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スプレー缶製品の使用上の安全性[PDF形式]

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スプレー缶製品の使用上の安全性[PDF形式]
目
1.目的
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.テスト実施期間
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.スプレー缶の構造等
4.概要
次
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
5.事故の内容
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6.主な事故事例
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7.テスト対象商品群
8.テスト結果
5
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
1) 凍傷や凍結による事故
2) 引火による事故
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3) 自動車内での破裂事故
9.調査項目等
4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10.消費者へのアドバイス
9
12
17
20
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
25
11.業界への要望
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
26
12.行政への要望
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
27
<資料1.参考テスト結果>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
28
<資料2.
「凍傷の危険性」参考資料> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
34
<資料3.テスト方法>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
38
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
42
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
44
<資料4.仕様一覧>
<資料5.表示例>
1.目的
塗料、殺虫剤、ヘアスプレー、制汗消臭剤など、スプレー缶製品(エアゾール製品)は日常
生活のさまざまなところで使われている。社団法人 日本エアゾール協会の統計によると、2004
年のエアゾール生産量は約 5 億 7 千万缶で、国民 1 人当たりの年間生産量に換算すると 4.5 缶
となっている*1)。
国民生活センター危害情報システム*2)には、2000 年度以降 2006 年 8 月 31 日までの登録分
で「スプレー缶」に関する事故事例が 211 件寄せられている。内容を見てみると、
「筋肉用スプ
レーをサポーターの上から噴射し、暫くしてタバコを吸ったところ、サポーターに火が付いた」
「自動車内に置いてあった塗料スプレー缶が破裂した」など、従来からその危険性が指摘され
ている事例や「制汗消臭剤を手の両甲にうけ、皮膚が紫色になった」など、これまであまり知
られていない凍傷に関する事例が寄せられていた。事故は、消費者の使用方法に起因するもの
もあるが、製品に何らかの問題があると思われるものもあった。
国民生活センターでは、以前スプレー缶の使用上の安全性に関して消費者へ情報提供*3)した
が、その後もスプレー缶の事故が後を絶たない。中には、本来は行ってはいけないとされてい
る危険な使用方法で重篤な事故が発生しているケースもある。そこで、繰り返し起こってしま
う事故を未然に防止するため事故事例の分析を行い、事例ごとに再現テストを行うことにより、
商品群や銘柄によって危険性にどのような違いがあるのか調べることとした。これらの分析結
果をもとに、スプレー缶の使用上の安全性について消費者へあらためて情報提供することとし
た。また、スプレー缶の適切な廃棄方法についても情報提供を行うこととした。
2.テスト実施期間
検体購入
:2006 年 6 月~7 月
テスト及び調査期間:2006 年 6 月~8 月
*1)エアゾール産業新聞社「2006 エアゾール市場便覧」より
*2)商品やサービス等により生命や身体に危害を受けたり(危害情報)
、そのおそれがあった情報(危険情報)を全国の危害情
報収集協力病院及び消費生活センターからオンラインで収集・分析し、消費者被害の未然・拡大防止に役立てることを目的
として作られたシステムである。
*3)平成 12 年 11 月公表「スプレー缶の破裂・爆発に気を付けて」
1
3.スプレー缶の構造等
1)スプレー缶の内容物(噴射剤)について*4)
スプレー缶の主な内容物は、目的成分とそれを溶かすための溶剤、そして噴射剤などであ
る。噴射剤として、かつては不燃性のフロンガスが使用されてきた。しかし、フロンガスが
地球のオゾン層を破壊するということで、国際的にその使用が規制され、日本では 1980 年
頃から徐々にフロンガスの使用が減少し、1988 年に「特定物質の規制などによるオゾン層の
保護に関する法律(オゾン層保護法)」の施行によりフロンガス使用が規制され、1990 年か
らスプレー缶へのフロンガス使用量は特殊用途を除き激減した。
現在使用されている噴射剤として代表的なものはLPガス*5)(LPG、液化石油ガス)、DME
*6)
(ジメチルエーテル)だが、これらは両方ともフロンガスと違い可燃性である。この他、
一部に不燃性の炭酸ガスや窒素ガスが用いられている。
2)スプレー缶の噴射のメカニズムについて
スプレー缶の構造を図 1*7)に示す。噴霧用ボタンを押すことにより、スプレー缶内に充填
されている内容物が噴射される構造となっている。
図 1.スプレー缶の構造
*4) 平成 12 年 11 月公表「スプレー缶の破裂・爆発に気をつけて」より
*5) 主な構成成分であるプロパンの沸点は-45℃、ブタンの沸点は-10℃(「理化学辞典」より)
*6) 沸点は-24℃(「理化学辞典」より)
*7) 社団法人 日本エアゾール協会ホームページの図をもとに作成
2
4.概要
国民生活センター危害情報システムに寄せられた事故事例を分析し、事故の再現テストを行
い、事故に至るメカニズムを検証した。
●スプレー缶による事故件数は 211 件。うち、137 件でけがをしていた
スプレー缶による「危害情報」は 137 件、
「危険情報」は 74 件寄せられている(2000 年 4
月から 2006 年 8 月 31 日までの登録分)。
「危害情報」137 件のうち、けがの内容は「熱傷(や
けど)」(51 件:37.2%)
、スプレー液が目に入るなどの「異物の侵入」
(20 件:14.6%)、ス
プレーによる皮膚の発疹、かぶれなどの「皮膚障害」(11 件:8.0%)の順で多かった。
●人体に噴射して使用するコールドスプレー等は、使い方によっては凍傷の危険性が高くなる
ことが分かった
約 35℃に保ったお湯を循環させた試験管の表面を人体の皮膚に見立て、スプレーを直接噴
射及び、試験管にサポーター(または靴下)を被せて、その上から噴射した。その結果、至
近距離で長時間噴射したり、横向きで噴射すると、0℃以下の温度が持続して凍傷の危険性が
高くなることが分かった。
●スプレー噴射直後に火種が近づくと、内容物の可燃性や噴射量など様々な要因により引火す
ることがあった
コールドスプレーや消炎鎮痛剤などの人体に噴射して使用するスプレーや、防水剤などを、
それぞれサポーターやスキー用グローブに噴射した直後、ライターの火を近づけると引火す
ることが分かった。
●パーティー用のスプレーは、内容物の種類などによって、噴射物に引火するものがあった
パーティー用のスプレーの引火性は、噴射物に可燃物を多く含むものと、不燃性または難
燃性材質を使用しているものとの違いなどによって異なり、噴射物に引火し、火が噴射物に
沿って上ってくるものと、引火しないものとがあることが分かった。
●スプレー缶の内容物の重量が大きいものは、高温環境下で破裂しやすいことが分かった
車のダッシュボード上にスプレー缶を放置しておいたところ、最初に噴霧用ボタンが飛び、
続いてスプレー缶の底が抜けて破裂に至ることがあった。破裂は内容物の重量が大きいもの
ほど起こりやすいことが分かった。破裂時の自動車内の温度は約 70℃、ダッシュボードの温
度は 90℃に達していた。自動車のフロントガラスには、スプレー缶の破裂の衝撃によるヒビ
が生じていた。また、破裂までには至らなかったが、噴霧用ボタンが付いていた部分が膨ら
み、噴霧用ボタンが飛んだものもあった。
3
5.事故の内容
1)年度別件数
スプレー缶によりけがをしたという「危害情報」は、2000 年 4 月から 2006 年 8 月 31 日
までの登録分で 137 件(協力病院から 76 件、消費生活センターから 61 件)寄せられている。
このほか、けがはしなかったが、そのおそれがある「危険情報」は、消費生活センターか
ら 74 件寄せられている。この両者を合わせると 211 件に上る(図 2)。
図 2.年度別件数
件
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
44
39
35
33
18
18
11
31
7
12
7
21
26
24
24
21
危険
危害
22
7
1
15
6
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
年度
注)
「危害情報」とは、けがをした事故情報のことをいう。また、
「危険情報」とは、けがはしなかったが、そのおそれがある事
故情報のことをいう。
2)性別・年代別
けがをした「危害情報」137 件のうち、女性 72 件(52.9%)、男性 64 件(47.1%)で、や
や女性の方が多かった(不明1件を除く)。
年代別に見ると、40 歳代が 27 件、10 歳未満が 25 件、20 歳代・50 歳代が各 18 件の順で
多い。
3)けがの内容
「危害情報」137 件のうち、けがの内容は「熱傷(やけど)」が最も多い(51 件:37.2%)。
この他、スプレー液が目に入るなどの「異物の侵入」
(20 件:14.6%)
、スプレーによる皮膚
の発疹、かぶれなどの「皮膚障害」
(11 件:8.0%)などである。
けがをした部位は、肩から手指までの部位が最も多く(30 件:21.9%)、次いで、顔面(24
件:17.5%)
、頭部(15 件:10.9%)の順であった。
4
4)けがの程度
けがを程度別に見ると、病院に寄せられた 76 件のうち、入院を要したもの(要入院)が
11 件(14.5%)、通院を要したもの(要通院)が 38 件(50.0%)だった。
2005 年度に国民生活センターに寄せられた病院危害情報全体(9,208 件)では、要入院が
525 件(5.7%)、要通院が 5,092 件(55.3%)であったことから、スプレー缶の事故では、
要入院の割合が、全体の要入院の割合よりも 8.8%高いことが分かる(図 3)。
また、消費生活センターに寄せられた 61 件のうち、医者にかかったのは 39 件(63.9%)、
このうち 1 ヶ月以上のけがであったケースが 9 件(14.8%)あった。
図 3.けがの程度別件数(病院危害情報)
要入院, 525
治療不要, 27
全体(n=9,208)
要通院, 5,092
即日治療完了, 3,564
治療不要, 1
スプレー缶(n=76)
要入院, 11
0%
10%
要通院, 38
20%
30%
40%
即日治療完了, 26
50%
60%
70%
80%
90%
100%
5)スプレー缶の内容
「危害情報」137 件のうち、スプレー缶の内容の分かるものが 105 件あった。そのうち、
件数の多いものは殺虫剤 13 件(12.4%)、ヘアスプレー12 件(11.4%)、消臭剤 11 件(10.5%)
だった。
6.主な事故事例
1)凍傷や凍結による事故
【事例 1】
小学生の娘が制汗消臭剤を手の両甲に受け、皮膚が紫色になり、病院へ行ったところ、凍
傷と言われた。跡が残るらしい。(10 歳代、女性)
【事例 2】
パソコンの埃を飛ばすスプレーを誤って太腿にかけた。2~3 週間たつが、シミになって痕
が残った。5 センチくらいのシミで気になる。注意書きには人体に向けるなと書いてあるが、
5
ノートパソコンを膝に載せて使っていたところ、先につけたノズルが外れ、足にかかった。
そのときは冷たいだけだったが、痕が消えない。医者にはかかっていない。
(20 歳代、男性)
【事例 3】
ホームセンターで購入したシリコンスプレーを使用した。スプレーが出にくかったため、
ノズルを押し続けたところ、指が凍傷になった。液がかかると凍傷になるおそれがあると注
意書きはあるが、指にかかったかどうかはよくわからない。(40 歳代、男性)
2)引火による事故
(1)人体に噴射して使用するスプレーによる事故
【事例 4】
ソフトボールをしている。筋肉痛を和らげ、その効果を長時間持続させようと思い、タオ
ル地の伸縮性の手首用サポーターの上から筋肉用スプレーを噴射した。しばらくしてタバコ
を吸ったところ、サポーターにポッと火がついた。サポーターはすぐ外し、やけどはしなかっ
た。取扱説明書は破棄した。スプレー缶には火気厳禁と書かれている。(30 歳代、男性)
(2)パーティー用スプレーによる事故
【事例 5】
パーティーグッズのスプレー缶をかけあっていたところ、ケーキのろうそくの火に引火し
てやけどした。(30 歳代、女性)
(3)ガス抜き時の事故
【事例 6】
ガスレンジの横で制汗剤のスプレーのガス抜きをしていたところ、レンジの火が引火し、
やけどした。
(20 歳代、女性)
【事例 7】
防水スプレーの缶の中のガスを抜いているときに、近くの火に引火し、火柱により顔面を
やけどした。
(50 歳代、女性)
【事例 8】
約 5 年前に購入したヘアスプレー。当初からノズルが不良品で詰まりがちであったため、
ほとんど使用していなかった。捨てるために流し台でスプレー缶に穴を開け、中身を出した
ところ、突然爆発して炎が天井まで上がり、右手首、左手下腕に 2 度のやけどを負った。
(50
歳代、女性)
6
3)破裂や爆発による事故
(1)自動車内での事故*8)
【事例 9】
車の中に木工塗料のスプレー缶 2 本を置いていたところ、1 本が破裂した。フロントガラ
スが破損し、塗料が室内に飛散した。車はすぐに修理に出した。けがはしていない。(20 歳
代、女性)
【事例 10】
2~3 ヶ月前、カー用品店で除菌スプレー缶を購入した。未使用のまま、車内の前方ダッシ
ュボックスに置いていたところ、爆発し、ダッシュボックスが破損した。フロントガラスに
もひびが入った。スプレー缶に欠陥があるのではないか。けがはしていない。(30 歳代、男
性)
【事例 11】
3 日前に購入したガラスクリーナーのスプレー缶を車の座席に置いて駐車場に止めていた
ところ、スプレー缶が爆発し、フロントガラスにひびがはいってしまった。けがはしていな
い。(40 歳代、女性)
(2)火中での事故
【事例 12】
たき火中にスプレー缶が爆発して、顔面・頭部にやけどを負った。(50 歳代、男性)
4)廃棄時の事故
【事例 13】
虫除けスプレー缶を使い切ったことを確認のうえ、家中の窓を開け、火の気のない、窓か
ら 1 メートルほど離れた場所で缶切りを使って 1 箇所穴を開けたところ、火が出て、顔、両
腕をやけどし、髪も焼けた。5 日たった今でも顔中包帯で、車の運転もできず、仕事にもい
けない。メーカーに現物を送ることにしているが、治療費等を賠償してほしい。また、火が
出た原因も調査してほしい。穴を開けることは自治体で決まっている。(20 歳代、女性)
【事例 14】
古い制汗剤スプレーを捨てるため、火気のない台所でキリを用いて穴を開けたところ、突
然炎が吹き出し、左指に水疱状やけどを負った。しばらく燃え続けたため、シンク内の日用
品が溶け、戸棚天井がこげた。メーカーに「穴を開けて廃棄」と表示していないと言われた
が、スプレー缶は穴を開けて捨てるものと思っていた。(30 歳代、女性)
*8)
【事例 10】
【事例 11】では「爆発」と表現しているが、正確には「破裂」に該当するものである。しかし、消費者からの
申し出情報という点を考慮し、
「爆発」のままとした。
7
7.テスト対象商品群
今回のテスト対象商品群を表 1 に示す。スプレー缶には塗料や殺虫剤などの家庭用品、ヘア
スプレーやコールドスプレーなどの人体用品、医薬品、工業用品など様々な商品がある。今回
は、国民生活センター危害情報システムに寄せられた事故事例に基づき、事故の再現テスト及
び検証を行うため、特定の銘柄でのテストは行わず、商品群ごとにテストを行うこととした。
テスト対象商品群は、合計 18 商品群(46 銘柄)とした。
表 1.テスト対象商品群
分類
家
庭
用
品
人
体
用
品
商品群
銘柄数
分類
商品群
銘柄数
塗料
8銘柄
医薬品 消炎鎮痛剤
2銘柄
殺虫剤
1銘柄
工業
防錆潤滑剤
用品
2銘柄
殺虫剤
(大量噴射タイプ)
5銘柄
自動車用消臭剤
2銘柄
室内消臭剤
1銘柄
自動車 自動車用ガラス
用品 クリーナー
2銘柄
防水剤
2銘柄
ヘアスプレー
1銘柄
コールドスプレー注1)
2銘柄
制汗消臭剤
5銘柄
足臭防止剤
3銘柄
日焼け止めスプレー
2銘柄
タイヤクリーナー
そ
の
他
パーティー用スプ
レー(噴射物が紐状)
パーティー用スプ
レー(噴射物が雪状)
ブロワー注2)
1銘柄
2銘柄
2銘柄
3銘柄
テスト対象商品群
:合計18商品群(46銘柄)
注1) コールドスプレー・・・スポーツやレジャー用の冷却スプレー
注2) ブロワー・・・コンピューター上の埃を吹き飛ばす目的などで使用されるスプレー
(なお、このテスト結果は、テストのために入手した商品のみに関するものである。)
8
8.テスト結果
これまであまり再現テストが行われることのなかった事故事例について、事例ごとに商品群
を中心とした事故の再現テストを試み、商品群や銘柄によって危険性にどのような違いがある
のか調べることとした。また、参考テスト(資料1参照)として、火中や熱源近くなどにスプ
レー缶を放置した場合や、火に向かってスプレーを噴射した場合などについてもテストを実施
した。
1)凍傷*9)や凍結による事故
凍傷の起こる条件は明確ではないが、人体の組織が凍った場合に凍傷が起こることから、皮
膚付近が 0℃以下の状態が長く続けば続くほど、凍傷の危険性は高くなると思われる。そこで、
スプレーの噴射方法によって、凍傷の危険性の有無を調べることとした。
(1)凍傷の危険性
(テスト対象:「コールドスプレー」「制汗消臭剤」「日焼け止めスプレー」「消炎鎮痛剤」「足臭防止剤」
「ブロワー」)
●人体に噴射して使用するコールドスプレー等は、使い方によっては凍傷の危険性が高くな
ることが分かった
人体の皮膚の表面温度に見立てた約 35℃に保った試験管(お湯を循環)に、スプレーを直
接噴射及び、試験管に被せたサポーター(または靴下)上から噴射し、試験管の表面温度や
サポーター(または靴下)の内側・外側の温度を経時的に測定した。テストは以下の 3 条件
で噴射した(写真 1)。主なテスト結果を表 2 に示す。
なお、噴射対象の詳細な温度や、商品群ごとの特徴は、資料2に示した。
条件(a):商品の表示どおりの使用方法(商品に表示されている噴射距離と噴射時間)
条件(b):(a)よりも至近距離及び長時間で噴射(5cm の距離から 5 秒噴射)
条件(c):スプレーを横向きに倒した状態(LP ガスや DME などの噴射剤が液体のまま噴射されてしま
う可能性のある状態)(5cm の距離から 5 秒噴射)
*9) 日経 BP 社「メルクマニュアル 第 17 版 日本語版」より
①「氷点下状態への暴露による、可逆性の損傷」・・・凍傷は顔、耳、あるいは四肢に、硬く冷たい、白い領域として現
れる。皮膚の剥離、水疱の形成(日焼けによるものに似る)が、24~72 時間のうちに生じることがある。
②「組織細胞の氷結による損傷」・・・氷の結晶が細胞内あるいは細胞間に生じ、赤血球と血小板は凝集し、毛細血管を
閉鎖して虚血性の損傷を起こす。血管収縮が起きて皮膚や末梢組織からの熱の損失を低減させる。損傷の多くは復
温中に起こる(再灌流損傷)。
9
写真 1.サポーター上からの噴射例
(写真 1-1.表示どおりに
(写真 1-2.至近距離で長時間
噴射した場合)
(写真 1-3.横向きで
噴射した場合)
噴射した場合)
表 2.噴射対象の温度
テスト条件(a)
検体名
コールドスプレー
①②
制汗
消臭剤
テスト条件
直接噴射時
サポーターへ噴射時
(サポーターの内側)
①③⑤
テスト条件(b)
テスト条件(c)
商品の表示どおりの使用 至近距離で長時間噴射
方法(10~20cmで3秒噴
(5cmで5秒噴射)
射)
0℃
0℃
最低
以下
最低
以下
温度
の持続
温度
の持続
(℃)
時間
(℃)
時間
(秒)
(秒)
スプレーを横向きに倒し
た状態で噴射(5cmで5秒
噴射)
0℃
最低
以下
温度
の持続
(℃)
時間
(秒)
-20、-11
3、8
-40、-33
13、46
-40、-34
11、24
7、18
0
-39、-20
24、29
-38、-15
18、28
-33~-25
5~6
-36~-30
10~11
-35~-31
10~17
7、18
0
-31、-25
10、13
-37、-30
14
15、17
0
-16、-4
5、8
-18、-9
2、6
-6
16
-18
19
10
19
2
0
4
0
0
0
-33
-16
-30
7
-2
9
8
6
9
0
4
0
-34
-24
-31
-22
-37
-26
11
9
11
9
9
10
直接噴射時
②④
日焼け止めスプレー
直接噴射時
①②
直接噴射時
①
足
靴下へ噴射時(靴下の内側)注1)
臭
直接噴射時
防
②
靴下へ噴射時(靴下の内側)
止
直接噴射時注3)
剤
注2)
③
靴下へ噴射時(靴下の内側)
・・・0℃以下の温度を示したところ
注1) 靴下や靴をはく前に噴射する商品 注2) 「逆さにしてもスプレーできます」と謳っている商品
注3) 「皮膚に直接に使用しないこと」という表示がある商品
10
テストした結果、何れの商品群も商品の表示どおりの使用方法で噴射すれば、一時的に-6℃
~-33℃まで温度が低下するものはあるものの、0℃以下の持続時間は 10 秒未満であった。
一方、至近距離で長時間噴射したり、横向きで噴射すると、最低-40℃まで温度が低下し、0℃
以下の持続時間は最長 46 秒になることが分かった。
スプレー缶の噴射剤として使用されている LP ガス(主な構成成分:プロパン、ブタン)
や DME(ジメチルエーテル)は、高圧のスプレー缶内では液体の状態で充填されている。こ
れら噴射剤の沸点(液体から気体になる温度)は、プロパン約-45℃、ブタン約-10℃、DME
約-24℃で、噴射時には液体から気体に変わって噴射される。ところが、スプレー缶を横に傾
けて噴射すると、噴射剤が液体のまま噴射されてくる場合がある。
スプレーを人体に使用する際に、商品の表示どおりの使用方法で噴射することは凍傷防止
のためにも重要であるが、この種の商品について消費者の使用状況を考えると、表示の使用
方法よりも近距離で長時間噴射したり、スプレーを横向きや逆さにして使用することなども
多いと思われる。商品側にもそのような使用状況を考慮した商品設計が必要と思われる。な
お、逆さにしてもスプレーできることを謳っている商品もあったが、横向きで使用すると、
他の商品と同様に、噴射剤が液体のまま噴射されてくる場合があった。
(2)凍結の危険性
(テスト対象:「防水剤」「防錆潤滑剤」「ブロワー」)
●噴霧用ボタンのノズルの噴射口付近が徐々に凍結するものがあった
連続噴射時のスプレー缶各所の温度変化を調べてみたところ、防錆潤滑剤①では、1 分間
の連続噴射をしていくうちに噴霧用ボタンのノズルの噴射口付近が徐々に凍結し、指先部分
にも凍結部分が接触してくることがあった。内容物が噴射される際の気化熱によって噴霧用
ボタンのノズルの噴射口付近の空気が冷やされ、空気中の水分が凍結してきたものと思われ
る。これに対し、防錆潤滑剤①以外の商品では凍結は起こらなかった。また、防錆潤滑剤①
は、ノズルの噴射口付近に指先が触れる構造(写真 2)になっていたが、他の商品の中には
ノズルの噴射口付近と指先が接触しにくいような構造(写真 3)になっているものもあった。
防錆潤滑剤①は、本来、1 分間の連続噴射をすることはあまりないと思われるが、連続噴
射を行った際に凍傷の危険性が出てくるため、噴霧用ボタンのノズルの噴射口付近の商品設
計に改善の余地があると考えられる。
11
写真 2. ノズルの噴射口付近に指先が触れる例
写真 3. 接触しにくい例
2)引火*10)による事故
国民生活センター危害情報システムに寄せられた「筋肉用スプレーをサポーターの上から噴
射し、暫くしてタバコを吸ったところ、サポーターに火が付いた」などの事例を参考に、事故
の再現テストを行い、そのメカニズムを検証した。
(1)人体に噴射して使用するスプレーによる事故
(テスト対象:「コールドスプレー」「消炎鎮痛剤」)
●スプレー噴射直後に火種が近づくと、内容物の可燃性や噴射量など様々な要因により引火
することがあった
人体の皮膚の表面温度に見立てた約 35℃に保った試験管にサポーターを被せ、その上から
スプレーを噴射した直後に、ライターの火をサポーターに近づけ引火の有無を調べた。ここ
で、テスト対象商品のうち、コールドスプレー①以外は、サポーターなどの上から使用する
ことを謳っていないが、サポーターの上から噴射して事故に至っている事例が寄せられてい
たため、テスト対象商品群に加えることとした。テスト結果を表 3 に示す。
なお、スプレーの噴射方法は、以下の 2 条件とした。
条件(a):商品の表示どおりの使用方法(商品に表示されている噴射距離と噴射時間)
条件(b):(a)よりも至近距離及び長時間で噴射(5cm の距離から 5 秒噴射)
*10) 可燃性の液体や固体の表面近くに火災や電気火花等の着火源を与えたとき、炎を発して燃え始める現象(財団法人 日本防
炎協会「防災用語ハンドブック」より)
12
表 3.引火後に燃えた時間
検体名
噴射剤
コールドスプレー①
注1)
LPG
コールドスプレー②
注2)
LPG、DME
商品の表示どおりの使用方法
(10~20cmで3秒噴射)
至近距離で長時間噴射
(5cmで5秒噴射)
約10秒
30秒以上
消炎鎮痛剤①
注3)
LPG、DME
2秒未満
2秒未満
消炎鎮痛剤②
注3)
LPG、DME
約10秒
30秒以上
注1) 「ソックスやタオルなどの上」から使用すると表示されている商品
注2) 「皮膚」へ噴射すると表示されている商品
注3) 「患部」に噴射すると表示されている商品
テストの結果、程度の違いはあるものの、何れの商品も引火してサポーターが燃えること
が分かった(写真 4)。スプレー噴射直後は、サポーターに噴射された可燃性の内容物が完
全には揮発していないため、サポーター表面付近には可燃性のガスが発生している。これに
ライターの火が近づいたために、引火したものと思われる。なお、燃える時間の差は、可燃
性の内容物が噴射されてサポーターに到達するまでの様々な要因(内容物の可燃性、噴射剤
等の可燃性成分の含有量、噴射量、噴射剤の状態(液体、気体)や揮発性のほか、スプレー
パターン(噴霧の広がり)、粒子径など)の相互作用による。すなわち、最終的にサポーター
上に残存した可燃性成分が多いほど、燃える時間も長くなる。
商品の表示には「使用中及び直後はライター等の着火は避けてください」などの記載が見
られた。引火事故の防止のためにも、スプレー噴射後の噴射対象(サポーター等)には火種
となるものを近づけるようなことは避けたい。
写真 4.引火例
(写真 4-1.スプレー中)
(写真 4-2.点火時)
13
(写真 4-3.引火後)
(2)防水剤噴射後の未乾燥状態での事故
(テスト対象:「防水剤」)
●未乾燥状態の防水剤は容易に引火した
人体に噴射して使用するスプレーによる引火だけでなく、スキー用グローブに防水剤を噴
射した直後にライターの火を近づけた時、どのようになるのか調べた。
その結果、スキー用グローブは容易に引火することが分かった(写真 5)。未乾燥状態の
内容物中の可燃性成分に引火したものと思われる。商品の表示を見ると、「スプレー後は完
全に乾燥して下さい」などの記載があった。冬場のスキー場などで、スキー用グローブなど
のスキー用品に防水スプレーを使用する際には、防水剤がよく乾くまで火気を近づけないよ
うにしなければならない。
写真 5.引火例
(写真 5-1.噴射中)
(写真 5-2 点火時)
14
(写真 5-3.引火後)
(3)パーティー用スプレーによる事故
(テスト対象:「パーティー用スプレー(噴射物が紐状)」「パーティー用スプレー(噴射物が雪状)」)
●パーティー用のスプレーは、内容物の種類などによって、噴射物に引火するものがあった
①パーティー用スプレー(噴射物が紐状)
ろうそくに向けてパーティー用スプレー(噴射物が紐状)を噴射したところ、紐状の噴
射物に引火して、噴射物に沿って火が上ってくるもの(表 4、写真 6)と、引火しないもの
とがあった。引火しないものは、噴射直後の紐状の噴射物自体にライターの火を近づけて
みても、引火はしなかった。引火性の違いは、噴射物に可燃物を多く含むものと、不燃性
または難燃性材質を使用しているものとの違いによると考えられる。
表 4.引火テスト結果
検体名
引火の有無
パーティー用スプレー(噴射物が紐状)①
引火し、紐状の噴射物に沿って火が上ってきた
パーティー用スプレー(噴射物が紐状)②
引火しなかった
写真 6.引火例
(写真 6-2. 紐状の噴射物に沿って)
(写真 6-1. 引火直後)
火が上ってくるところ)
15
②パーティー用スプレー(噴射物が雪状)
パーティー用スプレー(噴射物が雪状)についても、ろうそくに向けて噴射したところ、
引火はしなかった。そこで、噴射直後の雪状の噴射物自体にライターの火を近づけてみた
ところ、引火することが分かった(写真 7)。ろうそくに向けて噴射した際に引火しなかっ
たのは、ろうそくに噴射物が到達した時に、噴射物中に可燃性ガスが残存していなかった
ためと思われる。一方、噴射物自体が引火したのは、着床した噴射物の固まりの中には未
揮発の可燃性ガスが残存していたためと考えられる。
写真 7.引火例
(写真 7-2.噴射直後にライター
(写真 7-1.噴射中)
の火を近づけているところ)
(写真 7-3.引火直後)
パーティー用のスプレーは、商品の利用目的からして、子供にも使用される可能性があ
る商品群の1つと思われる。今回、テストで引火した一連のパーティー用スプレーには「可
燃性なので、キャンドル・ローソク・ストーブ・クラッカー等火気に向けてスプレーしな
いで下さい」などの表示が見られた。しかし、ろうそくなどが使用されている環境下で用
いられる可能性のある商品群のため、引火しないような商品設計が必要と思われる。
16
3)自動車内での破裂事故
(テスト対象:「塗料」「自動車用消臭剤」「自動車用ガラスクリーナー」「タイヤクリーナー」)
●スプレー缶の内容物の重量が大きいものは、高温環境下で破裂しやすいことが分かった
夏場の炎天下の自動車内は非常に高温になることが知られており、自動車内でスプレー缶
が破裂する事故事例が未だに寄せられている。そこで、実際に夏場(8 月初旬)の晴れた日
のダッシュボード上に、事例にある商品群のスプレー缶などを放置してみた。その結果、噴
霧用ボタンが飛び、破裂に至る場合があることが分かった(表 5、写真 8、9)。
表 5.自動車内放置テスト結果
車内に放置する際の内容物の残存量
新品時の
内容物の
重量
(g)
全量残存
(未使用品)
全量の2/3量残存
全量の1/3量残存
塗料①
約321
噴霧用ボタンが飛ぶ
噴霧用ボタンが飛ぶ
噴霧用ボタンが飛ぶ
塗料②
約228
-
-
-
塗料③
約229
-
-
-
自動車用消臭剤①
約159
-
-
-
自動車用消臭剤②
約49
-
-
-
自動車用ガラス
クリーナー①
約302
-
-
-
自動車用ガラス
クリーナー②
約286
-
-
-
タイヤクリーナー
約373
検体名
・噴霧用ボタンが飛ぶ
噴霧用ボタンが飛ぶ
・破裂
-
36/26
テスト中の最高気温/8月の平均気温(℃)
車内の最高温度(℃)
約70
約80
約70
ダッシュボードの最高温度(℃)
約90
約90
約90
記号)-:変化なし
噴霧用ボタンが飛んだスプレー缶の外観調査をしてみると、噴霧用ボタンが付いていた部
分が、テスト開始当初に置いた時のものに比べて膨らんでいることが分かった(写真 10)。
これは、自動車内の室温の上昇や直射日光によりスプレー缶が温められ、スプレー缶内の圧
力が異常に上昇したことによるものと思われる。その上昇した圧力を吸収する(逃がす)た
めに、噴霧用ボタンが付いている部分が膨張した際に、噴霧用ボタンが飛んだものと考えら
れる。また、破裂に至ったスプレー缶の外観調査をしたところ、底が抜けて破裂に至ってい
ることが分かった(写真 11)。スプレー缶の破裂の衝撃により、自動車のフロントガラスに
はヒビが生じていた。
17
写真 8.スプレー缶の噴霧用ボタン
が飛ぶ様子
写真 9.スプレー缶が破裂する様子
噴霧用ボタン
写真 10.スプレー缶の噴霧用ボタン付近の外観
写真 11.破裂したスプレー缶の外観
噴霧用ボタン
噴霧用ボタンが付いていた部分が膨
スプレー缶から
飛んだ噴霧用ボ
らみ、噴霧用ボタンが飛んだ商品
抜けた底部分
タン
スプレー缶本体
ここで、破裂に至る原因としては、内容物からの圧力(内容物の熱膨張)、缶内の気圧(内
容物成分の飽和蒸気圧)
、缶の耐圧強度、日光の当たり方、比熱など、様々な要因が考えられ
るが、噴霧用ボタンが飛んだり、破裂に至った商品は、新品時の内容物の重量の大きさが上
位 1、2 位(それぞれ約 373g、321g)であった(表 5)。このことから、内容物の重量が大き
いことが破裂の原因の 1 つになり得ることが推測できた。スプレー缶内は、内容物が揮発し
てできた気相と、内容物自体の液相(液体の状態にある相)とに分かれている。気相は常に
内容物の飽和蒸気圧に保たれ、飽和蒸気圧以上の圧力になることはないが、温度が上がると
ともにその飽和蒸気圧は上昇していく。一方、液相のほうでは温度が上がるとともに内容物
は熱膨張していくと考えられる。内容物の重量が大きいと液相の熱膨張による圧力が高くな
り、破裂に至る原因の 1 つになったものと思われる。
18
破裂したタイヤクリーナーと、破裂はしなかったが噴霧用ボタンが飛んだ塗料①、テスト
前後で変化のなかった自動車用ガラスクリーナー①の缶の耐圧強度(破裂に至る圧力)を調
べてみたところ、それぞれ、19、20、20kgf/cm2であった。エアゾール製品の高圧ガス保安
法による耐圧強度は、圧力 1.5MPa(=約 15 kgf/cm2)で破裂しないこととなっている。破裂
に至ったタイヤクリーナーの耐圧強度が他と比べて特に低いということはなく、何れの商品
も缶の耐圧強度に問題はなかった。
今回テストに供した商品には、「直射日光の当たる所や火気等の近くなど温度が 40 度以上
となる所に置かないこと」等の表示がされている。一方、夏場の車内の温度は今回のテスト
では、直射日光の当たらない場所でも約 70℃まで上昇しており、その時のダッシュボード上
は約 90℃に達していた。破裂したスプレー缶の外観や、スプレー缶の破裂で生じたフロント
ガラスのヒビなどを見ると、破裂時の衝撃は計り知れない。自動車内、特に直射日光の当た
るダッシュボード上などには、スプレー缶を放置しないように注意すること。
19
9.調査項目等
1)廃棄方法に関する調査
●廃棄方法は自治体ごとに決まっている
「穴を開けずに使い切って捨てる」方式の自治体でスプレー缶がどのようにごみとして出
されたかを調べた実態調査*11)によれば、穴を開けてあったものが 16.3%あった。穴が開い
ていなかった 83.7%のもののうち、中身の残存率が 10%以下だったものが 87.7%であった
一方、50%以上残存していたものも 2.3%あった。
2006 年 2 月 10 日、環境省から「エアゾール製品等業界側と市町村側の間で、今後の廃エ
アゾール製品等の適正処理とリサイクルの促進に向けた取組について協議」が整い、「今後、
エアゾール製品等業界はエアゾール製品の充填物を容易に排出できる装置(中身排出機構)
が装着されたエアゾール製品に転換を進める一方、市町村とエアゾール製品等業界が協力し
て、消費者に対し、エアゾール製品等をゴミとして排出する際は、中身排出機構を利用して
充填物を出し切るよう周知活動を行うことなどが決定された」旨の報道発表*12)がなされた。
この中で、今後の取組事項として、
「エアゾール製品製造事業者等においては、平成 19 年
4 月を目途に、エアゾール製品については中身排出機構の装着(中略)を推進する」
「市町村
においては、廃エアゾール製品の中身排出機構を使用したゴミ排出方法等について、住民に
周知する」などの文章が記載されている。
スプレー缶は高圧容器であり、高温に熱せられると破裂したり、周囲の火種により引火・
爆発する危険性がある。そこで今回は、全国の主要な自治体のホームページで、スプレー缶
の廃棄方法について調べた(表 6)。
その結果、廃棄方法は自治体ごとに決まっており、同じ都道府県内であっても廃棄方法が
異なる自治体があることが分かった。また、ホームページ上でスプレー缶の廃棄方法を探し
出す際に、廃棄方法に関する画面を見つけることがやや難しい場合も見受けられた。
*11) 社団法人 日本エアゾール協会「エアゾール缶等排出実態調査報告書(2000 年 3 月)」より
*12) 環境省 平成 18 年 2 月 10 日付 報道発表資料「廃エアゾール製品等の適正処理及びリサイクルの促進に向けたエアゾー
ル製品等業界と市町村の取組について」より
20
表 6.廃棄方法について
自治体名
札幌市
北海道
函館市
港区
新宿区
東京都
町田市
八王子市
横浜市
神奈川県
川崎市
相模原市
大阪府
大阪市
堺市
神戸市
兵庫県
姫路市
福岡市
福岡県
北九州市
廃棄方法(各自治体のホームページより)
●スプレー式容器~整髪料、殺虫剤、卓上ガスボンベなど、引火性ガスの中身が入っているも
のは、ゴミ収集車の火災の原因にもなり危険ですので、中身を使い切ってから屋外など
風通しのよい場所で穴をあけ、中身の見える別袋に入れてください。
スプレー缶:必ず使い切ってから
※穴はあけなくてよい
スプレー缶、一斗缶:必ず、最後まで使い切ってからお出しください。
スプレー缶は、最後まで使い切ってからお出しください。
●スプレー缶、ライター
スプレー缶やライターが原因で清掃車の車両火災が発生しています。スプレー缶やライターは、必
ず、最後まで使い切ってからお出しください。
有害ごみ
●スプレー缶
中身を完全に使い切り、穴はあけずにお出し下さい。
スプレー缶
必ず使い切って
スプレー缶→「スプレー缶」の出し方
1 燃やすごみとは別にして、中身がはっきりと確認できる半透明の袋にまとめて入れ
てください。
2 火気のない安全な場所で中身を必ず出しきってください。
3 プラスチック製のキャップははずして「プラスチック製容器包装」として出してください。
・中身は出し切ってください
・穴開けは不要です
資源物の収集
●空き缶の収集
※スプレー缶、カセットボンベなどは、中身を使い切り、必ず火気のない屋外で穴をあけて
から出してください。
かん・金属類
※スプレーかんなどは使い切ってから風通しの良い場所で穴をあけて透明または半透明
の袋に入れる。
●スプレー缶・カセットボンベなどは使いきり、火の気のない風通しのよい場所で穴をあけて
お出しください。
※スプレー缶は、火の気のない戸外などで穴を開け、ガスを抜いてから出す。
●中身を完全に使い切ったうえで、火の気のない屋外の風通しのよいところで必ず穴
をあけてから出してください。
●外からわかるようにポリ袋に「カセットボンベ・スプレー缶 キケン」と貼って出してくださ
い。(同封のシールを見やすい所に貼ってください。シールが無くなった場合は、ちらしの
裏などを利用してください。)
●燃えないごみとは別袋で出してください。
※発火事故がおきないようにルールを守って出してください。
空カン類
指定の容器に投入してください。スプレー缶は穴を開けてください。
●スプレー缶
殺虫スプレー、整髪スプレー、カートリッジボンベなど
※注意
中身を使いきり、火気のない風とおしのよい場所で穴をあけて、出してください。
●スプレー缶
中身を使い切って「家庭ごみ」で出してください。
2006年8月現在
・・・穴を開けて廃棄する自治体
<参考:東京消防庁>
●廃棄時の火災予防対策・事故防止対策
スプレー缶等の中身は完全に使い切り、穴を開けないで捨てる。
21
2)ガス抜きキャップなどの有効性
(テスト対象:全 18 商品群)
●全 18 商品群(計 46 銘柄)中、ガス抜きキャップ等により容易にガスを抜くことができる
構造のものは 11 銘柄だった
商品の中には「ガス抜きキャップ」*13)が付いているものがある(写真 12)。このキャッ
プは、スプレー缶を廃棄する際、中身を使い切った後に缶内の残存ガスを排出するのに使用
するものである(写真 13)。
廃棄時のガス抜き時間を測定したところ、2 分以上かかるものがあり、ガスが抜けきらな
いことがあることから、国民生活センターでも業界に対して「ガス抜きが容易にできる構造」
にしてほしい旨の要望*14)を行った。現在、スプレー缶製品の製造事業者等では、2007 年 4
月を目途に、この中身排出機構の装着を推進中である*15)。
今回テスト対象とした全 46 銘柄について調べたところ、ガス抜きキャップ等、容易にガス
を抜くことができる構造(写真 14)を持った商品は 11 銘柄(塗料 6 銘柄、殺虫剤(大量噴射
タイプ)2 銘柄、制汗消臭剤 1 銘柄、足臭防止剤 1 銘柄、自動車用消臭剤 1 銘柄)であった。
これら 11 銘柄では、他の銘柄に比べ、容易にガス抜きをする(放置している間にガスが抜け
る)ことができた。スプレー缶廃棄時の引火・爆発事故の防止という観点から考えると、こ
のような、ガス抜きが容易にできる構造のものは広範な商品に取り入れられるべきと思われ
る。
写真 12.ガス抜きキャップの外観例
ガス抜きキャップ
*13)“中身排出機構”などとも呼ばれている機能が付いたキャップ
*14) 平成 12 年 11 月公表「スプレー缶の破裂・爆発に気を付けて」
*15) 環境省 平成 18 年 2 月 10 日付 報道発表資料「廃エアゾール製品等の適正処理及びリサイクルの促進に向けたエアゾー
ル製品等業界と市町村の取組について」より
22
写真 13.ガス抜きキャップ使用例
写真 14.容易にガス抜きができる構造例
3)警告・注意表示などの表現方法について
●文字が小さいものがあった。また、絵表示はデザインが統一されていなかった
商品の本体には、うたい文句や警告・注意表示などが書かれているが、商品の限られた範
囲に様々な表示が記載されているため、文字が小さかったり、読みにくいものが見られた(写
真 15、16)。また、絵表示が付されている商品があったが、絵表示の大きさ、形、色などの
デザインや、付されている説明が統一されていなかった(写真 17)。なお、パーティー用ス
プレー(噴射物が紐状)②の日本語表示のラベルには、高圧ガス保安法に基づく高圧ガスの
表示(使用している高圧ガスの種類の表示)が記載されていなかった。
23
写真 15.文字の大きさの違い
写真 16.文字の大きさの違い(写真 15 の表示部分を拡大したもの)
写真 17.絵表示例
24
10.消費者へのアドバイス
1)使用・保管時の注意
(1)人体に噴射して使用するスプレーは、商品の表示どおりの使用方法で使用すること
コールドスプレーや制汗消臭剤などを、表示されているよりも近距離から噴射したり、1
点に長時間噴射、横に倒しての噴射などをしたところ、噴射剤が液体のまま噴射されて凍傷
になる危険性があることが分かった。一般的な使用状況を考えると、表示の使用方法よりも
近距離で長時間噴射したり、スプレーを横向きや傾けたり、逆さや下向きにしたりして使用
することが想定されるが、現況の商品では思わぬ事故に繋がる危険性がある。適切な使用方
法で使用するようにしたい。
(2)スプレー噴射直後には火気を近づけない
人体に噴射して使用するスプレー、防水剤などを噴射直後にライターの火を近づけると、
容易に引火することが分かった。パーティー用スプレーでは、噴射物に引火した場合、噴射
物に沿って火が上ってくるものがあることも分かった。また、大量噴射タイプの殺虫剤では、
室内用の商品でも50cm以上の距離からの噴霧で引火する危険性があった(資料1.参考テス
ト結果参照)。スプレー缶の内容物には可燃物が充填されているため、特に噴射直後には火
種となるようなものを近づけないこと。また、噴射物が届かないと思っても、思わぬ所で引
火を起こす危険性があるので気をつけたい。
(3)自動車内や直射日光の当たる場所、加熱源の近くには放置しない
温度が極めて高くなる夏場の自動車内にスプレー缶を放置すると、破裂することがあるこ
とが分かった。また、暖房器具(加熱源)の近くに置いたスプレー缶が爆発することもテス
トでその危険性が確認された(資料1.参考テスト結果参照)。直射日光の当たる場所や高
温の場所にスプレー缶を置くと破裂や爆発の危険性があるので避けるべきである。
2)廃棄時の注意
噴射剤も含め中身を使い切り、各自治体の廃棄方法を守る
スプレー缶に内容物が残った状態で、缶に穴を開けてガス抜きをすると、周囲の火種によ
り引火・爆発することが分かった。また、室内でスプレーを大量噴射すると、火種により引
火・爆発の危険性があることも分かった(資料1.参考テスト結果参照)。大半のスプレー
缶製品は、噴霧用ボタンを押した時に噴射音が鳴るので、ガス抜きなどをする際は、風通し
が良い火気のない屋外などの場所で、繰り返し噴霧用ボタンを押しても噴射音が聞こえなく
なるまで、完全に中身を出し切ることが必要である。なお、廃棄方法は自治体によって異な
るので、廃棄の際には各自治体に確認したい。
25
11.業界への要望
1)凍傷の危険性を考慮した商品設計を望む
人体に直接噴射するコールドスプレー等の場合、噴射方法によっては凍傷になる危険性が
あった。噴射剤に冷却効果があるため、消費者が表示の使用方法よりも近距離で長時間噴射
したり、横向きや下向きでスプレーすると、液状のまま噴射されたりして事故となることが
考えられるので、そのようなことがない商品の開発を望む。
2)引火が起こりにくい安全な成分を使用し、破裂や爆発がより起こりにくい商品設計を望む
人体に直接噴射する目的の商品では、サポーター等に噴射剤等が残存した状態であると、
引火することが分かった。また、パーティー用スプレーでは、引火するものと、引火しない
ものとがあった。可燃性の成分をなるべく使用しないなど、用途に応じて安全性のより高い
商品開発をしてほしい。また、高温となった自動車内での破裂テストや、ファンヒーター前
に置いたときの爆発テストでは、内容物の重量が大きいほど破裂や爆発が起こりやすい傾向
にあった。間違って自動車内にスプレー缶を放置したり、暖房器具等の加熱源の前に置いて
しまっても、できるだけ事故が起こりにくい商品設計を行ってほしい。
引火、破裂や爆発などの危険を避けるためには、ポンプ式、ジェル状・ワックス状・固形
タイプの商品も検討されるべきである。揮発性物質の噴射による大気への影響という観点か
らも有効と思われる。
3)ガス抜きが容易にできるよう望む
現在、スプレー缶製品の製造事業者等では、2007 年 4 月を目途に中身排出機構の装着を推
進中である。しかし、今回テスト対象とした 46 銘柄中、この中身排出機構が付いていたもの
は 11 銘柄のみであった。容易にガスを抜くことができるような商品設計をより進めてほしい。
また、現状で自治体によって廃棄方法が異なる点にも注意して、より具体的で、消費者にわ
かりやすいガス抜き方法の表示や、中身の有無が判断できる構造などへの工夫についても検
討してほしい。
4)情報が伝わりやすいような表示を望む
本体表示の文字が小さく読みにくいと思われるものがあった。スプレー缶の限られたス
ペースの中で、文字の大きさを極力大きくしたり、統一された絵表示を導入するなど、消費
者に情報が伝わりやすい表示になるように工夫してほしい。特に、引火、破裂や爆発などの
事故の防止のため、炎や火気には近づけないことや、高温な場所には置かないことなど、最
低限必要な文章は、より目立つよう明確に表示することを望む。
26
12.行政への要望
1)廃棄方法の周知徹底とともに、使用者の事故防止の観点から、より安全な方法で全国的な
統一がなされる方向で検討を望む
自治体のホームページで廃棄方法について調べてみたが、廃棄方法の情報を見つけにくい
と思われるものもあった。廃棄方法は自治体ごとに決まっているので、当該自治体ではどう
いった廃棄方法を採用しているのか、住民への周知を徹底してほしい。また、今回のテスト
では、中身が残存した状態で穴を開けたときの危険性が実証された。スプレー缶の構造や性
質に不慣れな使用者のスプレー缶廃棄時の事故防止という観点からみると、一般消費者側の
廃棄方法については穴を開けない方向性が望ましく、既に穴を開けない廃棄に切り替えた自
治体も散見される状況である。各自治体の廃棄システムの違いなどがあり直ちに実施するの
は困難と思われるが、将来的には、中身排出機構の普及状況等を踏まえつつ、収集運搬過程
におけるリスクやコストの負担に係る課題についても十分検討したうえで、例えば穴を開け
ない方法で廃棄できるようなシステムを全国的に整備するといった点について、検討を行っ
てほしい。
2)ガス抜きが容易にできる構造の導入を指導するよう望む
「ガス抜きキャップ」などのような容易にガスを抜くことができる商品では、何度も繰り
返し噴霧用ボタンを押してガス抜きをする必要がなく、放置している間にガスを抜くことが
できる。今回の穴を開けるテストでは、ガスを完全に抜いたスプレー缶は引火することはな
かった。環境省の報道発表を受けて、現在、スプレー缶製品の製造事業者等で 2007 年 4 月
を目途に中身排出機構の装着を推進中である。ところが、今回のテストではガス抜きが容易
にできる構造のものは 46 銘柄中 11 銘柄であった。ガス抜き時の事故事例が未だに寄せられ
ていることからも、ガス抜きが容易にできる構造の導入がより早急に進むように指導してほ
しい。
3)適正な表示の指導を望む
表示について調べてみたところ、高圧ガス保安法に基づく高圧ガスの表示が記載されてい
ないものがあった。適正な表示がされるよう、指導をしてほしい。
27
<資料1.参考テスト結果>
従来から危険性が明らかになっているスプレー缶の事故について、参考として 5 種類の再現
テスト(「ガス抜き時の事故」「遠方噴射での事故」「室内大量噴射での事故」「火中での爆発事
故」「暖房器具などの加熱源の近くでの事故」)を行い、あらためてその危険性を確認した。
1)ガス抜き時の事故
(テスト対象:「殺虫剤」「室内消臭剤」「ヘアスプレー」)
●内容物の残っているスプレー缶に廃棄用の穴を開ける際、火花などが発生すると、引火・
爆発の危険性があった
「全量の 1/3 量残存」の商品を作出し、ガス抜き時(穴開け時)に至近で擬似的に火花を
発生させた。その結果、全ての商品で爆発*16)が起こり(写真 18)、その炎の高さは 3mに
まで達した。また、「全量残存」の商品でも同様のテストを行ってみたところ、爆発の規模
は「全量の 1/3 量残存」よりも「全量残存」のほうが大きくなることが分かった。なお、噴
霧用ボタンを押してもガスの噴射音がしなくなるまで、完全にガス抜きをした「残量なし」
の商品を作出し、同様にテストを行ったところ、引火はしなかった。
スプレー缶の廃棄に際して、内容物が残った状態で缶に穴を開けると、残存量によっては
近くの火種により引火・爆発の危険性があることがテストで確認できた。
写真 18.ガス抜き時の爆発例
(写真 18-1.スプレー缶に穴を開ける瞬間)
(写真 18-2.爆発)
*16) 圧力の急激な発生または解放の結果、容器が破裂したり、または気体が急激に膨張して爆発音や破壊作用をともなう
現象(「理化学辞典」より)
28
2)遠方噴射での事故
(テスト対象:「殺虫剤」「殺虫剤(大量噴射タイプ)」)
●大量噴射タイプは、50cm 以上の距離から噴射しても引火した
従来から市販されている殺虫剤は、噴射物の到達距離が 1~2m ぐらいと思われる。ところ
が、最近は噴射物の到達距離が 5m 以上にもなることを謳っている屋外専用の大量噴射タイ
プの商品も出回ってきた。
殺虫剤は火に向けて噴射すると引火することが知られている*17)。ここでは、大量噴射タイ
プの殺虫剤を火に向けて噴射すると、どのような引火の危険性があるのか、調べてみること
とした。テスト結果を表 7 に示す。
表 7.引火テスト結果
火までの距離
検体名
殺虫剤
30cmの距離
から噴射
引火した
50cmの距離
から噴射
1mの距離
から噴射
3mの距離
から噴射
引火しなかった 引火しなかった 引火しなかった
殺虫剤(大量噴射タイプ)①
-
注)
引火した
殺虫剤(大量噴射タイプ)②③
-
注)
引火した
<屋外専用>
殺虫剤(大量噴射タイプ)④⑤
-
注)
-
注)
引火しなかった 引火しなかった
引火した
-
注)
引火しなかった
引火した
注)危険なため、テストを実施せず
はじめに、従来からの殺虫剤と、大量噴射タイプの殺虫剤①②③について調べた。その結
果、50cm の距離から火に向けて噴射した場合で見ると、従来からの殺虫剤は引火しなかった
が、大量噴射タイプでは引火して炎が上がることが分かった(写真 19-2)。この炎の規模は、
従来からの殺虫剤を 30cm の距離から火に向けて噴射した時の炎(写真 19-1)よりも大きい
ことが分かった。
参考により、5m 以上の遠方まで殺虫成分が到達することを謳っている屋外専用の大量噴射
タイプの殺虫剤④⑤を、3m の距離から火に向けて噴射してみたところ、何れも引火すること
が分かった(写真 19-3)。さらに、大量噴射タイプの殺虫剤⑤を 2m の距離まで火に近づい
て噴射してみたところ、炎はより大きく上がった。
*17) 平成 12 年 11 月公表「スプレー缶の破裂・爆発に気を付けて」
29
写真 19.引火例
(写真 19-1.殺虫剤
(写真 19-2.大量噴射タイプ③
(写真 19-3.大量噴射タイプ⑤
(30cm の距離から))
(50cm の距離から))
(3m の距離から))
大量噴射タイプの殺虫剤は、内容量は従来からのものと同程度であるが、噴射時の圧力を
高めて噴射量を多くしたり、ノズルの形状を工夫するなどにより、噴射物を遠くまで到達さ
せることができる。そのため、従来からの殺虫剤では届かなかった距離でも引火する危険性
があることが分かった。商品には「火炎に向かって噴射しないでください」などの表示があ
るものの、火から十分に離れていると思って噴射したり、火種がないと思って噴射した殺虫
剤で、思わぬ引火事故が起きないよう注意する必要がある。また、屋外専用のものも噴射経
路やその周辺に火種がないのか十分に確認して使用する必要がある。
30
3)室内大量噴射での事故
(テスト対象:「殺虫剤」「室内消臭剤」「防水剤」「ヘアスプレー」)
●室内での大量噴射時に火種があると、爆発が起こった
例えば冬場の自動車内など、あまり換気のされていない狭い室内でスプレーを大量噴射し
ている時に引火すると、どのような状況になるのかを調べた。テストは、天井部分にフィル
ムを被せたアクリルボックス(縦 80cm×横 80cm×高さ 100cm)の中でスプレーを連続噴射
し、火花を発生させて行った。
テストの結果、何れの商品でも爆発が起こることが分かった(写真 20)。スプレーの連続
噴射によってアクリルボックス内には可燃性のガスが溜まっていき、可燃性ガスの爆発限界
に達した時に、火花で引火し、爆発したものと考えられる。
商品には「高圧ガスを使用した可燃性の製品であり、危険なため、(中略)火気を使用し
ている室内で大量に使用しないこと」などの表示が見られた。室内で噴射する際には周囲に
火種がないかをよく確認し、必要以上に噴射しないよう注意が必要と思われる。
写真 20.爆発例
(写真 20-1.連続噴射中)
(写真 20-2.引火直後)
天井部分のフィルムが飛んだ
火花
スプレー缶
31
(写真 20-3.爆発後)
4)火中での爆発事故
(テスト対象:「殺虫剤」「室内消臭剤」「ヘアスプレー」)
●火中に放置したスプレー缶は 2 分以内で爆発に至った
一般的には、火中にスプレー缶を放置することは想定しにくいが、事故事例が寄せられて
いるので、どのような事故に繋がるのか調べることとした。「全量の 1/3 量残存」の商品を
作出し、実際にスプレー缶を火中に放置したところ、どの商品も 2 分以内で爆発に至った(写
真 21)。また、スプレー缶の噴霧用ボタン付近は、爆発の衝撃により周囲の障害物に激突し
て著しく変形を生じていた(写真 22)。なお、「全量残存」の商品でも同様のテストを行っ
てみたところ、当然のことながら、爆発の規模は「全量の 1/3 量残存」よりも「全量残存」
のほうが大きかった。
写真 21.爆発例
(写真 21-1.底が抜けた瞬間)
(写真 21-2.爆発)
スプレー缶
缶底が抜け、内容物が一気に噴き出している
写真 22.爆発後のスプレー缶の外観
スプレー缶本体
スプレー缶から
抜けた底部分
著しく変形している
テスト対象商品の表示を見てみると、
「炎や火気の近くで使用しないこと」などと記載され
ていた。爆発時にスプレー缶が人体に直撃したときの衝撃は計り知れず、爆発時の炎を浴び
32
ることにより火傷を負う危険性も高い。たき火時などにスプレー缶を投じてしまったり、燃
やすなどの行為は極めて危険である。
5)暖房器具などの加熱源の近くでの事故
(テスト対象:「殺虫剤」「室内消臭剤」)
●スプレー缶の内容物の重量が大きいものは、近くにある加熱源で爆発した
運転中のファンヒーターの前に放置したスプレー缶が爆発する事故*18)があるため、その
危険性を改めて確認してみた。
運転中のファンヒーターの前に殺虫剤を放置したところ、放置開始から約 14 分後に噴霧用
ボタンが飛び、続いて、放置開始から計約 23 分後にスプレー缶が爆発に至った(写真 23)。
ところが、室内消臭剤を放置したところ、ファンヒーターの 45 分間の運転中にはスプレー缶
には変化が見られなかった。ここで、テストに供した商品の新品時の内容物の重量を測定し
てみたところ、破裂及び引火・爆発に至った殺虫剤は約 294g、テストの前後で外観上の変化
が見られなかった室内消臭剤は約 199g であった。自動車内での破裂と同様に、内容物の重
量が大きいと破裂しやすい傾向があることが推測できた。
商品には「ファンヒーターなどの暖房器具や加熱源の周囲は温度が上がり破裂する危険が
あるので置かないでください」と記載されていた。今回の爆発は、ファンヒーターからの温
風によってスプレー缶が温められて缶内の圧力が上昇し、底が抜けたのが原因になっている。
万が一爆発した時にスプレー缶が人体に直撃したり、炎が人体まで到達すれば、その被害は
計り知れない。スプレー缶に表示されているように、ファンヒーターなどの加熱源の近くに
スプレー缶を置かないこと。
写真 23.爆発例
(写真 23-1.噴霧用ボタンが飛んだところ)
(写真 23-2.爆発)
噴霧用ボタンが飛んでいる
*18) 平成 12 年 11 月公表「スプレー缶の破裂・爆発に気を付けて」
33
<資料2.「凍傷の危険性」参考資料>
資料2-1.噴射対象の温度
テスト条件(a)
商
品
群
検
体
番
号
①
コールド
スプレー
制汗消臭剤
日焼け止め
スプレー
テスト条件
直接噴射時注1)
サポーターへ
噴射時
テスト条件(b)
テスト条件(c)
商品の表示どおり 至近距離で長時間 スプレーを横向き
の使用方法
噴射(5cmで5秒噴
に倒した状態で噴
射)
射(5cmで5秒噴射)
噴射剤の種類
0℃
0℃
0℃
最低
以下
最低
以下
最低
以下
温度
の持続
温度
の持続
温度
の持続
(℃)
時間
(℃)
時間
(℃)
時間
(秒)
(秒)
(秒)
サポーターの内側 LPG
サポーターの外側
直接噴射時
サポーターの内側 LPG,DME
サポーターの外側
-20
18
-21
-11
7
-35
8
0
7
3
0
17
-33
-20
-36
-40
-39
-42
46
24
98
13
29
59
-34
-15
-37
-40
-38
-42
24
18
96
11
28
55
-25
6
-33
11
-31
16
②
サポーターへ
噴射時
①
直接噴射時
LPG,イソペンタン
②
直接噴射時
LPG
18
0
-31
10
-37
14
③
直接噴射時
LPG
-33
5
-36
10
-35
10
④
直接噴射時
LPG
7
0
-25
13
-30
14
⑤
直接噴射時
LPG,イソペンタン
-26
6
-30
10
-33
17
①
直接噴射時
LPG,DME
17
0
-4
5
-9
2
②
直接噴射時
LPG,DME
15
0
-16
8
-18
6
①
直接噴射時
LPG,DME
18
0
17
0
11
0
②
直接噴射時
LPG,DME
12
0
-16
6
-33
8
-6
16
-10
-18
19
-20
10
19
7
25
31
23
26
30
26
25
31
23
2
0
6
4
0
7
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
-33
-16
-36
-30
7
-32
-2
9
-9
22
28
20
24
25
24
22
26
20
8
6
16
9
0
12
4
0
7
0
0
0
0
0
0
0
0
0
-34
-24
-35
-31
-22
-31
-37
-26
-39
-43
-36
-41
-49
-15
-49
-46
-37
-44
11
9
33
11
9
29
9
10
19
23
50
57
41
30
83
30
74
84
消炎鎮痛剤
直接噴射時
①
靴下へ噴射時
注2)
靴下の内側
靴下の外側
LPG
靴下の内側
靴下の外側
LPG,イソペンタン
靴下の内側
靴下の外側
LPG
靴下の内側
靴下の外側
HFC-152a,DME
靴下の内側
靴下の外側
HFC-152a
靴下の内側
靴下の外側
HFC-152a
直接噴射時
足臭防止剤
②
靴下へ噴射時
直接噴射時注4)
③
注3)
靴下へ噴射時
直接噴射時
①
靴下へ噴射時
直接噴射時
ブロワー注5)
②
靴下へ噴射時
直接噴射時
③
靴下へ噴射時
・・・0℃以下の温度を示したところ
注1) ソックスやタオルの上から噴射する商品 注2) 靴下や靴をはく前に噴射する商品 注3) 「逆さにしてもスプレーできま
す」と謳っている商品 注4) 「皮膚に直接に使用しないこと」という表示がある商品 注5) 本来は人体に噴射目的ではない商品
34
資料2-2.商品群ごとの特徴
1)コールドスプレー
直接噴射時にはどのテスト条件でも 0℃以下になった。特に、至近距離で長時間噴射や、
横向きで噴射した場合には 0℃以下の状態が最長 46 秒続き、凍傷の危険性が高くなること
が分かった。この種の商品群はスポーツ中などにサポーターの上から使用することが想定
される。サポーターの上から至近距離で長時間噴射や、横向きで噴射した場合には、サポー
ターの内側は最低温度が-39℃になり、0℃以下の持続時間も最長約 30 秒続くことが分かっ
た。凍傷の危険性は高くなると思われる。
コールドスプレーは、主に噴射剤の気化熱(液体から気体に変わる際に奪われる熱量)
を利用して冷却効果を出している商品である。同一のテスト条件で噴射対象(試験管表面
やサポーターなど)に温度差が見られたのは、噴射剤などの内容物の量、成分比、状態(液
体、気体)、揮発性のほか、スプレーパターン(噴霧の広がり)や粒子径などの影響が考
えられ、これらの相互作用により最終的に試験管表面やサポーターに到達した噴射剤の量
が多いほど、より長時間、低温状態が持続すると思われる。
2)制汗消臭剤
至近距離で長時間噴射や、横向きで噴射した場合、温度が 0℃以下となり凍傷の危険性
が高くなることが分かった。表示どおりに噴射した場合、①③⑤は 0℃以下の温度を示し
た。なお、①⑤には主に冷感効果を付与する目的で使用される成分*19)であるイソペンタ
ン*20)が噴射剤として使用されていた(表 8)。
表 8.噴射剤の種類など
検体名
噴射剤
冷却効果に関する表示
制汗消臭剤①
LPG、
記載なし
イソペンタン
制汗消臭剤②
LPG
記載なし
制汗消臭剤③
LPG
スーパークール、超クールが長続き、クーリングエッセンス(冷却成分)を配
合、ほてった体をすばやくクールダウンしながらデオドラント
制汗消臭剤④
LPG
記載なし
制汗消臭剤⑤
LPG、
速効クール、「アイシングシステム」で、瞬間冷却&ひんやり感持続
イソペンタン
・・・商品の表示どおりの使用方法で0℃以下の温度を示した商品
*19) エアゾール産業新聞社「エアゾール包装技術」P252 より
*20) 沸点は 30℃(
「理化学辞典」より)
35
制汗消臭剤は、内容物に粉末製剤を加えてあるもので、噴射時に粉末製剤を皮膚に付着
させ皮膚の湿気を吸収したり、サラサラ感を与えることを謳っているものである。粉末製
剤の入った制汗消臭剤の噴霧特性は、噴射剤圧力、バルブ、噴霧用ボタンにより変化し、
付着量もその噴霧特性に影響されることがわかっている*21)。今回のテストで商品ごとに
冷却効果に差が生じたのは、この噴霧特性の影響や、コールドスプレーと同様に最終的に
噴射対象に到達した噴射剤の量、制汗消臭剤③に含有されている冷却成分の添加の有無な
どによるものと思われる。
3)日焼け止めスプレー
至近距離で長時間噴射や、横向きで噴射した場合で 0℃以下にはなったものの、0℃以下
の持続時間は何れも 10 秒以下であった。日焼け止めスプレーは本来、冷却を目的とする商
品ではないため、コールドスプレーなどとは異なる商品設計になっているものと思われる。
4)消炎鎮痛剤
消炎鎮痛剤②を横向きで噴射した場合、噴射剤(LPG、DME)が液状のまま噴射対象に
到達することが多くなるため、サポーター内側(人体の皮膚に相当する部分)の最低温度
が-33℃、0℃以下の持続時間は 8 秒となり、凍傷の危険性が出てくることが分かった。
5)足臭防止剤
足臭防止剤は、制汗消臭剤と同様に内容物に粉末製剤を加えてあるもので、噴射時に粉
末製剤を足や靴下の上に付着させ湿気を吸収したり、サラサラ感を与えることを謳ってい
るものである。至近距離で長時間噴射や、横向きで噴射した場合には、最低温度は-37℃、
0℃以下の持続時間は約 10 秒となり、凍傷の危険性が出てくることが分かった。なお、足
臭防止剤③は「逆さにしてもスプレーできます」と謳っている商品であるが、テスト結果
が示すとおり、横向きの使用方法では 0℃以下の温度になった。
足臭消臭剤による冷却効果も制汗消臭剤と同様に、噴霧特性や、最終的に噴射対象に到
達した噴射剤の量などによって影響を受けると思われる。各商品の噴射剤は LPG やイソペ
ンタンで、③は冷却効果を謳っていない商品であった。
*21) エアゾール産業新聞社「エアゾール包装技術」P257 より
36
6)ブロワー
ブロワーは本来、人体に向けて噴射するものではなく、コンピューター上の埃を吹き飛
ばす目的などで使用されることが多いが、事故事例の中にブロワーで凍傷となったものが
寄せられていたため、参考として、今回のテスト対象商品群に加えてみた。
テストの結果、横向きで噴射した場合に最低温度が-49℃にまで冷却され、0℃以下の持
続時間が 41 秒になるものもあった。0℃以下の持続時間は他の商品群と比べて長く、靴下
の内側(人体の皮膚に相当する部分)の温度は最低-37℃、0℃以下の持続時間は 74 秒で
あった。これは、ブロワーの内容成分が噴射剤を兼ねたHFC-152a*22)で 100%(または
100%近く)占められており、横向きで噴射した場合、HFC-152aが液体のまま噴射される
ためと思われる。事故事例のように、使用方法によってはブロワーで凍傷になる危険性が
高いことが確認できた。
*22) 沸点は-25℃(エアゾール産業新聞社「エアゾール包装技術」P67 より)
37
<資料3.テスト方法>
1)凍傷や凍結による事故
(1)凍傷の危険性
(テスト対象:「コールドスプレー」「制汗消臭剤」「日焼け止めスプレー」「消炎鎮痛剤」「足臭防止剤」
「ブロワー」)
人体の皮膚の表面温度に見立てて、約 35℃に保ったお湯を試験管内に循環させた。サポー
ター(「足臭防止剤」「ブロワー」の場合は靴下)の上から噴射することを謳っている商品
は、その上からの噴射も行うこととして、室温下でスプレーを試験管に直接噴射及び、サポー
ター(または靴下)上から噴射した(写真 1)。その後の試験管の表面温度や、サポーター
(または靴下)の内側・外側の温度を経時的に測定した。スプレーの噴射方法は、以下の 3
条件とした。条件(a)の噴射距離と噴射時間は表 9 に示す。ブロワーは人体に噴射して使用す
る商品ではないが、条件(a)の場合は 10cm の距離で 3 秒噴射することとした。
条件(a):商品の表示どおりの使用方法(商品に表示されている噴射距離と噴射時間)
条件(b):(a)よりも至近距離及び長時間で噴射(5cm の距離から 5 秒噴射)
条件(c):スプレーを横向きに倒した状態(LP ガスや DME などの噴射剤自体も液体のまま噴射されて
しまう可能性のある状態)(5cm の距離から 5 秒噴射)
表 9.条件(a)の噴射距離と噴射時間
条件(a)の
噴射距離と噴射時間
検体名
コールドスプレー①②
20cm3秒
制汗消臭剤①③④⑤
10cm3秒
制汗消臭剤②
15cm3秒
15cm3秒
日焼け止めスプレー①②
消炎鎮痛剤①②
10cm3秒
足臭防止剤①②③
ブロワー①②③
(2)凍結の危険性
(テスト対象:「防水剤」「防錆潤滑剤」「ブロワー」)
1 分間の連続噴射時に、スプレー缶各所の温度を測定した。
38
2)引火による事故
(1)人体に噴射して使用するスプレーによる事故
(テスト対象:「コールドスプレー」「消炎鎮痛剤」)
人体の皮膚の表面温度に見立てた約 35℃に保った試験管にサポーターを被せ、その上から
スプレーを噴射した。スプレーの噴射直後にライターの火をサポーターに近づけ、引火の有
無を観察した(写真 4)。スプレーの噴射方法は、以下の 2 条件とした。条件(a)の噴射距離
と噴射時間を表 9 に示した。なお、ライターによる引火時には危険を伴うため、テストでは
喫煙時などに通常用いるライターではなく、20cm ほど離れた所からでも容易に点火できるよ
うなライター(写真 4)を用いた。そのため、通常のライターに比べて、生じる炎の規模は
若干大きくなっている。
条件(a):商品の表示どおりの使用方法(商品に表示されている噴射距離と噴射時間)
条件(b):(a)よりも至近距離及び長時間で噴射(5cm の距離から 5 秒噴射)
(2)防水剤噴射後の未乾燥状態での事故
(テスト対象:「防水剤」)
スキー用グローブに防水剤を約 12 秒噴射し、直後にライターの火を近づけた(写真 5)。
なお、当該スキー用グローブは、購入当初(防水剤噴射前)及び、噴射後に十分に防水剤が
乾いたものには、ライターで点火を試みても引火しないものであった。
(3)パーティー用スプレーによる事故
(テスト対象:「パーティー用スプレー(噴射物が紐状)」「パーティー用スプレー(噴射物が雪状)」)
ろうそく 3 本の火に向かって 2m の距離からスプレーを噴射した(写真 6)。
3)自動車内での破裂事故
(テスト対象:「塗料」「自動車用消臭剤」「自動車用ガラスクリーナー」「タイヤクリーナー」)
スプレー缶の内容物の残存量を、①全量残存(未使用品)、②全量の 2/3 量残存、③全量の
1/3 量残存の 3 種類作出し、夏場(8 月初旬)の晴れた日のダッシュボード上にスプレー缶
を放置した(写真 24)。なお、車は遮蔽物のないアスファルト上に駐車し、スプレー缶には
直射日光が当たるようにした。
スプレー缶の耐圧強度は、高圧ガス保安法に基づくエアゾール缶の耐圧強度試験をもとに、
スプレー缶が破裂に至る際の圧力を測定した。
39
写真 24.放置例
4)ガス抜きキャップなどの有効性
(テスト対象:全 18 商品群)
中身を使い切ったスプレーのガス抜きを行った。
5)参考テスト
(1)ガス抜き時の事故
(テスト対象:「殺虫剤」「室内消臭剤」「ヘアスプレー」)
スプレー缶の内容物の残存量を、①全量残存、②全量の 1/3 量残存の 2 種類作出して台上
に横向きに置き、遠隔操作で釘刺しによりスプレー缶に穴を開けた。なお、穴開け時に噴霧
される内容物の噴霧範囲に、点火源として電気火花を発生させた(写真 18)。なお、テスト
に使用した電気火花の仕様は、定格周波数 50Hz、電圧 15kV、電流 20mA とした。
(2)遠方噴射での事故
(テスト対象:「殺虫剤」「殺虫剤(大量噴射タイプ)」)
バーナーの火に向かって、30cm、50cm、1m、2m、3m の距離からスプレーを噴射した(写
真 19)。
40
(3)室内大量噴射での事故
(テスト対象:「殺虫剤」「室内消臭剤」「防水剤」「ヘアスプレー」)
天井部分が開放されたアクリルボックス(縦 80cm×横 80cm×高さ 100cm)内の台上にス
プレー缶を置き、遠隔操作によりスプレー缶を連続噴射させた。その際、噴霧される内容物
の噴霧範囲に、点火源として電気火花を発生させた。なお、スプレー缶の内容物の残存量は、
全量残存とし、アクリルボックスの天井部分にはフィルムを被せて自然換気されにくい状態
でテストを行った(写真 20)。
(4)火中での爆発事故
(テスト対象:「殺虫剤」「室内消臭剤」「ヘアスプレー」)
スプレー缶の内容物の残存量を、①全量残存、②全量の 1/3 量残存の 2 種類作出して金網
上に横向きに置き、金網下から変性エチルアルコールの炎で加熱した(写真 21)。
(5)暖房器具などの加熱源の近くでの事故
(テスト対象:「殺虫剤」「室内消臭剤」)
運転中のファンヒーター前(温風出口から約 20cm のところ)にスプレー缶を 45 分間放置
した(写真 23)。スプレー缶の内容物の残存量は、全量残存とした。なお、テストに使用し
たファンヒーター(98 年製)の仕様を以下に示す。
規格名称:強制通気形 開放式石油ストーブ、種類:気化式・強制対流形、使用燃料:灯油(JIS1
号灯油)、定格電圧:100V、定格周波数:50/60Hz、油タンク容量:9.0L、燃料消費量:0.334L/h、
暖房出力:3.20kW(2.750kcal/h)、定格消費電力:①最大消費電力(点火時):620/620W、②燃焼
時消費電力:20/19W
41
<資料4.仕様一覧>
資料4-1.内容量、用途、効能・効果など
分類
商品群
塗料
家
庭
用
品
銘柄
番号
①
300ml
300ml
⑤
300ml
⑥
300ml
⑦
300ml
鉄部・木部・コンクリート(新設は除く)・発泡スチロール・プラスチック(一部を除く)・ガラス・ホビー工作
⑧
①
②
③
300ml
450ml
450ml
450ml
450ml
④
450ml
⑤
550ml
①
380ml
サッシ・門扉・フェンスなど 屋内外のアルミ製品や鉄部に
ハエ成虫、カ成虫、ゴキブリ、ノミ、ナンキンムシ、イエダニの駆除に効果があります。
ゴキブリの駆除
ゴキブリの駆除
ハエ成虫・カ成虫・ゴキブリ・ノミ・トコジラミ(ナンキンムシ)の駆除に効果があります。
【適用害虫】
ハチ、アブ、ガ、クモ、ムカデ、ヤスデ、ゲジ、ケムシ、カメムシ
【適用害虫】
アシナガバチ、クマバチ、ミツバチ、アブ、ブユ、クモ、ヤスデ、ゲジ、ケムシ、ムカデ、カメムシ、羽アリ
室内用
水洗いまたはドライクリーニングできる布地
使えないもの/本革、毛皮、人工皮革、絹、和服、毛布
330ml
①
②
①
②
原液量
144ml
内容量
180ml
330g
480ml
300mL
135g
135g
③
90g
④
⑤
①
②
③
①
②
①
②
①
130g
150g
130g
135g
150ml
40g
40g
250ml
200ml
840ml
②
ヘアスプレー
水洗いまたはドライクリーニングできる布地、傘用
使えないもの/本革、毛皮、人工皮革、絹、和服
②
220ml
①
②
①
②
160ml
60ml
330ml
300ml
420ml
ヘアスプレイ
打撲や捻挫の応急処置用の冷却スプレーです。
スポーツ・レジャー用の瞬間冷却剤
皮ふ汗臭、わきが(腋臭)、制汗
制汗、皮ふ汗臭、わきが(腋臭)
汗のベタつきをとりのぞく。ニオイや腋臭(わきが)などのもととなる原因菌を効
果的に防ぎます。
制汗
瞬間冷却。汗とニオイを防ぐ。
皮ふ汗臭、制汗
皮膚汗臭
ストッキング、靴下、靴用
日やけ止め
日やけ止め
筋肉痛、筋肉疲労、打撲、捻挫、肩こり、腰痛、関節痛、骨折痛、しもやけ
腰痛、打撲、捻挫、肩こり、関節痛、筋肉痛、筋肉疲労、しもやけ、骨折痛
潤滑・離型・防錆・つや出し
自動車、オートバイ、自転車、電気製品、スポーツ用品、電動工具、精密機械、工作機械、計器
類、戸車、ヒンジなどの金属部分の防錆・潤滑・清浄に。
除菌・消臭
車用エアコン及び車内の消臭
自動車用窓ガラス及びガラス製ミラーの洗浄
自動車用窓ガラス及びガラス製ミラーの油膜とり、くもり止め、クリーナー用
自動車用タイヤの洗浄及びつや出し
パーティー用スプレー
(噴射物が紐状)
①
50ml
パーティ、イベント、宴会
②
100g
パーティ・演会・からおけ・その他各種イベントの室内装飾など
パーティー用スプレー
(噴射物が雪状)
①
120ml
パーティー、イベント、舞台演出、誕生日、結婚、クリスマス、カラオケ、応援、雪のおみやげ他
②
100ml
①
460ml
パーティー・イベント・宴会・カラオケなど
キーボードの隙間のチリ、ホコリの除去に、パソコンや周辺機器の組み立て、メンテナンスのホコリ除去
に、プリント基盤のトラブルの原因となるチリ、ホコリの除去に、音響機器、光学機器、精密機器
などのクリーニングに
コールドスプレー
制汗消臭剤
足臭防止剤
日焼け止めスプレー
医薬
消炎鎮痛剤
品
工業
防錆潤滑油
用品
そ
の
他
屋内外の鉄製品・木製品に
鉄部・木部、家具、マーキング、コンクリート、プラスチック(アクリル・ABS樹脂のみ)、屋外・屋内木用(床
を除く)、屋外・屋内壁用(浴室・台所の壁を含む)
自転車、家具、冷蔵庫など電化製品、機械器具、マーキング、ホビーなど
電気器具・家具・機械器具・自転車などの屋内外の鉄製品・木製品(床を除く)
電気器具(非昇温部)・家具・建具・自転車・マーキング・工作品の鉄部、木部(床は除く)に
最適。(吸い込みの大きいMDF板、自動車、高級家具、ストーブの高温部は不適。表示の
用途以外には使用しないこと)
木部・鉄部・スレート・プラスチック・ガラス・発泡スチロール・コンクリート
(ポリエチレン・ポリプロピレン・ペットボトルは不可。塗れない材質、素材があります。事前に
必ずご確認ください。)
③
④
防水剤
自
動
車
用
品
420ml
300ml
室内消臭剤
人
体
用
品
用途、効能・効果など
②
殺虫剤
殺虫剤
(大量噴射タイプ)
内容量
自動車用消臭剤
自動車用ガラスクリーナー
タイヤクリーナー
ブロワー
②
③
380g
ホコリ、ゴミの除去
(420ml)
460ml パソコンに、デジカメに、プリンターに、スキャナに、電話機・Faxに
42
資料4-2.内容成分、有効成分など
分類
商品群
塗料
家
庭
用
品
銘柄
番号
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
殺虫剤
殺虫剤
(大量噴射タイプ)
①
②
③
④
⑤
室内消臭剤
防水剤
①
②
ヘアスプレー
コールドスプレー
①
②
①
②
③
制汗消臭剤
人
体
用
品
④
⑤
①
足臭防止剤
②
③
①
日焼け止めスプレー
②
①
医
薬
品
消炎鎮痛剤
②
工業
用品
自
動
車
用
品
そ
の
他
防錆潤滑油
自動車用消臭剤
自動車用ガラスクリーナー
①
②
①
②
①
②
タイヤクリーナー
内容成分、有効成分など
ニトロセルロース、合成樹脂(アクリル)、顔料、有機溶剤
合成樹脂<アクリル、顔料、有機溶剤、DME(可燃性)>
合成樹脂(アクリル)、顔料、有機溶剤
ニトロセルローズ、合成樹脂(アクリル)、顔料、有機溶剤
ニトロセルロース、合成樹脂(アクリル)、顔料、有機溶剤
水溶性合成樹脂(アクリル)、顔料、水、有機溶剤、DME(可燃性)
合成樹脂(シリコン変性)、顔料、有機溶剤、水
ニトロセルロース、合成樹脂(アクリル)、顔料、有機溶剤
ピレスロイド(d-T80-フタルスリン、d-T80-レスメトリン)
イミプロトリン、フェノトリン、ミリスチン酸イソプロピル、灯油、DME、LPガス
イミプロトリン(ピレスロイド系)
ピレスロイド(d-T80-フタルスリン、d-T80-レスメトリン)
d-T80-フタルスリン、d-T80-レスメトリン
d-T80-フタルスリン、エトフェンプロックス
植物抽出物、両性界面活性剤系消臭剤、香料、エタノール
イソプロピルアルコール 292ml
フッ素樹脂、石油系炭化水素、酢酸ブチル
エタノール、LPG、アクリル酸アルキルコポリマーAMP、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMP、PCAイソステアリン酸グ
リセレス-25、ラベンダー油、ジメチコンコポリオールブチル、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3、
BHT、リナロール
記載なし
アルコール類 4.3ml
イソプロピルメチルフェノール、ミリスチン酸イソプロピル、ジブチルヒドロキシトルエン、香料
ミリスチン酸イソプロピル、ジブチルヒドロキシトルエン、香料
イソプロピルメチルフェノール、香料
LPG、イソノナン酸イソノニル、メチルフェニルポリシロキサン、無水ケイ酸、デシルテトラデカノール、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステ
ルアルミニウム、タルク、l-メントール、l-メンチルグリセリルエーテル、無水エタノール、ジブチルヒドロキシトルエン、チャ乾留液、香料/クロル
ヒドロキシアルミニウム、トリクロサン
イソプロピルメチルフェノール、ミリスチン酸イソプロピル、ジブチルヒドロキシトルエン、香料
LPG、無水エタノール、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム、デシルテトラデカノール、1.3-ブチレングリコール、l-メン
トール、l-メンチルグリセリルエーテル、イソノナン酸イソノニル、チャ乾留液/トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、パラフェノールスルホン酸
亜鉛
イソプロピルメチルフェノール、ミリスチン酸イソプロピル、ジブチルヒドロキシトルエン、香料
植物抽出物、脂肪酸塩系消臭剤、香料、エタノール
LPG、水、DME、メトキシケイヒ酸オクチル、エタノール、酸化チタン、アロエベラ液汁末、シラカバ樹皮エキス、ナイロン-12、シリカ、タルク、
シクロメチコン、BG、PEG-115M、水酸化Al、PPG-8、セテス-20、香料、オキシベンゾン-3、エチルパラベン、メチルパラベン
イソペンタン・LPG・ジメチルエーテル・シクロメチコン・水・エタノール・メトキシケイヒ酸オクチル・酸化チタン・フェニルトリメチコン・
イソステアリン酸ソルビタン・ステアリン酸・イソステアリン酸ポリグリセリル-2・シリカ・ジメチコンコポリオール・水添ヒマシ油・メソ
トキシプロパンジオール・1,3-ブチレングリコール・セイヨウハッカエキス・アロエベラエキス-1・香料・アルミナ
【有効成分】250ml中
l-メントール 12.50g、dl-カンフル 5.00g、サリチル酸メチル 5.00g、サリチル酸グリコール 2.50g、ユーカリ油 1.25g、グリチ
ルレチン酸 0.25g
添加物として、エタノール、香料、タルク、フェニルエチルアルコール、1.3-ブチレングリコール、LPG、DMEを含有します。
【成分及び分量】有効成分100ml中
l-メントール 1.27g、サリチル酸グリコール 0.9g、酢酸トコフェロール(ビタミンE) 0.18g、グリチルレチン酸 36.2mg、ジフェニ
ルイミダゾール 36.2mg、ニコチン酸ベンジルエステル 3.6mg
添加物としてアルコール、タルク、八アセチルしょ糖、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルエーテル、液化石油ガスを含有し
ます。
シリコンオイル・石油系溶剤
第3石油類(鉱物油、ケロシン) 132ml
植物抽出消臭剤、香料、抗菌剤、非イオン界面活性剤、エタノール
光触媒、銀、天然消臭成分、香料、エタノール
陰イオン系界面活性剤、アルコール類
陰イオン系界面活性剤、アルカノールアミン
非イオン系界面活性剤、シリコーンオイル
パーティー用スプレー
(噴射物が紐状)
①
②
記載なし
パーティー用スプレー
(噴射物が雪状)
①
非イオン系界面活性剤、アルコール
②
①
②
③
記載なし
記載なし
HFC-152a
HFC-152a
ブロワー
記載なし
43
<資料5.表示例>
資料5-1.廃棄方法の表示例
商品群
塗料
廃棄方法の表示例
・やむをえず中身の塗料を捨てるときは、火気のない屋外で新聞紙などに塗り広げ、完全
に乾かしてから一般ゴミとして処分して下さい。
・容器を捨てる際には、容器上部の表示に従って中のガスと塗料を十分に抜き、他のゴミと
はっきり区別して捨てて下さい。
ガス抜きキャップの使い方
注意事項
①必ず中身を使い切ってから行って下さい。②火気のない屋外で行って下さい。③塗料が
飛び散っても差し支えないところで行ってください。④容器が倒れないよう平らな場所で
行って下さい。
ガス抜きの方法
①スプレーから押しボタンを引き抜きます。②キャップの内側にティッシュペーパーを6~7枚詰め、セロハンテー
プで浮かないように止めます。③容器を立てた状態でステムにキャップ天面の穴を合わせて押し
込みます。キャップが固定されてシューという音とともにガスと塗料が抜けはじめます。2~3時間
放置後、缶には油性ペンで“ガス抜き済”と表示し、キャップと分別廃棄して下さい。
商品群
制汗消臭剤
廃棄方法の表示例
<商品のガス抜きと分別廃棄について>
※中味を完全に使い切ってから 火気のない戸外で行なってください
※ボタンの噴射口が身体に向かないように行なってください
①噴霧ボタンをおおうカバーを引き抜きます。②引き抜いたカバーを半回転し カバーのせまい切り
こみ部分にある三角マークとボタン天面の丸印を合わせます。③もとのようにカバーを缶にはめこ
むとガスが噴射されます。④噴射音が完全に消えるまで放置し 缶とカバー・ボタンを分別して廃
棄します。
資料5-2.注意表示例
商品群
室内消臭剤
商品群
消炎鎮痛剤
注意表示例
火気と高温に注意
高圧ガスを使用した可燃性の製品であり、危険なため、下記の注意を守ること。
①炎や火気の近くで使用しないこと。②火気を使用している室内で大量に使用しないこ
と。③高温にすると破裂の危険があるため、直射日光の当たる所やストーブ、ファンヒーターの近くな
ど温度が40度以上となる所に置かないこと。④火の中に入れないこと。⑤使い切って捨て
ること。
高圧ガス:LPガス
注意表示例
火気と高温に注意
高圧ガスを使用した可燃性の製品であり、危険なため、下記の注意を守ること。
①炎や火気の近くで使用しないこと。②火気を使用している室内で大量に使用しないこ
と。③高温にすると破裂の危険があるため、直射日光の当たる所や火気等の近くなど温度が
40度以上となる所に置かないこと。④火の中に入れないこと。⑤使い切って捨てること。
高圧ガス:LPG/DME
<title>スプレー缶製品の使用上の安全性(全文)</title>
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