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ジロンドでの交通

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ジロンドでの交通
審判決要約文
第3条第1項第3号
審決取消訴訟
登
○
産地、品質表示等2以上の標章よりなるものが第3条第1項第3号に該当するとされた事例(昭
和 57 年 6 月 29 日 東京高昭和 54 年(行ケ)第 16 号)
本願商標は、
「甲州黒」の漢字を縦書きしてなり、第16類「黒染織物」を指定商品とする
ものである。
商品「織物」等を取扱う業界では、「甲州織」をはじめ、遠州、尾州、丹後などの旧国名が、
織物の産地を表示するものとして、
「正絹遠州つむぎもの地」「遠州ウールきもの地」「丹後ち
りめん」のように、商取引上普通に使用されている。
さらに、
「黒」の文字は、例えば、
「黒留袖模様」「黒絵羽織(地)」「黒紋付」「黒染」のよう
に、黒く染めた織物又はその加工製品を称呼するものとして、商取引上普通に用いられている。
すると、「甲州」と「黒」とを結合した「甲州黒」の文字よりなる本願商標は、これをその
指定商品である「黒染織物」に使用するときは、一般需要者に甲州(山梨県)で生産された黒
染の織物を意味するものとして理解させ、認識させるに十分であり、これを排除して、自他商
品識別の機能を果すべき特段のものは、その構成上何ら見出すことはできない。そうとすると、
本願商標は、商標法3条1項3号の規定にいう商品の産地及び品質もしくは原材料を表示する
ものに該当する。
本願商標
-1-
審決取消訴訟
出願された商標「たらの子こうじ漬」は、これを指定商品中の「たらこと麹を主原料とする漬
物」に使用した場合は、当該商品の原材料及び加工方法を表示した標章に当たるとされた事例
(平成 6 年 11 月 17 日
東京高平成 6 年(行ケ)85 号)
本願商標は、やや図案化した書体で「たらの子」と「こうじ漬」の文字を縦2列に配した構
成からなり、第32類「たらこと麹を主原料とする漬物」等を指定商品とするものであるとこ
ろ、本願商標中の「たらの子」は、「鱈」の「子」、すなわち「鱈」の「成熟卵」を意味する
ものと理解することが可能であり、「こうじ漬」は、「こうじ」(麹、糀)、すなわち、米、
麦、大豆、などを蒸して寝かし、これに麹かびを加えて繁殖させ、塩を加えたものに、魚、肉、
野菜等を漬け込んだ食品を意味するものであることは明らかである。
そうすると、取引者、需要者は、本願商標の前記構成から、その商品が、「すけそうだら」
あるいは「まだら」等のたらの腹子を麹(糀)に漬け込んだ食品を意味するものと理解するこ
とは容易であり、
したがって、本願商標は、これを指定商品中の「たらこと麹を主原料とする漬物」に使用した
場合は、当該商品の原材料及び加工の方法を普通に用いられる方法で表示した標章であるから、
商標法3条1項3号に該当する。
本願商標
-2-
審決取消訴訟
第3類「トルマリンを配合してなるせっけん」について出願された商標「TOURMALINE
SOAP・
トルマリンソープ」において、商標法第3条第1項第3号の趣旨が、これを特定人に独占させ
ることは適切でないために登録することができないものと解されるとされた事例(平成 12 年
6 月 13 日
東京高平成 11 年(行ケ)410 号)
本件証拠によると、せっけんの商品として、マイナスイオン及び遠赤外線の発生という効果
を備えるトルマリンの特性を利用して、水にトルマリンを加えてミネラルイオン水としてこれ
を練り上げて製造したせっけんが「トルマリンソープ」と表示され、かつ、上記のようなトルマ
リンの特質を利用して製造した特別な効能のあるものとして原告により宣伝され販売されて
おり、また、トルマリンを配合して製造したせっけんが「トルマリンソープ」と表示されて、原告
以外の業者により、宣伝され販売されていることが認められる。さらに、せっけんの商品と需要
者を共通にすると認められる化粧品の商品としてもトルマリンを基礎として製造された化粧
品として、「トルマリン基礎化粧品」、「トルマリン化粧品」と表示されて原告以外の業者により
開発され、マイナスイオンを発生させるトルマリンを基材とし優れた効能があるものとして宣
伝されていることが認められる。
本願商標を指定商品である「トルマリンを配合してなるせっけん」に使用するときは、これに
接する取引者、需要者に、その商品の原材料につきトルマリンが使用されているものであるこ
と(品質)を表示したものと認識させるにとどまるものであるとみるのが相当であり、出所の表
示機能や自他商品の識別機能を果たすものではないというべきであるから、これと同旨の審決
の認定判断に誤りはない。
なお、商標法 3 条 1 項 3 号の趣旨は、同号に列挙されている商標は、商品や役務の内容に関わ
るものであるために、現実に使用され、あるいは、将来一般的に使用されるものであることから、
出所識別機能を有しないことが多く、また、これを特定人に独占させることは適切でないため
に登録することができないものとされていると解される。したがって、指定商品に係る原材料
名が、仮に登録査定時には、現実に使用されておらず、あるいは、一般には知られていない場合
であっても、将来原材料名として使用されて、取引者、需要者の間において商品の原材料名であ
ると認識される可能性があり、また、これを特定人に独占させることは適切ではないと判断さ
れるときには、右の原材料名は同号に該当すると解される。
本願商標
-3-
審決取消訴訟
商標「負圧燃焼焼却炉」が造語であるとしても、「負圧を利用して空気燃焼させる焼却炉」の
意味合いを有する複合語として認識されるとされた事例
(平成 12 年 9 月 4 日 東京高平成 12 年(行ケ)76 号)
辞典には、
「負圧」の語義として「大気圧以下絶対圧力零までの圧力」と、
「燃焼」の語義と
して「空気中または酸素中で物質が酸化して炎を生じる現象」と記載されていることが認めら
れ、本願商標を構成する「負圧燃焼焼却炉」との文字は、
「気圧を大気圧以下として空気を吸
入することにより、燃焼をさせる焼却炉」、すなわち、審決の認定するとおり、「負圧を利用し
て空気吸入し燃焼させる焼却炉」との意味合いを有する語として、取引者、需要者に認識され
るものと認められる。仮に、それ自体としては造語であるとしても、それを構成する各単語の
語義から前示意味合いを有する複合語として認識されるものである。本願商標を指定商品に用
いた場合には、これに接する取引者、需要者は、当該商品がそのような機構の焼却炉であるこ
とを表したものと理解するにすぎない。
仮に原告らの主張する「負圧利用空気吸入燃焼焼却炉」の文字よりなる標章が、その表示態
様によっては、
「負圧を利用して空気吸入し燃焼させる焼却炉」につき、その商品の品質を普
通に用いられる方法で表示する商標に当たり得るものとしても、そのことの故に、前示のとお
り、同様に「負圧を利用して空気吸入し燃焼させる焼却炉」との意味合いを生じ、ごく通常、
一般的な表示態様よりなる本願商標が、指定商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標
章のみからなる商標に当たることが妨げられるものではない。
商標法3条1項3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る
表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態
様が商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の
事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである。
本願商標
-4-
審決取消訴訟
本件商標「サラシア」は、サラシアを原料とする茶について使用するときには、単にその商品
の品質、原材料を表示するものであるから、無効にすべきであるとした審決が支持された事例
(平成 14 年 10 月 31 日
東京高平成 13 年(行ケ)第 574 号)
本件植物の名称「サラシアレティキュラータ、サラシアオブロンガ及びサラシアプリノイデ
ス」は、共通の冠頭部分「サラシア」を有している。そうだとすると、本件植物が、サラシア
属として分類され、その結果、学術上のみならず、一般社会においても「サラシア」と称呼さ
れることは、このような場合に一般によくあることに照らして、いかにも生じやすいこととい
うことができる。現に認定のとおり、その多くは本件査定後の事実であるとはいえ、(一部に
は、本件査定前のものもある。)
本件植物は、古くから知られ、海外において、その薬効に関する近代的な研究も積み重ねら
れ、日本においても、原告が、本件査定に先立ち本件植物の研究をし、論文を作成し公表する
までに至っているたのであり、このことからは、本件査定当時、この分野の学識者はもとより、
原告を含めて、この種の健康食品の製造・販売にかかわる取引者の間においても、本件植物は、
その名称とともに、知られていたと認めることができる。
上記状況の下では、本件査定当時、「サラシア」の語は、「茶」という商品との関係におい
ては、原材料を示すという意味を有する語であったということができ、本件商標は、商標法3
条1項3号に該当するものであったというべきである。
原告は、商標法3条1項3号に該当するためには、「サラシア」の語が「茶」の原材料を示
すことが、学識者や取引者のみならず、一般需要者にも知られていることが必要であることを
前提に、論を進めている。
しかしながら、少なくとも、本件植物との関係における「サラシア」のように、原材料が何
であるかを一般需要者に示すための語として他のものを考えることが困難な語(あるいは、少
なくとも、原材料が何であるかを示すのによく適しているといい得る語)については、査定当
時、当該語がそのような意味を有するものとして一般需要者に既に知られるに至っていること
は、商標法3条1項3号に該当するための要件とはならないというべきである。このような語
は、まだ一般需要者に知られていないにせよ、それは、当該語が示す物を用いた商品自体が知
られていないがゆえにほかならず、そのような商品が知られるに至れば、これの原材料を示す
ものとして用いられることにならざるを得ない。このような語に商標権という形で独占権を認
めることになれば、当該語を用いた商標の独占の名の下に、当該語の示す物を原材料に用いた
商品自体の独占を許すことにもなりかねず、当該語が示す物を原材料とした商品が一般に知ら
れるに至れば、一番需要者の間でも、これを用いた商標の自他識別力は失われ、商標としての
当該語の使用は、混乱の原因となることがほとんど必定である。このような結果の発生を事前
に防ぐことも、商標法3条1項3号の目的の一つであるというべきである。
サラシア
本件商標
-5-
審決取消訴訟
商標法第3条第1項第3号を適用する時点において、当該表示態様が、商品の品質、用途を表
すものとして現実に使用されていることは必ずしも必要でないものと解すべきとした事例(平
成 13 年 12 月 26 日
東京高平成 13(行ケ)207)
本願商標は下記に表示したとおりの構成からなり、第31類「フラワーセラピーに供する花」
を指定商品とするものである。
商標法3条1項3号が、指定商品の品質、用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみ
からなる商標について、商標登録を受けることができない旨規定する趣旨は、そのような商標
が商品の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその
使用を欲するものであるから、特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としない
ものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、
商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される。
そうすると、同号は、指定商品の品質、用途を表すものとして取引者、需要者に認識される
表示態様の商標につき、そのことのゆえに商標登録を受けることができないとしたものであっ
て、同号を適用する時点において、当該表示態様が、商品の品質、用途を表すものとして現実
に使用されていることは必ずしも必要でないものと解すべきである。
そして、本願商標の表示態様は、以下のとおり、指定商品である「フラワーセラピーに供す
る花」につき、その品質、用途を表すものとして取引者、需要者に認識されるものと認められ
る。
これに加え、審決が引用する各種新聞に記載されていることによれば、フラワーセラピーに
使用する花は、乾燥に強く、枯れて散らない種類の生花であって、安全、衛生的で、軽く、取
扱いが簡単であること等の特質を備えることを要することが認められ、かつ、このことは、そ
の取引者、需要者にはよく知られているものと推認することができる。そうすると、「フラワー
セラピー」の片仮名文字を書してなる本願商標は、指定商品である「フラワーセラピーに供す
る花」の上記のような特質をも表示するものとして、その取引者、需要者に認識されるものと
認めることができる。
したがって、本願商標の表示態様は、指定商品である「フラワーセラピーに供する花」につ
き、その品質、用途を表すものとして取引者、需要者に認識されるものと認めるのが相当であ
る。
本願商標
-6-
審決取消訴訟
本件商標「うめ/梅」は、特定人による独占使用を認めるのは公益上適当でないとして、商標
法3条1項3号が適用された事例
(平成17年1月20日
東京高平成16年(行ケ)第189号)
本件商標は、
「うめ/梅」の文字からなり、第30類「みそ、ウースターソース、ケチャッ
プソース、しょうゆ、食酢、酢の素、そばつゆ、ごま塩、食塩、すりごま、食用粉類、食用グ
ルテン、アイスクリームのもと、シャーベットのもと、氷等」及び第31類「あわ、きび、ご
ま、そば、とうもろこし、ひえ、麦、籾米、もろこし、うるしの実、ホップ、飼料用たんぱく
等」を指定商品とするものである。
商標法3条1項3号に掲げる商標は、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲
するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一
般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠くものと解される(最高裁昭
和54年4月10日第三小法廷判決
判例時報927号233頁)
。
審決は、梅の実を加工し、他の食品に加味した食品の存在について、
「梅肉ドレッシング」
「梅酢ドレッシング」「梅の酢みそ」「梅酢」
「梅ごま」等のような表示で販売されていること、
商標登録された指定商品において、「梅を加味した焼肉・だんご・魚・野菜のたれ」
「梅肉を加
味したソース」
「梅又はそのエキスを主材とする乳清飲料」等の表示の商品名を認定している。
これらによれば、原告が争う「食用粉類、食用グルテン」の例ではないものの、多種多様な食
品に梅の実の加工品を加味した例が存在するものといえる。さらに、
「梅末、梅エキス」を加
味した「きな粉」、「焼梅」との表示、
「梅の粉末」を加味した「小麦粉」、「梅うどん」との表
示、
「梅」を加味した「キャッサバ粉」、「冷凍クリスタルビーン/梅入り」との表示や存在が
証拠により認められ、少なくとも「食用粉類」に梅の実の加工品を加味した例が現に存在する。
以上の事実に照らせば、本件商標が「梅の実の加工品を加味した食用粉類、食用グルテン」
に使用された場合には、その登録査定当時において、指定商品「食用粉類、食用グルテン」の
取引者、需要者に、本件商標がその商品の原材料、品質を表示するものと認識される(少なく
とも認識される可能性がある)ものと推認されるのであり、かつ、本件商標は、取引に際し必
要適切な原材料又は品質を表示するものであって、特定人による独占使用を認めるのは公益上
適当でないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法3条1項3号に該当するものである。
本願商標
-7-
審決取消訴訟
本願商標の採択の経緯・動機・意味づけは、取引者・需要者の窺い知ることのできないもので
あって、取引者・需要者にとっての、原告の提供する役務の自他識別性を根拠付けるものとす
ることはできないとされた事例
(平成 16 年 7 月 22 日
東京高平成 16 年(行ケ)第 177 号)
本願商標は、「情報マネジメント」の文字を横書きしてなり、第36類「株式市況に関する
情報の提供、商品市場における先物取引の受託、生命保険契約の締結の媒介、生命保険の引受
け、土地の貸与、土地の売買、土地の売買の代理又は媒介、建物又は土地の情報の提供、骨董
品の評価、美術品の評価、宝玉の評価、企業の信用に関する調査等」を指定役務とするもので
ある。
情報とは、「あることがらについてのしらせ。判断を下したり行動を起したりするために必
要な、種々の媒体を介しての知識」(広辞苑第5版)のことであり、マネジメントとは、「管
理、処理、経営」(同)のことである。いずれも極めて一般的な、日常よく用いられる言葉で
あることは明らかである。 また、情報を、必要に応じて、消失を防ぎ、利用(運用)し易く
するために管理することは当然のことであるから、「情報」及び「マネジメント」の組み合わ
せも、格別特異性のない、ごく自然なものであると認められる。したがって、本願商標が、原
告により創造された言葉であるとか、造語性の高い言葉であると認めることはできない。
原告が、本願特許に付随し、その技術思想をよく表現するものとして、本願商標を思いつい
たとしても、そのような経緯・動機・意味づけは、取引者・需要者の窺い知ることのできない
ものであって、取引者・需要者にとっての、原告の提供する役務の自他識別性を根拠付けるも
のとすることはできない。
また、本願商標は、広く一般的に用いられていたと、優に認めることができる。例えば、毎
日新聞社は、平成8年6月15日の記事として、「新設校は、生徒がそれぞれの適性、進路な
どに応じて選択できる社会科学、国際人文、総合科学、芸術、国際情報、情報マネージメント、
生活福祉の7学系(20単位)を開設。・・・」と報道した事実等を認めることができる(証
拠略)。
以上の使用例からは、本願商標は、一般に、経営等に関する情報の管理運用等の意味を持つ
ものと理解され、広く用いられていた、と優に認めることができる。
したがって、本願商標は、その指定役務との関係で自他役務の識別力を有しないものである
から、商標法3条1項3号に該当する。
本願商標
-8-
審決取消訴訟
本願商標「再開発コーディネーター」は、指定役務中「知識の教授、セミナーの企画・運営又
は開催」等に使用しても、単に役務の質(内容)を表示するものとされた事例
(平成 17 年 7 月 12 日
知財高平成 17 年(行ケ)第 10350 号)
本願商標は、「再開発コーディネーター」の文字を書してなり、第41類「技芸・スポー
ツ又は知識の教授、研究用教材に関する情報の提供及びその仲介、セミナーの企画・運営又は
開催等」を指定役務とするものである。
本願商標の構成中の「再開発」は、「既存の施設を取り払い、新たな目的設定のもとに開発
し直すこと。」(岩波書店発行「広辞苑
第5版」)を意味する語であり、また、「コーディ
ネーター」は、「調整係。複雑化した機構の中で、仕事の流れを円滑化させる専門職。」(株
式会社三省堂発行「コンサイス
カタカナ語辞典
第2版」)をそれぞれ意味する語であって、
いずれも日常的に使用されている語である。そうすると、本願商標「再開発コーディネーター」
の文字からは、「再開発の調整係」あるいは「再開発のための業務を円滑に行うための調整者」
の意味を容易に理解させるものである。そして、「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミナー
の企画・運営又は開催」の役務が提供される講座、セミナー等においては、その目的・内容等
を端的に表す業務・職種などを冠してその講座、セミナー等の名称とすることがしばしば行わ
れていることは公知の事実であり、本願商標「再開発コーディネーター」を、その指定役務の
うちの上記役務などに使用した場合には、需要者は、「再開発のための業務を円滑に行うため
の調整者」を養成するための講座、セミナー等を表示したものであると認識するものというべ
きである。
本願商標「再開発コーディネーター」の語が、市街地再開発事業等の分野を越えて、「技芸・
スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催」を始めとする本願商標の指定役務
すべてにわたって、原告の事業活動あるいは活動理念と分かち難く結び付いてきているという
実態や、本願商標が原告の関係者の間で広く認識されているという実態を認めるに足りる証拠
はない。
してみれば、本願商標をその指定役務中「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・
運営又は開催」等に使用しても、単に役務の質(内容)を表示するものと認める。したがって、
本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
-9-
審決
商品(血圧計)の使用方法を図形をもって表示したにすぎない商標として拒絶された例
商品「第 10 類
血圧計」(昭和 53 年 3 月 27 日
昭和 48 年審判第 6426 号)
本願商標は、下記のとおりの構成からなり、第10類「血圧計」を指定商品とするものであ
る。
よって按ずるに、近時家庭で手軽に自分の血圧を計れる血圧計が市販されており、当該商品
を取り扱う業界では、簡単な操作で血圧を測定することができる器具であることを表すために、
該血圧計を使用している状態を表した人の上半身図形を普通に用いている事実がある。
しかして、本願商標は、血圧の測定器具を身に付け、該計器部を右手に有する肥満体風の男
子の上半身図形を格別に特異なものとはいえない表現で表してなるものであるから、前記の事
実よりすれば、指定商品(血圧計)に使用された場合、取引者、需要者は、該商品の使用状態
すなわち使用方法を表示するにすぎないものと理解するに止まり、自他商品識別の標識として
は認識しえないと判断するのが相当である。してみれば、本願商標は、商標法3条1項3号に
該当する。
本願商標
- 10 -
審決取消訴訟
商品の産地(カリフォルニア)を図形(地図)をもって表示したにすぎない商標として拒絶さ
れた例
商品「第 17 類
被服等」(平成 5 年 10 月 14 日
昭和 58 年審判第 18261 号)
本願商標は、下記に表示したとおりの構成よりなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」
を指定商品とするものである。
「世界大百科事典」中「カリフォルニア」の項の記載に徴すれば、「米国西部、太平洋岸の
州。面積41万平方キロ、日本全土とほぼ同じ面積で、テキサスに次ぐ大きな州である。産業
は鉱物資源のほか、果樹の栽培の他、タバコ、綿なども広く栽培されている。サクラメント、
ロスアンゼルス、サンフランシスコ、ロングビーチ等の都市がある」ことが認められ、また、
近年海外旅行の対象として、サンフランシスコ、ロスアンゼルスを含んだ米国の西海岸は人気
コースの一つとなっており、これらの市が存する細長い地形よりなる州自身も注目され、更に、
カリフォルニア州で生産された綿を原料とする生地を用いた「紳士肌着」の包装中に「カリフォ
ルニアコットン」の表示と「州を象どった図形」とが商品の品質を表示するものとして使用さ
れている事実がある。
そうすると、本願商標を指定商品に使用するとき、これに接する取引者・需要者は「カリフォ
ルニアで生産されたもの、あるいはカリフォルニア産のものを使用したもの」の意を容易に看
取するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当で
ある。
したがって、本願商標は、単に商品の産地を表示するに過ぎないものであるから、商標法3
条1項3号に該当する。
本願商標
審決取消訴訟
「アメ横」(平成 8 年 7 月 5 日
平成 6 年審判第 9345 号)
「アメ横」の文字は、東京都上野駅から御徒町駅に至るガード下及びその周辺地域の通称であ
り、本件地域または本件地域に店舗を構える商店群の名称を表示したものである。
審決取消訴訟
「銀座」(平成 12 年 1 月 27 日 東京高平成 11 年(行ケ)第 261 号)
本願商標中「銀座」
「Ginza」の文字部分は、東京都中央区に存在する各種高級
商品を販売することで著名な繁華街の名称であり本願商標の指定商品の取引者、需要
者によっても、そのように認識される。
- 11 -
本願商標
審決取消訴訟
「商品の包装等に地域名を冠することは、産地、販売地を表示するものとして、普通に行われ
得る性質のものと認められ、自他商品識別の機能を営み得ない」とした事例
(昭和 41 年 8 月 25 日
東京高昭和 35 年(行ナ)第 146 号)
本願商標は、「平和台饅頭」の文字を縦書し(
「饅頭」の部分については権利不要求)、指定商
品を第43類「饅頭」として出願されたものである。
本願商標の要部とせられる「平和台」の文字は、福岡市営の競技場の名称からこれを採択し
たものであり、
「平和台」の名はプロ野球の球場として国内にあまねく知られているところで
ある。したがって、同所ないしはこれが存在する福岡市において、生産され販売せられる商品
について、その容器、包装等に「平和台」の名を冠することはその産地、販売地を表示するも
のとして普通に行われ得る性質のものと認められ、したがって、「平和台」の語を要部とする
商標が、福岡市ないしは平和台の競技場において生産せられる商品に附されたとしても、それ
が単に通常用いられる程度の態様で表示せられている限りにおいては、該商標は、自他商品識
別の機能を営み得ないものと認めざるを得ないところであって、この意味においても前記のよ
うな商標は特別顕著な要件を欠くものといわなければならない。そして本願商標の指定商品で
ある饅頭が、福岡市内において、また前記の競技場において販売せられる性質の商品であるこ
とはいうをまたないところであり、また本願商標の態様が、単に普通に用いられる程度の方法
で表示せられたものにすぎないから、この意味において本願商標は特別顕著の要件を欠くもの
と認めざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法(旧法)第1条2項に規定する要件を具有するものではな
い。
本願商標
- 12 -
審決取消訴訟
「(地名等は)取引に際し必要な表示であるから特定人による独占使用は公益上適当でなく、
一般的に使用されるものであるから自他商品識別力を欠く」とした事例
(昭和 54 年 4 月 10 日
最高裁昭和 53 年(行ツ)第 129 号)
本件商標は、
「ワイキキ」の文字よりなり、第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料
類」を指定商品とするものである。しかして、商標法3条1項3号として掲げる商標が、登録
の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示
記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として、なんぴともその使用を欲するもの
であるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに
一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果
たし得ないものであることによるものと解すべきである。
したがって、原審は、商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみから
なる商標であって、商標法3条1項3号に該当する旨を認定判断しており、正当として是認す
ることができる。
本件商標
審決取消訴訟(上告事件)
登
○
「産地又は販売地には、必ずしも当該商標の表示する土地において指定商品が現実に生産又は
販売されていない場合であっても、何らかの理由により指定商品が当該商標の表示する土地に
おいて生産又は販売されているであろうと一般に認識される地名も含まれる」とした事例「G
EORGIA」(第 29 類コーヒー等
昭和 61 年 1 月 23 日 最高裁昭和 60 年(行ツ)第 68
号)
本願商標は、
「GEORGIA」の文字を書してなり、第29類「茶、コーヒー」等の商品
を指定商品とするものである。
商標出願に係る商標が、商標法3条1項3号にいう「商品の産地又は販売地を普通に用いら
れる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するというためには、必ずしも当該指定商
品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず、需要
者又は取引者によって、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売さ
れているであろうと一般に認識されることをもって足りるというべきである。
そうすると、本願に係る「GEORGIA」なる商標に接する需要者又は取引者は、その指
定商品である「コーヒー、コーヒー飲料」等がアメリカ合衆国のジョージアなる地において生
産されているものであろうと一般に認識するものと認められる。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
同旨判決
「ジョージア」
(第 29 類コーヒー等
昭和 61 年 1 月 23 日 最高裁昭和 60 年(行ツ)第 69 号)
- 13 -
審決取消訴訟
「販売地」は、厳密に地域、土地の表示に限定されるものではなく、例えば、著名な公共建造
物等の名称などもこれに含まれると解されると共に、当該指定商品が販売されているであろう
と一般に認識されているような場所、店舗等を普通に用いられる方法で表示する標章のみから
なる商標も、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ず、特定人による独占的使用を認め
るのを公益上適当としないものであるから、
「販売地」に準じて商標登録が許されないとされ
た事例(平成 17 年 1 月 26 日 東京高平成 16 年(行ケ)第 369 号)
本願商標は、「インテリアショップ」の文字(標準文字)からなり、第28類「液晶画面付
き電子ゲームおもちゃ(液晶画面付き電子ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させたROM
カートリッジ、液晶画面付き電子ゲームおもちゃに接続して用いられる専用イヤホン、その他
の付属品を含む)、その他のおもちゃ、人形、囲碁用具、将棋用具等」を指定商品とするもの
である。
商標法3条1項3号の「販売地」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
は、当該指定商品が販売されているであろうと一般的に認識されている地域、土地を表示する
ものにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないとともに、特定人による独占
的使用を認めるのを公益上適当としないものであるから、商標登録が許されないのである。
したがって、同号の「販売地」は、厳密に地域、土地の表示に限定されるものではなく、例
えば、著名な公共建造物等の名称などもこれに含まれると解して差し支えがないものといえる。
同様に、当該指定商品が販売されているであろうと一般に認識されているような場所、店舗等
を、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(例えば、指定商品が、食用魚介
類についての「魚屋」、野菜についての「八百屋」など)も、自他商品の識別標識としての機
能を果たし得ないとともに、特定人による独占的使用を認めるのを公益上適当としないもので
あるから、「販売地」に準じて商標登録が許されないものといわなければならない。
本願商標の「インテリアショップ」の文字は、取引者・需要者に「室内装飾品を販売する店」
として認識され(証拠略)、本願指定商品が、いわゆるインテリア雑貨として、インテリアショッ
プにおいて取り引きされているものと認められ(証拠略)
、したがって、本願商標は、当該指
定商品が販売されているであろうと一般的に認識されているような取引場所を、普通に用いら
れる方法で表示する標章のみからなる商標として、法3条1項3号に該当するというべきであ
る。
- 14 -
侵害判決
「公共建造物の名称は産地、販売地に準ずるものというべきである」とされた事例
(昭和63年5月23日
高松地観音寺支部昭和62年(ヨ)第29号)
本件は、「瀬戸大橋」及び「せとおおはし」の文字を横書きしてなる商標であり、第30類
「菓子、パン」を指定商品とする商標権に係るものである。
いわゆる瀬戸大橋とは、岡山県倉敷市と香川県坂出市とを結ぶ大橋の総称であるところ、瀬
戸大橋は、昭和63年4月10日の開通以来、道路、鉄道併用橋としては世界一の規模を誇り、
瀬戸内海の観光名所の一つとして広く世間に知られるようになった現在、本件商標や債務者の
商標等瀬戸大橋を指し、あるいは想起させる商標を使用した場合、一般の需要者、取引者は該
商品が瀬戸大橋周辺地で生産または販売されているものであろうと認識することは明らかで
ある。したがって、
「瀬戸大橋」は産地、販売地に準ずるものというべきである。
侵害判決
瀬戸大橋を表したと認められる本件商標からは、瀬戸大橋周辺の地域で生産又は販売されてい
る商品であることを認識させるとされた事例
(平成 8 年 6 月 24 日 岡山地平成 6 年(ワ)第 639 号)
原告は、下記に表示したとおりの構成よりなり、第30類「菓子、パン」を指定商品とする
本件登録第1391604号の商標権を有している。
被告は、下記に表示したとおりの構成よりなる本件商標をその製造する菓子の包装に付し、
包装紙、包装用パッケージ、パンフレット等に印刷して使用している。
瀬戸大橋の形状等については、社会一般に周知されているところである。しかるところ、本
件商標は、その構成からして、一般の需要者をして瀬戸大橋を表してなるものと認識させるも
のであることは一見して明らかである。そうして、該瀬戸大橋は、個人の独占使用になじむも
のではなく、また、瀬戸大橋を表示することにより、商品の識別機能が特に高まるものではな
い。本件商標は、一般の需要者をして、当該商品が瀬戸大橋周辺の地域で生産又は販売されて
いるものであることを認識させるものと言うべきであるから、本件登録商標の効力は、本件商
標に及ばないと解すべきである。
本件登録商標
被告使用商標(本件商標)
- 15 -
産地、販売地に該当するとされた事例
審決
登
○
「阿寒湖」(第 43 類菓子等
昭和 31 年 11 月 26 日
昭和 29 年抗告審判第 1468 号)
本願商標は、「阿寒湖」の文字を縦書きしてなり、第43類「菓子及び麺麭の類」を指定商
品とするものである。
「阿寒湖」は、北海道、北見、釧路の国境附近の湖畔一帯を指称する地名であって、この湖
畔地区には有名な温泉があり、かつ、山紫水明の仙境を兼ねた有名な観光地帯であることは明
らかなところであり、そして、有名な温泉地あるいは有名な観光名所地においては、その土地
の土産物等(主として菓子等が多く用いられている)にその名所地名(温泉名も含む)と風光
等を商品の包装紙等に使用していることは顕著な事実であり、上記阿寒湖においても土産品等
にこの種の名称又は風光等使用されているものである。
したがって、本願商標は、名産地の表示を普通に使用される程度で現したものにすぎないか
ら、その指定商品については、商品甄(けん)別の標識として商標法(旧法)1条2項に規定
するいわゆる特別顕著の要件を具有しないものである。
審決
登
○
「琵琶湖」(第 43 類菓子等
昭和 32 年 12 月 18 日
昭和 31 年抗告審判第 400 号)
本願商標は、「琵琶湖」の文字を楷書体風で縦書きしてなり、第43類「菓子及び麺麭の類」
を指定商品とするものである。
思うに、本願商標を構成する「琵琶湖」の文字は滋賀県の中央部にあって、淀川水系に属す
る我が国第一の湖である「琵琶湖」を指すものであることは明らかである。そして、この湖は
湖中に多くの島を有する外、湖畔は風光佳くまた史跡名勝に富みこの地を訪れる客も少なくな
いことは明らかであって、この土地において土産物等の商品を販売する者が「琵琶湖」の文字
を使用してその商品の生産地又は販売地を表示することは極めて普通のことに属するもので
あることは当庁においても顕著な事実である。
してみれば、本願商標は、商標法(旧法)1条2項に規定するいわゆる特別顕著の要件を具
備するものとは認められないから、これを登録することはできない。
- 16 -
審決
「ハリウッド」(第 16 類織物等
昭和 40 年 4 月 12 日 昭和 38 年審判第 5176 号)
本願商標は「ハリウッド」の片仮名文字をゴシック体で黒色を以って左横書きしてなり、第
16類「織物、編物、フェルト、その他の布地」を指定商品とするものである。
本願商標を構成する「ハリウッド」は、米国カリフォルニア州南部にある世界的に有名な米
国映画製作の中心地「Hollywood」の地名を直感させるものであるところ、この地名
が映画俳優の華麗な美を連想させることから、化粧や服飾等について「Hollywood
Model」
(ハリウッド・モデル)と称して米国の流行の発祥の地となっていることは顕著
な事実であり、観光客が多数この地を訪れ、世界的に著名な観光地でもあるから、この地にお
いて商品を商う者が「Hollywood」(ハリウッド)の文字を使用して、その商品の販
売地の表示とすることも、また、極めて普通のことに属するものであり、このような性質を有
する著名な地名を以って構成される商標は、取引の実際面から見るときは自他商品の識別機能
を果たすというよりも、むしろ、その商標を付した商品の販売地を表示するものとして看取さ
れ、印象付けられる場合が多いことは経験則に照らし明らかなところである。
そうすると、本願商標はこれをその指定商品に使用した場合、上述のような理由から当該商
品がその著名な販売地を表記した用例にすぎず、また、そのように看取される場合があり、自
他商品の識別標識としての機能を有しないものと判断せざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
審決
登
○
「ケルン」(第 10 類理化学機械器具等
昭和 39 年 5 月 12 日 昭和 37 年審判第 2074 号)
本願商標は、「ケルン」の片仮名文字を横書きしてなるもので、第10類「理化学機械器具、
光学機械器具、写真機械器具、映画機械器具、測定機械器具、医療機械器具、これらの部品お
よび附属品、写真材料」を指定商品とするものである。
本願商標「ケルン」の文字は、ドイツ語の「KÖLN」に通ずる言葉であって、「KÖLN」
(ケルン)といえば一般世人が、戦前、戦後を通じて、西ドイツにおける各種機械工業、織物
工業、化学工業等で著名な都市であることは当庁において顕著な事実である。したがって、か
かる「KÖLN」市に通ずる「ケルン」を本願の指定商品に使用した場合には、この種商品の
取引界においては勿論のこと、一般需要者間においても、該商品が「KÖLN」(ケルン)市で
生産され又は販売されている商品を表すものにすぎないものであると認識するを取引の経験
則に照らして相当とする(このことは、現今各種交通機関の発達による国際間の取引が活発で
あり、又開放経済の推進と相まって、商品の流通についても、国際性を重視しなくてはならな
いこと等を勘案すれば明らかである。)。
してみれば、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
同旨審決
「ケルン」(第 11 類電気機械器具等
昭和 39 年 4 月 13 日
昭和 38 年審判第 85 号)
「ケルン」(第 12 類輸送機械器具等
昭和 39 年 5 月 12 日
昭和 37 年審判第 2075 号)
「ケルン」(第 16 類織物等
昭和 39 年 5 月 12 日 昭和 37 年審判第 2076 号)
「ケルン」(第 24 類おもちゃ等
昭和 39 年 12 月 22 日
- 17 -
昭和 37 年審判第 2380 号)
審決
登
○
「KERUN」(第 10 類理化学機械器具等
昭和 39 年 5 月 12 日 昭和 37 年審判第 2077 号)
本願商標は、ローマン体で「KERUN」のローマ文字を黒色で書し、その左右斜め上にク
オテーションマークを施してなり、第10類「理化学機械器具、光学機械器具、写真機械器具」
等を指定商品とするものである。
そこで判断するに、本願商標「KERUN」の文字は、ドイツ語の「K・LN」に通ずる言
葉であって、「K・LN」(KERUN)といえば一般世人が戦前、戦後を通じて、西ドイツに
おける各種機械工業、織物工業、化学工業等で著名な一大工業都市を想起する程度に、国際的
に著名な都市である。したがって、かかる「K・LN」市に通ずる「KERUN」の文字を本
願の指定商品に使用した場合には、この種商品の取引界においては勿論のこと、一般需要者間
においても、該商品が「K・LN」
(KERUN)市で生産され、または販売されている商品
を表しているものと認識するのを取引の経験則に照らし相当とする。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての
機能を具備しないものと認めざるを得ないから、商標法3条1項3号に該当する。
同旨審決
「KERUN」(第 12 類輸送機械器具等
「KERUN」(第 16 類織物等
昭和 39 年 5 月 12 日
昭和 37 年審判第 2078 号)
昭和 39 年 5 月 12 日 昭和 37 年審判第 2079 号)
審決
「ケンタッキー」(第 30 類菓子等
昭和 39 年 7 月 9 日 昭和 37 年審判第 1636 号)
本願商標は、「ケンタッキー」の片仮名文字を黒色をもって左横書きしてなり、第30類「菓
子及びパン」を指定商品とするものである。
思うに、「ケンタッキー」の文字は、英語の「Kentucky」に通ずる言葉であって、
「Kentucky」(ケンタッキー)といえば、一般世人に印刷物は勿論、映画、ラジオ、
テレビ等で深く知られた上、アメリカ合衆国中部南東よりの州名を想起する程度に国際的に著
名であることは、当庁においても顕著な事実である。
してみれば、「Kentucky」州に通ずる「ケンタッキー」の文字を本願指定商品に使
用した場合には、この種の商品の取引界においては勿論のこと、一般需要者間においても、該
商品が「Kentucky」州で生産され、又は販売された商品であることを認識させるにす
ぎないものであるというを取引の経験則に照らし相当である。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
- 18 -
審決
「伊豆」(第 30 類菓子等
昭和 39 年 9 月 29 日
昭和 38 年審判第 2519 号)
本願商標は、「伊豆」の文字を書してなり、第30類「菓子、パン」を指定商品とするもの
である。
よって思うに、本願商標の「伊豆」の文字からは世人一般は辞書を繙(ひもと)くまでもな
く「伊豆」地方を直感するものであるというを相当とする。そして、
「伊豆」地方といえば静
岡県の東部、南は太平洋に突出している半島で、東側は相模湾、西側は駿河湾に面しており、
現在、富士箱根伊豆国立公園の一部をなし、観光地帯として我々日本人はもとより外国人にも
深く親しまれ、今や国際的な観光地として有名であることは顕著な事実である。
そうすると、かかる意味合いを有する「伊豆」の文字を本願指定商品との関係において考え
てみるに、この地方の生産者または販売者により土産品等の生産地販売地を表すため容易に採
択、使用されがちな文字であることは取引の経験則に照らし明らかなところである。
してみれば、本願商標は、単に商品の生産地又は販売地を指称するにすぎないものであると
いわなければならないから、商標法3条1項3号に該当する。
審決
「トーキョー」(第 29 類茶等
昭和 39 年 11 月 21 日
昭和 38 年審判第 5836 号)
本願商標は、やや特殊態様で「トーキョー」の仮名文字を横書きし、第29類「茶、コーヒー、
ココア、清涼飲料水」を指定商品とするものである。
本願商標は、やや特殊な態様で表されているとしても、この程度では未だ普通に用いられる
書体の範囲を出ないと認められるところであり、
「トーキョー」の文字から世人一般は、我が
国の首都「東京」を直感するものである。しかして、「東京」といえば各種商工業で殷賑(い
んしん)を極め一大産業都市を形成している。
そこで、前記意味合いを有する「トーキョー」(東京)の文字を指定商品との関係で考える
と、この地方の生産者、販売者が好んで産地、販売地を表すために採択、使用されがちな文字
である。
してみれば、このような文字を普通に使用される方法で表示したにすぎない本願商標は、単
に生産地又は販売地を指称するにすぎず自他商品を識別するに足る機能を有しないから、需要
者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
同旨審決
「トーキョー」(第 30 類菓子等
昭和 39 年 11 月 21 日
- 19 -
昭和 38 年審判第 4832 号)
審決
「波佐見」(第 19 類台所用品等
昭和 40 年 8 月 11 日 昭和 38 年審判第 1530 号)
本件商標は、毛筆縦書きで通常の書体で「波佐見」の漢字を書してなり、第19類「台所用
品」等を指定商品とするものである。
よって判断するに、「波佐見」の文字は佐世保市の東方に位置する陶磁器の生産地を表す文
字であって、該地で生産される陶磁器は、旧来は主として有田焼または伊万里焼の名で販売し
ていたとしても、波佐見焼とも称せられ、特に本件商標の登録出願時の数年前よりは長崎県の
指導もあり、食器類等の台所用品についてこの文字が広く使用されるようになり、波佐見焼と
いえば長崎県波佐見地区において生産される陶磁器の家庭用食器類を表すものとして、取引者、
需要者間に広く認識されるに至っていたものである。
したがって、単に普通の書体で表された「波佐見」の文字よりなるにすぎない本件商標をそ
の指定商品中「陶磁製食器類その他の台所用品で陶磁製のもの」に使用する場合には、これら
の商品の取引者、需要者は、本件商標がそれらの産地を表すものと直感するものであるから、
本件商標は、商標法3条1項3号に該当する。
審決
登
○
「ダイセン・大山」(第 30 類菓子等
昭和 42 年 1 月 11 日 昭和 41 年審判第 1552 号)
本願商標は、
「大山」と「ダイセン」の文字を上下2段に書してなり、第30類「菓子、パ
ン」を指定商品とするものである。
よって判断するに、「大山」の文字が、その構成部分をなす「大山国立公園」の文字は、大
山を中心として1936年に国立公園として指定され、以来中国地方唯一の国立公園として一
般に知られている地域を指称する語として、永い間国民に親しまれて使用されてきた名称であ
り、また、「大山」の文字は、その略称として一般に認識されているところであるから、その
正確な名称が1963年4月に大山隠岐国立公園と改称されたとしても、「大山」「ダイセン」
の文字を普通に用いられているにすぎない態様で表した本願商標が、その指定商品に使用され
た場合、その取引者需要者は、該商品が大山国立公園の地域において生産販売されている商品
であると認識するであろうことは取引の経験則に照らし明らかなところである。
してみれば、本願商標は、単にその商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示する
標章のみからなる商標であるといわざるを得ないから、商標法3条1項3号に該当する。
- 20 -
審決
「ホノルル」(第 17 類被服等
昭和 42 年 10 月 26 日
昭和 39 年審判第 2477 号)
本願商標は、「ホノルル」の片仮名文字を毛筆でやや行書体風の同書同大で縦書きしてなり、
第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品とするものである。
そこで判断するに、本願商標の「ホノルル」の文字自体からはアメリカ合衆国ハワイ州の首
都として古くから日本人にも親炙されている都市「ホノルル市」を直感させるものであること
は明らかであり、殊に最近における観光ブームの流行隆盛化とも相まって世界的観光地として
一般世人に広く親しまれているところである。そして、指定商品中、特に「アロハシャツ」
、
「ムウムウ」等の商品は、この地を訪れる観光客の珍奇な土産品として、一般的にハワイの「ホ
ノルル」における特産品として感受されるものであることは、日常生活の経験則に徴し相当と
するところである外、その他の指定商品についても、これら商品に「ホノルル」として表示し、
販売すれば、この種商品に接した需要者は、あたかも上記著名なハワイの「ホノルル」で製造、
販売された商品であるかの如く、一般的には直感し、誤認されるおそれが多分に存するところ
である。
してみると、本願商標は、指定商品との関係上単にその製造、販売地としての「ホノルル」
を表示するものにすぎず、商品自体の自他識別力としての登録適格性を欠くものと認めざるを
得ない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
審決
「本場奄美大島」(第 17 類被服等
昭和 43 年 6 月 8 日 昭和 41 年審判第 6576 号)
本願商標は、「本場奄美大島」の文字よりなり、第17類「被服」等を指定商品とするもの
である。
よって判断するに、商標の識別力の有無は、単に当該標章自体が商標として使用されている
ことの事実の有無により判定されるべきではなく、指定商品との関係において一般世人が産地
表示の語として直感する限りは、未だもって商標としての識別力を具備しているとは認められ
ないところである。即ち、本願商標中の「奄美大島」の文字は大島紬の産地として全国的に著
名な鹿児島県所在の奄美群島中の最大の島を意味するものであり、原反織物「紬」について「奄
美大島」又は「大島」といえば、前記大島紬の特産地としての「奄美大島」にて生産された「紬」
を指称するものであるとすることは、日常生活の経験則に徴し相当とするところであり、該文
字に「ある産品の主たる産地」の意を有する「本場」の文字を付記してなるにすぎない本願商
標は、その産地表示の語を誇称的に表示してなるにすぎないと言わざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
同旨審決
「奄美大島本場」(第 17 類被服等
昭和 43 年 6 月 8 日 昭和 41 年審判第 6577 号)
- 21 -
審決
登
○
「ボルドー」(第 17 類被服等
昭和 44 年 10 月 7 日
昭和 42 年審判第 8275 号)
本願商標は、「ボルドー」の文字を左にペン書きしてなり、第17類「被服(運動用特殊被
服を除く)、布製身廻品、寝具類(寝台を除く)」を指定商品とするものである。
本願商標「ボルドー」は、フランス国南西部ガロンヌ河に沿うジロンド県の主都にしてフラ
ンス第5の大都会であり、葡萄酒その他農業、牧畜、林業の産物の集散地と砂糖、ブランデー、
綿織物その他化学工業、木材工業、油製造業等の生産地であり、また海外貿易の盛んな有名な
港市である「Bordeaux」を指すものであることは、事典等その他の書籍の記載に徴し
明らかである。そうすると、本願指定商品に普通の態様からなる本願商標「ボルドー」を付し
た場合には、その産地、販売地を表示したものと認められる。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
審決
「スコッチ・SCOTCH」(第 1 類化学品等
昭和 44 年 12 月 1 日
昭和 42 年審判第 5047 号)
本願商標は、「スコツチ」の片仮名文字及び「SCOTCH」の欧文字をともにゴシック体
で上下2行に書してなり、第1類「化学品(他の類に属するものを除く。)、薬剤、医療補助品」
を指定商品とするものである。
本願商標は、普通の態様で「スコツチ」及び「SCOTCH」の文字を上下2行に併記して
なるものであるが、「SCOTCH」の文字は「スコットランドの」又は「スコットランド産
の」などの意味を有する英語で、わが国民にも古くから親しまれている語であり、
「スコツチ」
の文字は、これを片仮名で表示したものである。そして、
「スコットランド」は、イギリス国
大ブリテン島北部の地で、該地において造船、製鉄、羊毛などの諸工業の外、本願指定商品と
密接な関係を有する「化学」工業がおこなわれていることは明らかである(株式会社平凡社発
行世界大百科事典参照)。
してみると、本願商標は、商品の産地、販売地を普通の態様で表示するものに外ならないか
ら、商標法3条1項3号に該当する。
- 22 -
審決
「さいたま納豆」(第 32 類納豆
昭和 45 年 2 月 20 日 昭和 43 年審判第 2517 号)
本願商標は、楷書体風で「さいたま納豆」の文字を縦書きしてなり、第32類「納豆」を指
定商品とするものである。
本願商標は、その構成文字中の「さいたま」の文字が一般世人に行政区画名で関東地方の県
の一つである「埼玉県」を直感させるものであることは「さいたま」の文字が他の用語例とし
て一般に使用されている事実が極めて少ないこと(同語が屋号的な使用方法として若干見られ
る。)からみても明白であり、また、「納豆」の文字は指定商品との関係において商品の普通名
称にすぎないものである。
してみると、前記意味をそれぞれ有する本願商標「さいたま納豆」を一連にみるとき、取引
者・需要者は、単に「埼玉県で製造された納豆」または「埼玉県で販売されている納豆」を認
識し、理解するものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、その商品の産地又は販売地を
表すにすぎないから、商標法3条1項3号に該当する。
審決
登
○
「シンエツ」(第 6 類金属等
昭和 45 年 3 月 31 日 昭和 41 年審判第 5503 号)
本願商標は、
「シンエツ」の文字を横書きしてなり、第6類「金属、鉱石」を指定商品とす
るものである。
本願商標「シンエツ」の文字からは、日本国有鉄道の「信越本線」の名称で代表される旧地
名、信濃(長野県)と越後(新潟県)の地方を指称するものとしてよく知られ、現在において
も普通に用いられている「信越」を仮名書きしたものを直感するものである。
そうして、この地方において生産される生産物を表示する場合、または、この地方において
販売される商品であることを表示する場合に、「信越」の文字、又は、これを仮名書きした「シ
ンエツ」の文字は、当然、その商品の産地、販売地を示すために使用する必要があり、自由に
使用される性質のものであるから、
「シンエツ」の文字を書してなる本願商標を、その指定商
品に商標として使用しても、需要者は、これを単に、その商品の産地、販売地を表示したもの
として認識するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を有しないものというを相当とす
るものである。
したがって、本願商標は商標法3条1項3号に該当する。
同旨審決
「シンエツ」(第 5 類燃料等
昭和 43 年 7 月 18 日 昭和 41 年審判第 2557 号)
「シンエツ」(第 19 類台所用品等
昭和 46 年 4 月 5 日 昭和 41 年審判第 3110 号)
- 23 -
審決
「ミネソタ・MINNESOTA」
(第 7 類建築材料等
昭和 45 年 5 月 8 日 昭和 42 年審判第 4565 号)
本願商標は、
「ミネソタ」及び「MINNESOTA」の文字を2段に横書きしてなり、第
7類「建築又は構築専用材料、セメント、木材、石材、ガラス」を指定商品とするものである。
そこで判断するに、本願商標は、その構成中の「MINNESOTA」の欧文字の綴りから
みて、我が国においてもよく知られているアメリカ合衆国の「ミネソタ州」の州の名称を片仮
名文字と欧文字で表示したものであることは明らかである。また、我が国においては、産地又
は販売地を表す地名の表示を、本願商標のような方法で表示することも普通に用いられる方法
である。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、単にその商品の産地、販売地
を表示するにすぎないものというを相当とする。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
審決
「シヤンジェリーゼ」(第 17 類被服等
昭和 45 年 10 月 30 日 昭和 43 年審判第 9256 号)
本願商標は、「シヤンジェリーゼ」の文字よりなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」
等を指定商品とするものである。
ところで、本願商標「シヤンジェリーゼ」は、仏国パリの西北部の中心街である「シヤンジェ
リーゼ」を容易に想起せしめるものであるとするを社会通念上相当とする。又、同街はセーヌ
の北岸ぞいにあるコンコルド広場から北西の方向に延び、凱旋門で有名なエトワール広場へと
通じる並木道で、西側には「パリ」一流の商店が軒を並べており、繁華な商店街としても周知
であることは当庁に於て顕著な事実である。しかして、仏国は特に服飾関係については流行の
先端を行く国であり、同国随一といわれるパリのシヤンジェリーゼの繁華な商店街に於ては当
然、被服等の商品を生産、販売する店舗も決して少くないものであることは、疑う余地のない
ところと判断される。そして現在の経済社会の下では、一般に商品の交流は一国のみに止まる
ことなく、国際的に極めて盛大になりつつあることはいうまでもない。
してみれば、本願商標を、その指定商品に使用するときは、商品の生産地、販売地を表示す
るものとして直感し認識されるに止まるから、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
同旨審決
「シャンゼリゼ」(第 20 類家具等
昭和 47 年 1 月 18 日
- 24 -
昭和 42 年審判第 6242 号)
審決
「MEXICO」(第 30 類菓子等
昭和 46 年 6 月 24 日
昭和 43 年審判第 2525 号)
本願商標は、
「MEXICO」の文字を書してなり、第30類「菓子、パン」を指定商品と
するものである。
本願商標を構成する文字は、第19回オリンピック開催国として一般世人に周知されている
北アメリカ大陸南部の連邦共和国「Mexico」を容易に想起せしめるものである。そして、
「Mexico」(メキシコ)といえば銀、石油等の鉱産物の外、とうもろこし、砂糖、コー
ヒー、小麦、綿花等の農産物の産地としても知られるところであるから、その産物である小麦、
砂糖等を原料とする菓子、パンの製造、販売が行われていることは疑う余地がなく、また、そ
れらの業者が、
「MEXICO」の文字を使用し、その商品の産地、販売地を表示することも
容易に考えられるところである。
しかして、近時イギリス、オランダ、アメリカ等の諸外国よりチョコレート、キャンデー等
の数多くの菓子類が輸入され、これらを輸入菓子と称して一般に販売されていることは明らか
である。
してみれば、
「MEXICO」の文字を普通に用いられる方法で書してなる本願商標をその
指定商品に使用しても、需要者はその商品が「メキシコ」で生産され又は販売された商品であ
ることを認識するにすぎない。
したがって、本願商標は商標法3条1項3号に該当する。
審決取消訴訟
「有明漬」(第 32 類粕漬け肉等
昭和 47 年 4 月 18 日 東京高昭和 45 年(行ケ)第 122 号)
本願商標は、下記のとおりやや肉太の楷書体で「有明漬」の漢字を縦書きしてなり、第32
類「粕漬け肉、粕漬け魚介類、野菜または果実の漬物」を指定商品とするものである。
各証および弁論の全趣旨を総合すると、九州西部で長崎、佐賀、福岡、熊本の四県に囲まれ
ている有明海の沿岸地方が指定商品に含まれていることの明らかな貝柱、海茸等の粕漬けを産
出することで一般に著名であることもあって、
「有明」と「漬」とを結合した「有明漬」なる
文字は、取引者・需要者に有明海沿岸地方で生産される上記のような漬物を直感させ、「その
商品の産地を表示する標章」であると認めるのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
本願商標
- 25 -
審決
「シヨウナン」(第 50 類ちり紙等
昭和 47 年 12 月 1 日
昭和 44 年抗告審判第 13 号)
本願商標は、「シヨウナン」の片仮名文字を筆記体風に書してなり、第50類「ちり紙及び
その他本類に属する紙類」を指定商品とするものである。
よって判断するに、本願商標の「シヨウナン」の文字は片仮名書きであり、一般に片仮名文
字が漢字と異なり多様の意義を有する場合が少なく特定の意義観念を直ちに理解し把握し難
い場合のあることは必ずしも否定し得ないとしても、該「シヨウナン」の文字に接する者は、
わが国一般世人が古くから親しみ深く、かつ、歴史上なじみ深い地域名「湘南」を指称する語
として判断し理解するものといわなければならない。そして、「湘南」は元来相模の南部一帯
を総称する地名であって、最近はこの地帯一帯は京浜工業地帯の一連を形成する工業地帯とし
て世人に広く認識されていること明らかなものである。
したがって、このような文字「シヨウナン」は、商品「ちり紙」等を営業目的として、所在
を上記地域におく者が何人も必要に応じ商品の生産地、販売地表示として、その容器包装等に
任意に採択使用しうる性質のものであることは取引の実際に照らし相当である。また、本願商
標の態様は特殊な態様とはいい難く単に普通に用いられる程度の方法で表示されたものにす
ぎないものと認められる。
してみれば、本願商標は、単にその生産地、販売地を表示するにすぎないから、商標法(旧
法)1条2項に該当する。
審決
「岐阜牛乳・GIFUMILK」
(第 31 類乳製品等
昭和 47 年 12 月 26 日 昭和 45 年審判第 10758 号)
本願商標は、「岐阜牛乳」の漢字と「GIFUMILK」の欧文字を二段に左横書きしてな
り、第31類「食用油脂、乳製品」を指定商品とするものである。
本願商標は、その構成文字中「岐阜」の文字が中部地方の県の一つである「岐阜県」あるい
は「岐阜地方」を指称することは明白であり、
「GIFU」の欧文字も上記「岐阜」をローマ
字書きしたものと容易に理解され、また、「牛乳」及びそれと同義として親しまれている英語
「MILK」の文字が指定商品との関係においては商品の普通名称にすぎないものであり、ま
た、商取引の実際においては生産地名に商品名を付加して商品の産地または販売地表示とする
ことが普通に行われているところである。
そうすると、上記したそれぞれの意味を有する文字を普通に用いられる書体で表した本願商
標をその指定商品に使用しても、その取引者・需要者は、これを単に「岐阜県あるいは岐阜地
方で生産された牛乳」と認識し、理解するに止まり、自他商品識別標識としての機能を具有し
ないものである。
したがって、本願商標は、これを指定商品に使用しても、単に、その商品の産地、販売地を
表すにすぎないから、商標法3条1項3号に該当する。
- 26 -
審決
登
○
「ルアン」(第 17 類被服等
昭和 48 年 5 月 10 日 昭和 45 年審判第 9024 号)
本願商標は、
「ルアン」の文字を横書きしてなり、第17類「被服」等を指定商品とするも
のである。
そこで判断するに、「Rouen」「ルーアン」といえば、フランス国北部、パリとルアーブ
ルの中間に位置するセーヌ河畔の工業都市であって、フランス国有数の織物産地であることは、
国民百科大辞典、世界地名辞典等の記事により考え合わせればこれを認めることができる。そ
して、「Rouen」が「ルアン」とも表示されることも、事典類の記載に徴し明らかである。
してみれば、「ルアン」の文字を普通に用いられる態様で表してなるにすぎない本願商標は、
これを、織物と直接密接な関連性を有するその製品である本願指定商品に使用する場合には、
単にその商品の産地を表示するものと認識されるに止まり、なんら、自他商品を区別する標識
としての機能を果たすことができない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
審決
「げい洲」(第 32 類食用水産物等
昭和 49 年 8 月 15 日
昭和 45 年審判第 5385 号)
本願商標は、「げい洲」の文字を縦書きしてなり、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、
果実、加工食料品」を指定商品とするものである。
そこで判断するに、広島県西半部の地域は、古くより「芸州」(げいしゅう)の国名をもっ
て呼ばれており、かつ、該地域は、「かき」(牡蠣)等の水産物、「うんしゅうみかん」、「な
つみかん」、「ネーブルオレンジ」、「はっさく」、「まつたけ」、「ばれいしょ」等の農林
産物、「佃煮」、「菜漬」等の加工食料品の産地としてよく知られているところである。また、
一般に農林産物が一定地域の特産物であることを表示するための一用例として、旧国名を冠し
て「信州りんご」、「甲州ぶどう」、「信州そば」等の表現が用いられ、さらに、「梅干」、
「するめ」、「うに」等についてそれぞれ「紀州名産」、「長州名産」のような表示もまた普
通に行われているところである。
以上の事実よりして本願商標及びその指定商品をみると、本願商標は、「げい洲」の文字を
書してなるものであって、これより生ずる称呼は「げいしゅう」であるとみられるから、広島
県の西北部地域の旧国名であって今なお用いられている「芸州」(げいしゅう)と同音であり、
かつ「洲」の文字は「州」の文字と同義語として混用されているところから、本願商標が指定
商品中「芸州」と呼ばれる上記の地域において生産される商品としてよく知られている「かき」
(牡蠣)、「まつたけ」、「ネーブルオレンジ」、「はっさく」、「菜漬」等に使用された場
合、これに接する取引者、需要者は、該商品の生産地であることを表示する文字と理解し把握
するに止まる。
してみれば、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
- 27 -
審決
「KOBE」(第 11 類蓄電池等
昭和 49 年 9 月 10 日 昭和 47 年審判第 4883 号)
本願商標は、
「KOBE」の文字よりなり、第11類「蓄電池、整流器」を指定商品とする
ものである。
そこで判断するに、本願商標は、
「KOBE」の文字よりなるところ、我が国において都市
名を欧文字で表示することは普通に行われているところであるから、これより兵庫県にある工
業都市として、又、我が国最大の貿易港として知られている神戸(市)を欧文字をもって表し
ているものであることを容易に想起せしめるものである。そうすると、このような「KOBE」
の文字のみからなる本願商標をその指定商品に使用するときは上記、神戸(市)において生産
され、販売される商品であることを表示するにすぎないものと認められ、自他商品を識別する
機能を有しないものであるといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
審決
「犬山焼」(第 30 類菓子等
昭和 49 年 11 月 26 日 昭和 46 年審判第 2418 号)
本願商標は、「犬山焼」の文字を縦書きしてなり、第30類「焼菓子、焼パン」を指定商品
とするものである。
本願商標は、前記のとおりであって、その構成中「犬山」の文字は愛知県下の都市名で、こ
の地は日本ラインの景勝の地として知られた遊覧の地である。
しかして、この地では観光客を対象として、土産品として菓子類が販売されているところで
あり、それらには「犬山銘菓」「犬山名物」「犬山名産」等の文字を産地、販売地表示として普
通に採択使用しているのが実情である。
また、「焼」の文字は、菓子業界において「焼菓子」を指称するために「どら焼」「磯焼」「紅
梅焼」等の如く語尾に附して普通に使用されているところであり、広く菓子、パンの品質を表
す語として、本願指定商品とは密接不可分の関係にある。
したがって、「犬山焼」の文字からなる本願商標がその指定商品に使用された場合において、
これに接する取引者需要者は、該商品が「犬山で製せられ販売された焼菓子、焼パン」である
ことを表示する文字と理解し把握して、これをもって自他商品の識別機能を果たす文字とは認
識し得ないものと判断するを相当とする。
本願商標は、その指定商品の産地、販売地並びに品質を表示する文字からなるものであるか
ら、商標法3条1項3号に該当する。
- 28 -
審決取消訴訟
「ワイキキ」(第 4 類化粧品等
昭和 53 年 6 月 28 日
東京高昭和 52 年(行ケ)第 184 号)
本件商標は、「ワイキキ」の文字を横書きしてなり、第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、
香料類」を指定商品とするものである。そして、本件商標を構成する「ワイキキ」は、本件商
標の登録された当時すでに、「ワイキキ海岸」及びこれに隣接した繁華街を含む観光地域の総
称としてわが国においても著名であった。しかも、同地における代表的土産品の一が花香水で
あった以上、
「ワイキキ」の文字からなる本件商標をその指定商品中香水等の化粧品に使用し
た場合には、一般の需要者をして、その商品が「ワイキキ」で生産販売される土産品であるか
のように誤認させるものがあるといわざるをえない。
したがって、本件商標は、指定商品との関係上、商標法3条1項3号に該当する。
本件商標
審決
「芦屋」(第 32 類食肉等
昭和 54 年 1 月 26 日
昭和 49 年審判第 3375 号)
本願商標は、下記に表示したとおりの構成よりなり、第32類「食肉、卵、食用水産物、野
菜、果実、加工食料品(他の類に属するものを除く。
)」を指定商品とするものである。
本願商標は、行書体で「芦屋」の文字を縦書きしてなるものであるが、「芦屋」は1.兵庫県
南東部の観光・住宅都市として著名な「芦屋市」及び2.福岡県北部の遠賀郡の遠賀川の川口
にある「芦屋町」を指称するものであること明らかである。
しかるところ本願指定商品は、上記両「芦屋」において生産され、販売される性質の商品で
ある。
してみると、本願商標は、本願指定商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で標示する
標章のみからなる商標といわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
本願商標
- 29 -
審決
「VENETO・ベネト」(第 17 類被服等
昭和 60 年 9 月 10 日 昭和 55 年審判第 6251 号)
本願商標は、
「VENETO」の文字と「ベネト」の文字を二段に横書きしてなり、第17
類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品とするものである。
そこで判断するに、「VENETO」(ベネト)といえばイタリア国北東部に位置する州名を
指称し、山地は観光・保養地が各所に散在するが、平地にあっては養蚕が広く行なわれ、麻等
の栽培も盛んな地域である。また、同州には繊維や化学工業の発達したトレビーゾ県や、観光
都市として著名なベネチア(ベニス)があり、古くよりレースが生産され、陶器・ガラス等の
工芸品と共に世界各国に輸出されている実情がある。さらに同国はフランス国と並び数々の斬
新なファッションを世界に提供することでもわが国において広く知られ、そのモードはいわゆ
るイタリアファッションとして世界的に有名である。そして、わが国において外国の地名を表
す場合、外国文字によることは勿論のこと、片仮名文字で表記する場合も普通に行なわれてい
るところである。
してみると、本願商標は、これをその指定商品中の婦人服・ネクタイ・ハンカチ等の被服、
布製身回品等について使用するときは、取引者、需要者は、その商品が「VENETO」(ベ
ネト)で生産され、または販売されている商品であることを表示したものであると認識するに
止まるものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
審決
「ミシガン」(第 22 類はき物等
昭和 62 年 12 月 3 日
昭和 56 年審判第 9390 号)
本願商標は、「ミシガン」の文字を左横書きしてなり、第22類「はき物、かさ、つえ、こ
れらの部品および附属品」を指定商品とするものである。
本願商標を構成する「ミシガン」の文字は、特定の語義を有しない単なる造語を表したもの
とはいい難く、米国の州名または湖を表すものとして一般に親しまれていると認められるとこ
ろである。そうすると、「ミシガン」の文字(語)が例え本願商標の指定商品の産地としてよ
く知られているとは言えないとしても、本願商標に接する取引者・需要者は、米国の地名を表
したと理解し、商品の産地を表したと理解するにとどまる場合が決して少なくないとみるのが
相当である。
したがって、本願商標は、指定商品の産地を普通に用いられる方法で表示した標章のみから
なるものであるから、商標法3条1項3号に該当する。
- 30 -
審決
「ミシガンシュー」(第 22 類はき物等
昭和 62 年 12 月 3 日
昭和 56 年審判第 9391 号)
本願商標は、「ミシガンシュー」の文字を書してなり、第22類「はき物、かさ、つえ、こ
れらの部品および付属品」を指定商品とするものである。
そこで判断するに、本願商標は、「ミシガンシュー」の文字を書してなるものであるところ、
これはアメリカ合衆国の州名を表したと理解されるにとどまり、他に特定の語義を見出し得な
いものである。
してみると、本願商標は指定商品の産地を表したと理解され、自他商品の識別標識としては
認識されないものといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
審決
「PICCADILLY」(第 17 類被服等
昭和 63 年 1 月 14 日 昭和 60 年審判第 2287 号)
本願商標は、
「PICCADILLY」の欧文字を横書きしてなり、第17類「被服」を指
定商品とするものである。
そこで判断するに、本願商標を構成する「PICCADILLY」の文字は、英国の首都ロ
ンドンにおける著名な繁華街の地名として認識されるとみるのが相当である。
そうすると、著名な地名が本願商標の指定商品を含む各種の商品について、その産地又は販
売地を表示するためのものとして普通に使用されている実情より、本願商標は、その指定商品
の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といわなければ
ならない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
審決
登
○
「備讃瀬戸大橋」(第 30 類菓子
平成 2 年 11 月 29 日
昭和 58 年審判第 12969 号)
本願商標は、「備讃瀬戸大橋」の文字を縦書きしてなり、第30類「菓子」を指定商品とす
るものである。
そこで判断するに、本願商標は、岡山県(備前)香川県(讃岐)の両県の地方を称するもの
と認識される「備讃」の文字を、この両県にまたがる橋を指称する「瀬戸大橋」の文字に冠し
た「備讃瀬戸大橋」の文字を普通の書体で表してなるから、該大橋が観光の名所と認めうるこ
とより、これを土産物として用いられる商品を含む本願商標の指定商品に使用するときは、こ
の大橋にまつわる観光地を表示したものとしての意味合いで認識されるにとどまるものと認
める。
よって、本願商標は、その指定商品の販売地(産地)を表示するにすぎないものといわざる
を得ないから、商標法3条1項3号に該当する。
- 31 -
審決
「備前」(第 28 類ぶどう酒
平成 3 年 3 月 14 日
昭和 62 年審判第 5584 号)
本願商標は、
「備前」の文字を横書きしてなり、第28類「ぶどう酒」を指定商品とするも
のである。
よって判断するに、「備前」の文字は、現在の岡山県の東南部の旧国名として一般に親しま
れている地理的名称であり、かつ、該地域を含めた岡山県が葡萄の産地として広く知られてい
ることから、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者需要者は、該商品
が備前地方で生産、販売されたものと理解し、把握するにすぎず、自他商品の識別標識として
の機能を有しないものと判断するのが取引の実際に照らして相当である。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
審決
登
○
「信濃の国」(第 32 類そばめん等
平成 3 年 5 月 30 日 昭和 58 年審判第 16466 号)
「みそ」で登録あり。未公表もしくは削除。
本願商標は、「信濃の国」の文字を縦書きしてなり、第32類「うどんめん、そばめん、そ
の他の加工穀物」を指定商品とするものである。
本願商標は「信濃の国」の文字よりなるところ、該文字は、たとえば旧国名の一つ「武蔵」
が「武蔵の国」と表されることで知られていることよりすれば、現長野県全域に当たる旧国名
「信濃」を表示したものと容易に認識、把握されるといい得るところである。
しかして、長野県は、本願指定商品中「そばめん」の産地、販売地としてよく知られている
ところである。
してみれば、現長野県を認識させる「信濃の国」を普通に用いられる方法で書してなる本願
商標を、指定商品中の「そばめん」に使用してもこれに接する取引者、需要者はその商品の産
地、販売地を表示したものと理解し、自他商品の識別標識とは認識しないとみるのが相当であ
る。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
審決
登
○
「EVIAN」(第 29 類清涼飲料等
平成 6 年 5 月 12 日 昭和 59 年審判第 21870 号)
本願商標は、「EVIAN」の文字を書してなり、第29類「清涼飲料、果実飲料、その他
本類に属する商品」を指定商品とするものである。
「EVIAN」は、フランス東部、オート−サボア県北部の町であって、風光の美しい温泉
地として知られ、ここで産する鉱泉水は、アルカリ性ミネラルウオーターでエビアン水と称し、
単なる飲料水であって、高級レストラン等の飲料水として広く使用されている。
そうすると、本願商標は、これをその指定商品中「エビアン水」または「エビアン水を使用
した清涼飲料水」等に使用するときは、単に商品の原産地を表示したにすぎないものと認める。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
- 32 -
審決
「Bostonian」(第 17 類被服等
平成 4 年 3 月 19 日
昭和 59 年審判第 8837 号)
本願商標は、下記に表示した構成よりなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く。)、布
製身回品(他の類に属するものを除く。)、寝具類(寝台を除く。
)」を指定商品とするものであ
る。
本願商標は「ボストンの」の意味を有する「Bostonian」の文字よりなるところ、
「ボストン」は、米国のマサチューセッツ州の州都であって、ニューイングランド第一の工業
都市で、特に繊維工業では全国でも重要な位置を占め、主な生産物は綿織物、毛織物、衣服を
始め、くつ、なめし皮、機械類、船舶、食品、化学薬品、電気製品等が生産されている都市で
ある。
しかして、我が国において外国の地名を表示する場合、片仮名文字等で表記することの他、
外国文字によって表記することも普通一般に行われているところである。
かかる場合にあって、「Bostonian」の文字を普通に用いられる書体といえる方法
で表示し、さらに、該文字を引き立てる役目を果たすための要素といえる隅丸横長方形の輪郭
を設けて表した本願商標をその指定商品について使用するときは、これに接する取引者、需要
者は、前記した如き事情よりして、これを「Boston(ボストン)」で生産され、または
販売されている商品であることを表示したものとして理解し認識するに止まるものとみるの
が相当である。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
本願商標
審決
「ヴエルサイユ」(第 19 類台所用品等
平成 4 年 3 月 27 日
昭和 58 年審判第 16457 号)
本願商標は、
「ヴエルサイユ」の文字を書してなり、第19類「台所用品、日用品」を指定
商品とするものである。
そこで判断するに、本願商標を構成する「ヴエルサイユ」の文字よりは、フランス国の首都
パリ市の西南西に位置する都市を指称する「Versailles」
(ヴエルサイユ)を容易
に想起せしめるものであり、同都市はルイ14世の建築したヴエルサイユ宮殿や第一次世界大
戦の処理に関する条約の締結地としてよく知られているばかりでなく、食品工業や機械工業も
盛んであることは「世界地名大事典」等の「ヴエルサイユ」
「ベルサイユ」(Versaill
es)の項の記載においても認められる。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要
者は、容易に該商品がフランス国の都市「ヴエルサイユ」で製造された商品であることを表し
たものと認識するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たす文字とは認識し得ない
ものである。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
- 33 -
審決
登
○
「BALI」(第 28 類日本酒
平成 4 年 4 月 30 日
昭和 60 年審判第 21328 号)
本願商標は、「BALI」の欧文字を横書きしてなり、第28類「日本酒」を指定商品とす
るものである。
本願商標は、観光地として我が国においても広く知られているばかりでなく、「米、コーヒー、
コプラ」の栽培等農業が盛んであることが「地名辞典
外国編」の「バリ」(Bali)の項
の記載においても認められるインドネシア共和国に属するスンダ諸島の島の一つである「Ba
li」(バリ島)を容易に想起させるものである。また、日本酒を取扱う業界においては、日
本酒を国内の原材料を用いて国内生産するばかりでなく、外国において、その国の原材料を用
いて生産された日本酒を輸入し販売している実情がある。
してみると、本願商標は、これをその指定商品に使用した場合、取引者・需要者は、前記実
情から容易に当該商品が「バリ島」で生産された商品であることを表したものと認識するに止
まり、自他商品の識別標識としての機能を果たす文字とは認識し得ないものと判断するのが相
当である。
したがって、本願商標は、これを指定商品に使用するとき、商品の産地を表したに過ぎない
ものといわざるを得ないから、商標法3条1項3号に該当する。
審決
「妻籠・妻籠宿」(第 30 類菓子等
平成 4 年 7 月 9 日
昭和 60 年審判第 20967 号)
本願商標は、「妻籠」と「妻籠宿」の文字を上下2段に横書きしてなり、第30類「菓子、
パン」を指定商品とするものである。
本願商標は、旧中山道のうち木曽路11宿の1つと、その地を指す「妻籠」と「妻籠宿」の
文字を2段に書してなるが、この地は現在、往時の街並みを復元し、当時の家、調度等そのま
まに、昔の宿場町を体感できるところとして広く知られており、今もここを「妻籠宿」と称し、
一種の観光地として認識されているところである。
そうすると、このような文字を本願指定商品に付すときは、需要者、取引者は観光地として
の上記宿場、もしくは同地方の生産販売に係る商品と理解し、単に商品の産地販売地を表示し
たものと認識するにすぎない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
- 34 -
審決
「オラン・ORAN」(第 29 類茶等
平成 4 年 8 月 5 日
平成 2 年審判第 13699 号)
本願商標は、「オラン」と「ORAN」の文字とを2段に併記してなり、第29類「茶、コー
ヒー、ココア、果実飲料」等を指定商品とするものである。
そこで判断するに、「オラン」(ORAN)は北アフリカ、アルジェリアの地中海沿岸西部、
オラン湾に面した港湾都市で、同国の首都アルジェリアに次ぐ第2の都市(オラン県の首都)
である。そして、同市はアルジェや近接するモロッコの都市と鉄道で結ばれ、周囲のオアシス
の農産物取引の中心地となっており、交通、産業の要衝としての位置を占めている。また、フ
ランス植民地時代からの農園が多く、山の斜面、潅漑された谷などで、ぶどう、柑橘類、綿、
野菜オリーブなどが栽培されているもので、しかも、本願指定商品とも密接な関連を有するこ
れら農産物及びその加工品が、主要な収入源として盛んに輸出されているものである。
してみると、本願商標は、「オラン」、「ORAN」の文字を2段に併記してなるものである
から、これをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者は、該商品の産
地、販売地を表示したものと認識するに止まるものである。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
審決
「JAVA」(第 27 類紙巻たばこ等
平成 4 年 8 月 27 日 昭和 63 年審判第 5857 号)
本願商標は、
「JAVA」の文字を書してなり、第27類「紙巻きたばこ及び紙巻き丁字た
ばこ」を指定商品とするものである。
本願商標は、「JAVA」の文字を普通に用いられる方法で表してなるものであるが、該文
字は、「インドネシアの中核をなす島」の名称「ジャワ」を意味する英語として世人に知られ、
親しまれているものである。そして、「JAVA(ジャワ)は、「米、サトウキビ、茶、コーヒー、
錫」を産出する地として知られているほか、海外旅行が盛んな近時においては、著名な観光地
の名称として、わが国において知られていることは顕著な事実である。
してみれば、本願商標「JAVA」をその指定商品について使用しても、これに接する取引
者、需要者は、
「ジャワ産(製)のたばこ」
、「ジャワで販売されたたばこ」であることを理解
するにとどまり、自他商品の識別標識としての識別機能を果たさないものと認識するものとい
うを相当とする。
したがって、本願商標は、商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表してなるにすぎ
ないものといわざるを得ず、商標法3条1項3号に該当する。
同旨審決
「JAVA」(第 17 類被服等
昭和 60 年 9 月 24 日
昭和 57 年審判第 12980 号)
審決
- 35 -
「バクダッド」(第 19 類台所用品等
平成 4 年 8 月 27 日
昭和 63 年審判第 10653 号)
本願商標は、
「バクダッド」の片仮名文字を横書きしてなり、第19類「台所用品、日用品」
を指定商品とするものである。
「バクダッド」の文字は、イラクの首都「Baghdad」を表すものとして一般に知られ
親しまれているところである。そして、「バクダッド」は、商業、貿易の中心地であり、国際
空港を有し、また各種モスクのほかソペイダ墓廟、国立博物館、アラブ芸術博物館、服飾博物
館などの見るべきものが多い観光地としてわが国において世人に知られているところである。
してみれば、本願商標「バクダッド」をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、
需要者は、バクダッドで生産、販売された商品であることを理解するに止まり、自他商品の識
別標識としての機能をはたさないものと認識するのを相当とする。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
審決
「SOFIA」(第 14 類原料繊維
平成 6 年 6 月 10 日 平成 2 年審判第 5175 号)
本願商標は、下記のとおりの構成よりなり、第14類「原料繊維」を指定商品とするもので
ある。
そこで判断するに、本願商標は、
「SOFIA」の欧文字を、やや図案化させてはいるもの
の、さほど特異ともいえないレタリング技法をもって表してなるものであるから、これよりは
ブルガリア国の首都として知られる「SOFIA」の地理的名称を表示したものと容易に理解
されるものである。そして、該地はブルガリア西部のソフィア盆地南部に位置し、古くからバ
ルカン半島の交通の中心地としてユーゴスラビアとトルコを結ぶ鉄道や、道路、空路の要衝に
なっており、同国の工業生産の約6分の1を産する工業都市といわれ、特に、本願指定商品と
密接な関係にある繊維、化学工業の分野の発展が顕著であり、とりわけ、メリヤス工業が発達
していること等が広く知られている(「ミリオーネ全世界事典第3巻」等参照)
。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、単に商品の産地、販売地を表
示したものと理解され、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものとみるのが相当で
あるから、商標法3条1項3号に該当する。
本願商標
- 36 -
審決
「EUROPE」(第 12 類自動車用タイヤ等
平成 5 年 9 月 30 日
昭和 60 年審判第 21648 号)
本願商標は、「EUROPE」の文字を表してなり、第12類「自動車用タイヤ、その他本
類に属する商品」を指定商品とするものである。
そこで判断するに、「EUROPE」は「ヨーロッパ(欧州)」を意味する英語である。そし
て、ガイドブック、書籍、カタログ等によれば、
「ヨーロッパ」の文字が記事、広告に商品の
産地、販売地を表示するものとして普通に使用されている。
してみると、「ヨーロッパ」の英語表記である「EUROPE」の文字よりなる本願商標を
その指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、該商品がヨーロッパで生産され
た商品又はヨーロッパで販売される商品であるものと理解し、単に商品の産地、販売地を表示
したものと認識するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
審決
「飴屋横丁」(第 30 類菓子等
平成 6 年 7 月 27 日
平成 3 年審判第 23465 号)
本願商標は、「飴屋横丁」の文字を書してなり、第30類「菓子、パン」を指定商品とする
ものである。
本願商標は、「飴屋横丁」の文字を書してなるところ、これと同一の呼び名の「アメヤ横丁」
なる地域が東京都台東区西部の商店街に存在し、当該地域は第二次大戦直後のヤミ市から発展
したもので、菓子屋、食料品・雑貨類の商店が密集し、輸入食料・雑貨の安売りで著名であっ
て、現在では東京最大のマーケット街として取引者、需要者間に広く知られているといえるも
のである。
そして、本願商標が「アメヤ横丁」とは、その構成文字を異にするといえども、一般には、
その地の名称を表す文字を常に正確に記憶しているとは限らず「アメヤヨコチョウ」といえば、
直ちに、東京最大のマーケット街を指称しているものと理解認識されるまでに、当該地が著名
であること前記のとおりであるから、本願商標を指定商品に使用したとき、これに接する取引
者・需要者は、前記実情から、当該商品が東京最大のマーケット街の「アメヤ横丁」で製造、
販売されるものと理解認識して取引する場合も決して少なくないものとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、これを指定商品に使用するときには、商品の産地・販売地を表し
たにすぎないから、商標法3条1項3号に該当する。
審決取消訴訟
- 37 -
「やんばる・山原」(第 28 類酒類
平成 9 年 11 月 11 日
東京高平成 9 年(行ケ)第 71 号)
本願商標は、下記のとおりの構成よりなり、第28類「酒類」を指定商品とするものである。
本件審決時において、
「やんばる」が名護市を含む沖縄本島北部の通称として広く使用され
ていることは疑いの余地がないところであるから、たとえ「やんばる」あるいは「山原」が、
正確には沖縄本島北東部の背梁に連なる山岳地帯の地理的名称であるとしても、
「やんばる」
が名護市を含む沖縄本島北部の通称として広く使用されており、かつ、この地域において焼酎
を含む酒類の製造・販売が広く行われていると認められる以上、本願商標は、これをその指定
商品に使用するときは、該商品の産地・販売地を表したにすぎないものである。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
本願商標
本願商標
審決取消訴訟
「サークライン」は、指定商品「環状蛍光燈」の形状を暗示しているとはいえても、形状を表示し
ているとは認められないとされた事例
(昭和 42 年 7 月 6 日
東京高昭和 38 年(行ナ)第 55 号)
本件商標は、
「サークライン」の片仮名文字を横書きしてなり、第69類「電気機械器具」
等を指定商品とするものである。
被告が環状蛍光燈を発売してから本願商標が登録されるまでの間はわずか半年余りに過ぎ
ないこと、蛍光燈という商品自体が短期間に消費されたり新品に買い替えられたりするもので
ないこと等を総合すれば、被告が環状蛍光燈を発売し、それが初めて取引市場に現れるように
なってからわずか半年余りしか経過しない本件商標の登録当時に、本件商標がわが国において
一般に環状蛍光燈を意味する普通名称として認識されていたものとは到底認められず、「サー
ク」と「ライン」とを結合した造語として受け取られるとみるのが自然である。
してみれば、本件商標は、その登録当時における取引の事情その他社会の一般通念に照らし
てこれを見るとき、指定商品に属する環状蛍光燈の普通名称に該当するとか、環状蛍光燈を直
感させるとか、環状蛍光燈の形状を暗示しているとはいえ一見して直ちにその形状を表示した
に過ぎないとかを感じ取られるような表示方法と認めることもできないから、環状蛍光燈との
関係において本件商標が特別顕著性を欠くものとすることはできない。
したがって、本件商標は、商標法(旧法)1条2項に該当しない。
審決取消訴訟
- 38 -
「セロテープ」は、指定商品「セロファン製テープ」を暗示しているとはいえ、単にその品質・形
状を表わすに過ぎないものではないとされた事例
(昭和 42 年 12 月 21 日
東京高昭和 39 年(行ケ)第 27 号)
本件商標は、下記のとおりの形状構成の、「セロテープ」の片仮名を左横書きしてなり、第
50類「セロファン製のテープ」を指定商品とするものである。
本件商標「セロテープ」は、少なくともその登録時においては、その指定商品である「セロ
ファン製テープ」を暗示するものではあっても、単にその品質・形状を表すに過ぎないもので
はなく、また、その取引者・需要者間において一般的に普通名称として使用され、認識されて
いたものではなく、商品である「セロファン製粘着テープ」の商標として自他商品識別機能を
失わない程度に広く認識されていたものであって、商標法(旧法)1条2項にいわゆる特別顕
著性を有していたものとみるのが相当である。
本件商標
審決取消訴訟
「ハイチーム」は、指定商品「酵素又は酵素製剤」の品質、性能をある程度暗示する要素を含むも
のといえないではないが、常に商品の出所表示力を欠くものとはいえないとされた事例(昭和
46 年 12 月 24 日 東京高昭和 45 年(行ケ)第 61 号)
本願商標は、下記に表示したとおり「ハイチーム」の文字よりなり、第1類「化学品、薬剤
及び医療補助品」を指定商品とするものである。
「チーム」という語が、接尾語でなく単独に「酵素」または「酵素製剤」を意味する語として
用いられることはなく、
「∼チーム」の形で、しかも商品名として用いられることがあるにと
どまること、また一般に当業界において、「高級な酵素」または高級な酵素製剤を表現するこ
とばとして、「ハイ」と「チーム」の語を組み合わせて用いる用語例が存在することを認めるに
足る証拠もない。また、本願商標の構成を外観および称呼の面からみるならば、商標としての
各文字の不可分一体性がきわめて強いものであること等の事情を考慮すれば、「ハイチーム」
の語は、これに接する取引者、需要者の一般が、直ちに「ハイ」の部分と「チーム」の部分にわ
けて印象づけられ、そこから「高級な酵素」または「高級な酵素製剤」の観念をもつにいたるほ
ど、強い観念表示力を備えた語であるとは考えられず、いささか商品の品質、性能を暗示する
要素をもちながら、なお、他の多くの「∼チーム」の商標に伍して、商品の出所表示力を具備
する商標であると認められるのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当しない。
本願商標
審決取消訴訟
- 39 -
「ケミカルアンカー」は、極めて漠然とした広範な意味を生ずるものと認められ、指定商品「ゴ
ム製建築専用材料等」の品質表示には該当しないとされた事例
(平成 11 年 1 月 27 日
東京高平成 10 年(行ケ)第 109 号)
本件商標は、「ケミカルアンカー」の片仮名文字を横書きしてなり、第7類「ゴム製建築ま
たは構築専用材料、石こう製建築または構築専用材料、石灰製建築または構築専用材料、しっ
くい、パテ、建造物組立セット」を指定商品とするものである。
「ケミカルアンカー」の語の前半の「ケミカル」は、英語の「chemical」に通じ、
一般の英和辞典によれば「化学の、化学的、化学薬品による」等の意味を、後半の「アンカー」
は、英語の「anchor」に通じ「定着、定着具」等の意味を認識させるものであり、この
両者を一連に横書きした本件商標は、化学に何らかの関連を有する定着又は定着具を意味する
ものとの観念を生ずるとしても、それが化学的組成物からなるものか、あるいは定着に際して
化学的作用を利用するものか、その一部に化学薬品等を用いたものかなど、極めて漠然とした
広範な意味を生ずるものと認められ、指定商品との関連において商品が有する一定の品質を表
示するものとして一般需要者・取引者に認識されると解することは困難である。
したがって、本件商標は、登録査定時において、その構成全体として、特定の商品の品質等
を表示するものではなく、暗示的に表現したものと理解されることがあるというに止まる一種
の造語である。
審決
「マキトール」は、指定商品「ロールブラインド、ロールスクリーン等の巻き取る機構(構造)
を有する商品」について、品質、機構(構造)を認識させるとされた事例
(平成 9 年 9 月 18 日
平成元年審判第 2238 号)
本願商標は、「マキトール」の文字を横書きしてなり、第20類「家具、屋内装置品」等を
指定商品とするものである。
本願商標「マキトール」は、「巻いて他の物へ移しとる」の意味を有する「巻き取る」の語
の字音を容易に想起させる「マキトル」の語にあって、その後半部の「トル」を語呂をよく「トー
ル」と表音化したものとみるを相当とし、その指定商品中の「ロールブラインド、ロールスク
リーン」等の商品との関係では、該文字は「巻き取る」の意味を直観させるものである。そし
て、株式会社経済出版発行「家具木材加工インテリア用語事典」等によれば、「巻き取る」の
語は商品の機能、構造を表すものとして一般に使用されているものといえる。
そうとすれば、本願商標は、その指定商品中のロールブラインド、ロールスクリーン等の巻
き取る機構(構造)を有する商品について使用しても、取引者・需要者は、該商品が前記機構
(構造)を有する商品であること、即ち、商品の品質、機構(構造)を表示するものであるこ
とを容易に理解し認識するに止まるものと認められる。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
- 40 -
審決取消訴訟
登
○
「スベラーヌ」は、指定商品「滑り止め付き建築又は構築専用材料」について、品質、効能を連
想させるとされた事例(昭和 59 年 1 月 30 日
東京高昭和 56 年(行ケ)第 138 号)
本件商標は、
「スベラーヌ」の片仮名文字を横書きしてなり、第7類「建築又は構築専用材
料、セメント、木材、石材、ガラス」を指定商品とするものである。
本件商標は、片仮名で「スベラーヌ」と横書きしてなるものであり、この構成文字の中間に
配された長音符を除くと、「スベラヌ」となるものである。ところで形容詞の本来の語意を強
調するために、例えば「暖かい」を「アタタカーイ」とするなど、語尾近くに長音符を挿入し
て記述し、あるいはこれに従った発音をする表現が社会的に少なからず行われていることは当
裁判所に顕著な事実である。他方、
「滑らぬ」という語句が「滑らない」と同じ意味を表現す
る現代語として社会一般に理解認識されていることも当裁判所に顕著な事実である。
そして、前記の事実によると、本件商標からは直ちに「滑らぬ」の観念が生じるものと認め
るのが相当である。
前記の認定事実によると、本件商標を「滑り止め付き建築又は構築専用材料」について使用
した場合には、これに接する取引者、需要者は、一般に「滑らぬ」の観念を想起せられると同
時に、右商品が「滑らない」品質、効能を有することを連想させられるものと認めるのが相当
であるから、これを「滑り止め付き建築又は構築専用材料」について使用する限り、単にその
商品の特性を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものといわなければならな
い。
してみると、本件商標の登録は、商標法3条1項3号に違反してなされたものである。
本件商標
- 41 -
審決
出願に係る立体商標は、指定商品「綿棒」の形状を表示するにすぎないとされた事例(平成 11
年 9 月 30 日
平成 10 年審判第 12971 号)
本願商標は、下記のとおりの構成よりなり、第10類「綿棒」を指定商品とするものである。
そこで判断するに、立体商標は、商品又は商品の包装及び役務の提供の用に供する物(以下
「商品等」という。)の形状を含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能
を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択さ
れるものであり、本来的(第一義的)に商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別す
る標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは商品等の機能、又
は美感をより発揮させるために施されたものであって、全体としてみた場合、商品等の機能、
美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当
該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まるというのが相当である。また、商品
等の形状は同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざ
るを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人も使用を欲
するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうすると、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、
商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用
された結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者において
当該形状をもって同種の商品又は役務と明らかに識別されていると認識することができるに
至っている場合を除き、商標法3条1項3号に該当し、商標登録を受けることができないもの
と解すべきである。
本願商標は、商品「綿棒」の形状としてその一形態を表したものとみられるものであるから、
これをその指定商品「綿棒」について使用しても、取引者、需要者は、単に商品「綿棒」の形
状と認識するにすぎない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
本願商標
- 42 -
審決
出願に係る立体商標は、指定商品「印刷インキ等」の収納容器」の形状を表示するにすぎないと
された事例(平成 11 年 12 月 10 日
平成 10 年審判第 16582 号)
本願商標は、下記の通りの構成よりなり、第2類「塗料、染料、顔料、印刷インキ」等を指
定商品とし、立体商標として出願されたものである。
ところで、商品の形状は、それ自体のもつ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品
の形状の持つ美観を追及する等の目的で採択されるものであり、本来的に商品の出所を表示し、
自他商品を識別する標識として採択されるものではない。
そうとすれば、商品の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標は、
使用された結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間に
おいて当該形状をもって同種の商品と明らかに識別されていると認識することができるに
至っている場合を除き、登録を受けることができないと解すべきである。
そして、これを本願についてみれば、本願商標は、複写機又はプリンターにおいて当該機械
内に取り付けて又は当該機械内のタンクに注入するために使用するトナーなどの収納容器の
一形態を表すものであるから、これを指定商品「トナー」などに使用しても、取引者、需要者
はトナーなどの収納容器を表示したものと認識すると認められ、単に商品の包装の形状を表示
するにすぎないものと言うべきである。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
本願商標
- 43 -
審決取消訴訟
出願に係る立体商標は、指定商品「筆記用具」の形状そのものを認識するにとどまるとされた
事例(平成 12 年 12 月 21 日 東京高平成 11 年(行ケ)第 406 号)
本願商標は、下記のとおりの構成態様からなり、第16類「鉛筆、ボールペン、その他の筆
記用具」を指定商品とするものであるところ、検証甲号証及び弁論の全趣旨に照らすと、取引
者、需要者が本願商標に係る形状に接した場合、最下部が細い筆記用の芯部分で、その上の中
間部は指で挟み持つことのできる丸い棒状の支持部分となっており、上部は平板で幅広に拡大
していて、その中央部は紙片等を挟み得るほぼ長方形のクリップ状になっていることを認識す
ることができ、簡便な鉛筆又はボールペンという筆記用具が一般的に有するものとして予想し
得る形状の特徴を備えているものと感得することができるものと認められる。そして、その形
状は、全体としてまとまりがよくスマートな印象を与え、主としてゴルフスコアカード記入用
等の筆記用具として用いられる鉛筆又はボールペンであることを推認させるものとなってい
る。
本願商標に係る立体的形状は、このようにまとまりがよくスマートな印象を与え、それなり
の特徴を有するものであるものの、簡便な鉛筆又はボールペンという筆記用具の用途、機能か
ら予測し難いような特異な形態や特別な印象を与える装飾的形状等を備えているものとは認
められず、取引者、需要者にとっては、本願商標から、これらの筆記用具が一般的に採用し得
る機能又は美感を感得し、筆記用具の形状そのものを認識するにとどまるものと認められ、そ
の形状自体が自他商品の識別力を有するものと認めることはできない。
そして、本件全証拠によるも、「本願商標は、前記認定のとおり、筆記用具の形状の特徴を
備えたものであり、後部を平たいクリップ状としたのは、紙片等を挟みやすく、落ちにくくす
る等の機能を効果的に発揮させるために採択されたとみるのが相当であり、それが直ちに本願
商標に関し自他商品の識別性に影響を与えるとは認め難く、需要者もまた、筆記用具の形状の
範囲のものと認識するにすぎないとみられるものである。
」とした審決の判断を覆すべき事実
関係を認めることはできない。
したがって、本願商標は、その指定商品である「鉛筆、ボールペン、その他の筆記用具」の
形状の域をでるものではなく、指定商品の物の形状の範囲を出ないと認識する形状のみから成
る立体商標にすぎないというべきであり、指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示する
標章のみから成る商標であり、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
本願商標
- 44 -
審決取消訴訟
出願に係る立体商標は、指定商品「乳酸菌飲料」の収納容器の形状を表したものと認識させる
にとどまるとした事例
(平成13年7月17日
東京高平成12年(行ケ)第474号)
本願商標は下記に表示したとおりの構成からなり、第29類「乳酸飲料」を指定商品とする
ものである。
飲料に係る容器の形状は、容器自体の持つ機能を効果的に発揮させたりする等の目的で選択
される限りにおいては、原則として、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識を有する
ものということができないところ、本願商標の指定商品「乳酸菌飲料」の一般的な収納容器で
あるプラスチック製使い捨て容器の製法、用途、機能から予想し得ない特徴が本願商標にある
とは認められず、その他、本願商標が商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識を有する
ものであることに関する事実関係を認めるべき証拠はない。
本願商標は、その指定商品との関係よりすれば、多少デザインが施されてはいるが特異性が
あるものとは認められず、通常採用し得る形状の範囲を超えているとは認識し得ないので、全
体としてその商品の形状(収納容器)の一形態を表したものと認識させる立体的形状のみより
なるものと認められる。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
本願商標
- 45 -
審決取消訴訟
出願に係る立体商標は、指定商品「投釣り用天秤」の形状を表したものと認識させるにとどま
るとした事例(平成 13 年 12 月 28 日
東京高平成 13 年(行ケ)第 48 号外)
本願商標は下記に表示したとおりの構成からなり、第29類「投釣り用天秤」を指定商品と
するものである。
(1)
ア
商品の形状の意義
商標法3条1項3号が、記述的商標は商標登録を受けることができない旨規定する趣旨は、
記述的商標が商品の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人
もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当と
しないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を
欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによると解される(最高裁昭和54年
4月10日第三小法廷判決)。商品の形状は、本来、その商品に期待される機能をより効果的
に発揮させたり、その商品から得られる美感をより優れたものにするなどの目的で選択される
ものである。したがって、指定商品の形状そのものからなる立体商標は、その形状に変更又は
装飾が施されても、指定商品等の形状を記述するものであって、原則として、取引に際し必要
適切な表示として特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当とせず、また、多くの
場合自他商品識別力を欠くという記述的商標の特徴を具備するものであるから、商品の用途、
機能から予測し難いような特異な形態や特別な印象を与える装飾的形状等を備えている場合
を除き、同号に掲げる「商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」
として登録を受けることができない商標というべきである。
もっとも、商品の形状は、一次的には商品の特性そのものであるが、二次的には商品の出所
を表示する機能をも併有し得るというべきであり、商品等の形状を普通に用いられる方法で表
示する標章のみからなる立体商標も、当該形状を有する商品の販売、広告、宣伝等がされた結
果、自他商品識別力を獲得するに至り、商標法3条2項により商標登録を受け得る場合のある
ことは、記述的商標一般について、その使用をされた結果自他商品識別力を獲得した場合と異
なるところはない。
イ
一般に、商品等の形状は、商品等の機能により相当程度の制約を受けるが、同一の機能
を保持しつつも、なお、選択し得る形状に一定の幅があるのが通常である。しかしながら、商
標法3条1項3号は、記述的商標が登録を受けることができない旨規定しており、当該記述的
商標の表示する商品の形状等が他者の販売する商品と識別可能なものであること、又は現に出
願人が販売する商品の形状等を記述するものであることを記述的商標の除外事由としていな
い。その趣旨は、上記のとおり、取引に際し必要適切な表示として特定人によるその独占的使
用を認めるのを公益上適当とせず、また、多くの場合自他商品識別力を欠くという記述的商標
の特徴が、他者の販売する商品と識別可能かどうか、又は現に出願人が販売する商品の形状等
を記述するものかどうかにかかわらないからである。そうすると、指定商品の取引者、需要者
が、指定商品に使用された商標に接した場合、これを当該指定商品の形状を普通に用いられる
方法で表示する標章のみからなる商標であると認識するようなものである限り、その形状が特
徴的であり、又は装飾が施されていても、記述的商標に当たることを否定すべき理由はない。
ウ
そうすると、指定商品等の形状として、その商品の機能をより効果的に発揮させたり、美
感をより優れたものにするなどの目的で同種の商品等が一般的に採用し得る範囲内のものに
ついては、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として登録を
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受けることはできないが、その範囲を超えるような特異な形状や特別な印象を与える装飾的形
状のものであるか、又は使用をされた結果自他商品識別力を獲得したものであれば、商標登録
を受けることができるというべきでる。
(2) 本願商標の識別性の判断
ア 商品の形状は、二次的には商品の出所を表示する機能を併有し得るから、商品等の形状が
商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであることから直ちに、他の同種
商品との自他商品識別力が否定されるものではないが、登録出願された立体商標の形状が同種
商品において従来にない特異な形状をしており、その形状が他の同種商品と識別可能であると
しても、それだけでは当該商標が記述的商標であることは否定されないのであって、指定商品
の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である以上は、記述的商標と
して登録を受けることができないというべきである。
イ 本件において、本願商標がその指定商品である投げ釣り用天秤の形状そのものを表示する
標章のみからなる商標であることは、本願商標の構成自体から明らかである。そして、本願商
標を構成する投げ釣り用天秤の特徴は、商品の機能をより効果的に発揮させたり、美感をより
優れたものにするなどの目的で同種商品が一般的に採用し得る範囲内のものであって、商品の
用途、機能から予測し難いような特異な形状や特別な印象を与える装飾的形状であるというこ
とはできない。したがって、本願商標がその指定商品である投げ釣り用天秤に使用された場合、
指定商品の取引者、需要者は、本願商標を投げ釣り用天秤の形状そのものと認識するにとどま
るというべきであるから、本願商標は、指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標
章のみからなる商標として、記述的商標に当たり、商標登録を受けることができないというべ
きである。
本願商標
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審決取消訴訟
本願商標は、靴等の飾り金具として使用されるときは、指定商品が通常取り得る形状の範囲を
超えていないとして、商標法第3条第1項第3号に該当するとされた事例
18 日
(平成 14 年 7 月
東京高平成 13 年(行ケ)第 447 号)
本願商標は、下記のとおりの構成で、第14類「貴金属製のがま口・靴飾り・コンパクト
及び財布、貴金属製喫煙用具、身飾品、宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品、時計、記念カッ
プ、記念たて、キーホルダー」等、第18類「皮革、かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、
かばん金具、がま口口金」等及び第25類「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、
ベルト」等を指定商品とするものである。
本願商標は、ギリシャ文字の「Ω(オメガ)」の形状をしたものを2個用い、その開口部を
対称するように合わせ、それらの開口部を角丸の直方体で閉じるよう接合した眼鏡状のもので
あって、比較的簡単な形状であり、格別特異なものであるとは認められない。
そして、例えば、靴等の飾り金具として使用されるときは、甲の部分に、横長の状態で付さ
れるものであり、その左右対称で横長の形態から、一定の美感を発揮するものである。その際
コストや機能性の制約は少なく、選択可能なデザインの範囲は幅広いと認められる。本願商標
は、形状としては比較的簡単であること、また、この種商品のデザインの取り得る範囲が広い
と考えられることからは、本願商標が、機能や美感と関係のない特異な形状ではなく、指定商
品が通常取り得る形状の範囲を超えていないと認めることができる。
商品等の立体的形状は、その機能・美感の発揮を第一の目的として選択されることが通常で
あるから、出所を表示することを第一の目的として選択され、これに接する需要者もそのよう
に理解することが一般である、平面商標と同一視することはできない。このような立体的形状
が第一義的に果たす機能・美感については、制度上、本来、それぞれ特許法・実用新案法、意
匠法で一定期間に限り保護が与えられ、その後は何人も自由に使用することが認められるべき
であるから、商標登録して、これに半永久的な保護を与えるには、慎重でなければならないの
は当然だからである
以上から、本願商標は、商標法3条1項3号に該当するものである。
本件商標
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審決取消訴訟
本願商標の形状は、指定商品「運動靴、スニーカー」の用途、機能から予測し難いような特異
な形態や特別な印象を与える装飾的形態を備えているものとは到底認められず、自他商品識別
力を有するものとは認められないとされた事例
(平成 16 年 11 月 29 日 東京高平成 16 年(行ケ)第 216 号)
商標法3条1項3号の趣旨は、同号所定の商標が商品の特性を表示記述する標章であって、
取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人による独占
的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であっ
て、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによ
るものと解される(最高裁昭和54年4月10日第3小法廷判決・裁判集民事126号507
頁)
。
本来、商品の形状は、商品の機能をより効果的に発揮させたり、看者に与える美感をより優
れたものとするなどの目的で選択されるものである。したがって、商品の形状からなる商標は、
その形状が同種の商品の用途、機能から予測し難いような特異な形態や特別な印象を与える装
飾的形態を備えているものと認められるような場合でない限り、自他商品識別力を欠くもので
あって、登録を受けることができないというべきである。
認定事実によれば、本願商標は、指定商品である「運動靴、スニーカー」の底面(接地面)
の形状を表示する標章からなる商標で、「つま先エリア」及び「かかとエリア」における連続
した菱形状の幾何学的模様、さらに「中央エリア」の菱形状の幾何学的模様と六角形状の幾何
学的模様とが交互に配された模様は、その形態からして、靴のグリップ力という機能をより効
果的に発揮させるに資するであろうことは容易に予測し得る。
そうとすれば、本願商標の形状は、指定商品「運動靴、スニーカー」の用途、機能から予測
し難いような特異な形態や特別な印象を与える装飾的形態を備えているものとは、到底認めら
れず、指定商品の取引者、需要者は、本願商標から、「運動靴、スニーカー」において採用し
得る機能又は美感の範囲内のものであると感得し、「運動靴、スニーカー」の底面(接地面)
の形状そのものを認識するにとどまるものと認められる。
したがって、本願商標は、「商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからな
る商標」であるというべきであって、商標法3条1項3号に該当するものである。
本件商標
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審決取消訴訟
内容を認識させる商標であっても定期刊行物において特別顕著の要件を具備するとされた事
例(昭和7年6月16日
大審院昭和6年(オ)2759号)
本願商標は二重線を以て「The American Automobile」の文字を二
段に横書きし其の下部に「Overseas Edition」の文字を細書したるものにし
て第66類「雑誌」を指定商品とするものなりと云ふに在りて原審は之に對し特別顕著の要件
を欠如するものなりと判定を下したり然り而して右商標は、「American
Autom
obile」の文字を其の要部とすることは商標自体に徴し明白にして右の文字に依りアメリ
カ製またはアメリカに於ける自動車を容易に想像せしめ従て本件雑誌か之に関する記事写真
等を其の内容とすることを直に認識せしむることは洵に原審決理由所掲の如く若之を自動車
の商標又は単行本の題号として使用するに於ては之を以て商品甄別の標識と為すに足らさる
へしと雖定期刊行物の題号として之を使用する場合に在りては事態自ら右と異り該定期刊行
物の内容を認識せしむると同時に斯る内容を連載する定期刊行物たることを示すことに依り
て他の定期刊行物と別異なる特徴を表明する固定的意義を有し商標法(旧法)1条2項に所謂
特別顕著の要件を具備するものと観るを相当とすへし。
侵害判決
書籍の題号は出所表示機能を有しない態様で表示されているから、題号と同一の文字からなる
登録商標の商標権を侵害するものではないとされた事例
(昭和 63 年 9 月 16 日
東京地昭和 62 年(ワ)第 9572 号)
原告らは、下記に表示した「POS」なる商標を指定商品第26類「印刷物(文房具類に属
するものを除く。)、書画、彫刻、写真、これらの付属品」に登録し、商標権を有しているもの
である。
しかして、被告使用の「POS」の文字は、医学用語の「問題志向システム」の略語である
ところ、「POS実践マニュアル」
「実践POSQ&A50」「PONRの理解POSによる看
護記録の実際」
「POSの導入と実際」等それぞれ当該「POS」の文字を含む表示は、被告
書籍の題号として、いずれも被告書籍の内容を示すためにその表紙に表示されているもので
あって、出版社である被告の商品であることを識別させるための商標として被告の書籍に付さ
れたものではないことが認められる。
すると、被告標章は、いずれも単に書籍の内容を示す題号として、被告書籍に表示されてい
るものというべきであるから、被告標章の使用は、前説示に照らし、本件商標権を侵害するも
のということはできない。
本件商標
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審決
不使用取消審判において、書籍の題号は、自他商品の識別標識として機能を果たしているとは
認め難いとして、書籍の題号をもって登録商標の使用とは認められないとされた事例(昭和
63 年 2 月 25 日
昭和 56 年審判第 23411 号)
本件商標は、
「似たもの一家」の文字を縦書きしてなり、第66類「図画、写真及び印刷物
類」を指定商品とするものである。
本件商標の使用の事実を示す書類(写真)によれば、商品「書籍」の表紙、背表紙及び開い
たページの著書目録の欄に「似たもの一家」の文字が表されていることが認められるが、これ
は、明らかに書籍の題号とみられるものである。
しかして、書籍の題号は、著作物の内容を表すものとして表示されているものであるから、
商品としての書籍に係る自他商品の識別標識として機能しているとは認め難いものである。
審決取消訴訟
登
○
美術年鑑の文字を指定商品「年鑑」に使用したときは、自他商品識別の機能を果たさないとし
た事例(昭和 53 年 4 月 12 日
東京高裁昭和 51 年(行ケ)第 84 号)
本件商標は、下記のとおり、「美術年鑑」の文字を横書きしてなり、第26類「年鑑」を指
定商品とするものである。
本件商標は、
「美術年鑑」の文字から構成されているところ、そのうち「年鑑」が、「ある分
野の1年間の事件、各種統計などを記録、解説した、年1回の定期刊行物」を意味することは
いうまでもないから、これに「美術」を冠した「美術年鑑」という用語は、美術の分野におけ
る年鑑、すなわち、美術に関する1年間の各種の事柄を記録、解説した刊行物(年刊)を広く
指称する一般的な名称であるというべきである。そうだとすれば、本件商標を指定商品たる「年
鑑」に使用するときは、単にその商品の内容が美術分野のものであることを表示するだけにと
どまり、本件商標それ自体としては、自他商品識別の機能を果たさない、いわゆる記述的商標
に過ぎないものといわざるをえない。
したがって、本件商標は、商標法3条1項3号に該当する。
本件商標
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審決
「夏目漱石小説集」等の文字を指定商品「書籍」等について使用するものは、刊行物の内容を
表示するものであって、旧商標法第 1 条第 2 項の特別顕著性を有しないとされた事例
(昭和 24 年 10 月 25 日
昭和 23 年抗告審判第 181 号∼第 209 号)
(1)昭和21年商標登録願第3050号商標は「夏目漱石小説集」の文字を、同第305
1号商標は「夏目漱石作品集」の文字を、同第3052号商標は「夏目漱石遺作集」の文字を、
同第3053号商標は「夏目漱石著作全集」の文字を普通の態様の文字で縦書きし、第66類
「書籍」を指定商品としてなり、同第3054号商標は「夏目漱石集」の文字を普通の態様で
縦書きし、第66類「書籍、雑誌、新聞紙、アルバム」を指定商品としてなり、同第3055
号商標は「夏目漱石全集」の文字を普通の態様で縦書きし、第66類「書籍」を指定商品とす
るものである。
(2)昭和21年商標登録願第5002号商標は「漱石完集」の文字を、同第5003号商
標は「漱石文集」の文字を、同第5004号商標は「漱石叢書」の文字を、同第5005号商
標は「漱石小品集」の文字を、同第5006号商標は「漱石小品選集」の文字を、同第500
7号商標は「漱石小説選集」の文字を、同第5008号商標は「漱石作品全集」の文字を、同
第5009号商標は「漱石名作全集」の文字を、同第5010号商標は「漱石遺作選集」の文
字を、同第5011号商標は「漱石遺作全集」の文字を、同第5012号商標は「漱石著作集」
の文字を、同第5013号商標は「漱石文学全集」の文字を、同第5014号商標は「漱石全
集」の文字を普通の態様で縦書きし、第66類「書籍」を指定商品とするものである。
(3)昭和21年商標登録願第5266号商標は「漱石漢詩」の文字を普通の態様で縦書き
し、第66類「漢詩を掲載した書籍」を指定商品としてなり、同第5267号商標は「漱石俳
句集」の文字を普通の態様で縦書きし、第66類「俳句を集録した書籍」を指定商品としてな
り、同第5269号商標は「漱石文学論」の文字を普通の態様で縦書きし、第66類「書籍」
を指定商品とするものである。
(4)昭和21年商標登録願第5300号商標は「漱石小品」の文字を、同第5302号商
標は「漱石短片」の文字を、同第5303号商標は「漱石短片集」の文字を普通の態様で縦書
きし、第66類「書籍」を指定商品としてなり、同第5304号商標は「漱石」の文字を、同
第5305号商標は「漱石」の文字を、同第5306号商標は「夏目金之助」の文字を、同第
5307号商標は「夏目漱石」の文字を普通の態様で縦書きし、第66類「書籍、雑誌、新聞
紙、アルバム」を指定商品とするものである。
本願各商標は、刊行物の内容を表示する題号の文字又は著作者の氏名或いは雅号の文字から
なるものであって、これ等の題号又は氏名雅号は単にその刊行物が如何なる内容のものか、又
はその刊行物の著作者が何人であるかを看者をして一見して認識させるにすぎない。そうする
とこれ等については特定人の営業に係る商品であるということの表彰力を具備していないか
ら、自他商品甄(けん)別標識としての特別顕著性を有するものとは認めることができない。
またこれ等の商標をその指定商品中夏目漱石の著作或いは夏目漱石に関する事項を掲載しな
いものについて使用するときは商品の品質の誤認を生ぜしめるおそれがある。
したがって、本願各商標は商標法(旧法)1条2項に規定する特別顕著性の要件を具備せず、
又は同法2条1項11号に該当する。
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