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第 2 章 キトサン系ゲルフィルムの作成およびその膨潤特性

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第 2 章 キトサン系ゲルフィルムの作成およびその膨潤特性
第2章
キトサン系ゲルフィルムの作成およびその膨潤特性
2.1 緒言
第 1 章で述べたように,ゲルはゲル内に微小環境という場を構築し,常に外
部の環境と溶媒や溶質の出入りが可能である 5).また温度,pH,イオン強度な
どの刺激で伸縮応答する 30)ため,放出制御型 DDS(ドラッグデリバリーシステ
ム)に向けた刺激応答性ゲルの開発が期待されている.しかしながら,従来の
温度応答性ゲルは生体適合性がないばかりか,その高分子の残存する単量体や
重合開始剤が毒性を持つため安全性に問題があった 32).
キトサン(Fig.2.1(a))は生分解性,生体適合性を有する天然の多糖類で医用
への応用が期待されている 19,29).PAOMA(ポリアルキレンオキシドマレイン酸
共重合体,Fig.2.1(b))は生体適合性を持った温度応答性高分子で,さらに分子
内の EO(エチレンオキシド)部やマレイル基に基づく親水性雰囲気が,生理活
性を持つタンパク質や酵素あるいは抗生物質などに温和な雰囲気を与えること
が可能である.pH 6.5 以下の水溶液中では,キトサンのアミノ基はプロトン化
して NH3+イオンとなり,一方,PAOMA 分子中のカルボキシル基は一部電離し
て COO-イオンを生成する.したがって,キトサンと PAOMA を弱酸性水溶液中
で混合することにより高分子電解質複合体(polyelectrolyte complex, PEC)が形
成されると考えられる(Fig.2.2).
拡散を主とした放出制御型 DDS の場合,薬物はゲル内の溶液中を拡散する.
薬物はゲルの網目間を通って拡散するため,網目間距離(≈膨潤度)や架橋度を
変化させることで,薬物放出速度を制御することが可能となる.
本章ではキトサンおよび PAOMA から PEC ゲルフィルムを作成し,フィルム
の作成条件を検討するとともに,フィルムの周辺環境を変化させた時の膨潤度
測定およびフィルム表面形態の観察を行なう.
2.2 実験方法
2.2.1 実験材料
キトサンは,(株)共和テクノスから提供を受けたフローナック H(分子量:
約 100 万,脱アセチル化度:91.5%)を使用した.PAOMA は,日本油脂(株)
から提供を受けた.それらの構造を Fig.2.1 に示す.その他の試薬は和光純薬工
12
業(株)より購入した特級試薬を使用した.
2.2.2 試料の調製
2 wt%キトサン水溶液の調製
キトサン(1 g)に 36 wt%酢酸水溶液(49 g)を加えて,2 日間攪拌し,均一
に溶解させた.
PAOMA 水溶液の調製
PAOMA(30 g)を蒸留水(70 g)に溶解し,無水マレイン酸を開環させるた
めに 3 日間攪拌した.その後,分画分子量(Molecular Weight Cut Off, MWCO)
3500 の透析膜(SPECTRUMLABS. COM)を用いて,2 °C の蒸留水(2 L)に浸
し,24 時間おきに蒸留水を取り替え,4 日間透析を行なった.精製した PAOMA
水溶液の濃度は,全有機炭素計 TOC-500((株)島津製作所)によって測定した.
リン酸および酢酸緩衝液の調製
リン酸およびリン酸二水素ナトリウムから 0.01 mol/L 緩衝液(pH 2.2)を調製
した.酢酸および酢酸ナトリウムを所定量混合し,0.01 mol/L 緩衝液(pH 3.8-5.5)
を調製した.リン酸二水素ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムを所定量
混合し, 0.01 mol/L 緩衝液(pH 5.7-7.5)を調製した.
2.2.3 PEC フィルムの作成
2 wt%キトサン水溶液と PAOMA 水溶液とを割合を変化させて 3 日間混合した.
その混合溶液をデシケータの中に入れ減圧することで気泡を除去した.この混
合溶液をポリスチレン製シャーレ(135×95 mm)に流し込み,50 °C のオーブン
で 12 時間乾燥した(溶媒キャスティング/乾燥法).必要に応じて 80 °C,150 °C
で更に加熱した.得られたフィルムはパンチ(直径 1 mm)でくり抜き,密封容
器に入れ冷蔵庫内で保管した.作成したフィルムを Table 2.1 にまとめる.
2.2.4 膨潤度測定
膨潤度測定
フィルムの水との親和性を調べるために,25 °C の条件下,フィルム(F2)を
0.01 mol/L 酢酸緩衝液(pH 3.8,50 mL),または 0.01 mol/L リン酸緩衝液(pH 6.2,
50 mL)に浸漬し,質量測定から膨潤度を測定した.膨潤したフィルムの質量は,
緩衝液から取り出した後,フィルム表面の溶液をろ紙で取り除き,手早く電子
天秤にて測定した.なお,膨潤度とは乾燥フィルム質量に対する吸収した溶液
の質量と定義し,次式で表す.
13
DS=(Wf,et−Wf,0)/Wf,0
(2.1)
DS:膨潤度[-],Wf,et:平衡時の膨潤フィルム質量[g],Wf,0:乾燥フィルム質量[g]
Table 2.1 Prepared PEC films
No.
chitosan
PAOMA
C/P
Heat processing
F1
FLONAC H
AEM0530
0.5
50 °C,12 H
F2
F3
F4
F5
1
1
1
1
50 °C,12 H
80 °C,1 H
80 °C,24 H
150 °C,1.5 H
F6
2
50 °C,12 H
F7
AGM0530
1
50 °C,12 H
F8
AKM0530
1
50 °C,12 H
C/P means chitosan/PAOMA molar ratio.
膨潤度の経時変化
フィルム(F2)を 25 °C の条件下,0.01 mol/L 酢酸緩衝液(pH 3.8)または 0.01
mol/L リン酸緩衝液(pH 6.2)中に浸漬し,その膨潤度の経時変化を測定した.
緩衝液濃度の影響
フィルム(F2)を 25 °C の条件下,0.01 mol/L, 0.1 mol/L, 1 mol/L リン酸緩衝液
(pH 7.4)に浸漬し,12 時間後,膨潤度を測定した.
pH の影響
フィルム(F2, F7, F8)を 37 °C の条件下,pH 2.2-7.5 の 0.01 mol/L 酢酸緩衝液
または 0.01 mol/L リン酸緩衝液に浸漬し,12 時間後,膨潤度を測定した.実験
は複数回行なった.
温度の影響
pH 3.8 の酢酸緩衝液の温度を 2-60 °C と変化させて,フィルム(F2, F7, F8)を
浸漬し,12 時間後,膨潤度を測定した.実験は複数回行なった.
PEC フィルム後処理の影響
成型後のフィルムを加熱処理した場合について,膨潤度を測定した.フィル
ム(F2-F5)
を 37 °C の条件下,pH 1.2-7.5 の 0.01 mol/L 酢酸緩衝液または 0.01 mol/L
14
リン酸緩衝液に浸漬し,12 時間後膨潤度を測定した.また,0.01 mol/L 酢酸緩
衝液(pH 3.8)の温度を 2-60 °C と変化させて,フィルム(F2-F4)を浸漬し,12
時間後,膨潤度を測定した.
キトサン/PAOMA 混合比の影響
キトサンと PAOMA の混合比を変化させたフィルムを作成し,その膨潤度を
調べた.フィルム(F1, F2, F6)を 37 °C の条件下,pH 2.2-7.5 の 0.01 mol/L 酢酸
緩衝液または 0.01 mol/L リン酸緩衝液に浸漬し,12 時間後,膨潤度を測定した.
また,pH 3.8 の酢酸緩衝液の温度を 2-60 °C と変化させて,フィルム(F1, F2, F6)
を浸漬し,12 時間後,膨潤度を測定した.
pH,温度繰り返し応答性
フィルム(F2)を 37 °C の条件下,0.01 mol/L リン酸緩衝液(pH 6.2),0.01 mol/L
酢酸緩衝液(pH 3.8)の中へ交互に 12 時間浸漬し,膨潤度を測定した.また,
フィルム(F2)を 50 °C と 25 °C の pH 6.2 の酢酸緩衝液中へ交互に 12 時間浸漬
し,膨潤度を測定した.
2.2.5 熱重量/示差熱分析(TG-DTA)測定
Thermo plus((株)リガク)を用いて,キトサンフィルムと PEC フィルム(F2)
の示差熱および重量変化を測定した.測定条件は以下の通りである.
バランスガス:空気
昇温速度:5 K/min
2.2.6 SEM(Scanning Electron Microscope)による表面観察
フィルム(F2,F8)を 25 °C および 50 °C,pH 3.8 および pH 6.2 の 0.01 mol/L
緩衝液中に浸漬し,24 時間静置した.そのフィルムを液体窒素内で急速冷却後,
FDU-2000(東京理科器械(株)
)を用いて 3 日間,凍結乾燥を行なった.乾燥フ
ィルムを E-1030 イオンスパッター装置((株)日立ハイテク)を用いて,金属
コーティングした.
放電電流:15 mA
コーティング時間:120 sec
コーティング剤:Pt/Pd
バランスガス:Ar
コーティングしたフィルムの表面形態は,走査型電子顕微鏡 JSM-5310LV(日本
電子(株))を用いて,加速電圧 15 kV で観察した.
15
2.3 実験結果および考察
2.3.1 膨潤度
膨潤度の経時変化
50 °C のオーブンで 12 時間乾燥することで,フィルムが得られた.フィルム
(F2)を 25 °C の条件下で pH 3.8,pH 6.2 の緩衝液に浸漬した時の膨潤度の経時
変化を Fig.2.3 に示す.この図から,溶液に浸した直後に急激に緩衝液を吸収し,
1 時間以内にほぼ平衡に達することがわかった.
以上の結果から,以後の実験では溶液に浸してから 12 時間後に膨潤度を測定
した.
緩衝液濃度の影響
濃度の異なる緩衝液中に 12 時間浸漬した後の膨潤度を Table 2.2 に示す.この
結果から,緩衝液濃度(イオン強度)が高くなると膨潤度が減少することがわ
かった.この現象は一般的に知られており,次のように説明される 68)69).緩衝
液が低濃度の時はゲル内の高分子鎖の電荷が外部の塩濃度よりも高くなる.す
なわち,ゲルはイオンによる膨潤圧によって膨潤する.一方,外部塩濃度が増
加すると,ゲル内外のイオン濃度差が減少し,ゲル周辺の可動イオン濃度が等
しくなるまでゲルは収縮する.
Table 2.2 Swelling degree (Ds) in pH 6.2 media with different ionic strength
Ds
0.01 mol/L
0.1 mol/L
1.0 mol/L
3.69±0.24
3.23±024
2.31±0.15
pH の影響
フィルム(F2, F7, F8)を 37 °C の条件下で,pH の異なる緩衝液に浸漬した時
の膨潤度を Fig.2.4(a)に示す.いずれのフィルムも pH 2.2 までフィルムとしての
構造を保つことがわかった.キトサンは酸性溶液に溶解するため,通常キトサ
ンのみからなるフィルムは酸性条件下で溶解する.本実験で pH 2.2 まで構造を
維持できた理由は,アニオン性高分子である PAOMA の添加により分子鎖同士
の絡まり合い,静電的な架橋を生じ,安定なゲルとなったためと考えられる
(Fig.2.2).
また Fig.2.4(a)より,pH が低くなるほど膨潤度が高くなった.これは,キトサ
ンのアミノ基のプロトン化と PAOMA のカルボキシル基のプロトン化の影響と
考えられる.キトサンのアミノ基の pKa は約 6.5 であるため,これより低い pH
の場合,プロトン化し NH3+となる.このため,pH 6.5 以下では NH3+同士の反発
16
が強くなり,広がったコンフォメーションをとり膨潤度が増加すると考えられ
る.特に,pH 4.8 以下で急激に膨潤度が増加した.これは PAOMA のカルボキ
シル基の影響と考えられる.PAOMA のカルボキシル基は,pH 6.5 付近では COOイオンとして存在しているが,pH が低くなるほどプロトン化して COOH の形態
をとる割合が高くなり 39),pH 4.8 以下になると COO-から COOH と変化する.
そのため pH が 6.5 から 4.8 に下がるにつれ,キトサンの NH3+と PAOMA の COOとの静電的な結合が次第に弱くなる.さらに pH 4.8 以下では静電的な結合がな
くなるとともに NH3+イオン同士が反発するために,膨潤度が急激に増加したと
考えられる.一方,PAOMA の種類による差はほとんどなかった.これは pH を
変化させた場合の膨潤度は PAOMA のマレイル基に基づく静電的な結合に大き
く依存しており,アルキレンオキシド(AO)部の影響はほとんどないことを示
している.
温度の影響
フィルム(F2, F7, F8)を温度の異なる緩衝液(pH 3.8)に浸漬した時の膨潤度
を Fig.2.4(b)に示す.AO 部がすべて EO(エチレンオキシド)の AKM0530 から
なるフィルム(F8)の膨潤度は 5-60 °C の範囲でほとんど変化しなかった.一方,
AO 部に疎水的な PO(プロピレンオキシド)を含むフィルム(F7)は 45 °C 以上
で,PO が最も多いフィルム(F2)の膨潤度は 25 °C 以上で徐々に減少すること
がわかった.この膨潤収縮挙動は LCST(下限臨界溶液温度)の影響と考えられ,
次のように説明される.LCST 以下の温度では,キトサンと PAOMA が均一な
PEC を形成し,その網目構造内に水分子が入り込むことで膨潤する.一方,LCST
近辺に昇温すると,PAOMA に水和した水の熱運動が激しくなり,順次はずれて
いく(Fig.2.5).このため,PAOMA の疎水性が増し,疎水的な相互作用により
PAOMA 同士が集まるので膨潤度が低下する.この結果より,ゲルの温度に対す
る膨潤収縮挙動は,AO 部の組成ひいては LCST に大きく影響を受けることがわ
かった.
膨潤度が徐々に減少する理由は,PAOMA の分子量分布とキトサン添加の影響
と考えられる.相分離は高分子の分子量の影響を大きく受け 70)71),分子量分布
が狭いと相分離を起こす温度範囲が狭いこと 3)が知られている.本実験では,透
析により低分子量の PAOMA を除外しているものの PAOMA は分子量分布を有
しており,そのため感度が悪くなった.さらに,温度依存性は PAOMA が脱水
和し PAOMA 同士の疎水的相互作用により生じると考えられるが,キトサンを
加えることにより PAOMA 同士が相互作用しにくくなったため相転移が緩慢化
したと考えられる.
17
フィルム後処理の影響
加熱処理を施したフィルム(F2-F5)の pH,温度を変化させた時の膨潤挙動を
Fig.2.6(a), (b)に示す.Fig.2.6(a),(b)より,すべてのフィルムが上記した pH,温
度依存性を示した.また加熱温度,加熱時間の増加にしたがって膨潤度が減少
することがわかった.この理由として,フィルムの乾燥が進み水分が抜けるこ
とによりさらに安定な構造を取り 72),また加熱することにより NH3+と COO-の
静電的な結合からアミド結合(C=O)−NH が形成されるため 73)と考えられる.キ
トサンだけからなるフィルムと作成した PEC フィルム(F2)の 20-250 °C 間の
TG/DTA 測定の結果を Fig.2.7 に示す.Fig.2.7(a)の TG 結果からはいずれのフィ
ルムの場合も 20 °C 以降で徐々に水分が蒸発され重量が減少することが確認で
きた.また,キトサンだけからなるフィルムと比べ PEC フィルムの 150 °C 以降
の明らかな重量減少と Fig.2.7(b)の DTA の結果における 150-200 °C で発熱反応
から,PEC フィルム中のアミド結合の形成(T>150 °C 73))が確認された.これ
らの結果から,温度処理を施すことにより膨潤度を制御できることがわかった.
キトサン/PAOMA 混合比の影響
キトサンと PAOMA の混合比を変化させたフィルム(F1, F2, F6)の 37 °C の条
件下における pH 依存性を Fig.2.8(a)に,pH 3.8 における温度依存性を Fig.2.8(b)
に示す.Fig.2.8(a)(b)ともに,キトサンの割合が増えるほど,膨潤度が高くなっ
た.特に低 pH ではこの傾向が顕著であった.これは上記したように,キトサン
のアミノ基の影響を強く受けていると考えられる.つまり,キトサンの割合が
増えるにしたがってフィルム中のアミノ基の割合が増え,pH 6.5 以下では正電
荷を帯びたアミノ基同士の反発が増加するため膨潤度が高くなったと考えられ
る.この結果から,キトサンと PAOMA の混合比を変化させることで膨潤度を
制御できることが判明した.
繰り返し応答性
Fig.2.9(a)に,37 °C の条件下で,pH を繰り返し変化(pH 3.8-6.2)させた時の
フィルム(F2)の膨潤度を示す.この結果から pH を 9 回繰り返し変化させても
膨潤度を変化させることができ,pH 応答性を有していることが判明した.さら
に,pH を 9 回変化させた後も最初とほとんど同じ膨潤度を有することがわかっ
た.Fig.2.9(b)には,緩衝液(pH 3.8)の温度を繰り返し変化(50-25 °C)させた
時のフィルム(F2)の膨潤度を示す.この結果から,このフィルムは徐々に膨潤
変化が小さくなるものの温度応答性を有していることがわかった.
18
2.3.2 フィルム表面形態
フィルム(F2)の SEM 写真を Fig.2.10 に示す.Fig.2.10(a)および(b)から,pH
の上昇に伴いフィルム自身が収縮するため細孔が小さくなることを確認した.
Fig.10(a)および(c)から,温度が上昇するとより深い細孔ができることがわかった.
2.4 結言
本章では,キトサンと PAOMA から PEC ゲルフィルムを作成し,以下の結論
を得た.
キトサンと PAOMA からなるフィルムは,キトサンのアミノ基と PAOMA の
カルボキシル基との静電的な結合で架橋され,安定な構造を維持できることが
わかった.さらに,フィルムに加熱処理を施すことにより,アミド結合で架橋
された PEC ゲルフィルムが作成できた.膨潤度測定から,PEC ゲルフィルムは
乾燥重量の数から数十倍の溶液を吸収することが可能で,溶液浸漬後約 1 時間
で平衡に達することがわかった.
膨潤度に与える pH の影響から,4.8<pH<6.2 では,キトサンおよび PAOMA が
電離し静電的な結合が増すため PEC ゲルフィルムは収縮している.一方,pH<4.8
では PAOMA のカルボキシル基がプロトン化するため,キトサンのアミノ基の
反発によりフィルムは膨潤することがわかった.
膨潤度に与える温度の影響から,親水性の PAOMA からなるフィルムは温度
に対して膨潤度を変化させないが,疎水性の PAOMA からなるフィルムは高温
で収縮することがわかった.これは PAOMA の LCST に起因すると考えられ,
より疎水的な PAOMA からなるフィルムは低温で収縮することが判明した.さ
らに,これらの膨潤収縮挙動は周辺環境に応じて繰り返し変化可能なことがわ
かった.SEM による表面観察から,フィルムは数 µm 程度の細孔を有すること
がわかった.
以上,作成条件を変化させることにより所望の膨潤度を有する PEC ゲルフィ
ルムが作成でき,そのフィルムが pH,温度応答性を有していることを示した.
19
(a)
O
NH2
NH2
H
H
O
H
O
HO
HO
H
CH2OH
H
O
H
O
H
HO
CH2OH
H
CH2OH
H
H
HO
H
H
NH2
OH
n
(b)
H
C
H
C
H2
C
CH2
O C
O
EO i
C O
O
O
H
H
PO
EO= CH2 CH2 O
H
C
j
CH3
PO= CH2 CH O
CH3
m
n
i/(i+j)
M.W.
LCST74)
AEM0530
30
9
0.4
20,000
36 °C
AGM0530
30
10
0.6
20,000
53 °C
AKM0530
30
11
1.0
20,000
Over 70 °C
Fig.2.1(a) Chitosan structure. (b) PAOMA structure. M.W. means molecular weight.
20
(a) in weak acid solution (<pH 6.5)
chitosan
+
NH3
+
NH3
+
NH3
+
NH3
+
NH3
+
NH3
+
NH3
+
NH3
PAOMA
-
COOH COO
-
COOH COOH COOH COO
COOH COOH
+
NH3
+
NH3
(b) PEC
+
NH3
+
NH3
+
NH3
+
NH3
+
NH3
+
NH3
COOH COO COOH COOH COOH COO COOH COOH
Fig.2.2 (a) Speciations of amino group and carboxyl group in chitosan and PAOMA
copolymer, respectively, in week acid solution (<pH 6.5). (b) PEC prepared from
chitosan and PAOMA.
21
14
pH 3.8
pH 6.2
Swelling degree [-]
12
10
8
6
4
2
0
0
5
10
15
20
25
30
Time [h]
Fig.2.3 Time courses of swelling degree at 25 °C in different pH media.
22
(a)
(b)
12
20
23
Swelling Degree [-]
16
Swelling Degree [-]
AEM0530
AGM0530
AKM0530
18
14
12
10
8
6
4
10
8
6
4
AEM0530
AGM0530
AKM0530
2
2
0
0
1
2
3
4
5
6
7
0
8
10
20
30
40
50
60
70
Temperature [oC]
pH [-]
Fig.2.4 (a) pH- and (b) temperature-dependent swelling of PEC films prepared from different types of PAOMA.
23
High temperature
(over LCST)
Phase transition
Polymer chain
H2O
Low temperature
(under LCST)
Fig.2.5 Conformation image of hydrophobic polymer at different temperature.
24
(a)
(b)
12
20
F2
F3
F3
Swelling degree [-]
25
Swelling degree [-]
F2
F4
15
F5
10
5
10
F4
F5
8
6
4
2
0
0
0
1
2
3
4
5
6
7
0
8
10
20
30
40
Temperature [oC]
pH [-]
Fig.2.6 Effect of heat processing on (a) pH- and (b) temperature-dependent swelling of PEC films.
25
50
(a)
(b)
0.0
0
PEC film
Chitosan
-2
-0.2
DTA [µV]
TG [mg]
-4
-0.4
-0.6
-6
-8
-10
26
-0.8
-12
PEC film
Chitosan
-1.0
-14
0
50
100
150
200
250
0
Temperature [oC]
50
100
150
200
Temperature [oC]
Fig.2.7(a) TGA and (b) DTA analysis of PEC film and chitosan film.
26
250
25
35
(a)
Swelling degree [-]
27
Swelling degree [-]
(b)
C/P=2.0
C/P=1.0
C/P=0.5
30
C/P=2.0
C/P=1.0
C/P=0.5
25
20
15
10
20
15
10
5
5
0
0
1
2
3
4
5
6
7
0
8
10
20
30
40
50
60
Temperature [oC]
pH [-]
Fig.2.8 (a) pH- and (b) temperature-dependent swelling of PEC films different C/P. C/P means molar ratio of amino groups in chitosan to
carboxyl groups in PAOMA.
27
9
8
(b)
Swelling Degree [-]
Swelling degree [-]
(a)
6
4
2
8
7
6
5
28
4
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
9 10
Repeated Run Number
Repeated Run Number
pH 6.2
pH 3.8
50 °C
25 °C
Fig.2.9 (a) pH (pH 6.2 or pH 3.8)-responsive swelling of PEC film at 37 °C. (b) Temperature (50 °C or 25 °C)-responsive swelling of
PEC film at pH 3.8.
28
(a)
(b)
(c)
Fig.2.10 SEM micrographs of CS/AEM-0530 film in (a) pH 3.8 media at 25 °C
(b) pH 7.2 media at 25 °C (c) pH 3.8 media at 50 °C.
29
Fly UP