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2015 年 11 月度 研究レポート

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2015 年 11 月度 研究レポート
2015 年 11 月度 研究レポート「新卒採用における『科学採用』導入の検証結果」
2015 年 11 月度 研究レポート
「新卒採用における『科学採用』導入の検証結果」
人的資産研究所
過去の研究レポートで,新卒採用活動の KPI を応募者の活躍と定着に置き,人事データマネジメントおよび統計技術を活用した「科学採
用」の実装について記載しました.そして 2016 年卒の新卒採用活動で実際に「科学採用」の運用を開始しました. 本稿では,運用した「科
学採用」の評価を行うべく検証した結果を報告します.アセスメントの結果は概ね良好で,科学採用の成果が一定レベルで確認できました.
1. はじめに
表 1
予測結果と役員面談結果の相関
現在の一般的な新卒採用活動では採用基準を,学歴や人
予測結果
スター選手
主力選手
レギュラー選手
多いといわれ,
「入社」を KPI に採用活動を行っています.
最終選考人数
20
177
73
採用の評価といえば,いくらで何人採用できたか,その中
役員面談合格者
19
135
39
には学歴の高い人が何人いるか,といった評価しかなされ
合格率
95%
76%
53%
事・面接官の勘や経験などで定性的に判断していることが
ていないのが現実ではないでしょうか.しかし,セプテー
ニグループはその概念を捨て,採用活動の KPI を「定着と
「控え選手」に関しては役員面談前に不合格となってしま
活躍」に置き,ここ3年の取り組みを経て膨大な量となっ
ったので,3種での比較となりますが,見ての通り,新た
た人事データと統計解析技術を活用した数的根拠に基づく
に構築したアセスメントの判定と役員面談の評価の間には
採用活動を「科学採用」と命名し,取り組みを開始しまし
綺麗な相関関係が確認できました.特に「スター選手」と
た.
判定された学生はほぼ全員が役員面接を通過し,表中に記
2016 年度の新卒採用活動では,実際に「未来業績判定」
載はありませんが,評価の内訳も 19 人中 18 人が最高評価
「入社可能性判定」の2つのアセスメントを実装し,運用
を得ています.つまり,長年の経験を積んだ玄人(役員)
を始めました.
そして 2016 年度の新卒採用は8月末をもっ
が導き出した結論と,データから導き出した結論が概ね一
て採用を終了したため,現時点でのアセスメントの検証を
致しているということです.面談には1人あたり役員の時
行いました.本稿では,その「科学採用」の評価を検証し
間を 40 分使用しますが,
データ分析では1人あたり数分程
た結果をご報告します.
度です.精度という意味でも効果はありますが,採用コス
トという観点でも今後大きな貢献が期待できます.
本稿に記載されている内容については、著作権は当社または正当な権利を
有する第三者に帰属し、著作権法によって保護されております。
「私的使用
のための複製」又は「引用」等で、著作権法上認められた行為を除き、許
3. 入社可能性判定の検証結果
可なく複製、編集、翻訳、翻案、放送、出版、販売、貸与、公衆送信、送
2016 年度新卒採用では上記のパフォーマンス予測のア
信可能化はできません。
「私的使用のための複製」又は「引用」等を超える
セスメントに加え,採用担当者向けに入社可能性の判定に
場合の使用については、当社の使用許諾が必要です。
も挑戦しました.入社可能性というのは,役員面談を通過
した学生に内定を出した際に,入社を決めてくれるかの確
2. 未来業績判定の検証結果
率を学生が持つデータから予測をするもので,入社可能性
を「○」
「△」
「×」の3段階で事前判定してくれるもので
今回採用した学生はまだ入社して実際にパフォーマンス
す.予測モデルの構築プロセスはパフォーマンス予測の際
を確認できている訳ではないので,例年 300 人近い学生と
と同じ要領で,過去に内定を出した学生が入社したかしな
面談をしている経験値の高い役員の面談評価との相関関係
かったかのデータを基に,事前に取得したデータから判別
を確認しました.
(過去の分析において,役員面談の評価と
分析で入社するか否かを判別しました.図1がそのイメー
入社後の活躍度の関係には相関関係が確認できているため,
ジです.
概ね当アセスメントの結果と役員面談の結果が一致してい
ることで,精度の検証になると判断しました.)表1は事前
に予測した判定と役員面談の合格率との比較です.判定は
便宜的に「スター選手」
「主力選手」
「レギュラー選手」
「控
え選手」の4種で分類を行いました.
Human Capital Lab
© SEPTENI HOLDINGS CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
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2015 年 11 月度 研究レポート「新卒採用における『科学採用』導入の検証結果」
今回の新卒採用活動で「科学採用」を実際に運用したこ
とにより,
「科学採用」がより低コストでより高い成果(業
績)を出す採用活動になり得る可能性を感じたと共に,今
後もデータ解析による応募者の評価と,実際の結果の相関
を定期的に検証することで,時間を追うごとに科学採用の
精度が高まっていくこと、およびその再現性に期待を感じ
る事例となりました.
図 1
入社可能性を判定する判別分析のイメージ図
図1のように過去のデータをもっとも●と□が区分され
るように線(関数)を調整し,●が多い群と□が多い群,ど
ちらでもない群の3つに分類します.そして新たに応募者
が現れた場合,上記に照らし合わせることでどの群に属す
るかが判別され,
「○」
「△」
「×」のいずれかに判定される
というモデルです.
以上のような概念で構築した入社可能性判定モデルを実
際に 2016 年度新卒採用にて使用した結果をまとめたのが
表2です.
表 2
入社可能性予測モデルの判定と承諾率の相関
入社可能性
内定数
入社数
入社率
○
66
42
64%
△
82
36
44%
×
21
7
33%
こちらのモデルも精度は見ての通り上々であり,有用性
が確認できました.今までは学生が優秀かどうかという視
点でしか採用担当者も役員も判断していなかったのですが,
採用効率を考えると,優秀な学生の中でも入社する可能性
が高い学生に選考を通過してもらい,内定を出した方が明
らかに効率的です.特に昨今の採用市場の激化は顕著であ
り,入社可能性の事前判定による「入社可能性の高い学生
へのコスト投下」は,採用成果の担保への貢献度が高いと
考えています.
4. まとめ
今回の検証の結果から,データと統計解析技術を駆使し
た「科学の眼」はパフォーマンスのみならず,採用効率に
直結する入社可能性まで占うことができるといえます.そ
して入社可能性判定に関しては,採用担当者や役員を含め
た「玄人の眼」はここまでは判断できていなかったので,
実質的には「科学の眼」が「玄人の眼」を越える結果だっ
たといっても過言ではないかと考えられます.
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