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「検索サイトの生き残り」は可能か(2000年) - J-marketing.net produced

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「検索サイトの生き残り」は可能か(2000年) - J-marketing.net produced
戦略ケース
ヤフー株式会社
「検索サイトの生き残り」は可能か(2000年)
2000 年の年明け早々、ビッグニュースが飛び込んできた。インターネット検索サービス
のヤフー・ジャパン(額面5万円)が、国内の上場・店頭株として初めて、1億円の大台
に乗せたというのだ(1月 19 日)。その後、2月末を境に下がったとはいえ、なお現在 4,800
万円という水準にある(4月4日)
。
なぜ、こんなにヤフーがもてはやされたのか。ヤフーの歴史を追いながらその強さを明
らかにし、検索サイトヤフーの未来を予測する。
1.ヤフーの沿革
「ヤフー」は、1994 年アメリカでインターネットの検索サイトとして誕生した。当時、ス
タンフォード大学電子エンジニアリング学部の博士課程の学生だったジェリー・ヤン氏とデ
ビッド・ファイロ氏の2人によって開発された。ヤフーの存在は瞬く間に口コミで広まり、
サイトへのアクセスが急増。噂を聞きつけた1人の投資家が素早く投資を決め、学生のお遊
びが本職になった。その後、ソフトバンクが投資し、本格的に始動していくことになる。イ
ンターネットの「ポータル(玄関)
・ヤフー」の始まりである。
日本でサービスを開始したのが、1996 年4月1日、
「ヤフー・ジャパン」の誕生である。97
年1月に株式を公開、初値は 200 万円。その株が、2年余りで、50 倍となったその背景には
何があったのか。
日本の環境変化もある。ここ2、3年でインターネットの関心、利用、普及率は爆発的に
伸びた。しかしそれだけでは語れないヤフーの強さを、その歴史からみていく。
2.成長の軌跡~提携の繰り返しによるメニュー拡大~
ヤフーは検索サイトとして始まった。それが、インターネット総合検索サービスを手がけ
る企業になるには、本国アメリカでも三つの転換期があった。ひとつめは、96 年6月株式上
場直後に「ロイターやAPなどのニュース配信を始めた」こと。ふたつめは、97 年「eメー
ルサービスを導入、コミュニケーション・ビジネスに進出した」こと。三つめは、98 年「イ
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1
戦略ケース
ンターネットによる通信販売サービスを開始した」ことである。
それぞれの転換期の裏には、大型の提携、買収があった。ひとつめの転換期は、ロイター
との提携である。これにより、ニュース配信が可能となり、ただの検索サイトからの脱皮を
はかることができた。ふたつめの転換期には、インターネットのディレクトリーサービス会
社の買収があった。三つめの転換期は、インターネット商取引のためのソフトウェア開発会
社ヴァイアウェブ社、ダイレクト・マーケティングを手掛けるヨーヨーダイン社の買収であ
る。これらは、明確な経営ビジョンに基づいて行われてきた。
日本でも同様である。ヤフー・ジャパンも、提携の繰り返しによりサイト情報拡大、魅力
度アップを図り、ヒット数を拡大させてきた(図表1)
。
図表1ヤフーの提携とサイト拡大の歴史
年代
立ち
ち上
上げ
げ期
期
立
96.7
96.10
96.12
提携先
・
・
・
・
・
・
・
ロイタージャパン
ウェザーニュース
ニフティ
Just Net
NECのBIGLOBE
富士通
旺文社
97.3
97.4
拡充
充期
期
拡
97.11
98.3
98.4
98.6
双方
方向
向コ
コミ
ミュ
ュニ
ニケ
ケー
ーシ
ショ
ョン
ン期
期
双
98.7
98.9
98.10
98.12
99.1
99.3
99.4
イン
ンタ
ター
ーネ
ネッ
ット
ト販
販売
売期
期
イ
99.5
99.6
99.7
99.9
99.10
99.11
99.12
00.1
00.3
・ HIS、近畿日本ツーリスト、神港トラベル、東急観光、
マップインターナショナル、地球の歩き方
・ サンケイスポーツ
・ NTT・アド(検索サイト「goo」)
・ 時事通信社
・ サイバーマップ・ジャパン(出資)
・ 地域新聞社各社(北海道新聞、河北新聞、中日新聞、
京都新聞、西日本新聞)
・
・
・
・
・
・
・
・
・
リクルート
Amazon.Com
N2K JAPAN(パートナー契約)
ネットエイジ(共同開発)
ヴァル研究所(協力・提供)
流通経営協会(協力・提供)
旺文社
ベクター
ブロードキャスト・ドット・コム
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
マイクロソフト
インターネットTVガイド
日比谷花壇
本田技術工業(共同運営)
クリエーションシステムズ(パートナー契約)
モーニングスター
セブンイレブン・ジャパン、トーハン
ハピネット、トイカード、エポック、タカラ、トミー、バンダイ
クイックパートナー(パートナー契約)
住友VISA
・
・
・
・
・
・
アットホーム
プロトコーポレーション
ソフトバンク子会社(コマース・テクノロジー)、ミュージシャン(向谷実)
文化放送ブレーン
ジオシティーズ、ブロードキャスト・コム(吸収合併)
イー・ローン
メニュー拡大・得た情報
・ 「Yahoo!News」
・ 「Yahoo!Weather」
: ニュース配信
: 天気予報配信
・ 「Yahoo!InterTV」
・ 「 Yahoo!Education」
: テレビ番組表配信
: がんばれ受験生特集
・
・
・
・
・
「Yahoo!Finance」
「Yahoo!Profit」
「Yahoo!スコアボード」
「Yahoo!きっず」
「Yahoo!Travel」
:
:
:
:
:
・
・
・
・
検索の引継
インターネットニュース配信
地図サービス
地域ニュース配信
無料株価情報
企業情報サービス
野球結果配信
子供用検索サイト立ち上げ
国内最大旅行サイト
・ 4つの登録サービス開始
・ 就職、転職情報
・ 書籍のインターネット販売
・ 音楽CDの試聴、アーティスト紹介
・ 「Yahoo!自動車」
: 国内新車カタログ情報閲覧サービス
・ 「Yahoo!路線情報」
: 「駅すぱーと」機能をウェブ上で実現
・ 「Yahoo! 不動産」
: 不動産物件情報サービス
・ センター試験速報、合格判定サービス
・ 「Yahoo!ダウンロード」 :ソフト検索&ダウンロード
・ ソフトバンクと3社で合併会社「ブロードキャスト・コム」設立、動画・音楽の
配信技術獲得
・
・
・
・
・
・
・
・
・
ソフトバンクと3社で合併会社「カー・ポイント」設立、自動車販売仲介サービス
「Yahoo!TV」
: 47都道府県の番組表を完全対応
フラワーギフト、ガーデニングのインターネット通販開始
「My Yahoo!」
: 「HONDA My Yahoo!」を運営
計測器のインターネット通販開始
「Yahoo! Finance」
: 投資信託情報追加
ソフトバンクと4社で「イー・ショッピング・ブックス」設立
ソフトバンクと8社で「イー・ショッピング・トイズ」設立
新車オンライン販売サービス開始
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「Yahoo!ショッピング」
: 17店舗出店
「Yahoo!グルメ」
「Yahoo!オークション」
「Yahoo!不動産」
: 情報追加
「Yahoo!自動車」
: 情報追加(中古車情報「GOO」)
「イーズ・ミュージック」設立、音楽配信(1曲100円)
「Yahoo!就職・転職情報」 : 新卒向け求人情報追加
合併会社「ブロードキャスト・コム」設立
「Yahoo! Finance」
: ローン商品の情報検索、比較、シュミレーション事前申込
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2
戦略ケース
1) 日本での立ち上げ期(1996 年4月~12 月)
96 年7月、立ち上げ半年でロイター・ジャパン、ウェザーニュースと提携し、オンライン
でのニュース配信サービスを開始させた。
同年 10 月には、ニフティ、Just Net 、NECの BIGLOBE と提携。いずれのサイトからも
ヤフーへのアクセスを可能にし、それぞれのユーザーを取り込んでいった。また当時最新の
「マイクロソフトIE3.01」の日本語版にヤフーの自動検索機能を標準装備させた。このこ
とでユーザーはブラウザの一部であるかのようにシームレスに検索を利用する事ができるよ
うになった。
2) 拡充期(1997 年1月~1998 年6月)
この時期はサイトの魅力を上げ、ただの検索サイトから総合情報サイトへの転換を図った。
ヒット数は 97 年1月 200 万ページビューから 98 年6月 1,000 万ページビューへと約5倍
に拡大している。これは、明確なターゲットを設定した上で情報の幅を広げ、総合情報サイ
トへの転換を遂げたことによる。
97 年3月、4月は、株価無料検索サービスの「Yahoo! Finance」
、企業情報サービス「Yahoo!
Profile」
、プロ野球の結果を配信する「Yahoo! スコアボード」を開設した。ユーザーの9割
近くの男性ビジネスユースと趣味・スポーツユースを満たしていく。その後、ユーザーの女
性比率、主婦層が増えてきたことを受け、11 月国内最大級の旅行情報サービスとして「Yahoo!
Travel」を開始した。このとき、HIS、近畿日本ツーリスト等複数の旅行メーカーと提携
した。
同じ頃、子供のための検索サイト「Yahoo! きっず」開設。ヤフーの特長でもあるディレク
トリ型検索により、内容をチェックした上で登録するシステムによって可能となったサイト
である。98 年5月には、サイバーマップ・ジャパン「マピオン」の拡充にあたり、NTT他
複数メーカーとともに出資し、ヤフーで「Yahoo! Map」のサービスを始めた。現在でも、こ
のサービスが他のサイトとの差別化ポイントとなっている。
3) 双方向コミュニケーション期(1998 年7月~1999 年2月)
98 年7月、ユーザー情報を利用した四つの登録サービスを開始した。ひとつめは無料のカ
スタマイズされた情報を提供する「My Yahoo!」、ふたつめは対戦型ゲームコンテンツの
「Yahoo!ゲーム」
、三つめはテーマ別に他のユーザーごとディスカッションできる「Yahoo!
掲示板」
、四つめはオンライン上で手軽に1対1のコミュニケーションを実現する「Yahoo!
ページャー」である。ここで初めてユーザー登録によるコミュニケーション・ビジネスの展
開を開始した。この登録サービスは、開始 12 日目で 10 万人を突破した。
同年 10 月、11 月のN2Kとのパートナー契約やベクターとの提携により、CD試聴やソフ
トのダウンロードが可能となった。その後、米国ブロードキャスト・ドット・コム社と日本
における合併会社「ブロードキャスト・ドット・コム社」を設立し、動画・音楽の同時に配
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3
戦略ケース
信する技術を得た。
4) インターネット販売期(1999 年3月~現在)
マイクロソフト、ソフトバンク、ヤフーの3社で「日本版カーポイント」を設立。これに
よりネット上での自動車販売仲介サービスを開始し、ここから販売への転換が始まる。
99 年4月に日比谷花壇とパートナー契約を結び、フラワーギフト・ガーデニング通販を始
めた。6月、合併会社「イー・ショッピング・ブックス」の誕生。3週間後、同様にソフト
バンク、ハピネット、トイカード、ヤフーと複数の大手玩具メーカーと合併会社「イー・シ
ョッピング・トイズ」を設立し、日本初おもちゃのインターネット通販を開始させた。翌7
月、クイックとパートナー契約を結び、ネット上の新車オンライン販売を開始した。
同時に住友VISAとの提携し、ネット上での買い物決済をカードで行うメリットを獲得
した。これを受けて9月アメリカのふたつの成功メニュー、オンラインショッピングサイト
「Yahoo!ショッピング」と、オンラインオークション「Yahoo!オークション」を開始した。
また 11 月、合併会社「イーズ・ミュージック」をソフトバンクの子会社とミュージシャンと
設立し、1曲 100 円で音楽配信サービスも始めた。
本国アメリカでは、2000 年の年明け早々、フォードとオンライン販売で提携した。その後、
ジオティーズを買収。続いて、ブロードキャスト・ドット・コム社の買収により、マルチメ
ディアサービスの展開を目指している。
ヤフー・ジャパンでもジオティーズ、ブロードキャスト・コムと吸収合併が行われ、音楽、
映像配信が可能となり、マルチメディアサービスの展開を目指すことになった。
3月には「イー・ローン」と提携し、ネットを通じたローン商品の情報検索、比較、シュ
ミレーション、事前申し込みサービスを開始した。金融サービスへ本格的に乗り出す姿勢を
示している。
ポータルからプラットフォームへの転換を急いできたヤフーは、インターネットで取り扱
われる商品の増加に伴い、次は金融システムを有し完結力をもったプラットフォームへ転換
を進めていくと考えられる。
3.ヤフーの強み~圧倒的なヒット数
図表2
日本法人の決算の推移
現在、ヤフー・ジャパンの収益を支えて
いるのが、広告収入である。99 年決算報 売り上げ計(百万円)
うち広告売り上げ
告の中で広告収益は 14 億円と売り上げの 広告売上比率
74.8%を占める(図表2)
。これらの広告 営業利益(百万円)
は、バナー広告と呼ばれ、今やひとつの
経常利益(百万円)
当期利益(百万円)
1株利益(円)
1996
3月
-
-
1997
3月
413
▲3
▲5
▲5
1,323
49
49
23
5,989
1998
3月
1,269
909
71.6%
146
131
64
11,896
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4
1999
3月
1,915
1,432
74.8%
399
391
184
27,068
戦略ケース
確立した広告事業となりつつある。その仕組みは簡単である。広告主はヤフーに広告を載せ
る。ヤフーをみにきた一般ユーザーは、否応なしにその広告を見ることになる。また、広告
掲載ページをコントロールすることで「広告主の希望する対象ユーザー群に」
「選択的訴求」
が可能になる。このターゲットマーケティングがバナー広告の魅力である。
しかも、ヤフーは膨大なヒット数
によって「広告主に露出回数を保
証」している。
現在のヤフーのヒット数は、1
図表3
ヤフーのヒット数と登録者数の推移
8000
500
(万ページ
ビュー)
(万人)
450
7000
日 7,400 万ページビューである。
96 年4月の立ち上げから2ヶ
月後の6月、まずユーザー利用状
況として発表されたヒット数は
400
6000
350
5000
300
4000
250
ヒット数/1日
「1日あたり 90 万ヒット」であ
った。それが、2000 年2月現在で
7,400 万ページビューと着実にヒ
ット数を伸ばしている。最近では
200
3000
150
2000
100
登録者数
1000
50
99
98
97
96
登録サービス開始
0.1
0
ーズに素早く対応してきたヤフーの取り組みがあった。
9
9.1
それを支えたのは、ユーザーニ
8.1
9
7.1
9
0
6.9
9
表3)
。
20
登録者数も右肩上がりである(図
0
*ヤフー発表の数字より推計
(1)ユーザー情報の吸い上げとメニュー拡大
ヤフーは、闇雲にメニューを拡大してきたわけではない。常にユーザーアンケートを行い、
その結果を受けてメニューの幅を広げていった。立ち上げ期、IE3.01 へ標準装備を決めた
のは、その直前に行われた調査で6割のユーザーが「Windows95」を使用しているという結果
からである。
「Yahoo!トラベル」導入にあたっても、事前の調査でユーザーの5割近くが「旅
行・観光」に興味を持っていることを確認している。
(2)対応の素早さ
提携の素早さにも目を見張るものがある。立ち上げ期のニフティの提携からIE3.01 の標
準装備までわずか2週間であった。サイトのメニュー拡大当たっても、昨年9月中に「Yahoo!
ショッピング」と「Yahoo!オークション」を立て続けに立ち上げるなど、新メニューの導入
スピードは衰えていない。
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5
戦略ケース
(3)コンテンツの幅と使い勝手の良さ
現在、ヤフーはポータルサイトとしては最大の 23 のメニューがある。最大のライバルであ
る「goo」にはない地図サービスや、
「My Yahoo!」などのパーソナライズがあり、パーソナラ
イズで自由な組み合わせができるのもヤフーだけである。このメニューの幅が総合サイトと
呼ばれる由縁である。
各 Web からヤフーへの登録依頼は毎日ある。そのサイトをひとつひとつ「サーファー」が
チェックし、カテゴリー別に登録していくシステムをとっている。この「人」を介した登録
システムのおかげで、
「Yahoo!きっず」のようなメニューを展開することができ、ユーザー
の間でも「使い勝手がよい」という評判を得ている。
4.検索サイトの生き残り
ヤフーが、本国アメリカで翳りを見せ始めた。米ナスダックで伸び続けてきた株価が下落
してきた。アメリカ最大のオークションサイト「e ベイ」と提携交渉を行ったが、物別れに終
わっている。ここへ来て本国アメリカでは、成長が止まり始めている。
(1)競争環境激化
現在日本の検索サイトは、
「ヤフー」と「goo」の2強がメインである。しかし、インフォ
シーク、ライコスジャパン、エキサイトと米国大手検索サイト3社も揃っている。ライコス
は昨秋、若者に絶大な人気を誇る浜崎あゆみをTVCMに登用、知名度を上げた。インフォ
シークは、99 年ウォルト・ディズニー傘下となり新戦略を打ち出す体制にある。エキサイト
も、女性向け総合ポータルとして「WomanExcite」を開設、ターゲットを絞り込んだ展開を開
始している。
新たなライバルも出現してきた。知名度のあるソニー、富士通、リクルートなどのネット
会社がポータル機能を強化し始めている。ソニーは金融サービスまで視野に入れ、展開して
いる。
顧客の囲い込みという点では、プロバイダ系が最大のライバルになる。実際、ニフティと
Infoweb の統合で 350 万人の会員を持つ巨大サイトが誕生した。
(2)手作業での限界
現在のヤフーの登録作業は手作業で、1日 100 件程度の登録が限界である。対照的に機械
システムによる登録を行っている「goo」は日本最大のURLを収容している。
今後、更にネット上でサイトが増えると、手作業では登録が追いつかなくなることは明ら
かである。しかし、機械に変えてしまうとヤフーの最大の特長である「使い勝手のよさ」が
失われてしまう恐れがある。
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6
戦略ケース
(3)専門サイトの成長
ヤフーは総合サイトとしてメニューの幅を広げた結果、たいていのことは自前でできるよ
うになった。しかし、現在のインターネットユーザーは、インターネットショッピングをす
るとき「Yahoo!ショッピング」ではなく「楽天市場」を利用する。また、今後オークション
サイト「e-ベイ」が日本に進出してくると、
「Yahoo!オークション」ではなく「e-ベイ」
でオークションするユーザーが増えるであろう。
しかし、ヤフーではこのように機能特化したサイトを取り込むことが困難になってくる可
能性がある。
(4)本当の敵と「ヤフー」の未来
図表4加入者数
ヤフーの未来は明るくない。その要因
iモー ド
44 5
のひとつはインターネットのプラットフ
ヤフ ー
44 5
ォームがPCから携帯電話に移行してい
ニフ ティ
ること(図表4)
、もうひとつは Web の技
36 2
2 90
ビッ グロ ーブ
術革新によってである。
11 5
ソネ ット
「iモード」に代表される携帯電話が
55
EZ web
台頭している。理由は、なんといっても
0
「モバイル性」にある。元々ヤフーはP
Cによるインターネット検索サービスで
しかない。ヤフーのサービスを利用する
10 0
2 00
300
40 0
500
*iモードとソネットは2月時点。他は1月末時点
には、まずPCの前に座り画面を見なければならない。携帯なら、いつでもどこでも好きな
ときに好きな場所でインターネットを利用することができる。
もし携帯からインターネットにアクセスするユーザーがPCでインターネットを利用した
としても、わざわざ面倒な検索サイトは必要とされないだろう。彼らに検索サイトは無用で
ある。
しかも、携帯の方が安全性に優れている。未だにインターネットの買い物でカードID入
力をためらう人は多い。ネット上で自分のIDを他人に覗かれる心配がある。特にカード文
化の浅い日本ではこの傾向は強い。しかし、携帯だとその心配はない。
携帯電話が、更に進化を遂げようとしている。通信速度の向上と、
「Java」搭載による動画
伝送だ。しかも、このふたつに加え、NTTドコモは将来的には携帯電話を「電子財布」や
「家電リモコン」に進化させようとしている。
この動きは欧米諸国にも飛び火している。
「WAP」と呼ばれるiモードに類似したモバイル
サービスが開始された。
もうひとつの Web の技術革新は、バナー広告の消滅を招く。皮肉なことに、その可能性を
示したのが「ヤフー」自身である。現在ヤフーには「My Yahoo」という個人で自由に組み合
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7
戦略ケース
わせることができるサイトがあるが、近い将来、自分の必要な情報だけをひとつのページに
まとめることができ、邪魔なバナー広告を消すことができるようになる。このような技術が
アメリカで生まれようとしている(Bill Burnham)
。
そうなってくると、収益の7~8割をバナー広告に頼っているヤフーが生き残るのは容易
ではない。
ネット経済の過渡期である現在はまだ、ヤフーの優位は続くかもしれない。しかし、ネッ
ト経済化が進みインターネットのアクセスツールの多様化や Web 自体の技術発展が進むなか
で、今の収益構造のままではヤフーは衰退の一途をたどるであろう。
参考:会社概要
アメリカ本社
日本法人
本社所在地
アメリカ カリフォルニア州
港区 北青山
設立年月日
1994年
(1996年株式公開)
1996年
(1997年株式公開)
売上高
2億ドル(1998年)
(210億円)
19億円(1999年3月期)
事業内容
従業員数
インターネットの検索サービスを行う検索サイト
現在21カ国でサイトを開いている
800名(1998年)
120名(1999年9月)
*日本円は105円換算
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