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Jan. 2015 NewsLetter 新学術領域研究 「転写サイクル」 Vol. 2 高精細アプローチで迫る転写サイクル機構の統一的理解 Contents 領域代表挨拶 「転写サイクル」第3回班会議の報告 P. 2 P. 4 「転写サイクル」国際シンポジウムレポート P. 6 若手海外派遣レポート P. 7 トレーニングワークショップレポート 1分子イメージング P. 8 ChIP-seq 解析 P. 12 P. 13 今後の予定・イベント情報 P. 14 班員活動報告 文部科学省 科学研究費補助金「新学術領域 ( 研究領域提案型 )」 平成 24 年度~ 28 年度 Transcription Cycle http://transcriptioncycle.org/ 領域代表挨拶 領域代表からのご挨拶 領域代表者 山口 雄輝 東京工業大学 大学院生命理工学研究科 生命情報専攻 教授 平成 27 年元旦に本稿をしたためています。平成 26 年は 盛り沢山の慌ただしい一年でしたが、何とか良い正月を迎え ることができました。 詳しくは本ニュースレターをご覧いただくとして、まず領 域内では 25 年 12 月と 26 年 3 月に 2 回のトレーニングワー クショップを実施しました。本領域では 「先端的技術の導入」 と「ウェットとドライの融合」の 2 つをテーマに掲げ、こ れらをドライビングフォースとした新たな転写機構の解明を 目指しています。その目標を達成するため、1 分子イメージ ングと ChIP-seq 解析に関するトレーニングワークショップ を開催し、領域内での知識・技術レベルの向上や共同研究の 醸成を促しました。 26 年の春以降は、夏に実施される中間評価の書類作成の ため計画班員、公募班員、その他関係者の皆様から多大なご 協力を頂きました。次頁の図は 9 月 2 日に実施された中間 評価ヒアリングで用いたスライドの 1 枚ですが、ヒアリン グまでの 2 年余りの期間内に、計画班と公募班を合わせ IF が 10 以上の論文 26 報を含む 131 報の論文を公表すること ができ、本領域のアクティビティの高さを内外に示すことが できました。計画班から発表された論文の約 20% が班をま たいだ共同研究から産まれた点も特筆に値します。公募班に ついても、まだ論文という形には結びついていないものの、 独自技術を有する研究者を中心に共同研究の輪が拡がってお り、「異なる学問分野の研究者が連携して行う共同研究等の 推進」や「多様な研究者による新たな視点や手法による協同 研究等の推進」により当該研究領域の発展を目指すという新 学術領域研究の目的に合致した成果が着実に得られつつあり ます。これもひとえに、中間評価のデッドラインを意識して 論文発表に向けた努力をしていただいたり、新学術領域研究 の狙いをご理解いただき共同研究のネットワークを深めてい ただいた班員皆様方のおかげと心から感謝申し上げる次第で す。 P. 2 NewsLetter Vol. 2 「転写サイクル」 おかげさまで中間評価の結果は A(研究領域の設定目的に 照らして、期待どおりの進展が認められる)でした。計画班 の継続についてもすべて問題なしとの評価結果であり、現 体制で 5 年の研究期間を全うできる見通しが得られました。 評価結果の所見を抜粋しますと「... 実際に高精細アプローチ 推進のための領域内共同利用システムの構築と運用がなされ た。そして、領域内の積極的な共同研究によって(中略)優 れた研究成果を発表している。このことは、転写制御という 基礎研究分野の展開として評価できる」といったポジティブ な評価コメントをいただきました。一方で、「ウェットデー タとドライデータとの融合に向けた研究を目指すべきである との意見があった」「システムバイオロジー研究や創薬開発 への展開についても期待したい」「本領域で開発された技術 を、領域外にも広める活動を盛り込めないだろうか」といっ た宿題もいただきました。 ウェットとドライの融合は、数十年に渡って唱えられなが ら、なかなか大きなムーブメントとなってきませんでした。 本領域には計算科学の専門家が計画班と公募班に数名ずつお り、ウェットとドライの共同研究が複数進行中です。しかし、 これが全領域的な共通認識となっているかと言えばそうでは なく、まだまだ相互理解の壁やボキャブラリーの壁が存在し ています。この壁を溶かす手始めとして、8 月に開催した第 3 回全体班会議では、評価委員のお一人である佐藤文俊先生 (東大・生研)に特別講演をいただいた後、ウェットとドラ イの融合に関するパネルディスカッションを行いました。今 後も計算科学に関するトレーニングワークショップを実施す る等、ウェット研究者とドライ研究者がとことん膝を詰めて 話し合う機会を設けることで、両者の有機的連携を深めてい きたいと思います。その他の宿題についても鋭意対応してい く所存です。 班会議と中間評価ヒアリングが終わって一息つくやいな や、11 月 24 日には国際シンポジウムを開催しました。講 演は Robert G. Roeder 先生(Rockefeller University)ら 4 名 の海外招待講演者、白髭克彦先生(東大・分生研)ら 2 名 の国内招待講演者、そして私という陣容でしたが、講演と質 疑応答の時間を長めに確保したので、領域外の研究者のお話 をじっくり拝聴することができました。やむを得ぬ事情によ り祝日の開催となったにも関わらず、100 名以上の方々に ご来場いただきました。領域外からも多くの方々にご参加い ただきました。この場をお借りして、国際シンポジウムの開 催にご尽力いただいた計画班の伊藤敬先生、大熊芳明先生、 領域代表挨拶 そしてご参加いただいた皆さま方に深くお礼申し上げます。 違った景色に映るのもまた事実です。昨年の事件を対岸の火 昨年は日本人のノーベル物理学賞受賞という明るいニュー 事と思わず、今まで以上に襟を正していく必要があると痛感 スもあった反面、STAP 細胞問題や、私の足下の東工大生命 しています。 理工で起こった元教授による不正経理逮捕問題等、世間の耳 最後になってしまいましたが、新年おめでとうございます。 目を集める暗いニュースもあり、研究者倫理が改めて問われ 平成 27 年が皆様にとって実りある素晴らしい 1 年となりま ています。東工大では研究費使用の総点検が行われており、 すように! 会議を温泉地で行うとは何事か、といった指摘もなされてい るところです。確かにそうしたことがこれまで慣例的に行わ れてはきましたが、これを納税者目線で見ればまるっきり 研究の進展状況と組織間の連携状況の概要 連携状況 (共同研究を実施または実施予定) 現在までの発表論文数 (査読有) * ACS Nano 1報, Genome Biol 1報, JACS 2報, Molecular Cell 2報, Nature 1報, Nature Commun 5 報, Nature Genet 2報, Nature SMB 2報, Plant Cell 1報, PLoS Genet 3報等、IF>10の論文26報を含む * 計画班から発表された論文の約20%が、班をまた いだ共同研究から生まれてきている NewsLetter Vol. 2 「転写サイクル」 P. 3 班会議 ・ シンポジウム 「転写サイクル」班会議レポート 「転写サイクル」合同班会議 2014 年 8 月 4 日~ 6 日 慶山(山梨いさわ温泉) 2014 年の転写サイクル合同会議は、公募 班員やポスドク、大学院生、評価委員の皆 様を含め総勢68名が一堂に集い、相部屋 で寝食を共にしながら、研究発表と情報交換、 共同研究の推進などにいそしみました。評価 委員からは佐藤文俊先生(東大・生研)に参加していただき、 特別講演をいただきました。 計 33 演題(計画班 12、公募班 20、特別講演 1)の口頭 発表が行われ、活発な議論が交わされました。二日目の夜か らは、懇親会を兼ねて、若手研究者によるポスター発表(20 演題 ) が行われました。食事をしながらの打ち解けた雰囲気の 中、熱の入った議論は深夜にまで及びました。 激を受けました。内容は、これ まで比較的よく研究されてきた 転写開始に加えて伸長、終結、 リサイクルと幅広く、 転写開始 の部分に注目して研究してきた 私には新鮮でした。しかもこれら のステップはそれぞれが密接に 関与しており、転写という現象 を理解するのに、開始のみなら ずそれ以外のステップを含めた包括的な視点が不可欠であるこ とを改めて実感しました。手技的にはやはり deep-sequencing を用いた網羅的解析が多く使われ、興味深い知見が多く得ら れていることを感じました。私は ChIPseq、RNAseq などの実 験法に興味は持っているものの、解析の難しさからまだ手を出 せていない状態だったので、とても勉強になりました。次々と 新しい手法が開発され、論文には多くの実験が要求されます が、そのすべてを自分でマスターし使いこなすことは簡単では ありません。経験のない実験法やその有用性をスペシャリスト から学ぶことは重要であるし、実際に自分の研究にどう活かせ 新学術領域「転写サイクル」班会議に参加して 飯田 智 ( 富山大学大学院 医学薬学研究部 遺伝情報制御学研究室 ) るか?を直接質問・議論できるこのような機会は非常に貴重で 2014 年 8 月 4 日から 6 日までの 3 日間、山梨県石和温泉 する実験法は報告されていますが、私の知る限りそれほど多く で新学術「転写サイクル」領域の合同班会議が行われ、参加 させていただきました。私は 2014 年の 5 月まで米国ロックフェ ラー大学の Bob Roeder 研究室に在籍し、褐色脂肪細胞特異 的転写コファクターである PRDM16 に関する研究を行っていま した。同じラボ出身であるという縁もあって、富山大学の大熊 芳明教授に採用していただき、6 月から着任となりました。着 任後すぐのタイミングでしたので、日本での研究はまだ始まっ たばかりという状況でしたが、アメリカでの仕事をポスター発 表するという形で参加させていただきました。 班会議のプログラムは 1 日目の午後 2 時から夕食を挟んで 9 時まで口頭発表を 15 題、2 日目は朝 9 時から午後 6 時まで 口頭発表 17 題プラス特別講演、その後ポスター発表という非 常に密度の高いものでした。富山から電車を乗り継いで 6 時 間かかって着き、すぐさま 2 日間休みなしのセミナーは体力的 には少々厳しかったものの、興味深い発表の連続で非常に刺 P. 4 NewsLetter Vol. 2 「転写サイクル」 あると思いました。その意味からも阪大藤井先生の iChIP 法、 enChIP 法に関する発表は非常に興味深いものでした。これま でも特定の DNA 領域に結合するタンパク質をスクリーニング は使われていないように思います。ChIP アッセイを応用した、 細胞内の DNA- タンパク質複合体をキャプチャーするこの方法 は、従来の生化学的手法より生体内の状態を反映する可能性 が高く、効果的であると思われました。2 日目最後のセクショ ンと佐藤文俊先生による特別講演は所謂「ドライ」と呼ばれる 班会議 ・ シンポジウム 「転写サイクル」班会議レポート 計算科学の話でした。正直、これまで 得意分野のみに狭くなりがちな視野を広げら ドライな分野とは全く接してこなかっ れたような気がします。 今回は半分外側から た自分には、どれほど理解できたかは の参加というような形でしたが、次回は中の 不安の残るところではありますが、そ 人間としてパリッとしたデータとともに参加で れぞれの発表はどれも非常に興味深 きるよう頑張りたいと思います。 く、ドライの研究というものを初めて (おぼろげながらではありますが)イ メージできたのではないかと思います。すぐに自分の研究に役 立てるというところまでは行けませんでしたが、これから先の研 究で何かの折に頭に浮かぶような prepared mind を準備でき たのではないかと信じたいです。何より、自分からは決して学 ばなかった(学べなかった)分野の研究に触れさせていただ 新学術領域「転写サイクル」班会議レポート 磯部 智康 (東京工業大学 生命理工学研究科 特別研究員) いたのはとてもよい経験となりました。ポスター発表は 2 時間 という限られた時間で、且つ後半の 1 時間は食事を摂りながら 去る8月4日から8月6日にかけて、山梨県いさわ温泉で という状況だったので、あまり多くの方々とお話しできず、また 開催された、2014年度転写サイクル合同班会議に参加し 他のポスターを見る時間もなかったのは残念でした。もっと積 て参りました。 極的にコミュニケーションを取るべしと次回以降の課題とした Oral session では、各専門分野の先生方による32題の成 いです。 果発表と、佐藤文俊先生(東京大学生産技術研究所)による、 料理もおいしく、温泉もあり、たまに星も流れる素晴らしい 特別講演を拝聴しました。今回も、古細菌、ホヤ、シロイヌナ 環境で充実した時間を過ごさせていただきました。転写という ズナなどからヒトの疾患まで、幅広い研究対象と、構造生物学、 現象の理解のために、幅広い研究対象を様々なアプローチで 生化学、遺伝学的手法のほか、先端イメージング技術や計算 行われている研究に触れさせていただいて、ともすると自分の 科学を駆使した細胞レベル、分子レベルの解析から、個体レ NewsLetter Vol. 2 「転写サイクル」 P. 5 班会議 ・ シンポジウム 「転写サイクル」班会議レポート、国際シンポジウムレポート 転写サイクル国際シンポジウム:ミーティングレポート ~国際シンポジウムに参加して~ 高橋 秀尚 ( 北海道大学大学院 医学研究科 生化学講座 ) 2014 年 11 月 24 日に転写サイクル主催の国際シンポジ ウムが、東京工業大学、大岡山キャンパスにて開催されま したので、参加致しました。国内から、木村宏先生(東京 ベルの解析まで様々なアプローチによる多彩な研究成果が紹 工業大学)、白髭克彦先生(東京大学)、山口雄輝先生(東 介され、活発な意見交換がされておりました。特別講演では、 京工業大学)が講演されました。また、海外からは、Steven 計算生体分子科学的な手法で、独自に開発されたシミュレー Hahn 博 ションプログラムを用いた生体分子解析の成果から、演算機 USA)、Robert Roeder 博 士(Rockefeller University, USA) 、 資源の発達と、それに対応したソフトウェアの開発・チューニ Peter Verrijzer 博 士(Erasmus University Medical Center, ングの問題といった側面まで紹介して頂き、私自身も、平時は Netherlands)、永井成樹先生(Stanford University, USA)ら 馴染みの薄い研究に触れ、見識を広めることのできる良い機 が講演されました。転写サイクルに参加されている先生方 会として、有意義な時間を過ごすことが出来ました。また、全 に加え、他の分野の多くの研究者も参加され、大変活発な 口頭演題の終了後には、ウェット/ドライ研究の協調によって 質疑討論が行われまし 生じる利点、課題点とその将来について討論の場が設けられ、 た。 木 村 先 生 は、 生 細 双方の立場の先生の建設的な意見交換が行われました。これ 胞を用いたヒストン修 は、研究代表者の先生方のみならず、若手研究者の間でも特 飾の変動に関する講演 に関心の高い議題であり、また本領域が柱のひとつとして掲げ をされ、転写サイクル るウェットとドライの融合に取り組む姿勢を表す一幕として、強 の解明において、リア く印象に残りました。 ルタイムに転写関連因 Poster session では Oral session の内容を補完するものか 子やヒストン修飾を観察することの重要性を認識させられ ら、独自研究まで、様々な演題の発表があり、私はこちらで ました。Hahn 博士は、転写因子による転写活性化のメカニ 研究成果の報告をさせて頂きました。私自身の研究に対する、 ズムを構造学的解析によって解明されており、根本的なメ 生のご意見、ご助言を頂けたことのみならず、前回班会議から カニズムを解明することの重要性を感じました。永井先生 引き続きの参加ということで、同世代の研究者の方の仕事の進 の In vitro 転写系を構築する試みや、Verrijzer 博士の代謝関 捗や、ポスターの上には現れない裏話まで様々なお話を聞くこ 連酵素が直接的に転写を制御するという研究も大変印象深 とができ、とても良い刺激を頂きました。 今後も、微力ながら本領域のアクティビティに貢献できれば、 という意欲を高めてもらえる、有意義な会であったと思います。 最後に、内容の充実した口演をしてくださった先生方と、本会 議の運営を担ってくださった皆様に、深く感謝申し上げます。 P. 6 NewsLetter Vol. 2 「転写サイクル」 士(Fred Hutchinson Cancer Research Center, ミーティング・WS レポート 若手海外派遣:ミーティングレポート い内容でした。珈琲ブレイクの後には、白髭先生によるコ ヒーシン複合体と Super elongation complex との機能的関 わりについての講演、Roeder 博士によるメディエーター複 合体の再構成に関しての講演、最後に山口先生による NELF の RNA 3’ プロセッシング制御に関する講演が行われまし た。メディエーター複合体による転写伸長制御の研究を行っ ている私自身にとって、これら全ての研究内容がとても興 11th EMBL Conference Transcription and Chromatin EMBL Advanced Training Centre, Heidelberg, Germany, 23-26 August 2014 熊藤 将之 ( 富山大学大学院 医学薬学教育部 ) 味深く刺激的な内容でした。国際シンポジウムに参加して、 転写の最先端の研究をされている先生方のお話を聞くこと ドイツはハイデルベルク。ドイツの中でも学問の中心地 が出来、とても貴重な機会となりました。シンポジウムの と し て 名 高 い こ の 地 で EMBL(European Molecular Biology Laboratory) に よ る 11th EMBL Conference Transcription and Chromatin が開催されました。 8 月も終盤、2014 年 8 月 23-26 日の四日間、今回の学会 が催されたわけですが、何年ぶりかの寒波が北ヨーロッパを 襲っていたこともあり、昼も比較的涼しく、夜になると上着 が欲しくなるような寒さが身体を纏いました。 市街地を離れ、平地よりもやや高い小山の上に EMBL は あります。EMBL の建物の構造は多少複雑で、DNA 二重ら せん構造をモチーフとした二つの通路が一階から最上階まで 延びており、片方のループからもう片方のループへと移る為 には水素結合を再現した渡り通路を通ることが必要で、構造 後の懇親会では、Robert Roeder 博士 ( 写真左)を含む世界 を把握するのに手間取ると同時に、あまり日本では見ること 的に有名な研究者の方々と直接に研究のお話をすることが のできないユニークな発想に心を奪われました。 でき、大変貴重な思い出に残る一時を過ごすことができま 日本とドイツの時間差は 7 時間。初の海外への渡航によ した。国際シンポジウムを主催された山口先生を含む転写 る疲れや時差ぼけにより、体が辛いこともありましたが、そ サイクルの先生方に深く感謝申し上げます。 れ以上に EMBL での学会は非常に興味深く、私を熱中させ てくれるものでした。その中でも興味深かった内容について 3 つほど紹介させていただきます。 1つ目は Patrick Cramer 氏による酵母を用いた in vitro で 若手海外派遣:ミーティングレポート の報告で、酵母の転写開始複合体とメディエーターのそれぞ れのコア (cPIC と cMed) の構造解析についての発表でした。 本領域の総括班では、班員の研究室に所属する若手研究者 転写開始から伸長へと移行する際には基本転写因子 TFIIB の や大学院生が海外の学会に参加して発表を行うことを支援 構造変換が重要であることを、結晶構造から示していました。 しています。本制度を利用して、ドイツの EMBL-Heidelberg また、メディエーターについての話題では、CTD に主に結 において 2014 年 8 月 23 日から 26 日にかけて開催された 合するとされるメディエーターの Head と Middle モジュー 11th EMBL Conference Transcription and Chromatin に参加 ルのみでは CTD のリン酸化は起こらず、Head、Middle モ した大学院生、熊藤将之さん(富山大学大学院医学薬学教 ジュールに加え Med14 を共発現することにより初めて CTD 育部 大熊研究室)のミーティングレポートを以下に掲載し のリン酸化が行われるとのことでした。Med14 は Middle と ます。 Tail モジュールを繋ぐサブユニットであることが報告されて NewsLetter Vol. 2 「転写サイクル」 P. 7 ミーティング・WS レポート 若手海外派遣:ミーティングレポート おり、CTD の結合とあまり関連がないような印象を受けて ロマチン上に長くとどまらないのではないかということが示 いたので、今回の報告は非常に驚くべきものでした。さらに 唆されました。同じ現象を見ているような実験においても、 Med26 が存在することにより、このリン酸化はさらに効率 調べる角度を変えることにより、このような興味深い発見が 的なものへと変わるとのことでした。メディエーター間の相 出てくるという実例を目の当たりにし、私自身も常に広い視 互作用によって Pol II の修飾がより強くなることは非常に興 野、柔軟な思考を持って自身の研究テーマに取り組む必要が 味深かったです。私自身、 メディエーターを研究している為、 あると気を引き締めることができました。 非常に印象深い発表でした。構造解析の手法を私自身は用い 他にも、基本転写因子である TFIID や、近年発見されたエ たことはありませんが、今回の発表しかり、構造面から生命 ンハンサー RNA、Polycomb 複合体、細胞分化に関する研究 現象を追っていくことの重要さ、楽しさを再認識することの など非常に魅力的な話題ばかりで、挙げればきりがないほど できる発表でした。 に内容が濃い会でありました。転写やクロマチン制御に関す 2 つ目は Jean-Christophe Andrau 氏による、Pol II の CTD る世界で最先端を行く研究者の皆様の成果を直接自身で見聞 についての話題です。Pol II のリン酸化と言えば 2 番目、5 きすることのできる、非常に素晴らしい機会であったと感じ 番目、7 番目の CTD のリン酸化がメジャーで、様々な実験 ています。 系において、転写の段階について知るためのマーカーとして 私も、今回の学会でポスターにて発表させていただきまし 使われています。今回は CTD の 7 つのアミノ酸 Tyr1-Ser2- た。英語を用いて会話をするといった経験はほとんど無かっ Pro3-Thr4-Ser5-Pro6-Ser7 のうち、最初の塩基である Tyr1 たため、多少の不安はありました。しかし、私の拙い英語を のリン酸化が転写にどのような影響を及ぼすかについての報 聞いて発表内容を理解していただけた喜びはこの学会中で一 告でした。一番目チロシンをフェニルアラニンに置換 (Y1F) 際大きいものであり、今後にあっても非常に重要な経験で することで、Pol II は高度にリン酸化されず分解され、最 あったと思います。 終的には細胞が死滅してしまうとのことでした。またこの 国際学会を初めて経験し、世界をリードする研究者の皆様 Tyr1 リン酸化はアンチセンス転写のプロモーター、エンハ の思考・発想の柔軟性には驚かされるばかりでしたが、その ンサーの機能にも関わるらしい、ということが報告されまし 分非常に良い刺激をいただくことができたと感じておりま た。転写 CTD の Ser のリン酸化の重要性については認識し す。 最後になりましたが、今回、新学術研究領域転写サイ ていましたが、今回の Thr1 リン酸化の報告から、Pol II の クルの援助のおかげで大変貴重な経験をさせていただくこと CTD の転写に対する影響の重要性について改めて考えさせ が出来ました。代表の山口先生および関係者の皆様に深く感 られました。 謝申し上げます。 3 つ目は Laszlo Tora 氏による SAGA 複合体についての話 題 で す。SAGA と は、Spt-Ada-Gcn5-Acetyltransferase の 略 称です。このタンパク質はクロマチンの修飾活性を持って おり、Pol II 転写の活性化に広範に関わっていることが知ら 「1分子イメージングトレーニングワークショップ」 レポート 複合体によるクロマチン修飾についてより詳細に解析する 椎名 政昭 ために、SAGA 複合体に対するアセチル化阻害剤、脱ユビキ (横浜市立大学大学院 医学研究科 生化学 ) れています。Tora 氏は以前も SAGA 複合体の抗体を用いた ChIP による機能解析を行っていたのですが、今回は SAGA チン化阻害剤を添加し、アセチル化 H3K9 とユビキチン化 H2B の抗体を用いて ChIP アッセイを行っていました。おも 「転写サイクル」領域のコンセプトの一つに、先端技術を駆 しろいことに、SAGA 複合体の抗体を用いた ChIP と今回の 使し、これまで見えなかったものを観るというものがあり 結果では、異なる結果を見せることが分かりました。このこ ます。このコンセプトのもとに、2013 年 12 月 17 日より とから、SAGA 複合体非常に動的に働く、つまり修飾後のク P. 8 NewsLetter Vol. 2 「転写サイクル」 ミーティング・WS レポート 「転写サイクル」ワークショップレポート 2日間に渡り、1分子イメージング技術を集中的に学ぶた が難しくなります。1分子観察を実現させるためには、何 めに、全国各地から8名の転写研究者が東京工業大学すず よりもまずバックグランドを可能な限り下げる必要があり かけ台キャンパス(横浜市)に集まりました。酵母や植物、 ます。そのために、試料に対する2種類の光の当て方が開 ホヤを研究材料とする研究者や、金属ナノクラスターを研 発されました。ひとつは、全反射照明法、もう一つは、薄 究対象とする応用物理研究者、免疫機構を研究テーマとす 層斜光照明法です。 る免疫研究者など、様々なバックグランドを持つ若手の研 全反射照明法は、試料が接着したカバーグラスに対して、 究者たちです。ちなみに、私自身は構造生物学を主要な解 対物レンズを通して浅い角度でレーザー光を入射させます 析手法としています。 (左下図 )。すると、浅い角度で入射したレーザー光は、試 料とガラスとの境界面で全光が反射します。反射して跳ね 返った光は、対物レンズを通して観測者の目に到達すれば単 に反射した光が観察されることになりますが、しかし、反射 光はレンズの端を通過するために観測者の目には届きませ ん。従って、この状態では視界は真っ暗で蛍光は全く観察 されないはずです。ところが実際には、カバーグラス上の 細胞成分のうち、カバーグラスのごく近くに存在する蛍光 物質のみが励起され1分子観察出来るのです。その理由は エバネッセント光にあります。エバネッセント光とは、レー ザー光を全反射させているにも関わらず、試料側にわずか に漏れ出す光の名称です。このエバネッセント光には面白 集まった研究者は皆1分子イメージングについては全く い性質があり、反射面からごくわずかの距離までしか届か の専門外です。新学術領域という枠組みがなければ、到底 ないにもかかわらず、入射光の最大4倍の強さを持つので 集まる機会のなかった面々でしょう。専門外の研究者が、 す。そのため、反射面にごく近い場所に存在する蛍光物質 最先端の技術に触れる機会を得られることは、新学術領域 のみが強く励起され、この蛍光のみが対物レンズを通して という枠組みの醍醐味だと感じました。 集まった8名に対 観測出来るのです。従って、この方法は細胞試料とスライ して、十川先生を筆頭に、十川研究室に所属する助教の深 ドガラスとの接触面に存在する細胞膜タンパク質などを1 川さんと院生の伊藤さんが指導に当たって下さいました。 分子レベルで観測するのに適しています。一方、 細胞核など、 自己紹介を終えて、十川先生による1分子イメージング カバーグラスからある程度離れた場所に存在する蛍光物質 の原理についてのレクチャーを受けました。私なりにまと は、エバネッセント光は届かないため観測はできません。 めますと、1分子のリアルタイムイメージングを行うため 薄層斜光照明法は、全反射照射よりも深い角度でレーザー にクリアすべきことは、主に3つあります。試料に対する 光の当て方、超高感度の CCD カメラ、そして蛍光融合タン パク質の発現が適切にコントロールされた安定発現細胞株 です。 <試料に対する光の当て方> 一般的な落射照明により細胞に光を当てると、光は細胞 全体を透過します。透過する途中で多くの蛍光分子を励起 する他、様々な細胞成分にも光が当たるため、全体として バックグラウンドが高くなります。その結果、 落射照明では、 昼間に星が見えないのと同じ理屈で1分子を観察すること HILO;highly inclined and laminated optical sheet microscopy ( 薄層斜光照明法 )。 徳永・十川研究室 HP より。 NewsLetter Vol. 2 「転写サイクル」 P. 9 ミーティング・WS レポート 「転写サイクル」ワークショップレポート 光を当てます(左下図) 。そのため、レーザー光の一部は屈 こ れ は、GFP 標 識 し た 折しながらガラスを通過し細胞を横断します。この細胞を横 EGF 受容体を安定発現さ 断するレーザー照射面の厚みを十分薄く調節することで、照 せた HeLa 細胞に対して、 射を受ける僅かな領域に存在する蛍光物質のみを励起するこ ローダミン標識した EGF とが可能になります。余計な蛍光物質や自家蛍光物質が励起 を 加 え、 両 者 の 結 合 に されずバックグランドを低く抑えることが出来ます。薄層照 よって受容体が活性化さ 射法では、エバネッセント光を利用しないため、S/N は全反 れる様子を1分子レベルで観察しようという実験です。生 射照明法より劣りますが、細胞の任意の断面を観察可能であ きた細胞でのリアルタイム1分子観察では、蛍光シグナル り、核の観察を行う転写研究ではなくてはならない照射方法 が微弱であるため人の目では観ることはできません。その といえます。 ため、接眼レンズを目で覗くという作業はなく、観察は人 <超高感度の CCD > 間の目より何倍も高感度である EM-CCD を介して行います。 浜松ホトニクス社製の EM-CCD (Electron Multiplying CCD) 各蛍光分子はそれぞれ異なる波長で励起され、2台の EM- は、超高感度の CCD カメラということです。こまいかスペッ CCD によって別々に観測され、白黒の映像として異なるモ クについては分かりませんが、トレーニングワークショップ ニター上に出力されます。これらをビデオ映像として記録 時に配布された資料には次にように書いてあります。 「注意 し、後から合成することで一つの動画として観ることがで 事項 : 顕微鏡操作は、注意深く行う。EM-CCD カメラは強 きます。 い光が入ると壊れるので、使用中は室内灯を付けない。不注 まず、EGF を添加しない状態で、GFP 融合 EGF 受容体の 意な操作により高価な機器が破損する。 」この記載により、 観察をスタートします。その状態からローダミン標識され 相当の高感度カメラであろうことは素人の私にも十分に伝わ た EGF を細胞に添加すると、EGF と EGF 受容体との結合に りました。 伴って、細胞膜表面の EGF 受容体の運動性が変化する様子 <蛍光融合タンパク質の発現量がコントロールされた細胞> を1分子レベルでリアルタイム観察できます。この EGF 受 生体分子を1分子観察するためには、観察したいタンパク 容体が映し出されているのとは別のモニターにはローダミ 質を EGFP などの蛍光タンパク質と融合させ、安定に発現さ ン標識された EGF が映し出されています。添加された EGF せた細胞株を用いるのが標準的な方法です。その際に重要な は、EGF 受容体と結合するとブラウン運動が止まり蛍光が のが、蛍光融合タンパク質の発現量です。発現量が高過ぎる 観察されます。溶液中でブラウン運動している非結合状態 と、顕微鏡での観察範囲内で蛍光タンパク質の密度が高くな の EGF は、動きが速く、観測範囲から容易に飛び出してし り過ぎるために、蛍光が重なり合ってしまい1分子として観 まうために観測されません。要するに、発射された弾丸が 察できません。従って、蛍光融合タンパク質の発現を誘導す 目の前をかすめてもはっきりとは認識できないのと同じこ るエンハンサー / プロモーターとして、活性が十分に低いも とが起こっているのです(だと思います)。当初、1分子観 のを用いる必要があります。 レクチャー終了後、いよいよ実際の観察の様子を見せても らいます。1分子観察用の顕微鏡装置のある部屋は比較的広 いものの、参加者が全員入ればそこそこ混んでいる電車内程 度の密度になります。そのうえ、室内の電灯は消されている ので、潜水艦の中にいるような雰囲気になります。今回の実 習では、2種類の細胞について2つの異なる照明法を用い て1分子観察を行いました。一つ目の実験は、全反射照明法 を用いた、EGF と EGF 受容体の2色同時イメージングです。 NewsLetter Vol. 2 P. 10 「転写サイクル」 ミーティング・WS レポート 「転写サイクル」ワークショップレポート す。30 fps、つまり一秒間に 30 枚の静止画像が含まれるの で、10 秒では 300 枚、基本的に手作業なので、解析作業は 骨が折れます。そのうえ、解析で用いたソフトウェアの動作 が不安定で今どき突然フリーズするのです。完全な玄人向け ソフトで、全くユーザーフレンドリーではなく、気の利いた バックアップなどはされません。セーブしたところからやり 直しです。こまめなセーブが大変重要でした。このような地 道な解析作業の末に、分子の滞在時間や共局在などの情報が 得られます。(このワークショップの後、当日もお世話になっ た大学院生の伊藤さんがプログラムを開発し、自動化したと 察に抱いていたイメージでは、細胞内で1分子が動いてい 聞きました。) く様子を経時的に観測できると思っていましたが、そうで このような具合で2日間の日程はあっという間に終了しま はなく、細胞内小器官など、動きが遅い分子と結合して初 した。この WS を通じて、1分子観察という先端技術に抱い めて蛍光が観察されることを知りました。また、蛍光物質 ていた漠然としたイメージは、より正確なものになったと思 に励起光を当て続ければ次第に消光していきますが、GFP います。生きた細胞内で1分子をリアルタイムに観察するこ 融合タンパク質などの1分子観察では、輝点の蛍光強度が とを可能にする技術は大変なものであり、門外漢の研究者が 段階的に低下することはなく、消光イコールその輝点の消 容易に手を出せるものではありません。このような技術に具 失を意味します。従って、ある分子の位置(輝点)を長時 体的に触れることが出来るのは、新学術領域研究ならでは、 間に渡って継続的にトレースすることはできないというこ と感じました。一方で、このような先端技術もまた万能で とも分かりました。 はなく、観測できることとできないこと、得意なことと不得 次に、ヒストンとヒストン関連タンパク質の1分子観察 意なことがあることを再認識しました。先端技術は、例えれ を行いました。(使用した細胞は、十川研究室で実際に進 ば F1 マシンのようなもので、使う目的は限定されてきます。 行中の共同研究のものであるため、具体的なタンパク質名 いくら性能が良いからといって、F1 マシンでコンビニに買 はここでは伏せておきます。 )今度は、核内での観察です。 い物に行くのは、マシンを開発した人にとっても運転してい 全反射照明は使えないので、薄層斜光照射法によって観察 る人にとっても好ましい状況とは言えません。問題は、この し ま す。 こ の 実 験 で は、FRAP(fluorescence recovery after マシンを何の目的に使うのかです。適した目的に使えば、と photobleaching) という技術も体験しました。これは、視野 てつもない力を発揮するはずです。 の一箇所にレーザーをスポット状にあて蛍光をブリーチさ そのためには、まずは技術そのものを正確に理解し、でき せ、 その後レーザーを切り、 蛍光の回復する様子(強度、時間) ることとできないことについて具体的なイメージを持つ必要 を観測します。さすがにヒストンなので、 動きが少ないです。 があると思います。このワークショップに参加した研究者は、 撮影した映像を翌日に解析しました。実験により得られ 1分子観察という先端技術を以前よりずっと正確にイメージ たビデオ映像をパソコン上で再生し、注目する輝点を決め できるようになったと思います。各自が研究室に戻り、様々 て、各フレームを紙芝居のようにめくっていきます。フレー な生物学的テーマについて問題解決を迫られる中で、1分子 ムをめくるごとに、輝点 観察技術は強力な選択肢となるはずです。 の位置は少しずつ変化し 最後に、二日間に渡る充実したワークショップを開催して てきます。その輝点をマ 下さった十川先生、ワークショップの期間中、密着してご指 ウスでいちいちクリック 導下さった深川さんと伊藤さんに感謝を申し上げます。 しながら追跡していきま NewsLetter Vol. 2 「転写サイクル」 P. 11 ミーティング・WS レポート 「転写サイクル」ワークショップレポート 「ChIP-Seq データ解析トレーニングワークショップ」 レポート 鈴木 香絵 ( 横浜市立大学 大学院医学研究科 生化学) 得られた fastq 形式のデー タ を、FastQC と い う ソ フ トウェアを用いて品質を確 認 し、 さ ら に sam お よ び bam フォーマットへのファ 2014 年 3 月 6 日、7 日の 2 日間の日程で九州工業大学 イル変換を行い、bowtie で 飯塚キャンパスで開催された第 2 回トレーニングワーク マッピング、MACS2 でピー ショップに参加させていただきました。今回のトレーニング クコールまでを実際に行いました。以上のように、ChIP-seq ワークショップは、ChIP-seq により得られるデータの解析 データの解析方法について、実際コンピューター端末と格闘 方法を藤井聡先生と博士研究員の飯田緑さんから講義をして しながら、基礎からしっかりと学ぶことが出来ました。 2 いただき、九州工業大学の実習室のパソコンをお借りして学 日目は R/Bioconductor の基礎を藤井先生から学び、その基 んだことをすぐさまに実行してみるという実践形式で行われ 礎知識を使って、1 日目に MACS2 で得られたピークデータ ました。レクチャーを受けつつ、実践し、わからないところ を用いて遺伝子のアノテーションを飯田さんの指導のもとに はその場で質問するという、バイオインフォマティクスに馴 行いました。ワークショップ1日目に MACS2 で求めた結果 染みのない入門者の私にとっては、願ってもいない形式でし を R へ読み込み、データの書き出し、グラフ描画など、R に た。 慣れたところで、後半は Bioconductor パッケージの一つで 1日目の前半は、ChIP-seq データの解析に広く利用され ある ChIPpekAnno を用いて実際に遺伝子のアノテーション ているコンピューター OS である Linux の基本操作について、 を行い、結果をグラフに出力するところまで学びました。 藤井先生から講義を受けました。Linux の基本操作が出来る また実習に加え、今回のトレーニングワークショップで ようになったところで、後半に ChIP-seq 解析方法を博士研 は、ChIP-seq 研究についてドライとウェットの研究者によ 究員の飯田さんから学びました。 る研究講演も行われました。1 日目は九州工業大学の矢田哲 Linux の基本操作のレクチャーでは、Linux とは何かから 士先生による ChIP-seq を用いたドライ研究についての講演 始まり、Linux を使うための環境はどうするのかなど、初歩 が、2 日目は九州大学の大川恭行先生による ChIP-seq を用 から教えていただきました。さらに、Linux を使用する上で いたウェット研究についての講演が行われました。ドライと の基本となるコマンド操作や裏技も教えていただきました。 ウェットの二つの観点から ChIP-seq を成功させるためのノ 順を追いながらの講義でしたので、Linux に馴染みのない私 ウハウをいただきました。 でもついていくことができました。ChIP-seq 解析の講義は、 今回のワークショップでは PC を使って実践的な解析を学 解析の方法を1から順に学ぶことが出来るように実践的に構 ぶことが出来たので、とても有意義なワークショップだった 成されていました。まず初めに NCBI の GEO からの sra 形 と感じました。これまでドライ研究に馴染みのない私にとっ 式のデータを取得し、fastq 形式への変換方法を学びました。 ては、とても内容の濃い二日間で正直なところ頭が混乱した ところもありました。しかし、基礎から丁寧に教えていただ いたので、WS 終了後にはドライ、ウェット双方のことが自 身で出来るのではないかと期待が持てました。またこのよう な機会があればぜひ参加してみたいと思います。 最後になりましたが、このような実践的なドライ解析方法 を学ぶことが出来る機会を与えてくださった先生方、今回講 師を努めてくださった藤井先生、飯田さん、そしてアシスタ ントとしてお手伝いしてくださった九州工業大学の学生さん 達にこの場を借りて厚く御礼を申し上げます。 NewsLetter Vol. 2 P. 12 「転写サイクル」 班員活動報告 「転写サイクル」セミナー 「転写サイクル」第3回領域会議 日時:2013 年 12 月 6 日(金) 日時:2014 年 8 月 4 日(月)~ 6 日(水) 場所:東京工業大学すずかけ台キャンパス B2棟2階B 場所:ホテル慶山(山梨県いさわ温泉) 226講義室 世話人:山口 雄輝(東京工業大学 生命理工学研究科 生命情報専攻) 演者:Prof. Cheng-Ming Chiang (UT Southwestern Medical Center at Dallas) 演 題:Epigenetic Control of Chromatin-Dependent 「転写サイクル」セミナー 日時:2014 年 9 月 12 日(金) Transcription − Lessons from p53, AP-1, Brd4 and HPV 場所:東京工業大学すずかけ台キャンパス B2棟2階B 世話人:山口 雄輝(東京工業大学 生命理工学研究科 生命情報専攻) 226講義室 演者:Dr. Masahiko Imashimizu 「転写サイクル」第1回トレーニングワークショップ (NIH National Cancer Institute, USA) ライブセル蛍光1分子イメージング 演 題:Transcription elongation: heterogeneous tracking of 日時:2013 年 12 月 17 日〜 18 日 RNA polymerase and its biological consequence 場所:東京工業大学すずかけ台キャンパス 世話人:山口 雄輝(東京工業大学 生命理工学研究科 生命情報専攻) 世話人:十川 久美子(東京工業大学 生命理工学研究科 生命情報専攻) International Conference on Transcription Cycle 2014 冬の若手ワークショップ 2014 日時:2014 年 11 月24 日(月) 13:00 ~ 18:00 日時:2014 年 1 月 30 日〜 2 月 1 日 場所:東京工業大学大岡山キャンパス 蔵前会館 場所:磯辺ガーデンホテル(群馬) 世話人:山口 雄輝(東京工業大学 生命理工学研究科 生命情報専攻) 世話人:山口 雄輝(東京工業大学 生命理工学研究科 生命情報専攻) 共催:新学術『転写サイクル』領域、 『転写代謝システム』 領域および転写研究会の3者共催 「転写サイクル」セミナー 日時:2014 年 11 月 25 日(火)17:00 〜 19:00 場所:筑波大学 健康医科学イノベーション棟 8 階講堂 「転写サイクル」第2回トレーニングワークショップ 演者:Prof. Robert G. Roeder ChIP-Seq データ解析 (the Rockefeller University) 日時:2014 年 3 月 6 日〜 7 日 演題:Transcriptional Regulatory Mechanisms in Animal 場所:九州工業大学飯塚キャンパス Cells 世話人:藤井 聡(九州工業大学大学院 情報工学研究院 生命情報工学研究系) 世話人:久武 幸司(筑波大学医学医療系 遺伝子制御学研究室) 高等研レクチャー 2014 クロマチン・デコーディング (クロマチンの動態と高次生命現象への展開) 「転写サイクル」セミナー 日時:2014 年 11 月 27 日(木)16:00 〜 17:30 場所:富山大学 医薬系キャンパス 薬学研究棟2 セミナー室8 日時:2014 年 5 月 16 日(金) 13:30 ~ 17:00 演者:Prof. Robert G. Roeder 場所:東京大学伊藤謝恩ホール (the Rockefeller University) 協力:新学術領域研究「転写サイクル」 「動的クロマチン構 演題:Transcriptional Regulatory Mechanisms in Animal 造と機能」 「ゲノム複製、修復、転写のカップリングと普遍 Cells 的なクロマチン構造変換機構」 「ゲノムを支える非コード 世話人:大熊 芳明(富山大学大学院医学薬学研究部) DNA 領域の機能」 NewsLetter Vol. 2 「転写サイクル」 P. 13 今後の予定 ・ イベント情報 「冬の若手ワークショップ 2015」開催のお知らせ プログラム概要 ( 変更されることがあります): ● 2/5(木) さて、今年も「冬の若手ワークショップ 2015」を転写研 究会、新学術「転写代謝」領域、新学術「転写サイクル」領 域の三者合同で開催する運びとなりました。つきましては参 加申込等の詳細をご案内させていただきます。お忙しい時期 とは存じますが、万障お繰り合わせの上ご参加下さいますよ うお願い申し上げます。また、本ワークショップに興味を持 たれる方が周囲にいらっしゃいましたら、本告知をご回覧い 13:00 - 14:00 受付 14:00 - 17:00 口頭発表 18:00 - 19:00 夕食 19:15 - 21:15 口頭発表 ● 2/6(金) 07:00 - 08:00 朝食 ただけますと幸いです。 09:00 - 12:00 口頭発表 日 時:2015 年 2 月 5 日(木)〜 7 日(土) (2 泊 3 日) 14:00 - 15:00 別講演:小原 有弘先生(医薬基盤研 会 場:ホテル松本楼(伊香保温泉) 群馬県渋川市伊香保町 164 http://www.matsumotoro.com 参加費用:24,600 円(内訳 宿泊費 10,410 円× 2 泊、2 12:00 - 13:00 昼食 究所) 15:00 - 17:00 ポスター発表 18:00 - 20:00 懇親会 日目昼食代 1,050 円、2 日目懇親会費 2,700 円) (予定) ● 2/7(土) 参加を希望される方は、転写サイクル HP (transcriptioncycle. 解散 08:30 - 11:30 口頭発表 org) から参加登録用 WEB ページにアクセスしていただき、 必要事項のご入力をお願い申し上げます。 登録後に返信されるメールに記載された金額をご確認の上、 昨年度「冬の若手ワークショップ 2014」の様子 平成 27 年 1 月 9 日(金)までにお振込み下さい。 参加登録〆切:平成 27 年 1 月 9 日(金) 発表形式:口頭またはポスター 発表要旨:A4 サイズ1枚、Word file(演題、発表者、所属 も含む)。要旨見本は転写サイクル HP よりダウンロード可 能です。 要旨提出〆切:平成 27 年 1 月 9 日(金) 要旨提出先:筑波大学 大徳浩照(hiroakid[at]tara.tsukuba. ac.jp) ご不明な点は、以下までご連絡ください。 tmsystem[at]tara.tsukuba.ac.jp 筑波大学 深水研究室 新学術領域「転写代謝システム」事 務局 尾崎 瑞子 NewsLetter Vol. 2 「転写サイクル」 P. 14 今後の予定 ・ イベント情報 転写サイクル ・ イベントカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 ワーク ショップ ワーク 公募班 第2回トレー まとめ。成果報告書提出 ショップ ワーク 平成29年 評価結果の シンポジウ 通知 ム 公募班(H27~28)の 第4回班会 公募班 議 (H27~ 28)の決定 第2回国際 平成27年度の成果とり シンポジウ まとめ。成果報告書提出 ムと第5回 班会議の合 2016 ワーク アリング 平成26年度の成果とり ショップ 冬の若手 第3回班会 ヒアリング 第1回国際 公募 まとめ。成果報告書提出 2015 冬の若手 中間評価ヒ 議(山梨) 平成25年度の成果とり (群馬) 平成28年 頼。提出 (ゲノムワイ (群馬) ワーク ニングWS (1分子観察) 議(箱根) 中間評価資料の作成依 ショップ 冬の若手 議(長崎) 26)の決定 ニングWS 12月 第1回班会 第2回班会 (H25~ ド情報解析) 2014 11月 第1回トレー まとめ。成果報告書提出 2013 冬の若手 10月 平成24年度の成果とり (鬼怒川) 平成27年 9月 上げ 冬の若手 平成26年 8月 領域の立ち 平成24年 平成25年 7月 同開催 事後評価ヒ 平成28年度の成果とり アリング まとめ。成果報告書提出 ショップ ヒアリング 評価結果の 通知 5年間の成果とりまと 2017 め。報告書作成。 将来の予定は目安であり、変わっていく可能性があります。ホームページ等で随時、情報を更新していきますので、ご確認ください。 発 NewsLetter Vol. 2 P. 15 「転写サイクル」 行 文部科学省科学研究費補助金「新学術領域(研究領域提案型)」平成 24 年度〜 28 年度 「転写サイクル」 Integral Understanding of the Mechanism of Transcription Cycle through Quantitative High-resolution Approaches Grant-in-Aid for Scienctific Research on Innovative Areas "Transcription Cycle" 高精細アプローチで迫る転写サイクル機構の統一的理解 発行責任者 山口 雄輝 (東京工業大学 大学院生命理工学研究科) 編集責任者 緒方 一博 (横浜市立大学 大学院医学研究科)