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我が国の情報機能(内閣情報調査室)

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我が国の情報機能(内閣情報調査室)
資料1
我が国の情報機能
1.情報機能の強化に関する各種の提言
2.官邸における情報機能の強化の方針
3.我が国の情報体制
4.情報評価書に基づくインテリジェンス・サイクル
5.政府におけるカウンターインテリジェンス機能の強化の動き
6.カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針(概要)
21.2.24
内閣情報調査室
情報機能の強化に関する各種の提言
【政策との連接、集約・分析・共有機能の強化】
○
平素から内閣情報会議、合同情報会議等の活用により、政府の基本方針、重点項目
に沿った各省庁の情報収集・分析、その成果の検証・評価及び情報共有を推進する必
要がある。[安防懇 p16]
○
「どのような目的のために、どのような情報を必要とするか」という「情報要求」
を適切に提示するための機関として、現在の安全保障会議と並ぶ閣僚級の「情報会
議」(仮称)を設置する。[自民 p1]
重要情報が政策判断によって影響されず、独立性の確保という観点から総理・官房
長官に必ず伝わるようにする。このため、内閣情報官を官房副長官と同等クラスに格
上げするとともに、総理・官房長官に対するインテリジェンスに係る報告については、
できるだけ内閣情報官を関与させる。[自民 p1]
現在、内閣情報会議の下に置かれている合同情報会議に加えて内閣情報委員会を設
置する。内閣情報委員会には、外務省(国際情報統括官)、防衛庁(防衛局・情報本
部)、公安調査庁、警察庁、内閣衛星情報センター、新設の対外情報機関、海上保安
庁、財務省、経済産業省、金融庁(必要に応じて厚生労働省、環境省等を加える)が
情報コミュニティとしてメンバーとなる。[自民 p2]
○
官邸の意思決定を支える情報集約・評価の枠組みとして、内閣・合同情報会議を活
性化する必要がある。
[PHP p5]
内閣官房にインフォーメーションやインテリジェンスを集約し評価する体制が弱い。
内閣・合同情報会議も十分に機能しておらず、インテリジェンス・コミュニティは未
成熟な段階にある。[PHP p26]
○
政府の安全保障に関わる情報力を格段の強化するため、総理直轄の国家情報局を設
置し、内外の関連情報を一元的に集中管理し、国策策定に資する情報資料を整備する。
[平和研 p5]
1-1
○
内閣情報会議を主催する官房長官の指名に従って、高度の知見を有し全ての情報に
接することが可能な各省庁のスタッフを内閣情報官の下に集めることなどにより、内
閣として情報の集約・共有を強化すべきである。
[安防懇 p16]
○
新設の内閣情報官の下に、外務省、防衛庁、警察庁、公安調査庁、経済産業省等や
民間からの出向の情報評価スタッフとして情報補佐官(仮称)を置き、情報の総合評
価に当たらせる。情報補佐官にはこれら官庁のエース級の優秀な支援スタッフを充て
る。その際、関係省庁は情報補佐官に全ての情報を提供するようにする。[自民 p12]
○
合同情報会議の下に、「評価スタッフ」を設置し、有能な人材をあてることである。
そして、関連省庁・組織が保有する全てのインフォメーションやインテリジェンスに
アクセスする権限を与えて、(中略)それら集約・評価して評価のドラフトを作成す
ることとする。ドラフトは、合同情報会議の承認で最終的な「インテリジェンス評
価」となり、閣僚や政府高官に配布される。
[PHP p6]
【収集機能の強化:対外ヒューミント】
○
非国家主体などの、外部からの認知が困難な新しい脅威に対しては、人的情報手段
による細やかな対応の重要性が高まる。このため、地域専門家等や海外の情報専門家
との協力など、人的情報手段の有効活用を早急に進めるべきである。[安防懇 p15]
○
特殊な対外人的情報収集活動を行う固有の機関の設置は、政府全体として取り組ん
でいくべき、今後の重要な検討課題である。(中略)このような機関は、外務大臣の
下に置くのが妥当であろうと考える。[情報懇 p4-5]
○
対外情報収集のために、新設の内閣情報官の下(内閣情報調査室内)に、内閣衛星
情報センター並びの実働部隊として対外情報業務に特化した情報機関を新設する。
[自民 p2]
○
ヒュミントは、シギントと並んで、ターゲットの意図まで明らかにすることができ
るため、テロ組織やならずもの国家などの脅威に対抗する上で有効なインテリジェン
スである。(中略)内閣官房の情報集約・評価体制が確立され、さらにわが国として、
どのような情報収集手段が必要が見極める中で、市民社会の規範との整合性・異質性
に配慮しながら、積極的にヒュミント強化策について検討を進めていくべきである。
[PHP p12]
1-2
【収集機能の強化:画像情報、電波情報】
○
衛星等の技術的手段により入手した画像情報、電波情報などは、周辺諸国の軍事動
向を把握するために有用であるとともに、国際テロなどの新たな脅威に対処するため
にもきわめて有効である。(中略)情報収集衛星のさらなる能力向上を図るとともに、
これら技術的に収集された情報について広く安全保障・危機管理に係る情報収集手段
として、秘密保全に留意しつつ、政府の意思決定に、より適切に活用するべきである。
[安防懇 p15]
○
情報衛星等の技術的な情報活動の強化(中略)を図る。[自民 p3]
○
衛星の機数の増加、解像度や敏捷性などの性能向上をはかると共に、分析官の能力
を一層高め、かつ人数を増やすことが必要である。[PHP p11]
技術的ブレークスルーによる地理的制約の緩和の可能性に留意しつつ、他国との協
力を追求すべきである。また市民の権利との関係などについて整理しつつ、国内の行
政的傍受についてもオープンに議論することが必要である。
[PHP p12]
【収集機能の強化:公開情報】
○
日本では財団法人ラヂオ・プレスが旧共産圏などを対象に海外のラジオ放送をモニ
ターしているが、(中略)モニタリング対象の拡大や海外の類似機関との協力を検討
すべきである。[PHP p12]
プレスやインターネット上に溢れる公開のインフォメーションを取捨選択し、イン
テリジェンスを生産する能力を高度化していく必要がある。
[PHP p12]
【基盤整備】
○
政府部内で人材の確保、養成に努め、官学の交流や政府とNGOの協力等を通じて、
国全体として専門的な知見を蓄積・総合化し、効果的に活用するよう努めるべきであ
る。[安防懇 p16]
○
情報分野におけるキャリア確立のため、情報関連省庁の人事交流を積極的に推進す
ることが重要であり、適性と意欲のある人材が情報分野に特化しながら、キャリア・
アップしていけるよう、制度として他の情報組織への出向を昇進の条件とすべきであ
る。[自民 p3]
1-3
○
情報共有を常態化するには、縦割り分業を好む「組織文化」を刷新する必要がある。
そのためには、①情報組織間で総登記簿の人事交流を実施すること、②各組織共通の
教育訓練をほどこし、インテリジェンス・コミュニティの全体像を理解させること、
が不可欠である。[PHP p7]
情報組織を横断的に結びつけるオンライン・ネットワークを導入し、インテリジェ
ンス・コミュニティ内の迅速な情報共有を可能にする。
[PHP p7]
政府内に分析者が不足している現状では、民間から中途採用によって補うことも必
要であり、専門的な分析者の中途採用を積極的に行えるよう人事制度を見直すべきで
ある。(中略)学会やNGO、企業などとの協力を通じて、政府外の専門的な知見を有効
活用し、もって分析能力の強化に努めるべきである。[PHP p13]
【情報の保全の徹底:情報保全基準】
○
安全保障・危機管理情報を扱う関係者に共通の厳格かつ明確な情報保全ルールを作
り、実施することが不可欠である。
[安防懇 p16]
○
行政府においては秘密指定基準やその扱いにつき各省庁に共通の規則を定めること
が求められる。[情報懇 p5]
○
各省共通の情報保全基準(クリアランス)の制定、(中略)音声・電磁波の漏洩防
止あるいはデータベースへの侵入防止対策等における最新ハイテク技術の活用を図る。
[自民 p3]
○
機微な情報を扱う関係者に限って適用される情報保全規則を確立する。[PHP p9]
【情報の保全の徹底:秘密保全法制】
○
機密情報漏洩に関する罰則の強化も検討すべきである。
[安防懇 p16]
○
秘密保全の法体系の整備は、国家として必要案情報の共有、総合調整を可能とする
必要条件である。[情報懇 p5]
○
国家の秘密に接する全ての者に秘密保持を義務づける法体系(罰則規定を含む)の
新設・整備等を行う。
[自民 p3]
○
秘密の範囲や対象者を限定しつつ、保全強化のための立法措置を検討していくべき
であろう。
[PHP p15]
1-4
【その他:国際協力】
○
国際的なネットワークを有する新たな脅威に効果的に対処するには、情報面でも国
際協力を強化する必要がある。その際、諸外国から価値のある情報を得るためには、
日本が自身の情報収集・分析能力を高め、ギブ・アンド・テイクの関係を築くことが
必要となる。[安防懇 p16]
○
グローバルな広がりを持つテロや大量破壊兵器拡散、麻薬取引などに対処る煮は、
国際的な情報協力が有益であり、一層積極的に推進すべきである[PHP p15]
【その他:国会】
○
国会に情報委員会(仮称)を儲け、この委員会のみにおいて秘密を含む「情報」を
審議し、その秘密を確実に保護するための法律等の所要の措置を構ずる必要がある。
[自民 p3]
○
インテリジェンス委員会を国会に設け、国会議員の中から選任された委員が政府の
インテリジェンス活動を監視することを可能にするとともに、委員に対しては重い罰
則を伴う高度な守秘義務を課し、抜き打ち検査を行うようにすべきである。[PHP
p13]
(出典一覧)
安防懇:
「
「安全保障と防衛力の整備に関する懇談会」報告書」(平成16年10月、安全
保障と防衛力の整備に関する懇談会)
情報懇:
「対外情報機能の強化に向けて」(平成17年9月、対外情報機能強化に関する
懇談会)
自民:
「国家の情報機能強化に関する提言」(平成18年6月、自由民主党政務調査会
国家の情報機能強化に関する検討チーム)
PHP:
「日本のインテリジェンス体制 変革へのロードマップ」
(平成18年6月、PHP
「日本のインテリジェンス体制の変革」研究会)
平和研:
「21世紀の日本の国家像について」
(平成18年9月、財団法人世界平和研究所)
1-5
官邸における情報機能の
強化の方針
平成20年2月14日
情報機能強化検討会議
2-1
1
はじめに
複雑多様化する国際情勢の下、我が国の国益を守り、国民の
安全を確保するためには、政府の情報機能を強化することに
より、より多くの質の高い情報を収集し、それらに高度の分
析を加え、適正な政策判断を支えていくことが必要である。
特に、国家安全保障に関し、官邸司令塔機能の強化が図られ
る中、官邸における情報機能の強化が急務となっている。
情報機能強化検討会議では、一昨年12月1日に設置され
て以来、官邸司令塔機能を支えるため我が国の情報部門とし
て何を成し得るか、政策部門との連接、情報の収集及び情報
の集約・分析から成る情報サイクルの構成要素の1つ1つに
検討を加えるとともに、情報基盤の整備及び情報の保全の徹
底という情報機能のインフラ整備に至るまで密度の濃い検討
を集中的に行い、昨年2月28日に官邸における情報機能強
化の基本的な考え方を取りまとめたところである。その後、
本検討会議では、基本的な考え方を具体化すべく更に検討を
行い、この度、官邸における情報機能強化策を取りまとめた
ので、ここに公表する。
2
情報機能の強化
(1)政策との連接
①
政策と情報の分離
情報部門においては、政策部門の情報関心に基づいて、
情報を収集し、収集された情報の集約・分析を行い、その
成果を政策部門に提供する。他方、政策部門は、提供され
2-2
た情報を政策立案及びその実施に活用し、その上で、新た
な情報関心を提示する。適正な政策判断を行うためには、
収集された情報を政策部門から独立した客観的な視点で評
価・分析する別個の部門が必要であることから、官邸にお
ける政策部門と情報部門は、官邸首脳の下、別個独立の組
織とし、政策と情報の分離を担保する。
② 政策と情報の有機的な連接
政策と情報の分離を前提としつつ、政策判断に資する情
報の提供を確保するためには、両者の有機的な連接が必要
である。そのため、官邸首脳の指揮の下、官邸の政策部門
からの情報関心が明確かつタイムリーに情報部門に伝えら
れ、他方、政府が保有するあらゆる情報手段を活用した総
合的な分析(オール・ソース・アナリシス)によりその価値
が最大化された情報が政策部門に提供されるよう、内閣情
報会議、内閣情報官及び各情報機関が連携して機能する。
○
内閣情報会議
内閣情報会議を官邸の政策部門からの参加も得る形に
再編し、同会議において官邸の政策部門の中長期的な情
報関心を情報部門に対して提示するとともに、その情報関
心に適切に応えるオール・ソース・アナリシスの成果を報
告する。
具体的には、現行メンバーに加えて、官邸の政策部門
の代表として、内閣官房副長官補(内政、外政、安全保
障・危機管理)その他の関係者が出席することとするほ
か、拡大情報コミュニティ省庁(( 3)②参照)の代表も
出席することとし、官邸の政策部門の情報関心を踏まえて
2-3
情報部門全体で中長期の情報重点を策定することができ
るようにする。また、情報重点の策定及び定期報告のた
めの会議を年2回開催するほか、緊急の対応を要する場
合、重要な報告のある場合等に随時開催することとする。
○
内閣情報官
内閣情報官は、官邸首脳への定期的なブリーフィング
等の機会を通じて、時々刻々変動する官邸首脳の情報関
心の機動的な提示を受けるとともに、オール・ソース・
アナリシスの成果を官邸首脳に報告する。また、内閣情
報官は、官邸の政策部門に対して、オール・ソース・ア
ナリシスに基づく情報をタイムリーに提供するものとし、そ
のため、官邸首脳の指示を受けて、官邸の政策部門の
重要会議に出席する。さらに、これらの情報関心の提示、
情報提供等について、情報コミュニティ内で共有すること
により、政策と情報の日常的な結節点として機能する。
○
各情報機関
各情報機関から官邸首脳への直接報告のルートも確保
し、その際には、各情報機関は、内閣情報官との間で、
官邸首脳に情報が適切に提供されることを確保するため
に必要な連絡を行うものとする。
(2)収集機能の強化
①
対外人的情報収集機能の強化
今日の国際的な諸課題のうち、国際テロ、大量破壊兵器
拡散、北朝鮮等の問題に関する情報は、我が国の安全保
障又は国民の安全に直接かかわるところであり、その収集
2-4
は喫緊の課題であって、これらの国や組織の意図を把握す
る必要性は増大している。
現在、在外公館において、広範な人脈の構築を通じて多
様な人的情報収集活動が行われているほか、人的体制の
強化に向けた取組みが進められており、また、情報関係の
各省庁においても、各級職員の海外への派遣等による対外
情報の収集が行われているが、上記のような情報収集の
対象国や組織は閉鎖的で、その内部情報の入手が困難で
あることが多く、そうした情報が不足している状況にある。
この問題に取り組むため、在外公館及び情報関係の各
省庁における取組みを強化するとともに、更に質の高い
情報収集を実現するため、今後、研修強化や知識及び経
験の蓄積を通じて対外人的情報収集に携わる専門家の育
成に努めるほか、より専門的かつ組織的な対外人的情報
収集の手段、方法及び態勢の在り方についての研究を深
めることとする。これらの取組みのため、関係省庁の一
層の連携強化を図り、情報コミュニティが一体となって
その総合力を発揮する。
② その他の情報収集機能の強化
その他の政府における既存の情報収集手段についても、
人員及び予算を確保し、次の施策を実施することによりそ
の能力の維持・拡充を図る。
○
・
内閣における情報収集機能
情報収集衛星
情報収集衛星4機体制により画像情報の収集を行うと
ともに、より高性能の衛星を開発するための体制を強
2-5
化する。また、画像情報に関する機能強化のため、地
球上で発生する様々な事象に対して迅速的確に対応す
ることが可能となるよう分析体制を強化するほか、分
析官に対する教育・訓練の充実及び職員の長期間の
在職が可能となるような枠組みの構築を図る。
・
公開情報
情報コミュニティにおける公開情報収集の実態を基
に、役割分担による効率化、データベース化等の諸方
策について、ラヂオプレスの活用も含め検討する。
○
各省庁における情報収集機能
・
国民の安全及び国の治安の確保のため、警察庁及
び都道府県警察において、諜報、大量破壊兵器の拡
散、国際テロ等の未然防止等に資する情報の収集を更
に強化する。
(警察庁)
・
我が国及び国民の安全・安心を確保するため、北
朝鮮、国際テロ、大量破壊兵器拡散等の問題に関す
る情報収集能力を更に強化する。
(公安調査庁)
・
在外公館及び外務本省における対外情報収集能力
を組織的に強化するための全省的な体制を整える。ま
た、情報収集活動に関するノウハウの蓄積、職員の能
力向上のための研修等を通じ、在外公館の情報収集
態勢の専門化及び強化を図る。さらに、ラヂオプレス
の一層の活用により、公開情報収集体制の強化を図る。
(外務省)
・
大量破壊兵器・弾道ミサイル拡散を含めた安全保障
環境の変化、国際平和協力活動の本来任務化、近年
2-6
の技術動向等を踏まえ、防衛省の情報収集能力を強
化する。
(防衛省)
(3)集約・分析・共有機能の強化
①
集約・分析・共有の必要性
適正な政策判断に資する情報が確実に情報部門から政策
部門に対して提供されるには、政策との有機的な連接の確
保及び収集機能の強化に加えて、政府として高度の分析を
行うための集約・分析機能を強化するとともに、政府全体
の分析能力の向上を図るための情報共有の促進が重要で
ある。そのため、現在の合同情報会議の機能を発展させ、
情報コミュニティの英知を結集する場とし、情報コミュニティ
は、同会議等において、官邸首脳及び官邸の政策部門の
情報関心に基づくオール・ソース・アナリシスを行うととも
に、情報の共有を促進する。このような観点から、「④
情
報の分析」で述べる内閣情報分析官による対外情報の分析
が真に総合的なものとなるよう体制を整える。
②
拡大情報コミュニティの設置
政府が保有するあらゆる情報手段を活用するため、内閣
情報調査室、警察庁、公安調査庁、外務省及び防衛省の
コアメンバーから構成される情報コミュニティのほか、金融
庁、財務省、経済産業省及び海上保安庁からなる拡大情
報コミュニティを設け、個別の情勢分析の必要性に応じて合
同情報会議等への出席を求めるとともに、オール・ソース
・アナリシスの成果についても共有する。
なお、拡大情報コミュニティ以外の省庁等との間でも、
2-7
関係する情報の提供を受け、また、必要に応じて情報の共
有を行うことができるよう、連携を深めることとする。
③
情報の集約
内閣情報官は、合同情報会議等を活用して、官邸首脳及
び官邸の政策部門の情報関心を伝え、情報コミュニティ内
で認識を共有するとともに、それに対応するオール・ソース
・アナリシスに必要な情報集約のための優先順位及び各情
報機関の役割分担等の調整を行う。具体的には、四半期に
一度、情報評価書(④参照)のテーマ、作成スケジュール
並びに各テーマごとに必要な情報及びその担当省庁を取り
まとめた情報評価書作成計画を、拡大情報コミュニティ省庁
の代表もすべて出席する合同情報会議において策定し、各
省庁の情報評価書の作成過程への関与を明確化する。情
報評価書作成計画の原案は内閣情報官が作成することとす
るほか、緊急時等におけるテーマの変更、役割分担等は、
内閣情報官が個別に調整して行うこととする。
また、情報コミュニティ(拡大情報コミュニティを含む。)
メンバーは、合同情報会議等の事務遂行に資するため、各
々連絡責任者(課長級)及び連絡担当官(課長補佐級)
を指名するとともに、連絡担当官を必要に応じ内閣情報調
査室に設けた専用の執務室に常駐させ、又は派遣する。
連絡責任者は、合同情報会議等により決定された役割分
担に基づいて収集された情報の提供について責任を有する
ものとし、日常的には、その指揮の下で連絡担当官が各省
庁と内閣情報調査室との間の連絡窓口として情報の提供等
を行うこととする。また、連絡担当官が同室において各省庁
2-8
端末を利用できるよう基盤整備を行う。
④
情報の分析
合同情報会議等におけるオール・ソース・アナリシスの
ため、内閣情報調査室に高度の分析能力を有する専門家(内
閣情報分析官(仮称))を地域別・事項別に置いて情報評
価書の原案を作成することとし、これを同会議等に諮ること
により、情報コミュニティ全体の英知を結集した分析内容と
する。
内閣情報分析官は、情報評価書作成計画に示された役
割分担に従って連絡担当官経由で集約された情報を基に、
各省庁の担当官、官邸の政策部門の担当官及び他の内閣
情報分析官の意見も踏まえて情報評価書の原案を作成す
る。
内閣情報分析官については、官民を問わず能力本位で選
任することとするほか、その高度の専門性を確保するため、
原則としてその任期を3年以上とし、長期間の在職が可能と
なるよう必ずしも特定のランクに固定されない処遇とする。
⑤
情報の共有
情報コミュニティ内の各情報機関における多角的な分析
を可能とし、政府全体の分析能力の向上が図られるよう、
厳格なセキュリティクリアランス制度(秘密取扱者適格性確
認制度)の実施を前提として、合同情報会議等の場を活用
するなどして情報の共有を促進する。具体的には、官邸首
脳及び政策部門の日常的な情報関心を合同情報会議で共
有するほか、情報評価書作成のために集約された情報を、
情報の保全にも十分に配意しつつニード・トゥ・ノウの原則
2-9
に基づいて関係省庁間で共有することとする。
日常の情報共有に関しては、上記連絡責任者を活用する
とともに、(4)
「
基盤整備」で述べるシステムの整備も推
進することとし、関係省庁間でのオンラインでの情報共有シ
ステムの構築に関して具体的な検討を開始する。
また、情報評価書等のオール・ソース・アナリシスの成
果については、官邸首脳及び官邸の政策部門への報告等
に併せて、情報コミュニティ内で共有する。
(4)基盤整備
①
情報の共有のための基盤整備
情報コミュニティにおける情報の共有化を進めるため、情
報コミュニティ共通のデータベースにつき、それに適した情
報管理の在り方を試験システムで検証しつつ段階的に整備
するほか、秘密情報伝達用のイントラネットを関係省庁と内
閣情報分析官及び連絡担当官との情報伝達のツールとし
ても積極活用できるよう拡大整備する。また、ハードウェ
アの連結等についても、共通データベースの整備の進展等
に配意しつつ、中長期的な課題として対応し、その実現を
図る。
②
人的基盤整備
情報コミュニティの機能強化・連携に役立つ人材を育成
するため、例えば次のような合同研修を実施するほか、そ
の具体的な必要性や方法を十分検討した上で人事交流を推
進する。また、情報コミュニティ内における上級幹部への登
用に当たっては、他の情報機関での勤務経験を考慮する。
2-10
○ 高度情報保全研修
情報コミュニティ内における高度な秘密保全措置を
確保するため、外国情報機関の諜報活動の実態、クリ
アランス手続、施設保全点検の技術、電磁波漏えいに
関する技術的事項等についての研修を行う。
○
情報分析研修
情報コミュニティにおけるオール・ソース・アナリ
シスを行うために必要な情報分析能力の向上のため、
各情報手段の役割、分析の方法、収集・分析した情報
の取扱い等についての研修を行う。
○
専門分析研修
情報コミュニティ内の情報分析担当官が、担当分野
に関する高度な専門的能力を習得するとともに、相互
理解を促進するため、大学や研究所等の専門家との意
見交換、事例等を用いたゼミ、海外研修等を行う。
3 情報の保全の徹底
①
政府統一基準の策定・施行
情報の集約・共有及び基盤整備の前提として、セキュリ
ティクリアランス制度(秘密取扱者適格性確認制度)を含
む政府統一基準を定めるなどの情報保全措置が採られるこ
とが重要であり、カウンターインテリジェンス推進会議にお
いて決定された「カウンターインテリジェンス機能の強化に
関する基本方針」の着実な施行に取り組む。
②
高度の秘密を保全するための措置
情報コミュニティ内においては、より高度な秘密を保全す
2-11
るための措置が必要であるところ、その秘密の範囲を明ら
かにし、電磁波漏えい防止、盗聴防止等の物理的な措置を
含めて具体的な措置を検討し、速やかにその実現を図る。
③
秘密保全に関する法制の在り方
現在の我が国の秘密保全に関する法令は、個別法によ
って差異が大きく、国家公務員法等の守秘義務規定に係
る罰則の懲役刑は1年以下とされておりその抑止力が必
ずしも十分でないなどの問題がある。
こうした問題を解消するため、この種法令の諸外国に
おける現状と実態や我が国の実情を踏まえ、真にふさわ
しい法制の在り方に関する研究を継続するとともに、具
体的な法整備に関しては、各種の場における議論にも留
意しながら、国民の広範な理解を得ることを前提として、
適切な対応をしていくことが必要である。
4 実現への道のり
以上の基本的な施策を我が国情報コミュニティ内のみならず
広く政府内において共有し、その実現に向けた取組みを推進
することとする。また、情報機能については不断の見直しが
必要であるところ、本検討会議の枠組みにより、官邸におけ
る情報機能の強化のための施策を引き続き検討することとす
る。
2-12
情報機能強化検討会議の設置について
平成18年12月1日
内閣総理大臣決定
改正
平成19年1月9日
1
官邸における情報機能の強化を検討するため、内閣に情報機能強化検討会議
(以下「検討会議」という 。)を設置する。
2
検討会議の構成は、次のとおりとする。ただし、議長は、必要が
あると認めるときは、構成員以外の者の出席を求めることができる。
議長 内閣官房長官
議員 内閣官房副長官(事務)
内閣危機管理監
内閣官房副長官補(内政)
内閣官房副長官補(外政)
内閣官房副長官補(安全保障・危機管理)
内閣情報官
内閣総務官
3
検討会議の下に、調整委員会(以下「委員会」という 。)を置く。
4
委員会の構成は、次のとおりとする。
委 員 長 内閣官房副長官(事務)
副委員長 内閣情報官
委
員 警察庁警備局長
公安調査庁次長
外務省国際情報統括官
防衛省防衛政策局長
その他委員長の指名する者
5
委員長は 、必要があると認めるときは 、テーマに応じてワーキング・グループ
を置くことができる。
6
検討会議及び委員会の庶務は、内閣官房内閣情報調査室において処理する。
7
前各号に定めるもののほか、検討会議の運営に関する事項その他必要な事項
は議長が、委員会の運営に関する事項その他必要な事項は委員長が定める。
2-13
我が国の情報体制
情報機能強化前(~平成20年3月)
内閣
内閣情報会議
・官房長官が議長
・内閣情報官のほか、関係省庁
の事務次官級が出席
事務 局
合同情報会議
・官房副長官(事務)が議長
・内閣情報官のほか、関係省庁
の局長級が出席
・関係機関間の機動的な連携
外務省
警察庁
防衛省
内閣情報官
国際情報
統括官組織
在外公館
防衛政策局
警備局
都道府県警察
公安調査庁
内閣情報調査室
内閣衛星情報センター
情報本部
財団法人
ラヂオプレス
情報機能強化後(平成20年4月~)
内閣
内閣情報会議
・官房長官が議長
・内閣情報官のほか、政策部門、
関係省庁の事務次官級が出席
・情報関心の提示、成果の報告
外務省
警察庁
防衛省
内閣情報官
国際情報
統括官組織
在外公館
財団法人
ラヂオプレス
警備局
都道府県警察
防衛政策局
公安調査庁
内閣衛星情報センター
情報本部
金融庁
(政策と情報の日常的な結節点)
内閣情報調査室
・内閣情報分析官5名体制
財務省
経済産業省 海上保安庁
拡大情報コミュニティ
3
事務 局
合同情報会議
・官房副長官(事務)が議長
・内閣情報官のほか、関係省庁
の局長級が出席
・関係機関間の機動的な連携
・情報評価書の作成
情報評価書に基づくインテリジェンス・サイクル
※ 内閣情報会議において、ユー
ザー(官房長官、副長官、政策
部門の代表)出席の下、重点事
項を決定
(年初と年央の定例会議)
情報ユーザー
① 情報関心
⑦ 情報評価書の配付
合同情報会議
⑥ 情報評価書を決定
内閣情報官
② 情報評価書作成計画
⑤ 情報評価書(原案)
• 四半期に一回、決定
内閣情報分析官
• テーマ、スケジュール、
必要な情報を明確化
④ 集約
情報コミュニティ省庁 (拡大コミュニティを含む8省庁)
③ 収集・分析
情報源
情報源
情報源
情報源
4
情報源
情報源
政府におけるカウンターインテリジェンス機能の強化の動き
【これまでの動き】
1.平成 18 年 12 月 25 日 「カウンターインテリジェンス推進会議」設置
2.平成 18 年 12 月 26 日 第 1 回カウンターインテリジェンス推進会議
3.平成 19 年 8 月 9 日 第 2 回カウンターインテリジェンス推進会議
「カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針」決定
① 政府統一基準
I.
特別管理秘密に係る基準
II.
カウンターインテリジェンスに関する情報の収集・共有
III.
カウンターインテリジェンス意識の啓発
IV.
事案対処
V.
管理責任体制
② カウンターインテリジェンス・センター
4.平成 19 年 8 月 10 日 (閣議口頭了解)カウンターインテリジェンス機能
の強化に関する基本方針の着実な施行について
5.平成 20 年 4 月 1 日 「特別管理秘密に係る基準」以外の政府統一基準施行
カウンターインテリジェンス・センター設置
【今後の動き】
平成 21 年 4 月 1 日 「特別管理秘密に係る基準」施行
注)カウンターインテリジェンスとは、外国による諜報活動を阻止し、情報の漏
えいその他の国益を害する事態を予防する活動をいう。
5
カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針(概要)
1
目的
この基本方針は、カウンターインテリジェンスに関する各行政機関の施策
に関し必要な事項の統一を図るとともに、カウンターインテリジェンス・セ
ンターその他カウンターインテリジェンスに関する施策を推進する体制を
確立し、もって国の重要な情報や職員等の保護を図ることを目的とする。
2 政府統一基準
(1)特別管理秘密に係る基準
特別に秘匿すべき情報(特別管理秘密)については、物的管理として、
「政
府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準(第2版)
」
(2007 年 6 月
14 日情報セキュリティ政策会議決定)の厳格な適用等を行うとともに、人
的管理として、秘密取扱者適格性確認制度、管理責任体制、秘密保全研修制
度を導入して、特別な管理を行い、情報漏えいの絶無を期すものとする。
※ 秘密取扱者適格性確認制度とは、特定の秘密の取扱いについては、
その秘密を取り扱うことについての適格性(信頼性)を確認した者に
行わせることとする制度。
※ 秘密保全研修制度とは、特別管理秘密を取り扱う者に対し、秘密保
全に必要な知識・技能等を修得させるため、特別管理秘密取扱者研修
を定期的に実施することとする制度。
(2)その他
カウンターインテリジェンスに関する情報の収集・共有、カウンターイン
テリジェンス意識の啓発、事案対処、管理責任体制の構築について、政府統
一的に取り組むものとする。
3 カウンターインテリジェンス・センター
基本方針の施行に関する連絡調整等を行い、我が国政府全体のカウンター
インテリジェンスの中核として機能するカウンターインテリジェンス・セン
ターを内閣官房内閣情報調査室に置くこととする。
4
施行
この基本方針は、2(1)については平成21年 4 月 1 日から、その他
については平成20年4月1日から施行することとする。
6
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