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スギ精英樹クローン識別のためのSCARマーカーの開発(PDF:984KB)

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スギ精英樹クローン識別のためのSCARマーカーの開発(PDF:984KB)
林育研報 B
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スギ精英樹クローン識別のための SCARマーカーの開発
渡 遺 敦 史 (1) ・ 西 山 和 美 (2)
AtsushiWatanabe(1)andKa
zumiNishiyama(2)
DevelopmentofSCARmarkerstodiscriminateplus-treeclonesofJ
apanese
Cedar
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C
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αD.Don
要旨 :
RAPDマーカーによって行われてきたスギのクローン識別をより再現性の高い DNAマーカーである SCAR
マー
カーに変換することを試みた。 2
7のRAPDマーカーのうち 1
8マーカーについて SCARプライマーの設計に必要な塩基
4塩某伸長させる方法とソフトウヱアによって
配列を得るととができた。 SCARプライマーは. RAPDプライマーを 1
最適プライマ一部位を探索する方法の二つの方法で行い,両者の相違を比較した。その結果,単純に 1
4塩基伸長させ
たプライマ一対では多型をボす割合が高く,より効率的なマーカー開発が可能であった。多型を示すマーカーのいく
つかは,対立遺伝子の関係にあると考えられる複数フラグメントを同時に増幅した。最終的に,増幅が明瞭であった
SCARプライマーは 9プライマーであり マーカー数は 1
2であった。これらのマーカーを用いることによってスギの
マーカーがスギのクローン識別に普遍的に利用可能であることが明らかとなった
クローン識別を行った結果, SCAR
一方で,これまでの RAPD
分析から得られた識別本よりも低い値を示した。今後は,より高い精度でクローン識別を
行うためにも SCAR
マーカーの蓄積が必要である。
Summary:Wea
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(1)林木育種センター
干3
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1 茨城県 H立市十王町伊師 3
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(
2
) 林木育種センタ一関西育種場
干7
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5 岡山県勝田郡勝央町植月中 1
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林木育種センター研究報告 第 2
3号
1 はじめに
スギ (Cry
戸t
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αonicaD.Don) は,最も重要な林業樹種の一つであり,成長や通直性または病虫害妊
6
5
1個体が選抜され,クローン増殖されて
抗性など諸形質に優れたスギ個体は精英樹としてこれまでに全国で 3,
きた。これら精英樹クローンは育種母材として様々な公的機関で継続的に管理されている。方,管理が長期間
にわたる結果,植栽ミスやミスラベリングが生じる可能性が以前より指摘されている(後藤ら. 2
0
0
0
)。さらに,
スギはさし木造林が盛んであり,精英樹として選抜されたクローンの中にはさし木品種が含まれている(宮原ら,
1
9
9
4
;後藤ら. 1
9
9
9
;佐々木ら, 2
0
0
2
)。従って,同一クローンが異なる名称のクローンとして取り扱われてい
る場合もあり,適切な系統管理は林木育種における大きな課題の
4
つとなっている。そこで,種々の子法を利用
することによってスギクローンの識別法の開発が行われてきた。例えば,アイソザイム分析によってさし木由来
の品種を構成するクローン数の推定 (
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9
6
9
;奥泉・大庭. 1
9
9
0
;Okuizumi,1
9
9
3
) やスギ結
9
91
) RAPD (
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cDNA) 分析 (
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英樹の識別が試みられている(戸丸, 1
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a
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.1
9
9
0
) は情報量が多いこと,分析が比較的容易であることから,スギ品種または個体の識別に関する多数の
9
9
4
;高田・白石, 1
9
9
5
;後藤ら, 1
9
9
9
;金山ら, 2
0
0
2
;西山ら, 2
0
0
2
;佐々木ら,
報告が行われている(宮原ら, 1
2
0
0
2
)。最近では,スギのマイクロサテライトもしくは SSR (
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esequencer
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) が多数開発されたこと
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"2
003b;
T
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l
.,2
0
0
4
),より精度の高い識別法の確立が期待されて
から (
2
0
0
6
) は公表された SSRマーカーを利用して関東育種基本区内スギ精英樹 835クローンを識別し
おり,平尾ら (
マーカーは自動蛍光シーケンサーの使用によってフラグメントサイズを正確な数値データに変換して蓄
た
。 SSR
マーカーは共優性で
積することが容易であり, SSRマーカーの遺伝子型をデータベース化できる。さらに, SSR
あることから,クローン識別に留まることなく,親子鑑定といった研究や分析にも容易に発展できる
(
M
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.,2
004;Gotoe
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.,2
0
0
5
)。従って,現時点で SSRマーカーは最も有効な分析手法である一方
で,マーカーを効果的に活用するためには高額の機器が必要であり,ランニングコストは必ずしも安価ではない。
とれら機器やコスト面の関係から SSRをマーカーとして十二分に活用できる機関は限定されており,クローン識
別には簡易な設備でも対応可能であり,より安価かつ分析が容易なマーカーを開発することができれば,多くの
機関で系統管理に必要なマーカーシステムを作ることができる。
ParanandMichelmore (
1
9
9
3
)は
, RAPD分析によって得られたフラグメントの DNA
塩基配列を決定し,新
たなプライマーを設計することで目的のマーカーを特異的に PCR
増幅する SCAR (
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) マーカーを開発した。 SCARマーカーは容易に分析可能であり,再現性が高く,簡易な設備で
マーカー化した報告例は数多い (
Hernandeze
tal
.
.2001・
対応可能である。これまでにも有用なマーカーを SCAR
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l
.,2
0
0
3
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)。スギのクローン識別を目的とした SCARマーカーはすでに報告されている(久枝ら, 2
0
0
0
)
が,プライマーおよび塩基配列情報は公表されていないため,現段階で広く利用できないのが現状である。さら
に
,
ーつの SCAR
マーカーが保有する情報量は少なく,遺伝的に近縁な個体聞の識別にも対応可能とするために
はより多くの SCARマーカーを開発し,プライマー情報を蓄積していく必要性がある。スギについては RAPD
マーカーによってクローン識別がこれまでも行われており,これらの情報を活用することでマーカーの開発は比
較的容易である。
2
0
0
2
)が公表した 2
5マーカーを中心に SCARマー
そこで,これまで報告された RAPDマーカーのうち,西山ら (
﹁
﹁υ
巳d
スギ精英樹クローン識別のための SCAR
マーカーの開発
カーへと発展させた。その際,二つの異なる方法によってプライマーを設計し,多型を得るための効率性につい
て検討した。対象とした RAPDマーカーは,特定の虫害抵抗性個体の識別に利用するため開発されていたことか
ら
, SCARマーカーが他のスギ精英樹クローンの識別にも普遍的に利用可能か検討した。
2 材料および方法
SCARマーカーの識別能力の評価には,スギカミキリ抵抗性個体 3
8クローン(植木ら, 2
0
0
0
;西村・佐々木,
2
0
0
1
;西山ら, 2
0
0
2
)および関東育種基本区内の精英樹からランダムに 96クローン,計 1
3
4クローンを供試した。
各クローン供試個体数は l個体である。
RAPD分析は,西山ら (
2
0
0
2
) に従った。得られた RAPDフラグメントは,アガロースゲルから切り出した後,
GelE
x
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i
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nK
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t (QIAGEN) によって精製した。精製したフラグメント DNAは
, TOPOTAc
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gk
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(
In
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t
r
o
g
e
n
) によってクローニングし,それぞれ 8コロニーをピックアップした。アルカリミニプレップ法に
よってプラスミド DNAを調整し,プラスミド DNAを鋳塑として, ABI 3100g
enetic analyzer (Applied
塩基配列を決定した。プライマー設計には G
eneFisher(
G
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B
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s
)によって各フラグメントの DNA
e
ta
l
.,1
9
9
6
) を利用した。
新たに設計したプライマーセットを用いて, PCRは 2.0mMMgC
,
b 0.2mM各 dNTP,0
.
5
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/1
0¥
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1TaqDNA
In
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g
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),0
.
2
5¥
lM p
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rの反応溶液組成で行った。 PCR反応は, DNAEnginePTC-200 (MJ
polymerase (
AmpPCRSystem9700 (
A
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dB
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) を用いて行った。 PCRは初期慣として
R
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) もしくは Gene
0Cに設定し
アニーリング温度を 6
0
1サイクルととに 1o
Cずつ下げ 1
0サイクル経過後 5
0Cになった時点でア
0
ニーリング温度を固定して残る 2
0サイクルを行う t
o
u
c
hdownPCRを用いた。すべてのサイクルで変性は 9
4C
0
, 1
市長反応については 7
2C90秒に固定した。増幅産物は 2%アガロースゲルで電気泳動後, U Vトランス
3
0秒
0
イルミネータ~J-:で検出した。
3 結果と考察
3
.
1 SCARプライマーの設計
SCARプライマーの開発には,スギカミキリ抵抗性クローン識別マーカーとして公表した 2
5のRAPDマーカー
(西山ら, 2
0
0
2
) のうち.フラグメントサイズが短いため, DNA
塩基両日列決定後プライマー設計が困難と予想、さ
U06/250・A09/250・B11/2
0
0
) を除外した 2
2マーカーと,新たに迫加した 5マーカーを含め
れる 3マーカー (
た計 2
7マーカーを対象とした。クローニング後,十分な PCR増幅産物が得られなかったマーカーと 1000bpを超
えるフラグメントサイズを示したマーカーについては十分な数のポジティブコロニーが得られなかったことから,
8の RAPDマーカーについて DNA
梅基配列を決定した(友一 1
) PCRもしくはクローニングの際に生
最終的に 1
0
じる a
r
t
i
f
a
c
tを考慮し,複数コロニ一間で一致した取基配列のみを SCARプライマー設計の候補として選抜した。
8つの RAPDマーカーでは塩基配列が異なる複数のフラグメントの存布が明らかとなった。例えば, Bll/70
0で
は 7
03bpと686bpを示すフラグメントが混有していた。これは RAPD分析を行った際に,サイズがわずかに異
なるフラグメントが複数増幅されていたにもかかわらずアガロースゲル電気泳動では十分に分離できなかった
ためと考えられる。 Hernandeze
ta
l
.(
2
0
01
)は
RAPDフラグメントのダイレクトシーケンスがより効率的で
あることを報告した。しかし,今回の分析では,復数フラグメントが混在するマーカーが見出されたことから,
←
林木育種センター研究報告
5
6
第
2
3号
ダイレクトシーケンスは必ずしも最良の力会法ではないと考える。
ld]-RAPDマーカー由来の異なった塩基配列を示すフラグメントは,全てプライマー設計を行った。一方,
RAPD分析の結果から予想されるサイズを示さなかったフラグメントや RAPDプライマーの配列を塩基配列中に
含んでいないフラグメントについては除外した。結果的に, SCARプライマー設計の候補となったフラグメン卜
数はおとなった(表-1)。
P
a
r
a
nandMichelmore (
19
9
3
) は RAPDマーカーの SCAR
化に際し, 1
0塩基の RAPDプライマー配列を単純
に1
4塩基{伸長させることによって SCARプライマーとした。一方,塩基配列を基に最適なプライマ一部位を探索
し新たな領域にプライマーを設計した報告も多い。そこで,それぞれのフラグメントについて, Paranand
19
9
3
) 同様に RAPDプライマーを 1
4塩基伸長させた 2
4塩基のプライマー(以後, RA) とソフト
Michelmore (
ウェアを利用して最適なブライマ一部位の探索を行ったプライマー(以後 GF) の二種類を作成し(図-1),得
られる結果の相違について検討した。二つの異なる方法によって設計するプライマ一部位がほぼ重複していた場
合には,ソフトウェアが最適と判断したプライマーのみを作成した(表
1。
)
3
.
2 SCARマーカーのスクリーエング
6個体を用いて行った。その結果, RAでは設計した 1
8プラ
スクリーニングは供試個体からランダムに選んだ、 1
イマー中 1
0プライマーで多型が認められた(表-1) RAとは異なる部位にプライマーを設計した GFでは, 1
8
0
プライマー中わずかに 3プライマーのみで多型が認められた。 RAとGF
でプライマ一部位がほぼ重複する残る 8
プライマーについては 3プライマーが多型を示した。以上の結果より, RAPD分析によって得られる多型の多く
がプライマ一部位の突然変異に起因しており, SCAR
マーカーの開発に際し RAPDプライマ一部位を単純に仲長
させたプライマーを用いた方がより効率的に多型を得ることが可能と考える。
スクリーニングの段階で多型が認められたプライマーは, RA
および GFを併せて 1
6プライマーであった(去
1)。このうち, c
j
s
c
a
r0
6,c
j
s
c
a
r0
8からは一本の明確なフラグメントが得られた(図
2)。同 -RAPDフラグ
メント由来で GFおよび RA
共に多型を示した c
j
s
c
a
r3
4とc
j
s
c
a
r3
5(共に Q04/670向来)は,フラグメントパター
ンが同一であり,より増幅が明確であった RAのプライマー (
c
j
s
c
a
r3
5
) のみを選択した。同様に,同一 RAPD
フラグメント由来の GFおよび RAである c
j
s
c
a
r3
6とc
j
s
c
a
r3
7 (共に Q04/670由来)では異なるフラグメントパ
j
s
c
a
r2
0(E1O/350向来)と c
j
s
c
a
r2
2(E1O/
ターンを示したことから,それぞれのプライマーを有効と判断した。 c
4
6
0由来)は, RAPDフラグメントの出来が異なっていたにもかかわらず, I
斗宇のフラグメントパターンを示し,
増幅がより明確であった c
j
s
c
a
r20由来のフラグメントをマーカーとした。 c
j
s
c
a
r1
2とc
j
s
c
a
r1
4もまた, RAPD
フラグメントの由来が異なっておりさらに得られたフラグメントパターンは 3フラグメントの有無によって
泳動像が構成されていたことから,これらのフラグメントは対立遺伝
fの関係にある可能性が高い。 c
j
s
c
a
r2
7
j
s
c
a
r2
7と同様に G11/6
1
0
(Gll/61O由来)もまた,二つのフラグメントが同時に増幅した個体が認められた。 c
由来である c
j
s
c
a
r2
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r2
7と同ーのフラグメントパターンであり,マーカーとしては用いなかった。一方
で
, c
j
s
c
a
r3
0(N08/400由来)からは,不明確なフラグメントが検出された。 PCR増幅条件を詳細に検討するこ
とでより明確な泳動像が得られる可能性があることから (
T
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n
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k
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.,2
0
0
4
),アニーリング温度を 5C高く
0
するととによって再分析した結果,不明確であった多くのフラグメントが消失し,クローン識別には問題ないと
判断した(図
2)。しかし, c
j
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c
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1(
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0由来), c
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スギ精英樹クローン識別のための SCARマーカーの開発
由来)については, PCR
条件の検討後も不明確な増幅が認められたことからクローン識別には用いなかった。以
上の結果から,クローン識別に有効としたプライマー数は 9プライマーであり(表-2),マーカー数は 1
2と
なった(図
2)。
3,
3 SCARマーカーを利用したスギ精英樹の識別
2
0
0
2
) は,スギカミキリ抵抗性個体として選抜された 38クローンについて 25の RAPDマーカーを利
西山ら (
用して識別した結果,ボカスギ系統の 4クローンを除く 34クローン (
8
9,
5
%
) が識別可能であると報告した。同
様に, SCARマーカーを適用した結果, 9プライマー 1
2マーカーの組み合わせによって 28の DNA型 (73.7%) に
分類できた。 6タイプは 2クローンで同ーの DNA型を示し,それぞれのクローンを識別できなかった。ボカス
ギ系統 4クローンもまた, RAPDマーカ一同様に全て同ーの DNA
型であったのに加え, RAPD分析では異なるク
ローンとされた 1クローンがボカスギ系統と同じ DNA
塑を示した。さらに新たに開発した SCAR
マーカーが普
遍的に利用できるか検討するため,関東育種基本区内スギ精英樹からランダムに選抜した 96クローンについて
識別を行った結果, 64のDNA型 (
6
6
.
7
%
) に識別できた。金山ら (
2
0
0
2
)は
, RAPD分析を用いて関東スギ精英
樹約 800クローンの識別を行い, 73.6%の識別が可能であったことを報告している。 RAPDマーカ一同様に1/0
データである SCARマーカーは,フラグメントの有無が 1
:1であった時,そのマーカーの識別能力は最大となり,
1:1からの偏りが増大するにしたがって識別能力は減少する傾向にある (
T
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ta
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9
9
9
)。本研究におい
ても,フラグメントの有無が 1:1に近い値を示したのは 3マーカーのみであった。新たに開発した SCARマー
カーはスギ精英樹のクローン識別に普遍的に利用可能であることを示すと同時に,精度の高い識別をするために
はより識別能力の高いマーカーを開発し,マーカー数を蓄積することが必要不可欠である。
しかし, PCRとアガロースゲル電気泳動によって高い再現性を得ることができる SCARマーカーは現在までに
公表されているマーカーの中でも最も安価かつ容易な分析手法である。例えば, RAPD分析では,複数回の PCR
によってマーカーの再現性を評価する必要性があった(後藤ら, 1
9
9
9
;金山ら, 2
0
0
2
;西山ら, 2
0
0
2
) SCARマー
0
カーは,目的とするフラグメントの塩基配列が明らかとなれば,単純にプライマー配列を伸長することによって,
容易に追加できる o 久枝ら (
2
0
0
0
)は
, SCARマーカーの m
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xPCRによって労力の減少を提案した。 SCAR
マーカーは,特別な設備を必要としないマーカーであり,林木育種においてクローン識別を継続的に実施してい
く上で,最も現実的なマーカーのーっと考える。
4 引用文献
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後藤
晋・家入龍二・宮原文彦:福岡県におけるスギさし木品種と精英樹の RAPD分析,日林誌 8
1,1
8
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9
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1
9
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9
)
後藤
晋・宵原文彦・家入龍て・川内博文:RAPD分析によるスギ挿し木品種の識別とその利用,林木の育種
1
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林木育種センター研究報告
第
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3号
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マーカーを利用したスギ精英樹のクローン識別,
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久枝和彦・白石
進・栗延
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) 分析を用いた九州産スギ精英樹の識別.一
佐賀・長崎県産スギ精英樹について
3,5
5
5
6(
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,日林九支研論文集 5
金山央子・後藤陽子・近藤頑二:関東育種基本区のスギ精英樹のクローン識別における RAPDi
去の有効性,日林誌 8
4,
1
0
0
1
0
3(
2
0
0
2
)
宮原文彦・松田
学・前田
徹・白石
進 :RAPD分析による福岡県産スギ伝来品種の構成クローン数の推定,日林論
1
0
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西村慶二・佐々木峰子:林木育種のプロジェクト(5)一地域虫害抵抗性育種事業一,林木の育種 1
9
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2
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6(
2
0
0
1
)
西山和美・渡遺敦史・久保田正裕:RAPDマーカーによるスギカミキリ抵抗性個体の識別,日林誌 8
4,2
6
2
2
6
6(
2
0
0
2
)
奥泉久人・大庭喜八郎:アイソザイムの 4遺伝子座の遺伝子型による集殖されたオピスギ系 1
4品種,ヤブクグリおよ
2,5
0
1
5
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1
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9
0
)
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)
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5,1
4
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)
研究 5
高田克彦・自伝
進 :RAPDマーカーを用いた九州地方のスギさし木品種の分類,九大演報 7
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戸丸伝弘・アイソザイムによるスギの人工林および精英樹の遺伝的変異に関する研究,筑波大学大学院学位論文, 1
7
5
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(
19
91
)
値木忠二・加藤一隆・山口和穂:関西育種基本区におけるスギカミキリ紙抗性候補木の検定状説,林木の育種,特別号,
3
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2
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19
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)
林木育種センター研究報告
60
第 23号
表 -1 明 ら か と な っ た 18RAPDマ ー カ ー の 塩 基 配 列 長 と 設 計 し た SCARプ ラ イ マ 一 対 に よ る 増 幅 結 果
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cjscar34
P
cjscar35
P
08
B
11/700bp
686
cjscar14
P
2
1
Q04/670bp
643
cjscar36
P
cjscar37
P
09
B11/800bp
703
cjscar15
M
cjscar16
P
22
Q20/370bp
357
cjscar38
M
10
B16/940bp
944
cjscar17
M
cjscar18 M
23
Q20/370bp
357
cjscar39
M
1
1
E10/350bp
352
cjscar19
M
cjscar20 P
24
U01/350bp
345
cjscar40
M
cjscar41
P
1
2
E10/460bp
404
cjscar21 NA
cjscar22
P
25
U03/330bp
336
cjscar42
M
1
3
E10/460bp 432
cjscar23
cjscar24 M
26
U03/400bp
389
cjscar43
M
cjscar44
M
M
1
) GF;G
eneFisherによるプライマー設計, RA;RAPDプライマ
2
) P;多
型
, M;単型または変異なし, NA;増幅しない
+14塩基
表 - 2 新 た に 開 発 し た SCARプ ラ イ マ ー の 塩 基 配 列
プライマー名
forward (デ→ 3つ
r
e
v
c
r
s
巳 (
5ラ
→ 3')
c
j
s
c
a
r06
AAT CGG GCT GAA AGG GAA AGG AAG
AAT CGG GCT GCA TAT ATT ATC GGG
~jscar 08
GAA ACG GGT GCA TGA ACA ACT AGT
GAA ACG GGT GAG GAG ATA ATT GGC
~scar14
GAC CCG TAT CTA GTC TCA CTT TCT G
GTA GAC CCG TAA CCA GAC ATG AAG G
~jscar 20
CAC CAG GTG AAG AGA GAA TAC ATA
CAC CAG GTG ATC CAT TAG ATT GGA
c
j
s
c
a
r27
GCC CGT CGT CAA ATG CAA CTT CGA T
CCC GTC GTT AGT GTA CGC CTA GTT C
c
j
s
c
a
r30
ACC TCA GCT CAC AGT ACA TGA AGA
ACC TCA GCT CGT GCT AAT TCA TTA
c
j
s
c
a
r34
CGC TGA AAT TGG GTT GGT TTG GAA G
TTA AAT CCG AGC CTG TGT GA
c
j
s
c
a
r36
CTG TAC GCT GTT AGT GTT G
ACC TTT TAC CTG CCT GCT
c
J
s
c
訂 37
AGT GCG CTG ACC CTT GAA TGA TCA
AGT GCG CTG AAA ACC TTT TAC CTG
スギ精英樹クローン識別のための SCARマーカーの開発
6
1
c
j
s
c
a
r
3
7
f
lAGTGCGCTGA-CCCTTGAATG ATC
剖ATATGA TTCACTAGTT AGAAATAAAA
OPQ04
ATGCAGCATA ATAATTTAAA TCCTTTTAAG GGGCTACATA GATGATTTTA
GAATTAGAAT TTCGAGTAAT TCAAAGGAAT GCAACTGAAA GAGAAATGAG
CTTGTTAAGC TAGCACAACT TCATAAATTT CAGGATTTTA GAAAAGACAA
AACTGTACGC TGTTAGTGTT GATAGTATAT TTTTGAGTAG TAAACAATGT
c
j
s
c
a
r
3
6
f
CAAATGCTCA CTAATTGGGT AGGCAGCGCC TACCATTTTC TGTTTTTACA
AAAATACAAA ACCCAAGTAT TATAAGGCTC CAACACATTG ACACAGTACA
ATGGAATAGC AATATACTCA TTGAAATTGC AAGTTAAAAT AAGATATATT
ACCTTGCAGG CTTCATTTCA AATTACATTG ATGAGATTGA CATTATTAGC
AGTATAAACT TGAATATAGA TAACAACATT TCTTATTTCC AGCGTATAAA
TACCCTAGCG TAGTAGAATA CACCGTTATA TGTCGCTCAA CTCTCAACAC
ATTACAACAA ACATCATTAT AAACTCGAAT AACAAACTTA GTGCATATCC
c
j
s
c
a
r
3
7
r
6
4
3bp
AGCAATCATA GATAGCAGQC AGGTAAAAGG TTT-TCAGCGCACT[
c
j
s
c
a
r
3
6
r
図 -1 SCARプ ラ イ マ ー の 設 計
一ーは GF,仁二二コは RAを表わす。
OPQ04
ρ
“
ヮり
林木育係センター研究報告
第2
3片
c
j
s
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r0
6
c
j
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r30
c
j
s
c
a
r08
c
j
s
c
a
r3
5
c
j
s
c
a
r1
2
c
j
s
c
a
r36
0
c
j
s
c
a
r2
c
j
s
c
a
r37
c
j
s
c
a
r2
7
図
2 SCARプライマーによる泳動結果
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