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総務省自治税務局市町村税課 - 地方公共団体情報システム機構 地方

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総務省自治税務局市町村税課 - 地方公共団体情報システム機構 地方
特集
番号制度と情報連携
総務省自治税務局市町村税課/自治体の税担当部署における業務変化
地方税分野における
番号制度の利用場面について
総務省自治税務局市町村税課住民税第三係長 坂場 純平
して番号を用いた課税資料の名寄せ、番号を用いた
1
はじめに
税情報の管理による事務の効率化が挙げられる。
まず、課税資料の名寄せについて、個人住民税で
番号制度の導入により、地方税分野においては番
は個人の所得を捕捉するため、給与支払報告書や確
号を用いて税情報の管理を行うことができるように
定申告書などの課税資料の名寄せを行っている。こ
なり、事務の効率化や所得把握の精度の向上が期待
れらの課税資料については、現状、氏名や住所など
されている。また、情報提供ネットワークシステム
の個人情報を元に名寄せ作業を行っているが、結婚
を通じて市町村から所得情報を社会保障分野の手続
や転居等による氏名、住所の変更や異体字が正確に
きに提供することにより、国民が社会保障給付の申
記載されていないなど、システムのみでは名寄せが
請を行う際、所得証明書等の添付が省略できるよう
完結しないことが多々ある。総務省自治税務局市町
になるなど、国民の負担軽減が期待されている。
村税課において平成25年度に実施した地方団体への
本稿では、番号制度の導入により地方自治体、特
実地調査の際、名寄せが困難な課税資料の発生割合
に市町村の個人住民税を担当する部署において生じ
について質問したところ、回答の平均をとると給与
る業務の変化と、番号の利用がもたらす効果につい
支払報告書で3.0%、確定申告書で2.3%という結果
て考察するとともに、地方税の電子化の推進につい
となった。番号制度導入後は、これらの課税資料に
ても言及する。
個人番号が記載されることになり、これまでの氏名
なお、文中において意見にあたる部分については
や住所に加え個人番号を用いて名寄せを行うことに
筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織のい
なる。個人番号の持つ「唯一無二性」の性格から、
かなる考えも代表しないことをあらかじめお断りし
システムで名寄せ完結しない課税資料が大幅に削減
ておく。
されることが想定され、これにより所得把握の適正
化・効率化が期待されているところである
(図-1)。
2
番号を用いた地方税情報の管理
(1)番号を用いた課税資料の名寄せ、管理
番号制度の導入による地方税分野における効果と
次に、番号を用いた管理について、現状、各地方
団体においては、税目横断的な宛名システムを用い、
個人や法人に宛名番号を付番し各税目の情報と紐付
けて管理している団体が多い。しかしながら、氏名・
月刊 LASDEC H26.2月
23
特集
番号制度と情報連携
総務省自治税務局市町村税課/地方税分野における番号制度の利用場面について
図−1
社会保障・税番号制度を個人住民税で利用する場合のイメージ
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住所などから本人の真正性が確認できた者
(例えば、
いる法定調書の種類については差異があるが、25年
市町村の住民基本台帳の情報と突合できた者)など
度より一部の法定調書(
「報酬、料金、契約金及び
を除いては、税目ごとにそれぞれが別の宛名番号を
賞金の支払調書」
「配当、剰余金の分配及び基金利
付番し、管理していることが多く、結果として宛名
息の支払調書」など5種類)については eLTAX を通
システムの中では一つの個人・法人が複数の宛名番
じて電子データによりすべての市町村に送付されて
号で管理されている。番号制度導入後は、
個人番号・
いる。法定調書は、原則として氏名・住所しか個人
法人番号を用いて、複数の宛名番号が振られている
を特定するための情報が記載されておらず、また種
個人・法人を一つの宛名番号に統一することが容易
類によって提出時期が異なるため転居、氏名の変更
になり、これにより例えば税目間の収滞納情報の把
などが頻繁に起こることなどから、名寄せに時間が
握が効率化されるなどの効果が期待されている。
かかるだけでなく、名寄せできない法定調書も多く
(2)法定調書の名寄せの精度向上
24
発生する。番号制度導入後は、法定調書に番号が記
番号制度導入による課税資料の名寄せの効率化の
載されて国税当局に提出されるため、市町村におい
例として、国税当局に提出される法定調書による個
ても番号と紐付いた情報を入手することとなり、番
人住民税の所得把握の効率化について取り上げる。
号を用いた名寄せを行うことで法定調書による所得
市町村において、確定申告書に記載された所得の確
把握の精度向上・効率化が期待されている
(図-2)
。
認等のため、国税当局に提出される法定調書を入手
また、現在、法定調書による所得把握については、
している。これについては、いわゆる三税協力で実
ほとんどの法定調書の国税当局からの入手時期が5
施している事項であるため、市町村ごとに入手して
月以降であること、名寄せ作業に時間がかかること
月刊 LASDEC H26.2月
特集
番号制度と情報連携
総務省自治税務局市町村税課/地方税分野における番号制度の利用場面について
図−2
法定調書の名寄せの精度向上について
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などから、
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ている市町村がほとんどである。法定調書の種類に
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利用例として想定している事項について記載する。
(1)扶養認定の精度向上
よっては所得額を計算するのに必要な必要経費が不
個人住民税の課税において、他の市町村に納税者
明であるため納税者からの申告なしに所得額が決定
の被扶養者が居住している場合、所得要件の確認や
しないものもあるが、法定調書から入手した情報だ
既に他者の扶養となっていないかの確認を行ってい
けで市町村で所得額を算出できるものもある。後者
る。現在、この業務を行うためには、まず当該被扶
について、番号制度導入後に電子データで提供され、
養者の居住している市町村を確認することとなる
それを番号を用いて名寄せすることになれば、現状
が、給与支払報告書や公的年金等支払報告書のみで
より格段に事務が効率化されるものと想定され、6
課税される者については、これらの報告書では被扶
月の当初課税前に作業を行うことも期待できる。
養者の住所までは特定できないため、給与支払者や
年金の支払者が保有する扶養親族等申告書に記載さ
地方税分野での
情報提供ネットワークシステムの利用
れている内容を照会している。次に、当該被扶養者
地方税分野において、公平・公正な課税、納税者
なるが、当該照会については書面で実施しているた
の利便性向上等のため、情報提供ネットワークシス
め、照会・回答文書の作成などに時間を費やしてい
テムを通じて社会保障分野や他の地方税当局から情
るところである。
報を入手することを予定している。以下、個人住民
番号制度導入により、給与支払報告書や公的年金
税の課税における情報提供ネットワークシステムの
等支払報告書に被扶養者の氏名及び個人番号を記入
3
の居住している市町村に所得要件を確認することと
月刊 LASDEC H26.2月
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特集
番号制度と情報連携
総務省自治税務局市町村税課/地方税分野における番号制度の利用場面について
する枠を設ける
予定であるこ
と、地方税所管
部局においても
住基ネットの検
索が可能になる
図−3
扶養の認 定の精度向上について
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ることで当該被
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ることが容易と
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報提供ネット
ワークシステムを通じ、当該被扶養者の所得情報・
報の提供を予定している。所得や資産を給付等の判
扶養情報の照会を行うことにより、電子的、即時的
定要件としている社会保障手続きにおいて、現在は
に回答が届くことになり、照会・回答に係る事務作
個人住民税で把握する所得情報や固定資産税の資産
業が大幅に短縮されることが期待される(図-3)。
情報などの地方税関係情報を法律の規定に基づき地
(2)生活保護減免の認定に係る生活保護受給証明
書の添付省略
方団体の地方税所管部局から入手するか、給付等の
申請者に対し申請の際、課税証明書等の添付を求め、
生活保護減免を実施している市町村においては、
それにより把握している。
その減免申請の際、生活保護受給証明書を添付の上、
番号制度導入後は、個人住民税で把握した所得情
申請書の提出を求めている。番号制度導入後は、情
報については、情報提供ネットワークシステムを通
報提供ネットワークシステムにより他市町村等で生
じて提供を行うことを予定しており、社会保障所管
活保護を受給している者の情報についても確認がで
部局においては、原則、情報提供ネットワークシス
きるため、生活保護受給証明書の添付の省略が可能
テムを通じて所得情報を入手することになる(固定
になると考えられる。
資産情報については固定資産課税の元となる土地・
家屋の登記情報に番号が利用されず、固定資産と個
4
情報提供ネットワークシステムを通じた
地方税関係情報の提供
(1)社会保障分野への所得情報の提供
26
人番号の紐付けを行うことが困難であることなどか
ら、現状の番号制度では情報提供することは困難で
あると想定している)。
番号制度の導入により、地方税所管部局から国や
地方税所管部局から所得情報を入手していた社会
他の地方団体の社会保障所管部局等に対して、情報
保障手続きにおいては、照会文書の作成や回答まで
提供ネットワークシステムを通じての地方税関係情
の時間が短縮されることで事務の効率化が期待され
月刊 LASDEC H26.2月
特集
番号制度と情報連携
総務省自治税務局市町村税課/地方税分野における番号制度の利用場面について
る。一方、給付等の申請者に対し所得証明書の添付
ともに、本人の同意を得るべき事務についても規定
を求めていた社会保障手続きにおいては、所得証明書
される予定である。
の添付を省略することが可能となる。地方税所管部
局においても、照会のあった社会保障手続ごとに回
答を作成する必要がなくなるため、事務の効率化が
期待される。
(2)地方税法に規定する守秘義務との関係
5
地方税の電子化の推進
番号制度の導入による地方税分野における効果と
して、番号を用いた課税資料等の名寄せ、番号を用
地方税法第22条は、地方税に関する調査等に従事
いた税情報の管理による事務の効率化について先述
する者がその事務に関して知り得た秘密を漏らした
したが、その効果を十分に発揮するためには課税資
場合に、通常の地方公務員法の守秘義務よりも重い
料等を入手する段階から電子化されていることが重
罰則を課しており、所得情報を始めとする地方税関
要となる。そのため、番号制度の導入とあわせて地
係情報の第三者への提供については、慎重に対応す
方税の電子化に係る施策の検討を行っている。
ることが求められている。そのため、情報提供ネッ
トワークシステムによる地方税関係情報の提供につ
(1)源泉徴収票・給与支払報告書等の電子的提出
先の一ヵ所化
いても、この地方税法に規定する守秘義務との関係
給与の支払者である企業は給与所得の源泉徴収票
について整理する必要がある。
を税務署に提出するとともに給与支払報告書を従業
平成25年8月に総務省が公表した「地方公共団体
員の住所地の市町村に提出しているが、この給与所
における番号制度の導入ガイドライン」第2章第2
得の源泉徴収票と給与支払報告書の記載事項はほぼ
節においては、情報提供ネットワークシステムを通
同じ内容となっている。現在、電子的に提出する場
じた所得情報の提供は法律上規定された請求に対
合、給与所得の源泉徴収票については e-Tax による
し、法律上規定された提供義務(番号法第22条)を
提出または税務署に光ディスク等を提出することと
履行するための正当な行為として許容されるもので
しており、給与支払報告書については eLTAX によ
あり、守秘義務違反は成立しないと解釈している。
る提出または従業員の住所地の市町村ごとに光ディ
また、地方税法の守秘義務の趣旨にかんがみ、情報
スク等を提出することとしている。
このように現在、
提供の必要性が認められ、本人の権利利益に悪影響
電子的な提出先が異なっている給与所得の源泉徴収
を与えない以下のいずれかに該当する場合に限り番
票と給与支払報告書を、様式の統一とあわせてオン
号法別表第2に規定している。
ラインで一ヵ所の電子的な窓口に提出できるように
a)利用事務の根拠法律において、本人が行政機関
すれば企業の事務負担を軽減できるということで、
に対して報告を行う義務が規定されており、本人
実 現 に 向 け た 検 討 を 行 っ て い る。 具 体 的 に は、
にとってはその行政機関に情報が伝わることは秘密
eLTAXにインターネットを通じて送信することによ
として保護される位置づけにないと解される場合
り、eLTAX のシステムが国税庁と市町村に自動で
b)利用事務が申請に基づく事務であり本人の同意
振り分けて送信する方法を検討している(図-4)。
により秘密性が解除される場合
平成24年度の市町村への給与支払報告書の電子的
具体的に提供が可能な特定個人情報の項目につい
提出の割合(eLTAX 及び光ディスク等による提出
ては、今後、番号法の主務省令において規定してい
率)は19.2%と低い水準であり、こうした施策によ
くこととなるが、地方税法上の守秘義務の趣旨を踏
り企業の電子的提出のインセンティブを高めること
まえ、事務のために必要最低限の項目に限定すると
で地方税の電子化を推進していく。
月刊 LASDEC H26.2月
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特集
番号制度と情報連携
総務省自治税務局市町村税課/地方税分野における番号制度の利用場面について
なお、電子的提出先の一ヵ所化については、税務
れる法定調書の種類を拡充し、それらの法定調書を
署に提出する公的年金等の源泉徴収票と市町村に提
番号により名寄せすることで個人住民税における所
出する公的年金等支払報告書についても実施する方
得把握の精度が向上するものと想定される。平成25
向で検討している。
年5月に総務省自治税務局において実施した調査で
(2)eLTAX を通じて提供される法定調書の種類
は、電子的提供を開始した5種類の法定調書以外に
の拡充
も、「生命保険契約等の一時金の支払調書」や「損
先述のとおり、平成25年度より一部の法定調書に
害保険契約等の満期返戻金等の支払調書」など税務
ついて eLTAX を通じた電子的送付を開始したとこ
署から書面により入手し、所得把握に活用している
ろであるが、番号制度の導入により法定調書の名寄
市町村が多くあることが判明している。同調査にお
せが効率化することを踏まえれば、電子的に提供さ
いては、同様の法定調書が今後電子的に提供される
ことを希望している市町村が多いこ
源 泉徴収 票・給与支払報告書の電子的提出先の一ヵ所化
図−4
とも判明しており、これらの法定調
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また、eLTAX により電子的に提
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6
データ送信の対象以外の法定調書の提供の状況及び電子的提供の希望の状況
図−5
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においてもこうした番号制度の新し
い動きに対応し、さらなる地方税に
係る事務の効率化や納税者利便の向
上策について検討を行っていくこと
が必要である。
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