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男性の魅力を構成する要因の探索的検討
男性の魅力を構成する要因の探索的検討 -女性にとっての男性の魅力とは- ○佐山七生 1・越智啓太 2 (1 法政大学大学院人文科学研究科・2 法政大学) キーワード:男性の魅力,女性心理,恋愛対象 Exploratory examination of the factor which constitutes a male attraction. Nanao SAYAMA1 and Keita OCHI2 1 ( Graduate School of human sciences, Hosei Univ., 2Hosei Univ) Key Words: male attraction,female psychology,romantic partner 目 的 「人に魅力を感じる」ということは,我々の日常生活にお いて普遍的にみられることであり,それらが恋愛や結婚とい ったイベントと関連が深いことからも,重要な問題の 1 つと 言える。しかし,ここでいう「魅力」とは一体どのようなも のであろうか。これまで「魅力」は,主に対人魅力の枠組み の中で論じられ,現在まで類似性や近接性,相補性などが指 摘されている。また近年話題の進化心理学的アプローチによ れば, 「男性は女性の身体的魅力を重視し,女性は男性の社会 的ステータスを重視する(Norman P. & Jose C., 2013) 」と あるように,身体的魅力や経済力が魅力を構成する要因とし て指摘されている。他にも,恋愛に対する全体的態度(上野, 2004)や性格特性(戸塚ら,2002)などが挙げられているが, これらを総合して比較検討した研究はない。よって本研究で は,一般的に魅力として考えられる特性を項目として用い, 因子分析することによって, 「 (男性の)魅力」の構成要因を 明らかにすることを目的とする。 方 法 研究協力者 関東在住の成人女性(異性愛指向) 53 名 質問紙 従来の対人魅力研究において「魅力」として指摘さ れてきた形容詞(例 思いやりがある)に加え,男女 6 名に「(男 性・女性の)魅力」と聞いて連想されるものを自由記述で求 め,それらを項目として使用した(内容重複,意味の分かり づらいものは削除・修正し 195 項目を選定) 。その後,上記 協力者に対し,各項目の要素を備えた男性をどの程度魅力的 に感じるかについて, 「全く魅力的でない」~「とても魅力的」 の 5 段階で評定を求めた。 結 果 本研究は 53 名からの回答が得られた(欠損値なし) 。評定 は「全く魅力的でない」を 1 点, 「あまり魅力的でない」を 2 点, 「どちらとも言えない」を 3 点, 「まあまあ魅力的」を 4 点, 「とても魅力的」を 5 点として得点化した。 項目の確認 項目(全 195 項目)のうち,60 項目に天井効果,1 項目に フロア効果が確認されたため,その後はそれらを除いた 134 項目を分析対象とした。 因子分析(重み付けのない最小二乗法・プロマックス回転) 分析時点でのサンプル数が少ないことから,抽出法は「重 み付けのない最小二乗」法を採用し,また“男性の魅力”の 構成概念同士が無相関という仮定を置きにくいことから回転 法は「プロマックス回転」を採用した。その結果,固有値 1 以上の因子が 13 認められた。しかし,固有値の推移(第 6 因子と第 7 因子間の差が前後に比べて大きい) ,累積寄与率 (第 6 因子までで 57.72%) ,スクリープロット(第 6 因子と 第 7 因子の間の傾きが大きいように見える)からは 6 因子構 造も考えられた。その後比較検討を行い,最終的に 6 因子構 造を適当と判断した。ちなみに,因子間相関は相互に中程度 の相関関係が認められ,各因子のα係数は.60~.70 の値をと り,やや低い~高い値となった。また共通性の確認,因子負 荷量の確認の過程で 9 項目を削除したため,最終的には 125 項目によって因子が構成された。因子名と因子負荷の高い項 目は以下の通りである。 第 1 因子「誰もが認める美しい男」因子:「足が長い」「顔が女 性的」 「オシャレ」「ミステリアスな雰囲気を持っている」など 第 2 因子「マッチョな身体の明るい男」因子: 「肩幅が広い」 「胸 板が厚い」「手が大きい」「よく笑う」など 第 3 因子「仕事のできる渋い男」因子:「考え方のスケールが大 きい」 「物静か」 「リーダーシップがある」「既婚者」など 第 4 因子「生活力のある家庭的な男」因子:「無駄遣いしない」 「最低限の家事ができる」 「家族仲が良い」「子供が好き」など 第 5 因子「社交的で交友が広いモテ男」因子: 「好奇心旺盛」 「異 性の友人が多い」「話題が豊富」「甘え上手」など 第 6 因子「品があるリッチ男」因子:「正しい日本語が話せる」 「食べ方がきれい」 「実家が裕福」 「医療関係の仕事をしている」など 考 察 従来の研究より,女性が考える「男性の魅力」として身体 的要因や経済的要因,性格的要因などが独立して抽出される ものと仮定していたが,実際はこれらが各因子に複合的な形 で含まれるという結果となった。内容をみると,興味深いこ とに各因子が異なる男性像を示していた。サンプル数の少な さから今回はあくまで探索的な検討に終始したが,様々な特 性を総合して検討したことで今まで明らかとなった因子が抽 出できたと考えられる。引き続きサンプル数を増やすことで, より現実に即した因子構造の把握が可能であろう。また,今 回は手始めとして「(単なる)男性の魅力」のみ評定を求めた が,先行研究では,短期的な関係を想定した場合と長期的な 関係を想定した場合では重視するものが異なるという指摘が ある。また,評定者が同性の場合や,評定者自身の特性(自 身にどの程度魅力があると考えているか)によっても結果が 異なる可能性があることから,今後はこれらの要因について も検討することで,人間の魅力判断構造を明らかに出来るの ではないかと考えられる。 引用文献 天谷裕子 (2005) 恋人と結婚相手に対して求めるものの違い-性差 と高美との捉え方・恋愛経験の有無から- 名古屋大学大学院教育 発達科学研究科紀要心理発達科,52 52,9-19. 52 Buss, D. M. (1989). Sex differences in human mate preferences: Evolutionary hypotheses tested in 37 cultures. Behavioral and Brain Sciences, 12, 12 1-49. 戸塚唯氏 (2010) 恋人・結婚相手が持つ否定的特性への嫌悪 千葉科 学大学紀要,3 3,31-43.