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平成16年度 森林バイオマス低コスト供給システム 実証試験

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平成16年度 森林バイオマス低コスト供給システム 実証試験
平成16年度バイオマス利活用フロンティア推進事業
平成16年度
森林バイオマス低コスト供給システム
実証試験・支援システム研究報告書
エネルギー地産・地消による
新しい地域産業の創出と
循環型社会の構築を目指して
平成17年3月
山
口
県
目
次
1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1.1 森林バイオマス活用に向けた本県の取り組み
1.2 対象とする森林バイオマス
1.3 これまでの森林バイオマス低コスト供給システム開発の流れ
2
実証試験の目的及び内容
2.1 実証試験の目的
2.2 実証試験の内容
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
3 森林バイオマス低コスト供給システム実証試験 ・・・・・・・・・・・・・・・11
3.1 FS 調査時の山口方式による森林バイオマス低コスト供給システムについて
3.2 現地実証試験の目的と方法
3.3 人工林路網上分散型収集システム
3.4 竹林皆伐現地チップ化システム
4 バンドリングマシンシステムに関する情報収集及び開発可能性の検討 ・・・・・44
4.1 国内外のバンドリングマシンシステムに関する情報収集
4.2 日本式バンドリングマシン開発可能性の検討
5 森林バイオマス発生予測手法の研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47
5.1 森林バイオマス発生予測手法研究の目的
5.2 人工林のバイオマス発生予測
5.3 竹林のバイオマス発生予測
5.4 発生予測精度向上へ向けた文献調査
5.5 森林バイオマス発生予測手法研究の今後の展開
6 森林バイオマスコストシミュレーションの開発 ・・・・・・・・・・・・・・・59
6.1 FS 調査時の「森林バイオマス生産コスト算出シミュレーション」作成概要
6.2 森林バイオマスコストシミュレーション作成の目的
6.3 森林バイオマスコストシミュレーション概要
6.4 森林バイオマスコストシミュレーション活用及び今後の展開
7 森林バイオマス供給 GIS システムの活用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・68
7.1 森林バイオマス供給 GIS システム開発の目的
7.2 森林バイオマス供給 GIS システム概要
7.3 森林バイオマス供給 GIS システム活用及び今後の展開
8 森林バイオマス低コスト供給システムの検証 ・・・・・・・・・・・・・・・・75
8.1 森林バイオマス低コスト供給システムの検証方法
8.2 人工林における森林バイオマス低コスト供給システムの検証
8.3 竹林における森林バイオマス低コスト供給システムの検証
8.4 山口方式による森林バイオマス低コスト供給システムの構築に向けて
1
はじめに
1.1
森林バイオマスエネルギー活用に向けた本県の取り組み
県土の 7 割を森林が占める山口県には、間伐材や全国第 4 位の資源量の竹材等、年間
供給可能量約 30 万 t もの木質系バイオマスが賦存している(表 1-1-1)。特に間伐材・竹
の未利用森林資源は 125,500t/年である。
表 1-1-1 エネルギー原料供給可能量
資源名
供給可能量t/年
未利用間伐材(スギ)
20,200
未 未利用間伐材(ヒノキ)
46,700
利 原木市場木くず(端材)
400
用 原木市場木くず(樹皮)
600
森 製材所木くず(オガクズ等)
5,900
林 製材所木くず(樹皮)
1,200
資 未利用竹資源
58,600
源 剪定枝葉
6,000
森林資源合計
139,600
建設発生木材
160,000
299,600
年間供給可能量
また、間伐材・竹材等の未利用森林資源である「森林バイオマス」のバイオマスエネ
ルギーとしての利用推進は、地球温暖化防止、資源の循環利用、森林の適正な育成、中
山間地域における新たな地域産業の創出に大きく寄与するものである。
このため、平成 13 年度に本県が策定した「やまぐち森林バイオマスエネルギー・プラ
ン」に基づき、森林バイオマスの供給からエネルギー利用に至る一貫した利用システム
を構築し、地域の未利用資源を地域エネルギーとして活用する社会システムである
ネルギー地産地消
エ
の推進を産学公連携により行っている(図 1-1-1)。
そのためには、化石燃料や廃棄物系のバイオマスとの燃料価格差を縮減する必要があ
り、森林バイオマスの伐採・搬出・収集・運搬・チップ加工による「森林バイオマス低
コスト供給システム」の構築が重要な課題となっている。
1
既設火力発電施設での混
既設火力発電施設での混
焼システム
焼システム
●既存石炭火力発電施設での石炭
●既存石炭火力発電施設での石炭
との混焼システムを構築
との混焼システムを構築
森林バイオマ
ス低コスト供給
システム
中山間地域エネルギー供
中山間地域エネルギー供
給システム
給システム
間 伐材・竹材
の伐採・搬出
●電力・熱の利用施設が集中配置
●電力・熱の利用施設が集中配置
された中山間地域での中規模な地
された中山間地域での中規模な地
域電力・熱併供システムを構築
域電力・熱併供システムを構築
チップ化
輸
送
小規模分散型熱供給シス
小規模分散型熱供給シス
テム
テム
●ペレット燃料による汎用・分散型
●ペレット燃料による汎用・分散型
小規模ペレット・ボイラー熱利用シ
小規模ペレット・ボイラー熱利用シ
ステムを構築
ステムを構築
図 1-1-1 連携するエネルギー利用システム
2
1.2
対象とするバイオマス
木質バイオマスのうち、廃棄物系を除いた以下の未利用森林資源をバイオマスの対象
とした。
○
人工林
森林所有者の収入を確保するため素材部分は対象とせず、スギ・ヒノキの人工林の素
材生産時に発生する残渣(図 1-2-1)と、間伐材を対象とした。
枝葉
素材
素材
小径木
根元
図 1-2-1 素材と残渣の関係
○
竹林
放置され拡大が問題になっているモウソウチク林を対象とした。
写真 1-2-1 放置されたモウソウチク林
3
梢端
1.3
これまでの森林バイオマス低コスト供給システム開発の流れ
平成 13 年度に森林バイオマスエネルギー活用可能性調査を行い、森林資源の原料供給
可能量を明らかにした。また、平成 14 年度には森林バイオマス低コスト供給システムの
構築に関する調査研究を行い、路網整備と機械整備について整理した。
平成 15 年度には、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との
共同研究により「バイオマス等未活用エネルギー実証試験事業・同事業調査
バイオマ
ス等未活用エネルギー実証試験事業調査」を実施した。
この研究では、山口県における木質バイオマスエネルギー活用実証・実用化プロジェ
クトと連携して、未利用森林資源を低コストで収集・運搬する燃料化システムを構築す
るため、現行の日本型林業生産システムと先進的な欧州型森林バイオマス燃料化システ
ムの融合による新たな山口方式の森林バイオマス低コスト供給システムの事業化の可能
性について調査を実施した。以下が成果の概要である。
1.3.1 現行の林業生産システムにおける作業工程・仕組・コスト等の調査・分析
スギ・ヒノキ人工林の主伐と間伐について、実際の林業生産現場で調査を実施すると
ともに、バイオマスとして活用すべき残渣(根元、梢端、枝葉)の発生状況及び収集の
工程調査を実施した。また、低コスト効果が期待されるスイングヤーダ、プロセッサ等
の高性能林業機械を生産現場に試験導入した。竹林は放置されたモウソウチクの伐採か
ら収集の工程調査を実施した。残渣や竹の収集については、欧州で行われている現地チ
ップ化に準じ移動式チッパーを導入し工程調査を行った。
これらの結果から、各工程の作業時間等の各種基礎データを算出し、伐採現場からエ
ネルギープラントまでの収集・運搬コストに関する「森林バイオマス生産コスト算出シ
ミュレーションシステム」を作成し、各作業仕組についてシミュレーションし、低コス
ト化に向けた分析を行った。
1.3.2 森林バイオマス低コスト燃料化システムの先進事例システムの調査
欧州型森林バイオマス燃料化システムとして、フィンランドの事例調査の結果、バイ
オマスの伐採・収集や生産現場でチッパー、バンドリングマシンを用いた残渣の減容化
のための各種高性能林業機械の積極的な導入に加え、それの効率的な運用を支える携帯
端末を活用したバイオマス収集・運搬に関する情報伝達システムが発達していることが
わかった。
1.3.3 燃料システムを効率的に運用する森林バイオマス情報システムの調査
海外の先進事例からも、高性能林業機械の導入によるハード面での低コスト化と、森
林資源の総合的な情報を活用した IT(情報技術)システムの導入による収集・運搬作業
の効率化によるソフト面での低コスト化の一体的な取組みが不可欠であることがわかっ
4
た。このため、森林バイオマスの効率的な収集計画の立案支援等、収集・運搬のコスト
ダウンを図る森林資源地図情報システムを活用した森林バイオマス GIS システムの開発
を検討した。
1.3.4 新たな森林バイオマス低コスト燃料化システムの検討と事業化可能性の評価
これらの調査結果から新たな山口方式の燃料化システムを検討するため、
「森林バイオ
マス生産コスト算出シミュレーションシステム」を活用し、人工林 21 パターン、竹林 2
パターンの計 23 パターンの作業システムについて生産コスト、生産量のシミュレーショ
ンを実施した。
人工林では素材生産時に「スイングヤーダによる全木集材→プロセッサによる造材」
作業の組合せにより素材、残渣ともに山土場にほぼ全量集積でき、安価に収集できるこ
とがわかった。そして、バイオマス運搬時には、枝葉をチッパー、バンドリングマシン
で減容化し運搬効率を上げることにより、大幅な低コスト化を図れることがわかった。
つまり、素材生産とバイオマス生産の同時作業が適しており、そのためには山土場の
確保や路網整備など素材生産の低コスト化に向けた取り組みがバイオマス生産の低コス
ト化と密接な関係があることがわかった。
竹については、伐採・造材作業のうち枝払いの労力が多く、また資源量が生重量ベー
スで約 300t/ha あるが、約 2/3 が中空のため、全竹のまま現地でチップ化する事が低コス
ト化に必要であることがわかった。
そこで、23 パターンの作業システムから低コストでかつ安定量を供給できる 5 パター
ンを選び、その作業規模に応じた最適な機械システムを選定した(図 1-3-1)。その場合、
人工林・竹林の伐採現場からエネルギープラントへの供給コスト(生重量ベース)は、
現行の供給コストが間伐材では約 19,000 円/t、竹林では約 20,000 円/t であったが、新シ
ステムでは表 1-3-1 のとおり人工林では 5,429∼8,380 円/t、竹林では 16,490 円/t まで削
減できる可能性があることがわかった。
5
人工林バイオマス供給システム
山土場集中型現地チップ化システム
伐採
造材
集材
チェンソー
スィングヤーダ
CAT312C型
スィングヤーダ付
搬出
プロセッサー
CAT312C型
CM−40Z付
MTL
247型
破砕
チッパ−
BG1000
* スィングヤーダはグラップル装着
山土場集中型圧縮システム
伐採
造材
集材
チェンソー
スィングヤーダ
CAT312C型
スィングヤーダ付
搬出
プロセッサー
CAT312C型
CM−40Z付
* スィングヤーダはグラップル装着
MTL
247型
圧縮
バンドラー
* バンドラーは国内向け改造が必要
路網上分散型現地チップ化システム
伐採
造材
搬出
破砕
プロセッサー
CAT307C型
CM−30Z付
フォワーダ
Uー3A
チッパ−
BG1000
集材
チェンソー
スィングヤーダ
CAT307C型
スィングヤーダ付
運搬
* スィングヤーダはグラップル装着
路網上分散型圧縮システム
伐採
造材
搬出
圧縮
プロセッサー
CAT307C型
CM−30Z付
フォワーダ
Uー3A
バンドラー
集材
チェンソー
スィングヤーダ
CAT307C型
スィングヤーダ付
* スィングヤーダはグラップル装着
* バンドラーは国内向け改造が必要
竹林バイオマス供給システム
竹林皆伐現地チップ化システム
スィングヤーダ
CAT305CR型
スィングヤーダ付
破砕
造材
集材
伐採
チェンソー
(竹用)
チェンソ−
(竹用)
チッパ−
BG1000
* スィングヤーダはグラップル装着
図 1-3-1 最適な機械システムによる森林バイオマス低コスト供給システム(FS 調査)
表 1-3-1 最適システム毎のコスト計算結果(FS 調査)
パターン
生産量
総経費
重量あたりコスト
t
円/ha
円/t
1
人工林山土場集中型
現地チップ化システム
素材
272
残渣
184
2
人工林山土場集中型
圧縮システム
素材
272
残渣
184
3
人工林路網上分散型
現地チップ化システム
素材
72
残渣
49
4
人工林路網上分散型
圧縮システム
素材
72
残渣
49
5
竹林皆伐
現地チップ化システム
全竹
297
6
2,940,325
6,448
2,475,468
5,429
1,204,347
9,959
1,013,308
8,380
4,897,601
16,490
2
実証試験の目的及び内容
2.1 実証試験の目的
15 年度 FS 調査は現地調査を行ったものの、コスト計算は森林バイオマス生産コスト
算出シミュレーションシステムを用いた机上のコストであり、実際の現場データではな
い。また、現場で使用した高性能林業機械も最適規模とした機械でもない。
そこで、最適なシステムの実証試験を行い、施行現場で各種データを調査・収集し、
最適供給システムの問題点、要改善点等について分析する。
また、高性能林業機械等の導入によるハード面での低コスト化と、森林資源の総合的
な情報を活用した IT(情報技術)システムの導入による収集・運搬作業の効率化による
ソフト面での低コスト化の一体的な取組みが不可欠であることから、供給システムを効
率的に運用するためのシステムとして
◊
バンドリングマシンシステムの情報収集
◊
森林バイオマス発生予測手法の研究
◊
森林バイオマスコストシミュレーションの開発
◊
森林バイオマス供給 GIS システムの開発
を行うこととする。
これらにより、森林バイオマスの伐採・搬出・収集・運搬・チップ加工による作業シ
ステムだけでなく、ソフト支援システムも含めた総合的な山口方式による「森林バイオ
マス低コスト供給システム」の構築を図る。
支援システム作成
現地実証試験(3章)
○人工林
発生量データ等
森林バイオマス発生予測システム(5章)
素材生産工程調査
バイオマス収集工程調査
従来・荷台箱型・チップ化・圧縮・チップ化後圧縮
林業生産現場データ
機械データ等
森林バイオマス生産コスト基礎データ集(6章)
○竹林
伐採集材工程調査
森林バイオマスコスト
シミュレーション構築
バイオマス収集工程調査
全竹チップ化・短稈造材枝条チップ化
森林バイオマスコストシミュレーション(6章)
森林バイオマス低コスト供給システムの検証・構築(8章)
図 2-1-1 森林バイオマス低コスト供給システム実証試験のフロー
7
2.2 実証試験の内容
2.2.1 森林バイオマス低コスト供給システムの実証試験
15 年度 FS 調査で、山口方式による最適システムと、そのシステムを用いた場合のコ
ストが明らかになった。そこで、人工林列状間伐現場、竹林皆伐現場において実証し、
コストについての検証、システムの改善について検証する。
◊
各作業工程における作業能率の計測
◊
供給コストの算出・評価
◊
問題点と要改善点等の分析
ただし、圧縮システムとして最適な機械としたバンドリングマシンは日本での導入事
例がないため、同時に減容化のためのシステムについて、従来方式、荷台箱型方式、チ
ップ化方式、圧縮方式の 5 タイプを検討する。
実際の林業生産現場における森林バイオマスの収集・加工、森林から火力発電所等へ
の運搬に至る以下の工程について実証試験を実施する。
(1) 人工林路網分散型チップ化システム
ア 現場条件
人工林列状間伐現場
イ システム構成
素材生産工程調査
集材
造材・分別集積
チェンソー
スイングヤーダ
プロセッサ
バイオマス収集工程調査
運搬
素材
4tトラック
木材市場
伐採
従来方式
トラック
荷台箱型方式
根元
小径木
梢端
枝葉
圧縮方式
プレスダンプ
チップ化方式
チッパー
荷台箱型トラック
チップ化後圧縮方式
チッピングロータリープレス車
プレスコンテナ車
図 2-2-1 人工林路網分散型バイオマス供給システム構成
8
発電施設
残渣
荷台箱型トラック
(2) 竹林皆伐現地チップ化システム
ア 現場条件
竹林皆伐現場
イ システム構成
竹伐採集材工程調査
全竹チップ化工程調査
伐採
集材
集材・チップ化補助
チップ化
運搬
チェンソー
スイングヤーダ
グラップル
粉砕型チッパー
4tトラック
造材
グラップル
チェンソー
チップ化
運搬
粉砕型チッパー
4tトラック
図 2-2-2 竹林皆伐現地チップ化システム構成
9
運搬
4tトラック
枝付き部
短稈造材枝条
チップ化工程調査
4m短稈
発電施設
集材・造材補助
2.2.2 バンドリングシステムに関する情報収集及び開発可能性の検討
バンドリングマシンについては、欧州のバイオマス開発現場で活躍しているが、現在
日本に導入されたケースはない。そこで、山口県の林業生産現場に導入可能なバンドリ
ングシステムの整備に向けた情報の収集と、バンドリングマシン開発の可能性について
検討する。
2.2.3 森林バイオマス発生予測手法の研究
森林バイオマスが、どのような作業を行えば、どの程度の量が発生するのかを予め把
握することは、安定供給、低コスト供給に必要である。
ところが、素材生産においては幹材積表等の材積を推測する手法があるが、森林バイ
オマスの発生予測についてはまだ少ない。そこで、文献、実証試験データ及び各種森林
資源データ等から森林バイオマスの発生予測手法について研究し、発生予測システムを
作成する。
2.2.4 森林バイオマスコストシミュレーションの開発
FS 調査で作成した「森林バイオマス生産コスト算出シミュレーションシステム」は現
場データ、作業人数、作業システム等を入力することにより、作業時間等の数値データ
集である「森林バイオマス生産コスト基礎データ集」からデータを当てはめ、素材、バ
イオマスの生産量、生産経費を算出するシステムである。
しかし、操作にはシステムについて熟知しておかねばならず、バイオマス供給業者等
が活用するのは困難である。また、調査件数も少ないため、シミュレーションに用いる
作業等の数値データ集である「森林バイオマス生産コスト基礎データ集」も正確とはい
えない。
そこで、新たに「森林バイオマスコストシミュレ−ション」として、
「森林バイオマス
生産コスト基礎データ集」の充実や、「森林バイオマス生産コスト算出シミュレーション
システム」入力システムの簡易化及び精度向上を図る。
2.2.5 森林バイオマス供給 GIS システムの開発
海外の先進事例からも、高性能林業機械の導入によるハード面での低コスト化と、森
林資源の総合的な情報を活用したIT(情報技術)システムの導入による収集・運搬作
業の効率化によるソフト面での低コスト化の一体的な取組みが不可欠である。
そこで、森林バイオマスの効率的な収集計画の立案支援等、収集・運搬のコストダウ
ンを図るため、森林資源地図情報システムである「山口県森林総合情報システム」を活
用した「森林バイオマス供給 GIS システム」の開発を行う。
10
3
森林バイオマス低コスト供給システム実証試験
3.1
FS 調査時の山口方式による森林バイオマス低コスト供給システムについて
森林バイオマスを低コストで供給するために 15 年度 FS 調査では図 3-1-1 のとおり人
工林 4 システム、竹林 1 システムの計 5 システムを最適システムとした。
人工林バイオマス供給システム
山土場集中型現地チップ化システム
伐採
チェンソー
集材
スィングヤーダ
CAT312C型
スィングヤーダ付
造材
プロセッサー
CAT312C型
CM−40Z付
搬出
MTL
247型
破砕
チッパ−
BG1000
* スィングヤーダはグラップル装着
山土場集中型圧縮システム
伐採
チェンソー
集材
スィングヤーダ
CAT312C型
スィングヤーダ付
造材
プロセッサー
CAT312C型
CM−40Z付
* スィングヤーダはグラップル装着
搬出
MTL
247型
圧縮
バンドラー
* バンドラーは国内向け改造が必要
路網上分散型現地チップ化システム
伐採
チェンソー
集材
スィングヤーダ
CAT307C型
スィングヤーダ付
造材
搬出
破砕
プロセッサー
CAT307C型
CM−30Z付
フォワーダ
Uー3A
チッパ−
BG1000
運搬
* スィングヤーダはグラップル装着
路網上分散型圧縮システム
伐採
チェンソー
集材
スィングヤーダ
CAT307C型
スィングヤーダ付
造材
搬出
圧縮
プロセッサー
CAT307C型
CM−30Z付
フォワーダ
Uー3A
バンドラー
* スィングヤーダはグラップル装着
* バンドラーは国内向け改造が必要
竹林バイオマス供給システム
竹林皆伐現地チップ化システム
伐採
チェンソー
(竹用)
集材
スィングヤーダ
CAT305CR型
スィングヤーダ付
造材
チェンソ−
(竹用)
破砕
チッパ−
BG1000
* スィングヤーダはグラップル装着
図 3-1-1 最適な機械システムによるバイオマス低コスト供給システム(FS 調査)
(1) 人工林バイオマス供給システムについて
間伐材、伐採残渣が発生するのは間伐、皆伐である。間伐には従来から取り組まれて
いる定性間伐と列状間伐があるが、定性間伐は収集コストが高く収集可能量も少ない。
そこで、人工林のバイオマス供給システムとして皆伐及び列状間伐を対象とした。
11
また、素材生産作業時のバイオマス低コスト供給のポイントを以下に整理した。
◊
スイングヤーダによる全木集材で素材、残渣ともに土場まで集材
◊
プロセッサによる造材時に、素材、小径木、根元、梢端、枝葉に分別集積
これらの高性能林業機械を活用したスイングヤーダとプロセッサの組み合わせによる
全木集材は、素材生産においても効率性が良く、また、残渣が山土場に集中もしくは路
網上に分散され、収集が容易な形で集積されることとなる。バイオマスの低コスト供給
と素材生産の効率化は密接な関係があることがわかった。
また、残渣の搬出方法として嵩張る枝条を現地で以下の手法で減容化することにより
運搬効率が向上する。
◊
チッパーによる「チップ化」
◊
バンドリングマシンによる「圧縮」
(2) 竹林バイオマス供給システムについて
本県ではモウソウチクの放置による拡大が問題となっているため、管理された竹林で
はなく、モウソウチクの放置竹林を対象とした。そのため、竹のバイオマス収集システ
ムは伐採工程も含まれる。また、竹稈は約 2/3 が中空であり、造材作業においては枝払い
が最も時間を要するため、全竹をチップ化することにより、造材の省略による作業の効
率化と、減容化による運搬効率の向上ができる。
そこで、人工林と同じようにスイングヤーダで全竹集材し、全竹のままチップ化する
現地チップ化システムとした。
(3)
最適な供給システムによるバイオマス供給コスト
「森林バイオマス生産コスト算出シミュレーションシステム」により、各システムで
コスト算出した値は表 3-1-1 のとおりである。
表 3-1-1 最適システム毎のコスト計算結果(FS 調査)
パターン
生産量
総経費
重量あたりコスト
t
円/ha
円/t
1
人工林山土場集中型
現地チップ化システム
素材
272
残渣
184
2
人工林山土場集中型
圧縮システム
素材
272
残渣
184
3
人工林路網上分散型
現地チップ化システム
素材
72
残渣
49
4
人工林路網上分散型
圧縮システム
素材
72
残渣
49
5
竹林皆伐
現地チップ化システム
全竹
297
12
2,940,325
6,448
2,475,468
5,429
1,204,347
9,959
1,013,308
8,380
4,897,601
16,490
3.2
現地実証試験の目的と方法
以上、FS 調査結果について概略を述べた。FS 調査は現地調査を行ったものの、コス
ト計算はシミュレーションによるもので、実際の現場で得たコストではない。また、使
用したスイングヤーダなどの林業機械も規格はまちまちで、最適な機械組み合わせによ
る検証も行っていないため、この最適システムについて実証試験を行い検証する必要が
ある。
そこで、実際の林業生産現場における森林バイオマスの収集・加工、森林から火力発
電所等への運搬に至る以下の工程について、最適システムに改善項目を加えた実証試験
を行い、施行現場で各種データを調査・収集し、最適供給システムの問題点、要改善点
等について分析することを目的に実証試験を行う。
◊
各作業工程における作業能率の計測
◊
発生するバイオマス量計測
◊
供給コストの算出・評価
◊
問題点と要改善点等の分析
3.2.1 人工林路網分散型供給システム調査
人工林の実証試験地として、スギ・ヒノキの列状間伐地とした。実証試験内容として、
素材生産工程調査とバイオマス収集工程調査の二つに分けた。
素材生産作業として、以下の仕様とした。
◊
スイングヤーダによる全木集材で素材、残渣ともに土場まで集材
◊
プロセッサによる造材時に、素材、小径木、根元、梢端、枝葉に分別集積
次に、残渣収集であるが運搬効率の向上のためには、梢端・枝葉をチッパーにより「破
砕」、バンドリングマシンにより「圧縮」する減容化が必要であるが、まだ日本にはバン
ドリングマシンの導入事例がないため、バンドリングマシンによる圧縮の実証試験がで
きない。なお、残渣の減容化方法の検討は、大きな課題であるため、今回以下の 5 方式
について検討することとした。
◊
従来方式
◊
荷台箱型方式
トラックの荷台を箱型状に嵩上げし、残渣をそのまま積み込む。
◊
チップ化方式
現地において梢端・枝葉をチップ化し、積み込む。
◊
圧縮方式
◊
チップ化後圧縮方式
トラックの荷台に残渣をそのまま積み込む。
トラックの荷台で圧縮装置により残渣を圧縮する。
梢端・枝葉をチップ化後、チップを圧縮する。
(1) 現場条件
スギ・ヒノキ人工林列状間伐現場
13
(2) システム構成
素材生産工程調査
集材
造材・分別集積
チェンソー
スイングヤーダ
7tクラス
プロセッサ
12tクラス
運搬
クレーン付き
4tトラック
素材
木材市場
伐採
従来方式
クレーン付き4tトラック
バイオマス収集工程調査
荷台箱型方式
残渣
圧縮方式
プレスダンプ
根元
小径木
梢端
枝葉
発電施設
荷台箱型グラップル付き
6tトラック
荷台箱型4tトラック
チップ化方式
チッパー
荷台箱型トラック
チップ化後圧縮方式
チッピングロータリープレス車
プレスコンテナ車
図 3-2-1 人工林路網分散型バイオマス供給システム工程調査の構成
3.2.2
竹林皆伐現地チップ化システム
竹林においては、放置竹林と、天然林への拡大竹林を対象とした。竹林については竹
材生産を対象とせず、全竹をバイオマスの対象とした。FS調査では全竹をチップ化す
る全竹チップ化システムを対象としたが、全竹チップ化に対応するには、チッパーの能
力、チップの運搬能力、チップの保管条件、山土場での作業条件等の問題がある。その
ため、枝のついていない竹稈を 4m 単位で造材し、枝付き部をチップ化する「短稈造材枝
付き部チップ化」も取り入れて、現地調査を実施した。
(1)
現場条件
竹林皆伐現場
14
(2)
システム構成
竹伐採集材工程調査
伐採
チェンソー
全竹チップ化工程調査
集材
集材・チップ化補助
チップ化
運搬
スイングヤーダ
5tクラス
グラップル
5tクラス
BG1000
クレーン付き
4tトラック
グラップル
5tクラス
チェンソー
4m短稈
運搬
クレーン付き
4tトラック
枝付き部
短稈造材枝条
チップ化工程調査
造材
発電施設
集材・造材補助
チップ化
BG1000
運搬
クレーン付き
4tトラック
図 3-2-2 竹林皆伐現地チップ化バイオマス供給システム工程調査の構成
3.2.3 作業工程調査項目
(1) 現場概要
:現場名、調査日、林分、林齢、計測作業対象、計測フロー(作業サイ
クル、作業現場レイアウト等)、現場特記(作業現場状況の特記、計測
フローの追記、各工程でのコストなど)
(2)
選木作業計測:計測日、天候、現場名、オペレータ経験度、作業人数(内訳)、計測特
記(ロスタイム等)、1列選木作業量、作業時間、備考
(3) 伐採作業計測:計測日、天候、現場名、作業機械、オペレータ経験度、作業人数(内訳)、
伐採条件(理由)、計測特記(ロスタイム等)、1本伐採作業量(樹番、
樹種、樹高、枝下高、胸高直径、材種(重量計測時)
、重量、作業時間、
備考
(4)
集材作業計測: 計測日、天候、現場名、作業機械、オペレータ経験度、作業人数(内
訳)、集材条件(理由)、計測特記(ロスタイム等)、1サイクル作業量(距
離、架線からの垂直距離、傾斜、本数、材番、作業時間、備考)、材寸
法(材番、材種、長さ、元口径、枝下高、重量)、備考
(5) 造材作業計測:計測日、天候、現場名、作業機械、オペレータ経験度、作業人数(内訳)、
造材条件(理由)、計測特記(ロスタイム等)、1本伐採作業量(樹番、
樹種、樹高、枝下高、胸高直径、元口径、短幹サイズ(長さ×末口径)、
端数長、作業時間、備考
(6) 積込作業計測:計測日、天候、現場名、投入機械、積込機械、オペレータ経験度、作
15
業人数(内訳)、集材条件(理由)、計測特記(ロスタイム等)、1サイク
ル作業量(本数、材番、材積、重量、作業時間、備考)
(7)
破砕作業計測:計測日、天候、現場名、投入機械、破砕機械、オペレータ経験度、作
業人数(内訳)、集材条件(理由)、計測特記(ロスタイム等)、1サイク
ル作業量(本数、材番、材積、重量、作業時間、破砕後材積、備考)
(8) 運搬作業計測:計測日、天候、現場、運搬機械、オペレータ経験度、作業人数(内訳)、
伐採条件(理由)、計測特記(ロスタイム等)、1サイクル作業量(材積、
1台当たりの短幹数、重量(重量、造材から何日目)、作業現場からの
運搬距離、運搬時間、備考)
(9) 材寸法計測
:計測日、現場、計測機器、計測特記、材寸法(材番、材種、長さ、元
口径、末口径、枝下高、材積、重量、備考
3.2.4 森林バイオマス資源把握
実証試験で得たバイオマス量を現地で材積(㎥)、生重量(t)を計測し、生重量については
サンプルを持ち帰り、乾燥機にかけて絶乾重量を計測し含水率を算出する。また、チッ
プ化した枝葉や竹については、チップ化後の層積を計測する。
3.2.5 作業能率とコスト比較
作業能率は、生産量、時間当たりの生産量(t/㎥、㎥/hr)、生産量あたりコスト(円
/t、円/㎥)等をコストシミュレーションシステム(第 6 章参照)によって算出する。
16
3.3 人工林路網上分散型収集システム
3.3.1 実証試験概要
(1) 試験地概要
○
スギ林
◊
場所:周東町大字獺越字磯石
◊
林齢:45 年生
◊
面積:0.20ha
◊
調査日:平成 16 年 11 月 22 日∼12 月 1 日
◊
林分概況:作業道(幅員 3.0m)沿い下斜面のスギ人工林、平均傾斜角 29.6 度
平均樹高 25.3m、平均胸高直径 25.7cm、立木密度 1,244 本/ha
写真 3-3-1 伐採前スギ林
写真 3-3-2 スギ林内
素材
小径木
スギ林分
0.20ha
1列目 77.7m
残渣
梢端・
枝葉・
根元
造材・分別
集積場所
サ
ッ
セ
ロ
゚
フ
2列目 63.5m
゙
タ
ー
ヤ
゙
ク
ン
イ
ス
3列目 63.3m
4列目 61.2m
5列目 54.2m
図 3-3-1 スギ林分現場フロー
17
○
ヒノキ
◊
場
所:周東町大字獺越字磯石
◊
林
齢:30 年生
◊
面
積:0.12ha
◊
調査日:平成 16 年 12 月 6 日∼12 月 13 日
◊
林分概況:作業道(幅員 3.0m)沿い下斜面のヒノキ人工林、平均傾斜角 39.4 度
平均樹高 15.3m、平均胸高直径 16.9cm、立木密度 2,500 本/ha
写真 3-3-3 伐採前ヒノキ林
写真 3-3-4 伐採前ヒノキ林内
4列目 68.1m
ヒノキ林分
0.12ha
3列目 56.4m
2列目 49.8m
サ
ッ
セ
ロ
゚
フ
18
゙
タ
ー
ヤ
゙
ク
ン
イ
ス
素材
図 3-3-2 ヒノキ林分現場フロー
残渣
小径木
造材・分別
集積場所
梢端・枝葉・
根元
残渣
梢端・
枝葉・
根元
1列目 45.2m
造材・分別
集積場所2
(2) 試験内容
試験内容は「素材生産工程調査」と「バイオマス収集工程調査」とした。
①
素材生産工程調査
スギ・ヒノキ林分ともに現場は作業道沿い斜面下側で、3 残 1 伐の列状間伐を行った。
先柱、元柱の位置を決めて、1.8m幅で直線状に選木、チェンソーで伐倒、スイングヤー
ダ(7t クラス)で全木上荷集材、プロセッサ(12t クラス)で造材した。造材の際、末口
径 13cm 以上を素材とし、小径木、根元、枝葉、梢端に分別集積するよう指示した。
素材はクレーン付き 4tトラックにクレーンで、もしくはグラップルが稼働していない
時はグラップルで積載し木材市場へ運搬した。
②
バイオマス収集工程調査
バイオマスの収集方法として、以下の 5 方式を用いた。
◊
従来方式
◊
荷台箱型方式
◊
圧縮方式
◊
チップ化方式
◊
チップ化後圧縮方式
通常のトラックに、残渣をそのまま積載
トラックの荷台を箱型状に嵩上げし、残渣をそのまま積載
トラックの荷台で圧縮装置により残渣を圧縮し運搬
現地において残渣をチップ化し、積載。
残渣をチップ化後、チップを圧縮して運搬
表 3-3-1 バイオマス収集工程調査機械一覧
区分
従来方式
荷台箱型方式
圧縮方式
チップ化方式
チップ化後圧縮方式
使用機械
積込等補助機械
クレーン付き4tトラック
グラップル
箱型2tダンプ
グラップル
箱型グラップル付き6t車
プレスダンプ
グラップル
タブグラインダーMC1500 グラップル、箱型4tダンプ
チッピングロータリー
プレスコンテナ
チッパー
19
3.3.2 実証試験結果
(1) 素材生産工程調査
① 選木
選木は、まず先柱に印を付け、先柱からスイングヤーダ(元柱)を真っ直ぐに見通し
て、1列分の立木全てに印を付けるまでを1サイクルとして時間計測した。スギで 5 列
分、ヒノキで 4 列分選木した。表 3-3-2 に計測結果を示す。
また、観察調査の結果、以下の場合に列途中に補助者が必要であることがわかった。
◊
列の斜距離が長くなるとわずかな地形の起伏によって見通しが悪い場合
◊
枝打ち未実施(ヒノキ林分)では、枝により見通しが悪い場合
表 3-3-2 各列の地形状況と選木計測結果
スギ
区分
1列目
2列目
3列目
4列目
5列目
合計
ヒノキ
区分
1列目
2列目
3列目
4列目
合計
斜距離 傾斜
作業時間 本数
人役
本/h人
m
度
分
本
77.7
31.7
3
30
13
8.7
63.5
32.3
3
15
13
17.3
63.3
31.1
3
17
15
17.6
61.2
27.6
3
15
17
22.7
54.2
22.8 −
−
−
−
−
−
−
77
58
16.6
斜距離 傾斜
作業時間 本数
人役
本/h人
m
度
分
本
45.2
38.2
15
4
45
12.3
49.8
41.2
8
56.4
39.6
14
68.1
38.9
4
10
13
19.5
−
−
−
55
50
15.9
*1∼3列目は同時選木作業
② 伐採
伐採はチェンソーで行った。1列分の立木全ての伐採を1サイクルとして時間計測し
た。表 3-3-3 に計測結果を示す。
20
表 3-3-3 各列の地形状況と伐採計測結果
スギ
区分
1列目
2列目
3列目
4列目
5列目
合計
斜距離 傾斜
作業時間 本数
人役
本/h人
m
度
分
本
77.7
31.7
2
15
13
26.0
63.5
32.3
2
32
13
12.2
63.3
31.1
2
46
17
11.1
61.2
27.6
12
3
60
7.3
54.2
22.8
10
−
−
−
153
65
14.2
*4,5列目は同時伐採作業
ヒノキ
区分
1列目
2列目
3列目
4列目
合計
斜距離 傾斜
作業時間 本数
人役
本/h人
m
度
分
本
45.2
38.2
2
21
14
20.0
49.8
41.2
2
19
9
14.2
56.4
39.6
2
45
21
14.0
68.1
38.9
2
15
15
30.0
−
−
−
100
59
19.6
③ 集材・造材
集材・造材を同時作業でスイングヤーダ・プロセッサのオペレータ各1名、玉掛け 1
∼2 名の作業員で行った。集材計測結果を表 3-3-4 に示す。
また、観察調査の結果、以下のことがわかった。
◊
スギ林分では、スギが重く、途中の地形に引っかかって、2 本に分けて集材した
場合があり、立木本数より集材回数が多い場合がある。
◊
傾斜が急な場合、集材木の元口が根株に引っかかり、根株を再度チェンソーで切
るなどの作業が必要な場合がある(写真 3-3-8)。
◊
ヒノキ林分でも、先柱近くの架線下の地形が盛り上がっていたため、材が細く軽
かったにもかかわらず、2 本引きもほとんどできなかったので効率は悪い。
◊
スギはヒノキと比べて枝が柔らかく、伐採時及び集材時に枝が折れてしまう(写
真 3-3-9、3-3-10)。
21
表 3-3-4 集材計測結果
スギ
区分
1列目
2列目
3列目
4列目
5列目
合計
ヒノキ
区分
1列目
2列目
3列目
4列目
合計
写真 3-3-5
人役 斜距離
m
2
77.7
2
63.5
3
63.3
3
61.2
3
54.2
−
集材
傾斜 作業時間
生産性
度
分 回数 本数
本/hr
31.7
167
14 13
4.67
32.3
195
16 14
4.31
31.1
200
22 17
5.10
27.6
139
15 13
5.61
22.8
99
14 11
6.67
−
800
81 68
5.10
人役 斜距離
m
2
45.2
2
49.8
3
56.4
3
68.1
−
集材
傾斜 作業時間
生産性
度
分 回数 本数
本/hr
38.2
188
18 18
5.74
41.2
57
9
9
9.47
39.6
160
18 20
7.50
38.9
103
15 16
9.32
−
508
60 63
7.44
スギ全木集材作業
写真 3-3-7 玉掛け作業
写真 3-3-6 ヒノキ全木集材作業
写真 3-3-8 根株に掛かる集材木
22
写真 3-3-9 枝のほとんど落ちた集材後のスギ
写真 3-3-10 スギ集材後の伐採列は落枝が多い
次に、造材計測結果を表 3-3-5 に示す。スイングヤーダと同じ時間計測をしているため、
作業時間は集材計測結果と同じである。
なお、プロセッサで造材・分別集積する際の当初の指示として
◊
プロセッサの能力として可能な末口径 6cm までの枝払い
◊
小径木は長さ 4m で造材
◊
根元、素材、小径木+不良木、梢端、枝葉の5分別で集積
◊
収集作業が容易となるようグラップルのアームが届く範囲に集積
としたが、3 残 1 伐列状間伐地であるため残存列幅が狭く、5 分別による分別集積が困
難であったため、
◊
素材、小径木+不良木、その他残渣(根元、梢端、枝葉)
の 3 分別集積にするよう指示を変更した。
また、観察調査の結果、
◊
スイングヤーダの集材との同時作業になるため、地形条件、傾斜条件等に影響を
受けて集材作業が遅れると、プロセッサの稼働効率も落ちる。
◊
そのため、造材・分別集積作業は余裕を持って行うことができた。
◊
しかし、集材条件が良い現場では、集材作業の効率が上がる状況でもプロセッサ
分別造材集積作業に時間がかかれば、逆にスイングヤーダの稼働効率が落ちる場合
もあると考えられる。
◊
残存列幅が狭い場合や、集積する仮土場が作業列近辺にない場合は、プロセッサ
で集積場所まで移動し造材する必要があるため、移動時間が作業効率を低下させる。
23
表 3-3-5 造材計測結果
スギ
区分
1列目
2列目
3列目
4列目
5列目
合計
ヒノキ
区分
1列目
2列目
3列目
4列目
合計
人役 斜距離
m
1
77.7
1
63.5
1
63.3
1
61.2
1
54.2
−
造材
傾斜 作業時間
生産性
度
分 全木 素材
本/hr
31.7
167
13
36
12.93
32.3
195
14
47
14.46
31.1
200
17
50
15.00
27.6
139
13
44
18.99
22.8
99
11
46
27.88
−
800
68 223
16.73
人役 斜距離
m
1
45.2
1
49.8
1
56.4
1
68.1
−
造材
傾斜 作業時間
生産性
度
分 全木 素材
本/hr
38.2
188
18
46
14.68
41.2
57
9
21
22.11
39.6
160
20
38
14.25
38.9
103
16
26
15.15
−
508
63 131
15.47
写真 3-3-11 スギ造材・分別集積作業
写真 3-3-12 ヒノキ造材・分別集積作業
写真 3-3-13 分別集積後の素材
写真 3-3-14 分別集積後の小径木・不良木
24
写真 3-3-15 分別集積後の枝葉・梢端
④
写真 3-3-16 分別集積後の根元
素材生産及び残渣発生量
素材材積は、木材市場からの報告数値であり、残渣重量は、発電施設等で計測した数
値である。表 3-3-6 に計測結果を示す。
表 3-3-6 素材・残渣量
列数 集材回数 立木本数 素材本数 素材材積 残渣重量
回
本
本
m3
t
スギ
5
81
68
223
21.83
7.04
ヒノキ
4
60
63
131
4.026
5.33
区分
*残渣重量は生重量
25
(2)
バイオマス収集工程調査結果
バイオマス収集工程調査を実施した。その計測結果と、現地実測データに基づくコス
ト算出(6 章の森林バイオマスコストシミュレーションを使用)を以下にまとめた。
①
従来方式
a. クレーン付き 4t トラック
○
調査概要
・
対象:スギ 45 年生列状間伐後残渣
・
調査日:2004 年 12 月 13 日
作業員 1 人が、グラップル(4 トン)でトラックへ残渣を積み込み、ロープで縛る
までの時間を1サイクルとして計測した。積載後、発電施設へ運搬した。
○
調査結果
計測及びコスト算出結果を表 3-3-7 に示す。
収集対象とした残渣が、枝葉の割合が少なく、スギの根元や、曲がり木などの不良
木が多かったため、残渣全体の比重が高く効率よく積込できた。
表 3-3-7 クレーン付き 4t トラックバイオマス収集計測結果
積込
時間
作業員
分
人
46
1
積降
残渣 時間当た 生産量当
時間
作業員 生重量 り生産量 たり経費
分
人
t
m3/hr
円/t
5
1
2.84
2.35
5,507
写真 3-3-17 グラップルによる積込作業
②
写真 3-3-18 積込完了
荷台箱型方式
a. グラップル付き荷台箱型 6t トラック
○
調査概要
26
・ 対象:スギ 45 年生及びヒノキ 30 年生列状間伐後残渣
・ 調査日:2004 年 12 月 1 日(スギ)、12 月 10 日(ヒノキ)
作業員 1 人が、トラック搭載のグラップルで残渣を積み込み、ロープで縛るまで
を 1 サイクルとした。積込後、発電施設へ運搬した。
○
調査結果
計測及びコスト算出結果を表 3-3-8 に示す。
箱型車の特色を生かし、下側に 4m に造材した小径木を並べて積載し、その上に
その他の残渣を積載する方法をとり、効率よく載せることができた。スギ残渣より
もヒノキ残渣の方が、材が小径で枝葉も多かったため、積載重量に差が出た。
表 3-3-8 グラップル付き荷台箱型 6t トラックバイオマス収集計測結果
対象バイオマス
スギ残渣
ヒノキ残渣
積込
時間
作業員
分
人
30
1
18
1
積降
残渣 時間当た 生産量当
時間
作業員 生重量 り生産量 たり経費
分
人
t
m3/hr
円/t
13
1
4.20
3.61
3,899
11
1
3.60
3.31
4,243
写真 3-3-19 スギ残渣積込作業
写真 3-3-20 スギ残渣ロープ掛け作業
写真 3-3-21 ヒノキ残渣積込作業
写真 3-3-22 ヒノキ残渣積込作業
27
b. 荷台箱型 2t ダンプ
○
調査概要
・ 林分:ヒノキ 30 年生列状間伐全木集材後残渣
・ 調査日:2004 年 12 月 13 日
作業員 1 人がグラップル(4t)で残渣を箱型 2t ダンプへ積み込み、ロープで縛る
までを 1 サイクルとした積込後、発電施設へ運搬した。
○
調査結果
計測結果を表 3-3-9 に示す。
荷台の長さが 3m であることから、4m 造材の小径木は積込できない。そこで箱
型車の特色を生かし、枝葉や梢端を多く入れた。
表 3-3-9 箱型 2t ダンプバイオマス収集計測結果
積込
時間
作業員
分
人
15
1
積降
残渣 時間当た 生産量当
時間
作業員 生重量 り生産量 たり経費
分
人
t
m3/hr
円/t
2
1
1.23
1.21
7,194
写真 3-3-23 2t 荷台箱型ダンプへの積込作業 写真 3-3-24 2t 荷台箱型ダンプへの積込作業
③
圧縮方式
a.
プレスダンプ
○
調査概要
・ 対象:スギ・ヒノキ 25 年生伐採後残渣
・ 調査日:2005 年 2 月 14 日
プレスダンプは新キャタピラー三菱株式会社と共同開発中のバイオマス収集用機械
であり、荷台に装備されたプレッサーゲートで荷台内の残渣を圧縮し、運搬するダン
プである。
作業員 1 人が 6t トラックに搭載されたグラップルで、残渣をプレスダンプへ積み込
み、プレッサーゲートで圧縮するまでを 1 サイクルとした。積込後、発電施設へ運搬
28
した。
なお、4t ダンプの荷台にコンテナを装着した試作機のため、他調査で使用している
グラップルではアームの高さが足りず、積込作業にはグラップル付き荷台箱型 6t ト
ラックのグラップルを使用した。
○
調査結果
計測結果を表 3-3-10 に示す。
今回は試作機であったことから、プレッサーゲートによる圧縮がうまくできず、グ
ラップルによる押さえつけの方が圧縮力は高かった。構造上の改善点等を確認した。
表 3-3-10 自走式チッパー・箱型 4t ダンプバイオマス収集計測結果
積込
時間
作業員
分
人
15
1
積降
残渣 時間当た 生産量当
時間
作業員 生重量 り生産量 たり経費
分
人
t
m3/hr
円/t
2
1
1.38
1.35
8,403
写真 3-3-25 プレスダンプ
写真 3-3-26 プレスダンプへの積込作業
写真 3-3-27 上部のツメで圧縮
写真 3-3-28 残渣積降作業
29
④
チップ化方式
a. 自走式チッパー・箱型 4t ダンプ
○
調査概要
・ 林分:ヒノキ 30 年生列状間伐全木集材後残渣
・ 調査日:2004 年 12 月 13 日
作業員 1 人がグラップル(4t)で残渣を自走式チッパー(タブグラインダー)へ
投入、チップはチッパーのベルトコンベアから荷台箱型 4t ダンプへ直接投入、満載
にし、シートで覆うまでを 1 サイクルとした。別の作業員 1 人がチッパーの操作を、
もう 1 人が荷台箱型 4t ダンプへのチップの投入補助を行い、計 3 人の作業員で行っ
た。積込後、発電施設へ運搬した。
○
調査結果
計測結果を表 3-3-11 に示す。
小径木や根元も投入したが、チッパーで処理しきれずにチッパーの動きが止まり、
作業全体が一時ストップする等効率が悪かった。そのためコスト高になったが、切
削処理能力の高いチッパーを投入すればコスト減となる可能性がある。
表 3-3-11 自走式チッパー・荷台箱型 4t ダンプバイオマス収集計測結果
投入(チップ化)
時間
作業員
分
人
160
3
積降
チップ サンプル 時間当た 生産量当
時間
作業員 生重量 含水率 り生産量 たり経費
分
人
t
%
m3/hr
円/t
5
1
2.76
86.4
0.76
22,205
写真 3-3-29 グラップルによる積込作業
⑤
写真 3-3-30 チップ積込補助
チップ化後圧縮
a.
チッピングロータリープレス車
○
調査概要
・ 対象:スギ・ヒノキ 25 年生伐採後枝葉、梢端(元口径 8cm 以下)
・ 調査日:2005 年 2 月 14 日
30
チッピングロータリープレス車は、街路樹の剪定枝処理用に開発された機械で、
ロータリープレス車(4 ㎥)の投入口にチッパーが取り付けてあるため、破砕された
チップは内部で圧縮される。
径8cm 以下の枝葉及び梢端を作業員 3 人で満載になるまで投入した。積込後、
発電施設へ運搬した。
○
調査結果
計測結果を表 3-3-12 に示す。
写真 3-3-31 の残渣を 1 山とすると、約 7 山の残渣を投入できた。また、圧縮後の
絶乾比重も 0.22 と高く(フレコンパック 0.13)、チップ化、圧縮の減容効果は高い。
しかし、満載までの投入時間は 166 分かかり、破砕速度の向上が必要である。
表 3-3-12 チッピングロータリープレス車バイオマス収集計測結果
投入(チップ化)
時間
作業員
分
人
166
3
積降
チップ サンプル 圧縮後 時間当た 生産量当
時間
作業員 生重量 含水率
絶乾 り生産量 たり経費
分
人
t
% 比重
m3/hr
円/t
5
1
1.70
96.4
0.22
0.46
27,733
写真 3-3-31 投入残渣
b.
写真 3-3-32 人力による枝葉投入、チップ化
プレスコンテナ
○
調査概要
・ 対象:スギ間伐材チップ
・ 調査日:2005 年 1 月 21 日
プレスコンテナは、生ゴミ等の回収用の機械として開発されており、チップの圧
縮による減容化が期待される機械である。作業形態としては、チッパーからコンテ
ナにチップを直接投入し、満載後、アームロール車で運搬する。
31
今回は予備調査として、山口県森連組合連合会山口事業所敷地内にて、フレコン
パック内のスギチップを満載になるまで投入した。
○
調査結果
計測結果を表 3-3-13 に示す。コンテナ内(5.4 ㎥)にはフレコンパック 7 袋入っ
たが、重量が積載重量 1.7t に達したため、投入を中止した。容量的にはもう 1 袋分
投入可能と思われた。比重は 0.15 であり、フレコンパック 0.13 と比べてやや高い
が、チッピングロータリープレス車と比べると低い。今回のチップは含水率が高か
ったため、チップが乾燥していれば圧縮効果が高まると考えられた。
表 3-3-13 プレスコンテナバイオマス収集計測結果
フレコン チップ
チップ サンプル 圧縮後
袋数
層積
生重量 含水率
絶乾
袋
m3
t
% 比重
7
4.32
1.71
133.6
0.15
写真 3-3-33 コンテナへ投入したフレコン 7 袋 写真 3-3-34 アームロール車への装着
写真 3-3-35 積降作業
写真 3-3-36 将来作業イメージ
32
3.4 竹林皆伐現地チップ化システム
3.4.1 実証試験概要
(1) 調査地概要
◊
場
所:山口市大内御堀大内畑
◊
林
種:モウソウチク林(放置竹林及び天然林内への拡大竹林)
◊
調査日:平成 16 年 9 月 27 日∼10 月 16 日
◊
面
積:0.19ha
◊
概
要:林道(幅員 4.0m)沿いの竹林
写真 3-4-1 伐採前竹林
(2)
写真 3-4-2 伐採前竹林内
調査概要
調査は「伐採集材工程調査」と「バイオマス収集工程調査」とした。
①
伐採集材工程調査
林道沿いの竹林で、モウソウチクの放置竹林(以下、皆伐区)及び、天然林への拡大
竹林(以下、混交区)を対象として、チェンソーで伐採、スイングヤーダ(5t クラス)で集
材を行う伐採集材工程調査を実施した。皆伐区集材区及び混交区集材区の現場フローを
図 3-4-1 に示す。
②
バイオマス収集工程調査
集材後、路網上の土場で全竹をチップ化する「全竹チップ化工程調査」と、4m 単位で
枝付き部まで造材、短稈はそのまま、枝付き部はチップ化する「短稈造材枝条チップ化
工程調査」を実施した。
また、グラップル(5t クラス)を集材、造材、積載補助に、運搬はクレーン付き 4t ト
ラックとした。収集したバイオマスの発電施設への搬入仕様条件を以下とした。
◊
チップ:フレコンパック(容量:1㎥)
◊
短稈:番線で 20 本結束
33
グヤ
スイン
架線55m
ーダ
プ ル
グラッ
未集材区
(伐採のみ)
0.06ha
皆伐区集材区
混交区集材区
0.11ha
架線45m
チッ
パー
0.08ha
架線35m
4tトラ
架線50m
架線25m
スイングヤーダ
2
ク
゚ル
゙ラッフ
スイングヤーダ
1
チッパー
図 3-4-1 現場レイアウト
34
4tトラ
ック
ック
3.4.2 実証試験結果
(1)
①
伐採集材工程調査
伐採
チェンソーによる伐採を行った。伐採後に全竹で集材するため、集材方向へ元口を向
けて伐倒し、玉切りしないように指示したが、竹の重心方向への傾きや樹木への掛かり
のため非常に困難であり、皆伐区では竹の傾き方向へ、混交区では伐倒しやすい方向へ
倒すよう指示した。なお、放置竹林には枯れた竹も存在するが、枯れても枝が残って立
っている竹は伐採本数に計上し、全枝が落枝や、竹稈が途中で折れているほど枯損の激
しい竹は伐採本数に計上しなかった。伐採結果を表 3-4-1 に示す。
表 3-4-1 竹伐採計測結果
日時
労務体制
9月27日
2人1班
2人1班
2人1班
2人1班
1人1班
2人1班
2人1班
9月28日
9月30日
合計
伐採本数
作業時間
生産性
作業方法
分 皆伐区 混交区 合計
本/hr
253
72
72
17.1 元口を集材側へ伐倒
254
170
170
40.2 伐倒しやすい方向へ
303
331
331
65.5 重心方向へ伐倒
174
216
216
74.5 重心方向へ伐倒
155
113
113
43.7 重心方向へ伐倒
238
58
276
334
84.2 伐倒しやすい方向へ
254
156
156
36.9 伐倒しやすい方向へ
1,631
718
674 1,392
51.2
写真 3-4-3 皆伐区伐採
写真 3-4-4 混交区伐採
作業員が不慣れなため、二人一組で一人がチェンソーで伐採、一人が伐採補助の体制
を中心に行った。混交区における伐採は混交密度、竹の重心方向にある立木の枝の張り
具合等で左右されるため、時間計測に一定の傾向は見られなかった。
また、観察調査結果の結果、以下の事がわかった。
◊
竹の重心方向への傾き側に伐倒した方が効率的
◊
重心方向が集材方向と反対側でなければ、元口を集材方向へ向けて倒すのは困難
◊
次項で集材方向に元口が向いていなくても、集材できることが判明したこともあ
35
り、重心方向側の竹から順番に伐倒すると効率的
◊
混交区では立木の枝、幹に掛かるため倒しやすい方向へ伐採、掛かった場合は玉
切りが必要
②
集材
スイングヤーダによる集材とグラップルによる集材補助を行った。現地が林道沿いで
あったためグラップルのアームが届く範囲はグラップルで集材を行った。枯損の激しい
竹は集材しなかった。皆伐区は1本の架線で集材できたが、混交区は広葉樹の残存木が
多かったため、残存木の間にうまく架線を張れずに 4 度張り直した。また、残存木の多
さ、傾斜条件等の理由で、集材できない区域(図 3-4-1)もあった。作業は、スイングヤ
ーダ 3 名、グラップル 1 名で行った。集材結果を表 3-4-2 に示す。
表 3-4-2 集材計測結果
皆伐区
日時
9月30日
10月1日
10月4日
10月5日
10月7日
合計
混交区
10月12日
10月13日
10月13日
10月14日
10月15日
合計
作業時間 集材本数 生産性
備考
分
本 本/hr
スイングヤーダ
120
60
30.0 架線距離55m
グラップル
40
25
37.5
スイングヤーダ
294
206
42.0 架線距離55m
スイングヤーダ
155
71
27.5 架線距離55m
スイングヤーダ
245
215
52.7 架線距離55m
グラップル
110
39
21.3 林道沿いで梢端部を掴んで引き上げ
964
616
38.3
集材機械
グラップル
スイングヤーダ
スイングヤーダ
グラップル
スイングヤーダ
スイングヤーダ
59
30
212
25
170
73
569
写真 3-4-5 スイングヤーダによる集材
21
20
86
61
138
30
1011
21.4
40.0
24.3
146.4
48.7
24.7
106.6
林道沿いで梢端部を掴んで引き上げ
水田跡(皆伐区残り)35m架線
谷から混交区のとりやすいところ架線50m
林道沿いで梢端部を掴んで引き上げ
谷から混交区のとりやすいところ架線45m
谷から混交区のとりやすいところ架線25m
写真 3-4-6 グラップルによる集材補助
36
一度に集材できる本数は 1∼8 本とまちまちである。これは、集材時の玉掛けの熟練に
よる。また、路網上の土場に集材したため集材量に限界があり、集材後の山土場でのチ
ップ化が間に合わずにスイングヤーダが稼働しない時間があった。
また、竹のスイングヤーダによる集材はノウハウがない状態であったが、観察調査の
結果、以下のことがわかった。
◊
スギやヒノキと違い、元口が集材方向に向いていなくても集材できる。
◊
玉掛けの場所は、元口部だけでなく、梢端部でも集材できる。
◊
1本のスリングロープで数本まとめて集材できる。
◊
ワイヤーは梢端部に玉掛けしてであれば集材は可能であるが、元口部では滑るた
め、集材途中に落ちる事がある。
◊
広い土場もしくは、土場での処理能力が高くなければスイングヤーダの稼働効率
が落ちる。
◊
アームが届く範囲であれば、グラップルによる集材が効率的である。
写真 3-4-7 スリングロープによる玉掛け
③
写真 3-4-8 ワイヤーによる玉掛け
立木調査
a.
モウソウチク
集材本数とその集材区域面積から推測した ha あたりの本数を表 3-4-3 に示す。
表 3-4-3 ha あたり成立本数
区分
皆伐区
混交区
本/ha
5,600.0
4,450.0
37
b.
混交区立木調査
集材後、混交区の胸高直径 5cm 以上の樹木を調査した。アラカシ、タブノキを中心と
した広葉樹天然林と、スギの人工林へ拡大しており、その状況を表 3-4-4 に示す。
表 3-4-4 混交区立木調査
樹種
モウソウチク
立木
竹混交率
本/ha haあたり胸高断面積m2/ha
4,450.0
−
1,275.0
42.3
77.7%
−
観察調査では、混交区では林縁のモウソウチクが多く、林内は少なかった。伐採は混
交率の多さよりも伐倒方向への樹冠の広がりに影響を受け、集材は残存木の成立本数に
影響を受けることがわかった。
写真 3-4-9 混交区の玉掛け作業
写真 3-4-10 混交区の搬出
38
(2) 造材チップ化搬出工程調査
①
全竹チップ化
スイングヤーダで集材後、造材しないまま全竹をグラップルでチッパーに投入した。
チップはチッパーの排出口から直接フレコンパックに投入した。フレコンパックは満載
になった段階で、4t トラックのクレーンで土場の集積場へ移動させた。作業は、グラッ
プル 1 名、チッパー2 名を基準に行った。これらの結果を表 3-4-5 に示す。
表 3-4-5 全竹チップ化計測結果
生産量
作業時間
分
kg 層積㎥
9月30日 全竹
165 1,986.0
4.79
10月1日 全竹
36
569.0
1.42
合計
201 2,555.0
6.21
*㎥はチップ化後の層積
日時
対象
生産性
kg/hr ㎥/hr
722.2
1.7
948.3
2.4
762.7
1.9
フレコンパックは竹を連続投入した場合、竹約 9 本、10 分で満載になった。
観察調査の結果、スイングヤーダの集材速度に対してグラップルがチッパーに投入す
るまでの時間が多く掛かるため、集材場所に竹が多く貯まり土場が狭い場所では効率が
悪くなることがわかった。
写真 3-4-11 グラップル補助によるチップ化
写真 3-4-12 チップはフレコンパックへ投入
39
写真 3-4-13 チップ
②
写真 3-4-14 フレコンパックの積載
短稈造材枝条チップ化
スイングヤーダで集材後、グラップルで造材補助を行いつつ、4m 単位で枝付き部まで
チェンソーで短稈造材し、短稈はそのまま、枝付き部はチップ化した。作業員は、グラ
ップル1名、造材及びチッパー投入を 2 名で行った。造材からチップ化までの結果を表
3-4-6 に示す。
表 3-4-6 短稈造材枝条チップ計測結果
作業時間
分
10月1日 枝条
152
10月2日 枝条
89
10月4日 枝条
279
10月5日 枝条
98
10月6日 枝条
292
10月7日 枝条
127
10月12日 枝条
114
10月13日 枝条
194
10月14日 枝条
270
10月15日 枝条
315
10月16日 枝条
315
合計
2,245
*㎥はチップ化後の層積
日時
対象
チップ生産量
チップ生産性
kg 層積㎥ kg/hr ㎥/hr
1,536
4
606.1
1.7
420
1
283.1
0.8
2,149
7
462.0
1.5
1,447
4
885.6
2.7
1,626
13
334.0
2.6
2,359
6 1,114.5
2.9
284
1
149.2
0.4
2,100
6
649.5
1.7
2,121
5
471.2
1.2
1,171
3
223.0
0.6
1,171
3
223.0
0.6
16,380
54
437.8
1.4
40
写真 3-4-15 グラップルによる造材補助
写真 3-4-16 枝条チップ化
写真 3-4-17 短稈造材
写真 3-4-18 短稈集積
表 3-4-6 には、短稈生産量は含めていない。短稈は 20 本毎に番線で結束し、クレーン
で 4t トラックへ満載するまでの計測を行った。
作業員は 3 名を基準とした。結果を表 3-4-7
へ示す。
表 3-4-7 短稈積載計測結果
日時
対象
10月2日
10月6日
10月7日
10月15日
10月16日
合計
皆伐区
皆伐区
皆伐区
混交区
混交区
短稈生産量
本数
kg
454 6,061
390 5,328
180 2,521
680 9,383
94 1,223
1,798 24,516
作業時間
分
275
292
127
315
75
1,084
41
短稈生産性
本/hr kg/hr
99.1 1,322.4
80.1 1,094.8
85.0 1,191.0
129.5 1,787.2
75.2 978.4
99.5 1,357.0
写真 3-4-19 短稈 20 本ごとに結束
写真 3-4-20 4t トラックへの積載
観察調査の結果、短稈を 20 本毎に番線止めするのを人力で行ったが、これをグラップ
ルで直接トラックに積載できれば、効率は向上すると考えられる。
今回、発電施設への搬入仕様条件が、
◊
チップ:フレコンパック(容量:1㎥)
◊
短稈:番線で 20 本結束
であったため、このような作業を実施したが、今後フレコンパック以外のチップ運搬
方法や、番線止めなしの短稈運搬方法に改善されることにより、より効率が上がると考
えられる。
(3)まとめ
これらの結果を表 3-4-8 に示す。
表 3-4-8 竹林収集システム調査結果集計
区分
皆伐区
混交区
面積:ha
0.11
0.08
伐採本数:本
665
524
集材本数:本
616
356
短稈:kg
13,910.0 10,606.0
フレコンパック:kg 11,232.0
6,532.5
合計:kg
25,142.0 17,138.5
合計
0.19
1,189
972
24,516.0
17,764.5
42,280.5
また、これらの調査結果を元に、コストシミュレーションシステム(第 6 章)でコス
トを算出した結果を表 3-4-9 に 示す。コストシミュレーションの入力条件として
1ha(6,000 本/ha)のモウソウチク林を作業員 5 人で短稈収集枝条チップ化システムにより
実施、収集バイオマスは 30km 離れた発電施設に運搬した。
42
表 3-4-9 現地実測データによる短稈収集枝条チップ化システムコスト結果
時間あたり
生産量
生産量あ
たり経費
㎥/hr
1.95
円/㎥
9,641
t/hr(生重量)
0.69
円/t(生重量)
27,328
15 年度 FS 調査時のコスト結果と比較して高価であるが、この原因として
◊
作業員が林業作業について慣れていなかった。
◊
竹のスイングヤーダによる集材、チップ化等に関する作業システムのノウハウそ
のものがない。
が挙げられる。これらの改善として、作業員の熟練度の向上、作業改善項目の整理が
必要である。
43
4
バンドリングマシンシステムに関する情報収集及び開発可能性の検討
4.1 国内外のバンドリングマシンシステムに関する情報収集
4.1.1 日本のバンドリングマシン
残渣の収集・運搬を効率的に行うには、嵩張る枝葉について、いかに減容化するかが
課題である。枝葉の破砕または結束の 2 つの方法が考えられる。破砕については、日本
でもチッパーが普及しつつあるので可能であるが、結束については、日本にはまだ機械
がないので現時点では不可能である。輸入もしくは開発が待たれる。
欧州では効率的な運搬を行うために、バンドリングマシンが開発されているが、日本
の急峻な地形や路網条件を考えると、そのままの仕様では大型すぎるため小型化する必
要がある。
4.1.2 フィンランドのバンドリングマシン
フィンランドでは、ハーベスタやフォワーダで素材を生産し、枝葉についてはバンド
リングマシンやチッパーで減容化している。
フィンランドのバンドリングマシンは、搭載しているグラップルを用いて枝葉を集め、
圧縮後に紐等で縛り付け、直径 70cm 程度の円柱状に束ねる機械であり、3∼3.5m程度の
長さで切断している。生産能力は 15∼25 本/hr である。
写真 4-1-1 バンドリングマシン
写真 4-1-2 枝葉の圧縮風景
(フィンランド Timberjack 社ホームページより引用)
44
4.2
日本式バンドリングマシン開発可能性の検討
現在、日本では(社)林業機械化協会と中外テクノス(株)が共同でバンドリングマ
シン(土場残材圧縮結束装置)を 16∼17 年度で開発中である。定置式または自走式、欧
州製と比較して小型軽量化を目指している。
間伐材の枝葉の圧縮・結束・切断等マシン機能の現地試験を山口県林業指導センター
の敷地内で行った。その概要は以下のとおりである。
(1) 場所
山口県林業指導センター敷地内
(2) 日時
2005 年 3 月 17 日
(3) 樹種
ヒノキ、スギ、モウソウチク、マダケ
(4) 試験概況
a.
圧縮状況
・ 投入は人力で行った。投入口は 74cm×81cm で、バンドル(結束した枝葉の束)
後の平均直径 50cm であり、構造上の圧縮率は 1/3 である。
・ バンドリングマシン内の枝葉の移動は主に、マシンに装着しているグラップル
で行われるが、いずれの樹種もスムーズに移動した。
・ グラップルは移動だけでなく、圧縮の機能の持ち、タケについては竹稈の破砕
を確認できた。
・ グラップル部と結束部が離れているため最も圧縮した状態から少し弛んだ状態
で結束しており、握った状態で結束できるようになれば、圧縮率は向上する。
b.
結束状況
・ 結束は、麻紐によりスムーズに行われた。
・ しかし、グラップルでバンドルを掴んだ時に簡単に切れてしまった。切れるこ
とを前提に結束箇所を増やすことで強度が保たれると考えられる。
c. 切断状況
・ 切断用に固定式のソーチェーンを備え、スギ、ヒノキ、モウソウチク、マダケ
各バンドルについてスムーズに切断できた。
d.
まとめ
・ バンドルは、現地貯留が容易で、需要に合わせて搬出でき、その間に自然乾燥
が期待できる。
・ 現場の意見を踏まえたいくつかの改良点を修正することにより、17 年度末には
日本初のバンドリングマシンが完成する予定である。
45
写真 4-2-1 枝葉投入状況
写真 4-2-3 モウソウチク結束状況
写真 4-2-2 ヒノキ結束状況
写真 4-2-4 バンドルされた枝条
46
5
森林バイオマス発生予測手法の研究
5.1 森林バイオマス発生予測手法の研究の目的
森林バイオマスが、どのような作業を行えば、どれ程の量が発生するのかを予め把握
することは、安定供給、低コスト供給に必要である。
素材生産においては、幹材積表等の材積を推測する手法があるが、森林バイオマスの
発生予測についての研究は少ない。そこで、文献、実証試験データ及び各種森林資源デ
ータ等から森林バイオマスの発生予測手法について研究し、発生予測システムを作成す
る。
47
5.2 人工林のバイオマス発生予測
5.2.1 人工林バイオマス発生予測調査内容
FS 調査時の人工林バイオマス発生予測手法として
① 末口径 13cm 以上を素材とし、バイオマスを根元、小径木、梢端、枝葉とわけ残
渣の材積比率を求める。
② 残渣材積比率を、スギ・ヒノキ林分収穫予想表等から求めた立木の材積に乗じる。
として、スギ・ヒノキの 40,60 年生のバイオマス発生予測を行った。
しかし、この発生予測手法は調査件数が少ないことから、残渣材積比率の検証が必要
である。また、1本分全て収集できるという前提としているが、
①
伐採時、集材時に枝葉、梢端が折れて、林内に残る。
②
造材時に根元が下斜面に転がるなど、バイオマス収集時に収集できない。
等の理由で、すべての残渣を収集できるわけでないため、収集率の検討も必要である。
また、林分収穫予想表からの推測よりも現実の林分概況(平均樹高、平均胸高直径、
ha あたり成立本数等)から得られるデータの、正確なバイオマス発生予測を行う手法が
必要である。
そこで、実証試験林分での素材・残渣材積比率調査、バイオマス収集量調査による収
集率の検証を行い、発生予測システムを構築した。
5.2.2 人工林バイオマス発生量予測調査結果
(1) スギ・ヒノキ立木1本あたりの素材と残渣の比率
実証試験時に工程調査以外に列状間伐 1 列分で、バイオマス発生量調査を行った。ス
ギの素材については、材積・生重量・含水率を、スギの残渣については、生重量・含水
率を計測した。結果を表 5-2-1 に示す。スギの枝葉は伐採時、集材時に折れてしまい、造
材時には目視で確認したところ、3 割程度であった。
写真 5-2-1 枝のほとんど落ちた集材後のスギ
写真 5-2-2
48
スギ集材後の伐採列は落枝が多い
表 5-2-1 スギ素材・残渣調査結果
計測
番号
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
合計
平均
本数
本
4
4
3
2
4
4
3
5
3
4
4
4
2
4
3
3
3
59
3.47
素材
材積
m3
0.5328
0.5660
0.1664
0.1076
0.4484
0.4484
0.2208
0.6072
0.1760
0.3932
0.3156
0.2996
0.1360
0.4164
0.1684
0.2384
0.7776
6.0188
0.3540
重量
kg
616.0
565.5
152.0
117.0
447.0
449.0
221.0
614.0
164.0
347.0
334.0
257.0
115.0
331.5
143.0
205.0
675.0
5753.0
338.4
残渣
重量
kg
90.0
178.5
25.0
35.0
74.0
113.0
26.0
23.0
46.0
44.5
16.0
53.0
58.0
39.0
50.0
64.0
75.0
1010.0
59.4
合計
kg
706.0
744.0
177.0
152.0
521.0
562.0
247.0
637.0
210.0
391.5
350.0
310.0
173.0
370.5
193.0
269.0
750.0
6763.0
397.8
*スギ45年生、平均樹高25.3m、平均胸高直径25.7cm
*重量は生重量
ヒノキの素材については、材積、生重量・含水率を、ヒノキの残渣については、根元、
小径木、枝葉(梢端含む)別に生重量・含水率を計測した。表 5-2-2 に示す。
ヒノキは、7 本中 2 本被圧木が含まれていた。今後、スギも含めて、被圧木等の林分不
良木発生割合や、素材部の腐れ・曲がり木等の不適素材発生率等も検証する必要がある。
表 5-2-2 ヒノキ素材・残渣調査結果
素材
計測
番号
1
2
3
4
5
6
7
合計
平均
本数
本
2
2
0
2
0
2
2
10
1.43
材積
m3
0.1756
0.1884
0.0988
0.1200
0.0831
0.6659
0.0951
残渣
根元 小径木 枝葉
重量
重量 重量
重量
kg
kg
kg
kg
181.0
15.0
42.5
99.5
181.5
13.3
41.5
64.5
8.0
20.0
8.5
101.0
10.5
18.5
27.0
4.5
49.5
10.8
113.5
21.0
36.0
44.0
83.0
7.5
15.5
21.5
660.0
79.8 223.5 275.8
94.3
11.4
31.9
39.4
小計
合計
kg
kg
157.0
338.0
119.3
300.8
36.5
36.5
56.0
157.0
64.8
64.8
101.0
214.5
44.5
127.5
579.1 1,239.1
82.7
177.0
*ヒノキ30年生、平均樹高15.3m、平均胸高直径16.9cm
*3,5は被圧木のため、全て残渣とした。
*重量は生重量
これらの調査結果と FS 調査時の部材別材積調査の結果からスギ・ヒノキの素材・残渣
生重量比率を表 5-2-3 のとおり推定した。
49
表 5-2-3 スギ・ヒノキの素材・残渣生重量比率
(%)
区分
スギ
ヒノキ
素材
56.6
59.3
小径木
16.2
12.6
残渣
梢端
根元
5.7
6.2
3.4
5.3
枝葉
15.3
19.4
*含水率は一定と仮定
(2)
スギ・ヒノキバイオマス収集量調査
また、実証試験時にスギ・ヒノキバイオマス収集量調査を主に目視による観察調査で
行った。全木に対するバイオマスの収集量の減少要因を表 5-2-4 にまとめた。これらの減
少要因から、現場に応じた収集率を検討する必要がある。
表 5-2-4 全木に対するバイオマス収集量減少要因
減少要因
樹種条件
観察調査概要
スギは伐倒時・集材時に枝、梢端が折れる等
傾斜がきつかったり、起伏条件が悪いと、全木
集材できず、集材途中の造材による減少等
造材時に掴み直すたびに長さを揃える為、円盤
作業条件
を伐り捨てる等
造材・集積時に残渣が収集不可能な場所に転
仮積み場所条件
げる等
地形条件
5.2.3
スギ・ヒノキバイオマス発生予測システム作成
次に、
「森林バイオマスコストシミュレーション」
(6 章参照)に、素材・残渣重生量比
率と立木幹材積推定式(図 5-2-1)を組み合わした発生予測推定式を組み込み、スギ・ヒ
ノキバイオマス発生予測システムを構築した。
ス ギ log v =-4.16207+ 1.82696 log d + 0.99227 log h (山陽人工林、山陰天然林、山陰人工林)
ヒノキ log v = -4.31101+ 1.83546 log d + 1.10655 log h
v :幹材積㎥、d :4cm 以上の皮付胸高直径cm、h :樹高m
図 5-2-1 立木幹材積の推定式(立木幹材積表,林野庁計画課,1970)
操作手順として、まず、図 5-2-2 のように、林分情報(面積、樹種割合、ha あたり成
立本数、平均樹高、平均胸高直径)の現地条件データを入力する。
50
作業面積
1
ha
①面積を現地データから入力
*1haと想定
スギ・ヒノキ
%
スギ
ヒノキ
50
50
②林分内のスギヒノキの割合
*各50%混交林と想定、純林の場合はどちらかを100%
全木資源量
本/ha
1000
1000
③本/haを現地調査結果から入力
*各1,000本/haと想定
間伐率
%
25
25
④間伐率を入力
*3残1伐の列状間伐を想定
平均樹高
m
17.4
15.9
④平均樹高を現地データから入力
*林分収穫予想表から40年生、地位指数スギ18、ヒノキ16の平均樹高を算出
平均胸高直径
cm
21.0
19.0
⑤平均胸高直径を現地データから入力
*林分収穫予想表から40年生、地位指数スギ18、ヒノキ16の平均胸高直径を算出
図 5-2-2 人工林林分情報の入力
平均樹高、胸高直径を入力することにより以下の計算手順で、図 5-2-3、図 5-2-4 が算
出される。
①
立木幹材積の推定式から、1 本あたりの枝葉を除く全幹材積を算出(図 5-2-3)
②
素材・残渣生重量比率を乗じて1本あたりの材積を算出
③
全幹材積に素材・残渣生重量比率(枝葉を除き、比重を一定と仮定)を乗じて全
幹(素材、小径木、梢端、根元)の重量を算出
④
全幹生重量から、枝葉生重量を算出
⑤
枝葉生重量を比重で除して材積(チップ化後の層積)を算出(図 5-2-4)
<立木幹材積>
m3
全幹
スギ
0.285
ヒノキ
0.232
図 5-2-3 スギ・ヒノキ一本あたり立木幹材積の算出
<全木1本あたり量>
m3
全木
素材
小径木
梢端
根元
枝葉
スギ
0.486
0.190
0.054
0.051
0.056
0.134
ヒノキ
0.432
0.171
0.036
0.026
0.041
0.158
*梢端・根元・枝葉はチップ化後層積
図 5-2-4 スギ・ヒノキ全木 1 本あたりの材積の算出
続いて、面積と、ha あたり成立本数から、対象林分の総資源量が算出される(図 5-2-5)。
51
<総資源量>
m3
全木
素材
小径木
梢端
根元
枝葉
スギ
485.7
190.3
54.5
50.8
55.8
134.3
ヒノキ
431.7
170.8
36.3
25.6
40.9
158.1
*梢端・根元・枝葉はチップ化後層積
図 5-2-5 スギ・ヒノキ総資源量予測の算出
5.2.4 間伐本数・収集率を考慮したバイオマス収集可能量シミュレーション
この総資源量は、全木を完全に収集する事を想定した量であるが、前述のように全て
の量を収集できるわけではない。そこで、作業による収集率を入力することにより(図
5-2-6)、素材生産量と、バイオマス収集可能量収集可能量を算出する(図 5-2-7)。
作業による収集率
素材
小径木
梢端
根元
枝葉
スギ
90
90
90
90
30
ヒノキ
90
90
90
90
90
%
図 5-2-6 作業による収集率を入力
素材生産量
スギ
ヒノキ
竹
スギ・ヒノキ計
全計
バイオマス収集可能量
全木
本数
本
250
250
本数
本
500
575
500
-
1075
-
素材
チップ
m3
42.8
114.2
38.4
102.5
81.2
216.7
216.7
材積
重量
絶乾
t
34.3
30.7
15.0
14.6
65.0
65.0
29.6
29.6
小径木
梢端
チップ
重量
絶乾
チップ
重量
絶乾
m3
t
m3
t
12.3
32.7
9.8
4.3
11.4
3.4
1.5
8.2
21.8
6.5
3.1
5.8
1.7
0.8
613
20.4
54.5
16.3
7.4
17.2
5.2
2.3
*40年生スギ・ヒノキ各0.5haの林分を3残1伐25%の列状間伐による全木集材
*スギ1,000本/ha 平均樹高17.4m、平均胸高直径21.0cm
*ヒノキ1,000本/ha 平均樹高15.9m、平均胸高直径19.0cm
*収集率はスギ枝葉は30%、その他90%
本数
本
325
288
材積
チップ
m3
12.6
9.2
21.8
根元
重量
t
3.8
2.8
6.5
-
図 5-2-7 総生産量出力結果シート
52
絶乾
1.6
1.3
3.0
枝葉
重量
チップ
m3
10.1
35.6
絶乾
3.1
10.1
1.4
4.8
45.6
139.1
13.2
41.2
6.1
18.8
t
5.3 竹林のバイオマス発生予測
5.3.1 バイオマス発生予測調査内容
竹林の成立本数の把握は、新竹・枯死竹の発生予測が困難で、バイオマス量の推測も
困難である。また、竹稈は中空であり、1本あたりの資源量把握も困難である。
そこで、放置されたモウソウチク林に調査区を設置し、立木調査を行うともに、調査
枠内から各 4 本のサンプル竹を伐採、計測し竹稈一本あたりの中空率、材積等を求めた。
また、実証試験時に、ha あたり成立本数、チップ化後の重量、層積等を計測した。
以上の調査結果から、モウソウチク 1,000 本あたりの資源量を推測し、成立本数あた
りバイオマス発生予測表及び発生予測システムを作成した。
5.3.2 モウソウチクバイオマス量発生予測調査結果
(1) モウソウチク林立木調査
実証試験地に 10m×10m の調査枠を設置し、立木調査を実施した。その結果、モウソ
ウチクは 75 本(枯損竹 7 本含む)あり、この調査区のモウソウチク成立本数は 7,500 本
/ha と推測される。また、胸高直径は表 5-3-1 のとおりである。なお、樹高については
竹稈の上部が傾いているため正確な数値が計測できなかった。
表 5-3-1 モウソウチク調査区の胸高直径
単位:cm
平均値
最大値
12.5
17.0
最小値
6.6
(2) モウソウチク林 ha あたり成立本数
モウソウチクの ha あたり成立本数調査結果を表 5-3-2 にまとめた。各調査地、調査区
ともに成立本数にバラツキが多いため、成立本数の把握は困難である。
表 5-3-2 モウソウチク ha あたり成立本数
調査区
FS調査A区
15年度調査地
FS調査B区
立木調査区
16年度調査地
皆伐区
本/ha
10,400
9,400
7,500
5,600
備考
50㎡の立木調査
50㎡の立木調査
100㎡の立木調査
0.11haの集材本数
(3) モウソウチク1本あたり資源量調査
立木調査を行った調査区内のモウソウチクを胸高直径が平均よりやや大きいモウソ
ウチク 1 本、平均のモウソウチク 2 本、平均よりやや小さいモウソウチク 1 本の計 4
53
本をサンプル竹として伐採した。
伐採後、竹稈を 1m 単位で玉切り、それぞれ生重量、含水率、外径、肉厚径を計測し
た。枝葉は玉切りした竹稈毎に重量、含水率を計測した。その結果を表 5-3-3 に示す。
平均中空率は 64.3%であり、低コスト供給のためには、粉砕、圧縮等の減容化の必要
性がわかる。
表 5-3-3 モウソウチク1本あたり資源量
区分
15年度
調査地
16年度
調査地
番号
No.1
No.2
No.3
No.4
No.1
No.2
No.3
No.4
竹稈長 胸高直径 絶乾重量 含水率 竹稈材積 中空率 竹稈比重
m
cm
kg
m3
%
%
14.4
11.2
23.4
62.7%
0.027
60.0%
0.76
15.8
9.1
14.8
68.8%
0.016
62.3%
0.74
15.9
8.8
18.7
53.0%
0.017
63.7%
0.90
18.2
13.2
33.1
60.8%
0.035
65.1%
0.81
21.2
16.9
50.3
74.3%
0.063
66.4%
0.73
18.8
14.8
37.0
75.8%
0.045
66.1%
0.76
20.2
14.7
37.6
75.5%
0.045
67.4%
0.73
15.2
10.3
15.2
84.4%
0.019
63.2%
0.71
5.3.3 モウソウチク林バイオマス発生予測
ha あたりの成立本数把握が困難であるため、第 3 章の実証試験結果から、1,000 本あ
たりの絶乾重量、層積を表 5-3-4 のとおり算出した。
次に、このデータに基づき、実証試験地におけるモウソウチクの成立本数毎のバイオ
マス発生予測表を表 5-3-5 のとおり作成した。
表 5-3-4 モウソウチク 1,000 本あたり資源量
区分
生重量:t
絶乾重量:t
層積:m3
全竹
43.5
26.5
123.2
短稈
25.2
15.2
67.5
枝条
18.3
11.3
55.7
*短稈は4m単位の枝無し部、枝条は枝付き部とした。
*含水率は短稈66.0%、枝条61.8%とした。
表 5-3-5 モウソウチクバイオマス発生予測表
本/ha
6,000
6,500
7,000
7,500
8,000
8,500
9,000
9,500
10,000
全竹
重量 t
261.0 (159.0)
282.7 (172.2)
304.5 (185.4)
326.2 (198.7)
348.0 (211.9)
369.7 (225.2)
391.5 (238.4)
413.2 (251.7)
435.0 (264.9)
層積:㎥
739.2
800.8
862.4
924.0
985.6
1,047.2
1,108.8
1,170.4
1,232.0
短稈
重量 t
層積:㎥
151.3 (91.2) 405.0
163.9 (98.8) 438.8
176.6 (106.4) 472.5
189.2 (114.0) 506.3
201.8 (121.6) 540.0
214.4 (129.2) 573.8
227.0 (136.8) 607.5
239.6 (144.4) 641.3
252.2 (152.0) 675.0
*短稈は4m単位の枝無し部、枝条は枝付き部とした。
*含水率は短稈66.0%、枝条61.8%とした。
*()は絶乾重量とした。
54
枝条
重量 t
層積:㎥
109.7 (67.8)
334.2
118.8 (73.4)
362.1
127.9 (79.1)
389.9
137.1 (84.7)
417.8
146.2 (90.4)
445.6
155.3 (96.0)
473.5
164.5 (101.7)
501.3
173.6 (107.3)
529.2
182.8 (113.0)
557.0
5.3.4 モウソウチクバイオマス発生予測システム作成
スギ・ヒノキバイオマス発生予測システムと同じく、「森林バイオマスコストシミュレ
ーション」内にモウソウチクバイオマス発生予測システムを構築した。
操作手順としては、まず、図 5-3-1 のように、林分情報(面積、樹種割合、ha あたり
成立本数、平均樹高、平均胸高直径)の現地調査データを入力する。
作業面積
ha
①面積を現地データから入力
1
竹
竹分布率
%
100
全木(竹)資源量 本/ha
10000
平均樹高
m
-
平均胸高直径
cm
-
全竹チップ材積
m3/本
0.0870
②林分内のタケの割合
③本/haを現地調査結果から入力
図 5-3-1 モウソウチク林分状況の入力
モウソウチクバイオマス発生予測表から-、対象林分の総資源量が算出される(図 5-3-2)。
<立木幹材積>
m3
(竹短稈) (竹枝条)
竹
0.060
0.027
*枝葉・竹はチップ後層積
図 5-3-2 モウソウチク総資源量予測の算出
次に、収集率を入力することにより(図 5-3-3)、バイオマス収集可能量を算出するこ
とができる(図 5-3-4)。
作業による収集率
竹短稈
小径木
梢端
根元
枝葉
90
−
−
−
90
%
竹
図 5-3-3 モウソウチク収集率入力シート
バイオマス収集可能量
竹
全計
全竹
本数
本
10000
-
材積
m3
-
竹短稈
チップ
重量
絶乾
t
542.5
−
207.5
−
120.7
−
チップ
m3
240.2
782.7
竹枝条
重量
t
78.2
285.7
図 5-3-4 モウソウチクバイオマス収集可能量結果シート
55
絶乾
47.5
168.2
5.4 発生予測精度向上へ向けた文献調査
発生予測の精度向上に向けて、他の発生予測手法について文献調査を行った。伐採前
のバイオマス発生予測について研究された文献は、人工林関係で「岩手県遠野地域にお
ける未利用バイオマス予測表の作成」、「やまぐち森林づくりシステム立木幹材積表(山
口県スギ・ヒノキ人工林)の作成」の 2 件あったが、モウソウチク関係についてはなか
った。
5.4.1 岩手県遠野地域における未利用バイオマス予測表の作成
第 114 回日本林学会で発表された「岩手県遠野地域における未利用バイオマス予測表
の作成」(西園ら)では、地位、齢級毎にスギ、カラマツの未利用バイオマス予測表を作
成した(表 5-4-1)。
未利用バイオマスとして推定するのは、根株、末木、枝、葉及び曲がりなどによる未
利用部位で、これらの未利用バイオマスを素材量と同時に推定する。手順は以下のとお
りである。
① 収穫予想表から地位別・林齢別の林分幹材積、本数密度、平均樹高及び平均直径を
算出
② 任意の平均直径を持った林分における直径分布をワイブル密度関数により推定
③ 直径と樹高の平均的な関係を表す樹高曲線を相対樹高曲線により推定
④ 幹の細りを相対樹幹曲線式等により推定
⑤ 樹皮の厚さを皮内直径の皮付き直径に対する比と相対樹高との関係式により推定
⑥ 推定された樹幹に対し、伐採高・材長・最小末口直径などの採材パラメーターに基
づいて採材シミュレーションを実行
⑦ 素材材積に一定の比率を乗じて曲がりや腐朽などの未利用部を算出
⑧ 枝葉量を枝乾重、葉乾重の幹乾重に対する割合を求める式から算出
⑨ 利用材積と部位別(末木、小径木、根株)の未利用材積を積算し、容積密度数スギ
0.319、カラマツ 0.408 を乗じることにより乾燥重量を算出
表 5-4-1 岩手県遠野地域における未利用バイオマス予測表
スギ地位3
小径木
末木量
用材不 用材の
量(樹
林齢
根株
(樹皮
枝量
葉量
適木
樹皮
皮込
込み)
み)
(年) (m3/ha)(m3/ha) (t/ha) (t/ha) (t/ha) (t/ha) (t/ha) (t/ha) (t/ha)
40 453.7 249.4
6.9
31.2
4.5
10.7
0.1
12.1
22.4
60 656.3 401.0
8.5
47.5
6.9
7.5
0.0
16.3
23.2
伐採前
素材材
林分材
積
積表
56
未利用
バイオ
マス森
林計
(t/ha)
88.0
109.9
5.4.2 やまぐち森林づくりシステム立木幹材積表(山口県スギ・ヒノキ人工林)の作成
山口県林業指導センター試験報告第 20 号「やまぐち森林づくりシステム立木幹材積表
(山口県スギ・ヒノキ人工林)の作成」(佐渡靖紀,印刷中)では、山口県のスギ、ヒノ
キ人工林について、樹皮を除く幹材積と樹皮量が樹幹の任意の区間で計算できるもので
ある。
この立木幹材積表を用いることにより、スギ・ヒノキ1本毎の丸太利用材積と残渣量
の予測が可能となる)。前項の未利用バイオマス予測表のように詳細な設定は現段階でで
きないが、表 5-4-2 の例のように一本単位での採材計画と枝葉を除くバイオマス発生量を
予測できる。
①
4.1mの丸太を 5 本採材
②
枝葉を除く、バイオマス発生量を算出
今後、この情報と本県林分収穫予想表等の情報を組み合わせることにより、林分全体
の素材生産量及びバイオマス発生量の予測が可能となる。
表 5-4-2 やまぐちの森林づくりシステム立木幹材積表(スギ・ヒノキ人工林)
【計算例1】■のセル内に入力すると計算結果が表示されます。
皮付末口径10cm以上を採材し、地際の曲がり部分及び梢端部分は残渣とする場合
樹種 スギ
【参考】
皮付DBHcm
40 (10∼60cmの範囲、0.1cm単位に対応)
A
B
C
A×C=D B×C=E D-E
樹高m
36 (15∼39mの範囲、0.1m単位に対応
皮付末
システム求
フーベル 末口2乗法
金額
採材長
樹皮率
単価 円
口径 幹材積 ㎥ 樹皮量 ㎥ 積皮付幹
求積皮付 皮付幹材
金額 円 金額 円
m
%
/㎥
円
cm
材積 ㎥
幹材積 ㎥ 積 ㎥
地際
0.4
40.9
0.05050
0.00006
0.05056
0.12
1番玉
4.1
36.8
0.46231
0.00049
0.46280
0.11 0.48552
0.55504
15,000
6,942
8,326 -1,384
2番玉
4.1
33.4
0.37894
0.00038
0.37932
0.10 0.39671
0.45754
14,000
5,311
6,406 -1,095
3番玉
4.1
30.3
0.31190
0.00035
0.31225
0.11 0.32695
0.37698
13,000
4,059
4,901
-842
4番玉
4.1
27.2
0.25258
0.00034
0.25293
0.14 0.26601
0.30247
12,000
3,035
3,630
-595
5番玉
4.1
23.5
0.19523
0.00034
0.19558
0.18 0.20695
0.22720
11,000
2,151
2,499
-348
6番玉
①5番玉まで 4.1m 単
7番玉
8番玉
位の採材計画
9番玉
10番玉
梢端
15.1
0.0
0.24922
0.00067
0.24989
0.27
合計
36.0
1.90068
0.00264
1.90332
0.14 1.68214
1.91922
21,498 25,761 -4,262
全幹
1.90068
0.00264
1.90332
0.14
丸太利用材積 ㎥、% 1.60287 84.21
②バイオマス発生
残渣量 ㎥、% 0.30045 15.79
合計 ㎥、% 1.90332 100.00
予測量を表示
57
5.5 森林バイオマス発生予測手法研究の今後の展開
5.5.1 森林バイオマス発生予測手法の研究の今後
以上のように、現在はバイオマス発生予測手法ついては、研究が始まったばかりであ
る。前項の「岩手県遠野地域における未利用バイオマス予測表」も含め、人工林のシス
テム収穫表は各地で調製が試みられているが、対象とする地域・樹種は限られており、
導入利用を考える場合には本県のデータによる調製を行う必要がある。
特に、現森林バイオマス発生予測システムについては末口径 13cm 未満を対象としてお
り、素材生産時の採材計画に対応していない。また、残渣比率も一律で、林齢・地位に
応じた残渣比率の算出が必要である。今後、各種調査データとのすりあわせや、
「やまぐ
ち森林づくりシステム立木幹材積表」から推測を行い、精度を向上させる必要がある。
また、モウソウチクについては調査件数が少ないため、今回作成の発生予測表は、実
証試験地のみにしか使えないデータとも考えられる。今後、調査件数を増やし、地位等
に対応した発生予測表の作成が必要である。
5.5.2 森林バイオマス発生予測手法と他のシステムとの連携
「森林バイオマス発生予測システム」の精度向上を図ることにより、後述の「森林バ
イオマスコストシミュレーション」
(6 章)や「森林バイオマス供給 GIS システム」(7
章)との融合により、ソフト面から「森林バイオマス低コスト供給システム」を支える
だけでなく、素材生産の収支計画も含めた総合的なバイオマス供給業務支援を行うこと
ができる。
58
6
森林バイオマスコストシュミレーション作成
6.1
FS 調査時の「森林バイオマス生産コスト算出シミュレーション」作成概要
6.1.1
FS 調査時の作成概要
FS 調査では、バイオマス生産現場がないため素材生産現場で調査を実施した。そのた
め、連続した調査を同一の条件で実施することが不可能であった。しかし、限られた現場
データの中から、森林バイオマス低コスト供給へ向けた最適な作業条件を探る必要があっ
た。そのために、様々な組み合わせが考えられる作業工程・仕組・現場条件等について、
同一の条件下で比較することが望ましい。
6.1.2 「森林バイオマス生産コスト基礎データ集」の作成
FS 調査時に各種調査を実施し、県内 6 箇所の林業生産現場調査とその他補助調査で得
られたデータから、各作業工程の標準作業時間、搬出・運搬機械ごとの平均満載量、樹種
ごと(スギ・ヒノキ・竹)の素材・残渣量とその比率を算出した。また、今回の調査で使
用した機械について、機械経費(保有経費・運転経費)を算出し、
「森林バイオマス生産
コスト基礎データ集」を作成した。項目については以下のとおりである。
(1) 標準作業時間
計測結果から得られたデータを基に、各作業工程について一定作業量における標準作
業時間(秒)および標準作業人数(人)を算定した。算定にはその時の作業条件等を加
味し、調整を行った。
(2) 搬出・運搬機械ごとの平均満載量
計測結果から得られたデータを基に、各搬出・運搬機械の平均満載量(m3)を各部
位ごと(素材、枝葉等)に算出した。材積で表示することが困難な枝葉・竹については
「チップ後の層積」で算出した。ここでは、チップ化による飛散等の減少重量分の層積
を加えて考えることで、チップ後の減少は無いものとした値を「実チップ後の層積」と
した。
(3) 樹種ごと(スギ・ヒノキ・竹)の素材・残渣量とその比率
計測結果から得られたデータを基に、スギ・ヒノキの素材・小径木(末口径 12cm 以
下)・梢端・根元・枝葉の全木 1 本あたり比率と竹の短稈・枝条の全竹 1 本あたり比率
を求め、それぞれ 1000 本あたりの材積(枝葉・竹については実チップ後層積)を算出
した。スギ・ヒノキの全幹材積については、現場ごとの全幹材積のばらつきと皆伐・間
伐時の林齢の違いを考慮して、皆伐を 60 年生林、間伐を 40 年生林とし、
「山口県スギ・
ヒノキ林分収穫予想表」の全幹材積を引用した。
(4) 機械経費(保有経費・運転経費)
「機械化のマネジメント(社団法人全国林業改良普及協会)」、「建設機械等損料算定
表(国土交通省)」から、各機械の購入価格(千円)、耐用時間(hr)、年間稼働時間(hr)、
59
残存価格率(%)、機械管理比率(%)を引用し保有経費(円/hr)を、整備修理比率(%)、
燃料・油脂費、消耗品費(円)については現場作業員等からの聞き込み調査も加味した
上で運転経費(円/hr)を算出した。
しかし、FS 調査時は量的に限られた現地計測の結果であり、データの一部は現場での
ヒアリングで入力したため、「森林バイオマス生産コスト基礎データ集」は量的・質的に
不十分である。今後も計測を実施し、データを反映することで「森林バイオマス生産コ
スト基礎データ集」の精度を向上させる必要がある。
6.1.3 「森林バイオマス生産コスト算出シミュレーション」の作成
前項の算出データを活用し、伐採からバイオマス供給地までの運搬にかかる総経費を
算出する「森林バイオマス生産コスト算出シミュレーション」を Microsoft 社 Excel で作
成した。
このシステムは、林業生産現場データを入力することにより、作業工程毎に使用する
機械データと組み合わせることで様々な作業方法について、生産コストを算出すること
ができる。
入力する林業生産現場データは、以下の項目である。
① 林業生産現場データ入力(作業面積、伐採本数、運搬距離等)
② 作業員データ入力(作業人数、就労条件、労務費等)
③ 作業データ選定(作業工程、作業機械等)
上記の入力により得られる出力データは、以下の項目である。
① 総作業時間・日数
② 総経費(総機械経費、総人件費等)
③ 総生産量(素材(m3、t)・残渣(t))
④ 時間あたり生産量(m3/hr、t/hr)
⑤ 生産量あたり経費(円/m3、円/t)
この「森林バイオマス生産コスト算出シミュレーションシステム」により、現場状況
に応じた最適な作業工程・作業機械の選定とコストや作業時間の推定、低コスト化の試
算などが可能である。図 6-1-1 にそのシミュレーション画面を示す。
60
列状間伐○スイングヤーダ・プロセッサによる全木集材(素材+残渣)
・条件
スギ ヒノキ
スギ ヒノキ
伐採本数 本 250 250
幹
0.8
0.8
生
素材
47
43
比 木 枝葉チップ 0.25 0.25
重 絶
小径木
13
9
幹
0.35 0.38
乾 枝葉チップ 0.13 0.13
梢端 m3 5
2
根本
5
4
枝葉
33
40
*枝葉は実チップ後層積
作業員数
平均集材
3
40
m
50
距 平均作業場∼土場
離
材運搬
30
km
機械運搬
20
*機械の運搬は20kmとする
チッパ-・林内作業車
フォワーダ・グラップル
人
年間作業日数 日 250
労働時間/日 hr
8
0.75
作業効率
実作業時間 hr
6
人件費/日 円 9000
円 10000 台
円 12000 台
架線集材機・スイングヤーダ・プロセッサ 円 16000 台
0
2
2
・作業
作業
人数
機械
作業名 単 必 拘
機械名
機械準備 - 3 3 伐採
1 1 1 チェンソー
集材準備 1 2 2 スイングヤーダ
集材
1 2 2 スイングヤーダ
造材
1 1 1 プロセッサ
搬出積込 1 1 1 グラップル付フォワーダ
搬出積込 1 1 1 グラップル付フォワーダ
搬出
1 1 1 グラップル付フォワーダ
運搬積込 1 2 2 グラップル 4tトラック
運搬積込 1 2 2 グラップル 4tトラック
運搬
1 1 1 4tトラック
積降
1 2 2 フォークリフト 4tトラック
積降
1 2 2 フォークリフト 4tトラック
機械撤去 - 3 3 -
4
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
4
満載
m3
3.00
1.54
3.67
4.30
3.67
4.30
-
作業量
台
機械設置1台
全木
全木1本
ワイヤー張り1ha(列状間伐)
全木
全木1本
全収集
全木1本
素材(小径木含む) フォワーダ満載
枝葉(梢端・根本含む) フォワーダ満載
フォワーダ満載
素材(小径木含む) 4tトラック満載
枝葉(梢端・根本含む) 4tトラック満載
4tトラック満載
素材(小径木含む) 4tトラック満載
枝葉(梢端・根本含む) 4tトラック満載
機械撤去1台
作業
回
4
500
1
500
500
38
58
95
31
21
51
31
21
4
作業時間
hr hr×人
6
1800 2
110 15
15
22222 6
12
70
10
19
140 19
19
870
9
9
367
6
6
12
450 12
1064 9
18
1740 10
20
8571 122 122
600
5
10
1180 7
14
1800 2
6
秒/回
機械経費
円
445
6795
7113 69153
7503 145898
6461 58607
6461 38139
6461 77079
4592 41641
4592 46025
2507 306885
3922 20058
3922 26662
-
円/hr
*満載(m3)について、枝葉は実チップ後層積
総作業時間 hr
97
総作業日数 日
16
総人件費 円 434786
総機械経費 円 836941
機械運賃 円 56000
総経費
円 1327728
素材
残渣
生産量
m3
t
90
72
49
時間あたり経費
円/hr 13742
材積
生重量
絶乾重量
時間あたり生産量
m3/hr
2.09
t/hr
1.25
t/hr
0.59
生産量あたり経費
円/m3
6580
円/t
10980
円/t
23442
*m3について、枝葉は実チップ後層積
図 6-1-1 FS 調査時の森林バイオマス生産コスト算出シミュレーションシステムによる試算
61
6.2 森林バイオマスコストシミュレーション作成の目的
FS 調査時はこの「森林バイオマス生産コスト算出シミュレーションシステム」を用い
て、最適な高性能林業機械の組合せや減容化運搬の必要性、その際の生産コスト等を評
価した。その結果、さらなる可能性をも検討できる状態にまで達したが、このコストシ
ミュレーションシステムは FS 調査時計測データを基にした「森林バイオマス生産コスト
基礎データ集」をベースに作成したものであるため、様々な生産現場の想定や新たな技
術・機械導入への対応が容易でない。そのため、「森林バイオマス生産コスト基礎データ
集」そのもののデータ見直し、データの増量が必要である
また、この「森林バイオマス生産コスト算出シミュレーションシステム」の活用には
十分な理解と熟練を必要とするため、今後の林業の現場においては、間伐の推進や高性
能林業機械の効率的活用に繋げるためにも、誰もが利用できる簡単なシステム化が必要
である。さらに、シミュレーションによる検討段階において、作業システム変更による
生産コストや、バイオマス収集量の変化にも対応した、新たなシステム作成が必要であ
る。
以上から、16 年度は「森林バイオマス生産コスト基礎データ集」の拡充を行うととも
に、様々な可能性にも対応でき、操作が簡単ということを目標とした新「森林バイオマ
スコストシミュレーション」の作成を行った。
62
6.3 森林バイオマスコストシミュレーション概要
6.3.1 入力項目及び出力項目
今回、作成した「森林バイオマスコストシミュレーション」は FS 調査時同様、表計算
ソフトの Microsoft 社 Excel を適用したワークシート形式である。操作性や視認性、さら
に汎用性を考慮して、入力シートと出力シートに分け入力・出力項目を細分化した。
入力項目を表 6-3-1 に、出力項目を表 6-3-2 に示す。
表 6-3-1 入力項目
山林名(作業名)、作業内容(皆伐・列状間伐・定性間伐)
作業面積、資源分布率、資源量、間伐率
平均樹高・胸高直径、全竹チップ層積
材部重量比、1本あたり平均本数
比重、チップ比重、含水率
① 現場条件
② 材部条件
③ 作業機械条件 機械搬入の有無、搬入機械名、機械搬入搬出運賃
各作業内容の有無、その他経費
作業員数、労働時間、実作業時間、1人平均人件費
④ 作業工程条件 残存幅、伐採幅、平均列間距離
搬出距離、中継距離、運搬距離
各材部収集率
⑤ 作業詳細
各作業内容の総作業量・単位量・単位人数・単位時間・機械経費
表 6-3-2 出力項目
生産量
作業時間
経費
全木(全竹)
素材(竹短稈)
小径木
総生産量
梢端
根元
枝葉(竹枝条)
残渣(バイオマス)生重量
総作業時間
総作業日数
人件費
機械経費
総経費
機械搬入運賃
その他経費
経費割合
本数
本数、材積、チップ後層積、生重量、絶乾重量
本数、材積、チップ後層積、生重量、絶乾重量
チップ後層積、生重量、絶乾重量
チップ後層積、生重量、絶乾重量
チップ後層積、生重量、絶乾重量
時間あたり生産量
材積、チップ後層積、生重量、絶乾重量
生産量あたり経費
材積、チップ後層積、生重量、絶乾重量
作業詳細
各作業内容の有無
各作業内容の作業時間、作業経費
各作業内容の全体に占める作業率・経費率
63
6.3.2
入力方法
(1) 現場条件及び材部条件の入力
入力シートについては、5項目に分かれる。まず、現場条件と、材部条件である。こ
こでは、5 章で作成した森林バイオマス発生予測システムを組み込んでおり、①現場条件
や②作業内容を入力することにより、バイオマス資源量(立木幹材積、全木一本あたり
資源量、総収集量)を算出する(図 6-3-3)。
ここで、間伐率や、材部比(参照データでは末口径 13cm 以上を素材としている)を変
更することにより、バイオマスの総収集量の変更ができ、バイオマス供給量の検討が可
能となる。
16年度 (素材+残渣)-素材 4t箱 ダンプ <立木幹材積>
全幹 枝葉
m3
(竹短稈) (竹枝条)
列状間伐
<全木(竹)1本あたり量>
素材
m3 【本】
(竹短稈)
作業面積
1
列本数
ha
35
本
<総収集量>
小径木
梢端
根元
枝葉
(竹枝条)
m3 【本】
全木
素材 小径木
(全竹) (竹短稈)
梢端
根元
枝葉
(竹枝条)
スギ
0.285
0.134
スギ
0.190 【 2.0 】
0.054
【 1.3 】 0.051
0.056
0.134
スギ
【 250 】
0.0
12.3
11.4
12.6
10.1
ヒノキ
0.232
0.158
ヒノキ
0.171 【 2.3 】
0.036
【 1.2 】 0.026
0.041
0.158
ヒノキ
【 250 】
0.0
8.2
5.8
9.2
35.6
-
-
-
竹
竹
*枝葉・竹はチップ後層積
-
-
-
*梢端・根元・枝葉・竹はチップ後層積
*梢端・根元・枝葉・竹はチップ後層積
バイオマス資源
↓参考データ
量の算出
○現場条件
16年度 (素材+残渣)-素材 4t箱 ダンプ 山林名(作業名)
作業
竹
-
列状間伐
作業面積
2
ha
1
スギ
スギ・ヒノキ・竹分布率
全木(竹)資源量
ヒノキ
竹
0
%
50
50
本/ha
1000
1000
① 現場条件の入力
・成立本数
スギ
ヒノキ
竹
・平均樹高
0
・平均胸高直径等 全木(竹)資源量 本/ha 1000 1000
%
25
25
100
作業条件の入力 間伐率
・皆伐or間伐
参照データの表示
・間伐率等
全木(竹)チップ材積 m3*白セル入力時の参
照データ
間伐率
%
25
25
平均樹高
m
17.4
15.9
-
平均胸高直径
cm
21.0
19.0
-
全竹チップ材積
m3/本
-
-
素材
(竹短稈)
小径木
梢端
根元
枝葉
(竹枝条)
○材部条件
スギ
ヒノキ
竹
材部重量比
%
素材 小径木
(竹短稈)
57
16
6
6
15
57
16
6
6
15
1.30
-
-
-
平均本数/本 本
2.00
1.30
-
-
-
比重
0.80
0.80
0.80
0.80
-
比重
0.80
0.80
0.80
0.80
-
チップ比重
0.30
0.30
0.30
0.30
0.31
チップ比重
0.30
0.30
0.30
0.30
0.31
%
129
129
129
129
129
%
59
13
3
5
19
平均本数/本 本
2.30
1.15
-
-
-
比重
0.80
0.80
0.80
0.80
-
チップ比重
0.30
0.30
0.30
0.30
0.28
111
111
111
含水率
%
材部重量比
%
-
-
平均本数/本 本
-
-
含水率
-
-
-
-
チップ比重
%
111
111
② 材部条件の入力
・部材比重
・平均本数等
*右側シートの参考
データを参照に記入
-
ヒノキ
竹
%
枝葉
(竹枝条)
2.00
含水率
材部重量比
根元
平均本数/本 本
材部重量比
スギ
梢端
含水率
%
129
129
129
129
129
材部重量比
%
59
13
3
5
19
平均本数/本 本
2.30
1.15
-
-
-
比重
0.80
0.80
0.80
0.80
-
チップ比重
0.30
0.30
0.30
0.30
0.28
111
111
111
111
111
含水率
%
材部重量比
%
-
-
-
平均本数/本 本
-
-
-
含水率
-
-
-
-
-
-
%
チップ比重
-
図 6-3-3 入力シートへの現場条件、材部条件の入力
(2) 作業機械条件及び作業工程条件及び作業詳細の入力
次に、③作業機械条件として搬入の必要な林業機械(スイングヤーダ、プロセッサ等)
を入力し、④作業工程条件の有「1」無「0」を入力する。(図 6-3-4)。
64
④作業工程条件に「1」を入力した作業項目は、⑤作業詳細の作業項目上に「チェッ
ク」が表示される。その項目内に作業内容(作業機械)を記入し、その作業データを入
力する。入力データはシミュレーション作成者が作業班員の力量にあわせて決めること
になるが、参考としてシート右側に、「森林バイオマス生産コスト基礎データ集」のデー
タが表示される。
○作業機械条件
機械の搬入
0
搬入機械
③ 作業機械条件の入力
機械搬入出運賃計
千円
・搬入機械を記入
搬入(出)運賃 (千円)
4t
6t
10 t
12 t
20 t
0∼5 km
5.5
7.0
9.0
10.0
14.0
∼10 km
8.2
9.9
12.5
13.2
16.1
∼15 km
8.7
10.5
13.2
14.1
17.8
∼20 km
9.2
11.2
14.0
14.9
19.6
∼25 km
9.7
11.8
14.8
15.5
21.4
(本事例では、4t箱ダンプで運
搬し、積載機械は素材生産現場
のグラップルを使用するという前
提のため、搬入機械はない)
○作業工程条件
作業の有無
伐採(選木含む)
0
作業員数
人
3
作業員数
人
3
造材(集材前)
0
労働時間
hr/日
8
労働時間
hr/日
8.0
集材準備&撤去
0
実作業時間
hr/日
6
集材
0
1人平均人件費
円/日
9000
実作業時間
hr/日
6.0
1人平均人件費
円/日
9000
造材(集材後)
0
破砕(搬出前)
0
残存幅
m
5.4
残存幅
m
5.4
積込(搬出)
0
伐採幅
m
1.8
伐採幅
m
1.8
搬出
0
平均列距離
m
40
積降(搬出)
0
破砕(中継運搬前)
0
搬出距離
km
積込(中継運搬)
0
中継距離
km
中継運搬
0
運搬距離
km
積降(中継運搬)
0
30
破砕(運搬前)
0
有
積込(運搬)
1
有
運搬
1
その他経費
有
積降(運搬)
1
(人件費・機械経費・機械搬入運賃以外)
最終破砕
0
その他作業
0
0
総間伐量=総収集量 No
0
上記作業による収集率 %
素材
(竹短稈)
小径木
梢端
根元
枝葉
(竹枝条)
スギ
0
90
90
90
30
ヒノキ
0
90
90
90
90
-
-
-
単位人数
(人)
単位時間
(秒)
機械経費
(円/hr)
機械1台あたり作業
千円
竹
④ 作業工程条件の入力
・作業工程
・運搬距離
82
55
26.09
23.72
3.854
・総収集量
83
82
67.74
84.67
69.76
・収集率
○上記作業詳細
運搬
作業内容(機械等)
チェック
総作業量
単位量
(本 or t or m3 or 回)
4tトラ 素材44本
単位量 単位人数単位時間機械経費
(本・t・m3・回) (人)
(秒) (円/hr)
1
1
10000
2133
10tトラ 素材87本・小径木136本
1回
1
m/4.2
4902
4t箱ダンプ 小径木136本
4.053
1
1
10000
1619
10tユニ フレコン20袋・枝葉10.0m3
1回
1
m/4.2
4854
4t箱ダンプ 枝葉(梢端・根元
10.44
1
1
10000
1619
10tダンプ(箱) 枝葉20m3
1回
1
m/4.2
3721
10tダンプ(箱) チップ21.5m3
1回
1
m/4.2
3721
←入力
積降(運搬)
作業内容(機械等)
チェック
総作業量
単位量
(本 or t or m3 or 回)
フォークリフト 素材
←入力
1
4tダンプ 小径木136本
4.053
1
ダンプ 枝葉(梢端・根元含む
10.44
1
⑤ 上記作業詳細の入力
単位人数
単位時間
機械経費
・各作業内容
(人)
(秒)
(円/hr)
・総作業量等
1
14
1448
1
300
1619
*作業データを記入する。作
1
300
1619
業データを持たない場合は右
側の参考データを記入
機械1台あたり作業
単位量 単位人数単位時間機械経費
(本・t・m3・回) (人)
(秒) (円/hr)
「森林バイオマス生
2
60
4586
産コスト基礎データ
1袋
2
30
4586
1袋
ユニック(10t) フレコン(0.745m3/袋)集」を参考データとし
2
100
4854
て表示
1本
フォークリフト 素材/小径木
1
14/9
1448
グラップル 枝葉(梢端・根元含む) 1m3
グラップル フレコン(0.745m3/袋)
フォークリフト 枝葉(梢端・根元含む) 1m3
2
186
1448
フォークリフト フレコン(0.745m3/袋)
1袋
2
41
1448
ダンプ(10t) 枝葉(梢端・根元)
1台
1
300
3721
図 6-3-4 入力シートへの作業機械条件、作業工程条件、作業詳細の入力
65
6.3.4 出力シート
以上の操作から、出力シート(図 6-3-5)に、総生産量や生産量あたり経費等が算出さ
れる。
特に、出力シート上に作業時間割合、作業経費割合が表示されるので、シミュレーシ
ョン作成者は、作業システムの改善等を検討できる。
16年度 (素材+残渣)-素材 4t箱 ダンプ 列状間伐
作業面積
1
総生産量
スギ
ヒノキ
竹
スギ・ヒノキ計
全計
作業員数
全木
(全竹)
本数
本
250
250
素材
(竹短稈)
材積
チップ
重量
絶乾
m3
t
41.2 t
小径木
本数
本
325
288
12.3
8.2
材積
16
3
8
6
74
9.0
②総機械経費
104
③機械搬入運賃
0
搬入機械
0
-
613
20.4
人
hr
日
hr/日
hr/日
千円
千円/日
千円
総経費
(①+②+③+④)
178 千円
時間あたり経費 10,799 円/hr
経費率
①総人件費
②総機械経費
③機械搬入運賃
④その他経費
計(総経費)
経費
千円
74
104
割合
%
42
58
178
100
千円
時間あたり生産量
材積
チップ
重量
絶乾
m3/hr
t/hr
8.43
2.50
1.14
千円
生産量あたり経費
材積
チップ
重量
絶乾
円/m3
円/t
1,281 4,327 9,473
梢端
チップ
重量
32.7
21.8
54.5
-
9.8
6.5
4.3
3.1
チップ
m3
11.4
5.8
16.3
7.4
17.2
m3
-
①総人件費
1人平均人件費
④その他経費
(①②③以外)
残渣重量
本数
本
500
3
総作業時間
総作業日数
労働時間
実作業時間
ha
絶乾
t
重量
絶乾
1.5
0.8
チップ
m3
12.6
9.2
2.3
21.8
t
3.4
1.7
5.2
-
作業詳細
作業時間
作業
伐採(選木含む)
造材(集材前)
集材準備&撤去
集材
造材(集材後)
破砕(搬出前)
積込(搬出)
搬出
0 km
積降(搬出)
破砕(中継運搬前)
積込(中継運搬)
中継運搬
0 km
積降(中継運搬)
破砕(運搬前)
積込(運搬)
運搬
30 km
積降(運搬)
最終破砕
その他作業
根元
時間
hr
hr×人
重量
絶乾
t
3.8
2.8
6.5
-
1.6
1.3
3.0
チップ
m3
10.1
35.6
45.6
45.6
作業経費
割合 人件費 機械
計
% 千円
千円
枝葉
(竹枝条)
重量
絶乾
t
3.1
1.4
10.1
4.8
13.2
13.2
6.1
6.1
割合
%
-
有
有
有
8.0
40.3
1.2
8.0
40.3
1.2
16
81
2
12
60
2
37
65
2
49
126
4
27
70
2
③機械搬入運賃
④その他経費
図 6-3-5 出力シート
6.3.5 森林バイオマスコストシミュレーションで可能な検討支援
森林バイオマスコストシミュレーションには、入力データの変更等により、以下の検
討支援機能がある。
◊
入力時に、間伐率、材部重量比、収集率を変更することで、バイオマス収集量の
検討ができる。
◊
入力時に、作業詳細の、作業機械、作業時間等を変更することで、算出されるコ
スト差から作業システムの検討ができる。
◊
出力シートに作業経費割合及び作業時間割合が表示されることから、コスト減の
ための検討ができる。
66
6.4 森林バイオマスコストシミュレーション活用及び今後の展開
この「森林バイオマスコストシミュレーション」を活用することにより、バイオマス
収集時の収集予測量、導入機械、作業仕組みの検討を可能とした。また、バイオマス収
集だけでなく素材生産シミュレーションにおいても同様の効果を発揮できる。
今後、この「森林バイオマスコストシミュレーション」の検証を行うともに、「森林バ
イオマス発生予測システム」(5 章)及び「森林バイオマス生産コスト基礎データ集」の
さらなる精度向上を図り、「森林バイオマス低コスト供給システム」をソフト面から支援
する。
67
7
森林バイオマス供給 GIS システムの開発
7.1 森林バイオマス供給 GIS システム開発の目的
海外の先進事例からも、高性能林業機械の導入によるハード面での低コスト化と、森
林資源の総合的な情報を活用したIT(情報技術)システムの導入による収集・運搬作
業の効率化によるソフト面での低コスト化の一体的な取組みが不可欠である。
そこで、森林バイオマスの効率的な収集計画の立案支援等、収集・運搬のコストダウ
ンを図るため、森林資源地図情報システムである「山口県森林総合情報システム」を活
用した「森林バイオマス供給 GIS システム」の開発を行う。
他の部署
森林情報の提供
県民ほか
他部局の端末
(GI S端末)
ネット端末
県民へ情報発信
・災害危険地区
・鳥獣保護区
・ツキノワグマ目撃情報 など
森林情報基幹システム
(森林基幹情報管理)
情報公開用サーバ
サブシステム
(各業務支援)
・施業履歴管理システム
・森林施業計画認定支援システム
・山地災害危険地区/
治山事業管理システム
・路網管理システム
・鳥獣保護区等管理システム
・地球観測衛星画像解析システム
・森林情報公開システム
関連情報の提供
森林情報の管理・利用
農林部
市町村
森林情報の提供
GISサーバ
・森林基本図
・森林計画図
・地籍図 など
森林情報の提供
森林情報の提供
農林事務所
データベースサーバ
・森林簿
・治山台帳
・林道台帳 など
森林情報
GIS端末
施業情報の提供
施業情報による
森林情報修正
森林組合等
施業情報の提供
施業情報の提供
GIS端末
施業情報
GIS端末
施業情報
森林情報の提供
図 7-1 山口県森林総合情報システムの全体イメージ
68
施業情報
7.2 森林バイオマス供給 GIS システム概要
山口県森林総合情報システムのサブシステムとして森林バイオマス供給 GIS システム
を開発した。このシステムで、森林簿データ等を活用して、バイオマス発生量データ等
を持たせたバイオマスデータベースを作成し、このバイオマスデータベースと GIS 機能
を活用することにより、以下の2業務が可能となる。
①
長期・循環利用計画立案支援
②
年間・月間供給計画立案支援
7.2.1 バイオマスデータベースの概要
森林簿データ、森林施業計画、施業実行データ(森林組合等が皆伐・間伐の施業を実
行する林分情報)のスギ・ヒノキ林小班毎に、森林バイオマス発生予測システム(5 章)
を活用して、全木集材、全幹集材、短幹集材毎のバイオマス発生量を持たせたバイオマ
スデータベースを作成した。このバイオマスデータベースにより、以下の機能を発揮す
る。
①
小班単位でバイオマス量が計算できる。
②
バイオマス量は、森林簿データから算出、施業計画データから算出、施業実行デ
ータから算出の 3 パターンで算出が可能である。
③
バイオマス量の分布が図面表示される。
④
小班単位のバイオマス量を月、年、市町村、所有者、樹種、林齢年度別、主間伐
同時期、人工林伐採適齢期等(可能性量)、発生量別で検索が可能である。
⑤
林道からのバッファーゾーンで抽出したエリアでも④が可能である。
バイオマスデータベース
バイオマス小班テーブル
バイオマス施業計画テーブル
基幹小班カラム
※森林GIS(山口)データベース設計書に準ず
る。
森林組合施業計画カラム
※基幹システムバージョンアップ森林組
合_施業計画_属性Pテーブルに準ずる。
組合デー
タを取り
込み
本庁デー
タを取り
込み
バイオマス算出用(1)カラム
集材方法,収集率,バイオマス係数,材比重,枝
葉比重,材含水率,枝葉含水率,枝葉量係数,
バイオマス収集可能材積(? ),バイオマス収
集可能乾燥重量(t),バイオマス収集可能生
重量(t)
バイオマス収集予定地テーブル
施業実行カラム
市町村、林班,準林班,小班,枝番,第1樹種,
第2樹種,第1樹種面積,第2樹種面積,混
合歩合1,混合歩合2,林齢1,林齢2,齢級1,
齢級2,haあたり面積1,haあたり面積2,集
材方法,施業終了日,収集可能日,収集希
望時期,収集率,山土場の有無
組合デー
タを取り
込み
バイオマス算出用(1)カラム
バイオマス算出用(2)カラム
集材方法,収集率,バイオマス係数,材比
重,枝葉比重,材含水率,枝葉含水率,枝葉
量係数,バイオマス収集可能材積(? ),バ
イオマス収集可能乾燥重量(t),バイオマ
ス収集可能生重量(t)
収集完了フラグ,収集決定フラグ,収集不能
フラグ,収集完了量,バイオマス係数,材比
重,枝葉比重,材含水率,枝葉含水率,枝葉
量係数,バイオマス収集可能材積(? ),バ
イオマス収集可能乾燥重量(t),バイオマ
ス収集可能生重量(t)
小班形状
※基幹小班形状をコピー。
小班形状
※基幹小班形状をコピー。
図 7-2-1 バイオマスデータベース構造
69
7.2.2 長期・循環利用計画立案支援システム
このシステムは、バイオマスの長期・循環利用計画立案業務を、支援する機能を持つ。
まず、森林簿基幹データ(小班形状データ等)
、森林施業計画データをバイオマスデー
タベースに取り組み、全県あるいは指定された範囲で施業時期、伐採等の検索条件を入
力することにより、森林施業計画の主伐・間伐伐採計画データから年間バイオマス発生
予定量を算出・把握できる。
林小班、面積、樹種、林齢、施業
期間、
施業方法、間伐率、集材方法、
バイオマス集積場所、
バイオマス収集可能日程、その他
エネルギー事業者
年間バイオマ
ス要求量
森林組合等
施業計画
データ
⑦ 発生予
定量報告
② バイオマス
DBに取込
① 年間バイオマ
ス要求量の受取
バイオマス
資源管理
連携
林業指導
センター
② バイオマス
DBに取込
基幹データ
(小班形状
データ等)
データ
⑥ 長期供給計画
バイオマ ス
供給機関
( 県森連)
バイオマス
バイオマス
DB
小班(森林簿)DB、
DB
施業計画DB、
施業実行DBにより構
成
③ 全県年間バイ
オマス発生予定量
の把握
本庁
安全安定
供給
④ 年間バイオマ
ス発生分布の把握
⑤ 循環利用計画
別途業務
GIS活用業務
図 7-2-2 バイオマス GIS 長期・循環利用計画業務フロー図
業務フローとして
① バイオマス供給機関は、エネルギー事業者から当年度必要なバイオマス量の要求(以
下、年間バイオマス要求量)を受ける。
② 単森組からの施業計画データと本庁からの基幹データは、供給機関に集められバイ
オマスデータベースに取りこむ。
③ 供給機関は、当年の施業計画から計算される発生予定のバイオマス量(年間バイオ
マス発生予定量)を把握し、年間バイオマス要求量と照らし合わせる。
④ 発生量が要求量より多い場合は、供給機関は、
「エリア(市町村)」と「施業時期」
等により、年間バイオマス発生予定量を条件検索する。また、数年間の年間バイオ
70
マス発生予定量を抽出し、比較等を行う。(分布図等を活用)
⑤ 供給機関は、循環利用計画を立てる。
⑥ 供給機関は、検索条件毎に年間バイオマス発生予定量と必要データを外部ファイル
(CSV)に出力し、EXCEL 等で集計し、長期供給計画を立てる。
⑦ 供給機関は、エネルギー事業者に、バイオマス発生予定量を報告する。
図 7-2-3 に長期・循環供給計画支援作業イメージを示す。
① 黄色の林小班が、森林施業計画で伐採計画にあがっている林分で、数値は全木集材
時のバイオマス発生生重量を表す。
② 緑色の林小班が、バイオマス収集候補地として選択した林小班である。
③ 属性表示により全木集材時の生重量、乾燥重量、材積等のデータが表示される。
①森林施業計画で伐採計
画に計上された林分
全木集材時のバイオマス
②バイオマス収集候補地
発生量を表示
として選択
③属性表示により、林小
班、バイオマス量等を表示
図 7-2-3 長期・循環供給計画支援作業イメージ
71
7.2.3 年間・月間供給計画立案支援システム
このシステムは、主に年間・月間供給計画を支援するシステムである。森林組合等が
実際に森林施業を行う林分の情報を入力した「施業実行データ」をバイオマスデータベ
ースに取り込むことにより、全県、あるいは指定された範囲で、施業時期、伐採等の検
索条件を入力し月間実行バイオマス発生予定量を算出、把握することができ、算出され
た月間実行バイオマス発生予定量を基に、月間、年間の供給計画、営業計画を立てる。
さらに、需要量に対して供給予定量が足りない場合は、森林簿の林小班データから近
隣のバイオマス供給可能林分を GIS 上で検索し、検討することができる。
エ ネ ル ギー事 業 者
林小班、面積、樹種、林齢、施業
期間、
施業方法、間伐率、集材方法、
バイオマス集積場所、
バイオマス収集可能日程、その他
森林組合等
年間、月間
バイオマス要求量
⑦ 営業依頼
施業実行
デー タ
⑩ 供給予
定量報告
⑫ バイオマスDB
に収集完了フラグ
を立てる
② バイオマス
DBに取込
バ イ オ マス
収集業者
⑪ 完了報告
⑨ 作業依頼
バイオマスDB
不突合修正
① 月間バイオ
マス要求量の
受取
バイオマス
資源管理
② バイオマス
DBに取込
林業指導
セ ン ター
バイオマス
DB
連携
小班(森林簿)DB、
施業計画DB、
施業実行DBによ り構成
基幹デ ータ
(小班形状
デ ー タ等)
データ
安全安定
供給
バイオマス
DB
④ 月間,年間
バイオマス発生分布の
把握、収集決定フラグ
を立て、収集地の分布
図を作成
③ 月間,年間
実行バイオマス
発生予定量の把握
本庁
バ イ オ マス
供給機関
(県 森 連 )
⑧ 供給計画
⑧ 収集決定フラ
グを立て、収集地
の分布図を作成
⑥ 営業計画
別途業務
⑤ 施業計画対象外
年間バイオマス
発生予定量の把握
GIS活用業務
図 7-2-4 バイオマス GIS 年間・月間供給計画業務フロー図
①
バイオマス供給機関は、エネルギー事業者から当年度必要な月別バイオマス量の
要求を受ける。
②
単森組からの施業実行データは、供給機関に集められ、バイオマスデータベース
に取りこむ。同時に施業実行不突合データの修正を行う。
③
供給機関は、当月の施業実行データから発生予定のバイオマス量を把握し、要求
量と比較する。
④
発生量が要求量より多い場合は、供給機関は、
「エリア(市町村)」と「施業時期」
等により、バイオマス発生予定量を条件検索する。(分布図等を活用)
72
⑤
発生量が要求量より少ない場合は、供給機関は、施業計画対象外のデータや条件
外の施業計画データを基に、供給が可能なバイオマス収集候補地を抽出する。
⑥
供給機関は、バイオマス収集候補地の営業計画を立てる。
⑦
供給機関は、計画を基に、単森組に営業依頼する。
⑧
供給機関は、検索条件毎に月間および年間実行バイオマス発生予定量と必要デー
タを外部ファイル(CSV)に出力、Excel 等で集計、供給計画を立てる。購入計画
の検討の結果、収集決定した箇所については、収集決定フラグを立てる。
⑨
供給機関は、購入計画を基に、バイオマス収集業者に作業依頼する。
⑩
供給機関は、エネルギー事業者に供給量を報告する。
⑪
収集業者は、供給機関に収集完了量を報告する。
⑫
供給機関は完了報告有り次第、完了フラグを立て収集完了量を入力する。
図 7-2-5 に年間・月間供給計画支援作業イメージを示す。
① 水色以外に色塗りされた林小班は、森林組合等が森林所有者と伐採契約を結んだ林
小班であり、赤色等の段階的な色表示でバイオマス発生量を段階表示する。
② 年間供給量が足りない場合は、バイオマス収集候補地として属性指定して検索する。
③ 水色の林小班が、バイオマス収集候補地(例:スギ・ヒノキ林分 30 年生以上)と
して定義し、表示させた林小班で、条件を検討しながら収集候補地を決定し、候補
地となった林分の森林所有者に伐採依頼等の営業活動を実施する。
②伐採契約を結んでいな
い林分を水色表示し、伐
採候補林分を検討
①伐採契約を結んだ林分
色でバイオマス発生予定
量を段階表示
図 7-2-5 年間・月間供給計画支援作業イメージ
73
7.3 森林バイオマス供給 GIS システム活用及び今後の展開
この「森林バイオマス供給 GIS システム」は開発途中であり、まだ現場で十分活用で
きるレベルではない。特に、計算済みのバイオマス発生予定量を予めバイオマスデータ
ベースに持たせているため、現場の素材生産計画(末口何 cm まで採材するか等)にあわ
せたバイオマス発生量計算機能や、年間成長量に対応した機能がない。
そこで、
「森林バイオマス発生予測システム」
(5 章)のバイオマス発生量計算機能や「森
林バイオマスコストシミュレーション」(6 章)のコスト算出機能等もあわせた「森林バ
イオマス供給 GIS システム」にバージョンアップさせ、ソフト面から「森林バイオマス
低コスト供給システム」を支えることが必要である。
74
8
森林バイオマス低コスト供給システムの検証
8.1 森林バイオマス低コスト供給システムの検証方法
本章ではこれまでの実証試験、調査を整理し、山口方式の森林バイオマス低コスト供
給システムについて検討する。
第 3 章では実証試験を行いバイオマス収集工程調査として人工林で 5 方式、竹林で 2
システムの作業工程の作業時間、作業量等を計測した。
しかし、実証試験時には、データ計測のために作業が中断したり、スイングヤーダ等
の高性能林業機械はレンタルであったためオペレーターの機械操作の慣れの問題、また、
バイオマス収集作業は、特に竹林の 2 システムについては作業前例がないため作業その
ものへの慣れの問題等の理由により、単純には実証試験の結果だけで判断ができない。
そこで、同一条件下で作業システム間のコスト比較をするため、実証試験のデータを
用いて森林バイオマスコストシミュレーションを構築した。
本章では、この森林バイオマスコストシミュレーションを用いて、各バイオマス低コ
スト供給システムのコストを算出し、比較検証することとする。
現地実証試験
支援システム作成
○人工林
バイオマス発生量データ等
森林バイオマス発生予測システム
素材生産工程調査
バイオマス収集工程調査
従来・荷台箱型・チップ化・圧縮・チップ化後圧縮
林業生産現場データ
機械データ等
森林バイオマス生産コスト基礎データ集
○竹林
伐採集材工程調査
バイオマス収集工程調査
全竹チップ化・短稈造材枝条チップ化
森林バイオマスコスト
シミュレーション構築
林分・作業等
同一条件下で
の比較検討
森林バイオマスコストシミュレーション
生産コスト等算出
森林バイオマス低コスト供給システムの検証
図 8-1-1 森林バイオマス低コスト供給システムの検証までの構築フロー
75
8.2 人工林における森林バイオマス低コスト供給システムの検証
8.2.1 人工林における森林バイオマス低コスト供給システムの考え方
16 年度実証試験においては、スギ 45 年生(0.20ha、1,244 本/ha)及びヒノキ 30 年生
(0.12ha、2,500 本/ha)において、3 残 1 伐の列状間伐における「素材生産工程調査」
全木集材、分別造材・集積を行い、
「バイオマス収集工程調査」として、従来型トラック
運搬、トラック荷台嵩上運搬、チップ化運搬、圧縮運搬、チップ化後圧縮運搬の 5 方式
の工程調査を実施した。
しかし、対象とするバイオマス等の現場条件が違ったり、作業員が機械によっては不
慣れであったり等、現場データをそのまま比較することが出来ないため、森林バイオマ
スコストシミュレーションを活用して、同一条件による適正な作業数値の基でコスト比
較を行い、検証することにした。また、伐採・集材・造材・木材市場への運搬を含む「素
材生産工程」のコストについては、素材の販売収入や各種補助事業等により収支が見合
うとして計上しないこととした。
そこで、列状間伐終了後に残渣が分別された状態で路網上に分散集積していること前
提条件とし、
「バイオマス収集工程調査」のみに限定し、作業条件を以下のとおりとして
コスト計算を行った。
◊
作業内容は列状間伐全木集材の現場で、路網上に分散集積された残渣の収集から
発電施設への運搬まで
◊
40 年生スギ、ヒノキ林分(1ha)、成立本数はスギ・ヒノキ各 1,000 本、計 2,000
本、伐採本数は 3 残 1 伐(間伐率 25%)で、スギ・ヒノキ各 250 本、計 500 本
◊
残渣の収集率はスギ枝葉 30%、それ以外は全て 90%
◊
含水率はスギ 129%、ヒノキ 111%
◊
上記から、発生残渣の収集可能量は 41.2t/ha
◊
フレコンパック直接投入のチップ比重は 0.13
◊
荷台箱型方式への残渣積載量は 1t 毎に約 1 ㎥
◊
素材生産中に素材、残渣の分別集積がしてある
◊
残渣収集現場には、素材生産で使用中のグラップルがあり、使用可能
◊
作業道は、4t クラスの車両が通行可能
◊
山土場から発電施設までの運搬距離は 30km、運搬車両の速度は、時速 21.6km(秒
速 6m)
◊
作業員は 3 名
◊
コスト算出は全て生重量ベース
8.2.2 人工林における森林バイオマス低コスト供給システムの検証
(1)
5 方式 10 システムの人工林バイオマス供給システムによる検討
「人工林バイオマス供給システム」として、「従来、荷台箱型、チップ化、圧縮、チッ
76
プ化後圧縮」の 5 方式に作業機械の組み合わせを考え、5 方式 10 システムを検証するこ
ととした。図 8-2-1 に各作業システムの構成を示す。
従来方式
4tトラック
残渣は全て積載
グラップル(5t)
荷台箱型方式
残渣は全て積載
4t荷台箱型トラック グラップル(5t)
グラップル付き4t荷台箱型トラック
4t荷台箱型ダンプ グラップル(5t)
圧縮方式 残渣は全て積載
プレスダンプ車
チップ化方式
枝葉以外の残渣
枝葉のみチップ化
直接投入
自走式チッパー
タブグラインダーMC1500
グラップルで投入
発電施設
グラップルで投入
4t荷台箱型ダンプ
4t荷台箱型ダンプ
グラップル(5t)
4t荷台箱型ダンプ
4t荷台箱型ダンプ
グラップル(5t)
4tダンプ(フレコンパック)
4t荷台箱型ダンプ
グラップル(5t)
直接投入
自走式チッパー
ブラッシュチッパーBC1000
人力で投入
フレコンパック
チップ化後圧縮方式
枝葉のみチップ化・圧縮
枝葉以外の残渣
チッピングロータリープレス車
4t荷台箱型ダンプ
グラップル(5t)
4t荷台箱型ダンプ
グラップル(5t)
人力で投入
自走式チッパー
ブラッシュチッパーBC1000
プレスコンテナ
グラップル(5t)
人力で投入
図 8-2-1 5 方式 10 システムの人工林バイオマス供給システム構成
(2) コスト算出によるシステム間の検証
①
従来方式
グラップルで残渣を普通の状態の 4tトラックの荷台に積み込み、ロープで縛り付けて
残渣をそのまま発電施設へ運搬すると 8,749 円/tである。
表 8-2-1 従来方式によるコスト算出
区分
4tトラック
時間あたり生産量 生産量あたり経費
t/hr m3/hr
円/t 円/m3
1.39
4.69
8,749
2,591
② 荷台箱型方式
荷台箱型の 4t トラック及び 4t ダンプはグラップルを使用して残渣をそのまま積み込み、
グラップル付き荷台箱型トラックは装備されたグラップルを使用して積み込む場合のコ
77
スト算出結果を表 8-2-2 に示す。4t 荷台箱型ダンプが 4,327 円/tと安価であった。
そこで、次項以降の検証で 4t 車両を使用する場合は、4t 荷台箱型ダンプデータを主に
用いることとした。
表 8-2-2 荷台箱型方式によるコスト算出
時間あたり生産量 生産量あたり経費
t/hr m3/hr
円/t 円/m3
4t荷台箱型トラック+グラップル
2.23
7.54
5,461
1,617
4t荷台箱型トラックグラップル付き
2.35
7.95
5,291
1,567
4t荷台箱型ダンプ+グラップル
2.50
8.43
4,327
1,281
区分
③ 圧縮方式
荷台箱型に圧縮装置を付けたプレスダンプのコスト算出結果を表 8-2-3 に示す。このプ
レスダンプは試作機であったため、圧縮効果は高くなかった。圧縮機能が向上すればプ
レスダンプが最も低コストになる可能性がある。
表 8-2-3 圧縮方式のコスト算出
区分
プレスダンプ
時間あたり生産量 生産量あたり経費
t/hr m3/hr
円/t 円/m3
2.38
8.04
5,278
1,563
④ チップ化方式
枝葉をチッパーで破砕し、枝葉以外の残渣はチップ化せずに 4t 箱型ダンプで運搬する。
チップは、チッパーから箱型ダンプに直接投入するか、フレコンパックに詰めてトラック
で運搬する。この機械組合せの違う 3 システムのコスト算出結果を表 8-2-4 に示す。
チップ化コストは BC1000 の方が MC1500 より安価であった。チップ運搬方法はフレ
コンパックよりも荷台箱型の方が安価で 6,928 円/tであった。
表 8-2-4 チップ化方式によるコスト算出
時間あたり生産量 生産量あたり経費
t/hr m3/hr
円/t 円/m3
MC1500+グラップル+4t荷台箱型ダンプ 4t荷台箱型ダンプ+グラップル
1.59
5.36
9,007
2,667
BC1000+4t荷台箱型ダンプ
4t荷台箱型ダンプ+グラップル
1.67
5.65
6,928
2,052
BC1000+4tトラック(フレコンパック)
4t荷台箱型ダンプ+グラップル
1.51
5.11
7,584
2,246
枝葉のみチップ化
枝葉以外
⑤ チップ化後圧縮方式
チッパーを内蔵しているパッカー車(チッピングロータリープレス車)に枝葉を人力で
投入(破砕圧縮)し、運搬するシステムと、枝葉を人力でチッパーに投入、チッパーから
直接プレスコンテナに投入し、コンテナをアームロール車が装着して運搬するシステムの
コスト算出結果を表 8-2-5 に示す。
78
通常のチップの比重は 0.13、チッピングロータリープレス比重 0.22(0.60 倍)、プレス
コンテナ比重 0.15(0.73 倍)であり、チッピングロータリープレス車の圧縮率は高いが、
コストも 10,588 円/tと高価である。
表 8-2-5 チップ化後圧縮方式のコスト算出
残渣
枝葉
チッピングロータリープレス
BC1000+プレスコンテナ
枝葉以外
4t荷台箱型ダンプ+グラップル
4t荷台箱型ダンプ+グラップル
時間あたり生産量 生産量あたり経費
比重
t/hr m3/hr
円/t 円/m3
1.15
3.89
10,588
3,136 0.22
1.52
5.15
8,389
2,484 0.15
*チップ比重は通常0.13
⑥
チップ化、圧縮効果の検証
このチップ化と圧縮効果を検証するため、1ha あたりの積込と破砕の作業時間を図
8-2-2 に、積込と破砕の生産量当たり経費を図 8-2-3 に示し、圧縮方式、チップ化方式、
チップ化後圧縮方式の効果を検証する。
まず、圧縮方式であるが、機械仕様が「積込作業=圧縮作業」で、その他の余分なコ
ストがかかっていない。今後、圧縮装置の改良による圧縮率の向上で、低コストが可能
と考えられる。
次に、チップ化方式であるが、MC1500 は BC1000 と比較し、破砕作業時間は短いが
コストが高い。今後、安価で高性能なチッパーが開発される事により、作業時間が減少
しコストも下がると考えられる。
また、チップ化後圧縮方式では、機械仕様が「チップ化作業=圧縮作業」であり、高
い圧縮機能を持つチッピングロータリープレス車は破砕能力の向上により、低コスト化
が可能と考えられる。
チップ化とチップ化後圧縮方式の 5 システム中「BC1000+4t 荷台箱型トラック」が
6,928 円/tと安価であったが、荷台箱型方式、圧縮方式と比較しても高価である。チッ
プ化方式は、他の方式に比べ、破砕作業時間及びコストが高い。今回の実証試験では、
チップ化の機械は 3 方式しか使用していないため、以下のポイントで今後最適なチッパ
ーを検討する必要がある
◊
破砕能力が高い
◊
作業時間が短い
◊
機械価格が安価
今回の実証試験では、減容目的のみで嵩張る枝葉のみを対象としてチップ化を行った。
しかし、これらの結果から枝葉のみに限定したチップ化は作業時間、作業経費がかかり、
期待するほどの低コスト化につながらなかった。今後、発電施設等のバイオマス受け入
れ側がバイオマスをどのような仕様で受け入れるかを検討し、それに見合ったスタイル
でチップ化方式を再検討する必要がある。
79
積込
破砕
4t箱ダンプ
プレスダンプ
MC1500+グラップル+4t箱ダンプ
BC1000+4t箱ダンプ
BC1000+4tトラック(フレコンパック)+4t箱ダンプ
積込に圧縮も含む
チッピングロータリープレス+4t箱ダンプ
破砕に圧縮も含む
BC1000+プレスコンテナ+4t箱ダンプ
破砕に圧縮も含む
0
5
10
15
20
hr/ha
図 8-2-2 各システムの 1ha あたり積込・破砕作業時間
積込
破砕
4t箱ダンプ
プレスダンプ
MC1500+グラップル+4t箱ダンプ
BC1000+4t箱ダンプ
BC1000+4tトラック(フレコンパック)+4t箱ダンプ
積込に圧縮も含む
チッピングロータリープレス+4t箱ダンプ
破砕に圧縮も含む
BC1000+プレスコンテナ+4t箱ダンプ
破砕に圧縮も含む
0
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
円/t
図 8-2-3 各システムの積込・破砕作業の生産量あたり経費
80
8.2.3 作業条件を変更した場合のコストシミュレーション
作業条件の変更による低コスト化の検証を行うため、以下の 3 パターンでコスト算出
を行い、比較検証した。
①
◊
中継基地を設定し、中継基地からは 10t車で運搬する
◊
現場の作業道に 6t 車が入れる
◊
現場から全ての林業機械を引き上げており、別にグラップルを運搬する
中継基地を設定する場合
中継基地を 5km 地点に設定し、0∼5km 間を 4t箱型ダンプで運搬、中継基地で積み
替えて 5∼30km 間を 10t箱型ダンプで運搬すると想定しコスト算出した結果を表 8-2-6
に示す。
中継基地を設置した場合、5,044 円/tと高価であった。これは、中継基地における積
み替えの経費が高く、10t箱型ダンプに変えても運搬経費削減の効果がないためである。
表 8-2-6 中継基地がある場合のコスト算出
中継
有・無
4t荷台箱型ダンプ
無
4t荷台箱型ダンプ+10t荷台箱型ダンプ
有
区分
時間あたり生産量
t/hr
m3/hr
2.50
8.43
2.94
9.94
生産量あたり経費
円/t
円/m3
4,327
1,281
5,044
1,494
② 現場の作業道に 6tトラックが入れる場合
路網が整備され、6t 車両が現場まで入れる事を想定して、コスト算出した結果を表
8-2-7 に示す。仕様は箱型ダンプ及び箱型トラックグラップル付きとし、4t 車両と比較し
た。
それぞれ 4t 車両と比較して安価であり、特に 6t箱型ダンプは、4,020 円/tであっ
た。作業道を整備し、6t 車両が入れるようにすることにより低コスト化につながる。
表 8-2-7 現場に 6t 車が入れる場合のコスト算出
区分
4t荷台箱型トラックグラップル付き
6t荷台箱型トラックグラップル付き
4t荷台箱型ダンプ+グラップル
6t荷台箱型ダンプ+グラップル
時間あたり生産量 生産量あたり経費
t/hr m3/hr
円/t 円/m3
2.35
7.95
5,291
1,567
3.05
10.30
4,500
1,332
2.50
8.43
4,327
1,281
3.33
11.23
4,020
1,190
③ 現地に使用できるグラップルがなく、別にグラップルを用意する場合
これまでは、バイオマス収集を素材生産中もしくは直後に行うとして、素材生産に使
用するグラップルを使用するという前提であったが、バイオマス収集者が、素材生産者
と異なると仮定し、現場にグラップルを運搬する経費等を計上した。
「荷台箱型ダンプ+
81
グラップル」と「グラップル付き荷台箱型トラック」をそれぞれ 4t 車両と 6t 車両で比較
した。その結果を表 8-2-8 に示す。
4t車両の場合は、ダンプの方が約 9%低コストである。さらに、4t 車両でグラップル、
クレーン等が付いていない場合は、普通自動車の運転免許があれば運転できるメリット
がある。しかし、グラップル付きは、素材生産時のグラップルの作業工程を妨げること
はなく、かつ、自らのグラップルを使用するから機械、作業員の拘束時間、拘束数が少
なくて済むので現場の状況をみて判断する必要がある。
また、6t車両の場合は、グラップル付きの方が約 2%低コストである。同レベルのコ
ストであるが拘束時間等を考慮すれば、1人1台で作業が出来るグラップル付きの方に
汎用性がある。
表 8-2-8 バイオマス収集現場にグラップルを搬入して使用する場合のコスト算出
区分
4t荷台箱型トラックグラップル付き
4t荷台箱型ダンプ+グラップル
6t荷台箱型トラックグラップル付き
6t荷台箱型ダンプ+グラップル
時間あたり生産量 生産量あたり経費
t/hr m3/hr
円/t 円/m3
2.35
7.95
5,291
1,567
2.35
7.95
4,727
1,400
3.05
10.30
4,500
1,332
3.08
10.39
4,420
1,309
8.2.5 人工林における最適システム
これまでのことから、人工林における最適な森林バイオマス低コスト供給システムは、
荷台箱型方式の 4t 荷台箱型ダンプで、4,327 円/tである。圧縮方式はまだ開発途中で
あるが、期待が持てる。しかし、嵩張る枝葉のみを減容化するチップ化方式及びチップ
化後圧縮方式は、他の方式に比べ高価であり、再検討の必要がある。
そこで、荷台箱型方式で作業条件を変更した場合の最適システムを検証したが、6t 車
両が通行可能な路網がある場合、6t 車両に変更することにより低コスト化が図れる。
以上の結果から、人工林の最適な森林バイオマス低コスト供給システムを荷台箱型方
式の「荷台箱型ダンプ+グラップル」とした(表 8-2-9)。
表 8-2-9 最適システムのコスト算出結果
方式区分
区分
荷台箱型方式
荷台箱型方式
4t荷台箱型ダンプ+グラップル
6t荷台箱型ダンプ+グラップル
82
時間あたり生産量 生産量あたり経費
t/hr m3/hr
円/t 円/m3
2.50
8.43
4,327
1,281
3.33
11.23
4,020
1,190
8.3 竹林における森林バイオマス低コスト供給システムの検証
8.3.1 竹林における森林バイオマス低コスト供給システムの考え方
実証試験では皆伐区(0.11ha、5,600 本/ha)と混交区(0.08ha、4,450 本/ha、竹混交
率 77.7%)において「伐採集材工程調査」を行った。
全竹集材後は「造材チップ化搬出工程調査」を実施し、モウソウチクをそのままチッ
プ化する「全竹チップ化工程調査」、4m 単位で枝付き部まで短稈造材し、短稈はそのま
ま、枝付き部はチップ化する「短稈造材枝条チップ化工程調査」を実施した。
また、本作業システムにおいてモウソウチクのスイングヤーダ・グラップルを使用し
た集材・造材作業についてはまったくノウハウがなく、作業員も初心者が多かったため、
現場データはそのまま活用できない。
そこで、コストシミュレーションを活用し、統一条件下、適正な作業数値の基で、そ
れぞれの作業システムについてコスト比較を行い検証することとした。コストシミュレ
ーションの統一条件として、平成 15 年度 FS 調査の条件に極力あわせ、作業条件は以下
のとおりとした。
◊
作業面積は 1ha のモウソウチク放置竹林
◊
作業内容は伐採から発電施設への運搬まで
◊
伐採本数はモウソウチク 10,000 本
◊
含水率は短稈 66.0%、枝条 61.8%
◊
竹バイオマス量は全竹で 434.6t、1,232 ㎥、短稈で 249.3t、667.3 ㎥
◊
作業員は 3 名
◊
チップはフレコンパックに直接投入し運搬
◊
短稈は 20 本単位で番線を用いて結束
◊
山土場から発電施設までの運搬距離は 30km、途中中継基地を設ける場合は山土
場から中継基地まで 5km。中継基地から発電施設まで 25km
◊
コスト算出は全て生重量ベース
また、作業条件・機械条件等は以下のとおりとした。
◊
伐採・造材は竹伐り用チェンソー
◊
枝払いはナタ
◊
集材はスイングヤーダ(5t クラス)
◊
集材補助・造材補助はグラップル(5t クラス)
◊
運搬はクレーン付きトラック(4t クラス)
◊
トラックへの積込はトラックに装備されているクレーン
◊
発電施設での積降はフォークリフト
8.3.2 実証試験現場実測データによるコスト算出
まず、実証試験では作業員は 5 名であったため、前項の条件のうち作業員数を 5 名に
83
変更し、実際の計測値データを使用しコストを算出した。その結果を表 8-3-1 に示す。
生産量あたり経費が 27,238 円/t と FS 調査時の理想値 16,490 円/t と比較して高い。
これは、実証試験では森林作業に熟練した作業員が一人だけで、残りはほとんど初心者
という状況で、一人あたりの生産性も低かった。また実作業時間も一日約 4 時間と短か
った。また、作業システム自体も初めての取り組みであったため、最初の作業指示の効
率が悪く、作業途中に作業内容を修正しながら作業を行ったためである。
表 8-3-1 現地実測データによるコスト算出
区分
実証試験現地実測データ
時間あたり生産量
t/hr
m3/hr
0.69
1.96
生産量あたり経費
円/t
円/m3
27,238
9,609
8.3.3 竹バイオマス低コスト供給システムの検討
(3)
作業データの修正
現地実測値の作業データでは作業者に初心者が多いため、検証には過小評価と考えら
れる。そこで、作業者の熟練度向上を考慮して実証試験データの各作業データを修正し
た。また、実作業時間を 4 時間から 6 時間へ変更した。
(4)
皆伐区と混交区の比較
竹のバイオマス低コスト供給システムは、
「伐採・集材工程」と「バイオマス収集工程」
に分けることができる。
「伐採・集材工程」として「皆伐区」と「混交区」のコスト比較
を同じ 1ha での作業条件と想定してコスト算出した結果を表 8-3-2 に示す。
「皆伐区」と「混交区」は約 2 倍の差がある。これは「混交区」は伐採時・集材時に
立木に掛かってロスが大きい事が主な理由である。ただし、混交率や立木の樹冠状況な
ど不確定要素が大きく、2 倍という数値が妥当であるとは言えない。そこで、次項以降の
「伐採・集材工程」は「皆伐区」データを用いてコスト算出することとする。
表 8-3-2 現地実測データによるコスト算出
区分
皆伐区
混交区
(5)
伐採経費 集材経費
円
円
432,667 1,854,167
865,333 3,711,458
その他
円
27,124
34,001
総経費
円
2,313,958
4,610,792
総作業時間
hr
214
427
3つの竹バイオマス供給システムによる検討
モウソウチクをバイオマス供給するシステムとして、実証試験では「全竹チップ化シ
ステム」と「短稈造材枝条チップ化システム」を試験したが、FS 調査時には「全竹チッ
プ化システム」と短稈収集システムを比較検討していることから、「短稈収集システム」
も加え、3つのシステムを検証することとした。
84
以下が各システムの違いで、図 8-3-1 が作業システムの構成を示す。
伐採集材、運搬は統一作業として各システムに含む
①全竹チップ化システム:全竹集材後山土場で全竹をチップ化する。
②短稈造材枝条チップ化システム:全竹集材後、山土場で 4m 単位に枝付き部まで造
材、短稈は短稈のまま運搬。枝条はチップ化する。
③短稈収集システム:全竹集材後、山土場で 4m 単位に枝付き部まで造材、短稈部の
み運搬する。枝条は枝払い後、山土場に棚積みする。
集材・チップ化補助
チップ化
グラップル
5tクラス
BG1000
運搬
クレーン付き
4tトラック
全竹チップ化システム
集材・造材補助
チェンソー
チェンソー
集材
スイングヤーダ
5tクラス
4m短稈
枝条
伐採
運搬
造材
短稈造材枝条
チップ化システム
集材・造材補助
グラップル
5tクラス
チップ化
BG1000
運搬
クレーン付き
4tトラック
運搬
造材
4m短稈
枝条
チェンソー
短稈収集システム
クレーン付き
4tトラック
発電施設
グラップル
5tクラス
クレーン付き
4tトラック
枝払い・棚積み
ナタ
図 8-3-1 3つの竹バイオマス供給システム構成
(6)
コスト算出によるシステム間の検証
前項の 3 システムについて、修正作業データ及び皆伐区データによる伐採から運搬ま
でのコスト算出を行った。その結果を表 8-3-3 に示す。また、3 システム毎のコスト比を
図 8-3-2 に示す。
この結果から、短稈造材枝条チップ化システムが 14,593 円/t と最も安価で、全竹チ
ップ化システムが 16,380 円/t と続き、いずれも FS 調査時の理想値 16,490 円/t を下
回った。しかし、短稈収集システムは 21,690 円/t と高い。これにはチップ化経費が含
まれていないが、
「枝払い、棚積み」の作業時間が全体の 47%、作業経費が全体の 29%を
占いるだけでなく、枝条を運び出さないため生産量が 434.6t から 249.3t へ減少したため
である。
85
表 8-3-3 3 システムのコスト算出
時間あたり生産量 生産量あたり経費
t/hr
m3/hr
円/t
円/m3
全竹チップ化システム
0.71
2.03
16,380
5,778
短稈造材枝条チップ化システム
0.75
2.12
14,593
5,148
短稈収集システム
0.34
0.91
21,690
8,104
区分
生産量
t
m3
434.6 1232.0
434.6 1232.0
249.3 667.3
伐採
40
%
35
全竹チップ化システム
30
その他
集材
短稈造材枝条チップ
化システム
短稈収集システム
25
20
15
10
5
0
積降
造材・枝払い
運搬
破砕
積込
図 8-3-2 3 システムの作業詳細別コスト比
3 システム毎の作業詳細別コスト比を検証すると、3 システムともに集材及び運搬の割
合が多い。集材についてはスイングヤーダを使用してのモウソウチクの全竹集材という
作業システムは本県では初めての取り組みであり、ノウハウがなかったため今後作業マ
ニュアルを整理することにより集材については効率化し改善されると考える。また、運
搬については、バイオマスの納入仕様が
◊
チップはフレコンパック
◊
短稈は番線で結束
という条件で、運搬手段も 4t トラックであったため、これらを改善することにより低
コスト化が図れると考えられる。
例えば、バイオマスの納入仕様を
◊
チップを人工林の実証試験で使用した箱型ダンプ、プレスコンテナに直接投入
◊
短稈は荷台箱型ダンプにグラップルで積込
86
に変更することにより作業時間の大幅な減少が考えられる。またはトラックの大型化
等で輸送手段の低コスト化が可能と考えられる。
(7)
輸送手段の変更による検証
そこで、各 3 システムの運搬条件を山土場から 5km 先の中継基地までを 4t トラック
で運搬、中継基地でフォークリフトを使用し 10t トラックへ積み替え、中継基地から 25km
先の発電施設まで運搬するという条件に変更し、コスト算出をした。その結果を表 8-3-4
に示す。
なお、フレコンパックから箱型トラックへ変更等のバイオマス納入仕様変更について
は、実測データがないため今回は検討しない。
コスト算出の結果、短稈造材枝条チップ化システムの生産量あたり経費が 202 円/t、
短稈収集システムが 468 円/t と若干減少しただけで、全竹チップ化システムについては
上昇した。
これは表 8-3-5 のとおり、中継基地の積み替え作業のコスト比が全体の 5.8∼8.5%を占
めるため、10t トラック使用による低コスト化効果が減少するためである。
表 8-3-4 運搬方法を変更した 3 システムのコスト算出
区分
全竹チップ化システム
短稈造材枝条チップ化システム
短稈収集システム
中継
有・無
無
有
無
有
無
有
時間あたり生産量
t/hr
m3/hr
0.71
2.03
0.74
2.10
0.75
2.12
0.79
2.23
0.34
0.91
0.35
0.93
生産量あたり経費
円/t
円/m3
16,380
5,778
16,431
5,796
14,593
5,148
14,391
5,077
21,690
8,104
21,222
7,930
*中継無は4tトラックで発電施設まで運搬
*中継有は4tトラックで中継基地まで運搬、中継基地からは10tトラックで25km先の発電施設まで運搬
表 8-3-5 運搬方法を変更分作業工程の経費及びコスト比
区分
全竹チップ化システム
短稈造材枝条チップ化システム
短稈収集システム
中継
有・無
無
有
無
有
無
有
中継基地経費
経費
コスト比
0
0.0%
501,968
7.1%
0
0.0%
531,511
8.5%
0
0.0%
307,893
5.8%
輸送費
経費
コスト比
1,730,452
24.3%
1,229,886
17.2%
1,708,242
26.9%
1,111,485
17.8%
910,126
16.8%
527,110
10.0%
合計
経費
コスト比
1,730,452
24.3%
1,731,854
24.3%
1,708,242
26.9%
1,642,996
26.3%
910,126
16.8%
835,003
15.8%
*中継基地経費は積降、積込作業経費
*輸送費は、中継無が発電施設30kmを4tトラックの運搬経費
*輸送費は、中継有が中継基地5kmを4tトラック、発電施設25kmを10tトラックの運搬経費
(8)
最適条件でのコスト算出による検証
これまでの結果から、最適なシステムとして安価で大量供給が見込まれる「全竹チッ
87
プ化システム」と「短稈造材枝条チップ化システム」とした。
また、検証中に明らかになった点で、以下の条件を改善してコスト算出を行った。
◊
作業システムのマニュアル化、普及により作業効率が 1 割向上
◊
チップを 4t 荷台箱型ダンプにチッパーから直接投入
◊
短稈は 4t 荷台箱型ダンプにグラップルで積込
◊
発電施設での積降作業はダンプで一気に積降
この結果、「全竹チップ化システム」で 11,850 円/t、「短稈造材枝条チップ化システ
ム」で 10,586 円/tまでコストダウンができる。
表 8-3-6 最適条件によるコスト算出
時間あたり生産量 生産量あたり経費
t/hr
m3/hr
円/t
円/m3
全竹チップ化システム
1.07
3.04
11,850
4,180
短稈造材枝条チップ化システム
1.11
3.14
10,586
3,735
区分
88
生産量
t
m3
434.6 1232.0
434.6 1232.0
8.4
山口方式による森林バイオマス低コスト供給システムの構築に向けて
これまでのことから、人工林列状間伐地で利用間伐後に路網上に残渣が分散集積され
ている状態での最適な森林バイオマス低コスト供給システムを荷台箱型方式とし(図
8-4-1)、供給コストを 4000 円/t台に、竹林における最適な森林バイオマス低コスト供
給システムを「全竹チップ化システム」と「短稈造材枝条チップ化システム」とし(図
8-4-2)、供給コストを 10,000 円/t台とした。システム毎のコストを表 8-4-1 に、コス
ト内訳を図 8-4-3 に示す。
素材生産システム
チェンソー
集材
造材・分別集積
スイングヤーダ
7tクラス
プロセッサ
7tクラス
残渣
運搬
グラップル
5tクラス
4tトラック
積込
運搬
グラップル
5tクラス
荷台箱型6tダンプ
荷台箱型4tダンプ
発電施設
バイオマス供給システム
荷台箱型方式
積込
素材
木材市場
伐採
図 8-4-1 最適な人工林路網分散型バイオマス低コスト供給システム
全竹チップ化システム
チェンソー
チップ化
グラップル
5tクラス
直接投入
BG1000
運搬
荷台箱型
4tダンプ
集材
スイングヤーダ
5tクラス
集材・造材補助
グラップル
5tクラス
造材
チェンソー
4m短稈
積込
運搬
グラップル
5tクラス
荷台箱型
4tダンプ
短稈造材枝条チップ化システム
枝条
チップ化
直接投入
BG1000
発電施設
伐採
集材・チップ化補助
運搬
荷台箱型
4tダンプ
図 8-4-2 最適な竹林バイオマス低コスト供給システム
表 8-4-1 最適なシステム毎の供給コスト算出結果
時間あたり生産量 生産量あたり経費
t/hr
m3/hr
円/t
円/m3
4t荷台箱型ダンプ+グラップル
2.50
8.43
4,327
1,281
6t荷台箱型ダンプ+グラップル
3.33
11.23
4,020
1,190
全竹チップ化システム
1.07
3.04
11,850
4,180
短稈造材枝条チップ化システム
1.11
3.14
10,586
3,735
区分
人工林
竹林
生産量
t
m3
41.2 139.1
41.2 139.1
434.6 1232.0
434.6 1232.0
*人工林路網分散型バイオマス低コスト供給システムは、スギ・ヒノキ40年生列状間伐地の利用間伐後、路網上に分散
集積した残渣の収集から30km先の発電施設までの輸送へのコスト
*竹林バイオマス低コスト供給システムは、1ha(10,000本/ha)のモウソウチク林の伐採から30km先の発電施設への輸
送までのコスト
89
円/t
14000
12000
その他
積降
運搬
積込
破砕
造材
集材
伐採
10000
8000
6000
4000
2000
0
4t箱ダンプ
6t箱ダンプ
全竹チップ
人工林路網上分散型バイオマス低コスト供給システム
竹枝条チップ
竹林バイオマス低コスト供給システム
*人工林路網分散型バイオマス低コスト供給システムは、スギ・ヒノキ40年生列状間伐地の利用間伐後、路
網上に分散集積した残渣の収集から30km先の発電施設までの輸送へのコスト
*竹林バイオマス低コスト供給システムは、1ha(10,000本/ha)のモウソウチク林の伐採から30km先の発
電施設への輸送までのコスト
図 8-4-3 最適な森林バイオマス低コスト供給システム毎のコスト内訳
しかし、これらは主に現状の林業機械を使用した場合であり、今後バイオマス供給用
の機械が開発されることにより、さらに低コスト化が期待できる。また、今回実証した
システムは、山からの低コスト供給のみに着目したシステムであり、バイオマス需要側
のバイオマス納入ニーズ(チップ等バイオマス形状、含水率等)に沿ったシステムでは
ない。そこで、今後バイオマス需要側とこれらについて協議を進める必要がある。
最後に、山口方式による森林バイオマス低コスト供給システムの今後の課題として以
下に整理した。
① 路網整備
② 作業土場の確保
③ 適正規模の機械配置
④ 適正な粉砕機、圧縮機等バイオマス供給専用機械の開発
⑤ 圧縮率の向上(枝葉の圧縮、チップの圧縮、枝葉の圧縮結束等の機械開発)
⑥ 作業マニュアルの整備
⑦ バイオマス納入仕様の決定
⑧ 天然乾燥等による残渣の軽量化及び含水率の低下
⑨ 各支援システムの改善及び精度向上
90
【お問い合わせ先】
山口県農林部林政課
〒753-8501 山口市滝町1−1
TEL
083(933)3470
FAX
083(933)3479
E-mail [email protected]
URL
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp
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