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デニム・ジーンズのマネジメントの実践 - 平成24年度 成長分野等における

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デニム・ジーンズのマネジメントの実践 - 平成24年度 成長分野等における
平 成 24 年 度 「 成 長 分 野 等 に お け る 中 核 的 専 門 人 材 養 成 の 戦 略 的 推 進 事 業 」
「デニム・ジーンズのマネジメントの実践」
デニム・ジーンズクリエイター養成基盤整備のための教育プログラム開発と実証
2
「 デ ニ ム・ジ ー ン ズ の マ ー ケ テ ィ ン グ と マ ネ ジ メ ン ト の 実 践 」
本書は次のような特色を備えている。
1)ジーンズクリエーターには総合的な知識や素養の「幅の広さ」
が求められるが、その目的に沿った内容をめざしている。
とかく自分の得意な持ち場に関係する情報にかたよりがちであ
るが、他の分野の知識や考え方を学ぶことで発想が豊かになる
ことが期待できる。
2)国際的なビジネスへの広がりに必要な知識
ジ ー ン ズ 商 品 の 特 色 は そ の 国 際 性 に あ る 。ブ ラ ン ド 製 品 の 輸 入 、
海外での生産(生地、資材、縫製、洗い加工など)やこれから
本格化する「ジャパン・ジーンズ」の海外展開(輸出、海外店
舗展開など)にあたっての知識や素養を身に着けることが必要
である。
3)計数の重要性
ジーンズファッションの根幹は高度に洗練された「感性」であ
ることは間違いないが、それを企業として維持、発展するため
には、コスト構成、収益性、経営センスなどの「計数感覚」も
重要である。これらの基礎的な情報も内容に盛り込んでいる。
3
4
目
次
「 デ ニ ム ・ ジ ー ン ズ の マ ー ケ テ ィ ン グ と マ ネ ジ メ ン ト の 実 践 」 ........ 3
マ ー ケ テ ィ ン グ と マ ネ ジ メ ン ト ....................................................... 7
マ ネ ジ メ ン ト 編 ................................................................. 9
マ ネ ジ メ ン ト 編 ............................................................................ 11
マ ネ ジ メ ン ト は 個 人 と 社 会 を ハ ッ ピ ー に す る .............................. 11
第 6 章 : ジ ー ン ズ の 業 務 管 理 概 要 と 計 数 、 品 質 管 理 ....................... 14
6- 1) 単 品 コ ス ト と 粗 利 益 の 関 係 .............................................. 14
6- 2) 見 切 り ロ ス と 最 終 利 益 、 販 売 管 理 費 と 営 業 利 益 ................ 15
6- 3) 企 業 会 計 か ら 見 た 損 益 管 理 .............................................. 17
6- 4) 販 売 管 理 資 料 の 概 要 と 分 析 .............................................. 21
6- 5) Q C ( 品 質 管 理 ) ツ ー ル と そ の 発 想 ................................. 22
6- 7)
販 路 構 成 と の 取 引 マ ネ ジ メ ン ト の 戦 略 ............................ 27
6- 8) 与 信 管 理 と 回 収 ............................................................... 38
6- 9) 小 売 店 出 店 と 運 営 の 基 礎 .................................................. 41
用 語 集 ............................................................................ 53
5
6
マーケティングとマネジメント
マ ー ケ テ ィ ン グ ( Marketing) と は 、 企 業 の 活 動 の う ち 、「 消 費 者 が
真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、消費者がその商
品を効率的に買えるようにする活動」の全てのことである。一般的に
は、広告・宣伝、集客や販売促進販促活動のみをマーケティングと表
現する傾向が強いが、これは本来のマーケティングの意味からすれば
誤解である。
一般的な企業活動のうち、商品・サービスの企画・開発・設計やブ
ランド設定、市場調査、価格設定、広告・宣伝・広報、販売促進、流
通、店舗・施設の設計・設置、販売営業、集客、接客、顧客の情報管
理等に至るまでの広い範囲が「マーケティング」の意味に含まれる。
こ れ ら の 多 く の 要 素 を 組 み 合 わ せ る こ と を「 マ ー ケ テ ィ ン グ ミ ッ ク ス 」
という。この書ではデニム・ジーンズ製品が企画、生産されて小売流
通段階にわたるまでの、おもな活動について網羅的に解説している。
マ ネ ジ メ ン ト ( Management) と は 、 狭 い 意 味 で は 「 管 理 す る こ と 」
で あ る 。「 管 理 」 と い う 言 葉 に は 、「 範 囲 を 限 定 し 維 持 ・ 統 制 す る 」 と
い う 意 味 し か な い の だ が 、ビ ジ ネ ス 用 語 と し て は さ ら に「 発 展 さ せ る 」
と い う 意 味 が 込 め ら れ る 。マ ネ ジ メ ン ト の 真 の 目 的 は 、
「高い目標を目
指し組織を発展させること」である。
この書ではデニム・ジーンズ製品の企画、生産、小売の各段階で企
業組織が行っている管理や発展についての活動の基礎知識について解
説している。
な お 、 マ ー チ ャ ン ダ イ ジ ン グ ( Merchandising) と い う 用 語 も あ る 。
これは、商品を、適切な数量、適切な価格、適切なタイミング等で提
供 す る た め の 企 業 活 動 の こ と「 商 品 政 策 」
「 商 品 化 計 画 」の こ と で あ る 。
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「 MD」と 略 さ れ る こ と も あ る 。メ ー カ ー で 製 造 さ れ た「 製 品( Product)」
が小売業で仕入れ、販売、されると、同一物でありながら「商品
( Merchandise)」 へ と 呼 び 名 が 変 わ る 。 そ こ か ら も Merchandising と
いう概念は、基本的には小売業と関連のある概念から来ている。
定義
ここで「デニム」と「ジーンズ」という言葉の意味を明確にしてお
く。
「 デ ニ ム 」の 用 語 は 一 般 的 に は ジ ー ン ズ に 使 用 さ れ る 厚 手 の 綾 組 織
の「生地素材」を意味し、インディゴ染めで紺色に糸染め(先染め)
さ れ た も の を「 ブ ル ー デ ニ ム 」、赤 や 黄 色 な ど 他 の 色 に 染 め ら れ た 生 地
素材を「カラーデニム」と呼ぶ。また「ホワイトデニム」という白い
生地素材の品種名もある。
一方「ジーンズ」という言葉はそれらの織物を使って、直線的な型
紙裁断方法や、巻き縫いなどの特殊ミシン設備で縫製されるという特
長 を 持 っ た「 衣 服 」そ の も の を 意 味 す る 。
「 デ ニ ム 」と「 ジ ー ン ズ 」の
言葉が混同して使用される場合が多いので注意したい。小売店などで
「 最 近 は デ ニ ム が 良 く 売 れ て い ま す 。」な ど と 言 う の は 、正 確 に は 「 デ
ニ ム 生 地 製 の 製 品 (パ ン ツ や ト ッ プ ス 、ス カ ー ト )が 売 れ て い ま す 。」と
い う 意 味 で あ っ て 、 決 し て デ ニ ム の 生 地 素 材 が (店 で )売 れ て い る と い
う意味ではない。
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マネジメント編
ジーンズの「実務活動」に対する管理手法の素養と基
礎知識
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マネジメント編
ジーンズの「実務活動」に対する管理手法の素養と基礎知識
マネジメントは個人と社会をハッピーにする
ここで改めて「マネジメント」の意味を考えてみる。
定 義 と し て は 、マ ネ ジ メ ン ト の 役 割 と は 、「 組 織( 会 社 な ど )
の目的を能率的に達成するために、組織の維持・発展を図るこ
と」となる。
会社などの組織は大勢の人が集まって、営業活動などを行っ
て い る 。営 業 活 動 が う ま く 行 く に は そ の 活 動 の 道 具 で あ る「 人 」、
「モノ」、「金」そして「情報」が適切に組み合わせられなけ
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ればならない。
たとえば独裁者の統治する国とかワンマンな
経営者がその組み合わせを誤ってしまうと、国民や従業員 は不
幸になってしまう。
マネジメントとは組織に働きかけて、その組み合わせや使い
かたを効率的に行うことと考えてよい。それがうまくゆけば、
従業員や取引先の「個人」も幸せになる。企業体も社会的な尊
敬を集めることが出来る。
このように「マネジメント」の意味を個人の幸福と企業の幸
福をめざすものとしてとらえる考え方が支持されている。
マ ネ ジ メ ン ト さ れ る べ き 対 象 は「 ヒ ト 」「 モ ノ 」「 カ ネ 」「 情
報 」の 4 つ で あ る 。経 営 管 理 論 で は 、企 業 は こ れ ら 4 つ の リ ソ
ース(資源)を有効に活用し経営効率を最大化させる。
・ヒトのマネジメント
企業活動にとってヒト(人)は最も重要な経営資源である
と共に、最も複雑な要素ともいえる。しかし、昔は主に生産
面を重視した理論であったため人的資源への配慮が見られな
かった。いまではたとえばジーンズの販売スタッフがどうし
たら適切な判断や行動を実現できるかといった課題に対応す
る マ ネ ジ メ ン ト の 手 段 と し て と ら え ら れ て い る 。い わ ゆ る「 管
理されている」という受け身の姿勢から抜け出て自分も提案
などする積極性が望まれる。
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・「モノ」のマネジメント
やはりジーンズ商品のあり方が課題となる。適切な売れ筋
商品を生み出せるか、また無駄な生産や在庫ロスがないかな
どを見極める手法が有効となる。
・「カネ」のマネジメント
資金は企業集団のかなめである。利益を増加させる方法、
販売先からの支払いが滞って企業が資金に困ってはならない。
また企業で使う経費に無駄はないか、その無駄を排除して利
益を増やし、従業員や社会の還元することが望ましい。
・ 「情報」のマネジメント
現代の経営現場でその重要性が急速に増してきているのが情
報 で あ る 。経 営 に お け る 情 報 と は 、企 業 の ノ ウ ハ ウ や 特 許・株 価
や 経 済 ニ ュ ー ス か ら 顧 客 情 報 ま で 多 種 多 様 に 渡 る 。こ れ ら 多 く の
情 報 を 効 率 的 に 管 理・分 析 し 経 営 に 生 か す こ と が 昨 今 の ビ ジ ネ ス
で は 重 要 視 さ れ て い る 。ま た 、通 信 技 術・イ ン フ ラ の 普 及 に と も
な い 情 報 の 漏 洩 と い う リ ス ク も 現 れ 、昨 今 の 情 報 マ ネ ジ メ ン ト に
とってはセキュリティという要素が重要課題として浮上してい
る
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第6章:ジーンズの業務管理概要と計数、品質管理
6- 1) 単 品 コ ス ト と 粗 利 益 の 関 係
ジ ー ン ズ 一 つ の 品 番 毎 の コ ス ト( 原 価 )に つ い て は す で に 学 ん だ 。
次 に そ の 品 番 を メ ー カ ー が 小 売 店 の 販 売( 卸 、お ろ し )し た り 、
小売店が顧客(消費者)に直接販売した場合の利益のあり方につ
いて学ぶ。
図 の 例 で は ジ ー ン ズ メ ー カ ー が 製 造 原 価 ( コ ス ト ) の 4,200 円
の あ る 商 品 を 小 売 店 に 6,000 円 で 販 売( 卸 売 り )し た と 仮 定 す る 。
小 売 店 は そ の 商 品 を 10,000 円 で 顧 客( 消 費 者 )に 販 売 し た と す る 。
その時のメーカーの「もうけ」の効率である「粗利益率」は図の
計 算 式 の 通 り 30% と な る 。 一 方 そ れ を 仕 入 れ た 小 売 の 「 も う け 」
の 効 率 で あ る 「 粗 利 益 率 」 は 図 の 計 算 式 の 通 り 40 % と な る 。
このようなひとつひとつの取引や販売が数多く集まったものが、
各々の企業の売上高と粗利益の数値として計算される。
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6- 2) 見 切 り ロ ス と 最 終 利 益 、 販 売 管 理 費 と 営 業 利 益
上記は一つの例であるが、数多くのジーンズを販売する場合はこ
のように順調に利益を生み出すものばかりではない。特にシーズン
末に小売店はバーゲンで売値を下げたり、メーカーでは売れ残りを
大量に見切って在庫を減らそうとすることもある。
そのような事例を図式で見よう。
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こ れ は 小 売 店 の 例 で あ る 。 正 規 の 売 値 ( 上 代 ) 10,000 円 、 原 価
( 仕 入 値 )6,000 円 の も の を 、100 着 す べ て を 正 規 の 値 段 で は 売 れ
ず 、 そ の 内 10 着 を 値 下 げ 価 格 5,000 円 で 売 り 切 っ た と 仮 定 す る 。
そ の バ ー ゲ ン 価 格 を 5,000 円 と す る と 原 価 か ら は 1,000 円 の 損 巾
と な っ て そ の 部 分 が 10,000 円 の ロ ス ト な る 。正 規 で 売 っ た 利 益 を
食 い つ ぶ し て 、総 合 計 の「 粗 利 益 」は 35,000 円 と な り 、粗 利 益 率
も ダ ウ ン し て 40% で は な く 36.8% と な る 。
以上のような例は比較的おだやかな例といえる。売れ残りの量
が多く、バーゲンに回す比率が高い場合、あるいはバーゲンの単
価が大きく仕入れコストを下回る場合は粗利益率が悲惨な状態に
なることもあり、経営上も好ましくない結果になることもある。
その意味でもしっかりした商品企画や堅実な販売活動が望まれる。
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6- 3) 企 業 会 計 か ら 見 た 損 益 管 理
売り上げと利益に関する企業の会計構造
ジーンズの製造原価の構成については別の項目で学んだ。それら多
数 の ア イ テ ム ( 品 番 ) が あ る 一 定 の 期 間 (月 次 や 年 間 )の 間 に 顧 客 ( メ
ーカーの場合は小売店、小売業の場合は消費者など)に売られた結果
を企業全体で表す数字が必要となる。
それらを会計上で企業の「損益計算」といい、その数値表が「損益
計算書」である。
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図 表 で は 企 業 の 売 上 金 額 (売 上 高 と い う )全 体 か ら ジ ー ン ズ の 製 造
原 価 (コ ス ト )全 体 の 金 額 を 差 し 引 く こ と か ら 損 益 計 算 が 始 ま る 。 順
を追ってその計算方法を説明する。
売 上 総 利 益・・・売 上 か ら 売 り 上 げ 原 価 (コ ス ト )を 差 し 引 い た も の 、
小売の場合は通常仕入れたジーンズ商品の代金であ
る 。こ の 利 益 は「 粗 利 益 」、
「 荒 (荒 )利 益 」と も 呼 ぶ 。
企業の活動の源となる重要な利益である。
その売上高の対する比率(%)の大きさが重要であ
る。
販売管理費・・・工場や仕入れ先から持ちこまれた商品の販売活動
すべてにかける「費用」のかたまりである。大きな
内容としては、社員の人件費、福利厚生費、店舗や
事務所の賃料、宣伝広告費、運賃など企業本体から
外部に支払う物が含まれる。この販売管理費は別項
でも学ぶ。
営業利益・・・販売管理費を差し引いた金額である。ここまでが企
業 の 営 業 (商 売 )の 結 果 で あ る が 、 最 近 の 不 況 時 代 で
はこの金額が非常に少なかったり、場合によっては
「 マ イ ナ ス 」、つ ま り「 赤 字 」に な っ た り す る と こ ろ
も 多 い 。 そ こ で 人 員 削 減 (リ ス ト ラ )や 事 務 所 経 費 の
節約などが行われることになる。
営業外利益、損失・・・本業以外で得た利益や損失、主な物では銀
行からの借り入れに対する「金利」や逆にもらった
「配当」などである。またたとえば土地や手元の株
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券などを売って利益が出た場合の利益、また逆にそ
れらの損失が出た場合のプラス、マイナスもある。
営業利益の不足を補うためにこの項目で意図的にプ
ラスを出すこともある。また株投資の失敗などが表
面に出た場合はこの項目で計上する「特益(とくえ
き )」、「 特 損 ( と く そ ん )」 な ど と も い う 。
経常利益・・・以上の結果の金額。企業の経営活動の結果とみるこ
とが出来る。
特別損益、損失・・・通常は発生しないような特別の損益項目であ
る。天災による破壊、事故、長期に保有していた株
式の売却損などが計算される。
税引き前当期利益・・・ここまでの利益に対して税金がかかる。こ
れが赤字なら企業の利益に対する税金はかからない。
当 期 利 益・・・こ こ で そ の 期 間 に 残 っ た 利 益 で あ る 。株 主 へ の 配 当 、
将来に備えた準備金(法律による)や積立金(企業
の自由)として残る。
ジーンズメーカーとジーンズ小売の利益構造の違い
メーカーと小売では利益を生み出す構造に違いがある。メーカーが
小売部門を持ったり、逆に小売りがメーカーのように直接生産したり
と、その両者の構造は似てきているが、図版で典型的な事例としてこ
の両者の特長を比べる。
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一般に小売業は店舗経費や人件費の売り上げに対する比率が高い。
仕入値(売上原価)を下げて売り上げ総利益(粗利益)を高めようと
する。この事例では、経費(販売管理費)を引いた営業利益は メーカ
ーと同じ結果だが、そこへ至る構造が違う。
小売業がメーカー-を兼ね、直接生産(工場との直接取引)をする
と利益は一気に増すが、種々の課題も生じる。生産数量を大きくする
必要などである。
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6- 4) 販 売 管 理 資 料 の 概 要 と 分 析
以下はあるジーンズメーカーのある月次の品番別利益管理表である。
どのように判断するのか事例を見る。
分類
○○
品番
A1 1 1
A1 1 2
分類計
上代
9,800
8,800
着数
金額
単価
粗利益
同%
異常
*
当月
401
2,325,800
5,800
721,800
31.0
累計
804
4,824,804
6,001
1,833,100
38.0
当月
100
490,000
4,900
201,880
41.2
累計
205
1,004,705
4,901
421,976
42.0
当月
601
2,815,8 00
4,685
923,680
32,8
累計
1,009
5,829,509
5,776
2,255,076
38.7
*
例えばこの企業の方針が設定した上代(小売価格)に対する卸売り
単価の比率を35%としていたとする。当月のA111という品番は
31%であり、コンピュータの設定により異常を知らせる「*」がつ
く。この品番で何らかの売値異常があったことがわかる。シーズン末
見切りとか、相手先に対する値引きかもしれない。
実際の企業では、
「 正 規 販 売 」と「 見 切 り 販 売 」を 契 約 や 出 荷 の 時 点
で 社 内 申 告 し て 管 理 表 で は 別 の 区 分 (欄 や 行 )に す る こ と が 多 い 。
またこの他にも売り先別の売り上げ、利益管理表などの管理表もあ
る。
21
6- 5) Q C ( 品 質 管 理 ) ツ ー ル と そ の 発 想
Q C ( Quality Control) と は 「 品 質 管 理 」 の 略 語 で あ る 。
本来は工場で作られる製品の品質を高め、製品ごとにムラの無い
均一な結果を得るための行為全体をさす。
具体的には
(1) 要 求 さ れ る 品 質 標 準 を 決 め る 。
・・・目 標 と な る「 ジ ー ン ズ 品 質 基 準 書 」を 策 定 す る 。
(2) そ の 品 質 標 準 を 達 成 す る た め の 方 法 を 決 め る 。
・・・・製造の「ジーンズ工程基準書」を策定する。
(3) 製 品 の 検 査 結 果 を 品 質 標 準 と 比 較 し て 、 評 価 す る 。
・ ・ ・「 ジ ー ン ズ 検 査 基 準 」 を 策 定 す る 。
(4) 製 品 に 相 違 が あ れ ば 、 品 質 標 準 に あ う よ う な 対 策 を 施 す 。
といった行動を行う。
特にジーンズメーカーや大手ジーンズ系小売店は自社独自の「品
質基準」
( た と え ば 色 落 ち の 等 級 限 度 、破 れ 強 度 な ど )を 持 つ べ き で
ある。
また検査の方法も定めておいて、取引先と論争にならないように
すべきである。
手 順 (3)で は 、製 造 さ れ た 品 質 の 平 均 値 や 標 準 偏 差 な ど を 定 期 的 に
測定して、生産工程の状態が正常であるかどうかを調べる統計的手
法として、各種の管理手法が広く用いられる。
22
T Q C ( Total Quality Control )
最近ではQC(品質管理)の考え方は製造現場だけではなく、サ
ービス業、事務所などでも応用されて入る
経営トップから製造や
販売の第一線にいたるまでの全員が各々のポジションの中で品質管
理 を 行 な う よ う に な っ た 。TQC は 、日 本 の 品 質 管 理 活 動 の 特 徴 で あ り 、
職 場 単 位 で の QC サ ー ク ル と と も に 欧 米 か ら 注 目 さ れ て い る 。こ こ で
いう品質管理とは、製品・商品などのみを対象としているのではな
く 、事 務 や 販 売 な ど の サ ー ビ ス を も 対 象 と し て い る 。販 売 で い え ば 、
接客技術の向上、効果的なセールス活動のあり方などといったテー
マが考えられる。
品 質 管 理 の た め の 各 種 の「 分 析 」や「 原 因 究 明 」の た め の 数 学 的 、
統計的な手法(QCツールという)にはさまざまあるが、ここでは
2つ紹介する。
① 「 A B C 分 析 」・ ・ ・ ・ 何 が 重 要 で 、 な に が そ れ ほ ど 重 要 で な い
かの重点を意識する手法である。
この例では全部で8品番あるジーンズ商品の「粗利益」の金額
について分析している。
23
24
AからHまでのジーンズ品番を粗利益金額の多い順に並べて、そ
の累計額を合計して行く。Cまでの上位3品番だけで全体の粗利益
の 79.4% と い う 分 析 の 結 果 が 出 る 。 少 な く と も 当 面 「 重 点 的 」 に 管
理し、何かのブレーキが掛かることを防ぐことが企業利益の観点か
らも意識される。
重要なものから並べるので「ABC分析」と呼ばれる。またその
累計値をグラフ化するとなお一層重要性が目に見える。このグラフ
を「パレート図」という。パレートとはイタリアの経済学者の名前
で、ものごとの現象を起こしている原因を分析すると、ある特定の
ものが重要だということが分かるという理論から来ている。
②要因分析
同じくある事柄を起こしている要因は一体なんだろうかという疑
問を整理する手法である。
25
この図は「要因分析表」とか「特性分析」などと呼ばれる。
期待のジーンズが思うほど売れない時に、
「 そ の 原 因 は 何 か ? 」と
いう問題意識で、多数の意見を集めてみる。例えば素材が適切でな
いのか、あるいはパターンが良くないのかなどを考えて分析する。
小 さ な 要 因 ( 原 因 ) が 何 か の 要 因 (原 因 )を 生 む 。 そ れ が 連 鎖 す る の
で 、 逆 に そ の 源 を た ど っ て 行 っ て 、 修 正 す べ き 要 因 (原 因 )探 し 出 し
たり、その各々の要因の割合やウエイト付けを行ったりする。
通常は集団の討論によるが、観念的にならず、数値の根拠を持ち
寄 っ て 要 因 (原 因 )を 探 し だ す 。
たとえばこのジーンズの「パターン」がライバルの類似品に劣っ
て い る こ と だ と す る と 、そ の 原 因 を き わ め て 、
「 設 定 寸 法 」、
「試着評
価」などの初期ミスが発見されたりする。といったやり方の分析ル
ールである。
26
6- 7)
販路構成との取引マネジメントの戦略
一 般 的 な ジ ー ン ズ メ ー カ ー (ジ ー ン ズ ア ア パ レ ル )の 販 売 先 に は 次
のようなものがある。各々の特長をつかんで、取引上のメリットや
デメリットをあらかじめ理解しておく必要がある。
ジーンズを取り扱う小売店の巾は広がり、店が対象とする消費者
の階層、価格帯、さらに商品の狙うコンセプトを含め、その種類は
千差万別であり、時代とともに急速に変化している。
また時代の厳しさを反映してか、持つべき機能を他社に依存する
傾 向 が 見 ら れ る 。こ れ を「 ア ウ ト ソ -シ ン グ 」(外 部 か ら の 調 達 )な ど
と表現する。またやや粗野な表現ながら「丸投げ」などとも言う。
また逆に著名な「ユニクロ」のように規模のメリットを生かしな
が ら 、 企 画 コ ン セ プ ト や 自 社 (ま た は 契 約 し た 企 画 企 業 )に 取 り 込 む
姿勢のところも見られる。
①ジーンズ専門ショップ
ジーンズのン勃興期から続いてきた業態である。デニム・ジーン
ズ商品独特の取り扱いの難しさを接客会話で説明する親密さ、店頭
のミシンで即座に「裾(すそ)上げ」サービスを行う点などがジー
ンズショップの存在理由とされた。
70 年 代 後 半 の ピ ー ク 時 に は 全 国 に 5,000 軒 も の ジ ー ン ズ シ ョ ッ プ
が存在した。しかしその後競争によって衰退減少し、現在では生存
競 争 を 勝 ち 抜 い た 有 力 シ ョ ッ プ が 各 地 方 に 「ロ ー カ ル ジ ー ン ズ チ ェ
ー ン 店 」が 中 心 と な っ て 活 躍 し て い る 。仙 台 ア メ リ カ ヤ 、北 陸 ジ ャ ッ
ク、マツヤ、静岡オサダ、中国ビッグアメリカショップ、高知ジー
27
ンズファクトリーなどである。ジーンズ関連だけの品揃えに飽き足
らず、雑貨や他の服種分野に進出するなどの多角化も目立つ。
28
②大手「ジーンズカジュアル」ショップチェーン
一 方 で 首 都 圏 に 本 社 機 能 を 持 つ 大 手 (ラ イ ト オ ン 、マ ッ ク ハ ウ ス 、
ジ ー ン ズ メ イ ト な ど )は 90 年 代 の 終 わ り こ ろ 、 株 式 上 場 を 果 た し
て資金力をつけ全国チェーン展開を継続している。そのジーンズ
(ボ ト ム ス )の 扱 い 比 率 は 売 上 比 平 均 約 20~ 40% で あ る 。資 本 力 で
ショッピングセンター(SC)などへ活発な出店を行い、またテ
レビやチラシ宣伝などでの集客力を高めている。最近は後述のS
P A ( 自 己 企 画 生 産 小 売 業 ) を 意 識 し て 、 P B (自 己 ブ ラ ン ド )を
保有し、デザインや生産などの業務に参入する動きもある。
しかしその後のジーンズ需要の伸び悩みや、過当競争で売り上
げ は 伸 び 悩 み 、経 費 合 理 化 な ど の 処 置 を 行 っ て い る と こ ろ も あ る 。
これら上場系大手は、その店舗数が多いことから、ある商品を
全店の出荷納品してしまうと、売れ残りなどのロスが発生しやす
い。シーズン中でのめ細かい売れ行きのチェックが小売側にも納
入メーカー側にも必要となる。
ライトオン店舗
29
マックハウス店舗
ジーンズメイト店舗
③ 百 貨 店 (デ パ ー ト )
百貨店でのジーンズの取り扱いの中心商品は、レディスものの
「プレミアムジーンズ」
(たとえばAGゴールドシュミードなどノ
高 級 ジ ー ン ズ で あ る 。)、と り わ け「 イ ン ポ ー ト ジ ー ン ズ 」
(輸入ジ
30
ーンズ)と呼ばれる商品群である。2 万円前後以上という高い小
売価格帯で売れるということに特長がある。女性客の容姿への願
望、特に脚をスマートに見せたいという美容的欲求に「ブランド
信仰」の気持ちが結びついた結果である。当初は美脚シルエット
を 中 心 に し た「 フ ィ ッ ト 性 」の 競 争 か ら 始 ま り 、
「 ユ ー ズ ド 感 、後
加工外観」の優劣競争、さらには刺繍やパイピングなど「デザイ
ン仕様」へとその競争ポイントは流動的に変化している。最近で
は売り場でのブランド数はかなり増えて、相互の競合も激しくな
り個々の売上は低迷している。日本の場合「ルイビトン」ブラン
ド バ ッ グ な ど の「 ラ グ ジ ュ ア リ ー( ぜ い た く )」信 仰 と し て 、中 流
庶民までをも巻き込んで大きな市場を形成していることが特長で
ある。
しかし最近では「プレミアムジーンズ」のライフサイクルにも
陰りがみられ、東京や大阪の一部の有力デパートが有力といえる
状況である。
富裕層顧客の「舶来指向」により海外ブランドがリード役的主
流となってしまったような百貨店でのジーンズ展開だが、わが国
のNBブランドの活性化や新進気鋭デザイナーなどの登竜門の場
としての機能は期待できる。独自の新時代のジーンズ製品の開発
展開をメンズ、レディスともに期待したい。
日本の百貨店との取引でのポイントは「委託販売」の多いこと
である。納入して後に顧客(消費者)への売り上げが達成された
時点でその商品の仕入れが成立する。シーズン末などでの返品も
ある。狭い売り場の効率を上げる目的ではあるが、その取引リス
クには注意する必要もある。しかし集客力の多い都心店などで消
31
費者にアピールできるメリットは大きい。
④ 「 個 性 派 型 ジ ー ン ズ シ ョ ッ プ 」 (セ レ ク ト シ ョ ッ プ )
カジュアル系ショップの中には、ファッション感覚が人並み以
上に優れ、トレンドの商品を先行して「品揃え」する一連の企業
がある。消費の動きを感じ取り、仕入先のメーカーや納入業者を
通じてその情報を発信する能力の人材は、業界にとっても大いに
価 値 が あ る 。大 手 で は 俗 に 御 3 家 と 呼 ば れ る 、「 ビ ー ム ス 」、「 シ ッ
プ ス 」、「 ユ ナ イ テ ッ ド ・ ア ロ ー ズ 」が 有 名 で あ り 、「 ベ イ ク ル ー ズ
( ジ ャ ヤ ー ナ ル ・ ス タ ン ダ ー ド )」「 ア ー バ ン リ サ ー チ 」 な ど が こ
れに続く。
ジーンズ業界をさらに活性化させる意味でこれらセレクト系シ
ョップとジーンズメーカーの連係に北も寄せられている。
⑤量販店(GMS,ジェネラルマーチャンダイジングストア)
以前は「スーパー」などと略称され群雄割拠していた量販店も
激 し い 競 争 の 結 果 勢 力 地 図 に 大 き な 変 化 が 生 じ た 。2 強 と 言 わ れ る
「 イ オ ン( ジ ャ ス コ )」グ ル ー プ と「 I Y ホ ー ル デ イ ン グ ス( イ ト
ー ヨ ー カ 堂 )」グ ル ー プ の 活 躍 の み が 目 立 つ 。全 体 的 に も 衣 料 品 の
展開は「ユニクロ」や「しまむら」などの低廉型チェーンに押さ
れ 、食 料 品 な ど に 特 化 す る 傾 向 の 中 で 、 俗 に 「 平 場 ( ひ ら ば )」と
言われる一般の売り場には昔日の勢いはない。
⑥ 通 信 販 売 (カ タ ロ グ 及 び T V , W E B シ ョ ッ ピ ン グ )な ど
現在カタログ販売分野でのジーンズ展開は転機を迎えている。
32
紙 面 で の 説 得 力 の 限 界 意 識 や 、無 駄 に な り が ち な 部 数 の 増 加 戦 術 、
返品交換に伴う物流費の増大などの悩みがこの通販業界につきま
とっている。
一 方 デ ジ タ ル 化 や ケ ー ブ ル 放 送 な ど の 拡 大 に 伴 う 「テ レ ビ シ ョ
ッ ピ ン グ 」媒 体 な ど の 成 長 は 見 逃 せ な い 。 紙 の カ タ ロ グ と 違 っ て 、
話術による説得力などジーンズの機能やお洒落性を訴求しやすい
メリットがあるようだ。ハイビジョンテレビの普及など高度化す
る情報メディアを使ったジーンズの販売展開は無視できない構成
比になりつつある。
しかしこれらマスメディアによるジーンズの販売は、今のとこ
ろ価格の安さを特長にしているところが多い。
一方、パソコン普及による通信販売ホームページの勢力増大も
著 し い 。「 楽 天 」 や 「 ア マ ゾ ン ・ ド ッ ト コ ム 」 な ど も ア パ レ 商 品 を
強化している。
またパさらに、ソコンWEBの手段を使って、いわゆるCto
C、消費者同士が中古やリメークジーンズなどを個別に売買する
など、産業形態に入らないジーンズ製品の流通が台頭してきてい
る。アイパッドなどの通信機器の発展で、若者中心のジーンズの
情報交換も盛んになってきている。
こだわりのジーンズを製作しWEBに乗せて個人的に販売する
ことなども行われる時代となった。
最近生産地のジーンズ製造業などで、消費者からオーダーメイ
ドの受注を受けて一本一本のジーンズを製造販売するビジネスが
出 現 し て い る 。お 客 は 一 定 種 類 の 型 紙 パ タ ー ン を 選 択 し 、素 材 や 、
付属、ポケットの飾りステッチ、仕上がりの色目や中古感覚など
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「 自 分 好 み 」の 特 注 品 を 作 る こ と が 出 来 る 。も ち ろ ん 価 格 は 高 い 。
大量生産が前提のジーンズから見ると、まるで逆行するようなや
り 方 で は あ る が 、 ご く 少 な い 人 数 (ほ と ん ど 一 人 で )で こ な す 収 益
の細かい積み重ねの確実さとか、消費の傾向をじかにキャッチで
きるなどのメリットもある。製造の入門者が企業の先輩の技量
(「 匠 」の 技 )を 受 け 継 ぎ や す い や り 方 と も い え る 。こ れ ら 個 別 オ
ーダージーンズの業務はまだまだ「ベンチャー」的性格のものだ
が、やり方によっては飛躍する可能性を秘めている。
⑦SPAの出現
アメリカのSPA業態「GAP、ギャップ」社がそのはじまり
である。巨大化した専門店が、デザイン、パターン等の企画はも
ちろん、製造や品質管理に渡ってすべて自前で行うという構造で
あり、小売店の究極的な発展形態と言われる。世界的にはスエー
デ ン か ら 発 展 し た 「 H & M ( ヘ ネ ス & モ ー リ ッ ツ )」、 ス ペ イ ン の
「 Z A R A( ザ ラ )」な ど が 有 名 で あ る 。ま た ジ ー ン ズ カ ジ ュ ア ル
分野ではアメリカの「アバクロンビー&フィッチ」が有力で日本
進出を始めている。日本では「ユニクロ」社(当時の社名ファー
ストリテイリング)がこの業態に挑戦し、従来の概念では考えら
れなかったほどの価格や
品質のレベルで国民的な人気を得てい
る。
「直販」により、メーカーが得ていた利潤を取り込んでしまう
ことで利益率の高さが得られる。しかし反面企画、生産、物流、
検査などに従事する多数の人材を抱えなければならないし、企画
の「あたり外れ」という在庫リスクも自己負担しなければならな
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い。また得られた利潤を次の出店投資の資金に当てるという循環
をうまく回さなければならない。ライバルであるブランドメーカ
ー ( NB) の 全 得 意 先 店 舗 数 を し の ぐ ほ ど の 規 模 に す る こ と が 大 量
生産につながる基礎である。
H&M店舗
他の日本の専門小売店もこの方式を見習おうと努力を行ってい
る が 、現 状 必 ず し も う ま く 進 行 し て い る わ け で は な い 。
「ポイント」
社( 感 度 の 良 さ が 定 評 の カ ジ ュ ア ル 小 売 )、同 じ く「 し ま む ら 」
(低
廉価格、ジーンズ扱いの比率はまだ小さい)がかろうじてこのS
PA業態の範囲に入るという手厳しい意見も多い。他は自己のブ
ランドラベルをつけることに限定した発注を行っているに過ぎな
いともいう。日本の場合大手の小売店は在庫リスクや支払い面な
ど、強い立場を利用してメーカーにリスクを負担させる伝統的慣
習があり、そこから得られる利益の確保にのみ力を注ぐ行動で満
足してしまう傾向もある。またユニクロのように国際的な広域展
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開へと向かわなければならない宿命もあり、日本におけるSPA
業態の真の発展はこれからだという見方が多い。
統一されたコンセプトでの自己企画は命中すれば成功の果実は
大きいが、一旦外れると惨めな結果に陥りやすい。同社の建て直
しの実践行動に注目が集まる。
⑧重衣料、婦人服系専門店でのジーンズ展開
最後に重衣料系の専門店でのジーンズの取り扱いについて考え
たい。
紳士スーツの専門店チェーン、婦人服系の有名チェーンなどの
こ と で あ る 。 紳 士 服 で は 「 洋 服 の 青 山 」、「 ア オ キ 」 な ど が 有 力 で
あり郊外型店舗を中心の展開で全国のサラリーマンなどに定着し
ている。婦人服では都心のショッピングセンターなどで婦人客を
集 め て い る 業 態 で「 レ リ ア ン 」「 三 愛 グ ル ー プ 」な ど が 思 い 起 こ さ
れる。かつては紳士服チェーンなどが試験的にジーンズ扱いに挑
戦したこともあったが、結果は決して思わしくなかった。今では
紳士服チェーン企業はカジュアル衣料をまったく別系列の新規店
舗で扱おうと努力している。アメリカでは有名な「ブルックス・
ブラザース」などが高級スーツやネクタイと同列の売場で、また
婦人服の「タルボット」なども同様にコーディネートとしてのジ
ーンズの陳列と販売を行っている。
●「ジーンズショップ」という呼び方。
さてこの「ジーンズショップ」という言い方は、かつてジーン
ズ の 扱 い が そ の 店 の 大 半 、 例 え ば 50~ 60% 以 上 の 時 の 表 現 と し て
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適切であったが、いまやトップスや雑貨の比率も増えたのでもは
や死語に近いという意見もある。ただコンセプトやコーディネー
トでジーンズを中心としているという精神性のようなものを感じ
るショップを「ジーンズショップ」と呼ぶ習慣は残すべきであろ
う。
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6- 8) 与 信 管 理 と 回 収
「与信」とは「信用」を「与える」こと、すなわち取引先、特に
売り先を信用して販売代金の先方からの支払いをある一定の月数を
待ったり、先方の振り出した手形(約束手形)を信用して受け取る
ことである。小売の場合は相手(消費者)が小口であることが多い
が、メーカーから小売店に対する販売額は大きく、しっかりした管
理が必要となる。
小 売 店 か ら ジ ー ン ズ メ ー カ ー へ の 支 払 い は 月 に 1~ 2 回 現 金( 振 込 )
が理想だが、納入金額の一部しか払わないで、残りを待たされるこ
と も 多 い 。ま た「 約 束 手 形 」と は 一 定 の 期 日 。例 え ば 60 日 後 に 買 い
先の銀行口座から引きおとされることを約束した一種の証券である。
その期日に先方の預金残高が不足していたり、会社倒産でいわゆる
「不渡り」になることもある。
いくら販売行為に成功しても、代金回収が遅れたり、滞留したの
で は 、会 社 は「 勘 定 合 っ て 銭 足 ら ず ~ の 金 欠 病 に 陥 入 る 売 上 債 権( 売
掛金、受取手形)は金食い虫なので、不良資産となる前に早く退治
することが肝心である。
売 上 債 権 は 、顧 客 別 に 帳 票 を 整 備 し 与 信 管 理 を 強 化 す る と と も に 、
営業と経理担当者が協力して早期回収に努める必要がある。なかで
も滞留債権は別途管理に回し、コゲ付きや貸倒損失を防ぐ手段を工
夫しなければならない。
ジーンズ業界の小売企業には一部に零細で経営状態の良くないと
ころや、大手といえども激しい競争で「負け組」となり、先行きの
不安なところもある。その「信用状態」を見極める眼力もメーカー
の販売員には必要である。
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売り上げ債権は次のように分類される。
1)売掛金・・・ジーンズ商品などが出荷されて相手の支払い行
為が発生するまでの代金金額
2)受取手形・・手形を受け取ってもその期日までは、真の現金
の価値はない。その期日までは目を離せない債
権である。
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この表は「売掛管理」の一例である。売り先別に前々月( 7 月)
か ら の 未 入 金 額 に 前 月( 8 月 )の 新 た な 請 求 発 生 金 額 を 加 え た 合 計
金額に対しての入金率などを一覧できるようにしている。 A社、
B 社 と も に 全 額 で は な く て 、 約 60% し か 入 金 し て い な い よ う で あ
る。
右側を見ると過去の流れが記録されている。特にB社が以前は
100% 支 払 っ て い た の だ が 、最 近 に な っ て 支 払 態 度 が 悪 く な っ て い
ることが読み取れる。
何らかの対策が講じられるべきであろう。
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6- 9) 小 売 店 出 店 と 運 営 の 基 礎
ジーンズショップの開設、ジーンズコーナーの運営にあたっては
基 礎 的 素 養 が 必 要 で あ る 。 1)立 地 選 定 、2)資 金 計 画 、3)店 舗 の 内
外 装 、4)什 器 の 計 画 、5)人 材 確 保 と 教 育 、6)商 品 と ブ ラ ン ド ポ リ
シ ー 、 7) 販 売 促 進 と 宣 伝 広 告 、 そ し て 8) 中 期 計 画 な ど で あ る 。 小
売 店 の 消 費 者 に 対 す る 機 能 と 役 割 と し て は 1)品 揃 え 、2)適 正 在 庫 、
3)ジ ー ン ズ 商 品 の 情 報 の 提 供 が あ り 、購 買 の「 便 利 さ 」や「 楽 し さ 」
の演出が必要である。
またジーンズ特有の課題としてサイズフィットとそのアドバイス、
裾上げサービス、トップスとのオーディネイトがあり、それ相応の
感性が要される。
VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)は重要であり、他店
や先進的な模範を学習する必要がある。
ジーンズ店を開店するには
(1)店の調査、準備事項・・・新しく店を始めるためにはその
店をどこに作るか、そのための土地や建物の手配をどうす
るかが問題で、まず立地条件をよく調べ、その周囲の状況
により、どんな内容の店にするかがはっきりする。次に必
要な経費の手配が必要だ。この資金は自己資金に対して借
入金を多くし過ぎないようよく考えるべきである。そして
今後の中期、長期にわたる経営計画を周到に作成しておく
必要がある。
(2)店の建設と設備の整備・・・すでに店舗ができているなら
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問題はないが、多くは新しく建設したり、何らかの改築を
するのでその設計から施工の手配が必要になる。そしてそ
の中に入れる陳列棚やストッカーなどの設備、什器などの
購入について計画する必要がある。この設備などは専門店
として新鮮さをだし、ユニークで魅力あるものにするため
非常に重要なので、極力独自の方向を出すよう充分に 工夫
する。
(3)経営の具体的計画・・・最後に経営の具体的な計画の問題
がある。まず、人材の確保だが、小さい店なら家族の労力
で足りるかもしれないが、多くは雇う人が必要なので、そ
の人材の確保と教育の方法などについても考えておく必要
がある。つぎに商品の品揃えをはかるため、それぞれの商
品の仕入れ先の予定をはっきりたてておく必要 がある。さ
らに多くの人の来店を誘い、販売促進をはかるためには宣
伝 、 PR の 方 法 な ど も 充 分 に 考 え て お く べ き で あ る 。
①立地条件
②資
金
⑧
販売促進
広告宣伝
③中長期計画
小売店の
開店
⑦商品の品揃え
⑥人材の確保と教育
④店舗の設計と
ディスプレイ
⑤店舗の什器を整える
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集客の心配の無い人が集まるモールやショッピングセンターに
出店する。
それに準ずるロードサイドに出店するというパターンが主。
他社との差別化して自分のお店に来ることを目的にしてほしい
と、自分だけの隠れ家的な打ち出し方で周りにお店の無い所に出
店する。
消費者に対する小売店の機能と役割
※ ショップの基本コンセプトの例
・ ア メ リ カ ン カ ジ ュ ア ル (例 え ば 50's な ら 映 画 の American Graffiti
や Back To The Future の 世 界 イ メ ー ジ
70's な ら ヒ ッ ピ ー や サ イ ケ デ リ ッ ク な ロ ッ ク な 世 界 イ メ ー ジ と か
映 画 easy rider の ア ウ ト ロ ー な 世 界 観 ロ ン ド ン や UK な ら 、パ ン ク
と か モ ッ ズ と か …フ ァ ッ シ ョ ン だ け じ ゃ な い そ の 世 界 。
・世界に誇れる日本の職人の技術を前面にだして、生産されたこだわ
りの商品を提案するという打ち出し方
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例 え ば 、基 本 ア メ リ カ ン カ ジ ュ ア ル だ が 、1800 年 代 ~ ワ ー ク ウ ェ ア 、
1930 年 代 後 半 ~ 1970 年 代 前 半 ま で の デ ニ ム や そ の 世 界 観 を 表 現 で
きるコーディネートにあうトップス。ただし、それを現代の日本の
職人がこだわって生産している商品にこだわる。
ジーンズ小売店の接客と裾上げフィッティング待機
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VMD は 企 業 理 念 に 基 づ い て 決 定 さ れ る !
★「VMDとは、文字どおりマーチャンダイジングの視覚化で
ある。それは企業の独自性を表わし他企業との差異化をもたら
すために、流通の場で商品をはじめ、全ての視覚的要素を演出
し管理する活動である。この活動の基礎になるものがマーチャ
ンダイジングであり、それは企業理念に基づいて決定される」
(日 本 ビ ジ ュ ア ル ・ マ ー チ ャ ン ダ イ ジ ン グ 協 会 定 義 )
★「店が顧客に伝達したいメッセージを目で見てすぐに分かる
形にしていくこと」
(ビジュアル・マーチャンダイザー/早乙女喜栄子著/繊研新聞社)
★店のコンセプトに合わせた方針に基づいてセレクトされた商
品が、どの様な方法で商品レイアウトされ、どの様に商品情報
を発信していくかを総合的にとらえて、視覚訴求を中心とした
表現をしていく。
(ファッション販売員の常識と必須用語400/商業界)
★「戦略に基づいて店舗環境を整備していくそのこと自体が、
顧客にインパクトを与え購買へと結びつけていくために、 小売
店経営の総合戦略の部分的な領域である。」
(商業用語辞典/商業界)
★ マ ー チ ャ ン ダ イ ジ ン グ の 最 初 か ら 全 過 程 に 関 与( 参 加 )し て 、
MDの進行と並行してVMDを企画し、ポリシーの決定から演
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出 テ ー マ の 決 定 → 演 出 の 具 体 策 作 成 → 売 場 レ イ ア ウ ト → VP
( visual presentation )・ PP ( point of sales presentation )
IP( item presentation) な ど の 具 体 的 な 演 出 ・ 陳 列 へ と 推 進 し
ていかなければならない。最後は、演出効果の結果を分析し、
修正し、次のVMDに役立ていかねばならない。
(ファッションビジネス能力検定 1 級テキスト)
お客が集まる外観の作り方のポイントメモ
①外観の第一印象がその店に対する印象を決定してしまうどんな
お店なのかを伝えることが
大切である。
②看板・サインはお客を引きつけるツール
・徒歩で、車で、遠くから…見る位置に合わせて
・看板には、お店の業種やグレード感を伝え、集客をはかる機
能と役割がある。
③使いやすい駐車場は最良のサービスの一つ
④外の照明は店の活気つくりにつながる
⑤お客を呼ぶ店のファサードには安心感がある。
透明度」
「開放
度 」「 深 度 」 の 3 要 素
⑥「基本コンセプト」と「商品面の基本路線」を持ち、外観・内
装・商品のまとめる
⑦目立つ店舗がお客を呼ぶ売れる売り場づくりの基本
⑧フロントスペースを活用することでお客様を誘導する。
⑨お客様が入りやすい入り□をつくることが重要・・入店誘導機
能をもつため、開放度を低く、開放感は高くする。
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売り場づくりのメモ
①お客に足を運んでもらえる売り場を作る
②売り場広く使う
売上高に応じて売り場面積を配分
③お客縁の視点で商品のグルーピングを行う
・お客様の購入目的が分類の基準
購入目的や使用場面が同じ関連する商品グループを隣接させる
④商品の種類で異なるお客様の購買行動
お客様の購買行動AIDMAを学んで、買いやすい売り場をつ
くるのが基本。
(アイドマ)の法則とはアメリカ広告業協会が提唱したコミュニ
ケーション
・スペクトル(段階)説で、見込み客が商品の購買を決定するま
でにたどるであろうと思われる心理過程を示したもの。
購買において見込み客は、
1) ま ず 最 初 に 商 品 に 「 注 目 」 Attention し 、
2) そ れ を 知 り た い と の 「 関 心 」 Interest を も ち 、
3) 所 有 し た い と の 「 欲 求 」 Desire を お こ し 、
4) 商 品 の 内 容 、 特 徴 を 「 記 憶 」 Memory に と ど め 、
5) 手 に 入 れ る た め の 「 行 動 」 Action を お こ す
という順序をたどる。
「 記 憶 」の か わ り に「 確 信 」Conviction を 入 れ て ア イ ド カ( AIDCA)
の法則というのもある。
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店舗の機能メモ
①ショーウィンドで情報発信
新商品のディスプレイとコーディネートの提案で季節の旬を
演出。
②横割りの機能を生かす
主 力 商 品 の 品 揃 え 場 所 は 店 の 中 央 部 、店 の 奥 は 高 額 品 を 販 売 ゾ
ーン。
③ VMD で 商 品 の 陳 列 ・ 展 示
VMD の 手 法 を 生 か し て 、 い き い き と し た 売 り 場 を つ く る 。
④照明で店舗の雰囲気をつくる
照明効果は店舗への入りやすさやイメージアップにつながる。
⑤色彩を売り場づくりに生かす
色のもたらす特徴を利用し、売場づくりの効果を上げる。
⑥床・堅・天井の使い方しだいで店の印象は変えられる
売れる売り場のレイアウトの方法
①動線計画を立てる
客動線を長くすることが販売チャンスの拡大
②売り場づくりは品揃え計画と連動する品揃えはエンドユース
別の商品計画から行なう
③商品の配置は縦割に行い、通路から見えるようにする。
④マグネットポイントをつくる
見やすく買いやすい商品の見せ方・並べ方
①陳列で売り場を仕上げる
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陳 列 は 売 り 場 の 情 報 発 信 源 .見 せ 方 に 工 夫 を 凝 ら し て 売 り 場 の
ビジョンを伝える.
②見せ方・並べ方は購入動機順にあわせる
レイアウトで分けたグループをさらに小さなグループに
③ワンユニット・ワンテーマで並べる
ひとつのケースはひとつ
のテーマでくくる
④商品の並べ方にもルールがある
人の動きや目線が並べ方のルールを決める
⑤ゴールデン・ソーンを活用する
見やすく触りやすい高さの範囲が最もよく売れる
⑥ルールを決めてカラーコントロールする
⑦棚陳列は縦横の関係を考える
⑧商品カテゴリーの特徴に合わせて楯と横を決める。
垂直陳列で効果
⑨商品によって陳列方法を変える
商 品 に よ り 陳 列 器 具 が 変 わ り 、器 具 が 変 わ れ ば 陳 列 方 法 も 変 わ
る.
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買いにくい売り場
①ハンガーが客勣線をふさいでいる
②商品の全体が見えない
③商品の種類が混じっている
④商品の対象がわからない
⑤ワゴンで入り口をふさいでいる
⑥入り口が狭く、閉じている
⑦ショーウィンドが隠れてしまっている
⑧色の並びがパラパラ
⑨商品で奥が見えない
⑩商品が整理されていない
買いやすい売り場
①照明を効果的に使う
②ディスプレイの基本は三角形にする
③VMD の手法を用いる
④グラデーションを用いる
⑤間違する商品をグルーピングする
⑥商品の対象がわかるようにする
⑦お客楢の興味を引き店内へ謨導する
⑧入口の開放感を高くする
⑨ショーウィンドでお客様の目を引く
⑩商品を立体的に見せる
⑪高い所はショーイング・スペースとして活用する
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ディスプレイの必要性
ディスブレイにはこのような効果があるため「ものを言わぬ販
売員」といわれている。
①視覚に訴えられるので,わかりやすい。読んだり,聞いたり
するよりも,実物を見ることによって得られる情報やイメー
ジの方がインパクトが強い。
②店としては,商品のイメージや情報,または店のコンセプト
をアピールして,他店との差別化をはかることができる。
③シーズン前に情報を伝えることによって,お客の購買心理を
刺激する。
④ウェアリングやコーディネートの方法などを提案することに
よって,お客のもつ商品イメージ,着装イメージなどを膨ら
ませ,購買に結びつけることができる。
威 力 を 発 揮 す る P O P の 作 り 方 … Point
of purchase… … …
・もの言わぬ働き者」がお客の購買を促す
・店舗に陳列した商品を生かす
・売上の拡大が見込める。
・商品説明と情報の提供
・店内のシーズン演出
・店をPRする材料のデザイン
・売り場の変化が購買意欲を刺激する
・「 チ ラ シ 」 と 「 売 り 場 」 を 連 動 さ せ て 効 果 を 上 げ る
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POPの方法
POPのルール………書き方の統一が第一条件
POP 作成 の七つ 遊具 ………… 陳列 七つ道 具と 合わせ て十分 な
用意で心を打つ。
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用語集
(マーケティング、マネジメント主体)
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■アイキャッチャー
店頭で注意を引くためジーンズ等の製品に付けて特長やサブネーミ
ングを表示する通常紙製の印刷物。
■アウトレット(店)
メーカーが季節外れや残った商品、サンプルなどを定価より大幅に
安く販売すること。その店をアウトレットショップという。最近は
小売企業も手がけることが多い。アウトレット店を集約したショッ
ピングセンターも増加している。
■アソート
英 語 の「 ア ソ ー ト メ ン ト 」( 組 み 合 わ せ を 行 う こ と )の 略 。売 り 先 の
必要に応じて、服種、品番、色、サイズの組み合わせを行って商品
を揃える一連の仕事をいう。
■アパレル
Apparel: 英 語 の「 ア パ レ ル 」の 意 味 は「 身 に つ け る も の 、衣 服 一 般
( ア ク セ サ リ ー を 除 く )」で あ る 。わ が 国 で は ア パ レ ル メ ー カ ー の 意
味に使われることも多い。
■荒利益
粗利益とも言う。商品売上からその仕入れ値(原価、コスト)を引
いたもの。売上に対するその比率を荒利(益)率という。そこから
さらにかかった経費を引いて利益計算は進む。ある一定期間の個々
の粗利益(荒利益)の集計金額を決算上の売上総利益という。
■ 荒利益率
売上高に対して、荒利益(粗利益)の比率。
■委託販売
本来は仕入先から入荷した商品の所有権を移転せずに、いわば預か
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った形式で販売することをいう。しかし日本の一部の百貨店のよう
に一旦は仕入して名義変えし、一部又は全部支払いを済ませる場合
など、後で返品があり得る場合も俗に委託販売ということが多い。
ど ん な 場 合 で も 基 本 契 約 の 締 結 が 望 ま れ る 。「 消 化 仕 入 」「 売 上 仕 入
れ」参照。
■インポート物
輸入物のこと。独占契約でいわば正規に輸入されたものと、自由な
貿易で海外の第三者から入手したもの等ある。
■売上仕入れ(売仕)
小売店などがリスクをさける目的で店頭で消費顧客に販売が完了し
た時点で正式の仕入、名義変更を行うこと。
実際の販売実績に見合う仕入れ金額のみが支払い対象となる。
■ エコロジー
エ コ ロ ジ ー と は 、も と も と「 生 態 学 」( 地 球 上 の 生 物 の 相 互 関 係 )を
さすが、転じて環境を守ること、具体的には公害を出さないこと、
炭酸ガスを排出しないこと、環境を清潔にすること、無駄なガソリ
ンや電力などのエネルギーを使わないことをさすようになった。ア
パレルの企画や製造にもその考え方が採り入れられている。
■回転率
通常商品回転率、在庫回転率のこと。所有する在庫(金額)と一定
期間(例えば月間)の売上高との比率で算出。
例 え ば 月 商 100 万 円 で 在 庫 が 200 万 円 な ら 、月 0.5 回 の 回 転 と い い 、
在 庫 月 数 2.0 と い う 言 い 方 も す る 。 場 所 商 品 、 季 節 、 人 材 な ど で 変
動する。資金やリスク効率からは当然回転の高いほうが良い。ジー
ンズ類はアイテムやサイズ数など多く一般的には低いことが多い。
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■買い取り
仕入れる側が後に返品の行為を行わない条件で契約し入荷させる形
態。商業道徳では当然のことながら、わが国では返品や交換など小
売側からのリスク回避行動が多い。
■環境配慮
地 球 環 境 に「 や さ し い 」、つ ま り 製 造 に 無 駄 な 資 源 や エ ネ ル ギ ー を 使
わない、また着用のあとで無駄に捨てる部分があまり発生しないよ
うなデザインや商品設計にすること。デザイナーなどにもこの考え
方が広がっている。
■季節指数
小売店の売上は年間を通じて一定ではなく、各月、季節によって変
動する。一般に2、8月は低く、ゴールデンウイーク、歳末などは
高いとされる。
■客数、客単価
通常客数とはレジに打ち込まれた売上げ回数、実際の入店客数とは
異なる。また同じ顧客が二度以上レジに打たれたら2人以上となる
こともある。
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客単価とはその人数で割った平均単価。商品単価ではない。季節変
動や前年対比で分析される。
■苦情処置、クレーム
小売店やメーカーで、消費者からの商品やサービスに対する苦情を
受け、それを誠意をもって処置することは極めて重要である。他の
同 種 の 欠 陥 商 品 の 回 収 行 動( リ コ ー ル と い う )、さ ら に 次 の 商 品 企 画
への反省など企業活動を修正改善する教訓材料としての意義が見直
されている。専門の対応担当(お客様センター)を設置し、より誠
実な対応をする企業が増加している。
■経常利益
企業の決算上営業利益から経費(販売費、一般管理費)を引いた残
りの利益。さらにこのあと営業外の損得(利息等)が引かれる。
■欠品
けっぴん。発注された商品の一部が品不足や納期遅れで受け渡し出
来ないこと。ジーンズ業界では特定のサイズが揃わないことを特に
嫌う。
■在庫回転
回転率の項参照。
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■催事
さ い じ 。小 売 店 で 一 定 の 期 間 あ る テ ー マ の も と で 行 わ れ る 販 売 活 動 。
優勝セールやシーズン末などのバーゲン、特定の商品を強調促進す
るキャンペーンなどがある。
■サイズカード
ジーンズ商品は特にウエスト、ヒップなどのサイズフィットの正確
さが要される。店頭や物流段階での視覚による確認のため特にサイ
ズ号数をわかりやすく表示する。
この表示の記された紙製などのカードのこと。サイズタッグという
こともある。
■サイズ構成
あ る 商 品 の 各 サ イ ズ ご と の 着 数 の 割 合 又 は 実 数 。 例 え ば 発 注 時 に 26
号( 26 イ ン チ )10 着 、27 号 15 着 ・・・と い う よ う な 場 合 に 予 測 を す る
場合にもその精度が問題にされる。
■サイズフォロー
在庫のうち特定のサイズが先行して売れて品切れになるようなとき
に追加発注を行う。この行為をサイズフォローと称する。
■サイズマーケティング
消費者のジーンズサイズに対する興味や問題意識、例えばヒップが
きれいに、脚が細く見えるとかいった課題に力点をおいて商品企画
や販売促進などを行うこと。
■差別化
マーケティング用語。自社又は他社に今までにない新しい商品やサ
ービスを企画し特徴を強調すること。
59
■品揃え
一般的には商品をそろえること。最近言われる「品揃え型」小売と
はSPA(別項)やワンブランド店と違い、店側の独自の方針で各
種のブランドを複数仕入れて構成することを言う。本来このやり方
が専門店の基本であったが、単独のブランドなど、顧客から好まれ
ないという最近の傾向への反動として再評価されている。
■什器
じ ゅ う き 。 国 語 辞 典 で の 意 味 は 「日 常 使 用 す る 家 具 や 道 具 」。 小 売 店
などでの移動できる棚、ショーケース、ハンガーなど。
■出店
し ゅ っ て ん 。新 た に 小 売 店 な ど を 開 設 す る こ と 。
「 開 店 」の 語 よ り 特
定の場所へ「出る」という意味合いが強い。
■消化仕入れ
売上げ仕入れの項参照。
■商品回転
回転率の項参照。
■大店立地法
大 規 模 小 売 店 立 地 法 。 2000 年 に 施 行 さ れ た 面 積 1,000 平 方 メ ー ト ル
以上の大規模小売店に関する法律。それ以前が大手スーパーなどの
進出から既存の中小商店街小売店などを保護する目的であったが、
自由化の見地からこの要素は外され、交通渋滞、環境美化などの地
域 調 和 が 盛 り 込 ま れ て い る 。 2001 年 前 後 ま で こ の 施 行 以 前 で の 駆 け
込み出店が多かった。
■タッグ
ジーンズ等製品に紐や糸でぶら下げる印刷物一般。ブランド、商品
60
説明、バーコード等のデータ等目的により種々ある。
■団塊ジュニア
第 2 次 大 戦 後 の 1948 年 前 後 は 出 生 ブ ー ム で あ っ た 。そ の あ た り 団 塊
(だんかい:かたまりのこと)の世代という。さらにその世代の子
供 達 の 世 代 、 1970 年 代 前 半 も 出 生 人 口 は 多 い 、 こ こ を 団 塊 ジ ュ ニ ア
という。人口の多さで、流行のトレンドを生み出すと言われる。
■単品
ジーンズボトムス商品はひとつひとつ個別に購入される傾向が強い。
紳士服のように上下セットであったり、コーディネートを強く意識
した売り場展開を行う婦人服などとは違う。これを意識したときに
シ ャ ツ や ジ ー ン ズ は 「単 品 ビ ジ ネ ス 」な ど と い う 。
■賃料
小売店が家主(デベロッパー)に支払う月額決めの家賃。営業料と
いうこともある。通常は売上金額に比例して比例増額されるが、下
限を決めていわゆる「最低保証」の額を決めるケースも多い。入居
時の保証金などとは別個。
■坪効率
一 定 期 間 ( 例 え ば 年 間 ) で の 3.3m2 あ た り の 売 上 金 額 高 。 1 m2 あ た
りで計算することもあるが伝統的な「坪」での計算も多い。アメリ
61
カ で は 平 方 フ ィ ー ト ( 0.093m2) で 計 算 す る 売 り 場 効 率 の 項 参 照 。
■ディスプレイ
Display:広 い 意 味 で「 装 飾 」の こ と 。小 売 店 の シ ョ ー ウ ィ ン ド な ど
への飾り付けをさす。
■ディベロッパー
Developer:通 常 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー な ど の 家 主 の こ と 。立 地 を 選
び、建築物を作るなどして「開発」行為を行うことからの由来。
■テナント
Tennant:シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー な ど で 入 居 し て い る 側 、店 子 、小 売
店 の こ と 。 も と は フ ラ ン ス 語 tenir( 借 地 人 、 小 作 人 ) が 語 源 。
■ドミナント
Dominant:「 優 勢 な 」「 支 配 的 な 」 の 意 味 。 あ る 一 定 の 地 域 ( 地 方 都
市など)で集客や売上げを優位に保ち、他のライバルを継続的に引
き離せれば、経営的な安定を得られることになる。
■ナショナルチェーン
チェーン店のうち、その展開店舗が全国的な規模もの。一部地域に
限定されるチェーン店はローカルチェーンという。
■ナショナルブランド
NB と も 略 す 。 特 定 の 小 売 店 で は な く ほ ぼ 全 国 の 複 数 不 特 定 の 小 売 店
で展開されるブランドのこと。
■ ニッチマーケット(市場)
「すき間」のこと。市場が成熟して、どこにも新たな需要が無いよ
うに見えても、どこかに今まで気づかなかった商品やサービスを待
つ顧客がいるかも知れない。規模は小さくとも、その需要に向けて
ビジネスを行うこともある。
62
■値入
通常専門アパレル商品は「標準とされる小売価格」がメーカーによ
って決められている。その価格に対して、いくらの額又は%で小売
店が仕入れるか交渉、決定されること。又はその過程で指値(さし
ね)すること。
■ハコ
「箱」に由来。広い面積フロアの百貨店やスーパーなどで一般の広
い売り場(平場という)とは区別し、壁などで囲み独立性と一定の
権威をもたせて展開すること。一定のブランド、商品群などを引き
立たせる。
平場とハコの例(百貨店)
63
■販売代行
小売ビジネスでの販売代行とは、仕入先卸メーカーなどとの契約に
より、一定の場所で商品を委託されて、実際の小売管理(接客、入
金、人事管理、在庫等店舗業務一般を)行うこと。実績に応じて、
仕入先メーカーなどから手数料収入を得る。
■ファスト・ファッション
フ ァ ス ト と は 、「 早 い・ fast」と い う 意 味 。ハ ン バ ー ガ ー 店 な ど は フ
ァ ス ト ・ フ ー ド 店 と 呼 ば れ る 。「 早 く 、安 く 、手 軽 な 」食 事 で あ る よ
うに、ファスト・ファッションとは、最新のファッショントレンド
をすばやく早く取り入れ、低価格で、ほどよい品質のファッション
をファスト・ファッションという。今まで流行の先端ファッション
は、限られた所得の高い客だけを相手にしていたが、最近は安価で
大量に提供され、多くの人が購入できるようになった。低価格と流
行トレンドについていくためには大規模な店数と大きな資本力を必
要とする。海外資本のH&Mがその典型。
■フェース
Face: 顔 。 い ろ い ろ な 意 味 で 使 わ れ る が 、 シ ー ズ ン 初 め な ど で あ る
商品品番が店頭に揃えられた状態の時、特にその在庫内容をフェー
ス と い う 。次 第 に 売 れ て き て 補 充 が 必 要 な と き を 「フ ォ ロ ー 」と い う 。
「 フ ェ ー ス 在 庫 」、 「フ ォ ロ ー 発 注 」な ど と い う 。
■物販
物品販売の略。小売業態では大きく分けて、物販(アパレル、グッ
ズ 等 )、飲 食 、サ ー ビ ス( 旅 行 代 理 業 等 )に 分 け ら れ 各 シ ョ ッ ピ ン グ
センターなどでの区分項目となる。
64
■プライベートブランド
Private Brand: メ ー カ ー で は な く 小 売 店 が 自 己 の 企 画 で 展 開 す る 部
分の商品ブランド。商品リスクを製造メーカーと共有する場合もあ
る。
■フランチャイズ
Franchise:英 語 の 語 源 は 「利 権 」「 特 権 」の 意 味 。一 定 の 商 品 や サ ー
ビスのノウハウを持った本部と地域を決めてその商品やノウハウを
受ける側とで交わされた契約に基づく連鎖形式の店舗展開のこと。
本部側をフランチャイザー、商品やノウハウを受ける側をフランチ
ャイジーという。
■プレゼン(テーション)
説明する側が受ける側に伝える内容またその行為。すべての社会関
係の場に存在するが、小売店から消費者顧客への商品のプレゼンテ
ーションすなわち商品の意図やコンセプトを伝達することは重要。
■並行輸入
ある国際的ブランドの独占権を持った企業の販売展開とは別に、海
外の第三者から自由貿易の原理で同じブランド商品が輸入されるこ
と。利害調整がむつかしいこともある。
■保証金
小売店がショッピングセンターなどへ入居契約する時に入居者側か
ら家主に支払われる金額。本来は建物の建築費の応分負担の意味が
あったが単に入居権利確保の意味合いもあり習慣化してきた。通常
10 年 程 度 経 過 後 や 随 時 の 退 店 時 に 返 還 さ れ る 。 家 主 ( デ ィ ベ ッ ロ ッ
パー)側の返還以前での倒産なども最近多く、問題化している。
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■ボランタリーチェーン
Voluntary Chain: 比 較 的 拘 束 の 緩 や か な 共 同 仕 入 れ 連 鎖 店 。 各 小 売
店の独立性を維持しながら、会員相互の情報共有などを通じて共同
仕 入 れ を 行 い 、値 入 率 な ど 経 済 メ リ ッ ト を 得 る 。日 本 で は 紳 士 服 の ト
ップチェーンなどが例。
■民事再生法
2000 年 4 月 か ら 施 行 さ れ た 倒 産 処 理 の 法 律 。 従 来 の や り 方 に く ら べ
て、㈰従来の経営者が債権処理にあたることも可能なこと、㈪実際
に破綻する以前にも申請できること、㈫手続きや処理決定が早く経
済のテンポにふさわしいことなどが特長である。
■モール
Mall: 英 語 の 語 源 は 樹 木 の 植 え ら れ た 遊 歩 道 。 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ
ーなどで来客が回遊しながら、買い物などを楽しめる形状にしたも
のをさす。単に店舗が集積したビルではなく、せいぜい3階程度ま
での高さで通路区空間を外気とオープンな雰囲気するなど工夫した
ものをモール形式という。しかし日本では単にショッピングセンタ
ーの意味でも使う。
66
■モニター
通信などを監視するという意味から発展して、広く一般大衆の意見
を聞くことなどの意味にもちいられる。メーカー、小売店が通常気
がつかない自己の問題点、商品の評価などの評価を聞き取ること。
■ライセンス
著 名 ブ ラ ン ド の 商 標 を 他 社 が 使 用 す る こ と へ の「 使 用 許 可 」。ブ ラ ン
ド 所 有 者 を「 ラ イ セ ン ス ホ ル ダ ー 」ま た は「 ラ イ セ ン サ ー 」、許 可 権
を 得 た も の を 「( マ ス タ ー ) ラ イ セ ン シ ー 」。 ラ イ セ ン サ ー か ら 特 定
の品目の許可を得た者を「サブライセンシー」などと呼ぶ。通常は
期 間 を 決 め て 契 約 し 、売 り 上 げ に 応 じ た 使 用 料 を「 ロ イ ヤ ル テ ィ ー 」
を払う。
■リサイクル
循環型経済システムの構築に向け、狭義のリサイクル(再資源化)
にとどまらず、リデュース(廃棄物の抑制)やリユース(再使用)
を 加 え た「 3R 」に よ る 広 義 の リ サ イ ク ル が 急 務 に 。こ れ ま で 大 半 が
焼却処理されてきたアパレル製品のリサイクルの調査研究も始まっ
ている。
リサイクル・リメークジーンズの例
ジーンズボトムの前面を利用したスカート
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■リピーター
繰り返して来店または購買する顧客。または2度目以降の来客又は
購買客。
■ロット
Lot: 商 品 の 受 発 注 や 出 荷 の ま と ま っ た 一 定 量 の こ と 。「 ロ ッ ト を ま
とめる」などという。ロットがまとまったほうが一着当たりでの物
流費は安くなる。
■路面店
ショッピングセンターなどの建造物に入居するのではなく、個々に
公道に面した立地に出店している店。したがって小さい店が路地の
ようなところに出店してもそれは路面店ということになる。
■ワン・ツー・ワン
個人から個人へという意味。パソコンなどを利用して離れた人の間
での商取引を行う場合などに使われる言葉。
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知っておこうビジネス用語集
《アルファベット編》
■CAD
Computer Aided Design: コ ン ピ ュ ー タ の ソ フ ト ウ エ ア ー 手 法 を 使 っ
て、画像や絵柄、色などを効率的に完成させる手法。織物や衣服の
デザインの制作作業にも導入されはじめている。ジーンズの生産で
は原型パターン(型紙)を制作したり、各サイズ毎に縮小、拡大す
る作業(グレーディング)等に応用される。
■CAM
Computer Aided Manufacturing : コ ン ピ ュ ー タ の ソ フ ト ウ エ ア ー 手
法を使って、生産工程の設計や機械制御を行うことをいう。ジーン
ズ衣服の製造では、生地裁断時に身ごろなどの各パーツをロスの少
ないよう効率よく並べつける作業(マーキング)などに当面導入さ
れ始めている。
■CS
Customer Satisfaction:「 顧 客 満 足 」。 消 費 者 の 満 足 度 は 「 商 品 」 そ
のもの以外に、接客態度、苦情処理の良しあし、日ごろのコミュニ
ケーションなどが含まれる。これら幅広い消費者の意識に充分配慮
した手法が意識されなければならない。
■DM
Direct Mail: ダ イ レ ク ト メ ー ル 。 店 舗 や 商 品 の 宣 伝 販 促 の た め に 郵
便または宅配で配布される文書。
■EDI
Electronic Data Interchange: 電 子 デ ー タ 交 換 。 取 引 者 相 互 の 受 発
注、在庫問い合わせや引き落とし、店頭情報収集、請求入金処理等
69
を行うためにコンピュータを回線で結ぶ情報のやりとりのこと。ジ
ーンズ業界では一部の百貨店、専門店とメーカーの間で試行が始ま
っている。電話やファックスでの発注は次第に減少している。
■e コマース、EC
Electronic Commerce : 電 子 取 引 。 コ ン ピ ュ ー タ 通 信 に よ る 商 取 引 。
物販やサービス(チケット販売等)を従来の郵便や電話、ファック
ス な ど で は な く コ ン ピ ュ ー タ 回 線 を 通 じ て 行 う こ と 。 B to B( 業 者
間 )、 B to C( 業 者 、 メ ー カ ー 、 小 売 店 と 消 費 者 の 間 )、 C to C( 消
費者相互間)などに区別される。
■FB
Fashion Business: フ ァ ッ シ ョ ン ビ ジ ネ ス の 略 。
■FR
Fitting Room: 試 着 室 の こ と 。
■GMS
General Merchandising Store: い わ ゆ る 量 販 店 、 ス ー パ ー の 発 展 し
たもの。チェーン形式、セルフ販売を基本としながら、衣料(ソフ
ト ラ イ ン )、 食 品 ( フ ー ズ )、 住 関 連 ( ハ ー ド ラ イ ン ) の 3 部 門 を 網
羅した総合小売店。最近では、同じ場所に大手専門店が入居し競合
するなど変化がみられる。
■IP
Item Presentation: 店 頭 で 商 品 の 品 目 ( シ ャ ツ 、 ジ ャ ケ ッ ト な ど )
ごとにその存在感や魅力を区別して見せること。特に顧客のコーデ
ィネートの欲求を引き出すことが重要である。
■IR
Investor’ s Relationship:
( 株 式 )投 資 家 へ の 情 報 PR 活 動 の こ と 。
70
近年株主の利益を重視するようになり、企業の現状や問題点を頻繁
に「開示」し投資家の理解を得ること。株価にも影響し各メーカー
や小売は真剣に取り組んでいる。ホームページ上での情報開示も盛
んである。
■ I S O 14000
I S O 9000
International Organization for Standardization : 国 際 標 準 化 機
構(本部スイス)は各国の工業規格の統一、例えばねじくぎの寸法
仕様などを取り決めている。商品、製品、サービスの品質保証に関
す る 規 格 が ISO9000、 環 境 の 維 持 保 全 に 関 す る 企 画 が ISO14000 で あ
る。小売サービス業も申請や認可に熱心であり、企業あげての意識
向上の運動につなげている。
■JAN
Japanese Article Number: 通 常 い わ ゆ る バ ー コ ー ド と 併 記 し て 表 示
され、レジなどでスキャンされて商品の動きを把握する目的に使わ
れる。ジーンズ業界では日本ジーンズ協議会の取り決めによりすべ
て の 商 品 に 表 示 さ れ て い る 13 桁 の 番 号 で 、品 番 、色 サ イ ズ 内 容 ま で
も 区 分 さ れ て い る 。 尚 こ の JAN の 他 に 各 小 売 店 が 独 自 の 管 理 目 的 で
バーコードとその番号を設定していることもある。
JAN 登 録 済 コ ー ド ( サ イ ズ カ ー ド に 表 示 さ れ た 例 )
13 ケ タ の 数 字 で 日 本( 4 9)+メ ー カ ー 名 +SKU を あ ら わ す 。
価格は通常内容に含まれない
71
■JCA
Japan Chain stores Association : 日 本 チ ェ ー ン ス ト ア 協 会 。 い わ
ゆる量販店系の業界団体。百貨店協会とならんでわが国の有力小売
団体。特に仕入れ伝票の統一様式やその記述形式にあわせたコンピ
ュ ー タ の 情 報 処 理 の 標 準 体 系 を 持 っ て い る 。「 JCA 手 順 の 送 信 」 な ど
という。
■KIDS
キ ッ ズ 、英 語 の 子 供「 kid」の 複 数 形 。商 品 や 小 売 店 の 子 供 む け の 展
開の時に使う言葉。
■M&A
「 Mergers and Acquisitions」 の 略 で 、 Merger と は 会 社 の 合 併 を 、
Acquisition と は 買 収 を 意 味 す る 。株 式 を 手 に 入 れ た り 、営 業 を 得 た
り、合併、資本参加などがある。アパレルや小売の企業でも最近多
くなっている。
■MC
Mass Communication: マ ス 媒 体 を 使 っ た 宣 伝 の こ と 。 テ レ ビ 、 雑 誌
などで商品やサービスを告知すること。定義的には小売店の外部で
広く大衆に情報が伝えられること。小売店内部やその周囲に限って
来 客 者 や 通 行 人 に 情 報 が 伝 え ら れ る も の は 販 売 促 進 ( SP) と い い 、
区別される。
■ M D ( 1)
Merchandising,Merchandiser の 略 。マ ー チ ャ ン ダ イ ズ と は も と も と
「商品」のこと。そこから「マーチャンダイジング」とは商品を企
画したり、仕入れしたりする行為のこと、またその役目の人を「マ
ーチャンダイザー」という。
72
■ M D ( 2)
Mark down の 略 。マ ー ク ダ ウ ン と は 季 節 の 終 わ り な ど に 当 初 設 定 し た
小売価格やその仕入値を下げること。
■NB
National Brand の 略 。 全 国 展 開 さ れ 広 く 一 般 の 小 売 店 で 売 ら れ て い
るブランド。知名度というよりも、取引関係が広く普遍的であるこ
と の 意 味 に 使 わ れ る こ と が 正 し い 。PB、SB な ど と の 対 比 で 使 わ れ る 。
■NC
National Chain: 全 国 チ ェ ー ン 。 連 鎖 店 で そ の 展 開 規 模 が 全 国 的 な
も の の 略 。一 定 地 域 に 限 ら れ た チ ェ ー ン 店 は RC( ロ ー カ ル チ ェ ー ン )
と略する。
■NPB
National Private Brand の こ と 。 知 名 度 の 高 い NB を 特 定 の 小 売 店 が
独自の設計やデザインの仕様で独占展開する場合に使う。メーカー
ブランドの知名度、企画力を利用し一定の収益率向上を狙って企画
さ れ る 。 NB と PB の 中 間 と も 言 え る 。
■OEM
Original Equipment Manufacturing : 相 手 先 の ブ ラ ン ド を つ け て 、
指示された仕様の商品や部品を生産すること。単なる受注生産とい
う意味の他に、ブランドメーカーが自社工場の操業維持のために他
社のブランド商品を作ることなどが今日的である。
■PB
Private Brand: プ ラ イ ベ ー ト ブ ラ ン ド 。 個 々 の 小 売 店 ( チ ェ ー ン )
が 独 自 に 展 開 す る 自 己 ブ ラ ン ド 。 SB と も 言 う 。
73
■PL
Product Liability: 製 造 物 賠 償 責 任 の こ と 。 メ ー カ ー の 責 任 に よ る
製品の欠陥で消費者などが被害を受けた場合、消費者にはメーカー
側の原因を立証できないうらみがあった。しかし近年消費者保護の
観点からも法制が整備され、メーカー側の対応もより真剣になって
いる。欠陥のテレビが原因で火災に至るなどが事例である。ジーン
ズ関連では縫製工程での針の混入による怪我の防止などが課題。
■POS
Point of Sales: 購 買 時 点 ま た は そ の 場 所 を さ す 。 小 売 店 の レ ジ で
販売すなわち購買された内容の情報は極めて重要である。オンライ
ン回線などで瞬時に全店の集約データを把握して次の対策へ結びつ
ける。個々の商品内容をバーコードなどで把握できる機能のレジ機
器をポスレジと称する。
■QR
Quick Response: ア メ リ カ で 始 め ら れ た 流 通 合 理 化 整 備 の 運 動 。 小
売 や 製 造 さ ら に は 素 材 、資 材 の 各 段 階 で の 在 庫 が 集 積 し て 大 き な 無
駄となっているという問題意識から、コンピュータ情報処理などで
川下の売れ筋等をつかみ川上へ連絡して「迅速」な生産と物流で全
体 的 に 在 庫 の 圧 縮 を 図 ろ う と い う も の 。 1990 年 代 の ア メ リ カ で の ア
パレル業界での成功例も多かった。しかし日本では誤解も多く、外
注工場などへの横暴な指示なども弊害とされ、設備や企業間の組織
構 造 に も 配 慮 し た 新 し い SC M 運 動 へ と 変 化 し た 。
■RC
Regional Chain: 地 域 チ ェ ー ン 。 連 鎖 店 で そ の 展 開 規 模 が 地 域 的 な
ものの略。展開が全国規模のチェーン店はNC(全国チェーン)と
74
略する。
■RFID
Radio
Frequency
IDentification:直 訳 で は「 無 線 識 別 」。従 来 の
バーコード式の商品識別に代わって、商品自体またはタッグに付け
ら れ た 小 さ な 「 I C チ ッ プ 」 で 商 品 を 識 別 す る 方 法 。「 非 接 触 」 で 、
「大量」に商品処理が可能。POS売上、棚卸などに有用。
ジーンズにつけたRFIDタッグの内部
(中央のICチップの周囲はアンテナ)
■SB
Store Brand: ス ト ア ブ ラ ン ド 。 個 々 の 小 売 店 ( チ ェ ー ン ) が 独 自 に
展 開 す る 自 己 ブ ラ ン ド 。 PB と も 言 う 。
■SC
Shopping Center: 日 本 の シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー は 最 近 の 法 令 に よ る
規制で大規模出店は沈静化しているが、それでもお客が一日中楽し
めるような大型の内容設備のもので集客しようとする動きは多い。
■SCM
Supply Chain Management: サ プ ラ イ チ ェ ー ン マ ネ ジ メ ン ト 。 新 し い
生 産 流 通 の 合 理 化 整 備 の 運 動 。 QR( 別 項 ) の 反 省 を 受 け て 最 近 盛 ん
に開発研究が進んでいる。原材料の調達、製造、物流、小売などの
75
流 れ を 最 適 化 す る た め 、IТ( コ ン ピ ュ ー タ な ど の 情 報 技 術 )を 駆 使
してコスト削減、在庫の削減、納期の短縮などを狙う。参加する各
段階が平等にメリットを受けられるよう配慮がなされる必要がある。
QR が 迅 速 さ を 強 調 し た の に 対 し 、SCM は「 供 給( サ プ ラ イ )」側 と 一
体となったシステム構築が眼目である。
■SKU
Stock Keeping Unit: 商 品 の 最 終 の 管 理 単 位 の こ と 、 在 庫 管 理 の 最
小単位。衣料品は商品グループ→品番→色→サイズと限定されては
じ め て 扱 う 価 値 が 生 じ る 。逆 に む や み に こ の 数( SKU)が 増 加 す る 傾
向があり、在庫やリスク管理上問題となる。そこでできるだけこの
数、すなわち広い意味でのアイテム数を削減しながらも顧客の満足
を得る工夫が必要となる。ジーンズはサイズ数が多いのが特徴。
■SP
Sales Promotion: 販 売 促 進 の こ と 。 限 定 的 意 味 と し て は 販 売 さ れ る
場所、売り場や小売店を限って行われる商品やサービスの告知活動
の こ と 。 MC( 宣 伝 、 別 項 ) と は 区 別 さ れ た 概 念 。
■SPA
Specialty store-retailer of Private label Apparel : 専 門 店 の 自
76
己ブランド製造直販のこと。この用語はアメリカ「ギャップ」社が
作り出した。近年組織化された専門店チェーンがメーカーからの仕
入れにあき足らず、自己企画、自己の製造とリスクで商品の一貫生
産小売展開を行うようになった。商品コンセプトや宣伝などの手法
で店舗名イコールブランド名という場合が多く、消費者の爆発的支
持 を 得 や す い 。 ア メ リ カ の 「 GAP」、「 バ ナ ナ ・ リ パ ブ リ ッ ク 」、 日 本
の 「ユ ニ ク ロ 」な ど が 有 名 。 商 品 企 画 力 の 維 持 、 リ ス ク 負 担 の 管 理 な
ど今後の課題もある。これと対比して従来のように自己の判断で複
数のメーカーからの商品を源泉とするものを「品揃え型」などとい
う。
■TGC
東京ガールズコレクションの略。リアル・クローズを対象としたフ
ァッションショー、服飾販売を兼ねたライブのイベント。会 場やイ
ンターネットでショーの様子を配信し、その場で携帯サイトやイン
ターネットサイトを通して販売する。ファッション雑誌で人気のあ
るモデルが多数出演するなど、多くの若い女性からの人気が高い。
■VMD
Visual Merchandising: 店 舗 の 装 飾 、 商 品 陳 列 な ど の 手 法 に 力 を い
れて顧客の注意を引きつける一連の行動。現代の顧客は商品そのも
のよりも提示される雰囲気やコンセプトに敏感であり旧来の羅列型
陳列では魅力を感じない。
■VP
Visual Presentation の 略 。視 覚 に 訴 え る 商 品 の 提 示 の こ と 。顧 客 が
一目見て季節性やトレンド、魅力等が理解できる工夫が必要とされ
る。
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平成 24 年度文部科学省委託
「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進事業」
デニム・ジーンズクリエイター養成基盤整備のための教育プログラム開発と実証
■実施委員会
◎ 平田 眞一
学校法人第一平田学園 理事長
前鼻 英蔵
学校法人西野学園 理事長
山本 絵里子
学校法人山本学園 専門学校山形 V.カレッジ 副校長
岡本 裕子
倉敷ファッションカレッジ
貝原 良治
カイハラ株式会社 代表取締役会長/日本ジーンズ協議会 理事長
大平 隆敏
有限会社繊維流通研究会 副社長
佐伯 晃
日本ジーンズ協議会 専務理事
吉村 恒夫
倉敷ファッションセンター株式会社 アジア市場攻略事業部 マネージャー
飯塚 正成
一般社団法人全国専門学校情報教育協会 事務局長
副校長
■調査WG
◎ 田口 一子
中国デザイン専門学校 校長
岡本 裕子
倉敷ファッションカレッジ
副校長
大平 隆敏
有限会社繊維流通研究会 副社長
吉岡 正勝
有限会社ザ・ライスマウンド マーケティングマネージャー
■開発WG
◎ 田口 一子
中国デザイン専門学校 校長
岡本 裕子
倉敷ファッションカレッジ
副校長
貝原 良治
カイハラ株式会社 代表取締役会長/日本ジーンズ協議会 理事長
大平 隆敏
有限会社繊維流通研究会 副社長
佐伯 晃
日本ジーンズメーカー協議会 専務理事
吉岡 正勝
有限会社ザ・ライスマウンド マーケティングマネージャー
平成 24 年度文部科学省委託
「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進事業」
デニム・ジーンズクリエイター養成基盤整備のための教育プログラム開発と実証
デニム・ジーンズのマネジメントの実践
平成 25 年 3 月
学校法人第一平田学園(中国デザイン専門学校)
〒700-0842 岡山県岡山市北区船頭町 12
問合せ先:有限会社ザ・ライスマウンド
〒164-0003 東京都中野区東中野 1-57-8 辻沢ビル 3F
電話:03-5332-5080 FAX 03-5332-5083
●本書の内容を無断で転記、掲載することは禁じます。
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