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個の力とその新たな結びつきを通じた新産業の創出

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個の力とその新たな結びつきを通じた新産業の創出
個の力とその新たな結びつきを通じた新産業の創出
~広域関東圏の特徴を踏まえた地域としての新産業創出戦略~
参 考 資 料
平成25年4月
経済産業省関東経済産業局
目次
1.関東経済産業局のこれまでの取組 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
1-1 主要政策の変遷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
1-2 産業別の主な取組 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
2.広域関東圏の特徴・ポテンシャル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
2-1 広域関東圏の特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
2-2 4つの成長産業分野とポテンシャル分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23
2-3 広域関東圏のものづくり中小企業群の状況(地域版) ・・・・・・・・・ 30
1
1.関東経済産業局のこれまでの取組
当局における産業振興の取組は、「地域経済政策」、「中小企業政策」、「ベンチャー企業政策」
に大別される。これら主要政策の変遷を概観するともに、政策の実行部隊である当局のこれまで
の主な取組について産業別に整理する。
1-1 主要政策の変遷
①地域経済政策の流れ
(戦後復興期~1960年代)
臨海部における重化学工業の推進及び拠点開発による集中是正を図るため、国主導による産
業基盤の整備が進んでいった。具体的には、四大工業地帯の復興と太平洋ベルト地帯の発展を
目指した「太平洋ベルト地帯構想」(1960年)、大都市における人口及び産業の集中の是正を図
り、地方の中核となるべき新産業都市の建設を促進する「新産業都市建設促進法」(1962年)、
投資効果の高いと認められる地域の基盤施設整備を図る「工業整備特別地域促進法」(1964年)
などである。
(1970年代~80年代)
工場の地方分散と国土の均衡ある発展を図るため、国主導による地域間格差是正が進められ
た。具体的には、人口と産業の地方分散により当時問題となっていた過密と過疎や公害の問題を
解決すること提唱した「日本列島改造論」(1972年)や移転促進地域から誘導地域への工業の再
配置を促進する「工業再配置促進法」(1972年)などである。
その後、オイルショックを契機とした産業構造の転換や地方の居住環境整備を目的とした定住
圏構想(第三次全国総合開発計画)等を踏まえ、先端技術産業を中核とし産学住一体となったま
ちづくりと地域の技術拠点の形成を図る「高度技術工業集積地域開発促進法(テクノポリス法)」(1
983年)が制定された。さらに「頭脳立地法」(1988年)、「地方拠点法」(1992年)などソフトウエア
等産業支援サービス業やオフィス機能の立地促進等が図られた。
(1990年代)
プラザ合意後の急激な円高により産業空洞化が進む中、バブル崩壊により国内経済は長期低
迷期に入り、大都市地域からの産業や機能の分散を図る「国土の均衡ある発展」から、大都市地
域も含めて各地域が有する地域資源を活用して産業競争力強化や地域活性化を図ることが求め
られるようになってきた。
こうした流れの中、「地域産業集積活性化法」(1997年)、「新事業創出促進法」(1998年)が
制定されたが、両法ともに「地域産業の自立的発展」という文言が盛り込まれるなど立地誘導型の
政策から既存の地域資源を活かした新事業創出に政策が大きく転換した。
2
(2001年以降~)
地域における産学官の人的ネットワーク形成により、持続的なイノベーションが創出される産業
集積(産業クラスター)の創出を目指す産業クラスター計画が2001年に始まった(図表1-1-1)。
当局管内では産業クラスター計画のプロジェクトとしてこれまで8つのプロジェクトが展開されてき
た。産業クラスター政策の目標レンジは2001~20年までの20年間で現在は第Ⅲ期の自立的発
展期に位置づけられるが、地域独自で取り組む地域主導型クラスターと国が主導していく先導的
クラスターとに二分類化されている(図表1-1-2)。
一方、産業クラスター計画がスタートした後、世界的な景気拡大の流れから、2002年を底に国
内立地件数は増加傾向となるなど国内回帰がみられるようになり、企業立地の適切な誘導の必要
性が生じた。また、三位一体の改革や人口減少、高齢化による国の財政制約の高まりから、地域
が自らの経済を支える産業基盤を構築し、自立的な地域経営を推進する必要性が高まった。この
ような環境の変化を踏まえ、地方分権の考えを導入し、「地域産業集積活性化法」の後継法として、
「企業立地促進法」(2007年)が制定された。
【図表1-1-1 産業クラスター形成のイメージ】
【図表1-1-2 産業クラスター政策の目標レンジ】
3
②中小企業政策の流れ
(高度成長期~安定成長期)
高度成長期において、生産能力の補完やコスト削減等の必要性から企業間分業が進み、親企
業を頂点とする下請分業構造が形成されたが、次第に中小企業と大企業の格差という二重構造
が問題になった。こうした中小企業の経済的社会的制約による不利の是正と中小企業の生産性
の向上および取引条件の改善を図るため、「中小企業基本法」(1963年)が制定された。併せて、
中小企業の生産性の向上を図ることによって産業構造の高度化等を促進するための「中小企業
近代化促進法」(同年)が制定された。
1973年の第一次石油危機を契機に我が国経済は安定成長期に入った。設備の近代化や経営
規模の拡大等を重視した従来の政策から「知識集約化」の方向性が強調され、技術、人材、情報
等のソフトな経営資源の充実を図ることが必要とされた。人材面では1980年に中小企業大学校
が設置され、経営管理、技術等の研修制度の整備が進み、情報面では1979年に以降、中小企
業地域情報センターが都道府県単位で設立され、経営情報の提供サービスが開始された。
(転換期~2010年)
1985年のプラザ合意、1991年のバブル経済の崩壊により、現在まで続く戦後最大の構造転換
期に入った。消費者ニーズの多様化、IT革命、グローバリゼーションが進展する中、中小企業が
有する機動性・柔軟性が大きな強みと認識されるようになった。それまで中小企業を二重構造の
底辺として一律に弱者と位置づけ、大企業との格差の是正が基本理念であった中小企業基本法
を、中小企業を我が国経済の基盤・ダイナミズムの源泉と位置づけ、独立した中小企業の多様で
活力ある成長発展をきめ細やかに支援すべく1999年に中小企業基本法が改正された。
前後して、1998年に創業支援や地域における中小企業支援体制の整備等を目的とする「新事
業創出促進法」が制定され、同業種の組合を中心とした支援から、伸びゆく個社を中心とした支
援が施策の中心になった。さらに、異業種での連携を支援する「中小企業新事業活動促進法」(2
005年)、ものづくり中小企業の基盤技術の高度化を支援する「中小ものづくり高度化法」(2006
年)が制定された。
(2010年以降~)
2010年6月に意欲ある中小企業が新たな展望を切り拓けるよう、中小企業政策の基本的考え
方と方針を明らかにした「中小企業憲章」が閣議決定された。
この中小企業憲章の基本理念を踏襲し、2011年6月に中小企業政策審議会企業力強化部会
中間とりまとめが発表された(図表1-1-3)。同とりまとめでは、求められる中小企業像として、
「厳しい内外環境を勝ち抜く自立的な中小企業」と「地域社会と住民生活に貢献する中小・小規
模企業」が掲げられ、「中小企業支援について、中小企業の産業別の構成や展開を見直し、政策
的なメリハリを付けて、収益性のある分野への誘導を行うことが重要」であり、「現行の中小企業の
4
定義は、大企業に近いところから小規模企業まで幅広い規模の企業が含まれているが、各規模
に応じた政策に配慮する必要」があるといった課題が指摘された。
【図表1-1-3 中小企業政策審議会企業力強化部会中間とりまとめのポイント】
さらに中小・小規模企業の経営力・活力の向上に向けた課題と今後の施策のあり方について、
時代を担う青年層や女性層の中小・小規模企業経営者を中心に、幅広い主体の参加の下に、
「“日本の未来”応援会議~小さな企業が日本を変える~(略称:“ちいさな企業”未来会議)が設
置され、2012年 6 月に取りまとめを行った。
その後、同年7月に経済産業大臣から中小企業政策審議会に対して、『「“ちいさな企業”未来
会議」の提言を踏まえ、小さな企業に焦点を当てた総合的な中小企業政策のあり方について意見
を求める』旨の諮問が行われ、これを受けて、中小企業政策審議会に“ちいさな企業”未来部会が
発足し、5度にわたる議論を経て、2013年3月に取りまとめを行った(図表1-1-4)。
同取りまとめでは、中小企業基本法における小規模企業の位置づけの精緻化・強化を検討・実
施すべきとの提言や2012年8月に施行された中小企業経営力強化支援法に基づく認定経営革
新等支援機関による支援を含め、新たなビジネス創造のための実践的で生きた知識、さらにはき
5
め細やかな経営支援を、既存の専門家スキームも活用しながら、隅々まで行き届かせるための体
制の再構築が必要であるといった内容が盛り込まれた。
【図表1-1-4 “ちいさな企業”未来部会の取りまとめのポイント】
6
③新規ビジネス支援策の流れ
(我が国のベンチャー創生期)
「ベンチャービジネス」は、重化学工業が成熟段階に達し、経済のソフト化、サービス化が進展
し、知識集約的な産業が先進国の比較優位産業となるにつれて登場した。
アメリカでは1960年代から登場しはじめ、 日本では1963年の東京、大阪、名古屋の各中小
企業投資育成株式会社の設立(中小企業投資育成株式会社法の制定)や店頭登録制度(現在
のJASDAQ)を創設を経て、1970年版の中小企業白書ではじめて「ベンチャー・ビジネス」に言
及するなど、1972年からの第1次ベンチャーブームの素地が形成された。
(第1次ベンチャーブーム/1972~73 年年)
1971年日本初の民間ベンチャーキャピタル(京都エンタープライズディベロプメント)の設立を
皮切りに、1972年の列島改造ブーム等による過剰流動性のもと、1972年から74年にかけて、日
本エンタープライズ・デベロップメント(日本長期信用銀行系)、日本合同ファイナンス(現ジャフコ、
野村証券系)などの証券、銀行系のベンチャーキャピタルが多く設立された。
このベンチャーキャピタルの資金を背景に多くの研究開発型の製造技術系ベンチャーや外食
ベンチャーが起業したが、1974年の第1次石油ショックによってベンチャービジネスの倒産が頻
発したことから沈静化した。
【当時設立された有力企業:日本電産、キーエンス、コナミ、ぴあ、コナカ、すかいらーく】
(第2次ベンチャーブーム/1982~83年)
1980年夏から長期的な金融緩和期に入ったことからベンチャービジネスの資金調達環境は大
きく改善し、1982年には日本初の投資事業組合「ジャフコ1号」が設立。これ以降、ベンチャーキ
ャピタルによる投資の一般的なモデルが生まれた。1983年には店頭登録基準の大幅緩和により、
これまでふるわなかった店頭市場の活性化を通じてベンチャービジネスのための資本市場が整
備され、ベンチャーキャピタル設立ラッシュ(1982~83年の2年間で設立20社以上)となった。
また、1974年の第1次石油ショック後、産業構造の知識集約化が叫ばれ、1975年の財団法人
研究開発型企業育成センター(現ベンチャーエンタープライズセンター)設立により、研究開発型
ベンチャービジネスを対象とした債務保証事業を開始していたが、1979年の第2次石油ショック
を受けて、1980年代前半には、「重厚長大」型産業から、マイクロエレクトロニクス、新素材、バイ
オテクノロジ-といった「軽薄短小」型産業や流通・サービス業を中心とした第3次産業への産業
構造転換が加速し、ハイテクベンチャーや流通・サービス業のベンチャー企業が多数設立され
た。
しかしながら、 1985年末のプラザ合意以後の円高は日本経済を直撃し、長期的な景気の後
退へつながっていった。1986年になると大型のベンチャー企業倒産が相次ぎ、第2次ベンチャー
ブームは沈静化した。
【当時設立された有力企業:HIS、ソフトバンク、フォーバル、ジャストシステム、スクエア】
7
(第3次ベンチャーブーム/1993~2000年)
1991年前半のバブル崩壊以降、長く調整局面が続く中で、廃業率が恒常的に開業率を上回
る状態になり、完全失業率の上昇が生じるなど、創業や新事業創出の促進が重要な政策課題と
なった。
その後の積極的な財政出動や不良債権処理の進展などを受けて、景気が徐々に回復する中、
創業や新事業創出の促進の政府方針の下で、1995年の店頭登録特則銘柄制度の開設、1997
年の商法改正によるストックオプション制度の本格導入などの「ベンチャー支援施策」の充実によ
り、ベンチャー企業の資金調達の間口が広がり、多数のベンチャー企業が誕生した。
1997年アジア通貨危機後による景気後退後、1998年頃から米国のインターネットバブルが発
生。このため、米国を中心とした世界的なIT関連需要の増大によって、 日本からアジアへの IT
関連財の輸出が増加し、IT関連企業の開業、上場が相次ぐとともに独立系ベンチャーキャピタル
が多数設立された。
しかしながら、2000年に入ると、米国中央銀行の金融引締めや光通信社の携帯電話不正売
買報道等により、ネット関連銘柄が大幅に値を下げ、2000年末になると、世界的なIT需要が冷え
込み、我が国のアジア向け輸出が急減する等、景気は後退局面入りすることとなり、多くのIT関連
企業が失速していった。
過去2回のベンチャーブームは、資金供給ブームの影響が大きかったが第3次ベンチャーブー
ムは、資金供給ブームだけではなく、政府の支援等による影響が大きかった。
【当時設立された有力企業:楽天、ザインエレクトロニクス、DeNA、ソフトバンクインベストメント】
(2000年以降~)
2001年からのゼロ金利政策などの金融緩和策や米国経済の急速な回復による輸出の牽引な
どにより、2002年2月から2008年2月にかけて、戦後最長期間(73ヶ月)の好景気が続いた。
さらに、東証マザーズ(1999年11月開設)・大証ヘラクレス(2000年5月開設)等の新規株式
市場の開設により、新興企業の資金調達環境の整備が進展するとともに、政策対応として2004
年投資事業有限責任組合の法的整備、2006年会社法による最低資本金規制の撤廃等ベンチ
ャー企業を取り巻く制度関連の整備が進展。
また、1999年から2000年にかけてのアメリカでのバイオブーム、2000年6月のヒトゲノム情報
の解析を契機に、 2001年から2006年にかけて「バイオベンチャーブーム」、「ゲノムブーム」と呼
ばれる、創薬、治療等の医療関係のベンチャー企業の設立・上場が続いた。
他方、1998年以降、産学連携の施策が充実していく中で、2001年に大学発ベンチャーの創
出促進を目的として「大学発ベンチャー1000 社計画(平沼プラン)」を策定、2003年度末には
大学発ベンチャーは、1,000社に到達した。
しかしながら、2006年初頭のライブドア事件や村上ファンド事件を機に、度重なる不祥事による
投資家の市場への信頼の低下に加え、 2008年のリーマンショック後の株価・IPO の低迷などの
影響により、投資環境が悪化し、今次のベンチャーブームは終焉した。
8
【図表1-1-5 資金供給面での環境整備】
○新興市場の開設
1995 店頭登録特則銘柄制度(第2市場、赤字でも株式公開可)の開設
1999 東証マザーズの開設
2000 ナスダックジャパン(後にヘラクレス)の開設
2007 ジャスダックNEOの開設
2010 (旧)JASDAQ、ヘラクレス、NEO合計3市場を統合し「新JASDAQ市
場」として一本化
○個人投資家の育成
1997 エンジェル税制の創設(個人投資家への優遇措置)
2007 エンジェル税制の抜本的拡充(所得控除制度の追加)
○ベンチャーキャピタルの創設・育成等
1998 中小中小企業等投資事業有限責任組合法の制定(ベンチャーキャピタルファンドの
ために、投資家有限責任制の組合制度を設立)→ 2004 LPS法に改正
1998 中小企業基盤整備機構によるベンチャーファンド事業開始(設立7年未満のア
ーリーステージにあるベンチャー企業への出資)
2005 有限責任事業組合(LLP)法の制定(有限責任制、内部自治原則、構成員課
税の特徴を生かし、ベンチャー企業と他企業の連携を促進)
2006 新会社法の施行(合同会社(LLC)の導入)
○間接金融の充実
1995 中小企業創造活動促進法の制定(研究開発型中小企業に対する金融支援(都道
府県を通じた無担保融資や課税特例)
)
1999 女性、若者/シニア起業家支援資金の創設(現:日本政策金融公庫)
2002 新創業融資制度の創設(現:日本政策金融公庫)
2006 中小機構による債務保証制度の運用開始
2011 産業活力再生特別措置法の改正(ベンチャー向け債務保証メニューの追加)
【図表1-1-6 資金供給面での環境整備】
○ストックオプション制度の導入
1995 新規事業法の改正(ベンチャー企業に対するストックオプションの一部導入)
1997 商法改正(ストックオプション制度の本格導入)
2001 商法改正(ストックオプションの規制緩和、種類株式の種類を拡大)
○中小企業の技術開発支援
1999 中小企業技術革新制度の創設(日本版SBIR制度の導入:中小企業新事業促
進法/技術開発のための補助金等の中小企業への支出機会を増加させ事業化
を支援)
○大学の活用(産学連携)
1998 大学等技術移転促進法の制定(TLO活動の支援)
1999 産業活力再生特別措置法の改正(日本版バイドールの導入政府資金による委託
研究成果を事業化させる際に、知的所有権を受託企業へ帰属させる措置)
2000 産業技術力強化法の制定(国立大学教官の兼業規制緩和)
2001 大学発ベンチャー1000社構想(平沼プラン)
○その他
2002 中小企業挑戦支援法の制定(1円起業の特例)
2006 新会社法の施行(最低資本金規制の撤廃)
9
1-2 産業別の主な取組
①医薬品
オープンイノベーションの促進によるバイオ医薬品開発の加速化を図るため、バイオベンチャ
ーと大手製薬企業等とのマッチングや各種セミナー開催等の支援を実施している。さらに最近で
は、EU、パリ、台湾などバイオベンチャー企業の海外展開支援にも取り組んでいる。
(主な取組)
1)創薬に係る研究開発の支援
各種研究開発事業を活用し、創薬及び創薬支援技術の開発を支援
2)オープンイノベーションの促進
バイオベンチャーと大手製薬企業等とのアライアンス促進を支援
3)海外展開支援
海外支援機関等との連携による海外展開支援を実施
【事例1】 アライアンスプロモーションの開催
創薬・創薬支援・医療を事業領域とした国内有力バイオベンチャーによる、
自社の技術・ビジネスモデル等の発表機会を提供(於:Bio Japan)。
【事例2】 仏パリ地域とのマッチング開催
フランス・パリ地域経済開発局との協同セミナー (於:仏大使館)を行うととも
に、国内大手製薬企業・バイオベンチャーと仏企業(パスツール研究所関連
企業等)との個別マッチング会を実施。
②医療・福祉機器
中堅・中小企業の医療・福祉機器産業への参入促進に向けた地域における医工連携活動の
支援、医療機器等の開発支援を中心として、医工連携促進に係る活動を実施している。
(主な取組)
1)医療・福祉機器の開発等支援
各種研究開発事業の活用による医療・福祉機器関連の開発や事業化の支援を実施。
2)海外展開支援(部材等の海外医療機器企業への売り込み)
海外の医療機器展示会への出展やミッション派遣等による海外販路開拓支援を実施。
3)地域における医工連携活動の後押し
地域の医工連携活動の後押し及び当該分野への新規参入に向けた各種セミナーを実施
4)医療現場の課題とソリューションとのマッチング
10
【事例1】 皮膚メラノーマ診断支援装置の開発を後押し(静岡がんセンターほか)
皮膚メラノーマの早期発見に向けて、医療現場の課題を解決するために非侵襲
で客観的かつ定量的に診断を行う装置の開発を実施。皮膚メラノーマは、特に北欧
等では患者数が多いため早期診断ニーズが高く海外市場の獲得可能性も期待。
【事例2】 中堅医療機器メーカーの新事業展開を後押し(東京都文京区:A社)
輸入超過の国内医療機器産業において、耳鼻咽喉科業界の機器はほぼ国産で
賄われている。その先駆者であるA社は国内での実績を活かし、中国・韓国・ロシア
等の海外市場へ販路を拡大。
③医療・福祉サービス
コミュニティビジネス/ソーシャルビジネス推進の観点から、「医療・福祉サービス」の活動を
行う事業者への支援等を実施している。近年、社会的課題の顕在化・複雑化により、コミュニテ
ィビジネス/ソーシャルビジネスへの期待が一層高まってきている。
(主な取組)
1)医療・福祉サービスの普及に向けたノウハウ移転等を支援
ソーシャルビジネスのノウハウ移転を促進する補助事業を活用して、医療・福祉サービスのノ
ウハウ移転による普及を図るための個別事業の支援を実施。
2)医療・福祉サービスを担う事業者の活動PR等による支援
医療・福祉サービスを含むコミュニティビジネス事例集の作成、各種フォーラムやシンポジウム
を活用した事業モデルの広報 等
【事例1】 健康づくりシステムの移転への支援((株)つくばウエルネスリサーチ)
科学的根拠に基づく「健康づくりシステム」のノウハウの標準化及び各地方へ
のハンズオン移転に対する支援を実施。また、「スマートウエルネスシティ総合特
区」参加7自治体(新潟県見附市ほか)においても事業を展開中。
【事例2】 新しい医療サービス「ワンコイン検診」(ケアプロ(株))
健康保険証を保有していない、検診費用を負担できないなどの理由で健康診
断を受けることができない「検診弱者」のために低価格、短時間、保険証不要の
サービスをモデル事業として事例集で紹介。
11
④子育て支援サービス
コミュニティビジネス/ソーシャルビジネス推進の観点から、「医療・福祉サービス」の活動を
行う事業者への支援等を実施している。近年、社会的課題の顕在化・複雑化により、コミュニテ
ィビジネス/ソーシャルビジネスへの期待が一層高まってきている。
(主な取組)
1)子育て支援サービスの普及に向けたノウハウ移転等を支援
・ソーシャルビジネスのノウハウ移転を促進する補助事業を活用して、子育て支援サービス
の普及を図るための個別事業の支援を実施。
・子育て支援サービスを含むコミュニティビジネスの育成に向けて、「行政とコミュニティビジ
ネスのパートナーシップ」「資金調達マニュアル」「経営力向上マニュアル」等の活動を行う
にあたってのノウハウ提供等の支援を実施。
2)子育て支援サービスを担う事業者の活動PR等による支援
子育て支援サービスを含むコミュニティビジネス事例集の作成、各種フォーラムやシンポ
ジウムを活用した事業モデルの広報 等
【事例1】 病児保育モデル移転への支援(NPO 法人フローレンス)
「脱施設型」、「共済型」モデルで収益を安定化させた「病児育児事業」を行う
NPO 法人が、病児育児ノウハウの標準化及び他地域法人へのハンズオン移転を
行う事業に対する支援を実施。移転先は、東京都三鷹市、鹿児島市等。
【事例2】 子育て支援サービスを含むコミュニティビジネスの経営力向上
マニュアルの作成
コミュニティビジネスを行っていく上での経営ノウハウについて、先進事例の
調査結果等から具体例等を掲載し、マニュアル化。事業実施方法、組織体制
のあり方など、活動を行うにあたってのポイントを網羅し、経営力向上に向けた
ノウハウを提供。
⑤スマートコミュニティ
省エネ・節電等について広く周知・普及を行うために各種セミナー開催や再生可能エネルギ
ーの普及促進のための固定価格買取制度の設備認定を実施している。また、スマートコミュニ
ティに取り組む自治体等の検討会等に参画している。
(主な取組)
1)エネルギー管理システムセミナーの開催
BEMS セミナー、HEMS・蓄電池セミナーの開催
2)エネルギー関係フェアの開催
12
エネルギービジネスフェア 2011 の開催
3)再生可能エネルギー固定価格買取制度の設備認定
電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法に基づく発電設
備の認定を実施。
4)スマートコミュニティに取り組む自治体等の検討会への参画
【事例1】横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)
横浜市と参加企業が、CO2 の削減を目的として、みなとみらい 21 などの主要
3 地区で、再生可能エネルギーの大規模導入や次世代交通システムの普及な
ど、市民が実際に暮らす既成市街地でのシステム構築のための実証実験を実
施中。(2010 年~2014 年)
【事例2】「E-KIZUNA Project」スマートホーム・スマートコミュニティ実証実験
さいたま市と本田技研工業株式会社が、都市部における電気自動車や電動
二輪車などの電動車両の実用性の検証と発電や蓄電、EV からの給電等の技術
を組み合わせた、家庭や地域におけるエネルギーの自給自足について実証実
験を実施中。(2011 年~2018 年)
⑥次世代自動車
次世代自動車向け部材製造技術の高度化支援を行うとともに次世代自動車の普及を目的に
自治体に対する情報提供及び自治体相互の情報共有を目的とした連絡会議の開催、次世代
自動車に関連する製造拠点の整備支援に取り組んでいる。
(主な取組)
1)次世代自動車に係る情報提供
次世代自動車の動向や先進的な取組事例等の情報発信及び共有を実施。
2)次世代自動車に関連する製造拠点の整備、技術の高度化に係る研究開発等を支援
企業立地支援策や研究開発事業を活用し、主に次世代自動車の部材供給に係る製造拠
点整備や研究開発・事業化の支援を実施。
3)地域における次世代自動車の普及に向けたインフラ整備に係る支援
充電インフラ整備や普及啓発等を集中的に行うために、先駆的に取り組む自治体をモデル
地域として選定する EV・PHV タウン構想の推進等を実施。
【事例1】 次世代自動車に係る最新動向等に係る情報提供を実施
関係省庁による最新動向の情報提供(コンバージョン EV に関する安全基準
等) やハイブリッド自動車分解展(於:SAITEC)の見学会等を実施。
13
【事例2】 製造拠点の国内立地支援(A社)
次世代自動車向け部品加工製造ライン(普通充電器部品やショックアブソ
ーバー等)を新たに整備する中小企業への支援を実施。
⑦メディア・コンテンツ
コンテンツ制作企業(個人クリエイターも含む)の販路開拓等を目的としたビジネスマッチング
の開催や知的財産権に関する知識醸成等の支援を実施している。さらに最近では、米国、韓
国、香港などコンテンツ制作企業の海外展開の支援にも取り組んでいる。
(主な取組)
1)コンテンツ制作企業(個人クリエイターも含む)の販路開拓等の支援
販路開拓・資金調達を目的とした BtoB ビジネス見本市である「CREATIVE MARKET
TOKYO(CMT)」をコ・フェスタの公式イベントとして開催。
2)海外展開支援
コンテンツ制作企業の国際マーケット出展を支援。
3)新たなビジネス創出やコンテンツを活用した地域活性化の支援
クリエイティブ産業関係者間の連携を促進。
4)知的財産活用支援
知的財産の知識醸成・事業化に向けた戦略的活用を目指したセミナーを自治体と共同開催。
また、専門家による知財に係るアドバイスを実施。
【事例1】 CREATIVE MARKET TOKYO で「ピッチングセッション」の開催
全国から選抜されたコンテンツ制作企業(37 社)が、「実写&アニメ」、
「キャラクター&ライセンス」、「アプリ」の部門毎に企画プレゼンテーション
を行うとともに商談を実施。キャラクターをベースに新たなビジネス展開を
狙う企画等のビジネスマッチングが成立。
【事例2】 Hong Kong International Licensing Show(HKILS)出展を支援
日本発コンテンツのアジアへの展開支援を目的として、アジア最大級の
キャラクター・ライセンス商談会である「HKILS」にブース出展し、CMT 出
展者から選出した海外展開可能性のあるコンテンツを有する企業の作品
の展示及び個別の商談を支援。
14
⑧ファッション
地域企業によるファッション製品の開発や国内販路開拓等の支援を行うとともに高い技術力
を有する産地企業のファッション関連製品の海外展開を支援にも取り組んでいる。
(主な取組)
1)ファッション製品の新商品開発支援
ファッションを含む地域の優れた資源を活用した新商品・新サービスの開発や販路開拓等
の取組を支援。
2)海外展開支援
高い技術力を有する産地企業のファッション関連製品や複数の中小企業等が連携し、世
界に通用するブランド力の確立を目指す取組を支援。
【事例1】 江戸の染色技術を用いた新たなファッション製品の開発を支援((株)二葉)
染の街「落合」の知名度アップ等のため、江戸から伝わる染色技法
を用いたライフスタイル提案型商品の開発を実施。工房での染色体
験等を通じて外国人旅行客の誘客も行い、観光スポットとして地域活
性化に寄与。フランスを中心に欧州 20 ヶ国に販売実績があり、海外
での売上げも順調に伸ばしている。
【事例2】 TENT LONDON への出展を支援((株)松井ニット技研)
桐生の繊維関連企業 6 社と共に、世界的なデザイン関連展示会
「TENT LONDON」に出展。独特のリブ編み技術と東毛地域の繊維
技術を有効に組合せ、色と柄にこだわったアート性の高い「マルチカ
ラーストライプ衣料」を出展し、コートールド美術館との商談成立や大手デザイナーズブランドとの
交渉が進展。
⑨農業・食
農商工等連携推進事業における新たな事業活動支援に行うとともに先端技術や情報技術な
どの農業分野への応用や海外も含めた販路拡大等の支援にも取り組んでいる。
(主な取組)
1)農商工等連携事業の推進
中小企業の経営の向上と農林漁業経営の改善を図るため、中小企業者と農林漁業者が有
機的に連携して行う新たな事業活動を支援。
2)地域産業資源活用事業の推進
地域における中小企業の事業活動の促進を図るため、指定された地域産業資源を活用し
て中小企業が行う新たな取組を支援。
15
3)JAPANブランド育成支援事業の推進
地域産品の輸出を促進するため、世界に通用する地域産品のブランド力確立を目指し、地
域の小規模事業者等と外部の輸出産品プロデューサー等が一丸となって行う取組を支援。
4)先端農業産業化システム実証事業の推進
農林漁業の競争力強化を目的に、先端的な商工業の技術・ノウハウを用いて農林漁業と連
携したシステムの実証・ビジネス化を目指す取組を支援。
【事例1】 温室土耕栽培によるホウレンソウ安定供給システムの確立((株)栗原商店)
これまで管理が難しいとされてきた土耕栽培において、日射量や吸水
量に応じた適切な養液制御装置を開発し、低コストで安全、栄養価の高
いホウレンソウの周年安定生産に取り組む。大手コンビニ向けの総菜メ
ーカーも参画し、システムの確立・普及に期待。
【事例2】 「甲州ワイン」の EU 輸出プロジェクト(山梨県ワイン酒造協同組合他)
世界的な和食ブームを背景に、品質の高さが認められ専門家から注目さ
れている日本固有の「甲州ブドウ」から造った「甲州ワイン」を、ワインの本場
EU 市場に輸出することで、「甲州ワイン」の世界的な認知と産地確立や市場
拡大を支援。
⑩観光
観光立国の実現に向けた政府全体の動きを受け、関係省庁・自治体との連携による取組を
進めてきたほか、観光交流による地域活性化に向けた取組みに対する支援等を実施している。
(主な取組)
1)関係省庁との連携による情報発信等
観光振興に積極的に貢献していくために関東地区における国の地方支分部局等が相互に
連携し活動。
2)観光交流による地域活性化に向けた取組に対する支援
観光交流による地域活性化に関する先進成功事例の調査(事例集:「地域が実現する新た
な『観光』の可能性」の発行)及び観光交流に係る新商品・サービスの創出支援を実施。
3)インバウンド促進に向けた地域資源のプロモーション
インバウンド促進に向け、地域資源(食、産地技術、伝統文化等)を活用して地域の魅力を、
「Cool Japan」コンテンツとして在日外国人に対してプロモーションする場を開催。
【事例1】 広域的な観光地域づくりを支援(両毛地域)
栃木県、群馬県に跨る両毛地域において、関係 5 省庁(地方整備局、
運輸局、経済産業局、農政局、環境事務所)が連携して、観光地域づくり
に活用できる施策の説明や個別相談会を自治体向けに開催。
16
【事例2】 地域の食、産地技術等を「Cool Japan」コンテンツとして展開
広域関東圏の各地に点在する伝統的な食材、食器等の地域資源を
「Global Neighbor Kitchen」というコンセプトで統一的に演出し、大使館、
外資系企業等の在日外国人に対して情報発信する場を開催。地域資源
の人気を活用して、インバウンドを視野に地域の魅力を強力にプロモー
ション。
⑪航空・宇宙
航空機向け部材製造技術の高度化支援を行うとともに販路開拓のための国内外の展示会へ
の出展支援や各自治体・支援機関との連絡会議等にも取り組んでいる。
(主な取組)
1)研究開発・立地促進等支援
各種施策の活用による研究開発・事業化・企業立地等の支援を実施。
2)販路開拓支援
各経済産業局等と連携し、各地域の国内外展示会への出展を支援。
3)航空・宇宙産業に係る自治体・産業支援機関等との情報共有
管内自治体・産業支援機関を対象に、各機関の航空・宇宙産業関連の取組について情報
共有、情報提供を行う連絡会議を開催。
【事例1】 大型薄肉複雑一体成形部品の精密鋳造技術の開発(千葉県:A社)
航空機部品について、コストカット、軽量化による燃料消費率の低減等のニー
ズに応えるべく、大型の複雑形状品を一体で成形し、かつ高強度の部品の製造
を可能にする技術開発を目的に研究開発。アルミニウム合金による航空機扉のフ
レームの一体成形鋳造技術の開発に成功した。
【事例2】 ファンボロー・エアショー、パリ・エアショーへの出展等を支援
中小企業の海外販路開拓を目的として、世界最大級の航空・宇宙産
業の国際展示会への出展支援等を実施。ファンボロー・エアショーで
は、「航空宇宙産業フォーラム(JAPAN AEROSPACE INDUSTRY
FORUM:JAIF)」としてオールジャパン体制での中小企業の出展支援
を行った他、海外企業・海外航空機クラスター等とのマッチング・ミー
ティング事業を実施。パリ・エアショーでは、中小企業出展支援の他、
中部経済産業局、フランス商工会議書等と連携し、個別商談等のセッティングを実施。
17
⑫ロボット
ロボットに関する研究開発支援や地域におけるロボット産業振興を行うとともに海外の主要関
連展示会への出展に係る支援にも取り組んでいる。
(主な取組)
1)ロボットに関する研究開発支援
各種研究開発事業の活用によるサービスロボットの開発や事業化の支援を実施。
2)海外展開支援
ロボット関連企業を対象として、海外の主要展示会への出展やマッチング等の海外販路開
拓支援を実施。
3)地域におけるロボット産業振興の後押し
地方自治体との連携によるロボットに関する研究会や各種セミナー等の実施。
【事例1】 高齢者のふるえ(本態性振戦)をおさえる肘装着ロボット装具開発支援
早稲田大学・株式会社菊池製作所・横浜市リハビリテーション事業団等が、
ふるえの交じった表面筋電位から随意運動のみを抽出してロボットを制御する
方式の技術をもとに、患者の日常動作を支援するロボット装具を開発。
【事例2】 茨城県圏央道地域の IT・ロボット関連ベンチャーの海外展示会支援
2011 年 1 月 6~9 日にラスベガス(米国ネバダ州)で開催された世界最大級の
コンシューマ・エレクトロニクス展である CES(Consumer Electronics Show)に、
IT・ロボットベンチャー5 社の出展を支援。
⑬先端部素材(ナノテク等)
先端部素材製造技術の高度化支援を行うとともにマーケットの拡大が期待される特定テーマ
について、大手メーカーの研究開発部門や新規事業部門からニーズを抽出し高度な加工技術
を有する企業とのマッチングやナノテク拠点のシーズ活用促進支援にも取り組んでいる。
(主な取組)
1)研究開発支援
各種研究開発事業の活用による製品開発現場のニーズに応える部材及び周辺機器等の
開発を支援。
2)先端部素材等に対するナノテクによるソリューションの提供
部素材メーカーや大学・研究機関等の有する技術的課題と、優れたナノテク技術を有する
中小・ベンチャー企業との連携促進や世界最大のナノテクイベント「nano tech」に先端部素
材等に関連する海外企業等を呼び込み、ナノテク技術を有する企業の海外市場へのアク
セス環境を整備。
18
3)ナノテク研究拠点のプロモーション支援
ナノテク研究拠点(つくばイノベーションアリーナ等)の技術シーズや先端装置・設備の産業
界における活用を促進するためのプロモーションを支援。
【事例1】 スーパーインクジェットを用いたソーワイヤへの砥粒配置技術開発
超微細塗布が可能なインクジェット技術を用いた、ソーワイヤへの砥粒配
置技術の開発を支援。
【事例2】 大手部素材メーカーの技術課題ニーズに対する個別マッチング
大手素材メーカーの新規開発材料のフィルター化に関する技術課題に対し、ナノテク企業から微
細孔加工技術により解決方法を提示し個別にマッチングを実施。
⑭高度 IT
地域における中小企業の IT 経営促進、IT 企業の技術力向上のための研修会を行うとともに
実証開発を通じた IT 利活用ビジネスモデルの創出等に係る支援にも取り組んでいる。
(主な取組)
1)ITユーザーの競争力強化
IT 活用型経営革新モデル事業、中小企業戦略的 IT 化促進事業、中小企業等 IT 経営実践
促進事業(IT 経営応援隊)等地域における中小企業の IT 経営支援を実施。
2)IT 企業の技術力向上支援
IT 企業の技術力向上に向けて、最新知識習得やクラウド対応のための研修会を実施。
3)クラウドを活用したビジネスモデルの創出支援
農業産業化支援システムの実証開発等クラウドを活用したビジネスモデルの創出を支援。
【事例1】 IT 経営応援隊活動の実施
各地域において、IT 導入の先進事例紹介や IT コーディネーターによる相談
会、専門家派遣による指導を実施、中小企業における IT 経営を促進。
【事例2】 農業分野におけるクラウド活用によるビジネスモデルの創出を支援
個人農家向けのモバイル端末を使った音声入力栽培記録システム、
大規模複数圃場 所有農家向けの航空写真マップ、SNSを用いた圃
場管理システムの開発を支援。
19
2.広域関東圏の特徴・ポテンシャル
2-1 広域関東圏の特徴
① 全国に比べて急速に進む高齢化
関東地域では、これまで多くの労働力人口を受け入れながら成長を続けてきており、高齢化
率(65 歳以上の総人口に占める比率)は全国よりも低い水準にある。しかし、2035 年には 65 歳
以上の高齢者の増減率が全国平均を約10%上回るなど、全国を大きく上回るペースで高齢者
が増加していくことが見込まれている(図表2-1-1)。
【図表2-1-1 2010 年から 2035 年にかけての年齢3区分別人口増減率】
全国
関東
平成22(2010)年
平成47(2035)年
0~14歳 15~64歳 65歳~
0~14歳 15~64歳 65歳~
実数(千人)
37,249
62,919
10,512
29,412
16,479
81,285
増減率
-22.6%
26.6%
-36.2%
実数(千人)
26,984
15,333
4,178
6,438
33,519
11,209
増減率
36.8%
-19.5%
-35.1%
(注)増減率は 2010 年を基準とした 2035 年における年代別増減率を示す。
(資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の都道府県別将来推計人口」(平成 19 年 5 月推計)
② 我が国最大の財・サービス・電力消費地域
人口、域内総生産で全国の約4割を占める広域関東圏は、消費支出や電力消費の面でも同
様の高いシェアを占めている(図表2-1-2、2-1-3)。「政府最終消費支出」については、
他地域に振り向けられる公的支出の比率が他の項目よりも高いため、4割をやや下回る水準と
なっているが、我が国最大の財・サービス・電力の消費地域であることに変わりない。
【図表2-1-2 消費支出における関東地域のシェア】
民間最終消
費支出
351,923,904 258,111,799
146,165,369 110,705,928
41.5%
42.9%
最終消費支出
全国
関東
実数(百万円)
実数(百万円)
対全国比
政府最終
消費支出
93,812,105
35,459,441
37.8%
(注)県内総生産(支出側、名目)の値を用いる。
(資料)内閣府「県民経済計算」(平成 21 年度)より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
【図表2-1-3 電力消費量における関東地域のシェア】
電力使用量
全国
関東
実数(百万kw)
実数(百万kw)
対全国比
304,230
119,985
39.4%
(資料)電気事業連合会「電気事業 60 年の統計」(2010 年)より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
20
③ 世界的な情報・文化の発信基地
広域関東圏最大の都市である東京は、世界の都市の総合ランキングでも上位に位置づけら
れる国際的な都市である(図表2-1-4)。国内他地域の主要都市と比べても、東京の位置づ
けは突出しており、世界的な情報・文化の発信基地となっている(図表2-1-5)。
【図表2-1-4 世界の都市総合力ランキング(文化・交流分野・2011 年)】
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
24
35
都市名
ロンドン
パリ
ニューヨーク
シンガポール
東京
香港
ベルリン
北京
ロスアンゼルス
上海
大阪
福岡
スコア
61.4
52.9
51.1
34.0
30.0
29.5
28.3
28.2
27.5
25.6
12.4
3.5
(注1)世界の主要35都市を対象としたランキング。
(注2)文化・交流スコアは「交流・文化発信力」「宿泊環境」「集客」「買物と食事」「交流実績」の指標グループにより
算定されたもの。
(資料)(財)森記念財団と市戦略研究所「世界の都市総合力ランキング」(2011 年)より三菱 UFJ リサーチ&コンサル
ティング作成
【図表2-1-5 都市別国際会議開催件数(世界全体・2011 年)】
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
22
圏外
圏外
圏外
都市名
シンガポール
ブリュッセル
パリ
ウィーン
ソウル
ブダペスト
東京(23区)
バルセロナ
ベルリン
ジュネーブ
横浜
京都
名古屋
大阪
開催件数
919
464
336
286
232
168
153
150
149
121
84
48
32
31
(注)「2011 年 UIA 国際会議統計」による暫定値に基づいて集計。
(資料)日本政府観光局「2011 年国際会議統計」より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
21
④ 多くの研究機関・企業の立地する地域
研究機関の集積については、公的研究機関も含めた統計である経済センサス基礎調査で
は、関東地域のシェアは47%と全国の約半数を占める(図表2-1-6)。一方、全国試験研究
機関名鑑に収録された「民間研究機関」の数で見ると、関東地域のシェアは56.3%とさらに高
くなる(図表2-1-6)。
また、経済センサスのデータから企業や事業所のシェアをみると、人口や経済活動のシェアと
同程度の約4割強となっており、研究機関の割合に比べるとその割合は少なくなるものの、我が
国最大の立地地域であることに変わりない(図表2-1-7)。
【図表2-1-6 研究機関における関東地域のシェア】
全国
関東
学術・研究 民間研究
開発機関 開発機関
実数(事業所)
7,272
3,471
実数(事業所)
3,417
1,954
対全国比
47.0%
56.3%
(注1)「学術・研究開発機関」は総務省「平成 21 年経済センサス基礎調査」の事業所数である。
(注2)「民間研究開発機関」は「全国試験研究機関名鑑」の分類「民間企業」に該当する機関数である(ただし、研究
開発部門が本社とは別事業所としてある場合、本社は集計対象としていない)。
(資料)総務省「平成 21 年経済センサス基礎調査」、文部科学省科学技術・学術政策局 「全国試験研究機関名鑑
2008-2009」より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
【図表2-1-7 企業・事業所数における関東地域のシェア】
企業
全国
関東
実数(社・事業所)
実数(社・事業所)
対全国比
2,054,519
865,381
42.1%
事業所
3,145,230
1,409,590
44.8%
(資料)総務省「平成 21 年経済センサス基礎調査」 より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
22
2-2 4つの成長産業分野とポテンシャル分析
① 4つの成長産業分野
4つの社会的目標として掲げた「安心安全で健やかな生活の実現」「クリーンでスマートなライ
フスタイルの実現」「刺激ある文化的な生活実現」「便利で快適な生活の実現」 を実現する4つ
の成長産業分野を以下のとおり整理した(図表2-2-1)。広域関東圏においてこれらがどの
程度のポテンシャルを有するのか、以下②~⑤で示すように「現況」、「成長性」、「競争力」、
「誘発効果」の観点から、各種統計等を用いて集計・分析を行った。
【図表2-2-1】4つの成長産業分野と対応する産業分野
成長産業
健康・医療・福祉関連産業
対応する産業分野
医薬品
医療・福祉機器
医療・福祉サービス
子育て支援サービス
スマートコミュニティ、省エ スマートコミュニティ
ネ・新エネ関連産業
次世代自動車
メディア・コンテンツ
ファッション
クリエイティブ産業
農業・食
観光
航空・宇宙
航空・宇宙産業など先端も ロボット
のづくり産業
先端部素材(ナノテク等)
高度 IT
(資料)三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
② 成長産業分野における広域関東圏の現況
②-1 域内総生産シェアとの比較
広域関東圏における各産業分野の生産額(年間売上高、製造品出荷額等など)の対全国
シェアを整理し、全産業対象とした広域関東圏の域内総生産(Gross Regional Product)の全
国シェアと比較した(図表2-2-2)。GRP シェアよりも生産額シェアの大きい業種は、比較的
広域関東圏に集積している業種と考えられる。
多くの業種において広域関東圏の生産額シェアは GRP シェアより高く、特に健康・医療・福
祉関連産業は殆どの構成業種でシェアが高くなっている。
23
【図表2-2-2 生産額シェアとGRPシェアの比較】
(単位 売上高・出荷額等:百万円)
成長産業
テーマ
対応する産業分野
各種統計指標
小分類
医薬品
医療・福祉機器
健康・医療・福祉
関連産業
子育て支援サービス [教育]
スマートコミュニティ [蓄電池]
[空調]
[照明・LED]
スマートコミュニ
[制御]
ティ、省エネ・新
エネ関連産業
次世代自動車
[電池]
[自動車・
同付属品]
メディア・コンテンツ [メディア]
[ゲーム]
ファッション
[衣服]
指標
医薬品製造業 製造品出荷額等
医療用機械器具・医療用品製造業 製造品出荷額等
医療用電子応用装置製造業 製造品出荷額等
医療用計測器製造業 製造品出荷額等
医用X線装置 生産金額
医療用超音波応用装置 生産金額
医用電子応用測定器 生産金額
学習塾 年間売上高
蓄電池製造業 製造品出荷額等
空調・住宅関連機器製造業 製造品出荷額等
光電変換素子製造業 製造品出荷額等
配電盤・電力制御装置製造業 製造品出荷額等
配線器具・配線附属品製造業 製造品出荷額等
電力変換装置 生産金額
蓄電池製造業 製造品出荷額等
自動車・同附属品製造業 製造品出荷額等
32.5% 15,353,441 47,296,167
インターネット附随サービス業 年間売上高
ソフトウェア業 年間売上高
外衣・シャツ製造業(和式を除く) 製造品出荷額等
下着類製造業 製造品出荷額等
89.1%
74.8%
20.0%
62.5%
23.0%
48.6%
40.6%
65.4%
27.5%
63.9%
34.0%
46.0%
63.9%
60.3%
36.1%
39.1%
41.6%
44.6%
29.4%
73.0%
22.3%
74.8%
76.9%
89.1%
和装製品・その他の衣服・繊維製身の回り品製造業 製造品出荷額等
衣服・身の回り品卸売業 販売額
[装飾品など] なめし革・同製品・毛皮製造業(中) 製造品出荷額等
クリエイティブ
産業
貴金属・宝石製装身具(ジュエリー)製品製造業 製造品出荷額等
貴金属・宝石製装身具(ジュエリー)附属品・同材料加工業 製造品出荷額等
農業・食
[食品]
観光
航空・宇宙
[航空]
[宇宙]
ロボット
航空・宇宙産業な
ど先端ものづくり
産業
その他の貴金属製品製造業 製造品出荷額等
畜産食料品製造業 製造品出荷額等
パン・菓子製造業 製造品出荷額等
観光消費額(日本人)
観光消費額(訪日外国人)
航空機・同附属品製造業 製造品出荷額等
他に分類されない輸送用機械器具製造業 製造品出荷額等
ロボット製造業 製造品出荷額等
先端部素材(ナノテク) [ガラス繊維] ガラス繊維・同製品製造業 製造品出荷額等
[電池材料]
[分析機器]
高度IT
シェア
実数
実数
(全国)
(関東)
(関東)
32.2% 2,364,957 7,355,712
48.6%
526,716 1,083,672
85.0%
137,041
161,311
63.2%
205,674
325,479
84.4%
124,643
147,725
97.3%
52,131
53,602
89.2%
76,989
86,348
49.5%
458,183
925,377
27.8%
246,916
889,159
59.1%
705,320 1,194,173
21.6%
188,842
873,593
46.9%
809,154 1,724,105
27.6%
127,517
462,148
35.5%
100,986
284,365
27.8%
246,916
889,159
炭素質電極製造業 製造品出荷額等
精密測定機器製造業 製造品出荷額等
分析機器製造業 製造品出荷額等
ソフトウェア業 年間売上高
情報処理・提供サービス業 年間売上高
インターネット附随サービス業 年間売上高
1,095,727
9,876,882
149,196
7,504
54,259
6,042,072
146,919
74,174
7,565
5,849
1,783,056
2,112,845
4,620,556
147,354
456,114
50,294
180,438
95,950
29,790
109,622
41,251
9,876,882
3,389,048
1,095,727
1,229,354
13,210,126
746,412
11,998
236,088
12,426,624
361,569
113,359
27,531
9,150
5,246,319
4,589,008
7,228,983
244,539
1,262,581
128,573
433,467
215,330
101,451
150,105
184,671
13,210,126
4,404,265
1,229,354
(注1) 生産額の対全国シェアが GRP シェアの 44.3%を上回る業種について網掛けしている。GRP シェアは内閣府
「平成 21 年度県民経済計算」より、全県計の県内総生産(名目)に占める広域関東圏の県内総生産(名目)の
割合として算出した。
(注2) 統計の制約上生産額に該当するデータが収集できない「医療・福祉サービス」は表示していない。
(資料) 経済産業省「平成 22 年工業統計調査」、「平成 22 年特定サービス産業実態調査」、「平成 19 年商業統計」、
関東経済産業局「平成 23 年管内主要製品生産実績」、観光庁「平成 23 年観光入込客統計」より三菱 UFJ
リサーチ&コンサルティング作成
②-2 人口シェアとの比較
広域関東圏における各産業分野の従業者数の対全国シェアを整理し、これを人口の対全
国シェアと比較した(図表2-2-3)。人口シェアよりも従業者数シェアが大きな業種は、比較
的広域関東圏に集積している業種と考えられる。
特に「高度 IT」や「メディア・コンテンツ」、「ファッション」を構成する業種において、人口シ
ェアより従業者数シェアの高いものが多い。
24
【図表2-2-3 従業員シェアと人口シェアの比較】
(単位 人)
成長産業
テーマ
対応する産業分野
各種統計指標
小分類
医薬品
医療・福祉機器
健康・医療・福祉
医療・福祉サービス
関連産業
子育て支援サービス [福祉]
[教育]
スマートコミュニティ [蓄電池]
[空調]
[照明・LED]
スマートコミュニ
[制御]
ティ、省エネ・新
エネ関連産業
次世代自動車
[電池]
[自動車・
同付属品]
メディア・コンテンツ [メディア]
ファッション
指標
医薬品製造業 従業者数
医療用機械器具・医療用品製造業 従業者数
医療用電子応用装置製造業 従業者数
医療用計測器製造業 従業者数
医療業 従業者数
保健衛生 従業者数
老人福祉・介護事業 従業者数
児童福祉事業 従業者数
学習塾 従業者数
蓄電池製造業 従業者数
空調・住宅関連機器製造業 従業者数
光電変換素子製造業 従業者数
配電盤・電力制御装置製造業 従業者数
配線器具・配線附属品製造業 従業者数
蓄電池製造業 従業者数
自動車・同附属品製造業 従業者数
インターネット附随サービス業 従業者数
放送業 従業者数
出版業 従業者数
[映画・アニメ] 映像情報制作・配給業 従業者数
[音楽]
音声情報制作業 従業者数
[ゲーム]
ソフトウェア業 従業者数
[衣服]
外衣・シャツ製造業(和式を除く) 従業者数
下着類製造業 従業者数
和装製品・その他の衣服・繊維製身の回り品製造業 従業者数
クリエイティブ
産業
衣服・身の回り品卸売業 従業者数
[装飾品など] なめし革・同製品・毛皮製造業(中) 従業者数
貴金属・宝石製装身具(ジュエリー)製品製造業 従業者数
貴金属・宝石製装身具(ジュエリー)附属品・同材料加工業 従業者数
その他の貴金属製品製造業 従業者数
農業 従業者数
畜産食料品製造業 従業者数
[食品]
パン・菓子製造業 従業者数
観光
旅行業 従業者数
宿泊業 従業者数
航空・宇宙
[航空]
航空機・同附属品製造業 従業者数
[宇宙]
他に分類されない輸送用機械器具製造業 従業者数
ロボット
ロボット製造業 従業者数
先端部素材(ナノテク) [炭素繊維] 炭素繊維製造業 従業者数
航空・宇宙産業な
[ガラス繊維] ガラス繊維・同製品製造業 従業者数
ど先端ものづくり
[電池材料] 炭素質電極製造業 従業者数
産業
[分析機器] 精密測定機器製造業 従業者数
分析機器製造業 従業者数
高度IT
ソフトウェア業 従業者数
情報処理・提供サービス業 従業者数
インターネット附随サービス業 従業者数等
農業・食
[農業]
シェア
実数
実数
(関東)
(関東)
(全国)
31.0%
29,815
96,144
50.8%
23,372
45,984
69.7%
3,873
5,558
65.2%
5,493
8,421
35.2% 1,234,322 3,509,227
39.7%
49,134
123,864
35.9%
572,754 1,593,913
38.5%
270,729
703,127
46.5%
149,563
321,764
30.8%
6,008
19,517
49.7%
13,563
27,292
18.4%
3,323
18,037
38.8%
28,065
72,412
33.7%
6,549
19,433
30.8%
6,008
19,517
36.1%
283,860
786,753
84.3%
45.4%
74.2%
74.3%
87.5%
68.0%
18.3%
8.1%
17.3%
43.7%
38.6%
70.4%
44.8%
63.0%
27.7%
29.4%
39.3%
49.0%
37.9%
38.1%
42.6%
38.5%
14.8%
40.0%
43.2%
69.4%
32.4%
68.0%
71.6%
84.3%
33,208
32,798
67,047
47,832
6,262
435,855
19,616
1,096
3,654
99,799
9,567
3,393
584
410
77,151
43,219
106,847
50,903
291,585
16,258
2,801
5,431
480
2,713
488
5,983
2,004
435,855
166,282
33,208
39,397
72,194
90,303
64,360
7,158
640,547
106,994
13,576
21,160
228,623
24,761
4,819
1,304
651
278,171
146,945
271,820
103,858
769,959
42,664
6,576
14,123
3,247
6,778
1,130
8,625
6,176
640,547
232,340
39,397
(注)従業者数の対全国シェアが人口シェアの 40.4%を上回る業種について網掛けしている。人口シェアは総務省「平成
22 年国勢調査」より、全国の人口に占める広域関東圏の人口の割合として算出している。
(資料)総務省「平成 21 年経済センサス基礎調査」、経済産業省「平成 22 年工業統計調査」、「平成 22 年特定サービス
産業実態調査」、「平成 19 年商業統計」より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
③ 広域関東圏の成長性
③-1 市場規模の将来予測
内閣府や経済産業省、民間市場調査機関等の作成した各種市場予測資料より、全国の各
産業分野の市場予測を整理した(図表2-2-4)。
25
今後、特に大きな市場となることが期待されるのは「医療・福祉サービス」(2020年予測:1
03兆円)、「観光」(2020年予測:30兆円)、「スマートコミュニティ」(2020年予測:31兆円)
などである。
【図表2-2-4 各種公表資料による市場規模・市場予測】
テーマ
対応する産業分野
医薬品
医療・福祉機器
健康・医療・福祉
関連産業
医療・福祉サービス
子育て支援サービス
スマートコミュニティ
スマートコミュニティ、
省エネ・新エネ関連産業
次世代自動車
メディア・コンテンツ
ファッション
クリエイティブ産業
農業・食
観光
航空・宇宙
ロボット
航空・宇宙産業など
先端ものづくり産業
先端部素材(ナノテク等)
高度IT
年
2011
2016
2010
2020
2005*
2020
2010
2020
2011
2020
2010
2020
2006
2020
2009
2020
2010
2020
2010
2020
2008
2020
2010
2020
2011
2020
2011
2016
市場規模
市場予測
(兆円)
7.8
9.8
3.1
5.2
51.8
103.0
3.0
4.9
13.7
31.0
0.8
1.8
12.0
17.7
0.3
4.0
1.0
10.0
23.8
30.0
1.4
2.3
1.2
2.9
1.6
4.1
7.0
7.8
(注)「医療・福祉サービス」について、現状の市場規模は 2006 年の産業構造審議会サービス政
策部会資料より「直近」として示されたデータを使用している。
(資料)内閣府、経済産業省、富士経済、矢野経済研究所等各種資料より三菱 UFJ リサーチ&コ
ンサルティング作成
③-2 特許出願からみた将来性
「公開特許公報」(特許庁)を用いて、産業分野毎に任意のキーワードで検索を行い、特許
出願比率シェア1%以上の企業による出願件数を集計した(図表2-2-5)。さらに、これを
当該企業の研究機所の所在地別に集計し、広域関東圏の特許出願比率を算出した(図表2
-2-6)。
研究開発は将来への投資であり、その成果の権利化が特許出願であると考えれば、特許
出願が多い産業分野は将来有望な分野と類推でき、上記比率を算出することで広域関東圏
がどの程度貢献しているか見えてくる。
多くの業種において広域関東圏の特許出願比率は高いが、特に「医薬品」、「医療・福祉
機器」、「高度 IT」に関連する技術の特許出願比率が高い。
26
【図表2-2-5 検索を行ったキーワード】
テーマ
対応する産業分野
キーワード(分野を代表する技術・製品名など)
医薬品
創薬、医薬、製剤、治療薬、ゲノム、ワクチン
医療・福祉機器
画像診断、内視鏡、医療×検査機器、生体モニター、透析、
健康・医療・福祉
関連産業
介護
スマートコミュニティ
電力計、電圧調整、系統制御、超伝導、送配電、
スマートコミュニティ
エネルギーマネジメントシステム、電力管理、通信端末装置
省エネ・新エネ
次世代自動車
関連産業
ハイブリッド車、リチウムイオン電池、急速充電器、燃料電池
車、高度道路交通システム、電気自動車
農業・食
植物工場、遺伝資源、健康食品、特定保健用食品、農業機
クリエイティブ産業
械、農薬
航空・宇宙
航空機×機体部品、航空機×内装部品、航空機×エンジン
部品、降着装置、人工衛星、宇宙×ロケット-遊技
ロボット
人工知能、画像認識、音声認識、介護ロボット、移動ロボッ
航空・宇宙産業など
ト、ロボット×コミュニケーション、ロボット×移動作業、ロボッ
先端ものづくり産業
ト×装着、ロボット×搭乗、ロボット×汎用
先端部素材(ナノテク等)
炭素繊維、カーボンナノチューブ、機能材料、化合物半導体
高度 IT
ソーシャルネットワーキングサービス、ユーザーインターフェ
ース、クラウドコンピューティング、自動翻訳
(注)キーワードの「×」は and 条件での検索を意味する。
(資料)三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
【図表2-2-6 広域関東圏の特許出願比率】
テーマ
健康・医療・福祉関連産業
スマートコミュニティの実現と
省エネ・新エネ関連産業
クリエイティブ産業
航空・宇宙産業など
先端ものづくり産業
対応する産業分野
医薬品
医療・福祉機器
スマートコミュニティ
次世代自動車
農業・食
航空・宇宙
ロボット
先端部素材(ナノテク等)
高度IT
特許出願 特許出願件数
比率
(全国)
72.6%
10,306
90.4%
17,642
66.9%
13,245
33.8%
36,879
47.2%
5,117
49.2%
1,218
61.2%
25,369
59.8%
28,604
86.8%
1,740
(注1)2005 年以降の特許に関係する各産業分野のみを算出の対象としている。
(注2)各キーワードに対応する特許出願比率のシェア1%以上を占める企業による出願件数のみを集計
対象としている。
(資料)「公開特許広報」より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
27
④ 広域関東圏の競争力
広域関東圏における産業分野別の競争力をみるため、各産業分野に対応した組替産業連
関表を用いて、生産額と輸移出額を整理した(図表2-2-7)。
ここでいう輸移出額とは、広域関東圏から海外への輸出額と広域関東圏から国内他地域へ
の移出額の合計であり、広域関東圏で生産された製品・サービスがどれくらい域外から需要を
獲得しているか分かる。
生産額・輸移出額の分布状況をみると、「次世代自動車」「メディア・コンテンツ」「高度 IT」な
どが生産額・移輸出額ともに大きい。
【図表2-2-7 生産額と輸移出額】
輸移出額の規模
9.0
8.0
7.0
メディア・コンテンツ
高度IT
(
輸 6.0
移
出 5.0
額
次世代自動車
農業・食品
4.0
兆
円 3.0
観光
)
2.0
スマートコミュニティ
先端部素材(ナノテク)
航空・宇宙
1.0
生産額の規模
ロボット
ファッション
医療・福祉サービス
医療・福祉機器 子育て支援サービス
0.0
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
生産額(兆円)
(資料)「平成 17 年関東地域産業連関表」より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
次に、広域関東圏の域内需要に対する輸移出額の比率を求めることで、地域外を主たる
販売先としている産業分野を明らかにする(図表2-2-8)。この比率が高い産業分野ほど対
外競争力が高い産業と考えられる。
域内需要に対する移輸出比率をみると、「ロボット」、「スマートコミュニティ」、「医薬品」が他の
産業分野と比べて比率が大きい。
28
【図表2-2-8 域内需要に対する輸移出比率】
テーマ
対応する産業分野
医薬品
医療・福祉機器
スマートコミュニティ
次世代自動車
メディア・コンテンツ
ファッション
農業・食
観光
航空・宇宙
ロボット
先端部素材(ナノテク)
高度IT
健康・医療・福祉関連産業
スマートコミュニティ、
省エネ・新エネ関連産業
クリエイティブ産業
航空・宇宙産業など
先端ものづくり産業
移輸出/
地域内
需要合計
0.788
0.371
0.838
0.554
0.561
0.111
0.186
0.289
0.386
0.957
0.433
0.660
(注)移輸出額がほぼ0の「医療・福祉サービス」「子育て支援サービス」は表示していない。
(資料)「平成 17 年関東地域産業連関表」より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
⑤ 広域関東圏での生産誘発効果
広域関東圏において、ある産業の生産が1単位増加した場合、他産業の生産をどの程度誘
発するか示す生産誘発効果を整理した(図表2-2-9)。
生産誘発効果が大きな産業ほど他産業に与える影響が大きく、この効果が大きな産業が成
長することは他産業の成長を牽引することにもつながりやすいと考えられる。
各産業分野の生産誘発効果をみると、「医薬品」「スマートコミュニティ」「航空・宇宙」が高く、
特に「医薬品」は他地域平均と比較しても生産誘発効果が大きい。
【図表2-2-9 生産誘発効果と他地域との比較】
生産誘発 他地域平均
との差
効果
医薬品
1.730
0.273
医療・福祉機器
1.571
0.193
健康・医療・福祉関連産業
医療・福祉サービス
1.412
0.171
子育て支援サービス
1.282
0.067
スマートコミュニティ、
スマートミュニティ
1.629
0.232
省エネ・新エネ関連産業
次世代自動車
1.385
0.113
1.490
0.159
メディア・コンテンツ
ファッション
1.503
0.149
クリエイティブ産業
農業・食
1.339
0.147
観光
1.482
0.131
航空・宇宙
1.583
0.224
航空・宇宙産業など
ロボット
1.528
0.207
先端ものづくり産業
先端部素材(ナノテク等)
1.506
0.224
高度IT
1.504
0.173
(注釈1)生産誘発効果は広域関東圏における当該産業の生産が 1 単位増加した場合、どの程度
の生産を誘発するかを表したものである。
(注釈2)ここで言う他地域とは北海道、東北、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄の各経済産業
局の管轄地域を指す。
(資料)「平成 17 年関東地域産業連関表」より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
テーマ
対応する産業分野
29
2-3 広域関東圏のものづくり中小企業群の状況(地域版)
① 東京区部・神奈川臨海部(京浜臨海)地域
ⅰ.集積の歴史的背景
(ア) 東京区部
戦前より京浜工業地帯として発展してきた。戦後、高度成長期に工作機械、専用機械等
生産財の供給基地として成長し、各時代におけるリーディング産業を下支えする金属、機
械、電気機械加工等を中心とする中小製造業が集積し、我が国の製造業の発展を牽引し
てきた。
昭和 40 年代以降、都市化や工場制限法、公害問題等による立地環境の悪化、オイルシ
ョックに伴う受注減少といった難局に直面するが、基盤技術を用いた加工への専門特化、
企業間の水平分業体制(横請け、仲間回し)の発達により、多品種・少量・短納期・高精度
な生産体制を構築。多様な顧客ニーズに対する試作需要を獲得する基盤技術型の中小
企業(加工センター機能)が当地域に集中した。
(イ) 神奈川臨海部
オイルショック後に中核大手(ソニー、明電舎、NEC、東芝、キヤノン等)が研究開発拠
点に転換。大学・公的な研究機関との共同研究開発によって製品企画・設計力を醸成する
ことに成功した製品開発型の中小企業(研究開発機能)が集積した。その結果、技術力に
優れた基盤技術型企業と企画力に優れた製品開発型企業による縦横無尽なネットワーク
が形成されている。
ⅱ.地域のものづくり中小企業群のポテンシャル
東京区部・神奈川臨海部地域の人口は約 1,300 万人、製造品出荷額は 12 兆円となってい
る。
ア.設計開発能力を有する企業や高度な基盤技術を有する企業が集積
オンリーワン、ニッチトップ企業に加え、大手企業(ユーザー)の開発方向性を先読みし
想定される課題に対する解決策を提案する企業、あるいは自らネットワークを構築し多様な
ニーズに対するワンストップ機能を提供する企業、さらに、単なる製品・技術提供に止まらず
ユーザーの教育を通じてネットワークや付加価値を創出する企業など、高度なソリューショ
ン機能やネットワークを備えた企業が集積している。
イ.大手企業研究部門も数多く立地
首都機能及び大手本社機能が集中する都心部に隣接し、大手企業民間研究機関等は
約 480 件で全国の約 8%が立地している。また、慶応大、東工大、横国大等の 30 以上の理
工系、医学系大学や、産業技術総合研究所臨海副都心センター等公的研究開発機関も
多く立地している。
30
羽田空港、幹線道路、鉄道、港湾等の交通インフラが発達しているほか、外資系企業の
集積など海外を含めた他地域との交流が容易である(日本に進出する外資系企業の 80%が
東京、神奈川に集中:平成 16 年度経済産業省調査)。
ウ.きめ細やかな支援を行う地域産業支援機関の集積
各自治体が個別に産業政策ビジョンを策定。「新事業・新産業の創出」、「企業間ネットワ
ークの構築」、「海外販路開拓」、「高度人材育成」といった共通点が見られる。また、自治
体と密接に連携しつつ技術開発から事業化支援まで一貫した支援に熱心に取り組む産業
支援機関(大田区産業振興協会、川崎市産業振興財団等)が存在している。
ⅲ.地域のものづくり中小企業の現状と新たな動き
ア.東京区部
リーマンショック後は機械部品産業を主力とする大田区を中心とする町工場は大きな打
撃を受けた。従来、住工混在、操業環境の悪化等の問題から集積のほころびも顕在化して
いる。高付加価値型企業も存在しているが、下請企業からの脱却、新産業分野への進出
の取組も道半ばであり、地域内の産業構造の転換に加え、集積のあり方を見直すことが課
題である。
このような中、既存分野で培った高い技術力を基に、医療機器等の新たな成長産業分
野への事業展開を図ろうとする動きが活発化している。医療機器では本郷近辺に競争力を
有する中小企業が集積している。ものづくり以外のクリエイティブ産業等での強い競争力を
活用して、成長を実現しようとする動きも出ている。
(ア)神奈川臨海部
JFEスチール等工場撤退の跡地を利用して、医療・バイオ・環境等の新たな分野の研究
開発型企業の集積が進んできたところ。ライフイノベーション分野のグローバル企業による
革新的医薬品・医療機器の開発・製造と健康関連産業の創出を目的とした「京浜臨海部ラ
イフイノベーション国際戦略総合特区」が指定され、川崎市では新規に大手企業の立地も
予定され、地域再開発が始動している。
(ウ) 人材育成については、川崎市では KAST(財団法人神奈川科学技術アカデミー)への委
託事業として、地域に密着した産業支援人材の育成のため、3 名のベテランコーディネータ
ーが 4 名の新人コーディネーターを指導し市内の主要工業団地等を巡回訪問している。
31
【図表2-3-1 東京区部・神奈川臨海部(京浜臨海)地域】
② TAMA(首都圏西部)地域
ⅰ.集積の歴史的背景
TAMA地域(国道 16 号線および圏央道沿線の神奈川県中央部地域から東京都多摩地
域、埼玉県南西部地域(さいたま市を含む)の 1 都 2 県を中心としたエリア)は、戦前から戦中
にかけて、軍需関係の有力工場の疎開先として発展した(中島飛行機、東芝、日本製鋼所、
富士電機等、分野としては航空機、通信、計測機器、電気・電子関連が多い)。
戦後は、工場の民需転換によって機械工業の集積基盤が形成され、高度経済成長期~
1960 年代半ばは、需要急増および、工場等制限法により、都区部等の大学や工場等が新
設・拡張が困難となったことにより、相模原市・八王子・川越市、狭山市などに大規模な工業
場団地が造成され、新生産工場群が進出。先端産業を支える研究機関の集積も進んだ。
1970 年代半ば以降は、国内大手が量産拠点を地方や海外へ機能分散、研究開発志向に
移ることに伴い、研究開発に必要な分析・測定器等の需要増加と合わせて、研究開発に携わ
る社員によるスピンアウトによるベンチャーが活発になり、研究・試作開発型企業が集積した。
(例:菊池製作所、エリオニクス、東成エレクトロビーム等)
ⅱ.地域ものづくり中小企業のポテンシャル
TAMA 地域の人口は 759 万人、製造品出荷額は 10.3 兆円となっている。
ア.研究開発・試作開発拠点、ニッチトップ企業として生き残った中小企業群
32
系列に頼った量産体制から独立した競争力のある企業を中心に、業種を超えた多様な
中小企業が生き残っている。結果として、大企業等に対して自社製品・自社技術を売り込
み、提案し、営業できる企業が多い。そのようなニッチトップ型の企業であるため、産産連携
も起こりやすい環境にある。また、地価が地方と比較して高いため、研究開発拠点など高付
加価値化しないと存続が難しいが、逆に土地の担保価値が高く融資による最新の設備を導
入しやすい。先端産業を支える大学も、全国の 13%弱(97 大学/765 大学)を占めており、当
該大学の研究設備の需要も大きく、研究開発支援型の企業も多い。
イ.公共交通手段(インフラ)の充実
都心に近く、また国道 16 号は、東名、中央、関越道等と直結し、今後、圏央道の完成に
より利便性もさらに向上。羽田空港へのアクセスも良好である。
ウ.支援体制の充実
公設試験場(東京都立産業技術研究センター)や、独立した産業支援機関(首都圏産業
活性化協会、さがみはら産業創造センター等)が存在。また、信用金庫等もリレーションシッ
プバンキングに積極的であり、支援組織(たましんWINセンター、西武インキュベーションオ
フィス等)を有している。
エ.ベッドタウン、豊富で多様な人材、サービス業等の発展
都心部のベッドタウンに位置し、高齢化への対応は急務で医療・介護への需要は増加し
ている。一方、豊富なOB人材の活用、女性起業家、コミュニティビジネス等新サービス業な
どが育ちやすい環境にある。
ⅲ.地域のものづくり中小企業の現状と新たな動き
ア.この地域は、リーマンショック以降の国内産業の大幅な落ち込みの影響を大きく受けた。
そのため、製造工程(ロス)の見直し、海外需要を捉えるための積極的な対外投資、一極集
中を避けた顧客開拓等を行い、業績が回復基調にある企業がある一方で、対応しきれない
企業もあり、二極化が進んでいる。
イ.最近では、特徴ある技術を持つ、業種の異なる企業が連携し、技術開発・販路開拓などを
積極的に行っている。「AMATERAS」は航空機、「チーム入間」は医療機器関連への参入
を目指すといった新産業・成長分野への取り組みが特徴的である。また、コアとする技術を
基として、海外展開を積極的に行い、グローバルニッチトップを目指す企業や、事業の横
展開や異分野への進出に取り組む企業が増えている。
さらに、研究開発型企業や自社製品を持つ企業等では、若い世代への事業承継が進み、
新しい世代のネットワークが生まれつつある。
ウ.人材育成について、TAMA・ABE 塾は、若手経営者・後継者が自主的に実施している「自
社のあるべき姿を定性的・定量的に描ける人材の育成」を目指した勉強会で、厳選された
講師による講義のほか、塾生同士の交流も経営を学ぶ場となっている。また、首都圏産業
33
活性化協会はグローバル化へ対応できる経営者・技術者の育成のため基本的スキルの習
得から海外での実践までをフォローするグローバル経営人材育成講座を実施している。
さらに、さいたま市産業創造財団では人材育成を企図し研究開発型企業の研究員と大
学等研究機関の若手研究員との共同開発を支援している。
【図表2-3-2 TAMA(首都圏西部)地域】
③ 中央自動車道沿線地域
ⅰ.集積の歴史的背景
ア.北信・東信地域
戦時中、大手通信機器メーカー(富士通等)の工場疎開を契機として、電子デバイスや
情報通信機器関連の中小企業が多く立地した。
イ.諏訪地域
戦時中、諏訪地域への工場疎開が本格化。戦後も時計(第二精工舎:現在のセイコーエ
プソン)やオルゴール(三協精機:現在の日本電産サンキョー)を製造する企業が残り、それ
らを頂点として、精密加工を中心とする下請分業構造が形成された。
バブル崩壊後の不況や IT 革命を受けて、多くの中小企業がエレクトロニクスを中心とした
一般機械・電子産業にシフト。リーマンショックと円高を機に地元大手が海外へ移転する中、
精密加工の高い技術を活かして新分野への展開を図る、受注獲得型企業が台頭してい
る。
ウ.山梨地域
34
古くから発達した宝飾加工に端を発した精密加工技術がシリコンウェハといった研磨・切
削加工に活かされ、現在のメカトロニクス、エレクトロニクス産業の基礎になる。昭和 57 年の
中央自動車道の全線開通に相前後して、電機・電子産業が集積、東京エレクトロン等の大
企業の工場立地が多く、関連企業が発展してきた。
ⅱ.地域のものづくり中小企業群のポテンシャル
中央道沿線地域の人口は 178 万人、製造品出荷額は 5.3 兆円となっている。
ア.高度な技術の集積
完成品の生産に不可欠なコアとなる部品・部材を製造し、かつ容易に習得することが困
難な高度な技術を有する企業群が集積している。
諏訪地域を中心として、部品加工企業が多いが故の機動性の高さを活かし、輸送機器、
半導体、液晶といった他分野に事業を展開してきた経緯がある。
イ.技術シーズの集積
信州大学のカーボンナノチューブ・ファイバー及びメディカルシーズ、山梨大学の燃料電
池等、素材・ナノテクノロジーにおいて世界トップクラスの学の技術シーズを有している。そ
の他、工業技術センターや中小企業の支援機関が多数存在し、自治体も産業支援に注力
している。
ウ.国際展開への積極性
地域の大手企業が海外生産を始めたことを契機に、地域の中小企業でも生産拠点を海
外に保有するなど国際展開への積極性が高い。
ⅲ.地域のものづくり中小企業の現状と新たな動き
ア.北信・東信・諏訪地域
リーマンショック以降、半導体関連をはじめとした産業の大幅な落ち込みにより地域経済
を取り巻く状況は厳しく、これまで核となってきた大手企業の業績の低迷によって、当該地
域の中小企業は大手企業に依存する構造からの脱却が課題となっている。
諏訪地域では、「諏訪圏工業メッセ」等の地域が一丸となった取り組みが奏功し、中京地
域の自動車産業関連に軸足をシフトする企業もいるものの、出荷額でみるとリーマンショック
の落ち込みを取り戻すまでには至っていない。最近では、超精密加工という特徴を活かし、
医療分野等の新分野に事業を展開する企業が増加しており、立地的に近い信州大学医学
部との医工連携プロジェクトも進展している。また、特に北信・東信地域では、信州大学の
技術シーズを活用した新素材開発を実施する企業も現れている。地域の有力企業が中心
となり連携を組んで取り組んできた DTF(デスクトップファクトリー)研究会のメンバーは、開
発成果を国内だけではなく海外市場へ販売していく動きが活発化している。
イ.山梨地域
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山梨地域でも、リーマンショック以降、地元大手メーカーの業績の落ち込みに伴って地域
経済が悪化している。この状況を改善すべく、、クリーンエネルギー、スマートデバイス、医
療機器、燃料電池関連分野等の新成長分野への展開を検討する企業が参加するプロジェ
クトを開始している。
【図表2-3-3 中央自動車道沿線地域】
④ TX(つくばエクスプレス)沿線地域
ⅰ.集積の歴史的背景
ア.つくば地域
高度経済成長、首都との近接性を背景に、交通網の発達と共に豊富な労働力、用地等
の供給力などを活かし、工業団地の整備が進められてきた。
昭和 50 年代頃からは、ベンチャー企業を輩出する基盤となる筑波研究学園都市の建設
や常磐自動車道の整備効果を活かした工業団地・研究団地の整備も活発化し、今日の産
業集積の基礎が形成された。
イ.東葛地域
江戸時代から利根川・江戸川の水運や良質の水に恵まれ、野田の醤油や流山のみりん
づくり醸造産業等の地場産業が発達した。
36
高度成長期以降、隣接する東京都内からの鉄鋼、プラスチック、ゴム、非鉄金属、金属の
製品製造業や、一般機械器具製造業、電気機械器具製造業、輸送用機械器具製造業の
多数の基盤的技術産業が移転・転出・新規創業し発展した。
ウ.千葉市地域
臨海部では、戦後の高度経済成長を支えた京葉工業地帯の一翼を担う鉄鋼・電力等の
素材型工業が集積している。
首都圏の大消費地への利便性を活かし、我が国で最初の食品工業団地として千葉食品
コンビナートを形成しており、製粉・製糖・製油などの企業が多い。
ⅱ.地域のものづくり中小企業群のポテンシャル
域内の人口は 495 万人、製造品出荷額は 6.6 兆円となっている。
ア.産学官の研究機関・研究開発部門の集積
つくば地域では、筑波大学、独立行政法人産業技術総合研究所をはじめ世界をリード
する約 30 の国等の研究機関、約 140 の民間学術研究開発機関が集積しており、東葛・千
葉市地域では、東京大学、千葉大学、東京理科大学、千葉工業大学など多くの理工系大
学による先端的な研究開発が行われている。
イ.ものづくり産業の集積
つくば地域を中心に、東葛・千葉市地域に共通して地域大学発、研究機関発の研究開
発型中小・ベンチャー企業が多く集積している。
東葛地域は、加工型ものづくり中小企業を中心に、バイオ・ナノテク関連といった先端も
のづくり分野の企業が集積している。
千葉市地域は、大手素材型ものづくり産業を中心に、情報・通信産業、食品関連産業が
立地、内陸部の工業団地には加工型ものづくり企業が集積している。
ウ.農林水産業、食品関連産業の充実
都道府県別農業算出額(平成 22 年)では、茨城県 2 位、千葉県 3 位となっており、都道
府県別食料品製造業出荷額(平成 22 年)では、千葉県 6 位、茨城県 7 位となっているなど、
地域での農業、食品関連産業は主要な位置づけにある。
エ.物流インフラの充実
成田空港や羽田空港、千葉港等、首都圏における重要物流拠点や、交通網としての充
実した物流インフラに加え、東京湾アクアライン(平成 9 年)の他、近年ではつくばエクスプ
レス(平成 17 年)が開通、平成 25 年以降には圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の開通
を予定し、充実したインフラが整っている。
ⅲ.地域のものづくり中小企業の現状と新たな動き
ア.つくば地域
37
つくば地域を中心にベンチャー創業の件数は多いものの、自らの研究成果を活用した大
学発・研究機関発ベンチャーや二次創業が多く、ビジネス展開、資金調達能力の観点から
周辺の企業を巻き込むほどの成長には至っていない状況である。
このため、つくば研究支援センター(つくば市)など既存の支援機関のほか、TX アントレ
プレナーパートナーズといった民間のベンチャー支援団体が、設立支援や事業計画・資金
調達などの創業支援プロジェクトの展開を始めている。
イ.東葛・千葉市地域
食品産業は堅調に推移しているものの、臨海部の重化学工業や東葛地域の機械金属
加工や素材加工企業はリーマンショック後、非常に厳しい状況に陥った。これに対応するた
め、東京理科大学、千葉大学、東京大学(柏キャンパス)、千葉県産業振興センター東葛テク
ノプラザ等と連携し、インキュベーション等を推進した結果、自社技術の高度化などにより
一部の企業は一定の地位を確保している。しかしながら、工業出荷額では従来と比較して
まだ低い水準にある。
そこで、新たな成長分野への対応として、医療機器分野では、既存分野で培った高い技
術力を基に、医療・福祉機器分野への展開を検討する企業が参加するプロジェクトが発足、
エネルギー・環境分野では、臨海部の素材・電力系企業を中心に、自治体・企業連携によ
る省エネ・新エネプロジェクトを展開、農業分野では千葉大学と企業の連携による先端的植
物工場の実証実験プロジェクトを開始している。
ウ.人材育成について、医療分野に関する広域研究会「つくば・東葛・千葉メディカルネットワ
ーク」では、医療分野で実績のある企業を中核企業として参入ノウハウの提供や事業の目
利きの役割を担っており、今後制度化して活動を拡充する予定である。
【図表2-3-4 TX(つくばエクスプレス)沿線地域】
38
⑤ 三遠南信地域
ⅰ.集積の歴史的背景
浜松市・豊橋市・飯田市を中心に構成される当該地域は、全国に拡がる交通網の活用が
可能であった一方、東京、名古屋、大阪という大都市の中間に位置したことから、自立性の高
い地域となり、温暖な気候、豊富な水資源、良質な労働力等を核に、日本の製造業及び農業
を牽引してきた。
明治時代の繊維、楽器産業に端を発し、自動織機、自動車産業へと発展した輸送用機器
関連産業の比重が大きいが、1926 年に高柳健次郎博士が世界で初めてブラウン管による電
子式受像に成功したことから発展した光・電子産業等、多様な産業集積や競争力の高い企
業の集積が図られてきた。結果として輸送用機器関連産業、光・電子関連産業、精密加工産
業において全国でも有数な集積地域となっている。一方で、恵まれた気候により農業に代表
される第一次産業も非常に盛んである。
ⅱ.地域のものづくり中小企業群のポテンシャル
三遠南信地域は人口約 230 万人、製造品出荷額約 13.8 兆円となっている。
ア.輸送用機器、精密加工産業などの全国的集積地域
輸送用機器関連産業において、スズキ、ホンダ、ヤマハ発動機等の主要生産拠点を有し
世界有数の集積を誇る。地域の中核企業たる浜松ホトニクス(光・電子)や多摩川精機(航
空機等)が立地している。
イ.世界水準の光・電子関連技術・産業
浜松ホトニクス、夏目光学等、光・電子関連企業が集積、光産業創成大学院大学、静岡
大学、豊橋技術科学大学、静岡県工業技術研究所浜松工業技術支援センターとの産学
連携も活発である。
ウ.全国有数の農業生産額
温暖な気候や広大な農地を活かした全国上位の農業生産額(農業算出額約 3,100 億円、
生産額全国 4 位:浜松市、6 位:豊橋市)となっている。
ⅲ.地域のものづくり中小企業の現状と新たな動き
ア.リーマンショック、東日本大震災、円高等の複数の要因により、輸送機器・半導体関連を
はじめとする産業の大幅な落ち込み、・空洞化が進み、地域経済が悪化。以下のような取
組により、輸送機器等の特定産業分野依存から脱却し、高付加価値の新産業創出などに
よる重要的産業構造への転換を押し進めているところ。
イ.浜松医科大学等が参画する、「はままつ次世代光・健康医療産業創出拠点」事業を実施。
健康・医療関連企業の集積では開発・受注を目的とした協同組合 HAMING 設立に見られ
る中小企業の協業なども活発化している。
39
ウ.次世代自動車にも活用できる新工法・新技術の開発・実用化が進んでおり、航空宇宙
産業についての研究会や共同受注を目指した中小企業グループの発足(飯田航空宇宙
プロジェクト、エアロスペース飯田、浜松航空機産業プロジェクト SOLAE)もみられる。
エ.植物工場、豊橋技術科学大学との連携によるIT農業、農商工統合人材育成、医食農連
携の推進等の農業の6次産業化に向けた活動が活発化している。
オ.人材育成について、浜松市、豊橋市、飯田市の首長と 12 大学の学長、経済界の代表ら
が出席する「三遠南信地域産学官人材育成円卓会議」を開催し、時代の地域を担う人材
育成・定着化・確保のためのアクションプロジェクト等取組方針を議論している。浜松・東三
河ライフフォトニクスイノベーションでは、地域企業の中堅社員や意欲ある大学院生等を対
象に、光技術等を活用した新産業育成に係るプロデューサーや最先端植物工場マネージ
ャー人材の育成プログラムを実施している。光産業創成大学院大学では、院生の学内での
研究をもとに実際に起業させ、社会での実務実践を行う中で学ぶ機会を提供している。ま
た、南信州・飯田産業センターが主体となり、三遠南信地域において航空機産業参入に必
要な技術などについての人材育成プログラムを実施している。
【図表2-3-5 三遠南信地域】
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⑥ 首都圏北部地域
ⅰ.集積の歴史的背景
茨城県北部地域には戦後の日立製作所グループの発展とともに、その生産活動を支える
下請け、孫請け中小企業が幅広い産業分野にわたって集積し、電機機器関連産業の基盤的
技術産業集積が形成されている。
栃木県の県央及び群馬県にまたがる両毛地区を中心に、戦前の航空機産業を牽引した中
島飛行機の技術を引き継ぎ、昭和 30 年代からの工業化推進により、電機機器産業及び輸送
機器産業がそれまでの繊維産業に代わっている。
平成 23 年 3 月には北関東自動車道が全線開通し、関越自動車道の高崎 JC から栃木県を
横断、茨城港常陸那珂港区や日立港区までの約 150km が接続され、また、平成24年10月
には、茨城港常陸那珂港区に「中国・韓国・東南アジア定期コンテナ航路」が開設され、一大
ものづくり集積地の地域横断のインフラ網が整備され、経済的なつながりが強化されている。
ⅱ.地域のものづくり中小企業群のポテンシャル
首都圏北部地域の人口は 698 万人、製造品出荷額は 16.5 兆円となっている。
ア.輸送用機器産業の集積と次世代自動車産業への対応
茨城県北部のモーターや電池等の要素技術や、両毛地域に集積するミツバ(桐生市)、
小倉クラッチ(桐生市)、サンデン(伊勢崎市)などのメカトロニクス関連技術は、次世代自動車
はもとより、ロボットへの応用が期待されている。
イ.新成長産業への対応
富士重工業(宇都宮市)を中心に加治金属工業(宇都宮市)、菊地歯車(足利市)といっ
た航空機産業で活躍あるいは新規参入する中小企業の集積に加え、IHI 相馬工場の手が
ける航空機エンジンなどの下請け中小企業も存在している。
また、栃木県を中心に医療機器関連企業が集積しており、スズキプレシオンなど、積極
的に医療機器分野に参入している企業も存在している
ウ.研究機関の集積
日本原子力研究開発機構(東海村・高崎市)などの独立行政法人や(株) 日立製作所日
立研究所(日立市)、(株)本田技術研究所4輪R&Dセンター(芳賀町)などの大手メーカ
ーの研究機関が立地。また、首都圏北部大学連合(4u:群馬大学、宇都宮大学、茨城大学、
埼玉大学)の産学連携も推進されている。
ⅲ.地域のものづくり中小企業の現状と新たな動き
ア.全国有数のものづくりの一大集積地として、部品の加工から組立てに至る幅広い加工工
程を担う高度な技術を持った企業が重層的に集積しているが、リーマンショック以後、東日
本大震災、円高などの複数の要因により地域経済は悪化している。
41
イ.このような中、NPO北関東産官学研究会(桐生市)が県域を超えた広域的の活動を行っ
ており、上記 4u を中心に首都圏北部地域の産学連携にも力を入れている。
ウ.群馬大学医学部、栃木県の国際医療福祉大学、自治医科大学や国内最大手の東芝メデ
ィカル、茨城県の筑波大学や産総研と各県が独自に主要な医療関係機関と連携した医工
連携の取組を進めている。今後は県域を越えた医工連携の取組が重要であり、より高度な
医療現場のニーズに対応できる課題解決力の向上を目指す動きが出始めている。
エ.メッキなどのニッチな分野で高い技術力を有する企業の一部では、先駆的な国際展開の
取り組み(茨城県の精密加工企業や栃木県の航空機関連企業等)を実施している。
オ.人材育成については、茨城県北及び隣県の中小企業の底上げを図る(公財)日立地区産
業支援センター(HITS)が、若手経営者を中心とした「ひたち立志塾」を立ち上げ異業種連
携を主導しており、国際見本市などに積極的に出展、地域を牽引している。
【図表2-3-6 首都圏北部地域】
⑦新潟・燕三条・長岡地域
ⅰ.集積の歴史的背景
ア.新潟地域
42
国内石油産業の発祥の地であることから、石油産業から派生した鉄工業が集積している。
現在も旧新潟鉄工グループの工作機械メーカー多数立地し、機械金属関連産業が集積し
ている。
イ.燕三条地域
江戸の和釘の製造技術に起因して、燕の洋食器、三条の工作器具に発展。現在は、プ
レス加工、切削加工、板金、鍛造、研磨、表面処理といった金属加工工程の業種が集積し
ている。また、1980 年代の円高の進展やアジア等との競争激化から電機・自動車分野や企
画力を活かした消費財への転換等に取り組んできた。
ウ.長岡地域
明治時代の東山油田の開発により鉄工業が発達。第二次世界大戦までの間、長岡の鉄
工業は軍需産業化していたが、大戦後は、軍需依存から紡績機械や工作機械の製造とい
った新たな産業の基盤が形成されている。
ⅱ.地域のものづくり中小企業群のポテンシャル
新潟・燕三条・長岡地域の人口は 128 万人、製造品出荷額は 2.2 兆円となっている。
ア.地域資源を活かした技術の集積
新潟地域に食品製造・機械金属加工、燕三条地域に洋食器や工具といった金属製品
製造、長岡地域に機械金属加工といった地域資源を活かした特徴ある産業が集積して
いる。
特に、地域の特産品である米や水産物を使った食品加工メーカーが多数存在し、食
品製造業の一大集積地である。
イ.交通の要衝
新潟市には、新潟空港、新潟港、上越新幹線や高速道路などが立地し、交通ネットワ
ークの要衝となっている。国内各地へのアクセスのみならず、成長著しい北東アジアへ
のアクセスも良好である。
ウ.大学・支援機関の集積
新潟大学や長岡技術科学大学をはじめとした多数の大学が立地している。また、新潟
県工業技術総合研究所、にいがた産業創造機構、県央地場産センター、長岡産業活
性化協会(NAZE)といった支援機関が多数存在している。
ⅲ.地域のものづくり中小企業の現状と新たな動き
ア.リーマンショック以降、半導体や自動車関連をはじめとする産業の大幅な落ち込みにより
地域経済は悪化している。現状の打開策として、高付加価値製品への転換を図るとともに、
地域特性や高度な技術を活かし、拡大が見込まれる産業分野に進出し地域の産業活性化
を促進することが課題となっている。地域内では一部企業間連携の動きが進んでいるもの
の他地域との連携はやや希薄な状況といえる。
43
イ.このような中、新産業分野に重点投資する企業群が発生。新潟市では航空機関連産業支
援として「NIIGATA SKY PROJECT」を推進している。
ウ.新潟県では平成 18 年から「健康ビジネス連峰」として健康、福祉、医療関連市場への対
応を推進している。また、新潟市では、食料品製造出荷額が全国トップレベルにあることか
ら「新潟ニューフードバレープロジェクト」を展開。食品製造業と農業が一体となり、食産業
発展のため、商品開発支援や販路拡大支援、食品リサイクル等の取り組みを実行してい
る。
エ.また、企業連合という形で需要を獲得する形態も発生している。燕市内の磨き職人を中心
として平成 15 年に設立した「磨き屋シンジケート」では、一元化した受注窓口を持ち、連合
体を組むことで顧客のニーズに対応する仕組みが構築されている。ビアマグカップなど独
自ブランド製品も販売開始している。
オ.人材育成については、燕地域の磨き職人育成のための研修施設「磨き屋一番館」を創設
している。
【図表2-3-7 新潟・燕三条・長岡地域】
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