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建築空間の生命化を目指した構造ヘルスモニタリング

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建築空間の生命化を目指した構造ヘルスモニタリング
建築空間の生命化を目指した構造ヘルスモニタリング用データベースに関する研究
正会員
同
構造ヘルスモニタリング
センサネットワーク
データベース
PostgreSQL
修一*
彰**
システム同定
PHP
1.背景
構造ヘルスモニタリング(SHM)と呼ばれる研究は多様化
し,着実な進展がみられる.実構造物への SHM 適用事例
も増加傾向にあるが,複数の建物に対応した SHM システ
ムはまだ確立されていない.
また,2005 年に起こった耐震強度偽装事件により,建
物ユーザの建物に対する不安は増大した.この事件をき
っかけとして,建物性能の開示についての関心も高まっ
ている.しかし,建物性能の開示を行っても,その方法
が専門的であると,一般の人々には理解されにくい.ユ
ーザの理解と信頼が得られるような品質保証の技術とし
ての SHM が求められている.
このような背景のもと本研究では,複数の建物を対象
とした SHM システムであるネットワーク対応モニタリン
グシステムの確立を目指す第一歩として,データベース
に関する研究を行った.本システムはさらに先の目標で
ある建築空間の生命化への活用も視野に入れたものであ
る.
2.ネットワーク対応モニタリングシステム
ネットワーク対応モニタリングシステムとはセンサに
より取得されたデータをサーバで一括して管理すること
により,ユーザが利用したい時にインターネットを使用
し,診断結果をいつでもみることができるシステムであ
る.従って,このシステムではユーザはセンサを設置し
て,データを転送するだけでいつでもどこでも耐震診断
を行うことができる.このシステムの概念を図 2.1 に示
す.このシステムでは,診断に必要な信号処理,システ
ム同定や損傷検知などの専門的な処理を全てサーバ側で
対応するので,ユーザ側は SHM の専門的な知識や MATLAB
などのプログラミングの知識を必要としない.また,三
田研究室で開発したセンサシステムを使用すれば,最小
限の設定でデータをサーバ(データベース)に転送するこ
とができる.
図 2.2 のようにデータ選択時に全データが表示されるた
め,入出力データの選択が困難で,どこのセンサのデー
タなのか分かりにくいという点である.さらに,メタデ
ータが有効活用できていないため,データ検索が困難で
あった.本研究では,これらの問題点を解決し,新たな
SHM システムの構築を提案する.
図 2.2:データ選択時の画面
3.MATLAB Web Server
本システムでは解析結果を公開するために,数値解析
ソフト MATLAB 及び MATLAB をベースにした Web アプリケ
ーションの MATLAB Web Server を使用する.MATLAB Web
Server のアプリケーションは M-file,HTML による入力フ
ォーム,出力フォーム,そしてグラフィクスから構成さ
れる.「入力フォームからのデータの受け取り」と「出力用
HTML への結果の返送」を指示するコードを追記するのみで,
M-file に特別な修正を加える必要はない.
MATLAB アプリケーションはサーバマシン上でのみ動作
するので,クライアントマシンで MATLAB を起動させる必
要はない.従って,MATLAB に関する知識がなくとも,ユ
ーザはブラウザが動作しているクライアントマシンで,
アプリケーションに対して対話的な処理が可能となる.
Initial
HTML Form
Generated
HTML Form
user A
mitalab
building N
user N
図 2.1:モニタリングシステムの概念図
これまで開発してきたネットワーク対応モニタリング
システムには課題があった.一つ目は,建物ごとにプロ
グラムを作成しているため,データを統一的に扱えず,
建物同士の相対的な比較が困難な点である.二つ目は,
Structural Health Monitoring Database for Biofication of
Living Spaces
http daemon
matweb
User 1
matlabserver
Graphics
MATLAB
Initial
HTML Form
User 2
building A
○小川
三田
Server
M-files Data
Generated
HTML Form
図 3.1:MATLAB Web Server
4.データベースの導入
本研究では,これまでのシステムの課題を改善するた
め に , デ ー タ ベ ー ス (PostgreSQL:Structured Query
Language)と PHP(Hypertext Preprocessor)を使用する.
データベースでメタデータを含めた全てのデータを一括
して管理し,PHP と SQL により必要なデータを検索する.
データベースから任意のメタデータを用いて情報を引き
出すことで,Web ページが動的になり,一つのプログラム
で全ての建物に対応可能となった.これにより,建物同
士の相対的な比較が可能となる.
4.1 PostgreSQL
PostgreSQL と は , 本 研 究 で 使 用 す る Relational
OGAWA Shuichi, MITA Akira
Database(RDB)のことである.PostgreSQL は無償のデータ
ベースでありながら,データベースの標準言語である SQL
をサポートしており,数千万規模のデータを扱うことが
できる.また,マルチプラットホームであることや多彩
なプログラミングインターフェイスをサポートしている
など,有償のデータベースに匹敵する性能を持っている.
4.2 PHP
PHP は Web アプリケーション開発のためのスクリプト言
語であり,Web ページを時刻や利用者に応じて変化させる
ための仕組みである.PHP は HTML に組み込んで記述でき
る組込型スクリプト言語であるため,Perl より動作が速
い利点がある.
図 4.1 は本研究の SHM システムの全体像である.
図 5.1:本システムを使用した Web サイト
SHMsystem
Sensing Platform
Sensor Network
Data Acquisition
Sensor Management System
MATLAB
Web Server
Database
Web
Apache
PHP
(PostgreSQL)
図 4.1:本研究で提案する SHM システムの全体像
5.データ抽出アルゴリズム
データ抽出を迅速にするために PHP と SQL によるプロ
グラムを作成した.データベース内のメタデータを Web
ブラウザで随時選択していくことにより,解析したいデ
ータを抽出することを可能にした.選択項目は図 5.1 に
ある通り,建物名,日付,入出力データの階-方向である.
これら全ての情報を選択することにより,入出力データ
を特定でき,さまざまな解析を行うことが可能となる.
ここで重要なことは,項目を選択するごとにデータ範囲
を絞っている点である.つまり,選択された条件に合わ
ないものは次の項目選択時に除外されている.
Non-parametric 同定をした時の解析結果の一例を図 5.2
に示した.これは入出力データ,伝達関数,パワースペ
クトル密度,コヒーレンス関数である.
6.結論
データベースと PHP の利用で,解析に必要な情報を順
番に選択していくことで,ユーザは容易にデータを特定
し,解析を行うことが可能になった.また,メタデータ
を有効的に活用することで建物ごとにプログラムを作成
する必要がなくなり,建物同士の相対的な比較が可能と
なった.これにより,システムの汎用性が向上し,ユー
ザに対する利便性も向上した.
本研究では,データベースを使用することで,既存の
システムの問題点を克服し,新たな SHM システムの提案
をした.今後さらに本システムを建築空間の生命化に活
用していく予定である.
7.参考文献
[1] 稲村俊映,岩澤脩,三田彰:MATLAB を用いた建築
物のヘルスモニタリングシステム 2006 年度日本建築学
会大会学術講演梗概集(B-2),pp.887-888,2006 年 9 月
[2]吉川史郎,岩澤脩,三田彰:ヘルスモニタリングのた
めのセンサネットワーク自動管理に関する研究 2006 年
度日本建築学会大会学術講演梗概集(B-2),pp.869-870,
2006 年 9 月
*慶應義塾大学大学院 大学院生
**慶應義塾大学理工学部教授(Ph. D.)
図 5.2:本システムを使用した解析結果の一例
* Graduate Student, Keio University
** Prof., Keio University,Ph.D.
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