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市場実態(PDF:432KB)

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市場実態(PDF:432KB)
2.米菓(あられ)
(1)市場実態
①生産量の動向
サウジアラビア国内では米菓(あられ)の生産は行われておらず、サウジアラビアで消費
される米菓(あられ)はすべて輸入によっている。輸入業者及び卸業者へのインタビュー
によれば、サウジアラビアの人件費は高く、人件費の安い中国あるいはタイなどでないと
安価なあられ生産は不可能であるとのコメントが多かった。しかし規模の比較的大きなコ
ングロマリット(水販売、運輸、旅行代理店、農業機械販売、カジノ経営、あられ輸入販
売などを行っている)からは、日本からの輸送コストを考えると、日本産レベルの品質の
あられが国内生産できれば、利益は十分に上がるとのコメントがあった。その業者はその
ための技術指導を含めた投資を求めているとのことである。
②輸出入量の動向
サウジアラビアの HS コードで米菓(あられ)は米菓(あられ)のみならず、ポテトチッ
プス、
えびせん等スナック一般を含む HS コード(1905.90.80 [Crisps (As pop corn, chips and the
like)])に含まれる。一方、日本では米菓(あられ)は HS コード(1905.90.100 [あられ、せ
んべいその他これらに類する米菓])に分類されており、双方の統計を単純に比較はできない。
サウジアラビアのスナック全体の輸入額を見ると、アラブ首長国連邦、バーレーンなどか
らが毎年大きい一方、米国、ベルギー、日本などからの輸入額が過去3年に大きく増加し
ている
29
表 2.1 日本からの米菓(あられ、せんべい)の輸出額
(単位:千円)
2002 年
2003 年
2004 年
2005 年
2006 年
世界(世界計)
2,372,853
2,078,227
1,936,994
2,188,237
2,336,324
米国
1,185,949
940,486
879,006
889,652
884,914
台湾
オランダ
297,208
520,576
268,926
429,776
277,178
314,457
459,897
303,220
513,579
277,517
香港
韓国
120,616
51,803
122,141
75,370
150,024
68,145
197,649
80,759
239,724
95,542
サウジアラビア
シンガポール
5,207
88,095
63,301
71,435
43,712
65,706
67,167
59,325
85,487
78,221
スペイン
オーストラリア
49,000
28,184
63,000
29,873
66,321
51,937
65,278
36,049
69,840
48,248
ブラジル
26,215
13,919
20,508
29,241
43,252
以上 2006 年の上位 10 ヶ国
HS コード(9桁)
:190590-100
出所:農林水産省 海外統計情報 web サイト(http//http://www.toukei.maff.go.jp/world/)
表 2.2 サウジアラビアのスナック全般(あられを含む)の輸入額
(単位:千リヤル)
2002 年
2003 年
2004 年
2005 年
2006 年
105,690
99,784
109,097
174,882
205,422
45,284
49,953
38,228
38,655
58,822
0
1
1
52
33,454
米国
バーレーン
4,374
34,803
6,204
18,554
6,077
36,798
57,184
31,652
29,838
28,082
日本
マレーシア
616
5,834
544
7,402
6,548
8,461
14,305
12,723
15,266
12,849
オマーン
クウェート
5,404
4,444
4,274
3,145
4,596
3,871
5,788
4,704
8,846
7,481
0
446
435
240
0
520
4,020
1,260
2,578
2,000
世界(世界計)
アラブ首長国連邦
ベルギー
レバノン
中国
以上 2006 年の上位 10 ヶ国
HS コード 1905 9080
出所:サウジアラビア統計局資料
表 2.2 で示したサウジアラビアのスナック全体の輸入量の増加率は年 6.3%である。GDP
成長率が 4.3%(2006 年実質値)であることを考慮するとスナック全体の需要は GDP 成長
率を上回る伸びを示していると言って良い。
またスナック全体の消費傾向と米菓(あられ)の消費傾向は、家庭内では、ほぼ同じ場面・
状況で消費されるため、米菓(あられ)の需要は、少なくとも他のスナック同様に増加し
ていると考えられる。さらに、詳細は後述するが、米菓(あられ)には、醤油による味付
30
けした製品輸入が 2007 年より可能になるなど、情況がさらに好転する要素がある2。したが
って、米菓(あられ)は今後短期的にはスナック全体の伸びよりも大きな伸びを示す可能
性がある。
ちなみにまたインタビュー調査から得られたデータによれば、大口輸入国の輸入額内訳は
中国製が 35%、タイ製が 30%、日本製が 18%であり、この三カ国で輸入額の 83%を占めて
いると推計されている。
表 2.3 サウジアラビアのスナック全般(あられを含む)の輸入量
(単位:トン)
2000 年
2001 年
2002 年
2003 年
2004 年
2005 年
2006 年
世界(世界計)
7,914
8,873
9,493
8,248
9,171
14,215
16,806
アラブ首長国連邦
1,554
2,932
3,539
3,454
2,711
2,658
3,710
ベルギー
米国
0
1,669
0
1,131
0
796
0
949
0
901
0
4,414
1,704
2,387
バーレーン
日本
2,524
0
2,376
30
2,832
78
1,510
330
2,899
386
2,575
834
3,321
903
マレーシア
オマーン
524
242
829
412
624
402
862
290
1,008
269
1,531
284
1,759
359
クウェート
レバノン
211
9
398
24
357
0
233
25
261
0
293
350
619
273
中国
142
21
133
27
162
284
701
以上 2006 年の輸入額上位 10 ヶ国
出所:サウジアラビア統計局資料
上表で示したように、2006 年のスナックの輸入量は 16,806 トンである。米菓(あられ)の
輸出入を直接的に示す入手可能なデータがサウジアラビアに存在しないため、インタビュ
ー調査より、米菓(あられ)の輸入量はスナック全体の 12%と推計した3。これを踏まえて、
米菓(あられ)の輸入量は年間 2,000 トン程度と計算できる。そして米菓(あられ)は国内
生産がなく 100%を輸入に依存しているので、ここで計算した輸入量が供給量に等しいと考
えられる。
さらに業者へのインタビューによれば、サウジアラビアで流通する米菓のマーケットシェ
ア(重量)は中国製が 61%、タイ製が 22%、日本製が 10%と推計されており、これらの三
カ国のあられが流通するあられの 93%を占めていることになる。中国製が輸入額の割合が
35%であるにもかかわらず、流通量の 61%を占めているのは、輸入価格が他国と比べて非常
に低いことを意味している。
2
表 2.1 で 2003 年に日本からサウジアラビアへの米菓輸出が急増している。これは 2001 年にサウジアラビ
アが醤油利用製品の輸入を禁じたために大きく輸出が落ち込んだが、2003 年以降それに対応して日本から
非醤油利用製品を輸出したため、それに伴って輸入が急増したものである。
3
Optimum Business Consulting Bureau の資料(2008)による。
31
表 2.4 サウジアラビアで流通する米菓(あられ)のマーケットシェア
主な輸出国
中国
タイ
日本
マレーシア
インド
インドネシア
フィリピン
シリア
その他
計
サウジ国内で
の マ ーケ ッ ト シェ ア
(重量)
61%
22%
10%
2%
1%
1%
1%
1%
1%
100%
出所:OBCB
これを踏まえて、日本産米菓の年間輸入量を計算する、米菓(あられ)の輸入量が年間
2,00 トン程度であるため、その 10%で約 200 トン程度となる。一方、日本からサウジアラ
ビアへの輸出額は 2006 年には 186 トンである4。したがって、サウジアラビアにおける米菓
(あられ)供給量に関する推計はある程度の確度があると考えられる。
なお、市場調査によれば、日本製品は米菓の他、えびせんなどのスナック類が確認されて
おり、日本からのスナック輸入量がそのまま米菓の輸入量に等しくなるわけではない。
また、あられ全体の今後の需要の動向について輸入業者、卸業者、小売業者(31 業者)に
尋ねたところ、6割が需要の増加を予想している。
表 2.5 業者によるあられの将来の需要見込み
将来の需要見込み(母数 31)
増加
61%
減少
3%
変化なし
36%
総計
100%
出所:OBCB
③主要小売店における小売価格の動向
あられの小売価格は店舗のランクによっても異なる。おおむね中国製品が 1kg あたり 10
~20 リヤル(約 293~587 円)
、タイ製品が 1kg あたり 20 リヤル(約 587 円)前後、日本製
品は 1kg あたり 42 リヤル(約 1,232 円)で販売されている。なお後述するがこの 42 リヤル
(約 1,232 円)のあられはサウジアラビアの Al Nukaly 社が日本の一商社によるあられの総
代理店契約を結び、輸入・販売しているものである。
その他、米国産と称して 1kg あたり 52 リヤル(約 1,526 円)で販売しているスーパーマ
ーケット内のコーナーがあったが、これが本当に米国産かどうかは確認できなかった。ち
なみに専門家によれば、これはタイ製を米国製と称して 50~60 リヤル(約 1,467 円~1,760
円)で販売しているものと述べていた。
4
農林水産省 web サイト
http://www.toukei.maff.go.jp/world/index.files/wagakunijisseki.htm
32
米国産と称されて販売されているあられ
なお、小売価格の変遷を追う統計資料は得られなかったが、インタビューによれば、日本
製あられは 20 年前は 33 リヤル(968 円(2007 年換算)
)/kg 程度であったというコメント
を得ている。
④日本産品のイメージ、潜在需要
サウジアラビアの消費者の日本製品に対する信頼度は高く、『日本製品は「高品質、高価
格」』と多くのインタビューで述べていた。そしてそれと同様に日本産米菓(あられ)に対
する認知も極めて高い。
この認知を利用して差別化を進め、販売しているのがサウジアラビアにおける日本のあら
れである。日本のあられは高価格かつ高品質で味がよいというイメージをブランド化とと
もに進めている。前述したように、サウジアラビアにおいて、日本産米菓(あられ)は一
社の製造・直輸入・卸し・小売販売業者(Al Nukaly 社)が独占的に輸入し、高級店を展開
して販売している状態であるため、消費者は日本産米菓を購入する場合、基本的には Al
Nukaly 社が輸入した日本産米菓のみを購入していることになる。Al Nukaly 社によれば、あ
られは中国、タイ等の安価な製品もあるが、日本製品は高価格(タイ製品の約2倍の値段)で
あってもリピーターとして購入する消費者が非常に多いとのことである。
Al Nukaly 社の店舗は全国に 32 店舗ある。しかし本社がジェッダに位置しているため、主
力店舗はジェッダに多く存在する。インタビューによれば、2007 年より醤油を使ったあら
れの輸入が許可されたこと(輸入そのものは 2008 年初頭より開始とのこと)、消費者の健
康志向などから、今後のさらなる拡大が見込まれると考えている。また同様の需要がジェ
ッダ以外にもあると見ており、現在あまり店舗の多くない首都リヤドを始め、ペルシャ湾
岸の商業都市ダンマンなどに店舗拡大を図っている。
業者へのアンケートからあられの需要の拡大を想定している回答が多かったが、日本製あ
33
られを独占的に取り扱う Al Nukaly 社も店舗拡大を計っており、全体傾向と同様に日本産あ
られもサウジアラビアにおいてさらに拡大傾向にあると考えられる。
⑤消費者の嗜好、クレーム等
消費者の米菓(あられ)購買行動には全体的な傾向、及び地域的な傾向が見られた。
消費者の嗜好は、様々であるが、全体的な傾向として、醤油味が好まれている。2001 年
から 2007 年まで続いた醤油製品の輸入禁止措置の結果、醤油代替品を導入したものの、2
割程度売上が減少した業者もあり、それ以前の醤油味の定着は確かなものであると考えら
れる。
また、サウジアラビア国内での地域的な特徴及び消費者の出身地によっても嗜好は異なっ
ている。地域的な特徴としては、首都のリヤドでは比較的多様な味付けが受け入れられて
おり、通常の醤油代替品味(調査時にはまだ醤油味のあられが市場に出回っていなかった
ため。
)に加え、ワサビ味、ピザ味、ガーリック味、チーズ味が好まれているとのことであ
る。一方、北部海沿いの都市ダンマンでは、唐辛子味ではあるが辛さがわずかのもの、及
び海藻付き、砂糖をかけたものが好まれているという。出身地の傾向では、アジアからの
労働者が一般に唐辛子味を好む傾向がある一方、アラブ人はさほど唐辛子味を好まないと
いう。その他、南部の紅海沿岸の都市ジェッダにはイスラム教の年一度の祭礼(ハッジ)に
世界中からメッカを訪れる人々の基点となるため、唐辛子味が良く出る。また色は赤っぽ
いものから黄色っぽいものが受け入れられているとのことである。なお緑の色を付けたあ
られもあるがこれは全体的にあまり好まれていない。
基本的に消費者は一種類のあられを購入するのではなく、複数種のあられを購入し、それ
を好みに合わせて混ぜてから食卓に供する。そのため、一回あたりの購入量は比較的大き
くなる傾向にある。この際、ローストしたカシューナッツ、アーモンド、ピスタチオなど
とともに供される。また食べ方は個人の場合、あられは宗教的な祭礼(ラマダン他)の客
人に供する際に需要が最も大きいと認識されている。次いで、平常時の客人(結婚式或い
は何らかのパーティー)へのもてなし時に需要が大きいと認識している場合が割合が少な
いがある。またこれらは特に需要が大きいと認識されている時期であるが、それ以外でも
高~中所得世帯では食前あるいはテレビを見ながら食しているという。
表 2.6 時期に応じたあられの需要
需要が大きい
需要は中程度
需要は大きくない
宗教祭礼時(ラマダンなど)
20(65%)
5(16%)
6(19%)
31(100%)
学校休暇時
3(10%)
14(45%)
14(45%)
31(100%)
家庭での集まり(結婚式、パーティ
など)
8(26%)
12(39%)
11(35%)
31(100%)
出所:OBCB
34
回答総数
さらに、以下の表では、家族による購入の最も多い単位が 5kg となっている。これは宗教
祭礼時等、需要の大きな時期の購入を念頭において回答されている。なお、アンケート調
査によれば、あられ消費は、家族単位、一人での利用、ホテル・レストラン、その他に分
類できる。家族単位での消費が 66%と過半数を占め、それに個人用を含めると 83%となり、
ほとんどが家庭あるいは個人によって購入されている。一回に最も利用する単位は家族単
位では 5kg、個人でも 4.5kg を購入している。
表 2.7 あられの消費単位と利用単位
購入の際のあられの消費単位
シェア(%)
最も利用する単位(kg)
家族用
66%
5kg,
1人用
17%
4.5kg,
4%
5kg
その他
13%
5kg
計
100%
ホテル・レストラン
1kg,
1kg,
3kg,
0.5kg
0.25kg
出所:OBCB
日本製品の評価についてのアンケートによれば、非常に良い(Excellent)が 18%、かなり
良い(Very good)が 64%、良い(Good)が 18%であり、否定的な意見はなかった。唯一のク
レームとしては、日本のあられは中国製品に比べ、あまり日持ちがせず、においが悪くな
るのが早いという意見があった。ただしこれは日本製品を専門に扱う業者から販売された
ものではなく、当該業者の卸し部門からスークの小さな商店に卸されたあられについての
ものであるため、商品管理が十分になされていない状況下でのクレームと考えられる。
(2)流通実態
①販売方法、販売促進方法
サウジアラビアの米菓(あられ)は 100%を輸入に依存している。前述したように、サウ
ジアラビアへの米菓(あられ)は中国製とタイ製が多くなっている(中国製が 61%、タイ
製が 22%、日本製が 10%)
。
米菓(あられ)の販売は、(1)市場(スーク)のナッツ、香辛料を取り扱う個人商店、
(2)小さなスーパーマーケットの同種の品目を扱うコーナー、
(3)大きなスーパーマー
ケットの同種の品目を扱うコーナー、(4)モールの内部にある専門店、(5)独立した専
門店、の五種類でなされている。市場(スーク)の個人商店では 7 種類以上のあられを混
35
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