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一ョ…ロ ッ パにおける口蓋裂治療の現況一

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一ョ…ロ ッ パにおける口蓋裂治療の現況一
一 線
説-
口 蓋 形 成 手 術
と 顎 発 育
- ヨー ロ ッパ にお け る 口蓋 裂治 療 の現 況 一
橋
大
靖
新潟大学歯学部 口腔外科学第二教室 (
主任 :大橋 靖教授)
9年 6月 8日受付)
(
昭和 5
TheSur
gi
c
alRepai
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t
y
(
Di
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c
t
o
r:Pr
o
f.Yas
us
hiOhas
hi
)
癖 の研究 は, 言語面での成績が著 るしく向上 した
緒
昌
こともあ って, 再 び,顎発育 の問題 に焦点を当て
従来, 口蓋裂治療 に関す る研究は,言語障害 の
た新 しい治療法 の検討へ と進みつつある。
発生 を予防す るとい う観点が重視 され, 口蓋形成
すなわち,手術時期 の再検討8,9)や,口蓋への手
手術 の時期や手術法 について 検討が加 えられ てき
術侵襲を可及的に小 さ くす る手術法 の検討1
0,
l
l
)な
hback
た。その結果,幼児前期に,いわゆる pus
どが行われ てい る。 「方, 1
9
7
9年 Per
ko12)によ
法で, 十分 な鼻 咽陸閉鎖機能が附与 された場合 に
hweckendi
ek3)や Sl
aught
e
r
4)の方法
って, Sc
は, 良好 な言語成績が得 られ ることが立証 されて
の欠点 とされ ていた 軟 口蓋 の長 さの不十分5 7)を
きた
0
補 ひ, 且つ手術時期 を遅 らせ, しか も,共同研究
1
)
しか し,一方で,すでに 1
9
4
9年 Gr
aber
2
)によ
者である Ho
t
z
1
3
) の考案 になる 哨乳床 を兼ねた顎
って指摘 された如 く, 顎顔面 の成長 ・発育の早期
発育誘導装置 を早期か ら適応 しなが ら t
wos
t
age
に, 口蓋 に 手術侵襲がお よぶ 結果, 成長 につれ
に 口蓋形成手術 を行 うことによって, 顎発育の面
て, 顎顔面の変形,ひいては吹合,阻噂な どの機
で満足で きるだけでな く, 言語成績で も良結果が
能 の障害 を惹 き起 こす, 顎顔面の発育障害の問題
得 られ ることが報告 された。
が残 されていた。
先年, 著者は, ヨーロ ッパ を中心に して,眉顎
Schweckendi
ek
顎発育 を考慮 した治療 として,
3
)
,Sl
aught
erら4)は
口蓋裂患者の顎変形 の問題 について, 調査初究す
1
9
5
0年代 の初めに,軟 口蓋
る機会 を得たが, ヨーロッパの多 くの施設で,塞
のみを閉鎖 し, 硬 口蓋 は成長発育が終了す る時点
本的には Hot
z
,Per
koら14,15)の考えに 立 った治
まで手術侵襲 を 加 えない 方法 を 提唱 した。 しか
療体系- と変化 して きていることを見聞 した。 こ
し, 本法 によった場合, 言語成績が芳 しくな く5
れ らの方法 については今後 なお 詳細 な術 後追跡が
7
)
,十分 な評価が得 られ るには到 らなか った。
必要であ り, その結果 については未 だ予断 を許 る
このような経過 を経 なが らも, 近年, 口蓋裂治
-
さないが, 口蓋裂治療 について新 しい局面を招来
1-
2
新潟歯学会誌 1
4巻 1号 1
984年
早期手術例 と未手術例 の比較 18
)辛, 裂型 に よる
す る可能性が大 きい ことを示唆 していた。
0年間の報告 を 参考
本稿 では, 主 として最近 1
差,特 に両側唇顎 口蓋裂例 の手術後 の変化 19,
20
)な
に, 顎発育 を中心に した 口蓋裂治療 を概説 し, さ
ど,尚多 くの検討がなされ てい る。 作 田 (
1
9
78)
口眉形成手術 のみ 受 け, 3
3歳 まで
らに, 著者 の見聞をもとに, ヨーロ ッパにおけ る
21
)は乳児期 に
口蓋裂治療 の 現況 について 報告 す ることとした
口蓋形成手術 を受 けなか った 唇顎 口蓋裂例 につい
い。
て, 口蓋形成手術前 と口蓋形成手術 3年後 の顎形
態 を比較 し, 成人まで 口蓋形成手術 を受 けない症
口裏形 成手術 と顎発育
例 では良好 な顎発育 を示す と同時 に, 成 人に達 し
1
9
49年 Gr
aber
2
)が 7カ月か ら 58歳 の未 だ手術
てか らの手術 では手術 に よる 顎形態へ の影響 は全
を受 けていない者お よび既に 手術 を受けた者合 わ
abb
くみ られ ない ことを報告 してい る0 -万, Cr
5例 の 口蓋裂患者 について, 頭部 Ⅹ 線規格
せて 4
ら (
1
9
7
7)
2
2
)は 1
0歳 か ら 2
3歳 まで の 男 ・女各 5
写真, 顎模型 な どを用いて顎顔面の成長 ・発育 に
名, 計 1
0名 の未手術片側性眉顎 口蓋裂 の ビルマ
つい て分析 した。 その結果,同じ口蓋裂 の患者で
人について, 顎模型 をもとに,未手術 患者 の顎形
あ っても, 口蓋形成手術 を受けていない者では,
態 について分析 した。 その結果,切歯 ・犬歯部 を
側方 ならびに上下方向の発育が 正常であるのに比
中心 に, 顎裂部の歯牙 。歯槽 部の形態異常,特 に
較 して, 早期 に口蓋形成手術 を受 けた者では,上
上下方 向へ の発育障害が著明で, 手術 の影響 に よ
顎 の発育が明 らかに 抑制 されてい ることを示 し,
らない局所 の発育障害, それ も顎裂部 を中心に し
5回受けた 1
3歳 の
特 に, 過去 に 口蓋へ の手術 を 1
た眉顎 口蓋裂患者特有 の障害 の存在 す ることを示
少年 の著明な上顎発育障害 の症例 を呈示 し, 手術
唆 してい る。
回数が増す程, 障害 の程度 の大 きい ことを報告 し
顎発育障害 の予防 を目的 と した手術
ogman(
1
95
4)16)は出生後 の顔面 の発育 は
た。Kr
前後方向 に著 るしい ことを示 し, また, 口蓋 の発
前項 で述 べた ように, 早期 に 口蓋形成手術 が行
育 は 6歳以後では比較的小 さい こと, 早期 の 口蓋
われた場合 , 顎発育 に影響 をお よぼす ことか ら,
形成手術 は 口蓋 の横方向の発育 を 障害す ることか
手術 時期や手術法 について改良が図 られ, 可及的
ら口蓋形成手術 の最適な 時期は 4- 6歳 であ ると
に顎発育 を障害 しない 口蓋形成手術 が試み られ て
報告 してい る。
きてい る。
一方, この ような 口蓋 に対す る手術侵襲 と上顎
9
74年 イスラエルの
先ず 手術時期 について, 1
の発育 ・成長 との関連を 明 らかにす るためには,
Kapl
anら8)は生後 3- 4カ月で 口唇 と 共 に 口蓋
手術 を 受 けていない 成人 口蓋裂例 と 正常成 人の
i
mul
t
aneous
を閉鎖 す る 口唇 ・口蓋同時形成法 s
t
r
eら
比較が必要であるとの観点に 立 って, Mes
r
epai
rofcl
ef
tl
i
pandpal
at
eを報告 した。この
(
1
9
6
0
)171が, 1
5歳か ら 5
7歳 に亘 る口蓋形成手術
方法 は 原則 と して 3カ月で 口唇 を LeMe
s
ur
i
er
9
が行 われ ていない プエル トリコの成人 口蓋裂例 4
又は Mi
l
l
ar
dの方法で形成す ると同時 に, 口蓋裂
名 (口蓋裂単独 2
2名,片側眉顎 口蓋裂 2
7名) と,
に対 して も, 最少 の粘膜骨膜弁形成 で閉鎖す る古
0名 の側面頭部 Ⅹ 繰規格写勇 を 計測分
正常成 人 3
典的 な von Langenbeckの方法 を 用 いて形成 す
析 した。 その結果,成人未手術 口蓋裂例 と,正常
0年経過 した成績 を報告
るものであ る。その後, 1
成 人の顎顔面形態 には著明な差が認め られず, 口
してい る23,24)。 それ に よると,術後上顎歯列 弓の
蓋裂例 においても 正常者 と等 しい発育 ・成長能 を
狭窄 を示 した症例 はな く, 吹合 ・吹交 は正常であ
持つ とし, 口蓋裂手術後 にみ られ る 上顎 の 変形
った と述べ てい る。 その他 ,早期 に口眉 ・口蓋 を
は, 発育期 における手術侵襲の結果であ ると報告
同時 に閉鎖す ることによって 母子関係 が良好 とな
した 。
ること, 口蓋裂患者 に高頻 度 にみ られ る中耳炎の
これ らの研究 を契機 として, 近年においても,
-
頻度 が正常児 と同等であ った こと, さらに,言語
2 -
3
大 橋
では 2歳 か ら 7歳 の 2
1名 車, 1
1名 は優 , 9名 良,
僅か に 1名 に遅れ と 鼻漏気 を認 めたにす ぎず良好
な結果 であ った と報告 してい る。
Randa1
1ら (
1
9
8
3
)
2
5
)は 生後 3か ら 7カ月で 口
蓋形成手術 を 行 った 経験 を 述べ, 技術 的 な 困難
さ, 手術 危険度 が高 い反面,二次的修正手術 を必
要 とす る症例 が少 な く, 言語面 では満足で きた と
し,試行 を続 け ると報告 してい る。
一 方, 英 国 の De
s
ai(
1
9
8
3
)
9
)
, To
o
-Chung
(
1
9
8
3)
2
6
)
, は生後 4
8時 間以 内 に 口唇形成手術 を
行 い, 1
6過 で 口蓋形成手術 を行 った 1
00例 の成績
を報告 してい るが, 中耳障害 の予防 に効果的で あ
った とい う2
6
)
。 顎発育障害 はみ られ ない と述 べ ら
れ てい るが,頭部 Ⅹ線規格写真分析 は今後 報告 の
予定 と記 るされ てい るのみで 詳細 は不 明で あ る。
手術 方法 につい て も, 従来 の粘膜骨膜弁 を剥離
形成 す るいわ ゆ る pus
hback 法 が 口蓋 に対 して
大 きな手術侵襲 をお よぼす ことか ら27), 硬 口蓋 に
由 l γo
me
rf
l
a
pによる硬 口蓋閉鎖法10)
は成 るべ く侵襲 を加 えない 手術 法 が創 案 され て き
た。
1
9
7
4年 チ ュ リッヒの Perko
.
l
l
)は硬 口蓋部 に骨 の
口蓋裂患者 の 定期的 に 採坂 され た 顎模型 を も と
露 出面 を残 さない方法, す なわ ち,骨膜上 で粘膜
に,歯槽 頂 の長 さを計測 し, 正常児 のそれ と比較
弁 のみ を形成 す る pal
at
almucos
alf
l
apoper
a-
した もので あ る。 その結果,手術 に よ って一時的
5例 に手術 を行 い, 5
t
i
on を発表 した。 本法 で 3
な影響 は受 け るものの, 術後経年的 に手術 に よる
例 で粘膜弁 の壊 死, 創 の多 聞,療孔形成 をみた と
影響 か ら回復 し, 正常児 と同様 の歯槽 頂 の長 さを
い う。 本法 は弁 の壊 死 の危険が大 きい とい う理 由
示 す にいた り,十分 に at
r
aumat
i
cに手術 が行 わ
で,後述 の如 く,彼 自身 12)に よ って 口蓋 の不完全
れれ ば, 顎発育へ の手術 の影響 は少 ない と述 べ て
裂 にのみ適応 され るべ きとされ ,t
wos
t
agecl
o-
い る。
s
ur
eへ と変 え られ てい る。
さらに, J
ons
s
on ら (
1
9
8
0
)
2
9
)は vomerf
l
ap
一方 , 硬 口蓋 の粘膜骨膜弁 を用 いず,鋤骨粘膜
を形成 した後 にで きる露 出創 に 自家皮膚 を移植す
弁 (
γomerf
l
ap) (
図 1) で硬 口蓋部 の 破裂 を閉
k 法 で 手術 した 2群
る方法 と,Yon Langenbec
Dunn,1
9
5
2
1
0
)
) も口蓋部へ の手術 侵
鎖す る方法 (
の 5歳時 におけ る歯槽幅径 お よび 吹合状態 を比較
sら (
1
9
7
4
)
2
8
)は
襲 が小 さい 利 点 が あ る。 Mape
した。 その結果, これ ら 2つ の方法 の 5歳時 にお
Lancas
t
erCl
ef
tPal
at
eCl
i
ni
cにおい て vomer
h back 法
け る吹合状態 は,共 に,いわゆ る pus
f
l
ap法 で手術 され た唇顎 口蓋裂患者 の歯槽 頂 の長
に よ った場合 よ りも良好 であ った と し, さらに,
さを長期 間 に 亘 って 観察 した 結果 を 報告 してい
2方法 の うちでは Vomerf
l
ap法 が vonLangen-
.
3カ月で三角弁法 に よる口
る。 す なわち,平均 3
beck法 よ りも優 っていた とい う。 しか し,5歳迄
唇形成手術 , 1
3.
7カ月で硬 口蓋部 の vomerf
l
ap
の結果 で あ り, 今後 の長期 に亘 る経過 観察 の必要
に よる閉鎖, さらに 1
6.
6カ月で 単純 な 正 中部縫
性 が 述 べ られ てい る。 また, 言語成績 について
合法 で 軟 口蓋 閉鎖 を 受 けた 4
0例 の片側完全眉顎
は,「軟 口蓋 は僅か に短 かいが動 きは良い」と記載
-
3 -
新 潟歯学会誌
1
4巻 1号
1
984年
され てお り, その後, これ らの方法 は全 く省 み ら
れ な くな ってい る。
以上述べて きた よ うに, 硬 口蓋 に早期 に何 らか
の手術侵襲がお よんだ場合, その発育が,多かれ
少 なかれ障害 を受 け ることは避 け られ ない。 そ こ
hweckendi
ek (
1
9
51
)
3
)
, Sl
aught
er ら
で, Sc
(
1
9
5
4
)
4)は, 乳児期 には軟 口蓋 のみ を閉鎖 し, 硬
口蓋は発育 ・成長期 には 全 く手 をつけない方法 を
hweckendi
ek36)によれ
提唱 した。 すなわち, Sc
ば, 先ず第 1に生後 6か ら 8カ月で軟 口蓋 を閉鎖
し (
図 3), その後 3週間 して 口唇形成手術 を行
2
-1
4歳 で硬 口蓋 を 閉鎖 す るとい う。 その
い, 1
間に硬 口蓋 は発育 し, 裂隙 は狭 くな るとい う36)0
図 2 St
el
l
ma
c
h教授
(ベル リン自由大学)
Sl
aught
erら4)の方法 もほぼ同様 であるが,軟 口
蓋閉鎖の時期はやや遅 い。
され てい るにす ぎず, 詳細 は不明であ るが,言語
本法 に よれば, 上顎骨 の発育 は側方,前方,上
に問題 が 残 ることは 否定 で きない もの と 思われ
下方向共 に 極めて 良好 で, 発育障害 は 認 め られ
る。
ず, 正常者 と近似 した形態 を示す とい う。一方,
1
9
5
0年代 の終 りか ら '
6
0
年 の初 めにかけて,口眉
7.
2
%, 理解 で きるが
言語 においても, 正常が 5
形成手術後 の歯槽裂部の狭窄 を予防 し, 良好 な歯
3
7.
6
%, 中等度 4.
5
%, 不良 0.
7
% と満足すべ き
槽 形態 を得 ることを 目的 に, 一次 口眉形成手術 時
hweckendi
ek (
1
9
7
8
)
結果 であ った と 息子 の Sc
St
el
l
mach,
に歯槽裂部 に自家骨 を移植す る方法 (
3
6)が
1
95
9
3
0
)
)
辛,
骨膜弁で同部を連結す る方法 (
Skoo
g,
1
9
6
5
3
1
)
) な どが提唱 された。 近年, これ ら手術 の
を追試 した報告では, 極めて厳 しい評価 が与 えら
2
5年 の結果 を報告 してい る。 しか し, 本法
s
manら (
1
9
8
0
)
5)は本法
れ てい る。すなわち,Co
れ てい るが, いずれ の 報 告 においても, 歯槽形
aut
i
onar
y
を追試 し,言語成績 をみた報告で,A c
r
epor
t な る副題 を付 けて 言語成績が 不満足であ
悲, 吹合 ともに予期 した結果 は得 られ なか った と
るばか りでな く, 二次的 に硬 口蓋 を閉鎖す る際 の
予後 を長期 に 亘 って 追跡 した 結果が報告32 35)さ
G
i
i
d
図 3 Sc
hwe
c
ke
ndi
e
kによる軟 口蓋閉鎖法一軟 口蓋は
全 く後 方移動 (
pus
hba
c
k)されていない3
6
)
0
-
4 -
大
靖
橋
図 5 M.Hot
z先生
(チ ュ- リッヒ大学 )
組 まれ た。 当時 の 口唇形成手術 は Ve
au-Gr
obの
図 4 チ ュー リッヒ大 学 にお け る治 茸体 系 38)
古典的方法) に よ り 3カ月で, また, 口
方法 45) (
hb
ack 法 によって 2
蓋形成手術 はいわゆ る pus
手術 の難 しさを指摘 してい る。 彼等 によれば,6
6
歳 で行われ ていた とい う。 しか し, この期間の治
% が 言語不良で, 咽頭弁形成手術 が 追加 されね
療結果 の分析では 期待 した程 の結果 を得 るにはい
acks
on ら (
1
98
3
)
6)
,
ばならなか った とい う。 J
た らなか った42,43)0
Bar
dach ら (
1
9
8
4
)
7) も同様 の結果 を報告 し, 批
9
65年,顎矯正治療 の 目的 を顎発育 な
そ こで, 1
らびに予想 され る唆合 関係へ と顎 を誘導す ること
判 を投 げかけてい る。
を第一義 とす る方法- と変換 した38,39,41)。 すなわ
ヨー ロッパの新 しい治療体系
Nei
lの装置 の利 点 と欠 点を考察 し,利 点
ち, Mc
以上述べて きた よ うに 口蓋形成手術 は, 顎発育
は残 し, 欠 点を除いた方法- と変更 した。利 点 と
と言語 との間を揺れ動 きなが ら, よ り良い治療体
しては, 第 1に,硬 口蓋 の破裂部を床で覆 うこと
系を求めて検討が続 けられ てい る。
によ って, 舌 の圧が硬 口蓋や歯槽部の破裂緑 にか
近年, チ ュ- リッヒ大学か ら, 矯正科 と口腔外
か るのが避 け られ, 舌 の位置が正常位 を とるよ う
科の緊密 な連携 (図 4) の もとに極めて 注 目すべ
にな ること, 又, 破裂部 が 覆 われ ることに よっ
き一連 の研究が報告 され てい る11-15,37 43)0
て,吸畷 力が増 し,晴乳床 13)としての働 きも持つ
z(
1
981
)
41
)によ
この一連 の研究の発端 は, Hot
ことであ り, 第 2の利 点は,その様 に術前 の管理
9
5
7年, Kr
i
j
ger
s
-J
anz
enが 1
93
6年か ら
れば,1
が容易になることか ら, 顎 の発育 に見合せ て手術
1
9
5
0年 の間にチ ュー リッヒ大学病院で手術 された
を遅 らせ ることが 可能 になることであ った・
として
0
6例 の うち, 1
0
7例
片側 ・両側完全唇顎 口蓋裂 4
い る。 明 らかな欠点は,破裂 した両歯槽 弓を力で
7.
5歳 で良
について 予後調査 を 行 い, 平均年齢 1
aemaxi
l
l
aを後退 させ ることであ る
近接 させ ,pr
好 な喫合状態 を示 したものが, 僅か 6例 しかみ ら
au の方法で形成 された緊張
とい う。 これは,Ve
れ なか った ことによるとい う。 この結果か ら,術
の強い上唇 によ ってさらに増強 され, 前歯部での
95
7年 よ り早速 に 振 り入れ られ 38,39,
前顎矯正が 1
反対攻合 を, さらに, 2- 3歳 での 口蓋形成術後
41
), 当初, Mc
Nei
lの方法 44)に準 じて治療体系が
の上顎歯列 弓の狭窄 を 必発 の症状 とさせ る源 にな
- 5 -
6
新潟歯学会誌 1
4巻 1号 1
9
84年
図 8 同症例に図 6の装置を装着 した状態。軟 口蓋
も含めて,破裂部は全て閉鎖されている。
(
新潟大学第 2口腔外科症例)
図 6 硬 ・軟 レジン製の早期顎矯正装置
(
新潟大学第 2口腔外科症例)
ってい る と してい る41)0
以上 の考察 の結果考案 され たのが, 硬 ・軟 レジ
ンの 二重構造 に よ り製作 され る 顎矯正装置 13 15,
3
8 41
)(
図
6) で あ り, 生後成 る可 く早 く,2
4-48
時 間以 内に 装着 され, 1歳 6カ月の軟 口蓋 閉鎖手
術施行時迄, 出生 か ら口唇形成手術 前後 の発育誘
導 を 目的 と し, さらに舌 の正常位 へ の矯正,晴乳
図 9 同装置を装着直後,自然に,舌で強 く口蓋を
圧 している。 この状態で,正常児 とほぼ同様
の吸頃が可能となる。
(
新潟大学第 2口腔外科症例)
に よる 患児 の 正常 な 機能 の 助長 を 図 るものであ
る。 本装置 は 通常 の 義歯 の 如 く 口腔 内に装着 さ
れ, それ を保持 す るための帽子や ヒモは全 く必要
と しない (
図 7- 9)
3
8,
41
)
0
1
9
6
5年以来今 日迄 , この装置 につい ては以後変
更 され てい ない とい う41)
0
一方 ,共同研究者 の Gno
i
ns
ki(
1
9
81
)
42)は発育
に決定的影響 を与 え る 3つ の因子 と して, (
1
)塞
礎 とな る顔面 の形態, (
2)手術 の時期 と手術法 ,
(
3) 機能 を挙 げてい る。
この うち, 手術時期 と手術 法 につい て, 同 じ大
図 7 生後 22日左肩顎口蓋裂の口腔内所見
(
新潟大学第 2口腔外科症例)
学 の 口腔外 科医 Pe
r
kol
l,
1
2
) との間 で, 緊密 な連
-
6 -
大
7
靖
橋
b
図 1
0
Pe
r
koの mo
di
f
i
e
dWi
dma
i
e
rt
e
c
hni
qu
e
12)0
K
12
教授
ens
ri
図
(ブ
メン中央病院)
レ
ー
携のもとに, 検討 が 加 えられ, 先ず, 前述の如
く, 硬 口蓋 に 骨露出部を 作 らない 方法 として,
pal
at
almucos
alf
l
ap oper
at
i
onが考案 された
ht
S
h
di
k
法
が
や
er
en
e
aug
c
wec
3)
4),
かし
Sl
ht
硬
に着目し
の方法
口蓋
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予期した効果が得られず
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侵襲を避け
のみを閉鎖する
口蓋
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しかし
にも記るした如く
この方法は
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図 1
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ko法 (図 10) の実 際。
硬 口蓋 には破裂 が残存 し,全 く手 術 技
塾 がお よんでいないO
(
新 潟大学第 2口腔 外科症例)
- 7-
8
新潟歯学会誌 1
4巻 1号 1
9
84年
図 1
5 顎矯正装置と顎 (
下)発育の経
図 1
3 裂残存部を閉鎖するための口蓋床。
(
新潟大学第 2口腔 外科症例)
過を示す経年的顎模・
型。
左 よ り出生直後 , 1歳時 , 5歳時。 5歳時
には 軟 口蓋部 はすでに 閉鎖 されてお り,
又,硬 口蓋部の破裂r
T
]も著明に減少 してい
る。調和のとれた歯列弓形態を示す。
(
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z先生の好意によるチ ュ- リ
ッヒ大学 資料一著者撮 影)
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), 機能的 に も十 分 に 満足 し得 る 軟 口
蓋 が形成 され る としてい る。
硬 口 蓋 は 5- 8歳 で 閉 鎖 す る が, すで に,
Schweckendi
ek36)も指摘 してい る如 く, 軟 口蓋
閉鎖後 に硬 口蓋 は発育 し, 裂隙 巾は狭 くな ってい
るものが多 く, 閉 鎖時 の手術 侵襲 を最 少 に止 どめ
うる とい う。
軟 口蓋 閉 鎖術施 行後 , 硬 口蓋 部 の裂 が開い た ま
図 14 同装置を装着 した状態。
軟 口蓋は閉鎖手術が行われている。
(
新潟大学第 2口腔 外科症例)
ま 残 ってい る 部分 につい ては, 必要 に 応 じて,
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単 な る 口蓋床) (
図1
3
,1
4
)を装
0
%で あ った と
着 す るが,装 着 を必要 と した のは 5
比較的早期 に軟 口蓋 を閉鎖 す るの に比較 して, 戟
い う12)。
口蓋 の 閉鎖 を 1歳 6カ月 と 遅 くしてい る。 この
尚, 口眉形成手術 は生 後 5- 6カ月で行 われ る
(図 4)。 この時期 には, 顎 の発育 が 誘導 され
時期 には上顎 の第 1乳 臼歯 が萌 出 し, 顎 の積極的
3
8)
Si
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9
51
)
な発 育 の終末 期 にあた ってお り (
る結果, 顎 裂 の 巾はか な り狭 くな ってお り, しか
46),
しか も, 前 述 の顎矯正装置 の装用 に よ り,顎
も, 鼻 翼基部 は前 方へ移動 して,患側 の歯槽部 で
の発育 誘導 が図 られ , それ につれ て軟 口蓋破 裂部
支持 され , 叉 , この時期 には 口唇音 を使 う晴語期
の巾 も狭 くな り, 過度 の軟組織 の移動 は不必要 に
に 入 ってお り, 手術 時期 と して 適 当 と してい る
dmai
er
な る と してい る 12)。 手術 法 と しては Wi
3
8)。
手術 法 は Mi
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d法 や Tenni
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)
4
7
)
を修正 した方法 (
図1
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l
)に よ って
して行 われ てい る とい う。 両側 性 につい ては片側
お り, この方法 に よれ ば, 軟 口蓋 は十分 に伸長 さ
ず つ 2回 に分 けて行 ってい る37)0
れ , 口蓋帆挙 筋 の走行 も修正 され (
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本法 の予後 につい ては, 未 だ, この治療法 が体
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大
橋
靖
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一派 も, 彼等 の長期 に亘 る各種治療法 の試行 と,
その予後 を 検討 した 結果 を 通 して, 同様 に 硬 口
蓋 の 閉鎖 を 遅 らせ る 治療体 系 を 報告 してい る
(
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53
))。 口唇形成 は 1- 2カ月で 口
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padhesi
on) のみ行い, 6
唇 の破裂辺縁接着 (
- 8カ月で 口蓋帆挙筋 の走行 を 修正す る方法 を も
と り入れ た 軟 口蓋形成手術 を施行 し, 1歳半か ら
2歳 で 口贋 ・鼻形成手術 を行 う 治療体系であ る。
しか も, 生後 1年迄 は可撤式の顎矯正装置 で,開
いたままの, 破裂部 を閉鎖す るとい うが,その装
置 の詳細 については明 らかでない。 さらに,歯 の
図 16 Pf
ei
f
er教 授 (/、ン ブ ル ノ大学) と私O
萌 出後 は歯 を利用 した食事, 言語 のための床 を利
系化 され てか ら 1
0余年 を 経 たにす ぎず, 断片的
3
8,
3
9,
50), 顎発育,
な報告 をみ るのみであ るが14,15,
用 す るとい う。
本法 で治療 した例 では, 大歯部 ・臼歯部で,共
喫合 の面では従来 の方法 に比較 して 明 らかに良好
に, 明 らかに広い歯列 弓を示 し,側方歯群 の交 叉
5)。 言語 の面で も, 従
な成績 を示 してい る (図 1
喫合 が, 従来 の各種 の治療法群 に比較 して明 らか
来 の方法 に劣 らない結果であ った とい う。
に少なか った とい う53)0
しか し, 中耳 の炎症,機能異常 の頻度が高い傾
向15,50)を示 してお り,注 目され る。
er教授が
著者 の見聞では,ウイ- I
/の Wunder
ほぼ同様 の治療体系で治療 を進め ていた。
いずれ に して も, 今後, さらに長期 に亘 って,
以上,二つの治療法,特 にチ ュー リッヒ大学で進
各方面か ら詳細 に追跡調査 され, その予後 につい
め られ てい る治療体 系14,15)は,硬 口蓋 の閉鎖 を遅
て明 らかに され るべ きであろ う。
らせ, 口蓋形成手術 を 2回に分 け る方法 とい って
1
9
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9年 8月末,- ンブル クにおけ る第 3回国際
t
zらの 「完
唇顎 口蓋裂 シンポジウムにおけ る Ho
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ek法 3)辛, Sl
aught
er
も,従来 の Sc
法 4) と異 な り, 単に手術 を 2回に分け るとい うだ
全唇顎 口蓋裂患者 についての 一次治療 のチ ュー リ
けでな く,出生直後 よ り, 破裂部 を床 をもって閉
ッヒにおけ る前進 」14,15) と題 す る 報告は 大 きな関
鎖 し, 患者 自身 による吸贋が可能 に し,本来 の生
心 を呼んだ。 多 くの質疑応答が交わ され た ことが
理機能 を失わせ ることな く, さらに,その作用 を
ei
f
er教授 のま と
そのシンポジウムを主宰 した Pf
利用 して, 顎 の発育誘導 を図 るとい う独特 の面 を
めた記録 51)に明 らかであ る。
もってい る。
その後, 本治療法 は, ヨーロ ッパの ドイツ語圏
事実, 私達 のチ ュー リッヒ大学治療法 の追試で
を主体 として, 多 くの 施設で 追試 され てい る。
も,装置 を装 着す ることによって, 患者の吸畷力
著 者 が 見 聞 し えた ところ で も, ノ、ンブル クの
は明 らかに増強 され, 従来 の流 し込みで晒乳 して
Pf
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er教授52)
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いた時 とは異 な り, 患児 自身の力で,正常児 と同
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mach教 授, オ ース トリー ・ダラ
ル リンの St
0
様 に吸畷 してい る状態 を経験 してい る (図 9)
l
e教授 とい った 唇顎 口蓋裂 の研究 にお
ーツの K6
これ らを考 え ると, 口蓋裂治療が,単に言語機
い て指導的立場 にあ る人達 が, 皆,本法へ と治療
能 だけでな く, 口腔 の持つ全 ての機能 の不全 を改
法 を変換 してお り, ヨ-ロ ッパにおけ る口蓋裂治
善 し, それ を上手 に手術 と組合わせ ることによ っ
療 の新 しい波 とい っても過言ではあ るまい。
て,従来 み られ た様 な, 口蓋裂患者 の成長 につれ
今後,それ ら追試者の経験 を も通 して, 正 しい
評価 が下 され ることになろ う。
て現われ て くる各種の障害が予防 され, よ り良 き
予後が得 られ る方向へ と導 いていかれ るよ うに思
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一方, スウエーデ .
/ ・エーテ ボ リの J
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新 潟 歯学会誌
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4巻 1号 1
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口腔 機 能 に関 して は 歯 学 は深 い 関 連 を持 って い
る訳 で , 今 後 の 口蓋 裂 治 療 にお け る歯 学 の役 割 は
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さ ら に増 した もの と もい え るで あ ろ う。
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0年 間 の 報 告 を 中心 に して, 口蓋
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裂 治 療 も, 顎 発 育 を も含 め て,
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る とは い え ず , 今 後 に残 され た 問題 で あ る。
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れ て い るの で , 著 者 の見 聞 も含 め て紹 介 した 。
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が , 口蓋 裂 治 療 に新 しい局 面 を生 み 出 す もの で は
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私 達 もす で に追 試 を は じめ て い るが , さ ら に検
討 を重 ね 乍 ら, そ の結 果 に つ い て, 報 告 す る機 会
を持 ち た い と考 え て い る。
文
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