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小児・老化・死 シケプリ

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小児・老化・死 シケプリ
小児・加齢・死
D: Pediatrics, Aging & Death, Prep 2006
授業実施日
先生
内容
担当
4/28
5限
横田教授
小児診断学&シケプリ注意
ゆみ
5/22
2限
岩崎先生
小児の成長と発達
5/1
3限
今川先生
小児保健と予防接種
5/11
1限
黒澤先生
染色体異常と先天奇形症候群
よしま
5/2
2限
関先生
新生児の特徴と疾患
よしま
5/2
2限
西巻先生
未熟児の特徴と疾患
よしま
5/17
2限
満田先生
小児の細菌感染症
ゆみ
5/24
2限
森先生
小児のウィルス感染症
ゆみ
5/11
2限
菊池先生
小児の内分泌疾患
よしま
5/12
1限
菊池先生
小児の呼吸器疾患
ゆみ
5/12
2限
乾先生
小児の消化器疾患・肝疾患
ゆみ
5/15
2限
横田教授
小児の免疫疾患、リウマチ性疾患
よしま
5/17
1限
相原先生
小児に多いアレルギー疾患
よしま
5/22
1限
今川先生
川崎病
よしま
5/19 12限
根津先生
小児の神経疾患
よしま
5/23
2限
伊藤先生
小児の腎疾患
ゆみ
小
5/1
4限
清家先生
児童精神科の入院治療
ゆみ
児
5/18
1限
金井先生
子どもの福祉と児童精神医学
ゆみ
精
5/18
2限
陶山先生
学校教育と児童精神医学
ゆみ
神
5/26
2限
高橋先生
子どもの身体愁訴と児童精神医
ゆみ
加
5/29
2限
小田原先生
高齢者の心理
ゆみ
齢
6/2
工藤先生
加齢と老化
藤原教授
死と法
小
児
科
1限
5/30 12 限
Page
よしま
ゆみ
よしま
荒川・荒木
計 24 コマ
-1-
早速シケプリ…の前に、小児シケプリ(ゆみ担当分)使用上の注意
いのー改めかわいらしくゆみなんてしてみましたが、どっちみち私です(笑)前回、精神のシケプリを作らせてい
ただきましたが、膨大な量であったにも関わらずずいぶん多くの方から好評をいただき、ありがたかったです。今
回は小児ということで、精神よりは一般の疾病学と近いので、どのようにまとめていこうか悩みました。でも、せっ
かく作るならまた「読んで理解する」シケプリにしたいと考え、そのようにしてみました。よって、またしても量は多
くなっています。おそらく実際は前回の精神シケプリがやりづらかった人も結構いると思います。そういう人には
申し訳ないです。でも、また読みやすさを!というたくさんの声の方を尊重させいただきました。それでも読みにく
い所は許してね m(_ _)m
授業プリは必ず持っていてください。ただし、配布資料のない授業もあります。先生は教科書を使って勉強する
ことが前提と言ってましたが、たぶん買ってない人も多いと思うので適宜補っていくつもりです。
以下は余談ですが…小児科って興味ある人とない人の差が激しい気がするんですよ。結局は去年一度勉強したことの復習もあ
ったりするしね。だから、つまらないって思う人がいるのも当然だと思います。でも、ちょっと考えてみてください。子どもじゃなかった
人っていないですよね?あなたも私もみんな子どもだったよね。そして振り返ると今とはいろんなことが違ったはず。発熱だって腹
痛だって、大人になってからのと深刻さがまるで違ったのでは?
もちろん、当直なんかで小児の救急疾患に遭遇しかねないから勉強するって目的はあるけど、医師の立場だけでなく、親の立
場でめちゃくちゃ必要なことがあるかもしれない。つまり、自分の子どもが病気になったとき、大人の病気しか分からない自分がい
たら、あぁ少しは小児も学んどくんだった~って思うかもしれないですよね。体も心も子どもは違うもの。絶対うろたえる。だから、小
児科ってやっぱり別に勉強する必要があるんじゃないかな、と私は思っています。
前置きがなげーよ!って感じですね(^^;)ごめんなさい。では、早速参りましょう!!
小児診断学
4 月 28 日 5 限 横田先生
去年のラスト問題がまさにこれですね~。授業プリは要点がいるので是非参照してください。時間がない人は
この部分はとばしていいと思います。まずは他の範囲をつぶしてください。一応ここでは成人と小児の診察の違
いに着目してまとめます。
おとなにもこどもにもいえること
基本的に診察の手順は成人も小児も変わりません。問診をして、検査を含めた理学的診察をして、診
断し、治療にもっていくのですから。で、この授業では主に理学的診察に必要な観点がまとめられてい
ます。ただ、横田先生が強調してたのは、理学的診察をするにあたっては、Concept と Skill が不可欠だ
ということです。
Skill は私たちがOSCEなんかで学ぶ診療技術ですね。聴診器をどこに当ててると何が聞こえるか、
みたいな。でも、このときにも、ただこの部位に当てて何が聞こえればこの疾患を疑う、という丸暗記
ではなくて、解剖学や生理学を思い浮かべながらやらなければダメです。ここに、何の臓器があるはず
で、そこで雑音があるのはどうしてか?という風に、毎回考えることです。もちろんより確かな Skill
を身につけるには経験が必要です。
そして Concept ですが、まず臓器診察をイメージすることが大事です。全身の状態を見て、さらにパ
ーツごとに見ていきます。関節にいたっては、70 を超える全ての観察を診る根気が必要です。というの
も、患者は特別痛いところしか訴えないからです。子どもはなおさらですよね。患者本人も気付いてい
ない障害部位を探してあげるつもりで念入りな診察が求められるわけです。次に、炎症性疾患なのか、
-2-
腫瘤性疾患なのかを考えます。これは病理学的な分類ですが、臨床でも疼痛の有無などを診ることが大
事です。
こどもはやっぱりこども
成人と小児の最大の違い、それはまず間違いなく子どもはすすんで診察室には来ないということです。
大人が医師の前に現れる時は、普通何か不具合があって、診てほしくて来るのですから、たとえばこち
らが「聴診するので服を胸の上まであげてください」とかお願いすれば従っていただけるでしょう。し
かし、子どもではそうはいきません。とりあえず白衣が見えたら逃げる。泣く。わめく。う~ん「診察
を受けたくない人の診察」を気持ちよく、かつ入念に行わなければならないのです。さぁどうしようか。
子どもに対して診察させてもらうんだという心をもつのが大事ですよね。頭ごなしに怒ったりしたら
逆効果。たとえば、子どもはおなかに触れるだけで恐がって筋性防御みたいになっちゃうこともありま
す。そんな時は、子どもに「ウルトラマン好き?」などと話しかけて、子どもを空想の世界にいざなっ
てあげましょう。
(こどもの流行のチェックもある程度必要だよね。ウルトラマンって何とか言われたら
おしまいだし)そうすると、自然と腹部はやわらかくなり、診やすくなる、と先生はおっしゃってまし
た。そうそう、小児の場合触診がすごーく大事だしその気になればほとんどの臓器(腸までも)も触診
で所見が得られたりするそうです。少なくとも肝腫大・脾腫大は積極的に触って経験するように、との
ことでした。
そして子どものもう一つ大きな特徴は、自分の病状を上手く表現できないことです。これに対しては、
まず、年齢に応じた子どもの健康な状態を知っている必要があります。健康状態との落差で病的状態を
とらえるのです。もちろん、突然病的状態になるわけではなくて、徐々に移行するわけだからその辺は
柔軟にとらえなければいけません。それから、どんな病状であっても、全身の診察をくまなく行うこと
です。関係なさそうに思えても、鼓膜の観察とかもしておくと、もしそこに異常がなかったとしても、
正常な所見を一つ経験したことになり、どんどん次の診察に活きてくるわけです。200 件の正常鼓膜を
診た次に耳が痛い、って子どもが来たら、これまで頭に蓄えた 200 枚の鼓膜画像と比較できるよね、っ
てことです。あと、家族からの情報をもらうことも忘れずに。
これで一応過去問 46 番には対応できるんじゃないかと思うけど…授業プリも見てね(><)
-3-
小児の発達
5 月 22 日 2 限岩崎先生
スキャナとか使えないので写真が入れられません…。ごめんなさい。この回は図がわかりやすいので、
プリントや教科書を参照しつつ勉強してみてください。
乳児期は発育・発達とも一番変化がある時期。例えば新生児は通常体重が 3 ヶ月で 2 倍、10 ヶ月で 3 倍
になる。身長は 1 歳で 1.5 倍、脳の重さは 1 歳で 2 倍になる。
今回は、
1.反射の発達(4 ヶ月くらいまでに消える反射を原始反射という)
2.運動発達(姿勢の発達、粗大運動発達、微細運動発達)
3.精神発達(周囲に対する反応、関心、言語、生活習慣など)
1.
反射の発達
新生児は主に延髄橋の一部の機能により生活する。その反射は魚に近い。成長とともに運動機能は橋
より中脳の機能、さらに大脳皮質の機能により営まれるようになる。
① 脊髄反射(2 ヶ月以内に消失)
・ magnet reaction…足の下を押すと、足底が倒れてくる
・ 逃避反射…足をつつくと逃げる
・ 交叉進展反射…片足をつかむと、反対側の足で払いのける
・ 自動歩行…児の両脇を手で支えて立たせ、足をつけた状態で体を前に傾けると、下肢を
交互に動かし歩く
・ 把握反射…手のひらに何かを当てると、握りしめる→これが消えないと人に物を渡すこ
とができない。離せないから。
② 延髄・橋レベルの反射(4~6 ヶ月で消失)
・ 緊張性頸反射…仰臥位の児の頭を右に回すと、右上下肢が伸展し左上下肢が屈曲する
・ 緊張性迷路反射
・ モロー反射…音をたてたり、首を少し落下させると、手を伸展して開大する
・ 吸啜反射…おっぱいを吸う
・ 口唇探索反射…口唇の端を刺激すると、おっぱいを探すようにする
③ 中脳レベルの反射(5~6 ヶ月で見られ始め 5 歳頃で消失
・ neck righting reflex、body righting reflex、迷路立ち直り反射、視性立ち直り反射
=立ち直り反射…姿勢を変えたときに頭の位置や首を保つ反射
・ パラシュート反射…腹臥位で抱きかかえながら水平につるした状態で、頭と肩を急に下に傾けると手
がばっと前に出て防御する
・ ランドー反射…腹臥位で胸部を支えて水平につるした状態。児の頭を後屈させると脊柱
と下肢が伸展し、頭を前屈させると脊柱と下肢が屈曲する
④ 皮質レベルの反射(平衡反応、出現後一生存在。皮質以下の基底核、中脳、橋、延髄、
-4-
小脳が正常であることが必須条件)
・ 傾斜反応
・ 座位における平衡反応…児の体を横から押すと、反対側の手が出る。そして重心をとる
ために手を上げる
・ 飛び跳ね反応(hopping reaction)…児を立たせて肩を押すと、足を交叉させてバラン
スをとる
2.
運動発達
① 姿勢反射の発達
小児をある一定の姿勢にした時に反射的にとる姿勢
引き起こし反射・ボイタ反射・ランドー反射・腋下垂直抱き
② 姿勢の発達
反射ではないが発達とともに一定のパターンをとって発達する
腹臥位・仰臥位・座位・立位
③ 粗大運動の発達(大事!!)
定頚
4 ヶ月
寝返り
6 ヶ月
お座り
7 ヶ月
つかまり立ち
10 ヶ月
伝い歩き
11 ヶ月
歩行
1 歳~1 歳 6 ヶ月
④微細運動の発達(眼と手の協調を要する細かい動作)
物をつかむ・ボタンをかける・コップの水を飲むなどの統合機能の発達。
3.精神発達(周囲に対する反応、関心、言語、生活習慣など)
あやし笑い←4 ヶ月
物をつかむ・顔にかけた布などを取り除く・人見知り←7 ヶ月
物まね・叱られると判る・親の後を追う←10 ヶ月くらい
言葉をしゃべる←1 歳をすぎると…
-5-
小児保健・予防接種
5 月 1 日 3 限今川先生
GW真っ最中にしては参加者が多く、プリント不足になっちゃった授業でした。去年の過去問には出てません
が、結構国試で問われる範囲みたいなので、そこそこまとめていきたいと思います。
★小児期の分類
覚えてくださいっていうか、分かってないと小児の各論がよくわからないかもしれないんで、今のう
ちつかんでくださいね♪
Ⅰ.出生前期
① 細胞期(受精卵期)
② 胎芽期〈~在胎12週〉
③ 胎児期 〈在胎12週~出生〉
受精卵の分裂初期です。遺伝子病や染色体異常を招くのはこの時期
ともいえるでしょう。
器官形成期なのでこの時期の胎内の内的、外的障害は奇形を招く原
因となりやすいです。
器官はおよそ完成していますが、この頃の障害は発育遅延を招きま
す。
子宮体外の環境に適応し始める時期です。
Ⅱ.新生児期〈~生後4週〉
生後1週間未満は特に早期新生児期と呼びます。
Ⅲ.乳児期〈~1歳〉
成長・発達がものすごく激しい時期です。
Ⅳ.幼児期〈~6歳〉
Ⅴ.学童期〈~12 歳〉
Ⅵ.思春期〈~15 歳頃〉
未就学児ってやつかな。運動能力や精神の発達がグングン起こる時
期です。
要は小学生ですね。社会性の発達が望まれます。
一応ステップには女子では初経、男子では精通をもって思春期とみ
なす、とあります。
ちなみに周産期は在胎22週~生後1週のことをさします。
★成長と発達
この 2 つの言葉は似ているようで定義が違います。成長は身体の大きさの増大に関して用いられるも
の。発達は機能や能力の増大に関して用いられるものです。もちろん成長と発達はお互いに関わりあっ
て育っていきます。他に似た言葉としては、遺伝的支配に基づく成長・発達を示す成熟、経験に基づく
行動の変化である学習などがあります。
では、成長・発達について詳しく見て行きます。これも結構試験に出しやすいところらしいので、で
きるだけ覚えた方がいいみたいです。
☻ 成長のはなし
体重:こどもの体重わかりますか??まず出生時がだいたい3㎏ってのは想像しやすいと思います。
で、生後3~4ヶ月でなんと出生時の2倍(約6㎏)、1歳の時には3倍(約9㎏)になるのです。こ
んな変化が私たちにも同様に起こったら大変ですね。地球がつぶれます。ちなみに3ヶ月健診で最も
着目するのは体重なのだそうです。
身長:出生時はたった50㎝程度しかありません。それが、1年で 1.5 倍(75cm)、4年でほぼ2倍(だ
いたい1m)になります。そして学童期後半から急激に伸びるわけです。
-6-
歯牙:口腔の復習ですが、乳歯は離乳が始まる6ヶ月頃、永久歯は6歳ごろから生え変わります。そ
う、歯に関しては 6 がキーナンバーです。
ところで、成長の変化を視覚的に見る手段として、成長曲線がよく使われます。あと、客観的に成長
を評価するためにいくつかの指数も用いられます。現時点でここまで覚える必要があるかは微妙です
が、カウプ指数は乳幼児、ローレル指数は学童の評価に用いるものです。指数の割り出し方は、授業
プリにもありますし教科書にもあるので気になる人はチェックしてみても。。。
他に先生が言ってたことを2点だけあげます。時間なけ
れば読み飛ばして。
1つは成長の時期が臓器によって違うってことです。
右の図は有名ですが、細かいことは覚えなくていいって
言ってました。
2つ目は、手根骨は骨の発育を反映していて、これを
見ることが成長障害の診断に有用だということです。
☻発達のはなし
感覚発達:感覚の中で新生時期から存在するものはなんでしょう?…味覚・嗅覚・聴覚・皮膚感覚
です。これはよく考えたら下等動物において特に発達している感覚ではないですか!?新生児は自分
の母親の母乳をかぎ分けるほど、嗅覚がすぐれているといいます。つまり、本能行動で生きるのに必
要最低限な感覚は胎内で習得済みということなのでしょう。一方、視覚は遅れます。じっと物をみつ
める注視は1ヶ月、物を目でおう追視は4ヶ月でできるようになります。
運動発達:粗大運動と微細運動があります。それぞれのおおまかな時期は授業プリにはありません
が、載せ忘れたと言ってました。国試にも出るので、覚えておきましょう。
粗大運動の発達
微細運動の発達
3~4 ヶ月:首がすわる
3ヶ月:ガラガラを持つ
5~6 ヶ月:寝返りをうつ
6ヶ月:離れたものを取る
7~8 ヶ月:おすわり
12 ヶ月:ほしぶどうを指先でつまめる
9~10 ヶ月:はいはい
10~11 ヶ月:つかまり立ち
12~13 ヶ月:一人立ち
14~15 ヶ月:一人歩き
ここでのポイントは、運動発達は頭に近い部分から始まり遠位に向かうということです。
あと、ほしぶどうがつまめる頃は落ちているものを全部食べてしまう時期でもあるので、誤飲・誤嚥な
どが多くなります。
精神発達:すなわち、情緒や社会性の発達が起こりますが、詳しくは触れていませんでした。情緒は初
めは快・不快しかないけれど、徐々に複雑化していくんですよね。
言語発達:これも授業プリには抜けた表があるので、下に入れます。
「」内は成長を表す代表的な単語な
ので、テストにもよく出ます。
-7-
言語発達
1ヶ月:声を出す
3ヶ月:声を出して笑う
9ヶ月:喃語(「だー」とか「まんま」とか言うが、何かを指しているわけではない)
1歳
:犬を「わんわん」ごはんを「まんま」などと意味を持った単語を言う。
2歳
:2語文が言える。「あっち、いく」
「わんわん、きた」など。
3歳
:助詞、助動詞が使えるようになってくる
4歳
:話し言葉の完成
絶対に忘れてはならないことは、当たり前のことではありますが、成長・発達にはものすご~く個人
差があるということです。ここで挙げた時期はあくまでも目安であって、テストのためには重要でも、
実際は少しずれたくらいでは問題になりません。ただ、例えば一人歩きが半年遅れてもさほど問題あり
ませんが、首がすわるのが半年遅れたら、発達障害の可能性は濃厚、というように、発達の初期段階ほ
ど、誤差範囲は狭いという感覚はある、と先生はおっしゃってました。
これらの発達を客観的に評価する手段として最もポピュラーなのはデンバー式発達スクリーニング検
査とかいうもで、0ヶ月~6歳を対象に評価します。
★小児期の死因(2002 年の統計)
過去問でも多少出てました。授業プリの表を参照してください。ポイントだけ挙げます。
①1歳~19 歳の死因の1位は不慮の事故である。
日本は溺死が最も多いとか。。。
②0歳3位のSIDS(乳児突然死症候群)は最近増加中である。
③15~19 歳2位の自殺もどんどん増えている。
④成人に比べ、悪性新生物による死亡は少ない。
ところで、今年の授業ではあまり触れていませんでしたが、去年は1題になっているSIDSについ
て、ステップの記載をまとめておきます。
とは「出世後、なんら異常なく健康に成長していた小児が突然死亡し、剖検によってもその原因が不
明であるもの」のことです。病因についてはいまだ不明ですが、いくつかの傾向があるのでこれは押さ
えておきましょう。
SIDS (Sudden Infant Death Syndrome)
・生後2~7ヶ月に好発
・男児に多い
・夜間睡眠中に多い
・人工栄養児に多い
・うつぶせ寝にしたときの呼吸中枢系の覚醒反応異常!?
あくまで除外診断的に診断されるので、特に窒息事故、代謝異常、虐待などの犯罪、などとの鑑別は怠
らないようにしてください。
-8-
★乳幼児検診
乳幼児の成長・発達の評価や、疾病などの早期発見と適切な対応が最大の目的です。その他、親業
(parenting と言います)の支援や、育児・疾病の予防についての指導なども行われます。核家族が当
たり前になった現代の日本では、後者も大きな意味をもつかもしれません。ところで、皆さんの実家
の引き出しに眠っているであろう、母子健康手帳、各検診や予防接種の記録があるはずですが、これ
はいつもらうものでしょうか?
…こたえは妊娠が判明した時、です。生まれる前から母子の状態をチェックしていくんですね!!
★予防接種
かつて予防接種は、社会防衛のために義務として集団接種を行っていました。つまり自分を守るこ
とだけが目的じゃなかったんです。しかし近代では、個人防衛のために努力目標的に、個別接種を行
うスタイルに変わってきています。これの何が問題かといえば、接種率の低下が挙げられます。たと
えば、日本は麻疹の接種率が70%で、世界の中では低い方です。海外では日本人から麻疹がもちこ
まれることを非常に嫌います。逆に現在でも集団接種なのはBCGとポリオです。これはおさえとこ
う。
さて、予防接種の種類はよくテストに出るそうなのでまとめて覚えて。
1.予防接種法により指定されるもの
定期接種…絶対受けなきゃいけないやつです。
DPT、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎
臨時接種…現在想定される疾患はないとされてますが、新型インフルエンザのワクチンができた
としたら、これに含まれるのではないか、ということです。
任意接種…受けたい人だけ受ければいいやつです。あたしは全部打ったことあみたいです(苦笑)
インフルエンザ、水痘、おたふくかぜ、B型肝炎
2.結核予防法により指定されるもの
これはもうBCG
ですが、以前はツ反陰性の人にだけ打っていましたが、昨年からツ反なしでいきなりBCG
を打つことになったのでした。これは乳児ではほとんどが陰性であること、ツ反の数日後に
連れてくる面倒が嫌われること、ツ反陽性者に接種しても問題ないこと、などから変わった
と、どこか別の授業でやりましたね。そんなこんなで、そのうち定期接種に含まれることに
なるだろう、と先生は言ってました。
次はしょっちゅう出てきてる分類だからもう覚えてるかな?
1.生ワクチン(弱毒化ワクチン)
ポリオ、麻疹、風疹、水痘、ムンプス、BCG
2.不活化ワクチン
DPT,日本脳炎、インフルエンザ、B型肝炎
それから、もっと詳しい予防接種スケジュールが授業プリにもあるけど、よく見えないので、見えるプ
リントもあるよっていうのは前にML流しました。スケジュールは毎年のように変更されるからおいつ
くのは大変だけど、一応は頭に入れたほうがいいらしいですよ。まぁ、今回は変更されたMRワクチン
のとこだけでも覚えておけばいいんじゃないかな?
-9-
授業プリではその後も詳しい表がありますが、どこまで覚えるかは各自にオマカセ♥
あとはこまごました注意を述べて終わります。
☻予防接種の間隔について
ワクチンのような、免疫に大きく働きかけるものを、連続して打ったら大変なことになりそうですよ
ね。まぁ不活化ワクチンはさほど強くないので、1週間あければ不活化ワクも生ワクも打てちゃいます
☆一方生ワクは4週間あけないと、不活化ワクも生ワクもしちゃダメです。つまり、間隔は次に打つワ
クチンの種類によるのではなく、前に打つワクチンによって決まるということですね。
☻予防接種不適当者と予防接種要注意者について
授業プリにあるままなので、割愛します。一応見といてね。
☻副反応(健康被害)の症状
言葉の問題ですがワクチン接種により出てしまった好ましくない事態は、薬でいう副作用という言葉
を用いず、副反応と言います。これは全身反応と局所反応に分けられ、前者は発熱、けいれん、ショッ
ク、じんましんが、後者は接種部位の発赤、主張、硬結、疼痛などが代表的な症状として挙げられます。
このような副反応が出たときのためにも、母子手帳には打ったワクチンのロット番号を書く欄があるそ
うですよ♪
はしょりつつも例によって長くてすみません。あと何コマ分あるんだろ~先がおもいやられますが、勉強してる
皆さんはもっとですよね。。。余計なこと読ませる暇あったら次っすね(><)
- 10 -
染色体異常と奇形症候群
5 月 11 日 1 限 黒澤先生
この回は授業プリントがない上、スライドもいただけなかったので、授業でやった内容をステップで補
いつつ作りました。
乳児死亡の原因の1位は先天異常である。また、新生児 100 人当たり5~6 人は何らかの先天異常を持
っていると考えられている。先天異常とは、出生後にみられる形態的・機能的異常の発生原因が出生前
にあるもの。先天異常は次のように分類される。
単一遺伝子病…メンデル遺伝を示すもの。全先天異常の約20%。常染色体優性遺伝が3~9/1000 人、
常染色体劣性遺伝が2~2.5/1000 人の確率で起こる。
多因子遺伝病…複数遺伝子と環境の作用による多因子遺伝を示すもの。全先天異常の約 65%を占める。
染色体異常症…染色体異常のため、複数の遺伝子について発現亢進や抑制がみられる。全先天異常の約
5%を占める。Down 症が代表的。
胎芽病・胎児病…胎生期の環境に異常があったために起こる。外因性であり、遺伝性は認められない。
全先天異常の約10%を占める。
Ⅰ
染色体異常のメカニズム
染色体異常の95%は自然流産し、自然流産の約50%は染色体異常が原因である。
染色体異常を分類すると、数的異常、構造異常、モザイクとキメラがある。
① 数的異常
減数分裂が起こる際に相同染色体が2つに分かれず、片方の細胞に集まってしまうことにより起こる
(染色体不分離)
・ トリソミー:相同染色体が3個のもの。Down 症の 21 トリソミーが有名。
・ モノソミー:相同染色体が 1 個のもの。
・ 倍数異常:本来2本ずつあるはずの染色体が3本以上ずつ認められる。
3本ずつ→3倍体、4 本ずつ→4倍体
(18 トリソミー)
・新生児の1/10000 人
・大多数は乳児期に死亡
・精神遅滞、筋緊張亢進
(13 トリソミー)
・新生児の1/15000 人
・18 トリソミーよりさらに短命(1 ヶ月以内に死亡)
・重度の中枢神経の奇形
・指が足りない
・心奇形・腎奇形
※ダウン症は後でまとめてやります。
② 構造異常
配偶子形成の過程において、染色体に異常な切断や再結合が起こると構造異常となる。
・転座:1 個の染色体の一部分が他の染色体に付着しているもの
- 11 -
他に挿入、逆位、重複、欠失などがある。
※
転座について。
一口に転座といってもいくつかの種類があります。ここでは相互転座とロバートソン転座について軽
く説明します。
相互転座:2箇所以上で切断された染色体が他の染色体に結合転座したもの。均衡型と不均衡型があ
る。
均衡型転座…染色体に過不足なく、表現型に異常がない。
不均衡型転座…異常があり、流産死するか、重い障害を抱える。
片親が「均衡型転座保因者」の場合、子供が「不均衡型転座」を持つ可能性は、受精
時には 50%だが、かなりの確率で流産してしまい、出生できる「不均衡型転座」の
児は、母親が保因者の場合 10%、父親が保因者の場合 5%となる。
ロバートソン転座:染色体 13.14.15.21.22 番の間で短腕を失い、長腕同士が融合したも
のをいい、染色体数は 45 本である。ダウン症の原因のひとつ。
③ モザイクとキメラ
1個体において1つの受精卵由来にもかかわらず、染色体構成が異なる2系統以上の細胞集団が混在す
るものを「モザイク」、それが異なる2個以上の受精卵に由来する場合を「キメラ」と呼ぶ。
Ⅱ
さまざまな染色体異常
ここでは授業で触れた染色体異常疾患について書きます。やっぱダウン症が一番大事!
① ダウン症候群
常染色体異常の中で頻度最多。発生率は1/600~700 人。しかし、母親が 35 歳以上を過ぎての出産
になると危険率は急速に上昇する。
原因)
a. 21トリソミー(95%):遺伝性はない。85~90%が母親の減数分裂由来。
b. 転座型(5%):母親が保因者となって遺伝性を認めるものがある。同胞再発危険率
は非常に高い。
c. モザイク:遺伝性はない。症状が軽め。
症状)
・ダウン様顔貌…つりあがった目尻、両眼隔離、鼻根部扁平、太く短い首など
・筋力低下(floppy infant)
・身体発達遅延…座位、独り歩きなどが遅い
・知能障害…その程度はまちまち
・小頭症…7~9歳になると頭囲増大がほとんどなくなる
・体型は肥満傾向
・中耳炎や眼疾患も多い
・脱毛
・半数の児に心奇形合併…心内膜床欠損症、心室&心房中隔欠損症、動脈管開存症
・約1%に白血病の合併、約8%に消化管奇形
治療・予後)
治療は対症療法。平均寿命は40~50歳。
- 12 -
② その他の染色体異常(時間なければとばしていいです)
・Wolf-Hirschhorm:4 番短腕の先が欠損。口唇口蓋裂・目がクリクリ
・Prader-Willi 症候群:父由来の 15 番染色体が切れてなくなる
・Angelman 症候群:母由来の 15 番染色体が切れてなくなる
症状は上二つ同じで、筋緊張低下・目がアーモンド様・色白・肥満・精神遅滞
・Williams 症候群:7番長腕の 11.23 が欠損。唇が厚い・中等度の精神遅滞
・Pallister-killan 症候群:12 番染色体短腕が増える。ぶっきらぼう・巨大児
・Millker-Diller 症候群:17 番染色体短腕 13.3 が欠損
四角い顔・唇が薄い・重度の脳奇形・難治性のけいれん
・Sotos 症候群:過成長・発達遅滞・大頭症
Ⅲ
遺伝カウンセリングとは?
患者・家族のニーズに対する遺伝学情報および、すべての関連情報を提供し、患者・家族がそのニー
ズ価値・予想などを理解したうえで、意思決定ができるように援助する医療行為である。
Ⅳ
染色体分析(軽く触れただけなので、時間がなければ飛ばしていいです。)
FISH 法:蛍光で染色体を光らせる。
SKY 法:染色体を色分けする。
M-FISH 法:染色体のバンドごとに色分けする。
CGH 法:染色体コピー数の変化がわかる。
- 13 -
新生児の特性と疾患
5 月 2 日 2 限 関先生
Ⅰ
用語
・新生児
…日齢0~27 の乳児のこと
・新生児期…妊娠・分娩の影響が消失し、子宮内生活から子宮外生活への生理的適応過程がほぼ完了す
るまでの期間
(早期新生児期…日齢0~6、後期新生児期…日齢7~27)
・周産期
…出生周辺期のこと。妊娠22週~新生児期早期まで
(胎児期、新生児期を含む広い概念)
・出生体重…生まれたときの体重
・在胎週数…最終月経第1日目から起算した満週数(在胎2週までは胎児はいない)
・胎齢…受胎した日から起算したもの
・日齢…生後24時間までを日齢0(または、0生日)と呼ぶ
・生産(せいざん)…在胎22週以後に生まれた場合のこと
・流産…在胎22週以前の晩出のこと
・新生児死亡率…出生数 1000 に対する後期死産数
(妊娠満22週以後と早期新生児死亡数の合計)
Ⅱ
新生児の分類(ICD-10)
① 出生体重による
低出生体重児
出生体重 2500g 未満の児
36 週以降くらい
極低出生体重児
出生体重 1500g 未満の児
この辺りから呼吸障害などの発生多くなる
超低出生体重児
出生体重 1000g 未満の児
1000g で助かる確率は 9 割前後
超巨大児
出生体重 4500g 以上の児
難産。分娩損傷(鎖骨骨折など)に注意
② 在胎周数による
早産児
在胎 37 週未満で出生した児
正期産児
在胎 37 週以上 42 週未満で出生した児
過期産児
在胎 42 週以上で出生した児
痩せたり、低 02 状態になり
やすい
③ 出生体重と在胎周数による
Light for dates baby
出生体重が胎児発育曲線の 10% tile 未満で、身長が 10~
90% tile の児
Small for dates baby
出生体重と身長が胎児発育曲線の 10% tile 未満
Appropriate for dates baby
出生体重が 10%以上、90%未満の児
Heavy for dates baby
出生体重が 90%以上の児
- 14 -
Ⅲ
新生児の特性
新生児の特性は以下の5つが挙げられます。
② 小さく脆弱
例えば、出生体重 900g の新生児では
循環血液量は 0.9kg×80ml=約 70ml
③ 様々な機能が未熟
・ 体温調節…筋肉が震えることができないから
・ 腎臓
・ 肝機能…解毒作用が低い
・ 呼吸循環器
・ 免疫能…細胞性免疫とか(殺菌能が特に弱い)4ケ月~自分で作ることができる
④ 出生前環境が残っており、母体の影響が大きい
(母体の疾患の影響)
・ 内分泌疾患
・ 自己免疫疾患…ex バセドー病(IgG が胎盤を通過してしまう)
(母体への薬剤投与での影響)
・ 向精神薬、抗てんかん薬…薬が切れると興奮してしまう
・ 薬物耽溺…ex コカインは血管収縮剤→胎児に血が行かなくなってしまう
・ アルコール…胎児アルコール症候群
・ タバコ…喘息の子供
⑤ 急速な発育、発達が認められる(生後 3 ヶ月で 6000g になる)
Catch up growth …何らかの原因(病気とか)で一時的に成長が止まっても、その後
で成長が追いつくことのできる能力
可塑性…大人に比べて再生する能力が強い
⑥ 母子関係の確立に重要な期間
Ⅳ
呼吸器
① 発生
呼吸器系は内胚葉起源で最初は前腸とつながっている。胎生4週ころに胎芽が前腸から発生し、二つの
気管支芽に分岐する。右に3葉、左に2葉の肺葉ができて、その後2分岐を繰り返し細気管支、肺胞が
形成され、毛細血管が発達する。胎齢9~10 ヶ月で肺胞原基ができ、呼吸が開始されると終末細気管支
の末端が拡張して機能を持った肺胞となる。
② 呼吸の開始
・ 臍帯血流の途絶による血液の変化(ph↓、PaO2↓、PaCO2↑)
・ 情動反応(音、光、温度などによる刺激に驚く)
・ 顔への酸素の暴露
以上のことによって新生児は呼吸を開始する。
- 15 -
③ 新生児の呼吸の特徴
〔解剖学的特徴〕
・ 肺胞の面積が成人の50%と小さいにもかかわらず、代謝率は成人の3倍に及ぶのでガス交換
能力としては成人の1/6にすぎない。
・ 気道が細いので分泌物などの影響を受けやすく、無気肺や肺気腫を起こしやすい。
・ 気道、気道を支える組織が脆弱。
・ 肋骨の走行が水平に近く(樽状胸郭)、横隔膜が高位な上に、胸郭が軟らかく呼吸筋の力が弱
いため、胸郭の拡張という運動には不利。そのため呼吸運動は横隔膜優位の腹式呼吸となり、
浅くて速い呼吸になる。ちなみに胸式呼吸への移行は7~8歳ころ。
〔生理学的特徴〕
・ 呼吸調節能が未熟
・ 肺血管抵抗が高い
・ 胎児ヘモグロビン(HbF)が多い。HbF は酸素との結合能が高いので低酸素の環境である胎
児では本来の性能を発揮するが、出生後の環境では酸素運搬においては不利。
・ 強制的鼻呼吸
・ 肺サーファクタント産生能が未熟
④ 新生児の呼吸障害
呼吸障害が起こる原因としては、気道疾患が最も多く、ほかに心疾患、ヘモグロビン低下をきたす血液
疾患、中枢神経系の異常などがあります。今回の授業では新生児の急性呼吸障害である「呼吸窮迫症候
群」「胎便吸引症候群」
「新生児一過性多呼吸」について学びました。
☆呼吸窮迫症候群(RDS)☆
羊水中の胎児の肺は肺水で満たされ萎んでいる。出生時の第一呼吸で、新生児の肺では空気の流入と肺
胞水の吸収が起きる。開かれた肺胞表面に空気-液体の界面が生じると、そこに表面張力が働き、肺胞
は縮もうとする。そこで、Ⅱ型肺胞上皮細胞から肺表面活性物質(サーファクタント)が分泌され、表
面張力を軽減して肺胞が縮まないようにする。しかし、肺が未熟だとサーファクタントの分泌が不足し、
肺胞は表面張力に負けてつぶれてしまう。このような病態を呈するものを呼吸窮迫症候群という。サー
ファクタントは在胎28週ころから肺胞内に分泌されるため、未熟児に多い。
(症状)
・ 生直後2~3時間で呼吸窮迫症状が出現する。具体的には多呼吸(60回/分以上)、陥没呼吸、呻
吟、鼻翼呼吸、チアノーゼとなる。
・その後呼吸窮迫症状が急速に進行し、24~48時間で極期となる。
・そして48~72時間でサーファクタント分泌が徐々に増して呼吸困難は軽快する。
(検査所見)
胸部 X 線所見
・air bronchogram(気管支透亮像)
空気に満たされた気管支が虚脱した肺胞と重なって写ることにより得られる像
・reticulogranular pattern(網状顆粒状陰影)
虚脱した肺胞と、広がって機能している肺胞が混ざり合って存在することから見られる像
- 16 -
以上は生後48時間後くらいに見られる。また、無気肺が肺野全体に広がれば、スリガラス状陰影を示
すようになる。
(治療)
呼吸窮迫症候群の治療は、昔は肺胞がつぶれないように人工呼吸器で呼気終末に陽圧をかけ、後は肺サ
ーファクタントが分泌されるまで待つだけだった。現在は人工肺サーファクタントを気道に直接注入す
る画期的な治療が行われるようになり、死亡率は10%前後に低下している。他に酸素投与や人工換気
の治療がある。
☆胎便吸引症候群(MAS)☆
胎便汚染された羊水を吸引したためにおきる呼吸障害。胎便は腸粘膜上皮、胆汁、嚥下した羊水などが
混ざったもの。胎便はねばねばしているため物理的に閉塞を起こしたり、化学的に炎症を起こして、無
気肺や空気漏出症候群(気胸、縦隔気腫)になる。胸部 X 線所見でも気胸、無気肺、過膨張が認められ
る。治療は、気管内挿管して吸引、人工肺サーファクタントを使って洗浄を行う。他に呼吸管理として
酸素投与や人工換気も行う。
☆新生児一過性多呼吸(TTN)☆
通常、胎児の肺に充満する肺液は分娩前48時間ごろより分泌が低下し、分娩を通じて吸収される。し
かし、最初から予定していた帝王切開などのストレスのない分娩では、機械的排出が働かず、肺液の吸
収が悪くなる。こうして肺間質に液体が貯留したままだと、1回換気量が減少してしまい、多呼吸にな
る。出生後数分から数時間にかけてた呼吸、呻吟、軽度陥没呼吸、軽度チアノーゼを起こす。治療は酸
素投与のみで、生後48時間ごろには軽快する。
Ⅴ黄疸について
黄疸と呼ばれる皮膚の黄染は、高ビリルビン血症によって起こる。通常、生体内では以下のことが起こ
っている。
老化した赤血球が分解された際に間接ビリルビンができる
↓
間接ビリルビンは肝臓でグルクロン酸抱合を受けて水溶性の直接ビリルビンとなる
↓
直接ビリルビンは胆汁の一成分として十二指腸内に分泌され、腸内細菌によってウロビリノーゲン
となり、便として排泄される。
↓
腸内のウロビリノーゲンの一部はβ-グルクロニダーゼにより腸管から再吸収されて肝臓に戻り
(腸肝循環)
、心臓を経て腎臓に至り、尿中にウロビリノーゲンとして排泄される。
また、血液中の直接ビリルビンの一部も、尿ビリルビンとして排泄される。
ただし、間接ビリルビンは不溶性のため尿中に出現はしない。
今回の授業で扱ったのは「生理的黄疸」「新生児溶血性疾患」「ビリルビン脳症(核黄疸)」です。
☆生理的黄疸☆
新生児は正常でも
・ グルクロン抱合酵素の活性が低い
- 17 -
・ 多血の状態にある(胎児の時は血中酸素濃度が低いから)
・ 胎児ヘモグロビンを持つ赤血球の寿命が短い
・ 腸肝循環能力が高く、ビリルビンが排泄されにくい
・ ビリルビンを肝細胞に取り込む、Y-蛋白が少ない
などの理由から、出生後に12mg/dl 程度の一時的な高ビリルビン血症を経る。
これを新生児の生理的黄疸といい、90%以上に見られる。生後3日ころ出現し、約二週間で消退する。
この生理的黄疸の強いものを新生児特発性高ビリルビン血症という。
☆新生児溶血性疾患☆
血液型不適合があると、胎児の赤血球(抗原)が母体血液を感作し、母体内に抗体が産生される。その
抗体 IgG が胎盤を通って胎児に移行し、そこで抗原抗体反応を起こし溶血現象が生じる。溶血が起こる
ことに反応して骨髄機能が刺激され、髄外造血が更新して末梢血中に赤芽球が出現するようになった状
態を胎児赤芽球症と呼ぶ。溶血の原因には RhD 不適合と ABO 不適合のふたつがあるが、Rh 不適合の
方が ABO 不適合よりも胎児赤芽球症を起こしやすい。
Rh 血液型不適合による
特徴
ABO 血液型不適合による
Rh(-)の母親が Rh(+)の胎児の分娩
O 型の母親が A または B 型の胎児を妊娠
時に、胎児の赤血球が母体へ移行して感
したとき、初産でも生じる。それは、食
作され、Rh(+)に対する抗体ができ
物などにも抗原性があり、母は既に抗体
る。第一子では溶血はおきない。
を持っていることがあるから。
↓
第2子目に Rh(+)の胎児を妊娠する
IgG が高いと可能性が高いといわれてい
と溶血。危険!
る。
*ただし分娩時に母体に抗 RhD 抗体を
筋注することで、感作される前に RhD
(+)の血液を破壊し予防できる。
症状
貧血免疫性胎児水腫
生後24時間ころからの早発性黄疸
重症黄疸
貧血
貧血
診断
治療
母体血清→間接 Coombs テスト(+)
児赤血球→直接 Coombs テスト(+)
児赤血球→直接 Coombs テスト弱陽性
光線療法
光線療法
交換輸血(Rh(-)の血液を用いる)
交換輸血(O 型血球+AB 型血漿の合成
(γ-グロブリン大量投与)
血)
※ Coombs テストとは…抗赤血球抗体を検出する検査法
・ 直接 Coombs テスト…自己の赤血球に結合している自己抗体を検出
・ 間接 Coombs テスト…妊娠や輸血で産生された同種赤血球抗体を検出
ABO 不適合における児の直接 Coombs 試験が弱陽性となる理由は、児赤血球の A 抗原、B 抗原の抗
原性が低いためと考えられている。
※ 胎児水腫とは
胎児に高度溶血が起こり貧血が高度になると、高拍出性の心不全、低蛋白症がおこり、胎児は著名な
浮腫状態となり胎児水腫と呼ばれる。
- 18 -
※ 光線療法とは
皮膚に光を当てることで、ビリルビンが水溶性に変化し、ビリルビンの尿中への排泄を促す。またビ
リルビンの神経毒性も低下するので、脳への毒性も低くなる。
※ 交換輸血とは
交換輸血によって、血中に含まれるビリルビンや抗体の量を下げることができる。この際、感染、血
栓形成、出血傾向、低カルシウム血症、高カリウム血症、アシドーシス、低体温を起こす危険がある
ので注意が必要。
☆ビリルビン脳症(核黄疸)☆
通常赤血球が破壊されたときに生じる間接ビリルビンは脂溶性であるために、血液中にはアルブミン
と結合して存在する。しかし、血漿蛋白が少ないと血液に溶けきれない間接ビリルビンは、脳の組織に
沈着し、脳細胞のミトコンドリアにおける電子伝達系を破壊する。すなわち、ビリルビン脳症は間接ビ
リルビンの神経毒による脳障害である。
症状)中枢神経障害
筋緊張低下、嗜眠→高熱、意識障害、痙攣、除脳硬直→小児麻痺、感音性難聴
治療)早期に発見して光線療法(ビリルビンを水溶性、神経毒性低下させる)、交換輸血(ビリルビンの
排除)を行う。
- 19 -
未熟児
5 月 2 日 3 限 西巻先生
この授業は、一つ前の授業と内容が被っている所が多いので、そこは省きます。
Ⅰ未熟児とは?
出生体重や在胎週数からの分類は前回参照。
・臨床所見からの分類
胎外生活に適応するのに十分な成熟度に達していない未熟徴候を示す児。
正期産でも体重が大きくても、未熟徴候があれば未熟児。
Ⅱ未熟児はどれくらいいいるのか?
出生体重から見ると 12 人に 1 人の割合
基準
割合
死亡率
低出生体重児
出生体重<2500g
全出生児の 8.4%→1/12 人
極低出生体重児
出生体重<1500g
全出生児の 0.6%→1/167 人
1000g 以上
3.8%
超低出生体重児
出生体重<1000g
全出生児の 0.2%→1/500 人
500g 以上
15.2%
500g 以下
62.7%
在胎週数からみると、22 人に 1 人の割合
頻度
在胎 37 週未満(9 ヶ月)
全出生児の 4.5%
1/22 人
在胎 32 週未満(8 ヶ月)
全出生児の 0.5%
1/200 人
在胎 28 週未満(7ヶ月)
全出生児の 0.2%
1/500 人
在胎 24 週未満(6ヶ月)
全出生児の 0.03%
1/3333 人
Ⅲ
ダイエットと低出生体重児の関係
通常、出産直前の体重は妊娠前より7~10kg 増える。しかし最近はダイエットをする母親が多く、胎
児の発育に悪影響を与えている。このような妊婦は低出生体重児を生む比率が高くなる。低出生
体重児は胎内成長が不十分で、乳幼児期に病気にかかりやすく、発達の遅れも見られる。また、
メタボリックシンドロームとの関係も指摘されており、大人になって糖尿病や高血圧、心筋梗塞
などの発症率が高まる。
Ⅳ
乳児死亡率
1000 人中、1 歳の誕生日を迎えられなかった児の数。
例:乳児死亡率 3.2=1歳までに死亡する児が 3.2/1000 人
日本ではこのくらい。
Ⅴ
未熟児はどれくらいの後遺症を残すか?
超低出生体重児(出生体重<1000g)で何らかの神経学的な後遺症を残す割合は、約25%である。
また、普通学級に通える割合は約 85%。具体的には下記。
- 20 -
・ 脳性麻痺
12.3%
←通常の約 60 倍
遅滞(IQ<70)は 18.6%
・ 精神運動発達遅滞
境界(IQ71~84)20.9%
通常の約 20~40 倍
・ てんかん
Ⅵ
5.4%
←通常の約 20 倍
未熟児の病気
(頭蓋内疾患)
・ 無呼吸発作(呼吸中枢の未熟性により起こる)→低酸素血症→脳性麻痺
・ 脳室内出血と脳室内出血後水頭症→脳性麻痺、精神運動発達遅滞
・ 脳室周囲白質軟化症
脳室周囲の白質への虚血が病態。白質は壊死、嚢胞化し、最終的にグリオーシスとなる。
脳室周囲白質の軟化の好発部位には錐体路が走行しているため、四肢(下肢>上肢)の運
動機能障害が起こる。
→小児の脳性麻痺の1/3は脳室周囲白質軟化症が原因
※ 脳性麻痺…受胎から新生児までに生じた脳の非進行性病変に基づく永続的な、しかし変
化し得る運動および姿勢の異常。
(呼吸器疾患)
急性期
説明は前回分のシケプリ
・呼吸窮迫症候群(RDS)
・胎便吸引症候群(MAS)
・気胸
慢性期
→低酸素血症
慢性肺疾患
気管肺異形成(BPD)
Wilson-Mikity 症候群
→長期入院、在宅酸素
※ 慢性肺疾患とは
肺への何らかの障害因子(微生物、酸素、圧、量)
↓
局所の炎症反応による肺組織障害
↓
異常修復
↓
組織の化生と異形成(治療自体が障害因子となり、悪循環)
Wilson-Mikity 症候群
気管支肺異形成
先行因子
RDS(呼吸窮迫症候群)
出生体重 1500g 以下
原因
高濃度酸素、陽圧呼吸など RDS の治療後
未熟な肺組織を O2 が破壊する
発症時期
通常生後2~3 週
生後2~3週
症状
RDS に引き続く呼吸障害
呼吸障害
予後
慢性化するが、最終的には呼吸障害は消失
不良のこと多(死亡率 20~50%)
- 21 -
(消化器疾患)
・ 腸管の虚血、壊死→壊死性腸炎(腹部膨満・胆汁性嘔吐)
、消化管穿孔
・ 肝機能の未熟→黄疸→高ビリルビン脳症→神経細胞障害→脳性麻痺
・ 咽頭、食堂、胃機能の未熟→嚥下障害→気管内誤嚥→無呼吸
(循環器疾患)
・ 低血圧→ショック
・ 胎児循環遺残→右左シャント→低酸素
・ 動脈管閉鎖遅延→左右シャント→心不全→肺出血→低酸素
治療)インドメタシンを注射して、プロスタグランジンを阻害し、動脈管を閉鎖させる。
(腎疾患)
水分バランス維持障害→脱水→電解質異常→浮腫、肺水腫
電解質等バランス維持障害→低 Na 血症、高 Na 血症、高 K 血症→不整脈→アシドーシス
(皮膚疾患)
保温・保湿障害→低体温→循環障害→脱水→電解質異常
感染防御機能障害→感染、敗血症
(骨系統疾患)
未熟児骨減少症(未熟児くる病)→骨折→成長障害、機能障害
未熟児歯科異常→エナメル質現象、虫歯、癒合歯、小さい歯、永久歯の発育遅延
(眼・耳疾患)
視力障害…未熟児網膜症→失明、近視、遠視、乱視、また、弱視は多い。
聴力障害…出生体重<1000g の児では通常の約 15~30 倍
(血液疾患)
新生児の血液の特徴…多血、赤血球が短寿命
赤血球生成不足(鉄、エリスロポエチン不足)→未熟児貧血
赤血球破壊亢進→黄疸→高ビリルビン血症→神経細胞障害→脳性麻痺
白血球機能の未熟→感染、敗血症
血小板機能の未熟→出血
- 22 -
小児の細菌感染症
5 月 17 日 2 限 満田先生
昼休み直前になって先生が講堂に現れ、騒がれた授業でしたね。正直、この授業プリは使いづらいと思いま
す。ここでは、講義ノートも参考にしつつまとめてみます。
★新生児・小児感染症の特殊性
抗菌スペクトラムや副作用、代謝系などは、感染症の方でしっかり勉強してください。もちろん小児
特有の事項もあるし、過去問にも出ていますが、先生も各論的に触れているだけだったので各自必要な
ら補ってください。抗菌薬についてはきりがないから捨てるのもありかも!?
とりあえず、成人との違いについて考えてみましょう。
☻感染症の種類:
急性炎症が多いです。また、先天異常が基礎疾患となって感染の可能性を高める場合も多くありま
す。たとえば、尿路奇形による尿路感染、先天性心による細菌性心内膜炎、免疫不全による反復感染
症などです。
☻診断上の特殊性:
特異的な臨床症状が少ないです。発熱や不機嫌など、どの菌に感染しても同じような症状が出やす
いってことです。尿路感染でさえ、成人には見られる排尿時痛などの特異的症状は出ないことが多い
のでした。それから体も発達段階にあるので成人より理学的所見の判断が難しいです。検体が採取困
難なことも問題。乳幼児では痰が取れないことも多く、鼻からの菌体採取が一般的なようです。また、
髄膜炎なんかで顕著ですが、年齢によって原因菌の頻度が異なるのも特徴的です。
☻治療上の特殊性
小児に適応のある抗菌薬には制限があります。やはり、小児特有の副作用もあるので。次の3つは
とくに重要っぽいから覚えよう。
・ クロラムフェニコール→gray baby 症候群
・ テトラサイクリン→歯牙・骨沈着
・ キノロン系薬剤→関節障害(軟骨障害)
*
gray baby 症候群…出生時あるいは新生児期の児が灰白色の皮膚色を呈する症候群。致死性になることも。
また、年齢により薬剤の体内動態が異なるので、投薬しっぱなしは危険です。それから、投薬処置も
困難です。確かに子どもにとっては、カプセル1つ飲むのも大変ですよね。
★ 小児期細菌感染症
あんまり覚えたくないけど、これはもう覚えるしかない!!やっぱり子どもは弱いから感染しやすい
んです。しかも、さっき書いたように、違う菌で同じような症状が出るから、1つの症状に対してい
ろんな細菌を想定しなきゃいけません。
☻咽頭炎・扁桃炎→A群溶血性連鎖球菌
☻気管支炎・中耳炎→肺炎球菌・インフルエンザ菌
☻肺炎→黄色ブドウ球菌・肺炎球菌・クラミジア・マイコプラズマ・インフルエンザ菌
☻尿路感染症→大腸菌・クレブシエラ・プロテウス
☻腸管感染症→カンピロバクター・サルモネラ・エルシニア・大腸菌
☻皮膚・軟部組織炎→黄色ブドウ球菌・A群溶血性連鎖球菌
☻髄膜炎・敗血症→大腸菌・GBS・肺炎球菌・インフルエンザ菌
逆にまとめてみたらどうだろう…
- 23 -
・ A群溶連菌→咽頭炎・扁桃炎・皮膚軟部組織炎
・ 肺炎球菌→気管支炎・中耳炎・髄膜炎・敗血症
・ インフルエンザ菌→気管支炎・中耳炎・髄膜炎・敗血症
・ 黄ブ菌→肺炎・皮膚軟部組織炎・
・ 大腸菌→尿路感染症・腸管感染症・髄膜炎・敗血症
って感じかね。
★ 主な小児期細菌感染症
溶連菌感染症
先生いわく試験によく出る感染症です。最悪ここだけおさえましょう。
細菌学の復習ですけど、みなさんレンサ球菌といわれて説明できますか?最も一般的
な分類は溶血の程度によるもので、不完全溶血するものがα群、完全溶血を示すものが
β群、全く溶血しないのがγ群です。でも、臨床で問題になるのはほとんどがβ群で、溶血するんだ
から溶血連鎖球菌略して溶連菌。これがさらにA群とB群に分類されています。B群はつまりGBS
のことで、新生児の重症感染症になるのでした。というわけで、ここで説明するのは主にβ群のA群
=A群溶連菌ということになります。こいつが引き起こすのは化膿性レンサ球菌感染症です。わかっ
てるよそんなの!って思ったらごめんなさい。一応ステップに詳しく説明されてたんで復習してみま
した。
症状としては次のようなものがあります。
① 化膿性鼻咽頭炎:特に扁桃炎を起こす起炎菌としては最も多いものです。
② 猩紅熱:扁桃炎に加え、菌の発赤毒による皮疹が出たものです。決して特異的とはいえないの
ですが、イチゴ舌や口囲蒼白(鮮紅の発疹が口の周りだけ出ないからそう見える)はキーワー
ドとして重要です。発心は1週間位で落屑します。でも、最近では典型例は見られないそうで
す。
③ 膿痂疹:黄ブ菌によるものが有名だけど、溶連菌でもあります。急性びまん性深在性のものと
して、丹毒と蜂巣炎があります。
④ 非化膿性合併症:感染そのものによるというより、それに対する免疫反応で起こっているので
遅発性で2~4週間後に発症します。急性リウマチ熱・舞踏病・糸球体腎炎は有名です。
免疫クロマトグラフ法で迅速診断します。ASO・ASK・抗デオキシリボヌクレアーゼBの値
をみます。治療の第一選択はペニシリン製剤で 7~10 日投与します。
結核
成人の場合、結核菌の初感染時に発症すること(一次性結核)はまれですが、乳幼児結核はむし
ろほとんどこれです。他にも成人型結核と乳幼児型結核の違いは結構あって授業プリに表があるけ
ど重要そうなとこだけ挙げてみましょう。
☻ 感染経路…乳幼児では家族内感染、年兆時では家族外からの集団感染が多いです。
☻ 病態…成人の病巣は空洞形成が多いですが乳幼児は結核腫です。
☻ 検査…成人では単純X-pで所見がとれますが、乳幼児ではCTの方が有用です。
γグロブリン値は成人ではIgGが上昇しますが、乳幼児はIgMが上がります。
また、検鏡・培養の陽性率が 15%と成人に比べてかなり低いです。
☻ 臨床…成人では微熱程度ですが乳幼児では高熱です。一方、成人型結核といえばまちがいなく出
る呼吸器症状は乳幼児では全くないかあっても軽度です。髄膜炎・粟粒結核の頻度が高い
のも特徴的です。一般症状は不機嫌・重症感と、なんとも特異性のない感じです。
☻治療…副作用の問題から抗結核薬の選択肢は限られています。耐性菌分離についても、成人では増
加傾向が確認されていますが乳幼児ではそもそも正確な情報が得られずよくわかりません。
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授業では相当詳しい診断方法や治療について扱ったのですが、そこまで詳しい話は今回はいらな
いのではないかな。他のことはだいたい大人と一緒だし。あ、診断に用いる QuantiFERON-2G ってい
う指標が4歳以下だと知見が得られないって強調してた気がするので、余裕があればせめて名前だ
けでも頭の片隅に。
肺炎
学童はウィルスなど非細菌性おおいですが、乳幼児では今でも細菌性肺炎が比較的あります。起
炎菌はインフルエンザ菌・肺炎球菌・黄ブ菌が多いです。
成人同様、発熱・咳嗽などの臨床症状、加えて画像や血液検査などの一般的な理学的所見から診
断します。ただし、炎症性疾患ではありますが、WBCは増加しないことが多く減少している時す
らあるので要注意です。治療には注射用βラクタム薬やカルバペネム薬を用います。
百日咳
某O田教授の咳の真似はあまりにも有名ですが、百日咳菌による呼吸器感染症です。
症状が以下の4期に分かれます。
① 潜伏期(約 10 日)
② カタル期(約 10 日):伝染力が最も強い時期ですが、この段階ではただのか
ぜとの区別が困難です。医者泣かせだ。
③ 痙咳期(約 40 日):百日咳特有の症状が出てきます(特に夜間)安静時はな
んてことないのに、刺激を与えると連続性咳嗽発作(スタッカート)が起こります。さん
ざん咳をしたあと何とか息を吸おうとすると、笛声(Whooping)が起こります。これを繰
り返すことをレプリーゼと言います。
④ 回復期(約 20 日)
白血球が 1.5 万位に増多します。でも、二次感染がない限りCRPや血沈は正常で、発熱もしませ
ん。一般的な培地では繁殖しないので Bordet-Gengou 培地というもので鼻咽頭粘液を培養して抗体検
査します。
治療に関しては、痙咳期に入ってしまうと抗生剤が効きません。カタル期にマクロライド系抗生剤
を投与します。しかし、ワクチンの予防接種が一番有効でしょう。5ヶ月以内の乳児では重篤で死に
いたることもあるので、DPT3種混合は生後3ヶ月とかなり早期から行われています。
*
DPT…ジフテリア・百日咳・破傷風
だよ
伝染性膿痂疹
授業プリには載ってないけど、授業ではやりました。黄ブ菌の表皮剥奪毒素によって水疱が形成
されます。感染性が高く、周辺部や接触したほかの児童にもどんどん伝染するので「とびひ」とも
呼ばれます。また、この表皮剥奪毒素が血中に入り全身に産婦されるといわゆるSSSSとなりま
すが、これは全身性の中毒反応によって生じているので、伝染性膿痂疹とは病態が異なります。
感染性腸炎
食中毒ですね。原因菌は、おなかの中で増殖する感染型と、加熱殺菌しても意味のない毒素型に
分類されます。毒素型のほうが感染後早くに症状が現れます。
それぞれの代表的原因菌とそれに対応する治療薬をまとめます。
感染型:1位
サルモネラ菌→ホスホマイシン・ニューキノロン
2位
下痢原性大腸菌→ホスホマイシン・ニューキノロン・カナマイシン
3位
腸炎ビブリオ→ニューキノロン・カナマイシン
4位
カンピロバクター→マクロライド・ホスホマイシン
毒素型:ボツリヌス菌・ブドウ球菌
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その他
とりあえずあとは、臨床的なことなんかはどこかと重複するとおもうので、対応する抗菌薬だけ挙
げておきます。
☻髄膜炎
新生児や乳児でで哺乳力低下を見たら、必ず大泉門膨隆がないか見てください。あったら髄膜炎
かも。
新生児の起炎菌:GBS・グラム陰性桿菌(大腸菌とか)
→PCG・AMPC・AMPC+GM
乳幼児・学童期の起炎菌:インフルエンザ菌・肺炎球菌・髄膜炎菌
→CTRX・MEPM・PAPM/BP・PCG・AMPC
☻尿路感染症
大腸菌→経口セフェム
いや~非常にやっかいな回でした。むりやりまとめた感でいっぱい。なんかもれてそうだし…抗菌薬の勉
強は機会を新たにちゃんとやったほうがよさそうですね。ここで根つめるとノイローゼになるから分かる範囲
でがんばってきましょう。
看護棟にこもること5時間…今日はクラコン。早くビールが飲みたいっす(笑)
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小児のウィルス感染症
5 月 24 日 2 限 森先生
感染症の範囲や、小児の予防接種の回とも重複するので、ある程度省きつつも、やはり小児特有の疾患が多
いし、試験でもよく問われるところなので、ここではあくまで小児の範囲としてまとめていきたいと思います。要点
のみなら授業プリの方がよっぽどシンプルにできてるので、ここではステップの内容もまじえつつ、「読む」シケプ
リにしていきます。
★ウィルス感染症総論
ウィルス学でもやったからウィルスの特性みたいな話はしません。心配なら授業プリに載ってるから
見てください。で、各論に入る前に、先生が重要と言ったものについてのみウィルスと疾患名の対応表
を以下に。
DNAウィルス
・ポックスウィルス科
痘瘡ウィルス→伝染性軟属腫
・ヘルペスウィルス科
単純疱疹ウィルス(HSV=HHV-1,2)→口唇ヘルペス・口内炎
水痘・帯状疱疹ヘルペス(VZV=HHV-3)→水痘・帯状疱疹
EBウィルス(HHV-4)→伝染性単核球症
サイトメガロウィルス(CMV=HHV-5)→巨細胞封入体症
RNAウィルス
・オルソミキソウィルス
インフルエンザ→インフルエンザ感染症・関連脳症
・パラミキソウィルス
ムンプスウィルス→耳下腺炎
RSウィルス→細気管支炎
・トガウィルス
日本脳炎ウィルス→日本脳炎
風疹ウィルス→風疹
・ピコルナウィルス
ポリオウィルス→ポリオ
コクサッキーウィルス→手足口病
・レオウィルス
ロタウィルス→白色便下痢症
それから覚えなくていいと思うけど、学校届出伝染病っていう表が出てますね。ここで先生が主張し
ていたのは、出席停止期間というのは感染の可能性がある時期を示しているということくらいです。
では続々各論イっちゃいましょう!!
★麻疹
はしか
Measles
よくある子どもの感染症の中では重い病気です。10~12 日の潜伏期間を経て、発熱とともに鼻汁、咳
嗽、眼脂などのカタル症状で発症します(カタル期)。発症2日目に口内の頬粘膜にコプリック班が見ら
れるのが特徴的です。これは周囲が発赤した砂粒上の灰色の斑点で、発疹出現前にかぜとの鑑別ができ
るので有用です。さらに2日くらいすると、発疹が出現します(発疹期)。この発疹は融合傾向があり、
色素沈着を残して消退します。本来はここでまた発熱するので二峰性発熱となります。麻疹の合併症は
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呼吸器系やら中耳炎やらいろいろありますが、以下の神経系合併症が国試でもよく問われるので重要!
1つは麻疹脳炎で、発疹出現後1週間の間くらいに痙攣や意識障害を呈します。死亡率は 10%で半数
に後遺症を残します。もう1つが亜急性硬化性全脳炎(SSPE)で、麻疹発症後あるいは予防接種後、
5年以上を経て発症します。自然麻疹に罹患した方が、ワクチン接種された子どもよりも発症する率が
10 倍高く、1/10 万です。進行性の神経障害をきたし、数年以内に死亡します。
★風疹
三日ばしか
Rubella
現在流行中だそうで。これは医者泣かせの疾患です。なぜなら、まず 37℃代と高熱にはならず、紅班
も融合せず特徴に乏しいため、アレルギーなんかと区別がつかないのです。そんな中比較的特徴的なの
は耳介後部リンパ節腫脹です。麻疹と違って 14~21 日と比較的長い潜伏期間を経て突然発疹が出て発症
します。この発疹は色素沈着も残さず、俗称通り3日くらいで消退します。合併症には、脳炎や血小板
減少性紫斑病、成人女性に多い関節炎などがありますが、頻度は低いです。最も重要な合併症は妊婦が
かかった場合の先天性風疹症候群です。産科でもやったので詳細は省きますが胎児の先天奇形として現
れるのは「感音性難聴・先天性心疾患・白内障」でしたね。
★水痘
みずぼうそう Chickenpox
水痘と帯状疱疹のウィルスは同じVZVでした。初感染の臨床像が水痘で、再起感染である帯状疱疹
が 10 歳以下に発症することはまれです。潜伏期間は2~3週間で、紅班→水泡→膿疱→痂皮という経過
を辿りますが、すべての発疹が痂皮になるまでは伝染性があるので注意です。髪のつけねなど、
「生え際
の発疹」がみられるのが特異的です。治療にはアシクロビル(ゾビラックス)を用います。ここでアス
ピリンを服用すると Reye 症候群を発症することがあるので注意です。
*Reye 症候群…小児に見られる急性脳症に非炎症性・無黄疸性の肝炎を伴うもの
★単純ヘルペス
基本的なことは知っていますよね。小児領域で注意したいのは2点です。1つは新生児ヘルペスで、
これは産道感染によって起こります。ほとんどが顕性感染になるうえ全身臓器の感染や脳炎をきたすの
で、致死率が高いです。もう1つはカポジ水痘様発疹症です。これはアトピー性皮膚炎をもつ乳幼児の
湿疹部位に単純ヘルペスが感染したときに見られ重症化します。カポジというとHIVっぽいし、水痘
とか言われると1つ前のVZVみたいな気がしますが、HSVなのでテストでよくひっかけられる所ら
しいです。要チェキ!
★突発性発疹
Exanthema Subitum
生まれて初めて出す高熱はこれであることが多く、ほぼ全員が乳幼児期に罹患します。HHV6 型か
7型によって起こりますが、人によってはそれぞれに感染し、2回起こすこともあるそうです。カタル
症状もなく、高熱の割に機嫌がよいのが特徴的で、発熱後4日目くらいに急激な解熱とともに発疹が出
現。この発疹は3日ほどで色素沈着もなく消退します。ただし、合併症として熱性痙攣が起こりうるこ
とは覚えておきましょう。
★伝染性紅班
りんご病
パルボウィルスB19の感染で起こり、学童期に好発します。2~3週間の潜伏期を経て、感冒様症
状を訴え、その後頬に左右対称の蝶形紅班が出現し、1~2日後四肢にもレース様網目状紅班が出現し
ます。この紅班出現によって気付かれる場合が多いですが、感染力は紅班出現前がピークであるため、
- 28 -
このときにはすでに周囲に伝染しています。そんなわけで大流行を招きやすい疾患です。しかし、発熱
も軽度で、健康な児童であればほとんどが良好な経過をとります。
一方このウィルスは赤芽球前駆細胞に感染して赤血球の産生を障害する性質があるため、先天性溶血
性貧血が基礎疾患にあると赤血球の無形成発作を起こし、重篤な貧血症状を呈することがあります。ま
た、妊婦が感染すると胎児赤血球を破壊し胎児水腫となりほとんどが子宮内死亡します。
★伝染性軟属腫
水いぼ
天然痘の子分であるポックスウィルス属の感染によって起こります。お風呂やプールなどを介して接
触感染し、季節変動はありません。発熱とかもなく、ただぶつぶつ発疹ができます。アトピー児では悪
化しやすいです。発疹の特徴として「てっぺんが白い」ということが挙げられます。治療法は水いぼ摂
子でつまむか、液体窒素で焼きます。どちらもかなり痛いです。私もあまりの痛さに泣きわめいて皮膚
科医を困らせた経験があります。最近では麻酔効果のあるシートをあててから治療をするらしい、と先
生は言ってましたけど。
★ヘルパンギーナ
エンテロウィルス属のコクサッキーやらポリオやらエコーやらエンテロやらによって起こります。3
~4日の潜伏期の後突然の高熱で発症し、口内粘膜に発疹ができたあと潰瘍となり痛みます。痛みで食
事ができなくなり脱水症を起こすほか、髄膜炎・熱性痙攣などの神経症状や、消化器症状が起こる可能
性がありますが、これらに注意すれば1週間ほどで治癒します。次の手足口病や、ヘルペス口内炎、ア
フタ性口内炎との鑑別を要します。
★手足口病
A群コクサッキーウィルスやエンテロウィルス 71 型などによって起こります。ヘルパンギーナもそう
ですが1歳ころに最も多く見られます。3~4日の潜伏期を経て、手と足に発疹が出現した後、水疱と
なります。この発疹は口腔粘膜や臀部にも見られます。
(ヘルパンギーナでは口腔粘膜のみ)発熱は必ず
しもありません。予後は良好ですが、無菌性髄膜炎の合併頻度が比較的高いので、注意が必要です。
★流行性耳下腺炎
おたふくかぜ
mumps
飛沫感染ですが 40%が不顕性感染です。2~3週間の潜伏期間を経て、そこそこの発熱とともに両側
もしくは片側の耳下腺腫脹が出現します。そうすると口を開いたり物を噛むことができにくくなってし
まいます。耳下腺開口部の発赤が特徴的です。顎下腺がやられることもあります。一般に予後は良好で、
治療は対症療法のみとなりますが、合併症も結構あります。3%は無菌性髄膜炎になります。また強い
腹痛を訴える急性膵炎、男性不妊の原因にもなる精巣炎、不妊にはならないけど成人女性に起こる卵巣
炎などが有名です。他に脳炎や感音性難聴にもなりえます。弱毒生ワクは任意接種ですが、γグロブリ
ンが効かないので、予防が重要です。
★ヒト免疫不全ウィルス(HIV)感染症
成人の感染経路や病態はもう大丈夫ですよね。HIV感染によりCD4陽性リンパ球が減少して免疫
不全症状を来たした状態になるとAIDSと呼ばれるのでした。
子どもの場合は母子感染です。この場合でも児のHIV量が多いほど進行が早く、カリニ肺炎・脳症
の合併が多くなっています。母子感染に対してはHAART療法ではなく、ジドブジンの単剤投与を行
うみたいです。
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と、ここまでが各論でした。すでに長い!予防接種のところは今川先生と相当かぶってるので飛ばす
として、先生はインフルエンザウィルスについてやたら熱く語っていました。
★インフルエンザウィルス
☻疫学:重要なのはインフルエンザで死亡する例です。
肺炎⇔10 万人あたり 10 人以上⇔ほとんどが高齢者
インフルエンザ関連脳症⇔年間 100~200 人⇔ほとんど乳幼児
☻ウィルスの構造と伝播様式:
RNAウィルスです。核蛋白質(NP)の抗原性からA・B・Cの3型に分類されますが、流行
するのは前2者です。ウィルス粒子の表面には赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)
の糖タンパクが存在しています。このNPとHA・NAのタイプを見てその年に流行したウィルス
を認識しています。
☻インフルエンザ脳症:
ステロイドパルス療法によって、死亡率こそ減ってきたものの、後遺症が残らないで完治するも
のは4割のまま不変です。基礎疾患の有無とは無関係に、突然起こります。特に日本人には多いみ
たいです。このインフルエンザ脳症に対して一部の解熱剤を用いると重篤な病態を呈するので、用
いて良い解熱剤はアセトアミノフェンだけです。他の使うと訴えられちゃうよ。あと、ワクチンを
打った場合、インフルエンザ自体の発症を抑えるから脳症が起こる総数もワクチン未接種例よりは
少ないのですが、割合から考えると、脳症発症の予防にはどうもならないようです。
☻抗ウィルス薬:
有名なタミフルⓇはオセルタミビルってやつです。他にこんなのも。名前くらいなんとなく頭に
いれとくといいかも。
アマンタジン(シンメトリルⓇ)
ザナミビル(リレンザⓇ)
☻新型インフルエンザ:
いわゆる鳥インフルエンザ由来株のことですが、これはH5N1です。鳥インフルエンザにもヒ
トインフルエンザにも感染するブタさんの中でハイブリットされて、どうやらそろそろヒトに移る
ウィルスができそうらしいので大騒ぎです。現在のところヒトは全く免疫を持っていませんから、
このまま感染が始まれば疫病化してしまいます。ワクチンや抗インフルエンザ薬の生産・備蓄が急
がれます。
なんか本当に長かったけど、感染症は去年の試験でもいっぱい出ていたからはずせる部分がなかなかなくて…
てか、ここまでちゃんと読みきってくれた人(いるんだろうか)、ありがとう。お疲れ様。小児はまだまだ続きます。
お付き合いくださる方、ともにがんばりましょう!!
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小児 代謝・内分泌疾患
5 月 11 日 2 限 菊池先生
「新生児マススクリーニング」
先天代謝異常症や内分泌疾患の中には、治療せずに放置すると、死亡したり知的発達障害などをきたす
ものがある。しかし、早期発見・早期治療によりこれら障害を予防しうる疾患もある。フェニルケトン
尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ガラクトース血症、クレチン症(先天性甲状腺機能
低下症)、先天性副腎過形成症の6疾患が、新生児マススクリーニングの対象疾患である。一番代表的な
検査がガスリー法で、日本での受検率はほぼ100%です。
「ガスリー法」
細菌抑制検査(BIA 法)のこと。ある種の菌と、その菌の発育に必要なアミノ酸の阻害剤を含んだ寒天
培地を作る。その一方で、新生児の足底から採取した血液をしみ込ませた血液濾紙ディスクを作る。こ
のディスクを培地にのせて培養する。すると、フェニルケトン尿症やメープルシロップ尿症、ホモシス
チン尿症などの先天性アミノ酸代謝異常の患者では血液中に多量のアミノ酸が含まれているため、アミ
ノ酸阻害剤があるにもかかわらず、その抑制力に負けることなく菌が繁殖する、というもの。よって、
菌が増えた場合にこれらの疾患を疑えばいい。
ガスリー法では、授乳開始後5~7日という比較的早い時期に新生児にスクリーニングが行える。この
時期が選ばれるのは、出生直後では母体由来物質の影響を受けてしまうこと、授乳開始より数日で児に
蓄積した物質の体内血中濃度がスクリーニングに適する濃度に達するからである。
これから授業でやった疾患について、順番に解説します。
Ⅰ
フェニルケトン尿症
フェニルアラニン水酸化酵素の異常により、体内にフェニルアラニンが蓄積し、チロシンが欠乏する。
日本人では約 10 万人に1人で、西洋人はその2~3倍である。
症状)
・知的発達障害←神経毒性のあるフェニルアラニンの脳組織への蓄積による
・色白←メラニン色素の前駆物質であるチロシンが欠乏することによる
・赤毛
・嘔吐
・尿・汗はカビくさいネズミ尿臭
ガスリー法が普及する以前は、なかなか首がすわらないなどの症状で気づいたので、手遅れになってし
まった。
治療)
フェニルアラニン摂取制限をする。ただし、フェニルアラニンは必須アミノ酸なので、全く取らないの
はかえって駄目。低フェニルアラニン乳を与える。新生児期(生後1ヶ月以内)に発見して治療すれば、
知能障害を防ぐことができる。
Ⅱ
ガラクトース血症
ガラクトースを代謝する酵素の欠損、または活性の低下による遺伝疾患。
ボイラー法(酵素活性をみる)、ペイゲン法(血中ガラクトース濃度をみる)でスクリーニングする。
- 31 -
症状)嘔吐、下痢、肝硬変、発育障害、白内障、知的発達障害をきたす。
治療)乳糖を含まないミルクを飲ませる。乳糖は全く取らなくて大丈夫。
以下は内分泌疾患です。
下垂体前葉が分泌するホルモン
・ 成長ホルモン(GH)
・ プロラクチン(PRL)
・ 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)
・ 甲状腺刺激ホルモン(TSH)
・ 黄体形成ホルモン(LH)
・ 卵胞刺激ホルモン(FSH)
Ⅲ
下垂体機能低下症
病因)①分娩後下垂体壊死(Sheehan 症候群)
②腫瘍:下垂体腺腫・頭蓋咽頭腫・胚芽腫など。
③炎症:結核・梅毒など
④頭部外傷
⑤手術・放射線
⑥視床下部病変
☆成長ホルモン分泌不全低身長症(GHD)☆
下垂体前葉から分泌される成長ホルモンの分泌不全により低身長となる疾患。
原因)特発性が80%。器質性の原因としては、骨盤位で無理やりお産をしたことにより、下垂体前葉
の門脈が駄目になり、下垂体梗塞でホルモンが来なくなる。
診断)標準身長の-2標準偏差(SD)以下の低身長か、2年以上にわたって著名な成長率
の低下があること。成長ホルモンは測れないので、測るなら直接骨の成長を促すソマトミジン C
の血中濃度を測る。確定診断は2つ以上の成長ホルモン分泌負荷試験(インスリン、アルギニン
など)で成長ホルモンの分泌不全を認めた場合 GHD と診断される。
症状)・低身長
・甲状腺機能低下により、四肢冷汗や発汗の低下
・外性器の発達が悪い
治療)成長ホルモンを投与する。家庭で自己注射、または保護者が皮下注射する。
※ 他にも成長障害を起こす原因に、ターナー症候群、クッシング症候群、くる病、虐待による愛情遮断
性低身長などがあります。成長曲線からも病気が分類できます。成長曲線はプリントを参照してくだ
さい。
Ⅳ
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
出生前に原因がある甲状腺の機能低下であり、クレチン症とも呼ぶ。甲状腺自体に原因のある甲状腺
性(原発性)が最も頻度が多く、そのうち約50%が異所性甲状腺、約30%が欠損性である。
診断)新生児マススクリーニングにて濾紙血 TSH 高値で発見されることが多い。このときはまだ症状を
認めない。
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症状)・遷延性黄疸←母乳栄養でないのに黄疸が遷延
・ 便秘←腸管の蠕動低下による
・ 臍ヘルニア←腹筋が弱くなるため
・ 体重増加不良、発達の遅れ←生後3ヶ月で明らかになる
・ 皮膚乾燥←汗腺や皮脂腺の分泌減少による
・ 不活発
・ 嗄声
・ 巨舌
・ 浮腫
・ 小泉門の開大
治療)甲状腺剤の内服。早期発見・早期治療が大切。生後3ヶ月を過ぎてしまうと知能発達の遅れは取
り戻せない(=ガスリー法が重要)
。3ヶ月以内で治療が間に合えば、身体・知的発育共に問題は
ない。
※ 甲状腺ホルモンの働き
① 細胞の新陳代謝を盛んにする
Ⅴ
②
交感神経を刺激する
③
成長や発達をを促進する
慢性甲状腺炎(橋本病)
自己免疫疾患の一種。自己抗体が自分の甲状腺を攻撃することで、甲状腺ホルモンの異常をきたすも
の。日本に約400万人おり、男:女=1:14である。
症状、診断)
小児では成長障害、甲状腺腫で発見されることが多い。甲状腺自己抗体が陽性で、甲状腺機能が正常
か機能低下があることで診断される。他に肌荒れ、冷え性、便秘などがある。
治療)甲状腺機能低下が認められれば、合成 L-サイロキシンを内服する。
Ⅵ
甲状腺機能亢進症
最も頻度が多いものはバセドウ病。いわゆる自己免疫疾患のひとつで、TSH 受容体抗体が持続的に甲
状腺を刺激することにより発症する
症状)びまん性甲状腺腫、眼球突出、動悸、手指振戦、食欲亢進、体重減少、落ち着きがないなど
診断)上記症状に加え、血中甲状腺ホルモン値の上昇、TSH 低値、TSH 受容体抗体陽性で診断
治療)抗甲状腺剤による薬物療法。たまに、外科的治療。
予後)薬物療法による永続的治癒率は 60~80%である。
※ 甲状腺機能低下の場合も亢進の場合も、子供の場合アナムネでは成績を聞くと必ずガタガタに落ちて
いる。
※ 新 生 児 バ セ ド ウ 病 … 母 親 が バ セ ド ウ 病 の 治 療 中 の 場 合 、 生 後 10 日 く ら い に な る と 、 母
親からの TSH 受容体抗体は持っているのに、母親からもらった薬はきれてしまうため
Ⅶ
発症する。
中枢性思春期早発症(性早熟症)
視床下部-下垂体-性腺系が早期に成熟し、思春期に見られる二次性徴が異常に早期に見られる疾患。
脳腫瘍や水頭症など中枢神経系の病変を伴う器質性と、病変を認めない特発性とに分けられる。女児に
多く、女児ではほとんど特発性。一方男児では器質性(脳腫瘍・先天性副腎皮質過形成症)の頻度が高
い。
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診断)二次性徴の早発が大切。
男児:①9歳未満の睾丸・陰茎・陰嚢の発育
②10 歳未満の陰毛発生
③11 歳未満の腋毛・ひげの発生、変声
女児:①7 歳 6 ヶ月未満の乳房発育
②8 歳未満の陰毛・腋毛発生
③9 歳未満の初経
以上の症状に加えて、身長増加の促進(ただし最終的な身長は低い)、骨年齢の促進、性ホルモンの
上昇などから診断。器質性の原因もあれば合わせて検索する。
治療)器質性→原因疾患の治療
特発性→持続的な合成 LHRH アナログを 4 週間に 1 回皮下注射する
※ 月経が早く来たからといって思春期早発症だと決め付けてはいけない。膣原発の腫瘍の可能性もある
ので、月経以外の点で乳房の発育などにも注目するといい。
次は副腎皮質疾患です。
視床下部→副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)
→下垂体の ACTH 産生細胞→副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)
→副腎皮質→アルドステロン・コルチゾール・アンドロゲン分泌
コルチゾール・アンドロゲンの分泌調節を行うのは ACTH
アルドステロンの分泌調節を行うのはレニン-アンジオテンシン系
Ⅷ
先天性副腎過形成症:CAH
副腎皮質でのコルチゾールやアルドステロンの合成に関与する酵素の、先天性欠損や機能低下により、
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)やレニン-アンギオテンシン系の過剰状態を生じ、副腎皮質が過形成
したものをいう。CAH で最も頻度が多いのは 21 水酸化酵素欠損症で、約85%を占める。発生頻度に
男女差はない。生まれたときの性の判断が難しい。
診断)新生児マススクリーニングにて 17 ヒドロキシプロゲステロンの高値で発見される。
症状)男性ホルモン過剰による男性性成熟症状、女性の男性化症状、塩喪失(ナトリウム低値)
治療)コルチゾール等の副腎皮質ホルモンの補充と食塩の投与を行う。ストレス時には投与量を増量す
る等の指示をしておく。
Ⅸ
中枢性尿崩症
下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモン(ADH)の分泌不全により多尿となる疾患。
特発性と器質性があるが、小児では器質性(脳腫瘍・外傷後)が多い。
症状)多因・大量低張尿
診断)心因性多飲との鑑別診断は、水制限試験により心因性多飲では尿が濃縮されること、腎性尿崩症
との鑑別はバソプレッシン感受性試験で腎性尿崩症では尿が濃縮されないことにより行う。
治療)ADH の合成アナログである DDAVP の点鼻療法。水中毒に注意。
Ⅹ
Ⅰ型糖尿病について
授業では「みんな知ってるよね」と全く触れませんでしたが、去年のテストに出てるので各自勉強して
おいてもいいかと…ここでは授業でやってないのでとばします。
- 34 -
小児の呼吸器疾患
5 月 12 日 1 限 菊池先生
授業プリでは急性喉頭蓋炎を見落として、後遺症が残った患児に生涯介護費を負担する判決をくだされた救
急医療センターの医師の話から始まっています。小児科を考えない人でも、呼吸器疾患は直接命にも関わるの
で、はずせない分野ではないでしょうか??この回も授業プリに沿って話を進めます。
★小児の救急
小児の救急といえば80%が呼吸器疾患によるものです!成人に比べて心疾患や卒中などが少ないっ
てことは想像がつくはず。
たとえば、大人が倒れたら、まず救急車を呼んで、来るまでの間CPRで何とか持たせ、早期の除細
動をかけ、ALSを行っていくのが一般的な救急です。しかし、子どもの場合は違います。まずは様子
を観察すること、必要ならCPRを先に行います。そのうえで、救急車を呼び、ALSにつなげます。
子どもの場合は何よりも呼吸の確保が大事だということです。
というのも、小児の心肺停止パターンは呼吸の異常が先にありき、だからです。一般に
低酸素血症 or 高炭酸ガス血症→呼吸停止→徐脈→心配停止
という経過をとります。
ところで、子どもは年齢や重症度によっては自分から呼吸異常を訴えることができないですよね。そ
こは私たちが汲んであげなければ。重症呼吸障害時には以下のような症状が出てきます。特異度は低い
し全部覚えろとは言いませんが、いつか自分の子の呼吸異常を発見するきっかけになるかも、と思った
らちょっとは読む目を通す気にもなるのでは!?
①咳嗽が激しい
②喘鳴が著明(時に減弱)
③機嫌が悪い
④泣き叫ぶ
⑤嘔吐する
⑥頻脈
⑦チアノーゼ
⑧陥没呼吸…息を吸う時、肺胞をより進展させようとするために胸腔内の陰圧を強めた結果、胸壁の
やわらかい部分が陥没すること。
⑨頻呼吸、鼻翼呼吸…後者は文字通り息を吸う時に鼻孔を拡大して呼気量の増大をはかること。
⑩寝ない(または眠れない)
⑪シーソー呼吸…横隔膜の緊張により胸郭内が陰圧になると、胸郭の前後径が減少する一方で腹部が
膨らむ様子をさしていう。
⑫抱かれている方が楽
⑬呻吟…息を吐く時に肺胞が虚脱しないように、声門を閉じて残気量を増やすこと。つぶれたような
「んー」という声音が聞こえるらしい。
⑭意識レベルの低下
★小児の呼吸の見方
呼吸数は?換気量は?努力様か?呼吸音は正常か?
…いろんなことが浮かぶと思いますが、これらは基本的に 10 秒でやれ!と言ってました。
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大原則は Look ! Listen!! Feel !!! です。見て!聴いて!!感じて!!! ってとこです。それも血液
ガスやパルスオキシメーターの検査をしながら行うのです。
☻ Look !~何を診るの?
こどもは成人より頭が大きく、首が短いです。また、舌が比較的大きいです。そのため、頭部前
屈状態にすると簡単に舌根沈下を起こしてしまいます。頸部進展を保つために外耳を肩より低くす
るようにしましょう。授業プリにいい図があります。肩枕や氷枕では意外と前屈を招くので注意し
ましょう。大昔のチャイルドシートなんかもそうでした。場合によってはエアウェイという器具を
使います。
☻ Listen!!~何を聞くの?
聴診器は胸に当てるだけではなく、首や顔にも使えます。胸部で左右対称の異常音を聴取する時
は、主気管支、首、顔とさかのぼって聴診して異常の出所を探ります。首では喉の分泌物による喘
鳴や、クループなどの喉頭病変を知ることができます。頬に当てると、鼻腔の奥の分泌物由来の音
が聞こえたりします。
怖がって泣いちゃう子には服の上から聴診しても大丈夫です。
☻ Feel !!!~何を感じるの??
重症感。これにつきます。これは様子見れば大丈夫そうだな、これはやばそうだな、っていうの
を肌で感じられるセンスが、小児に対しては特に強く求められます。もちろんこれには経験の積み
重ねが不可欠ですけど、ただ数多くの症例にぶつかるだけでなく、その都度しっかり患児を観察し
ていくことが大切です。
★呼吸数
子どもの場合 10 回/分以下だったら絶対に少ないです。
一方、多呼吸は、重篤疾患の最初のサインであることが多いので、定義があります。
多呼吸の定義
2ヶ月以下乳児
:60回/分以上
2~12ヶ月乳児:50回/分以上
1歳以上
:40回/分以上
多呼吸が現れた原因が呼吸器疾患のときは、努力性の呼吸や切迫した呼吸、聴診上の異常が現れま
す。もし、これらがなく、他呼吸のみで、呻吟や陥没呼吸を認めない場合は、代謝性疾患や心疾患、脳
浮腫などの原因を考慮すべきです。
★見逃したらまずい小児の呼吸器疾患
ベスト5!
☻ 急性喉頭蓋炎
名前のとおり喉頭蓋の急性の炎症です。発熱、咽頭痛、嚥下痛で急激に発症します。嗄声はないけ
ど、ジャイアント馬場をみたいなこもったような独特の声になります。気管の直径を広げよう起座位
で前傾しあごを突き出すという特徴的な体位をとることがあります。口を開け舌を出し、よだれを流
すという特有の顔貌になります。重症感が強いので、見逃さないで!
次に挙げるクループとの鑑別が重要です。発熱が39度以上と高く、年齢も3~7歳とクループに
比べやや高い感じです。喘鳴も低音です。
疑ったら、X線で頸部側面像を撮影し主題した喉頭蓋が親指を立てたような形に見えます。これを
Thumb sign と呼びます。舌圧子で無理に視診を行っても、喉頭炎とちがって喉頭蓋は見えないし、下
手すると喉頭閉塞から窒息を来たし死亡することもあるので、ダメです。まずレントゲンです。最近
では鼻からファイバーって手もあるみたいだけど。
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治療は気管内挿管です。ただし、これは狭くなった喉頭蓋に行うのは容易ではないので、麻酔科な
どのプロに任せることです。挿管素人には無理だと先生も言ってました。
B型インフルエンザ菌が原因となることが多いので、Hib ワクチンを施行しているアメリカではこ
の疾患が激減しましたが、日本ではワクチンは認可されていません。
☻ クループ
あまり聞きなれない病名ですよね?それもそのはず。これは成人ではまれ、主として乳児(だいた
い3歳以下)に認められる急性疾患だからです。喉頭およびその周辺の狭窄によって生じます。症状
は嗄声→犬吠様咳嗽(読める?ケンバイヨウって読むんだよ☆)→咳嗽後の吸気時喘鳴→吸気時喘鳴
の持続というように推移していきます。重症化すると呼吸困難・チアノーゼを引き起こし、放置すれ
ば呼吸・心停止を起こしかねません。
ではなんでこどもに多い病気なのでしょう?理由はいろいろあり、授業プリにもたくさん書いてあ
りますが、覚えるべきは乳児の気管が成人より狭いことによって気管粘膜の浮腫の影響が大きく出て
しまうことです。詳しい図は授業プリを参照してください。内径が半分であると、たった 1mm のむく
みで子供の気道抵抗は大人の16倍、断面積は25%になってしまうんですね。これで納得。
臨床症状もよぉく観れば違いますが、喉頭蓋炎との鑑別のため、X線を撮ると正面増で Steeple Sign
と呼ばれる像が確認されます。喉頭直下の気管が腫れて、くぎのようなシルエットを呈することから
よばれますが、授業プリでは見えづらいです。模式図が載ってるからそれで理解して。
で、治療なんですが、高度の喘鳴・呼吸困難はだいたい1日程度なので、急性期を上手くしのぐの
がポイントです。発症直後の急激な悪化が見られたら、入院させて1日間は頻回に観察しましょう。
外来での処置は 1000 倍エピネフリンの吸入により血管のむくみをとることと、これによるリバウンド
を防ぐためにステロイドを併用します。入院での治療は、喉頭の乾燥を防ぐために加湿をしたり、酸
素投与や輸液療法も必要に応じて行います。感染性の場合は抗菌薬の投与、外来での処置が効かない
場合には気管内挿管・気管切開も行います。
☻ 急性細気管支炎
ウィルス感染により、細気管支粘膜の壊死、炎症性浮腫などが生じ、細気管支が閉塞する病態です。
下気道の障害なので、症状としては呼気性呼吸困難を来たします。成人にはほとんど発症しませんが
1~6ヶ月の乳児に好発します。先天性疾患や慢性肺疾患を持つ子どもが罹患すると重症化し、数%
の確率で致死的ともなるので注意してください。また、主症状が似ているので、乳児喘息の初発との
鑑別は困難です。
ところで、この疾患の原因ウィルスの 50%がRSウィルスです。そこで、授業ではRSウィルス感
染症としてさらに詳しく扱いました。でも、これはテストには出ない気がするし、読めば分かるよう
に授業プリに説明が書いてあるので、ここでは省きます。
☻ 気管異物・気管支異物
発達のとこでも述べましたが、ちょろちょろと動き出し、ものをつまんで口に入れたい盛りである
1歳児に多いです。呼気性喘鳴、咳嗽、呼吸困難などが突然に出現します。異物としては80%がピ
ーナッツで、他に豆腐、食物片、玩具、針なんかがあるそうです。主気管支以下の閉塞では反対側が
代償するため、患児は元気で呼吸困難も軽度であることが多いです。異物による刺激が繰り返す肺炎
を引き起こし、そうなってから初めて気付かれる場合もあります。異物を疑ったときは、様々な検査
方法でアプローチします。というのも、どの見方によって捕らえられる位置に異物が存在するか分か
らないからです。Xpの場合は呼気像と吸気像の両方が必要で、異物によってチェックバルブになっ
ていないか確認します。その他、3D-CT、気管支鏡なども用いますが、異物が金属である可能性
を否定できないうちは、MRIはもちろんダメです。手術では合併症が免れないため、可能な限り異
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物の除去は気管支鏡で行います。
☻気管支喘息
呼吸器でもよく学んでいる疾患なのであえて説明はいらないかと思います。心配な人は授業プリく
らいには目を通してね☆
でもまぁ一応小児疾患としての特徴をいくつか挙げるとします。小児では成人に比べて、特異的 IgE
抗体が証明されるアトピー型が多いのでした。そして 90%は5歳までの幼児期に発症し多くに遺伝的
素因が認められます。70%は成人になるまでに寛解しますが、残りはその後も症状を持ち続けます。
そんなわけで小児救急医療の中では極めて頻度が高い疾患です!
発作の大きさで重症度を判定するので、聴診による喘鳴の所見や視診による陥没呼吸などの観察は欠
かせません。血液ガス文責やパルスオキシメーターも重要です。
発作時の対応についても復習でしょうから授業プリを参照のこと。
補足
上気道閉塞→息を吸う時に喘鳴が出現。そして気管支より上はバイパスがないから代償がきかず
緊急性が高くなる。
「ゼイゼイ」
「ゼロゼロ」など粗い音。
下気道閉塞→息を吐く時に喘鳴が出現。
「ピーピー」
「ヒューヒュー」など高音性笛様音。
★子どもの心停止
まぁ、おそらくここからの子どもの急変の話はテストには出ないでしょう。テーマが呼吸器疾患の
回なので。先生がやたら強調なさってたのは、病院内での心停止の原因に敗血症性ショックがとても
多いということです。ショックの病気による症状の変化なども表になって載っていました。どれも、
とても大事な話であることは確かなので、時間に余裕があるならば是非しっかり目を通して頭に入れ
ておくとよいでしょう。
せめて4枚で終わろう。それが目標なのになかなか厳しいですね…小児は大人で学んだ1年分の疾患を凝
縮したようなものなので、ステップも分厚いんです。って言い訳がましいのでやめます。さっさと次を作ります。ワ
ールドカップもそっちのけっす(T T)
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小児期の消化器疾患・肝疾患
5 月 15 日 2 限 乾先生
防衛医大で教えていた経験があるそうで、ものすごい緊張感のある授業でした。でも、結構マニアックで、先
生の専門分野が強調されていた感があるんですよ…。本来、小児の消化器疾患としてはずせないものが、あま
り扱われておらず、そこまでシケプリでフォローすべきかしばらく迷いましたが西巻先生は基本授業で、新規に
問題作らないって言ってたから、ここでは授業に出て来た肝炎と難治性下痢症について扱おうと思います。
新生児肝炎
新生時期に発症し、乳児早期に肝内胆汁うっ滞を認める肝炎のことです。肝炎ウィルスによらない肝
炎で、新生時期に直接ビリルビン高値が認められたら、これか胆道閉鎖症を疑います。ステップでは原
因不明と書いてあるのですが、先生はこの原因についてとても詳しくお話されていました。どうやら新
生児肝炎は尿素サイクルの一部を担うシトリンというタンパク質の欠損が原因らしいのです。実は同じ
シトリンの欠損が成人発症したものとしてシトルリン血症という疾患があります。どうしてそうなるか
は、授業プリの回路図を参照してください。授業ではこの比較もしていましたがテストには出ないはず
です。小児でのこのシトリン欠損症はNICCD(neonatal intrahepatic chorestasis caused by citrin
definsienvy)と名づけられました。もしかしたら新生児肝炎という言葉はなくなるかもしれません。成
人発症型との決定的な違いは予後で、成人発症方が発症後数週間から数ヶ月で死亡する例が多いのに対
し、NICCDはほとんどが保存的療法のみで生後1~2年以内に自然治癒します。
症状としては、生後1~3週の閉塞性黄疸症状です。黄疸についてはよしまが新生児疾患のところに
書いてくれていますが、この場合、皮膚黄疸、褐色尿、灰白色便などが出ます。
(すべてが必発ではない
ことに注意)肝脾腫やくる病様症状も出現します。血液検査では直接ビリルビンの上昇のほか、ALP
やγ-GTP、LAPの軽度上昇を認めます。同様の症状を示す胆道閉鎖症との鑑別を行うには、十二
指腸にチューブを留置し、十二指腸液を採取すると、胆汁成分を確認します。多くの場合はこれで鑑別
できますが、胆道閉鎖症の場合は生後2ヶ月以内に外科的に胆道閉鎖を解除しなければ肝硬変に至る確
率が高くなるので、鑑別があいまいな場合は試験開腹を行うこともあります。
B型肝炎
C型肝炎に関しては急性肝炎が治らないものが慢性肝炎といえますが、B型肝炎の場合はそうではあ
りません。B型肝炎栄留守は Host の免疫状態と感染ウィルス量で経過が決定されるのです。
HBe 抗原陽性
HBe 抗原陰性
→ウィルス量が多い
→ウィルス量が少ない
3歳以下(免疫不全)
持続感染
一過性感染
4歳以上
一過性感染
一過性感染
みなさんB型肝炎については他の科でも勉強しているから知っていると思いますが、産道感染かST
Dというイメージがあると思います。この授業で先生が主張していたのは、日本人は成人発症だったと
しても、STDとしての感染よりも圧倒的に産道感染による持続感染であるケースが多いことが遺伝子
的に言えるのだそうです。だからこそ、HBV垂直感染防止事業をより強化して、HBe 抗原陽性HBV
キャリア妊婦だけでなく HBe 抗原陰性妊婦に対しても同様の感染防止措置を行うように変更されたの
だと、熱く語っていらっしゃいました。
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現在のところ、HBs抗原陽性を認めた妊婦から生まれた感染リスクの高い新生児に対して、HBe の
陽性陰性は問わず、医療保険によって感染ブロックを行っています。HBs抗体含有ヒト免疫グロブリン
(HBIG)を生後5日以内(できれば 48 時間以内)と 2 ヶ月後に注射し、受動免疫によって血中のH
BVを中和をはかります。また、能動免疫を促すリコンビナントB型肝炎ワクチンを生後2ヶ月、3ヶ
月、5ヶ月に接種します。この意義は HBe 抗原陽性の母親から生まれた児に対しては、HBキャリア化
の防止、HBe 抗原陰性の母親から生まれた児に対しては劇症肝炎の防止である、という話もしていまし
た。でもあまりマニアックなことは出ないはずです。この感染防止事業の普及により、日本の小児キャ
リア率は相当低くなったといわれています。
難治性下痢症
乳児下痢症にはウィルス感染症や乳糖不耐症などが考えられますが、特に治療に抵抗性で重篤な慢性
下痢を認めるものを難治性下痢症といいます。もともとは 1968 年に Avery という人が「2週間以上続
く下痢が、生後3ヶ月以内の乳児に発症し、3回以上の便培養で病原体が証明されあい」という症例を
報告したことによりますが、原因は多元的で、悪循環をつくりながら重篤な病像を構成すると考えられ
ています。
たとえば、もとは脂質・タンパク質・糖質の吸収不全で難知性下痢が起こったとしましょう。経口接
種を制限することで栄養不良が起こり、これが発育不全を引き起こす一方で、免疫能の低下を招くこと
で感染がおこり、腸管粘膜が損傷してますます吸収不全が起こり…という感じです。人工乳に対する牛
乳アレルギーも原因の一部とされています。
輸液・抗生物質・副腎皮質ステロイド・食事療法すべて無効です。かつては死亡率も高かったですが、
現在は経静脈栄養によって治療成績が改善しています。ただし、経静脈栄養児は味覚が発達しないなど
の問題があるので、単に延命だけではなくその後のQOLにも注意しながら治していきたいところです。
ミルクアレルギーに対してエピトレスミルクが有効らしいです。
とてもまとめるのが難しい回でした。先生からは個人情報が多いため配布しないという約束のもとでパワポ資
料を譲っていただいたので、細かいことについてはそれを見ながら書いています。つっこめばきりがない範囲な
ので、これくらいにしましたが、国試等を見据えた場合小児の消化器・肝胆膵疾患はこれだけでは全然足りない
ので、また機会を新たに勉強した方がいいと思います。
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小児期のリウマチ性疾患の診断・治療
5 月 15 日 2 限 横田先生
この回のプリント(パワポ)は杉じゅんがアップしてくれています。
Ⅰ
←え??マジ??? By 杉原
リウマチ性疾患とは?
結合組織に炎症性細胞の浸潤を促す何らかの機序(自己免疫機序?)によって起こる、慢性炎症性疾患。
病理学的には細胞浸潤や浮腫が見られる。
炎症を起こす自己免疫疾患の機序には下の2種類が考えられている。
① 自己抗体・免疫複合体の血管壁への沈着→炎症
② 過剰な炎症性サイトカイン(IL5,IL6,IL1β,IFN-γ,TNF-α)
→炎症→血管内皮活性化・障害(凝固・線溶系障害)
リウマチ性疾患の中でも、その炎症病態形成には差があり、①が強く関係するタイプと②が強く関係す
るタイプのがある。①の免疫複合体病の典型例として SLE、②の過剰サイトカイン病として JIA(若年
性特発性関節炎)がある。小児の膠原病では SLE、DM(皮膚筋炎)、JIA が多い。
これから、各々の小児のリウマチ性疾患について順番に説明しますが、概念、症状、診断基準、検査な
ど基本的なところは大人の「リウマチ性疾患」のシケタイさんに任せて、ここでは大人とは異なって小
児に特異的な特徴についてだけ説明します。だから、ここは成人のリウマチ性疾患を勉強してからやっ
てください。
Ⅱ
全身性エリテマトーデス(SLE)
成人女性に多く見られるが、約20%は小児期(特に10歳代)の女児に発症する。初発症状は成人と
比べて非典型的で、臨床症状・経過も多彩で早期診断が困難。また、成人よりも中枢神経、腎、循環器、
血液などの全身合併症が多彩でかつ重症、急性の経過をとるため予後は不良である。
(診断基準)成人の 11 項目+低補体血症(C3 または CH50 低値)
※診断の際は併発している可能性のあるリウマチ性疾患に注意が必要。小児期発症の SLE では、シェ
ーグレン症候群を約50%、抗リン脂質抗体症候群を約 15%の確率で合併している。
(検査)抗核抗体は、ほぼ100%陽性。
(治療)成人の副腎皮質ステロイドの全身投与とは違い、小児では重篤な内臓病変が見られない限りは、
初期治療はステロイドパルス+免疫抑制薬で寛解に持ち込んで維持させる。プレドニゾロン(副
腎皮質ステロイド)を使用する場合は、成長障害の副作用があるので 10~20mg/日に押さえる。
最近は新たにリツキサン療法も注目を浴びている。リツキサン療法はリセット療法で、自己抗
体を産生する Bcell を抑制することで治療する。
また、予後はループス腎炎の悪化度と中枢神経症状によって決まってくる。
Ⅲ
若年性皮膚筋炎(JDM)
横紋筋にびまん性の非化膿性炎症を生じるものが多発性筋炎(PM)で、これに皮膚症状を伴ったものが
皮膚筋炎。DM の好発年齢は二峰性で、小児と中年以降の女性に多く見られる。小児の場合 DM は3~
10歳にかけてやや女児に多くなっている。DM に比べ、PM は非常に少ない。
- 41 -
成人の皮膚筋炎
発症機序
初発症状
若年性皮膚筋炎
筋束に CD4,CD8 が入り込んで
成人ほどは筋肉を破壊しない。皮膚の
筋肉そのものを破壊。
炎症のほうが強い。
筋力低下
顔面の紅斑などの皮膚症状
発熱・全身倦怠感
症状
筋症状が中心
血管炎を伴うことが多い
皮膚症状(ヘリオトロープ疹)
皮膚症状>筋症状
28%に異所性石灰化
悪性腫瘍の合併
よく合併する
全く合併しない
間質性肺炎合併
20~40%に合併
通常見られない
治療
副腎皮質ステロイド
副腎皮質ステロイド
Ⅳ
若年性特発性関節炎(JIA)
15 歳以下に発症した慢性関節リウマチ(RA)と定義されていて、小児のリウマチ性疾患のなかで最も
多く見られる。好発年齢のピークは2歳と10歳にあり、男女比は2:3とやや女児に多い。本症は大
きく関節型、全身型の二つに分類される。
関節型…年長の女児に多く見られる。
関節型の臨床的分類と血清学的分類は次の通り。
(臨床的分類)
症状
少関節型
検査所見の特徴
単関節炎(膝,足,肘,手,股) リウマトイド因子陽性率
少関節炎(4関節以下)
虹彩毛様体炎(約25%)
頻度
約50%
15%
抗核抗体陽性率が他より高い
微熱
多関節型
多関節炎(小関節含め5関節以
リウマトイド因子陽性率
上)
約40%
50%
関節痛よりも朝のこわばり・運
動制限が強い
皮下結節、微熱
※ 虹彩毛様体炎…慢性ぶどう膜炎ともいう。少関節型の女児に多く、抗核抗体陽性。
症状は虹彩後癒着、角膜帯状変性、緑内障、白内障
治療はリポ化ステロイドの静注継続
(血清学的分類)
RF(+)タイプ
ANA(+)タイプ
女の子に多い。1~4割にぶどう膜炎を併発。
seronegative
血清中に特異抗体がないもの
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全身型…still 病とも呼ばれる。2歳前後の女児に好発。
症状
検査所見の特徴
頻度
初期…弛緩熱・リウマトイド疹・関節炎
白血球↑、血沈亢進
約10%
その後、肝脾腫、リンパ節腫脹、心膜炎、心
CRP↑、貧血
筋炎を伴うことがある。
リウマトイド因子陽性率
成長障害
10%
※ 弛緩熱…1日の熱差が1℃以上ある熱型。しばしば関節炎に先行して発症。
※ リウマトイド疹…直径4~5mm の円形のサーモンピンク色の紅斑で、しばしば関節炎
に先行して発症し、解熱時に消退する。
※全身型 JIA の7%が「マクロファージ症候群」に移行して死亡する。この病態には免疫抑制剤は効か
ず、ステロイド薬のみ効果がある。しかし、副作用の心膜炎に注意が必要である。
また、関節型と全身型の相違を以下に示す。
全身型
関節型
罹患関節
股関節や脊椎に出やすい
肩、肘、手、足に出やすい
Xp 上の骨の変化
骨端の変化や、骨粗しょうの変化
関節裂隙の狭小化
関節炎の成因は骨にあるから
関節炎の成因は軟骨にあるから
(JIA の治療・予後)
JIA の治療の考え方は発症早期から積極的治療を行うことです。また大人と違い、副腎皮質ステロイド
の全身投与は小児の成長に悪影響を及ぼすので安易な使用は慎む。
第一段階…NSAIDs単独(診断まで)
第二段階…抗リウマチ薬のメトトレキサート(MTX)を中心とした治療←基本的治療
第三段階…生物学的製剤(サイトカイン遮断薬)ex.Etanercept,Infliximab,Tocilizumab
☆ 生物学的製剤使用の例☆
全身型 JIA は炎症性サイトカイン(IL-6 と IL-6R)の過剰産生による疾患モデルなので、その産生を
ストップしてやればいい。そのため、抗 IL-6R 抗体である Tocilizumab が著効する。また、難治性関節
型 JIA には TNF-R の Etanercept が効く。
Ⅴ
その他のリウマチ性疾患
①若年性混合性組織病(若年性 MCTD)
SLE+SSc(強皮症)+PM/DM を思わせる臨床症状が混在する。小児期は SLE 様症状の方が強く、
成人になると強皮症の症状の方が強く現れる。また、ほう症状と指や手の腫脹が出現する。本症では SLE
や SScよりも肺高血圧の出現頻度が高い。しかし、中枢神経症状や腎症を伴うことはまれ。検査では抗
U1-RNP 抗体が必ず陽性となる(高力価)。他に高γ-グロブリン血症、リウマトイド因子陽性などが
ある。治療は副腎皮質ステロイドで予後はわりと良好。強皮症様症状と肺高血圧症が予後を決める。
②ベーチェット病
主症状:ぶどう膜炎、口内・外陰部潰瘍、結節性紅斑、足関節炎
血清 IgD の上昇例あり。成人と異なり、HLA-B51 陰性者が多い。
- 43 -
③シェーグレン症候群
通常 30~40 代女性に好発する。小児では SLE の約50%に併発する。検査では抗 SS-A/SS-B 抗体陽
性、リウマトイド因子陽性。腺組織が破壊されるため、通常乾燥症状を訴える。ところが小児の場合、
発病して間もないことが多いので乾燥症状がない。代わりに易疲労感・倦怠感を訴えて不登校になりや
すい。このことから治療法も小児と成人では変わってくる。成人の場合は腺組織がもうすでに壊れてい
るため、水分を足したり目薬などの対症療法が中心。それに対して小児では腺組織の崩壊を防ぐために
炎症症状をいかにとどめるかにかかってくる。よって副腎皮質ステロイドが使われる。
④抗リン脂質抗体症候群
症状:全身血管(特に脳)に多発性梗塞
小児では成人と異なり劇症型(脳、腎臓、肺など3臓器以上が超急性に障害)が多い。凝固系が亢進す
るため、検査では PT 正常/APTT 延長。約15%が SLE を合併している。
⑤全身性硬化症(SSc)
全身性強皮症ともいう。コラーゲンの線維化に歯止めがかからない病気。Raynaud 症状で始まり、関節
痛、皮膚硬化、食道の線維化で飲み込みができなくなるなど多岐にわたる症状がある。小児の SSc は無
治療で軽快する症例から、死亡する例まで病気のスペクトルが広い。また、治療も成人では対症療法し
か存在しないのに対し、小児では線維化の進行を止めてやることで治療が可能。そのため、シクロホス
ファミドなどの免疫抑制剤が使用される。
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小児アレルギー・喘息
5 月 17 日 1 限 相原先生
1.アレルギーとは?
生体の免疫反応の一種であるが、細菌やウイルスに対してだけでなく、自己の体にとっても有害なこと
を及ぼすこと。
小児に見られるアレルギー性疾患の代表は、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、じんま疹、気管支喘
息、アレルギー性鼻炎・結膜炎です。10 年前に比べると近年学童児のアレルギー性疾患は2~3 倍に増
加している。
2.アトピーとは?
IgE 抗体を産生しやすい素因をいう。
3.小児アレルギー疾患の特徴
・小児ではⅠ型アレルギー疾患が多い傾向がみられる。
・アレルギー疾患の合併
・自然寛解(成人は自然寛解しない)
・アレルギーマーチ(後で説明)
4.アレルギーの発生機序
アレルギーの範囲のシケタイがやってくれると思うのでここでは省略します。
5.衛生仮説とは?
アレルギー疾患の増加の理由を Th 細胞のバランスから説明しようとするもの。
アレルギーはアレルゲンに対する Th2細胞の過剰反応が原因である。一方微生物に対する暴露によって
Th1細胞が働きく。Th1細胞には Th2細胞を抑制する効果がある。このため近年アレルギー疾患が増
加している理由には、衛生環境がよくなったことで子供が小児期に微生物に暴露される機会が減り、Th
2細胞の働きが過剰になったためと考えられている。
6.アレルギーの分類
Ⅰ型
別名
液性因子
例
即時型
Ⅱ型
Ⅲ型
Ⅳ型
細胞障害型
免疫複合体型
IgE、
自己抗体
免疫複合体
サイトカイン(イ
化学伝達物質
補体
化学伝達物質
ンターロイキン)
アナフィラキシ
Rh 因子不適合
急性糸球体腎炎
感染アレルギー
ーショック
Goodpasture 症
SLE
結核
気管支喘息
候群
アトピー性疾患
溶血性貧血
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遅延型
7.アレルギーマーチとは?
アレルギー疾患を持つ子供は、胎内にいるときに感作されて、アトピー性素因をもつ
↓
乳児期にアトピー性皮膚炎
↓
幼児以降に気管支喘息
↓
学童期以降にアレルギー性鼻炎
↓
それ以降に結膜炎、花粉症
このように、乳児期からかかっては寛解し、そしたら次に別のものになり・・・と、これらをすべて順
番にこなしてしまうような児童もいる。このことをアレルギーマーチと称す。
8.気管支喘息
1)症状:喘鳴、咳嗽、呼気性呼吸困難(息を吐くのが大変)が喘息の3徴。
2)特徴:①気道の慢性炎症性疾患
②気道の気流閉塞による症状
③気道閉塞は可逆的である
④気道反応性の亢進を伴う
⑤気道のリモデリングをきたす→最終的には COPD
3)発症機序
「アトピー型」
90%以上が5歳までの幼児期に発症し、しかもその多くに遺伝的素因が認められる。
・Ⅰ型アレルギーによって起こるヒスタミンの放出と、アラキドン酸カスケードによって産生されるプ
ロスタグランジンによって、気管支平滑筋攣縮・毛細血管透過性亢進→気道壁に浮腫と腫脹→気道狭
窄が起こる。即時型反応は可逆的。
・その後に遅発型反応が起こる。遅発型反応は数時間たってから再び気管支攣縮を起こすもので、気管
支粘膜に好酸球を中心とした炎症細胞が無数に浸潤した状態。
「非アトピー型」
アトピー型と違い、特異的 IgE 抗体が証明されなかったり、遺伝的素因が認められないが、気道粘膜へ
の好酸球の浸潤、上皮細胞の剥離、気道壁のリモデリングが認められるなど、アトピー型と同じ特徴
を持つ。
4)分類
アトピー型
非アトピー型
好発年齢
小児
成人
症状の種類
発作型
慢性型
抗体
IgE(+)
IgE(-)
血液検査(RAST)
+
-
- 46 -
5)重症度、発作の程度
小発作、中発作、大発作の三種類に分けられる。
小発作:軽い喘鳴や陥没呼吸。遊び、睡眠、食事は普通にできる。
大発作:喘鳴や呼吸困難が激しく起座呼吸となる。遊び、睡眠、食事もできない。時にチアノーゼを起
こす。
中発作:小発作と大発作の中間
※ 中発作または大発作が24時間以上持続した場合は、発作重積状態と呼ばれる。
6)発症に関与する因子
・性別…学童期にはやや男児に多いが、思秋期に至ると1:1となる
・年齢…6歳までに 90%が発症する
・アレルギー素因
・発作は季節の変わり目、特に秋に好発する。
・1日では明け方に最も強くなる。
ほかにも感染、空気汚染、運動、自律神経以上が関係ある。
7)診断
①臨床所見…上記
②検査所見…血清 IgE 高値(アレルギー型のみ)
末梢血酸球↑(アレルギー型・非アレルギー型ともに)
CAP-RAST…アレルゲンを検索する血液検査
ヒスタミン遊離反応
喀痰検査、胸部 Xp etc
③家族歴
8)鑑別診断
先天性心疾患にも喘鳴が見られるので注意。感染症でも喘鳴はよく出現する。
特に、気道異物や過換気症候群に注意が必要。
9)治療
(発作時)
・β2 受容体刺激薬の吸入…β2 受容体刺激薬は継続使用すると気道過敏性が亢進し喘息死を起こすこと
もあるので、発作時のみに用いるようにする。
・ステロイド吸入・O2 吸入
・イソプロテレノールの持続吸入…小児で特有の治療。成人では心筋梗塞を起こすので絶対にしない。
(非発作時)
・薬物療法…抗アレルギー薬など、予防効果があるものを用いる。
・抗原の除去
・運動療法・心理療法
・患者、保護者の教育や指導
※ 気管支喘息の治療目標は、日常生活を送れるようにすること、昼夜を通じで症状がない
こと、β2刺激薬の頓用の減少、肺機能の正常化を目指す!
- 47 -
10)発作重積状態の症状
中発作または大発作が24時間以上持続した場合は、発作重積状態と呼ばれる。症状は
・重篤時は呼吸音減弱
・呼吸困難、起座呼吸
・鎖骨上窩、肋間の陥凹
・血圧低下
・チアノーゼ
・皮下気腫
・脱水
・意識障害
などがある
11)運動誘発喘息(EIA)
最大心拍数の80%程度の運動を負荷すると、運動後に喘息発作が誘発されること。
「機序」
過換気による水分喪失・温度差
↓
気道上皮の浸透圧上昇
↓
肥満細胞からのメディエーター放出
↓
気管支平滑筋収縮
予防:運動開始前に予防薬(吸入薬)…DSCG、β2刺激薬
12)アスピリン喘息
成人喘息の約 10%。小児にはまれ。
重症難治喘息例が多い(ステロイド依存性)
30 代に発症。女性に多い。
13)予後・問題点
60~70%が思春期ころまでに自然治癒する一方、10~20%が成人の気管支喘息へ移行する。1~2%
の死亡例がある。年間 4000 人が死亡している。特に小学校高学年~中学生にかけての思春期の患者は
喘息死を起こすことがある。理由は
・治療の主導権が大人から子供へ移ること(小児科は手取り足取りだけど、内科は自分から病院へ行か
なくてはならない)
・学業が忙しい
・不規則な生活
・思春期に重積発作が多発→合併症が増加したり、病態が変化したりする
・不適切な薬剤使用法(親の監督がなくなって)
- 48 -
9.アナフィラキシー
特定の起因物質により引き起こされた全身性のアレルギー反応。
① アナフィラキシー:IgE 抗体の関与がある←ペニシリンなど
② アナフィラキシー様反応: IgE 抗体の関与がない←造影剤など
原因物質はペニシリンなどの抗菌薬や、破傷風抗毒素などの異種抗血清。症状は非常に多彩な全身症状。
10.食物アレルギー
1)狭義
原因食物を摂取した後に免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状(皮膚、粘膜、
消化器、呼吸器、アナフィラキシーなど)が惹起される現象
2)仮性アレルゲン
アレルギー反応とは無関係で、アレルギー反応に類似した反応を引き起こす物質
アセチルコリン etc
3)食品添加物
パラベン類・安息香酸ナトリウム
※仮性アレルゲンと食品添加物は非アレルギー機序で起こる。
4)食物アレルギーの機序
原因となる食物アレルゲンが口腔粘膜から腸管粘膜まで炎症をもたらす
↓
腸管粘膜のバリアが壊れ、多量の異種たんぱく質の透過性が亢進し、アレルゲン性をもっ
たまま体内に取り込まれる。
↓
Ⅰ型アレルギー反応
5)症状
局所症状…蕁麻疹、結膜充血、消化器症状、呼吸器症状
全身症状…アナフィラキシーショック
6)診断
問診→検査(特異的 IgE 抗体検査)→試験(プリックテスト・ヒスタミン遊離試験)
→治療
※プリックテスト…皮膚に疑わしい食品を刺してみる皮膚テストのこと。反応すると、
ヒスタミン↑、ECP↑、IL-6↑、IL-10↑が見られる。
7)治療
正しい診断に基づいた、必要最小限の原因食物の除去
- 49 -
8)問題点
①アレルゲンの診断が難しい
②除去食のときは代わりの食物を考慮する必要がある
③除去食によって成長を遅らせないようにする
9)気をつけること
・即時型で症状はアナフィラキシーの場合:予防接種しない
・遅延型で症状は湿疹の場合:予防接種する
・卵アレルギーの場合:麻疹・インフルエンザの予防接種はしてはだめ。
10.のアトピー性皮膚炎は授業でやらなかったので飛ばします。
11.食物依存性運動誘発アナフィラキシー
特定の食物摂取後に運動することによってアナフィラキシー症状を呈する。
小麦+梅干など食物をコンビネーションで摂取後2~3時間以内に運動すると症状が出る。
12.ラテックスアレルギー(ラテックス・フルーツ症候群)
天然ゴム由来のたんぱく質による即時型アレルギー。症状は接触性皮膚炎、アナフィラキシーなど。
アボカドやバナナなどのフルーツと交叉抗原性を持ち、ラテックスに感作された人がそのような果物
を食べると、蕁麻疹、アナフィラキシーのような強い症状を誘発することがある。
13.口腔アレルギー症候群(OAS)
経気道感作による。花粉抗原による感作の成立後に、花粉抗原と交叉抗原性のある食物(野菜・果物)
を摂取した場合に発症。症状は口腔内に限局している。予防として、生の
物を食べるのを避ければよい。
- 50 -
川崎病の診断と治療
5 月 22 日 1 限 今川先生
この回は先生が「テストはプリントの内容だけ」とおっしゃっていました。
1.川崎病とは?
1967 年、川崎富作博士によって提唱された疾患群。
主として 4 歳以下の乳幼児に好発する原因不明の急性熱性疾患。
秋~早春にかけて多く、2~4 年周期で流行し、人にうつることはない。
何らかの感染によって免疫応答が活性化し、好中球・リンパ球・マクロファージにより内皮細胞が障害
され、高サイトカイン血症を伴う(IL-6,IF-γ)血管炎がおこると言われている。
年間 6000~8000 人の発症で、2000 年の罹患率は、0~4 歳人口 140.3/10 万人
厚生労働省研究班作成の‘診断の手引き’により診断
2.血管炎の種類
血管の種類
大血管
疾患
巨細胞血管炎(側頭動脈炎)
高安動脈炎(大動脈炎症候群)
中血管
多発動脈炎
(PN)
川崎病
小血管
Wegener 肉芽腫症
(WB)
アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss 症候群、AGA)
顕微鏡的多発動脈炎
(MPA)
Henoch-Schonlein 紫斑病
特発性クリオグロブリン血症
皮膚白血球破砕性血管炎
3.川崎病の臨床所見(6徴)…診断基準の主要症状のところ
①5 日以上持続する発熱
②両側眼球結膜の充血
③口唇、口腔所見…口唇の紅潮、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤
④不定形発疹…水疱や痂皮は形成しないが、BCG 接種部周囲に発赤
⑤四肢末端の変化…(急性期)手足の硬性浮腫、掌蹠ないしは指趾先端の紅斑
(回復期)指先からの膜様落屑
⑥非化膿性頚部リンパ節腫脹…他のリンパ節は腫れない
※ 以上6つの主要症状のうち5つ以上の症状を伴うもの、または4つの症状しか認められなくても、経
過中に断層エコー法もしくは、心血管撮影法で、冠動脈拡大・瘤が確認され、他の疾患が除外されれ
ば本症とする。
- 51 -
4.検査所見の特徴(血管炎としての炎症所見)
白血球↑、好中球分画↑、中毒顆粒の出現
血小板数:炎症極期・悪化時には減少、回復期に増加
血清アルブミン:炎症極期・悪化期には減少
CRP:急性期に増加、回復期に減少
5.川崎病の合併症
・ 冠動脈病変…右冠動脈の付け根や前下行枝の付け根、冠動脈の分岐点には冠動脈瘤が出来やすい。
8mm 以上のものを巨大冠動脈瘤という
他:心筋炎・心膜炎、肝機能障害、胆嚢炎、関節炎、腎臓の障害、無菌性髄膜炎→頭蓋内圧亢進→頭痛
(合併症を示す検査所見)
血清 ALT・ビリルビンが急性期に増加することがある→胆嚢炎、肝機能障害
無菌性膿尿、蛋白尿→腎臓が障害
血清 CK の上昇→心筋炎
6.川崎病の鑑別診断
・レンサ球菌・アデノウイルス・EB ウイルス感染症
・ 水銀中毒(先肢端疼痛)
・ Stevens-Johnson 症候群←薬疹の中でも重症
・ 若年性関節リウマチ
7.川崎病の経過
病日
急性期
臨床症状
0~10 日
回復期
10 日~2.3 週
遠隔期
1 ヶ月以降
検査所見
発熱・頚部リンパ節腫脹
炎症反応(白血球↑・CRP↑・
口腔所見・発疹・眼球結膜
血小板↓・血清 Alb↓・
充血・手足硬性浮腫
ALT↑・ビリルビン↑
膜様落屑
血小板↑
↓冠動脈
↓病変
8.川崎病に対する治療
(治療目標)
急性期の炎症病態改善と、遠隔期における冠動脈病変を阻止
(治療方法)
☆ 非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDS)…ex アスピリン
これだけでは冠動脈病変を阻止できないので
☆ 大量ガンマグロブリン療法…2g/kg/日を 1 日または、1g/kg/日を 1 日か 2 日連続または、
200~400mg/kg/日を 3~5 日間
大量ガンマグロブリン療法では効かない 10~20%の子供には、
☆ ステロイド薬
☆ ウリナスタチン
☆ 血漿交換療法
が使われるが、まだあまり確立されていない。
※治療後 30 歳くらいまでに心疾患になる人がいるということが問題化。メタボリックシンドロームとの
関係も指摘されている。
- 52 -
小児の神経疾患
5 月 19 日 1,2 限 根津先生
発達の遅れの原因は大きく遺伝によるものと後天性脳障害に分けられる。
1.遺伝
ⅰ.構造遺伝子異常→中枢神経奇形、変性疾患
ⅱ.機能性・調節遺伝子異常→精神遅滞、てんかん
ⅲ.代謝・酵素遺伝子異常→代謝性疾患
2.後天性脳障害
ⅰ.週産期障害→仮死
ⅱ.後天性疾患→脳炎、外傷など
通常、乳幼児は以下のような発達をする。
4ヶ月検診
7ヶ月検診
1歳6ヶ月検診
あやし笑い
人見知り
物まね
追視
3歳検診
2語文
指差し
首がすわる
独りで座る
上手に歩く
上手に階段
両手を合わせる
ものに手を伸ばす
コップで飲む
こぼさず食べる
髄鞘化→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→2歳
優位半球の決定→→→3歳
皮質内神経回路→→→→→→18歳
精神遅滞、知的障害(≠知的退行…出来ていたことが出来なくなる)
① 定義:知能の発達が不十分で、正常な社会生活を営むことが困難か不可能なもの
(知能指数による分類)
知能指数の平均値よりも2SD を超えた低い値を示すもの。
知能指数は平均 100 で、SD が 15 とされるので
・ 境界(IQ76~84):普通級での学習が可能
・ 軽度(IQ50~75):小学校教育は可能。簡単な職業に就労。
・ 中等度(IQ25~49):身の回りの自立は可能。
・ 重度(IQ25 未満):全介助と保護が必要
② 有病率:人口の約2~3%
③ 乳幼児期の症状
上の発達の表よりも幼い行動。例えば以下のような行動。
乳児期
1・2 歳
3 歳以降
その他
視線があわない
バイバイしない
言語が出ない
筋緊張低下
あやしても反応なし
物まねしない
利き手が決まらない
運動発達遅滞
人見知りしない
指差ししない
概念形成(大小、数、
親の後追いをしない
色)がない
- 53 -
(四つ這い等)
④ 主な原因
ⅰ.遺伝要因
80%(ex.染色体異常・脳奇形・先天代謝異常)
ⅱ.環境要因
20%
(ex.胎内感染・周産期脳障害・頭部外傷)
※ 愛情遮断症候群、難聴(→言葉の遅れが出る)
、視力障害との鑑別が必要
Ⅱ
脳性麻痺
① 定義:新生児期までに生じた非進行性脳障害に基づく運動障害
② 有病率:0.1%程度
③ 乳児期の症状
ⅰ.筋緊張の異常(体幹の反り返り、関節が拘縮、手指把握
ⅱ.定頚、座位保持、立位保持、歩行の遅れ・障害
ⅲ.随意運動低下(脳形成不全による)
ⅳ.満2~4 ヶ月児は低緊張傾向、満4~6ヶ月で四肢伸展傾向
ⅴ.約 70%は精神遅滞を合併
④ 主な原因
ⅰ.遺伝要因:脳形成不全→低緊張型四肢麻痺
ⅱ.環境要因
・ 未熟児(ex.脳室周囲白質軟化症)→痙性対四肢麻痺(上肢<下肢)
・ 仮死(低酸素性脳障害)→痙性四肢麻痺、アテトーゼ、精神遅滞
・ 胎盤機能不全(脳形成不全)
・ 胎内感染・脳髄膜炎(脳萎縮)
・ 核黄疸(基底核障害)→アテトーゼ
Ⅲ
自閉症
① 定義:早期発症、社会的相互関係保持の障害、言語発達障害、精緻な紋切り型の反復動
作を示す
② 有病率:0.2%程度(男:女=5:1)
③ 乳幼児の症状
ⅰ.視線が合わない、親の後追いをしない、抱き上げようとしても反応しない、奇声をあげる。
ⅱ.一人遊びに終始、多動、物まねしない、単調な発声
ⅲ.こだわり(同一性保持、執着)
ⅳ.音への過敏性、自傷行為、睡眠障害
④主な原因:非進行性遺伝性脳障害
【新生児期発症の運動障害の原因】
1.中枢神経障害
2.脊髄前角細胞障害:SMA
3.末梢神経障害:CMT
4.神経・筋接合部障害:先天性重症筋無力症
5.筋疾患:先天性ミオパチー、先天性筋緊張性ジストロフィー、Floppy Infant
※運動障害の原因の中では筋疾患の割合が一番高い。
- 54 -
ここで、運動障害の原因となる具体的な疾患について説明していきます。
Ⅰ
Floppy
Infant
(ぐにゃぐにゃ乳児)
先天的に筋緊張が重度に低下している児のこと。重力に抗して姿勢を保持できず、また体を動かせな
い。通常、筋力低下や弛緩性麻痺を伴っているものと、伴っていないものに大別される。前角細胞以下
に障害があれば筋力低下はあるが、中枢神経系では原則的に筋力低下はない。
Infants の鑑別」は先生が大事だと言っていたので覚えてください。
次の「Floppy
中枢性
SMA
筋疾患
知的障害
+
-
+~-
筋力低下
-~+
+
+
腱反射
+
-
-
顔面筋罹患
-
+
+
呼吸筋罹患
-
+
+
仮性球麻痺
+
-
-
球麻痺
-
+
-
※ SMA(脊髄性筋萎縮症)
脊髄前角細胞の変性・消失を主病変とする。乳児期までに発症する重症型のⅠ型、幼児期前半までに
発症するⅡ型、および小児期に発症するⅢ型(軽症型)に分けられる。
Ⅱ
筋ジストロフィー
進行性の筋力低下を認め、病理学的には筋線維の壊死と再生がその主たる像であり、炎症性変化は認め
ない遺伝性疾患の総称。先天性筋ジストロフィー(15%)や Duchenne 型筋ジストロフィイー(35%)、
Becher 型筋ジストロフィー(20%)、先天性緊張性ジストロフィー(5%)などがある。
(先天性筋ジストロフィー)
福山型(68%)
常染色体劣性遺伝をとり日本に多い。日本人の1/88人が原因遺伝子を第9染色体長腕(9q31)上
に持っている。乳児期早期より全身に筋力低下や筋緊張低下が見られ、floppy infant になる。中枢神経
系では脳に奇形を伴うことが多く、重度精神遅滞を生じる。
発達はかなりの遅れがあるものの、お座りが可能になり、3~4歳ではいはいが出来るようになるが、
処女歩行をみることなく、全身の筋萎縮と関節拘縮が現れ始め、これが進行して最終的に心不全、呼吸
不全で死亡する。平均寿命は12~13歳。
(先天性筋緊張性ジストロフィー)
常染色体優性遺伝。同疾患の母から生まれる。おっぱいが吸えないなど、出生後から筋緊張低下を示す
が、明らかな筋疾患の特徴を示さない。診断は母の特徴的顔貌とミオトニアが決め手。幼児期まで発達
遅滞を呈する。
(Duchenne 型筋ジストロフィイー)
X 染色体劣性遺伝。2~5歳で発病。「転びやすい」「走れない」などで異常に気づく。臀から大腿の筋
力低下が初発症状で立ち上がりに困難を要する(Gowers 徴候)。また、腓腹筋の仮性肥大が見られる。
- 55 -
検査値では CK が2~3万と高値になる。4歳でかけっこができない。10歳くらいで車椅子になる。
発症10年以内に歩行不能となり、20歳前には呼吸機能不全で死亡する。
ⅢWerdnig-Hoffmann 病
乳児脊髄性筋萎縮症(SMA)の重症型のⅠ型に属す。乳児期より全身の筋萎縮が出現する常染色体劣性
遺伝疾患。その原因は下位運動ニューロン障害で、原因遺伝子は第5番染色体長腕(5q12.2-q13.3)上
にある。発症は 6 ヶ月以下。症状としては、座位は不可能で、floppy infant となる。筋力低下はほとん
どすべての筋に起こり、肋間筋の障害から呼吸困難も来たす。ただし心筋は侵されない。他に、舌が波
打っていることで診断をする。また、知能障害はない。
CMT(Charcot-Marie-Tooth 病)
Ⅳ
腓骨筋萎縮症のこと。末梢神経の髄鞘が悪くて起こる病気。四肢遠位筋、特に腓骨筋群の著名な筋萎
縮を共通症状とする。通常上肢より下肢を侵し、上腕二等筋三等筋は正常。
Leigh 脳症(リー脳症)
Ⅴ
乳児を侵す亜急性脳炎。病因は遺伝的原因。中枢神経の中でエネルギーをたくさん使う基底核群がだ
めになる。臨床症状は外眼筋麻痺、視力障害、嚥下障害、知能障害、呼吸障害などがある。
<2限
小児のけいれん>
小児のけいれんは
1.熱性痙攣
2.急性疾患による痙攣
3.偽発作
4.てんかん発作
の大きく4つに分類できる。
1.
熱性痙攣
熱性痙攣には単純型と複雑型の二つがある。
「単純型熱性痙攣」
① 病態:38℃以上の発熱を契機に乳幼児期に生ずる全般強直発作(大発作)。原因不明だが、遺伝
的素因に基づき、神経細胞の Na,Cl チャネルの変異があって神経興奮性が異常になることで起こ
ると考えられる。
② 有病率:小児の約 20 人に 1 人
③ 発症年齢:8 ヶ月ごろから 5 歳台までにみる。
④ 症状:発熱初期に突然、1~2 分間の全身強直痙攣を起こす。1/3の患児が二回以上起こす。
⑤ 予後良好
「複雑型熱性痙攣」
熱性痙攣の数%で、てんかんに移行しやすいもの。単純型と比べて下のような特徴がある。
(ア) 発達遅滞、脳障害の既往
(イ) 長い痙攣(5分以上)
(ウ) 部分痙攣
(エ) 痙攣が 24 時間以内に2回以上
- 56 -
(オ) 痙攣が1年に5回以上と頻回
(カ) 痙攣直前、直後の体温が 37.5℃未満
(キ) 初回痙攣が7ヶ月未満または6歳以降←脳が未熟だったり成熟していれば熱性
痙攣にはならない。
(ク) 7歳以後にもしばしば痙攣
(ケ) 家族歴にてんかん
(コ) 脳波に異常がある場合
※要するに熱性痙攣とてんかんの間のような症状です。複雑型熱性痙攣の約 20%の患児が後に「てん
かん」と診断されます。
2.
急性疾患による痙攣
ⅰ.新生児期…頭蓋内出血・髄膜炎・低血糖・電解質異常
ⅱ.乳幼児期…脳髄膜炎・乳児白色下痢症・薬剤性・頭部外傷
3.
小児の偽発作
ⅰ.憤怒けいれん←泣いていると脳に O2が行かなくなる。
ⅱ.息止め発作
ⅲ.不整脈による失神・痙攣
ⅳ.チック
ⅴ.身体化障害(ex.ヒステリー)
4.
小児てんかん
Ⅰ てんかんとは
悪い脳神経細胞の異常電気放電が慢性的に潜伏しており、時々、突然異常放電が脳の広い範囲に広
がる。これが発作の出現である。このような慢性疾患をてんかんという。
「てんかん」は疾患名、
「てんかん発作」は症状名です。
疫学)小児の 0.5%が罹病
予後良好の特発性てんかん症候群が多い。
小児てんかんの 80~85%は治癒する。15%は難治てんかん。
診断)てんかんの診断では、どんなてんかん発作を持っているかと、既往歴、家族歴、脳波所見、CT
や MRI などを総合して、最終的なてんかんの発作型とてんかん病型を決定する。脳波はあくま
で臨床症状の参考所見であり、てんかん発作あってのてんかんである。
原因)てんかんはその原因から、
①特発性てんかん…臨床的に原因不明、脳に器質的病変が確認できないもの
②症候性てんかん…脳に障害を持ち、器質的病変を確認できるもの
症状)
てんかん発作は大きく「部分てんかんによる部分発作」と「全般てんかんによる全般発作」に分
類される。
- 57 -
部分てんかんによる部分発作
脳波は焦点となる部位の誘導で、棘波、鋭波がみられる。
部分発作
発作時に意識障害はない。運動発作(筋肉の痙攣など)
、感覚発作
(幻覚、幻聴など)、自律神経発作(発汗)、精神発作がある。
複雑部分発作
発作時に意識障害がある。精神運動発作(意識障害下で舌打ち、手
を動かす、歩き回るなどの不自然な運動)をする。
二次性全般強直発作
焦点をもつ部分発作が、大脳に広がる。焦点に関連した前兆で始ま
り、全身の痙攣となる。
※部分発作を起こす疾患には、BECT や良性後頭葉てんかんがある。
全般てんかんによる全般発作
欠神発作
短時間の意識喪失が突然起こる
ミオクロニー発作
四肢、体幹筋が左右対称的に瞬間的に不随意攣縮する
強直間代発作
突然意識消失→強直発作→間代発作→もうろう状態を経て睡眠
※ 全般発作を起こす疾患には、良性家族性新生児けいれん、小児失神てんかんがある。
Ⅱ 難治てんかん
薬によって適切に制御できないてんかんを、難治てんかんという。小児の15%を占め、特に障害児の
てんかんは難治てんかんであることが多い。難治てんかんの例として、「West 症候群(点頭てんかん)
」
がある。West 症候群は年齢依存性てんかん性脳症で、生後6ヶ月をピークにその付近の年齢にしか出現
しない。本症の原因は脳奇形、結節性硬化症などがある。症状は、首がガクンガクンと前屈発作のシリ
ーズ形成(数分間に何回も繰り返し起こること)をする。発達が停滞し、多くは重度の知能障害を残す。
治療には VitB6、ACTH 療法が有用。
Ⅲ てんかんの治療と抗てんかん薬の副作用
(てんかん発作時の対応)
多くの発作は数分以内に自然に止まるので様子を見る。この時、噛まれるので決して口の中に物や手
を入れない。発作の様子、意識はあるかや発作中の動きを確認する。発作が30分以上続くのはけいれ
ん重積状態で危険なので、発作が5分以上続いた時点で救急車を呼ぶといい。日常生活では発作による
事故を予防するために、入浴やプールやホームでは気をつけるが、生活上の制限を最小限にすることも
大事である。
(抗てんかん薬はどのように効くか?)
・ てんかん焦点の異常放電をおさえて発作を抑える。
・ 脳全体が、てんかん異常放電に影響されにくくする。
(抗てんかん薬の投与の原則)
てんかんという疾患の性質上、長期にわたる薬剤投与を避けることは出来ないが、発育中の小児には薬
剤の副作用にも十分な配慮が必要。
まずは抗てんかん薬を単剤で、少量から投与し、なるべく多剤投与をさける。血中濃度を確認し、中毒
濃度を回避する。薬は認知機能障害の少ない VPA、CBZ、ZNS を第一選択とする。そして治療開始後は、
行動、記憶力、学習能力の変化を注意深く観察しなければならない。薬剤投与を続けて子供の場合は2
- 58 -
~3年、大人の場合は5年くらい脳波にてんかん波を認めない場合、投与量を漸減していく。
(抗てんかん薬の副作用)
一般的な副作用は、眠気、失調、脱力などがあるが、薬疹にも気をつける必要がある。
また、長く飲んでいると血液障害、内臓障害を起こしたり、過量投与による中毒症状で意識障害や内臓
障害を起こすことがあるので注意が必要。学習能力や精神症状への影響はまれといわれている。
また、抗てんかん薬は妊婦への影響が大きい。催奇形性(二分脊椎、口蓋裂など)があるので妊娠前は
できるだけ単剤、少量投与を心がける。VPA、CBZ、PHT は特に催奇形性があるので避ける。また、早
産や低体重出産を避けるためにも葉酸の補充も必要。また、妊娠中も発作の再発による切迫流産や薬の
血中濃度が下がりやすいので注意しなければならない。
この日は小児インフルエンザ脳炎・脳症についてもやりました。
(急性脳炎)
髄液細胞は軽度増加(>8mm3)。脳の一部分に浮腫が見られる。
急性ウイルス性脳炎や、急性散在性脳脊髄炎がある。
(急性脳症)
広範な脳機能不全状態が急激に出現する状態。炎症ではなく脳がむくんでいるだけなので、髄液細胞数
は正常。対称性、脳全体に浮腫が見られる。病型・病態が多彩なため、熱性痙攣やてんかんとの鑑別が
難しい。血管内皮の障害によって起こる小児急性壊死性脳症や、Reye 症候群がある。
症状)生後数ヶ月~2歳の乳幼児に好発する。初発神経症状は、痙攣、意識障害などで、初発神経症状
発現までの日数は0~1日が70%。
治療)対症療法しか存在しないので、早期発見、早期治療が予後に大きく影響する。治療の中心は脳浮
腫の改善で授業では軽度低体温療法をやりました。発症後24時間以内に行うことが望ましく、
脳圧や脳波や CT 所見が改善するまで行う。ただし、重症肺炎や心筋炎の患者には適応がない。
また、合併症にも注意が必要。
予後)約3割は亡くなり、その他の児も精神運動発達障害など重篤な後遺症を残すのが一般的。後遺症
がないものは急性脳症というよりも、熱性けいれんだった可能性が高い。
※ Reye 症候群
小児にみられる急性脳症に、非炎症性・無黄疸性の肝炎を伴うもの。子供にアスピリンを飲ませると
脳症を起こしやすくなる。ミトコンドリアがやられることで、細胞性の脳浮腫が脳全体に現れる。肝細
胞のミトコンドリアも膨化する。
急性ウイルス感染症(インフルエンザなど)の先行感染に引き続き、元気がない、嘔吐するなどを経
て急激に発症する。意識障害、痙攣、過換気、除脳硬直などの急性脳症を来たす。眼底検査では、脳圧
亢進を反映してうっ血乳頭が確認できる。また、肝腫大、肝機能低下がみられる。治療はやはり対症療
法しかない。
プリントにはありませんが、shaken infant 症候群についてやったので軽く説明します。
「shaken infant 症候群」
幼児虐待によっておこる疾患の総称。以下の症状を見たら虐待を疑う。
脳挫傷…揺さぶられたことにより起こる。場所は骨のぶつかりやすい所。
慢性の硬膜下血腫…脳がスカスカになると、血ですき間を埋めようとするから。
眼底出血
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小児の腎疾患
5 月 23 日 2 限 伊藤先生
たくさんの旅行の写真を交えて話してくれたなんだかとってもフレンドリーな感じの先生でした。スライド数も多
いからボリュームは大きくなりそうですが、なるべく読みやすく、授業に沿ってふりかえっていきたいと思います。
★小児腎臓専門医
要は先生ご自身のお仕事の紹介ではありますが、なかなか大事な本質をついているのであえてまとめ
てみると…
①腎疾患の早期発見→検診・予防医療
②腎炎、ネフローゼの治療と腎不全への進行阻止
③慢性腎不全児童の管理→在宅医療等
④腎移植(生体・死体腎移植)→移植医療の充実
ここで特徴的なことは、「小児の腎疾患は大人に比べて治る可能性が高い」ということと、「たとえ
慢性腎疾患を抱えていても心身の発達のために可能な限り普通の子どもと同じようにして育てる考え
方が大事だ」ということの2点のようです。
✐そーろんてきなこと。
★腎・尿路疾患の主症状
①浮腫…尿が上手く出せなければなるよね
発熱は尿路感染や
一部の腎疾患のみで必発ではない
②高血圧…レニンやらなんやらね
③尿毒症症状…中枢・末梢神経、消化器、骨、貧血、出血傾向、循環器、呼吸器、皮膚、
眼、異所性石灰化、免疫低下など、局所にも全身にも障害が出ちゃうね
④成長障害・眼・耳症状、特異的顔貌…これは小児に特有かも。先天的に腎が弱いと特に顕著だね
★腎臓病を疑った時の診察
①全身状態の観察…そりゃそうだ
②血圧→高血圧の有無…乳幼児の正常血圧は成人よりは低いので注意してね
③浮腫の有無…眼瞼・下肢・腹部なんかが診やすい。そのほか、体重増加や尿量の減少についても問
診しておこう
④胸部診察…呼吸音を聴診して呼吸状態の異状、特に肺水腫がないかチェック
⑤腹部診察…腸がむくむと腹部膨満が!腸音の聴診をして腹水もわかる!?
⑥成長障害の有無、貧血や皮膚色素異状の有無、耳や眼の異常・特異顔貌の有無
…先天性の腎疾患に随伴する症状のかずかず
★腎機能に関する血液生化学
まぁE1でもたびたび出てきたし E2 でもやったんで、皆さん後存知と思うのですが、なんと言っても
CrとBUNと尿酸です。Crは主に筋肉由来であるから成人でも男女の正常値が異なるのですが、子
どもの場合は年齢で大きく異なります。一方BUNは蛋白由来で、年齢による差はありません。尿酸も
年齢差はあまりないのですが、思春期以後はやや増加します。
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★尿異常
☻「う~ん…血尿が出た!」
まず糸球体性か、非糸球体性かを考えなくてはなりません。
糸球体性
非糸球体性
肉眼的に何に似てるか?
麦茶、ウーロン茶、コーラ
トマト or アセロラジュース、ロゼ
腰痛
ないね~
あることもある
凝結塊
それはない
ありあり
赤血球円柱・顆粒円柱
どっちもある
円柱なんてものはない
赤血球の変形
すごく変形してる
あんまり変形してない
(注・壊れた糸球体の gap からむりやりねじり出てくると赤血球が変形してしまうらしい)
それから、血尿はそれ自体で腎臓を痛めつけるようなことはないので、変な言い方ですが、蛋白尿に
比べて安全です。
(もちろん膀胱腫瘍などは例外的に危険な血尿ですが、小児の場合、悪性腫瘍による血
尿はまずありません)
☻「あ~蛋白が出てしまった…」
糸球体性か尿細管性かを知りたいところです。
・尿中NAGやα1MGが上がってる→糸球体性
・尿中β2MGが上がってる→尿細管性
NAGやα1MGは糸球体の上皮細胞に含まれるものだから、これが出てくるってことは糸球体が
壊れてるってこと。β2MGは尿細管で再吸収されるものだから、これが出てきてるってのは再吸収
機能が落ちてるってことみたいです。
✐かくろんてきなこと
授業プリにも分類が載っているように様々な小児の腎疾患がありますが、先生はほとんどをネフロー
ゼ症候群に注いでいたので、まずはネフローゼ症候群(以後ネ症)から扱かっていきます。
★ネフローゼ症候群
診断基準こそありますが、覚えなくてよいそうです。まぁ E1 で覚えそうだけどね。
小児期発症ネ症の原因疾患としては、原発性が80%、二次性が20%です。原発性の中でも80%
が微小変化型ネ症です。微小変化型の発症ピークは3~4歳で男子に多いです。
ネ症の病態はこんな感じです。
浮腫
①蛋白尿により低蛋白血症→膠質浸透圧低下
尿細管における水分&Na の再吸収の亢進
②低蛋白血症による肝臓での蛋白合成亢進
→これにひきずられてコレステロールの合成も亢進
→つまりは異化も低下
高コレステロール血症
③蛋白合合成亢進によってフィブリノーゲンの産生増加
抗凝固因子(AT-Ⅲとか)が排出されやすい
過剰な安静、血管内脱水
血栓症の危険の増加
実はこの辺りが診断基準にも関わってくるので、ついでに確認しておくといいかもです。
治療の第一選択はステロイドです。一般的には7日くらいで尿中蛋白は消失します。しかし、ネ症の
最大の問題点とも言えるのが、頻回再発です。そのためなかなかステロイドが切れません!ステロイド
反応性のものであれば、治療を継続することでほとんどが15歳までに寛解しますが、当然副作用が気
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になります。感染、眼症状、などの成人と共通するものの他に、小児では低身長がかなりのネックにな
ってしまいます。これらは心の傷をも残しかねません。子どもに対しては大人以上に副作用や生活上の
制限を少なくしてQOLの低下を防いであげたいところです。かつては、かなりの制限がありましたが、
過度の制限はEBMもないので、だいぶゆるくなりました。その変遷は授業プリにあります。副作用に
対しては、シクロスポリンなどの免疫抑制剤を併用することで対応します。
ではではその他の腎疾患もおおざっぱに解説します。
☻紫斑病性腎炎
Schonlein-Henoch 紫斑病に続発して起こる腎炎です。血小板減少をともなわない紫斑ですが、これが
消失したころに腎炎が出てくることがあります。他に、腹痛や関節症状があるのが特徴的です。大半は
予後良好ですが、一部は末期腎不全にいたることもあります。
☻膜性増殖性糸球体腎炎
病理組織でメサンギウム領域と内皮細胞の増殖および基底膜肥厚がみられる疾患です。Ⅰ型とⅡ型が
ありますが、どちらも免疫複合体が沈着するために、補体が低下する腎炎であることを覚えておいてく
ださい。
☻IgA腎症
成人同様、小児でも慢性腎炎の原因として最も多いものです。しかし以下のように大人と異なるとこ
ろも多いのでこれをしっかりおさえときましょう。
①早期発見例が多い(学校検尿で見つかるからだよ)
②血清IgA値は正常なこともある(成人では50%の例で高値)
③ステロイドで攻撃的な治療を早期から行うため予後が良好♪
(成人では約 40%が腎不全にいたるけど、小児ではほとんど腎不全にはならない。というのも成人で
は見つかるのが遅いうえに、DMやHTを併発している例があってステロイドがあまり使えないか
ら。)
☻溶血性尿毒症症候群(HUS)
悪名高き病原性大腸菌O157H7の出しやがる Vero 毒素の受容体は血管内皮や赤血球にもあります
が、実はメサンギウム細胞にも存在するのです。尿細管も障害されます。腎障害を来たすのは消化器
症状がみられた全患児のうち約8%です。腎不全は可逆性でほとんど死亡には至りませんが、脳症が
出てしまった場合は予後不良なので注意。
☻急性糸球体腎炎
血尿(コーラっぽい)
・浮腫・高血圧が三徴。ほとんどが溶連菌感染後に発症します。上気道または
皮膚感染後に、菌体成分を抗原とする免疫複合体が循環血液中に形成されて、これが糸球体を障害す
ることにより起こるというものです。基本的に予後は良好ですが、一過性の低補体血症を起こします。
★尿路感染症
風邪の症状もないのに乳児が高熱を出していたら是非これを疑ってください。腎盂炎が一番危険で
すが、成人の様に、排尿時痛や腰背部痛が顕著ではありません。例えあっても伝えられないしね…。
発熱のほかに、嘔吐、不機嫌などを示すこともあります。見逃すと敗血症になって重症化してしまい
ます。そこで、3ヶ月未満の乳児が熱を出したら尿検査を行います。乳幼児の尿路感染症は男児がほ
とんどで、膀胱尿道逆流症や尿路奇形がバックグラウンドにあることが多いです。オムツの中から感
染するので大腸菌が原因になりやすいみたい。一方、幼児期以降は女児の方が増えてきます。尿道が
短いことが関係しているのは成人と同様です。さて、膀胱尿道逆流症なんですけど、先天性の腎障害
がある場合も多く、外科的な治療を必要とするケースも多いことを先生は主張してました。初めはそ
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こまで深刻でなかったとしても、繰り返せばやっぱり腎障害を来たしやすくなります。
★小児慢性腎不全
まぁいろいろな経緯がありまして、最近ではだいぶ予後もQOLも改善してきた、的なことが授業プ
リにもたくさん書いてあります。小児の透析患者は約 400 人と成人の 20 万人(それもほとんどDM)
と比べるとかなり少ないですが心の問題点なんかも多いです。過保護になりすぎちゃったり、とかね。
ところで、小児の透析はほとんどが血液透析ではなく腹膜透析ですけどなんでだと思いますか??
これちょっとテストで問われそうなポイントかも。。。
まず、血液透析が向かない理由
①透析中安静でなければならないが小児は成人以上に苦痛
②体が小さいから透析ルートが作りづらい
③低血圧や不均衡症候群になるとやっかい
④透析回数が多いので、教育の妨げになる
そして腹膜透析のメリット
①在宅でできるのでQOLが向上!夜間だけもOK♪
②除水がゆっくりできるので循環への影響が少なくて済む
③蛋白等の食事制限が少なくてよい
④低体重、低年齢でもルートの作成可能
⑤血液生化学データや血圧が安定している
⑥ブラッドアクセスがいらない
しかしさすがの腹膜透析も、QOLの改善度ではやはり腎移植には劣ります。この腎移植にも利点と
欠点があります。
利点 ①透析をしないですむから生活範囲がグッと広がる
②食事制限や水分制限から解放される
③腎不全の合併症がなくなる
欠点 ①免疫抑制剤の服用を続けなければならず、副作用も心配…
②拒絶反応が起こるかも…
③水分を多めにとらないといけない
さらに問題点もあったりします。まず、普通は家族などからの生体腎を移植してみますが、上手くいかなけ
れば死体腎を…と、移植を繰り返すことになります。また、たいていは親から生体腎をもらうので、親はあげ
て当たり前のような雰囲気が漂ってしまうのは考え物です。あげたくても条件が許さない親もいれば、気持ち
的にどうしてもあげられない親だっているでしょう。一人親の場合は失敗を考えたときの心細さもありえます。
逆に子どもに腎臓を与えた親は「あたしはあんたに腎臓をあげたんだからしっかり勉強しなさい!」というよ
うに、子どもに対して恩着せがましくしばりあげるケースもあるそうです。移植を頼んだわけでもない子ども
にとっちゃいい迷惑です。それから、ドナーが感染しているものに、子どもは未感染の場合があります。EB
VやCMVなど、レシピエントが成人なら問題になりそうもないやつでひっかかります。しかも今日の免疫抑
制剤は効きがよくなってしまったので、拒絶反応をおさえる一方、感染も起こりやすくなっています。
まぁでもこのような問題を抱えつつも、やはり腎移植後は成長も著しいし、総合的な観点から勧めたほうが
いいみたいです。
私、恥ずかしながら腎臓全く理解しないまま進級しちゃったんで、ここにきて初めて真剣に腎について学んだ
ようなものでした。他の以上にまとまりないし読みづらくてごめんなさい。でも成人と同じようで結構違う範囲だ
から、あえて小児疾患として学ぶ甲斐はきっとみんなもあったはず!!
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小児精神 まとめてシケプリ
担当:まとめてゆみ
精神だし小児だし、どちらのシケタイでもある私の個人的な興味は相当高いしいろいろ説明したかったけど、
他の科目もある中で、これ以上ボリューム増やすことは誰のためにもならないと判断しました。おそらく小テスト
がそのまま1問と、小テじゃないのが1問で出るとふんでます。なので、ここでは小テストの解説と、それに付随し
たことを多少のせる程度にします。精神科的な用語は、すでに精神で学んでいるはずなので、「?」と思ったら前
作の精神シケプリでも参照してみてね(笑)もちろん、余力があれば授業プリに目を通しておくとより安心です。
児童精神科の入院治療
5/1 4限 清家 洋二 先生
小テスト
1.暴力・興奮・摂食障害による著しい体重減少などは入院を考慮すべき症状である
2.SSRIが使われるようになり児童期青年期の強迫性障害患者の入院はなくなった
3.児童期の精神疾患では、主症状が変遷することがある
4.親が虐待者である場合の医療保護入院では虐待している親の同意は必要ない
5.入院になるような児童期の精神疾患は親の問題が大きいので、親カウンセリングが治療の中心に
なる
解説・解説
1.○…〈入院適応となる主要な症状〉
入院適応となる症状に共通することは、要するに家で生活できなくなることです。
まず、多動性行為障害などによる暴力・感情爆発・衝動があります。それから統合
失調症などによる興奮(継続する感情爆発のこと)、摂食障害によるるいそう、強迫性障害による強
迫障害、その他、極端な抑うつ・希死念慮、解離症状なんかも入院適応となります。
2.×…確かに強迫性障害の治療の一環としてSSRIは用いますが、児童の場合薬物治療だけでは
不十分な場合も多く、精神療法や環境要因の調整なども補っていきます。1でも述べたように
過度の強迫性障害は今でも入院適応のある疾患です。
3.○…主症状の消失のみでは次の症状が現れてることがあるから、何をもって治癒判断することは
難しいのです。
4.×…〈入院治療と親〉
医療保護入院とは、精神障害者の意思に反して病院長などの管理者が強制入院さ
せる制度で、保護者の同意と精神保健指定医1名の診察が必要、というものでした。
これは、たとえ保護者の虐待が原因となっているケースでも同様なので、同意は必要なのです。
そのため、実際は同意が得られず入院不可能なことも多いです。虐待に限らず、親の判断は治療
を左右することが多いです。一般に親はものすごい覚悟で入院させるので、治療者に対して過度
の期待を抱きがちです。反対に治療者も親が完璧であることを前提にしてしまっている経口があ
ります。1回の説明で親が入院や治療について理解したと思い込んではいけないと、先生は言っ
ていました。
5.×…確かに親カウンセリングも必要ですが、治療の中心はあくまでも患者である子
どもの方です。
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子どもの福祉と児童精神医学
5/18 1 限
金井 剛 先生
小テスト
1.児童虐待には身体的虐待・心理的虐待・性的虐待・ネグレクトの4種がある
2.児童虐待は予防対策によって徐々に減少しつつある
3・乳児の硬膜下血に網膜出血を合併している時は乳児ゆさぶり症候群を強く疑う
4・身体的虐待を受けた子は低身長、夜尿、睡眠障害などを認めることがある
5・子どもの性器周辺の外傷や発心やSTDを認めた場合は性的虐待を疑う
6・学校は疑いの段階でも保健所や児童相談所に通告する義務がある
解答
1.○…〈児童虐待について〉
☻児童虐待の定義は「強者の大人から弱者の子どもに対してなされる、心身に危険を及ぼすよう
な重大な権利侵害」ですが、なんともあいまいで立場によって解釈にずれがあるのが問題です。
☻児童虐待の種類は4つに分けられますが、重複してることも多いです。
①身体的虐待:児童の身体に外傷が政治、または生じるおそれのある暴行を加えること
②心理的虐待:児童に対する著しい暴言または著しい拒絶的対応、児童が同居する家庭での
配偶者に対する暴力など児童に著しい心理的外傷を与える言動
③性的虐待:児童にわいせつな行為をすること、また児童をしてわいせつな行為をさせるこ
と
④ネグレクト(養育放棄)
:児童の心身の発達を妨げるような著しい原色または長時間の放置
と保護者としての看護の怠慢
2.×…むしろ増加してます(><)
3.○…骨折のない硬膜下出血、眼底出血、多数の外傷などを認めたら、
「乳児ゆさぶり症候群」
の可能性大です。眼底出血は非常に強い刺激が加えられたことを意味します。虐待して
いる親は、ケガの理由をとりつくろおうと嘘をつきますが、何度か理由を聞くと、その
都度違う理由が出てきたりして発見されるそうです。確かに、本当のケガだったら、理
由が変わるわけないですね。
4.○…〈虐待の子どもへの影響〉
低身長・夜尿・睡眠障害などは虐待全般で見られる影響です。その他、身体的虐待に特
徴的なものとしては、打撲、火傷、内臓破裂、視力障害などの明らかな身体的外傷のほ
か痛がらなかったり痛がりすぎたりという温痛覚の異常などが見られることがあります。
5.○…〈虐待の子どもへの影響〉
性的虐待特有の影響として、身体愁訴・悪夢・異尿や夜尿・性病などが挙げられます。
他に、性同一性への影響や、高い自殺企図、うつ病や人格障害も高率に関連します。
6・○…〈虐待の発見と通告義務について〉
児童虐待防止法では、
「虐待を発見または疑う場合は児童相談所または保健福祉センター
(市町村)に通告する義務」が示されています。通告しなかったからと言って罰則はあ
りませんが義務づけられていることは知っておきましょう。
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学校教育と児童精神医学
5/18 2限
陶山 寧子 先生
小テスト
1.不登校であれば送球に精神科や小児精神神経科を受診させる必要がある
2.不登校の生徒数は増加傾向にある
3.不登校で家庭内暴力が見られることはない
4.学校での集団不適応の原因の1つとしてアスペルガー障害が考えられる
5.学校教育と児童精神医学の連携は重要である
6.安易に医療情報を学校に伝えることは避けたい
解答
1.×…〈不登校の症状の意味〉
不登校はいまや日常化しています。すべてを医療モデルで説明する必要のない
時代になったようです。もちろん病的状態がもとになって不登校になっている場
合もありますが、いじめや本人の性格なども含めて多元的に考える配慮が求められます。考えら
れる不登校の意味の中で最も重要のは、精神症状を悪化させない意味での防衛としての症状です。
本人がもともと精神の具合の悪さをなんとなく感じて潜在的に悪化を防いでいることがあるので
す。この状態ではただ不登校という状態だけを解除したのでは問題ですね。
2.×…不登校の生徒数は平成 16 年度の統計では 12 万 3 千人。平成13年をピークにわずかに減
少傾向にあるそうです。でも、もしかしたら子どもの数自体が減ってきたことに関係するの
かもしれないですよね…
3.×…〈不登校の経過〉
不登校初期には登校前後から起こる身体愁訴(頭痛、腹痛、吐き気、頻尿など)が認められ
やすいです。そのうち「学校に行きなさい」という家庭や学校からの登校刺激によって情緒
不安定、不機嫌が出現しやすくなり、この時期に家庭内暴力に至ることもあるわけです。そ
して不登校の状態がそれなりに安定してくると、単調で受動的…簡単にいえばダラダラな
日々が続くことが多いです。
4.○…〈集団不適応について〉
ADHD・アスペルガー障害、高機能自閉症、広汎性発達障害などが集団不適応の一因には
なりがちです。これら「軽度発達障害」の概念が世間に浸透してきたことによって、受診に
結びつくケースが増えてはいますが、診断だけではなく、どのように子どもと関わりあって
いくかということを学校側ともよく話し合っていく必要があります。
5.○…そりゃもちろんそうです。多くの子どもが学校に通っているわけで、学校面は子どもの生
活や関わりを知る上でも重要です。
6.○…子どもに関しての医療情報は個人情報ですから、基本的に当事者親子に伝えるものです。
学校に伝えるには、親子を介した形がベストであって、医療者側から学校に対して安易に医
療情報を開示するのは好ましくありません。
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子どもの身体愁訴と児童精神医学
5/26 1限
高橋 雄一 先生
小テスト
1.子どもの身体愁訴は環境反応的に生じることが多いので、まず第一に原因となる心理社会的負荷
を見出すことが優先される
2.子どもの不安障害では身体愁訴を訴えることが多く、心身症とも言われる。
3.うつ病でも身体愁訴を訴えることがある。
4.身体表現性障害では、症状が器質的でないことを証明するために、患者や家族が納得するまで医
学的検査をくり返し行った方がいい。
5.神経性無食欲症では、栄養障害が顕著な時でも活動性が亢進しているために身体的危機的状況が
みすごされることがある。
解答
1.×…確かに子どもの身体愁訴は環境反応的に生じることは多いです。でも、安易に心因性と決
め付けるのは危険です。原則的に
①脳気質疾患あるいは身体疾患に伴う精神障害
②内因性精神障害
ex)甲状腺機能低下症など
ex)うつ病、統合失調症など
③心因性神経障害
の準に鑑別していきます。
2.×
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高齢者の心理
5 月 29 日 2 限 小田原先生
去年の過去問には今年の小テとまったく同じものが 1 題出ていました。もう 1 問小テではないものもあ
りますが、まぁ小テの内容が理解できていれば、なんとなくいけると思います。ここでも小児精神試験
プリント方式でまとめたいと思います。
小テスト
1.正常の老化過程では、顕著な知的衰退は起こらない。
2.流動性能力は、教育や学習経験によって獲得された能力をさす
3.記憶力は加齢に敏感で衰えやすい機能である。
4.高齢者のパーソナリティに大きな変化が現れた時は、病的な変化を疑う
5.高齢者を取り巻く社会環境変化に留意し、個別の対応を行う必要がある
解答
1.○…〈高齢者の知的機能〉
かつては「知能発達のピークは 20 歳代、30 歳過ぎれば下り坂」と思われていま
したが、これは老化研究に用いられる知能テストが若年者の知能発達が多かった
ために、高齢者の成績が過小評価されていたことにすぎません。そもそも知能には大きく2つ
に分けられます。
☻流動性能力…過去の経験によらず、自ら新たな課題の解決法を見出すのに役立つ能力。動作
性知能テストという方の成績に反映される。
☻結晶性能力…教育や学習経験によって獲得された能力。言語性知能テストのという方の成績
に反映される。文化的環境条件の影響を受けやすい
若いときは、流動性能力の方が有効に働いていますが、次第に結晶性能力の役割
大きくなってきます。つまり加齢とともに知能の質は変化するということです。ちょっと想像し
てみれば、そんな気もしませんか?だから、総合的に見て、正常の老化過程では、顕著な知的衰
退は起こらないと言えるのです。
ただし、結晶性能力は経験や学習によって磨かれるものだから、知的活動の継続が重要で、十
分な活動がなければ能力低下は避けられません。
2.×…1の解説を参照。これは結晶性能力についての記述です。
3.○…〈記憶機能の廊下〉
記憶は知能を支える重要な要素ではありますが、知能そのものではないので、知能のレベル
に必ずしも平衡するものではありません。やはり記憶力は加齢という過程の中では敏感に衰退
していく機能です。ちなみに、かつて神経かなんかでもうやった気はしますが、記憶には3つ
のプロセスがありますよね。記名→保持→再生という。。。衰えていくときはこの3つのいずれ
も衰えます。
4.○…〈パーソナリティと加齢の関係〉
なんとなく年齢によってパーソナリティが変化するようなイメージってないですか?おばち
ゃんはがめつい、とか、おばあちゃんはやたらさびしがったり人を疑う、というような(これ
はあたしの偏見かな!?)もちろん、個人差もありますけどね。確かに年齢に応じて何らかの変化
がみられることは珍しいことではありません。でも、基本的に個人のパーソナリティは中年期
に達する前にほぼ固まり、それまでに形成されたパーソナリティの特徴は生涯を通じて安定し
て維持されると考えられています。そのため、特に大きな変化が現れたときは、脳障害や、身
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体的不健康など、パーソナリティに影響を与えうるような病的な変化を疑います。
5.○…〈高齢者をとりまく社会環境〉
授業プリにはよくまとまっていますが、それを知らなかったとしても、この問題には○がつ
けられると思います。
★補足…〈パーソナリティのタイプと生活適応〉
老年期はいろんな喪失が起こります。大事な人との死別や自分の能力・地位などです。しかし、
これらの喪失に伴う困難は、必ずしもネガティブな影響を与えるものではなく、克服することによ
ってさらなるパーソナリティの発達を示す人もいるのです。一般に5つのタイプに分けられている
のでちょっと説明を加えておきます。
①円熟型:最も安定した適応をしめすタイプ。困難も含めて、自身の人生を受け入れて堂々と生
涯を終わっていきます。理想的なタイプといえます。
②依存型:ひたすら誰かに依存していくタイプ。
「あたしゃもう年なんだから助けてもらわないと
困る」と思っていたりします。まぁ一応今の日本だったら誰かが救いの手を差し伸べてなんと
かなっていくのでしょうけれど、依存される側の余裕がないような厳しい環境下での適応は容
易ではないでしょう。
③防衛型:老化への拒否の反動として、高い活動性をもつタイプです。
「まだ若いから大丈夫」と
いって積極的に動いていくタイプなので、一見円熟型と似て見えますが、自分の老いを否定し
たいがために、がむしゃらにがんばっているため、不自然かつ不安定です。健康を崩したりし
て活動が妨げられた場合、大きな打撃を受けて挫折してしまう可能性も大きいです。骨折等で
入院した後急速に衰えを示すのはこのタイプみたいです。
④自責型:過去の失敗を悔やんで自分を責めるタイプです。
「どぉせあたしはあんなことやこんな
ことをしたんだからえんま様がくるよ」てなことを言うかどうかはわからないけど、とりあえ
ずうじうじしている感じです。
⑤他罰的憤慨型:自分の不幸を他人のせいにし、攻撃するタイプです。嫁とかに向かって「あん
たが嫁いできたからね、あたしゃこんなになっちゃったんだよ」とか言っていびるタイプ!?
でも、この要素があったからといって、困難を克服できないかといえば、そういうわけでもな
さそうです。
どのタイプもはっきり分けられるものではなく、誰にでもある程度は含まれているようです。パ
ーソナリティが極端であるために生活不適応をきたす高齢者の多くは老年期より前にすでに偏り
があるようです。老年期を円熟して過ごすための課題は、主として中年期にすでにあるといえるで
しょう。
個人的な勘で、老年期のタイプ分けがもう1問に出る気がしたので加えておきました。その他、けんさほうなん
かも授業プリには載っているから、気になるなら見ておいてください。ちゃんと説明されていますので。
私の担当範囲はココまで☆ご静読ありがとうございました!!それではみなさん、がんばりましょう(^^)9
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