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研究発表会資料1(レジュメ

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研究発表会資料1(レジュメ
舩橋1ゼミ研究発表会レジュメ
日本における一票の不平等問題について
‐政治・司法・市民運動からのアプローチ‐
2009 年 12 月 1 日(火)
担当:舩橋 1 ゼミ
Q1.一票の格差とはどのようなものか?
1、一票の格差とは
2、選挙制度
2-1、衆議院の選挙制度
2-2、参議院の選挙制度
3、年表に関する考察
3-1、格差是正に関する区割り変遷
3-2、政府の是正への取り組み
4、政治における主体の関係
5、なぜ国会では抜本的是正がなされないのか
6、政治的アプローチからのまとめ
1.一票の格差とは
選挙において、議員一人あたりの当選に必要な票数が地域ごとによって異なることで、国
民一人当たりの一票の「価値」に格差が生じること。
憲法では「法の下の平等」が記されているが、現状は、衆議院は3倍程度、参議院にいた
っては6倍程度までの格差なら許容範囲というのが、最高裁判決の示した基準になってい
る。
2008 年に総務省が発表したデータによると、最小の高知 3 区を1としたときの最大格差は
千葉 4 区の 2.277 倍。2 倍を超える選挙区は 53 選挙区にもなり、年々上昇傾向である。
2.選挙制度
中選挙区制(1947~1994)
大選挙区の仲間であり、一選挙区あたり2~6人の定数。
長所…尐数政党が完全には排除されないことで、民意が反映されやすい。
短所…比較的尐ない得票で当選できるため、選挙区での地盤があれば当選できてしまう
など汚職議員や世襲議員が増える可能性。政権交代が起こりにくい、など。
1
工業化の進展に伴う都市部への人口集中などによって選挙区間に激しい人口移動があっ
たにもかかわらず、特に是正策を行ってこなかったために、一票の格差は増大していった。
2-1.衆議院の選挙制度
小選挙区比例代表並立制(1994 年~)
・小選挙区制 300 名
各選挙区から一人だけを選び、最高得票者だけで議会を構成する方法。
長所…二大政党制になりやすいため政権が安定しやすい。有権者が候補者の情報を良く
知った上で判断できる。一つの政党から一人の候補者がでるため同じ政党での同
士討ちが尐ない。
短所…政治に反映されない死票が著しく増える。尐数政党の存在がほとんど不可能。人
口変化に伴い、選挙区の再確定を行う必要がある。
・比例代表制(拘束名簿式比例代表制)、180 名
小選挙区制に移行するときにもちいられた制度。各政党の得票率に応じて議席数が決ま
る。
長所…多数の意見が反映されるため死票が尐なく、小政党にも議席を得るチャンスがあ
る。
短所…小政党が分立し政権が安定しにくい。
拘束名簿式…各政党が決めた当選名簿順にしたがって、上から順に当選する方式。有権
者が選べるのは政党名のみ。
2-2.参議院の選挙制度
任期6年のうち、半数を3年ごとに選挙する。
・小選挙区選挙、146 名
・比例代表選挙(非拘束名簿式比例代表制)、96 名
・非拘束名簿式…有権者は政党名か候補者名を選び、候補者個人名の得票と政党名の得票
を合計し、各党に議席数を配分する方式。問題点として、一人で大量得票
できる候補がいれば、下位の候補者は大して支持されていなくても当選で
きるということがある。
3.年表に関する考察
今回作成した年表は、1989 年からの 20 年間のみを捉えたものであり、以下の考察もこ
の 20 年間に限ってのものである。また 1994 年の小選挙区比例代表制移行後を考察の主軸
とする。
2
3-1.格差是正に関する区割り変遷
◆衆議院
・1992 年区割り変更「九増十減」
・2002 年区割り変更「五増五減」
+ 1:埼玉 14→15,千葉 12→13,神奈川 17→18,滋賀 3→4,沖縄 3→4
-
1:北海道 13→12,山形 4→3,静岡 9→8,島根 3→2,大分 4→3
比例代表:南関東+1(21→22),近畿-1(30→29)
⇒20 都道府県 68 選挙区改定
最大 2.5 倍以上となった衆院の一票の格差が 2.2 倍以内へと縮小
また平成 12 年(2004 年)度の国勢調査を元に比例代表定数変更
◆参議院
・1994 年改正「八増八減」
+ 2:宮城 2→4,埼玉 4→6,神奈川 4→6,岐阜 2→4
- 2:北海道 8→4,兵庫 6→4,福岡 6→4
⇒1993 年最大格差 2.79 倍が 1995 年 2.263 倍へ縮小
・2000 年参院定数削減「六減四減」
選 挙 区:岡山 4→2,熊本 4→2,鹿児島 4→2
比例代表:全都道府県区域から四減
⇒比例代表選挙が非拘束名簿式に変更
2000 年最大格差 4.98 倍が 2001 年 5.06 倍へ拡大
・2006 年区割り変更「四増四減」
+ 2:千葉 4→6,東京 8→10
- 2:栃木 4→2,群馬 4→2
⇒2001 年以降 5 倍以上の格差が 2007 年(第 21 回参院選)で 4.86 倍に縮小
3-2.政府の是正への取り組み
この 20 年間に行われた衆参両院において是正への取り組みは大きく見て各 2 回ずつと考
えられる。
◆衆議院
前期:1991 年から 1994 年の小選挙区比例代表並立制移行決定まで
後期:2002 年の「五増五減」への取り組み
3
◆参議院
前期:1994 年の「八増八減」への取り組み
後期:2006 年の「四増四減」への取り組み
上記の取り組みの時期と国勢調査の時期には切り離せない関係性があるだろう
表 1-1:国勢調査実施と司法判断の相関関係について
年
国勢調査
衆議院
参議院
司法
最高裁
1990
大規模調査
第 39 回衆院選
違憲状態(930120)
地裁/高裁
3.18 倍合憲判決
(東京高裁 910208)
3.18 倍違憲判決
(大阪高裁 910527)
1992
九増十減
第 16 回参院選
違憲状態(960911)
6.59 倍合憲判決
(東京高裁 940427)
6.59 倍違憲判決
(大阪高裁 931216)
1994
小選挙区比例
八増八減
代表並立制
1995
小規模調査
2000
大規模調査
第 17 回参院選
第 42 回衆院選
衆院定数変更
2002
2005
参院定数変更
五増五減
小規模調査
第 44 回衆院選
2006
四増四減
⇒以上からもわかるように、衆参各院の総数が減尐したのは 1992 年の小選挙区比例代表制
導入以前であり、
現行の制度へ移行後の総数減尐は衆院参院ともに 2000 年の一回である。
定数是正へむけた総数の削減に主体は積極的になれないのではないだろうか。
4.政治における主体の関係
一票の格差にはどのような主体がかかわっているのであろうか。おもな主体として、立
法裁量権を持つ立法府、立法権行使に対する違憲立法審査権をもつ裁判所、立法府の構成
要因である国会議員を選ぶ選挙と最高裁判所判事に対する国民審査をする国民がいる。ま
た、国民の知る権利を守るマスメディアや市民運動団体も関連主体として存在する。下図
4
は、これらの主体の関係性を表したものである。
表 2-1 を見ると、立法府としての国会と裁判所の関係には、二つの特徴的な行動パター
ンがみられることが多い。その特徴とは、司法の圧力がどの程度、立法府にかかっている
のかによって立法府の一票の格差是正に対する行動のパターンが異なっているということ
である。
図 2-1
是正への圧力
市民運動団体
国民会議
立法府
最高裁判所
是
正
マスコミ
是正案
社
説
与
党
野
党
意
見
広
告
選
挙
世論
国民審査
第一のパターンはこのような歴史的背景から読み取ることができる。
政治腐敗改革として以前から、一票の格差是正をするための選挙制度改革の議論を推し
進めるグループと、中選挙区制の是正によって格差是正をはたそうするグループとに分か
れていた。1993 年 1 月 20 日、最高裁は 1990 年の 2 月 18 日の衆院選は、現行の選挙制度
による一票の格差が違憲状態との判断を示したが、事情判決で選挙は有効とされた判決が
下された。この判決により、国会の選挙制度改革が、新制度の創設にかじをきったことは
明らかである。判決後も、確かに、共産党は、当時の選挙制度である中選挙区制での抜本
的是正を目指していたが、これは尐数派の意見であり、そのほかの与野党は、基本的に小
選挙区と比例代表制による選挙制度の抜本的改革を行う方向に動いていた。
そのような、歴史的経緯をみると、図 2-2 のように表すことができる。それを見ると、
矢印が大きく描かれている。これは裁判所が現行の区割りによる一票の格差の状態は違憲
であるが、事情判決により再選挙はしないという圧力としては強い判決を出したことを示
5
している。
さて、次のパターンの歴史
立法府
図 2-2
的経緯を見てみよう。
2001 年 12 月 18 日、最高
裁判所は、2000 年 6 月 25 日
新制度に
の衆院選に対して、一票の格
最
高裁判
最高裁判所
差は立法裁量権内として合
憲の判断を下した。それに対
よる是正
是
案
所
し、世論に配慮してか、小泉
政権は「2 増 3 減」などの議
論を経ながら、
「5 増 5 減」
正
を閣議決定することにまで
与
野
党
党
至ることになる。しかし、自
民党内に、修正を求める意見があった。だが、衆院選挙区画定審議会の案を変更すること
は、党利党略と取られかねないとの批判もあった。自由党議員からは、反対の意見が出る
など、変更の該当議員からの反発が多かった。彼らとしては、人口比だけでなく、土地面
積も考慮にと述べる意見があった。
そのような、歴史的経緯
を見てゆくと、図 2-3 の
図 2-3
立法府
ようにあらわすこと がで
きる。それをみると、矢印
○増△減
○ 増 △減
は図 2-2 とは異なる。こ
の矢印は、圧力としては弱
い、もしくは、ない判決で
による是正
に よ る是
正
最高裁判所
是
ある、合憲を表している。
このパターンの特 徴と
して、変更区の該当議員の
正
抵抗が行われること であ
る。そのため、是正の改正
与
野
党
党
案を成立させるために、数
か月から、数年かかることがおおい。また、合憲とはいえ一票の格差についての最高裁の
判決が出た場合、国会は何かしらの是正をしている。
6
5.なぜ国会では抜本的是正がなされないのか
区割りの変更をすることは次回の選挙の当落にかかわる事態で、今までの支援者の援助
が得られないなどの理由から、区割りの該当者はなかなか納得しない。そのため、次回の
選挙での推薦候補として優先的に扱う、選挙資金などを提供するなどの見返りを用意しな
ければならない。また、今までは他の区であった同党議員とのバッティングが起こり、ど
ちらが小選挙区で推薦されるのかなどの問題が発生する。
その法案を出す主体がだれなのかという問題もある。政府立法で、公職選挙法改正を出
すと、党利党略などという批判が過去に出ている。また、議員立法で出すのは、同僚議員
の首を切る当事者となるため出しにくさがあるようである。
そのほかに、政治的思惑のために一票の格差が、後回しになされることがある。たとえ
ば、1989 年の自民党の衆院定数是正の見送りは、党内の結束を優先し見送られることとな
った。党内から是正案が小手先との意見があったためで、また、国民に対して政治改革の
結果を見せるには、定数是正よりも政治資金規制のほうが得策との思惑が働いたようであ
る。また、選挙関連で言えば、自民党の支持基盤が地方あることもまた、この問題を解決
困難にしている。図 3-1 を見るように、自民党
の支持基盤は、地方であることは明白である。そ
図 3-1
のため、議員定数是正は、地方の議席を減らすこ
とになるため、結局、自民党の不利益になること
が予想される。であるからして、自民党が抜本的
是正に対して踏み切れなかった原因ではないか
と考えられる。
過去三回(96.00.03)衆院選において、
自民党が必ず過半数を獲得した府県を示す
参考:ザ選挙(access091127)
http://www.senkyo.janjan.jp/
6.政治的アプローチからのまとめ
積極的な選挙制度の区割り是正や選挙制度そのものの是正などは、議員の利害関係がか
かわり、立法裁量権がうまく機能せず、国会などが是正の変革主体となるのは難しい。
7
Q2.一票の格差に対してどのような意見があるのか
1、議員定数是正訴訟に対する最高裁の判決
1-1、衆議院の定数訴訟に対する最高裁判決
1-2、参議院の定数訴訟に対する最高裁判決
2、格差是正をめぐるさまざまな意見
2-1、
「投票価値の平等」を確保する個人単位の平等論
2-2、
「都道府県(地方)の平等」を確保する地域対等論
3、一票の格差問題から見えてくるさまざまな問題点
3-1、選挙制度改革
3-2、日本の二院制と参議院のありかた
4、諸外国は一票の格差問題にどのように対応しているのか
5、司法的アプローチからのまとめ
1.議員定数是正訴訟に対する最高裁の判決
一票の格差を是正しようとする主要な動きは、「選挙無効訴訟」である。この裁判は、選
挙時の格差に対し、有権者や弁護士らがそれを不服とし、その選挙の無効(やり直し)を
求めるものである。最高裁は「昭和 51 年 4 月に違憲判決を出したとき、
『この訴訟は特殊
な訴訟で、定数是正訴訟と呼ぶ』
」として、この裁判を特別かつ重要なものとみなしている。
裁判では、そのときの公職選挙法が定める選挙区分によって生じる最大格差が、憲法に
違反しているかどうかが問われる。憲法に違反していないならば「合憲」
、逆に違反してい
るならば「違憲」となる。最高裁が「違憲」判決を下すには、①投票価値に著しい不平等
状態が生じていること、②その不平等の状態が相当期間継続していること、さらに、選挙
区分と議員定数を定めている公職選挙法は、その改正を国会にゆだねている(つまり公職
選挙法の改正は国会の裁量の範囲内にある)ので、③それにもかかわらず是正の措置をと
っておらず、そのことが国会の裁量権の限界を超えていること、という 3 つの条件が必要
になる。
以下では〔表1〕を参考にしながら、衆議院・参議院別に定数是正訴訟の最高裁判決に
ついてみていきたい。
表 1(日経新聞 2009 年 10 月 1 日より引用)
8
1-1.衆議院の定数訴訟に対する最高裁判決
衆議院では、76 年から「違憲」もしくは「違憲状態」の判決が続いていた(表1)。
「違
憲状態」とは、「『確かに議席配分は、憲法に違反するほど不平等であるが、しかし、国会
がその是正を検討する期間がすぎていない』というもので、違憲状態であることは認める
が、結果的には選挙を有効とする。
」という判決のことである。
しかし、86 年にはその前の選挙(83 年)で最大格差が 4.40 倍だったことを受け、国会
が中選挙区の定員を「8 増 7 減」とする是正措置をとり、その結果格差は 2.92 倍に減った
ため、この措置によって「不平等状態は一応解消され、違憲とまでは言えない」という旨
の判決を最高裁は下した。これが衆議院の定数訴訟におけるはじめての「合憲」判決にな
り、この判決以降、衆議院に関しては「3 倍未満は合憲」という最高裁判決の流れが定着し
ていくこととなった。
1-2.参議院の定数訴訟に対する最高裁判決
参議院は、64 年の初めての判決以降、「違憲」判決はでていない。最大格差が 6.59 倍だ
った 92 年の参院選に対する 96 年の「違憲状態」判決をのぞいては、
「合憲」判決が続いて
いる。しかしながら、合憲と判断されたその最大格差についてみてみると、衆議院よりも
高い水準で推移していることがわかる。
なぜ衆議院よりも高い格差を最高裁が容認しているのかというと、衆議院と比較した参
議院の特殊性を重視しているという事情がある。
参議院は、選挙区=都道府県という区割りであることに加え、「3 年ごとに(定数の)半
数改選」の規定(公職選挙法第 32 条)があるため、各選挙区(各都道府県)の定数は最低
でも2、つまり偶数配分にする必要がある。このことが、参議院の格差是正を難しくして
いるという意見が多くある。
また、このように都道府県ごとに定数配分がされていることから、衆議院が国民の代表
的性格を持つとするならば、参議院は地域の代表的性格を持つという意見がある。(衆議院
と参議院の区別については、日本は明確に区別されておらず二院制をとっている意味がないとい
う議論があるが、それについては後に触れる。)最高裁も過去の判例でこの点について触れて
おり、「公職選挙法は―衆議院議員とは異なる独特の性格を持たせるべく、(中略)都道府
県を基盤とする地域代表の要素を加味しようとする趣旨で、参議院の選挙制度を定めてお
り―(後略)
」と述べている(最高裁昭和 63 年 10 月 21 日第 2 小法廷判決より)。
このようなことから最高裁は、参議院の定数訴訟については、衆議院よりも違憲となる
ボーダーラインを低くしているという事情がある。
2.格差是正をめぐるさまざまな意見
2-1.
「投票価値の平等」を確保する個人単位の平等論
9
一票の格差を是正しようとする動きの中には、いくつか意見が存在する。ひとつは、単
純に人口に比例して選挙人数を振り分けることで、国民一人ひとりの投票価値の平等性を
確保しようというものである。この考えによって人口比例の定数配分にすれば、合憲性は
確保することができる。さらに、
「投票価値の平等」(注 1)や「国民の法の下の平等」
(14
条)
(注2)は憲法の要請であるから、国民の一票一票に格差が生じているという事実は憲
法に違反している、というのが定数是正訴訟を起こす人々の主張である。
しかしながら、この考え方は衆議院には合理性があったとしても、とくに参議院に関し
ていえば、単純に人口比例にして定数配分を変えると、たとえば人口の尐ないブロック同
士を統合する、といった選挙区の再編等が必要になり、いままで地方で築かれてきた地域
的基盤が崩れる恐れがある。また何より、参議院が衆議院とあまり変わらないものになっ
てしまい、参議院の「地域の代表的性格」を無視することは、その存在意義を失うことに
つながるという懸念もある。
2-2.
「都道府県(地方)の平等」を確保する地域対等論
ふたつめは、人口比例は無視し、それによって生じる巨大な格差を認めるために、国民
一人ひとりの「投票価値の平等」を確保することは難しいが、地域ごとに固定的に定数を
振り分けることで地域間の平等を確保し、地域間格差の是正につなげようというものであ
る。つまり、地域間の利害調整をはかり、参議院に「都道府県の代表」という性格をもた
せようというのであれば、参議院に関してはこの考え方には合理性がある。
しかしながら、これでは憲法の要請である「国民の法の下の平等」は完全に無視され、
国民は住所によって自分の一票の価値が決まり、格差の拡大を避けることはできず、最高
裁から「違憲」と判断される場合もある。
3.一票の格差問題から見えてくるさまざまな問題点
以上述べてきたように、われわれが検討したところ、格差の是正をめぐる意見の主たる
ものとしては、
「平等論」と「代表論」の2つがあるようである。しかし、これら 2 つはど
ちらかが正しくて、どちらかが間違っているというものではない。たとえば、いままで述
べてきたように、衆議院に関しては国民の法の下の平等を重視し、人口に比例させた定数
配分をして一票の平等を確保することが求められるが、参議院に関してはその役割を考慮
した是正策が求められるであろう。また、以下でみていく最高裁の判決からは、
「一票の格
差問題」を考えることは、同時に選挙制度の改革や参議院のあり方、日本の二院制につい
て議論することが不可欠となることが読み取れる。
10
3-1.選挙制度改革
最大格差が 4.86 倍だった 2007 年 7 月の参院選に対する 2009 年 9 月 30 日の最高裁判決
は、
「07 年 7 月の参院選当時、選挙区選出議員の定数配分規定は憲法 14 条 1 項等に違反し
ない」
(毎日新聞 2009 年 10 月 1 日)などとし、15 人の裁判官中 10 人の多数意見で「合憲」
の判断が下された。
しかしながら、
「投票価値の平等の観点からは、この定数配分規定の下でも、なお大きな
不平等がある状態」
「国会において速やかに、投票価値の平等の重要性を速やかに踏まえ、
適切な検討が望まれる。」
(同上)と、現行の選挙制度の抜本的改革にはじめてはっきりと
言及している。その具体的な是正策については、都道府県の枠をなくしたり、アメリカの
上院を参考にして都道府県ごとに定数2を固定するなどの案が出ているが、いずれにせよ、
今回の判決によって、より「投票価値の平等」を重視した選挙制度の抜本改正が国会に突
きつけられていることは間違いない。
3-2.日本の二院制と参議院のありかた
最高裁はこの判決において、選挙制度の改革に関してさらに参院のあり方についてもふ
れ、
「このような見直しを行うことについては、参議院のあり方をも踏まえた高度に政治的
な判断が必要」
(朝日新聞 2009 年 10 月 1 日)としている。
また、民主党の小沢幹事長は、
「参議院の場合は単に人口割で定数を決めていいのか。定
数是正と同時に、参院の機能をどう考えるべきかも併せて議論しなければならない」と指
摘している(日本経済新聞 2009 年 10 月 1 日)
。
さらに、早稲田大学の谷藤悦史教授(政治学)は、「現状の仕組みでは一票の格差の問題
はなくならず、参院のあり方を根本的に変える時期に来ている。日本は衆参両院の性格が
似ているが、これは世界でもまれ。衆院を国民代表とするなら、参院は都道府県の利害調
整を図る組織に転換させる必要がある。
」と述べている(読売新聞 2009 年 10 月 1 日)
。
このように、一票の格差問題には、地域間格差の問題や、日本の統治機構にかかわる重
要な問題が内包されている。時間はかかるかもしれないが、これからも慎重な議論が求め
られよう。
4.諸外国は一票の格差問題にどのように対応しているのか
先にも尐しだけふれたが、日本における一票の格差問題を考える上で、諸外国の対応は
参考になる。
たとえば、アメリカでは日本と同じく二院制を採用しており、上院(元老院)と下院(代
議員)からなる。日本の参議院にあたるのは上院の議員選出方法は、各州単位の小選挙区
制で、各州から必ず2名選出することを憲法で規定している。この方法は前述2-2.で
述べたように、人口比例の定数配分ではなく、各州から議員を必ず 2 名選出しなければな
らないので、巨大な格差が生じる。実際、2006 年の上院選では、カリフォルニア州は有権
11
者 3,645 万 7,549 人なのに対しワイオミング州は 51 万 5,004 人であり、その格差は 70.79
倍になった。
しかしながら、このように上院では巨大な格差を認める一方、下院では一票の格差に関
して非常に厳しい対策をとっている。日本の衆議院に当たる下院の議員選出方法は、各州
によって定数はばらばらで、人口比例の定数配分となっている。また、その対策の厳しさ
の顕著な例として、1983 年の連邦下院議員選挙で、議員 1 名選出のニュージャージー州で
生じた 0.993 倍という格差(同州の中での有権者の数が、第 6 選挙区:52 万 3,798 人に対
し、第 4 選挙区:52 万 7,472 人)に対し、米国連邦最高裁は「憲法違反により無効(違憲)
」
の判決を下した。
これが日本にすぐさま適用できるかといえばそうではなく、慎重に検討していくことが
必要であるが、谷藤教授が述べたように、衆参の住み分けが明確になされていない日本の
二院制を見直すにあたって、また、下院の例にある一票の格差の是正に関しても、アメリ
カのこの事例は参考に値するであろう。
また、フランスでは 2009 年 1 月に一票の格差を是正するための独立評議会が設置され、
選挙区画定又は議席配分を修正する公式見解を発表した。この機関は、どの政府機関にも
属さないが、合成組織などの在り方を改革する権限を有している。
5.司法的アプローチからのまとめ
一票の格差をめぐっては、
過去 30 年以上つづく定数訴訟に対する最高裁の判決を中心に、
政治家、民間団体、学者、弁護士などさまざまなところから議論がされている。そして中
心となる定数是正訴訟はこれからも継続していくだろう。また、最新の最高裁判決で選挙
制度の改革に明確な言及がされたことは、大きな転換点である。この問題の今後としては、
「投票価値の平等」
、「地域間の利害調整」といった複数の観点からの格差是正の議論とと
もに、参院のありかたや二院制の見直しについても議論していくことが求められている。
また、最後に私たちの意見として、衆議院・参議院の違いを考慮せずにただひたすら一
票の格差是正を追求していいのか、また、そもそも日本にはフランスの様な一票の格差を
是正する第 3 者的機関がない、つまり一票の格差を抑制する「公的装置・制度」が確立さ
れていないのではないか、ということを述べておきたい。
【本文注】
1「投票価値の平等」について憲法で言及されている部分は、①「両議院の議員の定数は、
法律でこれを定める」
(43 条 2 項)
、②「両議院の議員及び選挙人の資格は、法律でこれを
定める。ただし、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産または収入によって
差別してはならない。
」
(44 条)
、③「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関す
る事項は、法律でこれを定める。
」
(47 条)の三箇所。
12
2「すべて国民は法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により
政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」
Q3.国民からみた一票の格差
一票の格差に対して国民はどのように考えているか。
Q3-1
2009 年の意見広告はどのようなものか
Q3-2
意見広告の効果はどれほど期待できるか
Q3-3
2009 年の国民審査の結果はどのようなものであったか
Q3-4 過去の意見広告と国民審査の結果は?
Q3-5 意見広告の効果とは?
Q3-6 一票の格差是正に対する反対意見にはどのようなものがあるか。
Q3-7 まとめ
Q3-1
2009 年の意見広告はどのようなものか
一人一票実現国民会議(一票の格差を解消することを目指す弁護士らが結成)が 2009 年 7
月 27 日、記者会見を開き、一人一票実現国民会議の立ち上げをあきらかにした。
かれらの手で 2009 年 7 月~8 月にかけて新聞に意見広告が掲載された。2007 年の最高
裁大法廷判決で衆院選の一票の格差を是認した裁判官(涌井紀夫、
那須弘平)を 2 人名指しし、
二人の裁判官を不信任とするよう審査権行使を HP や新聞報告で呼びかけた。
■意見広告を出した理由
最高裁判官に対する国民審査権は、日本の現状の下では、一人一票を実現するための唯
一の方法である。
国民審査をするにあたって、審査対象となる裁判官の判断材料が国民に対して与えられ
ていない。知らない人の評価はつけられない。
Q3-2
意見広告の効果はどれほど期待できるか
一人一票実現国民会議の発起人である、升永英俊氏の実験↓
13
25 人の女性に、
『
「女性の選挙権を 0.9 票とし、男性の選挙権を 1 票とするという公職選挙法があった
と仮定します。更に、国民審査の対象の裁判官は、合憲意見の裁判官と違憲意見の裁判
官の 2 派に分かれたと仮定します。この公職選挙法(仮定)を合憲・有効とする合憲派の
裁判官を不信任としますか、信任としますか?」
という質問をしたところ、25 人全員が『「合憲派の裁判官に不信任の票を投じます』と
答えた。(2009 年 『自由と正義』日本弁護士連合会 p125)
ここから、
「公職選挙法により 1 票未満の票しか与えられていない地域の有権者は、ど
の裁判官が合憲意見の裁判官であるという情報を知れば、その圧倒的多数が合憲意見の裁
判官に不信任の票を投じると考えられる。」(2009 年
『自由と正義』 日本弁護士連合会
p126)
つまり、国民が裁判官の情報をより認識した場合、不信任の票を投じる可能性は高まると
考えられる。
Q3-3
2009 年の国民審査の結果はどのようなものであったか
2007 年の最高裁大法廷判決で衆院選の「一票の格差」を合憲とした涌井紀夫氏、那須弘平
氏両裁判官の罷免率が突出した。一票の格差によって一票の効果が小さくなる東京では 2
人の罷免可の割合が 11%を超えている(投票数 30%増)、千葉では投票率 40%増、神奈川で
は 39%増と顕著に差が出ていて、意見広告の効果がはっきりと現れたといえる。この結果
は、有権者に判断材料が与えられれば、国民審査が実行あるものに変わる可能性を示した
といえる。
『発起人である升永英俊弁護士は「一票の格差に対する裁判官の考え方がもっと
知れ渡れば、今後は更に大きな差が出て、一人一票を認めない裁判官は罷免されるでしょ
う」と話す。
』(2009 年 東京朝刊 11 頁)
14
図 1
2009 国民審査罷免数(全国)
図 2
2009 国民審査罷免数(東京都)
引用元:
「一人一票国民会議」ホームページ http://www.ippyo.org/index.html
15
2009 年国民審査罷免数(全国・東京)
罷免要求票数 (全国)
罷免要求票数(東京都)
(全有効投票数:66,939,295 票の中の)
(全有効投票数:6,699,766 票の中の)
桜井 龍子 (行政官)
4,656,462 票 (6.96%)
598,532 票 (8.93%)
竹内 行夫 (行政官)
4,495,571 票 (6.72%)
596,602 票 (8.90%)
涌井 紀夫 (裁判官)
5,176,090 票 (7.73%)
754,165 票 (11.26%)
田原 睦夫 (弁護士)
4,364,116 票 (6.52%)
581,123 票 (8.67%)
金築 誠志 (裁判官)
4,311,693 票 (6.44%)
566,264 票 (8.45%)
那須 弘平 (弁護士)
4,988,562 票 (7.45%)
733,824 票 (10.95%)
竹﨑 博允 (裁判官)
4,184,902 票 (6.25%)
562,926 票 (8.40%)
近藤 崇晴 (裁判官)
4,103,537 票 (6.13%)
553,875 票 (8.27%)
宮川 光治 (弁護士)
4,014,158 票 (6.00%)
536,602 票 (8.01%)
氏名 (出身・告示順)
図 3
2009 年国民審査罷免数(全国・東京)の票
引用元:
「一人一票国民会議」ホームページ http://www.ippyo.org/index.html
09年国民審査の資料。図 1~図 3 において全国に比べて人口が多く一票の格差の影響を大
きく受ける東京都では涌井裁判官は宮川裁判官の罷免票よりも 3 割ほど多いなど、一票の
格差を合憲とした涌井、那須の両裁判官への罷免要求票の割合が突出している。このため、
国民審査での罷免要求の最も大きな判断基準は一票の格差への態度であったことが分かり、
また両裁判官への罷免要求票は罷免となる五割を大きく下回ってはいるが、人数平均で他
の裁判官と比べ 77 万 987 万人分の差がある。また、東京都のほか、千葉、神奈川でも同じ
傾向が見られた。
年度
意見広告
掲載先と日付
活動団体
2000 衆
あり
・朝日東京版 00/4/14 北海道版
・読売東京版 4/23
4/14 名古屋版 4/16 西部版 4/17
大阪版 4/20
大阪版 4/19
・産経 4/29
一票の格差を考える会
・週刊新潮 4/27 号
・週刊文春 5/18 号
2003 衆
なし
-
-
2005 衆
あり
・産経東京本社版 04/6/13
一票の格差を考える会
2009 衆
あり
・朝日 7/30・8/6・27・28
・東京 8/27
・日経 8/6・27
・中日 8/27
・産経 8/27・28
・北海道 8/29
・読売 8/11・27
16
・沖縄タイムズ 8/29
・毎日 8/27
・沖縄新報 8/28
・フジサンケイビジネス
・夕刊フジ 8/28
アイ 8/28
・日刊ゲンダイ 8/28
一票の格差を考える会
一人一票国民会議
Q3-4 過去の意見広告と国民審査の結果は?
次に、2009 年だけでなく、過去の意見広告の有無と国民審査の結果から、意見広告が持
つ効果をより具体的に見ていく。
図 4
過去 4 回の衆議院選における意見広告
(朝日、産経、日経、読売、毎日新聞各電子ジャーナルとインターネットにて調査)
意見広告と国民審査の結果
2009(意見広告あり、投票率 66.8%)
・一票の格差を合憲とした裁判官・・・2 名 平均罷免要求率 7.23%
・違憲または立場不明の裁判官・・・7 名
平均罷免要求率 6.51%
平均罷免要求率差 0.72%
→人数換算 約 77 万 978 人
2005(意見広告あり、投票率 65.49%)
・一票の格差を合憲とした裁判官・・・0 名 平均罷免要求率 7.95%
2003(意見広告なし、投票率 58.12%)
・一票の格差を合憲とした裁判官・・・0 名 平均罷免要求率 7.00%
・一票の格差を違憲とした裁判官・・・1 名 罷免要求率
6.92%
平均罷免要求率の差 0.08%
2001(意見広告あり、投票率 60.49%)
・一票の格差を合憲とした裁判官・・・5 名 平均罷免要求率 9.66%
・違憲または立場不明の裁判官・・・4 名
平均罷免要求率 9.05%
平均罷免要求率の差 0.61%
Q3-5 意見広告の効果とは?
過去 4 回の国民審査における考察
2009 年だけでなく過去の衆議院選前においては 2000 年、
2005 年に意見広告が見られた。
意見広告が出ている時の国民審査は一票の格差を合憲とした裁判官が審査対象になってお
り、2000 年、2009 年には一票の格差を合憲としている裁判官の罷免要求票が高くなってい
る。また、2003、2005 年には国民審査対象に一票の格差を合憲とする裁判官がいなかった
為、全員の罷免要求率にほとんど差が出ていないと推察できる。よって 2000 年、2009 年
は国民審査の争点が主に一票の格差に関する判決にあったことが考えられ、それを促すた
17
めに市民運動としての意見広告が機能したことが考えられる。
2009 年には先に示しているように国民審査において最も意見広告が活発でかつ一票の格
差を合憲とする裁判官・その他の裁判官で罷免票に大きな差が現れているが全体における
罷免票の割合は例年通りである。これは 2009 年衆議院選の注目度が高く、投票率が増加し
たことが一要因として考えられる。
意見広告は国民審査の争点を主に一票の格差問題へと向けることができ、投票数の増加
をもたらすことが期待できる運動である。しかし国民審査で裁判官を罷免するのに必要な
票は全体の過半数の票であり、現状では「一票の格差への判断」という点だけで裁判官を
罷免することは極めて難しい。それでも罷免票に 70~80 万人の差をもたらしたことは社会
的な影響力を持つことができる。まず、意見広告によって国民に認識が広まれば、訴訟な
ど国民の中で一票の格差是正への気運が広がることが第一に考えられる。第二に、国民審
査で罷免票を多く得た裁判官は最高裁の長官に選ばれる可能性が尐なくとも低くなると考
えられることである。今回の意見広告は国民による一票の格差是正という市民運動として
おおいに機能したと言えるだろう。裁判の結果が現在の格差で「合憲」としている以上、
問題提起の主体として国民が果たす役割は大きい。
Q3-6 一票の格差是正に対する反対意見にはどのようなものがあるか。
①地方は都市に比べてハンディキャップがあるので、地方に有利の格差があって当然では
ないか?
⇔それはあくまでも経済対策で対応すべきではないか。
②たびたび区割り変更があると、議員が築いてきた地盤がそのつど失われ、地域に密着し
た政治がしにくくなる。
⇔・それは新人議員には当てはまらないこと
・議員の利害関係より国民の利益を優先すべきではないか。
③一票の格差是正のために選挙区を調整すると、北海道などでは、広大な選挙区がさらに
広くなり、
「金のかからない選挙」の理想に反する。
⇔・逆に東京などでは、選挙区が狭くなり、
「金のかからない選挙」が実行できる。
・選挙区が広かろうが狭かろうが、そもそも選挙に金をかけるべきなのか。
など反対意見もあるが、さらにその反対意見もある。
Q3-7 まとめ
・国民の間では、一票の格差問題を受け、格差是正を求める市民運動として意見広告があ
り、それは社会的に影響を与えることに有効な手段である。
18
・一票の格差問題は、様々な意見や問題点があり、難しい問題である。
・しかし今後国民の間でこの問題の内容が広く認識されれば、世論が格差是正の方向に向
かうことが予想される。
~コメント~
一票の格差は是正すべきだが、それよりも地方ごとの経済格差が大きすぎることのほうが
問題でと感じる。まず、地方間の格差を解消するシステムを構築し、それから全体の格差
について考えていったほうがいいと思う。(社会:中野圭子)
憲法で国民の法の下の平等や投票価値の平等が保証されている以上、それは国民の権利と
して守られるべきであり、この観点から一票の格差は是正されるべきである。しかし、是
正にあたっては[Q2]の中で論じてきたように、参議院の在り方や二院制、地域間格差の問
題など、同時に考えなければならない問題があることを忘れてはならない。また、この問
題に対する活発な世論形成がされるために、一票の格差が生じていることを広く国民に認
知させる必要がある。一部の、裁判を起こしている民間団体や法律家らだけでなく、国民
自身が自分達の問題として一票の格差について考えるべきだ。そうすることが、より望ま
しい、合理的な格差是正へと向かうきっかけになるだろう。(政策:高橋夏央)
一票の格差は衆参の違いや地域間格差を考慮すると難しいところではある。しかし、格差
は国民の法の下の平等に背くこと、同じ二院制を採用しているアメリカでは対策を講じて
いることなどを踏まえると、私は一票の格差に反対である。(社会:井上加奈子)
一票の格差解決の困難さは、さまざまな問題(地域間格差、衆院と参院の違いの議論)
などが複合的に折り重なっている。是正は行われるべきであるが、それと同時進行で、上
の様々な問題を解決してゆかなければ利害関係者が納得する形で決着することはできない
と思われる。(社会:廣瀬勝之)
一票の格差はもちろんあってはいけないと思います。選挙は、わずかな差で勝敗がつくこ
ともあります。すると一票の格差が結果に大きく響くことになってしまいます。
それで民主主義といえるでしょうか。
一票の格差問題は私たち自身の問題です。一人一人が解決に向かって、国民審査をしっか
りする、一票の格差について理解するなど、なんらかのアクションをおこすべきだと思い
ました。(政策:大羽史子)
一票の格差を考える場合、私が重視するのは「投票価値の平等」である。そのため是正は
すべきであるし、今まで行われてきた政府の是正案には納得できないものが多い。変革主
19
体となるべき立法府、その多数派である与党政権が変化した今こそ、また大規模な国勢調
査を来たる 2010 年に控えた今こそ、小手先の区画整備ではなく、衆参のあり方を考えた抜
本的改革を期待したい。
(政策:小林春菜)
「一票の格差」問題には、政治家の利害関係や司法の対応など様々な問題を含んでいるが、
一番厄介なことは、この問題の見えにくさから生じる国民の認知の低さだと思う。私
たちが、
「一票の格差」に対する問題意識をもち、国民審査などの行動を起こすことが是正
への近道になるのではないだろうか。(政策:麻賀直樹)
今回の研究では一票の格差の賛否についても様々な意見を見ることができたが、「今すぐ
是正が必要だ」と考えるには尐し物足なかった。しかし、一票の不平等について、そして
何をもって一票の格差を是正とするかは、より重要な問題として問われる必要があると思
う。(政策:南克樹)
私は一票の格差は是正するべきだという意見です。なぜなら、
「地方格差是正のために一票
の格差は容認するべきだ」等の意見はあるけれども、だからといって、民主主義のルール
である一人一票の原則を守らなくていいとはならないと思うからです。
(社会:田中宏樹)
「一票の格差」問題ひとつとっても、掘り下げると社会構造の複雑さが見えてくる、とい
うのはとても興味深かったです。有権者の一人として、この問題に対して興味関心を持て
るようになりました。
(政策:若山泰樹)
1 票の不平等問題は学校の教科書をはじめかなり前から問題視されており自分も何がなん
でも是正しなければいけないと思っていた。ただし今回の平等・地域対等論を踏まえると
話は尐し変わると思う、今は衆参の違いを考慮せずにただ単純に1票の平等を追求するこ
とに対して疑問がある(社会:木下将平)
【参考文献・HP】
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〔1976,5〕毎日新聞社
・ 佐藤功『議員定数不均衡違憲判決の問題』(法学セミナー)〔1976,6〕日本評論社
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20
学セミナー)〔1984,1〕日本評論社
・ 越山康、白井敏男『国会の「定数是正」にもの申す!』(朝日ジャーナル)〔1984,2〕朝
日新聞社
・ 金光奎『議員定数是正をめぐる危険な企図』(前衛)〔1984,4〕日本共産党中央委員会
・ 阿部照哉『一票の格差と法の下の平等』(ジュリスト)〔1985,3〕有斐閣
・ 渡辺良二『国民主権と民主主義の土俵はいかに修復されるべきか』(法セミ)日本評論社
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・ 住吉広行『一票の格差を最小にする議員定数の自動決定システム』(松商短大論叢)
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・ 山中敏『政界深層レポート 一票の格差置き去りに進む参院選改革』(財界にっぽん)
〔2000,11〕財界ニッポン社
・ 柿澤弘治『特別寄稿 今こそ「一票の格差」是正を』(「政界」)〔2000,12〕政界出版社
・ 保坂和雄『一票の格差や選挙制度を考える』(歴史地理教育)〔2001,3〕歴史教育者協議
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経済同友会
・ 不明『なぜ一票の格差は縮まらないのか』(経済同友)〔2003,11〕経済同友会
・ 松沢成文、五十嵐啓二、熊井章ほか『一票の格差是正を目指して 座談会 投票価値の平
等は民主主義の原点』(経済同友)〔2003,11〕経済同友会
・ 不明『一票の格差是正を目指して 有識者による寄稿 一票の格差について私も言いた
い!』(経済同友)〔2003,11〕経済同友会
・ 鈴木宜則『議員定数不均衡の限界』(鹿児島大学教育学部研究紀要.人文・社会科学編)
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・ 櫻井よしこ『オピニオン縦横無尽(528)政権政党に有利に働いた「一票の格差」の合憲
判決 最高裁は厳しく自戒…』(週間ダイヤモンド)〔2004,1〕ダイヤモンド社
・ 越山康、山口邦明『
「議員定数是正訴訟」その軌跡』(月報司法書士)〔2007,5〕日本司法
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・ 井上禎男『最新判例演習室 憲法「一人別枠方式」と「一票の格差」―最大判 2007.6.13』
(法学セミナー)〔2007,9〕日本評論社
・ 川浦昭彦『予算ュートラルな議席配分の実現-「一票の格差」の解消がもたらすもの』
(学士会会報)〔2008,3〕学士会
・ 三輪和宏、河島太朗『参議院の一票の格差・定数是正問題』(調査と情報)〔2008,3〕国
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『一票の格差』についての一考察』(自由と正義)〔2009,8〕日本弁護士会
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・ 最高裁時の判例Ⅴ(ジュリスト増刊)
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〔2003〕経済同友会
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朝日新聞
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〔2009/9/17〕東京新聞
・ 『一票の格差を考える会』 http://www.ne.jp/asahi/ippyou/kakusa/
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アクセス日:2009 年 11 月 12 日
・ 『一人一票国民会議』 http://www.ippyo.org/
※アクセス日:2009 年 11 月 12 日
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