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山崎断層帯の深部不均質構造と地震発生特性(続き)
2010.09.14-15 地震研究所研究集会 「リソスフェアの短波長不均質性のイメージングとモニタリングに関する研究の高度化」 山崎断層帯の深部不均質構造と地震発生特性(続き) 西上欽也・澁谷拓郎・片尾 浩(京大防災研) ・山口 覚(神戸大) ・儘田 豊(JNES) 稠密地震観測網のデータを用いて内陸活断層とその周辺における詳細な不均質構造を推定 することは、地震発生メカニズムを理解するうえで、また地震発生予測の高度化や、強震動予 測の高精度化をはかるうえで重要である。ここでは、昨年に引き続き、山崎断層帯における研 究について紹介する。 近地地震コーダ波に含まれる散乱波エネルギーの揺らぎを、一次等方散乱モデルの仮定のも とでインバージョン解析することにより、地殻内における相対的な散乱係数の三次元空間分布 を推定する。山崎断層帯周辺において推定された散乱係数分布について、JHD 法による詳細な 震源分布、b 値の空間分布、三次元地震波速度構造、断層トラップ波の解析による破砕帯構造、 および AMT 調査による比抵抗構造モデル等と比較・考察し、断層帯の詳細な深部不均質構造と 地震発生特性の理解をめざす。 解析には、山崎断層帯周辺に設置された稠密地震観測網(5-10km スパン、32 点)による最 近 2 年間のデータ(2008 年 2 月~2009 年 12 月) 、および定常観測網による過去 2 年間のデー タベース(2002 年 1 月~2003 年 12 月)を合わせ用いた。解析に用いた観測点数は 60 点、地 震数は 121 個(1.5 ≤ M ≤ 3.7) 、波形トレース数は 2,391 である。波形には 7-15Hz のバンド パスフィルターをかけ、0.5 秒間隔でコーダ波エネルギーの揺らぎを算出した。 図 1 山崎断層帯周辺における地震波散乱係数(相対値)の分布。深さ 0~15km の平均 値を示す。○:散乱係数が平均より大きい、●:平均より小さい。緑のドットは地震分 布(気象庁データ) 。矩形領域内の鉛直断面を図 2 に示す。OF 等については図 2 参照。 1 解析では一次等方散乱モデルを仮定するが、このモデルが有効に適用されるように、コ ーダ波の経過時間を発震時から 30 秒以内に限定した。インバージョンに際しては、解析領 域を水平、深さ方向とも 5km のブロックに分割した。震源データは気象庁の一元化震源デ ータを使用し、一次散乱波の走時計算にはこの地域の水平成層構造を使用した。深さ 0~ 15km における平均の地震波散乱係数の分布を図 1 に、また、山崎断層帯に沿う方向の鉛 直断面を図 2 に示す。 得られた結果は、山崎断層帯の全域(北西~南東方向に約 80km)に沿って地震活動度が 高く、また、地震波散乱係数も断層帯全域の深さ 0~15km に沿って相対的に高い傾向を示 す(図 1、2) 。断層帯を構成する各断層の端部や境界において散乱係数が大きい傾向が見ら れる(図 1) 。断層帯に直交する鉛直断面図を見ると、大原断層(OF)および土万断層(HF) の地表位置と浅部の散乱領域および地震分布の対応がよく、これらの断層では、断層面が 地表付近から深さ 15km 付近まで鉛直に延びる可能性が示唆される。大原断層の西部に設 置された断層直交アレイでは、同断層東部に発生した地震に対して断層トラップ波と考え られる波群が観測された。今後、他の解析結果も総合し、山崎断層帯の深部構造と地震発 生特性について検討する。 謝辞:本研究は応用地質(株)からの受託研究「山崎断層帯における震源断層評価手法の検討」 (原子力安全基盤機構:JNES によるプロジェクト)として実施されている。本研究による稠密 観測網データに加えて、大学、Hi-net(防災科学技術研究所) 、気象庁、産業技術総合研究所 の地震観測データ、および気象庁による一元化震源データを使用した。 図 2 山崎断層帯に沿う相対的な散乱係数の鉛直断面(○:散乱係数が平均より大きい、 ●:平均より小さい) 。赤い+は気象庁一元化震源データによる地震分布(2002~2003 年、および 2008~2009 年) 。OF:大原断層、HF:土万断層、YF:安富断層、KF:暮 坂峠断層、BF:琵琶甲断層、MF:三木断層。 2