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ベーカー&マッケンジー グローバル・フォーラム2014 電力: アジアの経済成長と電力事業の発展 Tokyo 開催報告書 Global Forum 2014 2014年3月 | 東京 はじめに アジア・パシフィックは、成長著しい東南アジア諸国をはじめ、電力需要が 高く、その需要がさらに急増している国々を擁する世界で最も活力に富んだ 地域の一つである。新たな法規制の制定や法改正、代替エネルギーおよび再 生エネルギーに対する注目の高まりなどにより、この地域の電力業界は多様 性、複雑性を増しつつある。 このような状況はアジア・パシフィック地域の電力市場において、どういっ た意味を持つのであろうか。この市場においてディベロッパーやスポンサー が遭遇する障害やリスクには、どのようなものがあるのであろうか。また、 これらに適切に対応するには何が重要となるであろうか。 ベーカー&マッケンジー グローバル・フォーラム2014「電力:アジアの経 済成長と電力事業の発展」では、ベーカー&マッケンジーの世界各地の事務 所から弁護士および専門家が集結し、アジア・パシフィック地域の電力市場 における動向とプロジェクト・ファイナンスの傾向について論じた。以下に その内容をまとめる。 基調講演 電力市場の現状と展望: エコノミスト・コーポレート・ネットワークによる分析 基調講演では、アンドリュー・ステープルズ博士(エコノミスト・コーポ レート・ネットワーク・ジャパン、ディレクター)が、電力市場に影響を及ぼ す要素に関する各種統計をもとに、同市場の現状と今後の展望について概観 を論じた。 講演の概要は以下のとおり: • 経済活動の焦点が西から東へとシフトし始めていることによって、アジ アの発展を助長し、商品およびサービスのニーズを高め、それ以上に電 力の需要を急増させることにつながっている。 • 世界の電力消費量は増加し続けている。中間層の増加および都市化も消 費量増加の要因となっている。 • アジア・パシフィック地域におけるインフラおよびクリーン・エネル ギー分野への投資支出の年間成長率は、需要に応じて高くなってきている。 • 今後のエネルギー需要量の予測から、インフラ投資が多額になることは 必然的である。 • 環境汚染、エネルギー安全保障、気候変動、また、電力問題に起因する 軍事衝突等についての政治的意味合いは、特に検討すべき要素である。 1 地理的、環境的魅力に鑑 みると、アジアはビジネス チャンスに事欠かない。 アンドリュー・ステープルズ博士(エコノミス ト・コーポレート・ネットワーク・ジャパン、ディ レクター) グローバル・フォーラム 2014:電力 - 開催報告書 パネルディスカッション プロジェクト・ファイナンス: スポンサーが現在とるべき戦略と今後の展望 パネリスト: チン・チュウ、パートナー、アジア・パシフィック地域のエネルギー、鉱業&インフラストラクチャグル ープ代表(シンガポール事務所) サミール・デサイ、パートナー(東京事務所) ハワード・フレイザー、パートナー(シドニー事務所) マーク・リム、パートナー(クアラルンプール事務所) モデレーター アン・ハン、パートナー、同事務所の大型プロジェクトグループ代表(東京事務所) 世界的な金融危機以降のプロジェクト・ファイナンスの動向 パネリストは、プロジェクト・ファイナンスは健在だという統一した見解を持っている。サミール・デサ イは、ロイターの調べによると、2013年には2000億米ドルものプロジェクト・ファイナンス案件が実施さ れ、そのうちの半数以上は、電力、石油、ガスのプロジェクトであったと指摘した。インフラ産業の国際 的な活動に関する情報をリアルタイムで伝えるウェブサイト『Infrastructure Journal』は、2013年、プロ ジェクト・ファイナンスに係るECA(輸出信用機関)の融資活動は、300億米ドルを超えると予測してい る。これは100億米ドルに満たなかった2009年と比較すると非常に大きな変化であると言える。シドニー 事務所のパートナー、ハワード・フレイザーは、過去3年の間に、オーストラリア史上最大となった3つ のプロジェクト・ファイナンスによるプロジェクトが、電力市場で実施され、それらの取引総額は、数 十億にも上ったとコメントした。 2 グローバル・フォーラム 2014:電力 - 開催報告書 しかし、プロジェクト・ファイナンスを取り巻く環境は変化してきている。フレーザーは、「オーストラリアにおい て、スポンサーは、プロジェクトを助成する調達資金源を新たに探す必要があります」と述べた。シンガポール事務 所のパートナーで、アジア・パシフィック地域のエネルギー、鉱業&インフラストラクチャグループ代表を務めるチ ン・チュウは、次のように続けた。「世界的な金融危機以降、従来よりベトナム等の東南アジア諸国で主要な役割を 果たしていた欧州系銀行が、数多く撤退していく現象を目のあたりにしました。それを日本の銀行、特に3大メガバ ンクが引き継ぎ、最近では現地、特にタイおよびインドネシアの銀行が台頭してきています。」 アジア・パシフィック地域のプロジェクト・ファイナンスにおいて活況 を呈している業界とは チン・チュウは、東南アジアの状況について、電力市場が引き続き活発 な状態であることが予測されるが、タイやマレーシア、インドネシア等 の国が独立系発電事業者(IPP)に注力していた過去数年間と比較すると プロジェクト数は減少するであろうと解説した。 クアラルンプール事務所のパートナー、マーク・リムは、「マレーシア では、これから10年後、20年後にかけて、電力不足に対する取り組みが 行われていきます。こういった背景から、現在、マレーシアにおける電 力プロジェクトは非常に興味深い時期にあります」と発言した。入札の システムが非公開から公開に替わり、過去2年間において、公開入札が複 数実施されており、近い将来にも2つの公開入札が実施されることが予測 されている。 パネリストは、再生可能エネルギーセクターが東南アジアにおいて台頭 してきているという統一した見解を持っている。特にタイでは、SPPプ ログラム(小規模発電事業者買取制度)に基づくプロジェクトが推進さ れ、マレーシアでは、政府の助成金の増加に伴い、太陽光発電への外国 投資が増えている。オーストラリアのような成熟市場も再生可能エネル ギーブームに沸いており、それは特に風力発電において顕著である。ハ ワード・フレイザーは、従来型の発電所への需要が衰える一方で、オー ストラリア企業は国内の風力発電所に注視し始めており、過去2年間に6 件の風力発電案件があったとコメントした。しかし、過去数年間におい ては、多くの投資がLNGプロジェクトに向けられている。 プロジェクト・ファイナンスの共通の特徴と傾向 輸出信用機関 プロジェクト・ファイナンス取引において、ECA(輸出信 用機関)が台頭していることは間違いない。輸出信用機関が行った世界 全体のプロジェクト・ファイナンス市場へのデット投資は、2008年から 2013年の間で3倍となっている。サミール・デサイは、日本について、 「投資家は輸出信用機関と長年にわたって幅広い関係を保っています。こ れには、多くの場合において、少額の投資であっても、融資を受けるこ とで取引に価値を持たせることができるという理由があります」と述べ た。タイを含め各国では、輸出信用機関の参加率が著しく上昇している。 世界的な金融危機以降、従来よりベトナム等の東南アジア諸国で主要な役割 を果たしていた欧州系銀行が、数多く撤退していく現象を目のあたりにしまし た。それを日本の銀行、特に3大メガバンクが引き継ぎ、最近では現地、特に タイおよびインドネシアの銀行が台頭してきています。 - チン・チュウ、パートナー、アジア・パシフィック地域のエネルギー、 鉱業&インフラストラクチャグループ代表(シンガポール事務所) 3 グローバル・フォーラム 2014:電力 - 開催報告書 マーク・リムは、マレーシアについて、過去25年間、外国の輸出信用機関が融資 した、または融資のすべてが米ドルで行われたプロジェクト・ファイナンスは存 在せず、その点で他の国々とは異なることを留意すべきであると述べている。マ レーシアには常に豊富な流動資産があり、ペンション・ファンドがプロジェクト において重要な投資機関となっている。しかし、同国では公開入札のシステムが 変わり、より多くの外国のスポンサーからの注目を集めるようになった。今後は さらに多くの外国輸出信用機関が同国のプロジェクトについて検討することとな る可能性がある。 アジア諸国間の投資 エコノミスト・コーポレート・ネットワークによる報告 にもあったように、経済の中心が西から東へシフトし始めており、この現象 は、プロジェクト・ファイナンスにおいても明確に見て取れる。ほとんどの資 金は、アジアの投資家および銀行から提供されている。インドネシアは東南ア ジア最大の電力市場であり、主に投資を行っているのは、日本、韓国、中国の 投資家である。 資金の代替供給源のニーズ オーストラリアでは、資金の代替供給源の範囲 が広がっている。スポンサーは、従来、オーストラリアの銀行から融資を得 ていた分野において、代替となる資金源を検討している。たとえば、クライ アントは、米国の私募債をグリーンフィールドプロジェクトの資金にあてる ことを考えている。 ファンドの利用 投資ファンドおよびメザニンファンドを利用した取引は多 くないが、これらのファンドはプロジェクト・ファイナンスへの参入に意欲 的である。将来的には、これらのファンドが、プロジェクト・ファイナンス のシニアデットとエクイティの間を埋める役割を果たす可能性がある。 プロジェクト・ファイナンスにおける電力購入契約の役割 東南アジアにおいて、電力購入契約(PPA)は収益を生み出す唯一の契約書で あり、そのリスク割当と条項の内容が非常に重要で、スポンサーにとっては最 も重要な契約となっている。東南アジアの中でも、インドネシア、タイ、マレ ーシアおよびベトナムでは、電力購入契約がよく利用されている。チン・チュ ウは、これらの国々の興味深い特徴を次のように解説した。「基本的に、そ の国の経済が成長していればいるほど、取引を成立するのが簡単で、デット投 資を容易に受けられるという特徴があるにもかかわらず、独立系発電事業者に 対する電力購入契約の条件は最も厳しいものとなる傾向があります(例: タ イ、マレーシア)。一方、経済が発展中の国では非常に好意的な内容の電力購 入契約が提供されています(例: ベトナム、インドネシア)。 シンガポールとフィリピンには、電力卸売市場があるため、状況が少し異な る。オーストラリアの状況はシンガポールと似ており、両国とも、独占的な オフテイカーは存在せず、発電された電力はすべて電力プール制のもとで売 却される。しかし、新規開発案件においては、電力購入契約に類するものが 必要となる。 日本では、電力購入契約は特に太陽光発電開発および新たな固定価格買取制 度等において、依然として重要性を保っている。これらのプロジェクト開発 には、長期間にわたる資金提供が不可欠である。 4 グローバル・フォーラム 2014:電力 - 開催報告書 電力市場のスポンサーが直面する課題 スポンサーが政府と輸出信用機関の間に挟まれた形になっていると自認している ことについて、パネリストの見解は一致している。政府は、以前電力購入契約に 付与した特典を取り戻そうとしており、競争力のある価格で長期間融資を供給で きる輸出信用機関は、より厳しいデューデリジェンスを課しているのである。 • 日本: 商業銀行の要件に加え、日本の保証機関および保険業者は、銀行と 同程度あるいはさらに厳しい追加要件を設定しており、このことは、多くの スポンサーにとって、大きな課題となりつつある。 • インドネシア: 政府は引き続き、政府保証のない形態でプロジェクトの入 札を行なおうとしている。また、電力購入契約について、以前許可した条項 についても、変更を加えている(例: 契約解除コストの上限の設定、資金 調達への制限の設定、借換えにより生じた利益の共有)。 • タイ: 紛争処理機関がシンガポールからタイに変更された際、この変更が 問題とならないことについて、銀行を説得するのに長時間を要した。いくつ かの輸出信用機関は、厳しい信用分析を行っている。 • マレーシア: マレーシアの公開入札システムは、価格競争を進行させている。 • オーストラリア: 以前は、政治的に安定し、リスクが少ない国とみなされ ていたが、現在、炭素税の撤廃、排出権取引制度の撤回を掲げる新保守政権 の計画により、大手電力会社は不安定な時期を迎え、このことは投資計画に も影響を及ぼしている。 プロジェクト・ファイナンス以外の形態によるプロジェクト資金調達の可能性 プロジェクトの資金調達の手段としては、プロジェクト・ファイナンスが主要な 手法であり続けると思われるが、特に東南アジアにおいては、他の選択肢 も検 討され始めている。 タイでは、電力プロジェクトの借り換えに適した、インフ ラストラクチャ・ファンドが発表された。オーストラリアやマレーシア等の市場 では、興味深い代替手段として債券市場を通じた資金調達を用いることができる 可能性がある。 マーク・リムは、次のように述べる。「マレーシアでは、多くのプロジェクトに おいて、スクーク(イスラム債)が発行されています。2013年に発行されたプロ ジェクトスクークは、全体の47%を占め、マレーシアおよび海外のプロジェクト で利用されました。スクークに関し、電力プロジェクトに関するお問い合わせを 今まで受けたことはありませんが、その他のインフラプロジェクトについては、 多数のお問い合わせを受けています。」 オーストラリアでは、既存プロジェクトのリファイナンス手段として債券の発行 が利用されている。しかし、ハワード・フレイザーは、建設ファイナンス市場に おいてこの手法を適用できるかどうかは、検討を要すると指摘しており、また、 建設プロジェクトの資金調達手段として債券を発行したケースはいまだ目にして いないと語った。 サミール・デサイは、日本のスポンサーが貸借対照表に裏付けられた負債資金調 達を好んでおり、その理由について、プロジェクトの完成についてある程度の企 業保証を提供し、プロジェクトに利用される中では、かなり完全で安全なパッケ ージであるためであると解説した。しかし、日本のスポンサーは他の手段に興味 がないわけではない。デサイは、「日本企業は、既存・開発中の電力資産のポー トフォリオについて、米国のMLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)や その他のストラクチャーを利用することにも興味を持っており、問い合わせを受け ています」と述べた。 5 グローバル・フォーラム 2014:電力 - 開催報告書 パネルディスカッション アジアの高成長市場: 電力産業における現在の課題と新たな商機 パネリスト ヘンリー・コート、パートナー(シンガポール事務所) ルーク・ディバイン、リーガルコンサルタント(ジャカルタ事務所) ティファニー・ヒュアング、パートナー(台北事務所) クリス・ヒューズ、パートナー(ヤンゴン事務所) ワン・ヌイエン、パートナー(ホーチミン事務所) サワニー・セスサシラ、パートナー(バンコク事務所) フェリックス・サイ、パートナー(マニラ事務所) モデレーター: イアン・マックファーソン、パートナー(東京事務所) 6 グローバル・フォーラム 2014:電力 - 開催報告書 国名 IPPプロジェクトの入札案件の現状 主な留意点 再生可能エネルギーセクターの展開 インドネシア • 以前と比較し、投資家は、将来的な入札機会を把握しやすく なった。以前は、入札機会の予測や、将来展開されるIPP (独立系発電事業)プログラムについて、把握することが困難 であった。 • スポンサーは、インドネシアの全般的な政策の移り変わりに注意すべきである。 過去10年間で、中央集権体制から推移しているのは明白であり、許認可とライセ ンスの提供に関する地方政府の権限が広がってきている。 • 第2期電源開発促進プログラムは10,000 MWのプログラムで あり、再生可能エネルギーセクターに焦点が置かれている。 • インドネシア国営電力公社(PLN)は、電力供給を目的とし たIPPプロジェクトの10年計画を公表した。この計画は、以 下の3つのカテゴリーに分類されている。 マレーシア 1. 正式なPPP(官民連携パートナーシップ)プログラ ム: IPP向けの正式なプロジェクト入札。強力かつ 堅牢な政府支援が適用される。 2. 第2期電源開発促進プログラム: 再生可能エネルギ ープロジェクトと石炭火力プロジェクトに主な焦点 をあてている。政府支援はやや堅牢さに欠ける。 3. その他のプロジェクト: 上記2つのカテゴリーに当 てはまらないプロジェクト。正式な政府支援は適用 されない。ほとんどの場合、高いリスクに対応でき る現地スポンサー向け。 • IPPについて、今後24か月以内に追加で3件の入札募集が実施 されることが見込まれている。 • インドネシアとは異なり、これら3つのプロジェクトに関す る情報の入手は非常に困難。プロジェクトを運営する政府委 員会は、入札時期が近づくまで情報を公開しない。 • 良い点は、マレーシアは予定通りのファイナンシャル・クロ ーズ達成に実績があることである。 • 将来的なIPP調達プログラムについては、現地に信頼できるパートナーが存在す ることが不可欠である。既存の現地スポンサー間の競争は非常に厳しい。政府と の関係の維持、プロジェクトに関する許認可の取得を行う実力のある現地パート ナーを選ぶ必要がある。 • ターゲットプロジェクトの一覧に優先順位をつける際は、シンプルなプロジェク トを優先すべきである。動きのある要素が多すぎるプロジェクトは、要注意と言 える。土地の取得は電力プロジェクトを遅延させる典型的な要素であるため、特 に注意を要する。高レベルなライセンスを要するプロジェクトにはマイナス要素 が存在する可能性がある。 • ミャンマー新経済特区法が発効した。同法は、政府が特定し た3つの経済特区への投資により、優遇措置(免税等)を得 ることを求める外国投資家の注目を集めるであろう。経済特 区で先駆けとなり、最も活発な投資の対象は電力プロジェク トとインフラプロジェクトである。 • 一部のプロジェクトは、開発途中であるが、ここ数年間でさ らに多くのプロジェクトの開発が必要となるであろう。政府 は、IPPの関心を引き付け、透明性を向上させるため、入札 プロセスを整理する必要があると理解している。 • 電気法が2014年中に施行される。同法は投資の種類、価格設 定、設備の輸入、許認可、土地の取得について、より明確で 安定した枠組みが制定される。 • 水力発電では、2014年内にIPPを対象とした大規模な河川プ ロジェクトの入札が実施される。小規模な河川プロジェクト (10~100 MW)の入札はなく、ライセンスの提供という形 態をとる。 • 太陽光発電は新たな動向をみせており、上限を25セントとす る固定価格買取制度が新たに導入された(現地で調達を行っ ていれば、限度額が30%上昇)。しかし、多くの外国資本を 得るには、大規模な発電所を建設することが必要となる可能 性がある。 • 再生可能エネルギープロジェクトに精通する現地スポンサー は多くはない。したがって、外国人投資家にとって自国のス キルと資金を提供できる絶好の機会となる。 • 現地の強力な投資家からの資金の調達は非常に重要である。外国企業は債券の保 証について、国家からの信用供与と競合することになる。資金調達のストラクチ ャー、現地通貨での資金調達の可能性、入札に最適なその他手段について、レン ダーと早めに交渉を開始することが重要である。 • マレーシアは小規模なプロジェクトのみを入札の対象として きている。明確な反複合企業ルールがあり、企業がさまざま な再生可能エネルギー投資において、直接権益を取得するこ とを防止している。 • 電力購入契約(PPA)または燃料供給契約に関するやり取りが少ない入札は、落 札できる可能性が高まる。そのような入札に参加するには、迅速な行動が必要と なる。 • 太陽光発電、バイオガス、バイオマスに関して、固定価格買 取制度の体制が存在する。 • 石炭が購入できない、ガスの供給が停止されたといった問題にあらかじめ備え、 迅速に対策を整えられるようにすべきである。EPC契約やO&M契約の交渉と同時 に緩和契約(mitigation agreement、懸念事項について緩和措置を取る合意)の 作成を開始し、レンダーにアプローチすることが賢明である。 ミャンマー • 地熱発電がこれまで最も多くの関心を得ており、今後も注目 すべき分野となるであろう。コストの上昇とインフレ問題も 存在するが、最大の問題は、買取価格の金額に上限が設けら れていることである。新たな資金調達を行う場合、買取価格 は増加する(現在10~11セント)。 • 現地の強力なパートナーと提携することは非常に重要である。これらには、ミャ ンマーでビジネスを行っている日本企業、多国籍企業、現地レベルでのパートナ ー企業等が含まれる。 • これらのパートナーには幅広い経験はないかもしれないが、政府との関係性の維 持や法規制に関する理解といった、安定した投資を提供するために必要となる要 素を持ち合わせている。 • 経済および産業において政府は活発な動きを引き続き見せているが、投資には欠 かせないプロジェクトの管理能力を持つ外国企業にも門戸を開放しようと努力し ている。 • 一定の規模(例: 10~30MWのプロジェクト)のプロジェクトでは、法により 100%外国資本が許可されている。 • マレーシアでは、小規模施設が推奨されている。これについ て、同国での経験を求める機器製造メーカーやEPC業者から の関心は高いが、開発業者からはそれほどの注目を受けてい ない。 • 政府承認がない限り、最大30MWの制限がある。 国名 IPPプロジェクトの入札案件の現状 主な留意点 再生可能エネルギーセクターの展開 フィリピン • 1990年代の深刻な電力不足以降、2001年電力産業改革法 (EPIRA)がフィリピンのエネルギー産業に大きな変革をも たらした。 • フィリピンにおける電力プロジェクトは完全に民営化されており、政府のオフテ イカーは存在しない。政府による保証は推奨されておらず、政府が最後に保証を 行ってから、長い時間がたっている。 • 財政的・非財政的インセンティブを提供する再生エネルギー 法が、注目を呼ぶ大きな要因となっている(例: 固定価格 買取制度、税制上の優遇、法人税) • この法のもとで、発電、送電、配電は民営化され、政府はこ の戦略を守り続けている。 • 外資規制に注意が必要である。電力プロジェクト用地保有企業に対する外国資本 比率は40%まで、水利用はフィリピン人の出資率が少なくとも60%の企業にのみ 許可される。また、海岸のリースは、フィリピン人の出資率が少なくとも60%の 企業との間で締結できる。 • 固定価格買取制度プロジェクトに上限を設定:水力および バイオマス発電は250 MW、風力発電は200 MW、太陽光発電 は50 MW。 • 主な送電および配電は民間業者が行っている。外国企業も発 電IPPを創設できる。 • 政府の役割は、投資家への優遇措置の提供までにとどまる傾 向にある。 • 強力な現地パートナーを探す必要がある。電力産業に豊富な実績を持つ、同族経 営のフィリピン企業が数多く存在する。 • カトリック教会、NGO、メディア、現地コミュニティー、現地政府を含む利害関 係者との関係を考慮すること。 台湾 • 2013年、公平交易委員会は、価格操作を行ったとして9つの IPPに63.2億台湾元(2.12億米ドル)以上の罰金を科した。 これは、2012年にこれらの企業が、国営電力会社の台湾電力 (TaiPower)に対し、高価格で売電したとの申立てがあった 事件に関連している。 • この事件は外国投資家に悪い印象を与え、最近、一連の訴訟 の影響により、投資家は台湾の電力市場から引き上げ始めて いる。また、台湾電力が今後の入札において、非常に保守的 な価格を設定する可能性がある。 タイ • タイにおけるIPPの歴史は長く、実績も豊富であるが、最近 発生している政情不安が、将来のプロジェクトに影を差し ている。 • 既存の電力プロジェクトは通常通り進んでいるが、この状態 が長引けば、政府および内閣の承認が、プロジェクトの進行 を妨げ、遅延させる可能性がある。 • エネルギー規制委員会が新たな規制当局としてEGATおよび IPP/SPP間の問題解決を担当する。 ベトナム • ベトナムでは、電力セクターにおいて、野心的な長期改革を 実施している。2023年以降に競争力のある完全な電力小売市 場を設立することが目的である。特に、インドネシアからの 石炭供給が危機に瀕しているため、政府はIPPに門戸を開放 しようとしている。 • 特にベトナム南部において、資金不足、用地造成、賠償問 題、技術的能力の不足等から、電力プロジェクトが遅延する 可能性がある。 • 世界銀行のような多数国間機関からの投資が、政府の発電戦 略を支援している。また、二国間で交わされているイニシア チブ(日本・ベトナム戦略的パートナーシップ)がモデル・ プロジェクトの進捗を促している。 • 2014年2月初頭、政府は固定価格買取制度に関し、どのよう に料金徴収が行われるかの説明をし、基本的にすべての顧客 が料金を負担することになる。規則では、固定価格買取を民 間金融が実施してもよいと定めている。顧客から徴収した料 金が不足した場合、政府は現金で保証する。 • 近時の訴訟にもかかわらず、IPPは将来的にも投資家にとって引き続き魅力的な 投資対象となる。台湾電力は現地の抗議活動に関連する問題に弱いため、発電に 関し、IPPにさらに依存することになるであろう。 • 台湾において、風力発電は大々的に振興されている。3つの 試験的風力発電所が開始されている(1つは台湾電力、2つは 民間企業)。 • 市場に新規参入する企業にとっては、既存のIPPが引き続き拡大を求め、さらな る競争を生み出していることが、最大の障壁となるであろう。 • 台湾は台風多発地帯であるため建設面と技術面で問題を抱 えているにも関わらず、政府は、2030年までに合計で3000 MW、600基の洋上風力タービンの設置を目指している。 • 原子力発電政策は変更となる可能性があり、廃止されることも考えられる。 • 洋上風力発電実証インセンティブプログラムを開始し、2015 年までに浅海域(深度20m未満)に3か所の先駆的洋上風力発 電所を設置する開発業者3社を選定し、補助金を提供した (各風力発電所の容量は、100~200 MW)。 • 落札の確率を上げるために、電気購入契約に対するレビューを行うことは避ける べきである。 • 2030年までに全容量の最大25%(約9,500MW)に代替エネル ギーを使用することを目標としている。 • 都市計画はかなり複雑であり、5~6年を要する。対象用地が法案に記載されてい る場合は、通常、発電所を建設することができる。 • IPPに比べて課題がある。IPP、SPP(小規模発電事業者)、 VSPP(極小規模発電事業者)が政府に電力を販売する場合 は内閣から承認を簡単に得られるが、風力発電プロジェク トに関する承認の取得には時間を要する。最終的な承認は 内閣が下す。政府からの借地とともに、PPPの設立が求め られる。 • 先述の通り、紛争処理機関が変更された。政府または公的事業体が民間企業と契 約を結ぶ場合において、議会の承認がない限り(長期間を要する)、契約書に仲 裁条項を入れることはできない。 • 用地造成および補償問題は複雑である。投資家はこれらに要するコストを見積も っておく必要がある。低い価格を設定した入札参加者のプロジェクトを落札する 確率が一般的に高い(質よりは競争力のある価格が重視される)。 • 再生可能エネルギープロジェクトにかかる投資資本および技 術コストが多額であるのに対して、EVNへの売電価格はかな り廉価である。 • 注視すべき点: 政府による公共支出の削減、ベトナム電力公社(EVN: Vietnam Electricity)の財政難、損失および独占的地位、ペトロベトナムが新た なプロジェクトを開始するのではなく、既存のプロジェクトを譲渡していること。 • 民間セクターは、一対一の電力購入契約により、IPPから家 庭へ直接売電でき、IPPがEVNに対して、配電インフラ賃借 料を支払うという条件の試験的な風力発電プロジェクトを提 案している。 開催概要 ベーカー&マッケンジー グローバル・フォーラム 2014 電力:アジアの経済成長と電力事業の発展 開催日2014年2月17日(月) 時間 2:30 p.m. – 5:30 p.m. 会場 ANAインターコンチネンタルホテル東京 主催 ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業) ベーカー&マッケンジー スピーカー 9 チン・チュウ シンガポール事務所、 パートナー アジア・ パシフィック地域のエネル ギー、鉱業&インフラスト ラクチャグループ代表 +65 6434 2638 chin.chew @bakermckenzie.com アン・ハン 東京事務所、パートナー 同事務所の大型プロジェク トグループ代表 +81 3 6271 9443 anne.hung @bakermckenzie.com ハワード・フレイザー シドニー事務所、 パートナー +61 2 8922 5240 howard.fraser @bakermckenzie.com マーク・リム クアラルンプール事務所、 パートナー +60 3 2298 7960 mark.lim @bakermckenzie.com サミール・デサイ 東京事務所、パートナー +81 3 6271 9459 samir.desai @bakermckenzie.com イアン・マックファーソン 東京事務所、パートナー +81 3 6271 9468 ean.macpherson @bakermckenzie.com ヘンリー・コート シンガポール事務所、 パートナー +65 6434 2589 henry.cort @bakermckenzie.com ルーク・ディバイン ジャカルタ事務所、 リーガルコンサルタント +62 21 2960 8600 luke.devine @bakermckenzie.com ティファニー・ヒュアング 台北事務所、パートナー 同事務所の電力プロジェクト グループ代表 +886 2 2715 7254 tiffany.huang @bakermckenzie.com ワン・ヌイエン ホーチミン事務所、 パートナー +84 8 3520 2629 hoangkimoanh.nguyen @bakermckenzie.com クリス・ヒューズ ヤンゴン事務所、パート ナー +95 1 255 056 christopher.hughes @bakermckenzie.com サワニー・セスサシラ バンコク事務所、 パートナー 同事務所のエネルギー グループ代表 +66 2636 2000 p 3444 sawanne.sethsathira @bakermckenzie.com フェリックス・サイ マニラ事務所、パートナー 同事務所の金融サービス グループ代表 +63 2 819 4963 felix.sy @bakermckenzie.com グローバル・フォーラム 2014:電力 - 開催報告書 創設当初からDNAに刻まれたグローバルの視点 ベーカー&マッケンジーは、45カ国以上に約4,100名の弁護士を 擁する国際総合法律事務所です。グローバルな視点と多文化的 アプローチを通じ、各国オフィスの協力体制のもと、クライア ントに実務的かつ革新的なサービスを提供しています。私たち は世界の国々における固有のビジネス文化を深く理解するとと もに、国境や法域をまたぐ複雑な案件に深い経験と知見を有し ています。 www.bakermckenzie.com www.bakermckenzie.co.jp ベーカー&マッケンジー法律事務所 (外国法共同事業) 〒106-0032 東京都港区六本木1-9-10 アークヒルズ仙石山森タワー28F Tel: 03 6271 9400 [email protected] ©2014 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