関係(サポートや信頼感)が関連すると考え,本研究を進めていくことにした。それに
より,不登校やいじめなど,学校諸問題への対応に寄与できると考えた。
本研究では,生徒の教師への信頼感と生徒が知覚する教師からのサポートの関係を見るこ
とで,教師からのサポートが生徒の教師への信頼感にどのような影響を与えているのかを検
討する。そして,生徒の教師への信頼感と教師からのサポートが学校生活適応感をどのよう
に高め,抑うつ傾向の軽減にどのような影響を与えているのかを検討する。また,これまで
の研究では,中学生と高校生の両方を対象としたものはほとんど見当たらないため,本研究
において中学生と高校生の各学年を比較することで,年齢における信頼感やサポートの関係,
学校適応や抑うつ傾向の変化を検討することを目的とする。本研究が生徒の不登校や学校不
適応の予防にあたる教師に少しでも支援になればと考える。
Ⅱ 対象と方法
1.対象
A 県の公立中学校 1 校の生徒 1 ∼ 3 年生計 363 名(1 年男子 66 名,女子 52 名,2 年男子 55
名,女子 61 名,3 年男子 62 名,女子 67 名)
,B 県の公立高等学校 1 校の生徒 1,2 年生計 145
名(1 年男子 33 名,女子 31 名,2 年男子 34 名,女子 47 名)
。
2.方法
フェイスシートとして,学年と性別を問うた。次に,生徒の教師に対する信頼感尺度(中
,知覚されたサポート尺度(福岡・橋本,1993)
,学校生活適応感尺度(内
井・庄司,2008)
藤・浅川・高瀬・古川・小泉,1986)
,Zung の Self-Rating Depression Scale の日本語版
(更井,1979)の順に質問項目を作成した(70 項目)
。
3.手続き(日時・配布方法・分析方法・回収率)
調査時期は,中学生が 2009 年 9 月∼ 10 月,高校生は 10 月∼ 11 月の間であった。期間中
の空いた時間にクラスごとにアンケート調査を実施した。各クラス担任に配布を依頼,生徒
に一斉に回答してもらい,直後に各クラス担任に回収し,封筒に入れてもらうように依頼し
た。回収した質問紙はプライバシー保護のため,筆者が中学校・高等学校へ伺い,回収した。
得られたデータは統計的に集計し,分析を行った。統計処理にあたっては,SPSS16.0J for
Windows を使用した。
Ⅲ 結果
1.項目分析と因子分析
項目の偏りを見るために,全 70 項目について平均点(M)
,標準偏差(SD)を算出した。M
± SD が尺度件数を超える項目は,中学生の学校生活適応感尺度の項目 1 つに天井効果,高
校生の学校生活適応感尺度の項目 1 つにフロアー効果が見られた。しかし,中・高での比較
を行うため削除はしなかった。全 70 項目ついて尺度別に因子分析(主因子法,バリマックス
回転:
「知覚されたサポート」
「学校生活適応感尺度」
,プロマックス回転:
「STT 尺度」
)を行
った。
STT 尺度において,中学生は 2 因子(正当性,安心感)
,高校生は 3 因子(安心感,役割遂
行評価,安定性)抽出した。なお,比較のため,中学生と高校生を合わせたところ,2 因子
(正当性,安心感)を抽出した。サポートにおいて,中学生・高校生ともに 1 因子を抽出し
た。学校生活適応感尺度において,中学生・高校生ともに 6 因子(学習意欲,友人関係,教
師関係,規則態度,進路意識,特別活動)を抽出した。SDS は 1 因子構造のため,因子分析
は省略した。
2.校種による比較(t検定)
STT,知覚されたサポート,学校生活適応感において有意な差が見られた。高校生と比べ
て中学生の方が STT,知覚されたサポート,学校生活適応感は高いことが示された。
STT の下位尺度において,
「正当性」で有意な差がみられ,高校生と比べて中学生の方が得
点は高いことが示された。
「安心感」では有意な差がみられなかった(表1)
。知覚されたサ
ポートにおいて有意な差がみられ,高校生と比べて中学生の方がサポートを多く受けている
と知覚していることが示された(表1)
。学校生活適応感尺度の下位尺度において,
「学習意
欲」
,
「友人関係」
,
「教師関係」
,
「規則態度」
,
「特別活動」において高校生と比べて中学生の方
が得点は高いことが示された。
「進路意識」では有意な差がみられなかった(表1)
。
STT の「安心感」
,学校生活適応感の「進路意識」において有意な差は見られなかった。
表1 因子別の中学校と高校の平均値とt検定の結果
中学生
高校
平均
標準偏差
N
平均
標準偏差
N
生徒の教師に対す る信頼感
30.15
10.38
347
25.62
11.07
145
4.32
***
不信役割遂行評価
20.96
7.15
352
17.22
7.39
145
5.24
***
安心感
9.24
4.27
358
8.40
4.66
145
1.94
知覚されたサポー ト
24.25
8.92
354
22.40
9.46
138
2.27
*
サポート
24.45
8.92
354
22.39
9.46
138
2.27
*
学校生活適応感
67.50
19.22
335
58.47
21.98
139
4.46
***
学習意欲
12.13
5.55
354
9.28
6.03
145
5.08
***
友人関係
15.47
5.15
358
13.90
5.64
145
3.02
教師関係
8.92
4.93
359
7.95
5.02
144
1.99
規則態度
11.43
4.67
359
9.41
4.84
141
進路意識
8.92
4.30
361
9.08
4.42
145
特別活動
10.45
4.35
359
8.88
4.58
144
*
**
t値
**
4.30
*
***
-.39
3.62
***
***
p<.05 p<.01 p<.001
3.学年と性差による比較(二要因分散分析)
(1) STT
「正当性」において,中学生・高校生を合わせて分析を行った結果(表2)
,学年の有意な
主効果が見られた。平均値を見ると,中学 2 年生,高校 1 年,2 年生と比べて中学 1 年生の
方が,
「正当性」は高いことが示された。高校 1 年,2 年生と比べて中学 3 年生の方が「正当
性」は高いことが示された。
「安心感」において,学年×性別の有意な交互作用効果が見られ
た。平均値を見ると,中学 3 年生では,男子に比べて女子のほうが安心感は高いことが示さ
れた。
(2)知覚されたサポート
学年×性別の有意な交互作用効果が見られた。中学 1 年生以外の学年において,男子と比
べて女子の方が知覚されたサポートは高いことが示された。また,性差の有意な主効果が見
られ,男子と比べて女子の方が知覚されたサポートは高いことが示された。
(3) 学校生活適応感
「学習意欲」において,学年の有意な主効果が見られ,中学 2 年,3 年,高校 1 年,2 年生
と比べて中学 1 年生の方が,高校 1 年,2 年生と比べて中学 2 年生の方が,高校 1 年,2 年
生と比べて中学 3 年生の方が学習意欲は高いことが示された。中学 1 年生が学習意欲は最も
高く,中学 2 年,3 年生も高校 1 年,2 年生よりも高いということが明らかとなった。
「友人
関係」において,学年の有意な主効果が見られ,高校 2 年生と比べて中学 1 年,2 年,3 年,
高校 1 年生の方が友人関係は高いことが示された。高校 2 年生となると,友人関係には変化
が見られる可能性が示唆された。
「教師関係」において,学年×性別の有意な交互作用効果が
見られた。平均値を見ると,中学 2 年,3 年,高校 1 年生では男子と比べて女子の方が教師
関係は高いことが示された。男子と比べて女子の方が教師との関係は上手く築けているとい
うことが示唆された。また,性差の有意な主効果が見られ,男子と比べて女子の方が教師関
係は高いことが示された。
「規則態度」において,学年の有意な主効果が見られ,中学 2 年,3
「進路意
年,高校 1 年,2 年生と比べて中学 1 年生の方が規則態度は高いことが示された。
識」において,学年の有意な主効果が見られ,中学 1 年,2 年生と比べて中学 3 年生の方が
進路意識は高いことが示された。受験を控えた中学 3 年生は進路意識が高いということが示
唆された。
「特別活動」において,学年の有意な主効果が見られ,高校 2 年生と比べて中学 1
年,2 年,3 年,高校 1 年生の方が,中学 2 年生と比べて中学 1 年生の方が特別活動は高いこ
とが示された。高校 2 年生になると,特別活動への参加は少なくなるということが示唆され
た。
表2 因子別中学生・高校生の学年別・性別平均点と分散分析結果
中学生
1年生
高校生
2年生
3年生
1年生
2年生
学年差
性差
交互作用
F値
F値
F値
.17
.82
.96
3.52 **
36.30 ***
3.17 *
男子
女子
男子
女子
男子
女子
男子
女子
男子
女子
生徒の教師に対する信頼感
正当性
23.54
SD
.90
安心感
10.33
21.73
1.01
9.27
19.06
.99
8.44
19.71
.93
8.87
20.48
.93
7.74
21.24
.88
10.52
17.03
1.25
7.67
17.26
1.29
8.16
17.77
1.23
9.18
.53
.60
.60
.56
.55
.53
.75
.78
.74
16.94
9.13 ***
1.05
8.51
2.24
.63
サポート
24.24
26.56
19.91
26.91
19.87
28.80
21.18
23.04
20.09
24.48
SD
学校生活適応感
1.06
1.22
1.17
1.13
1.11
1.06
1.50
1.66
1.52
1.27
学習意欲
SD
友人関係
SD
教師関係
SD
規則態度
SD
13.79
.71
15.99
.64
8.77
.61
12.02
.58
13.49
.79
15.78
.73
8.25
.68
13.53
.66
12.40
.77
15.35
.70
8.91
.66
11.02
.63
10.90
.73
14.90
.67
10.28
.63
10.70
.60
10.53
.71
14.38
.67
7.08
.62
11.02
.59
11.90
.69
16.32
.64
10.21
.60
10.66
.57
8.46
.98
16.03
.91
6.39
.85
9.94
.84
10.55
1.01
15.52
.94
8.65
.88
9.52
.84
10.32
.96
11.85
.90
8.58
.85
10.09
.81
8.28
.02
9.15 ***
.82
12.81
.51
6.48 ***
.76
8.15
2.04
6.81 **
.71
8.50
.29
7.80 ***
.69
進路意識
SD
7.09
.53
9.73
.59
8.22
.58
8.57
.55
9.63
.54
10.27
.52
9.00
.74
9.35
.77
9.21
.73
8.87
.62
2.75 *
3.43
1.82
特別活動
SD
抑うつ傾向
抑うつ傾向
SD
11.47
.53
11.49
.61
9.80
.59
10.02
.56
9.07
.55
10.85
.53
10.15
.75
10.48
.78
8.00
.74
7.52
.64
8.69 ***
.88
1.08
14.70
.66
14.77
.72
14.57
.71
16.98
.67
17.07
.66
16.38
.64
15.24
.91
16.70
.95
15.00
.90
18.75
.76
2.88 *
8.31 **
SD
知覚されたサポート
2.32
*
**
p<.05 p<.01
2.17
1.14
2.79 *
1.39
2.94 *
***
p<.001
(4) 抑うつ傾向
中学生において,学年の有意な主効果が見られた。平均値を見ると,1 年生と比べて 3 年生
の方が抑うつ傾向は高いことが示された(表3)
。
高校生において,性別で有意な効果が見られた。平均値を見ると,男子と比べて女子の方
に
抑うつ傾向の高いことが示された(表4)
。
表3 中学生の抑うつの学年別・性別平均点と分散分析結果
1年生
2年生
3年生
男子
女子
男子
女子
男子
女子
自己評価抑うつ
SD
14.70
14.77
14.57
16.98
17.07
16.38
.68
.74
.73
.69
.68
.66
学年差
F値
性差
F値
交互作用
F値
4.13 *
1.10
2.67
*
**
p<.05 p<.01
***
p<.001
表4 高校生の抑うつの学年別・性別平均点と分散分析結果
1年生
2年生
学年差 性差 交互作用
男子
女子
男子
女子
F値
F値
F値
自己評価抑うつ 15.24 16.70 15.00 18.75
1.21 10.11 **
1.95
SD
.84
.88
.83
.71
*
p<.05** p<.01*** p<.001
また,中学生・高校生を合わせて分析を行った場合,学年×性別の有意な交互作用効果が
見られた。平均値を見ると,中学 2 年,高校 1 年,2 年生において,男子と比べて女子の方
が抑うつ傾向の高いことが示された。また,学年と性差の有意な主効果が見られ,中学 1 年
生と比べて中学 3 年,高校 2 年生の方が抑うつ傾向の高いことが示された(表5)
。
表5 中学生・高校生の各学年の抑うつ傾向の学年別・性別平均点と分散分析結果
中学生
高校生
2年生
3年生
1年生
2年生
1年生
学年差 性差 交互作用
男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子
F値
F値
F値
抑うつ傾向
14.70 14.77 14.57 16.98 17.07 16.38 15.24 16.70 15.00 18.75
*
**
8.31
2.94 *
2.88
SD
.66
.72
.71
.67
.66
.64
.91
.95
.90
.76
*
p<.05 ** p<.01 *** p<.001
4.尺度間の関連
(1) STT と知覚されたサポートの関係(相関分析)
中学生の STT の下位尺度の「正当性」
「安心感」と知覚されたサポートの間には,有意な
正の相関関係が見られ,
「正当性」
「安心感」の得点が高くなれば,知覚されたサポートも高
くなる。高校生の STT の下位尺度の「正当性」
「安心感」と知覚されたサポートの間には,
有意な正の相関関係が見られ,
「正当
性」
「安心感」の得点が高くなれば,
知覚されたサポートも高くなる(表
6)
。
表6 中学生・高校生のSTTと知覚されたサポートの相関関係
知覚されたサポート
中学生
高校生
正当性
.40 **
.44 **
**
安心感
.50
.56 **
**
p<.01
(2)STT と知覚されたサポートの学校生活適応感への影響(重回帰分析)
中学生における STT と知覚されたサポ
ートが学校生活適応感にどのような影響
を及ぼすかを見るために,分析を行った
結果(表 7)
,有意な結果となった。STT
とサポートは学校生活適応の 24 %説明
表7 中学生の学校生活適応感に関する重回帰分析
標準偏回帰係数(β)
***
生徒の教師に対する信頼感
.23
知覚されたサポート
.34 ***
2
決定係数(R )
F値
しており,STT の有意な正の効果と,知
***
.24
***
47.79
***
p<.001
覚されたサポートの有意な正の効果が見られた。STT が高いほど,知覚されたサポートが多
いほど学校生活適応感は高くなることが示された。
STT と知覚されたサポートの各因子が学校生活適応感の各因子にどのような影響を及ぼす
かを見るために,分析を行った結果(表 8)
,有意な結果となった。
STT の「安心感」と「知覚されたサポート」は学校生活適応感の「学習意欲」の 9 %説明
していることがわかった。それぞれは,
「安心感」の有意な正の効果と,
「知覚されたサポー
ト」の有意な正の効果が見られた。
「安心感」が高いほど,
「知覚されたサポート」が多いほ
ど「学習意欲」は高くなることが示された。
「知覚されたサポート」は「友人関係」の 7 %説
明していることがわかった。
「知覚されたサポート」の有意な正の効果が見られた。
「知覚さ
れたサポート」が多いほど,
「友人関係」の得点は高くなることが示された。
「安心感」と
「知覚されたサポート」は「教師関係」の 29 %説明していることがわかった。それぞれは,
「安心感」の有意な正の効果と,
「知覚されたサポート」の有意な正の効果が見られた。
「安
心感」が高いほど,
「知覚されたサポート」が多いほど「教師関係」の得点は高くなることが
示された。
「正当性」は「規則態度」の 14 %説明していることがわかった。
「正当性」の有意
な正の効果が見られた。
「正当性」が高いほど,
「規則態度」の得点は高くなることが示され
た。
「知覚されたサポート」は「進路意識」の 3 %説明していることがわかった。
「知覚され
たサポート」の有意な正の効果が見られた。
「知覚されたサポート」が多いほど,
「進路意
識」は高くなることが示された。
「知覚されたサポート」は「特別活動」の 10 %説明してい
ることがわかった。
「知覚されたサポート」の有意な正の効果が見られた。
「知覚されたサポ
ート」が多いほど,
「特別活動」の得点は高くなることが示された。
表8 中学生の学校生活適応感に関する重回帰分析
生徒の教師に対する信頼感
不信役割遂行評価
安心感
知覚されたサポート
サポート
2
決定係数(R )
F値
学習意欲
友人関係
-.03
-.10
.13
.19
**
**
***
.23
.07
.18
.09
11.06
***
8.53 ***
標準偏回帰係数(β)
教師関係 規則態度
進路意識
特別活動
.32
.05
.01
.06
-.01
.14
.30
.29
.04
.14
.14
.03
44.42 ***
17.53 ***
-.07
.36
***
***
***
*
*
*
.24
.10
3.65 **
12.48 ***
**
p<.05 p<.01 *** p<.001
高校生における STT や知覚されたサポートが学校生活適応感にどのような影響を及ぼすか
を見るために,分析を行った結果(表 9)
,有意な結果となった。サポートは学校生活適応の
19 %説明しており,知覚されたサポートの有意な正の効果がみられた。知覚されたサポート
が多いほど,学校生活適応感は高くなる
ことが示された。
また,STT と知覚されたサポートの各
因子が学校生活適応感の各因子にどのよ
うな影響を及ぼすかを見るために,分析
を行った結果(表 10)
,有意な結果とな
表9 高校生の生活適応感に関する重回帰分析
標準偏回帰係数(β)
生徒の教師に対する信頼感
0.18
***
知覚されたサポート
.31
2
決定係数(R )
F値
***
.19
***
14.92
***
p<.001
った。
STT の「安心感」と「知覚されたサポート」は学校生活適応感の「学習意欲」の 20 %説明
していることがわかった。それぞれは,
「安心感」の有意な正の効果と,
「知覚されたサポー
ト」の有意な正の効果が見られた。
「安心感」が高いほど,
「知覚されたサポート」が多いほ
ど「学習意欲」は高くなることが示された。
「正当性」は「友人関係」の 8 %説明しているこ
とがわかった。
「正当性」の有意な負の効果が見られた。
「正当性」が低いほど,
「友人関係」
の得点は高くなることが示された。
「安心感」と「知覚されたサポート」は「教師関係」の
50 %説明していることがわかった。それぞれは,
「安心感」の有意な正の効果と,
「知覚され
たサポート」の有意な正の効果が見られた。
「安心感」が高いほど,
「知覚されたサポート」
が多いほど「教師関係」の得点は高くなることが示された。
「安心感」は「規則態度」の 7 %
説明していることがわかった。
「安心感」の有意な正の効果が見られた。
「安心感」が高いほ
ど,
「規則態度」の得点は高くなることが示された。
「正当性」と「安心感」は「進路意識」
の 8 %説明していることがわかった。それぞれは,
「正当性」の有意な負の効果と,
「安心
感」の有意な正の効果が見られた。
「正当性」が高いほど,
「安心感」が高いほど「進路意
識」は高くなることが示された。
「正当性」
,
「安心感」
,
「知覚されたサポート」は「特別活
動」の 10 %説明していることがわかった。しかし,それぞれの因子においての有意な効果が
見られなかった。
表10 高校生の学校生活適応感に関する重回帰分析
学習意欲
友人関係
-.13
-.29
.22
生徒の教師に対する信頼感
不信役割遂行評価
安心感
知覚されたサポート
サポート
2
決定係数(R )
F値
.37
***
***
.22
.20
11.03
***
標準偏回帰係数(β)
教師関係 規則態度
*
-.10
.56
進路意識
**
.01
***
.30
***
**
.19
.08
.30
.50
-.08
.07
4.00 **
43.23 ***
3.23 *
特別活動
*
-.29
.29 **
.00
.19
.21
.08
.18
.11
3.90 **
5.27 **
**
***
p<.05 p<.01 p<.001
(3)STT と知覚されたサポートの抑うつ傾向への影響
中学生における STT と知覚されたサポートが抑うつ傾向にどのような影響を及ぼすかを見
るために,分析を行った結果(表 11)
,有意な結果となった。STT とサポートは抑うつ傾向
の 7 %説明していることがわかった。そ
れぞれ,STT の有意な負の効果と,知覚
されたサポートの有意な負の効果が見ら
れた。STT が高いほど,知覚されたサポ
ートが多いほど抑うつ傾向は低くなるこ
表11 中学生の抑うつ傾向に関する重回帰分析
標準偏回帰係数(β)
**
生徒の教師に対する信頼感
-.17
知覚されたサポート
-.13 *
2
決定係数(R )
F値
とが示された。
***
.07
***
12.53
*
**
***
p<.05 p<.01 p<.001
STT と知覚されたサポートの各因子が
表12 中学生の抑うつ傾向に関する重回帰分析
標準偏回帰係数(β)
抑うつ傾向にどのような影響を及ぼすか
生徒の教師に対する信頼感
を見るために,分析を行った結果(表 12)
,
不信役割遂行評価
0.02
***
有意な結果となった。
「安心感」は抑うつ 安心感
-.25
知覚されたサポート
傾向の 9 %説明していることがわかっ
サポート
-0.1
た。
「安心感」の有意な負の効果が見られ
2
0.09
決定係数(R )
***
た。
「安心感」が高いほど,抑うつ傾向は F値
10.72
低くなることが示された。
高校生においては有意な効果は見られなかった。
Ⅳ 考察
1.校種による比較について
***
p<.001
生徒の教師に対する信頼感,知覚されたサポート,学校生活適応感において,高校生と比
べて中学生の方が得点は高かった。高校生と比べて中学生の方が,教師との関係性は良好で
あり,学校生活に適応できていると考えられる。
生徒の教師に対する信頼感では,高校生と比べて中学生の方が信頼していること,安心感に
は差がないことが明らかとなった。正当性に関しては,質問紙で態度や行動についての項目
が多く,高校教師の態度や行動は,生徒の思う正当性とは差異があり,得点が低くなったの
ではないか。そう考えると,教師は自身の行動や態度を意識する必要があると考えられる。
生徒に知覚されたサポートでは高校生と比べて中学生の方が多く受けているということが
わかった。尾見(1999)は,サポートは年を重ねるごとに家族からのサポート量は減少する
が,友人からのサポート量は多いままであり,学校の先生などからはサポート量は非常に少
ないと報告している。教師からのサポートは少ないが,家族からのサポートと同じように,
年を重ねるごとに減少しているというふうに考えられる。
学校生活への適応については,学習意欲,友人関係,教師関係,規則態度,特別活動にお
いて,高校生と比べて中学生の方が得点は高いことがわかった。高校生と比べて中学生の方
が学校生活に適応していることがうかがえる。友人関係については,
「楽しい友人関係を持っ
ている」
,
「悩み等を話せる友人がいる」では,中学生・高校生ともに同じような得点であっ
た。しかし,
「人あたりがよく社交的である(人付き合いがうまい)
」
,
「多くの友人を持って
いる」では,高校生と比べて中学生の方が得点は高かった。中学生は広い友人関係を持ち,
その関係は良好である。高校生は中学生と比べて友人関係は広くはないが,関係は良好なま
まであった。中学生と比べて高校生は少人数で,深い付き合いをしているということが考え
られる。規則態度に関しては,すべての項目において中学生の方が高い得点であった。中学
生は,校則が中学校と比べてそれほど厳しくない小学校から入学して 1~3 年と間もない時期
である。初期の段階では規則を守らなければならない,という意識が強いが,高校生になる
と,中学生と比べて規則を守らなければならない,ということに対して反発心・反抗心が芽
生えてくるのではないだろうか。特別活動に関しては,すべての項目において中学生の方が
高い得点であった。クラブや学級への帰属意識は高校生と比べて中学生の方が高いことが考
えられる。これは友人関係とも関連していると考えられる。中学生の友人関係は広いという
ことは,学級への帰属意識に影響を及ぼしているのではないかと考えられる。そうなると,
高校生は中学生ほど友人関係が広くないことから,学級への帰属意識は薄いということが考
えられる。このことから,高校生は学級よりも少数の友人に帰属しているのではないかと考
えられる。進路意識には差がみられなかったが,これは大学受験を間近に控えた高校 3 年生
が対象外となっていたからかもしれない。また,学習意欲や勉強に関係している教師関係に
おいても,違った結果となった可能性は否めない。
2.学年と性差による比較について
(1)生徒の教師に対する信頼感
中学生において,2 年生と比べて 1 年生の方が生徒の教師に対する信頼感の得点が高く,1
年生が最も生徒の教師に対する信頼感の高い時期であることがわかった。これは中井・庄司
(2008)と同じ結果となっている。中学校に入学して間もない 1 年生では,中学校生活にお
いて頼りになる存在として教師があげられるのではないかと考えられる。しかし,学年が上
がるにつれ,自我の発達や対人関係が広がり,友人との関係が中心となることで,教師への
信頼感の低下につながるのではないだろうか。また,学年別の性差について,1 年生では女子
と比べて男子の方が生徒の教師に対する信頼感は高く,3 年生では男子と比べて女子の方が生
徒の教師に対する信頼感は高いことがわかった。三浦・坂野(1996)は,中学生の女子は男
子に比べて,学業活動や友人関係のトラブルに対して,積極的に対処したり,出来事を肯定
的にとらえる,あるいはサポートを求めるなどのコーピングを多く行う可能性を明らかとし
ている。また,中村・浦(2000)はサポートを多く受けると,信頼感は上昇するとしている。
後述するが,知覚されたサポート量は男子と比べて女子の方が多く,中学 2 年,3 年生では,
男子と比べて女子の方がサポートを多く受けていることが明らかとなっている。女子は学校
におけるトラブルに対処するために,教師からサポートを受け,信頼感が高くなったのでは
ないかと考えられる。
高校生において学年・性別に有意な効果は見られなかった。高校生の学校における対人関
係は,友人が中心となり,教師との関係は希薄になると考えられる。また,正当性に関して,
中学生・高校生を合わせて分析を行った結果,中学 2 年生,高校 1 年,2 年生と比べて中学 1
年生,高校 1 年,2 年生と比べて中学 3 年生の方が正当性は高いことが示された。中学 1 年
生では,教師は役割を果たしていると感じているが,高校 1 年,2 年生では,教師は役割をそ
れほど果たしていないと感じていると考えられる。中学 1 年生と高校生では,学校での生活
時間・経験は高校生の方が長い。その中で,教師が役割を果たしている場面,果たしていな
い場面を見た。役割を果たしている場面より,果たしていない場面が印象に残り,不満を募
らせることで,教師は役割を果たしていないと感じているのではと考えられる。また,学年
が上がるにつれ,自我の発達や対人関係が広がり,友人との関係が中心となることで,教師
への信頼感の低下につながるのではないだろうか。中学 3 年生では,高校 1 年,2 年生より
も教師は役割を果たしていると感じていると示唆される。中学 3 年生では,受験も控え,学
習に対する意識が強くなり,勉強を教えてくれる教師は役割を果たしていると考えている可
能性もある。
安心感に関しては,中学 3 年生では,男子に比べて女子のほうが安心感は高いことが示さ
れた。中学 3 年生では,受験など将来のことに悩みを持つことがある。その時に,上手くサ
ポートを得ることができる女子は教師に安心感を抱いていると考えられる。
(2)知覚されたサポート
中学生において,男子と比べて女子の方がサポートを多く受けていると認識しているとい
1991;福岡・橋本,
1997;
うことが明らかとなり,
これは多くの研究と同じ結果となっていた
(嶋,
尾見,1999)
。高校生において学年・性別差は見られなかった。高校生では,教師からのサポ
ートにはあまり注目していないということが示唆された。また,中学生・高校生を合わせて
分析を行った結果,男子と比べて女子の方が知覚されたサポートは高いことが示された。中
学 1 年生以外の学年において,男子と比べて女子の方が知覚されたサポートは高いことが示
された。中学 1 年生では,男子もサポートを受けていると感じていることが明らかとなった。
先に述べたが,三浦・坂野(1996)が報告しているように,本研究の結果からも男子と比べ
て女子の方がサポートを多く受け,サポートを有効に利用している可能性が明らかとなった。
(3)学校生活適応
学習意欲に関して,中学 3 年生は高校受験を控え,学習意欲は中学生の中では最も高いと
思われたが,結果は違っていた。受験は中学 3 年生にとって学習意欲を高めるものではない
ということが考えられる。受験のために勉強をしたいという意欲ではなく,しなければなら
ないという義務のようなものとなっているのではないかと考えられる。また,高校生と比べ
て中学生の方が学習意欲は高いという結果となったが,高校生は 3 年生を対象としていない
ためではないだろうか。友人関係に関して,高校 2 年生となると,友人関係の得点は低くな
り,友人関係には変化が見られる可能性が示唆された。高校 2 年生は中学生や高校 1 年生と
比べて自我が発達し,自分自身を見つめ直すことで,性格的な明るさやユーモアの再評価が
行われると思われる。その中で,明るさやユーモアについて今まで考えていたよりも低く評
価しているのではないか。また,高校生は中学生ほど多くの友人を持っているとは感じてい
ないが,楽しい友人関係は持っているとしている。高校 2 年生になると,友人の数は減るが
友人関係には満足していると考えられる。教師関係に関して,男子と比べて女子の方が教師
関係は良好であることが示された。また,中学 2 年,3 年,高校 1 年生では男子と比べて女
子の方が教師関係は良好であることが示された。男子と比べて女子の方が教師との関係は上
手く築けているということが示唆された。女子の方が生徒の教師に対する信頼感は高く,サ
ポートも多く受けることから,教師は学校生活において重要な支援者であり,教師との関係
も良好なものになると考えられる。規則態度に関して,中学 1 年生は小学校の 6 年間という
長い時間を同じ建物で過ごしてきたが,中学校にあがると新しい環境にさらされ,慣れるま
で規則を守るという態度・意識が他学年よりも高いのではないかと考えられる。高校生は,
小学校から中学校という変化を 1 度体験していることで,高校 1 年生では,規則を守るとい
う意識が薄くなったと考えられる。進路意識に関して,中受験を控えた中学 3 年生は進路意
識が高いということが示唆された。また,中学 3 年生は高校 1 年,2 年生と差はないことか
ら,高校 1 年,2 年生は将来への意識が高くなっているのではと考えられる。特別活動に関し
て,高校 2 年生になると,特別活動への参加は少なくなるということが示唆された。中学 1
年生では,特別活動に参加し,クラスへの帰属意識を高めて,学校で安心できる場をクラス
としていると考えられる。
(4) 抑うつ傾向
中学生において,三浦・坂野(1996)の,中学 1 年生と比べて中学 3 年生の方が抑うつ・
不安は高いという報告と,本研究の結果と同じであった。抑うつの主な原因としては,受験
や進路が考えられ,中学 3 年生にとっては受験がとても大きな問題となっていると考えられ
る。
高校生において,男子と比べて女子の方が抑うつ傾向は高いことがわかった。
また,抑うつ傾向において,中学生・高校生を合わせて分析を行った結果より,中学 3 年
生は受験のストレスや不安を感じ,抑うつ得点が高くなるのではないかと考えられる。高校 2
年生では,大学受験または,学校生活適応感の「友人関係」の得点が低いということから,
友人関係の変化における影響とも考えられる。また,中学 2 年,高校 1 年,2 年生において,
男子と比べて女子の方が抑うつ傾向は高いことが示された。抑うつやストレスは男子と比べ
て女子の方が多く感じており,性差において多くの研究結果と同じであった(岡安ら,1993,
嶋,1992)
。
3.尺度間の関連について
(1) 生徒の教師に対する信頼感と知覚されたサポートの関係について
中学生・高校生ともに生徒の教師に対する信頼感と知覚されたサポートに,正の関係が見
られた。また,生徒の教師に対する信頼感の正当性と安心感と知覚されたサポートに,正の
関係が見られた。中村・浦(2000)のサポートを多く受けると,信頼感は上昇するという結
果と同じである。サポートを受けるという,自分に良い影響をもたらす体験が増えることに
より,相手への信頼感を高めるということが考えられる。
(2) 生徒の教師に対する信頼感と知覚されたサポートの学校生活適応感への影響
中学生において分析を行った結果,生徒の教師に対する信頼感が高いほど,知覚されたサ
ポートが多いほど学校生活適応感は高くなることが示された。
また,学習意欲は,安心感が高いほど,生徒によって知覚されたサポートが多いほど高く
なることが示された。中井・庄司(2008)は,中学 1 年,2 年,3 年生の「学習意欲」にお
いて,
「安心感」が有意であると報告しており,本研究の結果と同じであった。学校での勉強
は教師から教えられるものであり,教師への安心感が高いと,勉強に集中できるのではない
だろうか。また,生徒によって知覚されたサポートも学習意欲に影響することも明らかとな
った。これは,学習に対するサポートも教師から行われていると考えられる。友人関係に関
しても知覚されたサポートが多いほど,高くなることが示された。友人関係について,教師
に相談し,支援を受けることで,友人関係の悩みが解決されることで友人関係に良い影響を
与えているものと考えられる。また,知覚されたサポートが多いと教師関係はよくなり,教
師との関係が良好なものであるということが示された。規則態度については正当性が高いほ
ど,高くなることが示された。教師が役割を果たしていると生徒が感じることで,生徒は教
師をモデリングし,生徒が守らなければならない校則を守るという役割を果たそうとしてい
ると考えられる。進路意識は知覚されたサポートが多いほど,高くなることが示された。進
路に関する情報などは教師から得るものが多く,それらは教師からのサポートとして生徒に
認識されていると考えられる。また,教師からのサポートは学習意欲を高めており,学習と
関係している進路意識にも影響を及ぼしていると考えられる。しかし,安心感と同様に学習
意欲に影響を及ぼしているが,進路意識には影響を及ぼしていない。教師への信頼感に関わ
らず,進路にはサポートが重要であることが明らかとなった。特別活動に関しても知覚され
たサポートが多いほど,高くなることが示された。特別活動には,クラブ活動や学園祭があ
り,教師からの指導(サポート)をもとに練習をすることが多いことから,サポートが特別
活動に影響を与えていると考えられる。
高校生において,知覚されたサポートが多いほど,学校生活適応感は高くなることが示さ
れた。高校生では,生徒の教師に対する信頼感よりもサポートが直接,学校生活適応に影響
を与えていることが明らかとなった。
学習意欲は安心感が高いほど,生徒からの知覚されたサポートが多いほど高くなることが
示された。教師との関係における安心感,そして,教師から受けるサポートには勉強を教え
るということが含まれ,学習意欲は高くなると思われる。友人関係では正当性が低いほど,
高くなることが示された。教師との関係性が薄くなると友人との関係が強くなるということ
を示唆している。教師関係では安心感が高いほど,知覚されたサポートが多いほど高くなる
ことが示された。生徒が教師から受けるサポートと,生徒が抱く安心感が教師関係を良好に
するものであると示唆された。規則態度の得点は安心感が高いほど,高くなることが示され
た。教師に安心感を感じることで,校則などの規則に対する生徒の考え方・態度が肯定的に
なるのではないかと考えられる。進路意識は正当性が低いほど,安心感が高いほど,高くな
ることが示された。教師への安心感を感じることで,進路に対しても安心することができ,
意識が高まるのではないかと考えられる。教師からの働きかけというよりも,生徒の安心感
という心理的な部分が進路意識には重要であることが示唆された。特別活動を正当性,安心
感,知覚されたサポートが 10 %説明していることがわかったが,それぞれの因子においての
有意な効果が見られなかった。特別活動に関しては,正当性,安心感,知覚されたサポート
の 3 つが合わさって影響していると考えられる。
中学生では教師からの働きかけである,教師からのサポートが学校生活適応感に有効であ
り,高校生では生徒が教師に感じる安心感が学校生活適応感に有効であることが示唆された。
中学生はサポートされるという体験が学校生活に影響し,高校生は安心という心理状態が学
校生活に影響していることが考えられる。
(3) 生徒の教師に対する信頼感と知覚されたサポートの抑うつ傾向への影響
中学生において分析を行った結果,生徒の教師に対する信頼感が高いほど,知覚されたサ
ポートが多いほど抑うつ傾向は低くなることが示された。中学生の抑うつ傾向には,生徒の
教師に対する信頼感と知覚されたサポートが良い影響を与えていると考えられる。
各因子の影響を見るために,分析を行った結果,安心感が高いほど,抑うつ傾向は低くな
ることが示された。また,各因子では,知覚されたサポートは影響を及ぼしていないことが
明らかとなった。教師に抱く安心感が抑うつ傾向を下げる 1 つの要因であることが明らかと
なり,サポートを受けるという教師から生徒への働きかけと比べて,教師から生徒が感じて
いる安心感という感情が抑うつ傾向を軽減すると考えられる。
高校生において分析を行った結果,有意な効果は見られなかった。高校生では,抑うつ傾
向には教師の影響は見られないことが明らかとなった。高校生では,教師よりも友人との関
係が強いと思われる。抑うつには友人との関係が影響しているのではないかと考えられる。
4.今後の課題
本研究では,中学生と高校生を対象としたが,対象者の人数に大きな差があった。中学生
と高校生の差のより正確な結果を得るには,対象者の人数をほぼ同じにすることが必要であ
ったと思われる。また,中学生から高校生にかけて縦断的に研究することで,より明確な変
化について検討することができると思われる。質問紙では,ソーシャル・サポートの項目に
ついて考える必要がある。使用した知覚されたサポート尺度(福岡・橋本,1993)の項目を
見ると,表現を変えなければならない項目が多く,中学生や高校生のサポートを測るには不
十分であったと思われる。どのようなサポートを受けるのか,生徒から聞き取り,新たにサ
ポート尺度を作成することで,より明確にサポートについて検討を行うことができると思わ
れる。
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