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ペーパーレス電子カルテPDF 2012/03/10掲載

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ペーパーレス電子カルテPDF 2012/03/10掲載
開発したペーパーレス電子カルテの特徴と標準化データベースへ
の提案
奈良市
耳鼻咽喉科
鈴木 医院
鈴木 湛
電子カルテ自作の動機
1. 既 存 の レ セ コ ン は 高 価 過 ぎ る 。
2. 折 角 の レ セ コ ン を 導 入 し て も 人 件 費 の 節 約 に な る ど こ ろ か 、 か え っ て 浪
費に繋がる。
入 力 に 人 手 が か か る 。 手 書 き な ら Dr が 診 療 中 に 可 能 な の
に……
3. デ ー タ は レ セ プ ト 請 求 以 外 何 の 診 療 の 役 に た た な い 。
4. 又 既 存 の 電 子 カ ル テ は 手 間 暇 か け て 入 力 し て も 、 や は り デ ー タ の 垂 れ 流
しであり、統計処理や抽出機能も無い。その上入力がレセプト請求の役
には立たない。
5. メ ン テ ナ ン ス に 費 用 が か か り す ぎ る 。
6. フ ロ ッ ピ ー で レ セ プ ト 請 求 可 能 の 時 代 が や っ て き た 。
7. カ ル テ の ハ ー ド コ ピ ー で の 保 存 の 必 要 性 が 無 く な る 法 政 化 が 行 わ れ た 。
8. デ ー タ が 最 初 に 導 入 し た ソ フ ト に 独 占 さ れ て し ま う 。 メ ー カ ー は デ ー
タをユーザのものであるとは考えていない。この事は非常に重大で一端
導入したメーカーから縁を切る事が出来ない。
9. 原 因 は 、 ほ と ん ど の 既 存 の 電 子 カ ル テ は 、 プ ロ グ ラ マ ー 主 導 で 、 作 ら れ
ているからである。そこで医側主導で、電子カルテを作ったらどうなる
であろうかとの考えから今回自分で開発した。
電子カルテの構想と機能
1. 人 件 費 が 節 約 出 来 る よ う に 設 計 す る 。
そのためレセプト機能を持つ事
は当然であり、カルテ入力時レセプトも入力出来るシステムとした。ま
た窓口での作業は新患登録と受付、レシート発行だけ、会計計算は電子
カルテが行い一人で充分こなせるようにした。そこでの余剰人員をカル
テ 入 力 に 回 す と 、 Dr が カ ル テ 入 力 に 追 わ れ て 患 者 の 顔 も ろ く に 見 な い と
言う弊害を解消出来ると考えた。
-1-
受付画面
2.度重なる法改正に対して出来るだけユーザ自身が簡単にロジックや保
険点数を交換出来るようにする。
プログラマーに世話になるのを出来る限り避けようと考えた。診療報酬
情報提供サービスのホームページを利用させて頂き、一度に大量のデ
ータを交換出来るシステムとした。
-2-
診療報酬情報提供からデータの取り込み
3 . 入 力 画 面 は SDI(Single Document Interface)形 式 を 採 用 し て メ ニ ュ ー バ ー を
撤廃し、すべての操作を画面上の処理の名前を記述したボタンを選択す
ることで可能になるようにした。こうすることで1つの画面内の操作が
限定されてイメージを捉えやすくなり、ボタンにかかれている文字情報
から画面の展開を覚えやすくなった。この事はワコムタブレットの操作
性も良くしていると考えている。
2. 様 々 の 項 目 に コ ー ド No を 持 ち 、 後 日 の 統 計 な ど の 処 理 に 答 え ら れ る よ
うにする。
データの垂れ流しはつまらない。ワープロ入力は極力少な
くして、あらかじめユーザが自分でマスター登録して用意したリストか
らクリックダウンする方法で入力する。 ワープロが下手でも入力は簡
単 に す る 。こ う す る こ と に よ っ て 将 来 の バ ー ジ ョ ン ア ッ プ( 統 計 処 理 等 )
が可能になる。
-3-
診 療 録 記 録 画 面 (ス コ ア 型 )
3. 投 薬 、 処 置 、 検 査 、 診 療 行 為 な ど の セ ッ ト 入 力 も 可 能 に し た 。 セ ッ ト の
組み合わせもユ-ザが設定出来るように考えた。又保険制度のロジック
が多少変わっても簡単に修正出来るようにした。
-4-
セット入力作成画面
4. 入 力 ミ ス や 診 療 ミ ス も 少 な く す る 。 例 え ば 患 者 登 録 で は 、 同 姓 同 名 チ ェ
ッ ク 、保 険 番 号 の 桁 数 、文 字 の 種 類 に も エ ラ ー メ ッ セ イ ジ が 、投 薬 で は 、
組み合わせ不適合薬剤、不適当病名、薬剤適応症の表示が出来かつ後者
のメッセイジはユ-ザ-の都合、医学情報の変化に合わせてユ-ザ登録
出来ることにした。
5. 信 頼 で き る デ ー タ ベ ー ス ソ フ ト は 高 価 で あ る 。 そ こ で 無 料 の MSDE
(Microsoft Databace Engine)と mdb(Multimedia Databace format)を 利 用 し た 。
MSDE か ら mdb に 出 力 す る こ と は 可 能 で あ る か ら 数 ヶ 月 分 を 出 力 し 、 電
子カルテはこのデータベースにも対応することとした。これは、データ
ベ ー ス を ノ ー ト PC や モ バ イ ル で 持 ち 出 す こ と が で き 、 自 宅 や 旅 行 先 で
の応診対応を可能にするためである。この電子カルテは両方のデータベ
ー ス に 対 応 し て い る 。こ の 事 は デ ー タ の 保 存 性 の 向 上 に も 貢 献 し て い る 。
( 災 害 に 対 し て デ ー タ の 保 全 ) MSDE は 簡 単 に 上 級 の SQL デ ー タ ベ ー ス
にバージョンアップ出来るので、システムが病院用に開発が進んでも直
ぐ対応する事が出来る。
-5-
データベースソフトの応用
6. 入 力 方 式 : 上 記 の ス コ ア 型 以 外 に 自 由 記 載 が 出 来 る 画 面 を 設 け ワ ー プ ロ
入 力 以 外 に 文 書 の 音 声 入 力 も 可 能 に し た 。 IBM VIAVOICE V.10 VIAVOICEI
用医療用辞書を組み込んで文字変換精度の向上を計った。予め用意した
定型文を呼び出して編集する事も出来るようにした。もちろん定型文は
ユーザが自身でマスター登録できる。
7. 患 者 登 録 画 面 は 、 磁 気 媒 体 の レ セ プ ト が ス ム ー ス に 作 れ る よ う に 、 入 力
項目の辞書設定、入力ミスを防ぐためのメッセイジの表示、患者検索機
能、領収書発行機能も備えている。
-6-
来院者登録画面から支払額を表示
8. 処 方 箋 入 力 も ク リ ッ ク ダ ウ ン し て 行 う こ と で 、 ミ ス 入 力 を 防 ぎ や す く な
った。投薬の禁忌、飲み合わせ不適合もユーザーの必要と、医療状況の
変化に応じてユーザー登録する事によって、処方画面に表示するように
した。
-7-
処方箋入力
9. 画 像 登 録 : 写 真 画 像 の 取 得 、手 書 き 、テ ン プ レ ー ト か ら の 図 に 追 記 記 載 、
白紙画面を用意してあるのでワコムタブレットを用いて手書き文字入力
も可能である。
-8-
画像登録
10. グ ラ フ 機 能 : 耳 鼻 咽 喉 科 医 に と っ て 電 子 カ ル テ を ペ ー パ ー レ ス で 運 用
するためにオージオグラムの記載は必須である。画像として取り込みは
時間がかかるので是非とも必要と考えた。この機能は眼科視野測定や麻
酔科の麻酔経過用紙、看護記録の熱記録表にも利用できる。グラフはユ
ーザが自分必要な形式を作成しマスター登録して診療録から呼び出して
使用する。もちろん計算式も登録しておけば(平均聴力4分法、或いは
平均体温、平均血圧など)これを計算表示する。入力はマウスでプロッ
トするだけであるから、手書きより速い。
-9-
グラフ機能
グラフ機能
オージオグラム
スピーチオージオグラム
- 10 -
11. 音 声 記 録 : は コ ン ピ ュ ー タ ー の マ イ ク 入 力 で 行 う 。 音 声 波 形 が 表 示 出
来るので、これを X 軸、Y 軸に拡大表示させれば、波形からの診断の研
究の可能性を期待できる。電子聴診器を使えば心音図も記録できる事に
な る 。 一 時 間 の 録 音 を 1.5M に 圧 縮 出 来 た の で 、 精 神 科 の 音 声 カ ル テ に も
利用し保存してもデータベースに負担を与えることは無い。
音声記録
音声波形
12. 電 子 書 庫 : 診 療 用 の デ ー タ を 格 納 し て 、 診 療 時 必 要 な 時 デ ー タ を 表 示
し て 利 用 す る 。 Word、 Excel、 PowerPoint、 な ど の フ ァ イ ル が 保 存 で き る の
で、著者はインフォームドコンセントの為のデータ、薬剤の体重換算表
を保存して必要に応じて表示使用している。
- 11 -
電子書庫
13. デ ー タ ベ ー ス の 一 元 化 : 安 価 な ソ フ ト 供 給 が 出 来 る 為 と 安 価 な ハ ー ド
ウエアーの構築を可能にしている。画像、音声、グラフ、電子書庫に登
録するデータ圧縮加工の技術を開発することで可能にした。データベー
ス の 多 元 化 に よ る 高 コ ス ト を 回 避 で き 、ソ フ ト の 乗 り 換 え も 簡 単 に な る 。
またバックアップ作業の単純化、データの保存性の向上にも繋がる。
14. 標 準 化 デ ー タ ベ ー ス の 提 案 : デ ー タ ベ ー ス の 一 元 化 は 多 元 デ ー タ ベ ー
ス に 比 べ メ リ ッ ト が 多 い 。 日 医 提 供 の レ セ コ ン ORCA シ ス テ ム と 連 動 の
電 子 カ ル テ は 二 元 化 を 避 け ら れ な い 。 ORCA が バ ー ジ ョ ン ア ッ プ す れ ば
連動する電子カルテのバージョンアップが必要になり、高コストになる
と予想する。一元化データベースの欠点(画面表示遅くなる)も圧縮技
術の開発で克服したので、充分利用価値があるデータベース構築方法と
考える。
- 12 -
一
元化した標準化データベースの提案
15. 開 発 言 語 は VB,VC++で あ る 。
電子カルテを制作しながら思うこと
1. 電 子 カ ル テ の 制 作 の 困 難 は レ セ プ ト 部 分 で あ る 。 保 険 制 度 が あ ま り に 複
雑であるので、簡便入力のロジックを考えるのに、コンピューターで自
動判断させるのには、無理が在り、人間の判断がどうしても必要になっ
てくる。又度重なる保険制度の変更はそれに拍車をかける。電子化を望
む行政の姿勢の問題が指摘される。年号の和暦使用の廃止、保険証の文
字使用(記号・番号)の統一はプログラミングの簡素化と入力時のチェ
ック機能の向上の為に是非望みたい。
2. デ ー タ ベ ー ス は コ ン ピ ュ ー タ ー の 備 え ら れ た 建 物 に 天 災 、 火 災 な ど が 在
る と 消 失 す る 可 能 性 は 大 で あ る 。 mdb に 出 力 出 来 る こ と は 、 デ ー タ の 保
存性の向上に繋がる。
3. 近 年 医 療 財 政 が 厳 し く な っ て き ま し た が 、 対 策 の 一 つ に 保 険 審 査 の 簡 素
化が在ると思う。電子化を押し進めることで、フロッピーでの保険請求
が行き渡れば保険審査の簡素化に繋がる。これにともない医療費の節減
が可能なり患者負担や医療機関の収益減少を少しでも緩和出来るなら行
- 13 -
政はさらに積極的に電子化をも働きかけ導入を志す医療機関には援助す
る べ き と 思 わ れ る 。入 力 の 複 雑 さ の 解 消 は ソ フ ト と 、保 険 制 度 の 簡 素 化 、
医療機関のスタッフの考え方次第でもある。多数の患者を診察してカル
テの記載が出来ないとの考えは、インモラルである。
医療もIT革命
という世間の情勢に従うべきであり、そうすることで医療環境の悪化防
止に協力出来る可能性があると考える。
4. フ ロ ッ ピ ー で の 保 険 請 求 は 通 信 セ キ ュ リ テ ィ ー が 確 立 し 、 ネ ッ ト 送 信 で
も可能である。現状では一部紙の総括表の提出が必要であり、折角の制
度を色あせたものにしている。簡単なソフト開発によって支払い基金側
で総括表が作れるはずである。紙レセプトにしても、色違いの国保総括
表は、医療機関の仕事の煩雑を増す要因となっている。行政対応を強く
望みたい。
終わりに
制作した電子カルテは健一君と命名した。今後更にバージョンアップをし
て、入院、病院に必要な機能を付け加えて行きたい。諸氏のご協力を期待
したい。
参考文献と参考ホームページ
1.
http://202.214.127.149/
2.
http://www.sqlpowerpage.co.jp/
3.
診療報酬情報提供サービス
sqlpowerpage SQL 専 門 サ イ ト
RDBMS
http://www.microsoft.com/japan/sql/techinfo/development/2000/MSDE2000.asp
SQL
Server 2000 Desktop Engine ( MSDE 2000)
4.
http://www.microsoft.com/japan/technet/treeview/default.asp?url=/japan/technet/security/virus/
sqlslam.asp
SQL Server お よ び MSDE を 標 的 と し た SQL Slammer ワ ー ム に
関する情報
5.
http://www.ann.hi-ho.ne.jp/hirok/sql/
よ う こ そ 、「 SQL プ ロ グ ラ ミ ン グ 入 門 」 ホ
ームページへ
6.
http://homepage2.nifty.com/inform/vbdb/
VB で MDB, MSDE, SQL Server, Oracle を
操作しよう
7.
西尾
東京
章 治 郎 . 実 践 SQL 教 科 書
マルチメディア通信研究会 アスキー
1996 年
- 14 -
8.
http://www.orca.med.or.jp/
日本医師会研究事業プロジェクト[オルカプロ
ジェクト]
9.
http://www.debian.org/
Debian に つ い て
10. http://www.shiharaikikin.go.jp/
社会保険診療報酬支払基金
11.
http://homepage3.nifty.com/sinkei/ecal.htm
12.
鈴木
湛、.
第 46 巻
補冊
鈴木康弘.
電子カルテ体験物語
医科医向け電子カルテ開発に当たって
第 3 号
耳鼻咽喉科情報処理研究会
耳鼻咽喉科展望
論文集
vol.3
2003
年
13.
鈴木
湛、
山西
賢二.
耳鼻咽喉科における電子カルテの1例
2003 年
日本医療情学連合体会論文集
14.
山西
賢二、 鈴木
合体会論文集
湛.
ペ ー パ ー レ ス 電 子 カ ル テ 23 回 日 本 医 療 情 学 連
2003 年
15. http://www.wacom.co.jp/
ワコム
16. http://www.kcn.ne.jp/~suzukisi/
17. 鈴 木 湛
への提案
23 回
著者のホームページ
開発したペーパーレス電子カルテの特徴と標準化データベース
臨床と薬物治療
2004 年 3 月
P63 ~ P66
この論文は2003年4月7日金沢医科大学、耳鼻咽喉科情報処理研究会、
2003年11月第23回本医療情報学会
2004年2月29日横浜私立大学医学部、耳鼻咽喉科情報処理研究会で発表した。
臨床と薬物治療3月号
P63~P66に掲載した。
- 15 -
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