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抄録集(一般演題)

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抄録集(一般演題)
一 般 演 題
1
完全腹腔鏡下に十二指腸空腸吻合術を行った上腸
間膜動脈症候群の 1 例
2
深川市立病院外科
砂川市立病院 消化器外科 乳腺外科 緩和ケア外科
○水上 周二,岡山 大志,新居 利英
○河北 一誠,横田 良一,太刀川花恵,松井 博紀
本間 友樹,細田 充主,田口 宏一
慢性偽性腸閉塞症は腸管の蠕動運動が障害されることにより、
機械的な閉塞機転がないにもかかわらず腹部膨満、腹痛、嘔吐
などの腸閉塞症状を引き起こす原因不明の難治性疾患である.
原発性と強皮症などに続発する続発性に分類され,小腸を主に
全消化管の運動異常をきたす.罹病期間は長期にわたり、罹患
患者の生活の質を極端に低下させる. 疾患の認知度も高くな
く診断確定までに時間を要する報告も少なくない.今回我々は
治療に難渋した慢性偽性腸閉塞症の1例を経験したので報告
する.症例は 64 歳、男性.8 ヶ月前から腹部膨満感、腹痛が出
現.症状が増強し近医受診し当院紹介となった.腸閉塞の診断
でイレウス管を留置し保存治療を行うも改善せず、試験開腹を
行ったが機械的な閉塞は認めなかった.その後も腸閉塞が遷延
し、他院でも原因の精査を行ったが原因不明で慢性偽性腸閉塞
症と診断した.現在胃空腸瘻による腸管減圧と在宅中心静脈栄
養管理を行っている.
症例は 86 歳女性。嘔吐と腹部膨満を主訴に救急外来を受診。
CT で腹部大動脈と上腸間膜動脈の間で十二指腸水平脚の圧迫
と、胃から十二指腸の著明な拡張を認めた。上腸間膜動脈の分
岐角度が 20 度、腹部大動脈と上腸間膜動脈に挟まれた十二指
腸径が7mm であり、上腸間膜動脈症候群と診断。保存的治療で
一度は改善したが後に再燃を認め、手術の方針とした。手術は
臍と左右上腹部、左右下腹部に計 5 本のポートで施行。十二指
腸水平脚および下行脚を露出し、Treitz 靭帯から約 30cm の空
腸と十二指腸水平脚を逆蠕動方向に並べ、それぞれに小孔を開
けて自動縫合器で側側吻合。挿入孔も自動縫合器を用いて閉鎖
し、完全腹腔鏡下で手術を終えた。上腸間膜動脈症候群は稀な
疾患であり、保存的治療で軽快しない場合は手術が考慮され
る。今回、腹腔鏡下十二指腸空腸吻合を施行する際に、側側吻
合・挿入孔のいずれにも自動吻合器を用いることで、より簡便
な手術を施行しえたので報告する。
3
治療に難渋した慢性偽性腸閉塞症の 1 例
Treitz靭帯に近接した上部空腸癌に対する手術手技
の工夫
4
腸管嚢腫様気腫症による門脈ガス血症を呈した血
液透析患者の 1 例
札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科
市立釧路総合病院 外科
○伊東 竜哉,信岡 隆幸,石井 雅之,河野
剛
秋月 恵美,植木 知身,西舘 敏彦,沖田 憲司
竹政伊知朗
○吉田 雄亮,佐藤 暢人,宮崎
大,井上
福田 直也,飯村 泰昭,長谷川直人
【はじめに】Treitz 靭帯に近接した上部空腸癌の手術では、切
除再建とリンパ節郭清に工夫が必要である。当科で経験した上
部空腸癌の 2 例を提示し、その工夫について述べる。
【症例 1】
70 代女性、Treitz 靭帯より 5cm に発生した空腸癌。T3N0M0、
cStageIIA。第 2・3 空腸動脈を根部まで追及しリンパ節を郭清
した。口側腸管は Treitz 靭帯右側の十二指腸第 4 部で切離を
行った。
【症例 2】60 代男性、Treitz 靭帯より 8cm に発生した
空腸癌。T4N2M0、cStageIIIB。第 2・3 空腸動脈を根部まで追
及しリンパ節を郭清した。口側腸管は Treitz 靭帯左側の空腸
起始部で切離を行った。左側横行結腸への浸潤が疑われ同部を
合併切除した。
【術後経過】いずれも縫合不全や吻合部狭窄を
認めず経過も、胃蠕動回復に遅延を来たした。
【まとめ】Treitz
靭帯に近接した上部空腸癌では、切除・郭清範囲が過少となり
やすく、手技の工夫が必要である。
- 21 -
玲
症例は 80 歳代の男性,ASO,HT,CKD で他院に通院中.血液透
析後に突然の上腹部痛を自覚.救急病院を受診し,CT で門脈ガ
スを認め,当院紹介となった.腹部症状は軽度で,血液検査で
は乳酸値の上昇を認めた.CT では門脈ガス,小腸壁と腸間膜内
の気腫性変化,腹水貯留を認めた.腹部所見に乏しいが,腸管
壊死の危険性は否定できないため,審査腹腔鏡を施行した.術
中所見では,小腸・小腸間膜に気腫性変化を認めたが,穿孔・
穿通や虚血性変化は伴わなかった.腸管嚢腫様気腫症と診断
し,手術を終了した.術後も腸管壊死を疑う所見なく経過し,
術後 10 日目に退院となった.門脈ガス血症は腸管嚢腫様気腫
症によるものと診断できれば保存加療が可能である.一方で,
腸管壊死に伴うものであれば,治療の遅れは致命的となる.本
症例のように腸管虚血・壊死が完全に否定できない症例におい
ては,審査腹腔鏡での観察が有用であると考える.
一 般 演 題
5
十二指腸球部原発 mixed adenoneuroendocrine
carcinoma(MANEC)の1例
6
札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科
市立札幌病院 外科
○河野
剛,沖田 憲司,西舘 敏彦,植木 知身
伊東 竜哉,秋月 恵美,石井 雅之,信岡 隆幸
古畑 智久,竹政伊知朗
○松本 将吾,奥田 耕司,大島 由佳,齋藤健太郎
沢田 尭史,上坂 貴洋,寺崎 康展,皆川のぞみ
大島 隆宏,大川 由美,三澤 一仁
【はじめに】今回、われわれは肺癌腹膜転移を捻転軸とした絞
扼性イレウスの 1 例経験したので報告する。
【症例】47 歳、男
性。肺癌 StageⅣにて加療中に腹痛を主訴に当院を受診。腹部
CT では Whirl sign 陽性で、腹膜刺激症状も認めたため緊急手
術を施行した。
【手術】Treitz 靭帯より 130cm の小腸に捻転を
認めた。捻転の軸となる腸管壁および腸間膜には結節を認め腹
膜転移に起因するものと思われた。捻転した小腸を切除し FEEA
にて再建した。
【病理】結節は既往の肺癌の転移であった。
【考
察】腸捻転の先天的素因としては総腸間膜症、腸回転異常、メ
ッケル憩室などがあり、後天的素因として腸間膜の瘢痕、癒着、
索状物形成などがある。その中で、肺癌腹膜転移に起因するも
のは非常に稀である。
【結語】肺癌腹膜転移を捻転軸とした絞
扼性イレウスの 1 例経験したので文献的考察を加えて報告す
る。
神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)は神経内分泌に
分化した腫瘍で、2010 年の WHO 分類では、腺癌、NET の成分が
各々30%以上存在するものは mixed adenoneuroendocrine
carcinoma(MANEC)と定義されている。今回我々は、比較的稀な
十二指腸球部原発の MANEC の 1 手術例を経験したので、若干の
文献的考察を加え報告する。症例は 87 歳男性。3 年前の内視鏡
で十二指腸球部に隆起性病変を認めていたが、生検では悪性所
見なく経過観察されていた。内視鏡再検にて腫瘍の増大を認
め 、 生 検 に て neuroendocrine carcinoma(NEC) と
adenocarcinoma の診断を得たため、幽門側胃切除術、十二指腸
球部切除術を施行した。摘出標本の病理所見では
adenocarcinoma 成分と neuroendocrine carcinoma 成分がそれ
ぞれ 30%以上混在しており、MANEC の診断に至った。
7
肺癌腹膜転移を捻転軸とした絞扼性イレウスの 1 例
腸石イレウスの一例
8
小腸穿孔を併発した虫垂による絞扼性腸閉塞の 1 例
市立室蘭総合病院
勤医協中央病院外科
○吉田 瑛司,佐々木賢一,斉藤 慶太,奥谷 浩一
宇野 智子,中野正一郎,澁谷
均
○栃窪
藍,吉田
信,石井 健一,諸星
浅沼 和樹,澤崎 兵庫,奈良 智志,中村
阿部 慎司,田尾 嘉浩,川原洋一郎,林
後藤
剛,山川 智士,鎌田 英紀,高梨
樫山 基矢,石後岡正弘,河島 秀昭,松毛
イレウスの中で腸石によるものは 0.04%と報告されている.症
例は 74 歳,男性.主訴は間欠的腹痛.イレウスの診断で当院
消化器内科に入院した.イレウス管を挿入するも改善せず,イ
レウス管造影にて狭窄部位に嵌頓する陰影欠損像が認められ
た.異物などの嵌頓によるイレウスが疑われ当科紹介となっ
た.腹腔鏡下に観察すると,回腸に鶏卵大の腫瘤を認めた.小
開腹創より腸切開し,5×3.5cm の結石を摘出した.本症例は腫
瘤の割面から食餌性の仮性腸石と考えられた.今回我々は極め
て稀な腸石性イレウスの症例を経験したので,若干の文献的考
察を加えて報告する.
直輝
祥子
浩三
節二
真一
虫垂が原因となった絞扼性腸閉塞の報告は過去に 10 数例認め
るが,小腸穿孔を併発した報告はない.症例は 75 歳女性. 2
日前から右下腹部痛を自覚し,症状が改善しないため当院受
診.右下腹部に反跳痛を伴う限局した強い圧痛を認め,腹部 CT
検査では小腸の一部の拡張と腹水貯留,遊離ガス像を認め,比
較的長い虫垂が小腸の腸間膜の一部を取り囲むように位置し,
その近傍で小腸狭窄部を伴い closed loop を形成.絞扼性腸閉
塞・小腸穿孔の診断で緊急開腹手術を行った.虫垂先端が小腸
の腸間膜の一部と癒着し,虫垂自体が索状物となり腸間膜を絞
扼していた.癒着を切離して絞扼解除すると腸管壊死はなかっ
たが腸間膜うっ血が著明.虫垂先端の癒着部近傍で小さな小腸
穿孔を認め,虫垂切除と穿孔部および腸間膜うっ血領域を含め
て小腸部分切除を行った.病理所見では急性虫垂炎と小腸穿孔
部周囲の高度な炎症や壊死組織の付着を認めたが,穿孔の原因
は不明であった.
- 22 -
一 般 演 題
9
当院における腹腔鏡下イレウス解除術の検討
10 腹腔鏡補助下に修復し得た S 状結腸間膜内ヘルニ
アの1例
市立旭川病院 外科
KKR 札幌医療センター 外科 1),KKR 札幌医療センター 病理診
断科 2)
○宮坂
衛,村上 慶洋,阿部 紘丈,福永 亮朗
笹村 裕二,武山
聡,沼田 昭彦,子野日政昭
【はじめに】近年、イレウスに対しても多くの施設で腹腔鏡下
手術が施行されている。今回、当院で経験した腹腔鏡下イレウ
ス解除術を行った 55 例の手術成績について検討し報告する。
【対象】2012 年 4 月~2016 年 10 月の腹腔鏡下イレウス解除術
を施行された 55 例。
【結果】男性 29 例、女性 26 例、年齢は中
央値 72 歳。手術時間の中央値は 85 分であった。腸切除を行っ
たものが 18 例,行わなかったものが 37 例であった。術前癒着
性イレウスと診断し、腸切除を要したのは 2 例のみであった。
イレウスの原因としては癒着 16 例、内ヘルニア 14 例、索状物
8 例、腫瘍 4 例、悪性腫瘍による腹膜転移 3 例であり、その他
は炎症性腸疾患による小腸狭窄や、腸捻転、腸重積であった。
【まとめ】イレウスに対する腹腔鏡手術は術前に減圧が得られ
れば、腹腔鏡での完遂率も高く、術創を少なくすることで、そ
の後の再発予防にも寄与すると考えられ、適切な症例を選べば
有用な術式であると考えられる。
11 S 状結腸間膜裂孔ヘルニアの一例
○村田 竜平 1),今
裕史 1),大渕 圭祐 1),財津 雅昭 1)
1)
武田 圭佐 ,鈴木
昭 2),桑原 博昭 1),田村
元 1)
1)
小池 雅彦
イレウスの原因の一つに内ヘルニアがあるが,その中でも S 状
結腸間膜内ヘルニアは稀であり,術前診断が困難である.今回
我々は,S 状結腸間膜内ヘルニアによる絞扼性イレウスの 1 例
を経験したので報告する.症例は 85 歳女性,朝食後に突然発症
した腹痛を主訴に近医を受診した.造影 CT を施行し,絞扼性イ
レウスの診断にて当院へ救急搬送され,同日緊急手術を施行し
た.まず、審査腹腔鏡を施行したところ,S 状結腸間膜の右葉が
欠損し,拡張した小腸と虚脱した小腸が並走して嵌入してい
た.ポートを追加し腹腔鏡下にヘルニア門を切開して小腸を解
放したところ,30cm に渡って腸管壊死を認め,S 状結腸間膜内ヘ
ルニアによる絞扼性イレウスと診断し小腸部分切除を実施し
た.S 状結腸間膜の右葉の欠損は解放のままとした.術後 10 日
目に軽快退院となった.イレウスの原因として S 状結腸間膜内
ヘルニアの可能性も考慮すべきと考えられた.本症例に文献的
考察を加えて報告する.
12 非観血的嵌頓整復後に待機的腹腔鏡下修復術を施
行した両側閉鎖孔ヘルニアの 1 例
イムス札幌消化器中央総合病院 外科
JA 北海道厚生連 遠軽厚生病院 外科
○三橋 洋介,越湖
進,渡会 博志,上 奈津子
早馬
聡,田中 栄一
○齋藤 善也,後藤 順一,北
健吾,石井 大介
栗山 直也,橋本 道紀,稲葉
聡,矢吹 英彦
症例は 80 代女性。嘔吐と腹痛のため、受診した。画像所見よ
り、内ヘルニアによる小腸嵌頓を疑った。全身状態が不良であ
り、合併症が多く、手術のリスクが高いことより、保存的治療
を行うこととなった。入院第 19 病日に、全身状態の改善傾向
見られたため、手術を行った。手術所見としては、S 状結腸間
膜内を貫くように小腸が嵌頓していた。S 状結腸間膜裂孔ヘル
ニアと診断した。ヘルニア門を解放すると、大量の膿汁と、灰
白色に変化し菲薄化した 40cm ほどの小腸が見られた。ヘルニ
ア門となっていた、S 状結腸間膜の裂孔は閉鎖した。術後の経
過は良好で、現在も入院加療中である。S 状結腸間膜裂孔ヘル
ニアはヘルニア門が小さく、嵌頓しやすいため、緊急手術にな
る例が多い。自験例は、高齢でハイリスクの患者であったが、
厳重な保存的加療のちに手術を行うことにより、救命できた。
比較的稀な一例を経験したので、文献学的考察を加えて報告す
る。
はじめに:閉鎖孔ヘルニアは比較的稀な疾患であるが、高齢
女性に好発し、嵌頓によるイレウスを伴って緊急手術になるこ
とが多い。今回、閉鎖孔ヘルニア嵌頓に対して非観血的整復を
行い、待機的に腹腔鏡下修復術を施行した症例を経験した。
症例:90歳女性。腹痛を主訴に来院し、腹部CT検査で右
閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断された。用手的圧迫法にて整復を試
み、これに成功した。整復後に経過観察入院となったが、入院
中はヘルニア嵌頓の再発は認めなかった。入院中に耐術能を評
価し、初回発症から約2か月後、待機的に腹腔鏡下閉鎖孔ヘル
ニア修復術を施行した。腹腔鏡下に観察すると左にも閉鎖孔の
開存を認めた。右閉鎖孔は縫縮後にメッシュシートで被覆、左
閉鎖孔は縫縮のみを行った。術後経過は良好で術後8日目に退
院となった。
結語:リスクの高い高齢者の緊急手術を回避し、対側の評価
や治療が可能という点で整復後の腹腔鏡下修復術は有用であ
ると思われた。
- 23 -
一 般 演 題
TM
13 当科における Progrip Laparoscopic
Self-Fixating Mesh の導入と初期成績
14 本邦初の E 型遅発性肝不全に対する脳死肝移植
北海道大学病院 消化器外科 I1),北海道大学 移植外科 2),北海
道大学病院 臓器移植医療部 3)
市立旭川病院 外科
○村上 慶洋,宮坂
笹村 裕二,武山
○渋谷 一陽 1),川村 典生 1),後藤 了一 1),腰塚 靖之 1)
渡辺 正明 1),武冨 紹信 1),山下健一郎 2),嶋村
剛 3)
衛,阿部 紘丈,福永 亮朗
聡,沼田 昭彦,子野日政昭
ProgriTMLaparoscopic Self-Fixating Mesh(以下:LPG)は
腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術においてTacking 固定を不要とし
た Mesh である。しかしながら展開の困難性および 5mmPort か
らの挿入が困難であることから、標準的な Mesh となり得てい
ないのが現状である。我々は、5mmPort からの挿入および展開
を容易にする方法を考案し、初発の鼠径ヘルニアにおける TAPP
において LPG を標準化した。2016 年 2 月に LPG を本格的に導入
し 2016 年 9 月までの期間で 37 例 51 病変に LPG を用いて修復
を行った。男女比は 30:7、年齢の中央値は 70 歳(30 歳-93 歳)
。
導入当初のみ指導医が術者として用いていたが、現在は標準化
し指導医施行例が 15 例、前期・後期研修医施行例が 22 例であ
った。全例で術中のトラブルや慢性疼痛を認めず、観察期間は
短いが再発を認めていない。LPG は初発ヘルニアに対する TAPP
においてメリットも多く、安全に使用できる Mesh と考えられ
るため、当科における導入後の初期成績および手術手技につき
報告する。
症例は 48 歳男性、既往に慢性 B 型肝炎がある。2015 年 12 月豚
レバーを摂取。2016 年 2 月初旬より倦怠感と発熱、黄疸、肝機
能障害を認め入院。入院時採血で HEV-RNA 陽性であり E 型肝炎
ウイルスによる非昏睡型重症急性肝炎の診断。血漿交換を含む
内科的治療後も黄疸・凝固障害・肝萎縮が進行し 3 月下旬に当
科紹介。医学的緊急度 8 点で脳死肝移植登録。登録後 8 週で II
度脳症を発症し(遅発性肝不全)
、緊急度 10 点待機に変更。待
機 47 日目に脳死肝移植を施行(手術時間 14 時間 8 分、出血量
5010 ml)
。肝は萎縮した硬変肝で B 型肝炎に E 型肝炎ウイルス
が superinfection した acute on chronic の状態であった。E
型肝炎の再燃なく、術後経過良好で術後 56 日目に退院。急性
肝炎診療時は E 型肝炎の可能性を常に念頭に置き、内科的治療
に抵抗性の場合は脳死肝移植が治療選択肢となりうる。
15 肝嚢胞による胆管圧排が原因と考えられた肝内結
石症の 1 例
16 異時性4重複癌(直腸・肺・胃・肝)であった肝内
胆管癌の1切除例
北海道大学大学院医学研究科消化器外科学分野 II
北海道大学大学院医学研究科 消化器外科学分野11),北海道大
学病院 病理診断科 2)
○廣瀬 和幸,野路 武寛,齋藤 博紀,川村 武史
京極 典憲,田中 公貴,中西 喜嗣,浅野 賢道
倉島
庸,海老原裕磨,村上 壮一,中村
透
土川 貴裕,岡村 圭祐,七戸 俊明,平野
聡
○阪田 敏聖 1),神山 俊哉 1),横尾 英樹 1),折茂 達也 1)
若山 顕治 1),永生 高広 1),島田 慎吾 1),坂本
譲 1)
1)
2)
2)
蒲池 浩文 ,中
智昭 ,三橋 智子 ,武冨 紹信 1)
症例は 70 歳台の男性で、35 年前に慢性膵炎に対して他院にて
膵頭十二指腸切除術(今永変法)を施行されていた。関節症性
乾癬のためステロイドを投与中、4 年前より間欠的な発熱を認
め、精査目的に施行した CT 検査にて、左肝内胆管の拡張と B2/3
に高吸収域、肝 S3 に長径 10mm 大の嚢胞を指摘された。腹部超
音波検査では、B2/3 根部の狭窄と狭窄部上流に充満する結石像
を認めた。逆行性胆管造影では、左肝管に狭窄像を認めず、B2/3
合流部の狭窄と同部から上流側胆管に透亮像を認め、B2/3 の胆
管合流部狭窄による肝内結石症と診断した。繰り返す発熱の原
因として胆管狭窄による胆管炎が考えられたため、肝外側区切
除の方針とした。肝切除の途中、肝 S3 の嚢胞内容を吸引除去
したところ、B2/3 の狭窄は直ちに解除された。病理学組織学的
検査結果では、胆管に悪性腫瘍を認めず、B2/3 を圧排していた
肝 S3 の嚢胞は retention cyst と診断された。以上の所見より、
本症例は肝嚢胞の圧排による胆管狭窄を原因として発症した
肝内結石症と診断した。
- 24 -
【はじめに】異なる臓器にそれぞれ原発性の癌が存在するもの
を重複癌と定義する。我々は直腸癌・肺癌・胃癌術後の経過観
察中に転移性肝癌と鑑別を要した肝内胆管癌を認め、切除を施
行した異時性4重複癌の症例を経験したので報告する。
【症例】
73歳女性。9年前に直腸癌(stageⅠ)に対し低位前方切除術、
7年前に右肺癌(stageⅠ)に対し右肺葉切除術、1年前に胃癌
(stageⅠA)に対して胃全摘術を施行した。術後の定期検査にて
肝腫瘤を指摘された。腹部造影 CT 検査で尾状葉に 40mm 大、S2
に 30mm 大と 7mm 大の造影効果の乏しい腫瘤性病変を認めた。
術前に転移性肝癌と肝内胆管癌の鑑別が困難であったが、胃癌
が早期であることからも肝原発腫瘍を考慮して、肝左葉・尾状
葉切除を施行した。病理組織検査は、肝内胆管癌の診断であっ
た。
【結語】今回、直腸癌・肺癌・胃癌術後の経過観察中に転
移性肝癌と鑑別を要した肝内胆管癌を認めた異時性4重複癌
の症例を経験した。癌の診断や治療の向上に伴い重複癌の報告
は増加しており、4 重複癌の発生も念頭におき診療することが
重要である。
一 般 演 題
17 一時的 loop ストーマ造設部位による有害事象の比
較検討
18 上行結腸癌及び胆石症術後に腹膜再発の鑑別が困
難であった腹腔内膿瘍の 1 例
勤医協中央病院外科
北海道大学大学院医学研究科 消化器外科学分野Ⅰ
○河島 秀昭,樫山 基矢,石後岡正弘,吉田
信
高梨 節二,川原洋一郎,浅沼 和樹,諸星 直輝
石井 健一,栃窪
藍
○中本 裕紀,本間 重紀,吉田
雅,杉山
昂
大野 陽介,市川 伸樹,川村 秀樹,武冨 紹信
(目的)今回われわれは、一時的ループストーマを造設する際に回腸ス
トーマと結腸ストーマのどちらが良いのかストーマ管理の面から両者
の有害事象の発生を比較したので報告する(対象)当院で過去 5 年間に
一時的 loop stoma を作成した 40 例とした。ストーマトラブルや造設・
閉鎖のトラブル・合併症に関して後方視的に比較検討を行った。ストー
マの造設部位の選択は、患者の状態から最適と考える部位を術者の裁量
で決定した。ストーマサイトマーキングは術前に医師と看護師 WOC が協
働して実施した。ストーマの閉鎖時期は術後 3 か月(約 90 日)を標準
とした(結果)症例の内訳は回腸ストーマ(I 群)27 例、結腸ストーマ
(C 群)13 例であった 男性 25 例,女性 15 例。定期手術は 26 例,臨
時手術が 14 例。サイトマーキングは 97.5%で行われた。造設理由は、直
腸癌の covering stoma が 23 例,次いで縫合不全による diverting
stoma が 8 例。両群の BMI は I 群 22.4,C 群 23.0 と差はなかった。スト
ーマのトラブルは、
排泄口の狭窄に伴うイレウス症状がI群で3例(11%)
C 群では口側誤認が 1 例(7.7%)
。3 例は予定を繰り上げて閉鎖を行っ
た。閉鎖時の合併症は吻合部出血 1 例、吻合部狭窄 1 例、イレウス 1 例、
縫合不全 1 例であった。装具決定により退院までの術後の入院日数は I
群 38 日,C 群 31 日。閉鎖までの期間は、I 群 101 日,C 群 135 日で標準
の 90 日より長かった。
【結論】ストーマケアの視点からは早期の装具決
定、患者のセルフケア自立の点で結腸ストーマを選択したほうが早期退
院が可能で優れている可能性が示唆された。
19 フルニエ症候群を合併した直腸癌の 1 例
症例は 78 歳男性。上行結腸癌に対し、当科にて腹腔鏡下回盲
部 切 除 術 (D3) を 施 行 し た 。 病 理 診 断 は tub2,T3(SS),
ly0,v1,N0,M0,pStage II,PM0,DM0,RM0,R0 であった。初回手術
の 1 年半後、胆石胆嚢炎に対し他院にて腹腔鏡下胆嚢摘出術が
施行された。手術記録では、術中胆嚢壁損傷によって腹腔内へ
の落石が少数あり、回収したとの記載であった。胆嚢摘出 3 か
月後の PET-CT にて肝周囲に SUVmax10.3 の異常集積を示す 1cm
大の腹膜結節を 3 か所認めた。発熱や腹痛は無く、WBC 5400、
CRP 0.24、CEA 2.3 であった。上行結腸癌腹膜再発と腹腔内膿
瘍の鑑別が困難であり、開腹下腹腔内腫瘤摘出術を施行した。
腫瘤は肝鎌状間膜、肝周囲後腹膜に存在し、周囲と強固に固着
していた。病理組織検査所見では、炎症細胞の集簇と線維化を
認め、中心部には胆汁様の結石構造が認められ、胆摘時の遺残
結石による膿瘍形成と診断した。
落下結石を原因とした膿瘍は稀ではあるが、胆摘施行後の腹
膜結節の鑑別診断として考慮すべきと考えられたため報告す
る。
20 回腸脂肪腫が盲腸癌に嵌頓して腸閉塞をきたした1
例
旭川医科大学 外科学講座 消化器病態外科学分野
勤医協中央病院
○谷
誓良,浅井 慶子,大谷 将秀,大原みずほ
宮本 正之,庄中 達也,長谷川公治,古川 博之
背景:フルニエ症候群は外陰部、会陰部を主病変とする壊死性
筋膜炎で、急激な経過をたどり、早期に適切な治療を要する疾
患である。直腸癌が原因となることは稀である。今回、フルニ
エ症候群を合併した直腸癌の1 例を経験したため報告する。症
例:60 歳代、女性。水様便を主訴に近医を受診した。精査の結
果、直腸 Ra から肛門管にかけて全周性の腫瘍を認め(Group5)
、
CT でリンパ節腫大、直腸壁の肥厚、直腸周囲に膿瘍を認めた。
敗血症性心不全を併発し当科紹介。転院時フルニエ壊疽を発症
していたため会陰部のデブリードマンと洗浄ドレナージ、横行
結腸双孔式人工肛門を造設した。術後 35 日目より mFOLFOX6 療
法を開始した。6 クール目から Bevacizumab を追加し、計 11
クール行った。腫瘍は著明に縮小し、初診日から 214 日目に根
治手術を行えた。直腸癌によるフルニエ壊疽は感染コントロー
ルと腫瘍学的な治療介入が必要不可欠である。若干の文献的考
察を加え報告する。
- 25 -
○浅沼 和樹,吉田
諸星 直輝,奈良
阿部 慎司,田尾
後藤
剛,山川
石後岡正弘,河島
信,栃窪
藍,石井
智志,澤崎 兵庫,中村
嘉浩,川原洋一郎,高梨
智士,樫山 基矢,鎌田
秀昭,松毛 真一
健一
祥子
節二
英紀
症例は 87 歳女性.腸閉塞を疑われ当院へ紹介された.腹部 CT
で腫瘍と考える回腸末端から盲腸にかけての腸管壁肥厚と,同
部位に 2cm 大の内部均一な脂肪濃度を含む腫瘤を認めた.回腸
末端から口側の腸管は著明に拡張していたが,上行結腸から肛
門側に拡張は認めなかった.以上より,盲腸癌による腸閉塞と
診断して手術を行った.開腹所見では回盲部に腫瘍を認め小腸
の一部が腫瘍の浸潤を受けており,回盲部切除 D3 および小腸
部分切除を施行した.切除標本では盲腸に全周性 2 型上皮性腫
瘍と 2cm 大の表面平滑な粘膜下腫瘍を認めた.病理組織検査で
中分化型管状腺癌 T3N1M0,StageⅢa および回腸脂肪腫と診断
した.脂肪腫は小腸腫瘍の中では比較的多く,成人腸重積の原
因として報告が散見される.しかし,脂肪腫が癌部に嵌頓した
症例報告は数少ない.今回,盲腸癌により狭窄した管腔に脂肪
腫が嵌頓して腸閉塞をきたした稀な1例を経験したので文献的
考察を加えて報告する.
一 般 演 題
21 壁外性発育を示した直腸原発平滑筋腫の 1 例
22 治療に難渋した直腸膀胱瘻の 1 例
札幌厚生病院外科
勤医協中央病院外科
○箕浦
愛,山上 英樹,松本
哲,乾野 幸子
及川 芳徳,野口 慶太,柿坂 達彦,田原 宗徳
高橋 周作,秦
庸壮,田中 浩一,石津 寛之
高橋 弘昌,高橋 昌宏
○樫山
浅沼
阿部
吉田
高梨
【はじめに】直腸壁と連続性を有し壁外性に発育していた、直
腸原発と思われる平滑筋腫の 1 切除例を経験したので報告す
る。
【症例】38 歳の女性。左殿部に緩徐な増大傾向のある腫瘤
を自覚されて受診した。理学所見では肛門の 3 時方向に、約 4cm
大の境界明瞭で弾性のある類円形腫瘍を体表から触知した。大
腸内視鏡検査にて直腸粘膜は異常なく、壁外からの圧排による
隆起性変化が観察された。CT では外括約筋の外側に肛門挙筋・
外括約筋との境界不明瞭な造影効果を伴う軟部組織腫瘍を認
め、MRI で腫瘍は T1 で低、T2 で不均一な高信号を呈した。画
像診断上、孤立性線維性腫瘍が疑われたが確定診断が付かず、
外科へコンサルトされた。針生検は行わず切除の方針で、2016
年 4 月に経会陰式腫瘍摘出術を施行した。腫瘍外縁に沿って周
囲組織を剥離し得たが直腸壁に連続性を認め、直腸壁の一部を
合併切除して縫合閉鎖した。病理は平滑筋腫の診断で悪性所見
を認めず、免疫染色所見は α-SMA・Desmin が陽性、S-100・
c-KIT・CD34 が陰性であり、Ki-67 label index は 1%未満であ
った。
基矢,石井 健一,栃窪
藍,諸星
和樹,澤崎 兵庫,奈良 智志,中村
慎司,田尾 嘉浩,川原洋一郎,林
信,後藤
剛,山川 智士,鎌田
節二,石後岡正弘,河島 秀昭,松毛
直輝
祥子
浩三
英紀
真一
【症例】50 歳男性【主訴】発熱【併存症】統合失調症【現病歴】
3 週間前より発熱が持続し近医にて尿路感染を疑われ抗生剤の
投与を受けるが改善なく当院紹介となった。
【経過】腹部 CT に
て膀胱、S 状結腸周囲に遊離ガス像を伴う液体貯留と肝に辺縁
が造影される低吸収域が多発しており、腹腔内膿瘍、多発肝膿
瘍の診断となった。また、大腸内視鏡検査及び注腸 X 線検査で
S 状結腸膀胱瘻を認め結腸穿孔、結腸膀胱瘻、腹腔内膿瘍、肝
膿瘍の診断となった。抗生剤にて炎症を沈静化させた後、入院
26 日目に手術を行った。下腹部は炎症により癒着、硬化が著明
で膀胱、回腸、結腸、虫垂が複雑な瘻孔で交通していた。S 状
結腸から膀胱直腸窩に向かう瘻管を認め可及的に膀胱近くま
で追い結紮切離し、
S状結腸、
回腸、
虫垂切除を施行しdiverting
stoma を回腸に造設した。術後 68 日目に正中創から尿の排出を
認め、瘻孔を造影すると S 状結腸切除後吻合部と正中創が交通
しており更に吻合部肛門側に診断されていなかった直腸膀胱
瘻の存在が明らかとなった。尿カテーテル留置および回腸瘻状
態を継続し炎症の沈静化を待ち、8 か月目に両側腎盂尿管ステ
ント留置の上、低位前方切除術、膀胱切開直腸膀胱瘻切除、吻
合部皮膚瘻切除を施行。1 年後に回腸ストマ閉鎖を施行した。
【結語】数度の手術にて治癒し得た直腸膀胱瘻の 1 例を経験し
た。若干の文献的考察を加え報告する。
23 待機的腹腔鏡下虫垂切除術施行時に認められた虫
垂上行結腸瘻の一例
24 盲腸軸捻転症術後に S 状結腸軸捻転症を発症した
20 歳男性の 1 例
製鉄記念室蘭病院外科・呼吸器外科
JCHO 北海道病院
○村松 丈児,千葉 龍平,パウデル サシーム,
佐藤 彰記,大高 和人,東海林安人,長谷龍之介
市村龍之助,仙丸 直人
○坂本 聡大,矢部 沙織,敦賀 陽介,正村 裕紀
数井 啓蔵
症例は 20 歳の男性。18 歳時に腸閉塞と診断され、保存的加療
の既往がある。腹部手術歴はない。腹痛を主訴に当院に来院。
腹部は著明に膨満し、全体に圧痛を認めた。造影 CT 検査で腸
捻転による絞扼性腸閉塞と診断、緊急手術を施行した。開腹す
ると盲腸の軸捻転を認め、捻転部位は虚血に陥っていたため、
回盲部切除を施行した。術後に腹腔内膿瘍を認め、再手術を施
行、初回手術後 24 日目に退院となった。退院後 10 日目に腹痛
で来院、造影 CT 検査で S 状結腸軸捻転と診断、下部消化管内
視鏡での捻転解除は困難であり、S 状結腸切除を施行した。経
過は良好で術後 13 日目に退院となった。盲腸軸捻転症は全結
腸軸捻転症の 5.9%、全消化管腸閉塞の 1%未満であり、比較的
稀な疾患である。特に結腸軸捻転は高齢者が半数以上を占める
ため、若年者の盲腸軸捻転と S 状結腸軸捻転を併発するのは非
常に稀である。稀な若年者の盲腸軸捻転症と S 状結腸軸捻転症
を併発した症例を経験したため文献的考察を加えて報告する。
20 歳男性。突然の心窩部痛を主訴に受診。CT で虫垂腫大、周
囲膿瘍を認め、膿瘍を伴う穿孔性急性虫垂炎と診断し入院し、
保存的治療により軽快した。発症後 5 ヶ月目の CT で虫垂腫大
は認めず、周囲に膿瘍も認められなかった。発症後 6 ヶ月目に
手術加療の方針となり腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。術中所
見で虫垂先端付近が上行結腸と強固に癒着し、剥離を試みたが
途中粘膜下組織が露出したため、虫垂上行結腸瘻形成の可能性
を考慮し、虫垂切除・上行結腸合併部分切除を行った。切除標
本で虫垂と上行結腸に瘻孔を認め、虫垂上行結腸瘻の診断とな
った。本症例では膿瘍を伴う虫垂炎であったことから、待機的
に虫垂切除を行う方針となった。その間の慢性炎症により虫垂
上行結腸間に瘻孔が形成されたと考えられた。しかし待機的腹
腔鏡下虫垂切除術施行時には、膿瘍は消失し腸管の炎症も改善
されており、安全に虫垂切除並びに上行結腸部分切除を施行し
得たと考えられた。
- 26 -
一 般 演 題
25 S 状結腸切除術後に発症した下腸間膜動静脈瘻に
よるうっ血性大腸炎の 1 例
26 胃壁内転移を認めた食道表在癌の1例
札幌厚生病院外科
○上村 志臣 1),吉川 智宏 1),大場 光信 1),坂下 啓太 1)
澄川 宗祐 1),碓井 彰大 1),佐々木邦明 1),加藤健太郎 1)
久須美貴哉 1),西田 靖仙 1),大内 知之 2),武内 利直 2)
細川 正夫 1)
○山上
野口
秦
高橋
恵佑会札幌病院 消化器外科 1),恵佑会札幌病院 病理診断科 2)
英樹,松本
哲,乾野 幸子,及川 芳徳
慶太,柿坂 達彦,田原 宗徳,高橋 周作
庸壮,田中 浩一,石津 寛之,高橋 弘昌
昌宏
【はじめに】下腸間膜動静脈瘻が存在し、S 状結腸切除術後
に生じた血流変化により大腸炎を発症した症例を経験した。
【症例】71 歳の女性。2014 年に腹腔鏡下 S 状結腸切除術 D2
を受療されている(pT1bN0M0,Stage I)。術後 9 ヶ月頃から下血
を認め、虚血性腸炎の診断で近医にてフォローしていた。2016
年に腹痛を伴う様になり、精査目的に入院となった。大腸内視
鏡検査を行い、吻合部の肛門側から直腸に浮腫状壁肥厚と潰瘍
を認めた。造影 CT で IMA から温存された SRA への血流を確認
出来ることより、血管造影を施行して IMA 分枝(SA-2 以下の分
岐付近)と並走する同名静脈の間に A-V シャントを検出した。
還流側の IMV が切断されているため静脈の怒張を認め、静脈圧
が高いことによるうっ血性大腸炎と診断した。先ず血管 coil
と lipiodol を用いた TAE を施行したが著効無く、手術治療を
選択した。術式は開腹下に吻合部口側から直腸までの変性腸管
を切除する低位前方切除術を行い、再吻合した。血管は IMA 根
部を切離してシャント血管も en-block に切除した。現在まで
術後経過は良好である。
27 右鎖骨下動脈起始異常と反回神経走行異常を伴う
胸部食道癌に対し腹臥位胸腔鏡下手術を施行した1
例
症例は 65 歳、男性。6 年前他院で多発食道癌に対し ESD を施行
され、そのフォローの上部消化管内視鏡検査で SM 浸潤を疑う
食道癌を指摘され当院紹介となった。精査で食道癌、
MtLt,T1bN0M0,cStageⅠであり、この他 EUS、CT で胃噴門部に
2cm 大の粘膜下腫瘍を認めた。手術の方針となり、胃噴門部の
粘膜下腫瘍を切除範囲に含むように、胸腔鏡下食道亜全摘・胸
骨後胃管再建を施行した。術後経過は良好であり、21 日目に退
院した。病理検査では食道癌が Ut、Mt、Ae に多発しており、
Ut、Mt の病変は M 癌であったが、Ae の病変が SM 浸潤を認めた。
また胃噴門部の粘膜下腫瘍は扁平上皮癌であり、その分化度か
ら Ae 病変の胃壁内転移と考えられた。術後化学療法を施行し、
現在経過観察中である。
食道表在癌の胃壁内転移は 1.0-2.7%と極めて稀であり、本
邦報告例(会議録除く)は 18 例であった。食道表在癌であって
も胃粘膜下腫瘍を認めた際は、胃壁内転移を鑑別に上げること
が必要と考えられる。
28 食道癌肉腫の 1 切除例
北海道消化器科病院 消化器外科
○福島 正之
北海道大学大学院医学研究科 消化器外科学分野 II
【はじめに】食道癌肉腫はポリープ様の隆起を呈することが多
い。今回、非典型的な大きな 2 型食道癌肉腫を経験したので報
告する。
【症例】71 歳の男性。2013 年 12 月つかえ感あり受診。
EGD にて Mt に大きな 2 型腫瘍を認め、生検:低分化 SCC。画像
診断にて MtLt, cT3, cN1, cM0, cStageIII の食道癌と診断。
術前化学療法の方針となり、mTPFL4 療法を 1 コース施行した
が、腎機能低下あり、手術の方針となる。腫瘍は 45mm→40mm
に縮小した。2 月に胸腔鏡下食道亜全摘を施行した。
【病理結果】
中心部は明瞭な角化を呈する高分化の SCC が中心だが、周堤隆
起では腫瘍細胞が短紡錘形となり核異型が強く、多数の
mitosis も認める。軟骨細胞への分化傾向があるため、食道癌
肉腫と診断。免疫染色検査では紡錘形細胞は vimentin が陽性。
化学療法の組織学的効果判定は Grade1a。MtLt, 70×50mm, CT-2
型, carcinosarcoma, ly1, v1, pN0, fStageII。
【術後経過】
術後、せん妄・誤嚥性肺炎を認め入院期間が長くなった。術後
2 年 8 か月再発所見を認めていない。
【結語】食道癌肉腫は、扁
平上皮癌成分が多いと通常食道癌と同様の肉眼形態を呈する
ことがある。
○佐藤
理,海老原裕磨,京極 典憲,齋藤 博紀
田中 公貴,中西 喜嗣,浅野 賢道,野路 武寛
倉島
庸,村上 壮一,中村
透,土川 貴裕
岡村 圭祐,七戸 俊明,平野
聡
右鎖骨下動脈起始異常と反回神経走行異常を伴う胸部食道癌
対し腹臥位胸腔鏡下手術を施行したので報告する。症例は 72
歳男性、嚥下困難感があり上部消化管内視鏡検査にて胸部上部
食道癌と診断された。CT で右鎖骨下動脈起始異常を認め、非反
回下喉頭神経(nonrecurrent inferior laryngeal nerve;
NRILN)の存在が推測された。胸部食道癌 cT2N2M0,cStgaeIII
に対し術前化学療法後に食道癌根治術の方針とした。手術は腹
臥位胸腔鏡腹腔鏡下食道亜全摘 3 領域郭清、胸骨後経路胃管再
建、頚部食道胃管吻合を施行した。胸腔鏡下操作では食道背側
を上行する右鎖骨下動脈を認め、右迷走神経から反回する神経
は認めなかった。また頚部操作において NRILN が右迷走神経か
ら直接喉頭に向かうことを確認した。NRILN は右鎖骨下動脈起
始異常に伴う先天奇形で比較的まれなものだが、CT 検査にて存
在診断が可能である。腹臥位による胸腔鏡下食道切除術におい
ても、術前予測により確実な反回神経周囲郭清が施行可能であ
ると考えられた。
- 27 -
一 般 演 題
29 苛性ソーダ誤飲後の腐食性食道狭窄に発症した食
道癌の一例
30 胃癌と胃神経内分泌癌を同時性重複した一例
国立病院機構函館病院 外科 1),国立病院機構函館病院 消化
器内科 2),国立病院機構函館病院 病理診断科 3)
○谷
道夫,小林 清二,千田 圭悟,江本
河合 朋昭,小笠原和宏
釧路労災病院 外科
○城崎 友秀 1),山吹
匠 1),岡村 国茂 1),藤原
晶 1)
1)
1)
1)
高橋
亮 ,小室 一輝 ,岩代
望 ,大原 正範 1)
2)
2)
間部 克裕 ,加藤 元嗣 ,木村 伯子 3)
慎
症例は 68 歳、男性。かかりつけ医通院中に貧血を認めたため
上部消化管内視鏡検査を施行したところ、穹窿部部噴門部付近
に3型病変と前庭部後壁に2型病変を認めたため加療目的に当
院に紹介となった。多発胃癌の診断で開腹胃全摘術、膵脾合併
切除、D2 郭清を施行した。病理組織学的検査所見で3型腫瘍
は chromogranin A,synaptophysin 陽性、MIB -1 index 高値で
あり内分泌細胞癌の診断となり、2 型腫瘍は高分化から中分化
型管状腺癌と診断した。術後補助化学療法は検討されたが本人
希望で施行せず経過観察の方針となった。術後5ヶ月後現在再
発なく経過している。胃の内分泌細胞癌はまれであり、同時性
多発胃癌において管状腺癌と内分泌細胞癌との組み合わせは
少ない。今回我々は内分泌細胞癌と管状腺癌の同時性多発胃癌
の症例を経験したので報告する。
症例は 74 歳男性. 幼少期に苛性ソーダを誤飲し以降食道狭
窄を認めており, 通過障害を来した際には近医にて内視鏡的
除去を行うというエピソードを繰り返していた. 平成 27 年 11
月に同様の症状のため内視鏡検査を施行するもスコープ通過
困難を認め, 平成 28 年 3 月にバルーン拡張術を施行した. そ
の際に食道穿孔を認め, 今後発症時に内視鏡検査・治療が困難
となったため, 食事摂取継続目的に手術が必要と判断され,
当院に紹介となった. 当院にて施行した上部消化管内視鏡検
査では上部食道に全周性の腫瘤性病変を認め, 生検で扁平上
皮癌の診断となり, 今後の経口摂取継続目的に縦隔鏡下食道
切除・胃管再建を行った. 病理診断は, Squamous cell
carcinoma, pT2(MP)ly0(D2-40), v0(EM), pN0, pPM0, pDM0,
pIM0, pStageⅡであった.
腐食性食道炎に食道癌を併発した報告は稀であり, 若干の
文献的考察を加え報告する.
31 TS-1/パクリタキセル経静脈投与・腹腔内投与療法
により組織学的 CR が得られた胃癌腹膜播種の一
例
32 当科における高齢者に対する完全腹腔鏡下胃切除
の導入と初期成績
斗南病院 外科
○阿部 紘丈,村上 慶洋,宮坂
衛,福永 亮朗
笹村 裕二,武山
聡,沼田 昭彦,子野日政昭
市立旭川病院 外科
○花城 清俊,森
大樹,佐藤 大介,才川 大介
山本 和幸,芦立 嘉智,鈴木 善法,川田 将也
川原田 陽,北城 秀司,大久保哲之,奥芝 俊一
症例は 79 歳女性.受診 1 ヵ月前より心窩部違和感と胸やけを
認め近医受診.上部消化管内視鏡検査にて胃に腫瘍認め精査加
療目的に当院紹介となった.当院での内視鏡で胃体中部大彎側
に4 型腫瘍認め生検の結果低分化型腺癌(HER2:陰性)であった.
CT 検査にて周囲リンパ節に軽度腫大認め,cT4a,N1,M0
cStageⅢA の診断となった.審査腹腔鏡を施行したところ腹膜
播種陽性であったたね,腹腔ポートを造設し手術終了した.そ
の後 TS-1+ paclitaxel 経静脈・腹腔内投与併用療法を 6 コー
ス行い PR の診断となった.審査腹腔鏡にて白色結節を迅速病
理検査行い陰性であること確認し,開腹胃全摘術を施行した.
病理検体からは胃もリンパ節も癌細胞は検出されずpCRの診断
となった.腹膜播種陽性胃癌が腹腔内投与併用療法を行い pCR
となった症例は本邦では報告がなく,非常に稀な一例であるた
め文献的考察を加え報告する.
- 28 -
近年低侵襲手術の進歩により安全性が向上したことにより、高
齢者に対しても腹腔鏡下での胃癌根治手術が積極的に行われ
るようになってきた。当科では 2012 年 4 月より完全腹腔鏡下
幽門側胃切除(以下 TLDG)
、完全腹腔鏡下胃全摘術(以下 TLTG)
を導入した。2016 年 8 月までに施行された 81 例の内、75 歳以
上の高齢者は 22 例であった。症例の内訳は TLDG が 18 例、TLTG
が 4 例であった。リンパ節郭清度は TLDG では D1 が 2 例、D1+
が 9 例、D2 が 7 例で、TLTG では D1+、D2 それぞれ 2 例ずつで
あった。再建方法は TLDG ではデルタ吻合による Birloth I 法
での再建が 12 例、結腸前経路での Roux-en-Y 再建が 6 例であ
った。TLTG では結腸前の Roux-en-Y 再建で行い、食道空腸吻合
は Linear Stapler での機能的端々吻合が 3 例、Overlap での吻
合が 1 例であった。今回我々は当科にて施行した高齢者に対す
る本術式の短期成績について検討し、高齢者に対する同術式の
安全性・術後経過について考察し、報告する。
一 般 演 題
33 保存的に軽快した胃壁内気腫症の1例
34 当院における胃 GIST 手術症例の検討
社会福祉法人北海道社会事業協会富良野病院
小林病院 外科
○松下和香子,藤原 康博,鈴木 達也
○助川
誠,山本 康弘,西越 崇博,木田 裕之
重原 健吾
症例は88歳女性。認知症で施設入所中、夜間に嘔吐、SpO2 の
低下を認め救急搬送された。腹部単純写真で胃の拡張像を認
め、CT で胃底部から体中部後壁にかけての壁内ガス、および門
脈内のガス像を認めた。free air は認めなかった。門脈ガス血
症を伴う胃壁内気腫症と診断したが、血液検査上は壊死の所見
に乏しく、また高齢で認知症もあり積極的な手術は困難と判
断、保存的加療の方針とした。経鼻胃管による胃内圧の減圧と、
PPI、抗生剤投与を行い経過観察した。翌日に炎症反応の増大、
発熱を認めたが次第に改善した。上部消化管内視鏡で胃底部に
大網の表出を認め胃穿孔が疑われ、嘔吐による胃内圧上昇で胃
粘膜の裂傷または穿孔を生じ、胃壁内から静脈系を経由して気
腫が広がったと考えられた。胃壁内気腫、門脈ガス血症は消化
管壊死を疑う所見であり緊急手術が必要となることもあるが、
その原因と経過、全身状態により治療法を判断する必要があ
る。
消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor: GIST)は胃、
小腸、大腸、食道、腸間膜などの腹膜に発生する間質系腫瘍で
ある。原発臓器としては胃が 60%~70%と最も多く、初発 GIST
に対する治療の第一選択は外科的切除である。平成 19 年から
平成 28 年まで当院で胃 GIST に対する手術症例は 8 例あり、平
均年齢 81.7 歳、男:女=3:5、平均腫瘍径は 50.9mm(22-100mm)。
平均手術時間は 69 分であった。Modified-fletcher 分類にて、
低リスクが 7 例、中リスクが 1 例で再発症例はなかった。開腹
手術、腹腔鏡手術は 4 例ずつあり、1 例が開腹幽門側胃切除術
を行い、ほか全て胃部分切除術を行っていた。当院における開
腹手術、腹腔鏡手術では手術時間に明らかな差はなく、腹腔鏡
手術の方が出血量が少なく、低侵襲で行えた。噴門に近い腫瘍
では術中 GS を併用することで安全に腹腔鏡下での胃部分切除
を施行でき、腹腔鏡手術は胃 GIST に対して有用な手術であっ
た。今回我々は当院における 8 例の胃 GIST 手術症例ついて若
干の文献的考察を交えて報告する。
35 Ehlers-Danlos 症候群に発症した胃軸捻転症の1例
36 神経線維腫症Ⅰ型に発症した乳癌の 2 例
JA 北海道厚生連帯広厚生病院 外科
北海道大学病院乳腺外科
○丹羽 弘貴,市之川正臣,山本 博之,和田 秀之
加藤 航平,武藤
潤,吉岡 達也,村川 力彦
松本
譲,大竹 節之,大野 耕一
○笠原 里紗,馬場
基,石田 直子,萩尾加奈子
郭
家志,奈良美也子,押野 智博,山下 啓子
症例は 17 歳男性、Ehlers-Danlos 症候群・食道裂孔ヘルニア・
脊椎側弯症の診断で当院小児科を定期通院していた。前日から
の腹痛・頻回嘔吐を主訴に小児科を受診し、Xp や CT 所見から
胃軸捻転症が疑われ当科コンサルトとなった。胃管による減圧
後の造影 CT で胃壁の明らかな虚血所見を認めなかったものの
捻転整復には至らず、同日審査腹腔鏡を施行した。術中所見か
ら間膜軸性胃軸捻転(短軸捻転)と診断、鏡視下に捻転整復後、
胃の虚血性変化を認めなかったため胃軸捻転再発予防目的に
胃前庭部前壁と腹壁を縫合固定した。術後は良好に経過され術
後 7 日目に退院、術後 3 ヶ月現在明らかな再発や症状を認めて
いない。胃軸捻転症の誘因として胃固定靭帯不全や欠如、食道
裂孔ヘルニア、横隔膜弛緩症などが報告されている。本症例で
は胃軸捻転の発症に組織脆弱性を特徴とするEhlers-Danlos 症
候群との関連が考えられた。
- 29 -
神経線維腫症Ⅰ型 (以下、NF1、レックリングハウゼン病) は
皮膚の神経線維腫やカフェ・オ・レ斑を特徴とする常染色体優
性遺伝性疾患である。
【症例 1】30 歳女性。母方祖母乳癌、甲
状腺癌。大叔母乳癌。増大する左乳房腫瘤を主訴に来院した。
蔓状神経線維腫による右難聴、右上縦郭腫瘤あり。左乳癌
T2N0M0, StageⅡA にて Bt+SN を施行した。病理診断は浸潤性
乳管癌; t = 2.8 cm, n 0, グレード 2, ER (70%), PgR (10%),
HER2 (1+), Ki67 60.1%であった。術後化学療法、内分泌療法
を施行予定である。
【症例 2】47 歳女性。祖父肺癌、祖母膵臓
癌。下垂体腫瘤、左上縦隔腫瘤、甲状腺腫あり。蔓状神経線維
腫による左顔面神経麻痺、子宮筋腫の既往あり。左乳房腫瘤を
自覚していたが、NF1 の皮膚病変と考え放置していた。検診で
腫瘤を指摘され来院。左乳癌 T2N1M0, StageⅡB、針生検にて浸
潤性乳管癌; ER (75%), PgR (0%), HER2 (3+), Ki67 27.1%と
診断。術前化学療法 (FEC、ドセタキセル+ハーセプチン) 後、
Bt+Ax を施行した。術後内分泌療法を施行中である。
一 般 演 題
37 原発副乳癌の 1 例
38 妊娠期乳癌 6 例における超音波所見と病理組織所
見の比較検討
旭川医科大学 外科学講座 呼吸器乳腺外科 1),旭川医科大学
皮膚科学講座 2)
○岡崎
智 1),安田 俊輔 1),高橋 奈七 1),石橋
林
諭史 1),北田 正博 1),上原 治朗 2),本間
山本 明美 2)
札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科 1),札幌医科大学
病理診断科・病理部 2)
佳 1)
大 2)
○島
宏彰 1),九冨 五郎 1),里見 蕗乃 1),前田 豪樹 1)
長谷川 匡 2) ,竹政伊知朗 1)
比較的稀な疾患である副乳癌の一例を経験した。症例は 67 歳
女性、左腋窩に 5cm 大の腫瘤を主訴に近医皮膚科を受診した。
組織診では扁平上皮癌であり、左腋窩有棘細胞癌の診断で当院
皮膚科にて腫瘍切除および腋窩リンパ節郭清(level I、Ⅱ)を
行った。永久標本で副乳癌の診断となり、充実腺管癌、
T2N1(26/29)、GradeⅢ、ki-67 62%, Triple negative type で
あった。術後補助療法として抗癌化学療法(FEC followed by DTX
8 コース)および放射線照射を行い、現在は経口抗癌剤内服中で
ある。本病態に関し、文献的考察を加え報告する。
【緒言】妊娠期ではとくに週末乳管〜小葉単位の増生がおこ
り、背景乳腺は肥厚とともに均質なエコー像を呈し、病変との
境界の判定が困難な場合がある。
【症例・方法】2011 年 1 月か
ら 2014 年 8 月まで当科において妊娠期乳癌手術を施行した 6
例を対象として、背景乳腺と腫瘤・非腫瘤性病変の境界に着目
し、超音波所見と手術病理結果とを比較した。年齢は 32-39 歳
(平均 34.8 歳)US 時の妊娠週数は 5-34 週(平均 20 週)で、
US 施行から手術まで 3-12 週(平均 6 週)である。
【結果】超音
波診断で背景乳腺は妊娠 5-20 週の 4 例が斑状・豹紋状で、妊
娠 28-34 週の 2 例が均質であった。腫瘤 4 例のうち、妊娠後期
の症例 2 例では超音波診断上いずれも境界不明瞭であった。ま
た、非腫瘤性病変の 2 例は境界の判定が困難であった。
【考察】
妊娠週数に伴い腫瘤境界診断が困難になる傾向を示した。ま
た、妊娠期では非腫瘤性病変の広がり診断は困難であった。
39 繰り返す局所再発から遠隔転移を来し、集学的治療
を要した悪性葉状腫瘍の一例
40 甲状腺原発悪性リンパ腫の一例
1)
北海道がんセンター 乳腺外科 ,北海道大学病院 乳腺外科
釧路赤十字病院 外科
2)
○藤井 康矢,三栖賢次郎,安孫子剛大,三井
金古 裕之,猪俣
斉,近江
亮
○押野 智博 1, 2),富岡 伸元 1),渡邊 健一 1),佐藤 雅子 1)
山本
貢 1) ,高橋 將人 1)
【背景】乳腺葉状腫瘍はしばしば線維線種との鑑別が困難で、
局所再発も多い。遠隔転移時の化学療法や放射線療法の有効性
は明らかではなく、治療の選択に苦慮する。集学的治療を行な
った悪性葉状腫瘍の一例を報告する。【症例】初発時 27 歳 女
性。1986 年 (27 歳)、左乳房腫瘤を自覚、1991 年に増大認め当
科にて摘出術施行、14cm の巨大線維線腫と診断された。以後 5
回、局所再発のたびに切除を行い、良性、境界病変、悪性葉状
腫瘍へと病理所見の増悪を認めた。2014 年 (55 歳)、左胸壁に
再発し、胸壁合併切除と胸壁再建術を施行した。2015 年 11 月、
右肺部分切除術にて葉状腫瘍の肺転移と診断された。以後、左
肺静脈の腫瘍塞栓・右心房・右腓腹筋・手指末端に対する放射
線療法、全身療法としてエリブリン、小腸転移に対し切除術を
施行した。局所療法は奏効したが、2016 年 9 月に呼吸状態の
悪化から腫瘍死した。
- 30 -
潤
症例:63 歳女性。主訴:自覚症状なし。既往歴:左後腹膜腫
瘍および下腿浮腫にて他院通院中。現病歴:5年前より甲状腺
腫に対して定期的に経過観察中であった。本年の頚部超音波検
査にて甲状腺左葉に低エコー域を認め、増大傾向であった。穿
刺吸引細胞診を施行したところ、CD20(+)
、CD3(-)
、Bcl-2
(-)で diffuse large B cell lymphoma 疑いであった。CT では
リンパ節腫大を認めず、他院で経過観察中の左後腹膜腫瘍の所
見のみであった。PET-CT では甲状腺両葉に集積あり。上下部
消化管内視鏡では腫瘍性病変は見られず。以上の経過より甲状
腺原発悪性リンパ腫と診断し、甲状腺左葉切除術を施行した。
術後経過は良好で、術後第7病日に退院となった。病理検査結
果は follicular lymphoma であった。甲状腺原発悪性リンパ腫
は比較的まれな疾患であり、画像診断上の特徴も含めて考察し
た。
一 般 演 題
41 肺原発 angiofibroma の 1 例
42 complete VATSで切除した神経鞘腫11例について
の検討
旭川医科大学 呼吸器・乳腺疾患センター1),旭川医科大学 手
術部 2)
1)
1)
1)
○安田 俊輔 ,北田 正博 ,林
諭史 ,石橋
岡崎
智 1) ,髙橋 奈七 1),平田
哲 2)
佳
札幌医科大学呼吸器外科
1)
○高橋 有毅,鶴田 航大,多田
三品泰二郎,宮島 正博,渡辺
周,槙 龍之介
敦
【背景】血管線維腫は良性軟部腫瘍に分類され,肺原発のもの
は 1 例のみ報告がある.今回,画像上胸壁腫瘍と診断された肺
原発血管線維腫の 1 例を報告する.
【症例】45 歳女性.近医で
左上肺野に結節影を指摘され,胸部 CT で左胸壁から滑らかに
隆起する 10×14mm の結節を指摘された.FDG-PET で優位な集積
を認めず, MRI 所見と合わせて胸壁由来の良性腫瘍と診断さ
れ,経過観察となった.2 ヶ月間の経過観察で数 mm の増大を認
め,切除による確定診断目的に当科紹介となった.完全鏡視下
の観察で胸壁に病変を認めず,肺表面から隆起する表面平滑な
有茎性の灰白色腫瘤を認めた.左上葉部分切除を施行し,術中
組織診で良性紡錘形細胞腫瘍の診断となったため手術終了し
た.永久標本で臓側胸膜より発生した angiofibroma の診断と
なった.
【結語】肺原発の angiofibroma の報告は,これまで末
梢気管支上皮に発生した 1 例のみであり,肺表面からの発生例
としては初の報告となる.若干の考察を加え,報告する.
【目的】神経鞘腫に対する完全鏡視下胸腔鏡手術(c-VATS:
complete Video Assisted Thoracic Surgery)について、その
成績を後方視的に検討する。
【対象と方法】当科で実施された
神経鞘腫に対する c- VATS の症例 11 例を対象とした。手術の
安全性に関係する術前因子と術中因子、術後合併症と予後につ
いて検討した。
【結果】1 例のみ悪性腫瘍で腫瘍の発生場所は後
縦隔 5 例、上縦隔 3 例、胸壁 2 例、肺・横隔膜面・大動脈壁に
多発(悪性)1 例で腫瘍発生神経は肋間神経 4 例、肋間神経 or
交感神経幹側枝 2 例、交感神経幹 1 例、不明 4 例であり、腫瘍
径は 10~60 mm であった。手術時間の平均は 94 分で、出血量
は少量~250ml、chest tube は 8 例で 1 本留置、3 例は非留置
であった。手術合併症は術後血胸 1 例(悪性)
、硬膜破損・髄
液流出 1 例、Horner 症候群 1 例であった。予後については不明
2 例、再発後死亡 1 例(悪性)で、他 8 例については無再発で
あった。
【結論】良性の神経鞘腫に対して c- VATS は低侵襲か
つ有用な手術法である。
43 胃・胆嚢に転移を認めた転移性肺腺癌の 1 切除例
44 肺腺癌を切除した同一肺葉内に定型カルチノイド
を認めた 1 例
小樽市立病院外科
○佐野 修平,渡邉 義人,越前谷勇人,權藤
独立行政法人 国立病院機構 北海道がんセンター 呼吸器外科
寛
症例は 80 歳男性。30 歳時に胃潰瘍に対して幽門側胃切除術施
行。2016 年 3 月に前医にて右肺腺癌(ALK 陽性)に対し、右肺
下葉切除術を施行した。同年 4 月食欲不振を主訴に当院消化器
内科を受診した。上部消化管内視鏡検査にて残胃噴門部に 2cm
大の潰瘍を伴った 2 型病変を認め、生検にて Group5(por1)の結
果であった。CT 検査では遠隔転移の所見は認めなかった。同年
5 月に手術目的に当科紹介。6 月に残胃全摘出術、胆嚢摘出術
を施行した。術後経過は良好で、術後 15 日目に退院となった。
病理組織学的検査では、免疫染色の結果から肺癌胃転移および
胆嚢転移と診断された。原発性肺腺癌の胃・胆嚢転移は稀であ
り、文献的考察を加えて報告する。
- 31 -
○上田 宣仁,水上
近藤 啓史
泰,有倉
潤,安達 大史
症例は 59 歳,女性.子宮頸癌の術後経過観察中,CT で右肺下
葉にすりガラス様陰影を認め,徐々に増大してきたため当院の
呼吸器内科に紹介となった.気管支鏡下の生検を施行されたが
悪性所見は確認できず,診断・治療目的の手術のために当科紹
介となった.すりガラス様陰影の近傍に 2 年半の経過で増大も
縮小もない小結節を認めていた.すりガラス様陰影の部位を切
除して術中迅速診断に提出したところ,腺癌の診断であったた
め,右下葉切除 ND2a-1 を施行した.近傍に認めていた小結節
は定型カルチノイドの診断であった.切除された肺癌と同一肺
葉内にカルチノイドを認める症例は比較的まれであるので,若
干の文献的考察を加えて報告する.
一 般 演 題
45 感染性肺嚢胞に対する胸腔鏡下嚢胞内ドレナージ
の経験
46 癌性胸膜炎に対する胸腔ドレナージを契機として
発症した気胸の一例
製鉄記念室蘭病院 呼吸器外科
北見赤十字病院
○長谷龍之介,千葉 龍一,大高 和人
○青柳 美穂,新関 浩人,羽田 佑真,猪子 和穂
新田 健雄,宮谷内健吾,松永 明宏,山口 晃司
池田 淳一
今回我々は感染性肺嚢胞に対して胸腔鏡下嚢胞内ドレナージ
を行った症例を経験した。症例は 50 代男性、COPD と肺嚢胞に
て近医通院中であった。発熱と右胸部痛を認め近医受診し胸部
単純写真で右肺の嚢胞内に液体の貯留を認め、当院呼吸器内科
紹介となった。感染性肺嚢胞の診断で抗生剤の投与と経皮的嚢
胞内ドレーン挿入が行われたが十分にドレナージされず、高熱
が継続していたため当科紹介となった。CT では両肺に著明な気
腫化と右肺尖の嚢胞内に液体貯留を認め、その周囲に肺炎像も
伴っていた。感染から約 1 か月経過し胸腔内の癒着が強固であ
ると判断し嚢胞切除ではなく胸腔鏡下嚢胞内ドレナージを行
う方針とした。胸腔鏡下で嚢胞内を観察し、膿汁を吸引の後、
膿壁を可及的に取り除き十分に洗浄した。術後すぐに解熱し再
感染は認めず第 19 病日に退院となった。手術 2 か月後の CT で
は感染した肺嚢胞の縮小を認め、現在まで再燃なく経過観察中
である。
【はじめに】
大量胸水による長期間の肺虚脱症例では胸腔ドレナージ施行
により再膨張時の胸膜裂傷を認めることがある.今回,多発性
穿孔部を伴った気胸症例を経験した.
【症例】
症例は 70 歳男性.5 ヶ月前より咳嗽,1 ヶ月前より胸痛・咳・痰
が出現し,2 週間前に前医受診した.X-p より大量胸水を認め悪
性中皮腫の可能性を考え,当院内科に紹介.ドレナージ施行後,
気胸を発症.気瘻が続いたため手術施行.術中シーリングテス
トにて多数箇所の胸膜損傷を認めた.リーク部はタコシール+
ネオベルシート+自己血で補強した.術後 3 日目にドレーン抜
去,5 日目に再燃.14 日目に再手術し,肺尖にリークを 1 か所認
め,タコシールを貼付し修復.再手術後2 日目にドレーン抜去.4
日目に退院となった.
【考察】
今回の気胸はドレナージ後の肺の再膨張時に臓側胸膜が多発
的に裂けたものと考えた.癌性胸膜炎に伴う気胸でも積極的に
手術を行い,次の治療に備える意義はあると考える.
47 肺非定型抗酸菌症の治療中に肺アスペルギローマ
を併発し手術を行った一例
1)
48 縦隔異所性副甲状腺腺腫の 1 例
王子総合病院 外科・呼吸器外科
2)
手稲渓仁会病院外科 ,苫小牧王子総合病院外科 ,北海道医療
センター呼吸器外科 3)
○三輪
中村
高田
今村
伊橋
渡辺
○野村 俊介,渡邊 幹夫,真木 健裕,鯉沼 潤吉
松井 あや,狭間 一明,岩井 和浩
晃士 1),松波
己 1),樫村 暢一 1),成田 吉明 1)
文隆 1),安保 義恭 1),加藤 弘明 1),木ノ下義宏 1)
実 1),田本 英司 1),阿部
大 1),田畑佑希子 1)
1)
1)
清隆 ,寺村 紘一 ,武内慎太郎 1),水沼 謙一 1)
卓文 1),横山新一郎 1),篠原 良仁 1),西
智史 1)
2)
3)
幹夫 , 大坂 喜彦
症例は 66 歳、男性。2013 年 11 月より非定型抗酸菌症にて当院
呼吸器科で通院治療を受けていたが自己中断。2014 年 5 月、右
肺 上 葉 に 空 洞 性 病 変 を 指 摘 、 非 定 型 抗 酸 菌 症 ( M.
intracellulare)の悪化と二次性の肺炎を合併し治療を再開さ
れた。2015 年 4 月、右肺上葉の空洞性病変に菌球形成を認め、
喀痰細胞診で Aspergillus fumigatus が同定された。抗真菌薬
による治療に抵抗性で全身状態も悪化、肺アスペルギルス症に
対する外科的治療が必要と判断し、2015 年 7 月、空洞開窓術を
施行した。術後、全身状態の改善がみられ、9 か月後の 2016
年 4 月、胸郭形成および広背筋弁充填術を行った。術後経過は
良好で非定型抗酸菌症に対する治療を継続しながら経過観察
中である。
肺非定型抗酸菌症の空洞形成にアスペルギローマが形成され、
空洞開窓に続き胸郭形成を行い、治癒し得た症例を経験したの
で報告する。
- 32 -
【はじめに】縦隔異所性副甲状腺腺腫は副甲状腺機能亢進症状
で発見される事が多い稀な疾患である。
【症例】44 歳、女性。
高血圧にて近医通院中、高 Ca 血症を指摘され当院循環器内科
紹介受診。血清 Ca 値および intact-PTH 値の上昇を認め、1 次
性の副甲状腺機能亢進症を疑われ耳鼻科紹介受診。胸部 CT で
前縦隔に 24mm 大の腫瘤を、99mTc-MIBI 副甲状腺シンチグラム
検査で RI 異常集積像を認め、縦隔異所性副甲状腺腫と診断さ
れ手術目的に当科紹介受診。胸腔鏡下縦隔腫瘍摘出術を施行し
た。分離肺換気、左側臥位、1window2port で手術を開始。腫瘍
は前縦隔上大静脈前方に存在し、小指頭大で周囲胸腺に埋没し
ており胸腺の一部と合併切除した。迅速病理診断結果は副甲状
腺腺種であった。術後経過は良好であり、術後 3 日目で血清 Ca
値および intact-PTH 値の速やかな低下を認めた。その後再燃
徴候無く、当科終診となった。
【結語】縦隔異所性副甲状腺腺
腫に対する手術例を経験したので報告する。
一 般 演 題
49 原発不明後腹膜腫瘍に対し開腹生検を行い確定診
断に至ったセミノーマの1例
50 血管外科と合同で切除し得た巨大後腹膜脂肪肉腫
の1例
帯広協会病院
旭川医科大学 外科学講座消化器病態外科学分野 1),旭川医科
大学 外科学講座循環・呼吸・腫瘍病態外科学分野 2)
○高橋
橋本
徹,加藤 拓也,水上 達三,大畑多嘉宣
卓,阿部 厚憲
○森山 寛也 1),田中茉里子 1),萩原 正弘 1),今井 浩二 1)
菊池 信介 2),古屋 敦宏 2),松野 直徒 1),東
信良 2)
1)
古川 博之
(はじめに) 後腹膜腫瘍は生検以外で確定診断を得る事が難し
く, 組織型により治療方針は異なる. 今回, 原発不明後腹膜
腫瘍に対し開腹生検にてセミノーマと診断できた症例を経験
した. (症例)47 歳, 男性. 左側腹部痛を主訴に救急搬送され
受診. 腹部 CT にて膵下縁背側から造影効果のない 9cm の腫瘍
を認め大動脈は腫瘍を貫通, 下大静脈内には腫瘍栓も認めた.
上部内視鏡検査で十二指腸水平脚に潰瘍性病変を認め生検し
低分化型腺癌が疑われた. しかしながら免疫染色にて上皮性
マーカーは全て陰性, c-kit のみ陽性で検体不足から原発の診
断確定に至らなかった. 開腹腫瘍生検にて最終診断はセミノ
ーマとなった. 現在, 胚細胞腫瘍の国際的リスク分類に準じ
て化学療法施行中である.(考察)後腹膜原発セミノーマは全
セミノーマの 2%であり, 化学療法が治療の第1選択となる.
原発不明後腹膜腫瘍では診断, 治療方針決定のために開腹生
検が有用と考えられた.
症例は 68 歳、女性。増悪する腹部膨満感を主訴に前医を受診。
腹部 CT で巨大な後腹膜腫瘍を指摘され、生検にて脂肪肉腫の
診断となり当院紹介となった。精査にて腫瘍は、右腎臓、腹部
大動脈、膵頭部、十二指腸へ浸潤しており、血管外科と相談の
上、外科的切除の方針となった。術中所見で、腫瘍は腹部大動
脈、膵頭部・十二指腸に浸潤しており、腋窩-大腿動脈、大腿大腿動脈バイパスを行ったうえで、腹部大動脈、下大静脈を切
除し、後腹膜腫瘍切除、右腎切除、幽門輪温存膵頭十二指腸切
除を施行した。出血量 4811ml、手術時間 19 時間 22 分、摘出標
本は最大径 33cm で、重さは約 5kg であった。病理検査結果で
腫瘍は脱分化型脂肪肉腫で断端は marginal margin であった。
術後、下腿浮腫および胸腹水を生じたが、自然軽快し術後 38
日目に自宅退院となった。
術後 1 年 3 ヶ月無再発生存中である。
血管外科との合同手術にて切除し得た、大血管、周囲臓器に浸
潤する巨大後腹膜脂肪肉腫を経験したので文献的考察を加え
て検討する。
51 大網原発の高分化型脂肪肉腫の一例
52 結核性腸腰筋膿瘍に対して腹腔鏡下に診断・ドレナ
ージを施行した1例
JCHO 札幌北辰病院 外科 1),JCHO 札幌北辰病院 病理診断科 2)
国立病院機構 北海道医療センター 外科 1),国立病院機構 北
海道医療センター 呼吸器外科 2),北海道大学病院病理部 3)
○藤居 勇貴 1),蔵谷 勇樹 1),下國 達志 1),中川 隆公 1)
中西 勝也 2),佐々木文章 1)
【はじめに】脂肪肉腫は大腿、臀部、後腹膜に発生することが
多く、大網原発のものは極めて稀である。 【症例】83 歳男性。
来院 6 日前より発熱、腹部違和感を生じたため来院。造影 CT
検査にて、右腹側に脂肪濃度を呈する 10cm 大の腫瘤性病変、
および周囲脂肪濃度の上昇を認めた。大網原発脂肪肉腫や大網
捻転の可能性が考えられ、手術の方針となった。手術は大網腫
瘍摘出、腹壁・回盲部合併切除術を行った。術後は創離開を生
じたが保存的治療に改善した。病理所見は大網原発の高分化型
脂肪肉腫であった。 【考察】脂肪肉腫は高分化型、粘液型、
円形細胞型、多形型、脱分化型に分けられ、高分化型は比較的
予後が良いとされる。しかし、腹腔内発症の脂肪肉腫は、腫瘍
の完全切除が難しい、十分量の放射線照射ができないなどの理
由により、他部位発症のものより予後不良である。術後も慎重
な経過観察が必要であると考える。
- 33 -
○小塚 陽介 1),高橋 宏明 1),植村 一仁 1),三野 和宏 1)
太田 拓児 1),志智 俊介 1),大坂 喜彦 2),本間 直健 2)
畑中佳奈子 3)
【導入】 結核性腸腰筋膿瘍は非常に稀な疾患であり、多くは脊椎カリ
エスに続発して発症し、原発性の報告は少ない。今回我々は、腫瘍と鑑
別を要した原発性の結核性腸腰筋膿瘍に対して腹腔鏡下に診断・ドレナ
ージを施行した症例を経験したので報告する。
【症例】 症例は 74 歳女性、主訴は右腋窩腫瘤。2013 年より肺結核の
治療を行っており、外来で経過観察されていた。2015 年に右腋窩腫瘤を
自覚し当院受診、CT で右腋窩・大動脈周囲等のリンパ節腫大、脾臓内に
多数の低吸収域、右腸腰筋に 65×55mm の低吸収域を認めた。右腋窩腫
瘤に対しては生検を行い結核性リンパ節炎と診断された。右腸腰筋腫瘤
の精査目的に外科入院となった。右下腹部に圧痛はなく、採血では軽度
の炎症反応上昇を認めた。MRI では脊椎カリエスを疑う所見なし。
FDG-PET では頸部・腋窩など多数のリンパ節、脾臓、右腸腰筋に集積を
認めた。臨床経過と画像所見からは結核性腸腰筋膿瘍を第一に疑った
が、腫瘍性病変も否定できず手術方針とした。腹腔鏡で観察したところ、
右腸腰筋に卵形大の表面白色腫瘤を認め、穿刺を行うと白色粘稠の液体
が貯留していた。膿瘍壁の術中迅速病理診断では悪性所見を認めず腸腰
筋膿瘍と診断、膿瘍腔の開放・ドレナージを行った。膿瘍壁の病理組織
所見では乾酪壊死を伴う類上皮肉芽腫を認めた。膿瘍の抗酸菌塗抹結果
はガフキー0 号で、
一般細菌検査で結核菌は同定されなかったが、
Tb-PCR
は陽性であり、結核性腸腰筋膿瘍と診断した。その後経過は良好であり、
術後 16 日目に退院となった。
【結語】 原発性の結核性腸腰筋膿瘍に対して腹腔鏡下に診断・治療を
行い、良好な経過で退院した症例を経験したので、文献的考察を加えて
報告する。
一 般 演 題
53 当院における NPWT 症例の検討
54 腹膜透析の既往のない被嚢性腹膜硬化症の 1 例
JR 札幌病院
旭川厚生病院 外科
○太田 盛道,内山 素伸,田山 慶子,川崎 浩之
鶴間 哲弘,平田 公一
○近藤 享史,柳田 尚之,合地美香子,大平 将史
山田 健司,舩越
徹,芝木泰一郎,池上
淳
稲垣 光裕,赤羽 弘充,中野 詩郎
NPWT は,1997 年に Morykwas, Argenta らによって提唱され
た治療法であり、感染した創傷や褥瘡に対して創部に持続陰圧
をかけることで、ドレナージと同時に肉芽形成を促す治療法で
ある。主に形成外科領域で普及していたが,2010 年より保険収
載され、消化器外科領域でも腹部感染創や移開創に対しての使
用例が報告されている。
当院で 2013 年 5 月から 2016 年 10 月までに消化器領域の術後
に NPWT を施行した 22 例の検討を行った。
症例は 53-101 歳(中央値 74 歳)、術後 NPWT 開始までの期間は
7-41 日(中央値 18 日)であり、NPWT 施行期間は 7-36 日(中央
値 21 日)であった。治癒法は遅延 1 次縫合が 7 例、2 次治癒が
15 例と 2 次治癒が多数であった。術後在院期間は 20-120 日(中
央値 46 日)と長期間にわたる症例が多い結果となった。これま
で施行した症例の経過や問題点について詳細を検討し、報告す
る。
症例は 50 代男性。主訴は嘔吐。来院 3 か月前に腸閉塞で保存
的加療された。来院 1 か月前に再度腸閉塞で保存的加療された
が、改善なく当科紹介となった。身体所見上、下腹部に腫瘤様
腸管を触知した。CT では小腸拡張は認めず、胃から十二指腸水
平脚の拡張を認めた。審査腹腔鏡施行したところ、小腸は白色
肥厚した被膜に被包化されていた。被嚢性腹膜硬化症を疑い、
開腹移行し、被膜の全切除と、胃瘻造設、イレウス管の挿入を
行った。病理検査では、被膜は層状線維増生と肥厚、炎症細胞
反応、反応性中皮増生、小血管増生を伴い、被嚢性腹膜硬化症
に矛盾しなかった。術後通過障害を呈したが、ステロイドパル
ス、ステロイドの維持投与で徐々に改善し、少量の経口摂取が
可能となった。被嚢性腹膜硬化症は、腹膜透析合併症として生
じるとの報告が多いが、今回我々は、腹膜透析の既往のない被
嚢性腹膜硬化症の 1 例を経験したので、若干の文献的考察を加
えて報告する。
55 腹腔鏡を併用して摘出した腹膜前腔異物の一例
56 輪ゴム緊縛で足趾壊死となった糖尿病合併 PAD 症
例に対する治療経験
日鋼記念病院
○吉田 祐一,旭
火華,奥村 一慶,喜納 政哉
高田 譲二,益子 博幸
医療法人元生会 森山病院 血管外科
症例は 50 歳,男性.2016 年 7 月草刈り作業中に,異物が飛散
して受傷.左側腹部に刺創を認めたが放置していた.8 月に近
医整形外科を受診した際,レントゲンにて左側腹部に金属片を
指摘され当科を受診した.来院時,左側腹部に 1cm 大の刺創を
認めたが,感染兆候はなく体表より左腸骨内側に異物を触知し
た.腹部 CT では異物は内腹斜筋から S 状結腸外側を通り,腸
骨筋に達していた.腹腔内への貫通の有無を評価するため,腹
腔鏡での観察を行う方針とし,9月に手術を施行した.腹腔内
を観察すると,S 状結腸外側に異物の先端を認め,結腸垂によ
り被覆されていた.腸管の損傷は認めなかった.左側腹部の刺
創を切開して異物を除去した.異物は 5cm 大で草刈機の一部と
推定された.術後経過は良好で,術後5日目に退院した.異物
の腹腔内への貫通の有無の評価が困難な場合に,腹腔鏡を併用
することで,不必要な開腹をすることなく安全に手術を施行で
きた.
症例は78歳、 男性。糖尿病のため近医で投薬を受けており、
糖尿病網膜症で視力低下、高血圧、腎機能障害を合併していた。
現病歴 特別な誘因なく第一足趾爪周囲炎により同部の排膿、
血液流出を認めていた。しかし、神経障害合併のため痛みは軽
度であった。創部浸出液を抑えるために自分で輪ゴムを用いて
被覆材の固定により足趾緊縛となった。これにより足趾壊死と
なっていることを家族が発見し、他院受診し、切断目的で当院
整形外科紹介となった。
現症 第一足趾爪は爪床から剥離しており、感染を伴ってい
た。また、第一足趾 DIP 関節より末梢側皮膚が全周性に壊死と
なっていた。
手術 血管造影にて足関節部に限局した下腿動脈狭窄病変が
存在した。可及的低侵襲治療による第一足趾切断回避を目的と
して自家静脈による short dual bypass と壊死部切除を施行し
た。
結果 MRSA 趾骨関節炎の合併も認めたが局所療法継続により
救趾が達成され歩行、QOL の改善を得た。
○稲葉 雅史
- 34 -
一 般 演 題
57 Budd Chiari 症候群による肝部下大静脈狭窄に対
する血管内治療の経験
58 エコーガイド下腋窩静脈穿刺法の定型化に向けた
取り組み
製鉄記念室蘭病院 心臓血管外科
愛育病院 1),帯広厚生病院 2)
○菊池 悠太,赤坂 伸之,大谷 則史
○中島誠一郎 1),鈴木
今回我々は Budd Chiari 症候群(BCS)による肝部下大静脈狭
窄が原因の下肢浮腫・倦怠感に対して肝部下大静脈にステント
留置を行い、症状軽減を得たので報告する。
<症例>
78 歳、女性。
<現病歴>
4,5 年前より体重増加、両下肢浮腫を自覚。最近になり症状増
悪を認めたため、当科受診、精査の方針となる。
静脈エコーで下大静脈の拡張所見を認め、CT・MRI では肝部下
大静脈に膜様低信号が認められた。BCS の疑いで静脈造影、高
度狭窄が認められた場合はステント留置を行う方針となる。
<静脈造影、ステント留置>
両大腿静脈からアプローチし、血管内超音波プローブを挿入
し、約 6cm に及ぶ肝部下大静脈の偏平化を認め、ステント留置
を実施した。
<経過>
ステント留置 1 週間後の診察では体重減少、両下肢浮腫の改善
を認めた。
<結語>
慢性型の肝部下大静脈閉塞が 90%弱を占める BCS において低侵
襲であるステント留置は血流、症状改善を望め、大変有効な治
療であると考え、今回報告とする。
【背景】リアルタイムエコーガイド下腋窩静脈穿刺法(以下腋
窩穿刺法)は,気胸,動脈穿刺,ピンチオフの合併症を生じに
くいという報告が,近年散見される.
【目的】確実かつ安全な
腋窩穿刺法を検討する.
【対象と方法】2016 年 7 月から 9 月に
腋窩穿刺法を施行した 50 例.検討項目として,挿入時の合併
症,プローブを当ててから静脈にガイドワイヤーを挿入し終え
るまでの時間(以下アプローチ時間)の測定を行い,以下の手
順を遵守した.
【穿刺法手順】①プレスキャン,体位確保の実
践とマーキング,②肋骨・肋間・腋窩動静脈の明確な同定,③
長軸方向での腋窩静脈描出,④穿刺針先端が血管腔内に平行に
なる穿刺角度の設定,⑤針先端と目標血管の確実な描出.
【結
果】全症例において気胸・血胸,動脈穿刺等の合併症なく完遂
し得た.
またアプローチ時間の中央値は 5 分 17 秒であった.
【ま
とめ】腋窩穿刺法は,上記の手順を遵守することで,確実かつ
安全に施行し得る.
59 橈骨皮静脈カットダウン法による安全・簡単な中心
静脈ポート留置術
60 一次性大動脈十二指腸瘻に対し
EVAR(Endovascular Aortic Repair:腹部大動脈瘤
ステントグラフト内挿術)施行後に十二指腸瘻閉鎖
術を施行した一例
札幌道都病院 外科
○西森 英史,三浦 秀元,平間 知美,鬼原
史
八十島孝博,岡田 邦明,矢嶋 知己,秦
史壯
温 1),松本
譲 2)
手稲渓仁会病院 外科 1),手稲渓仁会病院 心臓血管外科 2)
【はじめに】中心静脈ポートの最も一般的な留置法は、右鎖骨
下静脈穿刺による前胸部留置であるが、超音波ガイド下穿刺の
普及により合併症発生率は減少したものの気胸や動脈穿刺の
可能性はゼロではない。またピンチオフによるカテーテル閉塞
や断裂等の重篤な合併症も報告されている。これらの合併症を
ゼロとすべく当院で施行しているカットダウン法の臨床成績
を報告する。
【結果】対象は 2016 年 6 月まで演者一人で施行し
た 623 症例のうち、橈骨皮静脈欠損例 37 例を除いた 586 症例、
計 598 回。成功率は 90.1%(539/598 回)であり、不成功例は
従来法(鎖骨下あるいは内頚静脈穿刺)に変更し全例留置可能
であった。手術時間は平均 16.6 分。留置に伴う合併症を 0.84%
(5/598 例)に認めた(皮下血腫:3 例、出血:1 例、位置異常:
1 例)
。気胸、動脈穿刺、ピンチオフは 1 例も経験していない。
【まとめ】本法は安全かつ短時間で施行可能であり、ポート留
置の第一選択と考える。
- 35 -
○西
智史 1),寺村
篠原 良仁 1),伊橋
武内慎太郎 1),今村
田本 英司 1),安保
丸山 隆史 2),氏平
紘一 1),関谷
翔 1),谷口 大介 1)
1)
卓文 ,横山新一郎 1),水沼 健一 1)
清隆 1),渡辺 祐一 1),高田
実 1)
1)
1)
義恭 ,中村 文隆 ,樫村 暢一 1)
功祐 2),栗本 義彦 2)
症例は 73 歳男性.自宅で吐血をして倒れているところを発見
されて当院救急搬送.病院到着時 JCS-300 でショックバイタル
であった.緊急上部内視鏡検査で十二指腸水平脚に拍動性の出
血を認めたが止血困難であった.腹部 CT を施行したところ腹
部大動脈瘤を認め、大動脈瘤十二指腸瘻と診断した.同日心臓
血管外科で EVAR を施行,腎動脈直下から両側総腸骨動脈まで
ステントグラフトを留置した.ICU で血行動態の安定を確認し
第 2 病日に開腹手術の方針とした.術中所見は,瘤壁を切開し
瘤内血栓を除去すると瘤内に 2mm 大の十二指腸瘻を認め、単純
縫合閉鎖した.瘤内に大網を充填し手術を終了した.術後経過
は良好で第 8 病日に一般病棟へ転棟し,術後 1 ヶ月の現在,抗
菌薬加療を継続している.一次性大動脈十二指腸瘻は稀な病態
である.今回,EVAR と待機的根治術で救命し得た症例を経験し
たので文献的考察を含めて報告する.(371)
一 般 演 題
61 腹腔鏡下幽門側胃切除後に良性胆管狭窄を生じた1
例
62 腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した小児胆嚢捻転症の1
例
北海道大学大学院医学研究科 消化器外科学分野 II
KKR 札幌医療センター
○鈴木 友啓,野路 武寛,齋藤 博紀,田中 公貴
中西 喜嗣,浅野 賢道,中村
透,土川 貴裕
岡村 圭祐,平野
聡
○大渕 佳祐,武田 圭佐,槙 龍之輔,村田 竜平
財津 雅昭,桑原 博昭,今
裕史,田村
元
小池 雅彦
症例は 62 歳の男性.胃癌に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術,
R-Y 再建を施行した.この際,十二指腸断端はモノフィラメン
ト縫合糸(プロリーン®)3 針を用いて漿膜筋層縫合を追加した.
術後 2 年目の CT 検査にて肝内胆管拡張と肝門部領域胆管の腫
瘍性病変を指摘された.胆道造影にて三管合流部から肝門側に
胆管陰影欠損を認め,同部位からの生検ではわずかな異型細胞
塊を認め,腺癌も否定できない像を呈していた.このため遠位
胆管癌疑いと診断し,膵頭十二指腸切除,肝門部胆管切除を施
行した.切除標本では三管合流部から肝門側の胆管に狭窄像を
認め,同部位でプロリーン®が 1 本,胆管内腔に向かい 1 ㎝程
突出している所見を認めた.病理組織検査では左肝管に上皮内
癌を認めたが,狭窄部では線維性壁肥厚と炎症細胞浸潤を認め
るのみで,悪性所見を認めなかった.本例は胃切除の際の十二
指腸断端縫合糸が胆管に貫通したことにより良性胆管狭窄を
来したと推察された.
【緒言】小児の胆嚢捻転症は極めて稀だが,急性腹症の鑑別と
して重要である.
【症例】生来健康な 11 歳女児.前日からの発
熱,右季肋部痛,胆汁様嘔吐を主訴に,当院小児科受診した.
右季肋部に圧痛を伴う 3cm 大の腫瘤を触知し,血液検査初見で
WBC の増加を認め,急性腸炎の診断で入院した.入院翌日も腹
痛増強し,CT 及び MRCP で胆嚢腫大並びに胆嚢管の途絶を認め,
胆石は描出されなかった.急性胆嚢炎の疑いで当科紹介とな
り,同日緊急で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術中所見で胆
嚢全体が黒く変色し,肝床部と胆嚢管のみが付着して(GrossⅡ
型),胆嚢管が反時計方向に 360°回転しており(完全型;
>180°)
,胆嚢捻転症と診断した.術後経過は良好で術後 4 日
目に退院した.
【まとめ】小児における無石性胆嚢炎を疑った
場合,鑑別として本疾患を念頭に置く必要がある.
63 腹腔鏡下胆嚢摘出術における開腹移行症例の検討
64 急性胆嚢炎を合併した胆嚢異所性膵の1例
函館協会病院 外科
旭川医科大学 外科学講座消化器病態外科学分野 1),旭川医科
大学病院 病理部 2)
○村上 武志,向谷 充宏,澤田
健,久木田和晴
○山本 寛大 1),長谷川公治 1),庄中 達也 1),大谷 将秀 1)
大原みずほ 1),谷
誓良 1),宮本 正之 1),浅井 慶子 1)
1)
今井 浩二 ,古川 博之 1),武井 英博 2),三代川斉之 2)
腹腔鏡下胆嚢摘出術は良性胆嚢疾患における標準術式とされ、
急性胆嚢炎症例においても早期の腹腔鏡手術が推奨されてい
る。当科でも開腹既往、高度炎症例を含め、腹腔鏡手術を第 1
選択としている。困難症例においては、合併症を防ぐためにも
開腹移行への判断は重要であり、術前に開腹移行への予測因子
を把握しておくことが、術式選択、開腹移行を決断するうえで
必要であると考えられる。
2007 年1 月から2016 年10 月の期間で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施
行した 214 例を対象に、腹腔鏡下完遂群 201 例と開腹移行群 13
例に関する臨床経過の比較および、開腹移行の術前予測因子に
関して検討したので報告する。
症例は 65 歳男性。悪心、嘔吐、腹痛を主訴に近医を受診し、
急性胆嚢炎の診断で入院となった。絶食、抗菌薬投与等による
保存的治療を8日間施行したが軽快しないため当院へ転院とな
り、経皮経肝胆囊ドレナージを施行し胆嚢炎は軽快した。その
後の精査で胆嚢内および総胆管に結石を認め、内視鏡的乳頭括
約筋切開、総胆管切石術を施行した後、待機的に腹腔鏡下胆嚢
摘出術を施行した。術中所見では胆嚢周囲の炎症が高度で周囲
組織との癒着を認めたが、術後経過は問題なく第 4 病日に退院
となった。病理組織学的診断は慢性出血性胆嚢炎であったが、
漿膜下層内に 6mm 大の白色結節があり、病理組織学的に膵組織
腺房と導管を認め、胆嚢異所性膵と診断された。異所性膵の中
で胆嚢に発生するものは稀であり、文献的には約 1.3%と報告
されている。今回我々は胆嚢異所性膵を経験したので文献的考
案も含め報告する。
- 36 -
65 門脈合併切除を伴う膵全摘術により切除しえた巨
大膵神経内分泌癌(Neuroendocrine carcinoma:
NEC)の 1 例
66 局所進行から当初切除不能膵癌と診断されたが、根
治切除に至った conversion 症例の特徴
苫小牧市立病院 外科・内視鏡外科 1),北海道大学 大学院医
学研究科消化器外科学分野 I2)
○山口 洋志,木村 康利,今村 将史,永山
河野
剛,水口
徹,竹政伊知朗
札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座
○小林 展大 1),藏谷 大輔 1),花本 尊之 1),神山 俊哉 2)
広瀬 邦弘 1),佐治
裕 1),松岡 伸一 1)
【症例】59 歳、男性。2 年前から糖尿病で内服加療中。検診で
膵腫瘍を指摘され当院受診。CT で 15cm×8cm 大の腫瘍がほぼ膵
全体を占拠しており、腫瘍内部は縞状に高吸収域と低吸収域が
混在していた。EUS-FNA で膵 NEC と診断。膵全摘術+門脈合併
切除を施行した。手術時間は 8 時間 02 分、出血量 3,272ml。切
除標本の病理組織検査は膵 NEC(large cell type)、T3N0M0
pStage III の診断で、断端陰性であった。補助化学療法として
CPT11+CDDP 療法を施行中であり、術後 3 か月時点で無再発生
存中である。
【考察】膵神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine tumor:
NET)のうち、核分裂像>20/10HPF または Ki67 指数>20%のものが
NEC に分類される。NEC は NET と比較して極めて予後が不良だ
が、外科的切除による長期生存例の報告が散見される。切除可
能であれば手術を含めた集学的治療が考慮される。今回、膵全
摘術により切除しえた膵 NEC の 1 例を経験したので文献的考察
を加えて報告する。
67 下大静脈へのステントグラフト留置と緊急膵頭十
二指腸切除により救命し得た腹部刺傷の一例
市立函館病院 消化器外科1),市立函館病院 乳腺外科2),市立函
館病院 院長 3)
○植木 伸也 1),中西 一彰 1),砂原 正男 1),加藤 絋一 1)
長瀬 勇人 1),佐藤 利行 1),笠島 浩行 1),久留島徹大 1)
鈴木 伸作 2),木村
純 3)
症例は 48 歳男性。うつ病で前医通院中、包丁で自らの腹部を
刺し救急搬送された。血圧 74/49 mmHg、腹部は緊満しており、
右上腹部に約 5 ㎝の刺創を認めた。腹部造影 CT で腹腔内及び
後腹膜腔に多量の血腫、膵頭部中央の損傷と下大静脈からの造
影剤の漏出を認めた。救急科で大動脈閉塞バルーンカテーテル
による遮断と輸血が行われ、心臓血管外科により透視下で下大
静脈損傷部にステントグラフトが挿入された後、当科で緊急亜
全胃温存膵頭十二指腸切除を施行した。手術時間は 6 時間 59
分、出血量は腹腔内貯留分を含めて 1000 ml であった。術後軽
度の膵液漏を認めたが、15POD で前医に転院し、精神科ケアと
同時に膵空腸吻合部ドレーンの管理の後、退院となった。その
後ステントトラブル等なく通院中である。このような複合的か
つ重度な損傷に対しては各科の連携が重要であるのはもちろ
んのこと、全体のダメージを許容範囲内に収める工夫が必要で
あると考えられる。
- 37 -
稔
目的:局所進行切除不能膵癌に対する集学的治療の中で、
conversion 手術(CS)の意義は確立しておらず、当科で経験した
CS 例について検討した。
対象と方法:当院における膵癌データベースに、2016 年 8 月ま
でに登録された 540 例を後方視的に検索し、遠隔転移を伴わな
い局所進行切除不能膵癌(UR-LA)症例を抽出した。
結果:UR-LA 膵癌として 100 例が抽出された。CS は 3 次治療以
降に 12 例に行われていた。CS12 例に関して治療開始から手術
までの期間は平均 443.9 日で、全例術前に遠隔転移を認めなか
った。術式は PDs/DPs/TP が 5/6/1 例で、門脈あるいは動脈の
合併切除が計 8 例に施行され、全例 R0 切除が達成された。治
療開始からの OS は CS 例が MST975.5 日、非手術症例が MST467
日と CS 例が有意に良好であった。
結語:UR-LA 膵癌の中には、CS を含む集学的治療により良好な
予後を示す症例が含まれる可能性が示唆された。
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