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特許分類の知識

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特許分類の知識
特許分類の知識
特
許
庁
(一社)発明推進協会アジア太平洋工業所有権センター
©2013
執筆協力:アプタス国際特許事務所
弁理士 藤本 信男
- i -
目
次
1.
特許分類とは ....................................................... 1
1.1.
特許分類の目的 ..................................................... 1
1.2.
特許分類の付与 ..................................................... 2
1.3.
特許分類の利用 ..................................................... 3
1.4.
日本で採用する特許分類 ............................................. 4
2.
国際特許分類(IPC) ................................................ 7
2.1.
IPC の構成 ......................................................... 7
2.2.
分類箇所を選択するためのルール ..................................... 13
2.3.
IPC の表記方法 ..................................................... 15
2.4.
近年の IPC の改正(IPC リフォーム) ................................. 16
2.5.
国際的な分類調和の動き ............................................. 19
3.
FI(FILE INDEX) ..................................................... 20
3.1.
FI の展開記号 ...................................................... 20
3.2.
分冊識別記号 ....................................................... 20
3.3.
FI と IPC の版の対応について ........................................ 20
3.4.
FI の改正について .................................................. 20
4.
F ターム ........................................................... 21
4.1.
F タームの表記 ..................................................... 21
4.2.
F タームの構成 ..................................................... 22
4.3.
F タームのメンテナンス ............................................. 26
- 0i -
1.
特許分類とは
(フロントページ)
(最終頁)
の部分が日本の公開特許公報に掲載された特許分類(IPC、FI、F ターム)
1.1.
特許分類の目的
1.1.1. 情報の分類
一般的に各種情報は、世界中で公開された大量の文献(電子データ等の他の媒体も含
む:以下同様)の中から必要な 情報が収集され、収集された情報が 必要に応じて蓄積 され、
蓄積された中の任意の 情報にアクセス可能であることが求められる 。
これらの各種情報を 効率的に利用する ためには、有用な情報を含む文献の公開段階ある
いは収集段階において、情報を 体系的に 分類することが極めて重要であり、その分類 体型
の優劣が情報の利用価値を決める重要なポイントとなる。
1.1.2. 特許情報とは
特許情報は、世界各国で様々な技術分野においてなされる特許出願に端を発し 公報の形
で特許文献として公開されるものである。
この特許情報は、出願情報、権利情報、技術情報等を含むものであり、 一般的な各種情
-1-
報と同様に、 収集、蓄積、任意のアクセス を求められる貴重な情報 である。
1.1.3. 特許情報の利用
特許出願の主目的は、特許権を得るために特許庁の 審査官による 審査を受けることにあ
り、これらを審査する上で、その特許出願がどのような技術 分野に属し、どのような技術
範囲で先行技術を調査すべきか 検討され、その技術範囲に基づいて主として特許文献を調
査することによって、公知の先行技術や一般的周知慣用技術に関する情報が調査される 。
また、審査を経て特許された特許出願は権利情報として 文献で公開され、また多くの国
では特許出願から一定期間後に出願情報 、技術情報 として文献で公開され る。これらの公
開された特許文献は、審査をする上で必要な 技術情報が記載された 文献として利用される
のみならず、 企業や研究開発 者等が、権利の 抵触の有無、技術開発の動向等を調査して経
営戦略、営業戦略、開発戦略等を検討する上でも非常に重要な情報 源となる。
これらの貴重な権利情報、出願情報、技術情報を含む特許 情報を有する特許文献に、特
許庁の審査官、あるいは、企業や研究開発者等が 効率的に アクセスするためには、公開さ
れた特許文献が技術分野に応じて体系的に分類されていることが不可欠であ る。
また、昨今の情報処理システムの発達により、膨大な特許文献から 必要な情報を効果的
に検索して漏れなく抽出できるように 分類されていること が極めて 重要である。
1.1.4. 特許分類の役割
特許分類は、このようなニーズに対応して作成され、全ての特許出願および特許文献に
対して付与されることで、 迅速で適確な審査を行う上で欠くことのできないものとなって
おり、また、 企業や研究開発 者等が様々な戦略を検討するため に権利情報、出願情報、技
術情報を特許文献 から得るためにも 極めて重要な役割を果たしている。
1.2.
特許分類の付与
前述したように、特許分類を付与すべき特許文献は特許出願に端を発し、まず、特許庁
において審査(あるいはその準備)が行われることから、特許庁 の責任によって 付与され
る。
1.2.1. 日本における特許分類の付与
日本においては、特許庁が分類を付与し、出願から18月後の特許公開公報の 発行時に
は、冒頭のサンプルのように当該分類が表示される。
審査を経て特許された後の特許公報 では、審査時に補正がなされることも多いことから、
特許査定をした審査官(審判官)によって特許査定された特許請求の範囲に基づく分類が
付与されて公開される。
-2-
1.3.
特許分類の利用
1.3.1. 特許庁における利用
特許出願の審査を行う特許庁において、 審査官は、特許出願の明細書、図面に記載され
た技術内容を理解し、 関連する公知の先行技術を漏らすことなく調査し、その特許出願の
特許請求の範囲に記載された発明が公知の先行技 術や一般的周知慣用技術に対して新規性、
進歩性を有しているのかを、 法律、規則、審査基準に照らして適確 に判断することが求め
られる。
したがって、特許庁では、主として審査のための関連する技術分野における先行技術の
調査を目的として特許分類が利用される。
この た め に、 日 本 に お いて は 、 後述 す る よ う に、 国 際 特許 分 類 (IPC)をベ ー ス に さら に
細 分 化 した 日 本 独 自 の FI(File Index:展 開 記 号 、分 冊 識 別 記 号 )、フ ァ セ ッ ト 分 類 記 号
と、機械検索に最適化した 検索インデックス である F タームが用いられ、 これらの分類と
併用してフルテキストサーチ も用いられる。
また、一部の分野では、特許文献以外の技術文献についても審査の際の検索に適した特
許分類を付与してデータベース化を行っている。
1.3.2. 企業における特許分類の活用
企業が多額の資金を投入する研究開発活動に おいてできるだけ無駄な投資を回避して効
率化を図ること、競合他者との差別化を図るため自らの強み・弱みを確認し、優位にある
分野を選択し、そこに資源を集中することは、戦略的な研究開発を進めるうえで、極めて
重要である。そのためには、 現在取り組んでいる研究開発の該当技術分野 における技術動
向、技術要素ごとの研究開発の進展状況及び分布、関連企業等の研究開発に対する取り組
みの特徴等を総合的に把握しなければな らないが、そのほとんどは、特許情報を中心とし
た内外国の先行技術情報の分析によって明確化することができる。
また、事業化を進めていく上では、市場 で発売する製品が国内及び販売を予定している
国で他社の特許権を侵害していないことの確認をすることは、事業戦略の基本中の基本で
ある。このためには、当該製 品に関連する技術分野における特許権をもれなく調査するこ
とは、製品化前の不可欠な準備行為であ る。
このような内外国の調査を迅速かつ的確に行うため、日本企業のほとんどが、世界共通
の 国際 特 許 分類 (IPC)を ベー ス に した 先 行 技 術 調査 を 日 常的 に 実 施 し てい る 。 多く の 先進
企業 で は 、自 社 製 品と 関連 す る 国際 特 許 分類 (IPC)と 各 社独 自 の製 品分 類 を 組み 合 わ せて 、
より効率的な検索システムを構築している。更に進んだ企業においては、特許調査のため
の専門部署を設置し、そこに調査専門スタッフを確保している。
1.3.3. 大学等における特許分類の活用
大学等研究機関における研究開発活動に先進性が必須である事は、言うまで もない。研
-3-
究競争で後れを取っている場合、研究の方針変更が必要になることがあり、場合によって
は研究自体を断念せざるを得なくな る。また大学等の研究テーマは、萌芽的研究が多く、
ある日突然今までにない斬新な研究成果が公表されることがある。
このように、自らの研究が先進性を維持しているかを常に確認しておく必要があるが、
このためには、論文として発表される 研究情報だけでなく、企業等による研究成果として
の特許情報も併せて国内外の情報をウォッチングしておく必要がある。
し た が って 大 学 等に おい て も 、国 際 特 許分 類 (IPC)を ベー ス にし た調 査 が 必要 で あ るが 、
全ての研究者が特許調査の重要性を認識しているとは言えないのが現状である。
1.4.
日本で採用する特許分類
日 本 に お い て は 、 国 際 特 許 分 類 (IPC)を 完 全 に 採 用 し 、 さ ら に 日 本 独 自 に 規 定 さ れ た
FI(File Index:展開記号、分冊識別記号)、ファセット分類記号を付加して 細分化すると
ともに、日本独自に機械検索用に開発された検索インデックス である F タームを各文献に
付与している。
以 下 に 、 国 際 特 許 分類 (IPC)、 FI(File Index: 展 開 記 号 、 分 冊 識別 記 号 )、 フ ァ セ ッ ト
分類記号、F タームについて説明する。
1.4.1. 国際特許分類 (IPC)
過去には、世界各国がそれぞれ独自の分類体系を作成し、その分類体系に基づいて自国
の特許文献を分類し利用していたが、国際的な技術交流が盛んになり、世界各国で外国特
許文献の利用が増大する中で、各国が独自の分類を行っていたのでは、外国特許文献の利
用に際して、外国の独自分類への習熟または外国の特許文献に対する自国の独自分類の再
付与を行わなければならず、特許文献の円滑な利用に支障を来していた。
このような状況の中で、世界各国が共通に使用できる特許分類として国際特許分類
(International Patent Classification 以下 IPC という) が作成された。
IPC は、まず世界各国の特許庁が、新規性や進歩性を評価するために、世界各国の特許
文献を共通の体系で調査可能とすることを第1の目的として、その分類体系と分類ルール
が確立された。
また、IPC は、特許文献に記載の技術へのアクセスを容易にするツールとなること、特
許情報を利用者に普及させる基礎になること、ある技術分野の現状を調査するための基礎
となること、そして、種々の分野 における技術の発展を評価できる統計を作成するための
基礎となることも目的としている。
1.4.2. FI(File Index)
IPC は本来、 上記で述べた基本的な事項に従い国際的に統一して利用されるが、日本に
おいては、さらに展開記号・分冊識別記号等を作成して、日本特有の技術事情に対応して
-4-
いる。
日本特有の技術や他国に比べ進んだ技術では、 IPC の分類をそのまま使用すると1つの
グループに大量の特許文献が集中し、検索などに不具合が生じる場合がある。
そこで、日本では IPC をベースとして、IPC の表示記号に続き、展開記号や分冊識別記
号を付加する形の独自の分類を使用している。これが FI である。
FI は IPC の利用を円滑にするため、日本国内でのみ使用されるもので、 18.9 万の項目
から構成されている。
1.4.3. ファセット分類記号
FI とファセット分類記号の関係は、 IPC の分類とインデキシングコードの関係に似てい
る。
ファセット分類記号は、FI の全範囲または所定の範囲にわたり、 FI と異なる観点から
展開されている記号である。アルファベット 3 文字で表される。
1 文字目は基本的にはセクション記号と同一であるが、複数のセク ションにまたがる広域
ファセット分類記号では Z が用いられる。2 文字目・3 文字目は I と O 以外の A~Z のアル
ファベットが用いられる。
1.4.4. F ターム
F タ ー ム ( File Forming Term) と は 、 文 献 量 の 著 し い 増 大 及 び 技術 の 複 合 化 、 融 合 化 、
製品の多様化といった技術開発の動向変化に対しても、特許審査のための先行技術調査
(サーチ)を迅速に行うために機械検索用に開発された検索インデックスのことである。
FI のみでは区分けが 粗い分野もあり、特に近年発展した技術分野においては単独の FI の
範囲であっても非常に 多くの先行技術文献を調査しなければならない。それらの FI を所
定技 術 分 野ご と に 種々 の技 術 観 点か ら 細 区分 した も のが F タ ー ム であ り 、 多観 点 で の解
析・付与が可能であることが特徴である。 F タームは、特許情報(特許公報類)中に記載
されている技術的事項を把握した上で、種々の技術観点(目的・用途・構造・材料・製
法・処理方法・制御手段等)を付した F タームリストに照らして文献ごとに付与している。
もともと、検索システムが構築される前の紙ファイルを利用していた時代には、ファイル
の組み換えを行ったり、公報を複写した上で新たな観点の ファイルを作成したりすること
により、先行技術調査用の資料を維持管理していた。 F タームの検索システムは、この紙
ファイルの限界を打破するものであり、 F タームの組み合わせを変えることで、電子化さ
れた仮想ファイル(スクリーニングすべき文献集合)をそのつど生成し、組みなおすこと
ができるようにしたものである。 IPC や FI と異なり、F タームは主として複数組み合わせ
て用いることを想定しており、多くの場合、複数の F タームの理論積によって「仮想ファ
イル」の文献数を絞り込むことができるようになっている。それにより、関連する先行技
術文献をスクリーニングできる程度の件数(技術分野に応じて数十件~数百件程度)を目
安に絞り込むことを目指している。
現在、全技術分野の約 7 割程度の分野において F タームが整備されており、技術動向の
-5-
変化や蓄積文献数 の増加に応じて、毎年必要な分野において F タームリストの見直しを行
っている。
1.4.5. その他の特許分類
ECLA(European Patent Classification)
欧州特許分類(European Classification、ECLA(エクラ))は、欧州特許庁が IPC に
独自のサブグループを追加して細分化した特許分類である。欧州特許庁が欧州特許出願や
欧州圏内の各国特許出願等に付与しており、約 13 万の項目から構成されている。
展開記号は IPC や FI と同様ドットを用いた階層構造をとっており、分類の文字数が階
層の深さを表している 。(例えば ECLA の A47L9/28B は、IPC の A47L9/28 より一階層深い
分類であり、 A47L9/28B2B は、A47L9/28 より三階層深い分類である。)
IPC と ECLA に共通している点として、複数国・機関の公報に付与され、検索に使用で
きることが挙げられる 。ただ、IPC は各国の特許庁によって付与されるため、国によって
基 準が 異 な ると い う 問 題 があ る の に対 し 、 ECLA は欧 州 特 許 庁の み が 付与 を 行 って い るた
め、欧州特許出願や欧州圏内の各国特許出願等に限られるが、分類付与の際の基準にばら
つきがない。
なお、米国と欧州では 2013 年 1 月より、ECLA、ICO(In Computer Only)、USPC(米国
特 許 分 類 ) を ベ ー ス と し た 新 た な 特 許 分 類 、 CPC ( Cooperative Patent
Classicification)に移行しており、ECLA は既に使用停止となっ ている。
-6-
2.
国際特許分類(IPC)
2.1.
IPC の構成
2.1.1. 分類項目
2.1.1.1.
分類表
下図は分類表の冒頭部分を抜き出したものである。
それぞれの用語について説明を行う。
-7-
2.1.1.2.
分類項目の構成
分類項目は、発明に関する全技術分野を、下図のように階層的に細分化している。
メイングループはさらにサブグループに細分化され、サブグループは下図のように、タ
イトル前のドット(・)の数によって階層化されている。
セクション・サブセクション
セクションは、特許の対象となる全技術を、 8 つに大別したものであり、A~H のアルフ
ァベット大文字 1 文字の表示記号とセクションタイトルで表される。
サブセクションは、セクション内での見出しであり、表示記号は無く、サブセクションタ
イトルのみで表される。
クラス
クラスは、セクションを細分したもので、セクション記号に 2 桁の数字をつけた表示記
号とクラスタイトルで表される。
-8-
セクション・クラスのタイトルはその内容を大まかに指示するだけで、内包される情報
を性格に定義するものではない。
サブクラス
サブクラスは、クラスを細分するもので、クラ スの表示記号にアルファベットの大文字
1 文字をつけた表示記号とサブクラスタイトルで表される。
サブクラスタイトルは、その内容をできるだけ性格に定義するようつけられる。
メイングループ
メイングループは、サブクラスを細分するもので、サブクラスの表示記号に続く、1~
4桁の数字、斜線、数字 00 からなる表示記号とグループタイトルで表される。
サブグループ
サブグループは、メイングループを細分するもので、メイングループの表示記号の最後
の 2 桁の数字が 00 以外となった表示記号と、階層をあらわす 1 個以上のドットとタイト
ルで表される。
2.1.1.3.
各階層のタイトルの解釈
IPC では各階層にタイトルが設けられているが、その解釈上注意すべき点がある。
セクション・サブセクション・クラスのタイトル
その内容を正確に指定するものではなく、大まかな分類を示すものである。
サブクラス・グループのタイトル
関連する参照・注などを考慮し、内容をできるだけ正確に定義するよう付けられる。さ
らに、メイングループ・サブグループにおいては、上位のタイトルの制限を受ける。
例)A セクションのタイトルは「生活必需品」であり、その中に「たばこ 」が含まれてい
る が、 た ば こが 生 活 必 需 品で あ る かと い う 議 論 は無 意 味 であ る 。 一 方 、サ ブ ク ラス A24C
のタイトルは「葉巻たばこまたは紙巻たばこの製造機械」となっており、そこに分類され
るものは、すべてこのサブクラスタイトルに該当する技術事項をもつ。
2.1.1.4.
上位グループと下位グループの分類範囲
サブグループ以下の階層に含まれる事項は、上位の階層の中から特定の事項を抜き出し
たものであり、どの下位グループにも含まれない事項や、技術事項の範囲が広く特定の下
位グループに属さない事項は、その上位のグループに分類 される。
2.1.1.5.
注と参照
-9-
「注」
サブクラス・グループのタイトルは、その内容をできるだけ正確に表すものであるが、
その分類範囲や用いられている用語について補足説明をする必要がある場合、「注」とし
て解説される。そのほか、分類体系が複雑な場合に、分類に一定のルールを適用するため、
「注」として分類の原則の説明を行う。
・分類範囲・分類付与の方法を指示するもの
・用語の定義について指示するもの
・優先ルール・インデキシング等を指示するもの
・基本的原理を説明するもの
「参照」
参照は、クラス・サブクラス・グループのタイトルまたは注の後に括弧書きで表示され、
次の 3 つのものがある。
・限定参照
本来そのタイトルに含まれる事項を、ほかの分類箇所へ抜き出すことを指
示したもの。
・優先参照
事項が 2 つの箇所に分類できる場合や、異なる観点から別の箇所にも包含
される場合に、1 箇所のみに分類すべきであることを指示したもの。
・案内参照
利用者が技術事項の分類や検索を行う際の便宜をはかるもの。
参照の解釈における注意点
・参照は、関係するタイトルの最後の部分におかれる 。
セミコロンで区切られた2以上の部分からなるタイト ルに参照が含まれる場合、その参
照が関係する範囲に注意が必要である。
タイトル A
;
タイトル B
(参照)
となっていた場合、その参照はタイトル A と
タイトル B
となっていた場合、その参照はタイトル A の
B 両方に関係する。
タイトル A
(参照)
;
みに関係する。
・クラス・サブクラス・グループのタイトルの後に続く参照は、下位の階層すべてに関係
する。
・サブクラスの表示をせずにグループの番号のみを表示している場合、同じサブクラス内
におけるグループ相互の参照を意味する。
・グループが引用されている場合は、それが唯一 の関連するグループであるということで
はない。引用されたグループが下位のグループを持つ場合は、それらのグループにも関連
する。
・2 以上の事項が同じ分類箇所を参照している場合には、これらの事項はコンマで分けら
れ、その分類箇所の分類記号は参照の最後にのみ表示される。
・2 以上の事項がそれぞれ別個の分類箇所を参照している場合には、セミコロンで分けら
れており、それらは別個に読み取る。
- 10 -
・2 以上の事項がそれぞれ別個の分類箇所を参照している場合において、これらの用 語の
大部分が共通の場合には、共通の用語は一度しか表示されず 、別個 の記号はコンマで分け
られる。
2.1.1.6.
タイトルで使用されている用語や記号の意味
マルチパートタイトル
タイトルには、セミコロンで区別されているものがある。これは、単一語句では十分に
包含できない別個の種類の主題事項を一緒に扱うことが望ましいと思われる場合に用いら
れる。
例)A41D
10/00
パジャマ;寝衣
「および」「または」「いずれか一方」
一般の日本語における意味と同一である。
「A および B」は A と B の両者が同時に存在することを意味し、「 A または B」はどちら
か一方が存在する場合 と、A と B が同時に存在する場合の両方、「 A または B のいずれか
一方」は、どちらか一方のみが存在する場合を意味する。
「すなわち」
同等という意味であり、「すなわち」によって結ばれた2つの語句は、片方が片方の定
義を構成する。
「一般」
主題事項の特性がいかなる応用をも問題にしていない場合、または、特定の使用もしく
は目的に特別に適合しているわけではないものを示す際に用いられる。
「それ自体」
主題事項が一部をなすものではなく、その主題事項そのものだけに関係することを意味
する。
「・・・に特に適合する」
主題事項が目的のために改変されたこと、または特別に作られたことを意味する。
「または類似のもの」
その分類箇所が、先行する用語で特定された主題事項に限定されるものではなく、本質
的に同じ特徴を持つ主題事項も含むことを強調する。
「2 以上のメイングループに包含される」
いくつかの特徴が組み合わされた主題事項であって、組み合わせの各要素はいずれかの
- 11 -
グループに包含されるものの、その組み合わせ全体としては単一のグループに包含されな
いものが分類される。
「何れの単一のメイングループにも包含されない」
いくつかの特徴が組み合わされた主題事項であって、組み合わせの各要素、またはその
組み合わせ全体として、単一のグループに包含されないものが分類される。
「他に分類されない」
そのサブクラスの中、外を含め、どのグループにも分類されないことを意味する。
「他の・・・」「・・・のグループに分類されない」
タイトルにこの語句がある場合、そのサブクラス内のどのグループにも分類されない特
徴を持った主題事項が含まれる。
「細部」
タイトルにこの語句がある場合、その項目と同階層にある装置に共通する細部が分類さ
れる。
したがって、ある特定の装置のみに特徴のある細部は、それぞれの装置の分類箇所に分
類される。
その他の用語
IPC は、その指針の中に用語解説が設けられている。この解説は、 IPC で用いられてい
る用語の中で、複数の意味がある場合など、説明が必要なものが選定されている。
しかしながら、用語解説はその用語が使用されているすべての分類箇所について厳格な定
義をしているわけではないため、実際の解釈の際には、それぞれの分類箇所の前後の文脈
を念頭におくべきである。
2.1.1.7.
機能指向箇所と応用指向箇所
IPC の分類には、機能指向箇所と 応用指向箇所がある。
機能指向箇所とは、その”もの”の機能や構造にのみ特徴があり、特定の仕様分野や使
用目的に限られないものを包含する項目をいう。
応用指向箇所とは、ある目的のために特別に作られた、または、特殊な使用方法をする
ものを包含する項目をいう。
例)
機能指向箇所
弁の構造に特徴をもつが、そこを流れる液体は特定しない分類項目
応用指向箇所
人間の心臓に挿入することを目的とした弁の分類項目
機能指向箇所と応用指向箇所は IPC の分類項目において明確に分かれているわけではな
- 12 -
く、ある項目どうしを比較した際の 相対的な表現である。
ある技術主題を分類する際、機能指向箇所と応用指向箇所のどちらに分類すべきかはっ
きりしない場合、次のような観点から分類を行う。
a.
特 殊 な応 用 に つ い て 述 べ ら れて い る も の の 、 十 分 に特 定 さ れ て い な い 場 合や 様 々
な応用が幅広く述べられている場合は、機能指向箇所に分類する
b.
本 質 的な 技 術 的 特 徴 を 有 し 、さ ら に 特 別 な 使 用 に つい て も 述 べ ら れ て い る場 合 、
機能指向箇所と応用指向箇所の 両方に分類する
2.1.2. インデキシングコード
インデキシングコードは IPC 第 4 版で導入されたもので、ある分類項目 に含まれる技術主
題に対し、その要素をより詳細に特定するために追加で付与するためのものである。
2.1.2.1.
インデキシングコードの役割
インデキシングコードは、通常の分類記号に含まれる技術情報に加え、さらに以下のよ
うな要素を特定する役割を持つ。
・装置の材料
・装置の形状
・化合物を構成する基
2.1.2.2.
インデキシング系列
インデキシングコードのまとまりをインデキシング系列と呼び、分類記号の系列とは異
なった観点から要素の構成が行われている。
また、インデキシングコードを付与することが望ましい 分類項目では、注や見出しに、
どのインデキシング系列からインデキシングコードを付与するべきかが推奨される。
2.1.2.3.
インデキシングコードの表記
分類記号と同じく、サブクラス記号、斜線、 2 つの数字からなる。 (例:F21Y 101/00)
インデキシングコードには、主に 101/00 以降の記号が与えられるが、中には例外もある。
(C12R・B29R など)
2.2.
分類箇所を選択するためのルール
IPC は階層構造をもつため、上位から順番に分類箇所を選択してゆく。サブクラスまで
は比較的容易に選択が行えるが 、グループの選択に関しては、 IPC の構造や適用される分
類規則を確認する必要がある。
分類規則は、 IPC において、単一の技術主題が単一の箇所に分類されるようにするべく、
定められたものである。
2.2.1. 大規模庁と小規模庁
- 13 -
フル IPC においては、大規模庁ではサブグループまですべてを用いて分類を行う一方、
文献の少ない小規模庁では、メイングループのみを用いて分類を行っている。こうするこ
とで、分類や検索にかかる負担を各国の特許文献の規模に応じて最適化することが可能と
なっている。
2.2.2. サブクラス内の基 本的な分類規則
技術主題が1つのグループに完全に包含されている場合、後述の分類規則にかかわらず、
そのグループに分類する。
1 つの特許文献に 2 つ以上の発明の主題が開示されている場合、各主題に対して別々に
分類を行う。
発明の主題に含まれる複数の要素が、それぞれ新規で非自明の場合、それぞれのサブク
ラスにも分類を行う。
「方法」「装置」
タイトルに「方法」とあっても、ほかに装置を包含する分類箇所がなければ、そこには
装置も分類される。同じくタイトルに「装置」とあっても、方法が分類されることもある。
また、生産物の製 造に関する分類箇所が存在しない場合、生産物を包含する分類箇所に分
類される。
製造物品
発明の主題が物品に関する場合、物品を扱う分類箇所に分類する。物品そのものの分類
箇所が存在しない場合には、物品の機能に従って分類し、それができない場合には使用分
野に従って分類する。
多段階工程・産業プラント
発明の主題が複数の工程や装置それぞれの組み合わせからなる多段階工程または産業プ
ラントにある場合、それら全体を分類するべく、組み合わせに関する分類箇所に分類する。
こうした分類箇所が存在しない場合には、その工程またはプラントによって得られる生産
物の分類箇所に分類する。
発明の主題が、組み合わせの各要素にも関連している場合、その各要素もそれぞれ分類
する。
2.2.3. サブクラス内の 3 つの一般分類規則
a.
一般ルール
後述する b・cの分類規則の適用が宣言されていない場合、分類は一般ルールに基づい
て行う。
一般ルールでは、技術主題を分類する際は、より複雑な主題事項に関するグループに優
先して分類し、また、より特殊な主題事項に関するグループに優先して分類する。
- 14 -
たとえば、ある要素の組み合わせである技術主題は、それぞれの要素のグループではなく、
それらの組み合わせとしてのグループに優先して分類される。
b.
優先ルール
ファーストプレイス優先ルール
このルールでは、各グループ階層において、対象となる技術主題のいずれかの部分を含
むグループで、グループ記号の数字の最も若いグループを順次選択することで分類を行う。
このルールが適用される分類表では、グループの標準配列が記載される。標準配列とは、
グループ内最上位階層のもっとも複雑または特殊な主題事項から、グループ内最下位階層
のあまり複雑でないまたは一般的な主題事項へ至る順番に並べたものである。
ラストプレイス優先ルール
このルールでは、各グループ階層において、対象となる技術主題のいずれかの部分を含
むグループで、グループ記号の数字の最も大きいグループを順次選択することで分類を行
う。
このルールが適用される分類表のグループの並び順は、グループ内最上位階層のあまり
複雑でないまたはより 一般的な主題事項から、グループ内最下位階層のより複雑または特
殊な主題事項へ至る順番に並べられている。
c.
特別ルール
一部の分類表では、特別な分類ルールが用いられ、それは上述のルールに優先する。
2.3.
IPC の表記方法
特許文献に記載される IPC の公式な略語は、「Int.Cl.」であり、IPC に従って分類さ
れた文献の分類記号の前に記載されている。
フル IPC によって分類する場合、分類記号に続いて、その記号がいつ新設・改正された
かを示すバージョン表記(年 .月)を丸括弧で囲んで表示する。
分類記号の書 体には、以下のような意味がある。
・イタリック(斜字)体
フル IPC を用いて分類されたもの
・非イタリック体
メイングループのみを用いて分類されたもの
・太字
発明情報の分類記号
・非太字
付加情報の分類記号
- 15 -
日本の公開特許公報の例
上の例において、発明情報を表す分類記号は G01B 12/345, G02C 9/87, G01B 67/89 で
あり、付加情報を示す分類記号が G01B 12/456, G01B 34,56 である。日本ではフル IPC で
分類を行っているので、すべてイタリック体であ る。
2.4.
近年の IPC の改正(IPC リフォーム)
2.4.1. IPC 第 7 版から IPC 第 8 版への改正
IPC は、特許庁の審査官・出願人・その他利用者が特許文献を検索するためのサーチツ
ールの確立を目的のひとつとして運用されてきたが、膨大な文献を抱える大規模庁にとっ
ては分類が大まか過ぎて検索が困難になりつつある一方、小規模庁には細かすぎて分類作
業の負担が大きかった。
さらに、大規模庁では自国での検索を効率よく行うため、各国独自の分類体系を確立し、
外国特許文献に関しても自国の分類を付与しなおさなければな らない、などの問題が生じ
ていた。また、5 年に一度の改正では、加速する技術の進展に対応しきれないという問題
もあった。
こ れ ら の 問 題 を 受 け 、 1999 年 3 月 の WIPO/IPC 同 盟 専 門 化 委 員 会 ( Committee of
Experts of the IPC Union)において IPC の改革の検討が開始されることになった。こう
して、IPC 第 8 版が 2006 年 1 月に発効した。その変更点は、以下のようなものだった。
2.4.1.1.
IPC の 2 層構造化
IPC 第8版では、「アドバンストレベル」と「コアレベル」に二層構造化 された。
アドバンストレベルは、日本国特許庁を含む大規模 庁が付与する分類であり、技術の発
展に柔軟に対応できるよう、改正を 3 ヶ月に 1 度(1/1、4/1、7/1)のタイミングで可能
としていた。アドバンストレベルの改正をするための組織として、専門化委員会に特別小
委員会(Special Subcommittee of the Committee of Experts )を設け、構成メンバーは、
国際事務局と、PCT 最小限資料の再解析負担が前文件数の 20%を超える省庁(日本国特許
- 16 -
庁・欧州特許庁(EPO)、米国特許商標庁( USPTO)の 3 庁)であった。アドバンストレベ
ルの改正は、特別小委員会での承認後、その改正に沿った再分類を経て発効することとさ
れていた。
一方、コアレベルは、中小規模庁が付与しやすい安定した分類であり、分類項目はアド
バンストレベルの 30%程度に絞り込まれていた。コアレベルの改正は、 IPC リビジョン作
業部会での採択と、IPC 専門化委員会での承認により行われていた。改定は 3 年ごとに発
効されることとし、2009 年にも発効が行われた。
2.4.1.2.
最新版 IPC による、既 発行文献の再分類
第 7 版まで、 IPC の公報への付与は、公報の発行時に有効な IPC を付与することにより
行われており、検索の際には、その対象となる公報の発行時にあわせて有効な IPC の版を
用いて行う必要があった。
第 8 版以降では、PCT 最小限資料について、最新版の IPC による再分類を行い、検索の
際はすべての公報に対し最新の IPC を用いることができるようになった。
2.4.1.3.
分類付与ルールの見直し
IPC の目的を全うするには、分類付与のばらつきが少なく安定したものであることが望
ましい。そのため、分類付与ルールの簡素化・明確化の検討がなされ、結 果として、「フ
ァーストプレイス優先ルール」が導入された。今後 IPC を改正する分野については、原則
として当該ルールを適用することとした。
2.4.1.4.
分類項目の標準配列
標準配列とは、分類グループを、最上位階層にある最も複雑または特殊な主題事項から、
最下位階層にあるあまり複雑でない、または一般的な主題事項へと進むよう並べられた配
列であり、ファーストプレイス優先ルールが適用される分野で導入されている。
標準配列を採用していない分野においても、 WIPO の WEB サイトに掲載されている IPC 分
類 表 ( http://www.wipo.int/ipcpub/) に お い て 、 メ イ ン グ ル ー プ を 標 準 配 列 に 並 び 替 え
て表示する機能が提供されている。
2.4.1.5.
インデキシングコードの扱い
IPC 第 7 版まではインデキシングコードはスラッシュの代わりにコロンを用いて行事さ
れていたが、第 8 版では分類記号と同じくスラッシュを用いた表記に変更された。
また、それまで存在した、分類とインデキシング両方の目的で使用するコードや、イン
デキシングコードのリンクが廃止された。
2.4.1.6.
分類定義の表現の統一
IPC の各サブクラスに記載されている定義・注・参照・索引などの説明文章について、
各 サブ ク ラ スに よ っ て 表 現に ば ら つき が あ っ た ため 、 WIPO に お い て それ ら を 統一 し た表
- 17 -
現に書き直す作業が進められている。
書き直され、採択された定義は、 WIPO の WEB サイトに掲載されている。(サブクラス
記号 の 左に 表 示 され た 「 D」 とい う アイ コ ン をク リ ック す る と、 採 択さ れ たサ ブ ク ラス の
定義が表示される。)
また、タイトルの中の情報参照については、タイトルへの記載をやめ、定義にのみ記載
する方向で作業を進めている。
2.4.1.7.
X-記号の廃止
通常、特許文献に開示されている発明情報は、 1 以上の分類箇所に適切に分類される。
しかし、技術の発展に伴い、現行の分類表に当てはまらない場合が存在し、 IPC 第 7 版ま
ではクラス・サブクラス・セクション・メイングループ表示記号に X を付加して分類を行
っていた。
第 8 版ではこの X-記号が廃止され、代わりに各セクションに特別な残余メイングルー
プと呼ばれるものが導入されている。ここには、どのサブクラスにも適切に分類できない
特 許文 献 の 発 明情 報 が 分 類さ れ 、 適 切な セ ク シ ョン 記 号 の 後ろ に ” 99Z 99/00” を つ けた
表示記号で表示される。残 余メイングループの導入に関しては、現在もなお議論が行われ
ている。
2.4.2. IPC 第 8 版からフル IPC へ
上述のとおり、IPC は二層構造化したものの、世界の大多数の特許庁が分類のためにア
ドバンストレベルを使用しているという現状があった。また、2つのレベルをもつ複雑性
や、それぞれ独立した改正サイクルや手続きをもつことによる弊害も発生していた。
こ の よ う な 状 況 の 下 、 2008 年 2 月 の WIPO/IPC 同 盟 専 門 家 委 員 会 ( Committee of
Experts of the IPC Union)において、IPC アドバンストレベル小委員会の構成の再検討
が決定された。議論を重ねた結果、 IPC の改正と発効の手順について、「アドバストレベ
ル」と「コアレベル」の一本化を含む以下の事項が 2009 年 3 月の WIPO/IPC 同盟専門家委
員会において決定された。さらに、 2010 年 2 月の専門家委員会において詳細な議論がな
され、最終的に以下のように決定された。
2.4.2.1.
コアレベル・アドバンストレベルの一本化
2つのレベルが一本化され、アドバンストレベルに相当する1つの分類表のみを維持・
発行してゆくことが決定された。これを「フ ル IPC」と呼ぶ。
なお、フル IPC を利用することが困難な小規模庁は、フル IPC のうちのサブクラスレベ
ル・メイングループのみを用いて分類することができる。
2.4.2.2.
IPC 改正周期について
フル IPC の導入に伴い、IPC 改正周期を年 1 回(毎年 1 月 1 日に発効)とすることが、
2009 年 3 月に決定された。
- 18 -
2.4.2.3.
IPC 改正の検討組織の一本化
すべての IPC 改正プロジェクトは、 IPC リビジョン作業部会において議論されることに
なった。そして、IPC リビジョン作業部会で承認された分類表は、 WIPO/IPC 同盟専門家委
員会によって採択された後に発行する。
2.5.
国際的な分類調和の動き
IPC リビジョン作業部会において議論される IPC 改正提案には、以下のタイプがある。
・日米欧の三極特許庁による三極分類調和プロジェクトに由来する IPC 改正提案
・日 米 欧 中韓 の 五 大特 許庁 協 力 に基 づ く ハイ ブリ ッ ド 分類 ( CHC) プロ ジ ェ クト に 由 来す
る IPC 改正提案
・IPC 同盟専門家委員会で承認されたその他の IPC 改正提案
三極分類調和プロジェクトまたは CHC プロジェクトに由来する IPC 改正提案ついては、
IPC リビジョン作業部会において優先的に扱われる。三極分類調和プロジェクトと CHC プ
ロジェクトの詳細は、以下のとおりである。
①三極分類調和プロジェクト
日米欧の三極特許庁は 2000 年 11 月に三極分類調和プロジェクトを開始することで合意
し、三極特許庁間で得られた分類表を IPC として採用することを念頭において、分類調和
の作業を進めてきている。
具体的には、これまで約 80 の分野で分類調和の検討が行われ、三極 特許庁間で合意が
得 られ た 分 野 につ い て は 、 IPC リビ ジ ョ ン 作 業 部会で IPC に 向 け た 議論 が 進 行 中ま た は
IPC として発効済みである。
ま た、 三 極 分 類調 和 プ ロ ジェ ク ト の 議論 を 加 速 させ る た め 、 2005 年 度か ら 三 極 特許 庁
の 審査 官 が 集ま っ て 分 類 調和 に つ いて 議 論 す る 審査 官 分 類協 議 を 開 始 して い る 。 2010 年
度は 8 分野での審査官分類協議が開催された。
このように進められてきたプロジェクトであったが、②の五大特許庁の CHC プロジェクト
に集中するため、議論中だった全プロジェクトは 2011 年末までに終了した。
②五大特許庁協力に基づく CHC プロジェクト
2008 年 10 月に韓国・済州島で開催された第 2 回五大特許庁長官会合において、五大特
許庁 の 長 官は 一 層 のワ ーク シ ェ アリ ン グ 促進 に向 け て 、 10 の 基 礎 プロ ジ ェ クト に 協 力し
て取り組んでいくことに合意した。分類調和に関しても、 10 の基礎プロジェクトの 1 つ
として、欧州特許庁( EPO)を主担当庁とした CHC プロジェクトが進められることになっ
た。
CHC プロジェクトは、各庁が独自に展開する内部分類(日本の FI、EPO の ECLA など)
の中から、IPC への適用に適した分類を五大特許庁共通の分類として採用するプロジェク
- 19 -
トである。分野によっては、複数の庁の内部分類を組み合わせることもありうる。
この方法は、①の三極分類調 和プロジェクトでは、新規の分類表作成に多大なリソース
を要したことから考え出されたものである。
また、五大特許庁において CHC プロジェクトが採用された背景には、世界中で 発行され
る特許文献の数が増大している状況において、五大特許 庁間のワークシェアリングの推進
に寄与することへの期待がある。共通の分類表を各庁で使用することは、審査官が調査を
する際、他庁 発行文献へのアクセスが容易になるというメリットがある。また、将来的に
これを IPC として採用することになれば、パテントファミリー単位で再分類結果が反映さ
れるため、各庁の 再分類リソースの削減にも寄与することになる。
2011 年 6 月までに約 20 の分野が提案され、議論に移行したものは 6 分野である。
3.
FI(File Index)
3.1.
FI の展開記号
FI の展開記号は、 IPC の最小単位であるグループをさらに細かく展開している。展開記
号もグループと同様ドットを用いた階層構造をとっており、 IPC と連続した階層を持って
いる。
展開記号は必ず IPC の完全記号と併記されるが、もし 1 個のグループに 2 個以上の展開
記号が付与される場合、公報には IPC 記号は1つのみ表示され、2 つ目の展開記号の前の
IPC 記号は省略される。
3.2.
分冊識別記号
分冊識別記号は、IPC または展開記号をさらに細かく展開するために用いられる。この
記号は、I と O を除く A~Z のアルファベット 1 文字を使用している。
分冊識別記号が適用されるグループでは、必ず「 Z その他」という記号が用意されてお
り、どの分冊識別記号にも属さないものは Z に分類される。
また、最近では分冊識別記号にもドットを用いた階層構造が存在するが、これらは IPC
や展開記号の階層とは独立している。
3.3.
FI と IPC の版の対応について
FI は IPC 第 7 版以前から存在するため、一部の FI は旧 IPC のルールに従った表記とな
っているものがある。
たとえば、インデキシングコードにコロンが用いられているもの、インデキシングと分
類用の両方で使われているもの、リンクして括弧表記となるものが存在する。
3.4.
FI の改正について
FI は現在、年に1~2 回、分野ごとに追加・廃止・更新などの改正が行われている。こ
れを受けて再分類作業を行っているが、その期間中は、新旧両方の FI を用いて検索する
必要がある。
- 20 -
FI の改正にかかる情報は、特許庁の WEB サイトで参照するこ とができる。
4.
F ターム
4.1.
F タームの表記
4.1.1. テーマ
F タームは FI で定められる一定の技術範囲ごとに区分して整備されており、区分され
た各技術範囲を「テーマ」と呼んでいる。このとき FI で定められるテーマの技術範囲の
こと を 、 その テ ー マの 「 FI カ バ ー 範囲 」 と いう 。 各 テー マ に は、 その 技 術 分野 を 端 的に
表す「テーマ名」と、英数字 5 桁のコードからなる「テーマコード」が必ず付与されてい
る。
例:FI カバー範囲
テーマ名
:
テーマコード
:
G11C 17/00~17/06,301
リードオンリーメモリ
:
5B125
現在、全技術分野が、約 2600 のテーマにより区分されており、そのうち約 1800 のテー
マ(約 7 割)において F タームが作成され、国内特許文献のサーチキーとしてサーチに利
用されている。F タームリストが存在するテーマを「 F タームテーマ」といい、存在しな
いテーマを「 FI テーマ」という。
各テーマの FI のカバー範囲、テーマ名、テーマコード及び F タームを記したリストを
「F タームリスト」と呼ぶ。
テーマの範囲は、 F ターム検索システムが開発された当初は、多くの場合単一のテーマ
内で検索を行えば十分となるような技術的なまとまり毎に作成された。当時は大まかに
IPC におけるメイングループ程度のまとまりを念頭においてテーマを策定したが、その後、
蓄積文献数の増大で細分化された技術分野や、検索システムの性能向上や技術動向の変化
等を背景としてより大きなまとまりに統合された技術分野がある。
4.1.2. F タームの観点、付加コード
F タームは「テーマコード(英数字 5 桁)」+「観点(英字 2 桁)」+「数字 2 桁」に
て構成される。通常テーマコードは別途表示されることが多いため、前 5 桁が省略された
「観点 2 桁+数字 2 桁」をさして「F ターム」と言うことも多い。
ここでいう「観点」とは、その下に展開される複数の F タームを取りまとめる概念に対
応して設定されるものであり、一般的な観点の例としては、「目的」「機能」「構造」
「材料」「用途」「製造方法」等が挙げられる。
一部のテーマについては、上記の表記形式に加え、さらに「付加コード」と呼ばれる 1
文字の英数字が設定されているものもある。この付加コードは F タームを補完する機能を
持ち、F タームの後ろにドット(.)を付け、それに続いて付加される。
付加コードは F タームを展開した観点とは別の技術観点 の情報を付加するものであるが、
- 21 -
F タームの「観点」は各テーマで共通の意味を持つ一方、付加コードは個々の F タームご
とに 情 報 を関 連 付 けて 付加 す る こと が で きる 点に 特 徴 があ る 。 現在 、 70 テ ー マ 以上 で付
加コードが採用されている。
4.2.
F タームの構成
4.2.1. F タームの種類
4.2.1.1.
F タームの解析対象(FI と F タームの関係)について
「解析要否」について
FI には 、 個 別 のF I ご とに F タ ーム の 「 解 析 要否 」 が 設定 さ れ て い る。 あ る 文献 に付
与された複数のFIの中に、ひとつでも「解析要」のものがあると、その FIを含むテー
マのFタームリストに含まれるいずれかのFタームが付与されることになっている。
「解析要否」については、現行のパテントマップガイダンスシステムにおいて、テーマ
コードへのハイパーリンクの有無で判別できるようになっている。
例)解析要否の実例
- 22 -
参考)PMGS 画面
「部分 F テーマ」について
前記したように、 F タームリストが存在するテーマのことを「 F タームテーマ」という
が、「F タームテーマ」の中でも、テーマ内に「解析否」の FI が存在するテーマのこと
を、「部分 F テーマ」という。
「部分 F テーマ」においては、テーマの「 FI カバー範囲」の FI がすべて「解析要」で
はないため、 F タームを用いた検索を行う際には留意する必要がある。
なお、特許庁 WEB サイトの「 F タームテーマコード一覧情報(テーマコード表)」にお
いては、FI テーマ、部分 F テーマ、F タームテーマの区別を「解析タイプ」として表して
いる。
・FI テーマ
・部分 F テーマ
「FI」
「部分 F」
・F タームテーマ(部分 F テーマ以外)
4.2.1.2.
「F」
F タームの解析範囲( F ターム視点の「FI 適用範囲」)について
F タームでは、「観点」ごとに 、適用される FI 範囲が定められている。すなわち、文
献に「解析要」の FI が付与された場合も、その FI を含むテーマ内のすべての F タームが
付与されるわけではなく、付与された FI に応じて、付与される F タームの範囲が、原則
として、観点単位で特定されている。
こ の対 応 関 係を 表 し た も のが 、 「 FI キー と 観 点の 関 係 」と 呼 ば れ る もの で あ り、 現行
のパテントマップガイダンスシステムにおける各テーマの「 F ターム解説」中に記載され
ている。
例)「FI キーと観点の関係」の実例( 2B005 の例)
- 23 -
4.2.2. 解析年範囲について
「解析開始年」について
F タームは、IPC、FI と同じように、過去のすべての文献について最新版の F タームリ
ストにより解析されているが、一部例外があり、最新版の F タームリストであっても、 F
タームが解析される文献の年範囲(=「解析年範囲」)が限られている場合がある。これ
は再交付に要する人的負担やコストを考慮したためで、最新技術に対応するために F ター
ムリストを作成しなおした際、あるテーマにおいて、特定の年付の前後で文献を区別し、
その年以前に公知された文献は最新の F タームの再付与を行わず、その年以降に公知され
た文献には再交付を行う、といった場合があることによる。そのようなテーマにおいては、
必ず「解析開始年」が設定されている。
「解析開始年」が設定されているということは、それ以降の公知日を有する文献につい
ては最新の F タームが付与されるよう維持・管理されているということであり、 F ターム
解析がなされていることの保証と考えることができる。また、「解析開始年」が設定され
ている場合は、それ以前の公知日を有する文献に対する検索は、旧版の F タームリストを
用いる必要があることが多いため、注意が必要である。
なお、「解析開始年」が設定され ていても、最新版の F タームによる検索で、解析開始
年以前の公知日を有する文献が検索できることがある。これは、機械的なデータ処理によ
り最新版の F タームが付与できる場合に解析開始年以前の文献にも最新の F タームを付与
しているためであり、そのようなテーマにおいては、最新の F タームリストを用いて過去
に渡るすべての文献を検索できるようになっていることがある。
- 24 -
「解析終了年」について
現在、F タームリストを作成しなおした際、新 F タームリストには新しいテーマコード
が割り当てられることになっており、旧 F タームリストに割り当て られていたテーマコー
ドの解析は、新テーマコードでの解析が始まった時点で終了する。この終了時点の目安と
なるのが「解析終了年」である。
「解析終了年」は、F タームリストを作成しなおした場合のほか、 F タームの解析を停
止し、そのテーマを FI テーマに変更した場合にも見られる。「解析終了年」については、
特許庁 WEB サイトの「 F タームテーマコード一覧情報(テーマコード表)」において参照
可能である。
なお、文献の公知日で明確に区切る「解析開始年」と異なり、「解析終了年」の設定は
解析を終了した年を目途としているため、文献の公 知年範囲とは完全に一致しない。
4.2.3. 観点の設け方
検索に F タームを用いる際は、観点の構造を理解することが重要である。観点の設定の
仕方は技術分野ごとに異なるが、代表的な例を以下に記す。
4.2.3.1.
発明の特徴点を単純に類型化した観点(タイプ 1)
発明の特徴点を、単純に適当数に類型化できる技術分野において採用されている。具体
的には、機械・日用品・電機部品等に多く見られる。
こういった分野における F タームリストは、発明の特徴点を類型化し、それらを F ター
ムや観点にグループ化していくことにより作成 される。
たとえば、A という観点でグループ化された a1~a5 という特徴点と、 B という観点でグ
ループ化された b1~b5 という特徴点が存在する場合、ある文献に B の観点から b2 の特徴
点があれば、 F ターム b2 が付与される。また、検索の際には、複数の F タームの論理積
を検索することもできるものの、それぞれの特徴点は単純に類型化されていることから、
単独で用いて検索することが多くなる。
このスタイルの F タームリストは細分化される傾向にあるため、観点ごとに FI 適用範
囲が異なっていることが多い。
4.2.3.2.
発明の特徴点を、技術要素の組み合わせにより類型化した観点(タイプ
2)
発明の特徴点が、複数の技術要素の組み合わせで表現できる場合で、組み合わせごとに
類型化したのでは極端に数が多くなってしまう場合において採用されている。具体的には、
組成物、制御等の分野に多く見られる。
こういった分野における F タームリストは、発明の特徴が複数の技術要素の組み合わせ
であることから、組み合わせの元となる観点を複数設けて、それらの中から選ばれる F タ
ームの組み合わせで表現するように作成される。
- 25 -
たとえば、発明の技術要素が a2×b1×c1×d3 の組み合わせで表現される場合、その発
明には F ターム a2、b1、c1、d3 が付与される。また、検索の際には、注目する特徴点の
組み合わせに応じて、複数の F タームの論理積を検索し、その検索結果に応じ、適宜検索
式の要素を修正してサーチ範囲を広げていくのが一般的である。
このスタイルの F タームリストは、多観点の検索インデックスであることの特徴を大い
に活用するものである。
4.2.3.3.
タイプ1とタイプ2の中間的、または混合的な技術分野での観点
タイプ1とタイプ2の技術分野は明確に分けることはできないため、両者の中 間的な技
術分野や混合された技術分野も存在する。
このような場合の F タームリストは、タイプ 1 同様、観点ごとに FI 適用範囲が異なっ
ていることが多い。
4.3.
F タームのメンテナンス
F タームリストは、技術の進展や 蓄積文献数 の増加に応じて、検索制度や検索効率を維
持で き る よう に 新 たに 作成 し な おし た り 、テ ーマ の 統 合や 分 割 を行 った り 、 FI テー マに
おいて F タームリストを作成して F タームテーマ化を行うことなどがある。これらを、 F
タームのメンテナンスと読んでいる。
現在の運用では、 F タームリストを作成しなおした際にはテー マコードが新たに付与さ
れるため、メンテナンスが行われたテーマを検索する際には、使用する検索インデックス
に注意が必要である。
また、F タームリストを作成しなおしたり新たに作成したりする際には、過去に 発行さ
れた公報にも F タームを付与しなおす、再解析を行うことが多く、再解析期間中は、通常、
新旧両方の検索インデックスを利用して検索する必要がある。
これら F タームのメンテナンスに関する情報は、特許庁 WEB サイトの「テーマ改廃情
報」において「最近メンテナンスされたテーマ」、「メンテナンス予定のテーマについて
の情報」等の情報を、「F タームテーマコード一覧情報(テーマコード表)」において
「過去のメンテナンス情報」、「再解析作業中のテーマについての情報」等の情報を参照
することができる。
- 26 -
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