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B-25 クリーンルーム環境解析ソフトCRWINによるクリーンルーム環境

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B-25 クリーンルーム環境解析ソフトCRWINによるクリーンルーム環境
平成 15 年 4 月 15 日・16 日
第 21 回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会予稿集より抜粋
B-25 クリーンルーム環境解析ソフトCRWINによるクリーンルーム環境の改善
An improvement of cleanroom environment by cleanroom environment simulation software “CRWIN
○岩倉博美、吉川正司、吉田幸徳、明石幸治(三宝電機㈱)*1
中尾
斉、堀川光洋、鈴木一弘(セイコーエプソン㈱)*2
Abstract
Cleanroom environment simulation software “CRWIN” developed from Sanpo Electrical and Mechanical
Engineering Corporation is a simulation software which can be easy to analyze cleanroom environment (airflow,
temperature , humidity and cleanliness) without special knowledge of numerical analysis. We introduce the
improvement of cleanroom environment to use this “CRWIN”, the improvement of cleanroom environment was
usually done in experience and intuition, but it give an efficient method of improvement to use “CRWIN”.
Keywords : 環境: environment , 気流解析:airflow analysis , シミュレーション:simulation , ソフトウエア:software
クリーンルーム:cleanroom , CFD(Computational Fluid Dynamics):数値流体力学
1.はじめに
以上のような状況を改善するために、CR ユーザーが、簡
近年、局所クリーン化技術の進歩に伴い、製品の歩留や
単に使えるクリーンルーム環境シミュレーションソフトを
品質向上を目的として、クリーンルームで生産を行う工場
開発した。名称を「クリーンルーム環境解析ソフトCRW
が増えている。クリーンルームが一般化するに従い、実際
IN
に使われるユーザー(以下 CR ユーザーと呼ぶ)が、気流、
RWINでは、クリーンルーム環境のモデル化が、CRユ
温度、湿度、清浄度、ケミカル汚染などのクリーンルーム
ーザーで短時間に行え、かつクリーンルーム環境を効率的
1)
Ver.1.00」と呼ぶ(以後CRWINと記す)。このC
環境を注目するようになってきている。 ところが、清浄
に解析することができる。このため従来、経験や勘で行わ
度に代表されるように、クリーンルーム環境を正確に把握
れてきたクリーンルーム環境改善が、CRユーザーで定量
することは、簡単なことではない。経験のある CR ユーザー
的に効率よく行える。このCRWINおよびCRWINに
でないと、クリーンルーム環境を理解することは難しい。
よる改善事例を本論文で報告する。
特に、クリーンルームを施工または改造する場合、その大
小にかかわらず、環境を予測することは、集中質量系での
2.クリーンルーム環境解析ソフトCRWIN
簡単な計算や過去の経験あるいは勘をたよりに行われてい
2-1.CRWINの構成と解析の流れ
る。2)このため、クリーンルームの施工は、経験のある施
工業者に依頼するのが一般的になっている。
Fig.1 にCRWINのソフトウエア構成と解析の流れを
示す。CRWINも他の汎用熱流体解析ソフトと同じよう
ところで、従来からクリーンルームの環境を CR ユーザー
に、以下の3つのソフトより構成されている。すなわち、
にわかりやすく提示する手法の一つに気流シミュレーショ
解析モデルを作成する「モデラー」部、3次元熱流解析(定
3)
ン技術がある。 近年、パーソナルコンピュータの発達に
常計算/時間経過計算)を行う「ソルバー」部、解析結果の
より、一昔前では、スーパーコンピュータでしか行えなっ
3次元表示を行う「グラフィック」である。このCRWI
た気流シミュレーションが、手軽に行えるようになった。
Nの数値解析仕様を以下に示す。
また、画面表示機能の進歩も著しいものがあり、3次元グ
【取扱流体】非圧縮性流体の空気のみ
ラフィックやアニメーションが手軽に行え、気流シミュレ
【離散化手法】有限体積法
ーション結果も非常にわかりやすく画面表示できるように
【格子】構造格子系直行格子
なった。しかし、気流シミュレーションで使われる3次元
【離散化精度】ハイブリッド法
熱流体解析ソフトは、解析モデルをソフト上で作成すると
【乱流モデル】K-ε、簡易乱流モデル
きに数値解析の専門的な知識が必要である。CR ユーザーが、
【時間の離散化】完全陰解法
気流シミュレーションを行うためには、数ヶ月かけて3次
【解析項目】気流、温度、湿度、清浄度、圧力
元熱流体解析ソフトを修得する必要がある。このため、CR
ユーザーが、気流シミュレーションを利用することは少な
い。
その他拡散物3個
また、「グラフィック」での出力表示は、以下のものがある。
1)気流ベクトル表示
*1 Hiroyoshi Iwakura, Tadashi Kikkawa, Yukinori Yoshida, Koji Akashi
(Sanpo Electrical and Mechanical
Engineering Corporation)
*2 Hitoshi Nakao, Mitsuhiro Horikawa, Kazuhiro Suzuki (Seiko Epson Corporation)
平成 15 年 4 月 15 日・16 日
第 21 回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会予稿集より抜粋
2) コンター表示(気流、温度、湿度、清浄度、圧力)
終了するような構成になっている。このため熱流体解析
3) アニメーション機能
ソフトに不慣れな CR ユーザーでも簡単に入力可能であ
気流フロ-アニメ、パーティクルアニメ
オート断面スライス表示、時間経過アニメ
る。
4)CRWIN全般において、難解な専門用語をできる限
Fig.2 に気流ベクトル表示の一例を、Fig.3 に温度コンター
り使用せず、クリーンルームで一般的に使用される言
表示の一例を示す。
葉(例えば、吸込口、パンチング、障害物、梁、柱、
パネルなど)を使うようにした。
2-2.CRWINの特徴
5)ソルバーは、上述した数値解析仕様の範囲で、汎用熱
1)解析モデルをクリーンルームに特化することで、CR ユ
ーザーが簡単に、クリーンルーム環境をシミュレーシ
ョンできるソフトとしている。
流体解析ソフトと同等の機能がある。
6)グラフィックは、上述のように多彩な出力形式があり、
解析結果をわかりやすく表示できる。
2)クリーンルームの構成要素を「部品」として提供する
なお、解析モデル作成を簡単化するためと解析を簡便化
ことで、解析モデルの入力を簡単化している。Fig.4 に
するために、現行CRWINでは、下記の制約がある。
「部品」の一例として「吹出口」を示す。このような
1)入力を簡単化するため、壁、床、天井、障害物、生産
「部品」をモデラー画面にマウスで貼り付けるイメー
ジでクリーンルームのモデル化を行う。
装置等の壁面の境界条件は一定である。
2)清浄度分布は物質の拡散でのみ求めており、重力沈降
3)クリーンルームのモデル作成は、モデラー画面の「メ
の影響は考慮されていない。
インコントロール」を上から順に入力すれば基本的に
Analytical
object of
cleanroom
Constitution of system
Modeling
Modeler
Fig.2
vector
Graphic
Fig.3
Temperature
FFU
Definition of “Supply
FFU is modeled as
by
opening” data
opening”
CRWIN Modeler.
CRWIN
Modeler
Fig.4
graphic
Graphic
CRWIN simulation flow and constitution of system
“Supply
distribution
Solver
Numerical analysis
Fig.1
Airflow
CRWIN Modeler Parts: “Supply opening”
distribution
graphic
平成 15 年 4 月 15 日・16 日
第 21 回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会予稿集より抜粋
2-3.CRWINを使いこなせるまでの期間
3.CRWINでのクリーンルーム環境構築、改善事例
実際に、CRWINを利用した社員が、使いこなせる
3-1.局所クリーンを構築した事例
までの日数を Fig.5 に示す。CRWINは、平均 6.2 日
Fig.6 のような装置の前面に局所クリーンを構築する
で使いこなせるようになっている。サンプル数が少ない
際に本シミュレーションソフトを使用した例を示す。装
ものの汎用熱流体解析ソフトと比較して、約10分の 1
置は、加工した後、ジグにはいったワークを取り出す際
の期間で、ソフトが使えるようになっている。
に、そのワークを汚すことのないような局所的な清浄化
空間を作り上げるためのものである。扉を開けた際、作
Fig.5
Days comparison until it can master CRWIN
業者一人が入って作業するだけの空間を清浄化し、なお
and the general CFD software
かつ、周囲の一般空間からの汚れを防止するために、F
Master of
CFD software
―
Member
Master of CRWIN
A
B
3days
4days
C
7days
D
E
3days
14days
―
―
60days
F
―
60days
Average
6.2days
60days
comparison
1.0
9.7times
―
FUからの気流の流れがどうなるかを調べた例である。
装置本体の扉が閉まっている状態(Fig.7)と、扉が開い
ている状態(Fig.8)の気流の流れの解析事例を示す。こ
うした解析を本ソフトでは、モデリングからはじまって、
一通りの解析結果を出すまで約半日で終えることができ、
解析結果を元にしながら、いろいろな場合のモデルにつ
いて検討し、最終的な望ましい状態まで持ちこむことが
容易にできる。もちろん、気流の解析だけでなく、先に
述べた様に清浄度、温度分布等についても結果を得るこ
とができる。最後に、シミュレーションした最終結果を
もとに、実際のモデルで実験確認をして目標とする環境
を構築していく。
Work
3-2.局所クリーン化の検討事例
FFU
Fig.9(a)に示す FFU による全面層流クリーンルーム
Door
を検討したところ生産装置付近が所要清浄度を満足すれ
ば、品質管理ができることがわかった。そこで、Fig.9
(b)のようにクリーンルーム内の生産装置付近にクリ
ーンブースを設置し、局所クリーン化を検討した。その
結果を Fig.10 に示す。クリ-ンブースによる局所クリー
main part of equipment
Clean booth
for equipment cleaning
ン化で、生産装置付近は、全面層流クリーンルームと同
等の所要清浄度を満足していることがわかる。なお、全
面層流クリーンルーム(FFU56 台)に比べ、クリーンブ
ースによる局所クリーン化(FFU22 台)の場合、FFU を
61%(FFU34 台)削減できている。
Fig.6 Analytical object of mini environment
Fig.7 Airflow vector distribution (Door close)
Fig.8 Airflow vector distribution (Door open)
平成 15 年 4 月 15 日・16 日
第 21 回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会予稿集より抜粋
FFU 56 units
3-3.クリーンブース設計検証事例
あるクリーンブース(10000W×12000D×1500H)を設計
するにあたり、CRWINで気流、温度分布のシミュレ
Worker
ーションを数回行ない、仕様範囲内であることを確認し
てから製作を行った。現場で据付完了後、気流、温度分
布が所用の範囲内であるか実測で確認した。このうち
Fig.11、Fig.12 に風速分布の比較を示す。実測値とシミ
Production equipment
ュレーション値は、おおむね一致しており、CRWIN
の解析が正しいことがわかる。
(a) Unidirectional airflow cleanroom
10m(W)×6m(D)×4.5m(H)
FFU 6 units
FFU 16 units
Worker
A section cleanliness distribution
Clean Booth
Fig.11 B section airflow
Production equipment
(b) Mini environment by clean booth
Fig.9 Examination of mini environment
A section cleanliness distribution
B
A
Fig.12 K,L section airflow
1 particle/ft
3
Contamination
from a worker
Contamination
485 particles/ft3
from a worker
385
particles/ft3
4.まとめ
1)気流、温度、湿度、清浄度のクリーンルーム環境を
CRユーザーで解析することができるクリーンルー
ム環境解析ソフトCRWINを開発した。
2)CRWINは、解析対象をクリーンルームに特化す
ることで、従来、数値解析の専門的知識がないとで
B section cleanliness distribution
(a) Analytical result of Unidirectional airflow cleanroom
A section cleanliness distribution
B
きなかった解析モデルの作成を簡単化し、CRユー
ザーが日常業務の合間でも使えるものとした。当社
の社員によるデータであるが、使いこなせるのに 6.2
日程度しかかからず、他業務で忙しいCRユーザー
でも十分使えるものであることを示した。
A
3)CRWINによる実際のクリーンルームでの改善事
例を示し、事前にシミュレーションで環境を把握す
ることで、効率よくかつ定量的にクリーンルーム環
Contamination
from a worker
740 particle/ft3
1 particle/ft3
境を改善できることを示した。
Contamination 5.参考文献
from a worker 1) JACA編 クリーンルーム環境の計画と設計 33~34
485 particle/ft3 2) JACA編 クリーンルーム環境の計画と設計 74~75
3) 諏訪好英 CFDによるクリーンルーム汚染制御の動向と
B section cleanliness distribution
(b)Analytical result of mini environment by clean booth
Fig.10
Analytical result of cleanliness distribution
今後 クリーンテクノロジ-6 月号(2002)26
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