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省エネルギー・創エネルギー住宅設備における動向

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省エネルギー・創エネルギー住宅設備における動向
特集
豊かで安心な暮らしを支える最新の住宅設備事情
02
省エネルギー・創エネルギー
住宅設備における動向
よし だ
積水ハウス株式会社 技術部 部長
もと き
吉田 元紀
1989 年 宇都宮大学大学院 工学部 建築工学科修了。
同年 積水ハウス株式会社に入社。主に3階建住宅の商品開発に従事、性能・設備を担当。
2009 年より、官庁、関係団体、大学等の技術渉外窓口を担当、今に至る。
はじめに
多くの太陽光発電パネルを屋根に載せて効率よく発電す
る目的で、片流れ屋根を採用した新しい住宅商品の開発
も積極的に行われている【図表1〜3】
。
住宅設備といえば一昔前までは、キッチン、バスユニ
ット、洗面化粧台、便器、給湯器、エアコンといった機
2002 年以降の太陽光発電の出荷状況をみると、2005
器が対象だった。しかしここにきて、省エネルギー、創
年に新エネルギー財団による助成が打ち切られ、出荷量
エネルギー設備、情報設備といった新しい機器が導入さ
が一時伸び悩んだ時期もあったが、2008 年以降は助成
れ、住宅における設備機器の状況も昔に比べて変化して
策が再び強化されることで、着実にその数を増やしてき
いる。燃料電池、蓄電池といった今まで住宅レベルでは
た。2011 年には電力会社が、住宅向けには発電した電
考えられないような設備も商品化されており、既に一般
力のうち自己消費分を除いた余剰電力を 10 年間、事業
に販売されている。今後も、省エネ、創エネ、快適性、
者向けには発電された全ての電力を 20 年間買い取る仕
安全、健康といった住まい手のニーズに対し、住宅設備
組みである、再生エネルギーの固定価格買取制度がスタ
には一層の技術開発とその普及が求められるところであ
ート。この制度が市場に浸透し、同時に様々なビジネス
る。ここでは住宅における省エネ・創エネ設備を中心に、
モデルが出てくることで、
普及に向けて大きく前進した。
それぞれの技術動向、普及状況、課題について紹介する。
例えば、収益を重視するアパートで、大容量の太陽電池
を設置し全量買取制度を利用することで、月々の返済等
省エネ・創エネ設備の最新動向
にあてるといったケースがこれに該当する。直近の状況
から見ても 2020 年の導入に向けた政府目標 1400 万
kW(2005 年比の 10 倍)に対して、比較的順調に推移し
(1) 太 陽 光 発 電
再生エネルギーの中で最も普及が早い太陽光発電は、
ている【図表4①】
。パネル出荷状況の推移を生産別で
みると国内向けにおいては、
海外生産品の伸びが顕著で、
ここ数年で急激にその数を増やしてきた。当初、太陽光
中国製品をはじめ比較的安価な製品が国内市場に多く投
発電の設置は通常の屋根の上にパネルを後置きする仕様
入されていることも、出荷量の押し上げに貢献している
が一般的であったが、最近では屋根に設置した際の意匠
【図表4②】
。太陽電池モジュールを種類別でみると、シ
性を考慮し、屋根材と一体になった太陽光発電パネルも
リコン、化合物半導体に大別されるが、統計結果では多
世の中に出ている。また、住宅メーカーでは、少しでも
結晶シリコン太陽電池が出荷量 50%以上を占めている
26
Housing Finance 2014 Winter
省エネルギー・創エネルギー住宅設備における動向
主管の総合資源エネルギー調査委員会 新エネルギー小
【図表4③】
。
委員会で議論されており、おそらく固定価格買取制度を
普及に向けて順調に進んでいた太陽光発電だったが、
活用する物件にはなんらかの制約等が設けられることが
ここにきて一部の電力会社から、今後、固定価格買取制
予想される。購入者側にも買取制度の将来について不安
度の届出が出された全ての太陽光発電を接続すると、電
の声が出ており、住宅を含め太陽光発電の設置数量にお
力網などに影響を与え、安定した電力供給ができない可
いても影響がありそうである。
能性があるとの問題が報告された。現在、太陽光を含め
た再生エネルギーの将来については、資源エネルギー庁
図表1
太陽光電池の種類
太陽電池の種類
特
徴
単結晶シリコン太陽電池
太陽光発電の中で最も古くから利用されていたタイプ。
変換効率が多結晶に比べての高い。価格も多結晶に比べて高価。
多結晶シリコン太陽電池
現在、最も多く設置されているタイプ。
変換効率は単結晶シリコンより低い・製造エネルギーが少なく、
安価。
結晶シリコンの 1/100 程度の薄いシリコン膜を使用されており、
薄膜シリコン太陽電池
加工がしやすく大量生産に向いている。高温時でも出力が可能。
(アモルファスシリコン太陽電池)
変換効率は多結晶シリコンより低い。
化合物系太陽電池
図表2
次世代の太陽電池として、今後の開発が期待される。
省資源でなおかつ多結晶シリコンに次ぐ性能が出せる。
2階建住宅(片流れ屋根)
太陽光発電設置例
2階建住宅(寄棟屋根)約6.7kW
2階建住宅(切妻屋根)約4.5kW
3階建住宅(陸屋根)
約4.3kW
(出典)積水ハウス
図表3
屋根一体型太陽光発電施工例
屋根工事と同時に行う太陽電池モジュールの取り付け・配線工事
太陽電池モジュール
(出典)積水ハウス
Housing Finance 2014 Winter
27
特集
豊かで安心な暮らしを支える最新の住宅設備事情
図表4
太陽光発電の実績
[万kW]
1,000
900
①太陽光発電用途別の出荷量推移
発電事業用
住宅用
800
非住宅用
700
290
600
500
237
400
72
300
200
5
100
0
2
2002
2
2003
2
2004
3
2005
3
2006
4
3
2007
2008
187
54
7
86
20
121
14
122
2009
2010
2011
2012
328
2013
年度
○発電事業用は2011年度より区分実施
○発電事業用は非住宅用途とは別途計上
②国内外生産別の出荷量推移
[万kW]
1,600
国内生産海外出荷
1,400
国内生産国内出荷
1,200
8
海外生産国内出荷
1,000
855
800
600
56
400
381
200
0
2002
2003
38
27
58
31
60
27
70
21
88
24
2004
2005
2006
2007
2008
105
148
481
128
62
106
140
144
2009
2010
2011
2012
2013
年度
③種類別の出荷量推移
[万kW]
1,000
その他
900
単結晶シリコン
800
多結晶シリコン
700
90
299
600
500
400
80
300
100
0
2002
2003
20
43
33
51
32
50
31
52
2004
2005
2006
2007
103
36
63
21
63
83
132
102
2008
2009
2010
2011
年度
(出典)太陽光発電協会
28
Housing Finance 2014 Winter
太陽光電池の出荷統計
64
39
83
200
156
474
201
2012
2013
省エネルギー・創エネルギー住宅設備における動向
(2) 燃料電池
図表6
燃料電池
2009 年から発売された燃料電池は、ガスから水素を
取り出し、空気中の酸素と反応させ発電、さらに発電時
の排熱で同時にお湯をつくるシステムである。燃料電池
は火力発電等と比べ、排熱の利用によってエネルギー利
用率が高く、自宅で発電するため、送電ロスが少ないと
いったメリットがあげられる。ガス会社等の CM 等を
通じて、
「エネファーム」という名称や発電の仕組みもよ
うやく一般市場に認識されてきた。現在、家庭用燃料電
池には固定高分子形燃料電池(PEFC)と固定酸化物形
(出典)積水ハウス
燃料電池(SOFC)の2種類があり、製造メーカーはそ
れぞれの特徴を活かした製品を発売している【図表5〜
7】
。
図表7
燃料電池の一次エネルギー削減効果
販売台数をみると発売以降増加傾向にある【図表8】
。
ただし、2014 年9月現在で累計 10 万台を突破したが、
国は 2020 年までに 140 万台を目標に掲げており、一層
の普及啓発が必要な状況にある。資源エネルギー庁は、
日本独自の創エネ技術である燃料電池に対して、
「民生
用燃料電池導入支援補助金補助金」を投入することで、
一層の普及を後押ししている。国の補助制度のほかに
も、一部の自治体では家庭用燃料電池購入者に対する独
自の補助・支援制度が用意されている。
(出典)東京ガス
今後さらなる普及を目指し、マンションを中心とする
集合住宅への設置、リフォーム時の対応を前提とした商
図表8
燃料電池販売実績
品開発が望まれる。一部のメーカーではこうした商品も
台数
50000
ラインナップされ始めている。このように対応力が強化
45000
され、出荷数量が増えることで、新築も含めたコストダ
40000
ウンときめ細かなメンテナンス体制の拡充が期待され
35000
る。
30000
その他
LPガス
都市ガス
5734
25000
3958
20000
15000
1789
10000
図表5
燃料電池の種類
燃料電池の種類
5000
特
徴
PEFC
(固体高分子形)
電解質がプラスチック製。
排熱回収効率が高く起動停止が比較的容易
SOFC
(固体酸化物形)
電解質がセラミックス製。
電力負荷に合わせて 24 時間連続運転が可能。
発電効率は PEFC に比べが高く、本体も比較
的小型。
0
4997
6469
2009
2010
2443
27797
20559
19069
11670
2011
2012
年度
2013
2014
(4∼9月)
○エネファームメーカー販売台数とは、メーカーが出荷・納品した
エネファームの台数
○台数カウントのタイミング(出荷・納品)はメーカーによる
(出典)コージェネレーション・エネルギー高度利用センター
Housing Finance 2014 Winter
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特集
豊かで安心な暮らしを支える最新の住宅設備事情
(3) 蓄 電 池
自動車のバッテリー、最近はノートパソコン、携帯電
図表9
蓄電池の種類
蓄電池の種類
話、デジタルカメラ向けと、蓄電池は身近なところで使
われている。より高い安全性が求められる電気自動車や
鉛蓄電池
リチウムイオン電池
携帯電話やデジタルカメラの電池と使用
使用法によっては発火する可能性もあり、安全
装置を内包した電池パックという形となってい
る。
充電や放電を何度も繰り返したり、継ぎ足して
充電したりする機器に適している。
されており、家庭用蓄電池システムにもこうした技術が
組み合わせることで、日中発電した電力を電力使用の多
徴
鉛蓄電池は電極に鉛を使用している。
身近なものだと自動車のバッテリーがその代表
例。大型で重く、比較的高い電圧でを使用する
ことが可能。
最も生産量が多く、普及している。電極が劣化
しやすいという欠点がある。
ハイブリッド自動車において、蓄電池技術は広く実用化
活かされている。住宅において蓄電池は、太陽光発電と
特
い別の時間に使用することが可能となる。また、夜間に
電力会社から買う安い電力を貯めて、昼間活用すること
で電気料金を削減することができる。そしてなにより
も、停電時には非常用のバックアップ電源として活用す
図表 10
蓄電池
ることが可能で、東日本大震災、その後の計画停電等を
経験する中で、非常時の電力確保できる技術として注目
されてきた。蓄電池の種類には鉛蓄電池、リチウムイオ
ン蓄電池、ニッケル蓄電池等が挙げられる【図表9、10】
。
一般の自動車バッテリーでの実績やコスト面からも、大
容量の蓄電池には鉛を使用することが多かった。しか
し、最近では電気自動車やハイブリット自動車での実績
により、リチウム蓄電池が住宅でも多く使用されるよう
になってきた。しかし、リチウムイオン蓄電池は価格も
高く、普及が進んでいないのが現実である。国の補助金
リチウム蓄電池
(4.65kWh)
鉛蓄電池
(8.96kWh)
(出典)積水ハウス
制度として、資源エネルギー庁管轄の「定置用リチウム
イオン蓄電池導入促進対策事業補助金」があるが、補助
金だけでは、購入価格の低減には限界があり、自動車で
の普及による量産効果を、家庭用の蓄電池においても期
待したいところである。
( 4 ) H E MS ( ホ ー ム ・ エ ネ ル ギ ー ・ マ ネ ー ジ メ
ント・システム)
HEMS には居住者が家庭内でのエネルギー使用状況
太陽光発電の項でも触れた再生可能エネルギーの固定
を把握する仕組みとして「エネルギーの見える化」が、
価格買取制度に問題がおきたことで、今後蓄電池を設置
省エネ効果に大きく寄与するとの期待がもたれていた
し、自家発電した電力を充放電することで、積極的に家
【図表 11】
。しかし様々な調査の中で、長く飽きずに継続
庭内で自家消費を促す仕組みが重要視される。そうした
した効果を得るにはなかなか難しいとの結果も一部得ら
システムづくりに蓄電池は欠かせない設備といえる。
れている。機器メーカー、住宅メーカーともに如何に飽
きさせずに、継続して HEMS を使用してもらえるかが
重要な課題といえる。
HEMS に求められる機能である、家電等の機器制御・
連動するための規格として、
「エコネットライト」が、標
準化された。その後、資源エネルギー庁主管の「エネル
ギー管理システム導入促進事業費補助金」でもこの規格
が補助対象の条件となっている。しかし家電を含めた連
携は一部のメーカーに限定されており、まだまだ規格の
30
Housing Finance 2014 Winter
省エネルギー・創エネルギー住宅設備における動向
標準化によるメリットの恩恵を受けているとは言い難
外気を室内に取得する際に花粉の除去といったフィルタ
い。
ーを取り込むことが可能で、健康面においての配慮を行
このように、
HEMS については、
今後の普及に向けて、
うこともできる【図表 12】
。
課題を抱えており、単に表示における工夫にとどまらず
生活に関わるあらゆる分野で住まい手をサポートできる
図表 12
第一種換気システムの仕組み
情報端末でないと普及は難しい。
図表 11
エネルギーの「見える化」画面例
(出典)積水ハウス
(出典)積水ハウス
(5) 換気設備
2000 年にシックハウス対策として全館換気の導入が
義務づけられ、住宅おいても標準的に設置される設備と
なった。換気設備は健康、快適性において必要な機器で
ありながら、エネルギー消費の面では、可動時間が長く、
外気を室内に取り込むことで熱損失につながるといった
省エネにおいてはマイナスの面もある。今まで温暖地で
は第三種の換気システムが一般的であったが、省エネの
観点からは、寒冷地で一般化されている第一種熱交換換
気システムを採用するケースが徐々に増えている。ま
た、第一種換気システムを採用することで、給気部分で
Housing Finance 2014 Winter
31
特集
豊かで安心な暮らしを支える最新の住宅設備事情
(6) 暖 冷 房 設 備
住宅の冷暖房設備としては、一般にエアコンが普及し
図表 14
エアコン自動制
御イメージ
図表 15
床暖房の快適性
ている。また省エネの観点からエアコン本体の性能に頼
るケースが多い。1998 年の省エネ法改正時に機器のエ
ネルギー消費効率基準の策定方法としてトップランナー
基準が導入された。2000 年にはトップランナー基準が
達成された機器の普及のために、JIS 規格として省エネ
ルギーラベリング制度がスタートし、2006 年には消費
者にわかりやすく、省エネ性能を5段階の(★)の数で
示す多段階評価による表示(統一省エネラベル)が規定
された【図表 13】
。エアコンもこの制度の対象機器のひ
とつであり、家電店舗でこのラベルを見て、機器の省エ
ネ性能を確認した購入者も多いはずである。製造メーカ
ーもこうした表示を意識しながら、製品の性能向上を目
(出典)積水ハウス㈱
(出典)ダイキン工業
指し開発を行っている。また、
最近のエアコンを見ると、
センサー技術の進歩により、省エネだけでなく、上下度
の機器開発におけるひとつのテーマといえる【図表 15】
。
差を緩和し、快適性を向上させた機器も出てきている。
フィルター掃除不要のメンテナンス性を考慮した機器も
発売されている【図表 14】
。
(7) 照明機器
照明器具においてここ数年の大きな変革として、LED
暖房機器として快適性の観点から、マンションを中心
の普及があげられる。白熱球 60W 相当のダウンライト
に床暖房が普及してきた。ただし床暖房は暖房用のた
で、白熱灯、蛍光灯、LED で比較すると、LED 消費エ
め、夏季の冷房も含め、エアコンと併用される場合が多
ネルギーは白熱灯に比べ 14%、蛍光灯に比べ 35%削減
い。床暖房は、床下に敷いた温水パネルに熱源機で作っ
することができる。LED は電球だけではなく、事前に
た約 40〜60℃の低温水を循環させることで、部屋全体
LED を光源として組み込まれた照明機器もすでに安価
を暖める仕組みである。特に足元から暖まるので、室温
で量販店で販売されており一般にも認識されている。積
が低めでも暖かさを感じることができて、室温が暖まり
水ハウス WEB アンケートの調査でも 35%の人が既に
すぎず、エアコンのような不快な気流も発生しない快適
LED を使用しているという結果が出ている。商品化当
な暖房ということで評価は高い。しかし、省エネ暖房設
初は、光源の輝度が高く、室内環境の演出には不向きで
備としてみると、熱源にもよるがその評価も難しい面が
あった LED も調光等の機能も兼ね備えることで、室内
ある。快適性と省エネ性の両立をどう実現するか、今後
においても違和感なく使用されている。既に多くの製造
メーカーが白熱灯の廃止を決めており、LED はますま
図表 13
32
省エネラベルの表示例(エアコン)
Housing Finance 2014 Winter
す普及していくことが予想される【図表 16】
。
省エネルギー・創エネルギー住宅設備における動向
図表 16
図表 17
[W]
50
節水厨房水栓
消費電力の比較
45
40
35
30
25
47
20
15
10
10
5
0
[%]
100.0
90.0
白熱灯
蛍光灯
図表 18
6.5
節湯水栓
LED
LEDの普及率(LEDを使っていますか?)
使っている
80.0
70.0
34.1
36.0
51.0
60.0
50.0
40.0
30.0
(出典)積水ハウス
51.8
54.0
20.0
39.0
10.0
図表 19
節湯型水栓
0.0
全体
(n=800)
高齢単身
(n=100)
高齢夫婦
(n=100)
(出典)積水ハウス WEB アンケート(2012 年7月)より
基
準
エネルギーの合
理化に関する法
律(省エネ法)
(8) 節水・節湯設備
ここまでは電気における省エネ、創エネ機器を中心と
して紹介してきたが、節水・節湯も住宅の省エネにおけ
る重要なポイントとなる。キッチンではセンサーによっ
て止水ができる水栓金物や浴室では手元で止水ができる
住宅事業建築主
の判断の基準
分
類
条
件
節湯 A1
手元などで容易に止水操作ができる節湯
水栓
節湯 C1
水優先操作において湯が吐水されない節
湯水栓
節湯 A
手元などで容易に止水操作ができること
(従来型に対して削減率9%以上)
節湯 B
最適流量が5ℓ/分以下であること(従
来型6ℓ/分に対して削減率 17%以上)
節湯 AB
節湯 A および節湯 B の基準を満たして
いること
シャワーヘッドが多く採用されている。省エネ法等によ
り、節湯器具に対してそれぞれ要求事項が定められてい
る【図表 17〜19】
。
Housing Finance 2014 Winter
33
特集
豊かで安心な暮らしを支える最新の住宅設備事情
住宅の省エネに関する動き
図表 21
出力イメージ
ここまでは設備機器単体で、昨今の普及状況や課題等
に触れてきた。住宅の省エネについては国の政策も、断
熱仕様によって評価する方法から、設備も含めた評価へ
と変わってきている。以下に住宅の省エネの評価手法、
今後国が求めている。省エネ住宅の方向性について紹介
する。
(1) 省 エ ネ ル ギ ー 基 準
2013 年1月に公布された「住宅・建築物の省エネルギ
ー基準」では、躯体の断熱性(外皮性能)と建物全体の
一次エネルギー消費量を指標として、建物全体の省エネ
ルギー性能を評価することになっている。特に一次エネ
ルギー消費量の計算プログラムでは、暖冷房設備、換気
設備、照明設備、給湯設備、コージェネレーション設備、
太陽光発電設備といった機器が計算結果に反映される仕
組みになっており、既に 2012 年 12 月に施行された認
定低炭素建築物の認定基準において、このプログラムを
使用し評価することになっている【図表 20、21】
。今後
(出典)建築研究所 HP より「住宅・住戸省エネルギー性能判定プ
ログラム」
は品確法性能表示制度等において、一次エネルギー消費
量の計算プログラムが広く運用されるとことになる。今
( 2 ) Z E H( ネ ッ ト ・ ゼ ロ ・ エ ネ ル ギ ー ・ ハ ウス)
後、設計者は設計段階において、この一次エネルギー計
2014 年4月に閣議決定した「エネルギー基本計画」に
算の結果も意識しながら、住宅購入者に対し、機器提案
おいては、2020 年までに標準的な新築住宅で、2030 年
を行っていくことになる。
までに新築住宅の平均で ZEH の実現を目指すとの内容
が盛り込まれた。ZEH とは住宅において消費するエネ
ルギー量を太陽光発電等の創エネルギー量で補い、エネ
図表 20
入力画面
ルギー的に実質ゼロとなる住宅を示す【図表 22】
。その
際の評価においてもおそらく先の評価プログラムを使用
し評価を行うことになる。積水ハウスにおいては既にこ
の ZEH の条件を満たす商品としてグリーンファースト
ゼロという商品を発売し、既に多くのお客様に提供して
いる【図表 23】
。
(出典)建築研究所 HP より「住宅・住戸省エネルギー性能判定プ
ログラム」
34
Housing Finance 2014 Winter
省エネルギー・創エネルギー住宅設備における動向
図表 22
けではなく、新築住宅に留まらずストックにも対応でき
ZEH の考え方
省エネ効果
る技術開発を進めることで市場を拡大し、更に普及を加
照明
速させるといったメーカーの努力も必要である。そして
住宅では何よりも、居住者がそれぞれの機器のメリット
を実感してもらうことが重要である。今回の省エネ基準
改正に伴いつくられた Web プログラムのように、様々
給湯
な設備を組み合わせることによる省エネ効果を数値化、
照明
換気
ラベル化することもそのひとつであるが、さらに住宅供
給湯
創エネ
ツールの開発・普及も同時に望まれる。
換気
冷房暖房
最後に、設備は住宅本体に比べ、寿命が短いことを考
冷房暖房
通常の住宅
図表 23
給者が居住者に対し、説明する際に使えるわかりやすい
えると、その後の維持メンテナンス、さらには機器交換
も想定した対応も重要であることをつけ加えておく。
ZEH
グリーンファーストゼロ
省エネ「5本の樹」計画
創エネ 太陽光発電
省エネ HEMS
省エネ 高効率エアコン
省エネ
省エネ
LED照明
通風配慮設計
省エネ 蓄電池
創エネ 燃料電池
(出典)積水ハウス
おわりに
今までは住宅の省エネといえば、住宅の外皮における
断熱性能のレベルによって評価されてきた。しかし、今
回の省エネ基準の改正によって、設備の性能も併せて評
価することになったことから、省エネに関わる設備に対
する注目の度合いが一層高まることが予想される。
ここで紹介した新しい省エネ、創エネ設備機器のいく
つかは、普及に向けた過渡期にあり、市場に定着するに
はもう少し時間がかかる。国からの補助金等の支援策だ
Housing Finance 2014 Winter
35
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